1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月二十日(水曜日)
午前十時四十三分開議
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議事日程 第三十八号
昭和三十年七月二十日
午前十時開議
第一 輸出品取締法の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
第二 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、工業品検査所の出張所の設置に関し承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第三 建築士法の一部を改正する法律案(田中一君外二名発議)(委員長報告)
第四 国民金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第五 資金運用部特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第六 国務大臣の私企業等への関与の制限に関する法律案(八木幸吉君外五名発議)(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/0
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001・河井彌八
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
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002・河井彌八
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/2
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003・岡田宗司
○岡田宗司君 私は、この際ジュネーヴにおける四巨頭会談に対する日本政府の態度に関する緊急質問の動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/3
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004・戸叶武
○戸叶武君 私は、ただいまの岡田君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/4
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005・河井彌八
○議長(河井彌八君) 岡田君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/5
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006・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。岡田宗司君。
〔岡田宗司君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/6
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007・岡田宗司
○岡田宗司君 去る十八日から、ジュネーヴにおきまして米ソ英仏最高首脳者会談が開かれておるのであります。この会談はポツダム会談以降のことでございまして、非常に画期的なことであると思うのでございますが、東西の緊張の緩和に対しまして、多大の貢献をいたすであろうということは世界全体が認めておるところでございます。従って世界は、この会議を注視いたしまして、その成果に多大の期待をかけておるわけでございます。この会議におきまして、東洋の問題は直接議題とはなっておりません。しかしこの会議の成り行きは、直接間接東洋の形勢に影響を及ぼし、日本の国際的地位、また日本の外交政策に及ぼすところも大きなものがあろうかと思うのでございます。従いまして、国民は、この会議に非常な期待をかけておりますが、政府もまたこの会談の成り行きに対して多大の関心を払っておることは、鳩山首相、重光外相の過日の衆議院予算委員会等における発言からもうかがわれるところであります。
首相は、去る十七日の記者会見におきまして、世界平和の実現に、日本国民がどれほどの熱意を持っておるかを巨頭会談という機会に示すことは必要なことである。その方法としては、スイス大使を通じてこちらの意向を伝えてもらえばいいと思うと言っておられるのでございます。しかし、果してこれだけで十分であるかどうか、この点は疑いなきを得ないのであります。私は日本の態度を広く世界に示すとともに、国民にもまた、政府は、この会談をかくかく見ておる、またかくかくのことを期待し、また日本としてはかくかくのことを要請するであろうということを知らしめることが、この際に必要であろうと信じておるのであります。戦後の日本の外交は、あまりにもパッシヴでございまして、風のまにまに、あっちへ吹かれ、こっちへ吹かれ、ふらふらとして参ったのであります。日本の外交は、もっと自主的でなければなりません。そうしてまたもっとアクティヴでなければならないのであると同時に、政府はその外交政策の基本は常に国民に知らして、国民の批判と、国民の支持を受けなければならぬと思うのであります。政府は閣議で、この問題、このジュネーヴ会議に対する政府の態度を発表することをやめたと伝えられております。また外務大臣は昨日の参議院外務委員会で、すでに衆議院の予算委員会の論議で済んでおるのであるから、あらためてこめ政府の態度を表明する必要はないと言っておったのでありますが、今朝外相の談話が発表されておるのでありますが、私どもは、まだまだこれでは政府のジュネーヴ会議に対する態度というものは消極的である、こう考えるのでありまして、もっともっとジュネーヴ会議に対しまして、政府は積極的な態度の表明をしなければならぬと存ずるのであります。私は鳩山首相がさきに談話で発表せられましたように、もしジュネーヴ会議に対しまして、日本が態度を表明することが必要であるとするならば、なぜもっと積極的に、首相自身が堂々とこの問題を世界に向って訴えないかということをお聞きしたいのであります。(拍手)
私は、首相がこの際に、この国会を通じまして態度を明らかにすることを求めたいのでございます。さらにこの会見におきまして、首相は、スイス大使を通じてこちらの意向を伝えることが適当だと言っておるのでございますが、それではすでにこの意向を伝えることが行われたのであろうかどうか、この点をお伺いしたい。もし行われたといたしますならば、これは四カ国の最高首脳者に伝えられたものであるか、あるいはまたその四カ国の最高首脳者のうちのどこかの一国の首脳者に伝えられたものであるか、またその内容はいかなるものであるか、これを伺いたいのであります。この点は、外相から説明を承わりたいと存じます。そうしてこれは公表できるものであるかどうかを伺いたいのでございます。
