1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年三月十三日(火曜日)
午前十時四十七分開議
出席委員
委員長 有田喜一君
理事 椎名悦三郎君 理事 長谷川四郎君
理事 南 好雄君 理事 岡 良一君
理事 志村 茂治君
赤澤 正道君 稻葉 修君
小平 久雄君 岡本 隆一君
佐々木良作君 田中 武夫君
原 茂君
出席国務大臣
国 務 大 臣 正力松太郎君
出席政府委員
総理府事務官
(原子力局長) 佐々木義武君
経済企画政務次
官 齋藤 憲三君
通商産業政務次
官 川野 芳滿君
通商産業事務官
(鉱山局長) 松尾 金藏君
委員外の出席者
総理府事務官
(原子力局総務
課長) 島村 武久君
総理府技官
(原子力局管理
課長) 堀 純郎君
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三月十二日
原子燃料公社法案(内閣提出第一一二号)
核原料物質開発促進臨時措置法案(内閣提出第
一一三号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
日本原子力研究所法案(内閣提出第九三号)
原子燃料公社法案(内閣提出第一一二号)
核原料物質開発促進臨時措置法案(内閣提出第
一一三号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/0
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001・有田喜一
○有田委員長 これより会議を開きます。
本日はまず、昨日本委員会に付託になりました原子燃料公社法案、及び核原料物質開発促進臨時措置法案の両案を一括議題といたし、政府より提案理由の説明を求めます。正力国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/1
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002・正力松太郎
○正力国務大臣 ただいま議題となりました原子燃料公社法案につきまして、その提案の理由及び要旨を御説明いたします。
申し上げるまでもなく、原子力の開発が、将来におけるエネルギー資源の確保、学術の進歩、産業の振興、及び人類社会の福祉と国民の生活水準の向上に果す役割はきわめて大きいものと期待されるのであります。これは、とりもなおさず、昨年末原子力基本法が制定されたゆえんでありますが、政府におきましても、つとに原子力開発の重要性に思いをいたしまして、研究機関、行政機構等の確立整備をはかり、原子力開発の強力な推進に留意して参った次第であります。さきに提出いたしました日本原子力研究所法案もこの趣旨によったものでありますが、翻って考えますと、原子力の開発利用に技術の研究向上の必要なことはもちろんでありますが、 原子力エネルギーの源泉となりますウラン、トリウム等の核燃料物質の開発もきわめて重要なことであります。特に現在の国際情勢のもとでは、これらの物質を海外市場から入手することはきわめて困難な状況にあります上、諸外国がこれら資源の開発に専心努力している事情にかんがみまして、わが国におきましても、早急にこの開発に着手することが強く要請されておるのでありまして、原子力基本法にも、原子燃料公社の設置が定められている次第であります。このため政府におきましては、これらの資源の開発機関としての公社につきまして、原子力委員会を中心に慎重に検討して参りました結果、今回提出いたしましたような原子燃料公社の構想を取りまとめまして、御審議をわずらわすことといたしたのであります。
すなわち、この法案は、以上の趣旨に従いまして、原子力基本法に基き、核原料物質の開発及び核燃料物質の生産並びにこれらの物質の管理を総合的かつ効率的に行い、原子力の開発及び利用の促進に寄与することを目的といたしまして、原子燃料公社を設立しようとするものであります。
次に、この法案の要旨を御説明いたします。
まず第一に、原子燃料公社の資本金は、その全額を政府出資に待つことといたし、設立に当りましては、とりあえず政府は一千万円を出資することとなっております。
第二に、公社の役員としましては、理事長、福理事長、理事及び監事を置くこととし、それぞれ内閣総理大臣が任命することといたしましたが、役員人事の重要性にかんがみ、役員の任命に当りましては、理事長は原子力委員会の同意を得ることとし、その他の役員につきましては、原子力委員会等の意見を聞くこととして、役員人事に遺憾なきを期することにいたしました。
第三に、公社の行う業務でありますが、原子燃料公社設立の目的に従いまして、おもな業務としましては、核原料物質の探鉱、採鉱、選鉱、輸入、買い取り及び売り渡し、核燃料物質の生産、加工、輸入、輸出、買い取り、売り渡し及び貸付等を行わせることにいたしたのであります。なお、公社は、この業務を行うに当りましては、原子力委員会の議決を経て内閣総理大臣が定める原子力の開発利用に関する基本計画に基いて行われなければならないことといたすとともに、公社は、毎年、業務報告書を内閣総理大臣に提出し、内閣はそれを国会に報告することといたしたのであります。
第四に、公社の財務及び会計でありますが、公社の予算、事業計画、財務諸表、借入金、財産の処分等につきましては、内閣総理大臣の認可または承認を要することとしておりますが、このほか原子燃料公社の特殊性にかんがみまして、公社の会計は、会計検査院が検査する旨の規定を設け、その検査を経た決算書類を毎年国会に報告することとし、公社の会計の適正化をはかった次第であります。
なお、公社の行う業務の性格にかんがみまして、政府はその業務に要する経費の一部を補助することができるようにいたしました。
第五に、公社は内閣総理大臣の監督に服するのでありまして、内閣総理大臣は、公社に対して監督上必要な命令をなし、また報告を徴し、所属職員をして立ち入り検査ができることといたしました。
最後に、公社の設立に関する事務は、内閣総理大臣が任命する設立委員に処理させることといたしますとともに、公社に対する課税を減免するため各種税法の一部改正を行い、また業務に関係おる諸法規の必要な改正を行いまして、公社の業務の運営に遺憾なきを期した次第であります。
以上がこの法律案の提案の理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同賜わらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/2
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003・有田喜一
○有田委員長 川野通産政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/3
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004・川野芳滿
○川野政府委員 ただいま議題となりました核原料物質開発促進臨時措置法案について御説明申し上げます。
最近の欧米各国における原子力の発達は、真に目ざましいものがありまして、その動力面への利用、医学、農業、工業等の各方面にわたるアイソトープの応用等注目すべき多くの成果を生み出しておりますことはすでに御承知の通りであります。
わが国におきましても、これがため、去る第二十三回臨時国会において原子力基本法が制定され、原子力に関する政策の基本方針及び原子力に関する機構が定められたのであります。今後、これによりまして原子力の開発利用を積極的に推進いたし、将来におけるエネルギー資源の確保、工業の振興をはかることとなるのであります。かくて実験用原子炉の輸入も近く実現の運びに至り、さらに国産原子炉に関する研究も各方面の協力により進みつつあるのでありまして、これに伴って、核燃料物質たるウラン等もできる限り国産をもって充足するよう、ウラン鉱等の開発を促進することが要請されておるのでありまして、このため、前国会におきまして鉱業法の一部を改正して、ウラン鉱及びトリウム鉱を鉱業法の適用鉱物に追加いたしたのであります。
しかしながら、ウラン鉱等の開発は、他の鉱物のそれと異なり、全く新規のものであり、相当の資金と技術とを要し、かつ、企業リスクの多い事業でありますので、ひとり一般鉱業権者の行う開発のみに依存いたしますならば、ウラン鉱等の開発を急速に行うことを期待できないのであります。従いまして、ウラン鉱等の開発については、国ないしこれに準ずる機関が、当分の間、みずから探鉱を行う必要が痛感される次第であります。このため通商産業省の地質調査所においては、昭和二十九年度より探査を実施して参り、相当の成果を上ておりますが、近い将来、原子燃料公社が設立いたされましたならば、地質調査所と原子燃料公社とが、ともに探鉱を実施して参ることとなるわけであります。
しかして、この探鉱については、鉱業権者、土地所有者等関係人の同意と協力とを得て、円滑にこれを行うべきことはいうまでもありませんが、これらの協力を得ることが困難な場合においても、原子力の開発利用の趣旨にかんがみ、探鉱を実施することが必要と認められる場合があろうかと存じます。従いまして、この法律案は、かかる場合において、加賀調査所及び原子燃料公社がその探鉱を支障なく行うために必要とする土地の立ち入り、使用等の手続を定めるとともに、ウラン鉱等の開発特に採掘を促進するために必要な諸措置と助成とを規定したのであります。
以下、本法案の概要について申し述べますならば、第一に、本法律案の目的は、原子力基本法第一条に規定する目的の達成に資するため、核原料物質の開発を促進することであると規定し、この法律と原子力基本法との関係を明らかにいたしております。
第二に、地質調査所または原子燃料公社の行う探鉱の合理的な実施をはかるため、内閣総理大臣が核原料物質探鉱計画を定めることといたしております。
第三に、地質調査所または原子燃料公社が核原料物質の探鉱を行うに当り、必要やむを得ないときは、他人の土地の立ち入りや使用またば鉱業権者の事業場への立ち入りや一時使用に関する手続を定めております。これらの措置は、迅速に探鉱の実をあげるため特に認めたものでありますので、一方これら土地の立ち入り、使用等による損失補償の規定をおきまして、土地所有者、鉱業権者等の保護をはかっております。
第四に、ウラン鉱等を目的とする採掘権者が、その鉱区において、ウラン鉱等を経済的に開発できるにかかわらず、開発しないときは、通商産業大臣は開発を指示することができることとし、指示に従わなかった採掘権者があるときは、その採掘権者が現に行なっているウラン鉱等以外の鉱業の実施を著しく阻害しない限度において、原子燃料公社が租鉱権を設定できる旨を規定しております。
第五に、原手力基本法の規定にならいまして、鉱業権者または探鉱に寄与した者に対し、奨励金または賞金を交付することができることを規定しております。
第六に、この法律の性格上、限時法とすることとし、施行の日から十年以内に廃止することとしております。
以上、本法律案の提案理由並びにその内容の概要を御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、御賛同あらんことを切望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/4
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005・有田喜一
○有田委員長 以上をもって、両案の提案理由の説明は終了いたしました。
岡委員より発言を求められておりますので、この際これを許します。岡君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/5
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006・岡良一
○岡委員 ただいま御提案になりました原子燃料公社法案並びに核原料物質開発促進臨時措置法案について、以下資料の提出を要求いたしたいと思います。元来、当委員会に付議される各種の原子力関係の法律案については、その裏づけとなり、われわれが審議の資料とすべきものがきわめて不足いたしております。原子力局としても多端な際でありまするので、その間に行き届きかねるということは、十分了承はいたしておりますが、しかしこのようなことでは、もなかの皮だけで、中のあんがちっとも入ってないようでありますから、実は審議のしようがないのであります。そこでただいま御提出になりました両案について、さしあたり日本国内においても、地質調査所の方で、ウラン探鉱についてのいろいろ御努力もあったと思いまするので、国内におけるウラン鉱の分布の状況、また将来の見通し、それからウラン鉱が真に燃料の原料として耐え得る学問的ないろいろな見解もあろうと思いますが、そういう水準に達しているかどうかという点などについても、この際資料として、われわれに明らかにいたしていただきたいと思います。
