1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月二十六日(火曜日)
午前十時二十三分開会
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出席者は左の通り。
委員長 新谷寅三郎君
理事
長島 銀藏君
宮田 重文君
木下 源吾君
松原 一彦君
委員
井上 知治君
植竹 春彦君
木村篤太郎君
中川 以良君
中山 壽彦君
高瀬荘太郎君
豊田 雅孝君
野本 品吉君
加瀬 完君
菊川 孝夫君
千葉 信君
田畑 金光君
松浦 清一君
木島 虎藏君
堀 眞琴君
衆議院議員
高橋 等君
国務大臣
内閣総理大臣 鳩山 一郎君
国 務 大 臣 大久保留次郎君
国 務 大 臣 杉原 荒太君
政府委員
内閣官房副長官 松本 瀧藏君
法制局長官 林 修三君
法制局次長 高辻 正巳君
総理府恩給局長 三橋 則雄君
防衛庁次長 楢原 恵吉君
防衛庁防衛局長 林 一夫君
防衛庁人事局長 加藤 陽三君
防衛庁経理局長 石原 周夫君
防衛庁装備局長 久保 亀夫君
大蔵省主計局次
長 正示啓次郎君
事務局側
常任委員会専門
員 杉田正三郎君
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本日の会議に付した案件
○恩給法の一部を改正する法律の一部
を改正する法律案(衆議院提出)
○国家公務員に対する寒冷地手当及び
石炭手当の支給に関する法律の一部
を一改正する法律案(千葉信君外五
十二名発議)
○自衛隊法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○防衛庁設置法の一部々改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
○防衛庁職員給与法の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
○国家公務員等退職手当暫定措置法の
一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
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001・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(衆第二八号)を議題にいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/1
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002・田畑金光
○田畑金光君 この間大体一般的に問題については御質問をいたしてありますので、本日その他の問題について若干質問を続けたいと思います。
その第一は加算の問題ですが、すでに野本委員からも質問がなされましたので、重複するかもしれませんが、私欠席していた関係上、いま一度お尋ねしておきたいと思います。民団の修正案によりまして、本年度二十四億六千万の増額になったわけですが、うち七千万が加算調査事務費として計上されているわけであります。高橋衆議院議員の御説明は、たしか加算については調査をするということで、将来これを取り上げるかどうかということはまだ明確でないというような趣旨の御答弁であったかと思いまするが、これに対しまして、政府としてはどういう御方針でおありであるか、ことに加算を実施したとすれば、これによって人員の増でありますか、あるいは予算の増減についてどういう計数が出てくるか、ことに数字的だ面を中心として御説明を願いたいと思います。提案者と大久保国務大臣にも政府の方針として私は承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/2
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003・高橋等
○衆議院議員(高橋等君) ただいまの御質問の中で、私は先般野本委員にお答えをしました内容につきまして、幾分食い違いがあるのじゃないかと思える節もありますから、もう一度その点を明らかにさしておいていただきたいと思います。この加算の問題につきましては、お説のように調査費を組みまして、人員とか、あるいはいろいろな実態を調査をいたしたいということになっておりますが、それは現在どういう方法でこの問題を解決するかというようなことについては、国の財政上の問題もありまするので、見通しがつかないのでございますが、ただ現在もうすでに、戦地にたとえば三年なり、四年なりおって早く帰ってきて、恩給の要求をして裁定をせられた方々には恩給が加算によってつくことに実はなっております。もちろんこれは弱年停止で現在渡ってはおりませんが、もう恩給権が発生いたしております。ところが三年、四年おられて戻られた方よりも、まだまだ長く戦地におって帰ってきたところが、恩給を請求いたしましても、そのときはもうストップになっておった。また現在の法におきましては加算を認めませんわけですから、そうしたかえって長くおった人が何ら恩給権が発生もしないというような片手落ちが、実は制度の上に現われて参ったのであります。そこで何らかの形でこれば解決を要する問題であると考えて調査をいたすということで、ただどういう方法によってどうするかということは、調査の結果と国の財政の問題とにらみ合せてやらねばならないことで、その点は未確定でございます。何らかの措置をとらなければならないじゃないか、その不公平が出てくるという点は、この前御説明を申し上げておいたつもりでいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/3
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004・大久保留次郎
○国務大臣(大久保留次郎君) ただいま提案者の高橋さんからお話がありましたが、まだ確実な資料を恩給局は握っておりません。実を申せば、あの当時軍事に関する書類をだいぶ焼いたものがあります。焼いてしまって、これを整理なり探すのに一畳なのです。そういう事実がありますために、今日まで恩給局において正確な資料を持っておりません。今回その調査の資金、予算ができましたので、これ々機会として各県の世話課を通じて、各市町村に頼んで具体的に調査する以外に方法はないと思っております。従って何人という人の数も正確なまだ持ち合せはございません。この調査を待って、ほかとの権衡を考えて適当な処理をいたしたい、こういう希望を持っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/4
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005・田畑金光
○田畑金光君 あらためて大久保国務大臣にお尋ねいたしますが、まあ調査の結果を待って処理されるという御方針は了解できますけれども、加算制度のまあ根本というものが何であるか、私もよくはわかりませんが、要するに、戦地等の勤務に対しまして、その労苦に対する加算という趣旨だと思いますが、加算制度そのもののよって来たる趣旨というものを政府はあくまでも尊重なさって、今後制度の上に、あるいは予算化の上に、恩給制度の改正の上にこれを反映なさろうとする御趣旨であるのか、繰り返して申し上げますと、加算制度の根本趣旨というものを認められて、今後そのような他との均衡上の是正措置をはかられる御趣旨であるのか、この点あらためて政府の意向を確かめておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/5
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006・大久保留次郎
○国務大臣(大久保留次郎君) 先ほど申しました通り、加算制度につきましても、具体的の資料がありませんので、今はっきりした意見をきめることは困難でありますけれども、加算そのものについても、一月を一月加算せよという議論もあります。あるいは一月を二月に加算しろという議論もありまして、加算の程度についてもまだ議論が固まっておりません。しかし今日の大体の態勢は一月を一月加算せよという空気が強いように思います。それからなおこれを予算化するか、どういう工合に救済制度を講ずるかということは、先に申しました通り、数の上にも関係します。予算の上にも関係を持つのでありますからして、今直ちにできませんが、調査しました結果、そういう点も十分考えに入れまして、でこぼこがありそうでありましたならば、そういう点をよくしんしゃくの上に何とか救済の道を考えたいという考えだけは持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/6
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007・田畑金光
○田畑金光君 次に私は提案者の高橋衆議院議員にお尋ねいたしますが、尉官以下に四号一斉に引き上げになっていることなんであります。ところが軍曹と伍長の場合は、他の文官との均衡上から三号にとどめたというわけでありますが、私たちあまり何号俸ということはよくわかりませんので、文官の軍曹、伍長に当るクラス、かりに伍長、軍曹をも四号俸引き上げたときの数字というものはどの程度の食い違いになるのか、その辺数字の上で一つ御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/7
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008・高橋等
○衆議院議員(高橋等君) ちょうど詳しい資料を持ち合せませんので、恩給局長から御説明を願うことにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/8
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009・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) 伍長のところを四号俸上げました場合におきましては、九万一千八百円となり、通し号俸で申しますと、二十二号俸になるのであります。それから軍曹のところで申しまするというと、四号俸上げました場合におきましては、九万四千八百円となり、通し号俸では二十三号俸ということになるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/9
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010・田畑金光
○田畑金光君 私のお尋ねしているのは、まあ四号俸引き上げて、それが軍曹は九万四千八百円、伍長は九万一千八百円になるというその数字はよくわかりますが、そういうように四号引き上げた場合に、これと同じレベルの文官恩給との均衡々失する、こういうわけで軍曹、伍長はそれぞれ三号俸引き上げで押えたわけですね。で、私の知りたいのは軍曹、伍長のクラスの文官の額はどのようになっているのか、それを数字でご説明を願いたいと、こういうご質問なわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/10
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011・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) 軍曹にとって申しまするというと、従来、すなわち軍人恩給廃止前におきまして、恩給年額計算の基礎になっておりました基礎俸給は七百六十五円でございます。文官で七百六十五円の恩給年額計算の基礎俸給になっておりました人は、今日恩給が増額されまして、その増額された恩給は幾らの仮定俸給が基礎になって計質されているか、こう考えてみますると、九万四千八百円というのが恩給年額計算の基礎俸給になっているのでございます。従って同じく七百六十円が恩給年額計算の基礎俸給になっておる軍人と文官とを同じように取り扱って増額するということになりますれば、文官におきましても軍人におきましても、九万四千八百円を恩給年額計算の基礎俸給としてベース・アップしなければならぬ、こういう考え方になってくるのではないかと思っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/11
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012・田畑金光
○田畑金光君 それから通算の問題ですが、これは高橋衆議院議員にお尋ねしたいんですが、一年以上七年未満も今回は通算に入れられたわけですね。これを一年未満とか、あるいは月単位をどういうわけで取り上げられなかったのか、ことにこの点は通産の問題に関連して、一年未満とかいうような問題は、これは召集軍人の問題に非常に多いんじゃないかと思うのですが、これはどういうわけで取り上げられなかったのか、一つその理由を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/12
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013・高橋等
○衆議院議員(高橋等君) この前昭和二十八年に、引き続き七年という制度を作ったわけですが、それも実は兵籍簿その他が不完全なものですから、実際に法を作りましても、その法の実行は困難であるということで、一応七年くらい以上ならば調査もできるだろうという政府の説明であれを通したわけです。ところがどう考えても不合理であります。その後いろいろ調査をいたしました結果、まだまだこの年限を下げてもできる。そこで一年未満の、要するに一カ月程度のものを通算で加えて行くことはどうかということも実は研究をいたしたのでありますが、何分にも非常に小さな出入り々集計いたすことは、今の兵籍簿の関係から行きますと、なかなか困難だということは、実は恩給局の方でもそうした意見を持っておりましたし、それから大体戦地へ行っておる人はそんな短かい期間の端数はもちろんございますが、一年以上にわたる人も相当多いから、まあ一年ぐらいのところにしておけば、まああまり極端な不合理も出ないのじゃないだろうかということでやりました。理想から申しますれば、これはもう一年以上なんて言わないで、それより未満のものも処理するのが当然だと思いますが、これは事務の整理が、七年から今一年まで切り詰めましたが、今後兵籍簿その他の状況によりましては、これは法の改正を将来は要する問題である、こう考えておりますが、現在はこの程度が適当なところじゃないか、こういうつもりで立法したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/13
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014・田畑金光
○田畑金光君 そういたしますと、今回一年以上七年未満という法改正をなされたのは、要するに兵籍名簿の整理の状況と、今の調査能力の段階ではこの程度が適当であろうという考え方のもとに、当面一年以上七年未満の通算ということを考えた、しかし今後兵籍名簿が整理されて、また調査についてもだんだん整理され暁には、さらにこの通算については一年未満等についても検討をして行きたい、こういう御趣旨と解釈してよろしいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/14
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015・高橋等
○衆議院議員(高橋等君) その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/15
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016・田畑金光
○田畑金光君 それから恩給局長にお尋ねしたいわけですが、この法律百五十五号の第四条の問題であります。いわゆる不健康業務に従事する者の加算の問題でありますが、たとえば危険な作業、健康上有害な作業に当られている公務員あるいは公社職員等について特殊の加算制度が設けられて、それがこの法律百五十五号によって改正になったわけですね。その後の状況を見ますと、たとえば一年ごとにこれを延長するとか、こういうような形でまあ今までの継続を認めておるような方針で来ておるようですが、これについてはどういうふうに将来処理されようとする御方針でありますか、政府の考え方を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/16
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017・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) 私は、今お話しの昭和二十八年法律第百五十五号が制定されましたその当時の方針といたしまして、今お話しのございましたような加算の制度につきましてはやめると、こういうような方針に伺っておったわけでございまして、その後もその方針は変らないように、政府の方針としては変らないように承知いたしております。人事院から勧告がありました新しい退職年金制度におきましても、加算の点につきましては新しく認めるというようなことにはなっていなかったように承知いたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/17
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018・田畑金光
○田畑金光君 それじゃ時間がないので、私こまかいことはもう省きまして、一つ大久保国務大臣が見えておりますから、先般当内閣委員会でも問題になりまして、大久保国務大臣は善処を約束されたわけであります。それは御承知のように、先般恩給局の職員組合がいろいろな問題で当局に対し要求を提出し、それが争議のような形態に発展したことば御記憶のことと思います。当時人事院に対しまして、職員組合から国家公務員法の二十八条でありましたかに基く非常勤職員の勤務条件に関する行政措置の要求が提案になっていたわけであります。それに対しまして、七月の十八日付で判定が下されております。これは簡単に申し上げますと、人事院においては近く人事院規則を改めて、非常勤職員に対しましても労働基準法に定める有給休暇を与えるように改正する方針のようであります。そうしてまた恩給局の職員組合の要請に対しましては、次のような判定を下しておるわけであります。これは簡単に内容だけを申し上げますると、要するに、今後は採用等の場合は辞令を交付して雇用条件を明らかにするとともに、解雇のような場合はなるべく理由を明示すること、また現在の給与日額を若干増額すること、それから昇給を行うこと、有給休暇のほか選挙の投票などの場合に休暇を認めること、解雇の基準、業務管理の方法等の運用に留意すること、組合活動については正常な労使関係の樹立に努めること、なお臨時職員のうち恒常的な業務のため相当期間継続して雇用の必要がある者は常勤に考慮を払うこと、こういうような趣旨の判定が下されているわけであります。今回のこの恩給法の一部改正を見ましても、今後の恩給業務がますます繁忙になって参りますので、この法改正の中にも、総理府恩給局の旧軍人恩給事務処理要員二十名増員のため、行政機関職員定員法の一部を改正すること等も改正の中に含まれておるわけであります。従いまして、今後膨大化していく恩給事務を考えましたときに、恩給局の今日の職員の構成が一千名が臨時職員である、わずか経常的雇用関係にある者が二百名とちょっとであるという、こういう不均衡きわまる制度はすみやかに改めてもらわなければなならいと考えます。同時にまた今後の業務の能率を促進するためにも、給与の体系において、内容において、あるいは労働条件等において、今回人事院の判定されましたようなもろもろの改善措置というものを当局としてはとってもらわねばならぬと私は考えております。一つこの点に関しましては、大久保国務大臣は人事院の非常勤職員に対する今回の判定の趣旨を尊重なさって、すみやかに善後措置を施す御用意があるがどうか、御意思があるがどうか、この際承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/18
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019・大久保留次郎
○国務大臣(大久保留次郎君) ただいま恩給局の非常勤職員から人事院に向っての提訴に対します判決の問題についてお話がありました。十日ばかり前に判決を受領し、私もその写しを拝見いたしました。ただいまお読み上げになりました数項目についての判定が下ったのでありますから、これは当然私どもは尊い判決として、この線に沿うて善処しなければならぬ義務があると存じております。これはもう謹んでこの線に沿うて取り扱いを慎重にするつもりであります。なお非常勤職員の処遇については各方面で今問題になっております。私は単に人事院の裁定ばかりでなく、さらにできることはもう少し改善しなくちゃならないのじゃなかろうかという考えを持っておりまして、たとえばその一例として、従来は期末手当というのは一カ年以上勤続した者に支給することになっておったものを、今度から改めて半年以上勤務した者には期末手当をやろうじゃないかということにいたしております。さらにもう一つ申し上げておきたいことは、従来勤務手当は二十日間以内休んだ者に支給しておったのを、十日間延長して三十日以上休まなければ勤勉手当を支給するというようなことにもいたしました関係で、決してこの人事院だけでなく、さらに進んでやるべきものはやりたいという考えをもって、以上のような点々改革しておるのです。この点をご了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/19
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020・田畑金光
○田畑金光君 ただいまの大臣の御答弁は私了承いたしますので、ただいまの大臣の答弁のように、人事院の判定をよく御尊重なさって善処されまするとともに、今のお話にありましたように、公務員制度そのものに関連する問題でありまするから、政府が公務員制度全般に関する今後の適切な措置をとられることを強く要望いたしまして私の質問を終ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/20
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021・長島銀藏
○長島銀藏君 大久保大臣がここにいらっしゃいまするので、一、二の点簡単に質問を試みたいと思う次第であります。
私はまあ御承知のように遺族会を育てて来た人間でございまするが、現在私どもと同じ立場にある敗戦国でありましたドイツの問題でございますが、西ドイツにおきましては、戦争犠牲者の国家処遇のために国費の三分の一、つまり三三%というものを戦争犠牲者のために費しておるわけでございます。現在ドイツは御承知のように人口が日本の半分で約四千五百万くらい、それで経済力は日本の四倍もございまするので、これを日本の人口に引き延した場合には大体八倍の経済力を持っておるように聞いております。従いまして、日本の国費を一億と見た場合、戦争犠牲者に対する国家処遇の額が、日本の人口に引き延ばして考えてみまするというと、およその国費は大体八億と見ることが計算上できるわけでありますが、その三三%という膨大なものをもって戦争犠牲者に対する処遇の費用に充てておるということを聞いておるわけでありますが、わが国はそれから比べますと非常に経済力も低うございますから、直ちにドイツのまねをしてというわけには参りませんけれども、将来におきまして、戦争犠牲者全体に対しまする処遇をどんなふうにお考えになっていらっしゃいますか、承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/21
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022・大久保留次郎
○国務大臣(大久保留次郎君) 戦争犠牲者に対する処遇る問題についてのお話がございました。大体今回の恩給法の改正によりまして、遺族及び傷痍軍人あるいは残存の生きておられる軍人に対する恩給は、二段跳びと言いますか、号俸の引き上げと同時にベースのアップをしたというので、大体においてひとまずこの程度にしております。あるいは外国の例、あるいはまた日本国の情勢の変化に応じてさらに考えてみたい、こう思っております。ただ残っている問題は、さきも質問に出ました加算の問題、これは実は何人でありますかということは先ほども答弁いたしましたのでありますが、不幸にして書類が焼けてしまったので完全な数を得ることができない。従って計算の基礎がありませんので、どういう工合に措置するかという具体案がまだできません。幸い今回調査費として七千万円いただきましたから、これも使って調査し直して、もし完全なものができましたならば、この統計に基いてこの方面の調査をやってみたい。また必要があったならば、この方面に力を注いで行きたい、こういう考えを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/22
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023・長島銀藏
○長島銀藏君 ただいまの大久保大臣の御意見は、調査をして遺漏のないように処遇の改善をなさろうというお考えのように承わりまして、私は非常にけっこうだと考えておるわけでありますが、もう一つ伺いたいと思いまするのは、他の同僚議員からもしばしば論議された点でありまするが、わが国の恩給法くらい読みにくい恩給法はございません、ですからこれをなるべく近い、時間的になるべく早急に、もっとわかりやすい恩給法に整理をしていただき、すっきりした形にしていただきたいと思いますが、御意見はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/23
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024・大久保留次郎
○国務大臣(大久保留次郎君) ただいまのお話は、各方面から非難を受け、私自身が実際わかりにくくて閉口している一人でありまして、まことに同感の次第でございます。今回皆さん御承知の公務員制度調査会において恩給問題が論議されております。そとのき問題の一つになりましたのは、軍人の恩給と文官の恩給を分けたらどうか、こういうお話が起っております。軍人の恩給はもうこれが一番頂上です。これは年々減るばかり、減少するだけです。これに比して文官の恩給は年々ふえるのだから、これは性格も違うばかりでなく、減るのとふえるのは違うのだから、これはむしろ区分してやったらいいじゃないかという議論も相当強く出ております。こういう機会をとらえて、この法文をもう少しわかりやすくだれが見てもわかるようにするのは、ことに必要なことではないかと思っております。まことに御同感です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/24
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025・長島銀藏
○長島銀藏君 大臣から御意見を承わりまして了承いたしました。どうか一つ条文その他もすっきりしたものに御整理を願うということを要望いたしまして私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/25
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026・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/26
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027・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/27
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028・木下源吾
○木下源吾君 この恩給法でだいぶ気ばって金を出すという、来年も再来年もだいぶ出るようになります。一般国民の方では日本が恩給亡国になるなんという、けさもまたそんなようなことがちょっと新聞に出ておる、そういう点についてはどういうお考えを持っておりますか、提案者に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/28
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029・高橋等
○衆議院議員(高橋等君) 私も各方面で恩給費が増高することによって、恩給亡国になるというような心配の声を十分承知いたしておりまするが、私自身はその心配は杞憂であるということを考えておるのであります。と申しますのは、先ほど来も詳しくこの点を御説明をいたしてきたのでございますが、もう一度繰り返してみますと、昭和三十年度、今年度の文官恩給は百六十三億であります。そしてこの法律改正によりまする、いわゆる軍人恩給は六百六十九億、合計いたしまして今年度分は八百三十二億円ということになっております。来年度はそんならどうなるかと言いますと、来年度は文官恩給の自然増加が十八億であります。結局文官恩給全体いたしましては百八十一億、軍人恩給の場合は今年度でいわゆる一時金の支払いが全部終ります関係上、百二十億円というものがこの法律改正によって増額をせられますが、なお軍人恩給の方は七百二億円の増であります。従いまして、この軍人と文官とを加えた合計は八百八十三億円でございます。三十一年度。そうしてそのうち約二十数億円というものは、これはいわゆる失権として毎年減じて参ってきております。そういう関係で大体八百六十億程度、あるいは八百五十五億程度が来年度の恩給になる。従いまして、今年度と来年度とを比較いたしますと、恩給費の増加は大体三十億程度の増加になるだろうと考えております。そかれらその次の三十二年度は、これはもうこの法律が完全実施をされるときで、まずそのときの状況はどうかとみますと、文官恩給におきまして百九十九億、これもやはり十八億増で百九十九億、軍人恩給におきましてはベース・アップによりまする完全実施分が百六十億になります。そこで実際の合計をみますと、文官と軍人との合計は大体九百億程度である、結局三十一年度と二年度との比較におきましても、大体三十億程度、あるいは三十五億程度の増加になるものと考えられます。そこでそれから先の問題でありますが、御承知のように、この今後制度をどんどん増額の方向へ持って参りますと、今おっしゃるように恩給費が非常にふえてくるということも考えられますが、軍人恩給につきましては、少なくともこれからだんだんと減って参る、毎年二十億ないし三十億、おそらく三十億程度のものが失権によって減額になるものと考えられます。文官恩給につきましては、これはまあ十八億ぐらいふえております。また決議によりまする昭和二十三年以前の文官との調整にある程度の増額を見込むことは、これはやむを得ない必要だと考えておりますが、一面現在われわれ考えておりまするのは、四十五歳で恩給がつくというようなことは最近の機会におきまして、これはやはり恩給の性格から考えて、五歳ぐらい年齢を引き上げるという措置をぜひ法律改正で実現をするとともに、いわゆる所得の多い、高額所得者に対しましても、もう少し恩給を受け取ることを制限する、所得の程度を引き下げて行きます。こうした制度的の改正を加えることによって文官恩給の増加の抑制を一面においてはいたす、これは近く私はぜひ政府の方でやってもらわなければならぬし、またやれなければ議員立法ででもこれはやらにゃならぬと考えております。そういう調子で、文官恩給におきましては増加を防ぐという方法を一面取り、一面軍人恩給におきましては減額の一途を今後たどってくる、おそらく今後十年もたちましたら、ほとんど軍人恩給として受給をされます者は、いわゆる未亡人とその他ごく若干の人々というようなことに相なってくるのではないかと私は推測いたすのであります。従って御指摘の、よく恩給亡国という心配な声は聞きますが、この恩給亡国という心配はよくわかりますが、しかし私はそれは杞憂であるというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/29
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030・木下源吾
○木下源吾君 この軍人恩給と銘打っておりますが、復活だと、こう言うのです。軍人恩給というのをどうして復活せにゃならないのですか、恩給としてですね。しかもそれがときどきアンバランスを直すとか、何とかいう、大体この軍人恩給の受給者の対象で、生活に困窮している、こういうものと、それからそういう恩給をもらわぬでも生計を立てて行かれると、こういうものを御調査になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/30
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031・高橋等
○衆議院議員(高橋等君) 御趣旨がよくわからないのだが、軍人恩給というものをなぜ恩給の形で復活するかということを先におっしゃって、その最後に困窮者の調査をしているかどうか、どちらが重点でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/31
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032・木下源吾
○木下源吾君 それは関連しているのです。つまり私はこの恩給という体系の中に軍人恩給というものを復活することがどうかと、こう考えております。社会保障の面で行けばですね、同時に困窮という、そういうことが中心になってくる、老齢だとか……。ところが恩給ということになれば、生計能力が十分にあり、資産があっても、これは恩給を取るということになるわけです。そういうことを私は考えているものですから、まずそれをお伺いしてみて、社会保障の制度としての方向へ持って行くのがいいか、正しいのか、なおしかし古い恩給を復活してやるのがいいか、こういうことを伺っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/32
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033・高橋等
○衆議院議員(高橋等君) その問題につきましては、もうこの委員会でも非常に詳しく実は質疑を行なって御答弁を私は申し上げたと思うのです。ですから、かいつまんで一つお話をさしていただきたいのですが、との公務員対国家の関係としてものをわれわれは扱っておるのでございます。従って昭和二十八年の恩給の復活というものはそういう見地から実はいたしております。また遺族団体、あるいは傷痍軍人、あるいは職を失われた旧軍人の方方の要求も、これは社会保障でなしに、やはり恩給の形でやってもらいたいという要望がある、これは絶対的であったわけです。そこでそうした要望も考え、われわれも公務員対国家の関係としてはこれは恩給とすべきが適当であるし、現在文官恩給というものも残っておるのだから、だからこれは恩給の制度でやるのが当然だということで、実は恩給制度というものにしたわけなんです。しかしこの恩給制度にするときに、それなら一がいにすぐ恩給ということをしたかといえば、そうでなしに、あなたがおっしゃいました、今御質問、御懸念になっておられる生活程度というようなことを考えた上、何らかの施策をした方がいいのじゃないかということも実はいろいろと研究をして、いろいろな案を実は持ったのでございますが、いろいろ詮じ詰めてみました結果、やはりこれは恩給の制度でやるがよろしいという結論でやったようなわけなんであります。それで、この恩給と言いますと、御承知のようにもう生活程度にかかわらず、ずっとお話のように始まるのですから、取り残されたこの恩給では生活のできない人々が実は出て参りますが、一般的にそうした方々については、いわゆる社会保障的なやり方ももちろん並行してやっていかなければならぬ問題もあるかと思いますが、特にこの戦争が原因で貧困になる、たとえば一人子なり、二人子を殺しまして、もう身寄りのない年寄りになってだんだん年をとってくる、こうしたような方々に対しては、なお将来何らかの国家財政とにらみ合わした考慮が必要であることは、これは私は痛切に感じております。大体そういうことで御了承願いたいと思うのです。なお困窮状況がどうなっているか、当時の状況についてちょっと記憶にないので恐縮でございますが、ちょっと今資料の持ち合せがないのでお許しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/33
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034・木下源吾
○木下源吾君 実はその資料のないやつが一番重要だと思うのです。今公務員と国家という関係を申しておりますが、今の公務員の何では軍人は含まれない、今の法律では……。公務員というものの中には軍人が入らないのですね。そういう点をも私は考慮しておるのです。ただ、今公務員と軍人と区別する、それで常にこの公務員と軍人を区別することは何か非常に恩給の面において対立があるように思うのです。そういうように考えられることは、せっかく給与をしてやってあまりいい結果を及ぼさぬのじゃないか。現に一方が上るといりと一方の恩給が不均衡になる、公務員恩給が不均衡になるということ、こういうような声が出てくるわけであります。やはりこれは元から一本にする必要がある。途中から継ぎ足してこういうことをやりますために非常にあっちこっちに不平がある、かように考えるのです。そういう意味で、できるなら私は社会保障、いわゆるそういう面でやるべきだ、合理的にこれは解決する時期が私は当然くるだろうと思っておりますために、それでお伺いしておるわけです。だから、どうも材料がなければ、それはしようがありませんが、それが一番大切なんですな。そこであくまでもやはり公務員として、現在の公務員と同じように御指導して行かれる考えを持っておられるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/34