ジュネーヴ会議の開会の劈頭に、各国最高首脳者の演説が行われました。これはすでに全文新聞で伝えられておるのでございますが、アメリカのアイゼンハワー大統領は、両陣営のいわゆる平和共存を事実上認めておるのであります。これはソ連の平和共存の主張に対しまして、アメリカは従来、きわめて疑惑的であり、これを欺瞞であるとしておったのでありますが、この際、アイゼンハワー大統領が、この点につきまして、言葉はともかくといたしまして、その内容を認めましたことは、アメリカの外交政策の態度の変化でありまして、平和共存に対する相対立する両陣営による承認が行われたことに相なりまして、ここに冷い戦争の終結、平和共存の実現への道が開かれたものと言わなければならぬのでございます。この点に対しまして、総理大臣はいかがお考えになるか、平和共存に対する総理大臣の明確なる所信を承わりたいと存ずる次第でございます。
次に、私どもは、過日両派社会党の委員長が会談をいたしまして、国際緊張緩和と平和確保に関する決議案を国会に提出をいたしまして、そうして国会の意思としてこれをジュネーヴに伝え、世界に訴えたいと、自由党、民主党、緑風会等に提唱をいたしたのであります。その内容は、
本院は、ジュネーヴにおいて米、
英、仏及びソ連四巨頭会談が開催さ
れんとするに際し、平和を熱望し、
三度原水爆実験を味わった日本国民
の悲願を代表して、四巨頭に対し、
次の訴えを行うと共に、政府に対
し、この趣旨を達成するため適当な
外交措置を講ずることを要請する。
一、この会談をして人類の破滅を意
味する戦争を絶滅する契機たらしめ
ること。
二、一切の国際緊張を緩和して冷
戦を終熄すること。
三、有効な国際監督制度の下に大国
を始めとする世界的軍備と原水爆兵
器の禁止を実現すること。その間、
水爆実験を停止すること。
右決議する。
こういうような決議案を各党派にお諮りをいたしたのであります。しかるに、不可解なことに、各党派はこれに対しまして何ら賛成の意思表示をされない。そうして今日までこの決議案の衆議院、参議院における上程は阻止されておるのであります。ジュネーヴ会議は、すでに進行をしているのであります。そうしてジュネーヴ会議は大体二十四日ごろには終るのであります。私どもは特に原水爆の実験をされておりまして、この悲痛な訴えを世界に向っていたし、四巨頭会談に向っていたすことが、最も時宜に適しておると考えるのでありますが、これが行われておらぬのであります。これは何も政府の問題ではない。私は保守政党の諸君が、これに対しまして一考されることを心から求めるのでございますが、政府はこの国際緊張緩和と平和確保に対しまして、この四巨頭会談の開催の最中においていかなる態度を表明される用意があるか、その点について首相から詳しくお伺いしたいと存ずる次第でございます。
これをもちまして、私の質問を終りといたします。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/7
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008・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 岡田さんの御質問にお答えをいたします。
まず、四巨頭の会談について声明を出して、わが国の考え方を知らせよという御質問、御希望でございました。声明書を出して考え方を示す方がいいかどうかということについては、ただいま考慮をしております。世界の平和は、世界のいずれの国民も熱望をしておることは、もとより当然なことでありまして、四巨頭の会談が成果をおさめるということをこいねがわぬ者はどこにもないと思っております。アジアにおきましても冷戦の影響はないとは言えません。でありまするから、ヨーロッパの平和の確立と同時に、冷戦が終止符がつくということは、この冷戦の影響をこうむっておりまする東洋としても、非常に歓迎をするのは当りまえのことであります。(「だから意思表示しなさいよ」と呼ぶ者あり)それについて、国会における応答の結果によって、国民並びに政府の考え方は表明せられたるものと私は考えております。
平和共存につきましては、平和共存についての考え方を御質問になりましたが、平和共存は、互いに侵略を考えないというこの考え方が徹底いたしまして、侵略脅威の誤解というものが世界からなくなったならば、世界の平和の共存というものは当然に生まれてくるものと考えております。(拍手)
〔国務大臣重光葵君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/8
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009・重光葵
○国務大臣(重光葵君) お答えをいたします。
ゼネバにおける四国会議、これは御承知の通りに、今開催せられたばかりでありまして、ようやく議題が決定した段階にあるのでございます。しかしながら、会議に臨む各国の意気込みは、すでに各首脳者によってはっきりと宜明をいたされました。その内容は、会議に臨む、会議の議題等についてはいろいろ色彩を異にいたしておりまするが、しかしいわゆる冷戦の終息、世界情勢の緊張の緩和、平和の樹立ということに向って、非常な期待をもってこの会議に臨んでおるという、その意気込みは全部一致しておるように、私はこれを看取いたしました。この会議が今御指摘の通りに、東洋の方面についても、直接間接重要な影響を持つということは、これは申すまでもございません。またさらに、御指摘の通りに、それがために日本の外交政策に対しても、重要な影響を与えるということは論ずるまでもございません。さようなわけでありますから、政府といたしましては、この会議に対して重大な関心をもって、これをみておるわけでございまして、そのことにつきましては、すでに国会における質問応答でも、十分鮮明にせられたところでございます。すなわちこの会議は、国際間の緊張が緩和できるかできないかという大切な時期に開かれたものであって、その結果は、日本にとってもきわめて重要なものでありますので、政府として大なる関心をもってその成り行きを注視し、かつまた、その結果に多大の期待を寄せておることは申すまでもございません。それでございますから、直接これに参加をいたしておりません日本といたしましても、十分その会議の経過について的確詳細な報告を得なければなりません。そのために必要なる措置をとることを在外使臣に訓令をいたしておる次第でございます。
さらにまた、政府は以上の趣旨をもちまして、その会議の経過に重大な関心を払っておることを、(「関心じゃだめだ」、「意思表示をなさい」と呼ぶ者あり)かつまた、この結果について非常に期待を持っておる、平和の樹立が十分に確立できるような結果を生むことを期待しておる。その会議に対する所信を政府は発表いたしておるわけであります。さようなわけで、その趣旨は、関係各国及び関係各国がことごとく参加をしておる国際連合に対しても、日本の政府の意向を十分に通じておる次第でございます。
