1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年二月十八日(土曜日)
午前十時四十一分開議
出席委員
委員長 前尾繁三郎君
理事 石坂 繁君 理事 北澤 直吉君
理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君
理事 松本 七郎君
伊東 隆治君 大橋 忠一君
菊池 義郎君 並木 芳雄君
福田 篤泰君 渡邊 良夫君
森島 守人君 和田 博雄君
岡田 春夫君
出席政府委員
総理府事務官
(経済企画庁調
整部長) 小山 雄二君
外務政務次官 森下 國雄君
外務事務官
(大臣官房長) 島津 久大君
外務省参事官 法眼 晋作君
外務事務官
(アジア局長) 中川 融君
外務事務官
(経済局長) 湯川 盛夫君
外務事務官
(条約局長) 下田 武三君
外務事務官
(国際協力局
長) 河崎 一郎君
通商産業事務官
(重工業局長) 鈴木 義雄君
委員外の出席者
専 門 員 佐藤 敏人君
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本日の会議に付した案件
在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部
を改正する法律案(内閣提出第二八号)
外務公務員法の一部を改正する法律案(内閣提
出第三五号)
国際金融公社への加盟について承認を求めるの
件(条約第一号)
日本国とカンボディアとの間の友好条約の批准
について承認を求めるの件(条約第二号)
航空業務に関する日本国とフランスとの間の協
定の批准について承認を求めるの件(条約第三
号)
航空業務に関する日本国とインドとの間の協定
の締結について承認を求めるの件(条約第四
号)
航空業務に関する日本国とオーストラリア連邦
との間の協定の締結について承認を求めるの件
(条約第五号)
国際民間航空条約の改正に関する議定書(第四
十五条に関するもの)の批准について承認を求
めるの件(条約第六号)
国際民間航空条約の改正に関する議定書(第四
十八条等に関するもの)の批准について承認を
求めるの件(条約第七号)
国際情勢等に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/0
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001・前尾繁三郎
○前尾委員長 これより会議を開きます。
在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案外提案理由の説明を聴取いたしてあります各案件を一括議題といたします。質疑を許します。松本七郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/1
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002・松本七郎
○松本(七)委員 外務大臣に御出席を要求しておいたのですが、御病気で来られませんし、かわって高碕長官あるいは通産大臣にお願いしたのですけれども、急だったものですから、きょう御都合がつかないそうですので、大臣に対する御質問は先に留保いたしまして、御出席を待ってしたいと思います。
今度の在外公館の問題で、私どもが第一に感じますのは、兼轄の問題です。兼轄でもって十分な仕事ができるかどうか。また最近の中近東の世界における重要さから考えましても、兼轄でもってこれを扱うというふうなやり方で足りるものだろうか、こういう気がするわけです。そこでこの機会に少し最近の中近東における情勢を伺っておきたいと思うわけなのです。そういう点で通産大臣あるいは外務大臣、特に経済外交をしきりにこのごろ強調されております重光さんの御意見も少し伺っておきたいわけですが、本日はそれらは少し先に延ばして、それに関係する問題を少し伺っておきたいと思います。
第一に政務次官からでもどなたからでもけっこうでございますが、最近中近東をめぐる米英の相剋と申しますか米英関係というものは、相当複雑なものがあるのではないかと私は思います。結局中近東をめぐるところの米英の争いというものは、石油資源の獲得、それからもう一つは戦略基地という点から、特にバグダード条約をめぐって両派の争いが激しくなるのではないか。アメリカの行き方というものは、イギリスの勢力をここから何とかして駆逐して自分が進出しようという傾向が見られる。イギリスとしてはこれを食いとめて、従来の立場、地位というものをしゃにむに維持しようという底流が、この問題をいよいよ複雑にしているのではないかと考えられるのですが、それの見通しをどういうふうに日本の政府が見ておられるか、この点をまず第一にお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/2
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003・法眼晋作
○法眼政府委員 それではお答えいたします。中近東の状況につきましては、基本的に一番大きい問題は、何と申しましても御承知の通りイスラエルとこれを不倶戴天の敵とするアラブ諸国の相剋であります。しかしながら日本といたしましてはいずれも友好国であるし、そういった観点から公平にこれに接しなければならないということは申すまでもないのでございます。それでこれに対する御質問の米英その他の大国の措置でございますが、先般のアイゼンハワーとイーデンの会談におきましても、この点については相当話し合いが行われたというふうに私は承知いたしております。そして結局のところは一九五〇年に発効されましたる政策に従いまして、イスラエルにもアラブ陣営に対しても同じような取扱いをするというふうに話し合いが進んだものと私は了解いたしておるのであります。お話の石油をめぐる大国の角逐につきましては、これは何分にも他国のことでもあり、関心を持っておりますけれども、的確にその成り行きをそんたくすることは困難であります。しかしながらこれは世界全体にわたる重要な問題でありますので、われわれとしては常にこれに注意を払っている次第でありますけれども、今この石油利権がどうであるとか、どういうふうな角逐があるとか、あるいはアメリカがイギリスを追い出すとか、そういったことについては簡単に結論的に申すことはむずかしい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/3
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004・松本七郎
○松本(七)委員 今イスラエルとアラブの問題が出ましたが、聞くところによると、これは昨日参議院でも問題になったかと思いますが、何かイスラエルから武器の購入を日本政府に申し入れてきたということを聞きますが、このいきさつはどういうふうなことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/4
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005・法眼晋作
○法眼政府委員 これは巷間いろいろ伝えられておりますけれども、兵器買付につきましては、イスラエル政府から日本に対してこれを申し入れてきた事実はございません。ただイスラエル人二名が日本に参って通商産業省に来たり、一部メーカーに照会方を依頼したということは承知いたしております。しかしながら一部新聞紙が報道いたしました航空機など三千万ドルに達する完成兵器の買付を申し入れたという事実はございません。従いまして日本政府といたしましては、こういった国々に武器を輸出するということは、現在少しも考慮いたしていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/5
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006・松本七郎
○松本(七)委員 何か通産省に対してお話があったというふうに聞いておったのですが、きょうの新聞ではアメリカ方面でも、イスラエルが日本に武器購入を申し入れる可能性は十分あるというふうに報道しているのですが、昨日はそういう事実はなかったということですが、今後特にあそこでイスラエル、アラブが対立しているときに武器を売るということは、よほど慎重に考えなければならないと思うのですが、今後の方針はどうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/6
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007・法眼晋作
○法眼政府委員 メーカーその他に対しまして個人がいろいろな観点からアプローチをしてくるということは、これは事実の問題として避けられないところでございます。しかしながら先ほど申し上げました通り完成兵器を送るというようなことは、政府として決して考えているわけではございませんから、この点はここで申し上げることができると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/7
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008・松本七郎
○松本(七)委員 それでは中近東の政治情勢が微妙な今日、日本としての中近東に対する経済政策がどのように確立をされているか、特に昨年の貿易実績、それを輸出入関係を中心に御報告願いたい。
それから昨今のイスラエルとアラブの紛争、バグダード条約加盟国と中立諸国との対立、こういう情勢が日本の貿易にどのように影響するかという点についてお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/8
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009・湯川盛夫
○湯川政府委員 貿易の実績でございますが、昨年一月から十一月までの数字によりますと、わが方の輸出はアフガニスタンに対しては四百七十万ドル、イランに対しては二千百五十万ドル、イラクに対しては千九百三十万ドル、バーレン諸島に対して百六十万ドル、ヨルダンに対して同じく百六十万ドル、アデンに対して八百三十万ドル、サウジ・アラビアに対して五百七十万ドル、イスラエルに対して百四十万ドル、クワイトに対して五百四十万ドル、シリアに対して六百三十万ドル、レバノンに対して百万ドル、オマールに対して四十万ドル、エジプトに対して千三百十万ドル、エチオピアに対して三百三十万ドル、こういうふうになっております。中近東諸国は戦後外国からの経済援助、それから石油収益、特にこれらの諸国のうちで石油国有化問題が一応落着したイラン等を含めまして非常に大きな石油収益で、大体年間二百数千万ドルと推定しておりますが、そういった経済援助と石油収益で非常に経済発展に努力している、国内産業の近代化ということに力を注いでおります。その結果その需要に従って最近わが国に対する経済協力、技術協力ということを要望する声が非常にございます。これらの国はいずれも低位開発国でありますので、わが国がその要望にこたえるためには、きわめて行き届いた計画と配慮によって全面的な技術協力を行うことが必要であると思っておりましてたとえば経済使節団の派遣あるいは政府、民間の技術者の派遣、先方技術研修生の受け入れといったようなことが重要と考えております。最近、まだこれは全面的に緒についたわけではございませんが、一、二の例をあげますと、最近レバノンで養蚕技術の技術者を派遣してほしいという希望がございましたので、これに対してわが方から農林省養蚕技師を派遣して、技術指導に当らしております。またヘジャースの鉄道復旧調査について調査団を派遣いたしております。そのほかイラン政府から港湾関係技師を派遣してもらいたいという希望があり、またレバノン政府からは漁業関係の提携といったような申し出がありますので、そういうものについても研究しております。現状は大体そういった状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/9
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010・松本七郎
○松本(七)委員 それと、最近中近東の政情がどういうふうに今後の日本の貿易に影響するかといったことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/10
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011・法眼晋作
○法眼政府委員 これは政情ということは将来の発展にもかかっておりまするし、先ほどの御質問のバグダード条約の問題でも、ございますけれども、関係国がいかようにこの条約を運営するかということにもかかっておる点が多いと思いますので、これは今から的確に予測することは私は困難だと思いますけれども、ごく大体の方向といたしましては、私はさように大きい影響はないものではなかろうか、こういうふうに一応現在のところは考えられる、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/11
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012・松本七郎
○松本(七)委員 エジプトのダム建設で各国がしきりに競争みたいな形で援助の手を差し伸べておるわけですが、日本は何らかの形で、援助とまではいかなくともこれに協力するというような努力をされるおつもりがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/12
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013・法眼晋作
○法眼政府委員 これは経済に関係してくる問題でありますので私は詳しいことは言う地位にもございませんけれども、アスワン・ダムの問題につきましては各国は相当確定的に援助の限度をきめておるわけであります。かようなところに新しく進出するということについては相当困難があるのではないか。なかんずく現地で働いている技師その他につきましては、イギリス系の者が非常に多いという実情でございます。私は参加できればけっこうだと思いますけれども、すでに各国の活動の分野がきまっておるという現状だということを強く頭に置いて考えなければならぬ、こういうふうに推察いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/13
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014・松本七郎
○松本(七)委員 先ほどの経済局長の御報告を聞いても、相当中近東の重要性は増してくると思いますが、そういうときに私は相当経済的専門家をやはり派遣しておく必要があると思うのですが、現在中近東諸国の在外公館にどの程度経済専門家がおりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/14
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015・島津久大
○島津政府委員 中近東関係の公館で通産省から大公使館に入っておる人員は二名ございます。場所はイランとトルコでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/15
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016・松本七郎
○松本(七)委員 今度のこの案によると、中近東諸国は設置が三公使館ですか、それが全部兼轄になっておるわけですが、兼轄にした理由はどういうところにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/16
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017・島津久大
○島津政府委員 今回の法律の改正で法律上だけで設置する個所が五カ所あるわけです。これが予算を伴いませんので実際上公館を開くことができないわけです。従いまして近隣の大公使館で兼任でやっております。主として財政的の原因であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/17
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018・松本七郎
○松本(七)委員 財政的なあれが主たる原因だけれども、その重要さは十分認められておると思うのですが、そうするとどこの国の公使がどこの公使館の兼轄をするかということを具体的に御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/18
