1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月二十四日(金曜日)
午後一時五十一分開会
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出席者は左の通り
委員長 成瀬 幡治君
理事
剱木 亨弘君
宮城タマヨ君
市川 房枝君
委員
岩澤 忠恭君
廣瀬 久忠君
藤原 道子君
小林 亦治君
一松 定吉君
羽仁 五郎君
政府委員
法務省民事局長 村上 朝一君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 堀 眞道君
公述人
東京大学教授 石井 照久君
三菱倉庫株式
会社社長 大住 達雄君
弁 護 士 野津 務君
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本日の会議に付した案件
○商法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/0
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001・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) ただいまから法務委員会の公聴会を開きます。
本日は商法の一部を改正する法律案につきまして、三名の公述人の方々から御意見をお伺いをすることになっております。
公述人の各位には、御多忙中のところ本委員会のために御出席をいただき心から御礼を申し上げます。なお念のため申し上げますが、公述人の方々の発言は大体一人三十分以内にお願いすることとし、委員各位の公述人に対する質疑は、公述人の全部の御意見を伺いました後まとめてお伺いいたしたいと存じます。
それではまず東京大学教授石井照久君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/1
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002・石井照久
○公述人(石井照久君) それでは今度の改正法につきまして私の考えておるところを簡単に申し上げます。
いろいろ改正の点がございますが、こまかい技術的な点に一々触れることはやめまして、やはり改正法として一等問題と思われる新株引受権に関する問題にしぼりまして、私の考えておるところを簡単に申し上げたいと思います。
新株引受権につきましては、株主の新株の引受権の場合と第三者の新株引受権の場合とがございますが、この点について今回の改正法案は注目すべき改正をなしておるわけであります。一般的な気持といたしましては、私は結論を先に申しますと、改正法に賛成でありますが、その理由といたしましては、第一にこの株主の新株引受権というふうなものは非常に会社の運営に当りましては重要な問題であります。このような重要な問題につきましては、なるべく法律上の疑いを少くするということが、立法の態度であるべきことと思うのであります。非常に重要な問題について学者の意見がいろいろ分れたり、あるいは裁判所の解釈で非常に困難なものを生じたりするというような事柄は、その法律そのものがよくないということを示すものだろうと思うのであります。その意味で現行法を見ますと、株主の新株引受権につきましてはこれを定款の絶対的記載事項として、必ず定款に書かなければならない、書かなければ無効になる、あるいはまた書き方が悪いと無効になるということでありまして、非常に行き過ぎた、妥当でない立法であると思われますのみならず、どの程度のことを書いたら果して法律の要件を満たすのであるかということがなかなかわからない。従って学説その他が争っておるわけでありまして実際上の運用の多い問題について、このようにいろいろと疑義を生ずる現行法は、一日も早く改正することが望ましいということについては、私は信じて疑わないわけであります。
ところで問題は、それならば現行法に対する今の改正案が妥当であるかという問題になるわけであります。この点につきましては改正案株主の新株引受権に関する事項は定款の絶対的記載事項としない、すなわち定款に書く必要がないという点に改めまして、従来疑義の多かった点を改正しようとするわけであります。そして株主に新株引受権を与えるか与えないかという問題は、もっぱら取締役会に一任するという建前をとったわけであります。現行法におきましても株主が新株引受権があるのかないかという問題は、理論的にきまっておりませんし、商法の建前としてもあるともないとも言っていないのでありまして、定款で会社がきめることになっておるわけでありますが、先ほど申し上げたように定款はいろいろきめにくかったり、またきめた場合の疑義が多いということで、今回はこれを取締役会に一任するということで、その合理的な運用をはかっておるという点は、確かに改善をなし得るのではないかというふうに思うのであります。従来の定款を見ましても、無条件に株主に新株引受権を与えておる例にほとんどないというぐらいに少いので、株主に新株引受権を与えますとともに、その全部または一部を第三者与え得るというような形で制限しておりますから、これを取締役会にしましても、私に弊害は生じないと思うのであります。
なお、このような改正につきまして私どもが考えますことは、やはり法律というものは、この法の適用主体である会社などが納得し、合理的なものとして受け取れるような立法でなければならないと思うのでありまして、実業界がこの改正について大体賛成であるとすれば、われわれとして考えなければならないことは、第三者としてそれが公益を害しないかということでありまして、公益を害しないと考えられる限り、合理的、便宜な制度は、会社の要求に応じていくことが妥当はないかというふうに考え、このように改正いたしましても何ら会社における利益、あるいは公益を害するものでなしと考えて賛成をしたいと思うわけであります。
なお、その点と関連いたしまして、経過規定が問題になるかと思うのであります。その点について一言考えておるところを申し上げます。まず第一の経過規定の三項、四項が問題になると思うのでありますが、四項におきましては、「この法律の施行前に定めた株主の新株の引受権に関する定款の規定は、この法律の施行の際における会社が発行する株式の総数のうち未発行の部分について、その効力を有する。」しておるのでありまして、当然の規定かと思います。と同時にただし書におきまして、会社が定款を変更あるいは廃止しまして、定款の規定を廃止しまして、株主の新株引受権に関する規定を削除することも可能にしておるわけであります。この点はあるいは株主が従来定款によって新株引受権を与えられておるのを、施行規則において排除できるときめたことが妥当であるかどうかという疑義を生ずるのではないかと思いますので、その点について一言するわけであります。先ほども申し上げましたように、株主に新株引受権を無条件に与えておる会社というのはほとんどないから問題はないかと思いますが、かりにこの点を除いて理論的に考えてみましても、私は必ずしもこれは株主の既得権地位を不当に侵害するものであるとは考えないわけあります。と申しますのは、第一に、株主の新株引受権はかりに定款で与えられておりましても、いわば一種の期待的な利益ということになるわけてありまして、いわゆる株主の利益配当請求権といったような非常に既得権として強く守らなければならないというふうなものでもないのであります。株主の既得権というふうなものはいろいろ考えられますが、いわゆる奪うことのできない権利という中にも、いろいろの段階があるのでありまして、この新株引受権というふうなものをそのようこ強く考える必要がないということが言えるのではないかと思うわけであります。ことに、現行法は株主の新株引受権について必ず定款で書かなければならないという若干行き過ぎた態度をとりました結果、いやおうなしに書かされたわけでありまして、その書くときのいろいろの都合で、あるいは株主に強く、あるいは弱く与えられておるわけでありまして、今回改正法が定款で書かなくてもいいということになったならば、この機会に従来書いた定款の規定について考え直していくという余地を与えることこそ、合理的ではないかと思うわけであります。のみならず先ほど申し上げましたように無条件に株主に与えておる場合が少くて、大がいの場合は株主は新株引受権を有すると書いてありましても、ただし書きで第三者に与え得る余地を残しておる。ところがこの施行規則によりますと、第五項にこの株主以外の者に新株引受権を与えるというふうなことを書いておる規定は、この法律施行の日後その効力を失うことになります。そうなりますと、本文についてただし書きがついておるのが、そのただし書きが消えてしまうのかどうか、こういう疑問も起りましょう。もちろんただし書きが消えるとわれわれは一般の場合に考えますが、そうしたならば会社はただし書きで第三者にやること、あるいは公募すること等の関連において株主の新株引受権を制限していたのを、この五項によって第三者の部分が効力を失ってしまうとなると、無条件に株主にやることになるのかというような問題も生ずるわけでありまして、やはりこの機会に会社としては定款についてあらためて新法の見地において考え直していくという機会を与えることが妥当であると感じ、この点においても施行規則に賛成をし、疑義がないのではないかというふうに思うわけであります。
