1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月六日(水曜日)
午前十一時八分開議
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議事日程 第三十三号
昭和三十年七月六日
午前十時開議
第一 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第二 文部省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第三 郵政省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第四 農林省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第五 厚生省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第六 法務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第七 地方公営企業法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第八 日本住宅公団法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第九 住宅融資保険法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
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001・河井彌八
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
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002・河井彌八
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず委員長の報告を求めます。法務委員長成瀬幡治君。
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〔成瀬幡治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/2
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003・成瀬幡治
○成瀬幡治君 ただいま上程になりました裁判所職員定員法の一部を改正する法律案についての委員会における審議の経過及び結果について御報告申し上げます。
この法律案は、行政費の節約等のため、昨年来行われた行政機関の事務の簡素化及び人員の整理に対応して、裁判所においても司法行政事務を簡素化して人員の縮減をはかることとなり、すでに昨年の第十九回国会における裁判所職員定員法の改正によりまして、裁判官以外の裁判所の職員が四百二十名減員されましたが、同様の趣旨から、今年度においても二百八十名の減員を行おうとするものであります。なお、この裁判所の職員の人員整理につきましては、この法律案の附則におきまして、一般公務員の人員整理の場合に準じ、本年九月三十日までの間は、新定員をこえる員数の職員を定員の外におくことができるものとして、円滑に整理を行うことができるよう配慮いたしておきます。
委員会におきましては、羽仁委員より、本法に関連して最高裁判所事務局に対して、裁判所職員に対する政治的立場及び思想上の差別問題、行政犯または取締法規違反事件についての納得する裁判の問題及び司法修習生の採用についての思想調査等の問題について質疑があり、当局より「それぞれ答弁がなされましたが、その詳細は会議録によって御了承願いたいと存じます。
討論におきましては別に発言はありませんでした。
かくて討論終結の上、採決いたしましたところ、多数をもって可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/3
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004・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供」ます。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/4
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005・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/5
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006・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第二、文部省設置法の一部を改正する法律案
日程第三、郵政省設置法の一部を改正する法律案
日程第四、農林省設置法の一部を改正する法律案
日程第五、厚生省設置法の一部を改正する法律案
日程第六、法務省設置法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上、五案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/6
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007・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。まず委員長の報告を求めます。内閣委員長新谷寅三郎君。
〔新谷寅三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/7
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008・新谷寅三郎
○新谷寅三郎君 ただいま議題となりました文部省設置法の一部を改正する法律案外四件の法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、文部省設置法の一部を改正する法律案について申し上げますると、本法律案は、最近フィリピン、ビルマその他東南アジア諸国との賠償折衝の進展に伴い、文部省においても、これらに関連する事務が増加する傾向にありまして、これらの事務は、将来関係各国との賠償協定の締結に伴い、さらに一そう増加するものと予想せられ、また賠償関係事務のほか、各国との国交の正常化に伴いまして、各般の国際協力関係事務も増加しつつありますので、文部省において賠償及び国際協力に関する事務を所管することを明らかにするとともに、調査局において賠償に関する事務を処理せしめんとするものであります。
