1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月二十五日(土曜日)
午前十時四十八分開会
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出席者は左の通り。
委員長 成瀬 幡治君
理事
剱木 亨弘君
市川 房枝君
委員
岩沢 忠恭君
廣瀬 久忠君
藤原 道子君
吉田 法晴君
小林 亦治君
小幡 治和君
政府委員
法務政務次官 小泉 純也君
法務省民事局長 村上 朝一君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 堀 眞道君
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本日の会議に付した案件
○商法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
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001・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) これより法務委員会を開会いたします。
商法の一部を改正する法律案を議題に供します。本法案に対し御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
村上局長にお伺いしたいと思いますが、質疑を省略するというような意味で、昨日の公聴会で野津公述人の公述は改正法に対する反対意見と申しますか、見解が述べられたのでございますが、これに対しまして政府の所見をこの際お述べ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00819550625/1
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002・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 昨日の野津弁護士の御意見の中で、原案に対して多少御意見のありました点のおもなものが二点あったと思います。その一つは、原案の二百三十七条第二項の規定でありまして、前段におきましては総会招集の手続が遅滞なくなされるとなっており、後段におきましては「請求アリタル日ヨリ六週間内ノ日ヲ会日トスル総会ノ招集ノ通知が発セラレズ」とありますのは、これを一つにまとめて三週間あるいは三十日内に招集の通知が発せられないときということでいいのではないかというような御意見があったのでありますが、これは現行法におきましては、少数株主からの総会招集の請求がありました後二週間内に総会招集の通知が発せられないときには、請求をした株主は裁判所の許可を得てみずから招集ができるということになっておるのであります。その二週間という期間が一面において短かきに失し、またある場合には不必要な期間であるというような批判が従来あったわけであります。すなわち請求に応じて株主総会を招集するためには、まず取締役会を招集いたしまして、株主総会招集の決議をし、続いて多くの会社におきましては、総会において議決権を行使する株主を確定する必要上、株主名簿の閉鎖をいたします。これについて二週間の期間が必要なわけでございます。取締役会の招集につきましては、一週間の期間が必要なのでございまして、少くとも三週間は必要である。そのほか新聞公告の申し込みから掲載までの日数であるとか、あるいは総会招集の通知のはがきを印刷する日数であるとか、さようなものを加えまして約四週間くらいないと総会の招集ができないという実情があります反面におきまして、取締役会において初めから総会の招集をする意思が全然ない。従って、取締役会の決議もせず、また株主名簿の閉鎖等の一連の総会招集のための手続もとらないというような場合に、ただ二週間は手をこまねいて待っていなければならぬ必要もないわけであります。遅滞なく招集の手続に着手し、その手続を進めておる場合はともかくも、全然総会招集の見込みがないという場合には、二週間なり三週間の期間待つ必要がないわけであります。さような意味合いにおきまして、改正草案におきましては請求があったときから招集の通知を発するまでの期間を現行法の二倍、すなわち四週間といたしまして、さらに招集の通知を発してから総会の余日までの期間は法律によりまして二週間は間をおかなければなりませんので、六週間内の日を会日として総会招集の通知が発せられないときとしたのであります。一方全然総会招集の見込みのない場合には、遅滞なく招集の手続がなされないときというこの別段の規定によって、少数株主の請求による総会招集ということが行われるようになるわけであります。
もう一点は附則の第五項につきまして新法施行前に株主外の者に新株引受権を与える契約をしておる場合に、その相手方の既得権を害することにはならないかということであります。株主以外の者が新株の引受権を取得した場合というふうに書き改めたらどうかという御意見であったのでありますが、将来発行する新株につきまして引受権を与えようという契約は、引受権を付与する債権債務を発生させるだけでありまして、面接に新株引受権というものが契約によって生ずるわけではないのでありまして、その契約の効力自体はこの附則第五項の前段は規定していないのでありまして、その契約に基いて新株引受権を与えるためには新法による手続が必要であるというだけのことになるわけであります。従いまして既得権の侵害ということにはならないかと考えるのであります。
以上簡単でございますが政府の所見を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00819550625/2
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003・吉田法晴