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035・高橋等
○衆議院議員(高橋等君) この本法の改正は提案理由で申し上げましたように、昭和二十八年の法律改正を経まして、なお当時の国家財政の状況から見て、いわゆる普通の文官の方と比べて給与が低いものですから、それと合わすという考え方でやってきたのです。それで増額の法律なんですが、その根本の恩給をどうするかという、二十八年当時の議論に帰ってくるが、これから将来の問題があるかと思いますが、私は公務員という立場におきましては、特殊の制度を考えて行くということはこれは当然だろうと思う。どこの国でも公務員に対し、こうした性格のものに対して恩給的なものを出していないところはないのですから、一応そうした考え方でいく、こういうことは考えております。ただ、今後国民年金その他の制度が国の政策の上でできて、財政上可能になってきた場合に、その調和は考えるといたしましても、この恩給制度というものについては、私はこれは一般国民対国家の関係でなしに、国家対公務員の関係として、これは残さるべきものであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/35
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036・木下源吾
○木下源吾君 まあ古いことを言えばきりがありませんが、当時は国民皆兵なんで、三大義務に徴兵の義務がある。国民皆兵なんです。そうすると、国民全体の義務として働いたわけなんです。ところが今日になってみれば、一たん軍隊に召集されたもの、軍人としてやっておったものと国民とは区別するような、今のような状態、これは法律にあります。私はやはり当時の兵役の義務というようなものを、これは国民全体のものだ、こういうように考えておるわけです。従って軍人としてとるということ、特殊にとる、これは要求は別だけれども、やらなければならないのだとということも、特別なものとして考えることは私は当を得ておるのかどうか、こういう問題です。それからもう一つは、あまり時間がないようですから何ですが、あなたも簡単に答弁して下さい。当時の軍人、それは御承知の通り陛下の軍人ですよ、そうでしょう。それで当時の公務員、官吏、これも陛下の官吏である。ところが今日においてはこれは全く事情が違う。民主主義の憲法下において、これは国民の公務員である。ところが軍人は今民主主義下においてはないのです。明らかにありません。そこでこの点を十分に私は考慮する必要があるのではないか、民主主義下において陛下の軍人は一人もいない。だれでもこれは知っておる通りです。ここでこれにつまり生活の保障を与えるということは、国民全体の意思によってこれは決定するわけであります。国民の意思によって、国民に対する国民の恩給でありますね、国民の恩給であるわけです。そこで旧軍人が国民の恩給として受ける対象となる場合は、従来のような陛下の恩給というような形ではないではないか、国民全体の上ではあくまでもこれは社会保障という、こういう方向に前進して行かなければならないものではないか、従ってその場合においてはやはり結論としては特別な階級、特別な職業、こういうものではなく、やはり国民全体の一員としてのものでなければならない、こういうように私は考えるわけなんです。そこで二十八年当時はそういう議論もなし、とにかく恩給を復活するのだと言うてできた、こうおっしゃるから、これはできたものを私はかれこれ言うのではないけれども、今や一部これを改正するというに至っては、明らかにこいつを一つ検討してやらなければならない、こういうふうに考える。こういう点については提案者はどういうお考えを持っておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/36
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037・高橋等
○衆議院議員(高橋等君) 私はどうもあなたのおっしゃることがよくわからないんですがね、ばらばらで……。もう少し整理をして一つ一つお聞き下さればいいと思うのです。それでお尋ねの点なんですが、国民皆兵であった、だから特に軍人とか、何とかいうことを考える必要はないのだ、こういうことを一つおっしゃった。それから一つは、保障制度で行くか、恩給で行くか、これは国民がきめるんだ、こういうことをおっしゃった。そうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/37
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038・木下源吾
○木下源吾君 私は時間がないから、あなたが頭で整理してくれて答弁してくれると思ってひっくるめて言っておるのですが、私はこれは社会保障制度で行くべきものでないか、こういうことなんです。理由としては、今の根拠を私は示しておるわけなんです。これは恩給というものは従来から陛下の恩給であった。陛下の官吏であって陛下の軍人であったのですよ。今日は主権在民で国民全体が恩給に相当するものを出して行くと、こういう形になっておるのであって、従ってその形は特別な意味を持つのではないのだ。社会一般の今の公務員の場合は、これは別でありますけれども、旧軍人が、今になっては軍人というものはないのだから、これは社会保障の範疇で解決して行くものじゃないかと、こういうことのためにお尋ねしておるわけであります。わかりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/38
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039・高橋等
○衆議院議員(高橋等君) 元のいわゆる六八勅令以前の恩給法で、公務員とは文官、軍人云々と、こういうことが書いてあった。そして軍人というものは当時から公務員だとして扱われておった。そこでこの公務員が国のために公務によって死亡するとか、あるいは一定の年限に達したとかいうような者には全部恩給というものが支給されておった。その恩給が停止になった、だからこの恩給を、文官恩給というものがある以上、やはり制度としてやる以上は恩給でやる方がよろしい、こういう考えなんです。それともう一つは、あなたが主権在民の現在、恩給云々というお話がありますが、アメリカあたりでも恩給は出しているのですよ。ですからそういう考え方じゃないのですね、これは……。国家対使用人としての関係で考える。国家対一般国民との関係を社会保障の関係として考えて行く、そして今後社会保障制度を充実して行く上におきましても、国家対価用人の関係は、また別の形態でこれはとどめておいて、その間の調整をはかる。これが私の考え方。ですからあなたの考え方とはその点では食い違いが根本的にあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/39
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040・木下源吾
○木下源吾君 食い違いがあることははっきりしましたから、それでいいわけですが、食い違いがどこで出てきたかと言いますと、古い時代のものを今に持ってきて、根拠がないものを根拠をつけるというところに食い違いが出てきておると考えられる。陛下の軍人はその当時はあったし、今は陛下の軍人もなければ、国民の軍人もないんですよ。そこのところへあなたは古い軍人をここへ持ってきて、軍人であるからという仮想でここへ置きかえて、自分の頭でそれを整理して、そういうようにしようとするところに食い違いが出てくると私は思う。あくまでもそうではなく、現実に即しまして、軍人ではないのだから、軍人では現在ないのですからね。その軍人でないということの現実から立って行ったならば、物事はきれいに解釈できるではないか。軍人でない者に軍人なりとして、こういう仮想で物事をきめて行こうというところに無理があるんじゃないか、こういうふうに私は考えておるわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/40
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041・高橋等
○衆議院議員(高橋等君) この問題についてはもうたびたび繰り返して申し上げておる通りでございまして、これ以上私は議論的にわたることを避けたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/41
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042・木下源吾
○木下源吾君 私も議論はしたくない。議論はしたくないんで、ただこの問題を申し上げておることの必要性は、もしも私のような考えが正しいとするならば、やはりこの問題は二十八年でやったまま、そのまま、これはいい悪いは別として、一つの法律できめたのですから、それをそのまま凍結しておいて、次に社会保障制度の方向へ持って行くために大いに努力したらいいんではないか、こう考えるので、それをふくまでもその元を発展させて、いや今度は上に厚いとか、下に薄いとか、上に薄いとか、下に厚いというように、そういう根拠の上にそれを築いて行こうとするから、私は今の議論をしてお尋ねしておるわけなんです。私は決して困る国民に対して政府は保障しない、また使って使いっ放しにするのだ、そういう考えで言っておるのではありません。根拠としては、私は今は法律ができておっても、これはあくまでも社会保障で私は解決して行くことが純理論ではないか、こういう面に立ってお尋ねしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/42
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043・高橋等
○衆議院議員(高橋等君) その御質問に対しましては、もうたびたびお答えした通りでございますが、衆議院におきましても、やはり社会党のあなたの所属の方でいろいろな質問をいただいたのでございますが、今のようなお言葉は初めてなんであります。ことに衆議院で両派社会党から出されております修正案も、恩給制度というものを一応仮定に置き、しかも下に厚くするという修正案が実は出されております。(「よけいなことを言うと時間が延びるぞ」と呼ぶ者あり)いえ、申し上げます。答弁者が申し上げることは自由であります。そういうことで、私はそれはもちろん国民の意思に移行する場合を考えておやりになったことは大体わかっておりますが、その他の点につきましては、この委員会でずっと申し上げておる通りでございます。考え方におきましては非常に逕庭があるということで、これ以上私は議論になることを避けたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/43
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044・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 木下君、もう時間がありませんから、もう一つにして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/44
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045・木下源吾
○木下源吾君 それじゃもう二つ。ほんとうにやろうとするならば、やはりあなたは下とか、上とか言いましたけれども、兵隊ですね、兵ですね、兵だと思うのです。あなた方もこれはやはりいなむことはできないだろうと思います。このようにお互いに考究して、これならというところで兵によけいやろうということは、これこそ、その思想、その考え方こそ、社会保障の考え方から生まれてくるわけであります。この点は私はどうしても将来、一般社会保障の線でこれは解決すべきだという根本的主張の上に立って、これだけははっきり申し上げておきたいと思うのであります。ですから、われわれが衆議院で兵に、下に厚くということは、あくまでも社会保障という面でこれを解決して行こうとする一つの基調である、こういうように解しておるわけなんであります。決して今のこの制度を全面的に承認した上でのこれは修正ではない、こういうように考えるのであります。従ってそれを明らかにするために、今あなたとお話をしておるわけであります。それをさかのぼって行くというと、先ほど来私が答弁を求めた、質問をした根本にさかのぼるわけなんでありますから、将来はあるいはこれは、今回はあなたの提案が通過して、それはものになるかもしれませんけれども、われわれはあくまでも近代的な民主的な方法でこれを解決して行こう、これこそがまた一つの限界があるのではないか、社会保障としてどこまでも発展して行って、それらの人々の幸福のためだ、こう確信しておりますから、私は将来もあくまでもそれを主張する、こういう立場に立っておって質問をいたしたわけであります。衆議院における社会党の修正というものは、今申し上げたように社会保障制度であるというこの前提に立っての修正である、こういうように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/45
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046・野本品吉
○野本品吉君 今までのいろいろな質疑応答を通しましてわかったような点がありますが、私はきょうは一切の議論を省きまして、主として恩給局長にお願いしたいと思うのですが、私のお伺いしますことに対しまして、イエスかノーか、その答えだけでけっこうですから、それをお願いしたいと思います。その第一点は、かねがね申し上げてありますように、軍人恩給計算の基礎となっている仮定俸給の年額に関する問題であります。これは結論的に申しますれば、退職時の俸給を基礎としないために、率直に申しますと、正規将校にはきわめて有利であり、特進将校、準士官以下に不利であるという当然な結果が生まれてくる、かように考えております。この点についてお伺いいたします。簡単にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/46
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047・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) 正規将校は有利であって準士官以下は不利である、こういうようには必ずしも言い切れないのではないかと考えまして、下士官以下におきましても必ずしも今の取扱いが不利であるとは言えないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/47
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048・野本品吉
○野本品吉君 それでは私は数字をもって申します。かねがね申し上げておりましたように、俸給で扱わずに別な取扱いをしておる。つまり兵にあっては三十九円、約四十円のものを四十五円で扱っておる。伍長または三等兵曹は五十円のものを、五十七円で扱っておる。準士官においては九十一円のものを百円で扱っておる。ここの平均の増は七・八%、特進階級におきましては百十八円の少尉が百十六円で扱われて、中尉百四十一円が百四十一円で扱われ、大尉百六十五円が百九十五円で扱われて、これは一八%の増、少佐三百二十円が二百二十七円で扱われて三三%の増、かようにみて参りますと、この扱い方から行きますと、少尉以上の平均をみますと、俸給に比較いたしまして三〇・五%の増になっている。特進の階級におきましては九・七%ということになります。兵、准士官以下の階級にあっては七・八%になっている。この事実は私は大多数の下級軍人に対しての扱いといたしましては、そう親切な扱い方ではない、こういうふうに考えるわけです。これはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/48
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049・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) 御承知のように、恩給法は従来から退職時の俸給ということを基礎にいたしまして普通恩給を計算することになっておるわけでございますが、その俸給という考え方からいたしますと、今お話になりました下士官、兵におきましては、果して俸給というものが給されておったかどうかということが問題であろうかと思うのであります。兵につきましては、御承知のように俸給というものはなかったのでございます。従って兵に恩給を給するということになりますと、先般申し上げましたように、昭和八年前でございますと、階級別、在職年別の恩給になっておったのでありますが、それを昭和八年に改めまして、一つの仮定俸給を作って恩給の額を算出するということになりましたので、軍隊の中の中尉なら中尉、少尉なら少尉、準士官なら準士官、曹長なら曹長、軍曹なら軍曹、こういうふうに順次みて行きまして、妥当なる恩給年額計算の基礎、仮定俸給というもの声作らざるを得なく作られたものと思うのであります。そういうことから考えてみますると、特に下の方を悪くするとか、あるいはよくするとかという考え方ではなかったろうと思います。あるいは下の方が、今現在考えられてありまするように上薄下厚の考え方をもって下の方は有利にされたかも知れませんが、特に悪くするという思想をもって下の方が処置されたとは私は考えておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/49
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050・野本品吉
○野本品吉君 私はいい悪いの問題を聞いているのじゃないのですが、軍人の恩給の算定の基礎になります仮定俸給のきめ方が、現実のような結果になっているという点については、恩給局長さんも別に異論はないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/50
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051・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) 軍人の仮定俸給年額が、実際に支給されるところの俸給と比較いたします場合におきまして、野本委員の申されましたような結果になっていることは、これは認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/51
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052・野本品吉
○野本品吉君 次に今度の改正の結果、大佐以上は文官と一致している。それ以下に問題があるのですが、つまり今まで恩給局で文官の問題を考えます場合は、還元あるいは年功加俸の問題を言われて来ました。しかし先ほど申しました今年の軍人恩給算定の基礎になります仮定俸給と比べますると、文官の恩給とういものは、算定の基礎になりますものは還元しましても、加俸と加えましても、その額に達しないという事実をお認めになられると思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/52
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053・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) ちょっと今はっきりしなかったのですが、その額に達しないというのを、もう少し御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/53
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054・野本品吉
○野本品吉君 こういうことです。大佐以上は今度のこれは完全に一致している。そこでそれ以下では現実の退職俸給というものを、文官のものを還元し、また加俸を加算するといたしましても、これは文官に比して有利な条件において扱われており、還元し、年功加俸を加えたものが、軍人恩給算定の基礎俸給に達しない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/54
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055・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) 軍人恩給が廃止されます前に、同じように恩給年額計算の基礎俸給の取扱いを受けておった、こういうことを前提にして文官について考えるならば、今仰せられるようなことにはならないと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/55
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056・野本品吉
○野本品吉君 それは循還になりますから控えましょう。
次に、大体今度の軍人恩給の改正は提案理由でも明らかなように、文官とのアンバランスを調整するということでございましたから、一応文官との均衡はこれでとれたということでよろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/56
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057・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/57
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058・野本品吉
○野本品吉君 そうしますと、私はそういうことを伺いますのは、旧軍人とと文官とが均衡がとれないとか、何とかということを議論するのが実にいやなんであります。従って今後におきましては、つまり文官のいろいろな問題と軍人のいろいろな問題と比較対照の上において考える必要がなくなった、こう考えるのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/58
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059・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) 恩給年額計算の基礎になっているいわゆる仮定俸給の点につきましては、今の野本委員の仰せられる通りと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/59
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060・野本品吉
○野本品吉君 従って御心配いただいております今後の陥没しております古い文官の退職者の問題等は、今度改正されました暁においては、文官との比較対照というようなことと無関係になって考えるべきである、こういうふうに私は思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/60
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061・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) 全然無関係に考えていいかどうかにつきましては、なお私は検討を要する面があるのじゃないかという気がいたすのでございまして、今、野本委員のおっしゃられますように断定しかねるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/61
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062・野本品吉
○野本品吉君 これは相対的な関係においては無関係とは申しません。しかし一応ここで落ちついたという意味においてこれはどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/62
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063・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) 厳格に考えますれば、私が今発言いたしましたようなことになると思いまするが、少し大まかに考えますならば、あるいは野本委員の仰せられましたように考えてもいいかもわかりませんが、あまりとっさのことでございますので、はっきりと今、野本委員の仰せられるように断言することはいたしかねるということを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/63
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064・野本品吉
○野本品吉君 次に、今度の改正の結果、兵を四十円相当として、それ以下全部が切り捨てられております。それは現実には古いやめた文官には、十二年、十五年、十二年勤めた警察官にも、それから十五年以上勤めた文官にもこの四十円以下、兵以下に転落しておるものがある。従ってつまり兵を四十円相当として扱う上からには、それ以下に置かれておるものは一切切り捨てるべきであるということに考えていいと思うのですが、これはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/64
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065・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) たしかにそういう意見は出てくると思っております。昭和二十八年の法律百五十五号が制定されました際に、二等兵、上等兵というような階級を設けまして、そして兵長以下の仮定俸給を設けたのであります。理屈として申しますれば、今、野木委員の仰せられたようなことが出てくるかと思います。軍人につきましてだけ、兵長以下の階級のものの仮定俸給が兵長なみに引き上げられてしまいましたから、今、野本委員の仰せられるような議論はたしかに出でくると思います。ただこの文官の場合は軍人の場合が同じように取り扱いにくい場合が技術的に出てくるのでございますが、たしかに今、野本委員の仰せられるようなことは研究課題として研究すべきだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/65
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066・野本品吉
○野本品吉君 次に、これも今までの委員会でずいぶん議論したので、私は今すぐそれ通りにしろというのではない。原則論なのです。考え方の問題をお伺いしているのですから……。その一つは、かねて申し上げましたように、軍人の恩給算定の基礎になる仮定俸給というものは、十一年の軍人が受けた恩給額を三倍したものであることは局長さんも御説明の通りであります。そこで私はそのことを考えますというと、文官にまた仮定俸給をきめる場合に、その十一年の文官の最短恩給年限に達したものの恩給額の三倍の額というものが最低の恩給算定の基礎俸給になるべきである。こういう議論が一応成り立つと思うのですがいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/66
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067・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) その点につきましては、この間いろいろと野本委員から御発言ございました際にお答えしたのでございまするが、その際、私の説明が行き届かなかったかもしれませんが、必ずしも今、野本委員のおっゃられるようなふうに逆が真であるとは私は考えられないのじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/67
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068・野本品吉
○野本品吉君 これは私の方が実はわからなくなってきた。つまり公平とか、均衡をとるというようなことになれば、同じ原則の適用を受けるということが大事なことになってくるわけなんで、従ってそれはこの間も申し上げましたように、紫雲丸でなくなった若い教員は、やめたときの俸給が恩給の計算の基礎になり、また公務扶助料の基礎になる。軍人は十一年勤めあげたその段階における俸給というものが、そういういろいろな計算の基礎になる。これはどうしても平仄の合わない点がある。これはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/68
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069・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) 旧軍人の仮定俸給がどういうふうにして作られましたかということにつきましては、先般のこの委員会において御説明を申し上げた通りでございます。そこで中尉なら中尉につきまして考えてみました場合におきまして、中尉として十一年……。(野本品吉君「それは私は聞いてわかっております」と述ぶ)それなら省きます。省きますが、私がこの間御説明申し上げましたようなことでございまして、必ずしも今、野木委員の仰せられるようなことは納得がいかないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/69
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070・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 野本さんそれね……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/70
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071・野本品吉
○野本品吉君 もう五分です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/71
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072・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 金曜日の委員会であとの発言時間を大体きめたのです。あなたおられなかったのです。それで、入っていないのです。千葉君が自分の発言時間を捨ててしまっておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/72
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073・野本品吉
○野本品吉君 もう一分です。今の点は私はわかればわかるほどわからなくなってくる。はなはだ変な表現ですが、それであるのでお伺いしたい。もう一つこれはほんとうに一分です。特別職の俸給表ですね。現在の特別職の俸給表、それから裁判所関係の俸給表を、制度の変わった以前の退職者に現在適用しているのでありますが、これは職階の問題につきましては、恩給局長さんとかねがねいろいろ話し合ったことがありますが、職階にそろえるという原則を一般に及ぼすということが私は特別職の俸給表、それから裁判所関係の俸給表を前の退職者に適用しておるということからみますというと、これは一般にそういう考え方を及ぼして行くことが暗黙のうちに認められている、こう判断をいたしますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/73
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074・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) そうじゃないのでございまして、特別職に関しまする俸給表の問題につきましては、従来は親任官とか、高等官、判任官というふうにございました。ところで親任官以外の勅任以下の者を対象といたします場合におきましては、その俸給号表というものは今の一般職の俸給号表に相当するものと考えております。それでそういうふうに取扱っております。従来の親任官に相当する人たちにつきましては、現在俸給号表として考えられるものは特別職の俸給号表でございますので、これらの人々については、そういうふうに取扱っておるのが現状でございます。それから裁判官につきましては、従来の裁判官につきましては親任官以外の方々につきましては一般の勅任官以下の人と同じような俸給号表が適用されておったのでありまするからして、そういう人たちに対しましては、今の一般職の公務員に適用される俸給号表を適用することといたしておりますけれども、新しい裁判制度ができました後の裁判官につきましては特別な俸給制度ができておりますので、その人々に限ってその新しい制度の俸給号表を適用しているというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/74
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075・野本品吉
○野本品吉君 新しい時代になってからの裁判官に対しては特別な俸給表ができているということは私も心得ております。しかしそういう特別な扱いをされているところにいろいろな問題が起ってくるのでありまして、この点につきましては将来大いに考究をしなければならぬと考えております。大へん長いこと時間々費やしまして失礼いたしましたが、いろいろ議論をすれば限りなくあると思いますが、一応これで私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/75
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076・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) なお野本委員は他に質問をしたかったでしょうが、大体そういうことになっておりますから御了承願いたいと思います。
以上をもちまして本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/76
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077・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のあおりの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/77
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078・加瀬完
○加瀬完君 私は社会党第四控室を代表いたしまして、本案に対し反対をいたします。
提案者の提案説明はその限りにおきましては当然の理由も認められ、またその努力に対しまして敬意を表するにやぶさかではありません。なお遺家族等戦争犠牲者は言うまでもなく、旧軍人軍属の救援につきましても大きい国家補償を施すべき原則に対しましては、もちろんわが党におきましても全面的に賛意を表するものであります。しかし次の諸点におきまして本法案には反対をせざるを得ません。反対の第一点は、提案者は、旧軍人軍属の処遇を厚くすることは、平和国家、道義国家の建設発展の重大要件である、こう説明されておるのでありますが、平和国家、道義国家、こういうことからするならば、まず考慮されなければならないことは、再び戦争が起らない、免除ということを第一にすべきであると思います。この点軍人恩給の引き上げといった方法をとることは、この免除にはなはだ逆行するものと思うのであります。
反対の第二点は、提案説明によりますると、戦争犠牲者を救済するというのでありますが、それでは、その戦争の犠牲者という内容について、さらに質問をいたしますると、旧軍人軍属は、一般国民との間にはなはだ差別待遇をされておる、この国民との不当な差別待遇というものを取り除くためだ、それではその差別待遇というのは、具体的にどういうことか、こういう点を伺いますと、文官恩給と旧軍人恩給との差別がある、これだけしか例示をされておりません。戦争犠牲者の救済ということであるならば、戦争犠牲者の犠牲度、こういうものが検討され、段階づけられ、その犠牲度に対しまして支給基準というものがきまるべきではないか、こういうように質問を申し上げますと、それらについては考えられておらなくて、結局これは旧軍人恩給というものを文官並みに引き上げるということ以外に意味がないのでございます。こういうことでありますると、提案説明によりまする戦争犠牲というものの最たるものは、軍事行動のみを国家犠牲の最たるものと、こういう見方をいたしておるわけでございます。こういう見方でもしも臨むといたしまするならば、提案者の認定とは逆に、一般戦争犠牲を受けた国民との間に、恩給を支給されるものとの差別待遇が逆に生じてくるということにもなりかねないのでございます。軍人軍属の軍事行動だけを国家犠牲の最たるものと見るこの見方は非常に危険である。この点私は強く反対の理由といたしたいのでございます。
