1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年二月十八日(土曜日)
午前十一時二十九分開議
出席委員
委員長 佐々木秀世君
理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君
理事 藤本 捨助君 理事 岡 良一君
小川 半次君 越智 茂君
亀山 孝一君 熊谷 憲一君
小島 徹三君 田中 正巳君
田子 一民君 中山 マサ君
亘 四郎君 岡本 隆一君
堂森 芳夫君 長谷川 保君
三宅 正一君 八木 一男君
中原 健次君
出席政府委員
厚生政務次官 山下 春江君
厚生技官
(公衆衛生局長) 山口 正義君
委員外の出席者
厚生事務官
(引揚援護局引揚
課長) 瀬戸新太郎君
専 門 員 川井 章知君
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二月十七日
委員八田貞義君辞任につき、その補欠として小
坂善太郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月十八日
委員小坂善太郎君辞任につき、その補欠として
八田貞義君が議長の指名で委員に選任された。
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二月十五日
労働保険審査官及び労働保険審査会法案(内閣
提出第四八号)
同日
教護院の国営化に関する請願(福田昌子君紹
介)(第五八一号)
同(中馬辰猪君紹介)(第六七五号)
国立療養所の付添廃止反対に関する請願(横錢
重吉君紹介)(第五八二号)
同(山口丈太郎君紹介)(第五八三号)
同外一件(草野一郎平君紹介)(第五八四号)
同(横錢重吉君紹介)(第六五六号)
健康保険法の改正反対に関する請願(小川半次
君紹介)(第五八五号)
同(草野一郎甲君紹介し(第五八六号)
同(阿部五郎君紹介)(第五八七号)
同(北山愛郎君紹介)(第六一三号)
同(田中彰治君紹介)(第六一四号)
同(横錢重吉君紹介)(第六五八号)
同(吉川兼光君紹介)(第六五九号)
愛知用水開発工事に朝鮮人労働者就労に関する
請願(丹羽兵助君紹介)(第六一五号)
新医療費体系反対等に関する請願(杉山元治郎
君紹介)(第六一六号)
森永粉ミルクによる被害対策確立に関する請願
(吉川兼光君紹介)(第六一七号)
衛生検査技師の身分法制定に関する請願(櫻井
奎夫君紹介)(第六一八号)
日本赤十字社法の改正に関する請願(森島守人
君紹介)(第六一九号)
健康保険法による被保険者負担反対に関する請
願(横錢重吉君紹介)(第六五四号)
療術既得権存続に関する請願(田萬廣文君外一
名紹介)(第六五五号)
生活保護法の最低生活基準額引上げ等に関する請
願(横錢重吉君紹介)(第六五七号)
国立公園施設整備補助金の復活に関する請願(綱
島正興君紹介)(第六六一号)
健康保険保養所奥多摩荘再建に関する請願(福田
篤泰君紹介)(第六七六号)
元満州開拓民及び青少年義勇隊員の処遇改善に関
する請願(保科善四郎君紹介)(第六七七号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
検疫法の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)
未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律
案(内閣提出第四一号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/0
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001・佐々木秀世
○佐々木委員長 これより会議を開きます。検疫法の一部を改正する法律案及び未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案を一括議題とし質疑に入ります。岡本隆一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/1
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002・岡本隆一
○岡本委員 今度の法の改正の趣旨には私は何ら異存はないのでありますが、この法の改正の問題とは少し離れておりますけれども、援護の問題についで一、二点質問したいと思います。
よくこういうことを耳にしますのですが、戦時中あるいは応召中に結核にかかった方が一たん大体において治癒したというような状態になると、退院して、一応それでもって帰還したといり形になるのでありますが、ところがこの治療がなおったというもののすっかり完全でなかったためにまた発病してきたというふうなことが間々ある。そうしますと今度は援護が受けられないので、みずからの手でもって療養しなければならないというふうな状態になって非常に困窮しておるということを聞くのでございますが、こういり点についてそれを再び戦傷病者として援護するということはできないのでしょうか。その辺のことを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/2
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003・瀬戸新太郎
