1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年五月十二日(土曜日)
午後零時十一分開議
出席委員
委員長 佐々木秀世君
理事 大坪 保雄君 理事 藤本 捨助君
理事 中川 俊思君 理事 岡 良一君
理事 滝井 義高君
植村 武一君 荻野 豊平君
川崎 秀二君 熊谷 憲一君
小島 徹三君 小林 郁君
高橋 等君 田子 一民君
田中 正巳君 仲川房次郎君
八田 貞義君 林 博君
古川 丈吉君 亘 四郎君
横山 利秋君
出席政府委員
労働事務官
(労政局長) 中西 實君
委員外の出席者
労働事務官
(労政局労働法
規課長) 石黒 拓爾君
参 考 人
(慶応大学教
授) 藤林 敬三君
専 門 員 川井 章知君
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五月十二日
委員森清君辞任につき、その補欠として熊谷憲
一君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律
案(内閣提出第九四号)(参議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/0
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001・佐々木秀世
○佐々木委員長 これより会議を開きます。
公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。本案につきましては参考人の方が出席されておりますので、まず意見を聴取することにいたします。藤林参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/1
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002・藤林敬三
○藤林参考人 それでは簡単に私の意見を申し上げることにいたしたいと思います。
すでに御承知おき願っておりますように、私はこの一月から二月の初めにかけまして開催されました臨時公労法審議会の議長を勤めましたのでございますが、ここで労使公益三者構成の審議をいたしました結果、今回の政府の改正法案にかなり関係のある意見の取りまとめをいたしました。そういう関係で、私のこれから申し上げます意見も、おのずからこれに重大な関係を持っておるのでございます。もちろんしかしこの審議会の意見の取りまとめに対しましては、一々私個人の意見がここにかなり強く反映されておるというのではございませんので、私個人の意見としてはおのずからまた別に、御質問等によっては述べざるを得ないかと思いますが、一応この審議会の見解の取りまとめを中心に、ごく概略私の見るところを申し述べてみたいと存じます。もとより従来の数年間の公社及び現業の労使関係の調停及び仲裁に関するいろいろな経験から判断をいたしまして、法の改正が当然行われてしかるべきという見解は、ごく一般的であったと思われるのでございますがしかしどこをどう改正するかというような問題になりますと、労使の意見は重要な部分に関しましてはほとんど一致するところがなく、議論が戦わされるというのがその実情であると申してよろしいかと存じます。但し今回の法の改正に至ります前、今申しました審議会におきましては、労使双方とも従来の経験に徴して改むべきものは改めて、この際根本的な検討及び根本的な見解に立つ改正意見というようなものよりは、現実に即して一歩でも先にいけるようなぐあいに改正をやりたい、こういう意向がかなり強かったやに私には受け取れるのでございます。そういう双方の空気がありましたことが私たちの意見取りまとめに大いに幸いをいたしまして、当時私は非常に難航するのではないかと思っておりました審議会が、案外そうむずかしい場面にも多く出っくわすことなく意見の取りまとめができたゆえんでございます。この点はやはり本委員会におかれましても十分すでに御討議済みのことのように伺っておりますが、やはり今回の法改正の趣旨もそこにあることを御了知下すっておることと存じます。私はこの点がやはり今日の改正法案の前段階にこういう事情があったことは、かなり注目すべき事情ではなかろうかと思っております。と申しますのは、言うまでもなく、労働関係法の改正に関しましては、何か改正が話題に上りますと、労使双方の見解が対立をして、なかなか世間的にはやかましい問題になるのでございますが、今回のこの公労法改正に関しましては、確かに一歩前進であることは、労使双方ともこれを明らかに認めておられるようでございまして、その限りにおきましては、他の場合の法律改正とは、いささか趣きが異なっているかのごとき印象を私は持っておりますことを、ここで重ねて申し上げておきたいと存じます。問題はいろいろございますが、後ほどまた御質問を受けることかと思いますので、こまかい点に触れることを今ここでは避けておきたいと思いますが、問題は確かにいろいろございます。先ほど申しましたように重大問題については労使双方いろいろ意見が異なっております。しかし私はこの意見の調整をやることによって審議会としての一本の意見を述べることの努力を無理をしていたしませんでした。無理をしていたしましても時間ばかりかかりまするし、どうせ根本的な問題についての意見調整を、そういう短時日に審議を終りたいと思っておりまする委員会でできるはずがございませんので、できるだけ一致したものはこれを法改正に際しては政府としても尊重してもらうが、一致しない場合は一致しないという答申をすることによって審議を終りたい。これを議論で最後の解決点を見出すような努力は、簡単にできるものはやりましたけれども、そうでないものはできるだけ残しておこうというような態度をとりました。これも第二の審議会の意見が簡単にまとまりました——まとまりましたというよりも答申が簡単にできました大きな理由であることを申し添えておきたいと思います。