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019・島津久大
○島津政府委員 現状を申しますと、エジプトの大使館がサウジ・アラビア、シリア、エチオピアを兼任いたしております。シリア、エチオピアにつきましては代理公使を派遣いたしております。サウジ・アラビアは予算の関係で常駐の人を置くことは困難でございます。それからスダンもエジプトの兼任でございます。ヨルダンはイラクの兼任でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/19
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020・松本七郎
○松本(七)委員 そういった名ばかりの公使館といいますか、そういうものを設置するよりも、むしろ総領事館でも置いて有能な、活動的な館員でもって仕事をやった方がいいではないかという気がしますがどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/20
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021・島津久大
○島津政府委員 お説の通り財政が許しますれば実員を置きまして仕事をさしたいわけでございます。この点は現状では漸進的にいくほかない実情でございます。しかし、もちろんこの地域の重要性は私ども十分承知いたしております。今後この形式上の兼轄はできるだけ改めていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/21
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022・松本七郎
○松本(七)委員 それから在勤俸にでこぼこはございませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/22
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023・島津久大
○島津政府委員 在勤俸のでこぼこは、実は随時各所で生じておると考えておるのでございます。しかし在勤俸をきめますには、いろいろな要素がございまして、今日のような法律で確定されておる次第でございます。これを改正いたしますには、またいろいろ具体的な資料をとりまして決定する必要があるわけでございまして、多少のでこぼこは現在あると思いますが、すぐこれに手をつけるというところまではまだ研究が進んでおりません。しかし手続的には外務省に人事審議会がございまして、そこで随時在外公館から資料を集めまして研究を続けておる状態で、ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/23
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024・松本七郎
○松本(七)委員 それから、これはこの前の国会のときもたしかこの問題と関連して附帯決議までつけたと思うのですが、大使館と公使館を設置する場合の実質上の差異をどこに求めるかという点です。ただ大国、小国ということだけによる区別だったら、何か相手国に対して差別的な待遇をしているような感じを与えるという問題をいつも出されるのですが、この大使館と公使館との質実的な違いを一体どこに求める方針ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/24
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025・島津久大
○島津政府委員 前回にもどなたかから御質問がございまして、お答えをいたしたと思いますが、大使館と公使館との本質的な差異はないわけでございまして、しかも近来は大使館の方がむしろ多いくらいな傾向になってきております。これを大使館にするか公使館にするかという具体的な話し合いになりますと、これはやはり相手国との話し合いが第一でございまして、お互いに大使を交換しようということになれば大使館になるわけでございます。そういう話し合いが多いわけでございます。しかし国によりましては、習慣上大使を出さないで、公使だけを交換しておるというような国もあるわけでございます。それからまた仕事の分量あるいは性質によりまして、まず公使で交際を始めようというような国もあるわけでございますが、別に本質的な基準はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/25
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026・松本七郎
○松本(七)委員 これはやはり前国会で厳重に警告を発して、附帯決議までしたわけですが、老朽大公使をところてん式に任命するというような弊が強いということは、この委員会でもみな口をそろえて言ったわけですが、その後どれだけそういう趣旨を体して外務省は実行しておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/26
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027・森下國雄
○森下政府委員 老朽大公使の任命はやっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/27
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028・松本七郎
○松本(七)委員 まだほかにいろいろありますが、大臣の御出席のときに譲りたいと思います。
最後に第二回のアジア・アフリカ会議が延期になったということでございますが、その理由はどういうところにあるのでしょうか、何か内部的な微妙な関係でもあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/28
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029・下田武三
○下田政府委員 アジア・アフリカ会議というのは、必ずしも毎年開くということで始めたわけではないのでございますが、第一回を開きましたあとに、いろいろ主としてコロンボ関係国がスポンサーになっておりますが、そういう国で相談しまして、別に取り立てて至急審議する議題もないし、続けざまに本年も開く必要はないのではないかという考え方が関係国に強いために、ただいまのところは本年は開かないということになっておるようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/29
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030・大橋忠一
○大橋(忠)委員 ちょっと関連して質問さして下さい。私は昔でありましたが外務省におって感じたことは、むやみに在外公館を置いても、果してその経費に値するだけの利益がもたらされるかどうかということについて、常に自分がそれをやりつつ考えておったのであります。ところが今度盛んに在外公館の網が拡張されるようになりました。その主たる理由は、経済的の理由だろうと思うのです。つまり日本の対外貿易を促進する、経済提携を促進するという意味だろうと思いますが、ドイツあたりの話を聞いてみますと、外交官を外へ出す場合に、その経済的の知識経験について、たとえば通産省の方に相当期間置いて、練習をさせるとか訓練させるとか、ただ単に外交官としてのエチケットばかりではなく、通商経済上の実務について、相当インテンシヴな訓練をした上に出す。こういうことを聞いておりますが、今外務省では海外に出す外交官、領事館員の通商経済上における実地の訓練は、どの程度にどういう方法でやっておられるのかということを一つお伺いしたい。
第二には、われわれが領事をやっておって、他国の領事と比較してひけ目を感じたことは、英国などにおいては御承知の通り、コンシュラーイン・ヴォイスあるいはシップス・クリアランスの仕事を領事館でやっておる。これは船が外国の港を出て日本の港に入る場合に、いろいろな国内的な法律制限があるがために、それにあらかじめ抵触するかどうかを調べた上に、安心して日本の港に着くようにするのがシップス・クリアランスであります。コンシュラー・インヴォイスは、やはり外国から品物が日本に来る場合に、あらかじめ向うの港で、そのものが安全に日本に輸入され得るかどうかということについて、万全の措置をとるための制度であろうと思うのであります。われわれは当時コンシュラー・インヴォイスとシップス・クリアランスの制度をとれということを主張したことがあるのでありますが、ついに実現ができなかったのであります。これによって在外公館でも収入を得ると同時に、大体日本に来るインポートの実情もわかって、つまり現地における経済状態を知る上においても役立つ、こういうような点は今外務当局においてどういうふうな見解をとっておられるのか、一つこの機会においてお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/30
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031・湯川盛夫
○湯川政府委員 シップス・クリアランスとかコンシュラー・インヴォイスにつきましては、それをやることによってお話の通りの利益があるわけでございますが、ただそういうことをやることによって、関係業者としてはそれだけ手続が煩瑣になるわけでございます。そこで大体最近の各国の傾向から言いますと、貿易手続をなるべく簡単にするという貿易自由化の傾向にありまして、どこの国でもそういうことをだんだん減らしていくという傾向にございますので、日本としてもその大きな傾向に沿って、ただいまお話のような手続をやらないでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/31
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032・大橋忠一
○大橋(忠)委員 第一の経済問題は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/32
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033・島津久大
○島津政府委員 外務省員に経済的の訓練をどういうふうに与えているかという御質問でございますが、現在通産省と外務省の間には相当大幅な人事交流をやっております。通産省から三十四名外務省に入っております。うち二十二名が在外勤務をいたしております。外務省から通産省に出向しておりますのが——正確な数はただいま持ち合せておりませんが、大体同じ程度の人数が通産省の本省に行っております。課長及び事務官ないし局長までもおりますが、出先においては通産省から出向してきた参事官あるいは書記官のもとに、若い外務省員をつけまして、一緒に仕事をやらしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/33
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034・大橋忠一
○大橋(忠)委員 私は、この経済的な訓練は一番重要な問題だろうと思いますから、さらに将来研究されて、外国に出て十分経済的の活動のできるようにされて、単なるツーリスト・ビューローの出店みたいにならぬように、実際に領事館の存存によって、それだけ日本の通商経済が進んでいくという効果を上げられることを希望いたしまして、質問を終ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/34
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035・前尾繁三郎
○前尾委員長 この際原水爆実験禁止の問題並びに技術協定の問題につきまして、福田篤泰君及び穗積七郎君より緊急に質疑したいとの申し入れがありますので、これを許します。福田篤泰君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/35
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036・福田篤泰
○福田(篤)委員 先般衆議院の本会議におきまして、全会一致で原水爆実験禁止要望決議案が可決せられましたことは御承知の通りでございます。これは全国民の熱望でありますので、この決議に対しまして、われわれはただ決議のしっぱなしでほっておくことは、国民に対してきわめて怠慢だろうと思いまから、具体的に外務省に対しましてその後の処置について御質問いたしたいと思います。
まずこの決議案をどのようにして関係各国に伝達されたか、具体的にお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/36
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037・森下國雄
○森下政府委員 先般御決議になりましたこの問題は、それぞれ関係出先公館長に電報の上で、相手国政府及び国連事務総長に伝達するようにいたしました。そうしてその伝達に当っては、決議に表明せられた日本国民の要望実現に真剣なる考慮を払われんことを希望する旨を申し入れて、それぞれ関係国に伝達するよう訓令をいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/37
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038・福田篤泰
○福田(篤)委員 米英とは友好国でありますが、ソ連とはまだ国交の回復を見ないのであります。ソ連に対してはどういう経路で申し入れになりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/38
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039・森下國雄
○森下政府委員 ソ連に対しましては、国連における彼我代表を通ずる方法が最も自然かと思いまして、それを先に加瀬大使に訓令して、ソ連代表ソボレフ大使に本件の趣旨を伝達せしめました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/39
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040・福田篤泰
○福田(篤)委員 きょうの新聞報道によりますと、十七日の英国の国防白書が発表されて、不幸にもこの白書の中ではっきりうたっていることは、一九五六年度において豪州の二地点で二回の原爆実験を行うということをはっきり表明している。このように、私どもの希望にもかかわらず、次々に具体的に裏切られている状況でありますが、各国は一体どういう反響をもってこのわが国の申し入れを受けたか、反響を具体的にお伺いしたいと思います。特にソ連に対しましては、事前通告並びに被害予防、この点について何らかの意思表示があったか、これについて御回答いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/40
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041・森下國雄
○森下政府委員 米国、英国、それからソ連、それぞれのところからの反響を申し上げます。
アメリカにおきましては、井口大使より申し出を受けたマーフィー国務次官代理は、世界情勢の現状においてなかなか困難な問題であるけれども、井口大使がアメリカを離れる直前のせっかくの申し出でもあるので、慎重検討いたしたいと答えたとの報告を受け取っております。さらにまた、国務省事務当局は、在京米大使よりの報告により、日本側の事情及び本決議の意図するところは十分了解している、と大使館員に話したとの報告も参っております。
またイギリスからは、西大使よりロイド外務大臣に対し、日本の両院の決議文に、水爆の実験禁止は、原水爆の被害を実験せる全日本国民の熱望を反映するものであるから、イギリス政府において深甚なる考慮を加えられたい旨の希望を表明せる公文を提出しビキニの被害についても説明いたしました。これに対してロイド外務大臣より、日本国民の要望はよく承知いたしましたという旨の回答が来ております。
