1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年四月二十七日(金曜日)
午前十時五十七分開議
出席委員
委員長 佐々木秀世君
理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊思君
理事 野澤 清人君 理事 藤本 捨助君
理事 岡 良一君 理事 滝井 義高君
植村 武一君 小川 半次君
加藤鐐五郎君 亀山 孝一君
熊谷 憲一君 小島 徹三君
小林 郁君 田子 一民君
仲川房次郎君 林 博君
亘 四郎君 阿部 五郎君
岡本 隆一君 堂森 芳夫君
八木 一男君
出席政府委員
厚生政務次官 山下 春江君
厚生事務官
(大臣官房総務
課長) 小山進次郎君
厚 生 技 官
(公衆衛生局
長) 山口 正義君
厚生事務官
(児童局長) 高田 浩運君
委員外の出席者
専 門 員 川井 章知君
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四月二十七日
委員森本靖君辞任につき、その補欠として堂森
芳夫君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案(
内閣提出第一一五号)
性病予防法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第一一六号)
母子福祉資金の貸付等に関する法律の一部を改
正する法律案(内閣提出第一一九号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/0
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001・佐々木秀世
○佐々木委員長 これより会議を開きます。
身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案、性病予防法等の一部を改正する法律案、母子福祉資金の貸付等に関する法律の一部を改正する法律案の三案を一括して議題とし、審査を進めます。
質疑を続行いたします。野澤清人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/1
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002・野澤清人
○野澤委員 今回の母子福祉資金の貸付等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、新たに設けられました住宅補修資金についてでありますが、資金のワクは三万円以内ということできめられておりますけれども、この住宅資金の貸し出し後における据置期間はどういうふうに見ておられるのか。何らこれは明示がないようですが、借り受けた翌月から返すという考え方なのか、この点お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/2
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003・高田浩運
○高田(浩)政府委員 お話の通りに、この住宅補修資金については据置期間を設けていないわけでございます。その理由を申し上げますと、現在あります生業資金でありますとか、あるいは修学資金でありますとか、そういった既存の七つのいわゆる資金につきましては、それぞれ長短の差はありますけれども、据置期間を設けてあるわけでございます。これは結局こういった資金を借り受けることによって事業を始める、あるいは学校に行くということで、その金がもととなって、一定の期間がたてばあるいは果実となり、あるいは自分の働きによって返ってくる、そういったことで、その間のいわば一定の猶予期間と申しますか、そういうことを考慮の上でそれぞれ長短の差を設けて据え置きの期間が設けられているわけでございます。そういう点から見まして、今度の住宅補修資金につきましては、一定の期間待てば、それが元金となって、果実となって返ってくるという性質の金ではございませんで、いわば一度にまとまった金を市中銀行から借りるだけの余裕はないので、それをまとまった金としてこの資金から貸付を受けるという性格のものであって、その点において、今までの生業資金その他とは多少趣きを異にするわけでございます。従ってこれについては一定の猶予期間、すなわち準備の期間としての猶予を置くという意味での据置期間というものは、設ける必要がない、そういうふうな考慮に基いてこれを置かなかった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/3
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004・野澤清人
○野澤委員 大体普通の貸付金ならば、住宅補修資金というものは、あなたの言う通りでいいと思う。ところが実際に母子家庭における家屋修理というようなものはおそらくこの資金の科目が出たために県なり未亡人会なりで相当混乱すると思う。これは理屈でなしに実際問題として、たとえば屋根がわらの修理ということであれば、見積りをとって屋根がわらの取りかえをすればよろしい。ところが草ぶき屋根になってきますと、どのくらいの費用がかかるかも実際わからぬ。それと、特にこういう小住宅に対しては、まとまった金額ではありませんから、仕事師は計画的に来ない。そうしますと、せっかく借りられる見込みがついて、見積りをとって仕事をするという段になりますには、その家庭によっても、地方によっても事情が違いましょうけれども、相当の差ができてくると思う。こういう資金こそ、せっかくここまで育てた母子資金でありますから、資付をなさる際には、たとい三カ月でも猶予期間を設けるのが必要じゃないか。それで、今までの七項目の資金を見ても、生業資金とか支度資金とか、どれもこれも全部据置期間がついておるのです。ただ一つ、今度新たにできたものだけが据置期間が全然ないのです。これは、わずか二カ月か三カ月のことであればどちらでも同じだと、あなた方の方ではテーブル・プランで考えられるでしょうが、実際問題としてかわいそうじゃないか。要するに、また工事中だ、一部払ったままで——どうせ三万円くらいじゃ補修というても、ガラスの取りかえとか、あるいはドァのつけかえという程度のものでしょう。そういうものならいいが、屋根の修理とか何とかなると、あとまた金の苦面もしなければならぬ。実際にでき上って喜ぶのには、さらにまた一カ月や二カ月かかるのじゃないか。せっかくめんどうを見るなら、最低三カ月や四カ月据置期間を設ければよいじゃないか、こういう感じがするのです。どうしても建前上できないというならいいですけれども、何とかそこのところがめんどうが願えないかと思うのですが、もう一度そこのところをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/4
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005・高田浩運
○高田(浩)政府委員 お話のような事情は、もちろん私の方としても十分理解できる点と思いますが、ただこの母子福祉資金の貸付に関する法律の全体としまして、御承知のように、今まである資金と比べますと、今度の住宅補修資金は、御理解いただいておりますように、多少異質的なものということが言えると思うのでございます。しかもどちらかと言えば、やはり、この住宅補修の資金がほかの資金を無用に圧迫をするということは、これは全体としておもしろくない、考慮しなければならない点だと思うのでございます。そういう意味において、据え置きの期間を長くする、あるいは利子を安くするということが債務者の利益に合致するように、一応とれないふしもないわけではございませんけれども、しかし結局貸し付けられた金は返りまして、それがその後もさらにほかのお困りの母子家庭に貸し付けられる、そういうふうにぐるぐる回っていくわけでございますので、やはりこの金を返すという、いわゆる償還の問題については、筋道を立てて考えていくことが、全体の利益にむしろ合致するゆえんじゃないだろうか。そういう意味において、今まで据え置きの期間を設けておりました趣旨にのっとりまして、これについてはやはり設けないのが筋に合致するんじゃないか、そういう考えて方に基いて置かなかったわけでございますが、また実際の金の支払い等につきましては、これは個々の地方によって、それぞれ慣習等もありましょう、しかしおそらくいずれの場合にも大体でき上ってから払うのが普通の姿じゃないかと思いますし、それから実際のやり方からいたしましても、ただいま御引例になりましたような程度のものについては、むしろこれは今のところは考えないで、やはり屋根であるとか、そういった、ほんとうの家としての主要構造部分というものに限って、さしあたり貸し出していくということにいくべきじゃないかと思いますし、その辺のところも考慮して単価等も計算をいたしまして、一応三万円というように押えたわけでございます。その辺のところを一つ御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/5
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006・山下春江