いずれにいたしましても、そういうことでわれわれは意見を取りまとめましたが、総括いたしまして、もちろんいろいろ御議論のあろうところと存じますけれども、審議会の答申の線がかなり生かされておりまして、改正案が今日国会に提出されておるということにつきましては、私どもこういう審議会に関係いたしました者といたしましては、これに大いに満足せざるを得ないと思っておる次第でございます。重ねて恐縮でございますけれども、全般的には今回の改正がもしいれられて衆議院の方も通過するということになり、法律改正が実現されるということになりますと、公社及び現業庁の労使関係については、今後従来に増して安定的な効果を十分に持つのではないかというように思っております。その意味におきましては今回の改正は大いに賛意を表されてしかるべきものではないかというように、私は考えておる次第でございます。こまかい点に触れませんでしたけれども、いずれ御質問を受けることと存じますので、御質問に応じて私の意見を述べさしていただくことにいたしましてごく簡単に私の発言を終ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/2
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003・佐々木秀世
○佐々木委員長 以上で意見の陳述は終りました。発言の通告があります。これを許します。横山利秋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/3
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004・横山利秋
○横山委員 まずもって藤林参考人におわびを申し上げておきます。早朝よりおいで下さいましたにもかかわらず、国会は小選挙区の問題で非常に混乱をいたしておりまして、ずいぶん長くお待たせいたしましたことにつきまして心からおわびを申し上げます。
なお本日まで公労法に実務の点からあるいはまた法律改正の点から多年にわたって尽力して下さいましたことに対しても厚くお礼を申し上げたいと存じます。時間があまりございませんので簡単に要点を御質問いたしますから、よろしく一つお願いいたしたいと思います。
公労法の改正に当って私もその当事者の一人でございましたが、藤林参考人もずいぶん御苦労なさいました。その関係当事者の苦労の中で最も共通点でございました点は、三公社なりあるいは五現業に当事者能力がない、それなるがゆえに紛争が長引いてとかくの批判があり、また闘争が定期的になるという非難もあるわけであります。今回の改正点で幾ばくたりとも、その原因となっております給与総額制度を緩和して当事者に自主解決の道を少しでも開こう、こういうふうにお考えになった点を私は了といたすのであります。ただそこで問題になりますのは、答申案の第五項でありますが、「予算上資金上不可能な支出を内容とする協定又は裁定に関する問題」として答申をされておるわけであります。こういうふうに「協定又は裁定に関する問題」と題を打ちながら、その内容においては五項の(イ)におきまして、「予算総則の給与総額制度を緩和し、仲裁裁定が当該企業内の」云々と、仲裁裁定が出た場合にのみ若干の道を開こうとされたことにつきまして、もうすでに両二回にわたりまして政府側に質問をいたしておるのでありますが、要を得ないところであります。私はおそらくこの委員会におきまして議論をされましたのも、協定または裁定に関してそれぞれ当事者能力を広く持たす、双方に自主解決、早期解決の道を開こう、ここに根本的な議論があったのではないかと思うのであります。従って仲裁裁定のみに道を開いたというふうな印象は、間違っておりはせぬかと私は思っておるわけであります。少くともここで仲裁裁定が出た場合において、「予算上の移流用を最大限に緩和し、給与総額にかかわらず実施できるようにし、」ということは同時に、調停案によって妥結をいたしました場合、あるいはまた双方が調停委員会にもかけないで自主解決で協定をした場合、それらは労働法本来の道からいってかえって喜ばしいことでございます。調停にかけるよりも自主解決、ないしは仲裁にかけるよりも自主解決の方が早期解決のためにも喜ばしいのではないか。従ってこの答申案の五項(イ)の意味するところは、今日すでに資金上予算上不可能な協定をも締結し得る権限を三公社五現業の当局者は持っておるのでありますが、残念ながら運用されておりません。その運用されていないのは、こういうような道があまり開かれていないからでありますが、答申案の趣旨は、自主解決ないしは調停案受諾による協定、これらをも含めて道を開いてもいいんだ、こういうふうに理解した方がよろしいのではないか、労働法本来の自主解決の意味においてよろしいのではないかと考えますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/4
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005・藤林敬三
○藤林参考人 今の御質問に対しましては次のようにお答えをいたしたいと思います。私らが審議会で相談をいたしました根本的な趣旨は、公社現業庁に対してもう少し今日の状態よりは企業的な性格をはっきりさして、労使関係上の問題を自主的に処理のできるようにすべきであろう、こういうことについては大体意見が一致いたしております。しかし今御指摘の公労法十六条関係の問題点に関する答申は、それは十六条に関係して答申をしておりますので、御指摘の答申案の五項の(イ)のところに書いてあるように、仲裁裁定だけに限ったような答申になっておりますけれども、趣旨としては、企業にもう少し自主性を持たして、労使関係の問題処理を円滑ならしめるという意見はわれわれの間にほぼ一致をいたしておりましたことを申し添えておきたいと思います。
ただ、今の横山委員の御質問に対しては私個人としては、このようにお答えができるのではないかと思います。それは第一に、企業に自主性を持たすと申しますのは、今日の状態から民間業に匹敵するように一足飛びに完全な企業の自主性というようなことが確保できるかどうかというようなことにつきましては、われわれももちろん疑問でございます。従って問題は程度の問題でございまして、今日よりはもう少しは企業の自主性を持たすということによって、先ほどの御質問の当初のお言葉に従えば、当事者能力を公社側にも現業官庁の側にもおのおの持たせるような方向にいきたい。これは程度でございまして、直ちに民間企業のような自主性を持たすということを期待したわけではございません。これが一点であります。私個人といたしましても、単に公労法ばかりでなくて、公社法その他の法改正を同時に伴わなければなりませんし、国鉄の場合のときにもいろいろ問題もあって、企業らしくなるためにはいろいろな努力をなされなければなりませんので、そんな大問題を直ちにわれわれが解決できると思っておりませんでしたから、そういう工合にお答えする以外にないと思います。しかし私は漸次そういう方向に向われることが好ましいというここは、私としても個人的に考えておるのであります。
