1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十年六月二十三日(木曜日)
午前十時四十一分開会
—————————————
委員の異動
六月二十二日委員森下政一君及び井村
徳二君辞任につき、その補欠として松
澤兼人君及び鶴見祐輔君を議長におい
て指名した。
—————————————
出席者は左の通り。
委員長 青木 一男君
理事
西川甚五郎君
山本 米治君
土田國太郎君
平林 剛君
委員
青柳 秀夫君
木内 四郎君
白井 勇君
藤野 繁雄君
宮澤 喜一君
小林 政夫君
岡 三郎君
菊川 孝夫君
中川 幸平君
政府委員
大蔵政務次官 藤枝 泉介君
大蔵省主計局次
長 正示啓次郎君
大蔵省主計局法
規課長 木村常次郎君
事務局側
常任委員会専門
員 村上孝太郎君
常任委員会専門
員 小田 正義君
説明員
大蔵省管財局特
殊財産課長 根本 守君
—————————————
本日の会議に付した案件
○補助金等の臨時特例等に関する法律
の一部を改正する法律案(閣第五〇
号)(内閣送付、予備審査)
○補助金等の臨時特例等に関する法律
の一部を改正する法律案(閣第九一
号)(内閣送付、予備審査)
○接収貴金属等の処理に関する法律案
(内閣送付、予備審査)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/0
-
001・青木一男
○委員長(青木一男君) これより大蔵委員会を開会いたします。
まず、補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案(閣法第五〇号、予備審査)を議題にいたします。
本案は去る十四日内閣の要求通り修正されておりますので、この際右の修正について政府より説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/1
-
002・藤枝泉介
○政府委員(藤枝泉介君) ただいま議題となりました内閣提出第五十号の補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案中修正につきまして、その理由を御説明申し上げます。
補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案の原案は、昭和三十年五月三十一日限り効力を失うこととなっておりました補助金等の臨時特例等に関する法律につきまして、その有効期限を昭和三十一年三月三十一日まで延長するため提出いたしたのでありますが、その後、本年五月三十一日、法律第十三号補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律が公布施行せられ、右特例法の有効期限が本年六月三十日まで一時延長の措置が講ぜられましたので、これに伴いまして、本補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案中修正を提出した次第であります。
何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/2
-
003・青木一男
○委員長(青木一男君) 次に、補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案(閣法第九一号、予備審査)を議題として、政府より提案理由の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/3
-
004・藤枝泉介
○政府委員(藤枝泉介君) ただいま議題となりました補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案(閣法第九一号)につきまして提案の理由を御説明申し上げます。
政府は、昭和二十九年度におきまして、国の財政の健全化等の目的から、補助金等につきまして整理する必要を認め、昭和二十九年度予算において所要の措置を講ずるとともに、第十九回国会に補助金等の臨時特例等に関する法律案を提出し、御審議の上、これが成立をみたのでありますが、本年度におきましても、昨年度と同様の目的から補助金等の整理を行うことといたしたのであります。このうち法的措置を講ずる必要があるものといたしましては、昨年度成立いたしました補助金等の臨時特例等に関する法律の対象となった補助金等があり、これらについては、さきに右特例法の有効期限を昭和三十一年三月三十一日まで延長するための改正法案を提出し、御審議を願っているのでありますが、その他といたしまして、国立公園法に基く補助金につきまして昭和三十年度限り特例を設けることを妥当と考え、この法律案を提出した次第であります。
何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/4
-
005・青木一男
○委員長(青木一男君) 続いて事務当局より補足説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/5
