1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十一年二月十五日(水曜日)
午前十一時開議
出席委員
委員長 佐々木秀世君
理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君
理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君
理事 藤本 捨助君 理事 岡 良一君
植村 武一君 小川 半次君
越智 茂君 亀山 孝一君
熊谷 憲一君 小島 徹三君
小林 郁君 田子 一民君
中村三之丞君 中山 マサ君
八田 貞義君 亘 四郎君
阿部 五郎君 岡本 隆一君
滝井 義高君 堂森 芳夫君
長谷川 保君 八木 一男君
吉川 兼光君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 小林 英三君
出席政府委員
厚生事務官
(大臣官房会計
課長) 堀岡 吉次君
厚 生 技 官
(公衆衛生局
長) 山口 正義君
厚 生 技 官
(医務局長) 曾田 長宗君
厚生事務官
(薬務局長) 森本 潔君
厚生事務官
(社会局長) 安田 巖君
厚生事務官
(保険局長) 高田 正巳君
委員外の出席者
厚生事務官
(大臣官房総務
課長) 小山進次郎君
厚 生 技 官
(公衆衛生局環
境衛生部長) 楠本 正康君
厚生事務官
(保険局健康保
険課長) 小澤 辰男君
厚 生 技 官
(保険局医療課
長) 館林 宣夫君
専 門 員 川井 章知君
—————————————
本日の会議に付した案件
未帰還者留守家族援護法の一部を改正する法律
案(内閣提出第四一号)
社会保障制度、医療制度及び公衆衛生に関する
件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/0
-
001・佐々木秀世
○佐々木委員長 これより会議を開きます。
未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。まず趣旨の説明を聴取することといたします。厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/1
-
002・小林英三
○小林国務大臣 ただいま議題となりました未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案の提案理由について御説明申し上げます。
改正点は、法第十三条に規定する過去七年間に生存資料のない未帰還者の留守家族に対する留守家族手当の支給打ち切りの期日を三箇年間延長することであります。
政府といたしましては、これまでも未帰還者の調査究明とその帰還促進についてはあらゆる努力を払って参ったのでありますが、諸般の事情から現在なお多数の状況不明の未帰還者を残しておるのであります。しかして国際情勢の現状等より推しまして、昭和三十一年八月一日までにその調査を完了し、それに基いて必要な措置をとることがきわめて困難であると考えられるに至りましたので、留守家族手当の支給打ち切りの期日を、大よそ調査の最終段階に達するに至るであろうと予想される昭和三十四年八月一日まで延長することとした次第であります。
以上提案理由につきまして御説明申し上げましたが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに可決あらんことを切望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/2
-
003・佐々木秀世
○佐々木委員長 以上で説明は終りました。法案に対する質疑その他につきましては後日に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/3
-
004・佐々木秀世
○佐々木委員長 次に社会保障制度、医療制度及び公衆衛生に関する件について調査を進めます。
昭和三十一年度厚生省関係予算等を中心とする厚生行政についての質疑を続行いたします。中川俊忠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/4
-
005・中川俊思
○中川委員 ただいま議題となりました委員長からの問題につきましては、先般来野党の諸君からるる御質問がございまして、私どもも大体において厚生省の考えておられる点を了承したのでございますが、なお私どもは与党でございますので、与党といたしましても野党に対して御答弁になった点について重ねて念を押しておきたい点がございますので、これら一、二の問題について大臣の御所件を承りたいと思うのであります。
まず第一点は、このたびの健康保険の改正でございますが、先般野党の諸君に対して御答弁になりました本年度の三十億円は臨時補給金である、こういう建前を大蔵省はとっておる。しかし厚生省においてはこれはあくまでも国庫負担金だという御解釈のようでございますが、これは、この点をはっきりいたしておきませんと後日必ず問題を惹起する点ではないかと私は思いますので、重ねて大臣にお尋ねをするわけでございます。実は私は昨日大蔵大臣にも会ってこの点を確かめたのでございますが、多少厚生大臣との間に意見の相違があるやに承わったのでございますが、あくまでも国庫負担金としてのお考えであるかどうか、いま一度大臣の確固たる御答弁を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/5
-
006・小林英三
○小林国務大臣 お尋ねの三十億円の金につきまして、臨時的の財政に対する補給金であるか、あるいは国庫負担金であるかということでありますが、私どもはやはり被保険者から一部負担をいたしてもらいますには、やはりそれに見合うだけの国庫負担を必要とするというような建前からいたしまして、ここ当分の間は少くとも国庫負担金として国家から出してもらいたいということで参っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/6
-
007・中川俊思
○中川委員 大臣の御趣旨はわかるのです。わかるのですが、昨日も大蔵大臣に会って聞けば、国庫負担の意思はないということを私に明瞭に答弁をしておるのであります。そこで問題は、後日これが同じ政府部内におきまして問題を惹起するというようなことになりますと困りますので、先ほども申し上げますように、私どもは与党の立場でありますから、与党の内部でそういう問題が、いや補給金だ、国庫負担金だということで問題を起しますと非常に混乱を生じますので、私はこの点をお尋ねしたのでありますが、これについては大蔵省と厚生省との間にそういうふうな思想の統一といいますか意思の疎通が欠けておるようでございますから、この点は今後一つ十分に話し合いをしていただいて、そうして後日に問題を起さないように御処置を願いたいと思うのであります。
それからこの十億円は三十二年度にも必ず出るということを先般大臣はお答えになっておりますが、これもまた問題でありまして、どうも私の調査したところでは、はたして出るか出ないかはっきりしないのでございます。ことに小林厚生大臣は三十二年度も引き続いて大臣の職にあられるかどうかということは未知数の問題でございまして、そのときになって大臣が変られて、前の大臣はそう言ったかしらないが、自分には責任がないというようなことになりますと、同じ自民党内閣でそういうようなことになりますと、これは与党としてもまた考えなければならない問題でございますので、この点を一つ重ねて大臣の御所見を承わっておきたい。こういう問題はしばしばあるのです。私はここ六、七カ年間厚生委員ばかりをずっとやって参りましたが、前の大臣とあとの大臣との間にそういう問題がしばしば今日まであったのでございますから、この点について、厚生省は来年度も必ず引き続いて出すということの確証を大蔵省からとっておられるかどうか、この点を一つ承わっておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/7
-
008・小林英三
○小林国務大臣 ただいまの十億円という問題でございますが、これは私どもの方といたしましては、健保の赤字を建て直すために、少くとも一部負担に見合うだけのものを国から出してもらいたい、これが私どもの最低の線であったのであります。ところが最初のうちは御承知のように二十億円だけ出そう、これは名目は多少大蔵省と私どもとは食い違っておりましたけれども、とにかく二十億円出そう、こういうことであったのであります。ところが二十億円ではどうしてもわれわれは足らないのだ、少くとも三十億円出してくれ、こういうわけでいろいろ折衝炉進んでいったのであります。ところが実際において一般会計の方に財源がございませんので、そこで厚生省が御承知のように七年かかって毎年十億円ずつ資金運用部へ償還いたしますその十億円は、すでにもらっておりましたから、それを合せて三十億円をいわゆる国庫負担金としてもらう形になったのであります。従いまして来年度におきましても、私の方と大蔵省の方において一部負担を国庫が負担をするということをはっきり法文に入れるか入れないかということについては、御承知の通りに今努力中でございますけれども、大蔵省といたしましては、来年度におきましてもやはり相当の国庫負担金を出す意思があるのでありますから、今の十億円という問題と切り離して私どもは考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/8
-
009・中川俊思
○中川委員 先般野党の諸君にお答えになった点とはちょっと違うように私は今拝聴したのでありますが、これらの点は重要な問題でございますから、同じ政府部内で十分に一つ了解し合って、大蔵省にも納得をさせまして、ただいま大臣のおっしゃるように一部負担をさすにいたしましても、また赤字の問題を解消するにいたしましても、十分に大蔵省と連絡をとって、後顧の憂いのないように御善処を願いたいと思うのであります。
それから保険のいわゆる未納保険料でございます。これは例年累積していっておるわけでございますが、これについても十分御研究の上、それぞれの対策を講ぜられておると思うのでございますが、ただいま厚生省で考えておられるような保険の改正をやれば、未納保険料というものは逐次なくなっていく、そうしてどのくらいしたならばこれが正常なルートに乗るというふうにお考えになっておるか、これは保険局長からお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/9
-
010・高田正巳
○高田(正)政府委員 過年度の保険料未納分につきましては、たしか三十六、七億円あったかと思います。これは過去数カ年間の累積でございまして、今中川先生御指摘のように、古い分になりますと、過年度と申しましても前年度くらいのものは比較的とりやすいのでございますが、古くなりますと事業場がつぶれておったりどうとかということでなかなかとりにくいわけでございます。今日までの過年度の未納保険料の徴収率は、古いものも前年度も全部ひっくるめまして、たしか三七%くらいまでに実績がなっておったかと思います。昨年もずいぶん努力をいたして、特にその過年度分についての処理ということに努力をいたしたのでございますが、本年度も努力をいたしつつあるのでございますが、諸般の事情でなかなかこれが思うように参りません。今回の改正で私どもが予定いたしておりますることは一、二ございまして、たとえば先取特権の順序につきまして、保険料を少し順位を上げてもらうとか、それからなお事業場が合併なり何なりしました場合には、新事業場に対して追及して参るとかいうふうな、一、二の過年度の保険料の取り立てについてプラスになるような改正を予定いたしております。この問題については、私どもとしましては、かような法律改正をお願い申し上げる予定でありますと同時に、行政的にも努力を今後とも重ねて参りたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/10
-
011・中川俊思
○中川委員 なかなか理屈通りにいかない点があろうと思うのでありますが、十分御検討の上、大きな問題でございますから確信を持って御善処願いたいと思うのであります。先般たしか八木君でございましたかの御質問にあったと思うのですが、今回の健保改正について一部負担の問題についてずいぶん大臣との間に応答があったのであります。その際大臣は、一部負担は避けるべきだと思う。が日本の財政上これはやむを得ないことであって、国庫負担も法制化したいが大蔵省の反対があって今日こういう中途半端な・中途半端というと語弊があるかしれませんが、そういうものを出さざるを得なかったというような御意見のように拝聴したのでございますが、むろん大蔵省は反対したでございましょうが、一部負担をもし避けるべきだという確信をお持ちになり、またそうしなければならぬという御意思があるならば、大臣が職を賭してでも大蔵省の反対意見を押えるだけの私は無意が欲しかったと思うのであります。大蔵省というところは、大体財布のひもを握っておるところでございますから、なるべく出すまい出すまいとするのでありますが、しかしこの健康保険の問題は非常に大逆な問題でございまして、及ぼすところの影響も甚大でございますので、これらの点につきましては、政府としても単に大蔵省だとか厚生省だとかいう問題でなく考えるべき問題でございますから、将来厚生省は大蔵省を説得するだけの熱意を持ってこの問題に当っていただきたいということを特に私はお願いをしておくわけであります。
それから社会保険の赤字の問題でありますが、これは非常な大きな問題で、いろいろな原因があるだろうと思いますが、私は先般も、昨年の十二月の十日のこの委員会でも片鱗だけ述べておいたつもりでございますが、社会保険出張所等に勤務しております者の中に、保険料のかなり乱費をしておる、いわゆる使い込みをしておる事例が全国にはだいぶあると思うのであります。これらの点につきましても十分に監督を厳重にしていただかないと、これがむろん赤字の最大の原因だとは私は申しませんが、しかしそういうことも赤字の一部分をなしておることだけは事実でございます。その事例があるのでありますから、これらの点につきましては十分に監督をしていただきたいと思うのであります。大臣は経費の節減については、国民の貴重な税金でやっておるのであるから、極力節約して御意思に沿うという御答弁をしておられますけれども、これらの問題について大臣は御就任以来どういう御努力をなさっており、かつまたこういう経費のむだ使いに対していかなる手段をおとりになっておるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/11
-
012・小林英三
○小林国務大臣 いろいろな情勢からいたしまして、健保の赤字対策のためにわれわれはやむを得ず被保険者の一部負担ということも今日考えているわけでございますから、今お話のような問題につきましては今後一つ十分に気をつけまして、末端の諸機関に対しまして、もろもろの費用の支出等につきまして十分検討いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/12
-
013・中川俊思
○中川委員 なかなかむずかしい問題なんです。役所の経費の乱費というのは日本ではしばしば行われておる問題でございまして、御承知の通り、二十九年度会計検査院が調査いたしましただけでも七十三億円の不正不当の支出が行われております。しかしこれは氷山の一角だと私は考える。厳密に調べたらおそらく数百億に達するだろうと実は思うのであります。私どもこんなことを質問するのはやぼだというおしかりをこうむるかもしれませんが、おそらく役人の間でも経費を厳重に使っておる役人はうだつが上らなくて、出世しないのじゃないかと私は思います。大胆な不正不当の腕達者な者が栄進をしておるという事例がございます。事例を出せとおっしゃれば私はここに持っておりますから出しますが、そういう事例がある。今大臣は、十分に検討して善処するということをお答えになりましたが、これはどの大臣も一様にこういうことをいつも言う。それならそれに対する対策をほんとうに委員会において答弁をされておるようにやっておられるかというと、やっていないのです。小林大臣は私はほんとうにおやりになるだろうと実は考えております。国の予算が国民の血税でまかなわれておるということは今さら私が申し上げるまでもないことでございますから、これらの点につきましては一つただいまお述べになりましたことを厳重に御実行を願いたいと思うのでございます。ただ委員会の席上で月並みな御答弁をしておられますと、私は与党ではございますが、今後はどしどし実例を引いて迫りますから、この点はあらかじめ御承知おきを願いたいと思います。
それから先般来滝井君からお話があったと思うのだが、調査費というのがどこの省でも非常に多いのであります。この詳しい内容につきましては、後日予算委員会の分科会で私どもはお聞きをするつもりでございますが、この調査費というものがまことに食わせ者でございまして、実は私も経済団体をやって、まあ少しぐらい金が要るからこれは調査費へ入れておけといって実は入れたことがございますので、こういうものの中にもかなり不正な支出があるのではないかと、実は私は考えておりますから、これらの点もあわせて一つ厳重な御監督を願いたいと思うのでございます。
それからきょうはまっ先に野沢君が御質問になる予定のところを、私は選挙法の方へ参らなければなりませんので、十分間の制約を受けて、先ほど来野沢さんから十分経過したという注意を受けておりますので、きょうは野沢君に譲りまして、私はごく簡単になにします。厚生省の中でいろいろ雑誌を発行しておられるのですが、この「国民健康保険」の雑誌を発行しておられる国民健康保険調査会というのですか、これは一体どういうものなのですか。保険局長にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/13
-
014・高田正巳
○高田(正)政府委員 国民健康保険中央会ではございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/14
-
015・中川俊思
○中川委員 いや、厚生省保険局内国民健康保険調査会です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/15
-
016・高田正巳
○高田(正)政府委員 国民健康保険調査会というものがございます。国民健康保険についての雑誌を発行いたしましたり、さようなことをやっておる団体でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/16
-
017・中川俊思
○中川委員 これが厚生省の中に置いてあるといろのはどういう厚生省との関係で置いてあるのですか。たとえば保険局に勤めておられた人がやめられて、保険局の中でこういうことをしておられるのか。あるいは経費の点はどうなっておるのか。会計はむろん厚生省の会計とは私は別個だろうと思うのです炉、どういうふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/17
-
018・高田正巳
○高田(正)政府委員 もちろん国費の会計とは別個でございますことは確実でございます。その経費がどういうようなことになっておりますか、それからどういう仕事をやっておりますか、そのことにつきましては、私あまり古くございませんので、取り調べまして次会に御報告いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/18
-
019・中川俊思
○中川委員 一つそれは十分にお調べの上——保険局長が保険局の中に置いてあるこういうものを御存じないというのはちょっとふに落ちないのですが、十分にお調べを願いたい。家賃はどういうふうになっておるか。それから厚生省はどういう補助をしておられるか。こういう雑誌は独自で出しておるのか。厚生省が補助をしておるのかどうか。補助しておるとするならば、どれだけの補助をしておるのか。私どもちょっと拝見したところによりますと、これはほとんど新聞の切り抜きみたいなものでございまして、こういうものにもし国費が多少でも行っているということになりますと、どうかという考えを持っております。
それから「厚生」という雑誌、これはどうなんです。厚生問題研究会、これも厚生省の中にある。これはどうなっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/19
-
020・小山進次郎
○小山説明員 厚生問題研究会と申しますのは、厚生省の行なっております啓発宣伝に協力をするというような趣旨で作られておる団体でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/20
-
021・中川俊思
○中川委員 なお総務課長が見えておられるなら、総務課長は「国民健康保険」の問題は御存じでしょう。保険局長は最近就任されたのだから御存じないか知りませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/21
-
022・小山進次郎
○小山説明員 私はこちらの方には全然関係がございませんので、存じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/22
-
023・中川俊思
○中川委員 この「厚生」という雑誌もどうも私どもの見たところでは、新聞の切り抜き程度の雑誌である、これもあわせて御調査を願いたい。
それから「厚生広報」というのは、これは厚生省ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/23
-
024・小山進次郎
○小山説明員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/24
-
025・中川俊思
○中川委員 これはどれくらいの部数を出しておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/25
-
026・小山進次郎
○小山説明員 多分八千部程度だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/26
-
027・中川俊思
○中川委員 どうも私どもこれを拝見しても、そう八千部も一万部も出して国費を使うほど必要なものではないというふうに考えておるのですが、これは一カ年を通じてどのくらいの経費なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/27
-
028・小山進次郎
○小山説明員 この「厚生広報」というパンフレツトは月に二回出しまして、府県の民生部、衛生部、保健所、福祉事務所、市町村、なお府県の広報課等が入りますが、そういうところにおって厚生行政に関係のある仕事をしている担当者に配付しております。年間百九十万円程度の金をこれに支出しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/28
-
029・中川俊思
○中川委員 むだなことだと思うのです。こういうことに百九十万円も二百万円もお使いになるのなら、これをほかの、厚生省でどうしてもやらなければならない方向にお使いになったらどうかと私は考えるのです。
まあこういう問題につきましてはまた分科会で検討さしていただくつもりでおりますが、最後に私は、先般、昨年の十二月十五日でございましたか、厚生大臣にお尋ねしておいたのですが、例の児童局長が保育所を二、三十ポケットに持っておるという、この問題については、大臣はよく調査して善処したいという答弁をしておられるのですが、その後御調査になりましたかどうか、調査になりましたならば、その結果を一応御報告を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/29
-
030・小林英三
○小林国務大臣 今の問題は後刻申し上げることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/30
-
031・佐々木秀世
○佐々木委員長 野澤清人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/31
-
032・野澤清人
○野澤委員 過般厚生大臣から昭和三十一年度の予算案についての説明を受けまして、当委員会において二日間質疑応答が行われたのですが、二日間ともいずれも質問者が野党であるためか、非常に熱心な質疑であったにもかかわらず、ややもすると重要な点がぼけたような感じが多かったのであります。もっとも社会党の質問ですから、一問一答が動かし得ないような重要なものであればあるほど、厚生大臣としては相当警戒もしなければならぬと思うのでありますが、全体を通じて感じますところでは、言質をとられまいとして非常に警戒されて御答弁をなすっていたような感じがするのです。こういう点はさすがわが自民党内閣の厚生大臣だけあって、きわめて要領のいい答弁をされたと思って感心したわけですが、きょうは与党の自民党の質問でありますので、警戒心は全然必要ありませんから、できるだけ簡明率直にお答えを願いたいと思います。それから私は大体気短かですから長く御答弁になることもきらいな方で、イエスかノーか、いいのか悪いのか、そういう御返答だけでけっこうでありますから、冒頭にこの点をお願いしておきます。
まず第一に伺いたいことは、大臣が就任されて以来、厚生行政についての決意についてはたびたび伺っておりますが、前川崎厚生大臣の態度と新しい大臣と比較いたしますと、川崎大臣は心身ともに決死の態度を売り物にして常にこの委員会に臨んだ。あなたの方は・大臣になられてからの態度を全体的に見ておりますと、心の奥底には鋳物のようなかたい信念を持っておられるように思われる。けれども、言外にあふれる言葉は案外冷たいように感ずるのですが、厚生行政の大転換期とも称すべきこの重大な時局に処しまして、小林厚相はどんな信念を持ち、またどんな決心で進まれるのか、こうした点についてお伺いしたいと思うのであります。この点に関しましても、私はばく然と信念とは何だというような問答をしようという考えはありませんので、具体的に申し上げますと、昭和三十一年は、すでに新聞紙でごらんの通り総評を中心として官公労等の賃上げ春季闘争炉計画されておる。世情はまことに騒然としております。しかもこうしたさなかに労働者を対象とする健康保険法の改正や、あるいはまた新医療費体系等が国会に上程されることになったのでありますが、これらに対しても、全国都道府県の医師会や歯科医師会が猛烈な勢いで反対を打ち出しておる。しかも昨今では爆発一歩手前というきわめて重大な場面に到達したと思うのでありますが、こうした時期に直接つながりのある労働者への立法措置を行おうとしております現在の大臣の立場として、今度の企画が時期的に当を得たものであると考えられるか。あるいはまことにやむを得ざる偶然の結果だとお考えになって御提案になられるのか。しかもまたなられる以上は、これに対していかなる決意でこの法律を成立させようとするのか、この点簡単でけっこうでございますからお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/32
-
033・小林英三
○小林国務大臣 お尋ねの問題は、今の四月一日からスタートせんといたしております医薬分業に伴う新医療費体系並びにそれに伴いまする新点数表、こういう問題と、それから一つは健保の赤字対策によりまする一部負担の問題、こういうことだろうと思うのです。私は新医療費体系に対しましては、この委員会におきましても、あるいは予算委員会でも言ったことがあるかと思いますが、これは、これに関係している諸君は、自分の職業に関係のある画期的な改変でございまするから、非常に大きな御関心をお持ちになることは申すまでもないのでありまして、これは当然であると思っております。従いまして新医療費体系に対しまする私の態度、考え方といたしましては——これは厚生省が、私が就任前からずっと引き続いて作業をして参りまして作ったものでありますから、私が就任後発表いたしましたあの新医療費の点数表というものは、四月一日からスタートいたしまする医薬分業に対して、これがわれわれの考えておる最善のものであるというので発表したことはその通りであろうと思います。しかしながら私は、これはとにかく人間が作ったものでございまするし、また厚生省が厚生省としての考え方で作ったものでありますから、これを客観的にあらゆる角度から見まするといろいろな御議論もあり批判もあると思うのであります。従いまして私は、画期的な改変の問題でありまするだけに、厚生省で作ったものは最善のものであるから、どこまでもこれを押し通していこう、こういう考え方は少しも持っておらないのであります。私はこれらの関係団体の幹部諸君あるは関係者の諸君にできるだけ多い機会にお目にかかりまして、それらの人々のいろいろな御意見をつぶさに、時間をかけて、私といたしましては今日まで拝聴してきているのであります。従いましてこういうような角度から考えまして、この点はこうすべきである、あるいはあの点はこういうふうがむしろよろしい、この点は民間の関係者がおっしゃる通りがよろしい、こういうことも多々あるのであります。いずれにいたしましても私はそういうような意見を十分徴しましてやっていきたい。同時にただいま医療協議会でこの医療の問題を審議中でありまして、この医療協議会におきましてもお医者さん、医療担当者というものは、全部が全部じゃない、一部の方々が出ておられるのでありますから、やはりお医者さん等の関係者の意見が十分医療協議会に反映するように、たとえば専門部会等を作りまして、医療担当者の諸君にもっと入っていただいて、そうしてできるだけ各方面の意見炉浸透したようなものが答申として出てくるようにと考えているわけであります。
