1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月二十一日(火曜日)
午前十一時二十八分開会
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委員の異動
六月十五日委員須藤五郎君辞任につ
き、その補欠として羽仁五郎君を議長
において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 成瀬 幡治君
理事
剱木 亨弘君
宮城タマヨ君
市川 房枝君
委員
岩沢 忠恭君
中山 福藏君
廣瀬 久忠君
藤原 道子君
小林 亦治君
一松 定吉君
羽仁 五郎君
衆議院議員
神近 市子君
国務大臣
法 務 大 臣 花村 四郎君
政府委員
法務大臣官房調
査課長 位野木益雄君
法務省刑事局長 井本 臺吉君
法務省矯正局長 中尾 文策君
法務省保護局長 齋藤 三郎君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 堀 真道君
法制局側
法 制 局 長 奥野 健一君
説明員
最高裁判所長官
代理者
(事務総局総務
局総務課長) 磯崎 良誉君
最高裁判所長官
代理者
(事務総局家庭
局長) 宇田川潤四郎君
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本日の会議に付した案件
○下級裁判所の設立及び管轄区域に
関する法律の一部を改正する法律案
(内閣提出)
○売春等処罰法案(衆議院送付、予備
審査)
○少年院法の一部を改正する法律案
(内閣送付、予備審査)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/0
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001・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) これより法務委員会を開会いたします。
まず、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題に供します。
本案に対する質疑は一応終了いたしておりますが、別に御発言がなければ、直ちに討論に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/1
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002・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/2
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003・小林亦治
○小林亦治君 議論が尽されましたので、討論を省略して直ちに採決に移っていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/3
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004・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 別に、御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/4
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005・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/5
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006・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、本院規則第百四条により、本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他事後の手続につきましては、慣例により、委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/6
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007・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたしました。
それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。
多数意見者署名
市川 房枝 宮城タマヨ
剱木 亨弘 廣瀬 久忠
藤原 道子 一松 定吉
小林 亦治 中山 福藏
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/7
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008・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) それでは売春等処罰法案を議題に供します。
まず、提案者から趣旨説明をお願いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/8
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009・神近市子
○衆議院議員(神近市子君) ただいま議題となりました売春等処罰法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
戦後の混乱期におきまして、社会不安、道義の頽廃等の影響を受け、売春をする婦女の数が著しく増加いたしましたことは、すでに御承知の通りと存じますが、その後わが国が独立を獲得し、社会の秩序もおいおいに回復して参りました今日においても、なお、売春をする婦女の数がおびただしいものがありますことは、まことに遺憾のきわみと存じます。
申すまでもなく、売春は、健全な性道徳を破壊し、善良な風俗を乱し、また、おそるべき性病を蔓延させる原因となるものでありますが、一方、それは、婦女の純潔を害し、その基本的人権を無視する行為でもありまして、現代の文明国家におきましては、ぜひともその絶滅を期さなければならぬものと考えるのであります。
ところで、わが国における売春の形態を概観いたしますと、古くからいわゆる公娼と私娼とが存在しておりましたことは、御承知の通りでありますが、占領時代に、一九三六年一月二十一日付連合国最高司令官の、日本における公娼廃止に関する覚書によりまして、表面上は、一応公娼その他契約に束縛された私娼の制度は廃止を見たのでありますが、事実におきましては、依然として娼家及びこれに隷属する私娼と認められるものが、形を変え、公然と存在していると言わざるを得ない実情にあるのであります。かかる実情というものは、とりもなおさず、一面においては身体及び意志の自由を拘束されて日夜売春を行うことを余儀なくされている女性があり、他面においてはかかる白色奴隷ともいうべき女性を搾取して、その肉体的精神的苦業による利得をむさぼる業者があることを示すものでありまして、かかる事態は、日本国憲法が基本的人権を確立し、個人の自由と尊厳とを宣言し、その奴隷的拘束を排除している趣旨に全く背反するものと言わなければなりません。わが国が独立を獲得し、民主主義国家として鋭意再建に努力を払っておりますときに、かかる封建的な暗黒面の存在を許すことは、根本的に矛盾する事態であるばかりでなく、将来、国際連合に加盟した暁におきまして、世界人権宣言の目的を実現し、他の民主主義諸国家と肩を並べて、国際社会に名誉ある地位を占めようとするためにも、重大なる障害となるものと申さなければならないのであります。
以上のような事態に対処いたしまして、売春や売春をさせる行為等の絶滅を期するためには、もとより国民一般の民主主義的自覚、道徳的観念の高揚、衛生思想の普及向上にあわせて、民生の安定のための諸施策に待たなければならないことは言うまでもないのでありますが、これと同時に、売春及び売春をさせる行為等を処罰する立法措置を講ずべき必要のあることが痛感されるのであります。
現在におきましては、昭和二十二年勅令第九号、婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令が、昭和二十七年法律第百三十七号、ポツダム宣言の受諾に伴い発する法務府関係諸命令の措置に関する法律によりまして、独立後も法律としての効力が与えられているのでありますが、この勅令は全文わずかに三個条にすぎず、その効果はあまり期待できないのであります。さきに、昭和二十八年三月三日、第十五回国会において売春等処罰法案が参議院において議員から提出されましたが、これは、同年三月十四日、衆議院の解散のため廃案となりました。その後、昭和二十九年五月十三日、第十九回国会において再び売春等処罰法案が衆議院において議員から提出されましたが、この法案は第二十回国会に継続審査の措置をとられたものの、同年十二月九日をもって廃案となりましたので、同年十二月十日、第二十一回国会において三度同法案が衆議院において議員から提出されたのであります。しかし、この法案も、昭和三十年一月二十四日、衆議院の解散のため、廃案となりました。
以上が、最近における売春等の処罰に関する法律案の立案並びに審議の経過でありますが、翻って諸外国の立法例を見ますれば、今日の民主主義諸国家におきましては、売春及び売春をさせる行為等を処罰するために法制を具備しているものが多いのでありまして、さきにも申し述べましたように、将来わが国が国際連合に加盟いたすためにも、この際、国際連合が採択いたしましたところの、人身売買及び売春により利益を得る行為の禁止に関する条約の趣旨を尊重した法律を制定いたしますことは、きわめて必要なことと考え、また、今日世論において売春及び売春をさせる行為等の処罰に関する法律の制定を要望する声が高まっておりますので、この世論にこたえるために、この法律案を立案提出いたした次第であります。
次に、この法律案の内容の概略につき、御説明申し上げます。
次に、この法律案におきてましては、売春の定義を掲げて、婦女が対償を受け、または受ける約束で不特定の相手方と性交することをいうものとし、その売春をした者及びその相手方となった者を共に処罰することにいたしました。
第二に、売春の周旋、勧誘及び売春を行う場所を供与した者も処罰するとにいたしました。
第三に、婦女を欺き、もしくは困惑させて、又は親族、業務、雇用その他の特殊関係を利用して売春をさせた者も厳重に処罰することにいたしました。さらに、その者が婦女からその売春の対償を収受し、要求し、約束した場合には、刑を加重して、一年以上十年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処することにいたしました。
第四に、婦女に売春をさせることを内容とする契約の申し込みまたは承諾をした者を処罰することにいたしました。これは、当然公序良俗に違反する行為でありますから、かかる契約が無効であることは論を要しないのでありますが、これに刑罰規定を設けることによって、人身売買を防ぎ、婦女を奴隷的に拘束するがごとき関係の成立を防止しようとするものであります。
第五に、売春施設を経営し、または管理した者、及び売春施設の経営に要する資金、建物その他の財産上の利益を供与した者を処罰することにいたしました。
なお、以上の罰則には、情状により懲役及び罰金を併科しうることとし、さらに第六条から第八条までの行為については、取締りの徹底を期するため、いわゆる両罰規定を設けることにいたしました。
以上、立法の趣旨及び本法案の要点につき御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことを希望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/9
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010・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/10
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011・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 速記を起して下さい。
本案に対する質疑は次回に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/11
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012・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 御異議ないと認めさようにいたします。
速記をとめて下さい。
午前十一時四十三分速記中止
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午後、零時二分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/12
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013・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 速記を始めて。
暫時休憩いたします。
午後零時三分休憩
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午後二時十五分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/13
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014・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) これより委員会を再開いたします。
少年院法の一部を改正する法律案を議題に供します。本案について御質疑のおありの方は御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/14
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015・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 ただいま問題になりました少年院法の一部改正につきまして、前段の死傷者に対する手当金についてのことは、後日の委員会に回したいと思っております。きょうは連戻状のこととそれからあわせて手錠の問題等を少し法律的に伺ってみたいと思っております。この前者条文に入ります前の一般的の質問をいたしまして、これもまだ最後まで済んでおりませんのでございますが、いろいろな都合上、きょうはじかにこちらに入って伺いたいと思っております。この政府の法律案に対します提案理由を見ますというと、これはまことに時宜に適しました納得のできることなんでございますが、ここにもございますように、逃走者を連れ戻す場合の措置を明確にして、少年院の在院者が逃走した場合には、敏速かつ適切な措置によって、社会と本人の利益のために、なるべく早く連れ戻しができるように、という希望から今度の改正をしたというその趣旨にも私はまことに賛成でございます。ただ、一番の問題点でございますが、今まで少年が逃走いたし汗したときに警察官の活動につきまして非常に問題もございますし、立法上の問題もございますし、実際の警察官の活動につきましても疑義もございましたし、また警察官の申し分を聞きましても、なるほどと納得できるような、これは何とか手を打たなければならないのじゃないかというような、つまり立法的の措置を要するじゃないかというように考えておりましたことに対しまして、今度のこの法案によりまして、警察官に院の院長の請求がありましたときに、家庭裁判所の判事がつまり連戻状の令状を発することができるというそのことは、まことに私は警察官の活動につきましてそうしてまた逃走いたしました少年たちを敏速に連れ戻すという意味合いにおきまして、長らくの問題を解決する非常にいい法案でございまして、これには私は全面的に賛成をいたします。でございますが、少年院の職員が子供を連れ戻すときに強制力を使って連れ戻さなければならない場合だけに判事の令状を院長の要求によって出すという、その点なのでございます。その点につきまして私は一問一答でまず矯正局長にそのお答えを願いたいと思っております。今まで少年が逃走いたしました場合は、実際の状態はどういうことになっておったのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/15