内閣委員会は、前後三回にわたり、本法律案について審議をいたしましたが、その審議によって明らかになった点を申し上げますと、本法律案のために、予算及び人員の増減は全くないこと、文部省の所掌事務に関係のある賠償に関する事務は、調査局の国際文化課において、また国際協力に関する事務は、その内容に応じて各局でそれぞれ処理せしめる方針であること、文部省の所掌事務に関係のある賠償は、現物賠償としては教育関係の機械、器具等の提供、また役務賠償としては技術の提供、留学生の受け入れ等が予想せられること等であります。
昨日の委員会におきましては、質疑を終結し、動議により、討論を省略して、直ちに本法律案について採決いたしましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと議決せられた次第であります。
次に郵政省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。本法律案の改正の要旨を申し上げますと、さきに日本国とビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定が成立して以来、この協定の実施に伴う関連事務が具体化して参り、また近い将来においてその他の国々とも賠償等の協定が成立した場合は、これに伴う関連事務も生じてくるものと認められ、また最近東南アジア諸国に対する諸種の集団的技術援助活動が活発化し、また個々の国からの技術援助の要請も少くない実情でありますので、本法律案につきましては、郵政省の権限としてその所掌事務にかかる賠償及び国際協力に関する事務を行うことを加え、これらの事務のとりまとめを大臣官房の所掌事務として加えんとするものであります。
内閣委員会は、昨日の委員会におきまして、本法律案を審議いたしましたが、別に質疑もなく、動議により、討論を省略して、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと議決せられた次第であります。
次に、農林省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
まず、本法律案の改正の要点を申し上げますと、その第一点は、農林省におきまして国際食糧農業機関等との連絡、その他国際協力関係の事務が増加し、またビルマ、フィリピン等に対する賠償の実施部面において担当する事務も生じて参りましたので、農林省の権限として賠償及び国際協力に関する事務を行うことを明確にするとともに、大臣官房においてこの事務の総括を行うこととしたこと。その第二点は、肥料検査所のうち、神戸肥料検査所は、現在神戸市に置かれておりますが、敷地の関係等から尼崎市に庁舎を新設移転することとしたこと。第三点は、米価審議会は、米価その他の主要食糧の価格の決定に関する基本事項を調査審議する機関でありますが、従来その組織、所掌事務、委員の定数、専門委員の設置等につきましては政令で定め、委員及び専門委員は食糧庁長官が任命することになっておりましたものを、この審議会の重要性にかんがみ、この際、委員及び専門委員についての主要なる規定を法律で定めることとし、その任命を農林大臣が行うこととしたこと。その第四点は国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律が、本年三月三十一日限り失効したのに伴い、これに基いて農林本省及び食糧庁、林野庁が行なっておりましたこれらの物資等の割当、配給の規制、譲渡、引き渡し等の制限、禁止、譲渡命令等の権限を削除することとしたこと。その第五点は水産庁についても右と同様の規定の整理をするとともに、外資に関する法律に基きまして、農林省の所掌事務に関し、外国投資家にかかる技術援助契約の締結、更新、また外国投資家の株式等の取得に関し認可を与え、届出を受理する権限が水産庁設置法上不明確でありますので、あわせて水産庁設置法を改正すること等であります。
内閣委員会は、前後二回にわたり本法律案の審議をいたしましたが、その審議の結果、明らかになった点を申し上げますと、その第一点は、本法律案の施行に伴う予算及び人員の増減はないこと。その第二点は、賠償及び国際協力に関する事務は、従来官房総務課で処理しておったが、これらの事務の重要性にかんがみ、参事官が中心となってこれらの事務を一元的に処理することとしたこと。その第三点は、米価審議会は、もと、物価庁に設けられておりまして、当時物価庁長官が委員の任命を行うこととなっておったのでありますが、物価庁が廃止せられ、食糧庁に米価審議会が置かれることとなり、食糧庁長官が委員の任命を行うこととなって今日に至っております。他の審議会におきましては、その委員の任命が所管大臣によって行われておりますので、この際、委員の任命を農林大臣となることと改めたこと等であります。
その他ビルマ、フィリピンどの賠償及び国際協力に関する農林省関係の事務の処理の現状、食糧管理制度に関する政府の方針、農村建設青年隊等の問題につきましても質疑応答がございましたが、その詳細は、委員会会議録に譲ることを御了承願いたいと思います。
昨日の委員会におきましては、質疑も終結いたしましたので、動議により、討論を省略して、直ちに本法律案について採決いたしましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと議決せられた次第であります。
次に、厚生省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
まず、本法律案の改正の要点を申し上げますると、その第一点は、国立栄養研究所の所掌事務を拡充して、食品の栄養効果について委託試験を行い得ることとするための根拠規定を設けんとするものであります。その第二点は、昭和二十六年以来、特別措置として、国立療養所に看護婦の養成所を事実上設け、看護婦及び準看護婦の養成を行い、現在に至っておりますが、別段の支障が認められませんので、この際、これを法律上明確にせんとするものであります。その第三点は、海外からの引き揚げが終末に近づきつつある現況と、旧陸海軍の復員に関する事務が次第に縮減して参りました現況にかんがみ、援護所及び舞鶴地方復員部を独立の機関として存置する必要がないと認められるに至りましたので、これを廃止せんとするものであります。その第四点は、厚生省における賠償及び国際協力に関する事務が加わるに伴いまして、厚生省の権限に若干の調整を行わんとするものであります。