〔岡田宗司君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/9
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010・河井彌八
○議長(河井彌八君) 岡田宗司君
〔岡田宗司君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/10
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011・岡田宗司
○岡田宗司君 ただいまの首相並びに外相の御答弁を伺いまして、何らこの四巨頭会談に対する日本の意思表明についての積極的な態度がうかがわれないのでございます。会議は、短期間に終るのであります。一カ月続くのではない。政府は、もうすでに三日目に入っておるのでありますから、この際、特に政府としての意思表明をすべき段階にある。ところが総理大臣は、これをまだ考慮中と言っておる。考慮しているうちに会議は終ってしまうのであります。考慮中というのは、出すということを考慮されておるのか、いつ出すということを考慮されておるのか、出すということか、それとも出さないということか、あるいはまた、日はいつごろ出すのかということを、はっきりもう一度御答弁を願いたいのであります。
さらに外務大臣に対しまして、首相がさきに記者会見におきまして、スイス大使を通じて意向を伝達するように言われておったのでありますが、これについて、すでに伝達をしたのであるかどうかということを私は伺ったのであります。また同時に、それは何人に対して、その伝達が行われたかを伺ったのであります。また第三には、その内容はいかなるものであるかを伺ったのであります。これは国民に発表されてしかるべきものと思う。この点を私は、外務大臣にお伺いしたのでありますが、外務大臣は、多言を費しての御答弁にもかかわらず、その点につきましては、何らお答えがない。私はこの点について、外務大臣のはっきりした御答弁を伺いたいと同時に、あらためて両大臣からいたしまして、ジュネーヴ会議に対する政府の積極的所信を伺い、日本の外交が、受動的にその日その日の外交から、やはり日本がアクチブな、積極的な外交をとるようになる転機にしていただきたい。それを政府はやるかどうか。これをお伺いしたいのでございます。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/11
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012・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 政府として、声明を出す必要があるということを、まだ決定はしておりません。声明を出さなくても、日本の考え方を通する方法は他にあると考えております。(「どういう方法」と呼ぶ者あり)それでもって御了解を願いたいと思います。(拍手)
〔国務大臣重光葵君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/12
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013・重光葵
○国務大臣(重光葵君) ゼネバ会議に対する政府の考え方、態度は、はっきりと国会を通じて宣明をいたしておるわけでございます。これが政府の声明であります。さらに加えて政府は、今日発表いたしておるわけでございます。
さらに、いかなる伝達をなしたか、これは先ほどお答えした通りであります。どういうお答えをしたかというと、これは、在外使臣を通じて各関係国に、十分に日本の意向を伝達をするようにいたしているということを申し上げた。その意向の内容は何であるか、これは国民に対して、少しもこれを秘密にする必要はございません。その内容は、今日私が発表した通りであります。そういう内容をもって、各国に今通じているわけでございます。国際連合に対しても同様でございます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/13
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014・木下源吾
○木下源吾君 私はこの際、給与勧告に関する緊急質問の動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/14
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015・戸叶武
○戸叶武君 私は、ただいまの木下君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/15
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016・河井彌八
○議長(河井彌八君) 木下君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/16
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017・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。木下源吾君。
〔木下源吾君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/17
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018・木下源吾
○木下源吾君 私は日本社会党を代表いたしまして、給与勧告について、この際、政府に質問をしようと思います。私は、この給与については、日本の現在において、終戦後十年すでに、生活水準を高めて行くべきだ、そういう方向をとるべきだと、こういう考えでおるのでありまして、従って給与は増額すべきである、こういう考えであります。しかるに、人事院が給与決定の判断をいたしまするに、昨年度また今年度の二回にわたってきわめて政治的な配慮を加えて改訂勧告を留保したことは、人事院の使命をみずから葬るものではないか、われわれとしても人事院の存在理由が、もはやここに終了したものと断ぜざるを得ない、こういうような見解であります。人事官にこのような政治的配慮を払う余地が与えられているとするならば、われわれは国会においてその是非を判断する必要があり、そのためには公務員法第十二条に規定されている人事院会議の議事録の提出を求めて、その決定に至るまでの詳細を調査する必要があると考える、人事院にその用意があるかどうか。