次に、この公社は一千万円の政府出資で発足するとうたっておりますが、具体的にいかなる御計画をなされようと思っておるのかということ、またそれについての多少の見通しかあれば、あわせてこれも明らかにしていただきたいと思います。また特に国際的な形において、現在ウラン鉱がどういう形で分布しておるのか、そしてまたそれは特に大国を中心としてどのような形で——独占をされておるように聞いておるのでありまするが、その実情を明らかにしていただきたい。これはウラン鉱のみならず、トリウム等についてもお願いをいたしたいと思います。
以上、とりあえず資料として御提出をいただくよう、私どもの審議の促進のためにぜひお願いいたしたい、このように思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/6
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007・有田喜一
○有田委員長 これより日本原子力研究所法案を議題といたし、質疑を続行いたします。質疑の通告がありますから、これを許します。原茂君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/7
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008・原茂
○原(茂)委員 日本原子力研究所について、二点に分けて大臣にお伺いをいたしたいと思います。
最初に、基本的な問題の一つとしてお伺いいたしておきたいのは、御承知のように、一九五三年に、アイゼンハワーの提案によって、八カ国が中心になりまして、その後ソ連等が入って、約十八カ国が国際原子力機関というものを設置したわけです。この機関に関して、日本も将来はこれに加盟しようという構想が大臣におありになるか、まずお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/8
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009・佐々木義武
○佐々木政府委員 大臣にかわりましてお答え申し上げますが、ただいま原子力に関する国際機関に日本の加盟を希望するやという御質問でございますが、これはもちろん今までちょうだいし得る程度の情報は外務省を通じましてちょうだいをしまして、かねがねこの機関には、できれば理事国で、そうでない場合でも将来ぜひ参加いたしまして、そして国際幾関の一員として国際協力を申し上げたい、また御援助を得たい、こういう希望を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/9
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010・原茂
○原(茂)委員 今日まで希望だけして、何か努力をしていないのですか。ついでに一緒にお答え願いたいのですが、今、日本は国連へ加盟していないわけですけれども、国連へ加盟してない現状で、一体その大いなる希望というものを達成できるような努力をどんな方法でやってきたのか、その点をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/10
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011・佐々木義武
○佐々木政府委員 それは、あるいは外務省の方から御答弁申し上げる方が正確かと思いますが、私の承知している範囲の点を申し上げますと、外務省といたしましても、この問題に関しましては、かねがね非常に努力を払いまして、今開かれております会議にも出席方を要請し、同時に、できますれば委員会のメンバーの一員としてぜひ入れてもらいたいというふうに希望を申し上げておったのであります。ただいまのところまででは、まだその正確な御回答には接しておりません。一方、科学者委員会と申しますのは、これも国際的な意味で国連の中に設けられるのでありますが、これは主として放射線のいろいろな出物その他に及ぼす影響あるいは対策等を審議する機関でございますが、これにつきましては、日本から代表といたしまして都築博士、代表代理としまして中泉教授がただいま会議に出席中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/11
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012・原茂
○原(茂)委員 いやしくも日本が今、国家的な見地から原子力に大きな力を注ごうとしておる場合ですから、こういうときに——世界的な機関として、原子力の平和利用の中心というものは、私どもが想像するだけでも、すでに二十五カ国に達した国際原子力機関というものによってその方向づけができていき、これは非常に重要なる今後の課題だと私は思うのですが、このときに、いやしくも原子力を手がけようとなさる大臣としては、これに対するもう少しはっきりした構想に対する意志表示がないと非常に困るので、御抱負を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/12
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013・正力松太郎
○正力国務大臣 原子力は、申し上げるまでもなく平和利用ということになっております。従って、これは国際的に協力してやらなくちゃならないという考えがありますが、何分日本はまだ国際連合に入っておりませんので、それに入ることを外務省を通じてもっぱらやらしております。いずれにしても、平和利用に限定されておりますから、そして、秘密もない、公開しなくちゃならないということになっておりますから、入ることは当然でありますし、入らなくてはその目的が達せられない。しかしそれは努めて外務省の方でやっておりますし、われわれの方としてもできるだけの努力はしておりますけれども、まだ具体的に申し上げるまでの程度に至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/13
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014・原茂
○原(茂)委員 今の日本では、少くともアメリカを通ずる以外には、平和利用の道といっても、正式のルートはないわけです。日本の場合は、特に秘密を持たないという前提の上に、この原子力の研究その他が進められているということになりますと、やはり国際機関に早期に加入し、あるいはオブザーバーでもいいから出席する資格を得て、広く国際的にもオープンに、あらゆる国の情報が正式に収集できるような道を、直接のルートをつけていくという意味でどうしても私は必要だと思いますので、この国際原子力機構の今日の動きを——外務省にいずれ直接にお願いしてもいいのですが、大臣の方から最近の情報をお聞かせ願って、その上で、もう一度この問題の質疑をしていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/14
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015・正力松太郎
○正力国務大臣 この前、この委員会で答弁いたしました通り、どうしてもこれは国際的に、外国の情報を早く知ることが必要でありますので、それで特にアメリカ及び欧州の方に情報専門家の技術のアタッシェを出しまして、それからとることにいたしております。
なおまた、私はイギリスに対して非常に関心を持っておるのであります。なぜならば、申し上げるまでもなく、日本の電力事情は、イギリスに非常に似ております。アメリカは原子力を利用しなくても、まだ電力が余っています。日本とイギリスは、電力については、ぜひ原子力を利用しなくちゃならぬ立場にあります。幸いこの前イギリスの動力相のロイド卿が来ましたから、話をしまして、ロイド卿からも、それじゃ日本の原子力に関するデータを日本政府として英国政府に送ってくれぬか、そうすれば、英国でも十分調査して、今後相提携していこう、こういうことになっております。
なおイギリスの動力相の推薦したヒントンという、原子力に対するオーソリティが日本に来ることになりゃせぬかと思っております。いずれにしても、真剣にイギリスの事情を研究しておるというのが今までの経過であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/15
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016・原茂
○原(茂)委員 ぜひ私もイギリスとの提携は必要だと思います。今の日本の場合の、広く原子力の情報を収集したいと考えるという、広くという言葉の意味は、やはり米国、英国側だけの原子力に関する情報でなくて、せっかく国際原子力機構にソ連圏まで入ることが決定されていますから、今の日本の広くという場合は、あとの半分のソ連圏の原子力情報を入れることにもウェートを置かれなければならないと思うのであります。そういう観点から、米英のみに片寄らないで、やはりソ連圏の原子力に関する情報を入れることも、広く原子力平和利用の道だという考え方に立って、この原子力機構が今日運営されておる最近の動向というものを、一つ大臣から御説明を願いたい。それによってまたお教えを願いたいことがあります。
ついでに、第二のことをお伺いいたしますが、原子力研究所の人員の問題です。私は資料を前にもらったような気がするのですが、どうもそれが見当りません。従って、当っておらないかもしれませんが、今の原子力研究所を今後拡充していきたい。毎年百五十名程度の人員の増加をやって、三十一年度には二百名、三十二年度には三百五十名、三十三年度には五百名くらいの規模になるはず、た、こういう説明があったわけですが、この構想で日本原子力研究所の人員の問題は進めていこうとお考えになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/16
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017・佐々木義武
○佐々木政府委員 ただいまのお話しの通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/17
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018・原茂
○原(茂)委員 そうすると、ここに内訳があるのですが、大体研究者が二百八十名、事務関係が百七十名、工場関係が五十名程度の比率になるだろう、こういう説明が加えられております。この工場関係五十名というのと研究者の二百八十名というのは、その人の資格、身分は何か内容が違うのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/18
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019・堀純郎
○堀説明員 この研究者と申しますのは、独立して研究する人間と、それを補佐して研究する者を研究者といたしまして、それから工場関係者というのは、原子炉の操業その他、実験室の単に技術の補佐的な者、言葉をかえますと工員的な者を相当必要といたします。これが五十名の工場関係者であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/19
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020・原茂
○原(茂)委員 そうすると、工場関係の五十名というのは、現場のいわゆる工員的な職員ということになるわけですね。それで内容は大体わかりましたが、その次に、研究者はこのほかに、開放研究室というのだろうと思うのですが、開放研究室の利用者も含めて、外部の研究者を約二百名程度を予想しておる、こういう説明が加えられておりますが、一体この外部というのはどういう方向を外部と称しておるのか、構想がおありだろうと思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/20
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021・堀純郎
○堀説明員 関連の業界あるいは関連の国公私立の研究所の参加、それから大学等からの参加でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/21
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022・原茂