さらにソ連からは、加瀬大使よりソボレフ大使に決議文を手交して、本国政府に至急伝達方を依頼するとともに、ソ連政府においてこれを実現するため万全の努力を払われたい旨を申し入れたところ、ソボレフ大使は、決議文を熟読の後、直ちにモスクワに通報すべしと答えた上、さらに、原水爆実験禁止は、従来ソ連が熱心に主張していることは御承知の通りで、貴国国会決議に衷心共鳴する。従って今日の申し出はソ連政府が欣然歓迎すること疑いのないところであると述べたとのことであります。さらに加瀬大使は、放射能に対しわが国民が特に敏感なことを指摘し、将来もしソ連が原水爆実験を行うがごとき際は、少くとも十分なる予防措置をとるとともに、前広に予告することを希望すると述べ、右は日ソの善隣関係樹立を提唱する貴国政府として、当然とるべき常識的措置にすぎないと説いたところ、ソボレフ大使は、この点も日本側の意に沿うよう本国政府に進言しようと約束をしてきたとのことであります。さらにまた国連におきしましては、加瀬大使よりコルチィエ国連事務次長——ちょうどそのときは事務総長が不在でございましたので、かわってこれを次長に手交し善処を求めたところ、コルティニ氏は一読の上、けっこうなことで、これは日本が放射能問題に関し当然最も敏感なことを示すものであるが、同時に原子力平和利用についても、他国に比べ、すこぶる重大な関心を寄せている事実とを示唆するものである、また国連の行うべき事業を日本が率先して提唱するものである、日本が国連・加盟国でないことが国際常識に全く反することを立証すると述べ、本決議文は事務局長帰来の上さっそく供覧すると語ったという報告が参っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/41
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042・福田篤泰
○福田(篤)委員 御答弁によりまして 一応事務的な通告が終り、また一応の反響の様子がわかったのでありますが、私はこのままほうっておきましては、やはりいつまでたっても事態の改善はない。結局は国際協定が結ばれなければ、米ソもなかなかやめないという見通しをわれわれは持つのでありますが、この点についてもちろん非加盟国ではありますが、日本としては代表をニューヨークに送っております。また来月から各地におきまして、原子力についてのいろいろな学術会議その他の国際会議が続々と開かれる。これについて外務省はいかなる具体的な積極的な処置と方法をもってこの決議の実現に向って働く御意思があるか、御用意があるか、具体的にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/42
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043・森下國雄
○森下政府委員 それぞれ努力をいたしております。詳細は政府委員をして答弁いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/43
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044・下田武三
○下田政府委員 原水爆実験の禁止の実現、また禁止の実現に至るまでの実験の中止方につきましては、先ほど政務次官もお話の通り、わが国が世界で最もこれを主張するにふさわしい地位にあるところでございまして、従来とも各国に対し、個別的にまた国連の国際的の舞台におきまして、また国際赤十字等の会議に、人道的の経路を通じまして、あらゆる努力をいたしておりますが、今後とも今回の決議の趣旨に沿いましてあらゆる機会にあらゆる手段を用いまして、日本の国民の熱望を実現するということに、満身の努力をささげるのが、私ども外務省員としての務めだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/44
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045・福田篤泰
○福田(篤)委員 そうするといやしくも日本から国際会議に出るような人について、あらゆる街度から出発前に外務省に来ましていろいろ意見の調整、あるいはその他のお打ち合せをしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/45
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046・下田武三
○下田政府委員 実はあまり世間には出ませんのですが非常な努力もいたしておりますし、赤十字関係の会議はたびたび開かれておりますが、常にわが方の主張を書きものにいたして出しております。最近は原爆に限りませんけれども、日本のヒューマニズム、日本の人道的精神という、これまた世界に出たことのない論文でありますが、それを書きまして赤十字のインターナショナルの発行いたしております国際レビューがございますが、それに掲載すべく原稿を送りましたところ、これは日本の昔からの人道的精神ということは世界に紹介されておらなかった、まことにけっこうな論文であるということで、これを国際旅十字の機関レビューに掲載することになりました。こういう日本の人道主義精神というものが、実は日本の原水爆問題に対する基本的精神だと思うのでありますが、そういう直接の問題、またその根源にさかのぼる主張につきましても、地道にあらゆる努力をいたしつつあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/46
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047・福田篤泰
○福田(篤)委員 今後もあらゆる国際機関を通じまして、外務省が各文化団体その他との綿密な連絡のもとに努力されんことを強く要望いたしておきます。
最後に正式の各国の回答があり次第、本委員会を通じて全国民に関係各国の回答を発表せられんことを要求いたしまして私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/47
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048・松本七郎
○松本(七)委員 今後とも政府が努力をされる御決意を披瀝されたので、この点大いに期待いたしますけれども、それについて基本的な考え方をこの際少し伺っておきたいと思います。
それは完全に原子爆弾の実験を禁止するためには、やはり原子爆弾を使用しないということにならないと、実験だけをやめろといっても、これはなかなかできないと思います。そこで原子爆弾そのものの使用を絶対にしないということになれば実験する必要はないのですから、根本の根を断ってしまうという努力を今後日本政府はすべきだと私は思う。それについての大事な考え方が一つあると思う。それは御承知のように本年のアイゼンハワーの年頭の一般教書においてもはっきり書いておりますように、原子のおそるべき力は、自由社会及び平和の保護者として役立つであろう、こういうことを言っているのですね。この考え方を日本政府は支持されるのかされないのか、そこをまず伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/48
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049・森下國雄
○森下政府委員 御承知のように原子力の平和利用については、わが国は世界に率先してこれを支持しなければならぬ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/49
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050・松本七郎
○松本(七)委員 私が聞いておるのは平和利用ではありません。アイゼンハワーの言っておるのは、平和利用はもちろんしなければならぬけれども、この平和を維持するために、自由社会を守るためには原子爆弾の力がやはり今は平和を維持する一つの要素になっておる、こういう考えなんです。この考え方を日本政府は支持するかしないかと聞いておるのです。原子爆弾のことを聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/50
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051・下田武三
○下田政府委員 これは法律問題と現実問題との差ということがこの間からも問題になっております。こういうことだろうと思うのであります。まことに卑近な例でございますけれども、売春禁止ということがございます。売春は禁止すべきであるという立法論としての主張をいたします。しかし一方そういう主張をしたから売春をした者をすぐひっくくることができるかどうかということは別問題であります。ただ売春を禁止すべしという主張をしただけで、売春をした者を現実にひっくくることはできません。なぜかというと、売春禁止の実定法ができていないからであります。それと同じ関係にあるのが、私は原水爆問題だと思うのであります。日本は最も原水爆の使用禁止を熱心に主張すべき立場にございますけれども、しかし日本がいかに強く主張したからといいまして、それで現実に禁止できるかどうかというと、これはできません。何となれば、これは国際的に原水爆使用禁止の実定法ができていないからであります。そこで実定法を早く制定しなければならぬというのが日本の主張であるわけであります。ただいまの問題はアイゼンハワーの、平和のためには原水爆の使用はやむを得ないのだ、原水爆こそ平和確保の武器であるという主張に日本政府は共鳴するかどうかということでありますが、これは私はそういう考えが今世界の二大勢力のうちの一国の、世界的に最も力を持った国の元首が、そういうことを言うことを必要であると認めておられるという現実が悲しむべきことであって、これはしかしそう認めておられることを批評することはできません。ただそういうことを言われなければならぬという世界の現実の情勢、つまりこれを禁止する実定国際法ができていないというのが悲しむべきことである。この悲しむべき事態を打破するということが、われわれの努力目標でなければならぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/51
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052・松本七郎
○松本(七)委員 悲しむべきことであるから、それを打破しようということをしたければならぬのが日本政府の任務だとすれば……。
〔「できやしたい、やってごらん」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/52
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053・前尾繁三郎
○前尾委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/53
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054・松本七郎
○松本(七)委員 そういうことを言うからいけない。賛成か反対かと言っているのだよ。その努力を具体均にどういうふうにされるか、するかということが、今日本では大事なことになっているのです。すべての政策がそういうことに関連してきているわけだ。それだからこのアイゼンハワーの考え方を支持するかどうかということを言っているわけです。それは現実が、そういうふうにアイゼンハワーがこういうことを言わなければならぬ事態が悲しむべきことだといって澄ましておれない。だからそういうことを言わなくて済むように、日本としてはどういう努力をされるつもりかということを聞いている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/54
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055・下田武三
○下田政府委員 法律問題でございませんので、私からお答えするのは不適当かと思うのでありますが、私といたしましては先ほどから繰り返しておりますように、原水爆使用禁止の実現を一日もすみやかならしめるために、日本の外務当局者の努力を向けるべきでありまして、ただそれが現実に実現していない現在において、ある国の首脳者がどういうことを言う、ということは、これは日本政府としては批評すべきことではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/55
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056・松本七郎
○松本(七)委員 法律論でないから局長は答弁できないと言われるなら、私は政府の考え方を聞いているのだから、政務次官からでもだれからでもいいから、政治論としての答弁を要求します。批判をする限りでないと言われるけれども、批判をして初めて日本の立場がどういうふうな立場をとるべきかが明らかになってくるわけです。
〔発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/56
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057・前尾繁三郎
○前尾委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/57
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058・松本七郎
○松本(七)委員 政務次官、もう少し待って下さい。具体的に申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/58
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059・前尾繁三郎
○前尾委員長 緊急質問でそんなことを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/59
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060・松本七郎
○松本(七)委員 緊急質問でも答弁が悪いからそういうことになる。原子力の問題でも、日本政府の考え方を具体的に少し聞きますが、原子力の危険を完全になくするためには国際管理が先だと考えるか、それとも原子爆弾の使用禁止の協定を作ることの方が根本的に大事であるか、どっちを優先とすべきだと日本政府は考えられるか、政治論です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/60
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061・森下國雄
○森下政府委員 御承知のように、今日の国際間の問題をより平和に導くことはだれしも望んで、われわれの常に情熱を傾けておるところでございます。しかしながら現実のこうした問題に取り組んでいくのがやはり政治でございますので、私どもはこういう問題に対して十分研究をしなければならぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/61
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062・松本七郎
○松本(七)委員 研究するということを聞いているのではない。現在どう考えておられるかということを聞いているのです。
それからもう一つついでに具体的な問題で、アイゼンハワーの言っている空中査察、この考え方を支持されるか、されないか。
〔「そんなことはよそのことだよ」「よそのことじゃない、われわれに関係がある。原爆の禁止を真剣に考えていないからそんなことを言うのだ」と呼び、その他発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/62
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063・前尾繁三郎
○前尾委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/63
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064・森下國雄
○森下政府委員 ただいま申し述べたような私どもの情熱ではございまするが、他国の元首の言説をここで批判することは避けたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/64
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065・岡田春夫
○岡田委員 ちょっと関連ですから簡単に伺いますが、先ほどから空中査察の問題が出た。そういう問題が出ているというのは、原爆の実験、使用、これに関連がないことではないのです。なぜかというと、あなたも御存じのように、去年ジュネーヴで四巨頭会談が行われたときに、ソ同盟側からは原子爆弾の生産禁止、実験、使用禁止、この提案が行われたときに、アメリカの方からは、それよりもまず軍縮をやろうじゃないか、その軍縮の具体的な案としては、空中査察の問題を考えていこうじゃないか、こういうような形で、結果において原爆実験、使用の禁止という問題がうやむやになって終っているわけです。そういう点から関連して、空中査察の問題が全然関連のないこととして松木君から言われたのではなくて、そういう不可分の問題としてこれは考えていかなければならない。