内閣委員会は、前後二回にわたり本法律案の審議をいたしましたが、その審議の結果明らかになった点を申し上げますと、本法律案の施行に伴う予算及び定員の増減はないこと、国立病院及び療養所等に入院しておる患者のつき添い婦の整理に関する問題について、厚生当局の説明によりますと、「これらつき添い婦約三千六百人は、今回約二千七百人程度に減員することになっておるが、従来、終日つき添う必要もない患者にまでつき添い婦が配置されていたむだをなくする等の合理的な運用によって、この減員の欠陥を補って行けば、つき添い婦の減員のため患者の療養の上に支障が起ることはないと思うし、また退職するつき添い婦についても来年三月末を一応の目途として、それまでに極力配置転換に努力し、失業者の出ないように十分考慮をしておる」ということであります。このほか、本法律案の審議に関連して、結核患者の現状とこれに対する政府の対策、黄変米の処理、その他環境衛生の問題等につきましても質疑応答がありましたが、その詳細は委員会の会議録に譲ることを御了承願いたいと存じます。
昨日の委員会におきましては、質疑も終結し、動議により討論を省略して、直ちに本法律案について採決いたしましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと議決せられました。
次に、法務省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
政府は、本法律案の提案理由として、「出入国管理行政は、わが国におけるすべての外国人の出入国、在留またはその退去に関し、第一次に法令の執行に当る機関であって、その取扱いのいかんは直ちに当該外国人個人の利害に関するのみならず、ひいては各国の対日感情に影響するところも少くない。しかるに入国管理局は発足後日が浅く、その機構上不十分の点があるので、この際その二、三の点を改正して、出入国管理行政の一そう有効適切な運営を行い得るよう、その体制を整備せんとするものである」と述べております。
まず、本法律案の改正の要点を申し上げますと、その第一点は、川崎入国者収容所の新設に関するものであります。現在入国者収容所は、大村と横浜の二カ所にありまして、横浜入国者収容所には主として欧米人の法令違反者を収容いたしているのでありますが、この横浜入国者収容所は、その設備がはなはだしく貧弱、かつ不完全であるため、この際、羽田空港と横浜港との中間に位し、しかも交通至便な川崎市に収容所を新設し、主として欧米人のための適切な収容所とせんとするものであります。その第二点は、大阪入国管理事務所の新設に関するものであります。入国管理局の出先機関である入国管理事務所は現在全国に十二ありますが、現在の神戸入国管理事務所は、その事務量において他の管理事務所をはるかに越え、また地理的にもその場所が片寄っておりますが、他方におきましては、現在大阪には神戸入国管理事務所の出張所が設けられているのみで、独立の入国管理事務所は設けられておらず、業務の遂行に種々不便を来たしている実情でありますので、この際、新たに大阪に入国管理事務所を新設し、神戸入国管理事務所の事務の一部をこれに移管せんとするものであります。その他、本法律案におきましては、大村入国管理事務所の管轄区域を福岡入国管理事務所の管轄区域に変更し、また前に申し述べました入国管理事務所の新設、または廃止に伴う各出張所の所属変更と業務の繁閑に伴う出張所の整備に関する改正がなされております。
内閣委員会は、前後三回にわたり本法律案の審議をいたしましたが、その審議の結果、明らかになった点を申し上げますと、その第一点は、本法律案が成立した場合に要する経費としては、本年度予算に川崎入国者収容所の庁舎の新営工事費三千九百六十二万七千円が計上されておりまして、この庁舎は三期計画で工事が進められ、本年度の予算はその第一期分の工事費であるとのことであります。その第二点は、入国者収容所は全国に二カ所ありまして、その一つの大村入国者収容所が韓国人等、東洋人の収容を主眼としておるのに対し、他の一つの横浜入国者収容所は欧米人の収容を主眼とする建前で設置されたのでありますが、その収容所の立地条件等が欧米人を収容するに不十分であるため、現在入国管理法令を厳格に実施することができず、やむを得ず行政上の便宜を講じて庁舎の不備を補っておるとのことであります。法務当局としては、今回横浜の収容所を廃止し、川崎に収容所を新設する機会に収容設備を完備して、入国管理行政に遺憾のない運営を期待しているとのことであります。その第三点は、本法律案に伴う人員の増加は全くなく、新設の川崎入国者収容所の職員の定員としては、現在の横浜入国者収容所の職員六十三名がそのまま移されて業務に当るとのことでありまして、また川崎入国者収容所の収容能力はさしあたり五十名であって、全工事が完成した場合には百五十名ないし二百名の収容能力があるとのことであります。以上のほか、本法律案の審議に関連して、大村入国者収容所の現状、不法入国韓国人の送還、ソ連よりの入国者の取扱い、韓国人戦犯者の処遇等の問題につきまして質疑応答がありましたが、その詳細は委員会会議録に譲ることを御了承願いたいと存じます。
内閣委員会は、前後二回にわたり本法律案を審議いたしましたが、昨日の委員会におきましては、質疑も終結し、動議により討論を省略して、直ちに本法律案について採決いたしましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと議決せられました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/8
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009・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより五案の採決をいたします。五案全部を問題に供します。五案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/9
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010・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よって五案は全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/10
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011・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第七、地方公営企業法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。まず委員長の報告を求めます。地方行政委員長小笠原二三男君。