○原(茂)委員 そういう人をこの機構の構成人員というふうに考えていいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/22
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023・堀純郎
○堀説明員 これは研究所の構成人員ではございません。外部からの、一種の貸研究室と申しますか、貸与する施設に対する参加人員でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/23
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024・原茂
○原(茂)委員 そうすると、その範囲というものが、今のお答えでは明確でないわけですが、だれが一体これをきめるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/24
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025・佐々木義武
○佐々木政府委員 この研究所は、前にも御説明申し上げました通り、公開的な研究所でございまして、日本の各界の人々が、だれでもこの研究所へ参りまして自由に研究をしてもらうというふうな建前が、根本の趣旨になっておるのでございます。従いまして、この研究所には寄宿舎等も設け、一種の国内留学というふうな格好でそれぞれの参加をお願いして、自由に研究をお願いしておるわけでございます。あまり希望者が多い場合には、ただいま御質問になりましたように、そういうものの採択をどういう基準でやるかという問題が当然起きてくるわけでございますが、その点に関しましては、まだ実際に募集もしておりませんし、炉もできておりませんので、詳細な研究は積んでおりませんけれども、しかし今後の原子力の研究は総合研究でございますので、基礎的研究のみが研究の対象だというふうには参らぬのでありまして、あるいは材料面あるいは燃料面等、各般にわたる研究が必要でございますから、そういうものを合せて広く研究できるような基準を作りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/25
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026・原茂
○原(茂)委員 将来を予想しますのに、基本的には、外部のこの研究に関係のある事業団体その他から、この研究所に国内留学の意味で入室さしてもらいたい、こういう希望者が主体になって、その中から選出するという形になるだろうと思います。従って、今日の原子力に関係のある各界の今の空気わ見ますと、大学の入学試験じゃありませんが、ものすごい競争率といったような形がまた現出せられると思う。従ってこれはまだ考えていないというのじゃなくて、ここまでお出しになる以上は、そういう点に関してはもうはっきり予想がつくのですから、どういう資格の者、どういう条件の者を、どういうときに、どういう手段で、だれが選んで入れろのだということは、当然その構想をお作りになって、われわれに説明があってしかるべきだ、こう思いますので、こういう点に関しての詳細な説明というものは、後日お作りになって、急速にお聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/26
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027・佐々木義武
○佐々木政府委員 詳細にはもちろんできておりませんけれども、しかし基準といたしましては、たとえますれば、あまり老年輩の方よりは、むしろこれから研究したい、といっても、学生などというのでは、これは今、大学で基礎研究をやっておるわけでございますから、大学で申しますと助教授クラス以上の方、あるいは会社にいたしましても中堅的な方、そういう人が大体年令的に申しまして対象になります。それで、業種というか、種類から申しますと、先ほど申しましたように、基礎技術的なもの、あるいは応用利用の面にいたしましてもそれぞれ段階を設けまして、そういうものはあまり片一方に偏しないようにというにらみで、それの振り当てをいたしまして、おのずから収容します限度もございますから、そういう限度と見合ってきめていきたい、こういうふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/27
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028・原茂
○原(茂)委員 そういう抽象的な説明だけに終ると、あとに非常に問題が残ると私は思うのです。この二百名というのを入れられる施設ができた場合に、もし五千名の希望者があったときに、今のような説明では、大体あまり年寄りでない範囲、それから学生では困る、せめて大学の助教授くらいからやっていきたいという、その言葉だけでは、今からはっきりした基準を示しておかないと、こういうことを熱心に希望する人々に対しての安定が与えられない。今からやはり相当の意気込みでこれに対する希望を持っている者が実はあるわけです。従って、その人々に対して事前にお答えできるような、もうちょっとはっきりしたワクというものと、その方法、どの機関でどういう手段でやるのだということまで具体的に協議をなさってきめていただく必要があるのじゃないかと思う。これはきっとあとで非常に大きな問題になると思うのであります。従って、もう少し具体的な、今私が要求するようた協議を一つお願いしたいと思います。その点は、うなずいたから約束済みだと思いますから、あとでもう少し具体的にお示しを願いたい。
次いでお伺いしたいのは、本年中に二十名程度の留学生を派遣する予定だ、こういうような説明が示されてあります。従って、本年というのは三十一年度中だろうと思うのですが、すでに派遣の人選は済んでいるのか。実際に派遣しようとする具体的な目途、あるいは方法、構想ができているのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/28
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029・佐々木義武
○佐々木政府委員 留学生に関しましては、この研究所のみならず政府の方からも派遣する予定になっておりまして、すでに予算も取ってございます。この政府並びに研究所を合せました留学生を、ただいまのところは、各国と申しましても決して米国だけを考えるのじゃなくて、カナダ、あるいはヨーロッパにおきましては英国とかフランスとか、あるいは北欧、特にスエーデン、ノルウェー、こういうところが主な目的地になるわけでございますが、そういうところに関しましては、外務省を通じまして、それぞれ各国々にただいま了解を取り付けさせている最中であります。この前にも河崎局長からお話がありましたように、米国、カナダ、英国等からは、すでにある程度の話合いもできて回答が参っております。ただいまそれに出しまする研究者の範囲、と申しますといろいろございますが、たとえば、去年は電気の人が参ったが、今年はむしろ材料関係の人をやりたい、あるいはこの研究所はアイソトープの研究が主でありますから、アイソトープの研究者をやりたい、アイソトープの中でも主として農業関係をやりたい、いろいろこちら側の希望もありますし、また受け取る方でもそれぞれ希望がございますので、こちらの派遣計画と向うの受け入れ態勢というものをにらみ合せまして、そしてなるべくスムーズにいきますように、せっかく準備中で、ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/29
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030・原茂
○原(茂)委員 そうすると、派遣される二十名の範囲は、政府機関の職員かあるいは原子力研究所の職員というふうに考えていいでですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/30
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031・佐々木義武
○佐々木政府委員 民間の方たちももちろん留学の希望がございますので、民間から留学する際には、民間の費用で要員の中に入れまして、向うに出すというような計画になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/31
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032・原茂
○原(茂)委員 そういう民間の人を入れて向うに出していこうとする構想を、今はっきりお持ちになっておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/32
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033・佐々木義武
○佐々木政府委員 三十年度にもすでに実行してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/33
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034・原茂
○原(茂)委員 その次にお伺いしたいのは、内外の著名な学者、技術者を招聘すると書いてあるが、これは随時適切にただ行うだけで、個々の顧問なり参与、あるいは何と申しますか、日本に駐在して技術的な指導をするとか、研究の助力をしてくれるとか、助言をするとか、こういったような人が長期にわたってこの研究所にとどまって、ある意味では研究所の職員といったような資格にまでみなされるような形で、外国人をこの研究所に入れるということが無理に考えるとそういうふうにもとれるわけなのですが、そういうことは全然なくして、ほんとうに短期間、必要な案件に関しての研究のために助言を求める招聘をする、あるいは講習会を開く講師として招聘して、それが終ったらすぐ帰す、こういうのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/34
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035・佐々木義武
○佐々木政府委員 ただいま研究所の方で考えておりますのは、炉の流人に伴いまして、組み立てあるいは実際の初期の運転等に関しまして、どうしても実際の体験者として向うの人に来ていただきまして、一緒に初めやっておりまして、十分指導教育と申しますか、あるいは一緒に作業いたしました結果、これで大丈夫だというのをねらっておりまして、明治時代のように常時何年か駐在して、所員となって指導していくというふうなことは、ただいまのところ考えてございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/35
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036・原茂
○原(茂)委員 これは大臣にお伺いしたいのですが、今の答弁をそのまま大臣も御承認になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/36
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037・正力松太郎
○正力国務大臣 もとよりそうであります。実は、今度の原子力にしても、自主的にやるというのが建前でありますが、ただ自主的にやるにしても、外部の知識は入れたい、外部の技術は入れたい、こういう考えでありますから、臨時的に来てもらうことはあっても、先ほどお話のように、明治維新の時代のように、外国の人がここにとまってやるということを考えておりません。またその必要はありません。何となれば、日本は御承知の通り基礎的知識は十分進歩しておるのです。ただ原子力そのものに対する知識が浅いだけですから、そういうことをしなくても、十分目的は達すると確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/37
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038・原茂
○原(茂)委員 この研究所の予算の面をまだよく研究しておりませんが、こういう人々を招聘するときに、マッカーサー司令部が日本に駐在してずっとおった当時、あるいは今日でも技術顧問団が日本におりますが、べらぼうな報酬を出しておるのです。日本の技術者と比較して、ある程度の生活を保障さえしておけば、あとは日本の国内の技術者のレベルで報酬をやっていく程度にすれば、三分の一か四分の一で済むはずのものを、三倍も四倍も出しております。この構想では、今までのような、そういうべらぼうな費用を出してこの人々を招聘しようとするのか。せっかく来てもらった人々に対する待遇の問題を、この程度お考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/38