それから健保の赤字対策の問題でございますが、これは一昨日来この委員会で申し上げておりますように、国家財政の上からもまた避けられない問題でありますし、今日の健康保険というものが非常に進歩向上しているこの姿におきまして、今までの一部負担の、たとえば初診料の五十円というようなものをもう少し御負担願って、健全な健康保険としての軌道に乗っていくようにということで私は今日なお考えているのでありまして、新医療費体系等につきましても重要な問題であればあるだけ慎重を期したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/33
-
034・野澤清人
○野澤委員 大臣に冒頭にお願いした通り、私は大体この方の専門家ですから、そう詳しい解説は必要ありません。要するにやるのかやらぬのかということだけはっきりすればよろしいので、ただいま新医療費体系のことについてお話がありましたからお尋ねいたしますが、これを最善のものとして発表はしたが、広く関係者の意見も聞いて、つぶさに時間をかけてきめたいんだ、修正されてもやむを得ないんだ、協議会の結論も待っているんだ、こういうことですが、すでに実施期は四月一日に迫っておる。そうしますと、手続上何日か前にはこれを告示する手続もとらなければならぬ、こういう関係がありますが、事務的にいつまでにこの新医療費体系がきまったらよろしいのか、この点大臣でなくてもけっこうですからお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/34
-
035・高田正巳
○高田(正)政府委員 新しい点数表を四月一日から実施いたしますには、事務的にこれを周知徹底させる期間が必要でございますので、少くとも三月上旬には告示をいたさなければならない、かように私どもは考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/35
-
036・野澤清人
○野澤委員 ただいま保険局長から三月上旬にはということでありますが、大臣のこの間からの答弁を聞いていますと、つぶさに時間をかけてという、このつぶさということは、大体半月くらいと了承してよろしいんですか、それともそれ以上延びる可能性がおありなんですか。決意のほどをはっきりと聞かせていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/36
-
037・小林英三
○小林国務大臣 少くとも三月上旬ごろまでには決定をいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/37
-
038・野澤清人
○野澤委員 先ほど医薬分業法案に関係する新医療費体系よりも健康保険法の改正というものは、現在が改正の時期としては絶好の機会かどうかということをお尋ねしましたが、これについては何らお答えがありませんので、大体絶好の機会と信じておやりになったと思うのでありますが、こういう点をお伺いしたいと思うのです。昨年川崎厚生大臣は抜本対策として赤字対策をする、こういうことを声明されまして、その結果七人委員会に委嘱いたしまして、根本対策を打ち出し、これは政府の隠れみのではないかというので、たびたび追究したのでありますが、必ず七人委員会で根本対策を打ち出して、これを来年度は実施するんだというお話であります。今度の健保の改正案というものは確かに七人委員会の答申に負うところが大きいと思うのでありますが、これは小林厚生大臣としては根本対策として健保の改正案を出したのか、やはり場当りの抜本措置として一時的の財政策としておやりになったのか、この点をはっきりしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/38
-
039・小林英三
○小林国務大臣 これは一時的の問題ではございません、少くとも抜本策としてやって参りたい、こういう問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/39
-
040・野澤清人
○野澤委員 この言葉のあやでありますが、抜本策ということと根本策ということとはどう違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/40
-
041・小林英三
○小林国務大臣 これは私はここ当分の間この方法によってやっていきたいと思っておるのでありますが、昭和三十五年までの間におきましては、先般来たびたび申し上げておりますように、社会保険の問題をどういうふうに持っていくかということを最後にきめたいと思っております関係から、根本策と申しますか、抜本策と申しますか、とにかく今日の累年赤字が出ております問題をこれによって解決をしていきたい、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/41
-
042・野澤清人
○野澤委員 大体それでわかりました。抜本策とは申せ、根本対策として一応実施する、しかもまた五人委員会等でいろいろ調査した結果はさらに万全の根本対策が次々と打たれていく、かように了承してさしつかえないのでございますか、ただ今度の改正案や新医療費体系をめぐっていろいろ取りざたされておりますが、この健保の改正というものはそれ相当の厚生予算の裏、つけによって計画されたと思うのでありますが、おそらく大臣自身もほとんど無修正でこれを成立させたいと考えておられると思います。ところが実際の社会の世論というものは一部負担が非常に大きく取り上げられまして、まるでこの一部負担というものが健保の精神をじゅうりんするがごとく、あるいはまた患者の医療費負担というものがふえていく、こういうふうに一般に流布されておるのでありますが、一昨日滝井委員の質問に対しましては大臣はこういうことをお答えになっております。赤字財政の対策として一郭負担なしでやることは望ましい、それから八木委員の健康保険において一部負担がよいか悪いかという質問に対しましては、一部負担はできるだけ避けたいとお答えになっております。これは厚生大臣の言葉のあやであって、論理が一貫しておらないと思うのであります。その結果生まれてきた言葉は、現段階では一部負担もやむを得ない、こういうきめつけ方をして説明されております。そこで大臣に特にお願いしたいことは保険医療について被保険者というものはどんな場合でもただで医療を受けられるということの概念をもってあなたは出発をしておるのか、好ましくないとか、好ましいとか、避けたいという言葉から考えますと、ただで医療するということを概念としてお持ちになっているのか、あるいは患者の一部負担を行うことによって、今回の場合のような法的措置をとって、国民の医療が向上する。つまり言いかえると、医療の向上と保険の健全な発展をさせるためには一部負担はやむを得ない、当然である、こういう考え方で出発されているのか。日本の保険医療を前進させようという重大なときに、大臣の一部負担に対する理念を率直にお聞きしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/42
-
043・小林英三
○小林国務大臣 今の野澤さんの御質問の中には、いろいろの意味が含まれておると思うのであります。将来われわれが企図しております経済五カ年計画の最後の年におきましては、国民皆保険に持っていきたいとわれわれは期待して努力しようとしておるのであります。そういう場合におきまして、被保険者の負担というものがどういう格好になっていくかということは、そのときの国の経済あるいは国民所得の問題あるいはいろいろな社会環境からして変ってくる問題であろうと思います。ただ今日の健保の赤字の問題につきましては、私昨日来の答弁でも申し上げておりますように、被保険者一部負担ということは避けることが望ましいのだ。しかしながら今日の国の財政、それから健康保険の向上進歩している状態から見ても、今までの一部負担よりもさらに進んでもう少し一部負担をよけいにしてもらいたい、こういうことによりまして健康保険が軌道に来りますことは、やはり被保険者の医原の進歩である、こういうように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/43
-
044・野澤清人
○野澤委員 非常に儀礼的な解説で、一応了承はできるのですが、世界の最も進歩的な国だといわれるソ連あたりの最近の社会保障制度の面を見ても、社会保障制度あるいは医療が国営になっておろうとも、被保険者のいわゆる一部負担ということは実施されておる。しかもソ連の労働者などは、薬局−行って調剤する場合にはほとんど患者負担であります。あるいはイギリスのように最も発展した社会保障制度の国であっても、最近では逐次個人負担の部分がふえておる。これは世界の社会保障制度に対する風潮だと思うのです。この流れをごらんになっておりながら、まだ大臣自体が、一部負担は避けなければいけないのだ、国家財政の建前からどうしてもやむを得ず今度はお世話になるのだ、こういう考えで厚生行政をやっていかれるということは、むしろ時代おくれでもあり、手おくれでもあるのではないか。こういう際に、進歩的な少なくとも信頼を受けて御就任になった小林厚相としては、清においてはなるべく軽減したいけれども、実質的には保険一切のものを貫いて流れる思想というものは、政府も国民も相互いにある程度の犠牲を払ってでも健全な発達をさせる。国家財政の規模、医療費の規模、そうしたものからあわせて一貫した個人負担という考え方を強くこの際打ち出すべきではないかと思うのでありますが、この点に対して、あくまでも一部負担はやりたくない、けれども財政上やむを得ない、こういう考え方で今度は法律を出すということになりますと、大きな手違いになるのではないか。むしろ日本の国情、財政規模から考えてみて、当然一部負担はやらなければいけないけれども、その額は最低位に押えるべきだという思想統一をされることが望ましいと思う。この点について、ただいまでなくともけっこうですが、よく省内においても思想統一をされ、大臣としても好ましくない答弁をされておるが、おそらく各局長、部課長というものは相当進歩的な考え方に集約されておるのじゃないか、こういう点につきまして、ただいまお答えがなくてもけっこうでありますから、後日この点について御解明を願いたいと存じます。
なお、赤字対策の問題について、時間がございませんので要点だけをお尋ねしておきます。この一部負担の問題に対する反対は三つあると思うのです。その一つは、国民の医療費、特に患者負担が多くなるからということで一方で反対しております。第二には医師、歯科医師の立場からの反対が出ておる。第三には国庫負担とにらみ合せての反対でありまして、これは国保が二割の補助をとった、健保には国庫負担がないのだ、こういうことから国庫負担というものをもっと増額しろという主張者が単にこれに反対しておる。こういう三つの場合が世論を支配しておるように感ぜられますが、大臣は、この三つの反対を一応仮定しますと・いずれを重点にしてお考えになりますか、この点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/44
-
045・小林英三
○小林国務大臣 野澤さんの御質問の趣旨が私にはまだよくのみ込めないのですが、もう少し掘り下げて一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/45
-
046・野澤清人
○野澤委員 一部負担の反対に三つの層がある。一つは国民の立場から患者の医療負担が多くなるということが一つ。それから第二には、お医者さんの立場から反対がある。第三には国庫負担とにらみ合せて反対がある。この三つの中で大臣はどれを重点と考えられるかということです。要するに国民の立場から、医者の立場から、単に国庫負担というものに対する見合いからというように反対している者の層があるが、どれをどういうふうにお考えになるかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/46
-
047・小林英三
○小林国務大臣 現在この一部負担に対する国民のいろいろのご批判を受けておるのでありますが、これに対する反対意見というものは、今野澤さんがあげられましたようないろいろの意味の反対意見に統括されるかもしれません。しかし私は、その階層々々あるいは立場々々によっていろいろ御意見か違うと思います。今どれを重点に置いて考えるかという問題につきまして仏、ここで直ちに申し上げることを遠慮したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/47
-
048・野澤清人
○野澤委員 それでけっこうでございます。そうしますと、大臣としては、どれにも甲乙はつけられない、要は総括的にこれらのものを勘案して今後進みたいというお考えだと善意に解釈いたします。
そこで、大蔵省は、三十一年度の予算を厚生省から要求した際に、健保に対して一割の国庫負担ということを要求しておったはずであります。しかもその過程においては、自民党の内部でも一割がつぶされ二十億になり、これではとうてい健保財政はやっていけないと言うて、大臣みずから辞表までふところに入れて涙をのんで三十億で承服せざるを得なかったという事実も私は聞いております。それほど熱心に厚生省あげて折衝しておりながら、単なる財政上のしわ寄せということでこの国庫補助がもらえなかったというのには、何らかそこに原因が無ければならぬ。そうすると、大蔵省が出したがらないという根本原因はどこにあるか、こういうことをお互いに検討してみる必要があるのじゃないか。省内においても当然これらの点についてはご検討されたと思うのでありますが、私は予算委員会あるいは本会議また当委員会等でたびたび申し上げておるのですが、健保の国庫負担ということが気軽に大蔵省で了承されないということは、今の健康保険の運営について、その根本対策というものが確立しておらない、もっと手をつける部分がたくさんあるということを大蔵省は承知している。ここに便宜的に金を流したのではいけないというので、その完成を待っているのではないか、こういう感じがするのです。これはあくまでも私自身の感じでありますけれども、もし大臣もそういうふうにお考えだとすると、今度の健康保険の改正案というものは、先ほどお尋ねしましたように、一応根本対策の一部を抜本的に実施する、こういう建前からいきますならば、赤字も当然ある程度まで解消するでしょうし、同時にまた、今後発生します赤字というものは、私は必ず国庫負担でまかなえると思うのです。こういう点について、昨日、一昨日の質疑に対しまして、大臣としては国庫負担は法制化したいという考えがあって、目下努力中であると八木委員に答えておったようでありますが、この赤字の原因というものをよく御検討され、また社会保険による保険医療というものの根本対策等を実施するということをさらに考えて、今後の国庫負担という道をどうしてもかちとらなければならないのが、大臣の責務じゃないか。こういうことを考えてきますと、今度の法律改正というものは、実際に画期的な一つの前進であり、また健保としては非常な飛躍、発展であると私は考るのですが、この国庫負担に対しまして、どういうお考えをお持ちか。ただ目下努力中であるというたよりない御返事では、私は心もとないと思うのです。国庫負担は今後必ずとるが、今度の健康保険の改正案はどうしても実施しなければならないのだ、その熱意と決意がなければ、この国庫負担というものは、何年たってもやはり大臣が涙をのみながら辞表をふところに入れて折衝しなければならないという悲惨な場面が繰り返されるのではないか。こういうことで、一応大臣の国庫負担に対する決意のほどを簡単にお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/48
-
049・小林英三
○小林国務大臣 お話の国庫負担の法制化という問題につきましては、私は極力努力をいたしておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/49
-
050・野澤清人
○野澤委員 次に、医師会や歯科医師会は、健康保険の改正、新医療費体系等の反対を現在叫んでおりまして、各地でいろいろと問題が起きておるようであります。このお話を聞きますと、いずれの団体も、政府は単に患者と医師にしわ寄せしている、医師にのみ犠牲を押しつけていると言われていますが、大臣自身として、今度の健保改正や新医療費体系は、医師を犠牲にする考えでおやりになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/50
-
051・小林英三
○小林国務大臣 そういうようなことは全然考えておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/51
-
052・野澤清人
○野澤委員 それでもお尋ねいたしますが、全然患者や医師を犠牲にしないという考えでいきますならば・現在のお医者さんが社会的にあれだけの騒ぎを起しているのはどういうのか、はなはだふに落ちないのであります。特に今度の赤字対策には、世上で騒がれているのは・乱診、乱療とか不正診療、不正請求とか、医師の不正行為をなくするためのようにも反面考えられる節があるのですが、こうした面について全然医師を圧迫しない、犠牲にしないというお考えなのか、あるいは多くの医師の中には、ややもすれば不心得者がいるから、これを何とかこの際改めさせたいという目的をもってやられておるのか、この辺のところを大臣はどうお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/52
-
053・小林英三
○小林国務大臣 今の御質疑の中で、どういう点を野沢さんは私に聞こうとされているかということにつきましてもう少し掘り下げて質問願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/53
-
054・野澤清人
○野澤委員 口下手なものですから、話がよく通じないようですけれども、よく聞いてもらいたいのです。現在お医者さんが全国的に大騒ぎをしているのだ、しかも保険医総辞退という決議までしているのだ、こういう窮迫した状態にまでお医者さんが騒いでおる。そうするとそこに何か原因がなければならないじゃないか。そうすると世間でいわれるように、不正診療があるとか、水増し請求があるとか、こういうことを予測して政府が法律を作るために反対を食っておるのか。あるいはまたそんな医者を圧迫する考えは全然ないとあなたはさっきおっしゃられましたが、そういうことは考えないようにして、単に公正妥当な健康保険法を作ろうという考えなのか、この点をお聞かせ願いたいというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/54
-
055・小林英三
○小林国務大臣 お説の通りに公正妥当の健康保険を作っていきたいというわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/55
-
056・野澤清人
○野澤委員 そうしますと、大臣自体は公正妥当な考えでやっていくということになりますと、間々実績を示されて、問題になりました過去の保険診療に医師の乱診乱療や、不正行為があったとはお考えにならないというわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/56
-
057・小林英三
○小林国務大臣 それはもうたくさんの医療担当者の諸君もあることでございますから、たくさんの中にはあるいはそういう方もあるかもしれないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/57
-
058・野澤清人
○野澤委員 だんだんはっきりしてきましたが、もう少し率直に言うてもらいたいと私は思うのです。要するに今度の一部負担というものは、国庫負担を一割要求した結果削られて、一部患者負担の二十三、四億というものが生まれてきておる、これは関連しておるのです。そういう現状の結果から見ると、一部負担そのものの中にもかなりそうした精神が織り込まれておるのじゃないか。要するに立法技術として者一部負担というものと国庫負担というものとは見合わさすべきだ、初めから四十五億もらい、二十三億もらって見合わさせるのだ。こういうふうな形で説明しておりますが、お医者さんたちは患者に一部負担させるということは受診率を下げることだ、乱診乱療を防禦しょうとして厚生省は企画したこういう批判まで率直に受けておる。そうしますと、この乱診乱療というものが患者の一部負担によって防禦できるという考えも一応納得できるのじゃないか。こういう筋を立ててみると、私は画期的な法律の改正だと思うのですが、大臣はこの点に関してどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/58
-
059・小林英三
○小林国務大臣 乱診乱療ということは防がなければなりませんけれども、しかしながら一方におきまして被保険者の早期診断の考え方を押える、あるいは受診率を押える、こういうような問題につきましては、一部負担におきましても、一部負担の形をどう持っていくべきかということは、われわれが慎重に考えなくちゃならぬ問題だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/59
-
060・野澤清人
○野澤委員 そうしますと、今度の一部負担というのは、大臣のお言葉をかりると、好ましくない、けれども一部負担をせざるを得ない、こういう結論になってきますが、その一部負担の中には、いわゆる乱診乱療というようなことを目的にしてやったものでもなければ、受診率を下げようという計画でもないのだ、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
それからなおこの健康保険の改正問題につきましては、国会内部においても、外部においても、お医者さんの議員やあるいは医師会等がこぞって決死的な反対をしているように見られるのですが、先ほどのお話のように、医師いじめではないという考えのもとにこれを検討していきますと、医師会や歯科医師会の反対というのは本質的にどういうところにあるのだろうということが一応想像されるわけであります。ことに保険医総辞退を決意しておるということは、すでに山陰・山陽・近畿各地とももう総辞退の態勢というものはできている。これは八木君からも質問がありましたけれども、大臣はこれに対してはそういう事態は絶対できないということで昨日は簡単に片づけられておられたようでありますが、この現象というものは大臣自体としては国民のためだというように感じられておりますか、あるいはまた単なる医師の経済問題だとお考えになっておりますか、この点も伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/60
-
061・小林英三
○小林国務大臣 これは立場々々によりましていろいろの考え方があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/61
-
062・野澤清人
○野澤委員 立場々々はよくわかりますが、国会内部等においてもほとんどの政治家が総辞退はゆゆしい社会問題であり、国民のために絶対にあれは避けなければならないということを心配しています。国会内でもそういうふうに心配しているのに、一方医師会側では国民のための医療だから総辞退してでも反対すると言っているのです。どっちも国民のためなんです。政治家が心配して総辞退の事態というものを防がなければいけない、これは国民のためなんです。反面今度は医師会の方では、日本の医療というものを健全に発達させるためには、国民のためにどうしても総辞退まで決行して反対しなければならぬ、こういう事態が出てきているのですが、この国民のためというのは、立場々々はありましょうが、どちらがほんとうの国民のためなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/62
-
063・小林英三
○小林国務大臣 これはいろいろな考え方があると思います。従いまして医療担当者の諸君がそういうふうに追い詰めたお考えをお持ちになっているということにつきましては、私はまだわれわれとの間に理解がお互いにいっていないのじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/63
-
064・野澤清人
○野澤委員 昨日でその話は理解のいかない程度まではわかっているのですが、その立場々々ということをさらに分析していきますと、たとえば医者の経済問題であるということで、今度の総辞退ということがもし決行されたとしたら、これは大きな問題だと思うのです。要するにお医者さんのわがままなんだという国民感情が強くなる。けれども国民の健康保険という立場から、もしも総辞退を決行するということになってきたら、迷惑をこうむるのはやはり国民なんです。この事態を甘く見るか辛く見るかということはその人の主観だと思います。しかし客観情勢はすでに団体の力で決意してしまったはずみでもって、ほんとうに辞退するかもしれない。みんな辞表をふところに入れて、医師会で集めているというのですから、そういう事態をもしも現在のままで推移すると、日本医師会を中心にして、この医師のわがままだと思われるようなこと炉実際に社会現象として現われてきたらどうするか、これについてはどうせ大臣は答えない。けれどもこれを国会内部では医師会のいわゆるどうかつとまでいわれている。こうした社会現象を生むようになったということにはいろいろな原因もありましょうけれども、一方では医師いじめじゃないか、ところがいろいろの経済問題から出発してくれば、そうならざるを得ない、こういう実に矛盾した立場に追い込まれておると思うのです炉、今度の問題がこのまま推移していきますと、私が一番おそれていますことは、医師会自体が一番悲しい目にあうのじゃないかということを心配している。国民の健康を預かるところのお医者さんが、いわゆる争議権を発動して総辞退をするというようなことが起きる、これは当然の権利として主張されるのですから、やむを得ないでしょう。また政府としても公的医療機関を活動させてこれに対処するだけの準備もおそらくおさおさ怠りなくやっておられるでありましょうが、反面医師みずからも国民から相当の誤解を招くことは当然であります。なぜ当然かと申しますと、現在総評炉中心になって賃上げ闘争のために三月攻勢を控えておる。こうしたきわめて複雑な社会情勢のときに、善良なお医者さんが総評のゼネストの先棒をかついだような結果になりますと、唯一のインテリゲンチアである医師層というものがきわめて悲惨な立場に立たされるのじゃないか、こういうことを私は杞憂しまして、単にこれは軽いアドバルーンだというような考え方でなしに、もっと大臣みずからが医師会にも歯科医師会にも薬剤師会にも乗り出して、これらの問題をあなたの言う通り十分に話し合いをすべきじゃないか。このまま放任するということは、厚生行政を担当する大臣の立場として私は不適当だと思う。しかも今度の健保の問題にしてもあるいは新医療費体系にしても十分世論も聞いた上でということで、大臣は大らかな気持でこれに接しております。しかしやはりこの問題はすでに矢が弦から離れてからでは間に合わないのですから、できるだけ早く対処する御決心がおつきになるかどうか。またそういう善処するというお考えであるかどうか、この点をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/64
-
065・小林英三
○小林国務大臣 私はお尋ねの通りに、先ほど申し上げましたようにあらゆる団体、あらゆる関係者の意見を聞くということはきわめて必要なことだと存じますので、現に医師会等の最高の幹部諸君にもたびたび機会を得てお目にかかって、そうして意向を徴し、私どもの意向も述べて今やっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/65
-
066・野澤清人
○野澤委員 そうしますと、もう一言お尋ねします。総辞退ということは一つの社会現象でありますが、大臣とは何ら関係がないでしょうけれども、しかし大臣としては軽く見ない、十分に肝に銘じて対処していくという御決意でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/66
-
067・小林英三
○小林国務大臣 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/67