○山下(春)政府委員 この住宅補修資金という項目を一つ起しますにつきましては、かねがね先生方の方でも御要望がありましたし、全国未亡人会の非常な強い要望がございました。たまたますでにもう十年一切補修することのできなかった未亡人家庭が、さぞ困っておるであろうというので、事務当局もちょうど一緒にこういうことを考えついたのであります。そこで高田局長も鋭意大蔵省に当りまして、新たな道を一つ開くのには非常な苦心をいたしました。その苦心の過程におきまして、なかなかうまい折衝がつきませんために、今局長が説明いたしました説明が一番いい説明とは、腹の中では思っておらないわけであります。野澤先生仰せの通りでありまして、住宅補修資金を直ちに返還させるという方法が、時宜を得たものとは言えた義理ではないのでございます。そこで私も、十年間社会の谷間に追い込まれて、じめじめしておった未亡人が、雨漏りを直して家庭の中が明るくなった姿を考えるときに、すぐにこれを返せという法律を提案することはいかにもつろうございます。しかし諸般の情勢上やむを得ずでございますので、今の局長の説明も最もいい説明をしているとも、合理的だとも思っておらないと思いますので、この点は先生方の方で十分御勘案を願いまして、無理のないような運営をいたしたいと思います。資金のワクがきまっておりますので、返還がなければ、それだけほかのワクが食い込まれることになりますので、理屈からいえば早く返還してもらいたいのはやまやまでございますけれども、この資金そのものに私どもは十分の配慮をしてやるべきものだと思いますので、十分お考えを願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/6
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007・野澤清人
○野澤委員 でき上ってしまってから不服を言うてもしょうがないですから、今局長や次官の言うた通り一応これは認めざるを得ないと思いますが、ただ回収という面の高田局長のお話、また他の科目を圧迫するんじゃないかというようなお話だけを聞きますと、これは実際に厚生当局として考え方が少し粗雑だったんじゃないかという感じがします。今山下次官のお話ですと、一応運用の面でというお言葉がありましたから、これを善意に、また広意に解釈すれば、ある程度まで緩和されると思いますけれども、私の申し上げた意味は、据置期間を長くせいという意味じゃないのです。ただ事業といいますか、工事に着手する期間というものは、母子家庭は普通の家庭と違って、金がすっかり積んであってすぐ請負に渡すという場合とは違うと思うのです。そうしますと、金が借りられることにきまっても、実際に金をつかんでみなければ、母子家庭はおそろしいから渡せないのです。つかんでから渡すけれども、三万五千円だった場合にあとの五千円をどうするか、あるいは四万円であった場合にあとの一万円をどうするか、こういう工合に母子家庭としては行き詰まってくるのじゃないか。そういう場合を想像したときには、長い期間というのじゃないが、少くとも二、三カ月くらいは一律にいくようにめんどうを見てやる方が親切じゃないか。同時にまた、この償還期間を見ますと、五カ年以内ということになっていますから、たとえば三万円そっくり借りて五カ年で返すといえば、年間六千円、月五百円になるのです。そうすると、三カ月でたった千五百円です。それを直すために金を借りてきたが、工事半ばですでに五百円返さなければならぬということになると、元金を食っていかなければならぬという結果になるのです。わずか五百円ずっといっても、お互いにわれわれの生活から考えれば簡単に片づきますが、母子家庭としては容易でない。しかも三万円でも借りたい、雨漏りを防ぎたいということを考えると、これは修正するとかなんとかいうのではなしに・山下次官の言われるように運用の面でということであれば、少くともこの貸付の決定と金の受け渡しの期日というものは、政府の方である程度地方に指示をしていただいたらどうか。そうしますと、貸付が決定したというときから金を渡す期間を一カ月なら一カ月、あるいは一カ月半と区切っておいて、実際に金を貸したときをもって貸付の期日として、それから一カ月ずつ返していくというめんどうの見方もあろうと思うのです。ここのところをよほどよくめんどうを見てもらわぬと、せっかくの名法律案がかえって母子家庭を混乱させるんじゃないか。
もう一つ、他を圧迫するという先ほど局長のお話がありましたが、この母子資金の貸付についての隘路というものは今までいろいろな面に出ていますが、特に今度の住宅の補修資金というものは、大体三万円全額を貸し与えるという精神でいくか、あくまでも査定で小刻みに刻んでいくかというところに問題点があると思うのです。そこで皆さんがお考えになったときも、三万が適当か五万が適当か、おそらく省内でも御議論があったと思うのです。これを小刻みにされるということになりますと、地方の未亡人会あたりも相当混乱します。また審議会の方もこれの査定に非常に困難を来たす。こういうことですから、修理ということを目標にしましても、三万円では大した仕事はできないと思うのです。それだけ必要だということであれば、これは貸す戸数をふやすことよりも、なるべく完全に三万なら三万出してやるという考え方で思想統一をしてもらえないかどうかという点でございますが、この点について局長の方ではどうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/7
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008・高田浩運
○高田(浩)政府委員 初めにお話のありました点、多少私の方の答弁が足りなくて大へん恐縮でございました。
貸付の決定をいたしましてから、貸付の決安ということと、現実に金を借りるという、いわゆる貸借の現実行為との間には一定の期間というものがあり得ることはもちろんこれは当然のことでございますし、要らないのに先に金だけ無理やりに借りるという現実行為をする必要は毛頭ありませんので、借りるという見込みが立って、それに応じて具体的な計画なりあるいは請負業者との話し合いなりをして、現実に金が必要となった時期に金を借りる、これは当然そうすべきであろうと思いますし、私どもの方も、そういうふうになるように心がけて指導いたしたいと思います。そういたしますというと、先ほど来御心配の点は大体解決ができるのじゃないかと思うのでございます。
第二点につきましては、理屈っぽく申し上げれば、やはり住宅の補修ということはやり出せば限りのないことでございますし、そういうふうになりますとやはり全体の均衡上いかがかと思いますので、最小限度と申しますか、ほんとうに緊要な部分に限ってやっていただくということの趣旨でいかなければならぬと思うのでございます。そういった意味合いにおいて、たとえば屋根を直すのであるとか、あるいは土台を直すのであるとか、それはそれに応じた直し方をしなければ、それを無理やりにちびってしまうということはどうかと思います。しかし、それかといって、あまり直さぬでもいいところを、少し余裕があるから直してしまおうじゃないかということになりますと、これはやはり困るのじゃないかという気がいたしますが、その辺は、結局具体的な修理の計画とにらみあわせて親切に取り扱っていくということでいきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/8
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009・野澤清人
○野澤委員 大体意向はお話を聞かなくてもわかっているのですが、ただ、私の申し上げたところの、査定をこまかく刻まないでくれという意味は、要するに、小修理あたりに貸し出ししなければならぬという考え方でなしに、三万円限度が最小限と思われるような家庭に貸してほしい、こういう精神で指導してもらえぬかということを申し上げたのです。要するに一万円とか五千円とかを借りなければ修理できないというようなものは対象にしないでいいわけですが、けれども、法律の建前からいけば、査定するという建前からいけば、一万円でも五千円でもやらなければならぬが、私の言う意味は、三万円そっくり貸してもまだ足りないのだという修理個所になるべく重点的にやってもらいたいという希望を申し上げたのであります。
なお、住宅の補修の問題について、母子家庭に対する住宅の各府県の入居状況が非常にまちまちのようであります。たとえば私の栃木県のようなところでは、市町村で非常に理解のあるところは比較的協力してもらえますし、入居状況も満足にいく。栃木県あたりは、昨年四十戸くらい各地から充当されて入っているのですが、この問題について、母子家庭に対する住宅の入居状況は現在までどんなふうになっておりますか。概要だけをお知らせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/9
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010・高田浩運
○高田(浩)政府委員 三十年度の住宅計画として母子住宅を大いに設けなければいけないじゃないかというような声に基きまして、政府の方としてもこれに関する予算を計上いたしたのでありますが、それによりますと、いわゆる母子家庭である小家庭向けのものといたしまして、予算としては八千三百戸分計上いたす。ただこれは地方が施行するわけでございますから、その辺のところの希望との関連もありまして、現実には四千三百戸ということが実行になったような次第でございます。