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016・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 二十九年中に逃走いたしたものの連れ戻し状況がどういうことになっているかということを、これは少年院だけのことでございますが調べてみますと、昨年中に逃走いたしましたものの総計が八百八十三名となっております。そうしてその中で未復院、つまりまだ逃走したまま帰って来ないもの、これを二百三十二人、結局六百五十一名が連れ戻されたことになっていますが、それがどういうふうな状況で連れ戻されているかと申し上げますと、少年院の職員が連れ戻したもの、それから警察官が連れ戻したもの、それから両者が協力して連れ戻したもの、あるいは民間人の協力によって連れ戻されたもの、その他もございます。自発的に復院したものというものもございまして、まだそのほかにございますが、大体こういう状況で帰っておりますが、その日数を見てみますると、大体最初の日から二日間に三百二十五名、約半数でございますが、三日目で五十二名というふうに帰って参りまして、五日から十五日までの間に百四十六名、それから今度は三十日くらい、一ヵ月で帰って参りますものが七十一名、三十日以上で帰っておるものは五十七名というような工合になっております。そうしてその中で少年院の職員が連れ戻したものが二百三名、約三分の一で、警察官が連れ戻したものが二百六十、両者の協力によって戻されたものが五十八、自発的に帰って参りましたものが三十七名、大ずかみに申しまして大体さような工合になっていす。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/16
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017・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 少年院の職員が連れ戻すという場合に、手錠をはめて、そうしてほとんど強制的に連れ戻すというような場合はたくさんございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/17
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018・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 最初の二日間に少年院の職員が百六十二名、それから警察官と協力いたしまして三十二名連れて帰っておりますが、大体こういう場合は手錠をはめる場合も相当あると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/18
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019・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 少年に手錠をはめてもいいという根拠はどこにございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/19
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020・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) これはこういうふうな強制力を伴いまする処置は、刑事訴訟で申しますと逮捕、勾引、少年の関係で申しまするというと、同行であるとか、あるいはこういう連れ戻しであるとかいうふうな場合には、やはり強制力を使うということが前提になっておりますので、その妥当な強制力の使用方法というふうに認められます範囲と方法というところで使われるようなものは、大体初めからその中に含まれて予想されておるものだというところから使っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/20
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021・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そうすると法律に根拠があるという解釈でございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/21
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022・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) その個々の場合について明文はございませんが、そういう強制力を使うということからいたしまして当然出てくる結論ということになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/22
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023・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 実際問題としまして、それはやむを得ずそう手錠をはめて引っぱってこなければ、どうしても連れてくることができん、やむを得ずのために手錠をはめたという、すべてがそうだと局長お認めでございましょうか。つまり私の意味は、不当に手錠を使っていないかという心配からそれを伺っておるわけでございますけれども、局長はどういう御意見なんでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/23
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024・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) もちろんこういうものの使用というものは、もうほんとうに最後のぎりぎりのほかに手段がないという場合にしか使えないものでありまして、その必要を越えて使うということは、これは許されないわけでございますが、おそらく現場におきましても、そういう精神でこれを使っておることと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/24
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025・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そうすると逃走したものの三分の一というものは、みんな手錠をはめて引っぱってこられたと解釈してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/25
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026・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 私具体的にその点につきましてまで調査をいたしておりませんが、まさか三分の一のもの、つまり二日間につかまえたものを全部について手錠を使っておるということは考えられないと思います。そういう場合に職員がたくさんおりましたら、職員で取り囲んで連れて来ることができると思いますし、あるいは近い場所でございましたら、手をとるとか体をつかむとかいうふうなことで帰せることもできると思いますから、これはそういうふうに全部手錠を使っておるということまで考えなくてもいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/26
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027・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 その手錠がいわゆる子供の人権をじゅうりんしているかいないかという、これは大事なことだと思っておりますが、その最後の責任を負って下さる方は一体だれなんでございますか。少年院長でしょうか。局長でしょうか。大臣でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/27
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028・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) まあ、これは結局法務行政の最高責任者が、これはまあぎりぎりまで押しつめて参りますると、法務大臣ということになると思います。しかし具体的には矯正局長がそういうことにつきまして判断いたしまして、大臣からまかせられて指揮監督をいたしておりますので、まあ矯正局長に責任があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/28
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029・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そうしますと、局長は、三分の一のものがどういうふうにして連れ戻されるかということは、あまり詳しく御存じないような先ほどの御答弁のように私は解釈しましたが、こういう大事なことにつきまして、責任者としてそれが本当に必要に使われておるか、必要以上に職員が、つまり自己を守る意味合いにおいてやすきにつくという意味合いにおいて使っておる場合があるのじゃないかというようなこと、で今まで責任を持ってお調べになったことがございますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/29
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030・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 具体的には調べておりませんが、しかしそういうふうなときの処置、態度などなんかについては、種々気をつけなければならないことにつきましては、たびたび注意は喚起しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/30
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031・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 少年院というものは、これは矯正教育の場所で、刑務所と違っておりますことはもちろんのことでございますが、民法の八百二十二条に懲戒権のことが言ってございますが、それに親権者の行うところのいろいろなものが規定されております。その親権者の懲戒権につきまして、そのことから少年院法の第八条の懲戒というものが私出ておると思っております。これをこの法律の精神をよく読んでみますと、少年院の院長は親権を代行する権利を持つという、つまり親代りに少年を預かるという私は精神じゃないかと思っておりますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/31
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032・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 私は精神はそうだろうと思いますが、法律的に直接の結びつきは、少年院長が親権を代行しているというようなところまで正確なものではないと思いますが、しかしその精神はもちろん親代りになって本人を保護育成する、矯正していくというようなものであろうと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/32
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033・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 院長にその親代りの権限がございまして、その下で統率されておる職員も、自然に親となり、教師となる責任を持って、そうして愛情をもって導くのが私は矯正教育の真髄で、しかもこの少年法あるいは少年院法の法律のこれは精神であろうかと思っているのでございます。その少年院を逃走いたしました者について、いってみれば、わが子がわが家を逃走したと同じ私は意味であろうと思っておりますが、一体そういう子供が家出をしました場合に、それは親心といたしましたら、いかなる手を尽しても甘く家に戻ってほしい。そうしてこの種の子供は一ときも早く連れ戻さなければならないというわけは、周囲の社会を騒がせるし、近所を荒すし、それからまた、逃走した者は必ず何か悪いことをするだろう、するはずだ、だから子供のために親心をもって早く連れ返さなければならないというのが、私はこれはもう親の責任でもあるし、親の愛情であろうかと思っております。そういうものが連れに行きましたときに、一体今まででも手錠をはめて引っぱって来なければならないということは、これは教育者を放棄しているもので、少年院の職員のこれはあり方であろうか、非常に低下しておる、教育的の思想のない職員であればこそ、私はこんなことができるというように解釈したいのでございますが、その点いかがでしょうか。理屈ではなしに実際問題はどういうことになっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/33
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034・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 少年院の職員が、少年に対しましてそういう気持でなければならぬということは全く同感でございます。ぜひそうありたいものだというふうに考えております。ただ、逃走いたしました者の中に、いろいろ状況が違っておりまして、非常にあばれて反抗して、どうしても帰ってこない、特に脱出直後の状態などでは、相当反抗もいたしますし、なかなか乱暴もいたしまして、すぐはちょっと帰ってこないという、説得くらいではなかなか帰ってこない場合がありますので、そういう場合はやむを得ず強制的に引っぱって帰ってくるという場合も生じてくるわけでございますが、しかし、そういうことになりましても、やはりそれはどこまでも愛の精神でやらなければならぬことはもちろんでございまして、何も片っぱしから手錠を使って易きにつくというようなことがあってはもちろんならないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/34
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035・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そこで私伺いたいのでございますが、旧矯正院法の第十五条を見ますと、「在院者又ハ仮退院者逃走シタルトキハ少年審判所及矯正院ノ職員ハ、之ヲ逮捕スルコトヲ得」となっております。ここにも逮捕という言葉はある、そうして「逮捕スルコトヲ得」となっております。それから新少年院法、その後の少年院法によりますというと、これは十四条で、少年院法の十四条「在院者が逃走したときは、少年院の職員は、これを連れ戻すことができる。」ということになっております。これは非常に逮捕という言葉がやわらかくなっておりまして、「これを連れ戻すことができる。」だからこの連れ戻すこともできるがときと場合によったら、子供の状態によれば、連れ戻さなくてもよいという解釈が私はできると思う。それで私はこの条文の解釈ですが、ここに私は少年院法の非常に妙味があると思うのでありまして、実際問題にもたくさんあることですが、逃げてみた、逃げるということはそれはいけないことです。無断で出ていくということはいけないことですけれども、出てみましたが、幸いにどろぼうもしないで、それでちょうどいい人に会って、その人に救われていい職についたということもあるでございましょう。また家庭に帰りまして、両親のもとで一生懸命に働いておって、もう何にも問題がないという場合も、少いとは思いますが、私は事実あるとそう信じます。それからまた、すぐ逃走して長い日にちになりますというと、女の子で結婚して子供までできておった。これは私は実際知っている事実なんですけれども、そういったようなことがあります場合には、ぜひ連れてこなくちゃならない、強制力を使っても連れて来なくちゃならないと解釈しないでも、この第十四条というものは非常に妙味がある。ところがこの第十四条が、おそらく政府の解釈と私の解釈とは違うと思いますが、一つ中尾局長の第十四条に対します解釈を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/35