〔小笠原二三男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/11
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012・小笠原二三男
○小笠原二三男君 ただいま議題となりました地方公営企業法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
改正の要点は、第一に、地方公共団体の長と管理者の間における事務の配分の合理化、その他地方公営企業の能率的運営に必要な規定の整備をはかること、第二に、減債積立金制度の創設等、地方公営企業の予算会計制度の合理化に必要な規定の整備をはかること、第三に、地方公営企業の経営に関する助言勧告及び報告に関する規定の整備をはかること等であります。
本委員会におきましては、六月二十三日、政府委員から提案理由の説明を聞き、同日及び七月五日の両日にわたり、川島国務大臣及び政府委員に対し質疑を行いました。そのおもな点を申し上げますと、私企業との関係、料金徴収の事務を民間会社等に委任する範囲、料金決定の基準、総理大臣の助言勧告及び報告の規定を特に設けた理由、政令に委任している事項の内容等についてでありまして、これに対し、それぞれ、公営企業は独占的事業が主であるが、いたずらに私企業を圧迫してまで経営せしめるようなことは考えていない。料金徴収の事務を民間会社等に委任するのは、交通事業において連絡切符及び連絡定期券の発売を予想したものであって、「同種の事業を経営する会社以外の政令で定める者とは、国鉄と交通公社である。料金は私企業との共存の関係でこれを定めているが、公営企業の性質上、公共の福祉が中心であって、必ずしも採算本位ではない。バスの新路線、小規模の企業等については特にそうである。総理大臣の助言、勧告及び報告については、地方自治法にも根拠規定があるが、法の建前上、本法の中で明確にするために規定を設けることにした。また本規定の運用については慎重を期することにする、等の答弁がありました。その他詳細は会議録で御了承願います。
かくて質疑終局、討論に入りましたが、中田委員から、日本社会党第四控室を代表して、「料金徴収の事務を民間会社等に委任する範囲についてはその限度を守り、総理大臣の助言、勧告、報告の規定の運用については不当に地方自治に干渉することのないように等の要請をして本法案に賛成する」旨の発言があり、森下委員からは、日本社会党第二控室を代表して、中田委員と同意見であるとして賛成意見が述べられました。
次いで、採決の結果、本法案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/12
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013・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/13
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014・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/14
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015・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第八、日本住宅公団法案
日程第九、住宅融資保険法案(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/15
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016・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。建設委員長石川榮一君。
〔石川榮一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/16
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017・石川榮一
○石川榮一君 ただいま議題になりました日本住宅公団法案、住宅融資保険法案につきまして、建設委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、日本住宅公団法について申し上げます。
住宅対策は政府の重要政策の一つでありまして、本年度四十二万戸の建設をはかろうとしておりますことは御承知の通りでありまするが、このために、従来公的資金による施策として行われて参りました公営住宅と公庫の融資住宅と並行して、新たに特別の機関を設置し、民間資金の導入をはかり、住宅不足の特に著しい大都市地域に不燃性の集団住宅及び宅地の供給を行い、あるいは必要に応じて土地区画整理事業を施行し、新市街を造成する等、住宅建設の拡充をはからんとするのが本法律案の提案の理由であります。
法案のおもなる内容について申し上げますと、第一に、公団の資本金は、政府及び地方公共団体からの出資金の合計類とし、政府は、一般会計から公団設定の際六十億円を出資することとなっております。また地方公共団体からは十六億円が予定されておるのであります。第二に、公団の管理機構といたしまして管理委員会を設置し、委員会は建設大臣の任命による任期二年の委員五名及び公団の総裁をもって組織し、予算、事業計画、資金計画、決算等の重要事項の議決を行うこととなっております。第三に、公団の行う業務は、住宅を建設し賃貸または分譲すること、宅地を造成し賃貸または分譲すること、及び土地区画整理事業を行うこと等でありますが、本年度事業は、賃貸アパート及び分譲アパート、それぞれ約一万戸の建設と、宅地約百万坪を造成する計画で、事業費としては、出資金のほかに運用部資金及び生命保険等の民間資金の借入金を合せまして、約百六十六億円が予定されておるのであります。なお、公団は建設大臣の認可を受けて住宅債券を発行をすることができるようになっておりまするが、本年度は予定されておりません。第四に、公団は建設大臣の監督に属し、このため特に日本住宅公団監理官の制度を設けております。
本法案は、五月二十日建設委員会に付託されましてから、六回にわたりまして熱心に質疑応答が行われました。その間、六月九日には東京大学の杉村教授ほか各方面から参考人七名を招致いたしまして、その意見を聴取し、慎重に審議をいたしたのであります。