それから、いわゆる第二種公営住宅として、これは八坪の分でございますが、これは七千五百戸の予算の計画でありましたのが、実行として一万一千五百戸できた、そういうことになっておりますし、三十一年度におきましては、小さい方の六坪の分は三千二百戸の計画、それから八坪の方のいわゆる第二種公営住宅の方は一万五千二百戸の計画になっているわけでございます。そこでこの小さい六坪の方の母子家庭等、いわゆる小家族向けのものにつきましては、当初においてはいろいろの経緯もございましたけれども、これは根本の趣旨が母子家庭を入居せしめるという考え方のもとにおいてでき上ったやり方でございますので、やはりその趣旨を貫いて、母子家庭を優先して入れてもらうようにしなければならないというので、建設省の方と厚生省の方と打ち合せまして、その趣旨の通牒を出していったのでございます。その結果現実にどれだけの母子家庭が入居できたか、その詳細はつまびらかにいたしておりませんけれども、相当多くのものが、その通牒の趣旨にのっとりまして入居できたものと考えております。
それから、八坪の方のいわゆる第二種公営住宅の方につきましても、これは前からあった制度でございますけれども、やはり母子家庭というものを相当考慮に入れて、入居に特別の考え方をしてもらいたいということは、かねがね私どもの方も建設省の方に申しておることでございますし、この方にもかなりの世帯が入居できたものと考えておる次第でございますが、この辺のところは、今後とも私どもの方としてはさらに努力をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/10
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011・野澤清人
○野澤委員 大体わかりました。ただ局長さんの方で、母子家庭優先で入居さしておるというお話で、相当多くのものが入っておるということですが、実態の御調査はまだなすっておりませんか。それでこれは各地方とも、状況によって違うんですが、実際はこの母子家庭等とあるために、これを広義に解釈して、生活保護を受けているようなものの家庭が比較的入ってしまうんですね。そうして母子家庭の優先的に扱うべきものが案外入れない。この入居の実情というものをもう一度御調査なすって、それで少くとも市長くらいにはもう一度通牒を発するなり、完全な了解をつけて御指導される方がよろしいんじゃないか。そうしませんと、せっかくのこれだけの法律が何ら効力を発生しないような形になります。
それともう一つ、第二種公営住宅にしましても、六坪のこの小家族の住宅にしましても、この家賃といいますか、金額が地方々によってまちまちのように承わっておる。たとえて申し上げますと、栃木県宇都宮市あたりは、六坪で六百円という金で借りている。また五百円のところもあれば、八百円のところもある。同じ六坪の小住宅でありながら、そういうふうに差ができるということも、何となしに母子家庭としてはまずいんじゃないか、こういう感じがしますので、実態がどのようになっているか一応御調査の上で、基準となるべき数字をお示しになる方がいいんじゃないか。要するに厚生省と建設省の方で御相談の上で、五百円とか五百五十円とか、そして増減があったとしても二割なら二割ということで了解するとか、もう少し合理的な形で運営しませんと、今全国の未亡人の団体というものはしょっちゅう会合を開いておりますから、各地の悪条件だけが大きく指導されて、いいことは比較的隠れる。要するにひがまなくていいものをひがまざるを得ない状態に置かれているのですから、親切な行き方としては、局長の方でそういうふうな措置が願えないものかどうか、あわせてこの点もお尋ねいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/11
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012・高田浩運
○高田(浩)政府委員 お話の実際の入居の状況につきましては、現在地方に照会中でございますので、その結果によりまして、さらにまた私どもの方で検討をして、御趣旨の線に沿って行動をいたしたいと思います。それから家賃の件でございますが、これはおそらく建築の単価がそれぞれの地域によって違う結果が、家賃の相違ということになって現われてきていると思うのでございますが、この辺は、実は私の方は専門家じゃないからよくわかりませんが、建設省とも打ち合せした上で、できますことならば御趣旨の線に沿うように努力をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/12
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013・野澤清人
○野澤委員 もう一つ、この今度の改正のうちで修学資金が増額されたわけですが、過般大学生に対して三千円というワクが出され、今度高校生に対して一千円というワクが示されたわけです。全国の状況を見ますと、修学資金の貸付が非常に多くなっておる。いろいろ聞いてみますと、戦争を契機とした未亡人家庭の現在の情勢としますと、ちょうど今が適齢期の子供が多い。従って母親としては、この際子供の教育に全精力を集中したい、こういり考えでおられるようでありますが、実際の貸付になってきますと、本省の考えていることと地方で了解する事項とはかなり隔たりがあるようで、たとえば大学に行っている者が、今まで二十円借りておったのが三千円に増額されるものと喜んでいたところが、三千円にならない。また七百円の場合でも、今度は千円になった。せっかく高校生が千円になっても、従来の実績は七百円ですから、一年たたなければ千円にしないとか、あるいは育英資金と勘違いをして、成績が最優秀でなければ貸さぬとか、こういう弊害がだいぶそちらこちらで出ているようなんです。修学資金というものは多くの人に、最小限の千円とか三千円を切って貸すということが目的じゃなく、むしろ完全に千円なり三千円なりを、ちょうど住宅資金と同じように貸せるように工夫してやらなければ救われないと思う。こういう点についてどうお考えですか。また何とか地方に対してそうした指令なりあるいは了解なりをつける工夫がないかどうか、この点をお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/13
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014・高田浩運
○高田(浩)政府委員 お話のように、千円といっても、あるいは三千円といっても、これは大学なりあるいは高等学校に行くための費用としてはなお不足のあるような状況だと思うのでございますし、従ってその、まあぎりぎり一ぱいまでこれは出すように努力をしなければならないことは、私どもの方としては当然に考えておるのでございます。ただ、まあこの辺、予算の問題と実は関連をするものですから、お話のような遺憾な点があるということは認めざるを得ないと思います。この辺は今後ともなるべく最高限まで貸せるものの率がふえるように一そうの努力をいたしたいと思います。なお資料でもごらんいただきますように、実績としては相当上の方までいっているものが多いような実情であることは御承知いただけると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/14
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015・野澤清人
○野澤委員 全くその通りでありまして、あなたの資料を見て、私気がついたので申し上げたのですが実際にこの就学資金というものを途中で査定して割っていくというような就学資金なら、そういう人には貸す必要はないと思うのです。それで最高の限度をどんどん貸せるような人を選定するのが建前で、大学の方を見ますと、約三四%ばかりが低額なんです。それから高校の方がこの表で見ますと、約二〇%がはみ出している。これはほんとうの立法の精神と相離れた一つの考え方じゃないか、こういう感じがしますので、極力これを御指導願いたいと思います。
それからついでに、全体の貸付金のワクの問題でありますが、過去三カ年間すでに経験を積まれているようでありますけれども、生業資金とか支度資金あるいは技能習得資金というように、よいという科目は一生懸命これを立法したときには並べたのです。並べた結果がとりあえず資金貸付法ということで一応成立を見た法律なんですが、実際の地方の運営の状況を見てみますと、一番多いのが生業資金とか、あるいは技術習得資金とか、こういうところでもってはんらんして困るだろうというような、最初立案したときはそういう予想だった。実際に第一年目は、二十八年度を見ますと、そういう結果が出、第二年度、第三年度とは必ずこの間には変遷があると思うのですが、今この参考資料を見ますと、二十八年度と二十九年度までしか出ておりません。そのうち特に目立つものは生業資金が多少下ったことと、就学資金が非常にふえてきたということです。金額で見ましても、二十八年度が九・二%、二十九年度が一九・六%と出ておりまして、延べ人員は一万三千八百十五人から一万九千百七十三人と伸びているのです。これは各府県の状況によっても違いましょうが、府県の財政不如意のために、なかなか思うように資金が手に入らない結果、もう一つは地方の審議会の構成メンバーの素質にもよるのでしょうし、運営の仕方にもよるのでしょうが、大体話を聞いてみますと、資金が足りなくて困るという声が非常に強いのです。どうして足りないのだというと、就学資金にほとんどいってしまう。従っていい科目、たとえば事業の継続資金だとか、あるいは生業資金だとか、技術習得資金だとかいうものを借りたいけれども金がない。こういう話を聞く。だんだん話してみますと、その府県の事情が、査定するのに一番やりやすい科目で貸し出しをする傾向が生まれている。従って二千万なら二千万というものができるというと、就学資金なんかは希望者はたくさんあるのですから、全部それに振り向けてしまう。ほかのものはほとんど残させない。こういうやり方をやっておって、しかも母子家庭では今度は借りる金がないのだという悲鳴をあげている。これに対して厚生省当局はこの科目に対する計画的な按分というものの基準をお示しになったことがあるかどうか。あるいはまた、府県からそういうお尋ねを受けたことがあるかどうか。全くこれは地方にまかせっぱなしでおやりになっているのかどうか、この点お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/15
