1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年五月十八日(金曜日)
午前十時四十六分開議
出席委員
委員長 神田 博君
理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君
理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君
理事 長谷川四郎君 理事 中崎 敏君
理事 永井勝次郎君
阿左美廣治君 権名悦三郎君
田中 龍夫君 中村庸一郎君
野田 武夫君 濱野 清吾君
南 好雄君 森山 欽司君
加藤 清二君 多賀谷真稔君
松尾トシ子君 山口丈太郎君
出席政府委員
総理府事務官
(公正取引委員
会事務局経済部
長) 坂根 哲夫君
通商産業政務次
官 川野 芳滿君
通商産業事務官
(大臣官房長) 岩武 照彦君
通商産業事務官
(重工業局長) 鈴木 義雄君
通商産業事務官
(繊維局長) 小室 恒夫君
労働事務官
(労政局長) 中西 實君
委員外の出席者
総理府事務官
(自治庁財政部
財政課長) 柴田 護君
労働事務官
(大臣官房労働
統計調査部長) 堀 秀夫君
労働事務官
(労働基準局監
督課長) 辻 英雄君
労働事務官
(職業安定局失
業対策部長) 渋谷 直蔵君
専 門 員 越田 清七君
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五月十八日
委員山口丈太郎君辞任につき、その補欠として
水谷長三郎君が議長の指名で委員に選任され
た。
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本日の会議に付した案件
連合審査会開会に関する件
繊維工業設備臨時措置法案(内閣提出第八三
号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/0
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001・神田博
○神田委員長 これより会議を開きます。
繊維工業設備臨時措置法案を議題とし審査を進めます。質疑を継続いたします。質疑の通告がありますから順次これを許します。山口丈太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/1
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002・山口丈太郎
○山口(丈)委員 昨日に引き続きまして、若干の質問をいたしたいと存じます。
昨日の大臣の答弁によっても明らかになりましたが、この法律の施行に際しましては、当初からそれに関連して起りますいろいろの問題については、今後審議会においてその生起して参りまする問題を計画的に処理したい、こういうお話であります。しかし実際にすなおに申しますると、この法案を通してもらいたい、法律として施行してもらいたいという要望は、主として繊維工業に多いのでありまして、それとは全く反対の立場をとっておりすのが、これが機械産業であります。この二つの異なった立場をもってこの法律をながめておるのでありますけれども、私はその反対の立場をとる機械産業におきましても、この法律施行後に起りますいろいろの問題について、十分政府が当初から、その生起する問題に具体性を持たせた計画を同時に発表していけば、私はそう機械産業も大きな反対の声を上げることはないのではないか、こういうふうに考えるわけでありますけれども、その計画性というものがはっきりしない、ここに非常に機械産業が不安にかられる。こういう結果、この法案に対して反対の声を上げておるものと思うのでありまして、従ってきのうからの大臣の御答弁のようなことで、いわゆるこの機械産業に対する実際の救済策としての具体策を政府がお示しにならない限り、この紡機産業の集中しております地域におきましては非常に不安をかもすことは明らかだと私は思いますが、これについても大臣は、そういうような現象が起きるとすれば、それに対しては適切なる救済策をとる、こういうお話であります。しかしただ適切な具体策をとると言われましても、それはいわゆる機械メーカーの転換指導あるいはまたプラント輸出の適切なる指導助成等によりまする適切なる措置によって、極力これらの産業のこうむります被害を具体的に防止するという見解が明らかにならなければ、この不安は解消しない。のみならず実際に生起して参りますものは、昨日私が申しましたように、一地域におきましても数千名の労働者がすでに整理を余儀なくせられるというようなきわめて憂慮すべき事態に発展すると思うのでありますが、これらについてさらに政府の具体的な施策をこの際お聞かせ願いたい、かように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/2
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003・小室恒夫
○小室政府委員 機械工業自体の問題は重工業局長から御答弁することになるかと思いますが、私繊維産業を主管している立場で一言申し上げます。