そこで私のお伺いしたい点は、原爆の生産、実験、使用の禁止という問題は、日本の国民にとって農も重大な問題である。それだけに国会においても再三にわたって議決をしている。またこれについては日本の国民は積極的に言うべき権利も持っている。そういう権利を持っているだけに、単に各関係国に対して伝達をして、これはこういう状態でございますという程度で黙っているべき問題ではない。もっと具体的にこれを進めていくことを考えなければならない。それが政府の任務でなければならないとわれわれは考えている。その政府の任務を、ただ申し入れまして、その結果こうでございますという程度で、事実国際関係において禁止できないということになった場合においては、一体日本の国民の要求をどういう形で具体的にあなた方は進めていかれる考えであるか。単に関係各国並びに国連に申し入れしたというだけで済ますのではなくて、これを具体的に禁止するためにはどうしたらよいのだ、この点を積極的に伺いたいということをわれわれはさっきから伺っているわけです。この点が第一点です。
第二の点は……(「さっき答弁したじゃないか」と呼ぶ者あり)さっきの答弁じゃ不十分だから伺っているわけです。第二の点は、アイゼンハワーにしても、もう去年から原子爆弾というものは、普通兵器の一部であるということまで言っている。その具体的な現われとしては、NATOでは原子爆弾を中心にしたところのいわゆる軍事体制というものを作りつつある。もはやアメリカの考え方としては、原子爆弾というものは普通兵器だと考えている。こういうようになってくると、日本の国民がいかに要求をしても、アメリカは簡単にこれを取りやめようというようなことは考えていないのじゃないか。それであるからこそ、先ほど松本七郎君が言ったように、アイゼンハワーのそういう教書に対して、日本の最高の機関である国会の決定した原子爆弾を使わないでくれということについて、日本の政府は一体これをどうするのだ、アイゼンハワーの教書に対してどういうように考えているのだ、こういう点を聞いているわけです。これが第二点。
第三点は、今年だいぶ前、春に、これは質疑応答があったのだが、すでに日本の政府からビキニの実験の場合においては、実験する場合においては事前にこれを通知してもらいたい、それの補償をやってもらいたいという申し入れがあった。これはこの前質疑応答のあった問題です。そうしてこれに対しても国会でも質疑応答が行われた。この申し入れを行なったということは、すでにアメリカがこれを使うということを前提にしているからこそ、あなた方はこういう申し入れをしている。ところが政府がそういう申し入れをしたにもかかわらず、そのあとで国会がそういう実験をやめてもらいたいという決定をして政府がそれを申し入れていかなければならなくなった。そうすると、日本の政府、特に外務省の態度というものは、あまりにもだらしないじゃないか。実験をやられるのだということを予定して、実験の場合には事前に知らせてもらいたいと言いながら、そのあとになってから実験はやめてもらいたい、こんな交渉がありますか。手のうちをちゃんと見せておいて、実験をやる場合は知らせて下さい、しかし実験はやめて下さい、こんな外交があるとすれば、これはナンセンスです。これだから日本の外交は話にならないとわれわれ言わざるを得ない。この二つの矛盾した事実をよく平然としておやりになったものだと私は考えている。この点に対する外務省当局、今政務次官しかおられませんけれども、政務次官はこの二つの事実を、特にあとの申し入れをするのに対してどんなようなお感じでおやりになったか。こういう点についても伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/65
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066・下田武三
○下田政府委員 第一点につきましては、先ほど福田委員の御質問に対して、政務次官及び私から詳細お答えいたしました通り、今後とも日本政府といたしましてはあらゆる機会をとらえ、あらゆる方法によって原爆の禁止並びに実験中止の主張を貫徹すべく努力するわけでございます。
第二点のアイゼンハワーの言説に関連しまして、原爆をほんとうに使うのだという気持でおる、その態度に対してどうかという点でございますが、これは私公平に見まして、アメリカ政府のいろいろな当路者の言説あるいは国連その他における主張を通じて検討いたしますと、アメリカは自分から使うとは決して言っていないのです。防御の最後の手段として使うということを言っておるのです。アメリカは歴史上自分から先に手を振り上げて他国を攻撃したことのない国でございますが、他方の陣営に対する猜疑心と申しますか、とにかく第二次大戦後の侵略といいますか、戦時中の領土不拡大原則にも反しまして、日本の七倍半もあるような領域を方々の国からとっておる国もあるわけでありまして、そういうふうに現に侵略が行われておるとしますと、それに対抗する最後のよりどころは原水爆しかないという全くやむにやまれないせっぱ詰まった防御的な気持から、原爆の使用が現存直ちに禁止できないという気持があるのではないか。そういうふうに見るのが私は公平だと思うのであります。そういたしますと、そういう国際的の等観情勢を度外視して、理論的にこれを即時禁止するという措置に突進することが、国際平和の維持に現実に寄与するかどうかという点は、これはやはり世界的の指導者がそういう客観情勢を分析しまして判断したところの言説というものは、私は尊重いたさなければならぬと思うのでございます。もとより日本自身の強い主張は別問題でありますが、客観的の事実としてその言説というものは十分に尊重していかなければならない問題ではないかと思います。
第三の点でございますが、一方で先般米国に対して事前に早く通知してもらいたい、また被害の防止に努力してもらいたい、万一被害が起ったら十分な補償をしてもらいたいというなまぬるい要求をしておきながら、今次国会の決議があると、たもまちやめてくれという申し入れをするのは、首尾一貫しないではないかという点をおつきになりました。これは先ほど申し上げました通り、今次国会の決議に基きまして、申し入れば日本の一貫した立法論でございます。国際間に早く原爆禁止の立法をせよという立法論でございます。これは禁止が実現するまではいつまでも続けなければならない立法論でございます。しかし他方ビキニでもう一回実験をするというのは、これは先ほど申しましたあとの現実の国際法の問題でございます。まだ売春禁止法が成立していないときに、売春する者を押えてお前売春をやるなということができないという問題と同じであります。まだ立法ができていないとすれば、日本としては日本の利益を守るために、当然の措置として日本の船舶、人命に被害を及ぼさないということに主力を置くべきでありましてそのための申し入れをした次第であります。立法論と現実の面との二つの措置をどうしてもとらなければならない、そう思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/66
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067・前尾繁三郎
○前尾委員長 岡田君、簡単に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/67
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068・岡田春夫
○岡田委員 今の下田条約局長の答弁というのは——私は特に政務次官に御答弁をわずらわしたのですが、政務次官はおやりにならないで条約局長がおやりになった。その限りにおいて外務省当局の意見と私は解釈しますが、その点については非常に重大な問題を言っている。たとえばここで二点だけ私は取り上げますが、第一点は世界の現状として自分の領土を七倍半にふやした国がある。これは一体どこの国ですか。そんな国がどこにありますか。自分の領土、私はあなたの意見の基礎になっていることを想像して言います。たとえばソ同盟、ソ同盟は七倍半にふえていますか。こういうような言い方をあなたがされてデマゴーグをやるというのは私は承知できない。そういうような領土を七倍半にしているような国があるときに、こういうようなことはやむを得ないという根拠に立って日本の外務省が政策を立てておられるとするならば、これは重大な問題です。この点についてはっきりした釈明を伺いたいということが一点。
第二の点は、アメリカは原爆を相手の国が使った場合に初めて報復用として原爆を使うのだ、こういうようなことをあなたが言われている、これも私はデマゴーグだと思う。どうしてといえば、この間のダレスのせとぎわ政策をごらんなさい。せとぎわ政策のときに台湾海峡においてアメリカが最後の段階として原爆を使うというような通告をしようとしたときに、イギリスはこれをやらせなかった。あるいはインドシナ戦争において最後の段階において原爆を使うという決意を持っておったのに対してこれをやらなかった。そのときにインドシナの戦争において、ヴェトナムの国の方で原爆を使うというような予定を立てておったから、アメリカが原爆を使うというつもりがあったのですか。そうではないじゃありませんか。あれはヴェトナムのその戦争を終結するために原爆を使うのだと言ったのじゃないですか。朝鮮戦争のときにだってアメリカは原爆を使おうとしたじゃありませんか。こういう事実を見たって、単にアメリカが原爆に対する報復用として原爆を使うのじゃなくて、そういう小さな地域的な戦闘に籍口して原爆を使おうとしているのだ、これが事実なのだ。それだからこそ、せとぎわ政策がアメリカにおいて問題になっている。民主党の党内においてさえこれが問題になっている。イギリスの国内においてさえ問題になっている、こういうような事実があるじゃないか。あなたがことさらにこのような政策を弁護するような態度をとられるというのは、あなたは共和党の代弁者ではないはずなのだ、共和党の代弁者なら代弁者だとおっしゃいよ。アメリカの民主党の内部においてさえ、このせとぎわ政策に反対しているのだから、こういうようなデマ、コーダを日本の外務省として意識的に言われるのだとするならば、これはこの問題としてわれわれとしては徹底的に追及をしていかなければならないと思います。
前段の問題についても、速記録を見てあらためてまた私は伺って参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/68
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069・下田武三
○下田政府委員 第一点の領土の問題でございますが、岡田先生はソ同盟という名をお出しになりましたが、私が申しましたのは日本の領土の七倍半と申し上げましたので、ソ同盟の領土の七倍半ではないのであります。むろん私は国の名前をあげるのは好みませんけれども、ちょうどヒトラーが侵略の地歩を進めたときに、これに対応してエストニア、リトアニア、ラトビア等を併合しましたのを初めとしまして私戦時中久しく自分でモスクワにおりましたので、スターリンがオオカミをやっつけるにはよろしくオオカミのほら穴に行かなければいかぬといってあたかもベルリンに直進するかのごとき意向を示しておりながら、現実には南下してルーマニア、ポーランド、チェコ等をまず制圧して、それからベルリンに入ったわけでありますが、そのころモスクワのブルガリア公使等の涙を流した、祖国のなくなった状況も私みずから見ております。これはしかし政治的の考え方で、それはそれぞれの国が解放されたのだという見方もあると思います。しかし客観的に見ますと、直截に編入して自国領土にしたものと、そういう軍事的の手段によってコントロールをした、つまり陸軍大臣も自国人を持っていって陸軍大臣にするというようなやり方をしまして制圧した地域は、これは日本領土の七倍半に上っておるのであります。また日本といたしましても・他国から領土をもぎとられたことはないのでありますけれども、現在は歯舞、千島まで抑えられておる、それを返そうというのが日ソ交渉の非常な題目になっておるわけであります。そういう客観的の事実を申し上げただけでございます。
第二の点としましては、せとぎわ政策をおあげになりましたが、先般外務大臣から御説明しました通り、ダレスは単に過去の事実を述べたにすぎない、つまり実際には戦争になる危険があったということを説明したにすぎない、何もアメリカの方から戦争に持っていこうという政策の表現ではなくして、アメリカが平和を保とうとする努力の過程において、もうこれ以上進むと戦争になるかもしれないという危ないせとぎわが三回あったということを言っておるわけであります。しかしそういうことをあまりにむき出しに言うことが、適当であるかどうかということにつきましては、世界特にアメリカにおきましても批判があるわけでありますが、これは私どもとしては、批判の限りではないのであります。しかしとにかく先ほどの空中査察の問題につきましても、これはやはり非常に懐疑心と申しますか、警戒心で、向うに攻撃の態勢があるかどうかということを突きとめに空中査察をしたいわけなのでありまして、こちらから攻めるために空中査察をしようという考えはない。すべて防御的の見地から出ておるという点は、これは私は十分認めなければならないのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/69
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070・森島守人
○森島委員 先ほど政務次官から原爆の実験禁止に関する要望という国会の決議を伝達してそれに対する各国の反響を御報告いただきましたが、国会の決議と申しますと、参議院と衆議院と両方御伝達になったのですか、この点、念のために伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/70
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071・森下國雄
○森下政府委員 もちろん両院の決議でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/71
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072・森島守人
○森島委員 私はここに原文を持っていないのですが、参議院と衆議院の決議はその内容において異なっておったと私は記憶しております。衆議院においては、国際取りきめによって実験の禁止を実行せよというふうな趣旨だったと記憶しております。それから参議院の方は、国際的取りきめの成立のみならず、それが成立前においても実験の禁止をしろという趣旨であったと私は記憶しておりますが、その点はどういうふうにお取り扱いになったのか、外務省の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/72
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073・中川融
○中川(融)政府委員 今御指摘になられましたように、正確な文字は私も記憶しておりませんが、内容について若干相違があるのでありまして、その相違のあるまま両方の決議を伝達いたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/73
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074・森島守人
○森島委員 内容においても若干相違があると言われますけれども、私は非常な大きな相違であると思う。片方は国際取りきめの成立を望むということならば、場合によっては相当の歳月が必要だ、しかし他方において参議院のごとく、実験の禁止を要望するとすれば、即時でもでき得る問題、非常に大きな相違があると私は思っておりますが、外務省はこれを伝達いたします上において、どっちに比重を置かれたか、この点を明確に御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/74
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075・中川融
○中川(融)政府委員 両院の決議を渡して、この趣旨で政府もぜひやっていきたいと思いまして、そのまま説明して、要請したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/75
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076・森島守人