-
068・野澤清人
○野澤委員 なおもう一点。この一部負担の問題につきまして予定しました財源は、二十三億か四億かに立案されておるようであります炉、この医師会、歯科医師会の反対と別に、一部負担に対して国民の世論というものは低額所得者に対して高額所得者と同一率でもって一部負担をさせるという考え方に相当批判があると思う。こういう時代でありますから、何も五万円の給料を取っているから五百円出せとか、三百円出せとかいうことではなしに、少くも四千円や五千円の低額所得者に対してはもう少しゆるくしてもいいのじゃないか、あるいは免除してもいいのじゃないかというような世論まで出ているようですが、低額所得者と高額所得者を大臣としてはあくまでも同率でいこうというお考えですか。この点お聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/68
-
069・小林英三
○小林国務大臣 ただいまの私の考えといたしましては、仰せの通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/69
-
070・野澤清人
○野澤委員 仰せの通りとはどちらでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/70
-
071・小林英三
○小林国務大臣 同一の考え方でいきたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/71
-
072・野澤清人
○野澤委員 この問題は、低額所得者でも高額所得者でも一部負担というものはどうしてもやらなければならぬ、こういうお考えでお進みになるようでありますが、そうしますと、国民感情も医師会の総辞退というものも、あるいは杞憂でなしに、そうした方向にぐんぐん引きずられていくと思うのですけれども、今度の総辞退などということを医師会等で決意をされる原因というものは、大臣自体が考えてみて、健康保険の改正のためにそういう決意をされたか、新医療費体系、いわゆる医薬分業に反対して決意をされたか、どちらを強く見ておられますか、この点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/72
-
073・小林英三
○小林国務大臣 これは私もあらゆる機会において関係者にもお目にかかっておりますが、新医療費体系の問題ももちろんございましょうし、それから健保の被保険者の一部負担という問題にも関連しておると思います。ただ医療担当者の諸君が健保の一部負担に反対されているその反対の理由が那辺にあるかという問題につきましては、私は私としての考えを持っておるのでありますが、ここで私がこれを申し上げることは遠慮したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/73
-
074・野澤清人
○野澤委員 総辞退というものは決して好ましいことではないから、そうした事態を引き起しては実際これは申しわけないと思いますので、私たちも極力これは避ける、大臣もまた重点的にこれに対処してもらえると善意に解釈しておりますが、しかし現在の社会情勢ですと勢いに乗じてどんな悲しい事態に突入せぬとも限らぬと思うのです。そうした際に一般患者の応急処置等は万全を尽し得たと仮定いたしましても、今度の保険法の改正では、医療機関指定と保険医の指定と二本建てになっております。これには指定をする際に適格者であるか欠格者であるかという判定もしなければならぬ、そうしますと法律はまだできていないというか、法律審議の過程において総辞退をした保険医というものは欠格者と判定するのか、適格者として立法の精神にのっとってやられるつもりであるか、この点はどう考えておられますか。局長でもけっこうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/74
-
075・高田正巳
○高田(正)政府委員 やがて法律案を御提出申し上げて御審議をいただきたいと存じておりますが、ただいまの私どもの考えといたしましては、従来保険医の指定というものがございましたのですが、保険医の登録という形にいたしたいと思っております。その登録は法律に一定の欠格要件を書きまして、従ってそれに該当しない人はだれでも登録できる、だれでもするという建前でいくつもりでございます。
それから機関の指定につきましては、これは今までない考え方でございますが、これの運用につきましては大体従来は保険医指定という法律行為がございましたが、それと法律的な性格等も同じような関係で、運用の面におきましてもさようなつもりで参るつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/75
-
076・野澤清人
○野澤委員 この総辞退ということは好ましくないのですが、もしそれが発生したとして医師会の立場からいけば国民のためなんです。けれども結果から見ると国民自体が非常に迷惑するというゆゆしい社会問題になってきます。そうした事態を引き起した個人の保険医というものを、新しく出た法律でもって指定する場合に個人的な保険医の指定を野放しにしてやるというお考えか、その度合いによっては欠格者としてこれを扱わざるを得ない事態も——私は世論が許さないんじゃないかと思いますが、これに対するお考えはいかがですか。これは仮説の前の議論ですから的確なお答えは無理だと思いますがどうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/76
-
077・高田正巳
○高田(正)政府委員 保険医の登録ということにつきましての欠格要件は法律に列挙いたすつもりでおりますが、ただいま法律の案文を持っておりませんのでその各号に該当するかどうか、ちょっとお答えいたしかねるのでございます。しかし法律が成立いたしましてその各号に該当せざる限りは、保険医の登録というものは法律上いたすべきものと私は考えておるわけでございます。
それからもう一つ保険医の総辞退という問題につきましては、総辞退ということになりますと、若干ニュアンスが変ってきますけれども、現在の保険医の制度ではたしか一ヵ月の予告期間か何かをもって辞退をすることは合法的にできるわけであります。そういうような規定になっておりまするので、手続等において欠くるところがあれば別でございますけれども、非合法であるということには相ならぬかと思います。ただそれが総辞退という形になった場合に、若干ニュアンスが変ってくるということは、これは社会通念上の問題になると思いますけれども、純粋な法律関係においては今のようなことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/77
-
078・野澤清人
○野澤委員 時間も大分経過していますので、大臣にお尋ねしたいことがたくさんありますが一応この程度で健康保険の問題は打ち切りまして、あと二、三予算上の問題についてお伺いしたいと思うのですが、ただこの際大臣に特にお願いしておきたいことは、とにかく国会における審議の過程におきまして思想統一をなるべく各局長ともやってもらうことが必要じゃないか。特にこの一部負担に対する考え方は、おそらく局長と大臣とが根本から違っているのじゃないか。便宜主義的な一時の答弁内容としては了承できますが、厚生行政を一貫した方向に持っていくためには、少くとも部下の意思も広く聞くべきである。外部の意見ばかりでなく、お役所の部課長の意思も十分取り入れて一貫したものを打ち出してほしい。これがやがて国会全体を支配するものと考えますので、慎重に善処をしていただきたい。また争議等に関しましても、事態はきわめて微妙な関係にありますので、賃上げ闘争に巻き込まれたならば非常な不幸でありますから、こういうことの前提のもとに、真剣に考えてほしいということを御希望申し上げておきます。
次にこれは悪くばかり言わずに厚生省もたまにほめなければいかぬと思うのですが、今度医薬品の輸出振興のために香港に輸出あっせん所を開設するという目的で通産省所管に予算が計上されました。わずかではありますが輸出の振興のために、厚生省としては珍しく善政を施したと思うのです。国際貿易上、今日本が大きな期待を持っておりますときに、こうした合理的な発展策を、しかも自由市である香港にそうしたあっせん所を開設するというようなことは、珍しく厚生省としては大できではないか、しかもこの医薬品の輸出というものは非常に主原料としては少くて高い技術料がとれる唯一の輸出源として、これは二、三十年前から主張されておりますが、なかなか薬九層倍だとかあるいは薬屋はもうかるものだというような批判ばかりで、真剣に取り組むものがない。これをどうしても実際の貿易上で振興させるというような段階を作るのには、これは厚生省が主管でしっかりやってもらわなければならぬ。ところが実際予算をとってみまずと、通産省所管に計上されておる。こういうことであって、実際にがっかりしたのでありますが、しかし目的が目的でありますので、これを橋頭堡として今後も南方等に十分進出できる素地を作られたいと思うのでありますが、この際お伺いしておきたいと思うのですが、それは輸出あっせん所の運営というものは、どういう形でやられるのか大臣でなくてもけっこうでありますからお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/78
-
079・森本潔
○森本政府委員 お答えいたします。本庄度予算におきまして二百四十七万円の輸出振興補助金が出たのでございますが、これは今お話のように通産省所管に計上いたしてございます。ただしこれは両省並びに大蔵省の申し合せによりまして主として厚生省がこの振興の事業の指導監督に当る、かようになっております。大体の考えといたしましては、香港に医薬品の輸出入組合というものがございましてこれに補助をする建前に相なっております。計画といたしましては、香港にあっせん所を設け、さしあたり初年度におきましては二人の職員を置きまして、それがわが国の医薬品を紹介し、また現地の情報を集めまして、さらにあっせんのことまでやる、かように考えております。今後の成績によりましてはまた他の場所にも同様なことを考える必要があろうかと考えますが、ともかく初年度におきましては、現在わが国の医薬品の輸出の最も多うございます中共、東南アジア地域に対しての輸出振興に当らせたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/79
-
080・野澤清人
○野澤委員 もう一ぺんこの問題についてお伺いしますが、二人の職員を出すとおっしゃいますが、それは厚生省の役人が出るのですか、それとも厚生省自体が、医薬品の輸出振興会あたりから、委嘱してお出しになるのですか、どういう人が予定されておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/80
-
081・森本潔
○森本政府委員 この人選は非常に大事だと思っております。わずか二人の人で非常にむずかしい仕事をしようというわけでありまして、今のところ考えておりますのは、身分としましては輸出入組合の職員ということになります。公務員ではございません。しかしどういう人がいいかという問題は非常にむずかしゅうございまして、ただいまの気持としましては輸出入組合の現在の職員から第一に考える。次に、なければ業界の専門家からピック・アップする。それが一番いいと思うのでありますが、かりに、もしないとします場合には、あるいは役人の中からでも選ばなければならないかと思っております。もっぱら適任者を選ぶという見地に立ちまして選考したいと思っております。ただ範囲は今申したような順序で考えたら適当じゃないかと思っておりますが、要は適任者を得るということで、範囲を限定する必要はなかろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/81
-
082・野澤清人
○野澤委員 これは初めての試みでありますから十分注意して、民間人でも役人でも——特にあの土地へ行ってみますと、自由市で歓楽街も相当発達していますから、初っぱなに失敗すると、今後輸出あっせん所などを各地に開くなんという計画は全部おじゃんになりますから、一つぜひ慎重にやってもらいたいと思います。
もう一点あへん特別会計についてでありますが、二億円ばかりが計上されておりますが、日本の正当なアヘンの需要量はどのくらいあるのか、まだ輸入品を三十八トン、国産品を三トンと、こういうふうに区分されていまが、輸入品と国産品の成分の差はどんなふうになっておりますか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/82
-
083・森本潔
○森本政府委員 アヘンの中に含有されます成分のうち、最も重要なものはモルヒネであります。それからその次が天然コデインであります。最初のモルヒネにつきましては、現在トルコ産を輸入しておるのでございますが、トルコ産のものはモルヒネの含有量が一、主ないし一四%、内地産のものは一一ないし二一%というように、含有量はトルコ産の方が多うございます。それから天然コデインにつきましては、国産品の方が約一%多いという程度でございまして、大体甲乙なかろうという感じでございます。それから買い上げにつきましては、モルヒネの含有量によって価格を算定いたしますから、コデインの含有量の多少はそう価格に影響しない、そういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/83
-
084・野澤清人
○野澤委員 国内の需要量は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/84
-
085・森本潔
○森本政府委員 続いて需要量について申し上げますが、麻薬は医療用以外には使用しないのでございますが、モルヒネの含有量一〇%に対してアヘン約三十五トンないし四十トン、これは年によって多少変更がありますが、三十五トンないし四十トンという数字であります。それから本年度の予算に組んでおります払い下げの計数は、先ほどお話がございましたように三十五トンであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/85
-
086・野澤清人
○野澤委員 この輸入価格及び国産品の買い上げ価格は幾らになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/86
-
087・森本潔
○森本政府委員 輸入品につきましては約四万五千円、それから国産品につきましては七万九千円、これはいずれも一キロ当りの価格でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/87
-
088・野澤清人
○野澤委員 厚生省自体としては麻薬対策として過般来いろいろ検討されておるようですけれども、現在麻薬患者はだんだん減ってきている。あるいは医療用に使うということも、パー・ア・ヘッドで〇・七とか〇・八とかいう数字も出ている時期ですが、これに対して今後国内にストックをするという考えもあったようにも聞いておりますけれども、ただいまお聞キしますと約三十五トンないし四十トンであります。そうするとやはり全部消費されるという目標でおやりになっておるのですか、この点と、もう一つは払い下げする場合に国産品と輸入品とはスライドして出しておられますか、別々に出しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/88
-
089・森本潔
○森本政府委員 その年間の所要量だけをその年ごと買い上げるかどうかという問題でありますが、これは三十年度の三十一年度に繰り越す分が約十トンございます。これが大体翌年度繰り越しになっております。それから本年度におきましては一般会計から千五百万の繰入金をいただきまして、それによって約六トンのアヘンが購入できます。この十六トンというのが大体三十二年度に持ち越す保有量という考えであります。この十六トンといいますのは約半年分の使用量でありまして、万一の場合におきましても約半年分を保有しておれば支障なかろう、こういう考えでございます。それから払い下げする場合の価格は国内産、トルコ産をプールいたしまして同一の価格にいたしまして払い下げをいたしております。価格は四万九千円ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/89
-
090・野澤清人
○野澤委員 もう一点だけで終ります。そうしますと、国産品と外国産と相当価格の開きがあるようですが、数量は少いのですから、国内でも栽培奨励してやりますと逐次輸入は押えることができるのではないかと思うのですが、この点に関して厚生省自体が国産品を奨励して、しかも聞くところによると米の裏作でできるというふうなことで、日本人は比較的栽培技術が発達しておるのですから、ちょっと指導されれば相当の成果があげられるのではないか。そうすれば半年分ものストック品をわざわざ持たなくとも、こういうところに予算を寝せなくともやっていけるのではないかと思いますが、この点お聞きしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/90
-
091・森本潔
○森本政府委員 最初のストックの問題でありますが、輸入する場合におきましても、全部国内産でまかなうといたしましても、やはり半年分ぐらいのストックは必要だと考えております。
それから全部国内産に切りかえてはどうかという問題でありますが、これにつきましては、先ほど申しましたように外国産は四万五千円、国内産にしますと七万九千幾らになり、価格の差が相当ございます。全部国内産に切りかえますれば麻薬の薬価というものが当然上ってくるのではないかと思います。さような、薬価に及ぼす影響が一つありますのと、麻薬を栽培いたしますと取締りを要するのであります。現にケシの密作等がございますので、さようなことのないように厳重に監視員をつけて取締りをしなければなりません。現在の監視員の能力等からいたしまして、現在の栽培面積をふやしますことは、取締り上困難であります。こういう現実問題がございまして、今申しましたように価格の面と取締りの面からいたしまして、さしあたりこれをふやすのは適当でないという考えを一応持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/91
-
092・亀山孝一
○亀山委員 ただいまの薬務局長の御説明でありますが、確かに今野澤委員も述べられましたように、国内産のアヘンの栽培技術さえよければ、戦前はたしか一五%まで行ったのです。お言葉によれば、外国産アヘンの方が含有量が多いと言われるけれども、現在はそうかもしれません。しかし従来の経験に徴すれば、日本の栽培技術というものは非常に進んで参っておったのです。一時戦争中衰えた。そうならば、価格はよし七万九千円と四万九千円であるかもしれないけれども、これは相当に私は指導によってよく行くものだと思う。今取締りの問題をいろいろお話がありましたけれども、これは多くは集団的に、和歌山県であるとかあるいは大阪府であるというように、大体まとまっておるし、また国内におきましても、今野澤委員の言われたように、米の裏作であって、非常に農民も希望しておる問題なんです。そうして戦前にあったようないわゆる国内アヘンの奨励という問題、ことにアヘン業界の関係等から考えますと、私は今の栽培技術の問題と、それから国産奨励という意味でこれは今薬務局長の答弁のように、国内産を増さぬというお考えは私はどうかと思うのです。この点は一つもう一度御答弁を願い、あわせて厚生大臣のこの点に対する御答弁を得たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/92
-
093・森本潔
○森本政府委員 ただいまお話のような考え方はあると思います。それと先ほど申し落したのでございますが、現在トルコあるいはその他の国になるかもしれませんが、輸入をいたす場合にも、まだ契約ははっきりいたしておりませんけれども、見返りの輸出ということを一つ考えております。かりにトルコから二億円のアヘンを輸入しますと、その見返りに輸出するということも考えております。それから現在東洋におきましては、あまり麻薬を作っておるというところはないのでありまして、作れば日本も非常に有利なわけであります。かようなことからいたしまして、輸出という面を考えますと、国内産の高価な原料でやりました場合に、外国との競争の問題が出てくると思います。そういう点もちょっと申し落したのでつけ加えたいと思います。それでそういう今申し上げた三つの理由がございますので、今直ちに切りかえをするかどうかということは問題があると思います。それから何分にも戦前におきましては相当習熟いたしておりましたが、ケシの栽培を再開いたしましてからまだ一、二年でございます。将来さようなことを考慮すべき時期が来るかと思いますが、ここしばらくその辺の専一情を各方面から検討してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/93
-
094・小林英三
○小林国務大臣 亀山さんの、アヘンの国内産に対して将来どういう考えを持つかという御質問でございまするが、亀山さんのお説の通りに、かっては国内産も相当の量があったと思いますが、この問題につきましても十分検討いたしたいと思います。国内産で政府が力を入れれば、やはり値段等につきましても、相当私は将来開ける余地があると思いますので、十分検討していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/94
-
095・亀山孝一
○亀山委員 ただいま厚生大臣の御答弁及び薬務局長の御答弁で了承いたしましたけれども、アヘン問題というのは御案内の通り非常な大問題でございますし、ことに麻薬の問題というものは非常にデリケートな問題でありますから、アヘンの輸入という問題については十分慎重にお考えになって、よし見返りであっても国産奨励という立場、その意味からいって国内産アヘンの助長という問題については、十分一つ御考慮を願いたいということを希望申し上げまして、質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/95
-
096・佐々木秀世
○佐々木委員長 午前中はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。
午後零時四十六分休憩
————◇—————
午後二時四十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/96
-
097・佐々木秀世
○佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。
午前中の質疑を続行いたします。八田貞義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/97
-
098・八田貞義
○八田委員 まず新医療費体系の問題につきまして御質問いたしたいと思います。
調剤技術論とか、医師、薬剤師の職業分化論などのいわば概念論から、現実にもっと切実な新医療費体系をめぐる開業医・開局薬剤師の経済に密着した問題が具体化するにつれまして、今や医薬分業論争は当初の趣きを変えまして、もっぱら新医療費体系で個人経営の医院や薬局の生計が成り立つかどうかという生活につながる問題が論議の中心となって参りました。新医療費体系下の調剤は、医師がやろうが、薬剤師がやろうが、低賃金の強制であり、それを数でこなせば低賃金の労働強化となってはね返り、結局のところ業者に何らかのはね返りを及ぼさずにはおらない、こういう観点から社会問題化しているのはすでに大臣も御承知のところであると存ずるのであります。そこで私は、この新医療費体系の国会審議に関しまして、あるいは国会の取扱いにつきましてどういうふうに考えておられるかということにつきまして、まず質問をいたしたいと思うのであります。
というのは、高田保険局長が十二月二十七日の中央社会医療協議会という公的な場所におきまして、竹中委員の質問に答えまして次のように述べておられるからであります。すなわち「これは法律案とは違いまして、必ず国会に提案して御審議を、議決をいただく筋合いのものではございません。ただ国会が国政調査権の関係からこれを取り上げて御審議をいただくのは、これは自由でございます。」と述べておられるのであります。もちろんこのものが立法事項でないことはわれわれも百も承知をいたしておるところでございます。従って、国会の審議を経なくても、医療協議会に諮問して、大臣告示というような形式でもってやり得るということは申すまでもありません。しかしこれは単なる立法事項ではないから、政府は、参考までに、あるいは国会の求めに応じて提出しているのだというような安易な性格のものではないということを知らなければなりません。お互いがただ事務的にこの新医療費体系というものを研究調査するというような、そんな単なる学術的な問題ではないのであります。新医療費体系の精神を生かした、あるいはくんだというような厚生省発表の点数がいいとか悪いとかいうような技術的な問題ではなくて、この新医療費体系なるものがどういう資料とどういう政治的背景をもって生まれてきたか、あるいは関係法律案の改正をどのような形で審議を進めていったらよいか、さらにまた、法律二百四十四号の医薬分業法の実施と新医療費体系とはどういう関連を持ってどのように実施されていくのかなど、数多くの政治問題を蔵しているのであります。大臣も御承知のことと思いますが、二十二国会におきまして、医薬分業と医療費体系の新しい結びつきが不可分の関係になって、新医療費体系を審議せずんば医薬分業法案を審議することができないような状態に国会を追い込み、結局のところ医薬分業法をば実施延期の運命に追いやったのですが、そのとき以来国会は、医薬分業の裏、つけとなる新医療費体系の審議を、医療という観点から十分検討せねばならぬという責任ある立場に立つことを余儀なくされているのであります。従って国会においては、政治問題として大きく取り上げなければなりませんことは、単なる事務的な審議で処理し得るという性格のものではないということであります。現に国民の間に、あるいは医療担当者の間に、大きな社会問題として渦巻いている以上・形態はいかにも厚生大臣の権限できめ得る告示程度のものではありまするが、本質は、ただいま申し上げましたような、法律の中身を左右するものであります。いわば法律案の前提となるもの、あるいは法律以上の、法律以前の問題ということができる重要な性格を持ったものということができます。国会と政府のこの問題に関する基本的態度というものを明確にしておく必要があると思われまするが、厚生大臣はこの新医療費体系と、国会審議との関係をどのように考えておられますか、お伺いいたしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/98
-
099・小林英三
○小林国務大臣 お説の通りに四月一日から医薬分業法が実施されるのでありますが、その医薬分業という問題は、国会審議の経過から考えましても非常に大きな政治問題の一つでありまして、しかも今回の新医療費体系並びにそれに付随いたしましての新点数表というものは、実質的に四月一日からスタートいたしまする医療費体系に現実的に不可分の問題であります。従いまして、この問題を厚生大臣の権限いかんにかかわらず国会におきまして十分な検討をなされますことは当然のことでありまして、われわれといたしましても国会におきまするいろいろの御意見に対しまして十分に傾聴いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/99
-
100・八田貞義
○八田委員 ただいまの大臣のこの問題につきましての御所信を伺わしていただきまして感謝するものであります。次にお尋ねいたしたいことは、新医療費体系は、医療に関する診療報酬の規定でありまするから、医療担当者とこの新しい医療報酬制度を作るに際しまして十分な協議折衝をしなくてはなりません。ところで一体この厚生省原案ができ上るまで、医療担当者が、たとえば医師会、歯科医師会などの関係者とどのような方法で、あるいはどのような機関を通じて協議折衝されたか、以前にはそのような協議折衝の形はとっておらなかったかどうか、これについて御質問いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/100
-
101・小林英三