質疑は、法案の性質上、住宅対策全般に関連して行われたのでありますが、その際の問題となりました点は、第一には、「ことさらに公団を新設せずとも、現行の公営住宅並びに住宅金融公庫の制度、機能を拡充強化し、あるいは実施に当って委託工事等をもってするならば、十分可能ではないか」ということでありまするが、これに対しましては、「地方財政の負担能力の限界のあること、行政区域にとらわれない住宅供給の必要であること、また強力なる宅地の造成、民間資金の導入等を考えると、新たに公団を設立することが必要である」との答弁でありました。
第二に、「公団住宅の新設によって、公営住宅の規模が狭小になり、従来の住宅政策から後退を来たしているのではないか」という質問でありますが、これに対しましては、「工事資金を多額に要する中層アパートを公団に移すことによって、できるだけ需要の多い第二種公営住宅の建設に応ずるとともに、構造等、質の向上をはかり、同時に低家賃とするため狭小にもなったが、実施に当ってはできる限り実情に応じて改めてゆきたい」との答弁でありました。
第三に、「公団の本年度二万戸建設計画が遂行できなかった場合の責任はだれがとるか」ということでございますが、これに対しましては、「直接の責任は公団の総裁になるが、政治的責任は建設大臣が負うべきものであると考える。しかし今から発足するならば、資金、土地に用意もあるので、実施に無理があるとは考えない」との答弁でありました。第四に、「公団に対する建設大臣の権限があまりに大きく、公団の自主的運営がはなはだしく阻止されるのではないか」ということであります。この点につきましては、「公団の資金の大部分は、政府が財政負担するものであり、またこの種公団の監督は、過去の事例からも、万遺憾なきを期すべきものであって、法文の上からは権限が大きくうつるが、実施に当っては事業に支障を来たすことのないよう努力するつもりである」との答弁であっました。第五に、「宅地を造成して建設する場合、市街地、衛星都市、いずれに重点を置くか、また通勤距離の遠隔地の場合の居住地としての施設についてはどう考えているか」ということでありまするが、この点につきましては、「市街地における高層住宅化もできるだけ考えるが、また都市計画に応じた衛星都市建設もはかってゆきたい。またガス、上下水道、交通機関等の施設については、計画実施に当って十分居住地に適合するよう関係機関とも連携をはかって努力してゆきたい」とのことでありました。その他、土地区画整理事業、公団住宅の入居対象、家賃、分譲方法、地方公共団体の出資と事業面における関係、民間資金の導入等々に関し、論議が行われたのでありますが、詳細は速記録に譲ります。
かくて質疑を終了、討論に入りましたところ、石井委員から、自由党を代表し、条件を付して賛成する。「本案は従来の公営住宅の建設が行政区域にとらわれ、地方負担に制約されるのに対して、中層耐火アパートの集団建築と宅地造成をはかったものであり、政府の四十二万戸住宅建設のための一施策であるが、政府の施策の内容には種々の短所がある。一、民間自力建設の見込み過大。二、公営住宅の坪数の過小。三、公団住宅の家賃の高いこと。四、住宅公庫の融資率、貸付対象坪数の引き下げ、等をあげることができる。」よって本案に対しては、「第一、四十二万戸建設の五入%を占める民間建築二十四万五千戸の建設促進のため、減税措置、融資保険による消極的施策のほか、さらに住宅投資を促進する積極的対策を講じ、戸数確保をはかること。第二、公団住宅二万戸を消化するため、規格の統一と量産及び新工法によって家賃の低廉をはかること。第三、公営住宅中六坪八千三百戸の計画は、将来スラム化のおそれがあるので、可及的にこれを縮小し、規模の拡大をはかること。第四、住宅金融公庫の融資率及び貸付坪数の引き下げは、公庫の精神にも背馳するので、前年通り据え置く措置をすること。以上の条件を付して賛成する」旨の発言がありました。
次に近藤委員から、「本案に反対する。政府の四十二万戸建設は、選挙公約の第一であるが、政府の住宅政策は、その実現を期待した国民を欺瞞するものである。それは数字にとらわれたものであり、その内容には納得しがたいものが多い。第一、四十二万戸建設の欺瞞性は、その中に二十四万五千戸の民間自力建設を含むことである。第二、財政資金によるもの及び民間建設の中に増改築合せて五万戸を含むこと、公営住宅の増加が僅少である上に、その坪数を大幅に縮小し、かつ小規模のものが多いこと、公庫の融資率を一〇%引き下げたこと。第三、家賃が平均建築費から推すときは二戸当り五、六千円となると想像され、高額所得者だけが入居し得るものとなること。第四、住宅建設を促進するためには既存の機構を活用することが適当であり、また公庫の融資を増額する方が効果が上る。本案の住宅公団の機構及び人事には納得できぬものがあり、機構の重複化は、住宅建設の促進にはかえってマイナスとなる。これらの理由によって反対する。」
また赤木委員からは、緑風会を代表して賛成。「本案の運用に当って注意すべき点の一つは区画整理であり、単に土地の区画を整理するというだけではなく、広く都市計画の見地に立ち、交通機関、上下水道等、住宅建設に必要な施設を考えて目的を達成するよう要望する」旨が述べられ、次に田中委員からは、社会党第二控室を代表して反対の意見が述べられました。その「第一は、各種住宅立法には、それぞれ目的とするところが異なっておるが、本案は、その対象としておる住宅困窮者をはっきりつかんでおらず、数字を合せるための施策にほかならない。その資金としても当然出すべき財政資金のほかに、民間資金及び地方団体の起債を認める方法をとっており、屋上屋を架するものである。家賃は高額となり、低額なる家賃とはほど遠い。第二は、多くの事項が建設大臣の権限にまかされている。これは公共企業体精神を没却するものであり、給与、退職手当の支給基準に至るまで干渉しておる。第三は、われわれの提案しておる法案とはその精神に懸隔がある。地方団体に対しては、全額国の負担により、生活費の一定割合による家賃、分譲住宅については住宅の質及び量の点では主体構造だけを提供して、その完成は入居者の協力に待つわれわれの提案に比べて、国民の負担に大幅の差異があり、本案には絶対反対する」との発言があり、武藤委員からは、民主党を代表しで賛成、「勤労者の住宅を急速に充足するためには、従来の公営住宅、公庫の住宅の方法だけでは困難である。本年度四十二万戸の建設をはかり、耐火集団建築、宅地の供給、健全なる新市街地造成のために、本案の運用に万全の注意と努力を要望する」との賛成意見が述べられました。
かくて討論終結、採決の結果、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、住宅融資保険法案について申し上げます。
まず提案の理由及び法案の要旨については、去る六月三日の本会議におきまして、建設大臣より詳細なる御説明がありましたので省略をいたします。