それからもう一つの附則についての問題点は、三項であるかと思います。この三項は従来定款に株主の新株引受権に関する事項を絶対に書かなければならないものとしたことから、その書き方が悪いということから定款の不備を生じた場合には定款が無効になり、会社の設立その他事項がやはり効力を失うということに従来なっておりましたのを、この法律の施行と同時に、いわば遡及的にそれらの無効を主張できないということにせんとするわけであります。従って従来無効の主張ができたのを新しい法律が出ることによって過去の事項についても無効が遡及的に消えなくなるというふうにすること妥当であるのかというふうな疑義が生ずると思いますので、その点についての私の考えを申し上げるわけであります。従来この点については若干の判例もあるようでありますが、いずれにしましても株主の新株引受権に関する記載が不十分であり、あるいは違法であれば、定款が無効になりますが、であれば、定款が無効にになりますがこの点については第三者に新株引受権を与える規定が不備である場合、先ほど申し上げましたように本文で株主に与え、ただし書きで第三者に与えるというふうなことをしておることから定款全部が無効になり、その他新株の発行なども無効になるというふうな考え方をとる向きもあり得るわけでありまして、非常に問題が大きいのでありまして、実際界におきましてもこの点がどうなるかということに多大の関心を持たれるのでにないかと思うのであります。そこでこのように従来無効と言えたものを法律によって無効と言えなくするということがいいのかという問題でありますが、この点につきましては、すでに前例があるのでありまして昭和十三年の商法改正に当たりまして従来株主総会の決議につきまして手続的な瑕疵が、きずがありましたときには、決議取り消しの訴えがなされ得たのであります。その場合につきましてたとえば昭和十三年の商法中改正法律施行法の第四十二条は、その十三年法がたとえ決議取り消しの訴えがあっても、決議の内容、会社の現況その他一切の事情をしんしゃくして、その取り消しを不適当と認めるときは、裁判所は決議の取り消しの請求を棄却できるという規定を新設するに当たりまして、この規定はやはり遡及実施を認めているのであります。もちろんすでに提起された訴えについて判決があり、その判決が確定しておる場合には、これをくつがえさすことはしない、しかし判決が確定しない限り、決議の取り消し理由があっても、新法施行後は取り消されないという前例を設けておるのでありまして、今回の改正法が会社法としては前例のないことではなしと私どもは考えるわけであります。ただしかし、単に前例を引くだけでは足りないわけでありまして、実質的に考えて妥当であるかという問題を申し上げなければならないと思いますが、私は実質的に考えても、このような形で無効の主張を制限されることに、決して不当ではないと考えておるわけであります。と申しますのは、株主か定款の無効主張し、あるいは会社の設立、新株の発行、合併、そういう事項についての無効を主張する権利は、普通の財産権といったような純粋の形のものではないわけでありまして、いわば会社の利益をはかるために、会社のメンバーとしての社員に与えられた権利で、私どもはこれを共益権と呼んでいるわけであります。それから共益権も、これは共益権を与えられていることそのことは、株主の利益を守ることになりましょうが、権利の本質は会社全体の利益のために行使すべき一つの権限とでもいったような権利でありまして、純粋な財産権というようなものではないと考えるわけであります。だとすれば、そういう会社全体の利益のために行使すべき共益権というものは、その権利の性質から内在的に会社の全体の利益という見地からは制限される性質をもっておるということは、学者がひとしく認めておる点でありまして、そのような権利がどのようにあるべきかという立法政策の推移のうちに、そのような権利が若干制限されるということは、理論的に見て普通の財産的権利ないし既得的権利の侵害と思うのであります。そしてしかもこのような権利を制限する改正法案の考え方が、従来の現行法の建前がすなわち株主に無条件に新株引受権があるかないか、あるいはどのような条件であるかというようなことを無理に定款に書かして、書かなければ無効であるとしたその規定そのものが行き過ぎであり、妥当でないことは一般にいわれており、その行き過ぎの規定の根拠としての会社全体の利益をはかるための共益権、無効主張の権利でありますから、そのような基本的な態度についていわば立法の価値評価が変って、そのような従来の現行法は非常に行き過ぎであり、妥当でなかったという価値判断の変更のもとに、会社の利益を主張するための権利はこのようになければならぬと判断すること自体が違法であり、あるいは不当であるということは言えないのでありまして、そのような意味から考えましてこのような形において無効が制限されるというものがあっても、私は必ずしも株主の既得的権利を不当に侵害する違法な施行規則であるとは考えないのであります。なお、第三者に新株引受権を与えます場合については、従来は、これをも定款に書かしたのでありますが、率直に申し上げまして、従来のこの点に関する定款は必ずしもよくできていたとは言えないのでありまして、きわめて区区であり、法律的に疑義の多い形できめられておったわけであります。そうしてそのようなきめ方との関連において第三者に新株引受権を与えるということは、たとえば会社の役員とか、あるいは労働者とか、縁故先に不当な形において株を持たせる、安く持たせるというむしろ弊害すら生じていたことは周知の事実でありまして、この点を相当に監督をする必要があることは当然であります。でありますから、改正案が第三者に新株引受権を与える場合には株主総会の特別決議による授権を必要とするというふうに厳格にこれを制限したことは妥当な方法であると思います。要するに株主に当然新株引受権があると言わなくても、問題はむしろ、弊害はむしろ第三者に不当に安く与えられることの関連において株主の利益が害されることの方が多いということを考えるならば、株主に対する新株引受の問題を重役会に一任しても、第三者に不当に与えることのないようにその点を厳格にしぼっておる改正法は、大体従来の弊害を除去して合理的な実務を導き出し得るのではないかというふうに考えるわけであります。会社といたしましては、役員、従業員その他第三者に新株引受権を与える場合は確に不便なものになります。株主総会を開く費用と手間とを要するわけで、これの費用と、手間をかけてもなお第三者にやりたいというときにだけやれるということになりますが、この点は従来の弊害にかんがみますときに、私は決して厳重に過ぎるものとは思わないわけであります。そうして、これは一般的な資金の調達を害するという問題ではないので、特定の役員とか従業員、縁故先に株を市場価格が高くても株価で、額面株で与えるという形を通しての資金調達でありますから、これを厳格にすることによって会社の一般的な資金の調達が阻害されるとは考えないわけであります。要するに、改正法案におきましては、株というものは株主に額面で与えるか、そうでない場合には公募する、言葉をかえて言えば、市場価格で株は出ていくという健全な方向に動いていくのではないかというふうに期待できますので、全面的に改正法案に私は賛成する次第であります。