○小林国務大臣 今の御質問でございますが、むろん厚生省といたしまして新しい体系を打ち立てまする上におきましては、非公式ではございまするが、それらの団体の幹部諸君にはあらかじめ御意見は聴取していることは事実であります。しかしながら、これはなかなか微妙な問題がございまして、おそらく日本医師会にいたしましても日本歯科医師会にいたしましても、あるいはその他の関係団体にされましても、全国で非常にたくさんな会員諸君を持っておられますから、こういう新医療費体系のような非常に複雑多岐な問題につきまして、医師会といたしまして、あるいはその他の団体といたしまして、こういうことならば了承するとかしないとかいうような問題を前もって決定するというようなことは、私はいろいろな情勢からいたしましてでき得ないことだと思うのであります。しかしながら、厚生省といたしましては、非公式には御意見を聴取いたしたことはあるのでありますけれども、大体私がたびたび申し上げておりますように、厚生省が独自の立場におきまして相当の期間かかって作業いたしたものでありまして、これは厚生省といたしましてはまずいい、こういうことで出したのでございますけれども、いろいろの方面の御意見も聴取いたしまして万全を期したい、こういうふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/101
-
102・八田貞義
○八田委員 私の質問の仕方がちょっとうまくなかったと思うのでありますが、医療費体系の作業が長い時間かかってやられたということは私も承知いたしておるのでありますが、大臣が御就任されましてから、大臣みずから折衝に当られたような事実があるかどうか、またあるいは大臣が御就任以前において、厚生省の事務当局の人々が医師会の人々あるいは歯科医師会の人人と個別折衝があったかどうか、あるいはどのような機関でもって、そうしてどのような形式でもって折衝がされたかということをお伺いしたわけでございますが、その点についてもう一度御答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/102
-
103・小林英三
○小林国務大臣 私が就任いたしました当時には、すでに厚生省といたしましては、引き続いてこの新医療費体系に対しまして偉業をいたしておったのであります。従いまして、私が就任いたしましてから、これらの団体の幹部等に、もちろん非公式ではありますけれども重要な問題についてあらかじめ意見を聴取するということはあったことを聞いているのであります。また私自身といたしましても、就任以来それらの団体の幹部諸君にも努めてお目にかかって、そうしていろいろ御意見も拝聴いたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/103
-
104・八田貞義
○八田委員 そこでその折衝の内容に入りたいのでありますが、たとえば、全面的に初めから話が合わなくて物別れとなったか、あるいはどの事項については意見が合い、あるいはどの事項については意見が合わなかった、こういった点について大臣は詳しく事務当局からお聞きになっておられるかどうか。と申しますのは、新医療費体系を、真に医療担当者の得心、納得、協力、理解のもとに進める、それにはかすに時日をもってしてもよいのだというようなお考えで折衝審議されたか、この点についてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/104
-
105・小林英三
○小林国務大臣 私が今申し上げましたのは、厚生省の事務当局が非公式にたびたびお目にかかっていることは承知いたしておるのでありますが、その具体的内容については、事務当局に関しましては承知をいたしておりません。ただそれらの幹部の諸君と私の方からむしろ努めてお目にかかりたいと思っておるのでありますからして、たびたびお目にかかっております。ただ問題は、幹部諸君ばかりでなしに、それらの大会等がありましたり、その他の際におきまして、県の代表の諸君であるとか、いろいろな諸君にもお目にかかっております。お目にかかっておりますが、私も努めてどういう点がどうだとか、ああいう点がどうだとかいうような具体的な問題につきましても聞こうとしております。極端な場合を申し上げますと、私にちょっとわからぬような場合には、向うのこういう点がこうだから改良してもらいたいとか、ああいう点がこうだから考えてもらいたいというような問題につきまして、私の持っておるノートに向うの手によって書いてもらっているというようなところまで私は検討をいたしているのであります。ただ問題は、同じ医師会の団体の諸君といえども、必ずしも同一の陳情でない場合が多々あるのであります。これは全国には数万のお医者さんの方々がおられるのでありましょうし、その他の方々もおられるのでありましょうが、これを統一し、みんながほんとうに気にいるような問題についてこれをコンデンスしていくということは、これはおそらくそれらの団体の最高幹部の諸君はむずかしいと思いますが、現に私がお目にかかりましても、主張が一致しているところもありますし、場合によっては全然一致していないところもあるのであります。それにもかかわらず、私どもはできるだけそれらの主張を尊重しまして、それを私ども事務当局でも検討をいたしまして、現にそうしつつあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/105
-
106・八田貞義
○八田委員 そこで、いろいろ協議折衝されたということはわかるのでありますが、聞くところによりますと、その協議折衝の場がはなはだ少くて、厚生省内において公衆衛生局あるいは医務局、保険局、この三者が一体になって全く秘密的に一方的に作業が続けられている。それが突然に医療協議会に持ち出された、こういうふうに伝えられておりますけれども、大臣が就任以前のことでございますから、あるいはよくその点についておわかりにならぬと思いますが、そういうことが世間に伝えられているのであります。大臣はその点について、事務当局にただしてみられたかどうか。その点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/106
-
107・小林英三
○小林国務大臣 もちろんこの新医療費体系全般について発表いたしましたのは、私が就任後でございました。私が就任いたしましたときには、すでにこの問題炉医薬分業の問題に関連して、厚生省におきましては、以前から作業を一生懸命にやっておった際でありまして、これらの作業についても、あるいは最後の結論についても、私といたしましての注意は省議等において事務当局にもいたしております。事務当局もその点については今日といえども私と全く同感百であったと考えております。発表いたしましたのは私が就任後でありまして、ただ今お説のような全国のそれらの各団体の意見をなぜ徴しなかったかという点につきましては、これは私自身がいろいろな、たとえば長野県の代表であるとか、あるいは群馬県の代表であるとか、東京都の代表であるとかいうような方々にお目にかかりまして、いろいろ聞いてみましても、必ずしもその意見が一致していないような点もございます。私が受けました陳情書等においても、たとえば一方においては、全額国庫負担、いわゆる健保の赤字問題については、全額国庫負担すべしというようなことが第一に掲げてあるような陳情もございますし、それからまた、今日の医薬分業という問題に対して、これはもう占領政策の残津であるから、こういうものを今取り上げてどうこうすることはいかぬというような文書等もあったりいたしまして、要するに、これに対する反対の内容については、いろいろまちまちになっておるのであります。それから、私がそれらの団体の幹部等にも、たびたび折衝あるいはお目にかかって意見も聴取しておりますが、私の考え方としては、おそらくそれらの幹部諸君といえども、最後のこれならば私どもが承知ができるのだということを率直に私どもに申し出て下さるような段階にはまだなっていないのであります。しかし努めてお互いに理解し合っていきたいということは、私も考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/107
-
108・八田貞義
○八田委員 今新医療費体系について審議中であるところの中央社会保険医薬協議会というのは一体どのような性格のものであるか、一つお知らせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/108
-
109・小林英三
○小林国務大臣 これはやはり法律に基きまして、たとえばこういう新医療費体系のような医療の運営につきまして最も必要なるところのものについては、厚生大臣の諮問機関といたしまして諮問いたしまして、そして各界から出ておられますところの委員諸君によりまして十分の検討を願って、厚生大臣に対して答申を得まして、厚生大臣はその答申を十分場に尊重いたしてやっていく、こういうようなことになっているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/109
-
110・八田貞義
○八田委員 そうしますと中央社会保険医薬協議会というものは法的には一つの諮問機関でありますから、医療費体系について診療報酬の諸問題について医療担当者と折衝する公式の場ではないと考えられます。厚生大臣の権限を執行する前に入念にいろいろと意見を聞くところでありまして、いわば仕上げの場でありますから、ほんとうの折衝というものは非公式に事前になすべきものであると考えております。ところが、この事前折衝ということにつきましてははっきりといたした回答が得られておりません。それでは一方的な押しつけでありまして、あたかも勝手に相談もなしにでっち上げたバラック小屋に転居せよというようなものであります。転居を命じるならば間取りぐらいの相談は事前においてすべきものだと思われます。住みなれている住居の立きのきを命ずるのでありますから、それくらいの事前処置は当然常識としてあってしかるべきものであります。このような家主の一方的都合でたな子との間に起るトラブルの多いことは大臣も御承知のことと思われます。中央社会保険医薬協議会における審議が難航をしておりますのもこのような事情に原因していると思われます。そこで私はこの新医療費・体系の政府原案というものが事前に十分関係諸団体と折衝が行われ、納得と了解ずくでできておったらと思うのですが、どうですか。厚生当局の準備不足と提出時期が遅れたので満足な審議も行われないというどたん場に入ってこの紛糾です。大臣は一体どのようにしてこのような状態を打開されていくか。大臣の心がまえ、対策を率直に聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/110
-
111・小林英三
○小林国務大臣 発表する前もって予備的に各種関係団体等の意見を十分聴取してやるべきであった。これは御説は一応ごもっともと思います。しかしこれはたとえば今回の発表後におきまして一方の医療担当者の方におきましては、新医療費体系によっては従来の医療費よりも損をするというような決議もなされ、また現にそういうことが各地で出されておられるのでありますが、これはあるいはそうであるかもしれません。しかし一方におきましては、反対的立場にあります保険者の会合におきましては、新医療費体系によるとお医者さんがもうけ過ぎる、よって反対だ、こういうようなこともありまして、私は先般も、ずっと前でございますが、厚生省が作ったものであるからして、もちろんこれは客観的に見まして完全無欠なものだとは言えないかもしれない、りっぱなものとして作業をしてでっち上げたものでありますけれども、これはもう実際に検討いたしますればあるいは多少欠陥があるということも考えられないことはないと思うのであります。ただ問題は、私はそれらの諸君にもよく申し上げたのでありますが、最初からこれが何だかお医者をいじめるものであるとか、あるいはそれについて十分にまとまった、突き詰めた研究をしないで、いきなりこれでは損だというように、先入主的に考えられては困ります、十分に検討をして、そうしてこうこうであるからこうだということでありましたならば、私どもそれに対してはいつでも再検討1をするということを、私は最初から申し上げておるのであります。こういうような問題につきまして、やはり一人の人がこうだといえば検討もしないでそうだというような場合も、世間では間々あり得ることでございまして、私はこういうふうな問題につきましても努めてこの案のどの点が悪いのか、どの点がいけないのか、しからばあなたのおっしゃる通りでいいか悪いかという問題につきまして、これはこれを作った厚生省の事務当局だけでもいけないので、お互いに立ち会って、双方の意見を聴取して、どちらが正しいかというようなことをする必要がある、こういうことを何べんも言ったのでありますが、いずれにいたしましても、これは十分に検討をいたすつもりでおりますし、またお医者さんの立場においていろいろの会合を設けられて心配されるということも、これは少くとも理由のあることと思いますので、私も御同情申し上げておる次第でありますから、十分に検討をいたして参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/111
-
112・八田貞義
○八田委員 医という行為そのものはいつの時代にも仁術であります。だがこれをもって医業の経営にまで仁術を要求されるものはないことは、世の識者にもまた大臣にもわかっていただけると思います。医という仁なる行為に没頭して、そこにおのずから医業の経営が成り立つ体系こそ、医人も国家、社会ともに求めておると真の医療費体系であると思われます。そこでこのような真の医療費体系を生み出すためには、かすに時日をもってしなければならぬわけであります。聞くところによりますと、政府当局は医療協議会に対しまして二月一ぱいまでに審議を完了してくれというようなことを希望されておると伺っておりますが、そうするとあと残すところ大した時間もないのでありますが、そのような短い時間において医人も国家、社会もともに求めておるような新医療費体系の結論が出るかどうか、その先の見通しにつきまして大臣にお伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/112
-
113・小林英三
○小林国務大臣 けさほでのどなたかの御質問に対しまして私も申し上げ、また保険局長も申し上げたのでありますが、大体この問題につきましては三月の初旬ごろまでには形をつけなくちゃならぬと考えておりますから、医療協議会に対しまして多分担当局長あたりはそういう御希望を申し上げて、ぜひ一つ一生懸命に御審議を願いたいということをお願い申し上げたことはあるではなかろうかと思います。直接には私は聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/113
-
114・八田貞義
○八田委員 大臣のお考えは十分に時間を与えて審議したい、そういうお考えのように伺いまして、了承いたします。ただ社会医療協議会の方はそのよりな審議の時間をお与え下さいまして、三月上旬ごろまでに何とか結論に導きたい、こういう御希望のようでありますが、国会におきましては、また私といたしましても、統計技術論につきましては今後時間をかけまして十分に検討していく考えでございます。本日いろいろと御質問いたしましたのは、ただ大臣の新医療費体系に対するところの概念、お考えを伺っただけでございまして、これから統計技術の数子の問題につきまして詳しく検討いたし、そして、質疑を重ねていきたいと思うのであります。先ほど新医療費体系の審議関係におきまして、医薬分業と不可分の関係にあるから十分に国会において審議を願わなければならぬという御見解がありました。従いまして四月一日からの医薬分業施行までにはとうてい新医療費体系の結論が出ないと私には考えられるのでありますが、そのような事態に立ち至りました場合どのような対策をもって処していかれるか、大臣の先の見通し、対策について御見解をお漏らし願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/114
-
115・小林英三
○小林国務大臣 私が先ほども申し上げておりますように、四月一日から医薬分業のスタートをすることは国会において法律としてきまっておるわけでございまして、これを実施いたしますためにはどうしても不可分の問題であります新医療費体系といろものを決定しなくてはならないのであります。決定いたしますと同時に、これを全国のそれぞれの関係者に周知徹底さす必要もございます。ただいま申し上げましたように、われわれの考え方といたししては三月の初旬ごろまでには決定して周知徹底さしたい、こういう考え方でございまして、私が先ほど申し上げました国会の御意見を尊重するということには変りはないのであります。が、ただ時期的に考えましてそれらの問題もお考えに入れていただいて、国会におきましてもこの問題に対しては十分な御協力をお願い申し上げたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/115
-
116・八田貞義
○八田委員 ここが大切なところでありますが、二十国会におきまして医薬分業について法律が改正されました。その改正によって、処方箋の交付の除外例と調剤に関する問題の妥協ができました。そこで改正法ができまして、四月一日から医薬分業ができるということになったわけであります。その三十国会におけるところの、医薬分業に関する法案の処理過程を振り返ってみますと、これは可分関係になっておるわけであります。ところが大臣は医薬分業と新医療費体系は不可分関係にある、こういうふうにおっしゃっておるのでありますが、二十国会におきましては先ほど申しましたように調剤と処方箋の交付の除外例の点について審議して、国会を通過さしたのでありますから、可分関係を認めた、こういうことになってくるのではないかと思うのでありますが、その点大臣の不可分とされるお考えについて、——二十国会では可分関係の形式をとったと考ておりますけれども、この点について大臣の御見解をお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/116
-
117・小林英三
○小林国務大臣 医療報酬をどういうふうにどういう形できめるべきやという問題につきましては、これはもちろん可分論ということになります。そのままの現在のような状態でもいいのでありますが、可分論も成り立ちます。しかし現実問題といたしまして前々国会でございましたか、前国会でございましたか、国会におきまして今日の医薬分業法を通過させて、そしてすでに法律として四月一日から実施するという現実の問題に即しますと、今度はやはり医薬分業でありまするから、やはり技術と物とを分けて考えるということは、現実の問題として必要ではなかろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/117
-
118・八田貞義
○八田委員 可分関係にもあり不可分関係にもあるというお考えでありまするが、可分関係にあるというのはどの点でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/118
-
119・小林英三
○小林国務大臣 私が現実の問題と申し上げたのは、すでに四月一日から医薬分業を実施することになっておるのでありますから——それがないならば、私はこれはなければないで可分でもよかろうし不可分でもよかろう。つまり今日の医薬分業の法律がなくても医療報酬といたしましては従来通りという考えもありましょうし、また技術と品物とを分けるというような形もあるでございましょうが、ただいま現実の問題といたしましては、四月一日から医薬分業が実施されるということになっておりますから、私はこの問題に関しましてはやはり不可分と考えるべきであろう、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/119
-
120・八田貞義
○八田委員 この問題につきましてはもう少し突っ込んで御質問いたしたいのでありまするが、時間もありますのでこれくらいにいたしますが、ただ大臣にお願いしたいのは、二十国会におきまして新医療費体系と分業法を切り離しまして、調剤及び処方せん発行の除外規定を認めて、分業法の改正を行なった。こういう事実につきまして十分御検討をやっておいていただくことをお願いいたします。
次いで健康保険法についてお尋ねいたしたいのでありますが、大正十一年に第一次大戦後の不況対策の一つといたしまして、経営者側の労務管理の観点からすべり出した健康保険は、その後三十数年を経過した現在ではむしろ社会保障制度の一環としての性格を強く持って参りました。ところが健康保険を社会保障の一環として見るか、あるいは労務管理と見るか、この見方につきまして関係者の間でその見解を異にしておるということを聞いておるのであります。資本主義社会のもとにおきましては、きわめて一部のものを除き大多数の国民はその精神的ないしは身体的勤労によって生活の資を得る弱者であります。ゆえにその勤労手段の障害は直ちに彼らの最低生活、生存を脅かすものであります。かりに原因がすべて個人にあるといたしましても、近代の有機的社会組織におきましては、個人の不幸はすなわち社会の不幸にほかならないのであります。ましてや高度の有機社会では、個人を離れた社会も社会を離れた個人もありません。すべては社会の連帯責任であって、国の不幸・困難は社会の責任において組織的に予防し処置するのが得策であります。ここに社会保障の理念があり、憲法第二十五条にも国家は公衆衛生、社会保障などの向上に努めなくてはならないとあるゆえんであります。申すまでもなく保険とは将来起り得る可能性のある困難、危険ないしは当然予想されるそれに対し、いわゆる多数の法則に基いて危険分散の原理、すなわち危険、困難をなるべく多数の者に分散して相扶共済する方法であります。すなわち社会保険は、保険の方法によって行われる一つの社会保障であると思いまするが、大臣はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/120
-
121・小林英三
○小林国務大臣 今御説のように、これができました大正十二年でありまするか、その当時におきましては、確かに勤労に対する予期せざる障害に対する保険としてスタートしたものだと思いますが、今日におきましては多分に社会保障というような意味を持って参ったと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/121
-
122・八田貞義
○八田委員 従来から社会医療保険というものは制限診療や単価など幾多の問題をはらんで推移して参りました。しかし健康保険は社会保障制度の中核としまして、国民の医療保障、国民生活の安定に大きな役割を果してきたことは大臣もこれを認められたところであります。ところがこの健康保険というものは大きな赤字を累積して、参りまして、保険財政の危機が叫ばれておるのであります。しかも健康保険の諸規定はそのほかの一切の社会医療保険の基準となっておりまするので、この政府管掌保険の危機は全社会医療保険の危機であります。政府管掌の健康保険の赤字は零細な被保険者の給料から出す保険料だけでは、近代医学を、増大する病人に均霑させることができないというところに根本的な原因がございます。この保険料収入と保険医療給付費とのアンバランスの現実に直面しながら、保険料収入の範囲で医療給付費のほか社会施設費や、傷病手当金、事務費をまかなっていこうとする弥縫策に終始しているために、その対策のほとんどが国民医療を後退させる改悪案となって参っておるのであります。しかしながら社会保障制度の一環として強制加入の建前のものとに国がみずから管理に当っている制度である以上、国が社会保障に対する責任を分担する意味において、保険の本体である給付費について国庫負担を行うことは当然である。特に制度そのものが崩壊せんとしている今日におきましては、その危機を未然に防ぎとめ、医療保障の一そうの清新をはかるために特段の財政的配慮が必要であると考えられます。政府管掌の健康保険の被保険者平均標準月額が一万一千百五十五円、これは昭和三十年八月現在の計算でありますが、この額に対しまして、組合健康保険のそれは一万七千百六十六円となっております。これも昭和三十年八月現在のものでございます。これを国家公務員共済組合について標準報酬の考え方を適用した場合、おおむね一万五千円以上となって参ります。このように標準報酬月額が著しく低い実態においては、たとい保険料率が同率であっても、その負担は実質的には高く、保険料率の引き上げにはおのずからなる限度が考えられます。現在被保険者一人当り平均保険料年額八千九百三十円のうち、本人負担がその半額の四千四百六十五円となっておりまして、国民健康保険の負担額、年間二千二百九十円と比較すると二倍に当ります。中小企業における賃金の実態、国保の対象である自由業者の実情を考慮するとき、保険料負担の面において、政府管掌保険の被保険者の負担が軽いとは言われません。政府管掌健康保険におきましては、休業保障であるところの傷病手当金が給付総額の約一五%となっております。従って組合管掌健康保険、共済組合に比べまして大きなウエートを占めていることがわかります。中小企業におきましては休業と同時に賃金の支給が停止せられておりますが、大企業においては労働組織が発達しており、労働協約、就業規則などによって休業後も引き続いて相当期間給与が保証されていると聞いております。このような状態に置かれておる政府管掌健康保険におきましてもし国庫負担がなかったならば、医療面におけるところの受診率から考えまして、中小企業の労働者は当然生活保護による扶助を受けなければならなくなると考えられます。大臣はこの危機に追いやられた政府管掌健康保険に対しまして、法律をもって国庫負担を打ち出すお考えがあるかどうか、この点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/122
-
123・小林英三
○小林国務大臣 八田さんの御質問は多分今年度の政府が出しております赤字対策の費用の三十億円を法制的にきめる意思があるかどうかということと存じます。私といたしましても午前中にあるいは昨日も言ったかと思いますが、最初から私どもはそういう大きな希望というか、そういう所信のもとにやってきておったのであります。不幸にいたしまして現在は法則化されていないのでありますが、健康保険の一部負担に伴いまする改正とともにぜひとも一つ国庫負担という意味を法案の中に入れるように努力いたしたい、こう存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/123
-
124・八田貞義
○八田委員 そこで国庫負担面につきましては大臣からぜひともこれを法文化いたしたいというようなお話をいただきたいのでございますが、ぜひともこの法文化には不断の努力を尽していただきたいと願うものであります。そこで健康保険の赤字の問題でありますが、大臣は一体この赤字の原因につきましてどのようなお考えを持っておられるか、お伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/124
-
125・小林英三