-
006・村上孝太郎
○政府委員(村上孝太郎君) ただいま補助金等の臨時特例等に関する法律の改正法律案を二本提案の理由及びその修正の理由を御説明申し上げました。
政府は本国会におきまして、先ほど政務次官からも御説明になりましたように、当初二本の補助金等の臨時特例等に関する法律案を提出したわけであります。一本は昨年御承知のように、この補助金等の臨時特例等に関する法律というものが成立いたしまして、それが本年の三月三十一日まで有効であったのでございますが、それを四、五の二ヵ月の暫定予算中まず延長をお願いいたしまして、これは過般この委員会でも御説明申し上げまして、御承認をいただいたわけでございますが、続いてこの本予算を提出するに及びまして、本予算の方針といたしまして、昨年と同じく補助金の臨時特例等の法律を一年間さらに延長するという方針が確定いたしましたので、四月の半ばにこの法律を一年間延長するという法律案をまず提出いたしたわけでございます。それがいろいろな経緯もございまして、結局衆議院の特別委員会立法によりまして、一カ月間、六月の暫定予算期間中のみ延長するというまず議員立法がなされまして、それによって現在引続き本法が有効になっているわけでございますが、そのために当初政府が出しました六月の一日から来年の三月三十一日までこの法案を延長さしていただきたいという法律案が、いわばこの衆議院の特別委員会立法によりまして一ヵ月重複する、いわば無用の部分ができたわけでございます。そこでこの一カ月間の無用の部分を修正いたしますというのが、先ほど政務次官から御説明になりました修正案の理由でございますが、それによりまして、当初政府が出しました六月一日から来年の三月三十一日まで延長さしていただきたいというこの改正案が、七月一日から来年の三月三十一日まで延長さしていただきたいという期限延長の法律案に変ったわけでございます。これがまず第一に先ほど政務次官の説明されました法律第五十号の内容でございます。
で、これは昨年の臨時特例法をそのまま延長するという期限延長の法律案でございますが、政府は先ほど申し上げましたように、さらにもう一本の法律案を補助金の整理につきましては用意いたしておりまして、それを提出いたしております。その内容は、昭和三十年度本予算編成方針に基きまして、新しく二十九年度整理いたしましたものに加えて、さらに補助金の整理をいたしたい、こういう内容のものでございます。これは予算補助、法律補助、いろいろの補助金が成立したわけでございますが、その中で法律的根拠を要しまして、従って法律上の措置を必要とするところの補助金につきまして、新しく昨年成立しました補助金等の臨時特例等に関する法律に追加するという形で法律案を提出したわけでございます。
それも当初は二本追加するという形になっておりました。それは一つは国立公園に対する補助金、もう一つは防火建築帯に関する補助金、この二つの補助金に関する根拠法を訂正して、一年間停止するという形で法案を提出いたしたわけでございますが、それが過般の衆議院におきまするところの民自の予算修正、国会における予算修正によりまして、その二本の中から耐火建築促進法関係が予算が復活するという事態になりましたので、従って法的補助、根拠法を提出しないでよろしいということになりまして、その関係で政府が提出いたしておりました補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案、九十一号の方をさらに修正いたしたわけでございます。
そこで結局残りました九十一号といたしましては、もとの、原法でありますところの補助金等の臨時特例等に関する法律を整理いたします条文整理と、それからさらに追加するものといたしましては国立公園に対する補助金だけということに相なったわけでございます。これが現在提案されております二本の補助金に関する法律案でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/6
-
007・青木一男
○委員長(青木一男君) ただいま説明になりました補助金関係の二法案について質疑を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/7
-
008・木内四郎
○木内四郎君 第七条のところにただし書きは、これはつける必要があるのですか、ただし書きの「災害復旧のため国が国立公園について必要な補助を行うことを妨げるものではない。」というこれを入れる必要があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/8
-
