1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年五月十五日(火曜日)
午前十時五十三分開議
出席委員
委員長代理 理事 小平 久雄君
理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君
理事 笹本 一雄君 理事 長谷川四郎君
理事 永井勝次郎君
阿左美廣治君 宇田 耕一君
大倉 三郎君 菅野和太郎君
首藤 新八君 鈴木周次郎君
田中 角榮君 田中 龍夫君
野田 武夫君 前田 正男君
南 好雄君 森山 欽司君
山本 勝市君 伊藤卯四郎君
加藤 清二君 佐竹 新市君
多賀谷真稔君 田中 武夫君
帆足 計君 松尾トシ子君
水谷長三郎君
出席国務大臣
通商産業大臣 石橋 湛山君
出席政府委員
総理府事務官
(公正取引委員
会事務局経済部
長) 坂根 哲夫君
通商産業事務官
(重工業局長) 鈴木 義雄君
通商産業事務官
(繊維局長) 小室 恒夫君
委員外の出席者
大蔵事務官
(主税局統制第
一課長) 白石 正雄君
労働事務官
(職業安定局失
業対策部企画課
長) 中村 博君
専 門 員 越田 清七君
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本日の会議に付した案件
繊維工業設備臨時措置法案(内閣提出第八三
号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/0
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001・小平久雄
○小平(久)委員長代理 これより会議を開きます。
本日は、委員長はやむを得ない所用のため欠席されますので、私が委員長の指名により、委員長の職務を行います。
繊維工業設備臨時措置法案を議題とし、審査を進めます。質疑を継続いたします。質疑の通告がありますから、順次これを許します。加藤清二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/1
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002・加藤清二
○加藤(清)委員 私はこの際特に重工業局関係に御質問をしたいと存じます。と申しますのは、本法案のアイデアにつきましては万人認むるところでございます。もっともそれの手当の不足の分がございますけれども、いずれにしてもこれは百歩譲って認めるといたしましても、問題はこの法案が施行せられますに当りまして、その施行によって生ずるところの犠牲でございますが、機械産業に及ぼす犠牲というものはすでに過去の経験、すなわち二十九条の発動の折の痛い体験によって、政府当局もすでにお認めになっているはずでございます。この折のデータを要求しておる次第でございますが、私はこの際本法案の施行に当りまして、かかる犠牲者を政府当局はどのように救済しようとしていらっしゃいますのか。その救済策がすでに二月の閣議において決定しておると聞いておる次第でございます。そこでこの際ほんとうは大臣に責任ある答弁をお願いしたいのですが、まず責任ある答弁を承わる前に、具体的に一体犠牲者をどのように救うか、その方法手段としてはどのようなことが考慮されておるか、これを承わりたいのでございます。この答弁が本法案を通過させるか、われわれが反対するかのポイントでございますから、一つ心してお答えが願いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/2
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003・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 本法案に関連いたしまして、関連の機械産業に対する対策をいかに考えているかという御質問でございました。この点につきましては、従来ずっとお答え申し上げておるところでございますが、中小企業安定法第二十九条の施行の際にも同じ問題が起りました。われわれといたしましても、そのときの対策をいろいろとったわけでございます。今回におきましても、やはり同じような考え方でございまして、考え方といたしましては二つ、一つは機械設備の更新を通じて、できるだけ国内需要を維持するというふうな努力をいたしたい。昨日まで御説明申し上げております通り、紡織機更新促進打合会というものを設けまして、それによりまして計画的に更新計画をとりまして、その促進打合会において官民一緒になってこれを推進していく、その具体的の方法といたしましては、あるいは機械償却年数の短縮を大蔵省に折衝する、あるいは更新の資金の問題について考える、こういうふうな対策で進みたいと考えておる次第でございます。
それからもう一つは輸出の促進でございますが、これも昨日御説明申し上げております通り、輸出会議に諮りまして、輸出目標をきめまして、それによってこれを促進するための市場調査の対策あるいはアフター・サービスの措置、かようなものを業界において具体的に計画を立てていただきまして、これに対して国として補助していく。その額が昨日申し上げました通り、この三十一年度におきましては二千万円ということを予定しております、こういう状況でございます。輸出会議の今までの結果によりますと、大体この三十一年度は目標が昨年の実績よりも九%上っております。その中を見ましても、特に昨年度は何と申しますか、化学関係のプラントみたいなものが入っておりましたが、今年度は紡機、織機ともに相当昨年の実績に比べまして目標を上げて大いに輸出に努力しておる、こういう状況でございます。
それから国内の更新の方の数字は、現在各業者から集めておりますが、まだ最終的な集計はできておりません。しかしながら、これも大いに促進打合会において更新を促進して、できるだけ生産の維持をはかるように努力していく、これを通じまして、繊維機械産業の維持をはかっていくように努力したい、こういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/3
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004・加藤清二
○加藤(清)委員 重工業局が本法案の施行に当りまして、だんだんの御努力を願っておりますことにつきましては、私どもも感謝をいたしておるのでございまするが、ただいまのような抽象的ね答弁、特に二十九条の折と同じような態度でもってこれに臨むというような考え方でありとするならば、遺憾ながら私は承服することができないのでございます。なぜかならば、きのうも重工業局長の答弁では絹織機は伸びたではないかということでございます。なるほど絹織機はある程度伸びました。しかし綿織機と絹織機とを比べてみますと、綿織機の方がはるかに生産量から金額から多いということは、あなたは御存じでございましょう。その多い方が五二%以下に切られて、ウエートではほんのわずかを占める絹織機が一五〇%に伸びたからというても、それで承服できるものではございません。そうでしょう。一家のうちにしてもそうです。主人の収入が半分以下に減って、今年初めて就職した自分の娘の収入が一・五倍に伸びたからといって、家の収入のバランスがとれるものではございません。そんなことで承服できるようだったら、何もこの会議を持つ必要はありません。すでに御承知の通り、五二%の生産に切り下げられた結果、どういう状態が出来したか、その傷がなまなましくて、今日にもなお及んでいる状態が反対の勢いを強くしているということを、あなたははっきりと腹の中へ入れて、それに対する対策を練られないことには、幾らこの法案を通してもらいたいと言われても、一部の人を救うために多くの犠牲者を生ずるということを目の前に見ながら、われわれ立法者はこれに賛成することはできないのでございます。そこで申し上げたいことは、新聞の報ずるところによりますと、二月二十四日には閣議が行われて、紡織機更新を促進せんがための対策が決定されたと出ております。この決定の内容を見ますると、ただいまあなたのおっしゃいましたように、その打合会なるものを作る、こういうことが出ておるのでございます。通産次官はおりませんか。——これは通産次官が主宰者に相なることになっているようでございまするが、その事業の内容として行われようとしているところのことが、具体的に実現されるかされないかを、私はまず承わりたいのでございます。すなわちこれがもし行われるとするならば、相当緩和されるからでございます。第一の打合会は、紡績、織布業者及び紡績機メーカーで構成し、通産次官が主宰する、こうありまするが、これは事実でございまするか、うそでございまするか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/4
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005・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 おっしゃる通りでございます。通産次官が主宰されることになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/5
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006・加藤清二
○加藤(清)委員 それではその内容についてお尋ねいたしますが、東京、大阪、名古屋の各通商局にも地区割りの打合会を設ける、その打合会では内外を勘案し、紡機及び織機の更新計画とその実施対策を検討する、こうありますが、これは事実でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/6
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007・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/7
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008・加藤清二
○加藤(清)委員 それではその更新計画をここへお示し願いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/8
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009・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 それは先般申し上げましたように、第一回の会合を三月に開いております。第二回を近く開くことになっております。その三月の会合のときに、更新計画を実施期までにできるだけ集めて、それによって審議することになっております。ただいま申し上げました通り、今各会社から更新の予定の数字をとりつつあるところであります。それによりまして第二回の会合を開き、自後それについて、これをいかにして実施するかということを検討し推進することになっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/9
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010・小平久雄
○小平(久)委員長代理 加藤君、約束の公取が見えましたから、適当にお打ち切り願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/10
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011・加藤清二