その他こまかい技術的な点がございますが、それは特に私として申し上げるほどもなく、全面的に賛成してよろしいのではないかというふうに考えております。と同時に最後に申し上げたいことは、今回の改正はおそらく実際界の混乱ないしは紛糾ということを考えて、早急に解決を要する事項について、いわば緊急ものだけを改正されようとするのではないかと思われるのでありまして、株式会社法全体についてはこれは今後とも多分に疑義が残っている問題、あるいは根本的に考えるべき問題があると思います。しかし、そういう問題は相当の研究を経て改正の準備をされようとしておられるものと思いますが、今回のものはともかく早急に解決を要するとして立案準備せられたとすれば、早急にこの法律の成立されることか望ましいと思うので、率直に申し上げますならば、昨年の九月から準備がされたようでありまして、本日に及ぶのはいささかおそきにすぎたのじゃないかということを私ども第三者としては感ずるのでありまして、早急に成立することを希望し、会社関係における法律生活の安定が一日も早くできることを希望するということを申し上げまして私の後述を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/2
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003・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) ありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/3
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004・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 次に、三菱倉庫株式会社社長の大住達雄君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/4
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005・大住達雄
○公述人(大住達雄君) 現行の商法は昭和二十五年に改正されたのでありますが、この中で授権資本制度というものを採用しているのでありますが、この授権資本制度はその当時の経済界がこぞって要望したところでありまして、この点は実業界の要望がいれられたところと考えているのであります。ところがこの改正にあたりまして審議の期間が短かく過ぎたように考えられますので、でき上った法律の条文に相当不備の点があるように考えられるわけです。
そこで本法が施行されましてから、実業界におきしては授権資本制度の運用の妨げられるような規定はすみやかに再改正してもらいたいということの要望を何回か出しているのであります。
その第一点は、新株引受権に関します第百六十六条一項五号及び三百四十七条の第二項の規定であります。この規定が非常にわかりにくい。わかりにくい上に、のみならず、この解釈につきまして非常に意見が分れているということであります。しかも株主に対する新株引受権の規定が定款の絶対的記載事項となっているために、この規定が不備のために無効になる場合には会社設立無効、あるいは新株発行無効というような問題まで生じてくるのであります。従いまして実業界としては、この新株引受権に関する規定を定款の絶対的記載事項からはずして、新株の発行におきましては取締役会の決議によりまして時価でもって公募するか、あるいは有利な価額でこれを株主に割り当てるかということは、取締役会の定にまかしてもらうような規定を設けてもらいたい、こういう要望をしておったのであります。今回の改正案はこの要望がいれられまして、新株は原則として適正な価額でこれを公募する、取締役会の決定によっては株主に新株引受権を与えることができる。こういうふうに案ができましたのは、授権資本制度の機動性を生かす上において適切な改正であるとこう考えるのであります。
次に、株主以外の者に新株引受権を与えることでありますが、従来定款に新株引受権を与えるものを記載すれば、その与うべき数は取締会の決議をもって自由にこれを割り当てるという解釈が行われていたのであります。この考え方の有効無効につきましてはいろいろ議論がありますけれども、実際におい行われておったのであります。そのために役員、従業員あるいは縁故先等に相当の株式を額面で割当てて相当の非難をこうむっていた例が多いのであります。またこれに関連いたしまして株式を適正価額で公募することすら悪いような印象まで与えられていたのであります。そこでこの改正案におきましては、新株を株主以外の者に与うるには、株主総会の特別決議を必要とする、こういうことになってたのでございます。これはある会社にとっては少しつらいことかもしれませんが、株式の発行を公正にする、こういう意味におきまして、実業界の心ある者はかくあるべきであるというふうに考えている次第であります。
次に、授権資本制度が採用されまして、新株の発行は旧法時代よりも非常に迅速にできる、こういうふうに考えられていたのでありますが、二百二十四条のこの株主名簿閉鎖に関する規定、これが閉鎖の前三十日前に公告しなければならない、こういうことになっておりますし、また新株を発行する際に、新株引受権を有する者に対して申し込むか申し込まないかということを催告することになっておりますが、その催告にはやはり三十日前にこの催告をなさなければなしない、そういうことになっております。従いまして新株を発行するにまず株主名簿を閉鎖する、そこで三十日かかります。失権予告付の催告をするのにまた三十日かかる。発行手続を行うのにまたここで三十日ぐらいかかりますから、せっかく授権資本制度を採用しても、新株の発行は九十日ぐらいかかる、これが現状になっているのでございます。そこで株主名簿閉鎖の予告期間及び新株式引受権を有する者に対する失権予告付催告の期間を短かくしてもらいたい、こういう要望を出しておったのであります。幸いにしてこれが採用されまして、株主名簿閉鎖の予告は二週間前ということで、これで三十日の短縮ができることになったのであります。今後この法律が施行されますれば、現在必要な資本の調達が相当すみやかにできるというふうに確信しておるのであります。この意味において経済界におきましては、この法案が一日も速く施行されることを望んでいる次第でございます。ことに、この新株引受権の定め方につきまして、東京地方裁判所におきまして、現在ほとんどの会社が定めているような新株引受権に関する定款を無効とする、こういう判決があったのであります。もちろんこれは被告会社で控訴しておりまして、判決が確定するのはよほど先のことだと、こう思いますが、ただ現在こういう定款を採用している会社が、新株発行の必要に迫られている、また新株を発行しましまして、さらに授権のワクを拡張する必要に迫られている会社が相当多いのであります。しかるに裁判所でそういう定款が無効になったために、もし発行無効の訴えを起されはしないかという懸念から発行を差し控えているということも考えられるのであります。現在資本を早く調達してオーバー・ボローウィングつまり企業の借り過ぎをなくする、資本を修整するということは、これは実業界に課せられた大きな使命なんです。しかるに定款の規定が不備で為るという理由でもって新株の発行を渋っているというような事情がありますならば、これは日本の経済界にとってゆゆしき一大事であると、こう考えるのであります。従いまして、単にこの商法の一部を改正する法律案、これを賛成するという意味ばかりじゃなく、一日も早くこれを施行して、従来起っているような忌まわしい問題を解決すると同時に。一日も早く各企業の資本の充実ができるということを望んでいる次第であります。以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/5
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006・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) ありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/6