009・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) お答え申し上げますが、これは私ども今回補助金の特例法といたしまして、国立公園法に基く補助金につきまして特例をお願いいたしておりますのは、この国立公園の施設の整備と申しますか、積極的によくしてゆく面の補助金につきまして、国及び地方財政の現状にかんがみまして、ここのところ一年間そういうものは特例を認めていただいて一体みいたしたいと、こういう考え方でございまして、あとで詳しく御質問に応じてお答えいたすつもりでありますが、このたとえば地方公共団体が単独でやります分とか、または国が必要に応じまして直轄でやります分につきましてはこのままにいたしておるわけであります。のみならず、今御指摘の災害が起って、どうしても放置いたしておきます場合には国立公園の施設が非常に現状より悪くなるというふうな場合には、これは捨てておけませんので、そういうものはこの場合といたしましてもぜひとも必要なものは出してゆきたい、こういう考え方からただし書きをつけておきまして、疑義をなくしてゆきたい。はっきりそういうものを出すということをお認めを願っていただきたいと、こういう趣旨でただし書きを入れた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/9
-
010・木内四郎
○木内四郎君 この条文だけただし書きが入っておるけれども、ほかの条文でも、補助金を整理した場合でも、法律上の義務はなくても予算に計上して補助することは差しつかえないでしょう。どうしてこの条文だけこれを入れたのでしょうか、その点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/10
-
011・村上孝太郎
○政府委員(村上孝太郎君) ただいま正示次長からも御説明に相なりましたが、国立公園に対する補助金と申しますのは、国立公園の事業といういわば行政理念に基いて補助金を出すわけでございます。災害というのは、これは国立公園であろうと、ほかの道路事業であろうと何であろうと、またこれは日本におけるがごとき天災の多い国柄におきましては、そうした災害を受けた地方に対していろいろまあ復旧の、財政能力も痛手を受けておるであろうから補助をしようと、別個の行政理念があるわけでございます。従ってわれわれは、災害に対する補助金はこれは別個の、国立公園事業という国立公園法上の行政理念よりは別個の行政理念に基いているから要らぬじゃないかという当初線を持っております。いろいろ交渉いたしたのでありますが、それに対していろいろ心配をする向きもありまして、そこに書いてありますように何々するを妨げないという、いわば非常に注意的な規定になっております。従ってそういう意味から申しましても、これはいわばその規定によって初めて災害復旧ができるというのじゃなくて、災害復旧の補助金としてこの別個の行政理念に基くものだから当然できるのだけれども、疑問があるといけないからというので注意的な規定になっておるのであります。
ほかのものについてはどうかということになりますと、正規の補助金といわば競合的に災害に関する補助金が出るものがあるかということでいろいろ探したわけでありますが、現在臨時特例法に載っております十七本の法律につきましては、その災害との競合的な問題はございませんので、そこで新しくそうしたただし書きの注意的規定をつけることは必要ないと、こういう結論に達したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/11
-
012・木内四郎
○木内四郎君 今の御説明でこの災害関係はわかったのですけれども、その他の条文だって補助金は打ち切りにした、まあやらないでいいことになったけれども、やっても差しつかえないのでしょう。法律上の義務じゃないでしょう。だからこれは災害だけじゃなくて、他の理由によってもやることはあり得るのだから、そういうことを書かないで、災害関係をここへ書いたのはどういう意味になるか。これだけ書いておくと、ほかの方で万一特殊の事情でやらなくちゃいかぬような事態が生じた場合は、法律を改正しないでよろしいのじゃないかと一つの疑義を逆に起すおそれがありゃしないか、そこはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/12
-
013・村上孝太郎
○政府委員(村上孝太郎君) まあ法律的に申しますと補助することができるというふうな規定、あるいは負担することができるというふうな規定は、いわば国家に補助し、あるいは負担する権能を与えた規定でございまして、これを停止するからといって、現在別個に予算補助だけでやっておる補助制度はたくさんあるわけでございますから、予算補助ができないというわけではなかろうかと思います。従ってそういうふうなことを妨げないという規定があるからといって、ほかのただし書きのついていないものは逆の反対解釈として、今度は予算補助ができないのだというふうなことにはならぬだろうと思うのでありますが、ただそういうふうに書いて、補助することができるという規定を停止しましたときに、その規定を停止しておいて、それは単なる権能規定なんだから、その権能規定によらずして今後は予算補助をするのだということが果して妥当かという問題になるわけでございますが、これはわれわれとしましては、従来法律補助であったものを、法律の規定を停止して、しかも予算補助ができるかどうかという問題については、法律的には全然できないことはないだろうけれども、いわば政府の意思としては分裂しているという実体論的な批判を受けるのじゃなかろうかということで、まあ補助が、法律補助を停止しておいて予算補助に切りかえるというのは実行上の問題としてはおかしい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/13