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036・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) ただいまの現行法の第十四条の規定のことでございますが、これは連れ戻すことができる。ということは、連れ戻してもいいし、連れ戻さなくてもいいというような規定ではなく、少年院の職員に連戻権を与える、少年院の職員に連れ戻しの権限があるというように解釈いたしております。その理由といたしましては、裁判所の判決がございまして、その裁判所の判決によって少年院に入れておくわけでございまして、そこから逃げました者については、やはり少年院の職員といたしましては、どうしてもこれをそのまま放って置くということは許されないわけでございまして、やはりそういう法律関係をちゃんと正常なものに戻さなければならないという点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/36
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037・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そうすると、私の解釈しております解釈と同じでございますね。つまり連れ戻す権限が与えられているという、その権限がもちろんあるとなると、なぜ今度の連戻状に、その院長が要求してわざわざ判事の令状を職員に与えなければならないという、この案については、私は変だと思っておりますが、いかがですか。この法律のつまり十四条で十分まかない得ることじゃないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/37
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038・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) ちょっと私の申し上げ方が悪かったかもしれませんが、権限があるということと、それから連れ戻さなければならないというような解釈とでございますので、連れ戻してもいいし、そのまま放っておいてもいいというような意味ではございません。なお、その連戻状の問題でございますが、その権限をこれは十四条の場合は、これはもう強制的に連れて帰るという場合だけのことでございまして、もう任意に帰ってくるというような、あるいはよく本人を説得してそうして納得して帰らせるというのは十四条には含まれておりませんので、強制的に連れ戻すことができるという場合だけの規定ということでございますから、従ってその強制力を使う場合には、一定の手続を踏んで慎重にやろうと、こういうところで今回の改正案を出しているような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/38
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039・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 どうしてこの条文から強制的に連れ戻さなければならないという解釈をしなければならぬという、何かそう解釈しなければ……、つまり強制的に連れ戻すのだというこの十四条を解釈するというそのもとはどこにございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/39
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040・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 合意の上で本人が任意で自由意思で帰ってくるというようなものについては、これは別に法律に規定しなくてもまかなえるわけでございまして、その法律に規定いたしまするのは、本人の意思に反しても、場合によっては強制力を使っても煙れて帰るのだということで、この法律の規定は作られているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/40
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041・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それはどこから出てそんなことになるのです。強制力をもっても子供を連れて帰らなければならないという、そういう実際の場合は私もあるとは思っているし、必要だと思いますけれども、この条文をそういうふうに解釈するのだということ、つまり強制力をもってやるのだということはどこから出ますのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/41
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042・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) つまり、任意で帰って参りますものは、これは特に法律上規定しなくても、そうしてまた少年院の職員に限らなくても、これはだれでもできるわけでありまして、特に少年院の職員に限ってしかも法律で連れ戻すことができると規定いたしましたことは、やはり法律に規定をいたしませんと、普通の状態ではできないので、そういうことを規定するわけでございますので、これはやはりこの法文の解釈からいたしまして今申し上げたようなことになるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/42
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043・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 もちろん、自分で悪かったと思って帰ってくる子供があるということは、これはそうあるべきことで、それから一度は出てみたけれども、どうも少し悪いこともしたのだけれどもおわびして警察の厄介にならないうちに帰ってくるというのもあるでしょう。それから警察官に、また特に職員に見つけられて納得づくで帰ってくる、それから納得しないで、少しはいやだいやだ、少年院には帰らないよと言ってだだをこねる者もあるでしょうが、それを納得さして連れて帰るという、少しは無理だけれども強制的に引っぱって連れて帰るということがこの条文だというのだったら、なぜその上に新しいこういう判事の令状を突きつけて子供を連れてこなければならないような条文が必要でしょうか、もうこの条文で足りているじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/43
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044・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) まあ連れ戻しの方法につきましては、もちろん極力納得をさせて、そうして穏やかな方法で、いろいろ手数はかかりましても、この十四条によらずに連れて帰るということが理想でございます。また現にそういうふうに努めておるわけでありますが、しかしそれでもどうしても帰らない、しかもそれを連れて帰らなければならないという事情があるというような場合に、この十四条が動くわけでありますが、そうしてそういうことになりまするというと、やはり本人の意思に反して強制力を使って連れて帰るということでございますので、それについては慎重に、またできれば納得するような方法でやった方がいいというわけで、令状主義を今度採用したいと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/44
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045・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そういたしますと、子供がどうしても納得しないで強制力をもって令状を突きつけて、そうしておそらく今規定しようという手錠をはめて、どうでもこうでも引っぱってくるという状態のときに、この令状がもらえるわけなんですね。令状を持って行くわけなんですね。だけれども、局長はここのところをそれでよいとお考えでしょうか、どうでしょうか。私はまあ、わが子ではないにしても、長くそれこそ親としての責任、先生としての責任を持ちながら、とにかく手がけた者が出まして、それは子供の年令の超過しておる今のことでございますから、だだをこねる子もあるし、反抗する子もあると思っております。ですけれども、そのときに令状を持ってきておるぞ、手錠を持ってきておるぞ、そら令状を執行する、手錠をはめて引っぱってやるといって、少年院の教官がそこまでしなければならないということは、私はこれは少年院の今の教官がいかに無能であるか。そうして、そんなことをして子供を取り扱わなけければならないというようなことだったら、私はもう少年院なんかぶっつぶせで、みな刑務所に入れたらよいと思っております。私は一日でもほんとうに責任を持ち、愛情を持って育った子供に対して、それは私はできぬよという少年院の職員がすべてであることを願っているのです。しかし、そういうことが事実においてあります。悪い子供がおります。それは認めております。そういう場合には、警察にそれをやらしたらいいので、私は矯正院の職員全部というものは、絶対に強制力を行使して子供を手錠をはめて引っぱってくるというようなことは、これは考えるさえ許されないことだと思っておりますが、その点いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/45
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046・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 強制力は、これはもう必ず手錠に限っておるということもございません。要するに本人の意思を抑圧してこちらの実力で連れて帰るというわけでございますから、従ってあらゆる場合に手錠が使われるというわけではなくて、まあそのほかにいろいろ手段もあるかと思いますが、しかしいずれにいたしましても、どうしても連れて帰らなければならない者がおるという場合、しかも本人がどうしても言うことを聞かないというような場合があり得るわけでありますから、そういう場合にそれではどういう処置が考えられるかということになりますると、これはまあ大体は警察官なんかに頼むことになると思いますが、しかしいずれにいたしましてもこの少年院の職員が本人の意思に反して強制的に連れて帰ることができるのだという建前をとっております以上、つまり少年院の職員はそういう強制的な連れ戻しはできない、一切そういうことは警察官かだれか外部の者にやらせることにして、少年院の職員はもっぱら説得だけで、説得しても手段を尽しても本人がいやだと言ったら、もう少年院の職員は手を引かなければならないというような建前をとるならば別でありますけれども、しかしまあ現行法もとっておりまするように、場合によってはやむを得なければ実力に訴えても連れて帰ることができるのだというような規定をおいておりまする以上は、そういう実力を行使する以上はやはり慎重にやった方がよい。実力を行使する場合になることは、もちろん悲しむべきことであり、できるだけ避けなければならぬことでありますが、しかしどうしても実力を行使するということなら、やはり慎重にやろうというだけのことでありまして、どういう場合にも令状を持って行って、そうしてすごみをきかして引っぱってこようという趣旨では毛頭ないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/46
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047・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そういう場合はできるだけ少いことを望みますが、警察官に令状を持たせて警察に引っぱってこさせたらどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/47
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048・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) もちろんそういうふうにいたしたいと思います。しかしいずれにいたしましても、少年院の職員が強制力を使って連れて帰ることができるのだというのが、これは現行法の建前であります。必要な場合には……。そういうことになっております以上は、そういう実力を使う場合には、これだけの慎重な態度をとりなさいというだけのことでございまして、どういう場合にも実力を使うというのではこれはないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/48
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049・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それは数少いどうしても悪い少年で引っぱってこなければならないときには警察官を使って、そうして一年に十件あるか三件あるか知りませんけれども、その子供のためにこういう権限をときに悪用されたり乱用されたりしたら、それこそ子供の人権をじゅうりんするような大事なこういう法律を新たに作って、私が心配しておりますのは、今日この矯正教育といってもやはり教育の機関で、そうして大事なあのそれこそ、どろぼうの子供も社会の役に立つ子供を作ろうといっての今日の苦労なのでございますが、そういう子供たちの教育は、それはほんとうに教育の仕事というのは学校のみならず、こういう院につきましても、それこそ気長い話で回り道もしなくちゃならない。そうして金も非常にかかるこの仕事なのでございますけれども、だけれども今日のような刑務官で、つまりどろぼうを相手にしておって、それになれておるというような者をやむを得ずこの国家財政の貧困から使わなければならないというような今日の実情におきまして、こんな危ない権限を私は少年院の職員に与え得るというようなことをしておきましたら、やっぱり程度の低い人と言ったら失礼でございますけれども、教育ということの観念の薄い、そして少年法や少年院法がどういう精神を持っておるかということを十分に理解しないようなその職員に対しましてこれだけの権限を与えましたら、やはり私は低きにつきまして、それで子供を引っぱってくるにしましても、なだめて納得させて連れて来るよりも、それは手錠をはめて引っぱって来れば楽なんです。そして道でずらかりもしないのですから、もうやすきにつきたいというような人であったら、これほど楽な私は助けの法律はないと思っておりますけれども、それなればこそ私はこれを考えものだと思っております。もっともっとこれは教育の問題で根本をいってみたら、そして職員の質の問題を解決しなかったら、こんなものをやすやすと作っていただいたら迷惑する者は子供であり、そしてそれは親の目の前でも、それから家庭におります子供でも無理やりに引っぱって来るということになったら、これは大へんなことが起ると思っております。その点いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/49
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050・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 私はどうも宮城先生のお話を承わっておりまするというと、むしろ私たちの立場の方に何かこの御賛成願えるのじゃないかというように感じるわけでありまして、つまり強制力を使って少年を連れて帰るというのは、現行法でやっている方法なんです。現行法の認めているところでございまして、それはこの十四条によりまして、強制的に、本人がいやだと言っても強制的に連れて帰る、また場合によりましては、手錠なんかをはめる場合もあると思いまするが、つまり現行法でやっておりますることを、新たに権限を何も与えるわけではなくて、この現行法でやっておりますことについて自粛をしようと、つまりぬうっと行っていきなり連れて来るというようなことにしない。やはり一応裁判所の方に連絡をいたしましてその令状をもらって、別に令状を持って行って、別に突きつけるのじゃございません。ただ令状を持って行けば、令状が出ているという事実だけでけっこうでありますが、そうしておいてそれから本人に実力を行使する、場合によっては実力を行使することがあるというだけのことでございまして、質の低い職員などがそういう野放しで実力を行使するというよりは、やはりそういうことを救う意味から申しまして、裁判所の令状があるということによってまあ一応慎重にやらせるということの方がいいわけと思うわけでございますが、要するに今回の改正法というものは、現在の権限に何ものも加えるのではなくして、むしろ現在与えられておりまするところの権限の使い方につきまして制限を加えようと、自粛をしようという点にまあ改正の主眼があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/50