反対の第三点は、法案の内容であります。戦争犠牲者と申しますが、一応譲りまして、戦時行動の犠牲者というものを強く第一義的に考えるといたしましても、徴用工でありますとか、学徒動員の学徒、あるいは満蒙義勇軍、報道関係の人々、その他の応召者等、国家犠牲はむしろこういった方々に大きい点も見逃すことができません。しかしこれらの点というものは、この法案の中からだけでは十二分に考慮されておるという点は汲み取れないのでございます。なお文官との比率でございますが、警察官等の一部不利なる問題は解決されておりまするが、それならば、野本委員等からたびたび御指摘がありますところの、文官そのものの中にある矛盾というものをも、合わせてこの改正の中に含めて行くならば、さらにあとあとの問題の根を断つということにもなったのでございますが、文官そのものの中にあるでこぼこというものを見逃して、文官と軍人というものの間の比較だけをして参りますことは当を得ないと思うのでございます。なおまたその内容といたしまして、上薄下厚ということを理由としてるる述べられておるのでございますが、内容を検討して参りますると、必ずしも上薄下厚にはなっておらないという点をわれわれは指摘せざるを得ないのであります。
反対の第四点は、軍人、軍属はもちろん、あらゆる戦争犠牲者の救済というものは当然必要でありますが、これは社会保障という制度によってのみ可能であると思うのでございますが、この点政府は先般来の公約にもかかわらず、こういう法案が出ますにつきまして、将来の全般的な社会保障というものとの意味合いというものについて何ら研究を施しておらない。政府の施策が全然怠慢である、こういう点々指摘をいたしたいのでございます。
反対の第五点は、財政計画の面から見ますときに、恩給増額というものがますます進んで参りますると、三十一年度は文官を含みまして恩給総額は概算一千百億を下るまいと言われておるのでありますが、このままでは国家財政のバランスというものを失するおそれがあります。それが社会保障費の増額をはばむということになりますると、社会保障の一環として行う恩給制度というものが、事実は恩給制度によって社会保障というものがはばまれてくる。こういう逆作用もしかねないのでございます。なおまた予算がだんだん幅をとって参りますると、これは予算のワクの関係上、現存よりも以上に上厚下薄というふうな形をとって、予算面をたくさんとる下級受給者というものを切り捨てられるという懸念すらあるわけでございまして、こうなって参りますると、提案の趣旨にそむくこともはなはだしいということになりかねないのでございます。こういう諸点というものを研究して参りまするときに、当然社会保障へ切りかえられるべき性格のものでありまするから、社会保障に切りかえるべき準備というもののもとに、この法案というものが作成されなければならないことになるわけでございます。こういう点あまりにも考慮が払われておらない。
以上の理由からいたしまして、私どもは本案に対しまして反対の意を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/78
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079・堀眞琴
○堀眞琴君 私はただいま議題となっております恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対しまして反対をいたします。
反対の第一の理由は、この法案が文官恩給と軍人恩給のバランスをとるということを唯一の目的にいたしておるのでありますが、しかし軍人という身分は軍隊の解体と同時に今日消滅いたしまして、今日は軍人という身分は存在しておりません。その軍人に対して、かってのその軍人である経歴を基礎として恩給を復活するということは、一つには最近の再軍備政策に筋道を合わせようとする考え方であり、いわば逆コースの考え方であると言わなければなりません。従って私はその意味からまず第一に反対をせざるを得ないと思います。
第二には、もちろんわれわれとしても軍人の遺家族や、あるいは旧軍人で今日生活に困窮している人々のたくさんあることを知っております。しかしそういう人々を救済することは、軍人恩給を復活することによってよりも、むしろ社会保障制度を充実することによってこれを行うべきものだと考えられます。ことに今度の軍人恩給の基礎となっている仮定俸給表を見まするというと、上に薄く下に厚くと申しますが、実際の数字に現われたところを見まするというと、むしろ上の方に厚く、そして下には薄いという逆の結果を来たしているのであります。これはすでに存在しない軍人に対して、社会保障制度をむしろ適用すべき点を無視しての恩給の増額でありまして、私はこの意味からも反対せざるを得ないのであります。法案の内容等について見まするというと、たとえば戦犯等に問われて拘禁中の者のその年月等をも加算するとか、あるいはまた終戦当時に自殺をした者についても特別の考慮を払うなどということが法案に盛られているのでありますが、これらの点についても、前申し上げた理由から反対せざるを得ないと思うのであります。
なお最後に財政上の理由であります。本年度は民自案によりまするというと六百六十九億、来年度は七百何億、それからさらに再来年度においてはどうなりますか、八百億前後になるのじゃないかと思うのですが、このようにして、三十二年度になりまするというと完全実施になりまするので、非常な軍人軍属の恩給の増額になると思うのであります。それ々頂点としてその後は漸次減少するというのが提案者の説明であります。しかしこれはきわめて安易な計算でありまして決して減少はいたしません。一方文官の恩給等は年々増加して参るのでありまして、総額においては一千億前後に上るのではないかと見られます。なお、軍人恩給が何年かの後には減額するかもしれませんが、同時にまた自衛隊の恩給等がここに加わってくるわけでありまして、先ほどの木下委員の恩給亡国という議論もそこで十分成り立つわけでありまして、予算の上に与えるこの恩給の面からの圧迫というものは非常に大きなものになるだろうと思うのであります。
そういう意味で、私はこの恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/79
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080・田畑金光
○田畑金光君 私は社会党第二控室を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対しまして反対の意思を明らかにいたします。
反対の理由は、質問の過程において私たちの立場というものを明らかにして参ったはずでありまするが、今回の、この法律一部改正法案は、どこまでも恩給制度のワク内で考えて行こうとする立場をとっているわけであります。少くとも将来の社会保障制度全般、あるいは国民年金制度への予定を何ら顧慮していないというところに、私はこの一部改正法案の根本的な欠陥があると考えております。われわれはもちろん公務員制度が現存する限り、恩給制度がこれに伴うことは当然のことであると認めるわけであります。国民全体のための奉仕者として献身的に公務に従事する職員に対しまして、国家が老後の生活保障等に対し考慮するということは、現存の社会組織、経済情勢のもとにありましては当然の措置であると考えるわけであります。このように、国家公務員に対しまして現行制度のもとにおいて見ます場合に、文官恩給というものが当然の制度として認められまする以上、旧軍人の恩給制度の問題につきまして、これをどうみるかということは重大な問題であろうと考えております。しかし感情的な問題は別といたしまして、とにかく旧軍人の、あるいは遺家族の生活状態を考えましたときに、これに対しまして国が何らかの措置をとるということは、これは当然のことであるとわれわれもまた考えを持つものであります。ただ昭和二十一年の勅令六八号によって、旧軍人遺家族の恩給が廃止または大幅に制限されて以降、諸般の情勢の発展に応じまして、政府は旧軍人恩給の復活ということを考慮いたしたのでありまするが、政府の設置いたしました恩給法特例審議会が、昭和二十七年の十一月二十二日に答申をいたしておりまするが、この審議会の答申を見ましても、特に、厳格な服務紀律にしばられ、転職の自由なく、しかも、在職中の給与は、単に在職中の生活を維持する程度のものにとどまり、永年公務に従事して老朽となり、また、公務に起因して傷病にかかり、あるいは死亡し、かくて、経済的獲得能力を失っても、在職中の給与は、これを十分補うものとは言い得ない。よって、国家は使用者としての立場から、かかる能力の喪失に対しては、これを十分に補うべきであり、恩給制度の本旨に、実に、ここにあるものと思われる。よって、本審議会は、恩給制度の本旨に鑑み、旧軍人軍属及びその遺族の生活の現状を察し、これらの者に対し、すみやかに相当の恩給を給すべきものと認めた。」、しかしながら、その反面、「今次大戦によって多数の戦死者及び傷病者をいだし、また、軍の解体に伴い一時に多数の退職者を生じ、旧軍人軍属及びその遺族で、恩給制度の対象となる者はおびただしい数に達し、これらの者に軍人恩給廃止制限前に、給されたごとき内容の恩給を給することは、毎年、巨額の国費を要し、敗戦後のぜい弱な国家財政の現状ではとうてい不可能なことであると思われる。また、恩給制度は、一つの国家の制度であるから、その内容は、国民感情の動向及び国家諸制度の現状をも考慮して定めなければならない。しかして、軍人恩給廃止制限前の軍人に関する恩給制度は、今日の国民感情及び国家諸制度の現状に顧み、当然改められるべきものも決して少くないものと思われる。よって、本審議会は、国家諸般の情勢に照らし、旧軍人軍属及びその遺族に給すべき恩給の内容は、軍人恩給廃止制限前の恩給の内容に相当の改変を加えたものであるべきものと認めた。」、このように申しているのであります。この恩給特別審議会の答申を見ましても、復活さるべき旧軍人遺家族の恩給については、その内容に相当の改変を加えて、遺族、重傷病者、老令者に重点をおくということ、さらに国民感情や国家の財政に顧慮を払うべきであるということが強く主張されているわけでありまするが、私は今回の提案された案を見ました場合に、こういう諸点において大きな疑問を持たざるを得ないわけであります。ことにまた、昭和二十七年十二月二十三日、社会保障制度審議会の意見書が政府に出されているわけでありまするが、その意見書の中で見ましても、公務員の恩給は社会保障制度の一環として、一般民間使用者と同一基準によって平等に支給さるべきものであって、軍人恩給についても、今次戦争による犠牲が全国民的であった点からいっても、恩給法特別審議会の建議に示された結論は妥当でない。戦争遺家族や傷病者に対する生活の保障は当然優先して考えられなければならないけれども、そのためにはむしろ現行の戦傷病者戦没者遺族等援護法における傷害年金や遺族年金の金額を引き上げるとともに、老令者に対する年金については定額制を基礎として支給するなどの措置をとるべきだと考える。このように社会保障制度審議会等においては、強く社会保障制度の充実強化、あるいは国民年金制度の方向に推進すべきであるということを強く主張して参っておるわけであります。今回の委員会におきしまして、川崎国務大臣並びに大久保国務大臣の答弁を承わって参りますると、同じ政府の閣僚相互の考え方というものが相当に開きがあるということをわれわれはみてとることができたわけであります。すなわち川崎国務大臣は、今回の旧軍人遺家族の恩給に対しまして、社会保障制度の立場、国民年金制度の確立という点から強く疑問を投げかけられているわけであります。同じ政府の内部におきまして、このような思想の不統一があるということ、これは要するに、今回のこの法律案の内容というものが多くの問題をかかえておるという証左であると申さなければなりません。こういうような点からみまして、私が第一に反対いたしますことは、今回の改正案は、将来社会保障制度を施行するこの先進国家において今日進みつつある態勢から申しますと相当なズレがある。この点がまず第一に私は反対の理由としてあげたい点であります。
第二の点は、国家財政の面から眺めて参りました場合に、提案者である高橋衆議院議員からもお話がありましたが、昭和三十年度は文官恩給を入れますると八百三十三億、昭和三十一年度は八百八十三億、昭和三十二年度にはこれが九百四十一億に上るという御説明であります。私たちはさらに昭和三十一年度、三十二年度のころには、これが増額すると見ておるわけでありまして、おそらく旧軍人恩給の遺家族と文官恩給を入れますと一千億に上ると見込まれるわけであります。一千億ということになって参りますと、国家予算のうちの一割ということになって参るわけであります。かって日本が軍人恩給亡国と言われました戦争前の昭和十二年前後をみましても、一番国の予算で恩給費が多額を占めたときでも一〇・五%程度が最高であったわけでありますが、敗戦後の今日の日本において、すでに文官、武官恩給を入れますと、国家財政の中に一〇%の比率を示しておる、このことは私は恩給刷度というものが明らかに一つの限界にきている、この辺で国民全般の立場からする社会保障制度の国民年金制度の方向に切りかえるべきであるという財政上の一つの制約が生まれてきたということを意味するものと言わなければなりません。先ほど恩給局から提出になりましたこの資料をみましても、歳出決算額と旧軍人年金恩給費との関係をみましても、あるいは歳出決算総額と年金恩給費との関係をみましても、実は昭和二十九年度、三十年度の状況は、戦争前のいずれの年よりも高い比率を示しておるということは、私は何としても解せない点であるわけであります。これらの点を見ましても、要するにわが国の今日の窮乏せる国民経済力、あるいは非常に逼迫をいたしております国の財政力、こういう点から見ましても、恩給制度というものをさらに一歩前進した形で処理すべき時期にきているのではなかろうか、こういう考え方を強く持たざるを得ません。これが私の反対の第二の理由であります。
第三の理由といたしましては、今回の民自修正案は、提案の理由の説明によりますると、下に厚く上に薄し、こういうようなお話で説明を承わりましたが、事実仮定俸給を例にとりますると、大将の場合は四六・八%の増加比率を示しております。中将の場合が四一・四%の増加比率であります。これに対しまして軍曹の場合を例にとりますと二九・七%、伍長の場合は二九・八%、兵の場合は三一・七%、こういうように実は数字の上から申しましても下の方に非常に薄いわけでありまして、私は下に厚く上に薄しという、提案者の説明は数字自体が明確に違っておることを証明しておると言わなければなりません。このことは同時に、将来国民年金制度にかえて行くような場合に私は大きな困難な事情を作るものと申し上げたいのであります。
こういうような点を私は見ました場合に、今回の民自修正案に対しましては同点するわけには参らないわけでありまして、以上のような三つの考え方から、私は今回の恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対しまして反対の意思を明らかにする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/80
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081・長島銀藏
○長島銀藏君 私は自由党を代表いたしまして、本法案に賛成するに当って左の付帯決議を上程いたします。付帯決議を朗読いたします。
恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に関する付帯決議(案)
恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に関し、衆議院は、昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた公務員の恩給はそれ以後のものと比較して低きに失するにより政府は急速にこれを検討するとともにその具体的措置を構ずべきことを要望する。」との付帯決議を可決しておるが、本院においても、この決議はきわめて適切なるものと認め、政府に対し、これが具体的措置の急速実施を強く要望する。
右決議する。
というのでございます。
私は恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきましては、同僚議員とともに深い研究を遂げたのでございます。なお先刻御質疑をせられました野本委員の御質疑の中にありました通り、年俸、仮定俸給等を記載いたしました場合における問題、あるいは恩給実施に関する予算額の、きわめて少ない金額の問題等を勘案いたしまして必ずしも満足すべきものとは考えておりませんけれども、遺族団体の御要望、傷痍者団体、旧軍人団体並びに老齢軍人の団体その他昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた公務員の団体諸君の御要望もありまして、なお国家財政の見地から勘案いたしまして、不満足ながらこの本案に賛成の意を表しなければならないのでございます。どうか一日も早くこの法案の成立によりまして、国家の処遇の恩恵に浴せしめる熱意に燃えておりまするがゆえに、本案に賛成をいたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/81
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082・野本品吉
○野本品吉君 私は民自両党提案にかかります本案に賛意を表する次第でありますが、しかし本案の内容その他を検討いたしますというと、幾多考えさせられる点がありますので、それらの点を指摘して討論にかえたいと思います。
第一の点は、提案の理由といたしまして、上に薄く下に厚くという御配慮がおったわけであります。しかし恩給法の建前をとる以上、私はこうした考え方は理論的には一貫しない。その一貫しない理論の上に、上に薄く下に厚くしようとされた私誠意はわかります。同時に、そこでいろいろとこの案を審議するに当って提案者が悩まれた点であろうと思います。これは恩給法の建前においてやむを得ない点でありますが、上に薄く下に厚くということが数字の上にはっきりは出て来ないのでありますけれども、これは予算及び恩給法そのものの基本的な理念から言いまして、ある程度やむを得なかったものであろうと思いますが、将来これらの点につきましては、相当考慮されなければならない幾多の問題を包蔵しておることと思います。なお審議の途上におきまして指摘いたした点でありますが、私は一般の公務員と旧軍人との恩給に関する取扱いが一つの法律で扱われておるというところに、不必要ないろいろな論議を巻き起し、またその間に制度的にも事務的にも混乱を起すということをおそれるものでありまして、従ってすっきりした制度として整理されることを強く要望いたします。
それから次に、文官に比して軍人が非常に劣悪な状態に置かれておった。このことは特例審議会で建議せられました仮定俸を認める限りにおきまして、私もこれを否定するものではありません、しかしながら、それを深く掘り下げて参りますというと、簡単にかような考え方が正しいかどうかにつきましては幾多問題があると思うのであります。
次に、恩給の金額が非常にふえて参りまして、恩給によって国の財政が危うくなるのではないかということを心配される向きが多いということは、これはだれもが承知しておることでありますけれども、私はここで一点指摘しておきたい。と申しますのは、旧軍人軍属の恩給所要額六百億の八割強が、われわれがかって、あとは心配するなといって駅頭に送り、村境に送りましたあの青壮年諸君の遺族扶助料であるということであります。このことは国民全体としましてもよく考えてかからなければならぬことであると思います。こういうようなことを絶えず考えておる私といたしましては、援護法で扱っておりました時代は相当莫大な予算を計上しておりましても、世論はかようにやかましくならなかった。それはこの金は遺族に対する国民としての当然だすべき、負担すべき金であるという気持であったからであります。これを恩給の予算に中に持ち込み、恩給のワクの中に取り入れましたときに、まだ残っております恩給は特権であるというような一般国民の思想がありますから、従って遺族援護法にその予算が置かれておるときに問題にならなかったものが、恩給の中へ持ってきたために非常に国民を刺激し、この措置がよかったか、悪かったかということにつきましては、いろいろ意見もありましょうし、また遺族の諸君からもいろいろな意見があって、かような措置がとられたこととは思いますが、今後さらにどう扱うべきかということについては考慮の余地があるのではないかということを私は考えます。
それから第四の点といたしましては、これも審議の途上で触れてはおきましたが、終戦当時、特高警察におりました方々が非常に冷遇と申しますか、冷たい扱いを受けてそのままになっております。しかもそれらの特高警察の方々を指揮命令しておりました人たちには何らこの影響が及んでおらぬ。これらのことは、私は数の多い少いは別の問題といたしまして、国民の思想に与える影響ということも考慮いたしまして、将来考えられなければならない問題であろうと思います。なおそれと同じようなケースの一つといたしましては、これも審議の途上で申し上げたことでありますが、中央地方におきまする優秀な教員、官吏等が、大東亜戦争中、戦域の拡大に従いまして必要を、認められました司政官として、ほとんど徴用のような形で指名的に各地へ分遣されておったわけです。これらの司政官として各地で働いておりました人たちは、その司政官としての在職年が通算される措置がとられておらない。そのために、内地におりさえすれば教育者として、優秀な事務官として相当な処遇を受けべき者が、司政官にされたがゆえにそういう処遇に浴することができないというような事実、これらのことに関しましても、将来考えるべきではないかと私は思います。
以上いろいろ申しましたけれども、要するに、私は多数の軍人軍属、遺家族に対しまする一応の処遇の改善が行われますことを喜び、またこの作業、提案に当りました方に対し敬意を表しまして賛成いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/82
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083・松原一彦
○松原一彦君 私は日本民主党を代表いたしまして本案に賛成いたします。
日本の軍人は恩給制度によって身分を国から保障せられて、今日まで幾たびかの大戦役に従事して参ったのであります。その国の保障が、今回の大敗戦の結果払われなくなったという経済的な事実もありますが、国民感情が冷たくなった点もありましよう。しかし、というて一千万の国民を動員して戦争にかり立てておきながら、敗戦の罪を軍人にのみ課して、国民が戦後においてこの人々を飢えさしておくということは、私は国の信義の上から許されないと思います。ただ国力の回復はまだ不十分でありますために、委員諸君から討議のうちにも引かれました通りに、特例審議会の答申に基いて、遺族を第一に、重傷病者をその次に、老令軍人を第三次として、できる限りのことをやろうという決意が昭和二十八年に示された。しかるに、今回はひとり保守党側から、その制限の上になおこれを拡充して報いるものをば形に現わそうといたしたばかりでなく、革新派の方々からも、実に二十八年の答申案にあった条件以上の条件を付したる、たとえば加算制度のごときまでも入れられたる案が出てきたということは、私はこれはやはり国民感情というものをば無視することのできない厳然たる事実だろうと思います。で、こういう意味におきまして、現実というものを離れてはどうしても政治は行われない。理想は掲げなくちゃならないが、現実を踏みつつ私どもは前進いたしたい。かような意味で今回のこの法案には賛成いたします。しかしこの法案に盛られたところをば、この審議のうちにおいていろいろ質問応答からも現われましたが、しさいに検討しまするというと、これはどうしても恩給というものの範疇からはすでに離れておるように私には思われます。恩給というものならば、一体上薄下厚なとということはあり得ないのであります。恩給は現職当時の俸給の三分の一なんです。これは原則ですよ。少い俸給をとった者には少くというても、その三分の一ですから変りはありません。多くの俸給をとったものにも三分の一が支給せられるのであって、これが恩給の原則であります。幾らどう変ろうとも、現職当時の給料が安かったからお前には恩給を多くやるなどというような恩給法はあり得ない。そういうことは考えられない。またお前は現職当時にたくさん給料をやっておったから恩給を少くやる、これも考えられない。何となれば、恩給には納付金制度があって、ちゃんと比例して納めておる。文官恩給は百分の二の納付金を納める。現に本年の予算においては七十九億九千万円というものが計上されておる。百六十億の文官恩給に対して八十億の収入がある。これが倍額になれば女官恩給は共済組合と同じような経営ができて行く。従って最近における給与制度の改善から起る文官恩給は、やがて文官、すなわち退職公務員年金制度となることは当然であって、その原則が保険数理に基く積立制でおるようにならねばならない、私はかように信じておる。従って恩給によるものならば上薄下厚などというようなことはとられない。けれども軍人は本来納付金を納めておったいわゆる将校階級以下のところに大問題があるのであって、野本先生も言われた通りに、八割を占めるこの遺族、戦死した人の遺族を中心に旧軍人に対する処遇を考えるならば、これは私は当然恩給では処理せられない時が来ると思うのです。特別立法によって十分にわれわれは国力に応じ、また敗戦の結果に応じたる戦後の始末をつけなければならぬ時が参ったものと思います。また文官を一つの標準として今回の軍人恩給が考えられておるというのは、一面においては軍文共に立った昔の制度において当然でありますが、一面においては文官は刻々に動いていっておるという事実を私は忘れていただきたくないのであります。文官の恩給がただいまいわゆる一万二千円ベースとなっておるがために、旧軍人の恩給をそれに近づけようとする努力を払われたことは一応当然であります。しかし文官の現在は一万五千円ベースであります。人事院の報告によりますというと、すでに一万六千五百円今日は払われておる。従って昨年の一月一日以降に退職したる国家公務員は、すなわち文官は一万五千円ベース、最近においては一万六千五百円の実績による恩給が払われておるのです。もし比較をするならば、ここにも比較しなければならぬ現実がある。この現実に幾らどうしようというても近づけることは私は日本の国力が許さぬと思う。というて、軍人恩給が常に文官恩給といつも揆を一にしなければならぬ理由はない。文官恩給は刻々にその当時のベースによって納付金をいたしておるのであります。かような点から、今回著しく現われましたものは、同じく一万二千円ベースとなった際における昭和二十三年六月以前の文官の恩給のあまりにも低いという事実であります。これを是正しなければならぬということが付帯決議によって衆議院においても明らかにせられ、ただいま長島委員からもこれが提案をせられておる。これは当然しごくのことだと思います。次には昭和二十九年一月一日以後の一万五千円ベースというものが、現に今文官恩給の基準になっておるのでありますが、これに対するアンバランスをどうして是正するか、これは今生きておる、当然伸びつつある文官の課程において私は将来保障しなければならない重大な問題だと思う。文官の恩給は決して一本じゃない。しいて言えば、二十三年六月以前のものが一つの段階を示し、二十九年一月以前のものが次の大部分を示し、二十九年一月以後のものが一万五千円ベースにおいて現に恩給を受けつつあるという、この三段階の事実を本委員諸君はどうか御認識の上、将来政治の公正を期せられたいと思うのであります。
かような意味におきまして、私は戦争に負けたからというて、罪を軍人に着せるということは断じていけない。その罪は政治家すべてが負うべきものであり、同時に国民全体が負わなければならぬ。従って敗戦後の始末として、旧軍人諸君並びにその遺族に報いる道は厚くなくてはならぬと思います。この大原則の上において見るときに、今日現われたる改正案は必ずしも完備したものではございません。ただややもすれば一部の人のうちに、戦勝はなやかなる時代にすらも許されなかったような広範な条件を、この軍人恩給の名のもとに盛り込んで拡充しようとするような考え方は私はよろしくないと思う。戦勝はなやかであって、戦勝国としての軍人に報いるときですらも行われなかったような拡充的なものの考え方は、私はこの際には深く反省しなければならないのじゃないかということを思います。かような意味において、いろいろありまするが、すでに所属したる党の党議をもって出したこの法案であります。それをさらに民主、自由両党が修正しました以上、これに従うのはわれわれの義務と心得ますので、本案に賛成いたし、同時に長島君の提示せられましたるこの付帯決議に賛成し、この付帯決議が必ず実行せられることをば皆様とともに期待いたしたいということを申し述べて賛成の趣意といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/83
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084・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) ほかに御発言もなければ、これをもって討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/84
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085・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。
それではこれより採決に入ります。恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(衆第二八号)を問題に供します。本案を衆議院送付案原案通り可決することに賛成の諸君の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/85
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086・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 多数でございます。よって本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、討論中に述べられました長島君提出の付帯決議案を議題といたします。長島君提出の付帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の諸君の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/86
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087・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 多数ございます。よって長島君提出の付帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条によって議長に提出すべき報告書の作成、その他直後の手続につきましては、慣例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/87
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088・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
なお報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。
多数意見者署名
松原 一彦 中山 壽彦
宮田 重文 木島 虎藏
木村篤太郎 井土 知治
豊田 雅孝 中川 以良
長島 銀藏 野本 品吉
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/88
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089・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/89
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090・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 速記を始めて下さい。
次に、国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当の支給に関する法律の一部を改正する法律案(参第一〇号)を議題といたします。
本案に関して、発議者千葉信君から発言を求めておられますので、これを許可いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/90
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091・千葉信
○千葉信君 ただいま議題になりました法律案につきましては、提案以来内閣委員の皆さん方からいろいろ御協力を賜わりましたことをこの機会に厚く謝意々表する次第でございます。
提案以来いろいろな条件とか、あるいはまた諸種の情勢等を慎重に考慮いたしました結果、実は提案者としましては十分御署名願いました皆様方へお話を申し上げて御了解を得なければなりませんが、その手続については時日の関係等もありまして、各会派の皆様方に御努力をお願いすることになった次第ですが、結論から申し上げますと、いろいろ慎重に考慮の結果、この法律案については次のようにこれを修正したいと考えておりますので、その内容について御説明申し上げたいと思います。もちろん議事規則等の関係から言いまして、討論採決に入りましてから、あらためて成規の御提案を申し上げることになろうかと思いますが、この際、事前に一応の御提案を申し上げたいと思う次第でございます。
その修正の内容は、御承知のように本法律案の附則第八項から第十項までは、公務員に支給せられる石炭手当及び薪炭手当については、これを所得税法の第六条から除外するという条件、並びにその経過規定でございましたが、今回この部分については削除を申し上げたい。
それからもう一つは、これは単たる事務的な点でありますが、附則第一項中の施行期日を「昭和三十年七月一日」とありましたのを「公布の日」と改める。この二点について皆さん方の御了解をお願い申し上げたいと思う次第であります。(「異議なし」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/91
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092・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 発議者よりただいまのように意思表示がございましたので、いずれこれの修正の手続につきましては討論中に述べられることと存じますが、大体発議者のただいまの御意見を基礎として御審議を願いたいと思います。なお本案に関しましては、予算を伴う法律案でございますので、国会法第五十七条の三の規定によりまして、内閣に対して意見を述べる機会を与えなければならないようになっておりますから、この機会に、給与担当の大久保国務大臣から政府の御意見をお開かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/92
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093・大久保留次郎
○国務大臣(大久保留次郎君) 実はこの案を私詳しく調べておりませんのでありますが、その前に簡単に申し上げたいと思います。千葉君が出されたのでありますから、まんざら根拠のないものではない、大いに根拠のある法案だと思いますが、ちょっと感じたものを一言だけ申し述べてみたいと思います。私はこの委員会で先にも申し上げたかと思いますが、日本の公務員制度に対する手当が非常に多いのです。これはどういうわけか、敗戦後のどさくさまぎれに公務員法ができたために、それに追加し追加していろいろな手当が出ておる、今月約十ある、勘定しきれないほどある。しかしこの手当というものはまんざら根拠のないものでもない、根拠を持った手当であるのであります。けれども、こうたくさんあってはお互いに不便でありますから、私は公務員制度調査会においてはなるべく簡素にしたい、しかし収入は減らぬように簡素にしたいという希望のもとに、今調査会で練っているのであります。そういう機会でありますから、実はなるべく新しい手当がふえるということはあまりどうも賛成しかねるのであります。これは公務員制度調査会においてよく練ってみたいと、こういう感じを持っております。それからその次に、新しい薪炭手当についてのちょっとした感じを申し上げてみますと、この薪炭費を定めるということはなかなか一苦労じゃないか薪炭費を支給する各地区に当ててきめるということは一苦労である、もう一つ、支給される地域と支給されない地域との公務員の不公平調和をどうはかるかということであります。それからもう一つは、薪炭手当を給されるところの公務員と地域給を給される公務員との調和をどうするかということ。それからもう一つは、これは予算的にみれば、ちょっと概算した話を伺ってみますると、国家公務員において約一億、地方公務員において約六億という概算でかかるということであります。これはもう概算でありますから、はっきりわかりませんが、そういうことであります。そればかりでなく、もう一つ、これは寒冷地の方はいいのでありますが、南方の人は、寒冷地の人だけに厚くするのは無理じゃないか、南方には暑くなったら扇風機が要るじゃないか、扇風機の手当を要求するのがほんとうじゃなかろうかということを一つ二つ耳にしました。これはほんとうです。こういう点から考えてみましても、私はこの案にちょっと賛成するのはなかなか困難であると存じます。あしからず御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/93