-
014・木内四郎
○木内四郎君 そうするとこの第七条のただし書きというものは、まあ念のために入れたので、なくてもいいのだと、こういうことでしょうな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/14
-
015・村上孝太郎
○政府委員(村上孝太郎君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/15
-
016・青木一男
○委員長(青木一男君) 他に御質疑がなければ次に移ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/16
-
017・青木一男
○委員長(青木一男君) 接収貴金属等の処理に関する法律案(予備審査)を議題として、当局より説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/17
-
018・根本守
○説明員(根本守君) 接収貴金属等の処理に関する法律案の第一条から逐条御説明申し上げます。
第一条は目的でございますが、この法律は、連合国占領軍に接収されておりました貴金属等で、その後連合国占領軍から政府に引き渡されたもの等につきまして、公平適正かつ迅速に返還その他の処理をすることを目的とするということになっております。これは現在大蔵省で保管中でございます連合国占領軍から解除されました貴金属等につきまして、適正な返還その他処理をはかるということを目的にうたったものでございまして、元来これの処理につきましては、現行の私法上の建前から参りますと、現在の私法上解決できない問題ではないのでございますけれども、それで解決いたしますとなりますと相当不合理が生じてくる、実体上非常に不合理が生じてくるわけでございます。また一方非常に処理に長時間を要するというふうなこともございまして、この新しく特別法を設置いたしまして、それで迅速、公平、適正に処理をしようということをうたっておるわけでございます。
第二条は定義でございますが、その一項は貴金属に関する定義でございまして、現在わかっております接収されました品目を全部一応概括的に列挙したわけでございます。この第一項四号に「その他政令で定める物品」とございますが、この中には貴金属とはいわゆる称せられないものが相当含んでおるわけでございます。例をあげて申しますと、ラジウムだとかあるいは水銀というふうなものが相当多量に接収されておるわけでございまして、そういうものもこの法律の中で一応貴金属という定義の中に含ましめておるわけでございます。
第二項は接収の定義でございますが、これは占領中に占領軍の権限ある軍人、軍属が貴金属等を占有しておった者から無償で連合国占領軍の管理に移した、そういう行為を接収と目しておるわけでございます。
それから第三号でございますが、第三号は保管貴金属の定義をいたしておるわけでございますが、これを若干具体的に説明申し上げますと、現在保管をしておる貴金属等の性質別に列挙したわけでございまして、第一号は接収されたそのままの貴金属で、現在返還されまして政府が保管中のものでございます。その中にはカッコ書きにありますように溶解されておるものももちろん含んでおるわけでございます。
それから第二号は、連合国占領軍が接収中に貴金属等を処分いたしまして、売却その他の処分をいたしまして、そのかわりと申すか、代償と申しますか、そういうものを積み立ててあったわけでございますが、それを一般の貴金属の解除と同時に引き渡して参ったもの、すなわち金の地金とこれはドルの預金でございますが、ドルの預金を引き渡して参っておりますが、それを保管貴金属の中に含ましめておるわけでございます。
第三号は、これは連合国占領軍が接収中に接収貴金属等を解除してもらいたい、あるいはそれを産業上の用途に使いたいから引き渡してもらいたいという要求が民間から出された場合に、それに対しまして解除、ないしは引き渡しをいたしておりますが、それに身がわりといたしまして連合国占領軍は代替の金の、または銀の地金を要求しておるわけでございます。で、これは貴金属特別会計からその解除を受けたものは、金または銀の地金を売り渡してもらいまして、それを連合国占領軍に代替地金として提供いたしておるわけでございまして、それを一応そのものの権利があるといたしまして、その提供したものに返還をするという建前から保管貴金属等の中に含ましめておるわけでございます。