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039・正力松太郎
○正力国務大臣 外国から呼ぶ以上は、やはり外人が来る程度の報酬を出さなければいかぬ。しかし、もちろん短期であります。短期だけれども、どうしても技術者を連れてくる必要があると思いますれば、現在民間なりでずいぶん高い月給を出しておりますので、あるいはそういうようなことはあり得るかもしれません。しかしなるたけ安くやるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/39
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040・原茂
○原(茂)委員 予算の関係は知らないのですが、こういうものの予算というものは、どのくらい取ってあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/40
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041・佐々木義武
○佐々木政府委員 ただいま申し上げました通りでございまして、炉の建設に際しまして、向うから参ります臨時的な指導員に対しましては、これは炉の購入費の中にすでに入ってござまいす。従いまして、この予算の中に炉の購入費というのがございますが、その中に入っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/41
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042・原茂
○原(茂)委員 内外の著名な学者、技術者を招聘するのは、炉の建設に関してのみですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/42
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043・佐々木義武
○佐々木政府委員 先ほどから私が臨時的にと申し上げましたのは、主としてこの研究所に伴ってのお話のように承わりましたので、そういうふうにお答えしたのでありますが、あるいはもう少し範囲を広げまして、英国たり米国なりの、発電等に対する非常な経験者といったような人を招聘いたしまして、いろいろ講演をしていただくとか、あるいはこちらの疑問点に回答を与えてもらうとかいうようなことで、この人々が日本に滞在する期間は一週間、二週間のところで、そこで知識の交流といったようなことが随時行われると思います。しかし、それは先ほどの質問とは少し趣旨が違うんじゃないかと思いまして、主として研究所のお話をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/43
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044・原茂
○原(茂)委員 前の質問と趣旨はちっとも違わないのです。研究所が研究をするのに必要な、いわゆる技術者を招聘する問題ですから、炉の建築だけではなくて、当然今のお答えがなければいけないわけなんです。そういうものに関しての予算というのは、別に取ってあるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/44
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045・佐々木義武
○佐々木政府委員 三百五十万円程度一応取ってありまして、こちらから留学し、あるいは向うから来て、いろいろのサゼスチョンなりあるいは知識その他を与えていただく人を招聘する場合もあるべしということを一応考えておりますが、具体的には、この人ということはきまっておらないのじゃなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/45
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046・原茂
○原(茂)委員 三百五十万円というのは初めてお伺いしたのですが、こちらから派遣するのも向うから呼ぶのも含めてというお話ですね。そうすると、とにかく二十名くらいを派遣しようとする、それから一人でも五人でも呼ぼうとすると、最小限度三十名くらいが行き来するのですが、三百五十万円でできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/46
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047・佐々木義武
○佐々木政府委員 こちらから行くのは、その経費の中に入ってないのでごいざまして、向うから呼ぶ人であります。こちらからやる留学生に関しましては、いわゆる授業料というものは相当高いのでございまして、千五百ドルから二千ドルくらいというふうに聞いております。この授業料とそれから往復の旅費並びに向うの滞在費等を入れますと、かりに半年留学いたしましても、非常な高価なものになります。私の申しました三百何十万円というのは、そうではなくて、向うから来ていただく場合の費用を申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/47
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048・原茂
○原(茂)委員 この問題は、あまり時間をかけてもしようがないですから、参考までに言っておきますが、三百五十万円でもしアメリカから人を呼ぶにしても、一体何人、どれくらいの期間置けると思うんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/48
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049・佐々木義武
○佐々木政府委員 先ほどお話しした炉の建設に伴って来る方は、炉の経費の中に入っておりますから、これは別であります。そうではなくて、三百五十万円というのは、さっき申しましたように、知識なりその他を教えてもらいたいということで呼ぶ人の経費で、大体日本の旅費の倍ぐらい見ていただけばよろしいのじゃなかろうかということになりますから、せいぜい一人か二人くらいというふうな格好になるのじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/49
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050・原茂
○原(茂)委員 三百五十万円で一人か二人を日本に一週間招聘して、往復の足代とそれからこっちの滞在費までまかなえますか。大臣はさっき、とにかくせっかく呼ぶのだから、来ていただく程度のものは必要だとおっしゃったが、これで来てくれますか。大臣から常識的にお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/50
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051・正力松太郎
○正力国務大臣 実は、私は予算の詳しいことはよく知りませんが、むろんたった三百五十万円じゃしようがありません。その点は何とか考えます。ただ今度の予算で残念に思いますことは、先ほども申しましたように、外国から呼ぶというても、この予算で十分でないことは事実です。だからその点については、どういう方針で呼ぶかということを、私は十分考えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/51
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052・原茂
○原(茂)委員 まあその程度でいいでしょう。
最後にお伺いしたいのは、なお将来は各国、特にアジア緒国の希望者も受け入れる国際的な性格を持った研究所としていくつもりだということですが、これは、いいわゆる日本とアジアにおける原子力センターにしようという構想の一環ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/52
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053・正力松太郎
○正力国務大臣 アジアにおける原子力センターは、御承知の通りマニラにきまりましたので、はなはだ残念に思うておりますが、しかし私どもの構想としては、形はマニラにきまっても、事実はアジアのセンターは日本に置くというつもりでありまして、実はその構想で進めております。従って、今まで原子力開発に関する構想もいろいろ出ておりますが、あれは準備委員会で作ったものでありまして、あれでは、原子力委員会ができ、そしてこの法案が成立して、いろいろな態勢が整ったときにやれませんから、あれを再検討することも、この間委員会の委員には話しましたし、それから研究所にも再検討を命ずるつもりでおります。要するにあれは準備委員会のもので、ああいうことではまだアジアのセンターになれぬと思います。われわれは、事実上のセンターにするのでありますから、今後大いに努力してやるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/53
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054・原茂
○原(茂)委員 実質的な、力の上では日本がアジアの原子力センターになるのだという意気込みは非常にけっこうなんですが、それにしては、今の外国人を招聘するにしても、予算が三百五十万円だというようなこんな上すべりなものを大臣がそのままうのみにされて、堂々とここに提案されて承認を求められていることは、私は非常に勉強不足だと思う。大臣が熱を入れられるその度合いと同じように、もう少し内容の検討もなさって、下僚を鞭撻しないと、こんなずさんな考え方では、今言った外国人の招聘だけでもできそうもない。こういったような心配もありますから、いわゆる原子力センターなどとうていできそうもないというふうに考えますが、その点あと一段の勉強をお願いいたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/54
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055・正力松太郎
○正力国務大臣 今の御趣旨はよくわかりましたが、実は金がなかなか足らぬのであります。御承知の通り、予算で三十六億取りましたけれども、大蔵省の査定では九億でしたか、それを三十六億まで上げるには、これはずいぶん骨を折ったわけでありますので、その点御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/55
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056・岡良一
○岡委員 基本的な問題で、いろいろ政府の所見もただしたいと思いますが、しかし、それはあとまたいろいろ他の法律案も提出になりましたので、その機会に譲りまして、ごく技術的な点で二、三お尋ねをいたしたいと思います。
アイソトープでありますが、アイソトープの本年度予算はこの間承知いたしましたが、それではその数量、これを一体どこへ持っていくのか、何の研究に充てるのかというような御計画をお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/56
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057・佐々木義武