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094・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) ただいまの政府の所見に対する質疑並びに発議者に対する質疑がございますれば、この際御質疑を願いたいと思います。
速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/94
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095・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 速記を始めて下さい。
本案に対し、別に御発言もないようでありますから、質疑は終了したものと認めて御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/95
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096・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。なお修正意見のおありの方は討論中においてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/96
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097・千葉信
○千葉信君 提案者として、討論の結論として賛成と言うことはどうかと思われますが、今回の場合には修正案を提出申し上げることになっておりますが、私はこの法案に対して賛成をするとともに、次のような修正案を御提案申し上げます。
国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当の支給に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案
国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当の支給に関する法律の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
附則第一項中「昭和三十年七月一日」を「公布の日」に改める。
附則中第八項から第十項までを削る。
以上であります。この法律案を御提案申し上げまして以来、いろいろ各派の委員の方々の御協力を得まして原案の通過を希望したのでありますが、その経過における各会派との折衝、もしくはまた個別の話し合い等の条件から、必ずしも原案の通過が見通せる状況ではないという条件でもあり、もちろんその提案の趣旨等につきましては、従来の石炭手当並びに新設される薪炭手当を含めまして、その給与自体が現物支給の性格を帯びるものでありまするし、さらにまた実費弁償の性質を有するものであることば御承知の通りであり、かつ画一的な金額をきめて支給しております関係上、所得税法による現在の徴税をもっていたしますと、高給者ほど高額の所得税を徴収されます結果、法律の示します三トンもしくは一トンもしくは薪炭手当におけるその支給願通りの現物を購入できない状態になり、極端な場合には半分というような支給金額になっております現状から言いますと、ぜひとも近い将来、この問題の合理的な解決を要する問題ではあると思いますけれども、諸般の情勢を慎重に考慮した結果、今回の場合におきましては、ただいま御提案申し上げたような修正を施すことが好ましい状態であると確信をいたしまして御提案申し上げ、以上、討論並びに修正案の御提案を申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/97
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098・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 他に御発言ございませんか。
〔「ありません」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/98
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099・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めまして御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/99
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100・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。
それではこれより国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当の支給に関する法律の一部を改正する法律案について採決をいたします。
まず、討論中にありました千葉君提出の修正部分を問題にいたします。千葉君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/100
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101・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 全会一致でございます。よって千葉君提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/101
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102・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
なお、本院規則第百四条により本会議における口頭報告の内容及び同七十三条により議長に提出すべき報告書の作成その他自後の手続きにつきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/102
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103・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたします。
なお、報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますので、本案を可とせられた方は順次御署名を願います。
多数意見者署名
松原 一彦 菊川 孝夫
田畑 金光 中山 壽彦
宮田 重文 木島 虎藏
井上 知治 松浦 清一
堀 眞琴 加瀬 完
木下 源吾 中川 以良
長島 銀藏発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/103
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104・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) これにて暫時休憩いたします。
午後一時三分休憩
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午後二時一分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/104
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105・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 休憩前に引き続き開会いたします。
自衛隊法の一部を改正する法律案、防衛庁設置法の一部を改正する法律案、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
昨日に引き続き御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/105
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106・田畑金光
○田畑金光君 鳩山総理にまず第一にお尋ねしたいことは、憲法改正の問題に関してでありますが、現内閣が憲法改正と再軍備に関し最も熱心な内閣であることは天下周知の事実であります。先般いろいろな経過を経まして、憲法調査会法案が提案され、憲法調査会を内閣に設置するという方針がとられたわけであります。この法律が今国会に成立するかどうかということは、はなはだ疑問ではありまするが、その点はさておきまして、本調査会法によりますると、日本国憲法に検討を加え、関係諸問題を調査審議し、その結果を内閣及び内閣を通じ国会に報告する、こういうことになっておるわけであります。与党の提案になるこの法律案でありまするが、かりにこの法律案が成立いたしまして、総理大臣の任命によって所定の委員が任命された、そうして調査会が活動を開始した。当然一つの結論を出すことになると思いまするが、総理大臣といたしましては、一体この調査会に幾らぐらいの期間を予定しておられるのか。本調査会の活動によって何年ぐらいに、あるいは一年以内にということにもなりましょうが、結論を得たいという御希望を持っておられるのか、この点をまず最初に承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/106
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107・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 憲法調査会が原案を得るまでにどのくらいの日時がかかるかは、まだ予測がつきませんけれども、一年ぐらいの間には結論は出やしないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/107
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108・田畑金光
○田畑金光君 申すまでもなく、内閣に独立してこの調査機関は活動を開始いたしましょうから、従って自主的な機関であることも了解できるわけでありまするが、総理大臣といたしましては、一年ぐらいを期待しておる、こういうような御答弁であるといたしますならば、この法律制定までの経緯を見ましても、生まれてくるであろう調査会等も、一年前後には結論を出すであろうと見るわけであります。もし調査会が結論を出した場合に、政府といたしましては、どのような取扱いをなされようとする御方針でありまするか、伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/108
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109・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) これは私の考えは、国会議員によって改正案が議会に提出できるような方法をとりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/109
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110・田畑金光
○田畑金光君 そういたしますと、そのお考えは、憲法改正の発案権については、現行憲法の建前上疑義があるから、議員の提案という形で発案を考慮したい、こういう御趣旨一解釈して差しつかえありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/110
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111・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 私は法律の解釈としては、政府の提案でもいいとは思いますけれども、しかし議員掲出でやる方が、なおさら適当だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/111
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112・田畑金光
○田畑金光君 総理は先般来各種の機会におきまして、日ソの国交調整については自分の手でやりたい、またやらなければならない、こういう強い意思が表明されて参っております。内閣総理大臣といたしまして、これは当然のお考え方だと、こう考えるわけであります。またわれわれといたしましても、鳩山内閣の手によってすみやかに日ソの国交調整ができること、軌道に乗ることを希望いたしております。同様に憲法改正の問題につきましても、総理といたしましては任期中に、任期中をいうよりも、現内閣の手によって憲法改正もやりたい、やり遂げよう、こういう御方針でおられますのかどうか、伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/112
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113・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 憲法改正も、私は日本のためになると思いますので、憲法改正も自分の手でやりたいと思いますけれども、現在の勢力では憲法改正はできないのであります。つまり選挙によって憲法改正賛成派を三分の三以上とらなければ憲法改正の実行は不可能でありますから、解散をやって、憲法改正賛成者が三分の二をとったときに初めて憲法改正ができるのでありまするから、選挙を経なければならないこと、及び選挙によって三分の二をとらなければならないこと、二つの条件がついておりますから、自分の内閣の間にこれをやりたいと考えましても、なかなかそれが達成できるかどうか、きわめて不明確だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/113
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114・田畑金光
○田畑金光君 一年以内において答申案を得たい、また自分の手で憲法改正もやりたいわけだが、前提として院内の勢力がこれを許さない、こういうようなお考えのようであります。そうしますと、現在の国会は御承知のように、すでに衆議院におきまして革新勢力が三分の一の議席を占めておるわけであります。おそらく、これからの選挙をやってみましても、これは国民の常識がそのようになってきておると思いまするが、革新勢力は伸びこそすれ、これは三分の一以下になるということは万々考えられないと私はみております。そういたしますと、現在のような国会勢力のもとにおいては、憲法調査会がどのような結論を出そうとも、現内閣といたしましては憲法改正の問題には具体的に手を触れない、こういう御方針と承わっておいてよろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/114
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115・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) とにかく憲法改正というものを争点として国民にその可否を問えば、必ずしも革新派に負けるとは思いません。憲法改正を必要とする論者からみれば、国民によく訴えて保守系はこれによって勝つ、三分の二以上の力をこれによってとれると確信をしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/115
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116・田畑金光
○田畑金光君 立場の相違であり、判断の相違でありまするから、この問題は追及いたしませんが、そういたしますと、かりに憲法改正調査会の答申案が出た暁は、当然総理大臣としては総選挙に訴えて憲法改正の意向を国民に問うてみる、こういう御方針でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/116
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117・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 調査会において案ができますればそういうつもりでおります。ただし革新派が全部反対するということをきめるのは正しい見方でしょうか、あなたに伺ったらわかるでしょう。(笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/117
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118・田畑金光
○田畑金光君 私はそういうようなことに一々答えていたら質問が進行しませんからやめまするけれども、やはり私は総理大臣に考えてもらいたいですがね。今の御答弁にありますけれども、今の院内の勢力、あるいは院外の国民の動き、世論の動向をみましたとき、私はこれは勝敗は明らかだと、こうみているわけです。また私はやはりその時代の進歩と言いますか、歴史の流れというものは、一つの発展の法則に基いて進んでおると、こうみておるわけなんです。これはやはり資本主義の社会から、私たちはやはり社会主義の社会に必然的に移って行くのじゃないか、こういう確信を持っておるわけなんです。いわゆるデモクラシーでお自由と平等な標榜して資本主義社会が生まれたけれども、しかしやはり資本主義が高度化しますれば、諸般の社会的な矛盾が生まれてきて、さらにそれを乗り越えて行こう、なるほど政治的な自由あるいは形式的な自由は保障されておるが、その自由を確実に裏づけるところの経済的な平等というものが保障されておらない。ここに私は資本主義社会の病根かあるとみておるわけです。やはりその病根を私は手術しなくてはならぬ、乗り越えなくてはならぬ、やはり資本主義制度に伴う矛盾を克服するためには、私は新しい社会組織が必然生まれてきはせんかとみておるわけです。やはり新しい社会組織に移って行く、歴史というものは流れて行くし、歴史というものは移って行く、そういうことはやはり歴史の必然であるから、革新的な動き、流れ、あるいは勢力、こういうものが日本にもまた同様に成長して行くだろう、こうみているわけなんです。でありますから、三分の一の革新勢力がすでに国会に議席を占めておるといたしますならば、私は鳩山総理も、まあむだの努力はおやめなさって、一つこの歴史の流れに耳を傾けられて、憲法改正というような考え方は思いとどまった方が賢明じゃなかろうか、かように私は考えているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/118
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119・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) どうもありがとうございます。けれども私は、経済的な平等とか、あるいは実質的な平等とかというようなことが言われますけれども、実際は自由主義が一番いいと思うのです。先天的にも後天的にも人間というものは平等じゃないのですから、先天的にも後天的にも違う人間が自由になり、それだけの発展をして行くということになって平等主義に合致すると思うのです。無理に平等を作ろうとすることは自然に反するというような考え方をしているのです。ですから国民がもし納得すれば、自由主義はやはり三分の二以上とれる、こう思っているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/119
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120・田畑金光
○田畑金光君 この点は、あまりここで引っかかっていると話が進みませんから……。それでは先ほどお話の中に、憲法改正の問題につきまして、現在のような勢力をもってしてはなかなか実現が困難である。従って保守合同というような考え方がそこから生まれてくるものである。こういうような言葉がおったわけであります。そういたしますと、われわれとしてお尋ねすることは、保守合同の大きなねらいの一つが憲法改正にある、こうみてよろしいのかどうか、この点を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/120
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121・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 私は日ソの交渉のことも、憲法改正のことも非常に重大なる問題と考えておりますので、これらの目的を達するために保守合同が必要なりと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/121
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122・田畑金光
○田畑金光君 今保守合同の問題が、保守両派によって政策の話し合い、綱領についての検討、あるいはまた党の性格、任務等についての検討等々がなされているわけであります。先般両保守党の総務会長が、たまたま三重の補欠選挙応援の車中において、保守合同がいつごろ実現するのか、こういうような質問に対しまして、一方は来年の春ごろと言い、一方はことしの秋ごろというような答弁がなされていたわけです。総理といたしましては、この点についてどういう考えをお持ちになっておられるのか、ことに今のお話のように、憲法改正というような問題で、あるいは日ソ国交調整というような問題で、保守合同を考えておられるといたしまするならば、現在すでに日ソ国交の調整は進んでおります。これは国論を統一する、少くとも保守勢力を統一しようとするならば、早晩急がねばならぬ保守合同の問題ではなかろうかと思っております。また憲法改正の問題にいたしましても、鳩山さんの手で憲法改正なやりとげたい、そうなってきますと、これもまた急がなくちゃならぬ問題になってきていると考えております。そういうような客観的な情勢に照らしまして、総理大臣といたしましては、保守合同の時期をいつごろと判断しておられるのか、両政党の総務会長の談話等について、どのような見方をなさっておられるか承わってみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/122
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123・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 保守合同の問題について直接私はその衝に当っておりませんので、いつごろこれができるかということについては予測ができませんけれども、自由党の意見も民主党の意見も、だんだん転がしているうちに一致して参りまして、保守合同もそのうちにはできるであろうというような観測をしております。なかなか近いうちにできるというような観測は今しておりません。むずかしいだろうと思います。しかしながら、だんだんに調和がとれて行きまして、そこでことしの秋とか、暮とか、来年の春というようなことになるであろうと思います。今のところでは直ちに保守合同だといって、自由党の方々と民主党の方々が渾然一体となるというようなことは、なかなか口では言えても事実上むずかしい仕事だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/123
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124・田畑金光
○田畑金光君 その点についてもう一度お尋ねいたしたいと思いますが、総理は七月の六日に首相官邸で記者会見を行われ、日ソ交渉、日韓会談、日比賠償、当面の外交問題、あるいは保守合同問題、憲法改正問題等についていろいろ語られておるようであります。その中に、大体憲法改正は自分の手でやると言われているが、憲法改正の前に保守合同ができたらまた解散して国会を開く方針か、こういう質問に対しまして、憲法改正案ができてからそういうことは考えたいというようなお話の中から、あと一年くらいは政権を担当したいという強い御意思が表明されております。あと一年くらいは保守合同ができてもやはり新保守党の総裁として、また総理としてがんばって行こうとする強い御決意がおありであるのか、承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/124
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125・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 強い意思があるかどうか、そいつはちょっと自分に聞いてもよくわからぬ。私は大体において成り行きまかせの男でありますから、行雲流水で行こう、しいてどうしてもかじりつこうという希望がないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/125
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126・田畑金光
○田畑金光君 総理のてんたんとした気持は非常にわれわれも高く買うのであります。そこでお尋ねいたしたいのですが、憲法改正の問題を論議する場合に第九条が中心になっておると考えております。また今世上の憲法改正論者が、なぜ憲法改正をしなければならぬかという中心課題が、憲法第九条の問題であることも国民の常識判断だとみております。しかしながら、先ほど私が質問しまして総理の御答弁がありましたが、憲法改正というのはなかなか今の政治勢力の情勢ではむずかしいんじゃないかという一つの見方が生まれてくるわけなんです。そういたしますと、憲法の改正ができないという、こういう情勢が当分の間続くかもしれぬとわれわれは見ざるを得ません。その場合自衛隊というものがすでに、陸上に例をとりますと、十三万名今日は保有しております。それから今回の改正によりましてさらに二万名加わります。それで十九万名の要するに陸上自衛隊というものが生まれる。それに海上並びに航空の自衛隊を加えまして、非制服職員も入れますと、今回の改正によりまして十九万五千八百十名という膨大な数に上って参りまして、そこで憲法は改正されない現行憲法のもとにおいて、毎年兵力がこのようにだんだん増強されて行くわけであります。そのような場合に、自衛隊というものは現行憲法の精神から照らした場合、一定の制限というものがあって、限界というものがあってしかるべきじゃないかと私は考えるわけです。これに対しまして鳩山総理並びに民主党の各位は、現行憲法のもとにおいては自衛のためなら軍隊は持てる、自衛の戦争であるならば交戦権も認められておる、こういう解釈をとっておられますが、現行憲法のもとにおいて無制限に兵力というものは増強できるという解釈の上に立っておられるのかどうか、この点を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/126
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127・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 自衛の目的のためならば無制限、こういうあなたの御質問ですね、自衛のためという名をかりて無制限に自衛軍を膨脹して行っていいのか、こういう御質問ですね、私はそいつはできないを思うのです。やはり他国に侵略戦争をやるかもしれないというようなおそれを抱かすような自衛隊の膨脹というものは、現在の憲法においては禁止されておるものだと思います。現在の憲法はとにかく自衛のためには戦力を持ってもいいという解釈はできるとは思いますけれども、その解釈によって現在の憲法をどこまでも無制限に、自衛のためならば、それならば仮想敵国ロシアを考えるならば、ロシアが攻めて来た場合に自衛といってロシアに匹敵するだけの自衛力を日本が増血していっていいかという結論にいくわけですから、そういうような解釈は現在の憲法は許さない、またそういうふうな解釈を許すような憲法の改正も私は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/127
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128・田畑金光
○田畑金光君 そういたしますと、総理にお尋ねいたしますが、憲法第九条に規定されておりますその自衛のための戦力の保持の限界というものは、現行憲法のもとにおいても限界があるという解釈でおられるのかどうか、もしそのような解釈でおられるといたしますならば、今の話を承わりますと、ソ連を相手にして云々というようなお話がありましたが、そのような論議は抜きにいたしまして、侵略されるとか、侵略をするとかいうようなことも、これは一つの相対的な問題でありまして、どこに判断の基準を置くかということに非常に困難だと考えております。そういう相対的な判断で第九条を解釈されますと、限界というものはないと同然じゃなかろうかと、こう私は考えております。もし総理のお考えのごとくに、九条によって限界があるとなされるならば、限界があるという考え方でありますならば、その判断の基準と申しますか、どういう基準、尺度によってそれを評価されようとされるのか、この点承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/128
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129・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 抽象的にそういうようなことに対して答弁する以外に方法はないのですが、抽象的に言えば攻撃的の脅威を与えるような自衛隊は持てない、こういうように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/129
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130・田畑金光
○田畑金光君 昨日も木下委員から質問があり、また私先般憲法調査会法案の本会議における質問に際しまして、鳩山総理にお尋ねをいたしました。それは国会の各種委員会においてたびたび総理は質問を受けられたと思いますが、総理の憲法第九条に対する解釈というものと、在野時代における解釈というものと、今日の解釈というものは非常に違って参っておるわけであります。それは要するに、自衛隊法とか、防衛設置法という法律によって現在の自衛隊もできておる、防衛庁も設置されておるじゃないか、国会の多数によってきめられたことである。従って国会の意思もそういうように発展しておる、同時に国民の常識もそのように変ってきた、であるから私の考え方も変ってきた、これが総理の御見解のようであります。昨日の答弁によりますると、憲法というものは時代によって解釈は変っていく、なるほど法律の解釈はそのときの客観的な情勢の発展に応じてそれぞれ変って行くかもしれません。しかし変るにいたしましても、私は一つの限界というものが当然あるものと考えます。ことに現行憲法の特色は何にあるかというと、第九条を中心とする平和憲法であるということ、それから国民主権を唱えている、主権を国民に置いておるというこの民主主義の立場をとっておるということ、さらにまた基本的な人権は侵すことのできない権利として保障されておるということ、私はこういう三つの点に現行憲法の大精神が盛られておると考えております。ところがその一番肝心な平和憲法であり、平和講義を貫いておる第九条というものが、総理のような解釈によって常に時代の変化であるというような形で移って行きますならば、ゆゆしい問題であると考えております。私はこの際そのような問題についてはさらに答弁を求めようとは考えておりませんが、少くとも総理は在野時代の自分の考え方、自分の憲法に対する解釈というものは、今日の段階に立ってみると一つの政治的な評論にすぎなかった、行き過ぎであった、あるいは間違っていた、こういうだけの自分の説の変ったことに対して責任をお感じになるかどうか、この点を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/130
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131・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 私が現在の憲法のもとにおいて兵力や戦力というようなものを持っては悪いというように三年ぐらい前に申したことは、その当時においてはそういうように解釈するのが当りまえだと思うのです。とにかくあの憲法ができますときに、あの憲法を作ることにおいて指導国たるアメリカは、とにかく日本の戦力というものは根底からなくなそうというような気分を持っておったということは、あの憲法のできる経緯において明らかなんです。しかしながら、そのときから今日までは時が経過しております。時が経過した間に積み上げられたる事実が累積をしたわけです。この時の経過と、その間にできた積み上げられたる事実、すなわち自衛隊ができて、自衛力がだんだん漸増してきたという事実、時の経過とその間に積み上げられたる事実とによって、今日私が主張しておるような解釈をするのが適当だと思うのであります。前にああいうような解釈をしたのは間違っていないと思います。責任をとると言えば、時の経過によって自分の自説を変えましたということを発表する以外にはないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/131
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132・田畑金光
○田畑金光君 私は総理にそこで考えていただきたいことは、吉田前内閣がなぜ国民にあれだけの批判を受けたかということです。これは率直に申しまして、なしくずしの再軍備をやってきたということなんです。国民に対しましては、よらしむべし、知らしむべからず、こういう傲岸不遜な態度をとってきたところに吉田内閣が国民の批判を買った最大の理由があります。このなしくずしの再軍備のやり方と、防衛計画の推進等については、アメリカにおいては万事わかっておるが日本ではわからぬ。国民には知らせぬ。この態度にあったと私は見ております。この点は、当時野にあって、時の政府のなすことを見てこられました鳩山総理も同じような印象を受けられたかと私は見ております。ところが最近の情勢をながめておりますると、どうも鳩山現内閣のやっておられることも、なしくずしの再軍備であり、防衛六カ年計画を尋ねてみると、防衛庁長官は、ぬらりくらりと、どこをつかんでいいかわからぬような答弁を繰り返しておられる。そういう答弁をやらなければならぬような政治的な立場に日本の政府というものは立たされているのかどうか、私はそれを伺いたいのであります。同時に、もちろんそうでないとおっしゃるでありましょう。そうでないとおっしゃるならば、こういう吉田前内閣のやってきたなしくずしの再軍備、あるいは国民とともに論じ、国民とともに話し、語ろうという態度を忘れてきたこの独善的なやり方というものは改めなければならぬと考えております。先ほど、総理の心境は行雲流水であるとおっしゃった。まことにけっこうであります。私も行雲流水という気持ちだけは非常に高く買っておるので、一つそういう気持ちがあるならば、もう少してんたんと……、今の政府のやっておることはどうも前内閣の方針を踏襲しているようになって参りましたが、これらの政治的な情勢はどんな理由でこういうことになってきたのか、一つ御説明を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/132
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133・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 私は隠れて軍備の拡充をしたいというような気分は持っておらないのです。それで国民の意思に問うて、そうしてほんとうの戦力を持ちたい、しかしながら、これは決して旧軍閥の復活を夢みておるわけでは絶対にありません。日本の防衛、自衛力を持ちたい、それはやはり憲法上疑いのない方法によって自衛力を持ちたい、それで第九条の改正をいうことが憲法改正の一大目的になる、こういうように考えております。これは隠れてやらないで、国民の意思を問うて日本の自衛力を持ちたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/133
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134・加瀬完