次に勧告の内容についてでありますが、現在のいわゆる一万五千四百八十三円ベースは、二十八年三月当時の民間給与調査、生計費調査の結果、かくあるべしとして定められたものであって、それがたまたま国の財政の都合で、二十九年一月から実施されたものであります。しかもその際、勤務地手当の支給率を一段階削減しておるのでありますから、一律ベース引上げの分は、わずかに四%強の程度になっておるのであります。この政府案の減給に対する不当に対して、人事院は何ら意見を申し出ていない。のみならず、一方人事院の調査による民間給与調査は、公務員給与の基準となった昭和二十八年三月から二十九年三月までに、すでに九・五%の上昇を示しておるし、消費者の物価指数をとってみても、昭和二十八年三月の一〇八・八%から二十九年三月には一一九%と一〇%以上の上昇を示しておるのであります。また本年四月においても、政府の低物価政策の宣伝にもかかわらず、一一九・七と上昇しておって、低落の気配がないのであります。
このような結果によって、公務員給与と民間給与との比較は、八級以上の中堅職員の場合、昨年において一三・四%、本年においては一二・四%と、いずれも公務員給与が下回ったまま据え置かれておる実情にあります。この数字こそは、団体交渉権を持っておる勤労者と団体交渉権のない者との待遇の差異を示すものであると私は思います。これに対して政府はどうお考えになっておるか。しかもここで比較した民間給与の実態について見れば、その生活状態を示すべきエンゲル係数が、統計局の調査によって見ても、昭和二十八年三月が五〇・六、二十九年三月は五一・三、三十年三月は四九・三と、いずれも手から口への極貧状態にあることを物語っているのであります。私が冒頭に申したように、わが国の大衆は、生活水準を高めて行かねばならぬというこの時期において、エンゲル係数がかくのごとき低位にあることは、まことにわれわれとしては恥かしい次第である。
これらはいずれも人事院の報告に基くものであります。これだけの根拠が明らかにされているにもかかわらず、国家公務員法第二十八条に定められてある勧告の条件、すなわち「給与を百分の五以上増減する必要が生じた」と認める条件がどうして発生しないのであるか。人事院における三人の人事官の判断を、私はまことに疑わざるを得ないのであります。一体これをもってしても、勧告の条件が生じていないという判断をされるところの根拠を私は承わりたい。事ここに至れば、前に申しましたように、戦後九年にわたる人事院の存在も、官僚陣営の術策と政府権力の圧迫に押されて、その存在価値はもはや消滅したものと私は断ぜざるを得ない。従って当然国家公務員法に再検討を加え、公務員の団体交渉権の復活についての考慮を払わねばならぬと思います。総理大臣のこれに対する所見を一つ伺いたいのであります。
政府は、口を開けば公務員制度調査会に籍口して逃げておる。この公務員制度調査会というのは、吉田内閣当時に思いつきで作られたものである。法律的の根拠もなければ、その構成にも民主性は欠けておるし、任意的な機関である。また、その審議の状況について見ても、衆議院の内閣委員会における答弁にあるように、早急な結論を得ることは望みがたいのである。しかるに政府は、事公務員制度、給与政策に触れるや、所管大臣は何ら責任ある答弁をしない。すべてを公務員制度調査会の結論に待つとしているのであります。委員会の審議のはかどらない重大な、またこれは一つの原因にもなっておるのである。この際、内閣としては所管大臣の責任において、当面する給与政策についての所信を明らかにする考えはないか、所管大臣にお伺いする。少くとも今回の勧告に最小限の処置として示されたところの期末、いわゆる勤勉手当〇・二五カ月分の増額については、政府としても当然財源の措置をとるものと私は考えるが、給与政策について一片の誠意があるならば、この際、明確な御答弁をわずらわしたいのであります。
また勤務地手当の問題に関しましても、昨年五月二十九日の人事院勧告及び十一月の衆参人事委員会の意見、いずれもが、本年度予算編成に当り、政府の無視するところとなっておる。これも公務員制度調査会の結論が出るまでは措置しないような態度をとっているのであるが、調査会の結論が出るまで措置をしないということは、私は不当であると考えるが、この点についての所見を承わりたいのであります。
現在公務員の間には、できる限り人事院の所管から離れて、公務員法の適用を少くするように要望する傾向が強いのである。これは国家公務員法なり人事院なりが、公務員の利益を守るという使命を果し得ないで、反対に政府権力に隷属しつつある実情を公務員が身をもって体験しておるからである。政府はみずから国家公務員法の解釈を曲げて、公務員に対して、力には力をもって報いよと示唆しておるかのごとくである。これが真の政府の公務員制度に対する対策であるのかどうか。私はこれをお伺いいたしまして私の質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/18
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019・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 木下君の御質問にお答えをいたします。
人事院から答弁をしてもらう方が適当と思います部分については人事院から答弁をしてもらいます。私が直接答弁をいたしますことについては私から申すつもりでございますが、勧告の留保は、人事院の使命の没却にはならないかという御質問でございました。勧告の留保は、政治的配慮を加えたものとは考えません。人事院の勧告を軽視しておるわけではないのでありまして、従ってその廃止を現在は考えておりません。
以上、私の答弁でございます。他は人事院から答弁をしてもらいます。
〔国務大臣大久保留次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/19
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020・大久保留次郎
○国務大臣(大久保留次郎君) 公務員制度調査会についてお話がございましたが、今日の公務員制度は、御承知の通り戦後の混乱時期にできました制度であります。今日からこれを見ますれば、多少の欠陥があると存じまして、有識者を集めてこの制度を是正しようというのが公務員制度調査会を設けました理由でございます。で、この公務員制度調査会の経過は、参議院の予算委員会において一応申し上げましたが、概略申し上げますれば、委員は約十九名よりなっております。そうしまして総会を開くことが十数回、これは一般の公務員制度について論議いたしまして、そのうち、五名の小委員会を作りまして、小委員会の回数を重ねること、これまた十数回、一通り主要なる問題についての論議が終りましたので、目下総会及び小委員会において論議しました主要なる問題についての方向をまとめております。おそらくこれは、今月中にこの方向がまとまるものと思います。もしまとまりましたならば、これを総会にかけまして、八月中、おそくも九月には決定いたしたいというのでございます。従って公務員制度調査会云々のために、ほかの問題を怠っておるというようなことはございません。以上、大体の経過を申し述べたと存じます。