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016・高田浩運
○高田(浩)政府委員 中央といたしましては、大体内訳をどの程度にするかという心組みはいたしておりますけれども、具体的なたとえば栃木県なり埼玉県において、どういう内容に従って貸し出しているかということについては、結局、その府県における総資金のワクとの関連もございましょうし、具体的にこちらの方で指導することなく、一応県に一任をしている状況でございますけれども、今お話のような点はなるほどごもっともでございますので、この辺はさらによく検討いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/16
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017・野澤清人
○野澤委員 御検討だけでなしに、すでにもう三年経過しますから、ここらで大体全国共通の参考基準とでも申しますかそういうものでも一応試案をお作りになることが必要じゃないか。先ほどもあなたの御説明の中で、今度住宅補修資金が出た、あるいは山下次官も言われていましたが、この資金にたくさん食い込まれたらほかが困るということは簡単にだれでも考える。実際問題は、どんないい科目を作ってもその運営の内容というものが、片寄っておったのでは普遍化しない。そうするというとある程度の基準を——資料の五ですか、このパーセンテージだけでも二カ年間なら二カ年、三カ年なら三カ年の実績に徴して一応そういう最低基準をきめる、そうすればそのパーセンテージまでは住宅補修資金なりあるいは生活資金なり支度資金というものは貸せるのだ、それ以外のものはそれを借りる人がなかった場合に初めて就学資金に持っていく、あるいは生業資金に持っていくというなら理屈に合う。それを野放しにして地方のいいようにやらしておいて資金が足りない足りないとか、借りたいものが借りられないということでは何にもならぬと思う。ここらで一つ調査だけでなく、しっかりした一応の基準というものを示してやる方が親切ではないか。聞く聞かぬは別です。そういう心使いでお進み願えたら大へんけっこうだと思う。それからもう一つ、これに関連して伺いたいことは、国の貸付金があの当時に国家だけから借りられてしまって各府県が出さなかったらどうしようかということで二分の一、二分の一というような比率をきめたと思う。初めのときには非常によかったのですが、最近になってきてからは国庫の予算が一応一億三千万も残ってくると、地方財政の窮乏からきた一つの現象ですけれども、これに対して大蔵省とすれば予算が当然余るのですからこんなうれしいことはないのですけれども、母子福祉資金の貸付という精神からいくというと、余すということは行政指導上どこかに欠陥がある。むしろただ政府の罪だけに負わしておくということはけしからぬと思いますが、この点について厚生当局としてはどういうお考えをお持ちになっているか。あくまでも五分五分の府県の負担、国庫が二分の一だけ出せばいいのだ、府県は熱意がないから金が出せないのだ、こういうお考えでいるのか。あるいはまた近き将来において何らかこれを手を打たなければならぬというお考えなのか。この点をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/17
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018・高田浩運
○高田(浩)政府委員 初めにお話の各資金別の振り分けの問題については御趣旨の線に沿って進みたいと思います。それから今お話の資金の消化の問題でございますが、これは御指摘の通りに大へん遺憾な状況でございますが、われわれの方としては現在の法律のもとにおいて最もよくこれが運営されるようにできるだけの努力をしているつもりでございますけれども、なお現状はお話の通りの状況になっているのでございます。これはやはり根本問題して負担割合の問題があると思います。この点についてわれわれの方として今後努力すべき点が大いにあると思うのでございますが、これは結局両方の金を合せまして貸し出しの資金総量を最大限度にするためにはどうすればいいかということでございまして、結局半分ずつであればこれは一番資金総量としては、いわば国の金の二倍になるわけでありますから、多くなりますし、国が全部持つということになれば府県は持たないわけでありますから、いわばそれぼっちになってしまいますし、従って消化の点はそうなれば問題ありませんけれども、資金総量としてはかえって減るという結果になりますので、その辺は結局予算の総額の問題とにらみ合せてきめなければならない問題だと考えますので、今後ともその辺については最善の努力をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/18
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019・野澤清人
○野澤委員 これは他の委員諸君も心配している点ですからいろいろ御質問もあったと思いますし、重複すると思うのですが、これには考え方が二通りあると思うのです。この母子福祉資金の法律を作った当時に私も関係しておりましたが、資金の裏づけを地方の財政にたよっていくか、国家の財源を基礎にして地方に負担させるかという二つの正反対の考え方ですが、その当時はまだ地方の財政がゆるやかだったものですから、むしろ地方を土台とすべきだということで思想統一をした。そうしてこの法律が生まれた。ところが現在は地方ではなかなかこれを出せない、従ってひどい県では未亡人団体が金を借りてそれを県庁に預託して、それの見返りに中央から金を借りているという話も聞いております。これは真偽のほどはわかりませんが、しかしそれほど未亡人を苦労させるような貸付金であっては何もならぬと思うのです。これはあくまでも国庫の支出金というものを五億なら五億見返りにして、地方からどうしても義務的に出させるような考え方でいくか、それが困難であるということになればその率を変えなければならぬ。すでにもう全国の未亡人の代表の方が各委員のところにも、あるいは厚生省にも願い出ていると思うのですが、これを三分の二国庫負担にしてくれという要求があったはずです。これについては、もう今年法律化してそれをやるという話も出ましたが、私は絶対反対をした。それから未亡人の方々にもその話をよく説明した。理由は、現在の予算というものは五分々々で予算が組まれたものを、法律化して三分の二ということになると、今後大蔵省あたりではますますこの母子福祉資金のワクというものをせばめていく、それでは何にもならない、だから見送るべきだということで、涙をこぼしこぼし説明をされたのですが、私はこれに敢然として反対をした、けれども反対しっぱなしではいかぬ、つまり三分の二というものが果して妥当かどうかということを考えてみますと、ここで二分の一の裏づけをしないから、未亡人団体が運動をして、それで大蔵省も厚生省も三分の二を出したのだ、こういう実績が一つ出ると、一、二年はまだそれで済むが、二、三年たつとまた地方の方の役所としては騒ぎさえすれば三分の二にはなるのだから、今度騒いだら全額になってくるか、あるいは四分の三出るかわからないから、予算の裏づけをしないでおこうじゃないか、こういうふうな、これは善意に基くものではなしに、作為的にそれをやられたのではこれまた困るのではないか、こういうことを非常に心配しているのですが、これらについては即刻どうするこうするということはできませんけれども、少くとも来年度の予算構成に際しては、厚生省自体としてしっかりした方針をきめられていく方がよろしいのではないか。また社会党としましてもこの法律改正をするというような機運まで出ているというような話も聞いております。それで適切かどうかということは別問題として、厚生省としてもここらで腹をきめるべき時期ではないか。この点について山下政務次官せっかくここまで育ててきた、あなた方が作った法律なんですから、一応この率についても、ただ局長さんばかりに責任を負わせないで、大臣、次官として何とかまとめますという熱意のほどがあったら、お示しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/19
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020・山下春江