○加瀬完君 関連して。総理大臣にお尋ねいたしたいことは、今の憲法九条判断しておるようにうかがわれる。それは初めのうちは憲法九条というものが、自衛力であろうとも、国民の世論がこれに反しておったからできなかった、しかし今憲法九条の解釈というものは、自衛力というものは認めるというふうに国民の解釈が移ってきたから、今度はそれが許される、こういう解釈をもし進められるとするならば、これは政府みずからが法の混乱を招く元を作っておるということになろうと思う。憲法という国の基本法というものに一部でも大きな疑義があるならば、この疑義を残したままで解釈を変えて行くということは法の混乱をもたらす最も大きな原因を作ると思う。そこであくまでも鳩山総理が初めに考えたように、この自衛というものを法の上で認めようとするならば、疑義の残っておる憲法というものをまず疑義のないように改正をして、それで戦力の保持なら保持ということが必要であるならば、それができるように変えて行く、こういう手続きでなければ、いつでも便宜的に法が解釈されるということであるならば、これは法の精神というものは全然なくなってしまう。憲法九条の解釈のみによらず、政府は一体そういう法の精神というものを多数決できめる、こういう態度でお臨みになるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/134
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135・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 憲法に対して疑義があった場合において、それを決定するのはやはり国会の意思だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/135
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136・加瀬完
○加瀬完君 法というものは、法の解釈を決定するものは国会ではない。かりに九九%に対する一人の解釈であろうとも、その解釈の方が、法の精神というものを生かすことであるならば、その多数でない少数の意見を採用するのが法の精神です。ましてや、国の基本法である憲法を、時の政府や時の国会の勢力分野、そういうものによって法の内容というものを変えるというふうな疑義々打たせるような行動をするということは、将来の、憲法を守って法治国家として進んで行く日本にとりまして、非常な汚点を残すことになると思う。この点どう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/136
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137・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 民主主義の国家において法に疑義があったりした場合には、国会の意思は最も尊重せらるべき判断を下す機関だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/137
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138・加瀬完
○加瀬完君 そういう疑義があれば国会にかけ国民に諮る。そういった法の手続によりまして法の解釈というものをはっきりと決定して、それからその決定された線に従って行動するというのが政府の態度なり、国会の態度であると思う。そういう手続が規定されておるにもかかわらず、そういう手続を一切省いて、法の解釈が時の政府の意向や政党の意向によりまして決定できるがごとき方法をとるということは、法の混乱というものを将来に残すということで、非常に政府としては慎重にはからなければならない問題たろうと思う。法というのが一つも尊重されておらない。こういう点について政府の御態度は非常に私は反省を要すると思いますが、法を尊重するという点からいって、一体今度の総理大臣の御態度、憲法の解釈に対する御態度、これについて何か御反省はないのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/138
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139・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 私は国家が独立している以上は、領土に対して主権を持っている。領土の主権を持っているということから、主権に対して侵略があるなら、これを防衛するということは独立国の、憲法で許してあろうが許してなかろうが、主権を侵害せられる場合に、これを防衛するということは一国の国家が当然持っている権利だと思うのであります。その主張によって自衛隊法ができた。吉田内閣でありますが、自衛隊法ができた。そして自衛のためなら軍隊を持ってもいいとは言わなかった。戦力は持ってもいい、こういったんです。戦力を持ってもいいということは吉田内閣のときに政府が提案をして、そして国会において多数で通過した法律なんです。それですから、そういう法律が通過し、その後どういう事実が累積せられたかと言えば、それによってあるいは安保条約、行政協定によって約束したところの事実がその自衛隊法に移されて、だんだんと事実が累積せられてきたのです。今日日本の憲法は、そういうことはすべて無法なことだといって最初からくつがえすということは、私は常識ではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/139
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140・田畑金光
○田畑金光君 次に私は教えていただきたいわけでありますが、行政協定の第二十五条によりまして、わが国は防衛分担金を負担することになっておるわけであります。そこで日本にありますアメリカの軍隊、ことに陸上の部隊はだんだん漸減する傾向にあるわけであります。ことに昨日来の政府の説明を承わっておりましても、自衛隊を強化する一つの目標が、アメリカの軍隊を、ことにこれは陸軍部隊でありまするが、陸軍部隊を早く撤退さしたい、こういう趣旨に出てくることが明らかになったわけであります。で、お尋ねしたいことは、行政協定の第二十五条の第二項のB項によりますると、わが国はとにかく一億五千五百万ドルに上る分担金を負担することになっております。この負担金は軍隊が漸減するに応じて当然これは減るものと見ていいのか。かりに防衛庁長官のお話を承わっておりますると、六年後にはアメリカの陸上部隊は全部いなくなる、こういう見通しでありまするが、全然いなくなったような場合に、この一億五千五百万ドルというのは分担しなくてもいいのか。なお海上や空の部隊が駐留しているから、この分担金というものはそれがために六年後でも負担しなければならないのか、どうなるのか、この点を一つ聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/140
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141・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) お答え申し上げます。これはここの分担金というのは必ずしも地上軍たけではございません。空軍、海軍も含まっている趣旨のものであることは当然であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/141
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142・田畑金光
○田畑金光君 防衛庁長官の答弁ですね、もう少しわかりやすく答弁してもらわぬと、質問をしているものはさっぱりわからないですよ。私のお尋ねしていることは、あなたのきのうからの御答弁によりますと、六年後にはアメリカの陸上部隊はいなくなる、こういう見通しのもとに自衛隊を今ふやしているのだという御答弁であったわけですが、六年後に全部アメリカの陸上部隊がいなくなった。その場合には当然一億五千五百万ドルは削られてもアメリカとして文句はなさそうに考えるわけですが、お話によりますと、空と海の部隊がまだ駐留しているから、これには手がつけられないのだ、要するに、それまでこの行政協定の形はこのままの形で生きるのかかどうか、このようにお尋ねしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/142
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143・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) お答え申し上げます。アメリカの陸上部隊が全然いなくなったというような場合には、それは当然この分担金というものは減額される根拠がそこにできてくるわけです。ここの一億五千五百万ドルというものはそのままということじゃないようにあれしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/143
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144・田畑金光
○田畑金光君 よくわかりました。そうしますと、本年度二万名の自衛隊をわが国は増強した。これは七月十八日の日本経済新聞の記事でありまするが、明年六月までに米極東軍一個師団を引き揚げる。これはウイルソン長官が談話として発表いたしておりますが、私はこれが事実かどうかは別にいたしまして、とにかくこの数年を見ますと、事実問題としてアメリカの陸上部隊は減っているんですね。お話のように、部隊が減るならば当然それに応じて一億五千五百万ドルは減額されるのだというならば、防衛分担金の交渉でなぜあんなに長い間苦労なされたのか。また来年度の予算編成が出てくるとなれば、今度もあんなに苦労せられて防衛分担金の交渉をなさなければならないのか。あなたのお話のように、向うの部隊が漸減されるならば、それに応じて当然減らされるというならば話は至ってすなおに解決するはずなんだが、どういうわけであんなに難渋するのか。ことに先般の防衛分担金の交渉の結果、日米共同声明というものが、たびたびこの委員会やあるいは国会で取り上げられております。その内容によりますと、なるほど百七十八億は削るが、そうして本年度は防衛分担金は三百八十億にするが、次のような事態のもとにおいてという条件がつけられている。すなわち次のような条件というのは、簡単に申すと、防衛分担金を減らした分はあげて防衛庁の予算をふやすべし、さらにそれだけでない、そのほかの飛行場を拡張せよとか、施設の拡充をやれとか、こういう問題を交換条件に日本政府は受諾をしているのです。そういうことになって参りますと、この一億五千五百万ドルというのは、部隊が減っても、日本は無条件にアメリカの軍隊が駐留する限りは負担をしなければならないような至上命令のもとにあるかのごとき解釈を持たざるを得ないのであります。で、私のお尋ねしたいことは、本年度まあ三万名自衛隊をふやす、これはこの結果アメリカの陸上部隊もそれだけ減る。これはあなたの答弁からもはっきりしております。そうすると、この次の来年度の予算編成の前に行われる防衛分担金交渉というものは、それだけ当然減るものとみてよろしいかどうか、この点を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/144
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145・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) 防衛分担金の問題につきましては、この二十五条とともに、これに関連する岡崎、ラスクの公式議事録というものがあるというのは御承知の通りでございます。公式議事録ですね、それによりますというと、日本側の防衛力の増強に伴って、日本の防衛費というものを増額する、それによって分担金も減額するということをうたってあるとともに、そしてまた一方、つまる日本側の防衛費が増額する場合に分担金の減額が考慮されるということを言っておりますとともに、さらにアメリカ側の相互防衛のための経費の増加する場合のことも考慮に入れる、こういうことが書いてあるわけであります。それを総合して、やはりこの問題を考えなければならないように相なっておる次第でございます。それから来年度の防衛分担金につきましては、これは私らといたしましては、来年度は減額な交渉いたしたいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/145
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146・田畑金光
○田畑金光君 私はこの際鳩山総理にお尋ねしておきたいわけでありますが、先ほど私が申し上げましたように、先般の防衛分担金の交渉というものは実に難航をきわめたのであります。その結果、政府の予算編成もおくれてきた、国会もこれがために再開がおくれたというような経過をたどって参ったわけであります。つきつめてその原因を明らかにして参りますると、要するに今日の日本政府は、みずからの判断で、みずからの力によって予算の編成ができないという立場におかれておるわけであります。いやしくも一国が自国の財政権の自主性を握っていないということは、まことにこれは恥辱きわまる話だと考えております。独立国家をいたしまして、まことにこれは不輸快きわまる話であるとみなければなりません。見ようによっては内政干渉とも見えましょうし、見ようによっては日本の独立というものが不完全であるということ、こういうようなことを意味するものと考えまするが、この点に関しまして、総理はどのような見解をとっておられるか、承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/146
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147・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 安保条約、あるいはこれに伴う行政協定等の約束のもとに、アメリカの同意がなければ日本の予算はできないというようなことは、まことに遺憾に存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/147
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148・田畑金光
○田畑金光君 安保条約、日米行政協定によって、日本の予算は独自で編成できないというのは、私は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/148
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149・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 防衛分担金というのを私は言わなかったけれども、そういう意味で申しました。分担金ですね、あなたのおっしゃっている……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/149
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150・田畑金光
○田畑金光君 防衛分担金を中心として、なかなか日本政府の独立の判断いかぬ。これはそれがために毎年々々予算の編成がこのようにおくれて行く、あるいはおくれるよりも内政干渉という国民に印象というものを強く植えつけている。これはまことに日米関係の今後のためにも私は願わしくないあり方だと考えております。これに関しまして総理は、こういう不愉快きわまると申しますか、このような独立国家の体面を傷つけるうな、しかもそれはアメリカのためでも、日米関係の良化に資するためのものでもない、こういうことを判断されましたときに、総理といたしましては、日米行政協定の改訂等について、もうこれだけわが国がアメリカの要請に応じて自衛隊を強化されてくる段階でありまするから、一つこれも総理の手によってなしとげるだけの腹がまえはお持ちでありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/150
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151・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 日米関係も、そういうような点から好ましからざる影響を受けておることは両国ともによく存じておるのであります。それですから、そういうような域から早く脱却するようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/151
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152・田畑金光
○田畑金光君 これは私は七月二十四日の毎日新聞で読んだんですが、近く重光、一萬田、河野三相が渡米をされるようであります。おのおの任務を持って行かれることは、国務多忙の折でもありまするから当然のことだと考えまするが、防衛分担金の折衝の下工作であるような印象をワシントンにおいては受けているように報道されております。どういう任務を持っておいでになるのかというようなことを聞いても、答弁がおよそ判断がつきますので、そういう質問はやりませんが、防衛分担金の下交渉というような点等も考えられて、私はやはり少くとも外務大臣等は渡られるものと、こう見ております。と申しますのは、この間の交渉で、外務大臣が防衛分担金交渉で渡米しようという、それを断わられたといういきさつを見ましても、もうそろそろ来年の予算編成の準備期でもありまするから、これは当然のことだと考えておるわけですが、私のお聞きすることは、来年度の防衛分担金の交渉については、どのような手続、と申しますと、やぼかもしれませんが、いつごろから始めるという御方針であるのか、もう始まっておるのかどうか、この点を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/152
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153・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) あなたの想像力は正確だと思います。(笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/153
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154・田畑金光
○田畑金光君 そうしますと、私の想像力の通りだといたしますならば、私は重光外相が渡米される一つの理由は、そのような任務を持って行かれるんだと、こう想像しておりますが、その想像でよろしうございますか、どうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/154
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155・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) そういうような話は、あなたは下ごしらえとおっしゃいましたが、分担金交渉の下ごしらえの範囲に入るべき行動をとられるものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/155
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156・田畑金光
○田畑金光君 御答弁でよくわかりましたから、その点はその程度でとめておきます。
今度は防衛庁長官に一つお尋ねしたいわけですが、先ほども申し上げたように、コンニャク問答を繰り返す時間もありませんので、率直にお尋ねいたしますが、防御六カ年計画といりものは、まだ準備ができていないというお話しですが、いつごろまでにできるのか、これを私はお尋ねしたいのであります。さらに具体的に申しますと、今、総理も言われるように、重光外相も防衛分担金の下交渉で渡米をされるわけであります。そうなって参りますると、少くとも昭和三十一年度の自衛隊の増強計画というものがなければ交渉が持てるはずはありません。そこでお尋ねしたいことは、防衛六カ年計画というものはいつごろまでにできる見通しなのか。今国会だからうるさいので、この国会だけはそっとしておこうとする腹であるのか、この辺を一つお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/156
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157・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) これは実はできるだけ早く作りたいというつもりでやっておるわけでございます。この間からいろいろ早く示せという御意見、私らも実はこういうことを決して隠しておくつもりじゃない、むしろこれは早く示し得る状態になりたいというつもりで今までも研究を続けておるわけでございます。そうして昨日も申し上げましたが、今実際問題といたしまして、アメリカ側からの援助というものが、非常にこれは、この計画を考えます際も、実際上重要な考慮として、その考慮の中に入れなければならぬことでございまするが、アメリカ側でもこれは研究いたしておると私は想像いたしております。それでこれらの研究を進めまして、なるべく早くこれを作りたい、そうして今御審議を国会にお願いいたしておるのでありまするが、国防会議法案の成立を待って、そうしてその国防会議に諮って決定いたしたいと、こう考えておりまして、今その日にちをいつということはちょっとこれはまだ未定でございます。つまり私といたしましては、できるだけ早く国防会議法案の成立を見て、そしてそれに諮ってきめたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/157
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158・田畑金光
○田畑金光君 できるだけ早くということでありますが、お話しの中にもありましたように、国防会議法案が現在出ておるわけです。しかしこれが通るということは、どうも今の政治情勢では、会期等の関係もありまして、私は政府の楽観通りにはいかぬと見ておりまするが、かりにこの法律案か通ったといたしましても、お話しのように国防会議に諮問する事項は何かというと、まず国防の基本方針と国防計画の大綱であろうと考えております。この法律を見ますると、公布の日から施行するということで、すみやかに国防会議というものが機能を発揮するように政府としても努力を払われるものと見ております。そういたしますなら、国防会議法ばかりに国会を通ったとすると、すぐ近いうちにこの法律に基く国防会議が構成されるということになって参ります。またあなたのお話しのありましたように、アメリカとの話し合いのためにも、もう準備ができているはずだと、こう見ておるのです。これも私新聞記事で承知しておるので、それが確実かどうかということを言われたら、これは私も答弁はないのでありまするが、七月一日の朝日新聞によりますると、すでに防衛庁においては三十一年度の予算査定に伴う業務計画を立てておる。これによると三十一年度には陸上自衛隊一万名、海上自衛隊約四千名、航空自衛隊約二万名を増強する案を立てておる。で、三十年を起点とする防衛六カ年計画の第二年度の計画として案を進めておるが、今防衛庁の幹部としては、国会の開会中でもあるから、なるべく計画に触れたくない、こういうようなことでそっとしておるような状況である。私はどうもしごくうがっておるように感ずるわけであります。そこでお尋ねしたいことは、今私たちに審議を求めておるこの自衛隊の増強計画は、防衛六カ年計画の第一年度のものとこれは見てよろしいのかどうか、これが第一の質問であります。第二の質問は、今私が読み上げたような朝日新聞の伝うるこの計画等は、どうも第二年度の計画のようなにおいが強くするわけでありますが、とにかくこれがまた真実かどうかというと時間がかかりまするから、アメリカとの話し合いも近く始めようとなされる。日本の国内においても来年度の予算編成については、もうこの国会が終ればやらなければならぬでしょう。かような状況を考えたときに、防衛六カ年計画というものは、あなたの机の引き出しの中に入っているのじゃないかと、私はこう考えるのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/158
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159・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) よく、すでに成案があるということを、もうきまったかのようにしての御質問がありますが、私はあれは事実として申し上げまして、ほんとうにまた政府として成案を得ていないのが事実なんでございます。もちろん今日までいろいろ研究はしてきております。研究はしてきてはおりますが、政府としてこれが成案だというものが事実ほんとうにまだ得ていないのでございます。これは決して自慢になる話しじゃございませんけれども、まだ事実そこまで至っていない。そして本年度の計画、本年度の予算をこの法律案で国会の御審議をお願いもし、また現にしておりますところの三十年度の計画というものは、本来から申しますならば、この六カ年計画の一部ということで組みますのが本来の筋合であったでありましょうが、今申しましたように、この六カ年計画というものはまだ成案を得ておりませんのです。本年度の計画は、さしあたり本年度の必要と認めました部分でお願いいたしている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/159
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160・田畑金光
○田畑金光君 たまたまこちらに木村前防衛庁長官もおいでになりまするが、あの当時の木村長官の御答弁とあなたの御答弁とは、大体似たりよったりだというような印象を受けるわけです。どうもそのように防衛庁には伝統的に事実をひた隠しにしなければならぬような政治的な情勢のもとにあるのかどうか、非常に私はますます疑わざるを得ないのであります。まあこの点はとにかくといたしまして、あなたの今の御答弁によりますると、現在審議に付されておる本年度の自衛隊の増強計画というものも、防衛六カ年計画の第一年度というものではなくして、現在の必要情勢から提案したのであるというお話しでありまするが、そうしますと、防衛六カ年計画というものはいった基準にして政府は考えておられるのか。私たちは昭和三十年度を起点とする防衛六カ年計画あるいは経済六カ年計画、このような考え方をもって参ったわけですが、あなたの今のお話しによると、これは第一年度の計画ではない。ないとするならば、今政府の考えておられる六カ年計画は、いつの年から始められる計画なのであるか、これを伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/160
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161・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) もう六カ年計画ができます際は、この三十年度の計画が当然事実として、結果的に言いますというと、第一年度として当然それの一部となるべきものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/161
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162・田畑金光
○田畑金光君 だから私は長官に念を押しておきますが、防衛六カ年計画の内容を問われるのをおそれてのあまりでしょうが、とにかく今出ておるのは、これは事実上第一年度計画と見て私は差しつかえないと、こう考えまするが、このように解してよろしいかどうか、改めてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/162
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163・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) 先ほど来申し上げました通り、六カ年計画の場合、これを一つの基点と言いますか、結果的に言いますと、また事実上これが第一年度、こういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/163
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164・田畑金光
○田畑金光君 次にお尋ねいたしたいのは、だんだんこのように既成事実を積み上げて参りますると、もうすでに本年度陸上兵力だけで十九万名に上る、来年度また何万名かふやすでしょう、こうなって参りますると、もう日本の自衛力というものは、憲法の改正を論議する前に巨大なものが、巨大という言葉が妥当かどうか知りませんが、相当勢力というものが生まれてくる。こういうことになって参ります。前内閣の折も再々問題になっていたわけですが、一体こういうことになって参りますると、現在のような志願兵制度によって兵力の充実ということができるのかどうか、あるいはこういうような面からくる一つの制約というものが出てきておるかどうか、こういう点について承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/164
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165・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) お答え申し上げます。現在考えております六カ年計画の構想におきましては志願制度ということで考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/165
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166・田畑金光
○田畑金光君 私鳩山総理に伺いたいのでありまするが、先ほど問題にいたしました防衛分担金に関する日米共同声明の第二項を読みますると、「前記の防衛分担金のほか、日本政府は飛行場を拡張し、また在日米軍の使用する施設の所有者並びに提供者に対し補償するため約八十億円の予算を計上する。」こういうことになって参りました。すなわち先般の防衛分担金交渉を通じまして、日本政府は飛行場の拡張とか、基地の施設の設置に関しましては、一そう積極的に努力しなければならぬ義務を負わされて参ったのであります。今日全国には七百カ所をこえる軍事基地かあります。四億坪をこえる土地と、三百六十五万坪に上る建物が提供されておると承わっておるわけであります。ところが最近の情勢というものは、今さら私が申し上げるまでもなく、この軍事基地あるいは飛行場の拡張問題を通じまして全国的に猛烈な反対運動が起きております。しかもこの運動というものは単に一部勢力の運動ではなくして、大学教授が先頭に立つ、あるいは保守政党も革新政党も、とにかく地域をあげて現在の政府のとっておるこの基地拡張に対しまして反対運動を巻き起して参っておるわけであります。当委員会におきましても、関係地区のそれぞれの関係者を呼んでいろいろ話を聞いて参りましたが、これらの院外における運動を通じ、あるいはこれらの関係者の話を聞きまして感じることは、今のような形でもって政府が確たる方針をとらずして、単にアメリカの申し入れが条約上の義務であるというような考え方でもっておやりになるということは、私は危険きわまることではなかろうと考えております。かえってこういうことはアメリカに対する国民の感情を刺激し、あるいは反米意識を強くする以外の何ものでもない、かように私は見ております。日米共同防衛というのが条約上の義務でありますならば、アメリカに対しまして政府は義務を負うておりましょうが、同時に私は日本政府は日本国民の生活を守るという重大な義務があろうと思っております。条約上の義務と憲法上守らねばならぬ国民の生活権の保障の問題との調整ということが、現内閣の当然苦慮しなければならぬ問題だと私は考えます。この点に関しまして新聞の報道によりますると、さる二十二日の閣議におきましては、現在院外において巻き起っておるこれらの動きに対し、最終的な方針を決定されたということが伝えられでおります。鳩山総理は、この点に関しましてどういう御方針をもって臨まれようとする御意思であるか、この際承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/166
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167・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 基地の拡張問題は実に厄介な問題でありまして、現在のような状態は日米間に非常に不愉快なる問題を惹起しますので、どうにかこれに対して明白に審判ができるような態度を明らかにしなくてはならないと思っております。政府としては、アメリカの基地拡張がもち日本国を守るという防衛問題を逸脱したような基地の拡張には絶対に反対をしたいというような気持でいるのであります。たとえば日本の基地から爆撃機が飛び出すような程度における飛行場の拡張には政府としては反対の態度をとるのであります。ただしかしながら、日本の防衛のため必要な範囲内において爆撃機でない戦闘機が飛び出すという程度の飛行場の拡張にはやはり同意をして、アメリカの要求に応じてこれを提供する義務がおると思うのでありまして、最小限度の飛行場の拡張については日本は協力しようというような態度でおります。そういうような態度はアメリカにおいても十分理解をしておりまして、むやみに飛行場の大拡張は要求はしてきておらないのが現状なのです。それでありまするから、向うが最小限度の拡張を要求しておる限り、日本としては安保条約あるいは行政協定によってこれを提供する義務があるというように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/167
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168・田畑金光
○田畑金光君 最近、昨日の政府の答弁を通じても明らかにされましたが、アメリカの陸上部隊は漸減して、日本においては日本の自衛隊がこれにかわって行く、こういう傾向にあるわけであります。この点は必ずしも日本だけに付する政策ではなくて、アメリカの極東における軍事配置、戦略政策の一環であろうと考えております。これは極東のみならず、アジアのみならず、ヨーロッパに対しても同じような情勢にあろうと考えております。すなわちいわゆるニュー・ルックの軍事政策でありまして、要するにアメリカは機動力を持つ海軍あるいは空軍力をもって対処しよう。最も困難な、あるいは人命の損傷の多い陸上部隊についてはそれぞれの国が担当する、こういうような立場が今のアメリカのとりつつある私は軍事政策ではなかろうかと、このように見て参っておるわけであります。こういうようなことを考えましたとき、もう少し私は日本政府といたしましても、国民のこの血の叫びというものには耳を傾けてもらわなければならぬのじゃなかろうか、こういう感じを禁ずることができません。先般当内閣委員会におきまして、これは話ははずれますが、今回外務省に移住局を作りました。移住政策のための移住局、移民のための移住局ですね。ところが今までの移民というのはほとんど南米の方なんです。それも今年は五千名をちょっと越える程度です。これがため移住局を設置される。このように日米共同防衛で仲良くやっておるわけでありまするから、アメリカ等もこの人口のはけ口に困っている日本の移住等について、もう少し協力してもらいたいというような気持を強く持ったわけですが、なかなかそう参りません。まあこういうようなことを考えたとき、この狭い国土の中でお百姓さんたちは、あるいは町の商人たちは、ほんとうに自分の生活権を奪われる大事な問題にぶつかっておるわけでありまするから、この点は十分政府としても肝に銘じて、国民の声に耳を傾けて、いやしくも力によって万事を解決するというようなやり方は遠慮してもらいたい。このことを強く要望申し上げておきたいと思います。
まだありますけれども、質問の時間が来ましたので、私の総理大臣に対する質問は一応これで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/168
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169・堀眞琴
○堀眞琴君 私はまず憲法問題を中心として二、三の質問をいたしてみたいと思うのであります。