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007・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 次に、弁護士の野津務君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/7
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008・野津務
○公述人(野津務君) 私は弁護士会連合会の方から出るようにというお話がございまして本日出席をいたしました。
今度の改正法案で一番重要な問題は、この百六十六条第一項の第五号を削除するというこの点であろうと思います。これにつきましては昭和二十五年に現行法が法律案として国会に出されました当時に、衆議院の法務委員会におきまして公聴会にやはり私は呼ばれまして、そのときにこの定款の絶対的必要事項として、株主に対する新株引受権を与えるか与えないかということを書かせるということは、はなはだよくない、これはむしろ削除すべきであるということを述べましたのであります。定款の絶対的必要事項としますと、各会社において定款に書かなければなりません。しかるに定款にその新株引受権があるとかないとかいうような固定的な定めとするということでありますと、会社経営上の機動性がなくなるおそれがあるのであります。で、この現行法の建前から申しますと、新株の発行事項は、取締役会の権限事項とされておるのでありますから、株主のこの新株引受権についても、やはり取締役会で定め得ることとした方が機動性に富みまして、経常上から申せば便宜であると言わなければなりません。またその定款の定め方によりまして、ふるいは有効となったりあるいは定款の全部が無効となったりしまして、しかもそれが登記事項でありますから、登記の上においてもいろいろ問題を生ずる余地があって、混乱のおそれがあるわけであります。そういう趣旨のことを私は述べたけれども、その当時衆議院におきましては私の意見は顧みられなくて、結局現行法となったわけであります。ところが、その後、実際の状態を見ますと、やはり、私のおそれておったように、全国的に非常な混乱を生じまして、同一の登記所でありながら、取扱いを二、三にする。法務省の方からも実例を掲げて、こういう場合には有効である、こういう場合には無効であるというような訓令を発する。その訓令が届いた後と、それからその前とでは、全国的に登記所の取扱いが違うというような非常な混乱を生じたのであります。その後、法務省の方からも要綱について諮問されたりなどしまして、弁護士連合会の方でも意見を立てまして答えたわけでありますが、また私自身の見解も、連合会から出しております「自由と正義」という雑誌にも載せておる次第であります。これにも、やはり、この株主に対する新株引受権に関する事項を定款の絶対的必要事項とするということはよくないと、これを削除すべきものであるということを書いておる次第であります。その後、各方面において、やはり、私の意見通りの要望が生ずるようになりまして、ここに改正案が出されたわけでありまして、これは私の平素の持論通りであるのであります。それから「二百三十七条第二項を次のように改める」とあります。これは少数株主権を行使して、裁判所の許可を得て総会を招集することができるという規定でありますが、ここでは「遅滞ナク総会招集ノ手続キガ為サレザルトキハ」とあります。「遅滞ナク」という点についてちょっと述べたいと思いますす。現行法には「二週間内」とありますのを、「遅滞ナク」と改められますので、私はこの改正法案をちょっと読んだとき、「二週間内」とあるのを、さらに短かくして「遅滞ナク」と、短かくするためにその「遅滞ナク」と改めるのかと考えましたのでありますが、理由書を見ますと、実はそうではなくて、「二週間」というのは短か過ぎるから、これをもう少し長くさせようという意味から「二週間」ということを取って「遅滞ナク」としたと、こう理由書に書いてございます。ところで、その遅滞があるのか遅滞がないのかということの判断は、これは各具体的の場合によって異なるのでありまして、果して遅滞なきやいなやということを認定することが、場合によってははなはだ困難なことがあるのではないかと思うのでありまして、裁判所が判定する上において困難を感ずるようなことがありはしないかと思うのであります。「株主ハ裁判所ノ許可ヲ得テ共ノ招集ヲ為スコトヲ得」とありまして、そのときには裁判研は果して総会招集の手続が遅滞なくやられたかどうかということを、やはり考えるであろうと思うのでありますが、ところが、それを遅滞なきやいなやということを判定することが困難ではないかと思うのであります。そういう困難を感じさせるような法文は、これは改めて、よかろうと私は考えます。もし、「二週間」が短か過ぎるならば、むしろ、三十日内とか何とかはっきり期間をきめた方がよくはないか。「二週間」が短かすぎれば、三十日内くらいにしたらよくはないかと私は考えます。たとえば代表訴訟の規定でありますところの第二百六十七条第二項の規定、それから新株の不正発行の場合の引受人に対する訴訟に関する規定でありますところの第二百八十条の十一の第二項におきましては「三十日内」とありまして、つまり請求のあったときから「三十日内」に手続をしなければならんということになっておるのでありまして、「遅滞ナク」とは書いてないのであります。でありますから、これはやはり統一的に三十日内というように「遅滞ナク」という文字はどうも私はこれにはなはだ裁判官が困りはしないかと思うのであります。
それから次に、この原案によりますと、「総会招集ノ手続ガ為サレザルトキ」とありますが、総会招集のためには取締夜会を開いて取締役会と株主総会招集の日にちなどをきめなければならんわけでありますが、そこでその総会招集の手続というのは一体何を言っておるのであるか、総会招集の手続に着手すればいいのであるか、それとも総会招集の手続を全部しなければならないという意味であるのか、ただ「総会招集ノ手続ガ為サレザルトキハ」というのは一体どういう意味であるのか、はっきりしないのであります。それでその総会招集のために取締役会招集の手続きをすれば、これはやはり株主総会本招集の手続をしたことになるのであるか、または総会招集の通知状を発して始めてその総会招集の手続をしたことになるのか、そこのところがどうもはっきりしないのであります。この点はむしろ現行法のように「総会招集ノ逝知ガ発セラレザルトキ」こうすればその点は時日の認定がすこぶる容易であると思います。で「招集ノ手続ガ為サレザルトキ」と、こうやったのでは、どの程度のものでよいのであるか、それがどうも不明瞭であると思います。ただし現行法の「通知ガ発セラレナイトキ」というのは、期間内に一部の株主に対して通知を発すれば、本条第二百三十七条第二項の適用がないことになるのかというその疑いを生ぜしめる欠点もございます。つまり現行法のように、現行法通りとしても期間内に一部の株主に対して通知を発しても、もうすでに通知か発せられたということを言い得るのであるか、あるいは全部の株主に対して通知を発しなければ「通知ガ発セラレザルトキ」ということになるかという点が、多少疑いの余地がありますから、むしろ簡単に端的に、「請求アリタル日ヨリ六週間内ニ総会ヲ開カザルトキハ」と、こうやれば疑いの余地がなくなって、一番明瞭ではないかとかように考えます。そうすればこの理由書に書いてある趣旨を十分貫くことができると思うのであります。