○山下(春)政府委員 野澤先生御承知のように、この母子福祉資金の貸付等に関する法律が国会に出まして、これが討論の際に当りまして、各男子の委員の方々がこれでわれわれも安心して女房を置いて死ねるのだ、こう言われたほどの法律でございます。ところが自来三年たちまして、だんだんどうもだんなさま方が、奥さんを置いて安心して死ねるような法律でなくなりまして、地方財政のきわめて極端な逼迫とともにこの予算が地方でだんだん圧縮されまして、昨年度は一番悲惨な実績を残したのでございます。私ども今回の予算を編成いたしますに当りまして、安易な考えでなく、この法律のできるときにとりあえず政府の都合で母子福祉資金の貸付等に関する法律という法律になって、全国の未亡人たちから、この法律はぜひ強力な母子福祉総合法にしてもらいたい、すなわち医療の責任あるいは養老年金の責任、そういったようなものを含めたものにしてもらいたいという切実な願いがありましたが、諸般の情勢上今日の法律になったのでありまして、この法律の全貌を考えてみまして、これでいいというものではなく、声のないものはだんだん細っていくということは遺憾にたえないのでございます。従いまして、たとえば年の暮れになりますれば親子心中が新聞をにぎわしますけれども、もしこの母子家庭にして医療の裏づけをもってささえておるならば、おそらく私はあんな親子心中というものが新聞をにぎわす事例が非常に減ると思うのであります。そういう点から考えましても、私どもの微力で十分なことができなかったこともあれでございますが、どうか先生方におかれましても、この法律は先生方の手によって生まれた法律でございますので、ぜひ十分守っていただきたい。従いまして本年度のことはいたし方ございませんが、この母子世帯の性格から考えまして、私はどうしても国がもっとあたたかい手を差し伸べてやるべきものだという確信を持ちますので、三十二年度の予算におきましては、野澤先生御心配の点は、私今比率を明確に申し上げませんけれども、国家がもっとたくさん負担をいたしまして、百パーセント、フルに運転されるように努力をいたす決意でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/20
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021・野澤清人
○野澤委員 非常に親切な御発言で安心しましたが、そうしますと来年度の予算を構成する際には、厚生省としては比率を引き上げて折衝する、同時に来国会には法律改正をして、二分の一という比率をその予算に見合わせる、こういう御決意であるというように了解して差しつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/21
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022・山下春江
○山下(春)政府委員 その通りに決意をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/22
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023・野澤清人
○野澤委員 ありがとうございます。せっかく国のあたたかい手ということが山下政務次官から御発言がありましたが、この虚に乗じてというわけではありませんが、母子福祉資金貸付法を作るときの委員会の空気は、衆議院も参議院もですが、特に参議院が非常に強くて、母子福祉資金貸付の法律でなしに、母子福祉法にしてくれという要求が非常に強かった、それをどうして調整するかというので衆議院からも参議院に参りまして、この法律を一応まとめた、すでに三年実施した今日においては、もうやや経験済みの上にしかもまた非常にまじめな団体だということがわかってきた、こういう情勢でありますから、おそらく政府当局としても新しい構想が生まれなければならぬと思うのです。この点高田局長さんあたり、今すぐでなくても、今後重点的に考えているのはこういうことがあるのだ、たとえていえば母子年金とか、寡婦年金というようなものの構想も、一応省としては検討を加えている、こういうお気持やあるいは実際にひらめきがあるならば、将来のためにお漏らし願えたら大へんけっこうだと思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/23
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024・高田浩運
○高田(浩)政府委員 関係者の方から申しますと、生活保護の関係についていろいろ御要望が強いことも私たち十分承知をいたしておりますし、それやこれや、からみ合いまして、母子福祉樹合法の問題があるわけでございますけれども、私どもとしてはさしあたってはまとめるというよりも個々の問題を一歩でも二歩でも前進をするということが当面の行き方としては実利的じゃないか、そういうふうな考え方のもとに対処をいたしておるのでございますが、だんだんこの法律が実効を発揮いたして参りますと、その次の段階としてはやはり年金の問題と申しますか、そういった問題がおのずから出てくる問題じゃないかと思うのでございます。厚生省としては医療保障の問題が一つの大きな問題でございますが、それと並んでやはり年金の問題があると思うのであります。年金の問題を厚生省としてどういうふうに対処していくかということにつきましては、これはいろいろな考え方があると思いますけれども、そのうちのやはり重要な部門として寡婦年金の問題をほんとうに真剣に考えなくちゃならない、そういうものではないかと思うのでございます。そういった意味合いもありまして、現在児童福祉審議会を中心として、児童福祉等に関します全般の問題についていろいろ御検討をいただいているのでございますが、そのうちに母子福祉の方の一部門として、この寡婦年金と申しますか、そういった問題も御検討をいただいておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/24
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025・植村武一
○植村委員 ただいまの質問に関連いたしまして一点だけ伺っておきたいと思いますが、このごろ官公庁、教職員について次第に定年制を論議されるように相なって参りました。男は五十五才、女は大体四十五才の線を引くのだ、こういう話が出ておるのでありますが、子供をかかえて未亡人が職についておる場合、ことにもう少しで子供が職にありつけるというときに、こういう線で一律に首を切られた場合、これはまことにゆゆしき問題だと思うのでありますが、こういう点に対して厚生省は今後何らかの手を打たれようとする御意思があるのかないのか、それをまず伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/25
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026・山下春江
○山下(春)政府委員 植村先生の御心配まことにごもっともでございます。私どもも本年四月にもそのような実例をたくさん耳にいたしまして憂慮いたしております。先ほど野澤先生から、何か次の段階に対する心組みを持っておるのではないかということでございましたが、たまたま植村先生のそういう問題とも関連して申しますと、私ども戦後十年間の未亡人の生活をつぶさに見て参りまして、よくぞ戦い抜いたと思うものでございます。今日全国の未亡人のたくましいあの立ち上りの姿は、他の生活困窮者の立ち上りと違いまして全く涙ぐましいたくましさがあるのでございます。けれどもその陰には何があるか、父と母との力を二人分精神的にも肉体的にも使い果しておるのであります。従いまして男子五十五才の官年に対して女子四十五才、未亡人でも何でもとにかく女子四十五才といわれることは、未亡人の場合は、あるいは男子の五十五に匹敵するような体力の消耗をいたしておりましょう。しかし体力を消耗しているからというので首にされまして、何のささえもない社会にほおりますことは、それは政治ではございません。従いまして政府はかねがね——鳩山総理も常に年金についての御発言がございますが、私ども厚生省といたしましては、国民全体に対して考えなければなりませんけれども、この戦後のけわしい社会の中でたくましく立ち上って参りました、しかも二人前精神的にも肉体的にもくたびれ果てましたその母が、ようやっと光明にして育ててきた子供に取りすがって手足まといになる身を想像いたしますときに、耐えられません。従いまして、とりあえず年金の第一歩といたしまして、寡婦に対する、未亡人に対する年金を是が非でも明年度から実施に移すべく今研究を進めておりますが、三十二年度にはぜひこの頭を出したいという熱意に燃えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/26
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027・亀山孝一
○亀山委員 ただいま同僚植村委員からまことにごもっともな御質問がございまして、山下政務次官から非常に御同情あるお言葉がありましたが、現在御案内のように地方行政委員会の方で地方公務員の定年制の法律が審議されております。これは今植村委員のおっしゃった問題に関連する問題ですが、今年の年金の問題は関係するところがありませんが、かりに地方団体において男子五十五才女子四十五才という定年制の条例をかりに作るという場合には、今のお気の毒な未亡人の方々に対する問題も考慮しなければならぬと思う。ところがその問題については、私はあまり耳にしておりません。私は地方行政委員をやっておりますが、耳にいたしておりません。今のような御同情ある政務次官のお言葉ならば、適当にこれを、目下審議中で、近くあるいは可決するかもしれぬその定年制の法律案に対して希望意見として厚生省からなりあるいは山下政務次官の関係しておられる未亡人の団体から、すみやかに一つお出しにならぬと間に合いませんから、一応その点を申し上げて、政務次官どうお考えになるか、この際お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/27
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028・山下春江