○小林国務大臣 これはたびたび予算委員会におきましても、この委員会におきましても、赤字の原因につきまして私の信じておることにつきまして申し述べたのでありますが、ただいまもそのことについての御質問があったようでございますから、一応私の考えておりますことを申し述べたいと存じます。これは私大臣に就任いたしました直後におきましてこの健保の赤字問題というものに非常に大きなウエートを置いており、私が大臣になりましてから厚生省の、予算獲得というと語弊がありますが、予算を取る上におきまして相当これはやらなくちゃならぬ、これは自由民主党の大きな看板の一つの社会保障制度の問題でありますから……。ところが一方におきまして私は健保の赤字というものをいかにするかという一つの大きな課題を別に持っておるわけであります。これはもちろん厚生行政の一つでありますけれども、これのほかの社会保障だけに使う費目とは違う、赤字の出たものを埋めていくというだけの費用でございます。従いまして私ども非常に大きな問題に直面いたして苦労したわけであります。しかし今までずっと長年健保ができましてから今日までそう大した赤字というものがなかったのに、何ゆえに二十九年あたりから赤字が出てきたかということは、これはだれが考えても、その原因について一応は掘り下げて研究してみる必要があるということをお考えになるだろうと思います。私がいろいろ調べました卑近な例といたしましては、御承知のように二十九年から四十億の赤字が出たわけでありますが、その前の年には赤字らしい赤字はそう大してなかった。二十八年から点数の一部引き上げもいたしておりますし、同じ年に二年間の療養給付期間を参年間に延長をしている。これはいろいろな問題に財政上大きな影響を与える一つのデータでございます。それから抗生物質といいますか、パスとかストレプトマイシンとか、そういうようないわゆる新薬、これも二十八年度から偶然に健保に採用するということで来ております。これらの問題は健保の進歩のために非常にけっこうなことだと私は思っておるのであります。しかしこれらの問題もやはり赤字の一つの大きな原因として、翌年の二十九年度あたりからぼつぼつ影響力が出てきたわけであります。それから受診率は、昔の健康保険と違いまして最近の健康保険は、相当の資産のある方、でも進んで自分の子弟を健康保険で見てもらうというような情勢になりつつございまして、要するに受診率も最近は非常にふえて参っておる。一方また数年前に比べますと、最近は御承知のように技術も非常に進歩いたしまして、すべての手術というものも非常に進歩いたして参りました。たとえば脳の切開というようなところまでもいっておりまして、これらのことも健康保険でやらす。将来これ以上の技術が進歩いたしましても、今日の健康保険の被保険者にはこれを実施していかなければならぬ、こういう情勢でございます。また一方病院や診療所なども全国的に非常にふえて参りました。健康保険の指定医も、毎年五、六千人ずつもふえておる。被保険者がそれに従いまして非常に増大してきておるということも大きな赤字の原因の一つであろうと思います。これとまた別の問題といたしまして、今御指摘になりましたが、健保の被保険者の平均給料は、今八田さんは一万八千百五十五円とおあげになった、組合のものは一万七千幾らというようなことになっておるが、大体こんなものだろうと思います。この低い平均賃金——これも数年前よりもだんだん低いながらも少しずつ上ってきておることは事実であります。ただ上る率が一方の医療費に比べますとカーブが非常に違うのであります。そこで保険財政から申し上げますと、これらの収入面はあまりふえないでいて、一方医療費という支出面が非常に急角度に最近ふえてきておる。健康保険の財政が赤字になっておることは非常に困るのでありますけれども、健康保険の内容そのものが数年前から非常に進歩向上してきておるという姿は、日本の社会保障の上におきまして、非常にいい傾向であると思うのであります。ただ問題は、この出て来た赤字、三十年度の六十億円と二十九年度の四十億円・合計百億円は、先般暫定措置として借入金によってやった。そのうち一部二十五億円は、今の料率を千分の五上げたわけであります。これで二十五億円ばかりの財源を得、残りの七十億円は資金運用部から借り入れて、暫定的に百億円の処置をしたというだけでございます。そこで三十一年度は、これは計算は仕方によりまして多少は違うでありましょうが、大体厚生省で最後の見きわめをいたしましたものといたしまして約六十七億をやはり今までと同じように暫定的に借金でもって穴埋めしていくべきであるか、あるいはこれを全額国庫に負担させていくべきであるか、あるいは一部負担でもって国庫からも一部出してもらい、被保険者からも一部出してもらって、保険の赤字を立て直すべきであるかというようなことは、いろいろの考え方があると思います。しかし今までのような暫定的の措置によって、この赤字を借入金によっていつまでもやっていくということが果してよろしいかどうかということにつきましては、これでは私はいけないと思います。そこで全額国庫負担にするか、あるいは患者にもやはりある程度のものを出してもらうべきかという問題に逢着いたしますが、これは御承知のように、今年は財政規模も昨年に比べ四百何十億円上っておりますけれども、これは恩給その他の支出の自然増ということもありまして、実際に使える金はそうはなかった。そういうような結果からいたしまして、七十億近くの金を全額国庫負担でやるという問題は、私のような者が幾ら自分の職を賭しましてもできっこない。われわれが何人かわりましてもこれは解決がつかない。そこで私どもの考えましたことは、少くとも医療費の一割くらいは国庫に負担させていく、そうしてあとの残りを標準報酬の引き上げと被保険者の一部負担でもって解決したらどうかというような案を最初は立てまして大蔵省と盛んに交渉したのであります。ところが、やはり国家財政の関係からいたしまして、最後にまとまりました案が二十億円の国庫負担です。そこで私どもとしては、とにかく被保険者の負担する額に見合うだけのものは国が出してくれなければ困るということで最後までいろいろ心配いたしまして、最後の閣議決定のその日に今の十億円というものを増した形にして三十億円を国庫負担にしたのでありまして、要するにこれならば被保険者の一部負担に見合う金ではないか、こういうことに落ちついたのであります。赤字の原因がそういうふうでありまして、この赤字をいかにすべきやという問題は、これはいろいろの考え方があるのでありますが、私は常識的に見まして、国の財政も困るけれども、今日の健康保険の内容というものも相当進歩しておるのである。まあ今まででも初診料五十円の一部負担はしていただいておったのでありますが、これを何かの形でもう少し被保険者にも負っていただいて、そうしてこれから健康保険のりっぱなスタートをするということが私はよいという考え方に立ったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/125
-
126・八田貞義
○八田委員 赤字の原因につきまして、大臣から詳細に述べられましたが、政府管掌の健康保険で赤字が出るのは、被保険者が低所得者であるから、保険料が少く、また大企業に比べて中小企業の従業員は福祉施設や健康管理にも乏しく病人が多いという事情もあずかっております。そういう恵まれない面を特に国でめんどうを見るというのが国庫負担の理由にもなって参ります。すなわち国の責任と負担で国民の病気をなおしていくという医療保障の現われ方であります。それを自己負担でまかなえということになれば、低所得者はそれだけ医者にかかるなということを強制するにもひとしいことになって参ります。保険に赤字が出たからといって直ちに保険料を引き上げたり、医療内容を引き下げたりして負担を患者にかけるだけでは制度の前進とは言いがたいのであります。そこで、この患者一部負担の問題につきましてこのような見解がとられておりますので、大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、健康保険はむやみに医者に見てもらうことがふえる、一部自己負担にすれば自発的に制限されて乱診からくる支出が減る、それが一部負担の利点であるというふうな意見がございます。この考えに対しまして大臣はどのように考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/126
-
127・小林英三
○小林国務大臣 乱診乱療ということはよく言われておることでありますが、私は乱診乱療というものは避くべき問題であろうと思います。ただ問題は、患者の早期診断の意欲を押えるということは、健康保険の被保険者一部負担にいたしましても、そういうようなことはできるだけ避けるようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/127
-
128・八田貞義
○八田委員 乱診乱療という事実が果してあるのかどうか。だれも何でもないのに好きこのんで医者のところで注射をしてもらうとか、薬をもらうということは——それは数多い中でありますから、全然ないとはいわれませんけれども、その事実がはっきりと数字に出るかどうか、数字に表わされるような大きい数になっておるかどうかという点について、私は疑問を持つものであります。特に昭和二十九年度八月分の診療報酬明細書の一斉調査が行われまして、不正受診の調査が行われたことがございます。その場合に、全国的に行われた全レシートの数は二百九十三万件、これは本人、家族を含めてでありますが、そのうちにつきまして不正受診の調査をいたしましたととろ、台帳との照らし合せで疑いのあるものが約七%、資格の切れたもので継続療養証明書未提出のまま受けているものが四・三%、被扶養者でないものの受診が一三%となっております。保険医の不正水増し請求というのは、何%といったような数字には出てきておらないのであります。ところがこれが赤字原因だとして大きく宣伝されて参ったのが、今日の間違った意見が出てきておる原因ではないかというふうに考えておるのでございます。英国に比べて日本は注射の回数が五十倍ぐらいというような数字を出した新聞がありますが、日本人が英国人に比べて注射の数が多いということは、常識的にも考えられるのでありますが、どうして日本人がそのように注射を好むか、あるいは注射をしなければならぬような状態に追いやられているか、こういうことについて現状分析と申しますか、これらについての大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/128
-
129・小林英三
○小林国務大臣 私は今お説の通り、乱診、乱療というものがどの程度あるかということは存じませんけれども、日本の診療に従事しておるお医者さんの諸君というものは、みなりっぱな方々でありますから、そういうことをしようというようなことを意識的に考えておられる方は、私はきわめて少いと思うのであります。従いまして、私どもが健康保険の赤字財政をどうすべきやという問題を考えましたその経過におきましても、乱診乱療をどうこう処置することによって莫大な財政が助かるというようなことは、全然考えていないのであります。ほんとうにあるといたしますならば・数字の上においてはきわめて少いものであろう。私は日本のこれらの医師諸君の人格というものは尊重いたしたいと思っておるのであります。ただ、今お聞きのような問題につきましては、きわめて技術的な問題でございますから、担当の課長から内容等につきまして御答弁申し上げた方がむしろよいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/129
-
130・館林宣夫
○館林説明員 お尋ねの、わが国の医療において非常に注射が多い、その注射の程度はイギリスに比べて五十倍程度であるというような記事も見られないわけではございませんけれども、私どもとしては、別に単純にこれを比較するわけにも参りません。確たる根拠がある資料を持ち合せておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/130
-
131・八田貞義
○八田委員 なぜ注射が多いか、これは三つくらいに分けて考えられるであろう。というのは、わが国に結核と潜在性の脚気が非常に多いのだ、これがみな注射の治療に待たなければならぬというようなことが、まず注射回数を大きくしておるものであろう。それからもう一つは、日本人の国民性として注射を非常に好む、こういうこともあずかって力があるものと思われます。それからもう一つは、英国の社会保障制度と日本の社会保障制度とは全く違う。日本にはまだほんとうの社会保障制度というものはできていない。今日は社会保険から社会保障制度へというスローガンを掲げていかなければならぬような状態に日本があるのだということも、この注射の回数をふやしておる。こういうふうにも考えるのであります。ですから厚生当局におきましても、こういうような観点からよくお考えになって、頻度の高い注射回数、点数を滅らそうというようなお考えで保険財政を救おうということになれば、これは国民医療の後退になるのでありますから、その点については十分に御考慮を願いたいのであります。
そこで問題をさらに展開いたしまして、国立療養所の空床の問題について質問いたしたいと思うのであります。療養所に空床ができて参りまして、入院したくとも入院できない自宅患者に席を譲れ譲らぬで、軽症の在宅患者が死のすわり込みをしたのはわずか二年前であります。しかもこの空床の事実は、昨年から顕著になって参りました。たった一年の間にそれほど急激な情勢の変化があったのでありましょうか。それとも一年前にすでに空床ができ始めていたのに、一年おくれのデータしか持たない政府が、入退院基準を強行したためか、あるいはそういう見通しやデー々とは無関係に、ただ生活保護患者の医療費を引き締めたための処置によって起った現象であろうかどうか。この点について厚生大臣の見解をお伺いいたしたいのであります、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/131
-
132・小林英三
○小林国務大臣 今お聞きのようなことは私としては全然考えていないのであります。これはそこに行き違いかあるいは誤解か何かあったのじゃないかと思います。なお私自身としては、今お聞きのような問題ははなはだけしからぬことだと考えておりますから、担当の者から、一応その問題について釈明させて、経過を説明させたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/132
-
133・曾田長宗
○曾田政府委員 私どもは国立の療養所をおあずかりいたしております。しかしながら、国立の療養所だけではございませんで、国中の結核病院あるいは一般病院の結核病室、この病床の利用の状況というものは最近におきましては、大体半年おくれぐらいには私どもその状況をつかんで見ておるわけであります。そして今までベッドの利用率が一年ごとに非常にふえておりましたのが、そのふえ方が山を越えまして逐次減少に移り始めたということに気、つきましたのは、大体二十八、九年ごろなのであります。しかしまだそのころはあまりに急激な減少というわけではないわけでありますけれども、徐徐にさようなことが見えておったわけであります。しかしながらこれは国全体としてのことでありまして、地域的に見ますならば、やはり待機患者が相当大ぜい待っておるというような状況は、特に都市の周辺の療養所においては著しい状況として残っておったわけであります。病床の不足状況が、全体として見た場合には逐次緩和しつつあるということは承知しておりましたけれども、一方においては、特に外科手術をするというようなところにおきましては、ベッドが依然として足りないということも現実として残っておりましたので、私どもとしては増床問題について数年先のことも考えながら、しかしながらまだ増床を一気にやめる時期ではないというようなことで本年、すなわち昭和三十年度におきまして増床の計画、国立療養所におきましても増床をしていただいたというような状況なのであります。ただ明三十一年度におきましてどうかということについては、私どもとしましては全体としては逐次空床率がふえてきておるというような状況を見ましても、今の地域的な関係から見ますればやはりまだ足りないところがあるのではないかということで、若干増床をして参りたいと増床の予算要求もいたしたのであります。少くとも国立の施設としては、逐次あいてきたところの療養所において病棟が腐朽してきたというときに、その場でこれを建てかえをするということでなしに、やはり残すべきものは当然残さなければならぬけれども、そのうちの一部分は利用度の高いところに逐次移していくというような予算の立て方にした方がいいのではないかということで、三十一年度の予算としては新増床の予算を組まずに、むしろ改築という意味で一億余円を計上したというような事情でございます。私どもとしましては、入退所基準というようなもので、無理に追い出しているというようなことはいたさないように運営しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/133
-
134・八田貞義
○八田委員 ちょっと私の質問に対してはっきりしないのであります。私は、入退所基準も影響しているのではないだろうかと思うが、それよりももっと大きく影響しているのは生活保護患者の医療費引き締め措置が影響しているのではないかというふうに考えているのであります。それはとにかくといたしまして、全国の療養所に空床ができてきたということは厳然たる事実であります。この事実の解釈については多くの意見があります。化学療法の勝利だとして、手放しに喜ぶ意見もあります。日の目を見なかったようでありますが、社会保障制度審議会の答申案の中にも在宅患者の化学療法が謳歌されておったようであります。ところが一方生活保護費の引き締めやデフレのために、入院料も払えない者がふえてきたのだという意見もあります。どちらの見解が正しいと思われるか。結核予防対策上非常に重要なキー・ポイントでありますから、厚生大臣並びに担当局長の率直明快な御答弁をお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/134
-
135・小林英三
○小林国務大臣 この問題はなかなか重大な問題でありますから、今ここで私の責任のある答弁を申し上げることは少し留保いたしたいと思います。なお担当局長といたしましてはこの問題に対してある種の意見をつかんでおるかも知れませんから、一応私の答弁は留保しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/135
-
136・山口正義
○山口(正)政府委員 結核病床が全国的に空床が多くなって参りましたことは、ただいま八田委員から御指摘の通りでございまして、数字的にも昭和二十七、八年の全国としての結核病床の利用率が九五%前後のものが、昭和二十九年には九二・三%というように減ってきております。しかしその空床のでき方は地区的に非常に偏在しているという状況で、これは先ほど医務局長からも申し上げた次第でございます。その空床の原因がどこにあるかということにつきましては、ただいま八田委員からも御指摘がありましたように、一方におきましては化学療法の進歩によりまして、従来入院を要すると思われました者が在宅でも治療ができるということもございます。また一方においては経済的な問題もその原因になっている面があると思うのでございます。そういう点をはっきりこの際数学的に解明していくということは、結核対策を確立して参ります上に非常に重要なキー・ポイントになるのでございますので、そのことはただいま御指摘の通りでございます。私どもといたしましては昭和二十八年、二十九年に実施いたしました実態調査の追究といたしまして、入院を要すると見られた者がどうして入院できなかったか、あるいは医療を要すると考えられた者がどうして医療を受けられなかったかということについて、昭和三十年度において、これは全体のうちから二十八年の調査のうちの三分の一程度を抜き出しての調査でございますが、これを実施をいたしまして現在集計中でございます。近く結果を得られると思いますので、いずれ御報告申し上げまして、また私どもの、それに対する対策というものも考えて参りたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/136
-
137・八田貞義
○八田委員 二年間にわたる厚生省の実態調査によりますと、結核患者の数は減っていないのです。それどころか死亡を上回る新発病があります。人口十万人についてみますと、年間結核死六十人で、新発病四千人でありますから、空床があるということは莫大な数の自宅療養者がいるということにほかならないのであります。そしてその患者たちが社会保障制度審議会答申案で奨励された在宅化学療法を行う。まさにチフス患者の在宅クロロマイセチン療法と同断であります。ところが肺結核の化学療法はよほど上手に管理されないと耐性菌を作って参ります。ストレプトマイシンやヒドラジッドもきかない結核菌であります。こうなってからあわてて入院しましても根本的な治療法、すなわち肺切除術もできないし、喀血したり腸結核を起してもなおしょうがありません。しかも化学療法は喀血をふやして参ります。もう一つ悪いことは耐性菌が感染すると、初めから化学療法のきかない結核患者ができ上って参ります。子供はことに感染しやすい、感染すれば脳膜炎を起しやすい、耐性菌感染による脳膜炎が起ってから、どんなにほぞをかんでも間に合いません。こういう例はすでに実際に起っておるのであります。アメリカでは、新しい患者の〇・五%は耐性菌によって発病しているという統計があります。そうすると自宅患者がもっと多く、住宅がもっと狭く、化学療法がもっとでたらめに行われている日本では、この数字はもっと大きいのではないかという心配があります。現に厚生省の実態調査では、一年間に産まれる赤ちゃんの〇・四%が家庭内で感染発病していると言われます。〇・四%といえば十万人について四百人であります。赤ちゃんの結核死亡率は最近十万人について三十五人ぐらいだから、その死亡に十一倍する赤ちゃんが自宅患者によって発病させられている勘定になります。このうちの何割が耐性菌による発病でありましょうか。昨日曽田局長から結核患者の実数についてきわめて楽観的な大胆なる発言がありましたが、耐性菌による発病について十分に調査されての発言とは思われません。厚生省にこの種の調査成績があればお知らせ願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/137
-
138・山口正義
○山口(正)政府委員 ただいま八田委員から御指摘のように、化学療法を実施して参ります場合に、その方法を誤まりますと、これは単に結核ばかりではございませんが、そのほかの疾病におきます化学療法におきましても同様でございまして、いわゆる耐性という問題が起りまして、かえってあとに害を残すことがあることは仰せの通りでございます。結核についてもその点当然考えていかなければならないのでございます。ただいま御質問の、現在厚生省で年間新発生の患者のうちでどれだけが耐性菌によったものであるかという調査があるかという御質問でございますが、私の手元に遺憾ながらその資料がございませんが、しかし耐性菌によって発病する者がある程度あることは否定できないことでございます。従いまして私ども結核の化学療法を実施し、指導して参ります場合に、その耐性の問題は十分考慮してやって参っているつもりでございまして、御承知のように最初にストレプトマイシンあるいはパスというようなものが日本に導入され、使用されましたと遂には単独療法が非常に多かったのでございますが、単独療法では耐性を起す可能性が非常に多い。従いましてそれを併用すれば耐性を比較的避け得るという事実に基きまして、二者併用あるいは三者併用というようなことを実施して参っております。二十九年の結核予防法によります公費負担の実績から見ましても、化学療法のうちでほとんど大部分が併用療法で、それは耐性を避けたいという意図に基くものでありますが、最近御承知のようにピラジナマイドというような新薬も入って参っておりまして、これらを併用することによりまして耐性をできるだけ避けるようにして参らなければならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/138
-
139・八田貞義
○八田委員 そこで今しっかりした調査成績がないということでありますから、御参考までに申し上げておくわけでありますが、自宅療養でどれくらい耐性菌が作られているかについていい統計があるのであります。清瀬病院に入院してくる患者の菌をすぐに調べた統計であります。ストレプトマイシンにも、ヒドラジッドにも、ハスにも耐性炉なかったという人はわずかに二割だけで、あとの八割はどの薬かに耐性が出ておったというのであります。しかもこの八割のうちストマイとパスの両方に耐性ができている者は二二・六%で、ストマイとヒドラジッドとパスの三つともに耐性ができていた者は二九・七%であったのであります。新聞やラジオで薬がほとんど無制限に広告され、医師の指示のもとに使用と書いた薬が自由に売られており、しかも生活保護や健康保険が改正され、あるいは取締りが強化されて、気軽に医者にかかれないとなりますと、勢いでたらめな化学療法が行われざるを得ないでありましょう。このような、仮定ではなく、これはすでに既定の事実として起っているのであります。その証明が、新入院患者の八割が耐性菌感染であります。この事実を結核対策上いかに考えるか。国立療養所に空床ができたのは、患者が実際に減っているのだと手放しで楽観してよろしいか、公衆衛生局長の見解をお伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/139
-
140・山口正義
○山口(正)政府委員 第一の耐性菌を起させないようにするということにつきましては、先ほども申し上げました通りでございまして、化学療法を実施して参ります場合に、自宅におきましてもあるいは施設の中におきましてももちろんのことでございますが、正しい化学療法をやって参りませんと、ますます耐性菌がふえるというふうに考えなければなりませんので、行政当局はもちろんのこと、医療関係者皆さんの御協力を得て、正しく化学療法が行われるようにやって参らなければならないというふうに考えるわけでございます。従いまして化学療法が手軽にできるからといって安易な考えを持つということは、十分戒めなければならないというふうに考えております。また空床ができてきたからといって、それで手放しで安心するというようなことは私どもとして考えていないのでございまして、先ほどから申し上げましたように、空床の原因がいずれにあるかまたその結果家庭においてどういう療法が行われているかというようなことを十分検討して、対策を立てていかなければならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/140
-
141・八田貞義
○八田委員 国立療養所に空床ができた理由のもう一つは、人手不足であります。人手不足がどういうことになるかという課題の答案が、療養所の場合には空床であり、手のかかる重症患者はお断わりという傾向が生まれて参ります。現に京浜地区の療養所で、空床炉でき過ぎたというので重症患者を受け付けましたら、たちまち満床になったということであります。この傾向は私立の療養所ではもっと著しいのであります。医師も看護婦も単価の高い人件費でありますので、なるべく小人数で完全看護料金を獲得しようとすると・軽症患者を入れるに限ります。それで耐性のできやすい・しかも感染の危険の大きい重症患者の行き場所がなくなって参ります。そこで国立療養所がその使命感に燃え立って重症患者を引き受けたのであります。しかし引き受けるというからには人手をふやさなければなりません。その人手は幸いに今まで生活保護法や健康保険でつき添い看護料金を払ってくれたので、つき添い婦を得ることができたのであります。ところ炉生活保護法あるいは健康保険の赤字対策がこれを見のがすはずはありません。看護婦の定員を常勤労務者の形でふやすからつき添い婦を一掃せよという指示が厚生省から流されました。全国の国立療養所にいる四千三百人のつき添い婦を二千二百七十人の常勤労務者に置きかえよというのであります。しかもつき添い婦は拘束二十四時間の自由労働者であり、常勤労務者は一日八時間勤務の純公務員であります。勤務時間が三分の一で頭数が半分になって、どうしてやっていけるでありましょう。結核患者の治療はまだオートメーション式には参りません。これでは首を覚悟して反対するか、賛成したような顔をして重症患者を一切お断わりするか、人手のかかる肺外科を廃するか、ほかに方法はないと考えます。今つき添い婦のついている入院中の重症患者は夜も日も明けずに心配しております。これは当然のことであろうと考えられます。下手をするとかっての軽症患者のすわり込みと事変って、今度は重症患者の文字通りの死のすわり込みが展開するかもしれません。生活保護法とはだれの生活を保護する法律か。福祉事務所とはだれの福祉をはかる事務所なのか。軽症は入退所基準で、重症患者はつき添い婦廃止で締め出したら、国立療養所の国家公務員は一体どのような仕事があるというのでありましょう。厚生大臣のつき添い問題に関する対策を、単につき添い婦だけに限局することなく、今まで申し上げた重症患者の実態の上に立って、どうするのが一番よいか、大臣のお考えをお伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/141
-
142・小林英三
○小林国務大臣 つき添い婦の問題につきましては、いろいろ国会でも、衆参両院の当該委員会におかれましてその処置についての決議をされておられるのでありまして、これは厚生省といたしましてもこの決議の趣旨を十分に尊重いたしまして、今日つき添い婦の措置をいたしているわけであります。ただ問題は、つき添い婦の今お話のありました四千数百人、これをできるだけ配置転換をするとか、あるいはそのまま今度の常勤の雑仕婦といいますか、常勤の勤務者に採用するとかいうことは、あらゆる角度から検討いたしましてやっているのであります。ただこの間も御質問があったのでありますけれども、常勤の労務者に変えましたために今御質問のありましたような、患者が非常な不安と不便を感ずるようなことはありますけれども、これは私もその問題については関心を持って事務当局ともいろいろ相談をしておるのでありますが、必ずしもそうでない部面もあるのであります。ある地方におきましては、今度改正になったために非常によろしいというようなこともわざわざ患者の自発的に発行いたしております新聞等に出ておりまして、これを私一日二日前でありましたか、拝見いたしまして、そういうのもあるなら非常によろしいといったようなわけでありますが、今御心配のような点につきましては今後さらに十分検討をいたしまして、やって参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/142
-
143・佐々木秀世
○佐々木委員長 約十分間休憩いたします。
午後四時二十四分休憩
————◇—————
午後四時三十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/143
-
144・佐々木秀世
○佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。
質疑を続行いたします。八田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/144
-
145・八田貞義