それから、しからばその問題は単に仲裁だけではなくして、自主解決あるいはあっせん、調停というようなことでも解決するような工合にこの際考えてしかるべきではないか、こういう御意見ないし御質問に対しましては、私はこのように思っておるのであります。もちろん十六条関係は仲裁関係の規定でございますからそういう答申をいたしましたけれども、これは審議会の意見ではございません。審議会はその際に、調停の場合にどうする、あっせんの場合にどうするというようなことを一々詳しく論議をいたしませんでした。従ってこの答申にそれが明確に現われておりません。これが一つでございます。従って私個人の意見としては、事実労使関係として企業の自主性がだんだんふえて参りまするに従って、あるいは調停でも落ち、あるいはあっせんでも落ち、あるいはまた自主解決でも問題が落ちるという可能性は、これは労使の努力によって、われわれからいえばだんだん期待できていくようになるのではなかろうかと思っておるのであります。あえて申し上げれば、今回の法改正で三十五条に追加された政府の裁定実施に関する努力義務の規定、これが入れられたのでございますが、そういうことをもあわせて、仲裁裁定が出ました場合には政府が大体これを実施するような御努力をなさる、国会もその審議においてこれをお認めなさるというようなことで、慣行上仲裁が事実行われて参りますようになりますと、そのときには私はあえて問題は仲裁までいかなくても、調停でも解決するようなことになるのではなかろうかというように、労働慣行の発展に対する期待と大きな希望を持っておりまして、そうしてその希望は、法律の条文のいかんにかかわらず、労使双方の努力によってそういうことになるのではなかろうか。ただそういう場合に、企業体が十分にこれに即応したような態勢でなければもちろんできませんけれども、漸次企業体もそういうようなことができるような工合に改めていけば、おのずからそういう好ましい労働慣行ができ上っていくのではないか。自主性を認めるという労力が今日の程度でそこまで直ちにいけるかどうかということについて問題はあると思いますけれども、方向づけとしては、一応方向づけしたのではないかというように考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/5
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006・横山利秋
○横山委員 ありがとうございました。ただ私少し見解を異にいたしますのは、今藤林参考人のお話を聞きまして、別に何も調停案による協定ないしは自主解決による協定はいかぬという立場できめられたのではない、こういうような心持は十分了といたします。全く私もそうであろうと想像いたすのであります。しかしただ答申案がこうなり、それからこれによって法改正がなりましたものを客観的にながめますと、仲裁の場合だけがちょっとプラス・アルフアーになった、こういう結果が現われたのであります。従いまして双方で自主解決のために団体交渉をしましたときに、公社としてはもう少し自分のところとしては出せるような気持があるけれども、資金上予算上不可能だから、自分が今これをいいというわけにはいくまい、こういう気持がいたす場合があります。組合側は組合側で、ここで解決するよりは仲裁裁定を求めた方が道が開かれているから、仲裁裁定まで待とう、こういう気持を起すおそれがあると私は思うのであります。従ってこういうようなフェーバーな改正案が出て、今後私が不安に思いますのは、せっかく自主解決なり調停案による解決ができそうなものが、本改正によってかえって仲裁裁定を出してもらった方がよかろうという気分が起ることをおそれるのであります。すでにことしの春の三公社五現業の紛争におきましても、調停委員会のなみなみならぬ苦労で仲裁を待つことなく解決をいたしました。これは非常に喜ばしいことだと私は存ずるのであります。この点については何人も、これはけっこうなことだ、仲裁を待つまでもなく調停で、ないしは調停を待つまでもなく自主解決でやるということはけっこうなことだと言っておるのであります。従いまして先ほどのお話でわかりましたが、仲裁裁定が出た場合だけでなくして、調停案による妥結あるいはまた自主解決による協定、つまり十六条による協定においてもこれが適用なさるべきではなかろうか、答申案というものは私のようなこういう意見を否定しておるものではない、こういうふうに理解をいたしたいと存ずるのでありますが、それでよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/6
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007・藤林敬三
○藤林参考人 今回の改正を今横山議員のおっしゃるように解釈していいかどうかということは私も若干疑問だと思いますけれども、私が申し上げようと思いますことは、御質問ないし御意見の御趣旨のように、十六条は仲裁裁定に関する規定でございますから、これは仲裁裁定に関して考えられることであって、調停が行われた場合でもやはりこの規定によるというのは、私はやはりどうかと思います。私の申し上げようというのは、先ほど御指摘のように——私は実はついこの間の三公社、現業庁に関する調停委員会の調停案によって問題がおさまりましたことの詳しい事情は存じませんけれども、政府、公社、現業庁、労働組合、それから調停案を出しました調停委員会がみんないろいろ努力をいたしました結果がああいうことになり得るのです。何も調停の場合に十六条に類する規定がなくても、現行法のもとにおいてもなり得るのですから、いわんや今後の場合にもそういう努力が重ねられればできていくのだから、何も法律の規定を待つ必要もないのじゃないか、おっしゃるようにこれは仲裁だけを規定したのだから、何でもかんでも仲裁へいかなければ云々というのは少しどうも思い過ぎをなさっていらっしゃるのではないかというように私は考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/7
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008・横山利秋