○佐々木政府委員 アイソトープは、御承知の通り非常に格安のものでありまして、三十年度におきましては、この前も御説明いたしましたように、大体三千万円程度の輸入でございます。その輸入の主たる内容は、約九〇%近くは医学方面でございまして、残りが鉱工業あるいは農業あるいは建設関係のものになっております。来年度の計画でございますが、これは今年度の予算にはっきり盛っておりしして、相当力を入れてやっていきたいというふうに考えております。ただ政府が予算でもって自分で購入する分、言いかえますと、農林省関係の農業試験場あるいは家畜衛生試験場、蚕糸試験場等で使う分、あるいは文部省、厚生省関係の各医学機関で使う分、あるいは建設省等で建設に付帯して必要な分等の費用は、これは政府で盛りますが、その他の個人の医学で研究したいというのは、建前といたしましてそれぞれ各利用者の負担区分になっております。政府の分は大体わかっておりまするが、民間側からさらにどういうものがどの程度必要かという点は、まだ十分に申し込みを受けておりません。ただいま申し込みを受けつつある最中でございまして、これを整理いたしまして、実際に各国に交渉するというような格好になろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/57
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058・岡良一
○岡委員 それで、政府の方で直接輸入されて、厚生省や文部省関係の諸機関にいわば配給をされる、その向き向きがあるわけですが、どの程度輸入されて、どこへ配給して使用せしめるという計画はありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/58
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059・佐々木義武
○佐々木政府委員 ただいまの説明ちょっと不十分だったと思いますが、民間の個人の方あるいは会社等で、自分の負担で輸入したいという場合でも、その個人あるいは法人が直接海外の各機関と取引するのじゃありませんので、必ず原子力局の方に書類を回しまして、その承認のもとに輸入するというふうな態勢になっておるのでございます。従いまして、この方は実際の申し込みを受けまして、それを査定の結果、各国々からそれぞれ輸入するというような格好になっております。ただ政府の分に関しましては、各省それぞれ自分の機関でございまするから、初め予算を組むときに大体わかっておりますので、その詳細ば資料をもって御説明いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/59
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060・島村武久
○島村説明員 ちょっと補足的に御説明いたします。ただいまの御質問でございますけれども、本年度のアイソトープの輸入額は、御承知の通り、まだ全部集計になっておりませんですけれども、三千万円をこすという予想でおるわけであります。その内訳でございますが、先ほど局長からも申しました通り、一番多くを占めますのは、従来は医療用の関係、医学関係でございまして、一九五四年度の実績で申しますと、大体六〇%がそれに向けられている。その次に多いのが農業方面の関係でありまして、これが一六%でございます。それから鉱工業、一般産業用の関係が昨年度は六%ぐらいで、割に少うございました。しかし最近の状況を申し上げますと、四半期ごとにやっております。その期の内訳で申しますと、先ほど申しました医療用が、大体半分ぐらいに、比率の上からは減っておりまして、二五%ぐらいが農業関係の利用ということになっております。鉱業の関係も一八%でございましたか、かなり構成比率の上から申しますと伸びてきております。アイソトープの利用が、いわば過去におきましては、日本では医療用に主として使われておったという実績が、広く医療用のみならず、各方面で利用されていくというような傾向が、やはり短期間ではございますけれども、徐々に現われておるように感ずるわけでございます。
なお、先ほど局長が申しましたように、アイソトープの輸入につきましては、外貨割当の際に、原子力局で一応チェックをいたしておりますので、輸入の分野等につきましての資料は、私どもの方でもわかるわけでございます。ただ、官庁方面で使用される分につきましては、先ほど局長の申しましたように、予算の面で現われるはずでございますけれども、これは一般研究費等の中に、金額が何分にもそうかさばらぬもので、薬品等の中にまぎれ込んでおりますので、そのうち官庁だけでどれだけ使ったかという資料は、ちょっと得にくいのではないかと思います。これもしさいに調べますれば、外貨の割当をやっておりますので、この分からつかみ出すことができると思います。ちょっと補足して御説明申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/60
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061・岡良一
○岡委員 実は、原子力の研究開発を、日本原子力研究所がセンターとなって始める。しかし、実験原子炉がいよいよ運転されるのは、早くいっても来年の春じゃないかと思うのです。しかも、小規模な実験原子炉では、アイソトープを自家生産するということも、そう大きな期待は持てないのではないか。ところが一方では、カナダもアイソトープの輸出については相当力こぶを入れておるようですし、アメリカでもアイソトープの輸出についてはすでに禁止の品目を大きく解除いたしまして、八十三品目くらいは輸出してもいいというところまでいっている。私がジュネーヴで原子力平和利用会議の展示会を見ましても、ソビエトといわず英国といわず、やはりアイソトープ、コバルト、燐、ヨード等について展示をしているようです。これは売ろうというので展示をしているわけで、アイソトープに関する限りは、直接実験原子炉を日本で運転するしないにかかわらず、相当入手し得る状態になってきておるのであります。その輸入については、これを原子力局が許可を与えるという建前になっておるので、そこで原子力の研究開発に手っとり早くまず取り組む大きな一環として、日本の国内において、ただばく然と、結果から、アイソトープが医療に何%出た、あるいはトレーサーとしてどれだけ使われた、農業にどうということでなく、やはり一つの計画を持って、アイソトープの国内における利用を推進するということでなければなるまい、こう思うわけです。本年度は大体こういう目標で、またこういう計画のもとにアイソトープの輸入をはかりたいという御計画があってしかるべきでないかと私は思う。これのはっきりとしたところをお示し願いたいというのが、先ほどからの私のお願いしておる趣旨なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/61
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062・正力松太郎
○正力国務大臣 今のお話は、まことにごもっともであります。私の方でも、非常に力を入れております。実は、発電なんと言いましても、どうしてもこれがなければならぬ。アイソトープは、今すぐにでも利用できるものでありまして、従いまして、今度原子力局ができるにしても、特にアイソトープ課というものを設けたような次第であります。そうして、これは研究所の敷地が決定しさえすれば、すぐそういうアイソトープを実際にやらしたいと思っております。通産省の方で今主としてやっておりますけれども、原子力局の方でも、一つこれを研究所の方にやらせたい、こういう考えを持っております。ただ実際に今の原子炉ができましても、ああいう小さいものでは幾らもできません。あんなものではだめですから、特にアイソトープを輸入してやりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/62
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063・佐々木義武
○佐々木政府委員 ただいまの大臣の発言を具体的に補足申し上げます。先ほど申し上げましたように、国の研究所として使う分に関しましては、予算の査定の際に十分研究いたしまして、この点について、本年度から力を入れようと計画を立てておりますので、大半の研究はこの中に入ってくるのじゃなかろうと思います。通産関係、農林関係、厚生省関係それから建設省関係に分れるわけでございますが、通産省の方では東京工業試験所では何をやれ、名古屋の工業試験所では何をやれ、発酵研究所では何をやれ、農林省の方では農業技術研究所あるいは地域的な農業試験場もあるいは家畜衛生試験場等では何をやれというふうに、具体的な研究内容も全部ございます。その内容を種別別にして予算を計上しております。これは少し詳しくなりますので、何でございましたら資料をそのまま岡先生に差し上げまして、ごらんいただく方がいいのじゃないかと思いますが、一応これを計画的に実施し、重点的に取り上げるという構えは、今年度から明瞭に打ち出しつつありますので、さらにお話のように格段の努力を払いまして、全般的な組織化ということをはかりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/63
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064・岡良一
○岡委員 それでけっこうなのです。
次に、この間、河崎国際協力局長から、カナダから援助の申し出があったという御発言がありました。今、原子力局長からもそういう御発言があったのですが、カナダからは、具体的にどういう援助の申し出なのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/64
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065・佐々木義武
○佐々木政府委員 カナダに関しましては、私ども承知いたしておりますのは、インドから申し入れが非常に多くて、留学生の教育に関しましては、他国の受け入れをやるのに非常に困難を来たしておるところだという情報を受けておりましたが、河崎局長のお話で、最近カナダの方でもぜひ一つ日本側の留学生も受けて教育したいというふうなお話もあったように聞きましたので、先ほどそれを申し上げたのでありますが、向うから外務省に参りました正式な通知等は、まだ詳細に見ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/65
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066・岡良一
○岡委員 日本の原子力研究開発を多角的に進めるという意味で、原子力委員会あるいは原子力局としては、そういう点で外務省との連絡がまだ緊密じゃないのじゃないかと思うのです。これはぜひともいち早く、外務省は当然原子力委員会なり原子力局にこれを通報してくれて、その上で、さらに政府としてその具体化に議を練る、こうあらねばならないと思うのであります。そういう点が非常に不十分なような気がいたすのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/66
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067・佐々木義武
○佐々木政府委員 実際の具体的なやり方等につきましては、二週間に一ぺん、外務省、研究所三者集まりまして、外国の例を中心に伺い、その間に起りました事象をお聞きしたり、またこちらで注文がありますれば申し上げたりする定期のルートかございます。それから、各省の事務連絡の会議がございまして、これもそれぞれ各省でチャンピオンを出しまして、各省間の話し合いを進めるという機関もございます。これも定期に開いております。それから、委員会の方にはときどき外務省の刀から来ていただきまして、その間に起りました重要問題に関して報告を受けております。あるいは条約等の問題で緊迫した状態がございますれば、外務省の方が主になりまして、こちらも参加して、これを協議するというふうな関係がございまして、できるだけの事務的な連絡あるいは委員会との結合ははかっておるつもりでございます。あるいは原子力に関する海外からの情報なりいろいろな申し入れなりがございますれば、すぐ原子力局の方に書面が回ってくる組織になっておりますので、連絡はそう不十分だとはただいまのところ考えておらぬのでございます。ただ、御指摘のように、今までは非常に法案なり予算なりの問題に没頭しておりまして、人員の養成計画とかいったような、あるいはただいま御指摘になりましたアイソトープの今後の伸ばし力といったような計画性、いわゆる実体論と申しますか、こういうものは割合にまだ手不足でございまして、これから一つ実体論に入ろうというところまできている最中でございますので、その点をあわせて御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/67
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068・岡良一
○岡委員 科学アタッシェを、今、諸外国で常置しておるのはどことどこの国でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/68