第四号はこれは「連合国占領軍の管理下から解除された貴金属等に代るべき貴金属の地金の連合国占領軍に対する引渡に関する法律」によりまして、やはり解除を受けたものが連合国占領軍に代替の金または銀の地金を提供しておるわけでございまして、それも保管貴金属等に含めて返還の対象にしたというわけでございます。
第三条は処理機関、この事務に携わりまする処理機関をきめたわけでございまして、大蔵省におきまして管理をし処理をするということを規定しておるわけでございます。
第四条、第五条は返還請求の手続でございますが、第四条は、この法律以外では接収貴金属等につきましては返還請求がすることができないということで、一般私法上の所有権に基く返還請求権その他の請求権を排除いたしておるわけでございまして、私法の特例の規定になっておるのでございます。そういたしませんと所有権に基く返還請求権というものが相当長期間にわたって存続いたしますし、それにこの法律に基く返還請求権と競合するという形になりますので、その不都合を排除する意味におきましてこういう規定を設置したということになるわけでございます。
第五条は、おのおの接収貴金属等の性質に応じまして返還請求の手続を異にした規定でございますが、まず原則的には被接収者、つまり接収貴金属等を接収された者が、それは所有権者であると占有権者であるとを問いませんが、まず被接収者に返還請求を認めるという原則を第一項で打ち出したわけでございまして、これを五ヵ月以内に制限をして権利を、返還請求権を認めておるわけでございます。
第二項第三項は先ほど定義のところで申し上げましたように、接収貴金属等を連合国占領軍が管理中に解除を受けましたものが代替の地金を提供いたしておりますので、そういうものに対しまして代替のその地金の返還の請求を認めたという規定でございます。
それから第四項でございますが、これは第一項で被接収者に原則的に請求権が認められておるわけでございますが、被接収者と所有者とが異なります場合、被接収者が過怠して返還請求を怠っておるというふうな場合には、所有権者は自分の権利を守るためにおのずから自分で返還請求ができなくてはならないということでございまして、従いまして前の被接収者の返還請求の期限を五カ月に限っておるわけでございますが、第四項で所有者に認めました返還請求は一応それより二ヵ月長く、七カ月にいたしまして、返還請求を認めておるわけでございます。でこれで一項と四項とで被接収者と所有者との返還請求権が競合する場合には一応第一項の原則で被接収者の返還請求権が優先するというふうな組み合せになっておるわけでございます。
それから第五項でございますが、五項は民間から接収されたのでありますけれども、その所有権が国にある、国のものであったという場合には、これは民間の被接収者からは返還請求をさせないで、国自体が所有者として返還請求をするという建前をとっておるのでございまして、これは所有権につきまして民間と国とに争いがある場合が相当あるわけでございまして、その場合に国の権利を守るという必要のためにそういう規定をおいたわけでございます。
それから第六項は所有者が国であります場合には、接収時におきましてその貴金属等を管理していた官署から返還請求を提出せしめるという規定になっております。
第六条は第五項で出して参りました返還請求を審査して、これを権利があるかどうか、それから権利があるとすれば、どういうものが接収されたかということを大蔵大臣が認定をする規定でございます。でこの場合には第二項に書いてございますように、確実な証拠に基かなければ認定をすることができないという原則をうたっておるわけでございまして、さらに第三項ではそういう証拠に基いてどうしても権利者であると認められない、あるいは種類、形状、または個数が認定することができないというふうな場合、それから接収されたものが保管貴金属等の中にないということが明らかな場合には、この請求は認定しないで棄却しなければならないという規定になっておるわけでございます。
第四項は、その大蔵大臣の認定を権利者に通知をする、あるいは返還請求を出した者に通知をするという規定でございます。
第七条は、この認定に対する不服の申し立てでございまして、やはりその申し立てに対しまして大蔵大臣が決定をすることになっておりますが、その不服の申し立ての期間を一カ月に限りまして認めまして、さらに大蔵大臣は審査しこれに対して決定をするという手続を書いてあるわけでございます。
次は第八条、第九条は、返還に関する規定でございますが、第八条は「特定する場合の返還」でございます。特定する場合というのは、接収されたまさにそのものか現在の保管貴金属等の中にあるという場合には、そのものを返還をいたすということでございますが、それが第八条でございまして、第九条は、そういうふうに、まさにそのものが保管貴金属等の中にないという場合の規定でございまして、この場合は第一項から第四項までに従いまして、現在の保管貴金属等の中にあるもので、その変形をしたあるいは代替になったという度合に応じまして保管貴金属等を分割して返還をいたすという規定にしておるわけでございまして、第四号では、最終的に代替あるいは代償であるものを列挙いたしまして、それをおのおの分割して配分をするというふうに規定をしておるわけでございます。