○瀬戸説明員 お答えいたします。戦時中軍務その他に基因しまして疾病にかかった者が、留守援護法によりまして療養給付あるいは療養費の支給を受けました場合、一たん治癒いたしたと称しましても、さらにまたその病気が再発したというような場合は、やはり従来の継続として援護を実施することになっております。ただ実際問題といたしまして、一たんなおったということで他の職業等につきました上で、また病気が再発したというようなときには、その職業についたために他の余病が併発するということもございますので、その点審査上非常に困難の場合がありますが、少くとも従来の疾病に基因し、あるいは関連する病気であるということであれば、従来の継続といたしまして療養の給付あるいは療養費の支給を実施いたしておる状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/3
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004・岡本隆一
○岡本委員 一たんなおって職業について再び病気がでた場合には審査が困難であって、再発であるかどうかということの認定が困難であるという御意見のようでありますが、結核という病気の全治の判定の困難なこともよく御承知だろうと思う。しかも病気になって帰ってきて、長い間養生して、退院したあくる日から働かなければ食べられないのはだれしもであります。そういう人が再び発病した場合には、これはやはりすっかりなおっておらないのが帰ってきて、仕事で無理をしたためにまた出たのだ、こういうふうな解釈をするのが当然であり、また長い間外地で働いてきた人の労苦に報いる道ではないか。それを判定に困難だというので遷延、一年も二年もほうっておく。その間患者はやはり療養しなければならないというのでもって、非常に苦しい状態で、ないものをすっかり売って、そして養生しておるというふうな状態をわれわれのところへ訴えてこられる。そういうことは始終あるのですが、それについてどうお考えです発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/4
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005・瀬戸新太郎
○瀬戸説明員 御質問の結核のような場合でございますと、比較的判定は容易であると私どもは考えております。従いまして少くとも一たん職業についたがまた再発したというような事例は、実際問題としても非常に多いわけでありまして、数を今承知しておりませんが、私どもの承知する限りにおきましては、ただいま御質問のような点は、大部分が従来の継続治療として扱われるということになっておると考えております。従いまして、さような不都合な取扱いがありますれば、今後十分注意いたしまして、さようなことのないようにいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/5
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006・岡本隆一
○岡本委員 それではそういうふうなことをわれわれのところへ訴えてこられた場合には、審査が困難だとかいうふうなことで援護の手を差し伸べないような場合があれば、それは当該の係の方の手落ちだというふうに解釈して抗議を申し込みにいって差しつかえありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/6
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007・瀬戸新太郎
○瀬戸説明員 病気はあくまでも個々の問題になりますので、一般的に、ただいま御質問のようなことが全部事務的な誤まりであるというわけには参らぬかと存じます。ただ少くとも従来の病気が再発したのであるという限りにおきましては、これは誤まりでありますので、お説のようにお考えいただいてけっこうだと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/7
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008・岡本隆一
○岡本委員 もう一点お尋ねしたいのでありますが、具体的な事例でもってお尋ねいたします。昭和十八年に応召しておった兵隊さんが、満州の佳木斯であったと思いますが、そこの病院に神経痛で入院しておった。その入院しておった兵隊さんが病院で注射を受けて、その直後寒けがした。その中で便所へ行って、便所で昏倒した。そして頭を打った。それが原因になったのでしょうか、翌日死んでしまった。それが公務死であるかないかというのでもって、公務としての年金を申請したのです。ところがどういう理由か公務としての裁定が拒否された、そういうふうな場合ですね。これは病院でもって死に、しかも戦時中の注射薬というものは粗悪なものが多いので、粗悪な注射薬を注射されたため悪寒戦慄を起して、それで便所へ行って昏倒した、こんなのは当然公務というふうに考えてやらなければ私はかわいそうだと思う。しかも五万円の弔慰金をもらっただけで、公務死としての年金が遺族にいまだに下っていないのですが、そういうふうなのはどういう理由に基くものでしょうか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/8
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009・瀬戸新太郎