本法案は、六月三日本委員会に付託されまして以来、数回にわたり審議いたしたのでありますが、質疑のおもなる点について申し上げますと、第一に、「この制度によって、本年度どのくらいの住宅が期待できるか」ということでありまするが、これに対しましては、「融資の対象となる住宅の規模等も一定していないので、確実な数字は申し上げられないが、かかる制度が今までになかった初めてのことであるから、十分に期待し得られるのではないか」ということでありました。第二は、「この法律の実際の適用になる金融機関の数がどのくらいか。また、本年度融資予定額五十七億円は、どのように各金融機関に配分されるか」ということでありますが、これに対しましては、「対象になるものは約一千足らずで、予定総額を一応各金融機関に割り当てるが、相当のリザーブをとっておき、成績に応じて調節して行きたい」とのことでありました。第三は、「この保険融資に対して、抵当権は設定されるのか」ということであります。これに対しましては、「資金の回収は法文で義務付けられておるので、業務方法書あるいは保険約款で回収の確実を期することになるが、必ずしも担保を必要とするというものではなく、個々の場合の信用に応じて、この法律の目的に即して処して行きたい」との答弁がありました。第四は、「融資の期限及び金利はどのくらいになるのか」ということでありますが、これに対しましては、「法文で六カ月以上ということで、事の性質上、できるだけ長期が好ましいが、現在の金融の実情から、なかなか困難であり、大体最長五年くらいを目標に置いている。また金利については、現在事業資金の場合、期限一年くらいで日歩三銭から三銭一厘くらいであるから、住宅金融の場合、若干それより高くなると考える」との答弁がありました。
その他、保険料の転嫁の問題、融資対象となる住宅等に関して熱心なる質疑が行われたのでありますが、詳細は速記録に譲ることといたします。
かくて質疑を終了、討論に入りましたところ、近藤委員から、「本案に賛成するが、運用いかんによっては、悪用、乱用されるおそれがあるので、運用には十分注意されたい」との希望意見が述べられ、田中委員からは、「本案は内閣の四十二万戸建設の公約に基くものであり、国の保証によって、金融機関が従来住宅投資を好まなかった現状を打開しようとするものである。それには貸す者のための制度か、借りる者のための制度か疑点が多く、本案の運用に当っては、従来金融機関が安心して貸し付けた以外の階層に対しても、大幅に融資するとともに、住宅公庫以上の条件や負担を課することがないよう希望を付して賛成する。」また武藤委員からは、「住宅金融が、従来保証、担保の点から逼塞しておったものを、本案によって解決をはかり、四十二万戸建設に、適当なる施策として賛成する」旨の発言がありました。
次いで採決の結果、全会一致原案通り可決すべきものと決定いたしました。
以上、報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/17
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018・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日本住宅公団法案に対しまして、討論の通告がございます。順次発言を許します。湯山勇君。
〔湯山勇君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/18
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019・湯山勇
○湯山勇君 私は日本社会党を代表いたしすまして、ただいま議題にまっております日本住宅公団法案に反対をいたすものであります。
鳩山内閣が選挙に当って国民に示した公約は、ほとんどすベてが抽象的な作文であって、具体的に数字をあげて公約したのは一兆円予算と五百億減税、それからこの四十二万戸の住宅建設、この三つであったのでございます。数字をあげて公約したものにつきましては、何とかつじつまを合わさなければなりません。一兆円予算は、一般会計で出すべきものを特別会計に移したり、あるいは赤字を借金のままで残したりして、ともかくもごまかしの一萬田一兆を作ったのでございます。また五百億減税につきましては、直接税を間接税に振りかえる、右の肩の荷物を左の肩にかつぎかえる、こういったようなごまかしの方法で、どうにか切り抜けようといたしておるのでございます。けれども、住宅四十二万戸というのは、これは直接国民の目に触れるものでございますから、どうもごまかしようがございません。そこでやむを得ず四十二万戸の中に、民間自力建設が二十四万五千、すなわち総数の五八%含まれている、こういうことを明らかにしたのでございます。これでもまだ足りませんから、増改築の四万五千を計算の中に入れました。つまり一部屋建て増しをしても家一軒建ったことになるわけでございます。さらに国の資金による公営住宅は全部二割方小さくなっておりまして、特に第二種公営住宅の過半数に当る八千三百戸はあの問題の六坪住宅でございます。また公庫住宅におきましても、昨年までの融資率を一〇%も引き下げ、それだけ国民負担を重くしておるのでございます。ほんとうに政府の施策によって建つのはわずか十四万五千戸でありまして、これを公約の四十二万戸に合わせるためには、なみなみならぬ苦心をいたしておるのでございます。ただいま議題となっております住宅公団法のごときは、この公約不履行に対する国民の怒りを何とか避けるため、住宅対策には力を入れているんだ、こういうことを示すためのいわば政府の宣伝立法としか考えられないのでございます。今住宅不足に悩んでおる一千万国民が望んでいるのは、住宅公団でもなければ、このような法律でもございません、この人たちが安心して入ることのできる住宅であることを政府は忘れてはならないのでございます。以下、私は本法案に対する反対のおもな理由を申し述べます。
その第一は、公団住宅は勤労者の住宅でないということでございます。この法律の第一条の目的には、「住宅に困窮する勤労者のために」住宅を供給すると明記されてあります。ところが政府の言明によれば、この公団住宅の家賃は四千円以上ということでございます。住宅に困っている勤労者で、月四千円の家賃を払える人は一体どれだけあるでございましょうか。政府は、今日の勤労者の実態については全く認識を欠いていると言わなければならないのでございます。住宅に困っておる勤労者の約三三%は月収一万六千円未満でございます。さらに住宅に困っている勤労者の九〇%は月収三万六千円以下でございます。月四千円以上の家賃の払える人で今日住宅に困っている人というのは、ほとんどないはずでございまして、勤労者のためという公団住宅はいたずらに高額所得者のための住宅であると言わなければなりません。公営住宅に五年間に十一回も申し込みを続けて、なお家の当ならい勤労者、あるいは自己資金がないために公庫住宅の申し込みもできない勤労者にとって、家賃四千円という家は全く雲の上の存在にしかすぎないのでございます。両派社会党の提案にかかっております国設住宅は、家賃は月収の五%でございますが、この国設住宅に対して先般主婦の代表や、住宅対策に熱心な長野県知事等が、そういう住宅はぜひ第三種公営住宅としてでもやってもらいたい、こういう強い希望を述べておるのでございます。これらの声は、決して一部の声ではなくて、今日の国民全体の声として、政府は真剣に取り上げなければならないものと思うのでございます。住宅公団には政府から九十八億の出資がなされます。この九十八億円の出資は、これを公営住宅または公庫住宅に回して、真に国民の熱望する勤労者住宅を一戸でも多く作ることが今日ただいま、政府のなすべきことであると思うのでございます。