それから第十条でございますが、第十条は第八柔ないし第九条とは関係がない、代替に関する先ほどの定義の二項ないし三項の、「保管貴金属等」の定義の第三号ないし第四号に掲げられました保管貴金属等の請求につきまして、これを分割して返還をするという規定でございます。
それから第十一条は、そういうふうにして返還をいたしました場合に、相手方から返還請求がないもの、あるいは分割して返還をいたしたわけでございますが、それに余剰が出た場合には、これは所有権を国に帰属せしめるという規定でございます。
それから第十二条は、返還をしようとする場合に、相手方に対して通知をしてやるという規定でございます。
それから第十三条は、返還に対する不服の申し立ての規定で、やはり認定に対する不服の申し立てと同じに、一カ月の期間を限りまして不服の申し立てを受け付け、それに対しまして大蔵大臣が審査し、これに対する決定をするという建前になっておるわけでございます。
次は第十四条でございますが、十四条は、返還しようとしましてこれを相手方に通知したわけでございますが、その通知した貴金属等を権利者が受け取りにこないというものにつきまして、これを五年以内に引き取らない場合には国庫に帰属せしめるという規定にしたわけございます。
続きまして第十五条は、接収貴金属等の上に存した権利を、返還されました貴金属等の上に存続せしめるかどうか、つまり私法上の権利を調整する規定でございまして、第一項は、接収されました貴金属等に、たとえば質権だとか留置権、そういうような物権が存在しておりました場合に、返還されました貴金属等に、返還の時からそういう権利が復活するという規定を置いたわけでございます。それから第二項は被接収者が第九条で返還を受けました場合に、被接収者が持っておった物がいろいろの所有者に分れておったというふうな場合があるわけでございますが、そういう場合に、第九条で返還になったものがどういうふうな権利の帰属になるかということになりますと、現在の私法上の手続では調整することができない面がありますので、各おのおのそのときの所有者の共有に属するものとみなすことにしたのでございまして、そしてその持ち分につきましては、おのおのの所有者の所有にかかる接収貴金属等に対応する分、つまり接収された当時の割合で所有権を持つという規定にしたわけでございます。
次は第十六条でございますが、十六条は、一応前条までの規定で返還その他手続をとったわけでございますが、接収貴金属等の中には、そういう権利の価値をそのまま認めますと実体上不合理が生じるというものが出て参るわけでございます。たとえばここの十六条の第一号に掲記されておりますようなもの、「交易営団、社団法人中央物資活用協会又は社団法人金銀運営会若しくは社団法人金銀製品商聯盟が、戦時中、政府が決定した金、銀、白金又はダイヤモンドの回収方針に基き、政府の委託により、取得した貴金属等」というふうなものでございますが、これは戦争中に国が国民運動を展開いたしまして一般国民から、民間から回収したものでございます。こういうものは一応交易営団ないしはそういう回収という手続に従事いたしました機関の所有権が現在残っておるわけでございますが、そういう所有権の発動を認めて交易営団等に返還をいたすということになりますと、相当大きなものをこういう機関が得ることになるわけでございます。翻ってその実体を考えてみますと、当時の回収というのは、回収をした貴金属等をこれを有効な目的のために使う。途中の交易営団等の取扱い機関は単にその中間の取扱い機関であったにすぎなかった。そういう貴金属等の最終的な権利の帰属ないしは価値の帰属というものは国になければならぬものであるというふうな趣旨から、こういうものを一応所有権を認めてこういう機関に返還するということは不当であるという実体上の観点、ないしは法律的な見解にも立ちまして、こういうものは一応一項の規定とあわせて、返還請求の場合に、こういう各号に該当するような貴金属であったかどうかということを認定いたしまして、その認定に応じましてこの各号に該当しておるものでありますと、これは本条第五項の規定に従いまして国の帰属にするというふうにしたわけでございます。
ただいま第一号を御説明申し上げましたが、第二号は、この回収貴金属等を、「金属配給統制株式会社が、交易営団又は社団法人中央物資活用協会から、政府の指示に基き、配給のため」に買い入れたものをあげておるわけでございます。第三号は、「社団法人金銀運営会が、戦時中、旧日本占領地域における通貨価値の維持の目的をもつてした政府の指示に基き、金製品を輸出するため、日本銀行から取得した金の地金」、やはりこれは回収貴金属ではございませんけれども、同じような法的性質を持っておるということで国庫帰属にすることにしたわけでございます。