それから第二百八十条の二について述べますが、この二百八十条の二の改正案は、これは私の考え通でありますから賛成であります。ただしこの第二項の字句、「株主以外ノ者ニ新株ノ引受権ヲ与フルニハ定款ニ之ニ関スル定アルトキト雖モ与フルコトヲ得ベキ」云々とありますが、この字句がどうもいかにもぎごちない感じを与えるのであります。「定款ニ之ニ関スル定メアルトキト雖モ」とありますのを、「定款二別段ノ定アルトキト雖モ」とした方がよくないかと思います。それから「与フルコトヲ得ベキ引受権」とありますが、これはあまり丁寧過ぎるのでありまして、よけいな文句がはさまってあるように考えます。むしろこれは「株主以外ノ者ニ新株ノ引受権ヲ与フルニハ」とこうありますから、その引受権を受けたものであるのでありますから「与フルコトヲ得ベキ」とこう書かなくても、「新株ノ引受権ヲ与フルニハ」とありますから、直ちに「其ノ引受権ノ目的タル」とかいうようにした方がよくにないかと思います。これにただ字句だけの問題であります。趣旨においては賛成であります。この法案の字句がどうも少しよけいな言葉あってぎこちないと私は考えます。それから附則の方は、大体これに賛成でありますが、第五項についてでありますが、現行法によりますと、第百六十六条の五号によりまして定款に第三者に新株引受権を定めた場合には、いうまでもなく取締役は定款に拘束されるのでありますから、定款通りに第三者に新株引受権を与える契約をしなければならんわけであります。場合によっては契約をしない場合もありましょうが、もしこの第三者に対して引受権を取得するわけであります。ところが、この改正法案によりますと、申し込みがあった新株の引受権者は何ら影響を受けないのでありますけれども、申し込みをまだしておらないでこれからその申し込みをしようとする引受権者はこの第五項の規定によってその権利を失うことになりはしないか。この第五項にこの法律の施行前に定めた株主以外の者の新株の引受権に関する定款の規定は、「この法律の施行後はその効力を有しない。ただしこの法律の施行前に申込があった新株の引受権については、従前の例による。」のであって、申し込みをしたその新株の引受権はやはりあるけれども、まだ申し込みをしておらない、しかも会社に対して新株引受権を時っておると、こういうような場合にはこの第五項のによりますと、その権利を失うこととなるのでありますが、これは第三者の既得権を侵すこととならないかという疑いがあるのであります。それで、私はこういうようにしたらよくはないかと思うのであります。この「ただし」以下を「ただし、この法律の施行前に株主以外の者が取得した新株の引受権については、従前の例による。」と、こうした方が問題が起らなくてよいのでははいかとかように考えます。もう一度読みますと「ただしこの法律の施行前に株主以外の者が、取得した新株の引受権については、従前の例による。」こうやれば既得権を侵害するようなおそれはないのではないかと、かように私は考えるのであります。よその他の点につきましては、私は別に違った考えは持っておりません。それだけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/8
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009・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) ありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/9
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010・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 以上をもちまして公述人の公述は応終了するのでございますが、委員各位において公述人に対して御質疑がありましたら、御発言をねがいます。
それじゃ私から公述人にお伺いいたしたいと思います。
二百三十七条の二項の改正点でございますが、改正原案によりますと、四週間以内に招集通知を発することを要し、公告は三週間以内にこれをなさなければならない、こうあるのでございますが、これに対しまして東京商工会議所では、四週間では実務上実際不可能だから六週間に延長してほしい、こういう要望が実は出ておるわけでありますが、それに対してどんなふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/10
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011・大住達雄
○公述人(大住達雄君) この「六週間内ノ日ヲ会日トスル総会ノ招集ノ通知」この点でございますか。たしか商工会議所の要望は六週間以内に招集の通知が発せられざるときというふうな要望だと思いましたが、間違っているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/11
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012・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 私の方はそうではなくて、四週間だと、こういうふうに記憶しておるのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/12
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013・大住達雄
○公述人(大住達雄君) これに関連いたしまして、全体の私の意見を申し上げてよろしゅうございますか。現行法では「二週間内二総会招集ノ通知ガ発セラレザルトキハ」とこう規定しておるのでありますが、これは事実上不可能であります。まず少数株主から総会招集の請求がありますと、総会に出席して議決権を行使する株主を確定するために、株主名簿の閉鎖をしなければならない。現行法におきましては、これが、三十日前に公告しなければならないことになっておるのであります。改正案では二週間前に公告をしなければならないとこうなっておりまして、いずれにいたしましても株主名簿を閉鎖して株主を確定するのにに週間以内に招集の通知を発するということはできないのであります。そこでこれを三十日にするとか、あるいは四十日にするというようなことも考えられるので、ありますが、この招集の通知を発するために幾日を要するかということは、会社の規模によって違ってきます。株主が数万人いる場合おいては、相当の期間を要する。株主が少ない場合においてはあまり期間は要らない。こういうことになります。また、招集の請求がたまたま株主名簿を閉鎖しているときに来たという場合には、これは株主名簿も閉鎖する必要がないのでありますから、すぐにでも招集の通知が発せられるわけであります。でありますからその点を考えまして、かりに三十日以内といたしますと、大きな会社は非常に忙しい思いをしなければならない。少ない会社は三十日間遊んでいられるということになっておもしろくないのでありまして、やはり「遅滞ナク総会招集ノ手続ガ為サザルトキハ」と、そこに融通無礙の規定である、こう考えて、それから「招集ノ手続ガ為サザルトキハ」というのは、株主名簿の閉鎖、取締役会の招集、株主の確定、招集通知状の発送というような一連の行為を手続と考えるのでありまして一つだけやったら、あとはやらなくてもいいと、こういう意味にはとれないのでありまして、やはり会社の規模、それからそのときの状態によって違ってくると言うことを前提としますれば、「遅滞ナク招集ノ手続ガ為サレザルトキ」というのは、きわめて適切な規定であると考えられるのであります。
それから次の「六週間内ノ日ヲ会日トスル」この規定につきましては、株主名簿の閉鎖をするために二週間必要であります。それから招集の通知は二週間前に発しなければなりませんから、請求を受けましてから株主名簿の閉鎖の公告をだすまでに一週間、それから閉鎖いたしまして総会の通知をなすまでに一週間の期日があるのであります。これは現在の状態におきましては、そう困難はないと考えるのであります。むろん取締役会の招集というようなことがありますけれども、これは閉鎖の公告をして、そのあとで取締役会の招集をするということで救われますし、また臨時に株主総会を招集する場合には、これは配当金の領収というような問題が起ってきませんから、名義書きかえというようなものは少いと考えるのであります。ですからあらかじめ確定株主に対しては、招集の通知状を書いておいて、発送する用意をしておく、で、名簿閉鎖後に閉鎖期間の直前に来たものだけの発送通知を変更する、あるいはそれだけを保留しておけば、これは六週間という期日は長過ぎる、あるいはもっとほしいのでありますけれども、まあできないことはないと考えるのでありまして、しいてこの六週間をもっと延ばしてもらいたいというような要望は今のところする考えはありませんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/13