○森島委員 そういうことは私は長い議論はいたしませんが、今政務次官からお話の各国の反響ということできわめてばく然と各国の態度を御説明になりましたが、実験の禁止と国際取りきめの点について、もっと明確に各国の態度を御説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/76
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077・下田武三
○下田政府委員 衆議院の決議と参議院の決議との大きな差は、衆議院の決議は日本の見解、主張を述べたあと、これを関係政府に伝達せよという趣旨の決議でございました。ですから理屈を申しますと、単に伝達をいたしましたと申し上げれば済むかもしれない。ところが参議院の方は、もっと具体的な内容がございます。そこで日本政府は両方の決議を関係国に伝達いたしまして、その際両院の決議に含まれておる日本の主張の実現の貫徹について、深甚なる考慮を要望したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/77
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078・前尾繁三郎
○前尾委員長 穗積七郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/78
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079・穗積七郎
○穗積委員 今日は大臣が見えたら、いろいろお話を伺いたいと思っていたのですが、御病気のために欠席ですから、私はただ一つ、一昨日の朝日新聞を通じて対外的に明らかになった日米間における技術協定の問題について、この際緊急に外務省を代表して政務次官からお答えをいただきたいのですが、最初にまず技術協定の今までの経過と内容について簡潔に報告をしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/79
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080・森下國雄
○森下政府委員 条約局長からお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/80
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081・下田武三
○下田政府委員 技術協定とおっしやいますのは、特許権や技術情報の交換に関する協定のことと存じますが、これは実は例のMSA協定締結時代から起っておる問題でございまして、MSA協定の交渉の際に、日本側といたしましては、艦船、飛行機等の完成した兵器を援助してもらうのもいいが、日本にも十分な工業力があるのだ、できるならブリュー・プリント、設計図をもらって日本自体で作りたい、そして日本の産業の稼働率を増し、労働者の雇用の機会を増進したいということを熱心に申しておったのであります。その主張はいれられまして、MSA協定の第四条に、どっちかの国から技術情報の交換の協定を結びたいという要請があったら、それの締結の交渉をするということになっておりましたので、その第四条に基きまして、一昨年来ずっと交渉して参りまして、大体昨年末に内容の実質は話がついたのでございますが、それを案文化いたしましてその案文化の作業が終了いたしましてその案文をワシントンに送付いたしまして、ただいま米国政府の最終的同意を待っておる段階であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/81
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082・穗積七郎
○穗積委員 それでは続いてお尋ねしますが、この協定はMSA協定に伴うアメリカから日本に貸与または譲渡された武器に関する技術に限るものか、一般の平和産業を含みます工業技術全般にわたる協定であるのか、その範囲を明らかにしていただきた。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/82
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083・下田武三
○下田政府委員 その範囲は工業技術全般にわたるものではございませんで、MSA協定がそうでございましたように、防衛を目的とする技術情報の交換ということに限定されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/83
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084・穗積七郎
○穗積委員 MSA協定第四条に法的な根源を置く協定でありますならば、当然そうだと思います。そこで今の防衛を目的とする技術協定の範囲でございますが、それは向うから貸与された武器だけではなく、日本国内における軍事的な産業の技術を含む意味でございますか。もしそうであるとするならば、防衛を目的とする工業の範囲は一体どこに置くのか。いわゆる平和産業も、これは同時に、その国が戦争体制に入りますれば、全部が防衛力の基礎となる工業であり、工業技術であります。たとえば極端なボーダー・ラインにあると思われる製鉄のごときも、平素の平和状態においては、その製鉄技術というものはむろんこれはレールを作るとか、あるいは工作機械を作るとかトラクターを作るための製鉄でございましょうが、それは他の面におきましては兵器を作る、あるいは高射砲を作る、鉄砲を作るという、そういう軍事的な目的にも同時に通ずるわけですね。その限界を最初に明確にしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/84
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085・下田武三
○下田政府委員 その具体的の限界は、協定実施の段階になりましてどういうものが入ってくるかによるわけでありまして、ただいまのところ的確には申し上げられませんが、しかしただいま仰せのように、平和産業と軍事産業の限界というものは、なかなか截然と線で切れるものではございません。ただスティールという、もとの原材料を作る産業までは入らないと私は思いますが、たとえばシップ、造船工業でありますとか、あるいは発動機工業というふうなものは、平和、軍事両面に役立つものと思うのでありますが、その辺までは入り得るのではないか、また日本側としてはその辺までも入れて防衛目的として得た技術情報を、日本では平和目的に使うことも可能であるようにした方が、日本の利益に合致するように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/85
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086・穗積七郎
○穗積委員 これは協定が正式には本委員会に上程されて、われわれの審議にかかってくると思う。そのときに本格的にはお尋ねしますが、大事な問題ですから事前に伺っておいて、できるならば今からでも修正をしてもらいたいと思うから、われわれは言っておるのです。修正どころかやめてもらってもいいと思うのです。そこで今の防衛産業の範囲でございますが、それはスライディングになっておりますか。固定的な列挙主義で不動なものにされるつもりか。情勢が変るとともにその範囲が変るような条約の仕組みになっておるかどうか、それを伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/86
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087・下田武三
○下田政府委員 列挙主義と申しますか、限定的にはなっておりませんで、きわめてばく然と、防衛目的のためにする技術情報の交換ということに相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/87
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088・穗積七郎
○穗積委員 そうなりますと、おそらくは後日細目協定によってそれを具体的にきめることになると思う。そうするとその範囲は、国会を通らないで、政府間の話し合いによっていつでも拡大できるという仕組みになっておるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/88
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089・下田武三
○下田政府委員 これはMSA協定のときもそうでございましたが、あらかじめ何と何というように限定することは、ほとんど不可能に近いわけでありまして、もし列挙しますと、数十あるいは数万のものを列挙しなくてはならないということに相なりますので、先ほど申し上げましたように限定的でなく、融通のきくようにした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/89
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090・穗積七郎
○穗積委員 これは非常に重要な内容を含みますから、後に国内の秘密保護の問題に関連してお尋ねします。次にお尋ねしておきたいのは、きょう実は防衛庁長官に来てもらうように要請したのですが、何か差しつかえがあって来られないということで、これは面接は防衛庁に、お尋ねすべきことですが、協定を結ばれるに当っては当然外務省が当り、外務省が当られた以上は、その条約文だけではなくて、具体的な内容について打ち合せをした上だと思う。そこでこの協定を機会として、今までMSAによって現物供与された武器以外の供与が、これからいわばより高度な破壊力を持った武器を、MSA協定またはこの協定を通じて日本に入れるというような、具体的な話し合いを進めておられるのかどうか、この実情をこの際明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/90
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091・下田武三
○下田政府委員 私の承知しております限りは、防衛庁はまだ協定の実施後に協議すべき具体的の情報の範囲について、協議を行なっていないと思っております。
それから先ほど重大なことを申し上げるのを忘れましたが、範囲は融通のきくように相なっておると申し上げましたが、原子力関係は全然除外いたしております。つまり日本の根本的建前といたしまして、原子力を軍事目的のために使うことはないというのが建前でありますから、防衛技術情報の範囲に原子力の何を入れないのです。これは画然たる削除をいたしております。原子力の方は先般御承認を得ました平和的利用の面では情報をもらいますけれども、軍事的な面では絶対に原子力の関係は入れません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/91
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092・穗積七郎
○穗積委員 原子力関係は次にお尋ねしようと思ったのです。ですから私の質問に答えてもらいたい。というのは武器の問題です。武器の話は一体どういう話をされたかをはっきりしていただきたい。
それから本協定にはそういうことはないでございましょうが、具体的な交渉の経過を通じて、つまりこれが機会となってより高度な破壊力を持った武器を、MSA協定に従って入れるようなことを、この協定の話をされる過程において防衛庁と向うと話をされたかどうか。そのことは外務省としては承知しておられるはずだと思うから、承知しておられる範囲内においてお答えをいただきたい。もしそれの細目がわからなかったら質問を留保しておいて、次の機会に防衛庁長官の出席を求めてお尋ねいたしますが、わかっておることだけ一つお答えを願いたい。この高度な武器の問題についてどういう話し合いをしておられるか、どういう計画を持っておられるか、それを伺っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/92
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093・下田武三
○下田政府委員 高度の武器の情報についてもらうという話は、防衛庁はまだ全然しておらないと思います。
それからまたこの協定が実施の暁になりましてもらう情報は、高度の——高性能の武器といいますか、高性能の武器は実は日本ではまだ作れないので、現物をもらうほかはないのでありまして、日本が設計図等をもらって作れますのは、比較的程度の低いものにならざるを得ないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/93
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094・穗積七郎
○穗積委員 外務省ではその間の事情はよくわからぬようですから、防衛庁にお尋ねすることにいたします。
次にお尋ねしたいのは、先ほど条約局長が触れられた原子兵器に関する技術情報でございます。あるいは工業所有権も加わりましょうが、そういうことに対しては絶対にこれを加えないということは協定の中で明記してありますか。ただ政府はそういうものはもらわないという方針なのか、協定の中に原子力に関する情報、はっきり言うならば原子兵器に関する情報です。これは入れないということを協定の中に明記してありますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/94
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095・下田武三
○下田政府委員 その点は協定の本文中に明記いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/95
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096・穗積七郎
○穗積委員 そうすると、一例をお尋ねいたしますが、先般すでにわが国に持ち込んでおるオネスト・ジョン、これは同時に原子兵器を搭載発射することができる機関でございますが、これはアメリカ軍の所有として入っておるのですが、共同演習の名目によってこれらの訓練が行われる場合には、これは違法な演習ということになりますね。防衛庁が、オネスト・ジョンその他の原子兵器に関連しての武器の使用について、共同演習の名目で向うから技術訓練を受ける場合は、この協定によれば原子兵器に関する技術情報、所有権等は入れないということを明記しておるとすれば、その事実があるとすれば、それに関連する技術ですよ。原子兵器は持ってきておらぬでも、最終段階に持ってきてオネスト・ジョンに搭載するとかB57に搭載する。現在は入っていないが、しかしながらそれに関連する技術訓練の中でそういう訓練が行われるとすれば、この協定に違反すると解釈すべきじゃないか、そういうふうに考えてよろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/96
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097・下田武三
○下田政府委員 核分裂兵器を先にくっつければ原子兵器になるというようなものは、国際的に原子兵器とは認められておりません。現実に原子力を使う武器そのものでなければ、それを運ぶとか装着するようなものは原子兵器とは定義されておりませんので、その点は私は別に問題は起らないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/97
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098・穗積七郎
○穗積委員 明敏なる条約局長は私の質問に答えてもらいたい。私はオネスト・ジョンそのものが原子兵器だとは言ってはおりませんよ。それを訓練される過程において、原子兵器に対する知識並びに技術が提供された場合は、これは違反じゃございませんか。原子兵器そのものだとは言いませんよ。例をいえばオネスト・ジョンならオネスト・ジョンを操作する訓練の過程において、原子兵器を搭載するときにはこうするのだというような技術訓練が行われたならば、それは技術提供じゃございませんか。武器と言ってはおりませんよ。技術提供ですよ。あるいは情報提供ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/98
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099・下田武三