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051・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 その点が非常に大事な点で、それは大いに私と食い違っている点で、同じじゃありませんが、第一番に、現行法の十四条の解釈でございますが、これは連れ帰る、「連れ戻すことができる。」ということを、これは強制的に連れ戻す場合だけうたってあって、そして普通に、尋常に連れ戻すときには何も条文なんかはなくてもいいというお話しでございましたが、私はそれには納得できません。子供を連れ戻す場合にも、この条文によりまして、連れ戻すこともできる、また常識でもって連れ戻さない方がいいのじゃないかというような場合には、連れ戻さないでもいいじゃないか、そういう私は条文の解釈をしたいと思います。だけれどもこれをどうしても強制的の場合だけ十四条が使われるとおっしゃるなら、そういう解釈を一体何によってするかという出どころを私は聞きたいのです。私は三十年前にこれはもう矯正院法、少年院法ができますときに、あの騒ぎがあってできております。その時代の速記録からずっと調べてみまして、一体これは、こういうことはいつどこから解釈が出てくるか、非常に私はおかしいと思う。納得がいかないのです。もっとこれはこういうところから解釈が出てくるという出どころを、はっきり私は教えて下さって、納得ができるなら納得いたします。それはどうなんでございましょう。さっきのところへ戻るようでございますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/51
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052・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) どうも任意に合意でできる。要するに本人が自分の決心で帰ってくるようになるというような場合には、これは昔の先生が説得する場合もありましょうし、あるいは警察官でも少年院の職員でも説得をした結果、本人がその気持になって帰ってくるという場合もございましょうが、そういうものにつきましては、わざわざ法律で断わるまでもなく、これは誰がもうやってもいいのでありますが、この十四条で特に少年院の職員と限定しておりますのは、強制的に本人の意思に反して連れてくるという場合に、少年院の職員に限るべきであるということを規定したものと解釈せざるを得ないのであります。法律でそういうふうに本人の意思に反して強制的に行うべきというようなものは、これはどうしても法律で規定しないというと許されないわけでございます。従いましてこの法律にこれが規定してあるのは、そういう精神から規定してあるというふうに解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/52
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053・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それは非常に強制力を持っているという解釈の出どころはどこですかと言うのです。これは条文だけだったら連れ戻すこともできるというのは、前は逮捕という言葉がありましたのを、それは取って連れ戻すというやわらかい言葉に変っているのです。それをまた今度その逮捕状にひとしい令状でもって子供を逮捕してこようというような、これはもう連れ戻しという言葉はやわらかくなっておりますけれども、これは逮捕状です。これはどういうわけなんですね。どうしても納得ができない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/53
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054・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) これはどうしても裁判所の判決がありまして、少年院に送致するという判決に従って少年院に入れておるわけでありますから、従って少年院から逃げて行ったという者については、もう一ぺん少年院に帰してもらわなければならないということは、当然そういうことになってくると思います。任意にほかの法律上の根拠もなく、少年院の職員が一方的判断によって連れて帰らなくてもいいというような工合には参らないと思います。ただ、実際問題といたしましては、まあこれは速記に取られたり何かいたしますと、差しつかえがあるかもしれませんけれども、それは少年院長の腹芸でもうこういう者はこの程度の者は帰して、うちに置いておいた方がいいと思われるような者につきましては、少年院長の腹芸で知らん顔をして、そういうふうな連れ戻す手続をしないという方がいいと思います。また、そういうことも現にやっておるわけでありますが、しかしこれは少年院法という法律上から申しますというとやはり許されないかもしれません。法律の建前といたしましては、裁判所の判決によって少年院に送られた者が逃げたら連れて帰らなければならぬというのは、法律上の建前であると思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/54
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055・市川房枝
○市川房枝君 今の宮城さんと局長の問答を伺っておりまして、私は法律にはきわめてしろうとでございますから、あるいは見当違いのことを申し上げるかもしれませんけれども、今の十四条の「連れ戻すことができる。」という、それだけを見ますというと、どうしてもこれは強制とは思えないのです。もしこの法律のほかに、この条項のほかに今局長のおっしゃいましたように裁判所で判決があったのだ、その少年がまあ逃亡した場合にこれを連れ戻すといいますか、逮捕するというのは当然だ、それはわかりますけれども、その場合にだれが一体連れ戻すか、それは警察官が当然やるのだ、こういう規定がこの条項のどこかにあって、そうして警察官とは別にこの少年院の職員が連れ戻すことができると、こういうのならわかるのですけれども、この法律だけで「連れ戻すことができる。」という表現になっておる条項は、ちょっと強制的とは私どもしろうとには受け取れないわけであります。その点どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/55
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056・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/56
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057・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 速記を起して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/57
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058・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 連れ戻しができるというのはこの第十四条だけでございます。そうして連れ戻しができるというのは、少年院の職員ということに限られております。従ってこれはそれ以外の少年院の職員でも場合によっては、差しつかえありませんが、それ以外の人が少年を連れてくるという場合には、十四条によっては連れてくることができない。十四条の場合は強制力でありますが、それ以外の場合は説得の方法、本人が納得して連れてくるという方法ならばだれがやってもかまわないのでありますが、しかし強制力を用いてやるのは少年院の職員に限るという趣旨であります。なおまた、同じ少年院の職員が連れて、事実上引っぱって帰ってくる場合におきましても、この十四条によらないで、よく話し合った上で納得して連れて帰るというような場合、これも十四条ではないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/58
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059・市川房枝
○市川房枝君 どうもこれが強制力があるとおっしゃるのは、私にはどうも納得がいかない。これは法律用語としてこういう表現でやはり強制力があるとおっしゃれば、これは私は法律家じゃありませんからわかりませんけれども、しかしちょっとさっき宮城さんの答弁の中で言外に含まれていることで、少年院の職員がその子供を見てこれは見のがした方が結果としてはいいのだというときは、少年院の職員の腹芸で見のがすこともあり得るのだということをちょっとおっしゃいましたけれども、それなら私は納得できるのです。それならば強制力を持っていないという証拠に実はなるのですけれども、連れ戻すことができる、連れ戻さなくてもいい場合もあるということになるので、それは言外にあなたがやはりこれは強制的なものじゃないということを肯定しておいでになる証拠になるのですけれども、そうじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/59
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060・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) いえ、やはり腹芸と申しますのは、実は法律の裏に隠れて、法律無視をやるという意味で腹芸と申し上げたわけでありまして、やはり正面切ってはそういう処置はできない。やはり正面切って申しまするというと、この少年を連れ戻さなければならないという趣旨でございますが、しかしこの保護処分でありまして、少年のためにさえなるならば、ある場合にはそういう腹芸をやってもいい場合もあるというような趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/60
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061・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) ちょっと速記をやめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/61
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062・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 速記を起して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/62
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063・市川房枝
○市川房枝君 それならばこんなできるというふうに表現しないで、連れ戻さなければならないとなぜ書いてはいけないのですか、そうしたら疑問の起る余地がないけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/63
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064・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) つまりこれは連れて帰ってもいいし、連れて帰らなくてもいいというふうな問題には、十四条は全然触れておりませんので、十四条といたしましてはそういう連れ戻すという権限を与える、まあもとの矯正院法なんかでは「スルコトヲ得」というふうになっておりますが、この場合もしてもいいし、しなくてもいいというのではなくして、その権限を与えておくという意味だったと思いますが、やはりこの十四条もそういう意味で権限に関係がある条文だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/64
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065・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 私はこの十四条がこういう規定がございますことが、これは私少年法の精神だと思うのです。だから連れ戻さなければならないという強制的な意味でしたら、私はもっと書き方があると思う。だけれども連れ戻さなくてもいい場合も予想して、あなた腹芸だとおっしゃるけれども、腹芸でも何でもない、連れもどさない場合には少年のためになるという場合があるのですから、従ってこれを生かしてこの通りでいいじゃありませんか。そうしてなおどうしても連れ戻さなくちゃならん少年だが、なかなか手ごわいやつで職員の言うことを聞かないというようなものの場合、あるいは少年を隠しているとか、あるいは悪い窃盗団の中に入っていて、その大人のために帰られないというような場合には、それこそ警察官にこの令状を出して警察官に連れ戻させればこれはいいのですよ。私はこの条文の解釈もおかしいし、あなたが今法律的な根拠を与えて下すって私が納得できればありがたいことですけれども、私は非常に妙味のある条文だとこう思っておる。むしろ私はもう連れ戻さなくてもいいような子供を、少年をそのまま放っておくということは、少年院としては処置に困るのじゃないかという場合が実際問題としたら出てくる。だから処分の決定変更をするというような新たな規定を設けなくちゃならないのじゃないか。たとえば何ヵ月たったが、どうしてもこれは行方不明だ、あるいはほんとうは行ってみたけれども、まあそれは腹芸で、行ってみたけれども、落ちついていて悪いことをしないから、あそこへ置いておいた方がほんとうに少年院に入れておくよりもいい場合があるのですよ。その少年院、刑務所はもちろんのこと、あんなところに子供を入れておけば、いい子供も悪くなる場合があると思うのです。だから落ちついて悪いことさえしなければそこに置いておきたいと思うのです。そういう場合にこの法文は実に少年法の妙味をうたっているので、これはこの通り、これが強制力を持っているのだというようなことを解釈せんほうがいいのじゃありませんか。むしろそれだったら、裁判の決定変更をして、きれいにそこで少年院の責任を帳簿面も問題のないようにしておくという処置の方が、私はむしろ当然だろうと思うのですがいかがでございましょうか、その点……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/65
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066・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 確かにそういうふうな逃走いたしました少年の場合は刑務所から逃走した場合と違いまして、問題のニュアンス、実質が違っておりますので、そういう今宮城先生のおっしゃいましたようなものもある場合には確かに考えなければならんことがあると思います。そういう処置も研究をいたさなければならんのであります。しかし、これがまあ少年関係につきましての法律の根本的改正をいたしまする場合に、根本問題として取り上げることにいたしまして、少くとも私たちの解釈といたしましては、現行法の十四条からはそういうふうな処置はとれない。やはり腹芸で行くよりほか仕方がないというのが、どうもその法律の解釈として正しい解釈だというふうに考えないわけにいかないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/66
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067・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 これは私は心配のあまり局長に伺うのでございますけれども、今実際問題としてこういう読んで見ると、連戻状といったような判事の令状を出してさえも連れてこなければならないというような悪条件になっておる。つまり少年から言いますと、教官に対して、警察官や刑務官と同じに尊敬もしていないし、信頼もしていないというような状態になっておるから、もう刑務所を出たあの脱走者と同じように取り扱わなければならないという今状態にいっているのじゃないかという心配も、こういうことになれば起るのでございますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/67
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068・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 私はこれは手前みそかもしれませんが、決してそういうふうに考えておりません。現に自発的に帰って参りました少年も相当あるわけでございますし、囚人が逃げました場合と違いまして、何が何でも一々強制力で逮捕してくるというようなものもないわけでございます。場合によってはそういうふうな、特に走って逃げた直後なんかにおきましては、実力で争うというようなこともあるかと思いますが、しかし納得ということもかなりあるわけでありまして、何もかも少年院がそういうふうな絶望的な状態であるというふうには考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/68