○加藤(清)委員 それではこれで終ります。ただいまの答弁では絶対に承服いたしかねる。なぜかならば、二十九条の折もそうでございましたが、本法案が施行されます、注文がストップになります、その直後一カ月から半年以内に倒産が続出しているのでございます。首切りが大工場においてはどんどん出ておるのでございます。御承知の通り中小企業というものは手形が一カ月おくれた、二カ月おくれたで倒産していくのでございます。本法案施行の直後においてこういうような悪影響が現われてくるということを、あなたはすでに体験済みでございます。通産省当局も体験をしていらっしゃるはずでございます。もしそういうような体験は二度と再び繰り返すべきでないという同情心がありますならば、また立法者として当然考えておかなければならぬことであるところの犠牲者の救済策というものは、並行して考えられて初めて効果を生ずるものでございます。それが一年おくれた、二年おくれた後に、それを救済しようといったって、相手はもう死んでいるのでございます。注射はカンフル注射を必要とするのでございます。決して一年先、二年先の栄養分でもって今日の病人であるところの中小企業や労働者が助かるものではございません。従ってそういう計画をうまく作って出すというのならば、並行的に同時に出して、何紡績は同月において何錘の注文を追い打ちをかけるんだと、これがなければ注文は立ちどころにとまってしまうのでございます。それをはっきり出していただきたい。出さないことには、これは死んでもよろしいということだ。二人や三人、五人の中小企業がぶっ倒れてもよろしいと言うただけで、首になったさるおとどがあることを、あなたも御存じでございましょう。ましていわんや、五十人や六十人はおろか、何百軒という下請がこれになる。それでもよろしいと言うたら、あなたの首どころか通産大臣が一ぺんにすっ飛ぶ。そういうことを私は望んではおりません。心から尊敬をいたしております通産大臣や、前々から感謝いたしております鈴木重工業局長が末長くこの仕事が行われるように、一つこの際は賢明なる具体策を出していただきまして、両者ともどもに笑ってこの法案が送れるようにしていただきたい。そこで私はあとでその具体策について質問いたしますが、委員長の命に従いまして、私は譲ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/11
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012・小平久雄
○小平(久)委員長代理 多賀谷真稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/12
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013・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私は昨日の質問に続きまして、二十四条の共同行為の指示についてお尋ねいたしたいと思うのであります。
それは戦後二度からなる操短勧告でございますが、この操短勧告は独禁法の外に置かれたものである、こういう話であります。その理由は、各社ごとにこれを指示しておるからである、こういうことですが、その各社ごとということは別にいたしまして、その当時の条件は、この独禁法が許しておりますところの不況カルテルの条件に合っておったのかどうか。これはカルテルではないということですが、その経済的な状態は、ここに規定をしておりますような状態にあったかどうか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/13
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014・小室恒夫
○小室政府委員 前後二回操短勧告を実施いたしておりますが、御承知のように、独禁法による不況カルテルは相当きびしい規定になっておりまして、まあ言ってみれば業界ほとんど共倒れになるというような状態までいかないと不況カルテルが結成できないような大体規定になっております。私どもも毎々申し上げますように、繊維製品の輸出価格を維持しまして、国際収支の改善をはかりたいということを繊維行政の眼目にしておりますので、そういう点を考慮いたしまして、不況カルテルの条件を百パーセントに満たしてはおりませんけれども、操短勧告という行政措置をとったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/14
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015・多賀谷真稔
○多賀谷委員 前後二回の操短勧告は、輸出という勧点からこれを取り上げられた、第一回のときから輸出という考慮を払わざるを得ない状態にあったわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/15
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016・小室恒夫
○小室政府委員 輸出価格が国内の需給の不均衡から低落いたしまして、同時にまた、中小企業、特に織布部門における採算も非常に悪化しておった。従いまして、輸出対策、次いでは中小企業対策、そういう気持をもって操短勧告を実施いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/16
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017・多賀谷真稔
○多賀谷委員 第一回はいつですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/17
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018・小室恒夫
○小室政府委員 昭和二十七年でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/18
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019・小平久雄
○小平(久)委員長代理 多賀谷君に申し上げますが、大臣がお見えになりましたが、大臣はよんどころない用で十一時四十分までしかおられないそうですから、もしあれでしたら大臣に先に一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/19
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020・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実は昨日質問して政務次官から一応の答弁を得たわけですが、どうも私はっきりしないのです。と申しますのは、この繊維工業設備臨時措置法案を出すほんとうの目的は、どこにあるのか、根本的な目標はどこにあるのか、これをまず大臣からお聞きいたしたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/20
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021・石橋湛山
○石橋国務大臣 ほんとうの目的は、日本の繊維産業が、御承知のように、ことに織布部門等において乱立して、非常な共食い競争でありますから、これを一つ何とか正当にいたしまして、日本の繊維産業の輸出にしっかりした基盤を与えたい、こういうのが根本の考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/21
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022・多賀谷真稔
○多賀谷委員 大臣はきのう答弁を聞かれていなかったから、どうもまるきり違った御答弁になったわけですが、そういうように答弁していないですよ。大臣はははあと言っておられますが、そういう答弁ではなくて、これは輸出の振興のためだ、要するに輸出の正常の発展に寄与するためだ、こういうことです。それが最終的な目的である。本法案の目的にも第一条に「この法律は、繊維製品の正常な輸出の発展に寄与するため、繊維工業設備に関する規制を行うことによって、繊維工業の合理化を図ることを目的とする。」とある。ですから、この目的は最終的には輸出の振興に寄与する、こういうこと以外には私たちは直接の目的を見出すわけにはいかない。ところが今大臣のお話でありますと、それは繊維工業の基盤をこの際確立しておきたい、こういうことです。ことに、どうも乱立をしているからこの際それを正常な規模にしたい、いわばそういうことであります。そういたしますと、大臣の答弁では、繊維工業全般の基盤を確立するというところに目的があるようであります。ところが今まで答弁をなさっております次官並びに局長は、それは輸出がうまくいかない、いわば外国の日本に対するいろいろな思惑とか、あるいは処置に対して、それを緩和するためにこの法律が必要なんだという点を非常に強調される。ですから、私はどうも非常な食い違いを生じておると思うのです。大臣が答弁をせられるようであるならば、私はまたそのようにも質問をしていきたいと思いますが、今問題は輸出の振興である、こういうことをお話になっておったので、どうも答弁の食い違いがありますから、再度御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/22
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023・石橋湛山
○石橋国務大臣 根本的には食い違いがないと思うのです。私の言い方は、これは今日本の産業は輸出振興を非常に重要なる眼目としておりますから、その側面から表現すれば輸出云々ということになります。しかしこの輸出をしっかりするにいたしましても、国内の産業の基盤が確立いたさなければならぬし、今までのような維繊産業の状況では困りますから、私の今説明いたしましたのは、少し広く考えて、単に輸出ということに限らず、一般的にこれは維繊業者が今まで長年悩んでおりました問題の解決に私は観点を置いてお答えしたのであります。両者にそんなに食い違いがあるとは思いません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/23
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024・多賀谷真稔
○多賀谷委員 両者に食い違いがあるとは思われぬと言われますけれども、大臣は大臣なりにこの法案をそういうようにお考えになって提出されたかもしれませんが、法文にははっきり輸出の発展に寄与する、こういう目的だ、とにかく日本の繊維産業はどんどん出ていくので、いろいろ外国がこれに対して規制を加えようとする、あるいはガット加入の問題についても三十五条を援用する、こういう状態にあるから、何とかしていかにも設備を規制させて、そうして過当競争、ダンピングはないということを立証したいというのが目的のように聞いておるのです。ところが大臣の言われるのは、むしろそうではなしに、繊維産業の基盤をここに確立しておきたい、こういうのとは私はかなり違いがある、かように考えるわけです。ばくとして考えれば、あるいは違わないかもしれませんが、この目的は、正常な輸出の発展に寄与するというのが大目的になっておる、ほかには書いてないですよ。繊維産業の安定をはかるというような文句を使ってない。全部これは輸出につながっておる、こういう今までの答弁であったわけです。ですからどうもはっきりしないので、もう一度御答弁願いたい。もしも大臣のような状態であるならば、私はこの目的を修正をされて出されるのがしかるべきである、かように考えるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/24