○瀬戸説明員 ただいまの御質問は遺家援法の関係になろうかと存じますが、公務に基因したかどうかということにつきましては、いろいろ慎重に審査をいたしておりますので、想像いたしますのに、おそらく公務であるということに認定する資料が十分でなかったのではないかというふうに考えられるのであります。詳しくは具体的にそのお示しの例につきまして調査してみませんとわかりませんが、御承知のように遺家援法でも不服申し立ての制度が設けられておりますので、一たん却下になりましても、さらに証拠の資料をおつけいただきましてお出し願えば、その点は十分慎重に審査いたしまして、また二回目に公務死として決定になるという事例もあるわけであります。おそらく資料が十分でなかったのではなかろうかというふうに考えられますので、もしその具体的な氏名その他筆をまたお知らせいただけば、十分またお調べいたしまして御報告申し上げることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/9
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010・岡本隆一
○岡本委員 今のような具体的な事例の場合には、公務死として裁定されるのか、されないのか、その辺をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/10
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011・瀬戸新太郎
○瀬戸説明員 その点は、関係資料その他を具体的に拝見いたしませんと、ちょっとここで公務死となる、ならぬということは申し上げかねますので、その点御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/11
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012・岡本隆一
○岡本委員 その判定の資料ですが、それは前につけて出しちゃって、手元にないわけです。それでもって裁定が拒まれているわけなんです。そしてその未亡人は今子供と一緒に細々と暮しているわけなんですが、同じように自分の主人はほかの方と一緒に応召していって、そして向うで病気になって、そういうふうな事故のために死んでおるのに、一方では公務死として国のお役に立ったというふうな形でもってそういう年金を受け、そういう処遇を受ければ、まあ名誉の戦死をしたと同じような感じを受けられる。にもかかわらず、自分の方は何かかってな病気で死んだんだ、とにかく公務のために死んだのではないんだというふうなことでは、金銭の問題を乗り越えて、何か自分は遺家族として割り切れない。また子供にも、あなたのお父さんはお国のために役に立ってなくなったんだということを言うてやることができぬ、それが悲しい、こう言うて何べんも私のところに来られるのですが、山下政府次官は日ごろそういう未亡人援護の問題について非常に御熱心でありまするが、そういうふうな場合に、あなただったらどうされるかまたどうすべきかということを、一つあなたのお考えを伺わせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/12
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013・山下春江
○山下(春)政府委員 岡本先生御承知のように、二十二国会で、遺家族援護法を、私提案者となりまして、皆様の御協力を得て修正いたしました。事務当局の方には多少の異論がございましたけれども、私は公務死の範囲というものを、自己の故意または過失でないものは全部公務死として扱うということに、言葉を強く言えば押し切りました。従いまして、今岡本先生のおっしゃるような万は、調査がまだそこまで届いていないか何かでございましょうと思いますが、お話を承われば、当然公務死として扱うべきケースと私心得ております。各地から、おくれておるということは非常にたくさん参っておりますが、何分にも数のことでございます。しかしできるだけすみやかにそれは調査をいたしまして、公務死としてお扱いして、霊を慰めてあげるものと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/13
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014・岡本隆一
○岡本委員 前国会でもって公務死の範囲が非常に拡大され、少くも公務よるものでないということがはっきりする場合以外は全部公務死とするというふうに範囲が拡大されたように私も記憶しているのです。それまでに申請をして却下された、それから後に範囲が拡大されたから、今度はきっと公務と認めてもらえるだろう、こういうかうに考えて世話課の方へ申請を出しましたところ、いやこれは工合が悪いしいうふうなことになっているのですが、それではもう一度強引に世話課の方を突破して本省の方へ書類を回すようにいたしますから、その節には、そういう気の毒な人はたくさんあるわけですから、そういう人に対して少くとも国に殉じたという名を与えてあげることができるように一つ政務次官の方でもお骨折り願いたい。これで私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/14
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015・佐々木秀世
○佐々木委員長 堂森芳夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/15
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016・堂森芳夫