第四号は「軍需品の製造に従事していた者が、戦時中、軍需品を製造又は修理するため、その材料として旧陸軍省、海軍省又は軍需省から取得した書金属等」でございまして、旧軍が、軍需品を製造させるために、官給資材を民間の軍需会社に支給いたしまして、その完成品を買い入れるというふうなことを行なっておったわけでございますが、これも現在の所有権はこういう民間の軍需会社であったものにあるわけでございますけれども、実体上の価値の帰属は国にあるという見解のもとに、これも国庫帰属にすることにしたわけでございます。なおこの規定で、所有権の取得が終戦後に行われたものがあるようでございますけれども、それもこの規定に含ましめる意味でございます。
それから第十七条でございますが、第十七条は、今の十六条の規定で国庫帰属にさせる貴金属を列挙して、その手続を規定しておりますが、そういう交易営団等のような取扱い機関はそういう回収貴金属等の取扱いにつきまして相当大きな経費を負担しておるわけでございますから、その経費はこの際交付しなければならないと考えられますので、その交付金を支給する規定を置いたわけでございます。で、考え方といたしましてはその当時の回収当時の買入れ代金あるいは手数料、あるいは加工いたしておりましたら加工賃というものを支給いたしまして、さらにそれに講和条約発効の日からこの交付金を支給いたすまでの期間の年五分の金利を加算して支給をするという規定になっておるわけでございます。
十八条、十九条、二十条、二十一条は、接収貴金属等処理審議会に関する規定でございますが、本法案によりますと相当重大な事項が大蔵大臣の権限のもとに行われるということになるわけでございますが、従いまして第六条の場合のその権利者の認定という場合、あるいはそれに対する不服の申し立てに対する決定、また返還に対する不服の申し立てに対する決定、そういう重要事項を接収貴金属等処理審議会の議に付しまして、その議決に基きまして大蔵大臣が以上のよう九事項を処理をするという規定にしたわけでございます。
二十条は、審議会の構成の規定でございまして、委員といたしましては次に掲げるような委員十一名で組織することになっております。
それから二十一条は議事の運営に関する規定でございます。事項がきわめて多岐にわたりまして複雑でございますので、特に部会を設置し、部会の議決をもって審議会の議決にかえることができるという規定を置いたわけでございます。
次の二十二条は事務の委託でございまして、これは大蔵大臣が行います事務の一部を日本銀行に委託することができることにいたしまして、事務処理の便宜をはかるわけでございます。
二十三条は罰則でございます。虚偽の申し立てをした者に対しまして一年以下の懲役または十万円以下の罰金ということでございますが、ただこの場合には大部分が実体的には刑法の詐欺罪の規定が適用になるものと考えられるのでございまして、従いまして本法におきます罰則は詐欺罪の適用にならない、悪意のないものということになりますので、一年以下の懲役、または十万円以下の罰金ということで比較的軽い罰になっておるわけでございます。
次は附則でございますが、附則の第三項は、これは代替の地金を提供したものと、その代替の、地金の代替であった接収貴金属、それとが現在保管されております貴金属等の中で二重に管理をされておるというものにつきましては、その代替を出したものは返還の対象にすべきではなくて、これは貴金属特別会計に返すべきものであるということで、この法律施行の際にはそういう二重に保管しておるものは貴金属特別会計に帰属せしめることにしたわけでございます。
それから第四項は国有財産法の規定を改正いたしまして、この法律の施行したあとで国に返還される、あるいは国に帰属をいたしました貴金属等で一般会計に帰属するものは国有財産といたしまして、国有財産の各条の規定を適用することにしたのでございます。主として目的といたしましては、この経理内容を明らかにしまして、国有財産として増減その他国会に報告いたすことを主眼といたした規定でございます。この際に各省各庁で行政事務、あるいは事業に供しますものにつきましては、特に国有財産として整理する必要がないということで、その場合には国有財産としないという規定になったわけでございます。
大体以上をもちまして逐条説明を終りたいと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/18
-
019・青木一男
○委員長(青木一男君) 前に戻って、補助金関係二法案について質疑を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/19
-
020・小林政夫
○小林政夫君 まだ勉強してないので、はなはだ恐縮ですが、前の補助金等の法律ですね。あれで、今度の実体は初め政府が出そうしておったものと変ってない。ただ期間を六月三十日を来年の三月三十一日に延ばしたことのようにちょっと読んだのですが、そうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/20