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025・石橋湛山
○石橋国務大臣 先ほども申し上げましたように、現在の日本の産業状態が貿易の振興ということに非常に強く結びついておりますから、従ってこの法律も表面へは繊維産業の正常な輸出の発展云々ということをしるしたのでありますが、しかしそのためには日本の繊維産業の基盤を確立するということができなければならない。基盤を確立しなければ繊維産業の輸出もできないのでありますから、繊維工業設備に関する規制を行う。これは今お話のように、規制を行なって外国に対して、ただ向うからの反撃といいますか、向うのいろいろな日本の繊維工業に対する非難を緩和しようというようなことだけではないのでありまして、もっと強く繊維工業の合理化をはかるということが一番です。結局合理化をはかって、そうしてその上に咲く花として輸出ができるということになると私は思う。ですから今申しましたように、言葉の上においてこの繊維産業の基盤を確立するというのと、繊維製品の正常な輸出の発展とは違うじゃないかといえば、これは言葉の上では違いますけれども、意味においてさして私は違うものとは考えておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/25
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026・多賀谷真稔
○多賀谷委員 大臣は、事務局が書いてくれて大臣がここでお読みになった提案理由の説明をお忘れになっておるようだということを私は感ずるわけです。大臣が提案されました提案理由の説明は、今申しましたように、今日のアメリカの日本の綿製品に対する処置、あるいはガット加入の問題に対する三十五条の援用、こういうことがあげられて、これを緩和するためにということが書いてある。ですから大臣がばくとしてお感じになっておるのと、実際事務局が提案理由の説明として書かれ、それを大臣がお読みになったのとはだいぶん違うのですよ。と申しますのは、いわばこれは不況カルテルですが、こういう不況カルテルは現在独禁法のワク内で大体やれるべきものを、独禁法のワクを越えた法律処置がなされておる。そこに事務当局が非常に苦慮して、輸出の発展という題目をここに掲げ、その目的の名においてこういう法案を強硬に出そうとしたところに問題があると思うのです。ですから私は言葉じりをとらえて質問をしておるようですけれども、そういうことを言われるならば、私は繊維産業だけにこういう法律を作る必要はない。むしろ現在の繊維産業は御存じのように、株の配当だってほとんど一割五分から二割もしておるし、それから織布の関係は別にいたしましても、いわゆる紡績会社なるものは非常な高利潤であり高配当をしておる。そうして繊維はどうかというと、今暴落をしておるという状態ではない。むしろ御存じのように今までしておった操短をとめて、そうしてそれが高値になっておる、こういう状態の中になぜ好んでこういう法律を作られるのか、これをまずお聞かせ願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/26
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027・石橋湛山
○石橋国務大臣 なるほど一部の紡績会社等にはそういうお話のような問題があると思います。しかしこの法案は私どもの考えとしては、一部のそういう大紡績会社のための法案じゃない、こう考えております。日本全体の繊維工業、ことに日本の繊維工業の大部分は中小企業なんであります。その中小企業を基盤とした日本の繊維工業の基盤を確立して、そうしてお話のように輸出振興にも十分寄与ができるようにいたしたい、かようなわけでありますから、むしろ中小企業を目当てにしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/27
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028・多賀谷真稔
○多賀谷委員 中小企業を目当てにした法案ですか、それをはっきりしていただきたい。中小企業を目当てにした法案ならば、その法案のようにまた質問の仕方がある。今までは輸出振興ということで、これは過当競争を防ぐためだ、こういうことでありましたから、私はそのように質問を続けてきたのですが、今大臣の話はそうじゃない。なるほど大会社はもうけておるかもしれませんが、中小企業は非常に困っておる、こういうことですから、それではこれは中小企業のための法案ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/28
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029・石橋湛山
○石橋国務大臣 先ほどから繰り返して申しますように、日本の産業ことに繊維産業においては、輸出に非常に依存しておるのでありますから、輸出振興ということが非常に大きなものであることは申すまでもありません。従って法案としては輸出振興ということに重点を置いておりますが、繊維産業そのものは何か、こういえばこれは輸出振興の上においても、輸出品を作る上におきましても中小企業の繊維工業者が多いのでありますから、その中小企業の繊維工業者の基盤を固めて、そして日本の繊維工業品の輸出振興をいたしたい、かようなのが本案の目的と考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/29
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030・多賀谷真稔
○多賀谷委員 中小企業の基盤を固めるということは法律のどういう点に現われておるのですか。法律を実施した場合に、これは非常に中小企業のためになる。これは十大紡のためではないというのは、法律実施上どういう効果が中小企業に現われてくるのですか。これは局長でもけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/30
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031・小室恒夫
○小室政府委員 本法案は紡績設備及び染色加工設備の新増設の実質的な許可制とあわせまして、設備過剰の著しい部門に対して、過剰設備処理の指示ができることになっておりますが、ただいま繊維産業において最も設備過剰の著しいと思われますのは、綿、スフの織布部門及び絹、人絹の織布部門であると考えております。と同時に、綿紡績部門においても過剰設備がございますが、最も顕著な過剰設備を抱いておりますところの織布部門に対して、別途予算でもって補助金も計上いたしまして、過剰設備の処理を重点的に遂行したい。これによって中小企業対策が相当推進せられる面があるということを私どもは確信しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/31
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032・多賀谷真稔
○多賀谷委員 織布部門についてはある程度そのことが言える。また織布については私自身も何らかの処置を必要とするという点も考えられるわけですけれども、私は紡糸全般についてこういう規制をする必要をどうも認めがたい。と申しますのは、現在非常に不況である。少くとも独禁法の規定をしております条文を読みますとかなりひどい。ひどいといえば語弊がありますが、厳格な、シビヤーな規定になっておる。この法律ができますときには、そういうことを十分予想されて法律を作ったのですから、法律を作る場合にそういうことが予想されなくて、たまたまこういう状態になったというのではなくて、法律は最初から不況ということを予想してこの条文を書いておるのであります。その条文は、少くとも需給が著しく均衡を失した場合には共同行為ができるというその一つの条件に、「当該商品の価格がその平均生産費を下り、且つ、当該事業者の相当部分の事業の継続が困難となるに至るおそれがあること。」あるいはまた、合理化によっては云々とありますけれども、法律は初めからこういう場合を十分予想して、それに対処するような法律を作ってあるのです。ところが今私はこの法案を審議するに当って現在の状態を見ると、およそ現在の繊維業界というものはかけ離れた状態にある。それに対して私はどうも不況カルテル的なものを認めるというわけにはいかない。現在一体操短までおやめになる、こういう状態の中にあって、果して大臣は不況カルテル的なものをしなければならない、こういう状態にあるとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/32
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033・石橋湛山
○石橋国務大臣 私は日本の繊維産業で一番の弱点はいわゆる織布部門といいますか、中小企業者が大部分でありますところの部面であります。これを何とかしっかりしたものにしなければ、それにつながって自然それを、たとえばこの間じゅうの操短にいたしましても、紡績業そのものを目的とするよりは、むしろ織布部門を救うために糸にある程度の規制を加えなければならぬというようなところにきたわけであります。この法案においても、これは法理的に言えば、私の知らないようないろいろの法的解釈がありましょうが、私どもの常識的に考えたところでは、やはりそういう意味で織布部門を救うということがむしろ重要な目的であって、そういう観点からこの法律を作ろう、こう考えたのであります。従っていわゆる不況カルテル、紡績が不況だからそれを救うために云々というような意味ではなかったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/33
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034・多賀谷真稔
○多賀谷委員 それなら織布部門だけ、これは中小を含めて、全部大企業にも及んで織布部門だけ規制される法案を作られたらどうですか。とにかく今原料高の製品安といわれておるのです。ですから困っておるのは、原料高であるから困るという要素が一つあるのですから、紡糸の方には大いに作らして、織布の方が原料が安く買えるようにされたらどうですか。その方が大臣が意図されておるところに的確に私は適合すると考えますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/34
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035・石橋湛山
○石橋国務大臣 どうも多賀谷君の言うような事情ではないようですね。実際の事情において織布部門を安定させるためには、やはり紡糸の方からの規制をしなければならぬというのが実情でありまして、この設備におきましても、織布だけを押えてそうして紡績の方は放任しておくというわけにはいかないと思います。やはり紡績から系統的にある程度の規制をするという必要があるように思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/35
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036・多賀谷真稔