○吉田法晴君 ただいま御説明のありました点と関連をいたしますが、新株引受権を制限あるいは剥脱をする方向に向うのではないかと、こういう点が今度の改正の一番問題の点だろうと思うのであります。今契約があった場合にもそれは権利が発生しているわけではないと、こういうことでございますが、しかし一応期待権と申しますか、あるいは契約上の権利があったということも、今の説明に対しても考えられるわけでありますが、定款事項に譲るとしても、原則から言うならばやっぱり新株引受権の制限が本旨になる感じがいたすのであります。そういたしますと、株主権がこの商法上の会社等の中心をなすことは、これは従来の原則から言いまして間違いないことであります。そういう点について商法上原則的な展開があるのではないか。展開と申しますのは変更であります。原則上の変更があるのではないかという疑いが残るのでありますが、これらの点についてどういう工合に考えておられますか、承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00819550625/3
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004・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 新株の引受権につきましては、現行法は株主に当然新株引受権があるという立場も、またないという立場もとっていないのであります。もっぱら会社の自治にまかせまして、定款でもって与えるか与えないか、あるいは制限するかということを規定するという建前になっておるのでありますが、かりに株主に新株引受権な当然与えるといたしましても、それを固定的なものにいたしますと、授権資本制の長所でありますところの資本調達の機軸性が失われるというところから、実際におきましては株主は新株引受権を有するとしておきながら、一方におきまして取締役会の決議によってその一部または全部を制限できるような規定を置いている例が大部分なのであります。ただ、この株主の新株引受に関する事項が定款の絶対的記載事項になっております関係上その規定に不備がありますと定款全部の無効をきたし ひいては会社の設立なりあるいは会社の発行すべき資本の増加の定款変更がすべて無効になるということになりまして、しかもこの新株引受権に関する定款の定め方についていろいろな意見が分れております関係上、実務上相当な混乱を生じておるのであります。ことに、最近東京地方裁判所におきましてある株式会社の定款変更を無効とした例があるのでありますが、その無効とされた定款は、わが国の株式会社のほとんど大部分の会社が採用しておる形の定款なのでありまして、そのために新株の発行、あるいは合併とかいうことが差し控えられている状態にあるやに聞いておるのであります。この改正法におきましては、株主の新株引受権にときましては授権資本制の長所を十分に発揮させるために取締役会において定めることといたしました半面、株主以外のものに新株引受権がみだりに与えられまして、それが時価よりも安い価額で発行されるということが行われますと株主の利益を害することになりますので、株主以外の者に対する新株の引受権を与えるにつきましては、株主総会の決議を必要とするというように要件を厳重にいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00819550625/4
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005・吉田法晴
○吉田法晴君 実は最近の判例あるいは商法上の慣習等について詳しく知らないので、不勉強のために知らないので、議論が正確をかきますけれども、言われるようなあるいは企業と経営の分離といったようなものはございましょう、そういう傾向はありましょう。あるいは重心が取締役会なりなんなりに実際上移っておるということは、これは認めるにやぶさかではございませんけれども、しかし憲法上の国民主権ではございませんが、会社の基盤、構成員、あるいは権限というものはこれは株主であり、新株引受権が株主にあるともないとも規定をされておらぬ、こういうことですけれどもこれは最初おいて株主が会社の中心をなしておるということであれば、定款がどうなっておろうと、株主に新株引受権があると考えられたのが私は最初の傾向だと思います。これは原理だと思う。その後株主の社債といいますか社債のウエイト等がふえて参ったという実情もございますけれども、権限問題、あるいは基本的な原則という点は、これはやはり商法である以上私は貫かれて折ると思うのであります。それがいつの間にか株主に新株引受権があるかないかわからぬようになっておる。従ってそれを定款の必要的記載事項からはずして、取締役なりなんなりできめるという工合に、商法の原則をやはり変えて参るということには大きな問題があるのではなかろうか。あるいはたとえば外資等も入って参ります。あるいは実際問題としてオーバー・ボローイング等もある、あるいは銀行なら銀行の資本が相当入っておる、そういうものが株主の権限外に置かれて、新株引受権その他この経営の権限というものは別に移っていくということにこの改正を持っていくとするならば、条文は大したことはございませんけれども、原則の点で相当大きな変化がもたらされるのではなかろうか、こういうように考えるのでありますが、重ねて御解明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00819550625/5
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006・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) ただいま御指摘になりましたような外貨が入ってくる場合、その他従来の資本系統以外のところからの出資を仰いで新株を持たせるというようなことは、普通株主以外の者に新株引受権を与えるという形で行われるわけでありますが、株主以外の者に新株引受権を与えることが乱用されますと、株主の権利利益が害せられますることは御指摘の通りでございます。従いまして改正法の二百八十条の二の第二項におきまして、株主以外の者に新株引受権を与うるのはその別、種類、数及び最低発行価額につき株主総会の決議を経なければまらぬということに改めたわけであります。つまり株主以外の者に新株の引受権が与えられることについて、現行法よりもはるかに厳格な規定になっておるわけでありまして、株主の権利を無視する方向に向っておるというふうには考えられません次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00819550625/6