○横山委員 非常にたくさんのことをお伺いしたいのですが、何か一時に御用がおありになるそうでございますから、簡単に要点をお尋ねいたしますから、どうぞ簡単に一つ御答弁が願いたいと思うのであります。ただいまのお話につきましては、答申ができるまでの趣旨としては了解いたしましたが、できてからの及ぼす影響については私の危惧がございます、その点については一つ藤林参考人も、今後私の危惧することが起らないように、何かの形で御協力をお願いいたしたいと存じます。
次にお伺いをいたしたいのは、このたびやはり五項のロ号で、「政府は、裁定が実施できるように誠意をもってできる限りの努力を尽すべきであることを法文上明確に謳うこと、」というのがあります。これはどういうような意味を持っておるか。一言に言えば、これは抽象的な規定でありまして、実効が伴うか伴わないか、全く未知数で、問題は信頼感の問題にもなるかと存ずるのであります。しかしながらなおかつこれを文章にうたうということを委員会がきめましたゆえんのものはどういう意味であるかということが一つであります。
それからもう一つは、従来紛争がございますが、裁定の実施というのは一体いかなる意味であるかということであります。かつて末弘厳太郎博士もおっしゃったわけでありますが、裁定の実施というのは、オール・オア・ナッシングである。裁判制度であるから百パーセント実施できることが、法律上にいうところの裁定の実施である。値引きをしたり何かしてやることは実施ではない。まあいうならば尊重といえるかもしれない。しかし法律上いうならば、これは別な角度で給与の改善が行われたと見るべきである、こういうふうな定義を下していらっしゃるのでありますが、裁定の実施ということをここにお書きになった趣旨、裁定の尊重でなくして裁定の実施という意味、それからできる限りの努力を尽すという、抽象的にうたわれた意味この二点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/8
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009・藤林敬三
○藤林参考人 お答えをいたします。裁定の実施云々というのは、もちろん私たち議論もいたしました際には、裁定の一部分実施というのではなくて、裁定をそのまま完全にその通り実施するという意味にお互いに了解をしてこういう答申をいたした、こうお答えしていいのではないかと思います。それからそのあとに誠意をもってできる限りの努力を尽すべきであるという訓示めいた規定を入れるようにという意見も述べ、かつ改正法案の第三十五条にそれが若干言葉は違っておりますけれども入れられておりますゆえんは、この答申の五項の初めにも書いてございますように、実はこれもまた私の意見でもあるのですが、現行法のまますなわち十六条、三十五条、現行法のままでも、政府も誠意を持ち、公社も労働組合側もいろいろ御努力をなされば、今のままでもいけるのではないか。何もこの点に関する法改正を必要としないのではないだろうか。それならばこういう訓示めいた規定もこれ以上載せる必要もないのではないかということになるのですけれども、あえて、疑うわけではございませんけれども、従来二十回ばかり裁定の状況を見ておりますと、だんだんだんだん裁定が完全に実施されるような傾向が出てきておりますので、そのままでもいいのですけれども、こういう規定をそこへ入れておきますれば、なおさらそういう、すでに好ましい慣行が樹立されつつある傾向をさらに一歩助長し得るのではないかというくらいの考え方でこういうことをぜひ入れられるように——おっしゃるようにできる限りの努力ということが書いてあるのですけれども、政府がそういうおつもりになられなければ、こんなことが書いてありましても、こういう法改正が行われましても、事実は裁定が完全に実施されないということはあり得るではないかとおっしゃれば、私もその通りだと思いますけれども、実は労働関係はやはり経験を積み重ね、いろいろな事実が年輪になって現われていくことの上に発展していくのですから、今申しましたようなことでさらに一段と好ましい慣行の樹立が期待できるこう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/9
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010・横山利秋
○横山委員 次にお伺いいたしたいのは、答申案の第六項争議行為に関する問題であります。先般政府側との質疑応答の中で、憲法二十八条によって、公務員であろうとあるいはまた三公社五現業であろうと、労働者が基本的に別有いたします権利、罷業権、団体交渉権、団体行動権は本来ある。そのある立場において制限されておるという点について、私と意見が一致をいたしました。そのあるという立場において制限されるという制限の理由でございますが、何がゆえに公務員、三公社五現業は制限がされるかという点について、これは若干の意見の相違があったわけであります。藤林参考人に、今日の現行法がいかなる意味において制限がされておるのか、またその制度をされておる実情について、個人のお話でもけっこうでございますが、現行法についての御意見をわずらわしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/10
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011・藤林敬三