○多賀谷委員 紡糸を押えれば織布はますます困るでしょう、原料が少いから、あるいは原料高になって。ですから私は織布だけをはっきり登録させて、織布だけでその線において政府が規制をされるなら、最も私は的確に解決すると考えますがどうですか。原料の方も規制すれば同じ状態になる。これはもう経済の常識で考えられますが、最初からやらなければならぬということはないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/36
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037・石橋湛山
○石橋国務大臣 これは議論もしくは観測になりますが、しかしながら織布部門だけを押えてそして安定するとは思わぬですよ。やはりそれは原料の供給という面から考慮しなければならぬ、かように考えております。そういうことからこの法案は全体の繊維産業に規制を加える、こういうことになってきたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/37
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038・多賀谷真稔
○多賀谷委員 どうも私は大臣の言われるのが矛盾をしておると思うのです。大臣は最も今中小企業で困っておるのは織布の部門だと言われましたが、なるほど私はその通りだと思うのです。それは、これは容易に施設ができるし、それから簡単な資金でできるという点があると思いますので、これは確かにこの面が最も過剰になりやすいし、現在も中小企業はほとんどこの部門に集中しておる、こういうことが言い得るのです。ところが現状はどうかといいますと、この原糸を求めるのに十分安価に求め得られない、こういう状態にある。ですから原料高の製品安だ、こう言われておる。ですから大臣の言うような意図であるならば、私は織布の面を規制されればけっこうじゃないか、かように考えるわけです。大臣がこの法律は中小企業のためだ、しかも織布部門を何とかしなければならぬ、こう言われるなら、私は織布部門だけを規制されればけっこうではないか、かように考えるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/38
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039・石橋湛山
○石橋国務大臣 先般たとえば操短の場合にも、織布部門からの要求によって原糸の操短をせざるを得ないということになったようなわけでありまして、設備においても紡績部門を野放しにしておいて幾らでもできるということになれば、その影響はやはり織布部門に及ぶわけであります。織布部門の規制はもちろん必要でありますが、同時にそれには根本はやはり紡績部門の規制ということを考えなければならぬ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/39
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040・多賀谷真稔
○多賀谷委員 先般の織布の規制については、むしろ原糸の供給の方を押えてもらわなければ困る、こういうような要請があったと今おっしゃいましたが、どうもその理由が、私は事情を知らないものですからわかりにくいのですが、これは局長から御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/40
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041・小室恒夫
○小室政府委員 昨年の五月に操短勧告を実施いたしましたときは、綿糸布につきましては国内の需給が著しく、不均衡に陥りまして、これが輸出価格の維持に非常な悪影響があったという判断でもちろんこの操短を実施したわけであります。その際特に採算割れが著しかったのは、やはり織布部門でありまして、織布部門においては一種の操短を実施はいたしましたけれども、これの最終的な効果を確保するためには、どうしても原糸の方の操短をやってもらわなければならぬということで、当時綿工連といいますか、織布部門の方から操短についての希望がありました。この面からいえば綿糸の操短は織布の操短に対する補完的な操短という一面があったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/41
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042・多賀谷真稔
○多賀谷委員 どうも私は常識上理解できないのです。それはあるいは政治的な圧力がそこにあったかどうかということも私はわからないのですけれども、経済常識上織布が非常に困った、そこで織布だけの規制ではいけないから原糸供給の面も一つ規制をしてくれ、こういう理由がわからぬ。これは一体どういうことから出てきたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/42
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043・小室恒夫
○小室政府委員 局外におりますると、織布業者、つまり原糸を買う立場にあるものが、原糸の供給を少くしてくれ、従って値段が若干つり上がるような方向に持っていってくれということを希望することは一見矛盾した希望のように思われます。確かに私も局外にあればそういう感じを受け取ると思いますが、実際問題として綿糸布の需給関係は一体でございますから、綿糸の方があふれておれば、やはり織布の操短ということは現実になかなかできないのでございます。そういう事情で織布の操短の補完的な意味で綿糸の操短をやってもらわなければ、やはり全体としての綿糸布のバランスがとれないという認識は、その局に立っておれば非常によくわかるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/43
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044・多賀谷真稔
○多賀谷委員 よくわかりました。わかったということは、それは私は事情がわかっただけであって、その状態が正常であるということではないと思うのです。その状態は確かにアブノーマルである。なぜかといいますと、この操短をやる場合には、自分のところだけは何とかして最大に稼働して、そうして操短をやればコストが高くなるのは当然ですから、そのコスト・ダウンにも資するために利潤の極大点をねらうから、当然仲間同士で十分な規制ができない。だから原案の面も規制してくれ、こういうような状態になって、そういう要請があった、こう一応私自身局長の意見を聞いて、しろうとですからわかりませんが判断をするわけです。しかしそういう点は法律によってかなり規制をすればいいじゃないか。中小企業、ことに一貫メーカーであります織布の部分も含めて規制をすればできるのではなかろうか。それを設備に応じて逆に綿糸の供給を自主的に規制をすればいい。法律によって規制をする必要はこの原糸の供給の部面はないではないか、こういうように考えるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/44
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045・小室恒夫
○小室政府委員 理屈はまことにその通りでございますが、現在織布に従事しております繊維業者が一万七千軒ございます。三台持ち、五台持ち、あるいは一台持ちというような小さいところまで加えてでありますけれども、ともかく全国津々浦々にあるこういう織布業者が、生産数量の調節、つまり操短について百パーセントの効果を上げ得ないということも、おそらく現実問題としては御認識がいただけると思います。そういう事情からいたしまして、やはり綿布の需給を調節するためには、綿糸の面までどうしても需給調節をしてもらわなければならぬ。そういう一見矛盾したような要求がこの織布部門の代表の方からあったとしてもちっとも不思議でないと、私は現実問題として考えるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/45
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046・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そういたしますと、織布の方は非常に経済単位が低いわけですが、一体今度の法律で最低の経済単位をどのくらいに考えられておるのか。たとえば法律を実施するに当って、設備の制限をされる場合に、最低経済単位というのを考慮されるのかどうか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/46
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047・小室恒夫
○小室政府委員 織布部門と一言に申しましても、加工用の生地を作るとか、あるいは非常に手の込んだ糸染めのものを作るとか、あるいは別珍を作るとかいろいろございまして、一概に適正規模が何台ということは、なかなか申しにくいのであります。しかしどちらかというと、ある程度織機をまとまって持った方が合理的な経営ができるという点は、一面から言えばあろうと思います。しかし他面から言うと、三台持ち、五台持ちというようなものを整理するということも、別な見地から相当慎重に考えなければならぬことでありまして、現に生産制限をいたします場合にも、十台以下のごく小さな機屋に対しては、一種の社会政策的な考慮から、生産制限のいわばワク外に置くとか、特殊扱いにするというようなことで、その辺のかみ合せをどういうようにするかは、今後審議会の意見も聞いて慎重にきめたい、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/47
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048・加藤清二
○加藤(清)委員 織布部門に関しての私の質問は、後ほど委員長から許可の出た折にお願いするつもりでございますが、ただいまの繊維局長の答弁に対して私は納得のいかぬ点がありますから、それでお尋ねするわけです。
紡績部門の、つまり製系の数量等について制限をしてもらいたいという希望が織布部門から出た、こういうお話でございますが、それは一体織布部門のどの部門であるか、毛であるか綿であるか絹であるか、それをまず承わりたいのでございます。なぜ私がそういうことを承わらなければならないかと申しますと、織布部門の紡績部門に対する要望というものは、ただいまの繊維局長の答弁がウェートではないのです。もっとほかに大きな希望がたくさんあるわけでございます。その希望をほっておいてからに、そのことだけを取り上げるということがすでに私はおかしいと思います。まず希望としては何があるかといえば、毛も綿も絹も通じて考えられますことは、第一番には自家用機だけが日の目を見て、おれらのところはいかれ詰めじゃないか、原料高の製品安で困るじゃないか、こういうことです。大臣も、織布部門の一番関心を持っていることは、原料高の製品安ということは御存じの通りです。それで、原料高の場合に数量を制限すればますます原料が高くなるということは、幾ら織布部門の人が無学でもしろうとでもよく知っていることです。そこがそういうことを言うというのはおかしいし、もしかりに言われたとしても、それは目標が違うのです。どういうところが違うかといえば、御承知の通り、大きな紡績の話ですけれども、紡績はいい糸だけは自分の自家用機で織らせます。悪い糸は外糸に出します。その外糸に出すものを機場が受け取って織らなければならぬのです。従って今日の機場の状態はどうかと申しますと、値が高くなっただけでなしに、自分の希望の糸が買えないということです。それは、機場はよそからの注文生産で、自分で勝手に作って勝手に売るのじゃありません。バイヤーなり商社なりから、こういう生地を織れ、こういう柄を織れ、こういうものを作れ、こう言われる。その作ろうと思うものが、思う糸が買えないために作れないという苦しみが一番大きいのです。そういうやさきに、それを制限してくれということは、どこを制限してくれと言うかというと、総体の生産量ではなくして、自家用機で勝手に作る糸を制限してくれということ、こういうことが一番大きな望みです。そこを間違えて混同して答弁してくれては困るのです。そこのところをはっきりして、機場の苦しみ、機場の苦しみから生ずるところの希望、これをよくかみ分けて、それによく合うような手段をとってもらうことが、繊維局長の任務だと思うのです。