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007・吉田法晴
○吉田法晴君 二百八十条の二に株主以外の者に新株引受権を与うるかどうかということはそれは株主の決定による、こういうことで、原則は株主にこういう権限があるということを侵害しておらぬということですが、それでは実際問題として先ほど申し上げましたような法理の問題は納得いたしまして、株主の同意によってこの新株引受て、株主の同意によってこの新規引受権を株主以外の者に与えるということについて株主自身が決定する、こういうことでありますが、これはわかりましたが、それでは実際問題に関して私の先ほど心配しましたような点はどういうふうに考えられておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00819550625/7
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008・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 実際の動きを見ますと、現行法のもとにおきましては株主の新株の引受権に関する事項は定款の絶対的記載事項とせられておる。また特定の第三者に新株引受権を与える場合に定款に記載しなければならぬということにはなっておりますけれども、多くの会社の定款を見ますと、役員、旧役員あるいは従業員、取引先等与えることができるというような規定が置かれておりまして、実際の運用面では取締役会の決議でもって取締役自身なり、あるいは取締役の縁故者に新株引受権が与えられ、時価よりも安い払込金額で株式が取得できる。それを処分することによって相当な利益を得ておるというようなことが実情でありまして、さような役員の役員自身あるいは役員の縁故者等に新株引受権がみだりに与えられることは、結局ひいては株主の利益を害することになりますので、さようなことが簡単に行なわれないようにという趣旨で、この二百八十条の二の改正規定が置かれたわけであります。株主総会の特別決議が要るということになりますと、現在よりもはるかにそういう意味の取締役会の権限乱用ということは防止し得るものと確信いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00819550625/8
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009・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 別に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00819550625/9
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010・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討議に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
別に御意見もないようでございますが、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00819550625/10
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011・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 異議ないと認めます。
それではこれより採決にはいります。商法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00819550625/11
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012・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定をいたしました。
なお、本院規則第百四時条により、本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他事後の手続きにつきましては、これを委員長にご一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00819550625/12
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013・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたしました。
それから報告書に多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は御署名を願います。
多数意見者署名
市川 房枝 藤原 道子
剱木 亨弘 岩沢 忠恭
小幡 治和 廣瀬 久忠
吉田 法晴 小林 亦治発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X00819550625/13
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014・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 別に御発言がなければ、本日の委員会はこれをもって散会いたします。
午前十一時十二分散会
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