なお、期末手当の勧告問題でございまするが、これは人事院の勧告でありますから、確かに今月の十六日に伝達を受けました。この伝達によりますると、国家公務員、地方公務員、全部の公務員を合せまして予算が約百十二億要るということでありますので、慎重に、これをいかに扱うべきかを検討中でございます。私は、なるべくこの勧告の線に沿うてできまするように骨を折るつもりでございます。以上、申し述べます。
〔政府委員入江誠一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/20
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021・入江誠一郎
○政府委員(入江誠一郎君) お答え申し上げます。
第一点の人事院の会議録の問題でございますが、人事院会議の記録につきましては、公務員法の規定する趣旨に従いまして、幹事たる事務総長におきまして記録をとどめておりますので、お許しを得ますれば、委員会において御説明させていただきたいと思います。
次に、二十九年一月から実施されました公務員のベースの問題でございますが、これは御存じのごとく二十八年三月現在における民間給与等を基準にいたしまして、人事院といたしまして勧告いたしましたものが二十九年一月から実施されたわけでございます。その内容は、実施時期のズレ等によりまして大体九・三%、勧告は一三・九%に対しまして、九・三%程度になっておりますことは事実でございます。しかしながら、給与の勧告につきましては、人事院から勧告いたしましたものに対して、国会がこれを御審議の上御決定になりますのが御存じのごとく従来の建前でございまして、人事院といたしましては、この御決議の趣旨に従い、次の勧告の場合に、この差額の問題が自然に考慮されて勧告される建前になっている次第であります。
次に、公務員と民間給与との比較、並びにこれが、民間給与に団体交渉権のある結果、民間給与がよくなっているのではないかという意味の御質問でございますが、この問題は、先ほど御指摘のごとく現在の段階におきまして、今年の三月現在の平面的な民間給与と公務員の給与との比較におきまして、約九%程度の差があることは事実でございます。しかしながら民間給与と公務員給与との従来の大体の変動の模様をみますると、たとえば昭和二十八年三月と三十年三月の現在を比較いたしまして、その間の官民の給与の変動の上昇率をみますると、大体において公務員が一五・二%、民間が一三・三%上昇いたしております。これはただ、従来の公務員と民間との給与の差が、いわゆる二十三年当時前後以来持ち越しておりますために、現在、今なお九%内外の差はございますけれども、民間に団体交渉があり、公務員に団体交渉がございませんでも、人事院が民間の給与を考慮いたしながら勧告させていただき、これを国会において御決定になっておりますので、全体を御通覧していただきました場合には、団体交渉の有無によって、公務員の給与が必ずしも民間に比べまして不利になっているとは考えられません次第でございます。
次に、今回二回にわたりまして人事院が勧告いたしませんでした根拠でございますが、これはただいま申し上げました通り、今年三月現在におきまして、民間給与との差が、平面的に約九%程度あることは事実でございます。しかしながら、民間給与の内容をわれわれ検討させていただきますと、昨年に比べまして今年は、たとえば上昇率におきましても、前年度九・五%民間が一年を通じて上りましたのが、今年は激減いたしまして三・八%に相なっております。またベース・アップの状況をみましても、民間の事業所約四〇%がベース・アップを実施いたしましたのが、今年はわずかに六・七%に激減し、また民間の上昇率の平均が昨年四・九%でございましたものが、今年は〇・七%に激減しておるような状況でございます。しかも失業者は、今年の四月を前年の同期に比べまして、むしろ増加しておるような状況でございますし、また民間における会社の遅払い、あるいは欠配等のむしろ増加しておることは、御存じの通りでございます。そういう諸般の民間給与の内容をわれわれ考えまするときに、公務員もまた、一般国民の負担によって給与を支払われておりますることを考えますると、現在における給与、そのほかに公務員の給与の決定の背景をなす民間の状況というものを考慮せざるを得ないという結論のもとに、今回も、また勧告を留保させていただいた次第でございます。
最後に、公務員の団体交渉権の問題でございまするが、あるいは政府からお答えになられることかもわかりませんけれども、人事院といたしまして、現在の段階といたしましては、公務員は、申し上げるまでもなく国民全体の奉仕者でございまして公務員の給与は、やはり国民の代表である国会において、法律によって決定されることが当然であると考えておる次第でございます。従って政府と公務員との交渉、あるいは契約によって、公務員の給与はきめらるべきものではなくして、やはり従来のごとく国会の定められる法律によってきめられることを適当と考えております。
以上であります。
〔木下源吾君「大蔵大臣、二・五%はどうですか」と述ぶ〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/21
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022・河井彌八
○議長(河井彌八君) 大蔵大臣からは、答弁がないという趣きであります。(「おかしいじゃないか」「答弁、答弁」と呼ぶ者あり)
[国務大臣一萬田尚登君登壇、拍
手]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/22
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023・一萬田尚登
○国務大臣(一萬田尚登君) 私から答弁いたしますことは、おそらくこの年末手当について、人事院の勧告に対して、どういうふうに考えておるかということであろうと思うのでありますが、今日経済界も安定を見ておることは御承知の通りでありまして物価を見ても、あるいはまた生計費、あるいはまた民間の賞与の割合等を見ましても、大きな変化が今日起っていないのであります。私はこの人事院の勧告を尊重することは、むろんそういたさなくてはならぬと考えておりますが、今申しましたようなことを考えなくてはなりません。また、かりにこれを認めるという場合におきましても、国、地方公共団体、政府機関を通じまして、先ほどお話がありましたように約百十七億の財源を、財政負担を増加することになるのでありまして、こういう点も国全体の関係から、やはり考慮を加えなくてはなりません。従いまして人事院の勧告は、尊重する考えを持っておりまするが、なお慎重に考慮を加えたい、かように考えております。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/23