まず第一に大臣にお聞きしたいのですが、私の言う、機場の苦しみの一番大きいのは原料高の製品安である、それをあなたはいなと言えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/48
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049・石橋湛山
○石橋国務大臣 原料高の製品安で困ることを、きまった話であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/49
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050・加藤清二
○加藤(清)委員 しかも今日は原料高の製品安ということでなく、原料なしの製品クレームです。原料はないんだ、好む糸が買えない、買う場合にどういう結果が生じておるかというと、抱き合せ販売ということが今行われておる。うそだと思ったら、阿左美さんに聞いてみて下さい。これが現状なんです。だから機場の苦しみを解消するためにやるというのだったら、先にやらなければならぬことがたくさんある。総体の紡績の糸の生産量をどうしてくれこうしてくれと言えるほど、機場は紡績に対してきつくないのです。紡績様々なんです。紡績の言うことにちょっとでもたてついたら、ぼいんとやられて、お前のところは配給ものの糸をやらないぞ、こういうことになる。だからこの間の参考人を呼んだときだって、紡績の前に出たら、綿工連でも絹調連でも、よくものを言えない。そこをようかみ分けてやらないと、とんでもない取り違えが起きてくる。繊維局長、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/50
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051・小室恒夫
○小室政府委員 ただいま綿紡操短についてお尋ねがありましたので、綿の織布業者から、原糸の操短をやってほしいという希望があった、これは綿の希望でございます。
それから第二に、ただいまの希望は、自家用織布用の糸をどうこうということでなくて、全体として糸の需給のバランスがとれるようにしてほしいという要望でございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/51
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052・加藤清二
○加藤(清)委員 その希望の内訳は、誤解があるといかぬから、こういうことを申し上げる。一六%、一二%の操短をおやりになりました。ところが紡績は操短をやらぬでどうやったかというと、なるほど綿の糸は操短をしたのですが、その機械でスフ糸をどんどん作りました。だからスフ糸の生産がばあっと伸びました。そうしておいてから、いよいよ今度機場に糸を渡すときに、余分に作ったそのスフ糸を、機場では買いたくないのに、抱き合せて売る。だからほんとうに紡績に対して操短をしてもらいたいということは、操短を確実に行なってもらいたい、余分にそんなスフ糸を作ってあとで抱き合せるようなことはやめてもらいたい、こういうことが機場のほんとうの趣旨だ。そこをはき違えては困る。いい糸、好きな糸はどんどんほしい、それが少くなるようなことを考えるはずはありません。原料高の製品安で困り、原料なしの製品クレームで困っておる機場が、それに追い打ちをかけるような、ほしい糸を制限してほしいということを言うはずがありません。そこのところを間違えぬように願います。なるほど言葉じりをつかまえると、そういうことになるかもしれませんが、真意を一つ繊維局長のような賢明なお方はくんでやっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/52
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053・小室恒夫
○小室政府委員 綿糸が適正な価格で織布専業者にできるだけ流れるように、こういうふうなことは私どもしょっちゅう配慮していることであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/53
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054・加藤清二
○加藤(清)委員 私の質問は、あとでまとめてやります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/54
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055・多賀谷真稔
○多賀谷委員 今加藤議員の、質問でやや全貌がわかったのですが、どうも局長も人が悪くて、しろうとだと思っていいかげんな答弁をされると困るのですが……。
では私は質問をしますが、織布の場合、これは昭和二十九年に中小企業は中小企業安定法に基いて調整組合を作られて、登録もされており、その指示も出されておる。では一体自家用といいますか、大手会社の織布部門についてはどういう処置をなさったか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/55
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056・小室恒夫
○小室政府委員 中小企業安定法の規定に基く織布部門の操短は、これは紡績兼営もいわゆる専業者の方も同じ足並みで実施さしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/56
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057・多賀谷真稔
○多賀谷委員 一貫メーカーの方も同じ足並みといいますが、これもやはり登録なんかをさす義務があるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/57
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058・小室恒夫
○小室政府委員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/58
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059・多賀谷真稔
○多賀谷委員 それは法律上の条文によっておやりになったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/59
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060・小室恒夫
○小室政府委員 中小企業安定法の適用によってやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/60
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061・多賀谷真稔
○多賀谷委員 どうも先ほど加藤委員が質問なさったように、原料高の製品安という面がこの法律が実施されたときに依然として問題が残るのじゃなかろうか、この解決の問題が十分考慮されていない、私はかように考えるわけです。
続いて質問をいたしますが、消費者保護の面についてはどういう処置がなされておるか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/61
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062・小室恒夫
○小室政府委員 設備の新増設の実質的な許可制の運用、また過剰設備の処理の運用につきましては、消費者の立場をよく考えて製品の価格が上らないように、需給がそういう程度まで逼迫しないように運用して参りたい、そのために審議会において消費者の代表、中立的な立場で発言できる人を相当程度入れて参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/62
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063・多賀谷真稔
○多賀谷委員 それは政府が考えられて、そうして条文の中でも「一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。」という文句が入っている。しかしこれはいわば訓示規定的なものであって、これをしなければどうというのじゃなくて、一に行政官庁の頭一つである、私はかように考えるわけです。この法律もそうでありますけれども、独占禁止法の趣旨は一般消費者の保護が十分なされなければならぬというところにあると思うのです。この一般消費者の保護に対する十分な処置がなされていない、かように考えるわけですが、これは公取の方にお聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/63
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064・坂根哲夫
○坂根政府委員 ただいま繊維局長が答弁いたしましたように、審議会に十分消費者の意見を反映していただく人が入ってもらって、その意見を反映したものを通産大臣が指示の内容とされて、それをわれわれの方に協議されまするから、その協議の際には独占禁止法の、今多賀谷先生がおっしゃいました趣旨を十分盛り込んで協議に応じていきたい、こういう工合でやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/64
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065・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そういう精神をもってやると言われますけれども、私は法律の建前上はそういうようになっていないと思うのです。と申しますのは独占禁止法で不況の場合にカルテル行為ができるのは、先ほど申しましたように非常に厳格な条件になっている。少くとも商品の価格がその平均生産費を下っている、こういうような条件が付されている場合に初めて許されることになっている。そういう場合に初めて、需給のバランスがくずれて、そして不況であるからカルテルを許す、こういうことになっていると思うのです。そうしてその場合においてすら、それによって損害をこうむったものは無過失損害賠償の請求権がある、こういうようになっているのです。要するにその企業がほとんど倒壊をしたという状態においても、このカルテル行為をした場合には、故為または過失がなくても損害賠償の任に当らなければならぬという規定すら規定上はある。それをどういうように運用するかは別として、法律に厳格に書いてある。ところがこの法律はそういう状態でなくて、いわば繊維産業の基盤を確立する——大臣も言われましたが、現在の不況をどうするという問題じゃない。ですからそういういわば、政治的にいいますと高度の政策の場合に、それによって損害をこうむる者に対して、少くとも独禁法程度の無過失損害賠償の請求権は生じ得るものだと私は思う。これを実際どう発動するかということは別として、そういうように考慮すべきものであると考えるが、公取としてはどういうようにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/65