まず第一に、法律の解釈に関する問題でおります。先ほど鳩山首相は、時代の変化と積み上げられた事実に基いて自分の憲法に対する解釈が異なった、変って来た、こういう御意見であります。緊急質問で加瀬君の方から、法律の解釈といりものは多数決によってこれをきめるべきものではない。ただ一人の解釈でも正しい解釈ならばそれを尊重しなければならぬ、こういう緊急の質問に対して、民主主義のものにおいては、国会、あるいは国民、あるいはまた法律を審査すべきそれぞれの機関がこれを決定するのだ、こういう御回答であったように承わって、確かにそうだと思うのです。私は法律の規定している内容が、事突上積み上げられた現実の諸問題によって実際にその法律が廃止される場合があると思うのです。あるいはまた成規の手続によってその法律を廃止する場合がある。いずれにしましても、事実と法律の要請している規定というものがそこで矛盾を来たす場合に、何らかの措置によって法律を改めるということが一番正しい行き方だと思う。そういう観点に立って考えるときに、鳩山首相としては、憲法第九条を今直ちに廃止しなくても、自衛のためには戦力を持つこともできるし、また戦争を起すことができると解釈することが正しいと思うのだ、何ら改正せずに現在の自衛隊を増強することができるのだ、こういう御見解なのかどうか。もう一度それをまず確認をして、それからいろいろ憲法上の問題についてお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/169
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170・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 私は自衛の目的のためならば戦力を持ってもいい。現在の憲法のもとにおいても、自衛のためならば戦力を持ってもいいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/170
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171・堀眞琴
○堀眞琴君 自衛のためならばという解釈の仕方でありますが、今日の憲法学者一般の、日本において最も妥当性があると考えられる憲法学者の見解では、自衛のためでも戦力を持つことは許されない。よしんば自衛のために戦力を持つことが許されても、第二項の後段の「国の交戦権は、これを認めない。」、こういう規定があるからして戦争することができない。従って戦争放棄の第九条の規定というものは、依然として立法者が当時そのように考えたその見解が今日においても通用しているのだ、こういう見解が私は今日の憲法単音の一般的の考えだと思う。この点についてはどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/171
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172・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 私は憲法学者にそういうような意見のあるのも無理はないと思いますけれども、実際において、先ほど申しましたように、自衛隊法もできて、直接または間接の侵略に対して防衛する任務を持っておる戦力か日本に現存いたしまして、それによってその自衛力というものが年々漸増されておる今日におきまして、日本は自国を守るために、防衛するために戦力を持っちゃいけないと言いましたところで、事実においては戦力を持ってもいいという施設が累積されて来た今日でありますから、私はやはり実際政治としてこれを否認して行くわけには参らないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/172
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173・堀眞琴
○堀眞琴君 そうしますと、もう実際上の解釈は、憲法第九条の文理的な解釈とは全く違った方向に解釈されていると、こう見ていいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/173
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174・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) そうです。文理解釈の範囲内においても、やはり自衛力のためならば戦力を持ってもいいというように解釈しても差しつかえないと思います。文理解釈上絶対にそれは否定しなければならぬとは思いません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/174
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175・堀眞琴
○堀眞琴君 第二項の交戦権の問題に関してはどのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/175
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176・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 交戦権については法制局長官から答弁をしてもらいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/176
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177・林修三
○政府委員(林修三君) この交戦権の意味については、いろいろこれは学説もございますが、大別いたしましてまあ二つの説があるように存じます。いわゆる交戦権ということを戦う、いわゆる戦争をする権利というふうに広く解釈する説と、いわゆる交戦国として国際法上一国が持つ種々の権利という意味に解釈する説とございます。普通の考え方はその後者に解釈しているように考えるわけでございます。そういう意味において、いわゆる憲法九条二項の後段におきましては、日本が普通の意味において交戦国として持ついろいろの国際法上の権利というものは一応否認をされているわけでございます。しかしこれはいわゆる一項において自衛権を否認しておらず、従って自衛のために、日本が外国から侵略を受けた場合に、自衛を排除する意味において行動する権利は否認されておらないものと考えるわけです。いわゆる自衛を排除する権利あるいは自衛を排除するために行動する権利というものは、この交戦権の否認という規定とはかかわりなく、別の観点から可能であります。こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/177
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178・堀眞琴
○堀眞琴君 ただいまの法制局長官のお話によりますと、交戦国として認められている国際法上の権利は自衛を排除していない。自衛権の発動としての交戦権を排除していないんだ、こういう御説明のように伺いました。そうするというと、問題は非常におかしなことになると思うのです。もしそのように解釈することができるとすれば、法律の解釈というものはどのようにでも政治的に解釈ができるという結果に私はなると思うのです。決して純粋の憲法学的な解釈の上からいって、あなたのような曲げた解釈というものは認められないのじゃないか。「国の交戦権は、これ々認めない。」というこの規定は、あくまでも戦争する権利を、国が持っている戦争をする権利ですね、独立の国家ならば交戦国としての権利、あるいはまた交戦団体なら交戦団体としての権利、この権利を日本の国は否定しているわけです。よしんば自衛を排除しない、こう言ったところで、交戦国としての権利を行使することができないとなったならば、戦争ができないということに結論としてはなるのじゃないか、その点もう一度確かめておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/178
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179・林修三
○政府委員(林修三君) 先ほど私は言葉をちょっと言い間違えまして、自衛を排除すると申し上げましたが、これは侵略を排除するという意味で言い違った点がございますので、この点は訂正いたします。
今の御質問でございますが、いわゆる交戦権というのは、一国が他国と戦争する場合において、他国を徹底的に撃滅する権利というのが、普通の場合において国際法的に認められておるところだろうと思いますが、正義人道の立場から、国際法上それに対していろいろ制限があるわけです。そういう意味で、交戦国が国際法上そういう戦争状態に入った場合に持ち得るいろいろの権利というものがここに言う交戦権だと思います。しかしそういう意味の交戦権は九条二項において否定しておるわけでありますが、別の面から申しまして、九条一項が自衛権を否定しておらないことば、すべての説が認めておるところです。自衛権を認めておる関係において言っておるので、日本が外部から侵略された場合において、自衛権の発動としてそれを排除するということも、これは当然認められておるところだと思います。その侵略の排除の形が、直接の武力行動、敵対行動に出ることになることも、これは認められておることだと思うのであります。ただその関係は、先ほどの交戦権という言葉と少し観点が違いますが、それを排除することがいけないということは、九条一項、二項を通じてこれを言っておるものではないと考えております。また憲法十三条から申しましても、政府は、当然国民の秩序、自由を守る義務を課せられておる。他国から侵略を受けた場合に、それを手をつかねておってよろしいということは憲法十三条からも出てこない。当然に九条、十三条をあわせて考えて、いわゆる自衛のために必要な範囲において行動する、面接に侵略を排除するという範囲において行動する、これは当然認められておる、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/179
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180・堀眞琴
○堀眞琴君 その交戦権の問題ですが、もう一度お尋ねしますが、そうしますと、法制局長官の見解によりますと、「国の交戦権は、これを認めない。」というこの規定は、国際法上に認められた交戦国としての権利はこれを認めないという意味においてとる、しかし自衛のための、侵略々排除するための戦争は交戦権を認められなくても行使することができるのだ、こういうことになる。そうなるというと、侵略を排除するためのこちら側の正当であるべき戦争は、国際法上の交戦国として行う戦争でないということになると思うのですが、それでいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/180
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181・林修三
○政府委員(林修三君) 先ほどから申し上げます通りに、いわゆる交戦権という問題と、日本が他国あるいは外部から侵略された場合に、自衛のためにそれを排除するために抗争するということとは観点が別だと思います。しかしたまたまその形が、いわゆる戦争、国際法的に見た戦争と見られるような形をとるということは、これはもちろんあり得ることと思いますが、それは私は排除されておらない。つまり日本その自衛のために必要な限度における、の侵略を排除する範囲における自衛行動、これは認められておる。その形を国際法上何と見るか。これは国際法の関連において決する、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/181
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182・堀眞琴
○堀眞琴君 もう一度伺っておきたい。大へん重要な問題ですから、確かめておきたい。そうしますと、あなたの意見によれば、外国から日本が侵略を受けた、これを排除するために日本の方で武力行動々行う、その場合の日本の戦争は国際法上の戦争ではない。あるいは国際法上に認められた交戦権を日本は行使しているのではない。こういうことになるのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/182
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183・林修三
○政府委員(林修三君) あとからおっしゃいました点は、日本は要するに自衛のため必要な範囲において侵略か排除するための自衛権の行使をする、かようなわけでございます。しかしそれが国際法的に見て、いわゆる戦争の概念に入るか入らぬか、これは国際法上の概念から考えるべきものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/183
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184・豊田雅孝
○豊田雅孝君 関連して。今の交戦権の問題ですが、国際紛争を解決する手段としての交戦権は認めないけれども、「前項の目的を達するため、」ということが第二項にある。その関連において、自衛のための行動に伴う交戦権というものはこれを認めるのだという解釈にまでは行っておられぬのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/184
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185・林修三
○政府委員(林修三君) 私はそこまでは行っておりません。行っておりませんで、交戦権という言葉は、先ほど来申しましたように、単純な、戦争をする権利という権利ではない。これは普通の草間、むしろ学説は多数だと思います。いわゆる交戦権として一国が国際法上持ついろいろの権利の集まりだ、こういう考え方でありまして、そういうものが自衛のためなら認められるということは私はまだ言っておりませんので、むしろ一項の自衛の範囲において自衛権が認められておる、自衛のため外国の侵略を排除する、いわゆる自衛のため行動する権利、これは少し観点が違うものだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/185
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186・豊田雅孝
○豊田雅孝君 もう一点。今、法制局長官の言われる自衛行動権と自衛からくる交戦権というものと区別せられたから非常に混乱するので、国際紛争解決手段としての武力行使に伴う交戦権ならば認めるというふうにはっきりすれば、問題はなくなってくるじゃないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/186
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187・林修三
○政府委員(林修三君) 今、豊田先生のおっしゃった点でございますが、そのいわゆる自衛のための交渉権という言葉をいかに解釈するか、こういうことになってくると思いますが、やはり九条の二項の言葉から言えば、前段と後段と文章が切れておる。自衛のためなら認められるということまで言うまた必要もない、かように考えております。いわゆる交渉権という言葉と自衛のために行動する、戦う、何と申しますか、それは現実においては武力行動になると思いますが、いわゆる交戦権という言葉は、先ほど来申しますように、実際に具体的に戦争する権利とは解釈していないわけです。その範囲において私は矛盾は考えられないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/187
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188・豊田雅孝
○豊田雅孝君 法制局長官の主張せられておるようなところから演縛して行くと、文理解釈上、交戦権というものは自衛に伴う限り認めていいという解釈も成り立ち得ると私は思うのですけれども、これはよく御研究を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/188
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189・堀眞琴
○堀眞琴君 今の法制局長官の御答弁によりまして、外国から侵略された場合に、日本が自衛権の発動として行う戦争は、戦時国際法上のいろいろな権利を日本は持ち得ない、たとえば敵の財産であるとか、あるいは捕虜の取扱いであるとか、その他戦時国際法に規定してある権利を日本は持つことができないという結果になる。これは自衛権の発動としての戦争は認めるという見解と私は矛盾するものじゃないか、その点を鳩山さんにお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/189
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190・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 私より法制局長官の方が学問があるようですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/190
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191・林修三
○政府委員(林修三君) この点は決して矛盾しておらないと思うわけでございまして、自衛のためにその必要な範囲において自衛権を行使する、その具体的内容が武力行動になるということは、九条一項及び二項の趣旨から、あるいは憲法十三条の趣旨から当然認められるものだと、こういうふうに申したわけでございます。またそういう場合に、それが国際法上どういうふうなものとして認められるかということは、これは国際法上の問題でございます。たとえば今の捕虜の問題にいたしましても、これは当然にいわゆる国際法上捕虜の問題の坂扱いは必ずしも戦争のみに限られません。ジュネーヴ条約の精神において、お互いの加入国はそれに従って行動する義務がある、こういう観点から国際法的には解釈される、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/191
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192・堀眞琴
○堀眞琴君 いずれにいたしましても、戦争が自衛権の発動として行われた場合には、その戦争を行うための国際法上の権利を日本は行使することができないという結果に私はなると思う。こういう点で、現内閣のとっている第九条に対する見解というものは、きわめて奇妙なものになるのではないか。今の法制局長官の答弁を通じて、鳩山さんはどのように感じられているか、鳩山さんの個人的な感想でよろしいですから、お漏らしを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/192
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193・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 私は領土、その主権が侵害せられたときに、これに対して自衛権があって戦う力を持っておるというならば、憲法上たとえ幾らかの不明な点がありましても、この持っておる主権を侵害せられたときは、これを排除する権利があるということは、これはもう世界に通ずる私は適当な権利だと思うのであります。そういうようなときに、この戦う力をもってやるのがいわゆる交戦権という、いわゆる国際法上の交渉ということにはならないという論は、私は少し窮屈じゃないかというような感じがいたすのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/193
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194・林修三
○政府委員(林修三君) 今の点補足いたしますが、先ほどからの堀先生からの御質問の点でありますが、私は決して、いわゆる他国からの侵略を受けた場合に、それを排除するための戦闘行為ができないということは申しておりません。それに必要な限度においての戦闘行為はこちらももちろんできると申しております。ただ普通の国が完全な交戦権を持つという意味から言えば、国際条約、あるいは国際法的に正義、人道に許された範囲において侵略を排除するのみならず、他国へ攻め入って、他国を屈服させるまでの権限を打っておると思いますが、そこまでは結局ないのだ、結局自衛のためその侵略を排除する、そういう範囲においての戦争権を有する、私はこういうふうに言っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/194
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195・堀眞琴
○堀眞琴君 鳩山首相にお尋ねしますが、自衛のためならば戦力を持つことができる。この戦力の限界です。先ほど来田畑君も質問されたのでありますが、その点きわめて明瞭を欠いている。一体どの限度までが現在の憲法において持ち得る自衛力の限界であるか、これは杉原長官と両方にお尋ねしたいと思います。具体的にお話して下さい。先ほどの、他国に侵略の脅威を与えないような限度といったような抽象的なことではなくて、たとえば日本の軍隊は何十万あれば自衛力として完全なんだという意味の、具体的なことを杉原長官と両方にお尋ねしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/195
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196・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) つまり先刻申したような抽象的の限度はむろんあると思います。なお国力に応じた防衛力ということも考えなくちゃならない。つまり経済力に応じない戦力は持つことはできないということでございます。それですから、一面において先刻申したように、他国に脅威を与えないという限度もあるが、内面的に言えば、日本の経済力に応じない限度、応ずる範囲内という限度がある、こういうように考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/196
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197・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) これも法理論的と申しますか、法理論上から申しますと、やはり抽象的におそらくならざるを得ないと思います。これがやはり自衛のため必要最小限度というふうに表現するよりほかは私はないかと思います。これは客観的に認められる程度のものというよりほか表現の仕方がないのではないか。ただそこに目的だけを掲げて、自衛の目的ならいかなる範囲でもいいのだと、そうはいぬと思います。やはり客観的に見て自衛のため必要最小限度という、客観的に認められるもの、こういうことになると思います。しからば今度は、日本が今持ちたいと考えている実際上のこれは政策の問題になってくるのですが、法理論とむしろ別になるのですが、実際上は法理的に、観念的に認められるよりも、もっと国力等の関係からいたしまして、また政策上からいたしまして、もっと私は限られた範囲のものだと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/197
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198・堀眞琴
○堀眞琴君 鳩山首相は、経済力に応じたと、こういうお話、先ほどの御答弁では、第三国に対して侵略の脅威を与えないということが限度であると、まあ抽象的にはそういうことが言い得ると思いますが、私がお尋ねしておるのは、もっと具体的な、長官は政策的にはという言葉で最小限度というお話をなさったのですが、たとえばアメリカは三百何十万という兵隊を持っている、あるいは中国は何百万という兵隊を持っている、ソビエトは何百万という兵隊を持っている、あるいは朝鮮はどうだ。それぞれ具体的に兵力を持っているわけです。日本の場合、杉原長官にお尋ねしますが、あなたの言う必要最小限度というのはどのくらいの数字ですか。具体的にお示しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/198
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199・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) これはまず現在日本の今後の自衛のため、必要最小限度の防衛力ということを考えて行きます場合に、この大国などの軍備と、これを比較して相似形的にそれよりもある程度小さいものというふうに、そういうふうな考え方じゃなく、日本として考えて行かなければならぬかと思うのです。言うまでもなく日本としては日本の国土を守るということで、決して外に出かけて行って他国を攻めるとか、そういう目的のものじゃございませんですから、みずから日本の国土を守るということで、それが目的だと思うのです。それからもう一つは、昨日も私申し上げましたのですが、日本の今後の防衛力の建設とい、ことを考えて行きます場合に、一つの例として、多少具体的にその考え方を表現する方法として、あるいは適当じゃないかと思いますのは、御承知の通りスェーデンあたりは、決してあれは侵略のために打っているとはだれしも思っていないわけでございまするが、しかし持っているわけでございまして、ああいったある期間を持ちこたえ得るだけの力を持ちたい。そうしてあそこは軍事的に他国と同盟を結んでおりませんけれども、しかし事実上あすこなどある期間持ちこたえておれば必ず他国の援助がある。それによって結局自分の国の使命が保てる。こういうふうな考え方のもとにやっているわけでありまして、日本といたしまして、日本独力では、これは日本の自衛ということそれ自体にもなかなかむずかしいと思います。従いまして、やはり日本としては集団防衛、集団自衛ということは、やはり日本を守って行くために実際上必要である。そうしてその範囲において日本としてさらに日本の国力の許す範囲、国民生活などとの関係を十分考慮に入れて、そうしてもちろん慎重に考えて行きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/199
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200・堀眞琴
○堀眞琴君 あなたの言うことはきわめて抽象的で、何度も伺っているのですが、抽象的にはその通りだと思うのです。しかし自衛のために最小限度必要なと、こうあなたは言うのです。その必要な限度という最小の数字ですね、たとえばアメリカで言う場合には三百何十万、昨年以来漸次これを減らす方向に持ってきていることは、これはまあ向うの発表している通りだと思いますが、あるいはほかの国でも、具体的にこれくらいの兵力があれば自分の国を守る最小限度力だと、こういう工合にどこでもやっているわけです。日本もおそらくそういう計画に基いて、最小限度の兵力というものを予定されている。そうでなければ、自衛のための最小限度の兵力とは言えないと思う。私は具体的にお尋ねする。集団防衛の関係とか何とかいうことはもちろんありましょうけれども、そうでなくて、日本としてはどれだけの軍隊が必要だ。それだけあれば憲法上に言うところの、自衛のための最小限度の兵力なんだということを私は具体的にお尋ねしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/200
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201・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) これは実は今六カ年計画ということを考えておりますのも、そういった点についてある程度この数字的なものを示せるようにしたいということで、実は考えている次第でございまして、これもたびたび申しますように、むしろそういうことを示し得るようにしたい、そう考えて研究を進めておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/201
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202・堀眞琴
○堀眞琴君 アメリカとの共同防衛ということが、日本の防衛だということは、これはしばしば現在の閣僚諸君からわれわれは聞いておるわけです。アメリカの側では大体極東防衛のために、日本に必要とされる防衛力の限度というものを計算して、これまで出しております。御承知だと思いますが、われわれもアメリカのいろいろな行動や、その他によって大体の見当はつかんでおるわけです。ペンタゴンが出しておるあの数字を、具体的に申し上げるのはここで遠慮しますが、あの数字が大体日本の防衛力の最小限度と考えられるか、どうかということをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/202
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203・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) これは掘さんは向うの情報などもとっておられることだと思いますが、これはアメリカ側でも必ずしも確定というほどのものではなくて、かなり私は変化もあり、発展もあることだと思います。すなわちごく最近のはまだ得ておりませんが、私はアメリカ側としてもいろいろと変化があるものだと、こう思っております。そうして日本側といたしましては、先ほどからも申しますように、援助等の関係もありますし、これはアメリカ側のそういった点についても、考え方というものは日本としてもこれを考慮に入れるということは、これは実際問題として必要だと思う。何もしかし、向うがこう言うから全部そのままのむと、そういうようなものでもないし、またアメリカ側としても、そういうように考えておるのではないというように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/203
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204・堀眞琴
○堀眞琴君 さっきの国際政局との関係、昨日も同僚委員の諸君から問題として出されて質疑が行われました。私もその点に関して一つの問題を鳩山首相に承りたいのですが、ジュネーヴの四巨頭会談が、あのような一応将来の見通しをつけることができる段階に参りました。しかも軍縮問題等については、今後国際連合の軍縮小委員会なり、あるいは外相会議等において、具体的な問題として話し合いが行われるだろうと思います。そのときにならなければ軍縮ができるかできないかは、きのうの鳩山首相の答弁の通りだと思います。しかし今日の国際政局が、少くとも平和の方向に向いておるということだけは十分私は認められると思います。しかもその平和は鳩山首相のお話によりますと、きのうは力の平和であり、武力をお互いに持っておって、そのバランスの上にできている平和だと、こういうお話でありました。なるほどアメリカも、あるいはソ連も、あるいはフランスも、イギリスも、それぞれ武力を持っております。しかし、その武力だけのバランスの上に立っての平和かというと、必ずしもそうではない。もちろん軍縮を必要とするのだという観点から申しますると、武力が大きな要素になっていることは、これは否定することはできない。しかし同時に武力のほかに、やはり平和を求めようとする諸民族の意向が私は強くそこに反映しておったと思う。だからこそああいうような、ともかく四巨頭会談の中で一応の方向が出たのではないかと思うのですが、その点に関して鳩山首相はどのように考えられるか、もう一度重ねて御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/204
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205・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 私も堀君と同じような考え方をしております。現在の世界の平和が力による平和、力のバランスによる平和であるか、一国の優越した力を持っての平和であるか、それはわかりませんけれども、とにかく力による平和によって現在の関係は維持できていると思いますが、この力による平和というのは決して永続性のあるものじゃない。結局は力による平和というものは戦争に導くものであるというふうに思っております。そうして原爆だ、水爆だというような強烈な武器がだんだん発明されて、多分力による平和に飽きてきたのだろう、こう思うのです。力による平和というものは永続性がない、確定的でないというように、非常に危惧の念を米ソともに持つに至ってきたものと思う。そこでやはり友好関係、国際関係を正常化して、互いに平和の方が自分たちが住みよい世界を作る唯一の道だということに考えついて、ジュネーヴの会議ということになったと思います。このジュネーヴの会議を長い間チャーチルは唱えておったのでありますけれども、これがなかなか実現しないで、ようやく本年これが実現したということは、とにかく武力による平和というものに危惧の念を持ってきたために、世界がほんとうの根本的な平和を作りたいというためにジュネーヴ会議が生まれたものと思いますから、これには相当の根拠があると思います。どうにかして原爆なり、あるいは水爆なりの使用方法などについて約束をして、そうして戦争の惨禍を避けたいと思い出したものと思いますから、私はジュネーヴ会議というものは相当の成果をおさめるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/205
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206・堀眞琴
○堀眞琴君 ただいまの鳩山首相の御発言、私非常にその御回答を得まして満足なんです。おっしゃる通り、武力の、平和、力による平和というものはいつか破綻するものです。そうしてそれは戦争に導くものだと思います。それに飽きたということもありましょうが、また同時にほんとうに平和を求めようという諸民族の平和への大きな期待があのようにジュネーヴ会議を成功せしめた大きな原因になっておると私は思います。ことに先月でしたか、先々月でしたかのバンドンのアジアアフリカ会議等も、ここに大きく反映していると思います。そこで軍縮会議の成果等も、今度の国連における軍縮小委員会なり、あるいはその他の外相会議等の結果を見なければ的確にはわれわれも判断できません。しかし今日の国際政局の情勢から申しまして、軍縮に関する国際的なる歩み寄りなり、話し合いなりは必ずできるものだという見通しをつけることができると思うのです。これは見通しであります。飽くまでも……。外相会議が開かれてみなければどうとも言えません。しかしアメリカにしても、あるいはソビエトにしても、あのジュネーヴにおいてそれぞれ発言しておるところを見ますというと、軍縮に対する熱意ということは非常に強い。アイゼンハワーのごときは、軍事施設の上を飛行機が飛んで、そうして写真を写してもいいのだというような極めて思い切った、おそらくこの発言などは国内において相当問題を起すのじゃないかと思われるような発言までも、アイゼンハワーは行なっているわけであります。そういうような熱意がおそらく外相会議、あるいは国連等において実を結ぶ時期がそんなに遠くないのじゃないかと考えますが、その見通しについて、鳩山首相としてはどのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/206
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207・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 私もジュネーヴ会議は相当の成果をおさめるものと思います。これが単純に生まれたものではない。前からこういう話があって、ようやく四巨頭がジュネーヴに会合するに至ったのでありまするから、これが成果を少しもおさめないで、このままでなくなるということはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/207
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208・堀眞琴
○堀眞琴君 そういう見通しの上に立つなならば、日本の軍備をさらに強化するということは、むしろ国際政局の動向に逆コースの方向をとるものではないかと考えますが、その点についてはどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/208
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209・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 非常に何と言いますか、大ざっぱに考えますと、そういうことになると思うのです。けれども、大体において幾らジュネーヴの会議が、四巨頭の会談が成果をおさめましても、また絶対に軍備が要らない世の中になるのはほど遠いことではないかと思います。日本が今考えておりまする国防計画というものは、これは独立国をなす以上、不慮の事態に備えるための最小限度のものを考えておるのでありまして、これがあるいはソ連、あるいは中共、あるいはその他の国の侵略に対して、一時的にでもこたえ得るというような、そういうよりな軍隊を作るということを計画しておるのではなく、一国の独立国として最小限度の不慮の事態に処する道の防衛力を常備しておきたいというだけでありますから、この程度のことをやりましても、ジュネーヴ会議の、何と言いますか、世界の平和に対する冷戦に終止符をつけ、世界の平和を持ち来たすというその動きに対して、逆コースというわけにはならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/209