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069・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 この間のときにも、河内少年院のお話が出ました場合に、少年院の教官が子供といろいろな問題を起しておりますが、あのときの状態について、局長の説明を聞いておりましたときに、便所の中に投げたというたばこの吸いがらを少年院の教官が便所の中を手でまぜてみたら、たばこの吸いがらがなかったということがわかった。そして少年院の子供に便を顔やからだになすりつけたというのは実はうそで、たばこの吸いがらを探したけれども、なかったものだから、その手を振ったそのつゆが子供の顔にかかったのだとおっしゃったか、だろうとおっしゃったのか、そこのところ私ちょっとはっきりしませんでしたけれども、そういう説明がございました。そしてそれらの職員はそれぞれ処分をした。処分をしたということは、職員がけしからぬという結果でなければ処分できないと思っておりますが、だけれども、私はこの説明を聞いただけで、いかに今日の少年法の運営というものが精神がなくなって、ほんとうにこのこと自体が刑務行政となっていっているのじゃないかということなんです。少年たちはああ、あのやつにとうとう便所の中に手を突っ込んで探さしてやったわいということで、豪語しておるということは、これは矯正教育の上にゆゆしい問題じゃないかと思うのです。これだからこそ、私はこういう新たな法律を作らなければならないような結果になっておるので、これこそゆゆしいことで、それならたくさんの金をかけて少年院のあの矯正教育なんということをする必要がないのじゃないかと、こういうふうに考えておるのでございます。あのときに処分された職員の中に大へん惜しい、若い大学を出て、もう仕事に燃えておるような者もついでに処置されたのは残念だというお話しもありましたが、私はこの職員に対しましてもまたほかの意見を持っております。一体このむずかしいほんとうに縁の下の、それこそ私は難事中の難事であるこの少年院の職員や保護団体の職員こそ、ほんとうに隠れたりっぱな仕事をする人はないと思っております。そういう職員に対して、そんなことでみんな首になるというようなことは、これはちょっと聞くと子供のためにそうあってしかるべきだという解釈もできましょうが、もっと深く掘り下げてみますと、私はこれはやはりここに問題があって、もっと職員の取扱い方なんということについても、矯正教育には大きな問題があるのじゃないかというように考えております。特に若い大学を出て、むずかしい仕事に生涯を献身してみようという人を、あの事件で葬ってしまうということは、非常に私は国家のために惜しいというふうに考えておるのでございます。あの処分なんかにつきましても、局長はあれで別に処置をしたから社会に申しわけが立つよ、といったようなことで解決をつけていらっしゃるのでございましょうかどうでございましょうか。大へん皮肉な言い方でございますけれども、私は言葉を裏からこう言っておるのじゃないのです。ほんとうに心の底から少年法の運営について心痛しておりますから伺っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/69
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070・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 全く河内少年院のような事件は、大へん私たちも痛心の至りであります。そういうことになりましたのも、これはもう現場のああいう人たちだけに責任があるというのじゃなくして、根本には私たちの努力の足らない点があることでございますが、しかしまた片一方、少年院のことにつきましても、いろいろなところでボロを出しておるのでありまして、口はばったいことは申せないのでありますが、しかし今宮城先生がおっしゃって下さいましたように、縁の下の力持ちでありまして、相当私たちの目からみると成績を上げている、こういう困難の中にあっても、なおこれだけの成績を上げておるところもあちらこちらにあるわけであります。なおまた、私たちも長い目で、大きな意味で見ますと、この少年院の管理方法あるいは少年院での矯正教育の方法というようなものは、決してカーブが下に向いておるというふうには考えておりません。だんだんと職員の方も力が少しずつではありますが、できておるように思います。なおまた、今すぐ日の前の効果があるというわけではございませんが、いろいろのことにつきまして、私たちなりの研究をあちらこちらでやっております。こういうことがだんだん総合的に結集されましたら、だんだんと矯正の方法についてもいろいろ技術が向上してくるだろうと考えております。
なお職員の点につきましても、ああいうようなことになりますと、非常に目立ちまして、それがあたかも全職員の失態であるかのごとき感じを与えるのであります。しかし決して私はそうは考えておりません。だんだんと少しずつ充実はしてきておるというふうに考えております。なお、河内少年院につきましては、職員を相当入れかえをいたしまして、そしてなおいろいろ勤務方法、少年の処遇の方法などにつきましても、直接に管区長なんかがどんどんいろいろのところから優秀な職員を集めまして、みずから乗り出しましていろいろあとの再建に努力しております。この前聞きました報告では、相当立直っておるというようなことを聞いておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/70
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071・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 印旛少年院の暴動のことでございますが、これは七十六人の子供が暴動を起し新聞にも出て世間を騒がしております。私この七十六人の少年について調べてみましたところ、そのうちの二十一人というものは虞犯でもってやられておる。虞犯で事件が起されておる少年でございますが、そのうち二十一人は久里浜に送られまして、そしてそのうちの何人かは久里浜の分院として横浜の刑務所の内に収容されたのでございます。もとを洗ってみると、これは虞犯少年である。虞犯少年は御承知のようにまだ犯罪少年にはいかない、言うてみたら年も若いし、今のうちに手当をしておけというようなことで、結局はだんだんいってとうとう刑務所の内に入れなければならぬ。刑務所ではありませんが、久里浜分院という名前でございますけれども、そういう経過をずっとたどっておるということをみますと、今日の保護政策というものは、もう安全第一で、保安政策ばかりになっておる。何かあったら弾圧せい弾圧せいといったような、そういう処置をとられるものですから、だんだんと印旛少年院なんかはあすこは逃走するのにいいような設備でございますから、これはやむを得ないという点もございましょうけれども、だけれども大体から申しますと、あまり手当がきつ過ぎて弾圧的にやられるものですから、それに反抗しよう反抗しようとする。今度の手錠問題なども、手錠をはめられて反抗するところの者は、手錠をはめて安全をはかるということと天びんにかけたら、私は害の方が非常に多いだろうと心配しておりますが、とにかく後手々々と打っていって、そうしてやがてこれは今度は集団的に職員にかかっていって、あるいは職員を殺すという時代がくるかもしらない、あるいはまた、少年院に火をつけて少年院を焼くというようなことも考えられる。ということは、私は教育の画からだんだん、だんだんと弾圧の面に移っていきまして、そうして後手をひいて今度どういう事態が起るであろうか、非常に私は心配で今ここでこれを立ち直さなかったら、これは滅亡になりはしないかということを考えております。一体この印旛少年院の逃走者に対しましての手当なんかも、これはやむを得ぬとはいいながら、矯正局としてはこれは最善の方法だったというようにお考えになっておりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/71
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072・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 決してそう最善の方法……、いろいろの方法があるのに、そのうちの一番いい方法をとってこうだったというわけではございません。ほかにちょっと考えてみまして、とる手段がなくなりましたので、やむを得ずそういう措置をとったわけでございますが、しかし、もうだんだんとほかの少年もおさまりましたりいたしましたので、横浜に入れております者もたしか七月一日までだったか、七月中に解散をいたしまして出るものは出す、またほかの少年院に帰せる者は帰すという方法をとるつもりであります。なお、物議をかもします少年院は特別少年院、つまり高年令の少年院であります。少年院の大部分の中等少年院、初等少年院はだんだん基礎ができてきたように感じられます。この特別少年院についてもっとそれによく適した処遇方法を考えなければならぬ、こう思うわけでありますが、とりあえずそういうふうな処遇のむずかしい少年院というものにつきましては、特別に少年院を一ヵ所それにあてるようにいたしまして、そうして一つにはほかの者に対する悪影響を避ける。第二にそういう少年自身についてもっと切実なそれに適した処遇方法をしようというわけで、今のところそれの具体的方法について研究いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/72
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073・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) ちょっと速記を止めて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/73
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074・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/74
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075・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 ちょうど奥野さんがお見えになりましたから、私は立法の解釈について伺いたいのでございますが、この少年院法の十四条「在院者が逃走したときは、少年院の職員は、これを連れ戻すことができる。」ということ、この条文が私はこの文字通りにこれを解釈したいと思うし、先ほども言いましたが、矯正局長はこれは強制的にやるときだけにこの条文を使うのだという解釈でございますが、そこで私は非常に納得しかねておりますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/75
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076・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) この十四条は「これを連れ戻すことができる。」というので、あたかもそういうただ連れ戻すこともできるし……といったようにもちょっと文字から見ると思えるかもしれませんが、これはむしろ連れ戻す権限を有するということを「できる。」ということで現しているのではないかと思います。ちょうどそれは監獄のようなものから逃走した場合に、これを逮捕することができるというのと同じような趣旨で、逮捕なんという言葉が少年に対して非常にきつくあたるというようなところから、連れ戻すとか、少年院法ではまあ同行とか連れ戻すといったような、普通の逮捕とかといったような強い言葉を使ってないので、「連れ戻すことができる。」といように書いておりますけれども、その趣旨は強制的に連れ戻す権限をこれによって与えられているというふうに解釈すべきではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/76
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077・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 この条文に連れ戻す権限が与えられていると解釈する何か根拠がございますか。ただああも言われるこうも言われるというのじゃなしに、立法的な根拠がそこにあれば伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/77
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078・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) 御承知のように、少年が少年院に送致されるのは、審判を受けて裁判所の決定に基いて少年院に送致されますので、もうすでにそれは……、比較は非常にまずいのでありますが、判決によって監獄に入れられた場合にやや似ている。そういうふうにもうすでに裁判によって少年院に収容されているという状態は是認されている。それを逃げたような場合においては、これをその前の状態に連れ戻す、あるいは送致するということは、すでに裁判を経ているというところに根拠が出てくるのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/78
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079・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それは受刑者が逃走いたしましたときに、あれは四十八時間たてば逃走罪になるのでございましたね。そうすると、それと同じように考えますというと、これは時間に制限がないとしましても、一極の逃走罪的な考えをもってこの立法がされているのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/79
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080・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) まあ少年のことであるし、ことに刑事判決に基いて監獄に入れられているのとは違うのでありますが、大体その理想によってこの立法がいたされているというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/80
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081・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そうすると、これをもう少し、その意味だったら、その意味を明らかにするような一体条文が作られなければならないので、私はこれはもう表からこの通りに解釈して、少年法の精神というものは子供をよくすればいいのですから、そこで刑事処分と保護処分との区別があるということは、保護処分ということはほんとうにまあときにはだますことがあってもいい、ときには回り道をしても仕方がない、子供をよくしようという精神にのっとりました場合には、もう逃げたことは悪いけれども、しばらくしているうちに、家へ帰って落ちついてみたら、なかなかいい子供で仕事をしているとか、さっきも申しましたけれども、いろいろな意味で二度と少年院に、それは審判の結果決定されたこととは言いながら、そこにはやはり刑事処分のときの責任と私は違った責任があるのじゃないかと思うのでございますが、それだから私はこの通りに解釈して、連れ戻さなくても子供のためになっているのじゃないかと、むしろ院に連れ帰るよりもいいのじゃないかというような場合に、この通りに連れ戻さないようなことがあってもいいと、どうしてこれを解釈していけないのでしょうか。どうして刑務所から逃走したと同じように、この判決だってこれは私は刑事判決と違うと思うのです。保護処分ですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/81