○下田政府委員 技術情報交換協定というのは、訓練等の分野には立ち入らないのでございます。きわめて技術的な、ほんとうに特許権そのものでありますとか、あるいは特許の出願中の設計図でございますとか、そういう紙になった情報をいうのであって、肉体的の訓練まではこの協定のワク内に入ってこないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/99
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100・穗積七郎
○穗積委員 そういう設計図以外の技術情報は、この協定によって要求する権利はないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/100
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101・下田武三
○下田政府委員 設計図みたいなものこそ、この協定のワク内に入ってくるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/101
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102・穗積七郎
○穗積委員 非常にあいまいな御答弁ですが、これは具体的にこの兵器を所管している防衛庁に伺いたい。
最後にお尋ねしたいことは、これに関連して問題になるのは、この情報に伴う秘密保護でございますが、これをどういうふうに処理されるつもりなのか。ということは、この前MSA協定に伴います秘密保持の義務に伴って国内の秘密保護法ができたわけです。これはそのときに軍事秘密保護法——当時党は二つになっておったが、現在の自民党、この内部においても日本独自の単独の軍事秘密保護法を作るべきだという意見があったわけですが、こういうふうにして、この協定は、何といいますか、非公開の特許権、すなわち軍事目的になったいわば秘密特許といいますか、こういうようなものも含んでおるということを言われておるが、そうだと思う。だから、そうだとすれば、その範囲というものがだんだん拡大するが、これの取締りは一体従来の法律だけによるつもりであるか、あるいはまた情勢いかんによっては、この秘密保護法を修正するなり、あるいは別の法律を立法するなり、そういうお考え方を持っておられるか。これは政務次官にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/102
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103・下田武三
○下田政府委員 その点につきましては、今日の協定の締結のために現在あります秘密保護法を拡大するというような措置は全然必要ございません。それはつまり目的が違うのでございまして、今度のは、たとえて申しますと、設計図が三菱重工に渡されたのをほかの者が盗んで、それを盗用してジェット・エンジンを作り出したというようなふうに、全然民事関係の問題でございます。その場合に、この特許権者に対して特許権の侵害の損害賠償をどうするかという、そういう民事的の意味の秘密さでございまして、軍事的意味の軍事秘密情報を漏らすという点は、これはあくまで先般の立法によります保護措置が適用になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/103
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104・穗積七郎
○穗積委員 だから私は政務次官にお答えいただきたいと言ったのです。もとより法理の関係からいけば、この前のMSA協定によって義務づけられた秘密保護法によってあるわけですから、そのワクの中に追い込んでいけばいいわけですが、そうではなくて、MSA協定によって、すなわちアメリカの指定したアメリカの秘密が自動的に日本の自主的判断を無視してそれが秘密となる、こういうアメリカのための、アメリカの規定した秘密取締法がこの前のMSA協定に伴う秘密保護法なんです。そうではなくて、今度の協定ができても、法理的なフィクションとしてはそういうことは必要ではない。それはあなたは条約局長としての技術的な御答弁であったのだが、私が聞いているのはそういうことじゃない。こういうふうに秘密の対象物、範囲が拡大するとともに、さっきあなたは特許権のことを言われましたが、秘密特許と普通の工業特許とは区別されておる。その秘密特許が問題になるわけですが、そういうものの対象が拡大した機会に、政府並びに与党の諸君は、この秘密保護法の拡大、または日本独自の——アメリカの下請秘密保護法じゃなくて、日本独自の軍事秘密保護法を立決する考えがあるかないかということを開いておるのです。(「それは防特庁の問題だ」と呼ぶ者あり)そういうことは防衛庁の問題ではない。政府の問題であり、政党の問題ですから、条約局長の答弁をわずらわす必要はないのであって、その必要が条約的に出てきはせぬかということを私は聞いておるのじゃない。そういう政治的な意図があるかないか、それを聞いておるのです。これは日本の人民の自由権に対する重要な関連のある問題ですから特に政務次官にお尋ねするわけですから、その趣旨でお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/104
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105・森下國雄
○森下政府委員 そのような必要はないと思います。そのような考えは持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/105
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106・前尾繁三郎
○前尾委員長 それでは先ほどの議案に対する質疑を継続いたします。岡田春夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/106
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107・岡田春夫
○岡田委員 きょう在外公館の問題について主要な問題の一、二をやらしてもらって、あとは次回に留保したいと思います。
先ほど松木七郎君の御質問に対して、下田条約局長から御答弁になった中で一、二伺っておきたいのです。
まず第一は、バンドン会議の継続としてことしはアジア・アラブの第二日目の会議があるはずなんだが、これはどうなったかということについて御答弁があったのですが、先ほどの御答弁はだいぶあいまいな御答弁であったように私は記憶いたしております。この経過は大体私の知っておる限りではこういう経過になっておる。バンドン会議の最終コミュニケで、次のアジア・アラブの会議を開く場合には、主催国の五カ国が参加諸国と協議の上で次回の会議の開催を考慮するように勧告した、このように明記されてあります。これに基いて主催国五カ国がその当時内定をしましたのは、来年はエジプトにおいてこれを行う、大体こういう内定をいたしておったわけです。ところがことしの春になってから、このエジプトにおいて行われる会議の問題は一時延期をするというようなことが、実は一部の報道においてありました。その後これがやられるのであるかどうであるかという事情は実ははっきりしておらないわけです。そこで、少くともことしやるならばやるとか、やらないならばやらないとかいうことについては、この最終コミュニケによって参加国である日本に対しても、何らかの連絡があったものと私は考えておるが、この連絡があったものであるかどうか。もし今までにないとするならば、去年の内定は、たしかエジプトにおいて一月ごろこれを行うというようにきめたように私は記憶をいたしております。とするならば、すでに一月を過ぎた現在において、日本側から参加国としてこれをやるのかやらないのかということの問い合せをなされた事実があるのかどうか、こういう点についても外務省から伺っておきたいと思います。先ほどの御答弁では非常にあいまいでありますので、この点をはっきり御答弁願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/107
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108・中川融
○中川(融)政府委員 アジア・アフリカ会議の第二回をどうするかということにつきましては、ただいま御指摘のように、バンドン会議で、主催国である五つの国がまず相談いたしまして、その上で参加国に協議をしてきめるということになっておるのでありますが、その際、あるいはこの次はエジプトのカイロで開こうというような話も内々はあったようでございますが、しかしはっきりきまったのではないのであります。また果して毎年開くかどうかという点についても、はっきりきまってはいなかったのでありまして、ある国は毎年開く必要はないので、一年置きに開いたらいいじゃないかということを言った国もあるそうであります。いずれにせよ、正式の決定としては、いつ、どこで開くかということはきめてなかったと思います。その後主催国である五つの国がそれではどういう考えを持っておるかということでありますが、これは主催国の間におきましていろいろ相談は内々あるようであります。ところが主催国五つの国が一致した見解としてまだきまったものはないのでありまして主催国のうちのあるものはことし開こうということでいろいろ提案した模様でありますが、五つの国全部が同意するに至っていないのでありまして、現在までのわれわれが得ておる情報では、ことしはおそらくむずかしいのではなかろうか、ことに主催国の中でインド等はことしはちょっと無理じゃないかということを言っておる模様であります。これについて正式に日本政府に申し入れがあったとか、あるいは通報があったとかいう事実はただいまのところございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/108
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109・岡田春夫
○岡田委員 それではこちらの方から問い合わされた事実もないわけですか、この点が一点と、もう一点、このアジア・アラブの会議をやるかやらないかということについて、参加国内においてもいろいろいきさつがあるということは私も聞いております。やらないで延ばそうじゃないかといって中止になっているのは、SEATOに参加している。パキスタンが、ことしはこういうものは延ばそうといっているというようなことも実は聞いているのでありますが、むしろこの問題に関連して、パキスタンは、アメリカからAA会議はできるだけやらないようにというようないろいろな圧力をSEATOの関係でかけられて、そのために延ばしているのだという説も実は出ているわけです。と申しますことは、中川局長も御存じの通りに、昨年のあのバンドン会議のときに、一番神経質になったのはアメリカであったわけでありまして、そのアメリカがこのようないわゆるアジア・アラブの諸国が、民族解放の見地に立って会議を持っていくということについては、もう非常に神経質な態度をとっている。そういう関連もあって、自分たちアメリカの勢力圏内をそういう形で奪われていく、失われていくということに対して考慮して、心配の余り、パキスタンを通じてやらせないようにしているという説もだいぶ出ているわけでありますが、こういう関係の情報等も、もし御存じであるならば、この点についても伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/109
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110・中川融
○中川(融)政府委員 第二回のアジア・アフリカ会議が、果してことし開かれるかどうかということにつきましては、日本政府もこれは重要な関心を持っておるのでありまして、その意味でいろいろ主催国の意向というものを内々は聞いておるのであります。しかし正式に照会を発したという事実はございません。なおこれがどうしてことし開くのがむずかしいのであるかという事情につきましては、もちろん正式の通報というものはないのでありますので、はっきりは申し上げかねますが、結局アジア・アラブ諸国の中におきましては、いろいろ複雑な問題が存在する。一番端的な問題は、中近東地区におきまして、アラブ諸国とイスラエルとが対立しておる。そのほか同じアラブ諸国の中でもいろいろグルーブが分れて対立しておるという事態が、われわれの見るところでは、やはり一番原因ではなかろうか。従ってことしアジア・アフリカ会議を開きましても、なかなか利害関係の一致というのが、中近東方面に関連して、むずかしかろうというようなことから、この主催国の中でもちゅうちょしておる向きがあるようであります。しかしただいま岡田委員の御質問になられましたような、パキスタンがアメリカからいろいろ言われてこれに反対しておるという情報は、私ども一ぺんも実は聞いたことはございません。われわれはそういうことはないように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/110
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111・岡田春夫
○岡田委員 この問題をあまり伺っていてもしょうがないですから次に進みますが、ただ一つだけ、アジア・アラブの会議は非常に重要であるという点はお認めになったわけですから、それならば、これに対する正式な照会というものをおやりになることが必要ではないか、この点はどのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/111
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112・中川融
○中川(融)政府委員 主催国の意向というものをいろいろ非公式に聞いておるのでありまして、外交の方法といたしまして、正式に聞くことももちろんけっこうでありますが、非公式で大体わかるものは、その程度で一応とめておくというのもやり方でございますので、これは今後の発展等を勘案してきめていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/112
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113・岡田春夫
○岡田委員 それでは法眼さんに伺いたいのですが、先ほどこれは松本君の質問で、私も聞こうと思っていたのですけれども、イスラエルの兵器買い入れの問題について、イスラエルからだれか一人か二人来ているようだ、こういう話があるのですが、あなたはこの人はだれが来ているのか、そこまでお確かめになっているのかどうか。名前を私は伺いますが、シャベロンという人ではないか。この人であるかどうか。この人が入っておるのではないか。この点をまず伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/113
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114・法眼晋作
○法眼政府委員 私は具体的にどういう人が来ているかということは承知いたしません。ただ二人ばかり人が来ていろいろなメーカー方面に接触しておるということは聞いております。しかしながら各国の商人が来ていろいろ相談をするということは、これはいろいろあることでございますから、名前などそこまで私は突き進んで実は聞いておらぬわけであります。しかし完成兵器を売るというようなことにつきましては、どういうふうに考えるかということにつきましては、先ほど申し上げた通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/114
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115・岡田春夫
○岡田委員 それではこの点は私はあとでもっと質問して伺いたいと思いますので、この次の委員会までに、何という人が——具体的に申しますが、シャベロンという人が来ておるのかどうか。そしてまたそれ以外にどういう人が来ておるのか。これは入管の方をお調べになるとわかるわけですが、それから何の目的で来ておるのか、こういう点について具体的に御答弁願いたいと思います。きょうはこの点については伺いません。ぜひその点、この次の機会に御答弁下さい。
それからその次ですが、これはまた下田さんとあれするのだが、先ほどの下田さんの御意見を聞いておると、私はあなたの御答弁を実は間違って承わっておったのではありません。領土は七倍半になるということは、日本の国が七倍半になるという意味のことを言われておったと私も記憶しております。問題は、私の伺った点は、その七倍半が問題なんじゃなくて、それがあなたの御答弁によると、いかにも日本の七倍半の地域がソビエトに領土としてふえたような印象を与えるような答弁をされたから私は問題にした。事実これはあらためてあなたに申し上げるまでもなく、陸軍大臣が何になっておろうとも、主権というものは明らかにソ同盟の主権でないことは、これは釈迦に説法でおわかりの通りだ。それにもかかわらず、一般から聞いておるならば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/115