○山下(春)政府委員 亀山先生のお話、私もそういうことがありはしないかと実は思っておりましたが、地方行政委員会に出席もいたさないし、自分の仕事にかまけて実はただいま承わりまして初めて承知いたしたようなわけでございまして、これは大へんなことでございまして、私ども考えるといたしましても、無醵出年金の一部を改正するということもなかなか容易ならざる大事業でございますので、本年力一ぱい研究をいたしましても、来年頭が出せるかどうかということもよほどの努力をいたさなければわからぬ際に、地方行政委員会の方でそういう法律が決定いたしますれば、当然空白ができまして大へんなことでございますので、厚生省の方から未亡人団体にも直ちに連絡をいたしまして、これに対する請願をいたすように、私自身といたしましても、所管の者といたしまして、許されるならば地方行政委員会に出席をいたしまして、そう点はぜひ特別の法的措置を願えるように努力をいたしたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/28
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029・野澤清人
○野澤委員 次に改正法文の十条の二と十条の三についてでありますが、償還金の支払い猶予、それから償還の免除、二と三に分離されてできております。そこでお尋ねしたいことは、十条の二には「都道府県は、貸付金の貸付を受けた者が災害を受け、又は疾病にかかり、若しくは負傷したため、支払期日に償還金を支払うことが著しく困難になったと認められるときは、第五条第一項の規定にかかわらず、当該償還金の支払を猶予することができる。こうなっております。それから十条の三にいきますと、「都道府県は、貸付金の貸付を受けた者が死亡したとき、又は精神若しくは身体に著しい障害を受けたため、貸付金を償還することができなくなったと認められるときは、都道府県児童福祉審議会の意見を聞き、かつ、議会の議決を経て、当該貸付金の償還未済額の全部又は一部の償還を免除することができる。」これは私法律家じゃありませんから、どういうふうに解釈するのかわかりませんが、法文から見ると、償還の免除の際には児童福祉審議会の意見を開いて、しかも議会の議決を経てと、こういうふうにきめられている。それから支払い猶予の場合には、「著しく困難になったと認められるときは」と、こう書いてあります。この著しく困難になったと認める主体はだれかということなのですが……。免除の場合にははっきりわかってくる。けれども十条の二の場合の、「著しく困難になったと認められるときは」という認める主体は都道府県知事なのですか、それともこの審議会のようなところで認めるのか、この主体がはっきりしないと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/29
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030・高田浩運
○高田(浩)政府委員 認める主体は両方とも県当局、すなわち知事でございますが、ただ十条の三の場合におきましては、いわば権利の放棄になるわけでございますから、慎重を期する意味において審議会の意見を聞いて決定をする、そういうふうなしかけになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/30
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031・野澤清人
○野澤委員 そうしますと、大体知事が認定すると言いますけれども、知事自体が直接は関係しておらぬ。こういう支払い猶予というような問題は、地方的に必ず問題の起きることだと思う。これに対しては、あなたの方で省令とか、あるいは局長の通牒とかで、もう少し懇切に指導してもらわぬと、おそらく問題点が生まれるのじゃないか、これに対して御準備があるかどうか、あるいはそういう杞憂は持つ必要がないとお考えかどうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/31
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032・高田浩運
○高田(浩)政府委員 大へん適切な示唆をいただきまして、実はこの点につきましては、私どももこれが運営について気にしている点でございまして、これがあまり寛に流れますと、やはり弊害をかもすし、償還の意欲に支障を来たしまして、全体の運営に支障を来たすことがあっては困りますし、またあまりこれを酷に取り扱いますと、この条文を置いた趣旨にもそぐいませんし、また世情、人情にもそぐわない結果になる。その辺のところをどの辺に置くかということは、具体的な問題となればなかなかこれはむずかしい問題だと思うのです。結局は、具体的な実情に応じて健全なる常識を働かしてこれは判断すべきことかと思いますけれども、やはりその前提として、一応客観的な基準というものを私どもの方でできるだけこしらえて、それにのっとってさらに細部の具体的な問題については実情を勘案して適切な判断を下していく、そういうふうな仕組みにしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/32
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033・野澤清人
○野澤委員 非常に御関心を持たれているので安心いたしましたが、なぜこの問題をお聞きするかといいますと、実際に母子資金の貸付についての立法当時には、全体の、国会なり社会の世論というものは、戦後の戦災未亡人とか、あるいはそうした母子家庭に対する同情的なものからむしろ出発をして、恩恵法のような形で生まれてきた。従って小委員会等でも、委員会等においても論議されたことは、極力無利子貸与ということが叫ばれた。第二には、今度は連帯保証制等についても、貧しい母子家庭で第三者の信用のある連帯保証ということは容易でないじゃないかということで、これは山下次官もよく御存じですが、その当時に、貸与を受ける者が相互保証でもいいじゃないか、そこまで大蔵省とも折衝してこれはきめて来ました。しかもその当時の世論としては、十億出すか、十五億出すかというような——自由党内閣時代でしたが、いろいろ論議をされて、その委員会の空気の全体から見ると、実際に戦争のために未亡人になられた家庭に貸し付けるんだから、その金は返らなくてもやむを得ないんだ、そのくらいまで極論する議員もあったのです。それを実際に今度実施してみますと、驚くことには、ほとんど百パーセントに近い償還率を示している。だんだん悪くはなってきていますが、とにかく最初われわれが想像したより以上にまじめにこの母子家庭というものが零細な資金の返還に協力している。こういう過去の経過から見てみますと、実に涙ぐましい一つのよい法律だったんじゃないか、しかもまた母子家庭としても非常な努力をされたんじゃないか、こういう感じがしまして、この涙ぐましい努力によって実に顕著な効果が出ておったと思う。そこで今局長の言われたように償還意欲という問題になってきますと、むしろ今度の立法は逆効果になるんじゃないか。つまり、ほとんど返らないだろうと想像したものが、ほとんど大半返ってきた。こういう際に、この法律をあからさまに表面から出しますと、何だ、打ち切りがあるじゃないか、あるいは支払い猶予ができるじゃないか、いいかげんなものでいいじゃないか、こうなったのでは、せっかく先ほど山下次官の言われたように、将来総合法に持っていこう、あるいはあなたの言われたように年金制度を考えていこう、こういうやさきでありますから、この償還金の支払い猶予とか免除とかいう法律が悪いというのではなくて、これだけの親切心をもって処理をされる政府の考え方は非常に適切であるが、同時にまた、もっとまじめにやるように指導される面を持たなければ、立法の精神というものに合致しないんじゃないか。今まで未亡人会というものは実にほめられています。また未亡人自体も誇りを持っている。こういういい法律だったのだから、この二つの条項によって万一償還意欲を減殺するという結果が生まれては何にもならないと思う。これに対してこの法律の解説にもう少し徹底した、局長なり次官あたりから各都道府県の組織に対して浸透するような啓蒙のお考えをお持ちかどうか、この点お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/33
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034・高田浩運
○高田(浩)政府委員 お話のように、この資金の償還率は大体八〇%程度でございまして、同種のほかの資金に比べますと大へん成績がいい状況でございます。これは関係者一同この資金を中心としてまじめに厚生を考え、熱心に償還を考えて努力をされている一つの証左であろうと思うのでございまして、この傾向というものは、やはりこの資金の本質あるいはこの資金の将来というものから考えまして、ますますそういう傾向でいかなければならないと思うのでございまして、もしそれにいささかでも障害が出て参りますと、せっかく償還をしていただいて、その金がほかにさらに困った人たちに貸しつけらるべきその財源というものがそれだけ少くなるという結果になりまして、一人二人のために結局ほかの未亡人、母子家庭の利益が害せられるという結果になると、これは憂慮すべきことだと思うのであります。万々そういう事態はないと考えておりますけれども、しかしこの十条の二、十条の三の運用の仕方によりましては、あるいは関係者の心がけ自体によりましては、ないし当局の指導の仕方いかんによりましては、少くともその辺に何らかの影響を与えることは、これは一応慎重に考えておかなければならない点だと思うのでございまして、その辺のところを考慮いたしまして、この二カ条の運用につきましては十分慎重にやっていきたい、そういう趣旨の指導を十分徹底するようにいたしていきたい、かように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/34