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024・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第一、輸出品取締法の一部を改正する法律案(衆議院提出)
日程第二、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、工業品検査所の出張所の設置に関し承認を求めるの件(衆議院送付)
以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/24
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025・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。まず委員長の報告を求めます。商工委員長吉野信次君。
〔吉野信次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/25
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026・吉野信次
○吉野信次君 ただいま議題となっております案件は、いずれも輸出検査に関するものであります。
まず、輸出品取締法の一部を改正する法律案からお話を申し上げます。
御承知の通り駐留アメリカ合衆国軍隊、国際連合の軍隊などのPX、またはこれらの者のために物資を調達する機関に、相当多量のものが納付せられておりました。それらの物がこれらの機関を通しまして韓国なりあるいは沖縄の方に行くと、物によっては、本国政府に持ち帰られる物も相当多数あるのであります。ところが、日本のこの品物のうちには、いわゆる粗製乱造の取締りの見地から、ある品物は輸出品を輸出するに当りまして、検査をやっておりました。そのために輸出品取締法という法律ができておりますことは、御承知の通りであります。
ところが、このPX等に納めますのは、これは国内なものでありますから、輸出じゃございませんから、この輸出品取締法の適用を受けないわけであります。しかしながら、これらの機関を通して納められました物が海外に持ち出されまする関係上、その品物のいいか悪いかということは、わが国の輸出品の声価の維持、向上のために、非常に重大な影響を及ぼすわけであります。そこで今回衆議院議員の山手滿男君外七名によりまして、この輸出品取締法の改正案が提案せられたのであります。
この法案の趣旨は、PX等に納めまする物を輸出とみなしまして、やはり輸出品同様に輸出品取締法上の検査を行う、こういう趣旨でございます。
委員会におきまして審議の際に、「一体どの程度にこの適用を及ぼすのか」という質問に対しまして提案者の方から、「さしあたり写真機と双眼鏡等の光学機械を指定する予定だ」と、こういう答弁がございました。ついで、これらのPX等に納められておりまするうちの写真機の量、それから写真機等の検査機関の組織がどうなっておるか、さらに輸出品検査制度のあり方などについても、質疑応答が行われたのでありますが、その詳細は速記録に譲りたいと存じます。
かくて質疑を終りまして討論採決の結果、本改正法律案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、工業品検査所の出張所の設置に関し承認を求めるの件、これについてお話を申し上げます。この内容は、工業品検査所の出張所を清水市に設けたいと、こういうのでございます。御承知の通り、工業品検査所というのは、輸出品取締法に基く輸出品の検査を実施しておりまする国の機関でございまして、今日までのところでは東京に本所がございまして大阪ほか八カ所に支所または出張所が設置されておりまするのでありまするが、清水市には出張所も支所もございません。ところが清水港を経て工業品検査所の所管する検査品目に属する物が相当出ますので、現在では東京なり、あるいは名古屋の方から、そのつど人を差し繰って検査をしておるという実情でございます。そこで今度新しくこの清水市に、工業品検査所の出張所を設けるということについて国会の承認を求めて参ったのでございます。
審議に当りまして、「経費はどうなるか」と、こういう質問がございましたが、これにつきましては、「本年度の工業品検査所関係の予算から約六十万円をさいてその方に充てる」と、こういう答弁がございました。その他清水出張所の所管する品目、また清水港からの輸出の実績等についても質疑が行われましたが、その詳細は、速記録によって御承知を願いたいと存じます。
質問を終了いたしまして討論採決の結果、全会一致をもって原案通り承認すべきものと決定いたしました。
右、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/26
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027・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。
まず、輸出品取締法の一部を改正する法律案、全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/27
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028・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/28
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029・河井彌八
○議長(河井彌八君) 次に、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、工業品検査所の出張所の設置に関し承認を求めるの件、全部を問題に供します。委員長報告の通り、本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
[賛成者起立]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/29
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030・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/30
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031・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第三、建築士法の一部を改正する法律案(田中一君外二名発議)を議題といたします。