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116・前尾繁三郎
○前尾委員長 岡田君、議題外だから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/116
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117・岡田春夫
○岡田委員 そのような答弁をされる、このような意識的なデマゴーグを言うておるとしか、私は理解できないと言った、ということは——今委員長から御注意がありましたけれども、私はこの在外公館の一部改正をやるというのは、日本の外交政策の現われとして、こういうような改正が出ておるので、こういう精神に基いて、精神というか、考えに基いて在外公館の改正をやるというならば問題であるから、私は伺っておるので、そういう意味で関連があるわけですから、私はあえて伺っていかなければならないと思っておるのだけれども、しかし私は関連がないことを申し上げておるのじゃありません。なぜならば、先ほどの下田条約局長の話を伺っておると、まさにこれは日本外務省というよりも、日本の反共の闘士の演説でありました。その反共の闘士の演説は、具体的にやはりこの改正案提案の中において現われておるのです。だから私は問題にしておる。これは政府の方でお出しになったギリシャの公使館設置理由の中に、これは島津さんの方で責任のあることかもしれぬが、この中の第五項にこのように書いておる。ギリシャというのは「五カ年間の苦闘の末共産党内乱を克服した反共の戦士である。」反共の戦士であるからこそ公使館を置かなければならないという一つの理由にしておる。こういう点を見ても、いかに日本の外交政策というものが、先ほど下田条約局長の言ったように、反共の闘士として、そのような方針として…。
〔「日本は反共だよ」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/117
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118・前尾繁三郎
○前尾委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/118
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119・岡田春夫
○岡田委員 こういう反共に一貫した方針に基いて、在外公館の設置も考慮されつつあるのではないかということを考える。私はこの点を日ソ交渉との関連において伺っていかなければならないと思う。日ソの交渉で、片一方では日ソの交渉をやりましょう、国交回復をやりましょうといいながら、反共の戦士であるギリシャに公使館を置いて、共産情報をここから積極的に入手するのであるというような、きわめて元気のいいことを言っておるのだが、これは下田さんあるいはこれを書かれた責任のある島津さんと一貫した思想であると私は考えるのだけれども、日本の外務省の考え方というのはこういう考え方で、一つ在外公館を設ける、片方ではそういう立場をとりながら、日ソ交渉をやっていこうというならば、なかなか日ソ交渉はうまくいかないことはわかり切っておる。そういうような態度でおやりになって、在外公館の改正をお出しになっておるのかどうか、こういう点についても島津さんに伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/119
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120・島津久大
○島津政府委員 在外公館の設置は、ただいまのお説のような観点からのみやっておるのではないわけでございます。共産圏であるといなとにかかわらず、できるだけ多くの国に在外公館を設置いたしたいという希望でございまして、情勢が許すならば、もちろん共産圏にも大公使館を設置いたしたいわけであります ギリシャが問題になりましたのは、経済的の理由もございますし、ただいまお話しのような情報入手の理由ももちろんございます。共産情報入手というのが唯一の理由ではないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/120
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121・岡田春夫
○岡田委員 今度の提案の説明を拝見しますと、アメリカ関係が大体六ヵ国、これは法律によるものと、予算によるものと、両方合せて全体としてでありますが、中南米、北米、カナダ、いわゆるアメリカ関係が六カ国であります。それから中近東が四ヵ国、オーストラリアーカ国、大体地域的にこういうようになっております。東南アジアの関係では、国交回復がないところはやむを得ませんが、在外公館のいまだ置かれていないところがあるのではないか。東南アジアに対する在外公館の問題については、どのようにお考えになっているか、こういう点についても、基本の方針を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/121
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122・島津久大
○島津政府委員 東南アジア関係で、国交回復しない国はございません。在外公館も、東南アジアに関する限りは、大体希望のところに置いてございます。今後東南アジアで公館がふえるといたしますならば、領事館程度のものが、経済関係の深いところに置かれることになろうかと思います。今回は予算その他の関係がございまして、東南アジアには新設公館を考えなかったわけでございます。決してこれは東南アジアを重視しないというわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/122
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123・岡田春夫
○岡田委員 それでは何か具体的に、経済関係の深いところで、今後設けてもいいというところをお考えになっているわけでございますか、その点があればお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/123
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124・島津久大
○島津政府委員 東南アジアの新設公館の候補は、かなりたくさんございまして、部内でもいろいろ検討いたしました。最後にしぼりまして残ったのが、マンダレー、マドラス、イスタンブール、ダボルでございます。そのくらいが最後に候補地として残ったわけでございますが、他の地域との緊急度その他を考えまして、今回は東南アジアの新設は断念したようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/124
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125・岡田春夫
○岡田委員 日本の経済外交の面からいっても、東南アジア並びに中近東にもっと重点を置いて、在外公館の設置をやっていくことが、今としては重要ではないかと私は考える。そういう意味で、遠い中南米において、ことさらにパラグアイに公使館を設ける。このパラグアイは前は……(「移民だ」と呼ぶ者あり)単なる法律上の公使館にすぎなかったものを、今度は予算上も財政上の措置を伴ったパラグアイの公使館を設けるというようなことまで、中南米に対してはきわめて重点を置いている。ところが今雑言で、移民の問題などといってお話しになっておるが、その雑言は、東南アジアを軽視している証拠なので、東南アジアにおいても移民の問題は非常に重大なんです。そういう移民の問題を考えるならば、今の東南アジア、あるいは中近東その他アジア・アラブの諸国に対して重点をもっと強化されて、予算上の措置もそちらに重点を置いていくことが必要じゃないかと思います。こういう点についてことさら予算上の措置を伴わなかったから、東南アジアだけを領事館希望国が相当あったけれども、それは置かなかったのだ、そしてこちらの方の中南米の方に重点を置いたということさらなる理由は、われわれにはこの提案説明だけを見ると、ちょっとのみ込めないわけです。こういう点についても、もう少し伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/125
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126・島津久大
○島津政府委員 南米のパラグアイは、移民関係でぜひ現実に公館を開きませんと、話が進まないというような事情がございまして開くことにいたしたわけでございます。東南アジアないし中近東にもっと重点を置いたらどうかという御意見はごもっともでございまして今後とも財政上、予算上の点も考えまして、できるだけ充実増強いたしていきたいと考えております。ただ東南アジアは先ほど申しますように、公館の数から申しますと、ほかの地域に比べまして、一応整備した形になっております。もちろんできますれば必要なところに新設をいたしたいのであります。ただいまのところは来年度にかけましては、現実に既設公館の充実をやっていきたい、そういう考えで進んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/126
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127・岡田春夫
○岡田委員 政府の提案説明の理由書を読んでみますと、大体設置の理由としては、経済的あるいは貿易上の問題、これを重点にして出しておられます。これは非常にけっこうだと思います。経済的な点を考慮しないでやるというのはいけない。しかしこれだけではまだ不十分ではないか。と申しますのは、文化政策の問題からいって、そういう点についても特に考慮の点が必要になってきておるのじゃないか。大体日本の外務省というものは、文化政策の点については、きわめて冷遇するというか、無視するというか、そういう点が今までの風潮として相当あるようであります。こういう点で文化政策の見地に立って、在外公館の設置の問題を今後においても再検討して考慮していくことが、私は必要じゃないかと思うのだが、この点は政務次官から一つ今後の大抱負を御意見として伺わしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/127
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128・森下國雄
○森下政府委員 ごもっともの仰せでございまして、実はことに文化関係には重点を置いて進んで参っておりますし、今度の予算におきましても、それぞれ公館の設置に重点を置いたのでございますが、御承知のように何分にも限られたる予算の中に悪戦苦闘いたしまして、あそこまでようやくやった次第でございます。今後とも一そう一つ応援をいただいて、来年度は必ずもっとふやして参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/128
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129・岡田春夫
○岡田委員 私はもう少し質問をするつもりだったのですが、きょうは情報文化局長の田中さんも来ておられないようですし、各国に対する日本のとっておる文化政策がいかに片へんぱなものであるかということを、一つ具体的に伺ってみたいと思いますが、これは次の機会にしたいと思います。今大抱負を伺いましたので、この次森下政務次官は、その具体的な点についても、その大抱負によって局長をわずらわさないで御答弁を願うことを希望いたしまして私はきょうはこれで留保いたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/129
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130・前尾繁三郎
○前尾委員長 森島守人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/130
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131・森島守人
○森島委員 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案でございますが、これについて二、三点私は伺いたいと思います。
まず大使館を設置することが世界的な傾向になっておるということは、先ほど島津さんから御説明の通りでございます。そうなって大使が非常にたくさん要るということになりますと、この点に関連しまして、昨年の六月十五日でございますか、附帯決議が採択されました。附帯決議の第一には、「大使の階級を多くし大使の任命につき任地の実情に応じ少壮者をも任命し得る制度を確立すること。」というのが上っております。この点については、与党の大橋君が最も熱心に主張した一人であったと私は記憶しております。六月からといいますれば、もうやがて十ヵ月近くもたっておりますが、その間において外務省としてこの制度を確立するために、いかなる措置をおとりになったかを第一に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/131
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132・森下國雄
○森下政府委員 二十二国会におきまして、附帯決議として六項目にわたって決議されております。それらの詳細につきまして、それぞれ外務省は手段をとって参っております。官房長から一月六項目についての御説明を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/132
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133・森島守人
○森島委員 私は六項目全体にわたって御説明を求める必要はない。第一項に関して具体的にどういう措置をおとりになったか、その結果を明確に御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/133
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134・森下國雄
○森下政府委員 それでは申し上げます。大公使の階級は、一昨年までは三階級でございましたが、今度御指摘による事情が予見されましたので、二十九年三月の法律改正によりまして、大使及び公使の階級をおのおの四階段に定めました。そして大使の最高段階と公使の最低段階とを除きまして、中間の三段階は全く大公使同額とし、公使から大使の転出が十分にできるような処置がなされている次第であります。ただ問題は運用面でありますが、それも御趣旨に沿う心がけで進めておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/134
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135・森島守人
○森島委員 今二十九年何月かに改正したとおっしゃったが、私はそういうことを尋ねているのではない。昨年の六月以降に二階級になったか三階級になったか、はっきり私は覚えておりませんが、それを幾つの階級にまで拡張せられたかという点だけはっきり御答弁願えればよい。島津君から御答弁願ってけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/135
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136・島津久大
○島津政府委員 ただいま政務次官から御説明申し上げましたように、大公使の階級は四階級になっておりまして、比較的若い者も公使から大使に転換できる、また大使の中でも四段階ほどございますれば十分新進少壮の者を任用できると考えております。現在のところ大体この程度で目的は達すると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/136
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137・森島守人