○堂森委員 未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案の趣旨に反対するものではございません。賛成なんでありますが、問題はやはり未帰還者が早く国に帰って来る、こういうことが根本だろうと思います。そこで二、三点お伺いしたいのですが、三十四年度になると最終調査が完了する、こういうふうに説明してありますが、一体どういう根拠から三十四年になると調査が完了するという見通しになっているのか、その点を一つお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/16
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017・山下春江
○山下(春)政府委員 御承知のように、過去七年間に生存しておったという資料のない方——生存をしておったというのは、ソ連の場合でありますと、日ソ交渉によって、一千三百六十五名という、マリク全権から渡された名簿が生存者——厚生省は必ずしもこれを了承はいたしておりません。もっと生存者のあることを確認いたしておりますけれども、一応そう考えられますが、ここで延ばしたいと考えますのは、過去七年間に生存しておったという資料のない方でございます。しかしながら、生存しておったことがないということは、しからば死亡したかということでございますが、私とも政府か、あなたの夫は死亡したのだということをきめる資料は日本国にはございません。ちょうど本日、この間日ソ交渉の全権団に追加されました田辺援護局長から第一信が参りましてソ連の場合でございますと——一万一千名の名簿をソ連全権団に間違いなく手交いたしました、そしてマリク全権からも調査をして回答するというお答えをいただいているという第一報が本日参ったのでございます。そういう状態からいたしますれば、御指摘の三十四年までにはこの方々に対する調査は完了する、かように私どもは考えられるのでございます。その意味でとりあえず三十四年、残りまますれば、またそれは残った措置をいたさなければなりませんけれども、三十四年までにはそういう状況でございます。これは留守家族という考え方でなく、実は過去七年間生存しているという資料を有さない方でございます。今年中には私どもは何とか努力をしてこの資料は得たいと存じておりますので、とりあえず三年間延長をした、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/17
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018・堂森芳夫
○堂森委員 今政務次官の御説明では、三十四年になれば最終の調査ができるという科学的な根拠はないと私は思う。そういうふうにとりあえず三年間延長する、こういうことでないかと思うわけですが、それはそれといたしまして、しからば現在最も新しい資料で、どこの地域にどれくらいの生死不明な人がいるとかいう、具体的な各地域における数字をお示し願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/18
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019・山下春江
○山下(春)政府委員 昭和三十一年の一月一日の調査でございますが、二十年以降生存していた資料のある方が、ソ連につきましては一万三十五人、中共につきましては三万七十四人、北鮮につきましては二千百六十七人、合計四万二千二百七十六人という数字でございます。それから二十年以降死亡した資料のある者、これがソ連が二千四十五人、中共が九千九百八十一人、北鮮が五百九十一人、合計一万二千六百十七人でございます。生きているか、死んだかわからない、要するに生死のはっきりした資料のない者が、ソ連で九十七名、中共で五千五百八十三人、北鮮が二百五十人、合計五千九百三十人になっております。これがごく最近の資料でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/19
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020・堂森芳夫
○堂森委員 そこで昨年の秋でございますか、ジュネーヴの田付総領事が中共側といろいろ交渉したようでありますが、その当時から今日までにどのような交渉があったか、あるいは数字についてどんなふうなものが出たか、簡単に御説明をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/20
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021・山下春江
○山下(春)政府委員 その交渉は具体的な問題に全然入っておりませんで、中共側では三団体と交渉をやっておるからその必要はないという態度で、具体的な話に入っておらないというのが現状のようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/21
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022・堂森芳夫
○堂森委員 私の聞くところでは、政府が総領事級というふうな人をもってこの重要な未帰還の問題その他の問題について当らしておることが、問題の具体的な発展に大きな障害になっているんじゃないかと聞いておるのですが、政府としては大使級なり大臣級なり、人によってものがどうこうということではないかもしれませんが、ああいう国柄ですから、大使級といったような人たちが行って交渉をして早く解決する、こういう意図はないんでございますか、この点も聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/22