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210・堀眞琴
○堀眞琴君 重ねてお尋ねしますが、私は国家が独立国家であるからには、自衛の手段を持つのは私も決して否定するわけではないのです。ただ自衛の手段を一定の物理的な力の手段だけに求めようとするその考え方に私は反対なんです。私は自衛の手段としては外交の手段もあるだろうと思うのであります。いよいよ侵略をされた場合には、八千万の国民が一致団結していれば、そんなものの排除は私は何でもないと思う。しかも由なくして外国が日本に侵略をするということは私は考えられない。今までの戦争を見ましても、何らの理由なしに外国を侵略したという場合はありません。何かのやはり理由があるわけです。私がこう申しますというと、あるいはヒットラーのドイツが侵略したじゃないかというようなことをおあげになるかもしれません。しかしたとえばヒットラーが侵略した国についてみましても、いろいろ問題があるわけです。たとえばポーランドの問題あるいはチェッコの問題、オーストリアの問題、いずれも、それぞれ理由があったわけであります。私は総理大臣に重ねてお尋ねいたしますが、この自衛のための手段というものは、物理的な力だけをもってその手段と考えていいのかどうか。むしろ物理的な力の手段以外に、今日の国際政局の上においては、外交的な手段その他の手段の方がより重要な意味を持つのではないか。あなたの友愛の精神から考えましても、私はそういうような自衛の手段を考えるべきではないかという工合に思うのですが、どのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/210
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211・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 私も武力を用意するだけでもって自衛に対する防衛ができたというようなことは決して考えません。むしろ自衛の目的を達成するために、国民の生活に不安を来たすようなことがあったならば、これは自衛力の増強によってかえって日本を危うくするように考えます。でありまするから、自衛力の限度につきましても、日本の経済力とにらみ合せて、日本の国民生活を窮迫に持って行かないような限度においての防衛力ということを考えます。と同時に、民主主義外交の問題も考えて、誤解のないようにして、そうして国際関係を正常化して、貿易を増進して、お互いに平和の方が生活が豊かになるんだということを体験できるようなつき合いをして行くということが非常に必要だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/211
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212・堀眞琴
○堀眞琴君 ただいまのお話ですと、現に日本政府がとっている政策とは、私はかなり違った方向に向くべきではないかと考えます。鳩山首相の考えておられるような平和の方向、ごく最小限度の力の自衛手段は持つが、しかしより以上に外交手段、特に民主的な外交的手段というものを重視するというのでありますが、私は自衛力の増強などということは問題にならないと思います。それからきのうでしたか、スイスのお話をお出しになりましたが、私きょう数字を持って参りませんで、スイスの軍隊が何万ですかをちょと忘れてしまいましたが、十万とはないと思います。私どもが昨年スイスに参りました。スイスに半月おりまして、大体スイスの政治情勢等を見てきたつもりであります。スイスの兵力は決して現内閣が考えるような、最小限度の自衛力というにも足らない私は兵力だと思います。東の方にはソビエートがあり、南の方にはドイツがある、こういうスイスであります。もちろん中立的な立場をとっておりますから、どこの国とも、たとえば日本がアメリカと軍事同盟を結んでいるよりな関係はスイスはとっておりません。しかしごく数万だけの兵隊、これも歴史的にただ兵力を持っているというだけに過ぎない。よくスイスの兵力というものは非常に強いのだということを、政府の、ことに防衛庁の人々なとは申すのでありますが、決してそんな強大な軍事力ではないのです。スイスの例をお引きになりましたから、スイスを申し上げるのですが、スイスはむしろ外交手段によって、それをもって自分の国の自衛をする手段として、自衛の手段としているという工合に感ずるわけであります。たとえばソビエトとも、あるいはまたイギリスとも、あるいはドイツフランスとも……、ドイツとは大して深い関係はありませんが、あるいはスカンジナヴィア、あるいは北欧諸国との間に、平和的な外交の政策を推進することによってその国を守って、第二次大戦にも参加しておりません。私はスイスのような国がもし資本主義の国において、ある程度平和の方向を、あるいはその政策をとるとするならば、外交政策をとるのが最も正しいのではないかという工合に考えますが、その点はどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/212
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213・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) スイスは非常にうまく政治をやっておるところだと思いますが、私スイスの例を引いて私弁をしたことはありません。だれがそう申しましたか、私はないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/213
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214・堀眞琴
○堀眞琴君 杉原さんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/214
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215・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) 私はきのうスエーデンをちょっと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/215
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216・堀眞琴
○堀眞琴君 ああ、間違えました。スエーデンです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/216
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217・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) スエーデンでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/217
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218・堀眞琴
○堀眞琴君 ええ。スエーデンです。間違えました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/218
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219・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) スエーデンは、私もここに数字を持ちませんが、私も二、三年前にあすこに参りまして、国連の事務総長のハマーショルド氏からも、あの当時外務省の大臣をしていた同氏から、いろいろ話を聞きました。また国境の状況などもかなり聞きました。御承知の通り、あすこは空軍といりものは非常に精鋭なものを持っており、それから陸軍は割に少いのですけれども、海軍が若干おります。しかしあすこの空軍力というものは、非常に精鋭なんですね。あすこの空軍は非常に精鋭です。それからまたあすこは日本なぞと違って、必要の場合の防衛力というのは、非常にございますですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/219
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220・堀眞琴
○堀眞琴君 今の防衛庁長官の御答弁はふに落ちないのです。私も行ってみて、現に向うの政府の当局の方々とも話をしたのです。決して防衛のための軍隊ではない。十分なる防衛のための軍隊ではない。たとえば外囲から侵略を受けるならば一たまりもなくやられてしまうだろう、私はそうだと思うのです。たとえば第二次大戦に、ヒトラーがスエーデンに進駐しようと思えば、これは私簡単にできたと思います。しかしそれをしないような外交方針をとっておるわけです。つまり防衛の力は武力を中心とするものではなくて、むしろ外交手段によって防衛をしていたのだと思うのです。現に百何十年間戦争したことがないということを自慢のようにしております。そういう国が、空軍は非常に精鋭だというお話でありますが、まさかアメリカの持っているような大きなジェット戦闘機とか、何とかいうようなものはあすこにはありません。全くそれは空軍の精鋭と言ったって、ソビエトや、アメリカや、あるいは英国や、フランス等に匹敵し得るだけの力なぞは持ってこないのです。持ちもしない。そういう国柄だと思うのです。私が言いたいのは、結局自衛の手段というのは物理的な力の手段だけではない。そして今日の国際政局のもとにおいては、むしろ外交的な手段、その他のつまり平和的な、物理的な力ではない手段が、今日の国際政局においては大きな役割を演ずるのではないか。従って自衛力の増強という、自衛隊の今度の増強方針というものは、国際政局に逆行するものではないかという工合に私は考える。その点について質問したわけです。もう一度それを確認しておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/220
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221・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) この国の安全を保つ方法として、これはいろいろありましょうが、その中で最も直接に重大なものは、今のある程度の防衛力を持つということと、それから外交政策だと思います。そうしてそれがために目的はやはり国の安全を保ち、平和の維持、戦争の防止ということでございますから、それがためには両々相待ってその目的を速成するように考えなければならぬことは、おそらくどこの国でもその点はそういうふうな考え方でやっておると思います。しかしただいろいろの国によって、かなり今までの歴史的に見ましても実力的手段にむしろ重きを置くとか、あるいは外交手段に重きを置くとか、その国の事情によっていろいろ違ってくるわけでございます。そうして先ほどちょっと例に引かれましたが、スエーデンのごときも、多分に外交手段というものによって、あの困難な国際的な地位にある国の安全を非常に注意深く外交の運営によってやっておるということはお説の通りだと思います。しかしそれだからといって、軍備の方は全然しないでやっておるかというと、そうではございません。そうしてこれは私はあすこの軍備はどの程度のものかということは、今ここで堀先生といろいろ違った点などを申す気持はないのでございますけれども、あすこなどは確かに空軍力などは非常に精鋭なものを持っておって、現在どうか知りませんが、私が行きました当時はよく言われておりました。私は欧州で、西ヨーロッパで、ロシアを除いてはあすこがイギリスに次いで第二番目に大きな空軍勢力を持っておるということは、これは確かにその通りだと思って見て参りました。特にその点でどうこうというつもりはございません。日本といたしましても、やはりことに非常に困難な地位に立っておるわれわれとして、国の安全というもの々考えて行く場合、私はただ防衛力を増強しさえすればいいという、そういう単純なものではないと思います。これはことに外交の運営について非常なそこに周密な、また大局を見たことをやって行かなければならぬと思います。そうしない国はほとんどないと思います。ただその間にあって、日本は全く敗戦によってまる裸になってしまったこの状態で、このままでいいのだとは私は考えません。ある程度の日本としても備えを持つということは、これは戦争にしろ、平和にしろ、少しも矛盾することではないと思います。それが全然ないことの方が平和の維持にいいのだという見解もございますが、私はその見解とは所見を異にいたします。しかし目的といたしますことは、あくまでも戦争の防止、平和の維持ということでございますから、その点は一致いたしますが、方法の点につきましては、何も日本は自衛力を持たないでいいのだという見解には私は同意いたしませんし、政府としてもそういう考えは持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/221
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222・堀眞琴
○堀眞琴君 自衛力の限界について先ほど御質問申し上げたのでありますが、具体的には少しも話がなかった。わが国の国力に応じて、あるいは経済力に応じてという言葉があったり、あるいは日本の安全を保障するに最小限度必要な自衛力、こういう言葉で、実際には少しも具体的に話がありませんでした。それはあとで追及するとしまして、きょうは総括質問でありますから、もう一つそれに関連して、自衛力を持つということはいずれ相手方を、きのう仮想敵国という言葉で質問したのでありますが、重光外相は仮想敵国という言葉は使っておらぬと言って憤慨されておりました。しかし自衛力はそれを設置するためには、そうしてまたその規模等は相対的に一応きめられて行くと思うのです。こちら側が幾ら経済力に応じてと申しましても、相手方の兵力の配置その他を勘案してこちら側の防衛力を私は持つものだろうと思います。そういうものについて私はきのう政府側の答弁では満足がいきませんので重ねて御質問を申し上げたいと思うのです。ところで日本の場合にはそういうふうな仮想敵国という言葉は避けるにしても、日本を侵略するであろうと予想される国がないというきのうの答弁でありますが、実際にそうですか、そういう工合に考えていられますか、それを杉原長官にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/222
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223・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) 特定の国を指して、ここが日本を侵略してくる国だと私は刻印を押すような、そういうふうな考え方ではございません。もちろん今後世界の大勢が平和の方向に行くことを希望していない者はだれ一人としてありません。しかしそれにもかかわらず、それじゃ一方今後戦争の危険というものは絶対にないかというと、これまた保証する者は一人もない。日本として万一の場合ということを、これは考えておかなければならぬと思います。万一の場合に役立ち得ないようなものは、これは防御力の価値はないと思います。それからもう一つ、私がかねて防衛力の問題を考えます際に、むしろ第一義的に大事だと考えております私見を申し上げますと、むしろそういう侵略などの危険は、現実にはそれが発生しないように、もしかりにそういう侵略の企図を持とうとするようなものがあるとするならば、その企図を未然に防止するという作用をする、いわゆる戦争の阻止力を持つということが、私はむしろ防衛というものの第一義的のことではないか、私は実はそういうふうに思っております。またおそらくは世界の多くの国が今ではそういうことを考えておるのではないかと推測しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/223
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224・堀眞琴
○堀眞琴君 その点に関連してもう一度お尋ねいたしますが、日本の防衛はアメリカとの共同防衛ということを目標にして自衛隊が設けられている、こういうことですね。アメリカとの共同防衛の形において日本を防衛するのだ、こういうことで、アメリカの側では一応の仮想敵国という言葉を避けても、将来起るであろうところの戦争の相手国というものを予定しておりますね。その相手国に対して、たとえば予防戦争等の議論等も行われてきたことは御承知の通りだろうと思う。そのためにアジアの方面では御承知のように、日本ばかりじゃなく、台湾、フイリピンという、ずっと太平洋の大陸に面した地域に対して防衛措置を構じておるわけです。その場合にアメリカとしては特定の国を侵略するであろうという国として考えているわけです。日本はそれと一緒に共同防衛をやっている。そうすれば日本としてもアメリカの予定しているある国を、特定国を仮想敵国というか、あるいは侵略をする国と考えて、日本でもういう防衛措置を講ずるということになるのではないかと思いますが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/224
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225・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) よくアメリカ側のそういう点についてのいろいろの観測があるよりでありますが、もちろんアメリカの内部にいろいろのそういう点についての意見はございましょう。しかし私は、アメリカが結局それじゃどういうふうな政府として政策をとって行くかとなると、ああいう国ですから、いわゆる侵略的なものはあの国情からしても許されないと思う。アメリカの内部にはいろいろのたとえば軍国主義的な考えがあっても、それは一部ありましても、結論として出てくるところは、私は決して侵略的というところには行かぬだろうと判断しております。それからまた現に四巨頭会談の時などでも、アイク大統領なども、やはり予防戦争ということはアメリカとしては全然そういう意思がないということを明言しておる。私はこれは真実そうであろうと思う。またそういうことでアメリカ国民が政府について行くとは思いません。いろいろの批評はありますけれども、私はやはりどうして世界の平和を維持して行くか、安全を維持して行くかということをみな考えておると思う。その間にお互いにいろいろの疑心暗鬼を生じておる。そういう点からいたしまして、今度のごとく直接に話し合うということは、これは非常に重要な意義のあることだと思う。それだから今度のように、結果がどうであろうと、ともかく話し合いをするということ自体が非常に意義が深い、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/225
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226・堀眞琴
○堀眞琴君 私は何も予防戦争というものがアメリカのペンタゴンの政策だとは思いません。むしろ予防戦争に関しましてはペンタゴンでは否定する立場をとってきていると思います。しかし少くとも四十七年前後からのアメリカのアジア政策をみますと、具体的に言えば、ソビエトと中国、あとでは中国も変ったわけですが、とにかくあの大陸の二つの国を当面の侵略するであろう国として予定して、それだからこそ日本と安全保障条約を結び、あるいは韓国と米韓防衛条約を結ぶ。あるいはフィリピンと、あるいは台湾という工合に、大陸に対して戦略的な並びに戦術的な考慮の上に立って今日の戦略態勢を整えておる。つまり極東防衛のためにいろいろの態勢を整えているのだと思います。日本はそれと共同防衛の責任を持って、アメリカはソビエトと中国を侵略するであろう国として、現に朝鮮の問題が起ったときには侵略国という烙印さえ押した。アメリカはそういう立場をとっており、日本はこれと共同防衛の責任をとっておるということになれば、日本の防衛計画の中でのいわば侵略するであろうと考えられるところの国というものは大陸の国ではない、ソビエトと中国ではない、こういう工合に考えられるのですが、その点はどうでしょうか。それと具体的に、たとえば日本の周囲を見回してみて、この点についての御回答を願いたいんです。たとえば韓国、また北朝鮮にしましても、中国、ソビエト、台湾、フイリピン、アメリカ、カナダ日本と海を隔てての国というのはこれくらいの国です。まあタイとか、インドシナを落しましたが……。こういう国の中で、どこが日本に侵略するだろうと考えているかということは、私は防衛庁の立場としては当然出てくる回答だろうと思います。それでもなお侵略するであろう国というものは考えない。ただ漫然と日本の自衛のために兵隊さんを置くという考えで今度の措置をしておられるのか、その点はもう一度重ねてそういう具体的な、日本の周囲を見回しての上と、もう一つはアメリカの四十七年以後のペンタゴンの政策とを勘案して御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/226
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227・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) たびたび申し上げますように、日本といたしましては、ある特定の国を、これこそがいま敵国だとして刻印を押して想定して行くような考えはございません。日米間の協力関係もあくまでも平和と安全のために、それ以外に逸脱することはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/227
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228・堀眞琴
○堀眞琴君 そうしますと、日本に侵略するおそれのある国はない、まあ不時に備えてということを昨日鳩山首相は言っておられる。不時に備えて日本の自衛力を持つ、こういうことなんです。今の杉原長官のお話によりますと、とにかく大陸の国を侵略国とは考えていないのだ、あるいは仮想敵国とは考えない、ただ日本の平和と自立のために、自衛のために最小限の兵力を持つ、そうなりますと、その持つ兵力は警察予備隊時代の七万五千でも多過ぎはせぬかという気がするんです。先ほど鳩山首相は、日本の経済力に応じて、こういうことをお話になっております。日本の経済力から申しますと、七万五十の兵隊でも多過ぎると思います。今日の大衆の生活がどのような状態になっておるか。特に農民や、労働者や、あるいは中小企業者等の生活を考えた場合に、これを犠牲にして、あるいは教育の面すらも犠牲にして、社会保障制度も犠牲にして、千三百二十七億と言いますか、予算外契約の百十四億を加えたり、あるいは昨年度の繰越金等を加えるというと非常に大きな額になるわけです。なお港湾等整備費に含まれた準軍事的な性格の予算等を含めるというと、相当大きな負担になる。これが財政上大きな負担になっておる。経済力に応じてということであるならば、そうしてまた日本の周囲には仮想敵国と考えられるものはない、最小限度の兵力を持つんだ、こういうことになりますと、何も十九万何千までこれを増強する必要はない。むしろこれを減らして、そうして警察予備隊時代の七万九千ですか、あるいは保安隊時代の十一万に減らしてもいいと思う。そういう考えはないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/228
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229・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) そういう考えはございません。警察予備隊時代の七万五千まで減らしてもいいとは、日本の置かれておる客観情勢からいたしまして考えてはおりません。その点は、あくまでも日本は平和主義で行くべきだという点では全然一致いたしておりますけれども、方法の点につきまして堀先生と私は見解を異にしておるものです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/229
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230・堀眞琴
○堀眞琴君 私は杉原長官にもう一度念を押しておきたいのですが、あなたの先ほどの説明では、たとえばソビエト、中国というような国々を決して侵略する国とは思わぬ、当分ですよ。先ほど申しましたように、不時の問題が起るかもしれぬということは鳩山首相も言っておられる。不時の問題が起るかもしれぬということは、やっぱりソビエトや中国を指しておられるじゃないかと思いますが、ところがその中国やソビエトが仮想敵国ではない。その他の国で日本を侵略することのできる国があるか、あるいは侵略するであろうと考えられる国があるかというと、現実にないわけです。そうなったら、何のために十九万何千までふやすのですか。経済力に応じてということならば、ほんとうに経済力に応じて、これを漸減するどころか、激減する方が経済力の点からいって望ましい。その点もう一度その増強する理由を説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/230
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231・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) 日本の防衛の問題を考えて行きます場合、特に経済力の関係、国民生活との関係ということを特に慎重に考えて行かなければならぬことは当然のことでございまして、われわれも今後その点を最も慎重に考えて行きたいと思っておる次第でございます。今回この法案の審議をお願いいたしておりますのは、私どもの考えておりますのは、どうかして日本の独立完成の実をあげて、そうしてそれとともに、防衛の関係で外国にあまりに依存しすぎておる状態、この状態から何とか脱却して行くのが、これが国民の希望だろうと思う。そういう点からいたしまして、一方本年の財政状態等も考え合せまして、ただいま御審議をお願いしておりまする法案を提出いたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/231
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232・堀眞琴
○堀眞琴君 十九万何千に増強する根拠は少しもお述べにならない。ただ日本の完全な独立を得るためでおる、こういうような御答弁だったと思うのです。しかしやはり周囲の、特に日本を取り巻く諸国の事情、今日の国際政局の動き、それから見まして、なせ十九万何千までふやさなければならないかという客観的な根拠が少しも示されておらない。十九何千人ふやせば日本の独立の実があがるのですか、その点を御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/232
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233・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) これは日本の防衛の関係についての上から見ましても、私が申し上げるまでもなく、ほとんどアメリカに依存しておるような状態で、これを方向といたしまして、その点からいたしまして、この増勢によってその方向に行くことが私は明瞭だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/233
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234・堀眞琴
○堀眞琴君 長官の御説明によりますと、自衛隊を増強すれば独立の実があがるのだ、こういうことのようです。そして日本の対米依存関係がなくなるのだ、こういう御発言なんです。そうしますと、日本の自衛力が増強されて行けば、日米安全保障条約というものはなくなるのですか。それが廃棄されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/234
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235・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) これは私は私の率直な私見を申し上げますと、日本の自衛態勢が今後ほんとうに整備されてくると、そうなれば私はその後一体この地上軍、少くともアメリカの地上軍というものは私はこれは撤退ということは予期できると思います。またそれでは空はどうか、海はどうかということでありますが、これもそんないつ、いつということは今私ちょっと予測できませんが、これでも全然現状と同じだと、そういうものではなかろうと思います。やはりある程度の逐次に減少するということも考えられましょう。それから、さらに私が私見として申し上げたいと言いましたことは、これがある時期に至りますれば、現在の日米安保条約というようなものは、たとえ平時においてアメリカのある部分が残っておりましても、その基礎が今の日米安保条約そのままじゃなくして、これを適当な条約に改訂するというようなことなども私は考えられるのじゃないかと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/235
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236・堀眞琴
○堀眞琴君 重ねてお尋ねいたしますが、独立の実をあげるというお話でありますが、今日独立の実があがっておらないのは、日米間の安全保障条約があるからだと私は思いますが、どうですか、その点は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/236
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237・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) これは私日本の実力がまだ経済力でも……、要するに日本の実力の問題が基礎だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/237
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238・堀眞琴
○堀眞琴君 そうすると、その日本の独立の実ということは、安全保障条約には関係がないということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/238
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239・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) ただいま申し上げた通りに私は基本的に考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/239
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240・堀眞琴
○堀眞琴君 私はそういうあなたのその日本の経済力の基礎がなってない、まだ回復されていない。だから独立の実があがらぬのだ、こういう御説明じゃ満足ができないのです。何といったって現実にはアメリカが日本に軍事基地を持ち、アメリカの軍隊が日本に駐留している。しかも防衛分担金等については、向うの指示を得なければ日本側としての独自の立場はほとんど認められない。これは現実に表われた日本のアメリカへの従属関係だと思うのです。独立の実をあげるというのは、そういうような従属関係を規定している、軍事上にしろ、そういうような条約を廃棄することが日本の独立の実をあげることに私はなると思うのです。あなたの説明によりますというと、自衛力を増強すればアメリカ軍はそれに応じて帰って行く、これはこれまでの御説明で私どもは拝承しているわけだ。アメリカでも実際昨年以来、外国に駐留する軍隊等については、特に地上軍はこれを漸次減らして行く、しかし空軍あるいは海軍等については別である、こういうことが昨年のメッセージによって述べられて、今年のメッセージでも、さらにその成果についてアイゼンハワーは述べております。あれらから見まして、日本ばかりじゃなく、ヨーロッパからも漸次地上軍は撤退するという方向をとっているだろうと思う。しかしそうだからといって、アメリカが、たとえば日本、たとえばフィリピン、あるいはたとえば台湾というものとの関係を、地上軍を撤退し、それぞれの国の自衛軍が増強したからといって、従来の関係を清算するということは考えられないと思いますが、あなたはどう考えられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/240
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241・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) これはアメリカも何も好きこのんでおるわけじゃないわけでございまするし、それから非常に大きなやっぱりこれは私国際の情勢いかんということによると思うのです。四巨頭会談等からしてずっと世界の情勢の緊張が緩和してくる。ことにまた今度の四巨頭会談の主たる議題は、ヨーロッパ方面のことが主になっておったようでございますけれども、そして極東方面のことが主たる議題に入っていないということは、これは現実にそうならざるを得なかったでしょうが、しかし私は、これは非常に日本としてはこういう点は重視せられなければならなぬところだと思うのです。今後極東方面においても、真剣にこの緊張の緩和というようなことが欧州方面とも関連しつつなされて行くなら、そういう方向へ行くならば、そういうことと関連して今の点なども変ってき得る可能性がある、だろうと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/241
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242・堀眞琴
○堀眞琴君 時間があと二、三分しかないのですから、今日は非常に何ですが、杉原長官の答弁は具体的なものを少しも答えてくれないので、非常に回り道をした答弁だけをやって非常に私は不満です。次の機会になお具体的な問題等について杉原長官にお尋ねすることにして、きょうはひとまず総括的な質問はこれで終りたいと思います。あとの十分は一つ適当な機会にお与え下さるようにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/242
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243・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 杉原国務大臣に対する質疑の時間はなおございますから、その機会にお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/243
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244・野本品吉