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035・山下春江
○山下(春)政府委員 ただいま野澤先 生の御指摘の点に対しましては、局長がお答え申した通りでありますが、ただ何しろ母と子の世帯でございまして、不慮の災害、あるいいは母が死亡いたします等のやむを得ない事情がございましても、法律をこのままにいたしておきますと、返済の義務がその小さな子供にかかってくるというようなことがございますので、そういう特別の場合を考慮いたしまして、それを免除するということでございまして、従来の成績から見ましても、法をあやまって悪用するということのない団体であることを信ずるとともに、そういう特別の場合になお強くその債務をしょっていかなければならないということを防ぎたいという気持でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/35
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036・野澤清人
○野澤委員 じゅんじゅんと次官のお話、その通りだと思いますが、ただ今度の参考資料を見ますと、支払い猶予を免除しなければならぬというケースはきわめてまれだと思うのです。こういうまれな例のために法文を作って、それを正面から解釈されると、局長の御心配の消化意欲を減殺することになるのではないか、その点を御指摘申し上げたのです。
次にもう一点伺いたいのですが、母子相談員の費用について、従来から各地方でたびたび問題にもなっておりますし、また平衡交付金等の地方財源のワクの中に入れられるために徹底しないというような向きもあったのですが、今度の予算では増額されているようでありますけれども、局長としてこの母子相談員の問題についてはどんな御処置をとられるのか。たとえば政令でも改正してやっていくとか、予算の裏づけと運用に対して、おそらく万全の策をおとりになっていると思いますが、その点御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/36
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037・高田浩運
○高田(浩)政府委員 母子相談員の予算は、現在平衡交付金のうちに組み入れてあります。これも算定に当りまして今お話のように、引き上げて計上してあるわけでございますが、現実にこれが支給される場合においてそれだけの配慮が現実に生きていくためには、やはり県当局がそれだけの注意と理解をもって行わなければならぬと思います。そういう意味におきまして、私どもの方としては、地方当局に対して注意を喚起して、計上の通りあるいはそれ以上のことが行われるように努力をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/37
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038・野澤清人
○野澤委員 これは非常に大事な問題だと思うのです。未亡人会としては非常な期待を持って、今度の算定基準が九千円なら九千円になったというので双手をあげて歓呼の声を送っているのです。ところが今のお話のように、ただ地方に対して注意を喚起しているという程度では徹底しないのじゃないか、その点これは問題が起ると思うのです。これに対しては、厚生省当局としてはもう少し強い意思表示をされて指導することが必要じゃないか、こういうふうに考えますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/38
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039・山下春江
○山下(春)政府委員 厚生省のやる仕事の少しらち外だと思いましたが、この予算が決定いたしましたときに、たまたま全国の未亡人の指導者会議が、ございました。全国から未亡人の指導者の方が東京にお集まりでございましたので、その機会をとらえまして今回の母子相談員の給与は七千五百円から九千円に引き上げ、積算基礎を明確に九千円として平衡交付金の中に組み入れておる。そこで皆様方に九千円確かに渡るかどうかは、その県その県の予算の決定の際に、これが黙っていればまた知らぬ顔で七千五百円組む県があるかもしれませんが、皆さんはそういう知事査定の際に九千円にこれが査定されるように十分県を監視督励してもらいたいという、はなはだ横紙破りのお願いでございましたが、私はお願いをいたしました。局長からも各県に対してそのように指導をいたしておりますが、その後予算がどういうふうになつたかということの実際を知りませんけれども、あるいはそういうことを実行していただかない県もあるのではないかということを憂慮いたしておりますので、至急に取り調べてみたいと存じますが、十分気は使っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/39
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040・野澤清人
○野澤委員 あなたが種をまいたとは知りませんが、地方ではこういう問題が起きてきますから、未亡人が県会に各府県から七人か八人出ているというならばいいのですが、ただあなた方が監視をしなさいといってみても、まさか子供をかかえていてはそうもできないから、これは処置をしたならばやはりやりやすいように指導してやる方が親切じゃないか、こういう点をお願いしておきます。
それから先ほど植村君が非常にいい御質問をして、定年制の問題が出ましたが、これは山下次官のお話ではすぐさま手当をするということでありますから安心ですが、定年制の問題につきましても、その他の問題につきましても、これは派生した問題がたくさんあると思うのです。総合法でも作って法的にこれを処置するか、他の法律の中で母子家庭を特別に扱うこと等、厚生当局の今後の検討の結果におうものだと思うのですが、特にこの定年制と同時にお願いしておきたいことは、生活保護法の適用を受けております母子家庭の勤労控除の点について幅を持たせるお考えがあるかどうか、またこういうことについて御検討されたことがあるかどうか、こうした面についても一応お願いしておきたい。
もう一つ農家で非常に困っておりますのは、母子家庭の農地に関する耕作権の返還あるいはまた取得というような面について特別に扱ってくれないか、たとえば私の郷里の栃木県の実情などを見ますと、農業委員会へせっかくそれを持ち出しましても上司までいかないでその土地だけでこれを解決してしまう、しかも未亡人の弱さから泣き寝入りしなければならぬ。これらは法律に頼るというよりも、むしろ次官あるいは大臣あたりが農林省の方とよく話し合いをされて、母子家庭に対しては特別親切な、あたたかい手を差し伸べてもらうように善処することが至当ではないか、法律ばかりに頼るというのではなしに、厚生行政の一環としてこういうものを普遍化された御努力が必要ではないかと思いますが、これはお答えはなくてけっこうであります。ただ定年制の問題あるいは母子家庭の農地の耕作権の問題、さらにまた生活保護を受けておる者のたとえば母子加算とか寡婦控除とか、こういうものについて折衝をされる方が適切ではないか、こういう感じがいたしますので、この三点については特に次官と大臣に強く要望いたしておきます。今回の改正は私自身としては非常に適切だと思うのですが、まだまだ母子家庭としては教育の問題、生活の問題のみならず将来に幾多の問題点を包蔵しておる、こういうことでなお一そうの御尽力を願いたい。せっかく名局長がおることですから、この際に思い切って名プレーを一つやってもらいたいと思います。以上をもって終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/40
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041・佐々木秀世
○佐々木委員長 堂森芳夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/41
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042・堂森芳夫
○堂森委員 この母子福祉貸付金等に関する法律案はちょうど三年前に実現を見ましたが、当時のことを回想いた、しますと、やはり単に福祉のための貸付金を実現する、こういう意味の狭い法律を作るという考え方からできたものではないかと思うのであります。いわば一時こうした狭い範囲の法律をもってがまんしよう、こういう立場で衆参両院を通過したものと私は解釈いたしておるわけでありますが、先刻来同僚議員の質問に対する山下次官あるいは児童局長からの答弁を聞いておりますと、来年度からは一つ総合的な法案の実現に対する予算獲得に大いにがんばる、こういう御答弁があったわけでありますが、私は今度の法案改正の精神についてはもちろん全面的に賛成でございます。従ってこの法案自体に対する質問は差し控えまして、さっき高田局長から今後の医療扶助の方面、一あるいは未亡人年金といいますか、寡婦年金といいますか、そういうものに対する何か御答弁が、ございましたが、私どうも要領を得ない答弁だと思いまして、実は何をおっしゃったのかわかりません。従ってどういうふうに具体的に年金なら年金の問題を取り上げようとしておるか、こういう構想とかあるいは研究があると思いますので、もう一度局長からもう少し私が納得できるような御説明を願いたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/42