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069・佐々木義武
○佐々木政府委員 科学アタッシェとしてただいま行っておりますのは、ニューヨークだけでございまして、今年度予算を取って、ロンドンに一人定員がとれたという話は聞いております。ただ原子力の方はそれとは一応切り離しまして、科学全般じゃなしに、原子力のみのアタッシェを置きたいというので、今年度予算もちょうだいいたしまして、米国に一名、欧州に一名——ただいまのところではやはり英国になるのじゃなかろうかと思いますが、置きたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/69
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070・岡良一
○岡委員 この間もちょっと触れた問題ですが、日本も万国的な特許に関する条約に加入しておる。その結果、原子力に関する新しい発明発見等は、やはり公報をもって通知されてくる。これは特許庁にくると私は思うのですが、こういうものはやはりいち早く原子力局において入手し、専門的なものですから、おそらくテクニックが多くて、非常に翻訳困難だろうと思いますけれども、こういうものもやはり貴重な文献として翻訳をし、必要な場合に周知せしめるということも必要になってくると思うのです。そういう顧慮は現に払おうとしておるのですか、それの予算等もあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/70
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071・佐々木義武
○佐々木政府委員 前々から計画は持っていたのでありますが、たとえますれば、昨年のジュネーヴ会議の成果と申しますか、その資料などは御承知のように非常に膨大なものがあるわけでございますけれども、こういうものを全部系統的に組織化いたしまして、それに各国の情報等を付加しながら、どの問題がどういうふうに伸びていきつつあるかといったようなものを常にキャッチをして、日本の今後の進み方に誤りないように、あるいは日本の進み方を判断する際に、その客観的な判断材料としてそういうものが当然なくてはいかぬわけでありますから、原子力局といたしましては、主として調査課の機能を充実いたしまして——調査課と申しましても、国内の調査というのは、御承知のようにほとんどないわけでございますから、そういう点を主たる任務にいたしまして、外国の現状あるいは逐次進歩していく過程というものを、微細な項目にわたりまして常にキャッチできるというふうな組織を相当大規模に考えていきたい、従いまして、今お話がありましたような点は、十分その中で考慮していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/71
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072・岡良一
○岡委員 私があなたに希望したいのは、私の聞くところでは、各国の原子力に関する新しい発明発見が、特許申請をし特許権が付与された場合に、いち早くこれが日本の特許庁にももたらされるということなのです。そうすると、特許庁にあっては、いわばこれが死蔵される危険があるのじゃないか、それでこういうものを特許庁と連絡していち早く入手されて、これはおそらく非常に翻訳に困難なものだと思うのですが、こういうものを翻訳をし、周知せしめるということは、原子力研究所の大きな仕事になりはしないかと私は思うのです。そういう御計画があるかどうかということを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/72
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073・佐々木義武
○佐々木政府委員 特許の問題でございますが、実はこの予算の最終末期になりまして、特許庁の方からどうしても予算を取ってもらいたいという希望がございまして、三百万円の要求が参ったのであります。その中で、二百五十万円の予算を取りまして、図書その他の購入——図書と申しましても、ただいま岡先生がおっしゃいましたような意味合いも含めました資料の収集と申しますか、そういう費用でございます。不十分かもしれませんが、しかしまずまず初年度としては要求にほぼ近い金額を取ったわけでございますから、大体海外のそういう点は漏れなくやれるのじゃなかろうかという感じもいたすのでございます。
それからもう一つは、特許庁の方からどうしても海外連絡の方に出してもらいたい、そうしてこういう点も十分研究してもらいたいという希望もございますので、できますれば、そういう希望も満たしてあげたい、そういうふうな考慮も払っております。ただ、特許庁で海外の特許の実情等をお調べの上、これをどういうふうに科学技術庁の方に連絡するか、こういう点が御質問の趣旨のように考えられますが、そういう点に関しては、科学技術庁に発明特許課ができますから、この方とも十分連絡して、原子力局といたしましても海外の特許の状況等は十分熟知いたしまして、今後の進め方に誤りないようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/73
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074・岡良一
○岡委員 この原子力研究所は、人をそろえましても、やはりまず勉強しなければならない。とすれば、海外の資料で特許庁に入手する資料等を中心に——今、国会図書館にはきわめてちゃちな原子力に関する資料があるだけですが、私はやはり原子力研究所が広くそれを希望する方に利用せしめるような図書館とでも申しましょうか、そういう文献の集中された機関がぜび必要だと思うのです。こういう点について、二百五十万円というわずかな予算ではなかなか困難だろうと私は思いますが、一つ格段な御努力を委員長におはからい願いたいと思います。
それから、これは先々のことではありまするけれども、しかしすでに御存じの通り、今アメリカも英国も音を上げているのは、原料はあり余っておるが、技術者が足りないということで、これはストローズ委員長みずからが言明しておる。英国の原子力公社の発表を見ても、その中にははっきり技術者が足りないと言っておる。日本としては、こういう轍は踏みたくない。ことに正力委員長のような高邁なる御抱負を実現しようとするならば、やはり技術者の訓練計画というものには相当力こぶを入れなければならないし、相当計画性を持って進めていかなければならないと思います。こういう計画は、もちろん開業早々のことでもあり、そう微に入り細をうがった、責任ある計画とは言えますまいが、一つ御構想だけでも聞かしてもらいたいと思います。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/74
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075・正力松太郎
○正力国務大臣 ただいまのお話は、一々ごもっともでございます。先ほどの図書のごときは、実は二百五十万円では何もできませんが、さっき申し上げましたように、ようやく取ったような状況でありますから、遺憾ながらそれでがまんをしておるわけであります。
それから技術者の養成につきましては、これはお話もありましたように、どうしても日本の生活水準を上げるには技術よりほかに方法がない。従来、技術者というものは、普通の役所でも幾らか軽視されておった気味がありますので、これを直したいというのが、今度科学技術庁ができた一つの趣意でもあります。待遇の点においては、ことに技術者が劣っておったのであります。それを今度直そう、技術者を優遇しよう、技術者を利用しよう、技術者を働かせようというのが技術庁の趣意であります。その趣意にこの法案も考えてあると思うのでありますが、その趣意に従って、今度の技術庁におきましても、役員には技術官を相当に採るつもりであります。さらにまた学校とも連絡いたしまして、これは文部省との関係になりますけれども、技術の学生を何するようにしたい、こう思っております。まだ法案も何もできぬものだから、できた上で着々実行にかかりたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/75
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076・岡良一
○岡委員 民間の研究所それからまた大学の研究室、これらはやはり原子力研究所がセンターとなって技術員の養成計画をする、これは日本の原子力の開発計画と不離一体なものだと思うのです。すでに先進国が技術者の不足に音を上げておるというこの前車のわだちにかんがみましても、やはり計画性を持って、何を一体研究するのか、どの目標に向って研究するのかという計画のもとに、技術者の訓練、養成計画というものを、大学や民間の研究所と緊密な連絡をとって、この研究所がセンターとなって、その点に格段の御努力を願いたいと思う。
それから濃縮ウランの受け入れに関する日米間の協定では、査察を受けるとでも申しましょうか、常時監察を受けるというような義務を負っているわけであります。これは、実験原子炉購入のためにすでに交渉に出かけているという段階では、重要な条件になろうかと私は思うのです。一体相手国の監察を受けるという内容は、どういう内容でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/76
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077・佐々木義武
○佐々木政府委員 この査察の問題は、私ども協定を結ぶ際に相当注意をした点でございますが、主として向うで考えておりますのは、貸与いたしました濃縮ウランがどの程度利用されたか、あるいはいわゆるウェイストはそのままほかに転用したりあるいは消費してはならぬという規定になっておりますから、そういう保存の状況がどうだとか、あるいは傷害防止の点はどうだろうかというふうな監察が主でございまして、決して監察に伴ってのいろいろな研究に対する制約というふうな意味合いではないというふうに解釈をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/77
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078・岡良一
○岡委員 研究の制約があるかどうかということは別といたしましても、この査察というものの内容は、単に今おっしゃったようなきわめて事務的なものではなく、もっと、常時人が派遣されて、アメリカ大使館にでも常置するか、あるいはまたアメリカ大使館にこれにかわる者が任命されて、日本の原子力研究所についてはかなり突っ込んだ——干渉ではありますまいが、関心を具体的に注いでくる結果になるじゃないかということを私は心配しているわけであります。その点は、具体的にどういうことになるのか、はっきりしたところを一つお示しを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/78
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079・佐々木義武
○佐々木政府委員 これは、原子力の国際管理という軍事的な問題をめぐっての、いわゆる空中査察とかあるいは地上査察と申しますか、そういう意味のいわゆるインスペクトといった意味では毛頭ないようでございます。この文章を見ましても、オブザーブということで、インスペクトというような言葉は使っておりません。従って、そのオブザーブという意味は、それではどういう意味かと申しますと、これはさっき申しました通りでありまして、あくまでもいわゆるインスペクト、監察、検査というふうなものじゃなくて、貸与に伴っての条件を忠実に守っているかどうかという意味のオブザーブというふうに解釈しているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/79
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080・岡良一
○岡委員 原文を私今ここに持ってきておらないのですが、何をオブザーブするのですか。パーフォーマンスですか、アピアランスですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/80
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081・佐々木義武