○藤林参考人 簡単にお答えいたします。この審議会では十七条の規定が、根本的に憲法二十八条に相反するのではなかろうかという問題もあることを委員は了知しております。しかしこれは根本的な問題でございまして、こういう根本的な問題を今度の審議会において話題に乗せることは、この答申の前文にも書いてございますように、後の機会に譲るべきだというので、こういう根本議論を審議会としてはほとんどいたしませんでした。これは事実であります。またかねて労働組合側の御意見も根本的にはそういう点を争われる気持は十分あったと思いますけれども、そういう根本議論に時間を費すよりは、現実的に、その答申にも書いてございますように、今日職員側の意見としては企業の性質上ある程度の争議権の制限はやむを得ないが、一応原則的には争議権を認めるようにすべきだという意見を述べられておるくらいでございます。それは審議会の答申、審議に関することでございまして、一言こういう機会に申し上げておきます。さて今の御質問の私個人の意見でございますが、私は当初は、たとえば例を国鉄にとってみますと、民間の私鉄会社の場合には争議権が認められておるし、国鉄の場合には認められていない。これはやはりおかしいのではないかという意見を明瞭に持っておりまして、そういうことをある機会に述べたこともございます。しかしその後今日に至るまでの国鉄の労働組合の動きを見ておりますと、どうも単純に私個人としては争議権が無制限に認められていいかどうかはもちろんいろいろ問題だ。それから組合側がおっしゃるように、若干の制限はあっても云々というのは、その若干の制限というのはどういうことかという問題もございますが、しいて申し上げれば、たとえば労調法に規定する緊急調整のようなものをここに適用するのだというようなことをかりに考えてみますと、緊急調整の発動を見ないでも——見るという場合はよほどの場合でなければ緊急調整が発動されないので、緊急調整の発動を見るまでに至らないような争議行為も往々にしてあるのじゃないか。しかもそれは相当な影響を及ぼすということになると、緊急調整の発動だけで争議権を認められるというようなことで、今の状態でいいかどうかということについては、はなはだ遺憾千万で、私は当初の意見とは違っておりますが、今日は若干争議権を認めることにつきましては、憲法論議はともかくとしまして、事実問題からいくと、私は若干疑念を持っておるのでございます。私のこういう疑念は、審議会ではそう明確に述べませんでしたけれども、今御質問がございましたから、これだけのことを申し上げておきます。ただ審議会としては、労使双方の意見が対立しておりますので、その答申の通りに結論をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/11
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012・横山利秋
○横山委員 そういたしますと、先生の御意見は、罷業行為によってその企業の社会的に及ぼす影響というものが判断の基礎になっておるもののようであります。しかりといたしますと、三公社五現業ないしは公務員の中でも、罷業をすることによって社会的に影響を及ぼすことはなはだ僅小なもの、ないしは民間の争議の方が社会的に及ぼす影響がより強いもの、その比較検討の立場に立ちますれば、三公社五現業のすべてに罷業を禁止することはいかがなものでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/12
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013・藤林敬三
○藤林参考人 私個人としては、確かに御質問の通り三公社五現業と申しましても、その事業の性質上、公益的な観点から申しますと、かなり大きな差があると思います。そのかなり大きな差のあるものを一括して争議権を否定していくということについては、私も多分に疑問を持っておりまして、国鉄とか電電公社とか郵政事務とかいうようなものは、先ほど私は国鉄の場合を民間私鉄企業に比較いたしましたが、その際には申し上げませんでしたけれども、私が国鉄の状態について疑念を持っておりますというのは、事業そのものは民間の私鉄の場合と同じだということはいえますけれども、しかし規模が、国鉄なら全国的な規模でございます。電電公社の場合でも全国的でございます。郵政事務ももちろんでございますが、民間企業の場合には一部所でございます。この全国的であるか、一部所であるかということが、公益性の論議からいうと、やはりかなり違うのではないかと思うのでございます。この点が一つ。それから今おっしゃったように、確かに五現業の中にも、公社の中にも、公益的な性格においてやはり国鉄、電電公社、郵政事務とは比較にならないほど程度の差がございます。あるいは程度の差というより、もともと公益的にはどうかと思われるような企業もないわけではないと思います。従って一律に争議権を否定することについては私も若干の疑問を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/13
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014・横山利秋
○横山委員 それに関連してお伺いしますが、十八条の解雇という意味であります。この点については十七条違反が十八条で解雇される、この法文の実体につきまして二つの問題があります。一つは争議行為、労働紛争による処分が、公労法は十八条の解雇に限定されておる。オール・オア・ナッシングであるという立場が今日までの通説でございます。ところが最近の実態としては三公社五現業が解雇にあらざる減俸、戒告等の処分を続々いたしておるわけであります。この間も私は本委員会で申したのでありますが、首を切るのは気の毒だ、こういう善意が当初に働いておったことはいなみがたいところもあろうかと存ずるのであります。ところがその善意が気違いに刃物を持たしたようなものでありまして、だんだん拡大して参りまして、ドアをちょっとこわしたからこれは懲戒だ、あるいは職場大会をやったから全部これは何だというふうな現状は、この公労法十八条の本来の趣旨から非常に逸脱をしておると思うのであります。この点について争議行為ないしは労働紛争に関する処分としては、公労法十八条の解雇オール・オア・ナッシングである、解雇に当たらないものについては本来そうしないのだ、これがよろしいという立場に立っておると私は理解しておるのでありますが、その点はいかがでありますか。これが第一点。
第二番目は十八条の解雇というのは破廉恥行為による解雇ではない。従ってこの解雇によって労働者はあらゆる権利を剥奪され得るものであるかどうかという点であります。今回の改正案で一切の権利をなくするという現行法の規定が削除されまして、その趣旨もございますが、私の伺いたい点は、たとえば解雇された労働者に対して、今日基準法上の一ヵ月分の予告手当だけ支給して、本人が長年にかけた共済組合の掛金はおろか、恩給納付金として本人がかけた掛金ももちろん、あらゆるすべての権利を剥奪している。一ヵ月分の予告手当だけで、十年、二十年、三十年働いた労働者の権利を剥奪しておるのであります。明らかに十八条の解雇は懲戒解雇ではないのであります。この点は国鉄そのほかの当局者こしても懲戒解雇、日鉄法なり専売法の懲戒解雇でないと言っておるにかかわらず、これを支給しないというのは、本法の精神に反しておるのではないか。従来も反しており、かつ今回の改正に当って一切の権利がなくなるという条文を削除いたしましたゆえんから考えても、この点については恩給法はりあるいは共済組合法なり、それらによる本人の権利というものは行使すべきではないか、こう考えるのでありますが、以上二点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/14