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023・山下春江
○山下(春)政府委員 中共に関しましては、堂森先生御承知のように、李徳全女史を迎えまして、相当明確なこれに対する御協力のお約束もございましたが、なかなかその後はかばかしく進展いたしません。しかしながら今田付総領事が御承知の通りにいろいろ折衝をいたしておりますけれども、中共からそういうふうな御希望があるということも田付総領事を通しての正式申し入れでもないようでございますので、私どもといたしましてはどんな方法でも確かに中共の方でこの問題に対して専門的に話を進めるということであれば、そのお話に応じたいと思いますけれども、今田付総領事がせっかくその問題について折衝をいたしておると思いますので、いましばらく政府の態度はお待ち願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/23
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024・堂森芳夫
○堂森委員 いろいろともっとこまかく聞きたいのでありますけれども、しかし今の政府の外交方針、外交的な根本的態度というものを見ておりますと、この未帰還者の問題については今のままではこれ以上進展しないと思う、これは山下政務次官を責めましても……(「ばかなことを言うな。未帰還者の問題がこれ以上進展しなかったらどうするんだ」と呼ぶ者あり)とにかく今のような政府の外交方針では進展しない、これは私ははっきりしていると思うのです。従ってもっと積極的な態度をもってやっていくことが、こうした三年延長とか、二年延長するとかいうような一時的なこそく的な対策をしていくということよりも、もっと根本的な解決方法になると思うのでありまして、政府はこの問題について、もっともっと真剣にやってもらいたい、こういうふうに希望して私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/24
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025・山下春江
○山下(春)政府委員 今中国の話が出ましたので、ちょっと答弁がソ連に関連いたしますからどうかと思います。が、ソ連の場合もこの機会に積極的にこの問題を進めたいために、実は全権団の中に引き揚げの専門の田辺局長をわざわざ送りましたのも、政府といたしましては何とかすみやかにこの問題・を解決したいというもう熱意にあふれた一つの姿でございます。二年とか、三年とかでございますが、今年八月一日にこれが切れますということは実に留守家族としておられる方に対して申しわけないと思いまして延長をお願いいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/25
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026・佐々木秀世
○佐々木委員長 小川半次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/26
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027・小川半次
○小川(半)委員 私はただいま提案中の二法案に対して賛成するものであります。特に未帰還者留守家族等援護法一部改正の法律案の政府の措置に対しては満足の意を表するものでありますが、先ほど堂森君からも御指摘がありましたように、未帰還者の留守家族の場合は、ただ留守家族手当を支給されるというだけでその人たちは満足しておるのではないのであります。一番大切な最も重要な問題は、今なおソ連あるいは中共その他の外国の地に抑留されておる肉身を一日も早く帰してもらいたいというのが一日として忘れることのできない念願であるのでありますから、政府は特にこの点について全身全霊を傾けて努力しなければならないと思います。そこで先ほど堂森君の意見を聞いておりますと、すでにこのままでは進展はしないというような発言をされる。そういう国会議員がおりますが、国会議員がそういう発言をするというこれは留守家族に対して心理的に私は非常に重大なる影響を及ぼすと思うのであります。特にこういう問題を申し上げるのは、昨年の十月ごろソ連領から帰国したドイツの人々がこういうことを発表しているのです。今なおソビエトの北方に二万数千人の日本人が重労働に従事しておる。この問題を世界の道徳の問題として早く解決しなければならぬということをソビエトからドイツに帰したドイツ人が発表している。まあ二万数千という数は別としても、おそらくこの人々が直接目撃してきたところを見ますと、ソビエトの北方に今なお相当の日本人がいるに違いないと私は想像するのです。そこでこの点において今なお調査が行き届いておらぬようでございますが、これはソビエトにおいても、日本人がどれだけおるかということがつまびらかでないのです。私は三ヵ月間ソビエトにおりましたが、ソビエトの政府自身の官吏の中にも、日本人は相当おるというのと日本人は一人もいないというような意見があることですから、私は、今後この点について、国際的な問題として相当調査を進めてもらわなければならぬと思うのです。特に、先ほど、平和条約ができなければ日本人を帰してもらえないというような意見を吐いておりますが、これはとんでもないことであって、条約と人道上の問題とは別なんです。