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043・高田浩運
○高田(浩)政府委員 私が申し上げました趣旨は、次の問題として当然この寡婦年金の問題を考えなければならないし、それらについては、児童福祉審議会を中心として、ほかのいろいろな児童福祉行政上の諸問題を研究していますので、それらと関連して御研究をいただいておるということを申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/43
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044・堂森芳夫
○堂森委員 それでは一つ具体的に答弁を願いたいのですが、たとえば日本におられるところの寡婦の方で恩給をもらっている人たち、あるいはまた戦争犠牲者の遺族として年金をいただいておられる方々を除きまして、実際に生活に困窮しておられる未亡の世帯は一体どのくらいあるか、ちょっと御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/44
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045・高田浩運
○高田(浩)政府委員 母子家庭は約六十九万世帯でございます。そのうち戦争に基くいわゆる戦傷病死に基くものが約二十三万世帯でございます。それからも同じく戦争に基因するわけでございますが、戦災による死亡に基いて母子家庭になられた方が約三万世帯、そういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/45
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046・堂森芳夫
○堂森委員 御主人の恩給だとか、恩給をもらっている方……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/46
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047・高田浩運
○高田(浩)政府委員 恩給の点は追って調べましてお答え申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/47
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048・堂森芳夫
○堂森委員 そうしますと、こまかい数字はともかくとして、生活が非常に困窮しておられるという未亡人世帯、寡婦世帯はどれくらいございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/48
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049・高田浩運
○高田(浩)政府委員 生活保護法を受けておられます世帯が約十九万世帯になっております。それから生活保護を受けていないけれども、生活に非常に困難しておられる——これは程度の問題としていろいろ具体的に言えば見る人によって違うかもしれませんが、一応私どもの方で調べたところによりますと、約十三万世帯ということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/49
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050・堂森芳夫
○堂森委員 そうしますと、生活保護を受けておられる世帯が十九万世帯、それからボーダー・ラインにあるような方々が十三万、三十万有余の母子世帯が非常に生活に困窮せられておる、こういうことでございます。私が申し上げるまでもなく、社会福祉が進んだ国々は、やはり養老年金あるいは社会保険制度の充実と同時に寡婦年金というものを持っておることは御了承の通りであります。従って日本にも寡婦はともかくとしまして、三十万くらいの母子世帯に年金を作って参ることについて、局長あるいは政務次官からも御答弁願いたいのですが、どれくらいの年金を作っていこう、こういう構想を持っておられるならば一つ御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/50
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051・高田浩運
○高田(浩)政府委員 その辺のところは、まだ具体的な数字に基いて結論を出すということは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/51
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052・山下春江
○山下(春)政府委員 今局長の申した通りでございますが、三十一年度の間にそれらの具体的なものを——この未亡人団体に対しましては、一人で働いておりますので、この医療の問題は非常に重大だと思います。そこでこの医療の問題を国保で解決する方途を講じますか、あるいは特別健保のようなものを打ち立てなければならないと思います。それから年金についても、今申し上げました数字等は少くとも直ちに年金のワクの中に入れなければならない世帯のケースでありますので、それらにどの程度の年金をどういうふうにして実施していくかということにつきまして、はなはだ恐縮でありますが、今年度中に必ず具体案を検討いたしたいと今決心しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/52
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053・堂森芳夫
○堂森委員 政務次官から非常に重大と申しますか、かたい決意をお持ちのような答弁をいただきまして非常にありがたいと思うのであります。ともかく政府の方でも今後五年間には全国に国民健康保険でございますか、それを中心として全部が社会保険に加入できるような制度を実施していくというふうな計画を持っておられるようであります。われわれの方は、四年間に国民健康保険を拡充いたしまして、未加入の三千万人の国民が健康保険によって医療を受けるような制度に持っていこう、そうして現在の政府管掌の健康保険制度と医療給付に関しては同じ程度のものを実施したい、こういう計画を党として持っておるわけであります。ともかく医療制度が今後大いに発展して参りまして、社会保険というものが拡充されて参ることは当然でございます。従ってこの医療扶助といいますか、そういう方面については今後割合明るい見通しを持っていけるのではないかと考えるわけであります。従って寡婦、未亡人に対する対策の根本は、寡婦年金、未亡人年金あるいは母子年金と申しますか、そうした制度が実現していくということがやはり根本ではないかと思います。未亡人の方には大へん失礼でございますが、このごろ売春禁止法というものを政府でも取り上げて今度国会に提案されるようでございますが、この売春問題も、もちろん未亡人がそうだというわけではありませんが、しかしこれも一つの大きな原因ではなかろうか、こういうことは当然予想されることでありまして、やはりこうした社会悪を除いていくためにも寡婦年金というものは大きな役割を果すものであります。これは一つの社会正義と申しますか、そういうものを打ち立てて参りますためにも、未亡人年金というものはぜひとも実施しなければならぬというふうにわれわれは考えるわけでありまして、今度の法案の改正はもちろん賛成でございますが、さらに百歩を進めまして、年金制度というものの今後早急な実施ということに一つ政府は全力をあげられまして、特に政務次官山下先生に八面六臂の御活動をわれわれはお願いするわけであります。
いろいろとお聞きしたいのでありますが、もう時間もございませんので、私は一日も早く、来年度からは必ず未亡人年金というものの実現のために——今の御答弁のような、構想はまだわからぬというようなそういう情ない御答答ではなく、一つきょうから準備をお願いする、こういうように私は希望を述べまして、私の質疑を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/53
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054・佐々木秀世
○佐々木委員長 他に御発言はございませんか。——なければ三案に対する質疑は一応終了したものと認めるに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/54
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055・佐々木秀世
○佐々木委員長 御異議なしと認め、三案に対する質疑は一応終了したものと認めます。
明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X03819560427/55
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