○佐々木政府委員 先ほど申しましたように、貸与した濃縮ウランの消費状況あるいはウェイスト等を貸与条件通り保管しておるかどうか、安全に保管しているかどうかといった問題が主たるねらいのように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/81
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082・岡良一
○岡委員 その問題について、私も少し危惧する点がありますので、これはまたいずれあとの問題にいたしましょう。
そこで、細目協定は今どういうところまで進んでおりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/82
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083・佐々木義武
○佐々木政府委員 細目協定に関しましては、いろいろ細目協定に入り得る前提条件と申しますか、たとえますれば、こちらに導入いたしますもののタイプ、設計、従ってその設計に伴う実際の所要ウラニウム、濃縮ウランの量、あるいは予備を必要とするか、ネットを必要な分だけに限るかといったようないろいろな問題がありますので、そういう点を十分見た上で、話し合いに入りたいという先方側の意向もありまして、御承知のようにこちらの方から向うに二人博士が参りまして、いろいろ設計の打ち合せをいたし、向うからも人が参りまして、濃縮ウランのウォーター・ボイラーに対するお互いの捺印が、近く取りかわされるような状況になっております。そういうものがきまって参りますれば、おのずから細目協定に入る前提が固まってくるわけでございますので、それが固まり次第、アメリカ側との折衝に入りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/83
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084・岡良一
○岡委員 細目協定の場合は、やはり原子力委員会なり原子力局と外務省との間には、常に事前に密接なる御協議の上で進められるというふうに了解していいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/84
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085・佐々木義武
○佐々木政府委員 過去におきましても、何べんか打ち合せをいたしました。ただいまも疑義あるいは問題点を取り出して、十分委員等に御検討いただきまして、両者でもって緊密に研究を進めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/85
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086・岡良一
○岡委員 原子力委員会としてやはり承認を与えた上で、初めて細目協定というものが結ばれる、こう解釈していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/86
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087・佐々木義武
○佐々木政府委員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/87
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088・岡良一
○岡委員 その場合に、細目協定の内容として、オブザヴェイションとは具体的にいかなることをやるのか、何を対象とするのかということも、やはり細目協定の中に含まれるのじゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/88
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089・佐々木義武
○佐々木政府委員 オブザヴェイションの内容に関しましては、実は細目協定の中には入ってございません。細目協定は、単に賃借の条件そのもののみでございまして、ただいま私ども聞き及んでおるところでは、オブザヴェイションは入っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/89
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090・岡良一
○岡委員 私は賃貸をする以上、やはり貸してくれようというものの条件として、オブザヴェイションの内容、対象というものが問題になりはしないかと思いますので、この点は私の杞憂かもしれませんが、やはり基本法というものの諸条件と完全にマッチするという御努力があってしかるべきだと思います。これは後日の問題であります。
それから今後の問題でありまするが、今の国際情勢の中では、日本としては基礎的な力は相当ある。これを今度は原子力の研究開発に具体的に進めていこうとすると、その公開の原則と国際情勢上の機密という原則が大幅に横行してくる。この公開と機密が大きな矛盾をはらんできて、そこに日本の原子力研究開発の発展進歩の上に一つの大きなチェックになってきている。現状ではそう言えると思う。これをどう取りさばいていくかということは、基本的に非常に重要なわが方の方針になると思うのです。この点は、この前の委員会でもいろいろお話をいたしましたが、原子力研究開発の構想を具体化される上において、これが非常に大きなチェックになると思う。ここは御苦心のところだと思いますが、委員長としてどういうふうにお考えになっているか、御所信を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/90
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091・佐々木義武
○佐々木政府委員 この前の委員会でも、湯川、藤岡両委員、また委員長からお話があった通りでありまして、いやしくも三原則が基本法にあるからには、そういう機密条項と申しますか、公開の原則に反するような、あるいはそれに伴う自主性を害するような研究態度は好ましくないということに関しましては、この前申し上げた通りかと思います。ただこの前に、基本法ができる前でありますが、公開というのはどういう意味だろうかという点もいろいろ事務的には検討したことがあります。商業上にいう意味の特許的な性格のものでありますれば、これは普通の商売でも当然商業道徳として守るべき性質のものでありますので、そういう点まで、国はどうということまでいかないのではないだろうか。そうではなくて、あくまでも国対国といたしまして機密を守るべしという、言いかえると、その条約に付帯して、国内法的な意味から機密保護法のようなものを別途作らなければならぬというようなやり方は、日本としてはどうだろうかという解釈の方が穏当ではなかろうかというようなことをおっしゃったこともありますが、根本方針といたしましては、あくまでも、そういう機密といったものは、日本の今後の原子力の進むあり方としては好ましくない。従いまして、基本法の精神をあくまでも生かしたいということでやっている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/91
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092・岡良一
○岡委員 現に天然ウランを濃縮ウランにするウラン鉱の精練にしても、機密の分野がほとんどだといわれているし、あるいは国産原子炉を作るとしても、それに必要な金属材料等については、冶金その他においてやはり多くの機密の部分がある。こういうような機密というもののヴェールに隠れているために、日本とすれば、国産的な天然ウラン、重水というものを作ろうと思ってもなかなかできがたいという事情が、ここ一、二年の間に起ってくることを私は心配する。そういう場合に、今おっしゃったところによると、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。たとえば英国なりカナダなりアメリカなりにおいて、その国内法によって機密とされているもの、あるいはまたそれらの国々が、他国との協定において、その機密の保持が条件とされているもの、それは当然わが国にもたらされるために、機密の保持を条件とされることが言い得ると思う。そうなってくると、それらの機密資料について、日本も機密の保持に対して責任を持たなければならぬことになると、当然その機密にタッチする人たちは、科学者であろうが技術者であろうが、機密を保持する義務がある。そこで当然国内においてもそこに一つの制約が生まれてくることは必至だ。それは法律的に当然起ってくると思う。そういうことになれば、これはやはり機密として排除していかなければならぬという建前を厳守されるつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/92
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093・佐々木義武
○佐々木政府委員 この協定を結ぶ際に、その点が一番問題になったのであります。もし機密条項のようなものがありまして、国として機密を守るというからには、単に口頭だけでもって研究者を縛るということでは、意味がないのであります。国内法規として、機密保護法のようなものがただいまのところほとんどありませんから、それに伴う国内法の機密保護法のような別途の法律を作らないと、機密保持については国家的に責任を持てぬわけでありますので、そういう国内法まで作るようなものであるならば、これはとうてい日本の現状ではできがたいというので、いろいろ折衝いたしました結果、そういうものは全然含んでおらぬ、また文面を見ましても全然ございません。そういうわけでございますので、この協定を結んだわけでございます。今後それではどうかという御質問でありますけれども、少くともやはり国内でそういう機密保護法のようなものをその条約に付帯して作らなければいかぬというふうなものでありますと、基本法の建前からいたしまして、少くとも日本の現状から察しますと、そういうものは受け入れがたいのではなかろうか。また精神から申しまして、受け入れちゃいかぬのではないかというような解釈のしようでやっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/93
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094・岡良一
○岡委員 たとえば、委員会でよく問題になる動力協定でも、アイゼンハワーが、去年六月に、ペンシルヴァニア大学の演説でこういうことを言っている。動力用原子炉に自分たち自身で投資しようとしておる友好国の国民が、慎重な機密保護の考慮のもとに、動力川原子炉の建設や、平和利用のための操作の技術的過程に接近し、訓練を受けることができるようにすることを提案する。——ここですでに動力用原子炉については、日本が技術者を派遣するということについても、機密保護というものについては、日本国が保障を与えなければならぬという条件を出している。最近アメリカは、民間会社に対して、実験原子炉について、いわゆる機密への接近許可を与えておる。それを見ると、機密の資料については、これを密閉した金庫に入れて、三つに分れたダイヤルによるかぎによって保管し、——ここまではいいのですが、口径三十八ミリ以上の火器を持って武装警備員によって警備されなければならない。アメリカ国内でも、工業会社はこの原子炉の機密特許を与えた場合には、その資料の保管にここまで厳重な制約を加えておるわけです。それからイギリス、ベルギー、カナダ等と締結した平和利用の協定とはいいながら、やはりこの中には、種々の方式の原子炉とそれに必要な情報を含むこれの協定に基くあらゆる形式の情報交換に対しては、双方の政府が機密保持の条項をつけて、その機密保持の保障を双方の政府は与えなければならぬ。でありますから、資源が不足だ、発電を急ぎたいといいましても、現段階では、非常に手きびしいもので、とにかく金庫に入れて、三十八ミリの火器を持って警備させるなどというような、こういう厳重な機密漏洩を防ぐ措置をとっておる。こういう点から考えましても、特に私どもはそういう点に日本の今後の行き悩みを感じているが、これは敢然としてやはり公開の原則でいくべきだと私は思う。それが日本の学者の自由なる研究、そうして追いつき、追い越せという大きな旗じるしのもとに、日本の科学者の自主的な研究を推進するゆえんだと思う。これは議論になりますからこの程度でやめますが、この点について、今後の原子力研究所としても、いろいろ事業計画の推進の上に困難な点が生れてきはしないか。あくまでも基本法の原則を尊重してもらいたいと思う。