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015・藤林敬三
○藤林参考人 あとの方からお答えいたします。十八条の今回の改正によって「一切の権利を失い」云々という文句だけが削られましたことは、労働組合法の場合の例に従って、この際不当労働行為の申請ができ、また新たに作られます労働委員会によって、不当労働行為の審問判定が行われるという筋書きを作り出した、また作り出すためにそういう文句が削除されたのでございます。従ってそれが直ちに、横山委員のおっしゃるように、十八条が懲戒解雇ではないということを意味するかどうかということでありますが、それはいささか問題が違うと私には思えるのであります。と申しますのは、なるほどわれわれ議論をいたしました際に、十八条の解雇につきましては、これが懲戒解雇であるのかないのかという意見は、委員会の中で述べられておることは事実でございます。事実でございますが、しかし委員会としては、これが果して懲戒解雇であるのかないのかということについて、明確な結論を出すようなことはいたしておりません。私自身は、御承知の通り法律家でございませんので、実ははなはだ恥をさらすようでございますが、この審議会の席上で、この十八条が懲戒解雇と解釈すべきものではないという意見を初めて伺って、なるほどそういう考え方もあるのかというようなことを知った程度でございまして、こういう根本的な重大な問題について、審議会が基本的に見解を明らかにして云々というのは、私自身の知識から申しましてもやり得ないことでございまして、そういう結論を明確に出しませんでした。従ってこれが懲戒解雇ではないのだというように解釈して正しいのかどうかという御質問を受けましたが、私はこれに対して明確なお答えをしかねるのであります。ただ今回の改正によって、不当労働行為の申請はできる、そうして審問判定が行われるという道が開かれたことだけは明確でございます。
それから先の質問でございますが、最近の事例では、いろいろ公社側が懲戒を行なっていらっしゃる。これは十八条の解雇規定からいくと、解雇はオール・オア・ナッシングなんだから、解雇ということはあり得るけれども、それ以外の懲戒はあり得ないとおっしゃいますけれども、公社法その他によって懲戒の規定があるようでございまして、公労法によらないで、公社法その他の規定に従って懲戒をしておられるものとわれわれはこれをみなしたわけでございます。
ところが問題は、公労法に十八条の規定があるのだから、なぜこれによらないのか、こういう御質問になろうかと思いますが、それは帰するところ、問題は果して十七条の争議行為であるかどうかという認定であるということに帰着すると思います。きわめて明瞭にそう認定されるならば、なるほどそれは十八条に従って解雇されるのだということに法律的にはなるのだろうと思いますが、しかしその点が必ずしも明確にされない場合に、公社法その他の規定で懲戒をしておられるのではないかと思うのであります。それでは一々の行為を争議行為であるかないかを明確にすべきではないかということになろうかと思いますが、それはなるほど法律の建前においてはそうかと思いますけれども、しかし事実労使関係というものは、おのおの国鉄にいたしましても、電電公社にいたしましても、郵政その他現業庁にいたしましても、歴史的な背景があるので、ただ法律にこう書いてあるからこれに従って、きちんとこういう工合に何でも割り切って処置をすべきものをしていくんだということにされることが——一面そういうことも区切りをつけ、明確にすべきものをするというのが、やはり労使関係の正しい発展の上においては、必要は相当にあることは事実でございますけれども、しかし何でもかんでも法律の条文に照らして割り切っていくのだという、これがいいのかどうかということについても疑問を持っております。しかし私の疑問はともかくといたしまして、従来の経過から客観的に見ますと、公社その他の労使関係は、従来のいきさつもあって、あのような、法律の条文に照らせば若干なまぬるいような、あいまいもこたる処置の仕方をしておられることも、これは多少是認いたすべき余地もあるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/15
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016・横山利秋
○横山委員 第一点については、審議会において十分なる御協議がなされなかったというお話でございます。ただしかし、たとえば私もその該当者の一人でございましたが、辞令は懲戒解雇でない。懲戒解雇の場合には、辞令は懲戒解雇と出る。今までの十八条の解雇につきましては、懲戒でなく、ただ解雇にする、こういう文章であったわけです。同時に国鉄なりその他の当局者も、この十八条の解雇はそれぞれの公社の懲戒解雇と異なるのだ、こういう建前をとり、労働省の政府側委員も、昨日でありましたか、そう言うておられるのであります。しかし法律上の問題よりも、私は藤林参考人に常識上の問題としてお伺いしたいと思う。何となれば、たとえば共済組合法というものは一種の保険制度であります。この保険制度について労使がそれぞれ掛金をかける。十年なり二十年なり三十年間、本人が汗とあぶらの中から出した掛金、その掛金をも剥奪し得るということが、あいまいな法律でその点について解釈は統一しておりません中で、常識上そういうことが一体許されるであろうか。労働者としては首になるということ自体が人生の中で重大な問題であります。従ってその首にするということだけで、公労法はもはやその一つの目的を達していると私は思うのであります。それ以上に本人が汗とあぶらの中で出した掛金、それを剥奪するというところまで公労法は言うているのではないと私は考えているのでありまして、その点常識的に一つ、簡単でけっこうでございますが、御回答願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/16