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014・一松定吉
○一松定吉君 ちょっと大住さんに伺いますが、今の二百三十七条二項の規定を二つに書き分けていることについては、今野津さんのお話があって、むしろ一つにまとめた方がよくはないかと思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/14
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015・大住達雄
○公述人(大住達雄君) こういうことが考えられるのです。招集の通知を発するそうすれば総会の期日は三カ月後でも四カ月後でもよい。ところが法律の規定は二週間前に発すればいいのですから、これはある会社でもって半年くらい先に総会の招集の通知を出した例があるのです。その期日を長いことおいて、それでその間に株主が妥協したというようなことも事実あるのでございまして、ただ総会の招集通知を発するだけではいけないので、やはり期日をきめる、総会の会日をきめる、こういうことが必要だと考えるので、それで六週間内の日を会日とする、こういうふうに……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/15
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016・一松定吉
○一松定吉君 いや、私のお尋ねするのは、その二つに分けて、これでは、「請求アリタル後遅滞ナク総会招集ノ手続ガ為サレザルトキハ請求ヲ為シタル株主ハ裁判所ノ許可ヲ得テ其ノ招集ヲ為スコトヲ得」というのが、現行法の二週間を「遅滞ナク」と直しただけでですね。そういうことを一つしておいて、またもう一つ先に「請求アリタル日ヨリ六週間内」云々と二つに分けてしなくても、一つにまとめてやった方が……、今野津さんのお話しでは、そういうようにしてむしろ弊害のないようにした方がよくはないかという御意であったように承るのですが、それを二つに分けなければならぬわけがあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/16
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017・大住達雄
○公述人(大住達雄君) 前の方は会社によって、六週間かからないかもしれませんです。ですから六週間の会日があるからといって、その間何もしないでるということも考えられるわけですから。で前の方は、たとえば株主名簿閉鎖期間中に総会招集の請求があったという場合に、これはすぐ取締役会を開いて総会の通知をする。たとえば五週間以内の日を会日とする招集もできるわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/17
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018・一松定吉
○一松定吉君 その点野津さんどうです。もう一ぺん、あなたの御意見と大仁さんの御意見と違うところですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/18
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019・野津務
○公述人(野津務君) お答えいたします。これは法案に六週間以内とこうありますのは、これは最高限度ですから、一週間内に、まあ一週間内に開くということはちょっとできませんが、三週間くらいで総会を開くということもできるわけであります。何も六週間内と、こういうことを書いたからといって、何も六週間まで待たなければならぬというそんなばかなことはないのですから、それは請求ありたる日より六週間内に総会を開かざるときは、こうやれば三週間内に開こうと四週間内に開こうとこれは勝手なんですから、六週間というのは最高限度なんですからね。今大住さんの言われたのは六週間内とあると六週間まで待たなければならぬと、こういう議論でありますが、何も待たなければならぬというわけではないのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/19
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020・一松定吉
○一松定吉君 大住さん何だね、今、野津さん言われたように、法は簡明なるを要す、複雑であって疑問があるようなのではおもしろくないので、六週間内というと一週間も六週間内、二週間も六週間内、三週間も六週間内、それを適当にここで、六週間というのを三週間とか四週間内とかにしてこれを二つ分けずに一つとにした方が簡明でよくはないかとこういうのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/20
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021・大住達雄
○公述人(大住達雄君) 私は前のあれとあとの事情が違っているのですから、やはり分けてやるべきである、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/21
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022・一松定吉
○一松定吉君 石井教授が何か御意見があるようでございますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/22
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023・石井照久
○公述人(石井照久君) 今の点ですね、総会を早く開かなければならないかという御議論のようでありますが、これは今のお話しのように早く開けば早く開いてちっともかまわないわけですから、六週間後持てなければ少数株主が自分で開くか開かないかという問題なんですね。だから今のように六週間内に開かないとき、とあると、少数株主はまあそこまで持たなければならぬ。しかし小さい会社ではもっと早く開けるわけなんですね。その間なまけていても、少数株主は何とも言えないということになるわけですけれども、問題は野津さんのお考えにしても、一体少数株主権を保護しようとお考えになっておられるのか、会社の方の利益を考えておられるのか、その点が問題だと思うのです。ただ「遅滞ナク」というだけの問題ではないので、この規定でありますと、小さい会社であれば六週間内に開けますから、それをぐずぐずしていたら、少数株主が裁判所に請求して総会を開けるわけです。ところが小さい会社では、六週間内とすればなまけておっていいということになるので、それがいいかということを考えてただかないと、いつ開けるかというだけの問題ではないと私は思うのです。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/23
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024・一松定吉
○一松定吉君 いや、そこは意見の相違でありますから……。いま一つ、株式の金額は平等でなければならぬということが今までの株式会社の原則であったのですが、これが額面違うものが認められて、もしくは無額面、無額面というのは一体どういうものなんですか。額面は五十円券だとか五百円券とか百円券とかいうのがあるのですか、無額面券というと、学説上からどういうように解釈するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/24
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025・石井照久