それからなお、障害防止法の問題です。すでにアイソトープも、厚生省、文部省、建設省、農林省等の予算で輸入され始めたというふうにして、いわばな危険な放射能が日本の国内においては相当使用されつつあるわけです。これに対して、障害防止法はいつお出しにたるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/94
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095・齋藤憲三
○齋藤(憲)政府委員 お説の通り、アイソトープその他に関する障害の防止は、早急に法律をもって規定しなければならない状態に近づきつつあると思っております。政府といたしましても、なるべくすみやかにこれを提案したいと思います。今国会に間に合せたいと努力いたしたのでございますが、この法案の作成を急いでみますと、なかなか広汎多岐にわたりますので、大体の成案を得ましたけれども、今国会の提案はとうてい間に合わないような状態になったので、次の国会には必ず提案して、御審議を願いたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/95
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096・岡良一
○岡委員 そうすると、アイソトープの使用に基く特殊な放射能のための、それぞれの民間企業あるいは研究室、あるいは政府機関等における障害に対しては、その補償の道というのは何もない、空白にさらされる、こういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/96
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097・佐々木義武
○佐々木政府委員 現状は、岡先生十分御承知のように、基本法がありまして、その基本法に基いて、各省がそれぞれ政令なり規則なりを作りまして、はっきりその障害を防止するのが法的には一番明瞭な姿ではございますが、ただいま政務次官からお話がありましたように、アイソトープの障害防止に関する根本法とでも申しますか、そういうものが今国会には間に合いかねましたので、それでは現実は、全然それに対して何方措置をしておるか、またしていかないかという問題が、経過的な措置として重要なる問題になるわけでございます。これに関しましては、ただいま関係各省で、従来からそれぞれ通達、あるいはところによっては政令等を設けまして、不十分ではありまするけれども、一応障害防止の手段を講じつつございます。これは、もと法がなくても、もう少し組織的に、統一的に竿頭一歩を進めまして、もと法ができる前でもう少し整備して、障害を幾分でも少くしていきたいというふうなつもりで経過的な措置も講じていきたいと考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/97
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098・岡良一
○岡委員 御存じのように、放射能による障害というものは、医学的にも新しい分野の疾病で、従ってまだ十分研究し尽されておらない治療技術を必要とするということになってきている。日本は外国よりもいち早くこれらの技術についての不幸な経験を持っているわけです。そこで、万一そういう疾病にかかり、障害を受けるというような事態が起ったとき——というのは、現に、現在の医学ではどうしても解決のつかない慢性的な骨髄と白血球の障害、しかもそれが民間の研究室であろうと、あるいは原子力研究所であろうと、放射能に基いて起ってきた。特に不幸なことは、放射能によって人間が生殖の作用を失うという危険が非常に多い。現にビキニの諸君にしても、まだ子供ができておらない。人類が次の時代の子供を得ることができないという危険があるということで、水爆実験を禁止しようということがわれわれの大きな命題になっている。こういうことになれば、もういかなる補償をするのかということが重大な問題だと思う。そういうような非常に不測な大きな障害、しかもそれが慢性的な形で、その障害を受けた人間の一生を苦しめていく。すでに日本において、制度として、そういう障害が起り得る可能性を生み出しながら、この障害に対する万全の措置に対しては法律もない。万一不幸にしてそういう障害を受けたときに、これに対していかなる補償を与えるかということについても、まだめどがない、次の国会だ、こう言われるのだが、これでは私は原子力行政としては非常に片手落ちじゃないかと思うのです。現にAFLそれからCIOの、アメリカの労働組合のこの間の合同大会のあの決議分を見ても、原子力の傷害も非常に大きな大会の決議になっている。これは、アメリカのように、原子力が一般工業界において、普遍的に発達をしておればなおさらのことではありましょうが、組織労働者が、放射性物質にさらされておる労働者並びに一般公衆のために、有害な放射線から人体を保護する適当な措置を確立するということを政府に強く要求されていることであります。ヨーロッパでユーラトムを作る場合の昨年の七月下旬のような準備委員会でも、労働者の諸君が八カ国から集まって、やはり障害防止ということについて非常に大きな関心を注いで、意見を出しておる。日本でもせっかく発足しようとするときに、一方障害の防止と、障害が起った場合における補償が、今のままで行けば健康保険か労災保険しかないので、これでは私は非常に片手落ちだと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/98
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099・齋藤憲三
○齋藤(憲)政府委員 ただいま局長からのお答えで申し上げました通り、各省間におきましては、たとえて申しますならば、エキス線に関する障害の防止に対する政令等はあると聞いておるのでございます。今日までも、各省間におきましては、それぞれ障害防止に対しましては、不徹底ながらこれを注意してやってきておるのであります。御承知の通り、この原子力問題は、わが国といたしましては、近々発生いたしました大問題でありまして、政府といたしましても、スタックが中心となりまして、今日までこの障害防止法案作成に対しましては、数年前から手を染めております。しかし先ほども申しました通り、何分にも放射能障害防止に関します法案を作成いたしますには、きわめて膨大な、しかも詳細な政令を必要といたします。十分努力はいたしましたけれども、今国会に提案する日にち等の関係から、残念ながら間に合わなかったので、引き続いてその完備をはかりまして、次の国会にはぜひともこれを提案いたしたいと考えておるわけであります。
なお、アメリカまたはその他の国で行われまする水爆実験に関しましては、これは極力禁止を要請するということは、国会の決議にもある通りでございますが、不幸にしてこれが行われます場合におきましては、この前の委員会において御説明申し上げました通り、その被害の調査というものに対しましても、十分政府としても調査をいたしまして、将来の放射能障害に対するところの資料を収集して、その障害防止に対して万全を期したい、さように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/99
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100・岡良一
○岡委員 もうお約火の時間も米ましたので何ですが、しかし実はわが党の原子力研究所法案に対する態度としても、やはり障害防止というものが伴わないということでは、いろいろと問題があり得ると思うのです。米国会ということでは、私は、政府としても非常に不熱心じゃないかと思います。すでに合同委員会で、専門家の中泉博士等をわずらわして、相当詳細な要綱はできておるわけであります。あれを成文化されればよいわけです。それをやはり今国会にお出しになるべきだと思うのでありますが、一つ御所信をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/100
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101・佐々木義武
○佐々木政府委員 この問題に関しましては、第何国かの委員会でもやはり問題になりまして、早急に政府として法案をまとめるべきだという議論も出たのでありますが、一方の論者から申しますと、やはりこの際もう少し多方面にわたる学界あるいは実際に使用されております人たちの御参加を願って、万全を期したらいいじゃないか、そのためには、従来の要綱のみで法案を急いでまとめ上げるという態度も一つの議論でありますが、反面から言いますと、もう少し慎重に考えるべきでなかろうかという議論もございます。そうして学術会議に、もう一ぺんこの御審議と申しますか、資料の収集なりその他を御依頼し、あるいは各省からもその後の状況いかんをよく聞いた上でやったらどうだという意見も出まして、学界の方に問い合わせますのは、資料の収集という面だけでは少し筋が違うのではなかろうかということで、さらに研究することにいたしました。実際にはまだ御依頼を申し上げておりませんけれども、いずれにいたしましても、この問題は非常に分野も広うございますし、ごくシヴィアな法律といたしますと、ただいま働いております人たちも、たとえばレントゲンを例にとると、何時間か働くと、それ以外は休まなければならない。それで今までの人員でいいかどうかということになりまして、予算的な問題も非常に困難になります。そういった点も兼ね合せまして、この際いろいろ考慮して、その範囲は、アイソトープと申しますか、本来の最近の原子炉のみに限るかどうかということ等、各般の問題がございまするから、そういう点も十分研究した上でやるべきでなかろうかという慎重論も一方に出まして、早くやることにこしたことはないが、準備の都合上、やはりもう少し慎重に研究すべきであるという議論になりましたので、本国会にはどうしても間に合いかねるような事務的な運びにもなりました。できますれば、その間しばらく慎重な検討の時間をいただきまして、米国会には間違いなく出す、ただその間、空費的にほうっておくということは問題でありますから、先ほど申し上げましたような経過措置をできるだけ講じまして、少しでも災害を少くしていくというような二段のかまえで進めていく以外にはなかろうという考えを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/101
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102・岡良一
○岡委員 最後に、この前の委員会では、障害防止法も本国会に出すという御言明があったはずだと思います。それが出ない、米国会だ。そこで万一にも放射能を持つ資材を取り扱う工場、研究室等において、これに基く障害を受けた場合に、しかも彼らがその結果として、先ほど申し上げましたような具体的な症状を現わしてきたというような場合、その安全に対する規制も国が怠っている、同時にまた、従ってそれに対する補償も、いわゆる労災あるいは国家公務員の災害補償というようなもので手当していくよりしようがないということになってくる。これは、国の非常に大きな過失に基いて、その公務員なり労務者が大きな損害を受けるということになるので、労働者としては、当然国に対して明確な補償を要求する権利があるということにもなってくる。これは安全措置としての経過的措置、また、明らかに放射能に基く障害と診断し得る症状が発生した場合における補償というような点について、この次の委員会までに、一応責任のある対策を——安全措置についてはいろいろ多岐にわたりまするが、身体の障害を受けた場合の補償等について御意見をおまとめになって、御報告を願いたいと思います。
以上で私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/102
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103・有田喜一
○有田委員長 他に御質疑はありませんか。——他に御質疑がなければ、日本原子力研究所法案に対する質疑は、一応以上をもって終了いたしたいと思います。
本日はこの程度といたし、次会は明十四日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会し、日本原子力研究所法案について討論採決に入りたいと存じますから、さよう御了承をお願いいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X01319560313/103
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