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017・藤林敬三
○藤林参考人 先ほど十八条に懲戒解雇を規定したかどうかということについては、私から明確な意見をここに結論として出さなかったということを申し上げましたが、しかし審議会の議論といたしましては、いろいろそういう議論が行われまして、そうして当局側の御意見としては十八条の中に、解雇でない程度の低い懲戒処分というようなものも規定として入れたいという御希望があったことは事実でございま耳す。しかしこれをわれわれが入れない方がいいと思いましたのは、それを入れますと、十八条というものは、明確に解雇まで含んで全部が懲戒だというように、規定上はっきりしてしまいます。懲戒解雇であるかないかということは、私が先ほど申し上げましたように、必ずしもはっきり、議長としての私はいたしませんのに、片方だけ一方的にはっきりさせてしまうことはどうかという懸念を持ちましたために、これを入れませんでした。それを先ほどの私の発言に若干補足して申し添えておきたいと思います。
さらに今横山委員の御質問の点でございますが、解雇問題というのは、実は私は法律家でございませんので、あまり詳しいことは存じませんけれども、最近の労働法学者の方々の御議論は、この一、二年来、解雇問題にかなり大きく集中しておられるようでございます。その一々の議論を私も伺っておりませんけれども、私は常識的に判断をいたしますと、やはりお説のように、自分で掛金をしてきたことまでも全部ふいにしてしまうということはどうかという感じが実はいたすのであります。もっと別の例もあるのですけれども、それはここに関係がございませんから申し上げませんが、御質問の点につきましては、私も共済組合の掛金までされたものを全部ふいにされるということはどうか、たといこれが懲戒であっても、どうかという感じが実はいたすのでございます。何となれば、自分が当然所得すべきものの中から積み重ねられた部分なんですから、それさえも処罰的に取り上げてしまうというのは、どうも行き過ぎではないだろうかという感じを私は持っております。しかし私は法律家でないので、法律的なこまかい議論はどういうことになりますか、その点は若干不案内でございますので、やや不確定ではございますが、私の個人的なぼんやりした意見をあえて申し上げますれば、私もそういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/17
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018・横山利秋
○横山委員 次にお伺いをいたしますが、今回公益委員を五名にされまして、その中で特筆すべきことは、答申の中で全然触れていなかった常勤二名を設定されたことであります。今後公益委員というものが重要な役割を演ずることはわかるところでありますが、ここに常勤二名を設定する必要というものが那辺に存するやについて、参議院の委員会においては相当重要な論議をいたしておるわけであります。私が今からお伺いしたいことは、いささか政治的にわたるかもしれません。その意味において一つ御理解と御答弁を願いたいのであります。
一体、今日の仲裁委員の選出基準というものがまずい点があると藤林参考人はお考えになったことがございましょうか。また常勤委員二名を選出をして、その選出基準が限定される結果、特殊な狭い範囲の中からこれを選出しなければならぬということが想定されるわけであります。こういう点については、審議会において議論もなかった点でございますから、御自由な御答弁をいただいてもよろしいのでございますがこの点について一言で言えば、古手官僚がここに入ってきて、そうして安上りな仲裁を出す、こういうことが今非常に関係者中で危惧を持っておられるのであります。そういう点についてどういうふうにお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/18
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019・藤林敬三
○藤林参考人 従来の仲裁委員の任命方法について、私はそれ自体がぜひ改めなければならぬとは思っておりません。しかし今回公益委員の任命が国会の同意を経るということに審議会としても意見を具申し、また改正法案もそういう工合になっておりますが、これに賛成をいたしましたゆえんは、何と申しましても、仲裁裁定が出れば、予算その他について国の審議を仰がなければならぬ、こういう点から申しましても、やはり仲裁裁定を出すものが一応国会の同意を得た委員であることが、政治的には好ましいのではないかというので、われわれすべて、労使双方、公益委員もこれに賛成をいたしましたゆえんでございまして、従来選ばれておりました方法それ自身も、たとい今度の国会同意の場合におきましてもこの趣旨は生かされているつもりでございまして、従来の方法を改めることが、従来の方法にけちをつけたわけではないと思います。
それから今の常勤の委員二名以内は、確かに審議会で論議されませんでした問題がここに出たわけでございますが、このことにつきましては、私はすでに別のところで意見を公けにいたしておりますが、私としてはこういうように考える。率直に申しますと、これは利益もあれば、運用のいかんによっては弊害もあり得るような懸念がいたすのであります。利点というのはどういう点かと申しますと、これかねて私も別に労働委員会の委員を長年勤めておりますが、事件が輻湊いたしますと、非常勤委員でありますのでどうも手が回りかねるということが往々にしてある。そういうつど、民間企業の争議の調停をやっております労働委員会におきましても、やはりこれは常勤の人が一人か二人おれば、絶えず争議の発生のおそれのある場合にはあらかじめ事情を調査するなり、また輻湊してくる場合には、毎日でも調停、あっせんを行うなどいたして、非常勤の委員だけでは足りないところを十分補っていただけるのではなかろうかという感じは私もかねて持っております。今回公労法の改正によって公益委員が五名、そのうちの二名以内を常勤とすることができるということになりましたのは、その趣旨においてはこれはやはり一つの改善であるというふうにも、当然見て見られないわけではございません。