○野本品吉君 私が鳩山総理にお伺いいたしたいと思いました第一の質問は、答弁といたしましてはおそらく堀委員の質問に対する答弁と同じようなものになろうと思いますが、私は別の角度からそれを考えておりますので、一応お伺いいたしたいと思います。それは、この敗戦によりまして虚脱状態になった日本人が、逐次自分を取り戻して参りまして、日本はどこへ行くのでろう、どこへ行かなければならないのであろうということをまじめに真剣に考えるようになって参りました。そこで非常に複雑な微妙な世界情勢の中で、苦難の道をたどらなければならないということを考えております。素朴な大衆までが、世界の動きに対しまして非常に注意深くこれを見守っておるのは最近における顕著な事実だと思うのです。従って世界の一角に、たとえば台湾海峡に、たとえば南方アジアに、やがてそれが戦争に発展するのではないかというような暗雲が見えますというと、わがことのごとく胸を痛める。また世界のどこかに平和の声が上りますというと、胸をなでおろしてほっとする。平和の声がどこに上りましても、日本人全体というものがそれに対して吸いつけられるように耳を傾けておる。私は最近これらの素朴な大衆までが深い関心を持っております平和の声をたずねてみますというと、第一は、先ほど堀委員からもお話があったと思いますが、四月の二十六日のバンドンにおけるアジア・アフリカ会議のいわゆる平和十原則、その十原則のうち特に国民に強く響いたと思いますことは、いかなる国にも侵略行為、兵力使用を避けるというようなこと、またあらゆる国際紛争を平和的手段によって解決するというようなことであります。次いで六月の二十六日に、国連の記念式の式典の議長によって発表せられました参加六十カ国の共同宣言の中にも、また日本の国民の気持に強く食い入ったものがあろうと思います。そのおもなものを私は拾ってみますというと、現在所持しておる兵器を使用する新たな戦争が起れば、人類に計算できないほどの大きな災害を受けることを知ったからであるということが挙げられております。それからまた国連憲章に具体化されております目的と原則に一致して忠誠を誓うことを宣言する、それから平和的手段で国際紛争を解決する、さらにまた原子戦争の破壊をなくするような軍縮計画云々、こういう事柄が言われております。このあとを受けまして、この月の二十三日にジュネーヴにおきまして四巨頭会談が行われて、それらの巨頭はイーデンも、アイゼンハワーも、ブルガーニンも、ことごとく口をそろえて冷戦の対立を避けて、平和の方向へということを言われておる。こういうような一連の平和への声というものは、日本の国民大衆に非常に強く、また深く食い込んでおると思います。これは単に政治を論ずる人だけでなしに、町の、村の素朴な人たちまでそういうふうに考えておるに相違ない。こういう状態の中に今度の自衛隊法の改正が行われまして、三万人そこそこのものが増員されるということになりますというと、国民の懐疑を解くだけの用意がこの提案の底になければならない。これに対しまして提案の理由といたしましては、現下の情勢に対処しということだけでありますが、これは後にこの情勢をどう判断し、どう理解しておるかということにつきましては、あとの問題といたしまして、とにかく世界の平和への動きの中にこの問題が取り上げられたのでありますから、さて世界が平和の方向へたどっておるときに、日本が自衛隊を増員しなければならぬというのはどういうわけなんだろうという、素朴な国民に対してこれが納得が行くような用意が政府にはなければならない、こう思うのでございます。この国民の気持に対しまして、どういうふうに納得の行くような御説明をなさるかというのが私の第一の質問の趣旨でございます。おそらく堀委員に対する御答弁と内容的には同じであるかもしれませんですけれども、私は鳩山総理に、議員である私に答えるということでなしに、村の、町の、山の中におる素朴な大衆に答えるという意味において、その点についての御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/244
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245・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 戦争を回避し、世界の平和を熱望しているということが国民一致の希望だということは、私もそういうふうに思います。野本さんの言われるように、村の人だとか、町の人の中には、自衛隊の漸増についてこの平和熱望の機運、戦争回避の世界の情勢と相反するような、背馳するような考え方を間違って持つような人があるかも知れませんけれども、日本の自衛隊の増強というものは、ほんとうに自衛のための最小限度の準備でありまして、決してこれが戦争の脅威を他国に及ぼす、わが国の住民にまでそういうような心配を及ぼすような程度の自衛隊の増強ではございませんで、全く戦争に破れて、少しの防備力を持っていない日本が、幾ぶんかの防備力を持ちたいということは、国民の間にも私は相当にそういう考えを持つ人があるかもしれません。現在の国際情勢において一兵も持たず、日本の防衛力を一つも打たないで、それで十分安心だと考えている国民もまたないだろうと思いますうただ、日本は不時の災害に備えるために、最小限度の防衛力を持ちたいというのならば、国民も心配をせずに、これに共鳴してくれるものと私は考えております。決してこれが世界に戦争の脅威を与えるような程度の防衛力を持ちたいという企てでないことは国民も了承してくれるものと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/245
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246・野本品吉
○野本品吉君 なおこの際お伺いしておきたいのですが、この間の新聞を見ますというと、今度のジュネーヴ会議の結果、軍縮の方向へ進むであろうということについて、もしそういう方向へ進むとするならば、日本の防衛計画に対しても再検討をしなければならぬということを総理がおっしゃった、これに対して防衛庁の方は、今の日本の防衛計画というものから考えて、そういうことには同調するわけにいかぬという、お互いに対立の申しますか、意見が食い違っているということが新聞で報道されておる。これらの事柄も、この問題を扱って行く上におきましては、やはり私どもとしては相当重要な点だと思う。そこで総理大臣と長官のお二人から、そういう新聞記事に対する御所見を承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/246
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247・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) ジュネーヴの四巨頭会談が具体的にどれだけの成果を持ちきたすかは、今のところまだ不明であります。これから外相会議、あるいは専門家会議等によって相当の成果を収めるということは私も想像をしておりますけれども、現在においてはまだ軍縮はどの程度、原水爆の使用を制限するのはどの程度、どの程度において許さるるかということも全く不明でありますから、現在においては今までの計画通りに進む以外に道はないと考えます。しかも自衛隊の漸増ということは、決してこれは他国に侵略の脅威を与える程度のものではなく、また日本を防衛するということにおいても、ただ一時的の防衛ができるかどうかという程度の防衛力を持ちたいというのでありまするから、防衛庁としては、このくらいの程度のものは持ちたいと考えるのも当然だと思うのでおります。ただソ連とアメリカその他の国々との間において、具体的に軍縮の問題がきまり、戦争の脅威というものが全然世界の国土の上から飛んでしまったような場合において、日本ひとりが世界の戦争の脅威を与えるような態度に出ないということは、これは明瞭だと思うので、日本の防御力は日本の防衛のため、しかも国力に応じた防衛力、経済に、国民の生活に影響を及ぼさない防衛力というような制限がついておるのでありまするから、全然に、地を払って少しも防衛力がなくなった後において、最小限度の防御力を持つということは国民も納得してくれるだろうと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/247
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248・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) ただいま総理からお答えになりましたし、特に私つけ加えることはないのでございますが、軍縮ということはほかのこと以上に、方向としてはだれしも望むところであるけれども、これが具体的に解決に至るまでは、その間非常に熱心な関係者の努力にもかかわらず、そこに非常な紆余曲折をたどって行くということは予想できるところでございます。そうしてまた一方、日本で今考えておりますのは、本来、そのような国際的な水準において軍縮の対象になるような、これじゃ多うすぎるというような、そういう大きなことを初めから考えておるわけではございません。そういうような次第でございますからして、総理がただいまおっしゃいましたことと矛盾はしないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/248
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249・野本品吉
○野本品吉君 それに関連して、お伺いしておきますが、そのような新聞記事は、事実において長官と総理との考え方は全く一致しておると、こう了解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/249
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250・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) けっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/250
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251・野本品吉
○野本品吉君 次にお伺いしたいと思いますことは、通商産業省の設置法の一部を改正いたしますときに、経済審議庁長官に対する質問の途上におきまして起った問題でありますが、やはりこの防衛関係の問題を考える上において大事なことだと思いますので、私はお伺いしたい。それはだんだん質疑応答な重ねて行きますというと、いわゆる経済六カ年計画というものは、防衛計画というものと見合わなければ固まらない。それから今度は、防衛計画についてこちらでお伺いしますというと、経済六カ年計画と見合わなければというようなことで、どうもどちらがどうなんだか、お互いにわからない状態でしたが、最後に審議庁の長官は、つまり防衛計画が先行して、経済六カ年計画が変わってくるということはない、この経済六カ年計画において、大体の規模というものがきまる、そういうふうに考えて行けばいいだろうということの答えで、私は現在においても、将来におきましても、経済六カ年計画の策定推進ということと、防衛六カ年計画の樹立推進ということが、いつでもこういうような状態においてはっきりせずに行くことは、そのいずれもにとりましても、おもしろくない状態である。この両者の関係というものを、どういうふうに調整し、どういうふうに結びつけて行こうとするかということは、相当めんどうな問題だと思う。この点について、私は鳩山総理と防衛庁長官にお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/251
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252・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 日本の防衛力は日本の国力に応じて考慮して行かなければならないと思いますから、言葉をかえて言えば、経済六カ年計画を見合いにして、そうして防衛の六カ年計画を作って行かなくちゃならぬと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/252
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253・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) ただいま野本委員からの御指摘の点、きわめて大事な点であって、しかも非常にむずかしい問題でございますけれども、実はどっちが先、どっちがあとというような関係じゃないと思いますが、とにかく今考えておりますのは、防衛力の整備の六カ年計画をなるべく早く立てたい、そうして、これにはその裏づけとなる防衛生産というようなことも当然考えられることでありますけれども、とにかくまず大体の六カ年の間に整備したいと思う防衛力の規模というものについて、第一番に一つ大体のめどをつけたいと、こういうことで実は勉強いたしておる次第でございます。そういう点、これは防衛庁だけで最後的にきめられるものではもちろんございません。政府の他の部面との調整をはかり、そうしてさらに今度御審議をお願いしております国防会議ができましたならば、そこで御審議をお願いしたい、そういうものがきまることによってこの関係なども、もう少しはっきりしてくる、今のところ実は非常につかみにくい状態にあるように私感じているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/253
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254・野本品吉
○野本品吉君 もう時間がありませんから、私はもう一つだけお伺いいたします。実は前の国会で、私は竹島の問題につきまして、韓国が竹島を占領しているのはこれは直接侵略ではないか、直接侵略であるならば、当然自衛力の発動の対象となるというようなことで、いろいろ質疑をしたのですが、そのときにいろいろと複雑な国際情勢の中にあるので、この問題の解決を国際裁判に提訴して、そうして解決しようとする方針である。ところが国際司法裁判所に提訴しますためには、相手方の合意を必要とする。遺憾なことには韓国はこれに合意を与えなかった。そこで残る手はただ一つ、国際連合の力によってということで進んでいるという御答弁であったわけです。その問題が現在どういうふうに進行されておりますか、これは外務大臣がおりませんですが、おわかりでしたならば、この際御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/254
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255・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 現在どういうような程度の交渉をしたことになっているかということを存じませんので、外務大臣にほかの機会において答弁をしてもらいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/255
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256・野本品吉
○野本品吉君 防衛庁長官、おわかりになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/256
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257・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) これは先ほどおっしゃいましたように、最初国際司法裁判所に提訴した。ところがこれは今おっしゃいましたように、相手方の合意を必要といたします。ところがその合意に応じないということでありますので、そうして一方国際連合というようなこと、これは私実際問題として非常に実行の点では、私自身は疑わしいと思っております。結局気長に日韓間の直接交渉ということ以外に方法はないだろう、そうしてこの際、これは私防衛庁長官として立ち入る限りでございませんが、これはやはり実力を行使するというようなことは、日韓の関係からみでできないと思いますが、今後の外交手段によって、おそらく他の問題と関連して外交的に処理せられる、こう思っております。このことの詳細は私存じませんので、外務大臣からお聞きを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/257
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258・野本品吉
○野本品吉君 これは防衛庁の長官の関与するところでないということはちょっと何でして、理窟としてはこれは防衛庁の長官の問題にもなろうと思うのです。しかし今のいろいろな情勢を総合いたして考えますというと、円満な外交折衝ということが主体になる、私は防衛庁の長官がこの問題に無関心であることは、防衛庁の長官として……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/258
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259・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) 私か先ほど申し上げましたのは、非常に私の言い方が適切じゃございませんでした。私の言わんとするところを私少し……、これを単なる外交問題とする場合に、これだけを単独に取り上げるよりも、ほかの問題との関連において処理するのが外交上適切であろうという所見を持っておりますが、しかしこれは防衛庁長官として少し行き過ぎだから、その点を言わんとして私は言ったので、その私の何でないという、置きどころが少し適切でございませんでしたので、理論上からいたしましても、ああいうのに対して、また実際上からいたしましても、私として関心を持たぬ、そういう意味合いではございません。その点御了解願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/259
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260・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 野本委員に申し上げますが、この問題は、いずれ外務大臣に対して御質問願います。
以上をもちまして、本日の防衛三法案に対します質疑を終了いたしまして、明日に続行いたします。
十分間休憩いたします。
午後五時一分休憩
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午後五時十分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/260
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261・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
国家公務員等退職手当暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本法案について質疑のある方は御発言を願います。政府側からは政府委員大蔵省主計局次長正示君、説明員として同給与課長岸本君が出席しておられます。正示主計局次長から補足説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/261
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262・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) ただいま議題となりました国家公務員等退職手当暫定措置法の一部を改正する法律案でございますが、すでに予備審査の段階におきまして、提案の理由を御説明いたしたのでございますが、委員長の御指示によりまして、補足的に御説明申し上げたいと存じます。
御承知の通り、従来失業保険におきましては、保険期間の長短にかかわりませず、一律に百八十日、すなわち六ヵ月間の給付が行われておりました。これによりまして、国家公務員が退職いたしました場合に、退職金を支給されますが、この退職金が失業保険法に基く給付額に満たない場合は、その差額を失業保険の支給をされることになっておったわけでございます。これによりまして、国家公務員と一般の民間の失業君との間のバランスが保たれておったわけでございます。ところが今回のように失業保険法が、別途改正案が本国会に提案になりまして、被保険者でありました期間の長短によりまして、勤続期間六ヵ月以上十ヵ月未満のものは九十日間、従来のいわゆる一律百八十日を九十日に短縮をいたしております。そうして勤続期間十カ月以上五年未満のものは従来通り百八十日でございますが、勤続期間五年以上十年未満のものは二百十日になり、勤続期間十年以上のものは二百七十日と、非常にこの給付の日数を引き上げることに相なっておるのでございます。かように失業保険の方におきまして、いわゆる失業保険金の給付日額が改訂に相なりましたので、先ほど申し上げました通り、国家公務員に対しましては、退職手当につきまして、この失業保険の給付との差額を補てんする道がございまする関係上、この失業保険法の改正に即応いたしまして、国家公務員等退職手当につきましても、所要の改正をする、こういうことでございます。換言いたしますると、失業保険法の改正に伴いまする技術的な改正を国家公務員等退職手当暫定措置法に加える、こういうことでございます。
何とぞこの点を御了承賜わりまして、大体失業保険法の改正に対しまして、いろいろ御論議があるのでありまするが、それに伴っての改正であるというふうに御了解をいただきまして、御質疑を賜われば幸いだと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/262
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263・千葉信
○千葉信君 一つだけ聞いておきたいと思うのですが、今の補足説明で、失業保険法の改正に伴って国家公務員の退職手当について事務的な改正を行うのだという、そういう説明でしたが、事務的という説明によれば、これは実質上不均衡を生じたり、不利益になったりするような条件は起らないで、単にもう事務的な改正に終っているのだということになると思うのですが、しかしこれはまあこれから審議して行けばわかると思うのですが、実際上片手落ちな取扱い、一般の失業者に比べて国家公務員であるものが退職し、失業者となっても片手落ちの取扱い、もしくは比較して不利益な取扱い、不利益な取扱いというのは、たとえば民間の場合には国家公務員と同じように退職手当ももらっておる。しかし民間の場合には退職手当のいかんにかかわらず、失業者になれば失業保険金をもらうことができるという条件が出ているわけです。国定公務員の場合には退職手当をもらったその退職手当の最低保障については、その退職手当を使い切ってしまった時期にこなければ最低保障は与えられない。同時にこの失業保険そのものと退職手当そのものとは質が違うと思うのです。同じ考えで取り扱うことができないものである。片方は今までの勤務に対する功労の意味を含んで、退職後の生計をある程度維持するために支給される。失業保険はそれと違って、失業しているという条件に対して、仕事がないからそのために失業保障金を支払う。この二つは条件がはっきり違うと思うのです。しかも違うのを同じ率で今回失業保険金の改正が行われるから、失業手当についての改正が行われるということは、私は実質上筋の通らない状態が今後の審議において出てきはせぬか。出てきた場合には、今の説明のように、これは事務的な改正でございますといって説明したことが、少くともこの列席の内閣委員諸君を愚弄する説明だということになると思いますが、そういう点は自信がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/263
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264・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) お答え申し上げます。千葉委員の御指摘の点は、国家公務員と民間勤労者との間の、従来もあった点を御指摘になったのかと思うのでございますが、御承知のように、国家公職員につきましては、ただいま御説明申し上げました通り、失業保険の給付と退職給付とを比払いたしまして、その差額を補てんするという考え方である、しかしそのほかに民間の勤労者については失業保険のほかに退職手当というものをさらにもらっておるのであるから、その点なおアンバランスではないかという御趣旨のようでありますが、この点は、いわば従来もそういう関係はあるわけでございまして、ただ従来は一律百八十日ということでございましたのが、今回は九十日から三百七十日、こういうふうに失業保険の給付が段階的に定められたことに相なりましたので、これに即応させるというために、私どもは技術的であり、事務的である、こういうことを申し上げたわけでございます。従いまして、民間勤労者が失業保険のほかに相当退職金をもらっている。そういうものと国家公務員とのバランスという問題は別途にあるのではないかという御議論は、これはまた全然別の御議論として私どもにもわかるのであります。しかしこの点につきましては、国家公務員には、そのかわりに長年官吏として勤務いたしますれば、御承知のように恩給がございます。また雇用人には共済組合がございます。これらは民間の退職金の制度とまっすぐに比較できるかどうかにつきましても御議論があると思うのでございますが、私ども国家公務員は、そういう別途の恩恵に浴しておりますので、これらの点もあわせ考えまして、本質的なバランスという議論は起るかと思うのでございますが、一応私どもが今回御提案申し上げているのは、単に失業保険の給付が従来一律百八十日でございましたのが、最低九十日から最高三百七十円というふうに、四段階に分けましたので、その四段階に分れたものに対しまして、即応させるような整理の規定をしたという意味におきまして、きわめて事務的であり、技術的である、かように御説明申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/264
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265・千葉信
○千葉信君 今あなたのお話しになったことは私はわかっているのです。わかっているが、本来異質のものである、その性質の違ったものである失業保険金と退職手当、しかも退職手当は両方とももらっている。その退職手当の支給率について、今までの考え方そのものが不公平じゃないですか。第一、質の違ったものを同じ扱いをして、片方は退職手立をもらって、そのつど失業している者に対しては失業保険金が与えられる、片方失業保険金ももらえない立場において、その失業保険金をもらう人たちの失業保険金の支給される条件も備えておらない。そういう状態に対して、一応失業保険金をもらっている人のその金額に満たない退職手当に対してはこれは最低保障をやる。こういうやり方でやってきた。そのやり方に私は矛盾があると思う。ある程度不利益を与えることははっきりしている。ところが今度その失業保険金の支給期間が短縮された。私は延びる方を問題にしているわけではない。短縮されるその失業保険金の率に応じて、またその性質の違う退職手当の方の最低保障も法律で減らす、そうすればますます不利に陥るのじゃないか。失業保険の性質から言って、ある程度生活を保障するというのが政府の国家保障の建前でとられている。退職手当の場合でもやはりそういう観念は伴ってきている。いいですか、それを今までの率よりも半分に減らして、それで一体単に事務的な改正だということが言えるかどうか、これはこれからの質疑の焦点になると思う。いいですか。それから公務員の方には恩給制度があるとか、何とか言いますけれども、恩給を受給するような長年勤務するような人は、失業保険金でも、退職手当でも逆に増額されております。そういう点は問題にしているのじゃないんです。あなたが一番ねらってて、一番対象になる人員数の多い、従って一番予算額を食うところの短期間の勤労者に対して、あなたたちはずっと半分に減らしてしまった。このやり方は結論から言うと、はっきり言いますが、大蔵省の方の計算でも、こういうふうに長年勤続した当に対しては率を上げる。勤続の短い者に対しては率を下げる。ところが下げるものの数の方が総体の支給金額でよも非常に数が多いものですから、予算額全体としては余るということなんです。失業保険金も余る。あなたたちは去年よりも得している。あなたたちが得するのか、国家が得するのか知らないが、失業保険金の方でもはっきり、係官がどう見積ったって三%や四%は去年よりは楽になりますということを言っている。それはそうでしょう。最も数の多い人たちの支給率を減らしているのだから、失業保険金の場合……。それから退職手当の最低保障の関係を同じように減らしている。これは一番生活に困るような連中の立場を全然考慮してやらないやり方なんです。それを国家公務員の場合にも、同率だからこれを事務的な改正でございますということは……、これは審議をすればそういう結論になります。きょうはあなたをおいてそんなに突っ込むつもりはないけれども、あなたの方の言いぐさは気に食わない。これは事務的な改正だというが、事務的じゃない。腹黒い解釈なんて調べれば調べるほど出来ますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/265
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266・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) ただいまの御議論、これは私もよくわかります。一つの大きな政策の問題を提起されておるわけでございまして、その御議論で参りますると、従来百八十日という失業保険の給付日については差額を補てんして参った。これを何も勤続期間の短い者が九十日になったからといって引き下げるということは、本来少なかったものをさらに下げるという問題ではないかという御議論、さらにまた失業保険の方で勤続期間の短いものを九十日に下げるということ自体については一つの大きな問題があるという御議論と拝承したのであります。この点は大きな政策問題かと思うのであります。しかし一方におきまして、御承知のように失業保険につきましては、国におきましてその三分の一を税金で負担をいたしておることも御承知の通りでございます。国家公務員の退職手当は全部これを税金で賄われることも申し上げるまでもございません。そこで私どもといたしましては、従来とにかく国会におきまして、法律によりまして失業保険の給付との差額、こういうことでお認めをいただいておりましたのでございますから、今回民間の方々の退職給付が勤続期間の短い方は九十日ということに短縮をみるならば、その三分の一を税金でみておるわけでございますから、これに即応いたしまして、全部税金でめんどうをみていただいております公務員も、やはりそういうふうになる。これが従来の建前から言いまして、一応きわめて機械的だという意味で申し上げたのでございますが、それがいいか悪いかの御議論は、これは失業保険の改正問題ともからみまして、御意見のような点はございましょうと思います。しかし一方この点は私どもも御参考までに、もうすでによく御承知の通りでございますが、この季節の労務者等におきまして、きわめて短期間の失業保険の被保険者であった方が、百八十日の給付をもらうことによりまして、いろいろ問題のある点もございます。さような点から、労働省御当局等におきまして今回の改正案が出されたものと了解をいたしておる次第でございます。そこで、さような改正が行われます場合には、国家公務員につきまして、従来の基準から一応大体の方に合わしたような改正をすることが筋道ではないか、一応の政策論としてはもっとよくするというような御議論もございましょうと思いますが、われわれとしてはさように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/266
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267・千葉信
○千葉信君 後段の方の労働省の考えもわかっております。あなたの方の考えもわかっております。問題になるのは、なるほどあなたがおっしゃったように、季節労働者の関係は、この失業保険金を当て込んで、短期間に失業してもある程度の失業保険でつないで、そうしてまた失業保険金が切れるころにはどこかへ行って仕事をする。ですから失業保険金が、そういう人々にとってはかなり恩恵というよりも、あなた方が考えているように、かなりこの制度が濫用という言葉は当らないかもしれないが、この制度が活用され過ぎている傾向がある。従ってあなた方がそれを防止しようという考えを持つことは、あなたの方も労働省の方も、予算を出すのは、なるべくそういうことは避けるような方法で今回の改正を行われたことはわかる。つまり短期間の季節労働君なんかが、失業保険金をどんどん活用しすぎた傾向を抑制しようという気持はよくわかるのです。しかし押える場合には押えるための合理的な方法がとられなくちゃならない。それがあなた方の今度のやり方をみると、必要以上に保険金の支給率を、そういう人たちに対して過酷に押さえすぎている。半面からみると、勤続の長いものには保険金の支給期日をうんと延ばした、倍にもした。片方はその代りに半分に下げたのだから、筋道が通っているのじゃないか、一方ではそういう季節労務者なんかの失業保険金の活用を、なるべく抑制するという方法をとったということならば、これは一応表面上は筋が通る。その季節労働者の期日の下げ方が極端なため、それをあなた方が利用して逆に今度は予算を余すというやり方をやっている。あとで申しますが、この勤続期間の計算、在職年数調というものもはっきりあります。それから去年一年、一昨年一年の実際に退職された、それから失業保険金をもらっている人たちの勤続した年数というものの調べもちゃんと持っております。それによると、大蔵省で計算すれば、今度の率の改正の仕方をすれば、予算が三ないし四%余る、こういう計算がすゃんと出てきている。そういうあくどいやり方は、四十二万戸住宅を建てるといってごまかしておいて、あとから、そのうち二十何万戸は民間が建てるのだ、こういってごまかしておいて、内実は全然違う。そういうやり方をして、事務的な改正でございますと言ってごまかそうなんていって、参議院の内閣委員はだまされませんよ、そんなことでは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/267
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268・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) 私ども決してそういう不届きな考えを持っているわけではございません。ただ千葉委員御指摘のように、たしかに本年度におきまして、従来通り計算した場合と、今回の改正による場合とを比べますと、保険給付の額は確かに減るのであります。これはしかしながら、千葉委員も、これは釈迦に説法になるのでございますが。失業保険法は御承知の通り昭和二十二年から施行されたばかりでございまして、勤続年数と言いましても、まあそういう関係からもなお長い方々が少いわけでございます。そこで今後の見通しといたしましては、私は必ずしも今回の改正が負担を軽減する一方の改正であるというふうには断定できないと思うのであります。今さら申し上げるまでもなく、平均の勤続年数も、いわゆる平均寿命というものも、だんだんに延びているのが一般の傾向でございますし、経済の安定に伴いまして雇用期間というふうなものもだんだん長くなって、これに伴って失業保険の給付が勤続期間の長い方に対して厚くなって行くということは、私は国家の産業、雇用の関係その他からいっても、まことに喜ぶべきことではないかと思うのでありまして、そのためにこの給付がふえ、一方におきましては、もとより保険料収入もふえるわけでございますが、国の負担もまた、先ほど申し上げたように、この一部を国が負担をいたしておるのでございますから、これがふえて行くということは、国家のためにもまことに喜ぶべきことではないかと思うのでありますが、たまたま本年減ったからと申しまして、私どもはそういう不届きな、千葉委員がおっしゃいましたような、これは事務的だと言いながら、しかも非常に財政を負担軽減するようなことばかりを考えているじゃないかという御趣旨でもしお話でございましたら、決してさようなけちな考えでございませんので、将来ますます勤続期間、平均年令等が延びまして、この給付が増して行くということは、国家産業、また雇用のためにも喜ぶべきことであるというふうにむしろ考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/268
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269・千葉信
○千葉信君 最後に一つだけ伺いますが、失業保険の方については、これは社会労働委員会に敬意を表して、そこまでは私はあまり言うつもりはないのですが、しかし国家公務員の退職手当の関係から言いますと、あなたは、今、今年は減るけれども、失業保険金なんかについては来年はどうなるかわからない。これは今申し上げたように、社会労働委員会に私は敬意を表しますから黙ってそっちの方にまかしておきます。しかし事国家公務員の退職手当の予算額等については、これは今までの実績、それから今の勤続している公務員の勤続の状態、全部調べがついていますが、これは行政管理庁からもらってありますから、全部ついている。そのついているのと、それから今までの実績からいう退職者の平均勤続年数等の算定から言いますと、あなたの言うように、今年は減っているけれども、来年はふえるかも知れぬということは、それは答弁としてなり立っても、実際上そんなことは起りっこないことははっきりしている。そういう意味からいうと、あなたたちのやり方はあくどいぞということがはっきり言える。しかし今日は資料をあまりそろえて持っておりませんから、あとでまた改めてやります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/269
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270・長島銀藏
○長島銀藏君 議事進行で発言を求めたわけですが、今日は大分暑うございますし、難問題の法案も二つあがりましたから、ここらで今日は議了していただきたい、こういう動議を提出いたしたいと思います。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/270
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271・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) それではさよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214889X03419550726/271
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