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066・坂根哲夫
○坂根政府委員 私どもは、この法案が出されている趣旨を、不況カルテルの建前で出されているとは思いませんで、むしろ——先ほどから多賀谷先生がおっしゃいまして十分納得されておりませんが、一条の目的の輸出のために繊維産業の改善合理化をやるという建前で施役の共同行為をやるということを考えておりますから、一応この法案の程度で協議を受ければ十分ではないか、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/66
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067・多賀谷真稔
○多賀谷委員 では合理化のためのカルテルですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/67
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068・坂根哲夫
○坂根政府委員 私どもは、第一条の定義が輸出の促進をうたっておりまして、そのための施設削減ということは繊維産業の合理化に非常に寄与する、こう解しております。
〔小平(久)委員長代理退席、鹿野委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/68
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069・多賀谷真稔
○多賀谷委員 合理化をするという具体的な法上の条文がどこにありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/69
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070・小室恒夫
○小室政府委員 繊維工業の適正な規模が確立せられて、適正な稼働が行われ、操業が行われるということは、繊維工業全体の合理化になる、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/70
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071・多賀谷真稔
○多賀谷委員 独禁法の合理化カルテルというのは企業の合理化ですよ。今お話の繊維産業全般の合理化というのはいわば不況カルテルですよ、考え方が……。需給のバランスがとれないというのでしょう。首を振られておっても独禁法の方ではそうなっているのです。独禁法の二十四条の三の方は不況カルテル、これはいわばただいまお話になったように乱立を防いで、そして経済の基盤を確立するという、繊維産業全般の合理化というのは、むしろ今過剰設備を制限するというのは不況カルテルです。それから技術の更新というような面、品質の向上というような面は、これは今言われる合理化カルテルです。今御説明を公取の方がなさっているが、それはどうも矛盾していはしませんか、ちょっと、どちらでもいいのですが、答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/71
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072・小室恒夫
○小室政府委員 ただいまの公取の御答弁は、これは合理化というごく常識的な言葉で表現されたことだろうと思います。別に矛盾いたさないと思います。企業の合理化もあり、工業全体の合理化もある、そういう意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/72
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073・多賀谷真稔
○多賀谷委員 企業の合理化というのはこの法上どこから出てきているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/73
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074・小室恒夫
○小室政府委員 ただいまそちらで企業の合理化ということを言われましたから、そういう言葉も使うし、工業全体の合理化という言葉も使う、そういう軽い意味で今公取で御答弁になったのだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/74
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075・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私は、不況カルテルではない、こうおっしゃったから、それはどういうものですかと言いましたら、合理化カルテルだ、こうおっしゃったから、合理化カルテルなら産業全般の合理化ではないですよ、こうお聞きしたのですが、公取の方から御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/75
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076・坂根哲夫
○坂根政府委員 ただいまの御質問は、私が申し上げましたのはこの法案は繊維産業の不況対策のために独禁法を適用除外するという意味で出されておるのではなくして、設備制限をして、そうして第一条の最後の方に書いてありますが、企業の合理化をはかるということで出されておりますから、設備制限の共同行為の指示をその目的にからんで私どもが協議に応ずる、こういう工合にお答えをいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/76
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077・多賀谷真稔
○多賀谷委員 どうも大臣といい、次官といい、局長といい、公取といい、自分で法律を作っておって、そうして十分な説明ができぬというのは私は非常に不見識だと思う。今公取の方では企業の合理化ということをおっしゃったが、企業の合理化ということは書いてありません、「繊維工業の合理化」というふうに書いてある。ですから私はもう少しこの法律は何のために出したのか、不況カルテルなら不況カルテルでいい、現状の認識が違うなら違うでいい、ところがそうでもない、では合理化カルテルですかということを言えば、合理化カルテルのようなお話をされるけれども、やはり不況カルテル的な御説明をなさっておる。結局不況カルテルでもない、合理化カルテルでもない、輸出の振興だ、こういうお題目を唱えられておる。私は輸出の振興であり、輸出の正常な発展ならば、それは賃金の安いというのがむしろ解決のカギになると思う、こう言っておるのです。ですからもう少し説明をはっきり願いたい。合理化カルテルなら合理化カルテルらしいところがどこにありますか、こう聞いておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/77
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078・小室恒夫
○小室政府委員 法律的に申しますと、これは不況カルテルでもありませんし、合理化カルテルでもありません。繊維工業全体の合理化をはかるために、過剰設備処理の共同行為を認めておる、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/78
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079・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私は、独禁法が制定されて、そうして独禁法が、不況な場合あるいは合理化をしなければならないという場合に、厳格な条件をつけて、あらかじめ法律がいろいろなことを予定して出しておるのですから、いやしくもこれを排除するような法律を出すには相当の理由がなくちゃならぬと思うのです。ところがどうもいろいろ質問を聞いておりますと、その理由が見つからない。私は率直に言いまして、何とかその意をくみとろうと努力をしていろいろ質問をしておるけれども、どうもはっきりした確たる根拠が見出し得ないのです。これは非常に残念に思うのです。ですから少くとも私はこういうカルテル行為を認める場合には、非常な強い条件がある。今度の場合は強い条件というよりもむしろ現在ある姿をさらによくしようという、こういう形で、政策としてはわかりますけれども、私は一般消費者の保護の面が全然欠けておると思う。ですから私は一般消費者の保護の面をどういうふうにされるのか、これをもう一回公取の方からお聞きをしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/79
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080・坂根哲夫
○坂根政府委員 それは先ほど申し上げましたように、二十四条の規定にはっきり繊維工業設備審議会の意見を聞いて、そうして具体的に通産大臣が指示をする、その指示を私どもは協議を受けますから、しかも通産大臣が認可するに当っては、先ほどお読みになりましたように関連事業者と一般消費者の利益を不当に害してはならないという言葉がございますから、これを十分に活用いたしまして、一般消費者の利益を擁護したい、こう考えております。なお二十六条でございましたか、通産大臣はその条件に該当しなければ、その指示を取り消し、あるいは変更しなければならないという規定がございますが、そういう規定と相待って消費者の利益を擁護したい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/80
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081・多賀谷真稔
○多賀谷委員 独禁法ではかようないわば厳格な条件を付しても、さらにそれによって損害をこうむるという場合には、無過失損害賠償の規定まで入れておる。これほど親切にしてある、かように考えるわけですが、私は一番この法律で問題なのは一般消費者との関係だと思うのです。たとえばこれが石炭産業で例をとりますならば、石炭産業のいわば消費者といいますか、需要者は、あるいは鉄鋼であり、電力であり、あるいはその他の化学工業でありますから、必ずこういう法律が出る場合にはいろいろな問題があると思う。たとえば石炭産業の例の共同行為を認めた法律がこの前出ましたが、少くとも現在の繊維工業のような状態に石炭産業があるならば、私はああいう法律を出す場合には全産業があげて反対をすると思うのです。ところが今度の場合はその消費者が全部一般の大衆である、こういうところにこの反対の声が組織化されないゆえんがある。そこで私たち政治家としては、この一般消費者の声を代表しての意見を言わなければならぬと思うのです。ですから少くとも、石炭の場合でもそうでありますが標準価格の設定というのがあって、これによって消費者を保護しようとしたわけです、ところがこれには何らそういう規定が見出し得ない。一体価格はどういうようにお考えであるか、これを繊維局長から御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/81