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082・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) ただいまのお話の点は、立法論としては非常にそういうことを考えていい場合があろうかと思います。ただこの十四条の解釈といたしましては、逃走したときにもとの通りに収容ができる、そのための連れ戻し、一応収容されたものをちょうど、その例が非常に悪いのでありますが、監獄の逃走の場合と大体類似して規定されていると思うのでありまして、そういう場合にもし実際上再び収容する必要がないと思うような事情がありましたならば、そういうものについては、そういうことをやらなくてもいいという、いま少し明確な条文を置くということは、立法問題としては非常に考えることができる問題だと思いますが、十四条だけの解釈としては、これは「できる」とあるけれども、そういう強制的に連れ戻し得る権限をここに与えておるだけであって、その場合に連れ戻してもいいし、連れ戻さなくてもいいという、そういう裁量を与えた規定とはちょっと解釈できないのではないかと思います。(「おかしいです」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/82
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083・市川房枝
○市川房枝君 私は内容の問題よりも、法律というものは、これは私しろうとですから専門家にお伺いするのですけれども、しろうとにはちょっとわからないのです。しろうとが読めば、この文章をその通りに、それは「連れ戻すことができる」のだから、しなくてもいい、こう解釈するのが私は普通だと思うのです。ところが実際は今お話しのように、これは強制的になるものなんだとこういうのですけれども、そういう表現を法律というものは使うものですか、一般の人にわからないような言葉といいますか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/83
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084・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) 大体そういう権限を与えるときに、そういうことができるという表現を用いております。しかし普通に、「できる」といえばできるので、やらなくてもいいじゃないかというふうに普通に解釈するかもしれませんが、法律上権限を与えるときには、「できる」という表現をもって権限を与えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/84
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085・市川房枝
○市川房枝君 何かほかにそういう例を二、三、この法律だけでなく、こういう言葉でもってやはり強制的な意味を持たせているのを伺いたいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/85
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086・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) 先ほどもちょっと言いましたように、監獄から逃走した者については、四十八時間以内においては逮捕することができるとあるのです。ですから逮捕しなくてもいいのかというと、そうじゃなくて、逮捕の権限がある、別に新しい犯罪がなくても逮捕することができるという権限を与えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/86
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087・市川房枝
○市川房枝君 それは何の第何条ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/87
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088・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) 監獄法の二十三条でございます。昔の条文ですからこれは「逮捕スルコトヲ得」というふうになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/88
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089・藤原道子
○藤原道子君 ところがこの少年院法では、大体のところでは何かしなければならないとか、なければならないとか、何とかするとかという、かうに言い切っているのですね。ところがここで十一条の七項の場合には、「裁判所から決定の通知があるまで収容を継続することができる」、こういうのなら私たちは理解ができるのです。けれども、十四条の規定だけをこのままに受け取れば、やはりこの場合と同じような解釈でなければ、これが強制権があるというふうにはどうしても受け取れないのです。で、児童福祉法なんかを見ても、何とかすることができるという表現の場合には、やはりしなくてもいいということが考えられる、納得できるようなところへできるという言葉が使ってあるのです。で私は児童福祉法のときにも、子供を保護するのだ、子供の福祉を守る法律であるという場合も、これならできるじゃなくて、やらなくちゃならぬじゃないかと言ったらば、このできるという解釈はそうではない、それはやるのがいいことだけれども、やれない場合があるので、これは強制するのでなくて、何々することができるというふうに規定してあるのだというように私は法制局から説明を受けたことがあると記憶しているのです。そういうふうな非常にまぎらわしい条文をお書きになるのはおかしい。この法律だって、何とかしなければならないというところの方が多いのですね。それを何々することができるというふうになっている。十三条なんかでもやはり「させることができる」というふうに出ている。ところがここで「できる」というのを書いてある十三条なんかのも、なるほどこれはこれで理解できる。十四条の「できる」という場合は、やはり市川さんや宮城さんの言われたように、これは連れてこなくてもいいのだ、こういうふうに解釈できる。ところが先ほど局長が、実際問題では家庭へ落ちついて幸福に暮らしている子供は連れ戻さないことを腹芸でやっているということを言われた。で強制規定なら腹芸をやっているということになると、法律の条文通りにゆけば、これはまた問題になるのじゃないか、こういう点はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/89
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090・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) たとえばほかの法律で、補助をすることができるとかいうような場合は、もちろんこれは補助を場合によってはしなくてもいい、補助ができるということだけのことであるのでありますが、この場合におきましては、逃げた者の、それをどうしても連れ戻す道がないのかというと、それはもう全然ないということでは困るので、やはりそれは強制力をもって連れ戻すことができるのだという権限を与えておかなければいけないのじゃないか。だからただ連れ戻す権限があるというだけのことなので、何も連れ戻さなければならぬ義務ということは、これはまた官吏としてのあれは別にありましょうけれども、その連れ戻す権限があるという権能だけをここへ規定してあるので、その権能を行使する義務があるかどうかというようなことは、一般職務上のいろんな問題があろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/90
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091・藤原道子
○藤原道子君 そうするとやはり私たちが言ったように、連れ戻さなくてもいいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/91
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092・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) 連れ戻さなくてもいいというよりも、とにかく連れ戻す権限だけはあるということであります。しかしその権限を行使する義務が官吏服務紀律とか何かのいろいろな関係である場合があると思うのです。ただそういう権限がなければ、もう逃げるのを見放すだけかというと、そうじゃなくて、それを強制的に連れ戻す権限はあると、その権限だけを規定したものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/92
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093・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 強制的に連れ戻す権限があるというふうにおっしゃったのですが、その強制力という強いものを持っておるのに、ただその強い権限があるというだけで、それだけでいいのですか。そんなふうにこれを解釈するのだとあなた今おっしゃった……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/93
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094・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) その強制力がなければ、逃げるままにどうにもならないのですね。それをつかまえて強制的に連れ戻すその権限を与えられておる。ですからその意思に反して連れて戻る権限が賦与された……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/94
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095・市川房枝
○市川房枝君 この場合連れ戻すことができると書かないで、連れ戻さなければならないとなぜ書いていけないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/95
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096・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) 連れ戻すのも、それは人の自由を制限することですから、これは非常に重大な……自由といいますか、逃走したのを意思に反して連れ戻すのですから、その権限のあることが非常に重大な事柄と思うのです。で、連れ戻さなければならないというのは、むしろ少年院における職務の事柄であって、むしろその連れ戻すことのできる権限ということは、どうしても一番、自由権との関係においてこれは明確に規定しておかなければならないものというところから、連れ戻し権というものをここに規定しておる。それを行使する義務とかいうようなものが少年院法その他の職務上の問題としてあろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/96
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097・市川房枝
○市川房枝君 どうもよくわからないのですが、これはよほど私が頭が悪いのかもしれませんが、とにかく私は法律というものは、これは弁護士の方だとか、それこそお役人の方だけが見るものじゃない、国民大衆がこれを見るものである、国民大衆が読んでわからないような法律があってはならないのじゃないか、いわゆる国民大衆が読んで間違うといいますか、疑問を持つような表現は、これはすべきじゃないのじゃないか。少くともこの十四条は国民大衆が読んだら、できると言えばしなくてもいいととるのが私は当然だと思うのであります。もしそういうふうでないとすれば、表現を変えるべきであると思う。だから強制的なものであれば強制的な言葉を使ったらいいので、それをなぜ使えないのか、なぜ解釈の通り……。皆さん法制局長なり、あるいは法務省の局長のおっしゃるような意味を文章に表わさないのか、これはむしろ大衆の立場に立って申し上げたいのですが、それはどうなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/97
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098・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) 先ほど言いましたように、監獄の場合、逃走した者を逮捕することができるという場合に、逮捕する権限を規定しておって、逮捕しなければならないということは、その職員がその職務上当然とされる場合があるだろうと思いますが、そのことには触れないで、逮捕の権限があるという、まず権限を規定しておって、その権限を行使して逮捕しなければならないのだということは書いてありませんけれども、これは監獄の職員としての義務がいろいろな公務員法上あるのだろうと思います。その方でその義務が出て来るのではないかというように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/98
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099・市川房枝
○市川房枝君 監獄法の第二十三条が同じような例があるとおっしゃいましたけれども、もう少しいろいろな法律で、そういう同じような解釈をしておる法文を、きょうでなくてよろしゅうございますから、納得がいくまでこの問題は教えていただきたいと思いますから、一応今日はこれ以上この問題についてお伺いすることはやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/99
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100・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) 承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/100
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101・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 今の点でございますが、これはいつでも例にお引っぱりになるのは古い監獄法ですけれども、これは行刑的の考え方とそれから保護という立場に立って考える解釈の仕方と私はおのずから違うのじゃないかと思うのです。それをしいて監獄法をもとにして、つまり逃走罪云々というようなことから逮捕という言葉になり、それから今はやわらかくなって連れ戻しというような言葉になっておりますけれども、大体言いますと、少年法、この特別な法律、あの四十五議会であれだけ引っくり返って吟味されて、そうして立法されたのでございますけれども、その立法したときのほんとうの精神から言いますと、私は行刑的の考え方でなくて、もうほんとうに新しい保護の線に立ってこの少年法というものはできたのだろうと思うのであります。それだからこれをしいて監獄法と比べて行刑的に解釈しないで、私どもは保護という、教育という立場からこれを解釈すれば、この通り表向きとって、そうして表向き行使すれば子供が助かることじゃないのですか、その点どうでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/101
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102・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) その点は立法論としては非常に傾聴すべきものであろうと思いますが、この十四条の解釈としてはその権限を与えられておるというので、この十四条から連れ戻してもいいし、連れ戻さなくてもよろしい裁量をここに規定しておるのだという解釈がやはり無理ではないかと思うのです。この十四条だけの……。いわゆる少年院法がそういったような監獄的ではなく保護的な趣旨で非常にやわらかくなっておることは、おっしゃる通りであって、たしかこの十四条も前は逮捕とあったのをそれを連れ戻しという……、しかし言葉は非常にやわらかくなったというだけで、やはり趣旨はそこまで変える、少年法全体がそういうふうになっておるとはちょっと今考えられないと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/102
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103・藤原道子
○藤原道子君 ちょっと関連して、そうすると、もし連れて来なかった場合はどうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/103