○森島委員 今四階級と言われたが、私は別に公使のことについて聞いておらない。大使だけに限定しておりますから、大使についてだけお答え願います。四階級といえばもとと同じことではないですか。この決議案の採決せられたあと、新しく何らかの御措置をおとりになったかいなかという点を一言でお答え願えればけっこうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/137
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138・島津久大
○島津政府委員 この決議以後には具体的な措置はとっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/138
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139・森島守人
○森島委員 私は非常に遺憾に存じます。とかく国会の決議ということになりますと、政府の方でこれを軽視しがちなことはたびたび実例があることであります。この点が非常に重要な問題だ。従ってこれに対する措置をおとりになっていなかったという御答弁ですが、今後おとりになる御意向があるかいなかを一つ明確に御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/139
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140・島津久大
○島津政府委員 大使の階級につきましては四階級あれば十分と考えております。ただいまのところこれ以上に段階をふやす考えはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/140
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141・森島守人
○森島委員 これは大臣の御答弁と非常に違うようです。大臣も決議を尊重して何らかの措置をとるというふうな御答弁をなさったと私は思います。これは決議を無視するもはなはだしいものだと私は思います。その後外務省が大使を任命せられた実例を見ますと、こういったことに災いされているかどうか知りませんが、老朽の人ばかりがことさらに任命せられている傾向が非常に強い。島津さんもすぐ大使なり公使なりに出られると思う。島津さんのような有能な人が疎外されているのもここに原因がある。下田さんにしてもみな同様です。私はすみやかに何らかの具体的な措置をおとりになることを切に希望いたします。
第二に伺いたいのは、外務省に参与の制度がありますが、この参与というのは一体どういう理由で御設置になっているか、この点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/141
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142・島津久大
○島津政府委員 参与は顧問とともに外交政策の運用に参画するという目的で、広く外務省以外のその道の専門家の御意見を入れて外交の運用に資したいという考えで設置しているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/142
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143・森島守人
○森島委員 これは常勤でありますか、非常勤でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/143
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144・島津久大
○島津政府委員 非常勤でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/144
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145・森島守人
○森島委員 私の知っているところでは、参与を設ける理由が明確でないと思います。現在五人か六人おるでしょう。いずれも何も仕事をしていないというのが実情で、たばこをふかすか、そこで手紙を書くか、人に会うかというくらいが参与のやっている仕事です。私は名前を一々あげませんが、現在いる参与が外交政策の樹立運用についていかなる仕事をし、いかなる功績を上げたかという点については非常に疑問を持っておる。外務省の職員自身も、要らぬものを置いてる、要らぬ部屋をとって遊んでるというふうな感じを抱いておられるのが全員を通じての印象だろうと思います。これはもっと明確にざっくばらんに御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/145
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146・島津久大
○島津政府委員 ただいま参与は四名おりまして、それぞれあるいは経済関係、国際機関あるいは国際会議関係の仕事に参画いたしましたり、あるいはまた在外公館の査察その他にも当ってもらっております。そういうわけで非常勤でございますので、毎日机にすわって普通の一般職と同様の仕事をしているわけではございませんが、それぞれ目的に応じまして十分貢献してもらっていると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/146
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147・森島守人
○森島委員 私は御答弁としてはその範囲しか言えぬだろうということはわかっている。ざっくばらんに伺いましてもお困りであろうと思いますから、これ以上追及いたしませんが、たとえば重光御三家といわれる加瀬大使、太田大使のごときは直ちに参与に任命され、参与から長い期間を出でないで在外公館に移ったという実例もありまして、私はこれがまるで在外勤務の足場のようになっているような印象を持っている。私はこういうものをむやみやたら多く設置されることは非常な考えものではないか、大臣にその点を聞きたいと思っておったのでありますが、その点については、一つ人事刷新という点からお考えになっていただきたい。私名前をあげてもいいのですが、年寄りの人がいますから、十分御注意になっていただきたい、こう思っておるのであります。
次に重光さんはことしの正月、今年こそ中華人民共和国との関係と真剣に取り組む時期だということを新聞記者に言っておられます。私は現在の政府で直ちに中共承認政策に移り得るとは考えておりません。私自身は一刻も早く中華人民共和国との国交の正常化をはかるべき必要に迫られておると考えておる。その点は見解があるいは違うかもしれませんが、私も今年は中国関係の相当重要な時期だと思う。これらに対しまして、一年間かそこらのうちに国交が開かれるとしますときに備えて、人材の養成をいかに考えておられるか。またいかなる具体的な措置をとっておられますか、この点を一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/147
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148・島津久大
○島津政府委員 お話のような人員の養成につきましては、いろいろな措置がとられております。基本的には外務省に研修所を設置してございまして、研修所で新しく入りました者の訓練、あるいはまた中級の者の再訓練、そういう勉強を続けさせております。また留学生の制度がございまして、特殊語学を専心勉強させるという点にも力を注いでおります。なおまた中国関係の人員につきましては、本省でその方面の専門の調査研究に従事させますと同時に、東南アジアに配置いたしまして、引き続き中国関係の勉強をやらせておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/148
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149・森島守人
○森島委員 今留学生とか書記生の試験にやっぱり中国語がありますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/149
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150・島津久大
○島津政府委員 中国語は試験科目に入っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/150
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151・森島守人
○森島委員 それでは将来に備えるという意味で人材の養成も心がけておられるということでございますが、外務省に中国語関係の人が何名ぐらいおられますか。——直ちに御答弁はむずかしいと思いますから、英語関係、フランス語関係等語学の関係に区分して、中国語関係の人が全員のうちにどれほどおるということを資料にして出していただけばけっこうです。私はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/151
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152・前尾繁三郎
○前尾委員長 穗積七郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/152
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153・穗積七郎
○穗積委員 私は実はきょうは外務大臣が出席するというので一般国際情勢の質問だと思って、資料を持って参りませんでしたから、在外公館の具体的な質問はこの次にさせていただきたいと思います。
それに関連して一点だけ政務次官または官房長にお尋ねしたいのは、このごろ見ますと、防衛庁の本省に使うのだそうですが、元霞ヶ関の前に、どえらいものが先にできてしまった。ところが外務省はまだ一商社の建物を間借りをしてやっているということですが、日本の平和外交、特に終戦後の日本の経済や国民生活というものは、外交とか貿易政策に依存していることが多いにもかかわらず、平和外交を促進すべき外務省がまだ商社の間借りをし、一方再軍備はしないという憲法を持ちながら、まるで武力による外交政策をとるかのごとくごう然とあそこに建物ができてしまった。外務省は一体何をしておるか、一体いつ外務省の建物をお作りになるおつもりであるか。在外公館もさることながら、第一本家本元の本省の設置はいつするつもりでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/153
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154・森下國雄
○森下政府委員 大へんありがたい御質問をいただきましたが、外務省といたしましては何しろ一国の玄関でありまして、どうしても今年度予算をもらって、本年度から建築にかかる予定で一生懸命努力をいたしたのでありますが、何分にも貧乏な予算でございますので、今年一億円だけ予算の方からとりまして、直ちに霞ヶ関の旧外務省の跡に建築にかかることになりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/154
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155・穗積七郎
○穗積委員 予定はいつまでですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/155
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156・森下國雄
○森下政府委員 足かけ三年くらいでやりたいと思いますけれども、大体四年くらいかかるかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/156
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157・穗積七郎
○穗積委員 四年間というのは大蔵省との間で約束ができておるのですか。防衛庁みたいなものを作るのだったら、外務省ができるまであそこをお使いになったらどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/157
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158・森下國雄
○森下政府委員 あんなおかしな建物を外務省では使えませんよ。(笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/158
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159・穗積七郎
○穗積委員 大蔵省との話し合いはどうですか。四年といって四年の腹づもりなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/159
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160・森下國雄
○森下政府委員 実は二年でやりたいと思って夜も寝ずにいろいろその交渉を進めましたが、二十億を十億ずつ二年間でやりたいと思っていましたが、それはなかなか無理でありまして、とにかく土古を先にこしらえるということで本年は一億円を出してもらいまして、来年がんばって——内閣が続こうが、続くまいが、これは国の大きな仕事でありまして、さらに一段の御助力をいただいてぜひ二年間くらいに作り上げたい、こういう希望でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/160
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161・前尾繁三郎
○前尾委員長 ほかに御質疑はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/161
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162・松本七郎
○松本(七)委員 さっき少し残っておりましたのでもう一点伺っておきたいのですが、岡田委員からも指摘されたように、最近だんだん東南アジア、中近東方面の状況が日本に非常に参考になることがたくさんあるだろうと思うのです。特に私どもが注目いたしますのは、東南アジア、あるいは中近東諸国の中で、中立主義といいますか、中立的な立場をとっておる国々が、いわゆる東西交流、ソビエトを中心としたいわゆる共産圏とも、あるいは自由主義、自由国家群といわれておるようなところとも、経済的な関係をいろいろ深めてきておる。御承知のようにSEATOに参加しておるパキスタンですら、ソビエトとの通商航海条約の交渉をしようというようなことを声明しております。そういうように最近は経済的な結びつき、援助を仰ぐ方向がアメリカからソビエトの方に移ってくるだろうと思うのですが、特に注目すべきところは、ただアメリカ一辺倒でなしに、東西の経済的な交流その他を強く主張しておる中立的な立場をとっておる国々が、かえってアメリカからそのために経済的な援助をよけい受けることができるような状態にあると思うのです。ですからこういう点は日本としても——重光外務大臣はしきりにアメリカとの日米協調というようなことを基本だと言われるけれども、われわれの目から見れば、協調ではなくてむしろ従属だと見ておるのですが、そういうふうに東南アジア諸国でとっておるようなきぜんたる態度で向うことが、かえってアメリカとの関係をよくし、協調をむしろ増進できる基本的な態度だと思う。そういう点からもう少し日本も対アメリカの関係で、従来の方針とそれを変えていく気持は、日本政府にはないのだろうか、その点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/162
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163・森下國雄
○森下政府委員 日本は日本としての立場上自主的にやっておりますので、アメリカのために動いておるのではないのだから、別に変える必要はない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/163
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164・前尾繁三郎
○前尾委員長 それでは、次会は公報をもってお知らせいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403968X00819560218/164
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