○公述人(石井照久君) この無額面というのは、要するに額面と申しますと従来株券に五十円とか、三十円とか書いてある、それが額面と言うわけですね。そういう場合に発行するときには、なるほど五十円で出しますけれども、出てしまいますとあとは市場価格で売買されておるわけですね。そういう場合に無額面を認めましたのは、会社が非常に景気が悪い、従って五十円株を出していても、今五十円で出せないというときに、困るわけですね。五十円でどうしても出さなければなりませんから、額面を割れないというのが商法の建前でありますから、だからそういうふうな場合に株は市場価格で出るものだと割り切って、景気が悪ければ、無額面ならば市場価格で株が出せるというのが無額面でございますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/25
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026・一松定吉
○一松定吉君 そこで無額面というのを表わすにはどういうふうに表わすのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/26
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027・石井照久
○公述人(石井照久君) 額面に表わさないから無額面です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/27
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028・一松定吉
○一松定吉君 いや、それはわかるわけでございますが、それなら払込金額というのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/28
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029・石井照久
○公述人(石井照久君) それは株主と会社はわかります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/29
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030・一松定吉
○一松定吉君 けれどもそれは流通するのです。その金額が額面に書いてないから無額面であるのですが、これは幾ら払い込んだらいいかということはわからないことになるのですね。かえって市場が混乱しやしませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/30
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031・石井照久
○公述人(石井照久君) その場合も、たとえば五十円払い込んでおっても三十円に下っておる株もございますし、七十円になっておるものもあるので、株というものに最初に幾ら払い込んだかという値段で流通するのでなくて、その市場価格で流通するということでよろしいのじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/31
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032・一松定吉
○一松定吉君 そうすると、たとえば一千円払込んだけれども、やはり無額面だ、それがあるいは五十円になった、一向株主が株券の価値というものをこれは一体、幾ら払い込んである株券か、流通するときに相手方がわからぬというときに、会社の帳面を一々見なければ幾ら払い込んでおるかわからぬという株券があること自体、財界を害するということにならないかということを聞くのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/32
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033・石井照久
○公述人(石井照久君) 私はその点は株券は市場価格できまりますから、害さないと思っておるわけでございますけれども、実際には御存じのように、無額面はまだ少ないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/33
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034・一松定吉
○一松定吉君 石井教授は外国のそういう例を御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/34
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035・石井照久
○公述人(石井照久君) アメリカにございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/35
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036・一松定吉
○一松定吉君 アメリカだけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/36
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037・石井照久
○公述人(石井照久君) アメリカは金融会社を除いて大体無額面の方が多うございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/37
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038・一松定吉
○一松定吉君 そうすると流通の場合などにどうなりますか。幾ら払い込んだかわかりようがない。ただ石井株式会社の株というだけで、その額面がないのですから三十円か五十円かつかめない、この額面が基礎になって五十円払い込みのものが三十円に下っているとか……。無額面だと幾ら下ったか幾ら上ったかわからんということになるのです。それでは財界が混乱をしてしまう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/38
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039・大住達雄
○公述人(大住達雄君) 一つの実例を申し上げます。三菱倉庫株式会社では発行価格百円で無額面株を発行したのであります。これはやはり市場性を持っておりまして、百五十円のときもありました。現在下って八十円前後でありますが、市場に流通しておりまして、一つも混乱をきたしておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/39
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040・一松定吉
○一松定吉君 今あなたの仰せの通り、百円なら百円で無額面株を発行したというと無額面ではない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/40
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041・大住達雄
○公述人(大住達雄君) 発行価額が百円……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/41
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042・一松定吉
○一松定吉君 無額面というのは、額面に金額が書いてない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/42
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043・大住達雄
○公述人(大住達雄君) 書いてないだけで、発行価額というのはあるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/43
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044・一松定吉