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082・小室恒夫
○小室政府委員 消費者の立場を十分考えるべきであるという御説はまことにごもっともで、私どもも常にそう考えております。またこの法案の原案を作成する過程に、操短勧告に関する規定と価格引き下げ勧告に関する規定とがあったのでありますが、その両者を落したので、あるいは価格引き下げ勧告のようなことはやらないつもりかというような意味のお尋ねもあるかと思いますが、私どもはこれは行政権の当然の運用としてできるということで両方とも落したのでありまして、むろん価格が異常に高騰したような場合にこれを引き下げるためのできるだけの措置をとることは私どもはぜひやりたいと考えておりますし、また先ほど来申しておりますように審議会に十分消費者の声を反映させるような構成にいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/82
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083・多賀谷真稔
○多賀谷委員 行政権の範囲内で価格引き下げの勧告ができる、こう言われますが、私たちは今法案を審議しておるのであります。そしてこの法律によって悪い影響を受ける面は、やはり最も私たちが保護しなければならない消費者であると考えるわけであります。ですから私は法律の体裁からいっても消費者保護の規定はどうしても必要である、かように考えるわけですが、これについては公取はどういうようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/83
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084・坂根哲夫
○坂根政府委員 それは再三繰り返して申し上げましたような措置で考えますが、この法律はよく御承知のように設備の制限の共同行為の指示だけでありまして、それ以外のもろもろの共同行為をした場合は直ちに独占禁止法の違反として問題が出てきますから、その面からも一応消費者の建前は十分考慮される、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/84
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085・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そのほかの独占禁止法違反のような共同行為は独占禁止法によって禁止する、こう言われますが、そのほかはあまりありませんよ。設備の制限を共同行為でやって、一体何がありますか、私は事業者にはそれ以外のいろいろな方法というのはないと思うのです。これが根本ですよ。ですから私はどうもお話になることが、結局何とかしてこの場を切り抜けようというようなことしか考えられないわけです。ですから私はこの法案を出すに当っては、当然最も大きな保護の対象になる消費者の面を法律の規定から見出し得ないということを非常に残念に思う。これがなければバランスはとれません一方だけを利して一方を全然オミットする、こういうことは法律としての体裁からいっても、また法律のあり方としても私はきわめて不均衡なものである、かように考えるわけですが、これについてもう一度繊維局長に御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/85
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086・小室恒夫
○小室政府委員 私どもはこの法律の運用によって繊維の需給のバランスがとれ、輸出品も価格が維持できる半面、国内の衣料も適正な価格で売られるような態勢を作りたい、こういうふうに考えておるわけでありますが、法律上保障がないとおっしゃいますが、これはどういう保障を言っておられるのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/86
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087・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私に質問でありますからお答えいたしますが、損害賠償の規定をそのまま一般消費者について入れる、こういいましても、これは実際どういうような損害賠償になるのか、これも実際の法の運用上きわめて困るので、一般消費者については、あるいは損害賠償の規定をたとい入れても意味をなさないと思います。しかし私はやはり消費者保護という面は価格の設定にあると思うのです。ですから私は、価格の設定については政府が行政的に何らかで送るような法律の根拠を持たしたい。ですから価格の設定について当然入れられてしかるべきだ、こういうように答弁する以外にはないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/87
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088・小室恒夫
○小室政府委員 ちょっと言葉じりのようで工合悪いようですが、価格の設定というと何か公定価格のような感じがいたしますが、私どもは価格が異常に上りましたような場合にはあらゆる行政的措置を講じて、たとえば輸入の原料をふやすとか、あるいは最近、どうせ手おくれだと御批評になるかもしれませんけれども、操短を撤廃するとか、そういうようないろいろな措置を講じて価格が適正なところに落ちつくように、それは行政措置でやる。これは別に法律の裏づけがなくても当然できることでありますから、そういうことで参りたい、こういうことを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/88
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089・多賀谷真稔
○多賀谷委員 えらい行政権を信頼した話ですが、行政権がそのくらいあるならこの法律をお出しにならなければいい。価格について、あなたの方が勧告してそれが実施されるようならば——価格が上るという状態のときを想像してごらんなさい、単に勧告くらいで価格が引き下るものですか。ですから私は、あなたの方でそれほど行政権を信頼をして、行政権の力が非常に大であるから御安心下さいとおっしゃるならば、この法律そのものは要らないのじゃないか、設備の操短の勧告だけでけっこうじゃないか。あなたの方で設備制限の勧告をされればいいのです。価格の引き下げというような大きな問題を行政権でおやりになり、それが実際効果があるというなら、私はこんなことはわけない、かように考えるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/89
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090・小室恒夫
○小室政府委員 それほど行政措置の効果を大きく見ているわけではありません。ただ輸入の問題あるいはその他いろいろの問題で価格が適正な水準に戻るように措置することはやはり可能だと思うのです。そういう意味で全力をあげたい、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/90
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091・多賀谷真稔
○多賀谷委員 今まで出されました政府の案でも、やはり設備制限をされるという場合には価格という問題が問題になり、石炭の法案のごときは標準価格を設定されたのです。ですからこの面について非常に考慮が足りない。率直に言いますと、考慮が足りないというのは、これはその消費者が直接一般大衆であるところに、あなた方がその価格について何ら規定を入れなかったゆえんがあると思うのです。そうでしょう。これは消費者が大企業なんかだったら黙っておりませんよ、それははっきりしておる。消費者の方が一般大衆だからあなたの方が価格の規定を入れないので、これは、消費者が大産業であるという場合には、必ずその産業界があげて反対をして、価格という問題が当然議論になってくるのです。そういう声が起らないのは、その一般大衆の声を組織する力がないからであって、あなたの方がそういう声を見のがして行政を運用されるというのは、はなはだけしからぬと思うのです。ですから私は価格の問題についてぜひ考慮を願いたいと思う。もう一度答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/91
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092・小室恒夫
○小室政府委員 消費者の立場に立って政府を鞭撻していただくのは非常にありがたいと思います。ただ私どもは、この繊維品の価格についてあるいは標準単価式のものを考えないかというお尋ねに対しては、私ども繊維品は最も大事な輸出品で、しかも海外諸国との関係では相当安値に売られておる輸出品である、これをできるだけ価格を維持し、あとうべくんば引き上げていきたい、こういう感じでおりますので、繊維品の価格についてあまり統制を加えることは、そういう輸出振興の立場から見てやはり弊害がある、消費者の立場は別な面でできるだけ考えていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/92
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093・多賀谷真稔
○多賀谷委員 輸出だけのことであれば、私は別個にいろいろな方法があると思う。いろいろ答弁をされておりますけれども、結局は、一般大衆が消費者であるという点から、その声を組織してあなたの方に反映する力がなかったという現実が、価格という問題に触れられなかった理由だ、残念ながらかように考えざるを得ない。とにかくこういう規制法案を出して価格の点に触れない、価格でなくても、要するに消費者を保護する点に触れないという、こういう法案の出し方はないと思うのです。独禁法は今申しましたように無過失賠償責任すらかけておるのですから。しかもその独禁法の条件というのは非常にシビヤーな条件で、そういう場合にすら一般消費者並びに関連産業については考えておるのです。ところがあなたの方は一つの訓示規定だけを設けてあとは行政におまかせ願いたいと言われましても、私どもはどうも行政におまかせすることはできない。なぜかというと、今までそれほど行政権が強大なものであるならば、何度も操短もされ、設備制限の勧告も各社ごとならできるのですから、あなたの方の論法からすれば、法律は要らないのです。それをわざわざ法律を作らなければうまくいかないと言われるくらいなら、私は価格だって安心できないと思う。ですから価格の点について再度考慮を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/93
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094・小室恒夫