ポッダム宣言にも明らかにある通り、平和条約がなくとも抑留者はすみやかに帰さなければならぬということは世界の人道上の問題なんです。ポツダム宣言でもそういうことが明らかにしてあるのです。日本の国会議員の中に、平和条約ができなければ外国から日本の抑留者が帰してもらえないという意見を吐く者がおるから、ソビエトなどに対してそういう意見に妥当性を作るような根拠を与えるのです。こういうことは重大なことであって、こんな意見がこういう委員会などに出るということは非常に残念なことでありまして、今なお、海外におる日本人を帰してもらうという問題は、平和条約とかあらゆる条約とは別個の問題として、人道的に帰してもらわなければならぬという声を政府は世界の問題として取り上げて、すみやかに帰してもらうように努力していただきたいと思うのです。もう一度申しますが、帰してもらうということは平和条約とは何ら関係がないのですから、このことを明らかにしてもらわなければならぬと思うのです。私は、せっかくこの法案が提案されたのですから、この機会に以上のことを申し上げまして、政府の努力と今後の善処を要望したいのです。特にこの点についての決意を山下政務次官から御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/27
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028・山下春江
○山下(春)政府委員 小川先生の御主張ごもっともでございまして私は外交問題はしろうとでございますので、どのようになるか、先行きのことがよくわかりません。もし万一どういうことにもなるものならば、なるようなことがあった場合に、抑留者がその外交交渉の犠牲にならないように、それは全然切り離して整理をしていただくために、引き揚げの問題の専門家である田辺局長に特に行ってもらいましたゆえんも、日ソ交渉の行き先は私しろうとでわかりませんが、引き揚げの問題だけは切り離して優先的に処理していただくという政府の熱意をこの点に表わしたのでございまして、私どもあらゆる機会をとらえ、あらゆる努力を傾けまして、この問題だけは、人道上の立場からぜひともすみやかに解決をいたしたいとかたく決意をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/28
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029・佐々木秀世
○佐々木委員長 他に両案に対する御発言はありませんか。——なければ両案に対する質疑は終了したものと認めるに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/29
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030・佐々木秀世
○佐々木委員長 御異議なしと認め、両案に対する質疑は終了いたしました。
次に未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案の討論に入ります。討論の通告がありますので、これを許可いたします。長谷川保君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/30
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031・長谷川保
○長谷川(保)委員 私は日本社会党を代表しまして、ただいま上程せられました未帰還者留守家族等援護法の一部改正案に賛成の意を表するものであります。
この際特に二百をしておきたいことは、今日までの質問応答等にもありますように、どうもこの点につきましての政府の意向というものが、必ずしも十全なものではないということであります。確かに政府が、この点について、何とか引き揚げをさしたいという熱意のあることはわかりますけれども、しかしその行なっておるところを見ますると、やはりこの未帰還者の帰還ができないということの壁を突き破るという点について、当然進めるべき日ソ交渉あるいは中国の承認、その他の問題につきまして十分な手が打たれていない。なるほど平和条約ができなければ帰還をさせないというようなことはもちろん不法であります。人道上の問題として、いかなる場合にせよこれを送還するのが当然であります。しかしながら、とにかく相手にいろいろな問題がありまして、そういうひっかかりがありますならば、やはりそこを突き破っていくということについて政府は特段の努力をすべきである。そのまずしなければならぬ点は、何と申しましても日ソ交渉の進展であります。また中国も、あれだけの大きな確固不動の政権を打ち立てておりまするいわゆる中華人民共和国の承認、また、向うでははっきり言っておるのでありますから、両国人民の自由な交通、こういうことを当然すべきであります。ところが、これに対しまして政府はいつも非常に消極的である。先般問題が起りましたところの洪進山事件だとか、あるいは浜松の収容所事件だとか、いろいろの問題がありましても、これに対しまして政府は、台湾政府やアメリカなどに対する遠慮でありますか、どうも十分な手を打っておらないのであります。積極的な手を打っておらないのであります。こういう点はもっともっと政府が事実において熱意を示すべきである。ことに私ども社会党が非常に遺憾に思いまするのは、今日日本におりまする朝鮮の在留民六十万に対しまする態度であります。私ども、朝鮮におりまする日本人、在留邦人のことについて、直接会ったりもしたし、帰す方法についていろいろ向う側の意向も尋ねたのでありますが、北鮮の政府は、朝鮮におりまする日本人はいつでも全部帰したいといってあらゆる準備を整えている。