○八田委員 ところで空床のあおりを食ったのは、結核回復者の後保護であります。もともと結核予防法にも、結核の治療指針にも一言も触れられていない後保護などピントが狂っているというのであろうか、全然顧みられておりません。ところが再発の多い結核は、よほど上手な後保護が行われないと、せっかくなおした患者がまた再発して、新しい患者を発生させます。後保護は予防に直接つながっておる重大な問題であります。本人にとっては、再発予防だが、健康者にとっては感染予防そのものであります。しかももっと悪いことは、回復者が保護されていない実情は、これから療養を始めようとする者にとってすさまじい教訓を与えます。一たん療養を始めたら、肺と首を切られ、親類、家族からも縁を切られるとあっては、集団検診は地獄への招待となります。自分自身や家族や社会の幸福のために、喜んで集団検診を受けるようにするためには、シールや予防週間や、「かかって泣くよりも笑って予防」式の標語では間に合いません。後保護の態勢を確立して、黙って、療養所からの引揚者が、中国やソ連からの引揚者と同じようにあたたかく迎えられるようにすべきであります。果してそのような施設はまんべんなく行われているだろうか。結核対策上後保護、すなわち結核回復者の健康管理は忘れてはならない大切な事項なのであります。ストマイもBCGも、肺切除術もなしに、アメリカもイギリスもドイツも、かつては今の日本に十倍した結核を解決したのであります。どうか厚生大臣におかれましても、先ほど申し上げましたところの重症患者が、しかも耐性菌による重症患者がちまたにあふれておる事実を十分に認識されまして、対策を十分お立て下さるようにお願いいたしまして、私のこれに対する質問を終りますが、もう一つ簡単に質問をさしていただきます。
昨年山口県下に発生しましたところのしょうゆによるところの砒素中毒の原因は一体何か。毒物もしくは劇物に相当する薬品を使ったことに原因するものではないか。この点について簡単にお知らせ願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/145
-
146・楠本正康
○楠本説明員 お答えを申し上げます。昨年起きました砒素中毒は、その後私どもの方におきましても、県当局といろいろ連絡をいたしまして調査を進めて参りました。結局あるきわめて小さな一工場で作りましたアミノ酸しょうゆ中に砒素が含まれていたことが確認できたわけでございます。そこでさらにこれを追及いたしまして、いかなる経過でアミノ酸しょうゆに砒素が入ったかと調べましたところ、その工場におきましては、元来脱脂大豆を塩酸処理してアミノ酸を作っておったわけでございますが、たまたまその塩酸に砒素があることを確認いたしたわけでございます。この製造工場も明らかになっておりますが、ただこのサンプルが十分にとれなかったこと、並びに他に類似の工場から出ました塩酸等が幸いにも食品加工用に使われなかったこと等のために・現在約三百人足らずの患者を出しただけで問題は済んだわけでございますが、塩酸中に砒素が含まれておったということはまことに遺憾なことでございまして、目下食品衛生法の改正等ともにらみ合せまして、かような化学的薬品の規制につきまして今後十分に注意をして参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/146
-
147・八田貞義
○八田委員 塩酸の中に砒素が入っておった、こういうことがはっきりしたわけであります。そこで一体どうして塩酸の中に砒素が入ったかという問題であります。すでに厚生省において調査されておると思いますが、昨年八月ごろ全国的にアミノ酸しょうゆ用塩酸が不足いたしまして、業者が通産省に衷情を訴えたことがありますが、塩酸不足は特に広島、山口などの中国地方において著しかった模様であります。今回の問題のしょうゆは、同じ八月ごろの製品と承知いたしておりますが、このことと大いに関係があるというふうに考えられますけれども、この点について調査された内容についてお知らせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/147
-
148・楠本正康
○楠本説明員 御指摘のように八月当時の製品でございまして、しかも一般に関西方面におきまして塩酸の品不足を告げたことも事実でございます。しかしながら何分にも検体を十分に入手することができませんで、その後いろいろそのとき消費いたしました塩酸の行方あるいは塩酸を調べてみたわけでございますが、いまだに確たる系統的な調査ができませんために、その根本にさかのぼっての解決に至っていないわけでございます。その点はまことに遺憾でございますが、さらに引き続いてできるだけこの点を追及いたしたい、かように考えて県の当局とも連絡をしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/148
-
149・八田貞義
○八田委員 この塩酸不足は、昨年塩酸がビニール工業の方に使われたために品不足が起って参ったわけでございます。そこで塩酸がオーソドックスの製品ならば、どうして砒素が入るか。オーソドックスの製品ならば、塩酸の中に砒素が入るということはまず考えられない。今日塩酸のオーソドックスの製法といたしましては、もちろん近代工業の進展によって電解法によって合成塩酸が作られている。もう一つ古典的な方法といたしましては、ルブラン塩酸というものがあるわけであります。このルブラン塩酸の場合には詳しく申し上げませんが、製造原料が悪いと砒素が〇・二%くらい含むということがいわれておるわけであります。しかしその〇・二%にいたしましても、アミノ酸もろみの中の一CCに三百ガンマー以上も含まれているということは、どうしても常識上考えられない。そうしますと、これは森永の中毒事件と同じように、廃液が使われたのじゃないか。すなわち副成塩酸が使われたのじゃないかというような疑いが起ってくるわけであります。それについて副成塩酸と考えるならば、どのような化学工業において塩酸が出てくるか、これについて調査されておるかと思いまするけれども、1調査されておるかどうか、この点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/149
-
150・楠本正康
○楠本説明員 ただいま御指摘の点につきましては、私どもも専門家の意見等徴しましても御指摘の通りの点が調査する必要があろうかと存じまして、先ほども申しましたように、旧にさかのぼって一つ調べたいと今せっかく県を督励をいたしておりますが、ただ私の知っております範囲では、その当時の検体もなければ、また流通過程から申しましても、特に格別なことがなかったと承知いたしておりまする関係等もございまして、なかなかここが難問題になりまして、実は捜査がはたと行き詰まった状況でおるわけでございます。しかしこれらの点は今後もただいまも申し上げましたように、十分一つ努力をいたしまして、旧にさかのぼってその実態を明らかにいたしたい、かように考えておりますが、いまだ残念ながらお答えをする段階に至っておらないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/150
-
151・八田貞義
○八田委員 これは非常に重大な問題でありまして、食品をあずかる当局におきまして、まだ調査が十分に行き届いておらぬということは非常に残念であります。私はこれにつきまして調査をいたしているのでありまするが、粗製塩酸を副成する工場は、相当わが国内に多いのでございます。例を申し上げますると、日本化薬小倉工場とか三井化学とか三菱化成、保土谷曹達などの会社がそれであります。また工業用副成品といたしまして、塩酸を産出する場合として蒼鉛の精製工業がありまして、蒼鉛の抽出加工分解で析出される塩酸を回収しまするが、その塩酸の中に相当量の砒素混在が考えられるのであります。そこでこの蒼鉛の精製工業の副成品ではないかというような考えも浮んで参るのでありまするが、この点に調査をしぼって早く結論が得られるように御努力願いたのであります。
それからもう一点、簡単に塩酸中の砒素であるというふうにきめられておりまするが、患者の症状あるいは診断等において農薬の誤用というものが考えられないかどうか。あるいはまた防腐剤としてどのような薬品を使っておったか。もしもべ−ター・ナフトールを使っておった場合には——これは禁じられておりますが、もしも使っておったならば重大な問題が起ってくるわけであります。こういう点につきましても、十分に御調査を願いたいのであります。
それからさらにこの際塩酸中の砒素が、再び化合物または製剤にあらずとして取締りのワク外に置かれるなら、このような事件は再発するであろうということを警告しておかなければならぬわけであります。ところで前国会における薬務局長の答弁によりますると、毒物の含有量を問題にせず、法文の形式のみに執着し、毒物及び劇物取締法の精神すなわち毒物、劇物による国民の危害防止の一大目的を無視しております。MF事件を起した第二燐酸ソーダと称するもの炉、砒素含有量において毒物の砒素規格の百倍にも達していることが判明しましても、なおかつそれは砒素の混合物であって、化合物でも製剤でもないから法規に該当しないなどと答弁、解釈されております。その答弁のさ中、すでに第二の砒素中毒事件が発生しつつあったのであります。これでも薬務局長は法の解釈を極力ゆがめ、法の適用範囲を狭くして、その結果は中毒事件の発生に協力したといわれてもやむを得ないではありませんか。この点について、薬務局長の答弁をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/151
-
152・森本潔
○森本政府委員 ただいまお話がありましたのは、この前の森永事件で問題になりましたいわゆる第二燐酸ソーダの扱いであろうと思います。この点につきましては、前にも申し上げましたように、現行法の解釈上としては、少くとも当時におきましては、右のものが砒素化合物であるということは、学問上も立証し得なかったのでございます。ところがその後東大の木村教授のところにおきまして、いろいろ検査をされました。この検査方法と申しますのは、わが国においても最近やっと手に入りました、一台か二台しかないノレルコという、御存じかと思いますが、機械であります。それで、私もよく存じませんが、電気操置で検体を調べてみると成分が出るのだそうでございます。ところがこのノレルコによって判定いたしますと、木村先生の説によりますれば、これは化合物と考えていいじゃないか、こういう御意見であります。ところが、話が長くなって恐縮でございますが、このいわゆる木村先生のおっしゃる化合物というのは、従来の通説として用いておりましたところの化合物の観念とはやや違うのでございまして、従来の化合物でございますと、たとえば水であればH2O、Hの二分子とOの一分子が化学的に結合してH2Oというように、Hが二つ、Oが一つというこの比率があって結合しておるのであります。ところが木村先生の言われます化合物の観念の中には、特に問題になりますのは、燐酸と砒素という分子炉ございますが、これが一定の比率を保たずにある場合においては燐酸ASが五であり、それに対する砒素が一である、あるいは逆の場合もある、そういうように分子の結合の比率が必ずしも一定しておらないのであります。これは従来の学説から申しますれば、化合物の観念には入っておりません。しかし木村先生はこれも化合物と考えていいじゃないだろうかという説でございます。そこで、これは化合物として考えるのが適当じゃないだろうか、あるいは学問上もこういう考え方があるという点が一つ出てきたわけでございます。ところが現行法上の解釈としまして、いわゆる木村先生の言われるような化合物も含めるといたしますとそういう種類の化合物というのが非常にたくさんございまして、たとえば砒素の化合物につきましてもほとんど大部分の鉱物はある程度砒素を含んでおる、あるいは無機化合物のほとんど全部も砒素を持っておる、こういうことになりまして、従来の混合物という考え方で律しておったものがほとんど化合物になってしまう、こういうような問題が出てくるわけであります。しかしそれは一々ノレルコを当てて検討してみなければわからない。ところがさような機械は現在の日本には一つか二つしかない。多くの製造化学工場においてはもちろんのこと・中央並びに地方の衛生試験所等においてもさような機械はない。従いまして、どれがいわゆる砒素化合物であるかわからぬ・検定がしにくい、こういう実情でございます。従いまして、木村先生の言われる右のものは砒素化合物であるという説をとるといたしますならば、非常に広範囲のものが毒物になってしまう。実際の日常の生活におきましても多くの不便が出てくるという一つの問題が出て参るわけでございます。それからまた砒素化合物であるかどうかということを判定することは事実上不可能であるという問題が出て参ると思うのであります。従いまして、もう少しこの辺の見解がはっきりするまでは、直ちに法律の解釈においてこれを砒素化合物として取り扱うのは適当ではないという感じがいたしますので、目下のところ右のもの、いわゆる第二燐酸ソーダ、そのもとを申しますとボーキサイトの残滓物でございますが、そのもの自体を毒物という指定をしたらどうであろうか、これも政令で指定してはどうかと思っておりますが、さような取扱いをしたいと考えております。ただ学問上直ちにこれを砒素化合物と確定しますのは、他に及ぼす影響もありましてどうかと思いますので、右のもの自体を毒物というように指定して取り締って参ったらどうか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/152
-
153・八田貞義
○八田委員 どうも薬務局長の答弁は、専門家でないからでありましょうが、非常に間違った観念でもって支配されておると思います。というのは、毒物及び劇物取締法の解釈につきましては形式によって解釈すべきものではありません。衛生上の毒物、劇物取締りに沿うような解釈をするのが正しいのであります。木村研究室における成績は、これは高級高分子化合物としての砒素化合物として解釈されておるのでありまして、X線干渉図というような新しい装置、すなわちノレルコによって明らかに砒素化合物であるといり解釈を下されておるのであります。しかも現に中毒が起っておるのであります。あなたは、盛んに砒素の量的な問題について執着されておりますけれども、しからば砒素のない自然物がありますか、砒素を含まない化合物がありますか、その点についても薬務局長は少し認識不足であると思います。法の解釈というものは、衛生上の見地から検討しなければならぬ。現にこれは起ったのであります。しかるにまだ形式論にこだわって、砒素を化合物として見ていいかどうか、しかも木村健二郎さんという無機化学の大家が太鼓判を押して砒素化合物と言っておるの一に、あなたは今後どんどん範囲が広ってくるので不安だから、いわゆる第二燐酸ソーダ、これは、実はいつわりの第二燐酸ソーダでございますが、ボーキサイトの残津物を毒物指定にしようかというようななまぬるいことを言わずに、そのものすばりで、木村さんの発表の成績こそわが国の権威者の発表であり、だれもこれをくつがえすことのできないほど信用のおける成績でありますから、毒物及び劇物取締法に明らかに該当する、こういうように打ち出していただきたいのであります。
さらにまた該当するということであれば、静岡県の衛生部に出された回答は明らかに間違っておるのでありますから、この際訂正されることを御忠告申し上げておきます。どうですか、この点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/153
-
154・森本潔
○森本政府委員 結論を申しますと、いわゆる今の第二燐酸ソーダは毒物として法律の適用をしたいと考えております。
それから条文の解釈としましてこれが砒素化合物であるということについてはまだ確信が持てない しかし毒物としてそのものを取り扱うということは、これはさようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/154
-
155・八田貞義
○八田委員 それでは毒物として指定されるということになれば、さっそく静岡県の衛生部の方にも前回出した回答は間違いであるからということで、正しい回答を出していただけますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/155
-
156・森本潔
○森本政府委員 新たに毒物に指定しました以上、それは静岡県に限らず、全国の関係者に通知いたすつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/156
-
157・佐々木秀世
○佐々木委員長 中村三之丞君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/157
-
158・中村三之丞
○中村(三)委員 厚生大臣並びに保険当局が健康保険の赤字克服に、当然の職務とは申しながら、大へん努力しておられますことは私どもの多とするところであります。しかしながら問題はその方策にあると思います。その方策が適当妥当でないといたしますならば、論議の行われるのは当然であると思うのであります。その案を見てみますと、ともかく補給金として三十億をおとりになった。しかしこれは補給金で、恒久性を持たない、政府の義務支出ではない、大蔵省の主計局の意のままに厚生省はほんろうされなければならぬ、また現にされておるのであります。それから標準報酬の引き上げ、これで六億おとりになるということはやむを得ないと思う。ただこれが三千円、四千円程度はどうするかという論議はありますが、標準報酬の引き上げは私はやむを得ないと思う。問題は一部負担の増額でありましょう。先刻来また先日来の厚生大臣の御答弁を聞いてみますると、この赤字は国も負担する、事業主も負担してもらいたい、また被保険者も負担してもらいたい、つまり公平にこの赤字の負担をしてもらいたいという御意見のようであります。そこで、こういう赤字の克服のための犠牲を強いものに払わしめるというなら話がわかる。ところが一部負担をするものは小市民階級であり、負担の能力の低いものであります。国の負担が三十億、それから一部負担が二十九億、年間を通じてそうなるのでございましょう。私はこのウエートの一部負担はちょっと苛酷であると思うのであります。
よく、イギリスにおいて一部負担をやっておるから日本でもやっていいんだというような人がありますが、厚生省の調査せられた資料を見てみますると、なるほどイギリスでは入れ歯、めがね、こういうものについては半額負担らしい、あるいはまた完全に処方せんによって薬をもらった分は一シリング、五十何円かでございます。しかしイギリスの社会保障費というものは幾らか、この間私は調べてみましたが、日本のお金にして二兆円であります。そこをよくお考えにならぬといけない。イギリスではそうだからなどというような議論は、だれがしておられるのか知りませんが、この間も議論がありましたが、そういうことは話にならない。
その前に私はお伺いいたしたいのですが、先日来赤字の原因についていろいろ質疑応答が行われました。もう大体定説があり、定論がある。しかし私どもは、赤字を出さしめたものは保険行政の失態であると判断しておる。ここをお考えにならなければいけません。いや、乱診乱療だ、いや、医者が悪いんだ、これが赤字の原因だなどと他に責任を負わす態度は、私ども国会議員としてはなはだ感服いたさない。地方財政の赤字をごらんなさい。同じことです。地方財政の数百億円の赤字は、地方当局の放漫政策の結果であります。繰り上げ充用をやる、つまり税金を見越してそれによって充用をやる。ところが財界の景気、不景気によってその税金は取れない。滞納になってしまう。だからそこに欠陥が生じて赤字が出てくる。午前中の中川君の質問に対する局長の答弁のごとく、保険料の未納がたくさんある。ちょうど国家においても地方においても滞納が多いのと同じ原因なんです。だからそこに赤字が生じてくる。昨今は景気がよく、国税における滞納は六百億で、一時の一千億からはだいぶ減額されましたけれども、依然として滞納がある。私は率直に大臣に言っていただかなければならぬ。そうしなければ、私はこの健保改正案に対して快く納得ができない。赤字の原因にはいろいろありますが、これは保険行政の一つの誤まりであって、その責任である。現に昭和二十九年度から出ていたのでございましょう。昭和二十九年はどういう時期であったか。朝鮮ブームがいわゆる朝鮮休戦によって反動化してきた。しかも無計画、無準備なるところのデフレ政策をやりました結果、まっ先に繊維業者が倒れてきた。中小会社、中小業者が倒れて、不渡りがどんどん出てきた。これらがおそらくこの保険料の未納がふえた大きな原因だと私は思う。つまりこの二十九年度における経済状態の見通しを厚生省の保険当局は誤まったと申しても誤まりがないと私は思う。前保険局長は何がゆえにやめたか、その原因は私がここで申すまでもありません。しかしあの人の時代にあの赤字が累積した。もし保険局長がほおかぶりしてこの委員会に出ておったならば、この委員会の空気はもっと悪化しているはずだと私は申し上げる。赤字の原因の一つとして保険行政のどこかに誤まりがあった、見通しが誤まった、あなたはあの時代の責任者ではありませんから、厚生大臣はどうお考えか、公平におっしゃってもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/158
-
159・小林英三
○小林国務大臣 私が中村さんの御質問に御答する前に、まずどういう点とどういう点炉厚生行政の誤まりであったかということを御聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/159
-
160・中村三之丞
○中村(三)委員 それは未納が多いということもそうであるし、それから被保険者の数というようなことについてもいつも見通しを誤まっている。これは二十二国会においてその議論があるのです。これは久下局長がちゃんと言っている。これは見通しを誤まったのだ。確かに保険行政に誤まりがあったのだ。現に七人委員会の報告をごらんなさい。いたずらに無計画なる給付の改善と拡大をやったという。いたずらに無計画なんである。あなたはそれでも弁護なさるのですか。これは率直に言って過去においてそういう誤まりがあったのだ。だから、これはわれわれが一つ責任を持ってやるということ、これをおっしゃらなければ健康保険改正法律案をわれわれは快く論ずることはできない。顧みて他を言うなかれ、医者が悪いとか乱診乱療だとか言うことは卑怯です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/160
-
161・小林英三
○小林国務大臣 私が今お願い申し上げているのは、私の今日の立場といたしましては、あなたの言われるように赤字が出たということの原因のほとんど大部分が厚生行政の誤まりであるということであれば、これは私どもも相当考えなくちゃならないのでありますから、そこで中村さんにあらためてお願いをしておるのでありますが、どういうこととどういうことが赤字財政の大部分であったかということを御指摘願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/161
-
162・中村三之丞
○中村(三)委員 今例をあげて指摘したことがそうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/162
-
163・小林英三
○小林国務大臣 それをもう少し例を出していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/163
-
164・中村三之丞
○中村(三)委員 さっき言ったように未納が多い。これは不十分である。それは滞納が多いということと同じである。それから人数において、その計画において詰まっている。いわゆる特別会計の計画において誤りがあったのです。これは私が言うのではない、二十二国会においてその議論があったのです。
〔発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/164
-
165・佐々木秀世
○佐々木委員長 不規則発言はご注意いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/165
-
166・中村三之丞
○中村(三)委員 あなたが答弁しにくいというならばそれでよろしい。あなたはそのときの大臣でなかったから公平にごらんになると思うが私は赤字の原因が大部分だとは申しません。いろいろ論議されているから、そこで保険行政を率直に反省してもらわなければならぬということを勧告しているのであります。もしあなたが保険行政は完全無欠であるというならば私は覚悟がある。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/166
-
167・小林英三
○小林国務大臣 私が今中村さんに申し上げておりますことは、私はあなたの質問に対してある程度責任を持って御答弁申し上げたいと思いまするからで、今あなたが前段におっしゃった問題はどうも私には納得できないのです。納得できないその問題に対してはっきりと御答弁申し上げる勇気がないのです。そこで私は、たとえばどういう点とどういう点が赤字の大部分を起した厚生行政の失敗であったかということをお尋ねしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/167
-
168・中村三之丞
○中村(三)委員 あなたが逆に質問なさるのが私どもにはわからない。責任がないとおっしゃるならばそれでよろしい。保険行・政は完全無欠であったとあなたが答弁なさるならば、それはあなたの答弁である。しかし私どもはそうは思わないと言うだけです。これは私の前提ですが、だから保険行政を完璧にするべく反省をしてもらいたいということなんです。新大臣としては、今後保険行政に万遺憾なきを期しますという答弁が出てこなければならぬ。今のままでは困ると思う。そこでそういう負担能力が弱いところに一部負担の増額をせられるから社会保障制度の後退だといろ議論が出てくる。これは在野党の人ばかりじゃない、与党内にもありますよ。世間はももろんそうです。一部負担の増額が社会保障制度の進歩なりと言っている者はだれもありゃしません。そこで三年ほど前に、吉田内閣当時の小笠原大蔵大臣が繊維消費税というものを出した。それに対して全国の機業地の業界は大反対をした。当時社会党と改進党は与党じゃない。反対党だ、在野党だ。私は改進党として在野党で反対した。ところがこの繊維消費税に対するところの反対意見は、当時の与党自由党内に非常な勢いであった。それがために遂に繊維消費税は審議未了になった。大臣はよほどお考えにならぬとこの一部負担増額問題を中心として法案はどのようになるかわかりませんよ。私は衷心より勧告する。参議院の空気を見てごらんなさい。一部負担に関するあなた方のこの案を撤回いたされるお考えなのか、あくまで通すのだ、こういうお考えですか。それによって私どもも法案に対する態度を決しなければならぬ。与党とか与党でないとかの問題じゃない。社会保障の問題ということは社会党たると保守党たると変りない。これはもう超党派的の問題です。私はさように信ずる。英国あたりをごらんになったらわかる。政治家というものは御同様、やはり一つの法案を審議する場合におきましても、院の内外の社会的、政治的情勢を見なければいかぬ。これが悪いというならば、いさぎよくあなたはやめればいい。それが私は賢明だと思う。そして捲土重来、来年は大蔵省にぶつかられる。この点は私は何でもかんでも当局・の出される、もっと率直に言って官僚諸君の出される案は絶対いいんだなんということはいかぬと思う。そんなことならわれわれは代議士なんてやりません。われわれの見るところは外における社会的、政治的情勢なんです。かりに新医療費体系というものを、あの協議会が、当局の努力によってあれが諮問された、そして告示なさる。そうするとおそらく医者はこのときを期して総辞退をやると私は見ております。今日の医者の諸君の私どもの接触した感じでは、おのれの生活問題です。興るか滅びるかの問題です。そんな厚生当局の諸君が見ておられるようなものゃないですよ。保険局長は参議院の委員会においてあれは誤解だ、こういうことを言ったが、そんなものじゃない。みずから顧みられるべき問題だ。現に私どもは昨年保険局長と医務局長に対して、個人的にこの新医療費体系は必ず重大問題になってくる。それにはまずまっ先にこの委員会に一応意見を聞いて、さんざんたたかれて、意見を聞いていいところをとる。これが私は民主政治だと思う。官僚の考えていることは何でもいいということは官僚独善なんだ。そうなさいということを私は勧告申し上げた。しかるに私どもの勧告を聞かずして、秘密裏にやって、そうして今諮問しておられる。私どもの予言の通りだ。当時はあなたが大臣じゃないからあなたに申しておりません。事務当局のとられた態度ははなはだ民主的でないと私どもは思っておる。そこでこれをおやめになるか、あくまでやられるのか、一つ意のあるところを厚生大臣からお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/168
-
169・小林英三