-
021・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) お答え申し上げますが、御承知のように五月三十一日までは暫定予算に伴いましてお認めを願っておったわけでございます。前回六月一日から来年の三月三十一日までお延ばし願いたい、こういうことをお願いいたしておったのでありますが、いろいろな関係で六月一ぱいだけまあ認めるということに衆議院の特別委員会で御決定になりまして議員立法されて、参議院の方でもお認めを願ったわけであります。その結果政府が提出いたしておりました分のうち、この六月にかかる分がいわば無意義な規定になって参りまして、ほうっておきますと重複したような規定になって参りましたので、その分を修正させていただきまして、今回は六月一日から来年の三月三十一日まで延長することをお認め願いたい、こういう法律に修正をいたして提出した、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/21
-
022・小林政夫
○小林政夫君 だから実体的には初め、当初から政府が意図しておった補助金の減額あるいは停止、このものと変りはない……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/22
-
023・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) この修正の分につきましては変りはございません。ただ別途に一案ございまして、それは防火地帯と国立公園法と二つあったもののうち、防火地帯を落しまして、国立公園だけをお願いしておる。これは民自両党の予算修正の結果、防火地帯造成費補助が復活をいたしましたものでありますから、この方の法律についての特例をお願いいたしておりました分はその必要がなくなりました。と申しますよりはむしろ予算にあわせまして、これは存置すべきものということに相なりましたので、その分を削除いたしまして、国立公園整備費の補助の特例だけを追加してお願いしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/23
-
024・小林政夫
○小林政夫君 そうすると、これは念のために……。今のお話は、自民の予算の折衝で復活したいろいろな補助金関係で、当初から政府がこの補助金は減額あるいは停止しようと思っておったものと違う、事志と違うものは、今の耐火建築の関係だけであると、こう了承していいわけですか。
それからもう一つ、多少この法律に抵触するきらいがあるので、こう名前をカムフラージュして、同じ趣旨のものを出すというようなことはないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/24
-
025・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) これははっきり申し上げますが、法律の関係を要するものにつきましては防火地帯建築費だけが修正になっておるのでありまして、そのほかのものは修正にはならなかったのであります。しかしながら法律を要しないいわゆる予算補助につきましては、相当修正になりまして、政府の補助金の整理の意図が、この予算の修正の結果影響を受けております。これにつきましては別途資料といたしましてはっきり提出をいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/25
-
026・青木一男
○委員長(青木一男君) お諮りいたします。接収貴金属の法案につきましては、だいぶ内容も複雑でございますから、資料の要求でもおありの方はこの際御要求いただきまして、質疑はこの次にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/26
-
027・藤野繁雄
○藤野繁雄君 この連合国占領軍に接収せられた貴金属等でその後占領軍から政府に引き渡されたものの種類別、数量、それから引き渡された当時の価格、それから現在の価格というような一覧表をお願いしたいと思います。それから国有になるものと民間に渡されるものと、あるいは国有になるところのものは一般会計に入るもの、あるいは特別会計に入るものというようなことに区別して、その資料も出していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/27
-
028・青木一男
○委員長(青木一男君) 他に資料の要求はございませんか……。
では本日はこれにて散会いたします。
午前十一時三十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214629X02119550623/28
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。