まず委員長の報告を求めます。建設委員会理事石井桂君。
〔石井桂君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/31
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032・石井桂
○石井桂君 ただいま議題となりました建築士法の一部を改正する法律案につきまして、委員会の審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本法律案は、田中一君外二名の提案になるものであります。まず提案の理由並びに内容の概要を申し上げます。
建築士法は、昭和二十五年第七国会において制定せられ、定められたる構造、用途の建築物、あるいは一定規模以上の建築物の設計、工事監理等を行う場合、これに携わる技術者の資格を定めるとともに、建築士の行う業務についても規正を行い、建築物の災害等に対する安全性を確保し、質の向上をはかったものでありますが、過去五カ年間の実施にかんがみ、建築士事務所の業務に関する規正事項を整備し、建築士の責任と社会的信用の確保をはからんといたしますのが本提案の理由でございます。
改正の内容といたしましては、第一点として建築士事務所の開設については、従来都道府県知事に対する届出制であったものを登録に改め、登録の有効期間を三カ年とし、引き続いて業を営む者については、更新登録を行うこととしたことでございます。場第二点といたしましては、従来建築士事務所が届出を必要とする場合は、業として設計または工事監理を行うときに限られておりましたものを、建築士法上、建築士の業務とされている建築工事契約、建築工事の指導監督、建築物の調査鑑定、建築の手続代理業務についても届出を必要とし、建築士事務所の業務上の責任の明確化をはかったことであります。
第三点として、建築士事務所の登録制の実施に伴い、登録の申請手続、登録簿の公開閲覧、設計図等関係図書の保存、登録の取り消し、抹消の場合等、他の登録制度にならってこれを定め業務の適正化をはかったことであります。
本法案は、七月十三日本委員会に付託されまして以来、慎重に審議して参ったのでありますが、質疑のおもなる点は、「新たに事務所を持たねばならぬことにより経費が加重されることはないか、」また、「大学の教授あるいは公務員等が設計を行うことはできなくなるということはないか」等でありますが、これに対して提案者から、「これまでも業として行う場合は、事務所を持ち、届出が必要であったのであり、また大学の教授等が、業として報酬を得て行う場合を除いては、何ら抵触するものではない」との答弁があり、なお政府委員からは、この改正について行政運用上何ら支障のない旨の発言がありました。
かくて質疑を終り、討論を省略して採決いたしましたるところ、全会一致をもって可決すべきものと決定した次第一であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/32
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033・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/33
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034・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/34
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035・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第四、国民金融公庫法の一部を改正する法律案
日程第五、資金運用部特別会計法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/35
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036・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。まず委員長の報告を求めます。大蔵委員長青木一男君。
〔青木一男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/36
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037・青木一男
○青木一男君 私は、ただいま議題となりました二法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、国民金融公庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、国民金融公庫に対する旺盛な資金需要に応ずるため、同公庫に対し、昭和三十年度において一般会計から二十億円を出資することとし、これに伴って国民金融公庫法第五条の資本金百九十五億円を二百十五億円に改めようとするものであります。同公庫はこのほか、昭和三十年度において、資金運用部から八十五億円の借入金をすることが予定されております。
なお、本案は衆議院において修正議決されたのでありますが、その内容は、同公庫に対する一般会計からの出資金を五億とし、資本金を二百億円と改めようとするものでありまして、これに伴い、資金運用部からの借入金につきましても百五億円にしようとするものであります。
本案審議に当りまして、恩給担保金融の実情、政府出資金の減少に伴う国民金融公庫の収支の見通し等について質疑がなされたのでありますが、その詳細は、速記録により御承知願いたいと存じます。
質疑を終り、討論に入り、木村委員より、「政府原案では国民金融公庫に対し二十億円政府出資をするはずであったが、民自両党の修正によって、十五億円を金融債に振りかえることになり、これは従来の中小金融あるいは農林漁業等、資金の蓄積が乏しい方面に対する長期低利の政府資金を投入するという政策を転換するということを意味する。このため中小企業及び農林漁業の金融は、これまでより不安定になり、資金コストが高くなるため、思い切った低金利政策をとることを妨げるようになる。これは一般会計において防衛費その他の財政支出が多くなってきたために、政府出資をやめて金融債に振りかえて、いわゆる金融インフレ政策に一歩前進するもので、不健全な政策と言わざるを得ない。」旨の反対意見が述べられ、採決の結果、多数をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、資金運用部特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。