○小林国務大臣 今日の健保の赤字財政を克服するために、どういうふうな方法をとるべきやという問題につきましては、先ほど私は八田さんの御質問にもお答えした通りでありまして、私は今日の処置といたしましては、被保険者にも一部負担をしていただいて、そしてやっていくことがよろしい、こういう結論を持っておるのでありますが、今中村さんのおっしゃる通りに、すべての人々の意見を拝聴して、私の最後の断を下すということはけっこうであります。私もそう思います。中村さんは与党でありますから、この健保の赤字の対策をする上において、一部負担以外にどの方法をとったならば一番よろしいかということを一つどうか御教示が願えれば大へんけっこうだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/169
-
170・中村三之丞
○中村(三)委員 まずその前に申し上げますが、社会保障の問題は、悪いことがあったら与党たりと野党たりとそんなことは私どもは考えていない。間違った点があればこれを訂正さすのがむしろ与党の役割だと思う。
そこでこの二十三億だが、これは十カ月、十二ヵ月になれば二十八億になるでしょう。約三十億と僕はつかんでおきます。これは歳入がないということになるのでございますけれども、われわれはこれを通しませんよ。少くとも私個人は反対する。こんな七とをわれわれ炉賛成しておったら社会保障の後退だ、こんなことは私ども賛成できない。ほっておかれて、そして適当の機会に大蔵省に予備金支出を要求なさい。現在予備費が十八億ある。私どもは有志の仲間と相談しまして、健康保険の国庫負担、これを議員提出しましょう。政府はようなさらぬかもしれない。そうするとこれは義務費になってくる。大蔵省はこれに対して義務費支出でございますから従わなければならぬ。むしろ私どもはこの点において厚生当局を援助しておる。(「大臣、大助かりや」と呼ぶ者あり)大助かりか助からぬかわかりませんが、これは一つまじめにやらなければいかぬ。社会党も出す・われわれも出す。現に前二十二国会のときに、国民保険の議員提出のときには、大臣は参議院で委員長をしておられた。私もこっちで委員長をしておった。あれは前会一致で通っておる。社会労働委員会の社会保障の重大問題は社会党も賛成する、全会一致です。けい肺法なんか見てごらんなさい、人道主義法といってみんな全会一致です。あなたはどういう態度をおとりになったか存じませんが、これは一つ私どもはやればいいと思う。これは義務費です。そうするならば、大臣やそこにおられるお歴々の局長が責められる必要はありませんよ。この点は私も与党でありますから協力しますよ。一つお考えを願います。わずか二十三億だって、これだけの数字なんだから、すぐそれが欠陥を生じたからといって、全部健康保険がつぶれるわけじゃない、僕はそういうふうに考える。
それからもう一つ案を出しましょう。来年、たとえば国庫負担一割五分以内と私は思っている。そうすると五、六十億、その金はどこから出るか、私はここで案を示せとおっしゃったから、与党だからお前示せとおっしゃったから示します。厚生大臣御承知のごとく・租税特別措置法というのがある。これは期限のあるものが三百億の減税になり、期限のないものが七百億円の減税、合計一千億の減税をやっておる。それもインフレ時代の経済が混乱しておる、あるいは政府が補助しなければならぬという場合ならば意義があったと私は思います。同時にこの租税特別措置法の一千億の減税は、何ら中小業者は恩典に浴しておらない。大会社、大企業です。現に毎年四二%の法人税のときに、あの特別措置法によりまして、ある銀行のごときは普通は四二%の法人税を払わなければならぬのに一八%しか払っておらない。しかして今日の銀行はもうけてしょうがないじゃありませんか。私は不当な減税だと思う。不当な特別措置法である。これは来年整理・しなければならぬ。貸し倒れ準備金とそれから価格変動準備金、こういうものがだんだん減ってきております。経済が正常化すれば・そういうものも減ってくる。これだけでも二百二十億円の不当な減税をやっておる。これは整理すべきだ。大蔵省も整理する考えなんだ。この間主税局長も整理すると言うておった。私はそれではおれも応援しようと申しましたが、これは厚生大臣、一つまじめにお互いに考えようじゃありませんか。私は努力したい。全部とれとは言いませんが、五十億くらいは出ます、租税特別措置法の一千億円の不当な減税、この中の医療報酬一の収入の二八%、十二億円の減税は置いておいてもよろしい。私たちはこれは置いておいてもらいたいと思いますが、ほかの方はやめてもらいたい。
もう一つ、私どもがあなた方の今度の健康保険赤字対策の諸案を見ますと、どうもお医者さんに対して官僚統制を強化しようとしている。医師の職業上の判断と独立が尊重されておらない。医者が厚生省の一つの出先機関みたいにされてしまう。この点はよくお考えにならなければいかぬ。職業上の独立と判断を尊重するということで私は簡単に結論だけ申しておるのですが、医者に対していろいろと監督を厳重にせられる。たとえば官給レシートというのをお出しになる。医療請求明細書、これを三千何百万円も出して厚生省で印刷して事業所にお渡しになるらしい。これはおそらく法律じゃなく、行政処置でおやりになるのでしょうが、これは今ちょうど問題になっておる遊興飲食税の官給領収証と同じものだ。これは必ず私は医療の低下になると思う。こんなことであったら全然失敗である。成績がかえって上らないと私は思います。医者の自由を拘束するものだ。もう少し伸び伸びとお医者さんが診療に従事できるようにしてあげなければいかぬのじゃないですか。
それからもう一つ、いろいろ監督を強化される、審査とかあるいは監査を厳重にする、これはよろしい。しかしながら、動きのとれないようなことはおやめになったらよい。繰り返して申しますが、職業上の独立と判断は医者にまかせる。そうしなければ医学の進歩はありませんよ。優秀な医者はどんどん後退すると思う。また一方においてそういうふうに監督の強化をされながら、医者に対する助成施策というものがなされておられない今日のお医者さんは、医療機械の改善もできなければ、収入もない。この間も大阪の医師会の資料を送って参りましたので見てみますと、大阪における二百四十何人の医者の収入について、水揚量が三万円から十八万円の間のものが七割七分ある。これでは医者は減価償却もできないし、新しい医療機械を買うこともできますまい。それに対して、保険医に厳重な監督をなさる一方、医者に対する医療金融を考えるというならばこれは話がわかりますし、またお医者さんも満足する。ただ医者の生活権を取り上げて、医師に対する官僚統制を強化し、医師の職業上における独立と判断とをそこない、その上に何の保護施策もやらない。これでは医者は健康保険を総辞退する態勢を整えるのも無理はない。私は公平な立場からしてこの一部負担の増額をおやめになった方がよいのじゃないかと思う。どうか小林厚生大臣は、繊維品消費税が審議未了になったあの当時の大蔵大臣の二の舞を演じられないように私は希望いたしておきます。私の申し上げることはこれだけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/170
-
171・佐々木秀世
○佐々木委員長 植村武一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/171
-
172・植村武一
○植村委員 先ほど来健保の改正問題に質疑が集中されたようでありますが、私は食品衛生と社会福祉の問題について二、三お伺いしておきたいと思うのであります。時間がありませんから率直にお伺いいたします。
森永のドライ・ミルクは社会に大きな衝動を与えました。まさかああいう大会社の製品で中毒を起そうとはだれも予想しなかった。ところがよくよく考えてみますと、いかにりっぱな設備工場を持っておりましても、この設備工場を生かすも死なすも人なんです。人の良心なんです。これが欠除しておりましたら、決して満足なる食品は得られるわけがありません。だから厚生当局としては、大メーカーであるから大丈夫だろうというような安心感で取締りをやっていらっしゃる面がかりにあるといたしましたら、これは根底からこの考え方を払拭しなければならぬと私は思う。その後厚生当局としては、そういう考え方のもとに取締りをやっていらっしゃるかどうか、一つ厚生大臣から伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/172
-
173・小林英三
○小林国務大臣 今の御意見は私も全く同感でございます。森永の粉乳事件の前にはやはり一流メーカーによります雪印の問題もございましたし、われわれ行政面にある者が、大メーカーであるからといってそれに対する監視・監督をおろそかにすることは禁物であると私は考えております。これは今後とも十分に一つ監督していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/173
-
174・植村武一
○植村委員 大メーカーの今日までのやり方なるものは、巨大なる資本力を持ち、巨大な宣伝力によって大衆を惑わすようなことをやっておることも事実である。それでまず伺いますが、十一月九日の委員会であったと思いますが、中川俊思君が森永のべ−タ・ドライ・ミルクの中にサッカリンが混入しておることについて質問した。そのときの返事で、さようなことは知りませんと言ったら、中川君はさらに、これは厚生当局として詳細に調査をしてその返答を与えるべし、こういう質問をした。今日まで三カ月になりますが、私どもいまだにその結果の報告を受けておりません。この問題はどうなりましたか。一応伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/174
-
175・楠本正康
○楠本説明員 私どももさっそくその日付のものを収去いたしまして、一応調べてみたいと存じましたが、すでに御指摘のような日付のものは消費されておりまして、見当りません。やむなくいろいろ実情を聴取してみましたが、はっきりいたしません。技術的に考えますと、あれは御承知のように金線マークのベータ・ドライ・ミルクでありましたが、べータ・ドライ・ミルクは、これは私どもの技術的な判断でありますが、べ−タ乳糖を使っておるという確証がございました。従ってベータ乳糖を使いますと、品物は非常に優秀になりますが、甘みが足りませんために、えて赤ん坊が飲みたがらない。といってそこに砂糖を使いますと、せっかくの組成が乱れまして、べーター乳糖を使うことができなくなるような関係があるので、むしろその辺に新しい一つの技術があったのではないかというふうに、善意にも解釈いたしております。しかしながらこれらの点は私どもの一つの判断でありまして、なお今後かような点につきましては十分に一つ研究もいたし、また調査もいたしまして、はっきりしたお答えを申し上げたいと存じますが、いずれにいたしましても、現行法におきましては、サッカリンを多少でも使いますればそれを表示しなければならぬことになっております。この表示をした品物はございません。さような観点から、なかなか実情のわからぬというのが実情でございますが、以上の点を申し上げまして、一つ先日のお答えにかえさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/175
-
176・植村武一
○植村委員 今の部長のお答え、きわめて明確を欠きます。入っているのか、入っていないのか。技術的な操作丁とか操作でないとかということは別個の問題だ。入っているのか、入っていないのか、この点をはっきりしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/176
-
177・楠本正康
○楠本説明員 何分にも御指摘の目付のものがすでに消費をされておりまして、私どももこれを収去いたしまして、分析試験をやることができなかったわけであります。従ってその当事者を呼び出しまして、いろいろ聞きただしましたが、はっきりいたしません。従って私どもの想像では——想像でございますが、技術的な判断を加えまして、ベータ乳糖を使っておることは確かでありますので、この辺に一つの問題点かあるのじゃないかと思っております。これは想像にすぎませんが、しかしかような私的な想像を許されますならば、おそらく試験的に使ったのではなかろうかという感じもいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/177
-
178・植村武一
○植村委員 試験的に使ったかもしれぬという疑いがある。しかもサッカリンを入れることは表示違反であることは間違いない。これはひとり森永だけじゃありませんよ。明治にしたって、雪印にしたって、みなそうですよ。これは表示違反があるのじゃないかということを中川君が突いた。ほんとうにあなた方が厚生当局として公衆衛生に忠実だったら、森永はあった、ところが明治はどうだろうか、雪印はどうだろうかというようなことを、当然先に調査しなければならぬ。調査したことがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/178
-
179・楠本正康
○楠本説明員 先般の委員会で御指摘がありましたので、さっそく調査をいたしました。その結果をただいま申し上げたわけでございまして、これは場合によったら違反行為であるが、これは善意に解釈することもできる。しかしこれはあくまで実物がありませんので、想像を申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/179
-
180・植村武一
○植村委員 これは引き続いて検査していらっしゃいますか、いらっしゃいませんか。これは部長さんに言っておきますが、はっきりしたお答えを下さい。私は持っているんですよ。よければここへ出しますよ。いかがです。私は一九五五年十二月の製品の分析を持っていますよ。そういうようなその場限りの答弁じゃ私は満足しません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/180
-
181・楠本正康
○楠本説明員 私どももなお引き続いていろいろ分析試験で調査をいたしておりますので、いずれさような事態を明らかにいたしましたならば、その結果を報告さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/181
-
182・植村武一
○植村委員 出してよろしゅうございますか。もう少し続けましょうか。私の試験した検査成績は持っております。それにはあるメーカーは入っておりません。ところがあるメーカーはプラスです。はっきり出ております。これはさらに私は、今非常に権威ある試験所において、この検査成績を求めておりますから、これが出ましたら、あなたのお手元に差し上げます。それほど取締りの面については、大臣、まだ大メーカーに対してはゆるやかであるということを一つ了承いただきたい。
それからさらにけしからぬ話は、大メーカーは、牛乳でないものを牛乳であるとし、しかもそれが非常に優秀なものであるかのごとき新聞広告をしておる。この前の国会で私は部長にただしましたので、その後はとまっているようであります。たとえばビタミン入りとかミネラル入り牛乳というものはみな大メーカーのものである。こういうようなことを平気でやっておって、しかも厚生当局がいまだにこれを注意もしないということそれ自体が、私はなはだ不愉快である。中小メーカーは正直に、一生懸命に、いい品物を大衆に提供しておる。しかるに大メーカーは、法の抜け道を利用して、自分の製品をできるだけ売ろうという一つの政策のもとに、その宣伝をやっておる。こういうことは私はもってのほかだと思う。それで、今度は食品衛生法の改正も出されるらしいし、それに伴って省令の改正もなさると私は聞いておりますが、法律改正は国会の協賛がなければ執行できませんが、省令は厚生当局だけで自由にできるはずです。ここにすこぶる危険がある。私はそれであえてきょう厚生当局に伺いたいのですが、省令改正は一体どういうふうにやられるつもりか。今日まで私が局長なり部長に御注意を申し上げた点をどの程度に省令改正に盛っていかれるか、一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/182
-
183・楠本正康
○楠本説明員 法律改正は施行がいずれ四月以降になりますので、省令改正は、法律のおおむねの性格がわかりますれば、それと矛盾しない範囲におきまして至急やらなければならぬと考えております。と申しますのは、先般来、御指摘のような御意見もありますので、いろいろ研究をいたしまして、これは間もなく省令を改正いたしまして、ただいまも御意見のございましたような、ただもっぱら商業目的のために、あるいはビタ牛乳だとか何とか牛乳だとかいうようなものを売りさばいております点等についても取締りをいたします。また一方乳酸飲料等につきましても、これを薄めたものは現在のところは野放しになっておる状況でございますので、かような点にも手入れをいたしたい・かように考えております。これはできるだけ急いで法律の大体の体系が見通され次第実施をいたす考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/183
-
184・植村武一
○植村委員 もう一つ伺っておきますが、現在販売されているヨーグルトには安定剤が入っておりますか入っていませんか、これを伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/184
-
185・楠本正康
○楠本説明員 安定剤が入っているかいないかは別といたしまして、現在では安定剤を使ったとしても、これが局方の品物であればよろしいということにいたしてございます。従いまして、製品を作る上に好ましくはないとしても・やむを得ず入れなければならない場合がかりにありとすれば、これは局方を使うということに相なっております。なお現在は寒いときでもありますので、話は別になりますけれども、おそらく安定剤を使う必要はなかろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/185
-
186・植村武一
○植村委員 まず私の見方では、ヨーグルトの大多数は安定剤が入っておる。ところが現在の省令では安定剤を使っても使わなくてもいいような省令なんです。ちょうど森永ドライミルクが中毒を起したときのような状態に置かれている。今度の省令改正にこういう点も考慮されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/186
-
187・楠本正康
○楠本説明員 これは先生も御承知のように、安定剤を使うことの可否についてはいろいろ各界でも議論がございます。従って、これを禁止すべきかあるいは許すべきかということにつきましては、目下研究中でありますが、大体今の私どもの研究の結果では、日本の実情としては安定剤の使用もやむを得ないのではないかという方に傾きつつございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/187
-
188・植村武一
○植村委員 さらにあとへ戻りますが、ベータ・ドライミルクにサッカリンが入っておったらこれば表示違反である。これははっきりしている。もし入っていたら厚生当局としてはどういう御処置をなさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/188
-
189・楠本正康
○楠本説明員 御指摘のように表示違反でございます。そのときはまたその実情を判断いたしまして研究をいたしたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/189
-
190・植村武一
○植村委員 おそらくは検査をなさいましたら、大多数のメーカーはサッカリンを入れていると私は思います。ところがこれが万一大メーカーでなかったら、直ちに表示違反の告発をされたと思う。ところが大メーカーであるがゆえにという意味かどうか私は知りませんが、とにかく十一月の九日に中川君の質問があって、しかもこれは議会において質問があって、しかもその後知らぬ顔をしているということは、どうも私は合点がいかない。私は楠本さんの責任を追及しているのではない。楠本さんの下に使っていらっしやる方はもっと上の方に忠実でなければならぬ。これは当然やるべきである。やってしかもその反応がプラスが出たら直ちに処置すべきではないか。これは当然な話である。私がここでこんなことを言うこと自体がもう間違っている。そういう面に対してはどんなふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/190
-
191・楠本正康
○楠本説明員 ただいま御指摘のような点につきましては、先ほど大臣からもはっきりお答えを申し上げましたように、私どもといたしましては、たとい大メーカーであろうとあるいは小メーカーであろうと、さようなことに関係なく、絶えず正しい監督をいたしまして、間違いのないように断固態度をきめていかなければならぬ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/191
-
192・植村武一
○植村委員 この問題はこのくらいにして、一応また後日にこの質疑を譲ります。
次に大臣に伺いたいのですが、今度のあなたの予算説明のうちに、まことに私の意を得た言葉が入っておる。それは特殊部落の改善をはかるため、隣保館・共同浴場の整備のため千二百万出の予算を計上した、こういう言葉がありました。初めて特殊部落という言葉を厚生当局が予算説明のうちに入れられたと思いまして、私はこれだけ厚生当局の同和地区に対する認識が深まったことをまことに喜んでおります。しかしながら全国の同和地区にわずか千二百万円で隣保館幾つ建ち、共同浴場幾つ建つか、こういうことなのです。それでこの問題の解決のために、大臣は今後どういうようなお考えを持っていらっしやるか、こういうことをまず伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/192
-
193・小林英三
○小林国務大臣 同和事業のためには十分に推進をしていきたいと思います。そういう意味で今年は隣保館並びに共同浴場を作りまして、ことに共同浴場につきましては、三十年度はなかったのでありますが、三十一年度におきまして五カ所作りたい、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/193
-
194・植村武一
○植村委員 これは局長に伺います。全国に部落が幾つあって、その部落の改善の施策として隣保館と共同浴場だけで解決できるとお思いになっておりますか、この前も伺いましたが、私は特にその節申し上げたのでありますが、生活環境を変えなきゃならぬ、差別されない生活環境に持っていかなければならぬということをあなたに申し上げた。それにはこの住宅の改善ということが最も必要である、こういうことを申し上げた。ところが今度、これも御説明の終りにあるのですが、引揚者の定着援護に必要な引揚げ住宅については、新規引揚者分として二百三十月、北海道にある老朽集団収容施設の疎開用として、五百戸を建設省において建設する第二種公営住宅の中より優先確保することになっておる、こう書いてある。これは別に新しい予算を持たなくてもいけるわけです。同和地区の住宅改善をやろうとすれば、建設省との話し合いでかようにできたはずなんです。それができていない。これは
一つ大臣が認識を新たにされたい。また局長もこの問題にもっと取っ組む熱意が足りなかった結果じゃないかと思うのでありますが、これは局長から伺いますがいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/194
-
195・安田巖
○安田(巖)政府委員 同和の問題は、前国会におきましてもいろいろ熱心な御意見を承わったわけでございます。そのときも申し上げたのでございますけれども、戦前は部落改善十カ年計画というのがございまして、いろいろ総合的な施策をとって参ったのでありますけれども、戦後はいろいろ世の中が変って参りまして、そういうふうなことを言うのが新憲法のもとではかえってどうであろうかというようなことであったわけでございます。そこで各省が自分の仕事の中でそれぞれそういうことを気をつけながらやるのがやり方としていいのではないだろうかという方針が、実は今日まで続いておるわけであります。しかし御承知のようにこの問題が主として起りますのは、関西あるいは九州の方面でございますけれども、戦後におきまして二、三差別事象を契機といたしまして問題があったわけであります。そとで各府県におきましてもそういったような予算を組んで参りますし、私どもといたしましても、これは何とか厚生省の行政の権限の範囲内でもってお役に立つことができないかということを考えて参ったわけでございまして、ただいま大臣から説明がございましたように、本年は隣保館を三カ所・それから共同浴場を五カ所、かろうじて計上したということでございます。これにつきましてはいろいろ先生にお骨折りをいただきましたことは私ども非常に感謝いたしておるのでありますけれども、そういうわけで建築の問題にいたしましても、やはり建設省の仕事の範囲内でそういうことを考えていただく。私どもの方で同和対策についての各省の連絡協議会があるのでありまして、予算時期になります。とそういうことにつきましては実はお願いをいたすわけであります。実施に当りましては建設省もそういうことを従来は考えていただいておることもございますので、おそらく多少は考えてくれると思いますけれども、しかし先生の御期待になるような、以前のような大きな計画というものは、先ほどから申し上げましたような事情で現在はやっていないような次第であります。なおまた明年度も同じ問題が起るわけでございまして、そういう点につきましてもいろいろ研究してみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/195
-
196・植村武一
○植村委員 時間も大へんたちますから、来年度はさらに大臣も御認識を新たにしていただいて、局長もお骨折りをいただきたいということを要望いたしておきます。
次に母子福祉資金の貸付の問題でありますが、これは大臣の御説明のうちにも順調にいっておる、こういうお話でございました。本年度は約五千万円ばかり予算が減っておりますが、これは償還金を見込んでいるので前年度と大して変りはないと御説明になると思います。ところが実際は地方財政に半額依存でしておる現状なのでありますから、地方財政が窮迫すればするほどこれは地方においてしぼってくるのは当然なのであります。それでこの問題についても私は前の国会で、できるだけ五分々々の負担に、国において負担率を引き上げなければならないということを申し上げておったのでありますが、そういう点に対しては、大臣は特に福祉資金の貸付については御熱心だったと私は考えておりますので、一応大臣の御所見を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/196
-
197・小林英三
○小林国務大臣 仰せの通り地方財政の逼迫からいたしまして、資金は十分に用意いたしておりましても、なかなかこれを全部使ってくれないような状態でございまして、この点は今御説のように国庫補助の引き上げを将来やるべきものだと考えております。本年は法律の改正を考えておりまして、高等学校に対しまする貸付金の額も上げたいと思っておるのでありますが、母子福祉の貸付金の問題につきましてせっかく国会でおきめ願ったのでありますから、この運営をもう少し能率的にいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/197
-
198・植村武一
○植村委員 就学資金の一部について引き上げを行うという御説明がありました。今もちょっとお触れになりましたが、母子家庭はできるだけ援護してあげて生活保護に追い込まないように、生活保護からさらに転落しないように、これは国の施策によってとめなければならぬと思うのであります。そういう意味におきまして、この問題に対しては特に私は婦人問題とからんで政府に考えていただきたいと思っております。それで前の国会に大学の就学資金は今の大臣のお骨折りもございまして、二千円から最高三千円まで引き上げられましたが、当時から高等学校の就学資金の引き上げが私どもの中でもやかましく言われておったのであります。今のお話では高等学校の問題に手をおつけになるような御口吻でございましたが、具体的にどれほど引き上げられるのか、御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/198
-
199・小林英三
○小林国務大臣 七百円でございましたものを今度は千円に引き上げをいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/199
-
200・植村武一
○植村委員 これで終ります。その点私ども厚生大臣の御熱意に対して非常に敬意を表する次第でありますが、この母子福祉貸付金の問題にはそのほかまだいろいろ残された問題があると私は、心得ておりますので、今後逐次解決されるようにさらに御奮闘をお願いいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/200