また日本におりまする朝鮮人で北鮮に帰りたいという人六十万人、これは全部でもすみやかに引き取りたいと金日成首相みずから私どもに明言をしている。ところがこちらへ帰って参りまして外務省へ行ってみると、帰さない、帰すことはできませんと私どもに明言をせられた。私とも憤慨して大げんかをして帰ってきたのでありますけれども、今日ソ連に抑留されております日本人を帰さないということは確かに不法きわまることでありますが、同時に日本の政府が、本人たちも帰りたいと言い、向うの政府も全部引き取りたいと言っておるにかかわらず、これを帰さないという態度をしていることは残念きわまることであります。ことに、平壌におきまする日本人に対して朝鮮政府がやっておりまする非常に熱意あふれる、親切の限りを尽しました援護に比べまして、私ども日本に帰って参りまして、日本の側でやっておりまするところの朝鮮人に対する態度というものの遺憾きわまりないことを考える。ことに、生活保護法を悪用して乱用しているというので、これに対して生活保護法の打ち切りその他を強行しているが、今日至るところで、警官を立てて、一緒に警官を連れて参りまして、家の中まで入って、たんすまでひっくり返して朝鮮人の家庭の状況を調べている。こういうことは両民族の将来のためにも断じて許すべからざることであり、また、今日の引き揚げ問題の解決のためにも慎むべき問題であると思います。政府は、すみやかにわれわれの国の抑留同胞を帰してもらうと同時に、また、わが国におりまする外国人が帰りたいというならば、当然人道上の立場をもってその帰りたいというところに帰る道を立ててあげるべきである。こういう問題は、相互の問題として関連してくる問題であると思うのであります。
政府は、抑留邦人の帰還について今後もっともっと積極的な態度をとり、日ソ交渉の進展、中国の承認その他にも積極的な手を打って、この問題の解決に事実をもって、熱意を傾けて当られるとともに、日本におりまする外国人の帰還に対しましても、当然人道上の立場から熱誠をもってこれを進めまして、両国ともにこの問題がすみやかに解決するように願ってやまないのであります。
この際政府の注意を喚起いたしまして、この法案に賛成する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/31
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032・佐々木秀世
○佐々木委員長 亘四郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/32
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033・亘四郎
○亘委員 私は自由民主党を代表いたしまして本案に賛成する次第でございます。
今回、政府におきましてこの法案を提出されて、未帰還者留守家族の援護をさらに従前通り三年間延期する、こういうことに相なったことは、現在の段階といたしましてまことに適切な処置をとられたものと思うのであります。ただ遺憾なことは、今まで委員各位からも質問において意見がございましたように、こうして三年延期する事態になったこと自身はなはだ遺憾なことであります。でき得れば、この三年延期の法案が一年で片づいて、あと必要がなくなるという事態が早く起きることを私は心から望んでおるものでもります。しこういたしまして、現在なお、いろいろな調査に努力いたしましても確実な数字がつかみ得ないということは、国際的に考えますときに、そうした邦人を抑留しておく側の全く一方的な不法な行為であって、国力の相違といいながらもまことに残念きわまりないことであります。しかし政府といたしましては、独立を回復した今日であります。いかに講和条約の締結が行われておらないといたしましても、これに対してとるべき幾多の方法が国際問題としてあるはずであります。でありますから、できるだけそうした解決に対してすみやかな決定を見るよう国際的にもあらゆる方法を考慮いたされまして、一日も早くこの未帰還者の引揚問題がわが国から消えるように努力あらんことを希望いたしまして賛成をいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/33
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034・佐々木秀世
○佐々木委員長 以上で討論は終了いたしました。
これより検疫法の一部を改正する法律案及び未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案の両案を一括して採決いたします。両案を原案通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/34
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035・佐々木秀世
○佐々木委員長 起立総員。よって両案はいずれも原案の通り可決せられました。
なお両案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X00919560218/35
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036・佐々木秀世
○佐々木委員長 御異議なしと認め、そのように決します。次会は公報をもってお知らせすることとし、本日は
これにて散会いたします。
午後零時十四分散会
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