第二に、この法は、政府の住宅に対する責任の明確さを欠いているということでございます。住宅公団はその特徴として、民間資金の導入、府県間の行政区域にとらわれない宅地地区の設定、さらに宅地の造成等をあげておりますけれども、これらは到底一公団の力をもってしては不可能なことでございます。さればこそ、公団に対する政府、建設大臣の権限は極度に強化されておりまして、建設大臣の認可事項は、公団の予算、資金計画、事業計画、長期短期の借り入れ、定款の設定及び変更、土地区画整理の施行規程及びその計画となっておりますし、人事についても総裁、監事、管理委員等の任免はすベて建設大臣によってなされます。さらに副総裁及び理事は大臣の承認を要しますし、建設省には二名の監理官が設置されまして、公団の経営一般の監督に当ることになっております。さらに建設大臣は公団の職員の給与に至るまで承認事項として本法にあげておるのでございます。これでは公団が自体で、自主的にやれることは何一つ一ないのでございます。すでに今日は第二・四半期に入っております。今から公団が約束の二万戸の住宅を建てるといたしましても、それは決して容易なことではございません。これをあえてやろうとするならば、大臣の監督、干渉は、省内の部局に対するよりもはるかに強いものがあることを予想されるのでございます。政府が真に住宅建設に熱意を有するならば、むしろこの際、積極的にこのような中間機関をなくして、みずからの責任において、みずからの手によって直接に住宅建設に乗り出すべきであると思うのでございます。このような不明確な態度が政府の住宅建設に対する熱意を国民をして疑わしめることになり、また公団が、政府の今日の住宅対策の行き詰りの責任転嫁のための機関である、こういう批判さえも生ぜしめる要素となると思うのでございます。ことに公団は、府県間の調整や、今日困難な地方財政下において地方自治体からの出資、さらに最大の難事であるところの宅地の造成等をしなければならないのでございますけれども、このような施策は、政府みずからの強力な政策によらずしては、到底できないことでございます。今からでも決しておそくはありません。政府は、法案を提出した面子などにこだわることなく、いさぎよく本案を撤回して、政府みずからの責任と誠意によって一切を行うべきであることを衷心よりお勧めする次第であります。
その他、過去の事例に徴しまして、公団が公益性の悪用によって、利権をめぐる罪悪の温床となる懸念もなしといたしません。また、収支の均衡をはかるため、ぬかるみ道の住宅ができたり、あるいは屎尿処理の不完全な住宅を作る心配も、この公団法によっては決して解消してはいないのでございます。ことに、今日の住宅不足は、単に都市だけではなく、農山漁村いずれもその対策に悩んでおります。このようなときに、一部の地区に偏した公団の存在は、国全体の住宅対策のバランスをとる上にも、有害無益の存在と言わなければなりません。
わが党は、国民の渇望する国民のための住宅が一戸でも多く建つことを願うがゆえに、あえて本案に反対をする次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/19
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020・河井彌八
○議長(河井彌八君) 永井純一郎君。
〔永井純一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/20
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021・永井純一郎
○永井純一郎君 私は、社会党第二控室を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本住宅公団法案に対しましては、実はわが党提案の住宅関係法案に比較いたしまして、この政府案が非常に不備不十分でありますので、反対の意思を表明いたしたいと思うのであります。
民主党内閣は、第一次選挙管理内閣の成立とともに、数々の政策的な諸問題について、無責任な発表をいたして参ってきましたが、その中でも、住宅建設四十二万戸は、国民的世論を書き起したものでありました。私はこれが単なる総選挙のための方策であったといたしましても、戦後の十年間を顧みまして、おそまきながら重要な政策として、政治の表面に押し出されてきましたことに対しましては、共感を持つものであります。しかしながら、その一つとして、今日われわれの前に提案されました日本住宅公団法案は、一口に申しまするならば、ただいま湯山君が指摘されましたように、全く勤労国民大衆に縁の薄い、特定なる高額所得者への住宅対策であることを、まず指摘せなければならないと存ずるのであります。以下、反対のおもなる理由について申し述べます。
現在住宅につきましては、三つの法律がございます。その一つは、住宅金融公庫法であります。これは住宅の建設に必要な資金で、銀行その他一般金融機関の融通を困難とする者に融通するということになっておるものであります。また、産業労務者住宅建設法は、産業労務者の住宅建設に必要なる資金を、長期かつ、低利で融通することになっております。また、公営住宅法は、住宅に困窮する低額所得者に対し、低廉な家賃で賃貸しすることを目的としておるのであります。しこうして日本住宅公団法案は、その目的として示されているところは、住宅に困窮する勤労者のために、耐火構造の集団住宅建設と、宅地の大規模な供給と、新市街の造成を目的としておるのでありますが、前に述べました三つの法律と比べますると、対象がはなはだ不明確となって参るのであります。審議の過程においてこの実体を検討してみますると、財政資金は六十億、政府低利資金が三十八億に過ぎず、地方公共団体資金十六億、民間資金五十二億をこれに充てておりまして、従って結局は、生命保険等の民間資金を導入するという一点だけが新しい試みに過ぎず、従ってこの面について住宅金融公庫に導入し得る法律の改正を別途に行えば、それで事足りるというに過ぎないものと考えられるのであります。