-
201・佐々木秀世
○佐々木委員長 滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/201
-
202・滝井義高
○滝井委員 どうも大へん申しわけございませんが、簡単に三点だけお聞かせ願いたいと思います。明快に時間をとらぬようにお答え願いたい。
第一点は、国会は昭和二十九年十一月に新医療費体系を出すことを要求いたしました。大臣、いつ新医療費体系は国会に出すのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/202
-
203・小林英三
○小林国務大臣 新医療費体系につきましては、昨年の十二月二十七日に医療協議会に諮問を出しますと同時に国会の委員会の方にも発表をいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/203
-
204・滝井義高
○滝井委員 あれは社会保険の点数であって医療費体系じゃないでしょう。われわれは医療費体系を要求しておる。点数を出してこいと言ったことは一回もございません。与党、野党を通じて全会一致をもって、昭和二十九年の十一月に国会は国会の意思として厚生当局に医療費体系を出すことを要求した。点数ではないのです。体系をいつお出しになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/204
-
205・小林英三
○小林国務大臣 これは私就任前の問題でありまして、私は実はうっかりしておりましたが、そのいきさつにつきましては関係事務当局から一つ申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/205
-
206・曾田長宗
○曾田政府委員 新医療費体系とはいかなるものかということにつきましては、いろいろな考え方があると思うのでありますが、私どもとしましては一応医療費のあり方というものを、御承知のようにこれは昭和二十六年に、臨時診療報酬調査会におきまして、基本的な骨子と申しますか、こういうようなものを立てられましたのに応じて、大体その後の実際の調査というものから得られました資料に基いて、ある程度具体的に数字をはめてみたものを一応新医療費体系というふうに考えまして、二十九年に公表いたした次第でございます。その説に皆さんからもいろいろ御意見がございました。これは不十分ではないか、新医療費体系というような大それた名前をつけるようなものではないじゃないかというようなお考えもいただいたのでありますけれども、当時限られました時間としましては、私どもとしてあの程度のものしか考えられないということを申し上げたのであります。
その後一年三ヵ月の時間の余裕をちょうだいいたしまして、その間にいろいろとさらに考えろということで、いろいろ検討を進めたのであります。基本的な考え方は、大体昭和二十六年に定められました考え方なのであります。その後の実際の調査と申しますれば、二十七年の調査でございます。これに基いて一応どういうような数字をおおむね当てはめていくべきかということを編み出したわけであります。ところ炉二十七年の調査というだけでは、その後に時間的なずれがございますので、これを何とか調整しなければいけないであろうというようなところから、その後に実施いたしたい調査をいろいろ考案いたしたのであります。ところがこれも一年三ヵ月の余裕をちょうだいしたと言いながらも、限られた時間でございますので、長時間かかるようなものでは困りますので、二十七年に調査いたしたような医療施設の経営費のこまかい実調というようなことは、これは実施が困難でありました。ただ診療行為の頻度がどのように変ったか、あるいは診療の量と申しますか、範囲がどういうふうに広がってきたか、あるいは一々の投薬あるいは注射につきましてどの程度に薬品材料を使っておるかというようなことは、これは調査をやればやれないことはないというふうに考えまして、この調査をいたしたのであります。
こういうようにいたしますと、その数字に若干の調整が必要になってくるというふうに考えるのであります。これをいよいよ具体化上しますときには、先般もいろいろ御意見があったのでありますが、一応の体系というものができたとしても、これを具体的には健康保険の点数に直さなければならぬ。一応体系を皆さんにお示しいたしました後において、これを点数に、いわゆる翻訳というような言葉を使っておりましたが、このために相当時間がかかるというようなことから、作業の面から申しましても、ある程度調査によって数字がだんだんと出て参りますれば、これを保険に具体化していくという作業も・あわせて同時に進めたいというふうに考えたのであります。基本的な考え方は前回お示しいたしましたものと、今回の新医療費体系も同じ考え方なのであります。それを今のように・その後得られた資料によって具体化していく、具体化して参りますれば、結局これが点数になってくるというようなことで、その新しい考え方に基いてこの保険の点数を定めた。
もしも前に考えました新医療費体系と、今回の新医療費体系との間にどういう差があるかということになりますれば、一応前回は平板的に、いわゆる時間によりまして各診療行為に対する報酬を定めるという考え方であったのでありますが、このうちに御注意をいただきましたいわゆる技術差と申しますか、難易差というものを含めて案は立てられぬことはないということで、これを加えました。それから全般的な医療行為の中で占めるその意義、特に注意深く行わなければならぬ診療行為というようなものに、平板的な時間による按分というものより以上の考慮を加えていくべきである、かようなことを加えたのが今度の新しい新医療費体系というならば、言えると思うのでありますが、この程度では前回と根本的な考え方はあまり変っておりませんから、むしろこれをすぐ点数に現わして皆様方の御意見を拝聴するということにいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/206
-
207・滝井義高
○滝井委員 それはあなたの方で勝手にされることはどうされてもけっこうですが、国会の意思は、新医療費体系を出してこいということです。点数を出してこいとはだれも言っておりません。点数は、ほんとうにまじめな技術料を評価した医療費体系ができるならば、翻訳すればけっこうです。時間がかかってもちっともかまいません。だから新医療費体系はいつお出しになりますか。われわれはあす理事会を開いてやらなければならぬのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/207
-
208・小林英三
○小林国務大臣 いつでも出せるでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/208
-
209・滝井義高
○滝井委員 それじゃ、局長、いつ出します。医療費体系そのものを出して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/209
-
210・曾田長宗
○曾田政府委員 先ほども申し上げましたように、私どもは新医療費体系は一つの考え方であるというふうに思っておりますので、それは点数表の中にこれが現われておるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/210
-
211・滝井義高
○滝井委員 それはあなたが勝手に御解釈になっておるので、二十九年の速記録をごらんなさい。点数で出してこいとは衆議院においても参議院においても言っておりません。私は当局からもらったものは全部見ました。全く二十九年のときと違っております。この前のは六・二〇三点というようにきちんと初診料が出ておりました。今度のものはぼつりと十二点が出ております。どこから出たか、見ても、これは全然わかりません。
出た根拠が示されなければ、医療費体系ではないじゃありませんか。あなた方が勝手に作ったものだ、勝手につかみ取りしてきめた点数としか思えない。新医療費体系が出たら詳しく審議しますが、とにかく新医療費体系をいつ出せるかということなんです。これを御明答願わなければどうにもならぬのです。私らの党は新医療費体系をやるために党議を決定しております。今のようなあんなものはつまらぬ。いつ出すのか。これは国会が決定しているんだから、局長でなく、大臣に御答弁願わなければいかぬと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/211
-
212・曾田長宗
○曾田政府委員 私どもは、あの点数表の説明文の中に入っておりますのが、新医療費体系であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/212
-
213・滝井義高
○滝井委員 そうするとあんなちゃちな説明文だけですね。その説明文の基礎になる二十九年の十一月のような数字は何もない。私らはその基礎になった数字、二十九年十一月と同じような医療費体系に直した資料を、あとで審議に入るときに出すように要求しておきます。
次に入ります。さいぜん官給請求明細書がありましたが、予算書のどの項に、官給請求明細書の額は幾らで、その枚数はどのぐらいかということが一載っておるのか、これは事務的な問題ですがお教え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/213
-
214・堀岡吉次
○堀岡政府委員 特別会計の方の一一ページに歳出がございますね。そこの健康保険厚生年金保険及び日雇健康保険の事務取扱に必要な経費、その中に含まれます金額が三千七百八万八千円でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/214
-
215・滝井義高
○滝井委員 枚数にしては……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/215
-
216・堀岡吉次
○堀岡政府委員 枚数は今ちょっと覚えておりませんので、後ほどでも申し上げます。御案内の通り、業務取扱い費、この分は全額一般会計負担ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/216
-
217・滝井義高
○滝井委員 それはわかりました。それからその次はちょっと大事なところなんです。ほんとうは二十九年、三十年と聞きたいのですが、時間がございませんから、ことしの分だけ承わりたいと思います、大臣は六十七億赤字が出るとおっしやいましたが、その六十七億の赤字が出る基礎を御説明願いたいと思います。これは今後われわれの党の予算編成の上にぜひ必要なものなんですから、御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/217
-
218・小沢辰男
○小沢説明員 計数的なものでございますので私から御説明さしていただきたいと思います。私どもは、歳入の面につきまして、明年度は平均標準報酬月額を大体一万二千二十二円というふうに考えたのでございます。被保険者の数は五百三十一万人、収納率が九二%、これは過年度分を含めまして平均した数字であります。保険料収入が四百九十五億八千八百万、その他雑収入が若干ございます。それで御承知の通り、もしも平年通り、例の十億ずつ返還するという建前上十億を国から受け入れるといたしますと、これが十億でございまして、その十億をそのまま返しますので・借入金は最初五十億でよいだろうというふうに考えておったのであります。これを合せまして総収入として五百五十六億というものを考えておったのであります。一方歳出の方につきましては、医療給付費でございますが、これが今年度一人当りの医療給付費及び現金給付費を合せまして九千三百円ばかりというふうに見込んだのでございます。来年度は、現在までの医療費につきましては個々の入院及び入院外、あるいは歯科、それを本人及び家族その他の最近までの実績を見まして、それで来年度医療費及び現金給付費の推計をいたしまして、大体一人頭にしまして一万百七十円見当と想定をいたしたわけであります。そのうち特に医療給付費につきましては、見込みを七千五百七十円見当に見たのでございますが、それを八千三百四十七円見当に増加するものと考えて、およそ一割見当の増加を見込んでおります。そういたしますと、保険給付費全体が五百四十億になるのでございます。これに国債整理基金特別会計へ六十億返します、それから御指摘のありましたこの六十億に対する金利を三千万見込み、その他予備費を約十七億と考えて、歳出合計を六百二十二億七千四百万円というふうに考えたのであります。その結果歳入歳出の不足を六十六億六千五百六十万円という計算をいたしたのであります。この六十六億六千五百六十万円の赤字はどういうところから出ているかということを申し上げますと、保険給付費が、三十年度の推移の見込みでございますが、五百十四、五億程度であろうというふうに見ているのでございます。同時に収入の方が、先ほど申し上げましたような状況になり、歳入歳出のアンバランスが六十六億六千五百万円というように考えているのであります。結局予備費の十七億九千九百万円を含めて六十六億六千五百六十万円になるというふうに考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/218
-
219・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、今の標準報酬月額一万二千二十二円ですか、予算書では一万二千二百五十二円になっているわけですが、今言われた数字とここに出ているのはだいぶ違ってきているのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/219
-
220・小沢辰男
○小沢説明員 お手元に出ております予算書の数字は、実施後の対策をいろいろやりました結果来年度はこうなるということで収支のバランスを取ってお出ししているのであります。結局一万二千二十二円の標準報酬を、行政努力と今度私どもは等級区分の改訂を考えておりますが、これの要素を入れまして、標準報酬月額が一万二千二十二円になるという見込みで収入を計算しておるのであります。それは今私が六十六億六千五百六十万円の歳入歳出のアンバランスの数字を申し上げましたのは、この対策を実施しない前には、来年度はこういうふうになるだろうということを申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/220
-
221・滝井義高
○滝井委員 どうも私そこらあたりがわからぬのですがね。ある場合には標準報酬は一万二千二十二円に見、ある場合には一万二千五百二十二円に見る。そのときそのときで標準報酬の額は、あなた方が自由自在に変えられるということが、そもそも問題だと思うのです。それは財政対策をしたときとしないときと、標準報酬が変るという見方をすれば、これは数字の魔術です。それはたとえば初めは、九十五億あるというのが末高さんの談話なんかにもあった。ところがだんだん減って、この前保険局長がここの席上で答えたのでは、八十億の赤字の見込みだったのです。ところがあなた方が大蔵省との折衝の過程では七十一億になってしまった。そして今度は新聞に発表するときは六十七億になった。ところが今度は六十六億というふうにだんだん下ってきておるのです。今のように財政・対策をやったならば、標準報酬はうということになれば、標準報酬というものは、いつでも勝手にあなた方が自由自在に動かし得るものなんです。そうなるとさいぜん中村さんが言われたように、これは行政のやり方一つで、健康保険というものは何も一部負荷をやらなくても、どうにでもなるという結果が出てくるのです。そればかりではございません。たとえば保険の給付だって、初めは一万百七十円、財政措置をしたら九千六百五十円、こういうふうに保険の給付までが減ることになる。この保険の給付費が減るということは、明らかに受診率が減ることを意味している。財政対策をやったら七千七百九十七円になっておるのですが、この一部負担の二十三億というものはおそらくまだ減ると見ていい。この二十三億というのは、予算書を見ると一年間の分が出ていると私は思った炉、今中村さんのあれでは十ヵ月だ。健康保険は五月から施行するというならば、ほんとうは十一ヵ月なんです。これは何カ月の見積りを見ているのですか。こういうことは、われわれに出す予算には全く何も書いてない。昨日も予算委員会で公述するある人が私のところにやってきて、これを見てもさっぱりわからぬというのです。全くこの赤字対策がどうなっておるのか、幾ら研究してもわからない。私も二十九年以来一ヵ月かかってずいぶん研究してみましたが、なんぼ研究してもわからない。今のようにあなた方が絶えず勝手に数字を変えていくから、あなた方は標準報酬をこの予算書に出ておる通りの一万二千五百二十二円と見ておるのだろうと仮定して、そうするとこれはどういうところから把握したのだろうか。七人委員会等の考参資料を見ると、毎月の勤労統計は今井さんはやるべきだという。それでははあ、ああいうところからとるのかとわれわれ善意に解釈してやってみた。ところがあなたの言われるところによると、財政対策をしない場合には一万二千二十一円・こういうことになる。そうすると九十五億の赤字を、あなた方が末高さんなんかに説明したときとまた違ってきた、八十億のときとまた違ってきた。そういうようにだんだん標準報酬を勝手に見られている。一人当りの保険給付費を全く変えていく、あるいは医療給付費を変えていく、傷病手当金の給付費を変えていくということになれば、私たちはどこが厚生省のほんとうに信頼のおけるものかわからない。私たちは少くともこの予算書に出ておるのがほんとうのものだと、こう思っておった。ところが財政対策をやった場合とやらぬ場合と違っていくのだ。それじゃ赤字の見積り方が九十億になるか百億になるかによって、どんどん変っていくのです。だからそこからはどこかにきっちりとしたコンスタントのものを置いて、予算書を出すときに出してもらわなければ、国会はいつまでたってもつんぼさじきですよ。あなたの説明では、そのときそのとき私たちが勉強しないと、ほんろうされることになる。たまたま私が一ヶ月かかってようやく調べてみたからこういうことがわかってくる、あるいはこういうことを質問するからわかってくる。これでは、中間討論が予算委員会で行われますが、今度は社会党がわれわれの資料でやった場合に、いや政府はそういうことは見ておりませんと与党から言われたらぎゃふんですよ。こういう点はもっと慎重に正確な資料を私たちのところに出していただきたい。だからあなた方が九十五億と赤字を見たときにはどういう見積り方をした、八十億と保険局長がこの場で説明したときにはどういう見積りをした。そうして今度の財政対策はどうだ、しないときはどうだという一覧表の資料を次会までに出していただきたい。
もう一つ大事なところですから聞かせていただきたいのですが、薬価対策ですね。この薬価対策について大蔵省から出ている予算説明では薬価対策をやると出ております。この予算書には三億の薬価の引き下げだろうと思いますが、出ておりますが、具体的にはこれはどういうことをやられるのか、これは新しく出てくる医療費体系に重大な関係がある問題なんですが、これを一つ詳細に具体的に御説明を願いたい。あまり再質問はしないように、一つ的確に御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/221
-
222・森本潔
○森本政府委員 三億という数字が出ておりますが、どういう薬価対策をやるかという問題でございます。これは特に目新しいことは実はないのでありまして、薬業行政の趣旨としますることは、要するに優良なる医薬品を安く提供するというのが薬業の指導行政の根本であります。その趣旨で参りますと、優良医薬品は安く提供できる、すなわち薬価対策になるわけでございます。これにつきましては従来からやっておりまするところの開銀の融資でありますとか、あるいは企業合理化の補助金の交付でございますとか、それからあるいは輸出の諸対策でありますとか、またこういうことを従来からやって参っております。それらの結果ここ数年来薬価というものはそれらの対策の影響といたしまして年々若干の値下りをして参っておるのであります。こういうのが一般的な対策の現われでございます。それからもう一つは具体的に健康保険の購入する薬価について安く購入する対策というものは何かという問題が一つございます。これは薬価基準の問題になってくるだろうと思います炉、これにつきましてはいろいろ検討いたしましたところ、基準のきめ方において合理的な算定方式を考える必要があるのじゃないだろうかということが研究されました。一応今考えておりますのは、現在の薬価基準は病院、診療所、薬局、これらを通じて一本の薬価になっております。これの実情を見ますと、今申した三者につきましては購入する価格がそれぞれ違っておりますので・それぞれについて価格をきめる。すなわち薬価基準の一本建を三本建にするということが合理的ではないだろうかという考え方であります。それからまたこれもこまかい話になりますが、現実の様子を見ますと病院等におきましては同じ薬を買うにしましても大きな包装で買う、それから診療所等におきましては小さい単価で買う、この辺におきましても若干の値段の差が出てくると思うのでございます。こういう点の合理化をはかりまして、これによりまして若干の金が見込まれると思います。そういうように一般的な、従来の薬業の助長、行政の面の効果から現われてくるところの薬価の低下と、それから薬価基準を具体的に合理化するという点から出てきますところの薬価の値下り、この二つによりまして本年度予算に比べれば数億薬品購入費というものが減少するのじゃないかという考えでございます。その結果保険の予算としましては三億という予算を計上したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/222
-
223・滝井義高
○滝井委員 大臣、今お聞きの通りでございますが、日本の経済というものは自立させなければならぬ、経済を自立させるためには少くとも産業の合理化をやらなければならぬ、合理化を何のためにやるか、それは安い品物を作って輸出振興をするためだ、そういうことなんでしょう。そうすると今のは合理化だけであって、薬価だけではない、日本の産業全般がやっておることをなぜわざわざここに薬価対策と掲げて麗々しく三億を掲げたのか、この社会保険の二十三億、これは一年になると二十九億になるそうでありますが、私新発見したのですが、そういうものは麗々しく並べるほどのものでしょうか。こういう赤字対策の三億なら書かない方がいいのです。先日薬価対策について私わざわざ時間をとって大臣にも現在の製薬界の状態を言った人だが、製薬業そのものにメスを入れる以外に日本の医療費体系の確立というものはないということです。それを何も加えずにただ優秀な品物を安く提供してくれ、開発銀行から金を貸すだろう、それから包装を大きくするとか病院と診療所と薬局が買う値段は違うと言うが、今だつて違っております。違うのを三本建にする、そんなことでは薬価対策として三億とあげるほどのものでも何でもないじゃありませんか。、こういうでたらめな赤字対策を組んでおるところに、現在の日本の健康保険というものが危機に直面する具体的な理由がある。厚生省の行政がまずいといって与党の議員みずからが指摘する理由があるのです。こういう薬価対策では私は満足できません。いずれこれは医療費体系で詳しくお聞きしますか、製薬業自体にもっとメスを入れて、薬務局長に一つ堂々と製薬業の内容を分析していただきたいと思います。十分調査して日本の製薬業を全部ここにさらけ出していだたきたいと思います。そうでなければ、少くとも開発銀行の金を貸しておるのでありますから、国会としてこれにメスを加える調査委員会を要求いたしたいと思います。そこで資料を要求しますが、日本の製薬業における昭和二十五年六年、七年、八年、九年、三十年と、三十一年の総生産高、それから行政区分による分類による日本薬局方収載医薬品、これをずっと二十五年から三十年、できれば三十一年の見通し、それから国民医薬品集収載医薬品、これも同じです。それから公定書外医薬品、これは家庭薬を除きます。それから家庭薬、これもずっと今のように二十五年から三十年までの実績を出してもらいたい。同時に三十一年の生産見込み、それからもろもろの品物の輸出と輸入、これも同じようにして下さい。それから政府関係機関、すなわち開発銀行や中小企業金融公庫から製薬業にどれほどの融資があるか、同時に日本の製薬束の総数、七千くらいあると言われておりますが私には実態がわかりません。特にその中で大きなものが二十社くらいあるそうでございますが、炭鉱や何かと同じように、大手筋と言われておるものの名前、それの二十七年から三十年くらいまでの生産高、これを一つ速急に資料として出していただきたい。私も作っているのですからあなたの方もできぬはずはない。私はこれをずいぶん苦労をして、二週間くらいかかりましたが全部作っております。私が作ったものとあなたが作ったものがうまくマッチすれば私のものも正しいことになりますから、これをここ四、五日中くらいに出していただきたいと思います。それからさいぜんの保険局の方の資料もお間違いなく、それから医療費体系も、体系そのものを出していただきたい。これはわれわれの党の態度を決定する上にきわめて大事な資料になりますから、ぜひ一つお願いをしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/223
-
224・堀岡吉次
○堀岡政府委員 先ほど滝井先生から私の方からお配りしました予算書の記載について御質問がありましたので、ちょっと申し上げればおわかりいただけるかと思って念のために申し上げます。標準報酬の一万二千二十二円と申しましたのは、一万二千二百五十二円、こうなっております。これは先ほど保険課長が申し上げましたように、標準報酬の最低と最高を引き上げるということによって一万二千二十二円が一万二千二百五十二円になった。それか最終決定で、ここに出た数字であります。法律案もそうなっております。それからもう一つは、定員を約三百人ふやしまして、それによって実際の賃金の把握の仕方が、七人委員会の報告にもありますようにまだ甘い点が若干あるということで、実態に近づけたい。それを合せまして一万二千二百五丁二円にいたしたい、こういう数字でございます。
それから給付費の問題は、先ほど保次課長が申し上げました数字は、何らの対策もやらない場合に給付費の金額としてこれこれになるだろう、それで一十三億の一部負担を落したわけであります。それで一人当りの給付費の金額が落ちる。
それからもう一つは、十ヵ月、十一ヵ月の問題でありますが、これは保険特別会計は二月までの分を支払うということでございますので、十カ月分を見るということになっております。会計年度は三月まででございますが、三月分は翌三十二年度にそれによって支払うということになっておりますので、十カ月分を見たわけでございます。
こういうことで予算書の内訳の資料には記載をいたしておるわけでございます。その点一つ御了解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/224
-
225・滝井義高
○滝井委員 けっこうでございますが、当委員会で局長が昨年には八十億という御説明をやられた。私は速記録をちゃんと見て発言をしておるのでありますが、そういうときには今言ったように財政対策というものを別な方向で私は考えておったが、財政対策というものは三転四転して今にきている。まだ今から変るかもしれない。そうしますとこの計数というものはまた変ってくる。あなたのような今の説明の仕方からいえば明らかに変ってこなければならぬ。末高さんあたりは九十五億だと書いてありますよ。これは朝日新聞に書いてありましたが、末高さんあたりの説明した九十五億のときはどういう見方をしておるか。それから局長がこの委員会で説明した八十億のときはどういう見方であったか。それからあなた方の言われる財政対策をしなかった場合は一万二千二十二円、こういうものだったが、したときはどうだったか。その変遷を僕らは知りたいのです。それを一つ、ごめんどうでしょうけれども、どうせやられたあとなんですからその資料はそろっているはずですから、それを出していただきたい、こういうことなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/225
-
226・佐々木秀世
○佐々木委員長 滝井委員に申し上げますが、多数の資料提出の要求がございましたが、委員会の審議の状況とにらみ合せて明日の理事会でお諮りいたしまして、厚生省の実情もお聞きしたいと思いますので、委員長からの要求とすることは明日までお待ち願いたいと思います。
次会は明十六日午前十時より理事会、午前十一時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午前六時三十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00819560215/226
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。