○小室政府委員 石炭の例をお考えのようでありますけれども、御承知のように綿製品にしても毛製品にしても、海外の原料を各地から買いますが、原料の値段もしょっちゅう変動しておるもので、標準市価というものは、かりに考えてみましても非常に困難なものであります。操り返して申すことでありますが、消費者の立場を十分この法律の運用に反映させますように、審議会においても、特にその構成を考えていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/94
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095・多賀谷真稔
○多賀谷委員 標準価格の設定が非常に困難だ、こういうお話です。現実になかなか困難であろうと私も推測するにかたくないのですが、あなたの方は、先ほど価格については標準価格設定ではなくて、価格の引き下げの勧告というのを法律に出したい、出そうと一時は考えた、こう言われるくらいなら、かつて考えた原案を修正としてお出しになったらどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/95
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096・小室恒夫
○小室政府委員 これは法案作成の過程の話でありますが、ざっくばらんに申し上げると、操短勧告と見合うものとして価格引き下げ勧告というものを考えた、両方とも行政権の運用でできるものであるから両方落した、こういう経緯でございますから、別に修正を出す考えはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/96
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097・多賀谷真稔
○多賀谷委員 どうもこの点は承服できないのです。では続いて、一般消費者と同じようないわば影響をこうむるところの関連産業についてはどういうようにお考えであるか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/97
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098・小室恒夫
○小室政府委員 これは法律の中にも成文がございますが、特にまた紡織機の工業者、その関連の事業者に対しては、毎回重工業局長その他から御答弁申し上げておるような措置を一応考えているわけであります。関連事業者の立場はできるだけ考えていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/98
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099・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私は関連産業においては、損害賠償というものがそのまま行くかどうかわかりませんが、そういうこともあり得る、レア・ケースかもしれませんが、あり得る、こういうように考えられるのです。ですからこれについての保護は十分に私は行わなければならない、かように考えるわけです。公取としてはどういうようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/99
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100・坂根哲夫
○坂根政府委員 ただいま繊維局長が答弁されましたように、私どもはこの共同行為をする場合には協議を受けますから、その協議の際に関連産業の利益の関係を十分研究し、調査いたしまして、その利益の擁護に努めたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/100
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101・多賀谷真稔
○多賀谷委員 関連産業の利益については、十分慎重に考慮をすると言われましたが、どういう考慮の方法があるのですか、それを具体的にお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/101
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102・坂根哲夫
○坂根政府委員 それは共同行為の指示の内容が、その年の関連産業の機械の状況その他を勘案しまして、そして調査の結果これを考えていく、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/102
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103・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私も勉強が不十分で、関連産業の規定は、消費者と同じような規定しか見出し得ないのですが、この法案の中に関連産業について、もう少し詳細な規定があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/103
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104・小室恒夫
○小室政府委員 一番大事な消費者と関連事業の、この両方が並んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/104
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105・多賀谷真稔
○多賀谷委員 関連産業については、消費者以上の考慮が法文の中にあるように、先ほど私の勘違いかもしれませんがお聞きしたわけですが、残念ながらこれもまた訓示規定しか見出し得ない。訓示的な規定でも、かなり実効のあるような規定ならいいのですが、ただ「不当に害するおそれがなく、かつ、不当に差別的でないものでなければならない。」なんて、当然なことを、しかも全部行政権の頭の中にゆだねられておる。私はやはりこの実際の運用に当って関連産業に悪影響を及ぼす場合には、具体的にやはり書く必要があるのではなかろうか。こういうように考えているのですが、重工業局の方ではどういうようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/105
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106・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 共同行為に関する問題は、過剰設備の処理の問題だと思います。その処理の方法のいかんによって、関連産業にどういう影響があるかということでございますけれども、そういう点につきまして、不当に影響のないようにというふうな解釈でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/106
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107・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私はこの機械関係の局としては、もう少しこの際積極的な政策が織り込まれることが必要ではないかと思うのです。ただ消極的な、不当に害するおそれがない、それもやってみて、実際やった場合に考えるのだ、こういうことでは困るのでありまして、幸いにして、と言えば語弊があるかもしれませんが、非常な老朽な施設がかなり多いのです。私はもう申し上げるまでもないと思いますが、終戦時に持っておった設備がかなり多いし、その終戦時といいましても、少くとも昭和十六年以前の設備である。これがかなりの数を占めているというような場合には、私は時期としては更新をする非常ないい時期である、かように思うのであります。ですから当然この設備制限によって機械製造業者が困るということはわかるのですから、私はやはり関連産業についても、どういう条文を織り込むかということは別にいたしまして、この際そういうような条文の必要があるのではなかろうか、かように考えるわけです。ですから、解釈論じゃないのですから、今法律を生もうとしている時期ですから、そういうことを入れるのがしかるべきではなかろうか、かように考えるのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/107
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108・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 この法案に関連します関連産業の問題につきましては、先般来いろいろ御説明申し上げております通り、われわれとしましては繊維産業の設備の更新を大いに促進してやっていきたいということと、輸出の振興を通じて機械の輸出を大いに伸ばしたい、こういうことで、できるだけこれによります影響を少くするように努力したい、こう考てるわけでございます。しかしこれをどういうふうにして法律に盛るかという法文の問題になりますと、非常にむずかしい問題でございまして、さような意味で、この法案ができているわけであります。われわれといたしましては繊維局とよく相談しまして、先ほど来お話し申し上げております更新促進打合会におきまして、できるだけ設備の更新をはかっていく、それによって繊維機械産業の影響を少くし、さらに輸出市場を開拓して、これによって輸出を大いに伸ばそう、こういうような考え方で行きたいと考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/108
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109・多賀谷真稔
○多賀谷委員 行政におまかせ願いたいということですけれども、こういう法律を出して審議をする場合に、重大な点はみな行政におまかせ願いたいというなら、初めに話は返るのですが、法律について私たちは考え直さざるを得ないのです。それほど行政がうまくいくならこういう法律そのものが要らない、かような感じを持つのです。価格の引き下げがあなたの方で勧告でできるなら、設備制限の勧告ぐらい、これはむしろそれから比べれば容易な問題、容易な方だけを法律に書いて、非常にむずかしい方を法律に書かれないというのは、どうも納得できない、かように考えておるわけであります。
それでは、私は労働省の関係、さらにまた大蔵省の関係、自治庁の関係の質問を残して、大臣にも再度来ていただいて、もう一回目的からお話を願いたい、かように考えておりますので、本日はこれでやめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/109
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110・鹿野彦吉
○鹿野委員長代理 本日はこの程度にとどめることといたします。
なお明十六日午前十時より理事会を開き、委員会は十時半より開会することにいたします。
これにて散会いたします。
午後零時三十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04919560515/110
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