私はその点に関しましては、公益委員五名というのは少し少いんじゃないかという意見をかねがね持っておりました。私の個人的な意見を申しますと、公益委員は七名くらい必要じゃないだろうかという意見を、実は私はほんのプライベートに持っております。それがそういうのでなくて、五名ということになりますと、委員の数も少い。委員の数が少くて、事件が輻湊してくる。三公社五現業というのは、調停なり、あっせんなり一度に出て参りますと、非常動委員では、事務を取り扱っていくのに時間的に困難せざるを得ない。そういうことになれば、やはり常勤委員が二人くらいはおられて、事件の処理を円滑に進められるように行われることが、本委員会の運営上これは確かに利点ではなかろうかということが言えると思います。ただしこの場合、常勤者ということになりますと、ことに組合の方でございますが、労働組合側の公益委員に対する信頼度というものは、公益委員が完全に自由な立場にいるということに対して労働組合が信頼しておられるのであって、それが常勤委員で政府職員だということになりますと、完全に自由な立場をそういう委員がとり得るかどうかということについて当然組合側は疑念を持つと思うわけです。従って関係当事者の一方が疑念を持たれますことは、委員会そのものの運営が若干そこで円滑を欠くような事態を招来しないとは限らない、こういうことになるおそれは十分に私はあると思うのであります。従いまして、一面の利点はこの点においてはあるいは帳消しになるかもしれないという懸念を私といえども持たざるを得ないのでございますが、これはおよそそういうことをあらかじめいろいろ予測して申しておりましてもどうかと思いますが、やはりこの際は、片一方に利点もあることでございますから、この常勤委員というのは、任命されました場合にできるということになっているのですから、任命されなくてもいいんじゃないかと思いますし、あるいは二名以内というのですから、二名でなくて一名ということもあり得ると思うのですが、できるだけ当初は二名でなくて一名とか、また任命されました常勤委員は、たとえば委員会の会長ということになりますと、これまた今言ったような若干疑念を助長するような結果にもなるおそれがありますので、そういうことでなくて、平委員であられ、会長は非常勤の委員がなられるというようなことで、委員会内の運用で、そういう組合側から疑念を持たれるようなことにならないような工合に委員会を運営する、公正な機関としての運営を落ち度なくやっていくという、運営の面でかなり心配は解けていくのじゃないだろうか。また当然こういう改正が行われたならば、私はそうすべきだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/19
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020・横山利秋
○横山委員 時間もございませんので最後に簡単にお伺いします。これは冒頭におっしゃいましたように、今度の改正案というものが、労使の対立もある、あるいはまたそのほかの事情もある、従って今回の改正については意見の一致したところだけ直していく、こういうお話でございますが、これをもって公労法の改正は一応終りというふうにみなしておられるのかどうか。公労法の改正は今後どういう点に指向をすべきであるか、そういう点について、項目的でもけっこうでございますから、意のあるところをお伺いをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/20
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021・藤林敬三
○藤林参考人 今回の公労法の改正で、これで公労法が完全なものになったというような見解は、おそらくだれもとり得ないのじゃないかと私は思います。およそ労働関係法令は、やはり労使関係の実態に即して改むべき問題が生じてくるというのが当然ではないかと思います。今回で、これが最終的で十分なものであるというようなことは、何人も言い得ないと思いますし、私もそう思っておりません。事態がもう少し好ましい形で発展していき、また発展する可能性が出た場合には、そり事態の好ましい発展を法律が阻止するようなことは、当然改むべきだということに結論できるのであります。今日の状況では、一応こういう改正で従来に比較すると一歩前進ということにはるわけで、さっき前進云々ということを申しましたが、最終点に到達はいたしておりませんが、今日の状況ではこれで一歩前進、だから前進してこの改正法のもとにおける労使関係がどのように展開されるかによって、さらに問題が新たに出てきて、機会あれば改正問題が生じ得る可能性は十分にあると考えております。
それから、しからば今から見てどういう問題が将来改正問題としてあり得るかということでございますが、これは今申しましたような立場を私は一応見解としてもとっておりますので、今から、次には当然こういう問題があるとか、ああいう問題があるとかいうことを指摘するだけの私は十分準備もございませんし、また指摘する必要もないのではないか。それよりは現実の労使関係の発展自体と法の規定そのものと照し合せて、一体そこにどういう問題が生ずるのか、出てくるかどうかということを見定めた上で、改正問題というものは取り上げらるべきもの、こういうように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/21
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022・横山利秋
○横山委員 長々ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/22
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023・佐々木秀世
○佐々木委員長 参考人の方には御多忙中御出席下さいまして、まことにありがとうございました。
次会は明後十四日月曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X04419560512/23
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