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104・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) 連れてくることができるのに来なかったというふうなことであれば、職員の職務の怠慢といったようなことがあるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/104
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105・藤原道子
○藤原道子君 しかし宮城委員が言われるように、あくまでもこれは保護を目的とした法律ですね。そうすると、この子供が落ちついて幸福に更生して生きておる。生活しておる。あるいは結婚しておるというような例が出てきた、これは幾ら何でも連れて帰れないと思うのです。そういう場合に連れてこなくても職務怠慢ということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/105
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106・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) その点は内部の関係のことは私もよく存じませんが、そういったような例外の場合においてこの権限を発動しなくてもいいというような特殊な場合があるかどうかは、今私はちょっとわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/106
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107・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 先ほどからの矯正局長の話では、その点は腹芸でまかなっておるというふうに、私はこの腹芸でまかなうということが少年法や少年院法では非常に大事だと思うのです。ということは、行刑の方でございますというと、今日教育刑でまかなっておるとは言いながら、やはり犯罪事実によって取り扱いは違われておりますけれども、それでございますから非常にたやすいわけでございますけれども、少年の場合においてはこれは全然行刑でなくて教育、矯正教育でございますから、教育という観点に立ち、少年院の教官は親であり先生であるというような、ほんとうの意味においての指導者、しかもまがりくねっております子供を、もう一ぺんたたき直してまっすぐなものにしようという特別な教育をされております。その職員たちがこれはそれこそ腹芸で、そうしてほんとうに教育、一人の子供を例にとりましても、これは育ちも違うし性格も違う、環境も違うし、いろいろなものを基礎におきまして、その子供の将来というものについて考えてやらなくちゃならぬという場合に、これはこの通りに保護する、教育するものの立場に立って考えるときに、私はこれはこのままどうして解釈しなくちゃいけないか。どうしてこれを行刑的に監獄法をもとにしてというような、また逃げた者は逃走罪だ、これは少年院から逃げても逃走罪にはならないのでございますから、私どもは逃げてもほんとうに悪いことをしてくれなきゃいいが、どうぞ間違いを起すな。そうして少年院に帰ってこないでもほんとうのことを言ったら、いいところで働けばいいのです。いい結婚をすれば女の子は助かりますよ。そういう者に対して、ですからこの条文をどうしてそう特別に行刑的に解釈しなきゃならぬかということは、私も皆さんと一緒にどうしても納得がいかない。それを特に法律を知らない者がそんなことを言うかもしれませんけれども、ここはどうなんでございましょうか。どうしても納得がいかない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/107
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108・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) それはまた特殊ないろいろな事情のある場合が、この限りではないとか言ってその連れ戻さなくてもいい事例をここに規定することは、これは立法の問題としてそういう事情があれば、その例外を開くことは立法上はもちろんできるだろうと思いますが、この条文だけは、ただその逃げた者を連れ戻すことができないんじゃ困る。だから連れ戻す権限があるという、権限をあくまでも規定したもので、その特殊な場合にはそれは連れ戻さないというようなことは、また特別に規定を設けることによって、その目的が達せられるのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/108
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109・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 ついでに伺っておきますけれども、逃走しまして、今言うように腹芸でも何でもようございますから逃がしておいて、そうしてそれでは少年院としたら張面づらが合わないんですから、張面づらを合わせる意味で、処分変更というような新しい規定を設けたらどんなものでございましょうか。そうして私は子供を逃がしたいのもあるのですよ。ほんとうはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/109
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110・奥野健一
○法制局長(奥野健一君) それはちょっと、私はどうも答えられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/110
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111・藤原道子
○藤原道子君 私は少年法ができた当時の精神が、宮城委員の言われるようにだんだんだんだんともとへ戻っていると思うのです。この少年院法をずっと、私も不勉強で一生懸命見たのだけれども、今までは手錠とか何とかいうことは一口もないんですね。今度は手錠という言葉が出てくるのですね。これは非常にやはり法の精神が変ってきたように思うのですけれども、これは一体どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/111
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112・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) まことにその点は私たちも同感でございまして、大へん残念なことに考えております。ただ、この少年院法は昔の矯正院法に比べますというと、対象が非常に違っておりますので、昔の矯正院法の精神は精神といたしましても、具体的な内容につきましては相当対象者の変化に応じまして変ってこざるを得ない実情でございます。特に少年院というものの年令が十八才でありましたものが、二十才まで引き上げられました結果、今少年院におりまする高年令者というものは大体これは半分以上は高年令者となっておりますが、ちょうど二十二、三というようなものが相当おります。そういたしまするというと、昔の現役兵の兵隊と同じようなものがたくさん入っておるわけであります。そういう者に対しまして、従来考えておりましたような愛の精神、これはもちろん愛の精神でやらなければならぬことはもちろんでありますが、しかしそこに相当手段を考えなければどうしてもならない羽目に追い込まれる実情でありまして、これは手錠の問題になるわけでありますが、あのなるべく開放的な家庭的な雰囲気で、少年を処遇しようという趣旨はもちろんでありますが、そういうふうにやっておきまするというと、だんだん乱暴をする。もう見るまに障子もガラスも全部壊してしまう、勝手に外へ飛び出してしまう、何か仲間に工合の悪い者がおりますために、職員がそれを注意いたしますと、たちまちぶんなぐられてしまうというようなことがしばしば起るわけでありまして、中に非常に乱暴をやって、いくら制止してもきかないというような者がありまして、そういう者に対しましてはもう今のところではちょっとほかに手段がございません。もちろんこれは職員の質が非常に上りまして、そうしてわれわれの教化力というものが高度にまで達しましたならば、そういう者を徳をもって化するということは、ある程度可能になるかもしれませんが、少くとも現実の問題といたしまして、そういう者に対してとりあえずとる処置が非常に少いというところで、まあほかにどうしても手段がない場合にはやむを得ずそういう手錠というようなものを使わなければならないような実情に追い込められておるわけであります。まことにみっともない少年院法の中にそういうふうな規定が入ってくる、手錠というようなものがちらほら見えるということは、まことにこれはみっともないことでありまして、私たちもその点は非常に残念に思うわけでありますが、実情を申し上げまするというと、どうしてもやむを得ない措置としてその程度のところまでは考えておかなければならないというような実情になっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/112
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113・藤原道子
○藤原道子君 それでは局長の御答弁によると、年令が引き上げられたから、やはり乱暴な者がふえた、こうおっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/113
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114・中尾文策
○政府委員(中尾文策君) 一番大きな原因はそうだと思います。もちろんそれだけが理由ではございませんが、まあ年令のもっと低い者になりまするというと、同じ乱暴をいたしましても、まだそれほどまでにはならないわけでありますが、私たちの方のいろいろな統計を見ましても、やはり高年令者の少年が乱暴を働いている者が圧倒的に多いという事実から申しましても、そういうふうに言えるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/114
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115・藤原道子
○藤原道子君 私は宮城委員の質問中をちょっといただいたのでございますから、ここでいずれあらためてまたお伺いしますけれども、少年院法の精神からいって、この中へ手錠というような言葉が入ってくると、もうこれは立法のときの精神はすでにもう失われていると思うのです。こういう点については私も少し考えさしていただきたいと思います。非常に納得ができない点が多々出て参りますので、それだけ申し上げてこの次に譲ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/115
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116・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それじゃ宇田川局長から、今の十四条の説明を局長の立場で伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/116
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117・宇田川潤四郎
○説明員(宇田川潤四郎君) 十四条の解釈でございますが、この条文が少年院の教官に権限を与えたものであるということにつきましては、中尾矯正局長の見解と全く同じでございます。なお、この条文が強制力を用いる場合に働く規定である、従いまして強制力を用いないで任意に少年を納得づくで少年院へ連れ戻すというような場合とか、あるいは両親などが少年を納得させて少年院の教官とともに連れ戻すというような場合にはこの条文は関係がない条文だと考えております。これも大体中尾局長の説と同じであります。ただ先ほど宮城委員が正業に復しており円満にやっておるのに連れ戻すことは、かえって少年の福祉のために害があるのじゃないか。保護処分の性格から見てかえってさような措置は妥当を欠くのじゃなかろうかというような御意見につきましては、ケースによってはさようなケースがあると思うのであります。だからといって、そういう場合の救済方法として十四条を宮城委員のように連れ戻すことができると書いてあるのだから、連れ戻さなくてもいいのだという場合も含んでおる。それがなかなか少年法の妙味を発揮するゆえんじゃなかろうかというような御説でございますが、今のような場合をまかなうために、十四条をさように解することは、従来の立法の技術から申しまして無理じゃなかろうかと思うんでございます。もっともさような場合に、宮城委員のように、少年院に連れ戻さなくて、そしてそのまま正常の生活を送らす、そして少年の福祉をはかるというようなことにつきましては、私どもの考えといたしましては、立法的な措置が必要なんじゃなかろうか。あるいは犯罪者予防更生法の仮退院の制度をもっと大幅に活用できるようにしておいたらどうか、もしくは旧少年法第三十八条、いわゆる処分変更でございますが、先ほど奥野法制局長は、この立法については意見を述べかねるというようなお話でございましたけれども、こういうような問題が考えられてしかるべきだというのが私どもの意見でもあり、現場の意見でもあります。もっともこの問題は、犯罪者予防更生法の問題等いろいろ複雑な関係を持ちますので、簡単には結論は出にくいと思うのでございまして、さような次第でまだ結論が出ていないというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/117
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118・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 今十四条の条文の解釈は、宇田川局長の意味はよくわかりましたが、その宇田川局長に私特に伺いたいのは、宇田川局長にしても、矯正局長にしても、ほんとうにこの少年の将来ということについて苦労して、皆よかれかしと思っていらして、そのおのおのの立場で、私もその一人ですけれども、立場が違うものですから、こういうことをいろいろ言わなくちゃならない、私は苦しくてたまらないのです。ですけれども、私はこの刑は刑なきを期すと言っているように、ほんとうのことを言ったら、少年院なんか要らないときが来て、もうあんなものをぶっつぶせ、同じ少年院でもあんな大きなものを建てるよりか、小さなものを建てて、そしておのおの私は家庭にみんな帰れるようになったら理想だと思います。そうすると、そういうことから言ったら、みんなこの条文を生かして家庭に帰ってしまえばいい、逃げてでも何でもいいから、どうせろくでもないあんな教官のもとでいじめられているよりは、ほんとうに子供のために幸福ですよ。私はそう思う。ですからこの条文をこのまま生かして……みんなそうじゃない、これは強制的に連れ戻すところの権限を持たしてあるんだと、皆さんはおっしゃるんです。それはそれでいいんです。それもまた必要なんですから……その条文がここにあるのに、なぜまた新たに、少年を連れ戻しにいくときに判事の令状をもらわなければならないのですか、宇田川さんの私御意見を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/118
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119・宇田川潤四郎
○説明員(宇田川潤四郎君) 現在の十四条の解釈につきましては、現場で非常に疑義があるわけでございます。その疑義と申しますのは、少年が逃走してから数ヵ月たって正業なんかについている場合に、あるいは少年院の教官がこれを発見して連れ戻す、少年が帰ることを納得している場合はよろしいのでございますけれども、納得しない場合に、果して少年院の職員がこれを強制力をもって連れて帰ることができるかということになりますと、現在の憲法の人権擁護の立場から、あらゆる強制力を用いる場合は、裁判所の令状が必要であるという現在の憲法の建前から申しまして不都合なんじゃなかろうか、もちろん連れ戻す目的は保護であります。決して単なる拘禁じゃございませんけれども、少年の方から考えますと、やはり拘禁、自由を束縛されるということになりますので、やはり憲法の人権擁護の精神を尊重いたしまして、やはりそこに連れ戻す一つの手続が必要なんじゃないか、これがこの今度設けられましたところの連戻状の制度であります。もっともかような連戻状というようなものは、あるいは少年の保護についてはふさわしくない面もございますが、しかしながらそれは少年院長の請求によって家庭裁判所の裁判官が発することになっておりますので、少年院長がこれを請求しないならば、もちろん家庭裁判所は無理に連戻状を発付するわけではございませんので、それは使わなくてもいいわけでありまして、この連戻状が発付されるような場合は、万やむを得ず少年院長が涙をのんで、普通の方法では、任意の方法では、とうていできないという場合は、万やむを得ず発付を請求するというようなことでありますので、私どもといたしましては、通常生活に返っている少年の生活を擁護するために、今度の改正に施行の点で多少ぎごちない面もございましょうが、むしろ少年の福祉を守る、あるいは自由を尊重するという意味において適当な制度じゃなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/119