従来、資金運用部特別会計における決算上の剰余の処理は、運用資産の価格の減損の償却、繰り越し損失の補てんに充て、その残余の類の二分の一相当額を積立金とし、残額は当該年度の一般会計の歳入に繰り入れることになっており、さらに暫定的に当分の間、残余の類の処理は、当該年度の郵便貯金特別会計の歳入不足を補てんするため、その不足額を限度として、予算の定めるところにより、この会計から直接同会計に繰り入れ、その残額を一般会計に繰り入れることになっております。本案は、この決算上の剰余の処理について、その残余の額のうち、郵便貯金特別会計への否定的な繰り入れの措置はそのままとしますが、この会計の資金の増強をはかり、運営を円滑にする見地から、一般会計への繰り入れをやめて、すべて積立金として積み立てることにしようとするものであります。
なお、これに伴いまして毎会計年度の決算上の不足を、積立金をもって補足できない場合及び資金の繰り越し損失を決算上の剰余をもって補てんできない場合における一般会計からの繰り入れの制度を廃止しようとするものであります。
本案の審議に当りましては、決算上の剰余の額、この会計から繰入金をすることになっている郵便貯金特別会計の歳入不足の発生理由等について質疑がなされましたが、詳細は、速記録に譲ることを御了承願います。
質疑を終り、討論、採決の結果、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/37
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038・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/38
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039・河井彌八
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よって両案は可決せられました
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/39
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040・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第六、国務大臣の私企業等への関与の制限に関する法律案(八木幸吉君外三名発議)を議題といたします。
まず委員長の報告を求めます。内閣委員長新谷寅三郎君。
〔新谷寅三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/40
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041・新谷寅三郎
○新谷寅三郎君 ただいま議題となりました国務大臣の私企業等への関与の制限に関する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本法律案は、参議院議員八木幸吉君外三名より発議せられたものでありまして発議者はその提案の理由として「本法律案の目的とするところは官紀の振粛にあって、内閣総理大臣その他の国務大臣は、わが国の行政府において最高の重責にあり、その政治的活動は、わが国の商業、工業、金融業等の私企業にはもちろん、私企業以外の事業にも、有形、無形の大なる影響を及ぼすことは、言を待たない。もし国務大臣が、これらの事業に関与しておった場合には、その公正な職務遂行に世上の疑惑を招くおそれがあり、いわんや、官紀がややもすれば乱れんとしている今日においては、国務大臣は、私企業等の関係を切断ち切って、行動の公正を期し、その本務に専念することの妨げとなることは、一切これを排除すべきである」と述べております。
内閣委員会は、昨日の委員会において根本官房長官の出席を求め、本法律案に対する政府の所見を質しましたところ、根本官房長官は、「政府は本法律案の立法趣旨には異存はないが、法律の形をもってこの種の制限をせんとすることについては、なお考慮の余地があると思う」旨を述べられました。
なお、この際御参考までに申し述べておきますが、本法律案と大体同一内容の法律案が、昨年第十九回国会におきまして参議院議員八木幸吉君外八十二名より提出せられ、内閣委員会におきまして、慎重審議の結果、ただいま議題となっております本法律案と全く同一内容のものに修正せられまして、全会一致をもって、この修正を含む原案が可決せられ、また当院の本会議におきましても、多数をもってこの修正を含む原案が可決せられたのでありまして、次いで衆議院に送付されましたが、衆議院におきましては審議未了に終ったのであります。
昨日の委員会におきましては、別に質疑もなく、討論を省略して、直ちに本法律案について採決いたしましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと議決せられました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/41
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042・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/42
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043・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
本日の議事日程は、これにて終了いたしました。
次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午前十一時五十六分散会
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○本日の会議に付した案件
一、ジュネーヴにおける四巨頭会談に対する日本政府の態度に関する緊急質問
一、給与勧告に関する緊急質問
一、日程第一 輸出品取締法の一部を改正する法律案
一、日程第二 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、工業品検査所の出張所の設置に関し承認を承めるの件
一、日程第三 建築士法の一部を改正する法律案
一、日程第四 国民金融公庫法の一部を改正する法律案
一、日程第五 資金運用部特別会計法の一部を改正する法律案
一、日程第六 国務大臣の私企業等への関与の制限に関する法律案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215254X03819550720/43
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