○一松定吉君 金額を額面に書いてないのが無額面で、払い込み金額は千円であっても無額面で、そんなことは財界が混乱するもとです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/44
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045・野津務
○公述人(野津務君) 先ほどの石井さんからの発言につきまして、ちょっと答えたいと思います。六週間内とやれば六週間内の期間内に総会招集の手続きはできるわけなんですね、三週間目にでも四週間目にでもできる、こういうことを私は述べたのであります。何も少数株主を保護しないとこういう意味ではないのです。六週間とやればそれになるほど石井さんの言われたように、少数株主権を発動して、その株主みずから総会の招集をしばるがためには六週間を持たなければならぬ、これはその通りであります。けれどもこれはこの法案自体の趣旨なんです。で私のように改めるということによって法案の趣旨が変えられるわけではないのです。かえってよくなる。法案の目的はこれを私のように改めれば十分に達せられる。そうしてしかも簡明に端的に疑いを生じないのでありますから、これは私の案の方がいいように私は考える次第であります。何も私は少数株主を保護しないとこういう趣旨ではないのです。これはもう改正の御趣旨と全然同じでありますから、その点で私は何ら疑いを抱かれることはないと思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/45
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046・一松定吉
○一松定吉君 これ一つ大住さん、実業家だから伺ってみたいが、今野津さんの附則の第五項「この法律の施行前に申込があった新株の引受権については、従前の例による。」これはあいまいだから、野津さんの話しでは、法律の施行前に株主以外の者が取得した新株の引受けについては、とした方がわかりいいのじゃないかという御意見ですが、あなた実業家としてどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/46
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047・大住達雄
○公述人(大住達雄君) 取得したというのは、時期がはっきりしないのでありまして、むしろこの……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/47
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048・一松定吉
○一松定吉君 「この法律施行前」という時期は、施行前ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/48
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049・大住達雄
○公述人(大住達雄君) 取得したということが、客観的にどうもはっきりしないのでありまして、「申込みがあった」というのは、新株の引受権を行使したという客観的事実があるのでありますから、その客観的事実をとらえて、そこであるかないかということをきめた方がいいと考えたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/49
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050・一松定吉
○一松定吉君 意見の相違ですからよしましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/50
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051・大住達雄
○公述人(大住達雄君) 先ほど商工会議所の要望について御質問がありましたけれども、この要望書は、実は法案が出る前に要綱が発表されたときに、会議町内で委員会を開きまして、要望したのでありまして、ただ発表の時期が法案が出てから発表したので、幾らか矛盾しているような感じがあります。これを逐条的に申しますと、要綱には端株の処置について何も書いてなかったのであります。それで端株については割当てを要しない、こういうことを要望したのですが、法案が出てみましたら実はその規定があるのであります。それから第三者の新株引受権も混乱を考えまして、申し込みを基準にしたい、こういう要望したのでありますが、法案では申し込みを基準にしているのでありまして、それから第三の、これ四週間以内に招集通知が発表せられないということを、六週間にしてくれと、こう言ったので、この決議は実は法案が出る前に決議しておる。発表がおくれたために、こういう矛盾が生じたということを釈明したいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/51
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052・一松定吉
○一松定吉君 野津さんどうだね、無額面株券の発行というのは、私をして言わしめると、財界を混乱に陥れるおそれがあると思うのですが弁護士としてそういうことが訴訟になったことが今までにありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/52
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053・野津務
○公述人(野津務君) 無額面株というのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/53
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054・一松定吉
○一松定吉君 今の現行法にあるのです。無額面株は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/54
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055・野津務
○公述人(野津務君) 無額面株は、わが国においてはまだ発行されておる例がきわめて少いのでありまして、三菱倉庫であるとか、そのほか二、三ある程度でありまして、まだそう普及しておりません。従ってこの点については問題も起らないようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/55
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056・一松定吉
○一松定吉君 現行法の二百八十条ノ二に「額面無額面ノ別、」とちゃんと無額面の価額があるということは現行法で認めているのですが、私の考えでは、こういうような、額面は書いてないが発行は百円で無額面を出した、それが財界にどういう変動をきたすかも株券の信用に影響するかということ、当然起り得べき問題だと思うのですが、まだ問題が起こってなければその程度でよろしゅうございます。これはしかし注意しなければならぬのではないかと思っております。もうよろしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/56
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057・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 別に御発言もないようでございますか……。
公述人の皆様には大へん有益な御意見の御開陳をいただきまして、まことにありがとうございました。
それではこれをもって公聴会を散会いたします。
午後三時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215221X00119550624/57
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