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120・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それじゃ宇田川局長にお伺いしますけれども、ほんとうにいい少年院長であり、それから少年院の教官でございますとね、たとえばこの令状をもらって、そうして連れ戻しに行くというような、そんなことはできない、それは私はできないと言ってたじたじする人であったら、私はほんとうに信頼のできる人だと思います。みんなこんなものは使わない、たとえば法律ができても私たちは使わないと言ったら、どうなります。それは憲法違反ですか、その点はどうでし、占う。私はそういうことはあり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/120
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121・宇田川潤四郎
○説明員(宇田川潤四郎君) 使わないという、使いたくないという、その精神は、私は矯正職員としては非常に尊ぶべき精神で、これは大いに賞揚してしかるべきと思います。しかしながら実際問題として、使わなくちゃならない事態が発生する場合があるのであります。ことに特少の逃亡者ともなりますと、相当乱暴な者がおりまして、単なる納得づくで帰るという任意の方法では、とうてい連れ戻すことができないというようなことがあると思います。それなら放っておくかといいますと、やはり矯正教育の実をあげるのは、むしろ復院を拒否する者こそ連れ戻す必要がある場合が多いのでございますので、やはり連れ戻しを制度によって連れ戻す、復院せしめることがやはり少年の福祉のために必要だ、こう考えているわけ女ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/121
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122・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 あの、そういう場合はですね、まあこっち側の良心的な教育者的の立場でいくと、そんな子供なんかにその令状を突きつけて、そうして手錠をはめて、どうせもうとてもあばれて仕方がないというような場合でなければ、これは今使わんとおっしゃったでしょう。そういうような場合に、令状を突きつけて、どうしても引っぱるんだよと三言って、手錠をはめてくるということは、心に沿わないということもですけれども、実際問題としてはそれは少年院の教官じゃできんことだと思います。取っ組み合ったって子供に負けますよそれは……。そういうときは警察じゃなければ仕方がない、だから警察に連戻状の権限を与えるということでまかなえるじゃありませんか。実際問題として子供と取っ組んでそこへ手錠をはめて帰れますか。少年院の教官がたとえ帰れと言っても、まあそんなどうせ教官が良心もない、教育のこともよくわからないような教官なら、やってくるよと言ってみても、少年院の教官じゃできないと思うのです。それじゃそういう子供に対しては、やはり警察の手を借りてする以外にありませんよ。そんならこの法律は要らないじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/122
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123・宇田川潤四郎
○説明員(宇田川潤四郎君) 非常な手荒らの者はむしろ教官がやるよりも、警察官をしてやらした方がいいじゃないか、その方が適当じゃないか、これはごもっともなことであります。けれども、だからといって少年院の教官にかような権限を与えないで、単に警察官にだけ与えるということでは、まかなえない場合があると思いますので、やはりかような権限は与えるのがいいのじゃないかと思うのであります。
なお、今の条文……これは宮城委員が御賛成と聞いておりますところの改正案でございますが、少年院の教官を連戻状の制度から抜いておる改正につきましては、これはやはりこの条文ですと、少年院の教官は連戻状を用いずして、強制力を用いるところの連れ戻しができるということになっておりますが、これはやはり憲法の人権擁護の精神からして問題があるのじゃなかろうかということで、こういう条文が入ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/123
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124・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 その裏を返してみますと、こういうことになるんじゃないかしら。その連れ戻状をもらって令状を執行するというような場合はごくわずかで、それでそのためにこういうものを出しておきますと、なに連れ戻し状をいつでも得るよという低級な職員たちが非常な優越感を持って、私はこれは弾圧の道具に使いやしないかと、そういうふうに思うのですよ、裏を返してみれば……。だから必要なときはわずかで、有害と考えられる方が私は強くないかと思うのですよ。どうでしょうか。それはりっぱな教官ばかりそろえていさえすればいいのですけれども、私は今日は、さっきから言っている通り非常に教官の質が落ちつつある。これは国家的に貧乏だからしようがないということに落ちついていますけれども、これは教育の問題ですから大体金を使わないということが悪いのです。政府が悪いのです。けれどもそれだからできるだけこちらは手当を考えてやらなければならない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/124
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125・宇田川潤四郎
○説明員(宇田川潤四郎君) 今の条文、あるいは今度宮城委員が御賛同だということを聞き及んでおりますところの条文ですと、連戻状がなくても強制力を用いることができる。少年院法十四条でおれはお前を連れ戻しにきたのだ、令状も要らないでお前を連れて戻ることができるのだということも言えるというようなことになりますと、連戻状のあるかないかということが、少年を強迫できるかどうかということとは別問題になると、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/125
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126・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 その点についてもいろいろありますけれども、時間が足りませんが、せっかく保護局長がみえていますから、ちょっと保護局長にこれに対して保護という面からどういうふうに考えていらっしゃるか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/126
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127・齋藤三郎
○政府委員(齋藤三郎君) どういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/127
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128・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 あなたこういうものができてもいいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/128
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129・齋藤三郎
○政府委員(齋藤三郎君) ただいま宮城委員からいろいろと少年院の運営についての非常な御熱心な貴重な御意見を拝聴いたしまして、ありがたく存じます。少年院が役所の関係でいいますと、保護の系統から矯正の系統に移りました関係でいろいろと御心配ですが、いろいろな事情から少年院が昔の少年院と収容するものの質が変ってきておる。先ほど高年令ということを矯正局長が言っておりましたが、その通りでございます。もとの少年院に収容された者は、検事が不起訴になってそして審判所に回したものが少年院に送られた。現在では検事は素通りで全部家庭裁判所に参っております。おのずからそこに家庭裁判所は少年を保護する上に御熱意がある、そういう関係があろうかと思います。昔は少年刑務所には五、六千人収容されまして、少年院には千数百人しか入っておらない、それが逆になっております。少年刑務所には二千人足らずの少年が入っておる。少年院には二万人以上の少年が入っておるというような関係で、なかなか実際と理論が合致しないというところでいろいろな問題が起っておるのじゃないか。しかしながらこれは宮城先生のおっしゃられました通り、またほかの先生方が仰せられました通りに、少年をできるだけ早い機会に保護をして、そうして健全な道に戻らせるということは、一番賢明であり一番尊いことでありまするから、その精神を持ってどこまでも貫いていかなければならない。いろいろ時代が変りましたので、いろいろな面でいろいろなちぐはぐができておると思いますが、ただいま宮城先生が御心配になられたことを十分考慮して処置を誤らないようにしなければいけないのだと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/129
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130・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 今の御説明よくわかりましたが、でもこの法律についての本当の腹はまあ聞かれませんでしたが、やめておきます。ただ、今旧少年院法時代と現行法と非常に違って検事の取り扱ったもので、つまり不起訴になったものが少年審判所から送られるということでございますが、その点については私も非常に心配しまして、この間の印旛少年院の七十六人の暴動を起しましたのにつきまして、これは検事が起訴意見を付けておきながら、それで少年審判部で審判をされたというものはこの七十六人の中たった一人きりいないですよ。それは私調べさしたのです。でございますから、今あなたのおっしゃるようにそういう非常に悪質なもの、ばかりだからということも、今の検事の起訴ということから言ったら、あまり根拠がないですよ。だけれども年齢の引き上げられたということも私はそれはむずかしいし、それから今の社会情勢がこういうことになっておるということ等々が一ぱいありますよ、子供の悪条件が……。ですからそれは取り扱いがむずかしいということも十分わかっておりますが、同時に私は非常に残念なことは、保護は保護一貫でやる、矯正は矯正一貫でいかなくちゃならないという、この法律的に言っても、取り扱いの面か言っても、もう動かすべからざることが動かされて、今は矯正局でもってこの少年院などのつまり刑務所、少年院というものを一緒に含めて取り扱われるところに行ってみたら、刑務所の職員の金ボタンを少年院がつけることになったでしょう。これはどういうわけですか。昔はそうじゃない、(「そうだ、そうだ」と呼ぶ者あり)作業なんかをしているところに行ってみると、子供だか先生やらわからぬですよ。混然一体となって作業なんかもしている。今日は金ボタンをつけて威圧することはなはだしい。子供の着物だってそうです。子供の荒物については、私はこの委員会でもほんとうに口をすっぱくして言っていたが、あの通りだんだん悪くなって、今度青い着物を着せる。きのう私はあすこの神奈川少年院の開所式に行きましたが、ここで青い着物を着せないで、白い着物を着せて……霜降りを着せてうれしいなと言っていたけれども、いや、きょうはお客さんがあるので、着物がなくて困っている、あれは寝まきですよ、寝まきを着せてお客さんに会わしている、本物は着せられないのですよ。これは刑務所の囚人の着物を少年に着せておるからですよ。これはゆゆしい問題ですよ、これこそ人権尊重から言っても、これは憲法違反ですよ、言ってみれば、精神的の……。私はこういう問題もひっくるめて今度の問題なんかほんとうにみんなが腹の底を割ってみたら、みんな不賛成じゃないかと思うんですが、どうですか、保護局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/130
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131・齋藤三郎
○政府委員(齋藤三郎君) 私から適当なお答えができませんですが、ただ私は三十二、三年前に刑罰の残酷さから少年を守ろうというので非常な苦心をなすって、そうして法をお作りになったといういきさつを伺っております。まあ占領下でいろいろな制度の改廃がございましたが、もう一ぺんそういった気分を持ってまた検討すべき適当な時期が私はくるのではないか、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/131
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132・藤原道子
○藤原道子君 大体私たちが……、お客さんが来るから青い着物着せられないで、寝まきを着せるという根性がいやなんです。私は。なぜ私たちにほんとうの姿が見せられないんですか、そこにそもそも間違いがある。私もきのう開所式に行きましたけれども、あれは少年院じゃなくて監獄ですよ。鉄格子は非常にがんじょうなもので、あすこにいる人もこれは非常に一つ今後間を離さなければみっともないと思いますと言っておる人もおりました。こまかい鉄格子をして、色彩感覚なんかまるで暗くて、皆なおせじを言って少年院をほめておいでになっていたけれども、私は心で泣きながら見てきました。児童福祉法を作るときに、虞犯少年をこっちへ入れるということは私は反対だった。子供には悪人はいないのです。子供を悪くするのはおとなの責任なんです。私たちは虞犯少年をこちらへやると、必ず警察関係で行くと、もう取締り、刑罰でゆくのはわかっているから、法律を作るときには、そういう精神であっても、運営は必ずまげられてくる。だから子供の福祉を守る、子供には悪人はいないのだ、おとなが悪いのだから子供を守るという精神で、どこまでも虞犯少年は私は児童福祉法でやるべきだということを言ったのですが、皆さんのお力でこうなったのです。なった以上は責任を持ってもっといい少年院にしてくれなければ困る。きのう行ってみて、私はほんとうに心で泣きながら帰った。おふろなんか狭くて、三百七十人の子供があんなちっぽけなふろでは五、六人しか入れない。そのおふろが二つしかないのですよ。子供がせめておふろに入るときくらいは、のびのび入れてやりたいと私は思いましたよ。色彩が暗くて、建物全体の色彩が暗い、鉄格子で狭い所へ入れて、だとか教育だとかなんという言葉は返上してほしいです。そういう気持でございましたけれども、私はこの委員会はしんまいだからがまんしているのです。だけどもきのう私が行って受けた感じはそうでございます。どうぞ保護局長さんか保護課長さんなんだか、それも知らんでごめんなさい。だけどそういう意味から言っても、私は良心に従って発言したのです。ほんとうに子供を保護する施設ではない、そういう点は皆さん一つお考えになっていただきたいと思います。どうぞお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/132
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133・齋藤三郎
○政府委員(齋藤三郎君) とくと拝聴いたしまして、なお主管の中尾局長も承わっておりますので、今後十分注意いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00719550621/133
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134・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 本日はこの程度にいたしまして、委員会はこれにて散会いたします。
午後四時二十六分散会
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