第二点といたしましては、賃貸住宅の部分におきまするところの家賃の高領である点であります。民間資金として導入いたします五十二億は「九分五厘の高利の借入金でありまして、十二坪といたしましても、四千二、三百円で賃貸しなければならないという点であります。わが日本社会党の田中一君ほか一名から提案され、目下委員会で審議中の国設住宅法案と比較してみますと、国設住宅法案では、家賃は所得の五分と規定し、使用面積は入居者の構成人員によるものであって、何ら家賃に制約をされないものであるという点であります。また一方、政府案の分譲住宅の部分も高額分譲でありますが、同じく委員会で審議中のわが党の提案の日本分譲住宅公社法案と比較してみますると、主として耐火主体構造を廉価に計画的に大量生産し、それを低額、長期分譲し、未完成部分は、譲り受ける者の所得に応じ、内部造作を完成していくという方法でありまして、これは過般の委員会におきまする参考人の意見によりましても、これこそ国民大衆の強く願望しつつあった政策であると発言いたされましたことは、同僚委員の諸君もすでに御承知のところでございます。
第三点といたしましては、この法律が建設大臣の独裁による非常に反動的な公団運営になるおそれがあるという点であります。多くの公共企業体の役員等は、国民の代表である国会の承認を求めているのであるにもかかわらず、本公団は、総裁並びに監事は、建設大臣が任命し、副総裁以下の役員は、総裁が建設大臣の認可を得て任命すると規定しております。ことにこの公団の重要事項を議決する管理委員会の委員をも建設大臣が独自の意思で任命することとなっておりまして、解任、財務及び会計諸表、決算等も、ことごとく建設大臣の承認によらなければならないばかりでなく、給与、退職手当等の支給の基準まで、すべて建設大臣の独裁専行で運用されると規定してあります。全く民主的な制度、考え方に逆行するものであると言わなければなりません。ことに新たな市街地を造成するとうたっておりまするが、住宅金融公庫法は昭和二十五年、公営住宅法は二十六年、産業労務者住宅建設法は二十八年に発足し、ともに宅地取得には懸命の努力をいたしておりながら、非常な困難に逢着している現実は、政府もよく承知しておられることと思います。土地区画整理をあわせ行う場合、戦後十カ年を経た今日、なお遅々として進まない戦災都市の復興の現状を見ても、土地区画整理法の施行とあわせ行う土地造成の計画は、全てナンセンスであるといわなければならないのであります。
最後に、私が国民に申し上げたいと思いまするのは、わが党の田中一、近藤信一両君提案になる国設住宅法案と、日本分譲住宅法案についてであります。これは、ともに低額所得者を含んだ一定の生活をするために切実に住宅を必要としている勤労者大衆への住宅の供給であり、また賃貸住宅におきましても財源は国が負担して建設し、管理は都道府県知事にゆだね、あらかじめ公募した者の中から、住宅に困窮する者で政令で定める一定の月収額以下である者を登録して、その中から住宅の困窮度、同居者の員数、通勤通学の利便等を考慮して入居者を選定し、家賃は、入居者の月収と同居家族の月収の合計額の百分の五とする等の措置をとっていることであります。分譲住宅は、元利月二千円程度の割賦金で鉄筋コンクリート十二坪程度の部屋が二十年間に取得される等の内容を含んでおり、日本住宅公団法案と比較いたしまするとき、低所得、低賃金の勤労者国民大衆が、そのいずれをとるかは明白であると思います。
今保守党議員の多数によりまして、この日本住宅公団法案が可決されようとしております。しかしながら、私ども社会党は、私どもが提案いたしております二つの法案の真の意図を、必ずや国民大衆は理解されることを信じて疑わないものでございます。真に住宅を必要とする勤労大衆に住宅を与え、生産意欲を促し、国民の生活安定を企図する社会党の住宅法案と政府案とを対比するとき、何人も社会党案をとることにちゅうちょしないはずであります。しかるに民主党内閣が申しわけ的な中途半端な住宅政策しかとれないというこのことは、これが私は、明らかに再軍備政策と国民の生活安定政策とが、今日両立し得ざるものであることをここにあらためて私は指摘いたしまして、私の反対の討論を終りたいと思うのであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/21
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022・河井彌八
○議長(河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
これより両案の採決をいたします。
まず、日本住宅公団法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/22
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023・河井彌八
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/23
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024・河井彌八
○議長(河井彌八君) 次に、住宅融資保険法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/24
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025・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
本日の議事日程は、これにて終了いたしました。
次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後零時十四分散会
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案
一、日程第二 文部省設置法の一部を改正する法律案
一、日程第三 郵政省設置法の一部を改正する法律案
一、日程第四 農林省設置法の一部を改正する法律案
一、日程第五 厚生省設置法の一部を改正する法律案
一、日程第六 法務省設置法の一部を改正する法律案
一、日程第七 地方公営企業法の一部を改正する法律案
一、日程第八 日本住宅公団法案
一、日程第九 住宅融資保険法案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03319550706/25
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