今回の法案によって、紡績設備についてはおおむね新増設を制限することに相なっておりますが、これはたとえば綿紡なら綿紡、スフ紡ならスフ紡、あるいは毛紡なら毛紡につきまして、それぞれの需給関係を毎年よく調べまして、新増設の必要があるもの、あるいは需給上若干余裕を認めた方がよいもの、これは秩序立った新増設を認めていくつもりであります。たとえばスフ紡についてば、スフ綿がだいぶ増産されるような形勢にありますので、その増産の模様などをも見合せて、必要な紡機は認めていかざるを得ないという点もございます。翻って一番問題になっております綿紡でありますが、これにつきましては、従来からすでに過剰な紡機が存在するということもございますし、原綿の割当等において過剰の度がさらに強化されないようにずっと抑えて参りまして、従来とも、この二、三年はあまり新増設の幅を大きくいたしません。それでこの綿紡については、この法律が施行されますと、まず新増設を認めがたいと思いますが、今言ったような経緯でございますから、実は平年と比べますと、それほど大きな需要の減というものがこの法律の施行によって直ちに生ずるとは私考えないのでございます。ただし実はこの法律を施行するということが最近の機会に期待できるために、いわゆる見越しの新増設というものが、主としてスフ紡が一番多いのでございますけれども、評価のしようによって八十万錘とか百万錐というような新増設の発注がきわめて短期の間に集中いたしまして、そのために実は紡織機工業はここ数ケ月異常な繁忙状態である。これが、法律が施行されますと一段落するためにその反動が生ずる。平年と比べてどうというよりも、とりあえず非常に繁忙であったものが一時に発注が落ちるという点に実は問題が特にあるわけであります。そういたしまして、この法律施行後今言ったような谷ができました際、数カ月とかあるいはせいぜい一年くらいの間にこれを何とかしてもらいたいということが機械工業側の御要望でありますが、私どもは今申しましたように綿紡以外の紡機については、需給関係をよく見まして、また今回の新増設が実はまだ必ずしも的確に把握されておりませんが、その数字がどの程度になるかということも推定いたしまして、繊維の需給関係も十分に参酌し、同時にまた機械工業の事情も考慮に入れて、この綿紡以外の部門の新増設の数字ということでもって判断して参りたい。綿紡については新しいものはちょっと認めがたいのでありますが、しかしながら綿紡についても更新の需要は年々相当ございますので、これが今の谷間の時期に集中的に行われるような行政指導をできるだけいたして参りたい。これについては紡績会社の方も協力する気持を十分に持っておるのでありまして、何回も前に政府委員から答弁しておりますように、紡織機の更新の打合会というものは紡績会社の代表者と紡織機会社の代表者とがひざをつき合せて自分たちの方針、計画を示し、これをまたいかに促進していくかということを相談し合う場でありますから、ほんとうに具体的の問題はその場を利用し、また打合会でさらに小委員会とか専門部会とかいうものを設けてやって参りたいと考えておりますが、同時に機械工業側からは公式の場でもってもう少しそういうことを打ち合せたらどうかというお話もあります。この法律には審議会が設けられておりまして、その審議会において需給等の計算をして新増設の制限なり過剰設備の処理などについて基準を明らかにしていきたいということになっておりますので、その審議会においても今の更新の促進ということを具体的に相談していくならば、公式の場における話し合いもできるというような考えでおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/3
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004・山口丈太郎
○山口(丈)委員 この法律は現在の過剰設備をある程度制限をして保護を加えるということがいわば一番大きな目的ではないかと思いますが、今の局長のお答えによりますと、この法律が施行されるものとして、すでに見越し増設を盛んにやっておる、従って機械メーカーは今非常に繁忙であるということでありますが、そういうことがもし行われておるとすれば、この法律を施行する目的がすでに失われつつあるわけで、そういう見越し増設というものがあるということを知りつつ、それを取り締る方法がないといたしましても、それに対して何らか適切な方法を講じて、そういうような施設の増設等はむしろ適正に規制指導を行うということが必要ではないかと思うのでありますが、それは野放しにしておいでになるのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/4
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005・小室恒夫
○小室政府委員 お尋ねの点まことにごもっともでありまして、私どもといたしましても特に過剰の度の激しい綿紡とか、あるいは毛紡等につきましてもそうでありますが、こういうものが非常な新増設をこの機会に見越してやることは好ましくないので、幸いというか、私どもは今原綿なり原毛なりの輸入に際しては外貨割当をいたしておりますので、この新増設の設備に対しては、原綿、原毛の割当をいたさないということをはっきり通知いたしておりまして、この際に今の新増設をやらないようにという警告もいたしております。また金融面においても、そういうものに対してお金を貸さないように、銀行等に対する協力も求めておりますが、しかしながら法律的に申すとその新増設を押える手段がない。これがないので、今度法律でもって押えるようにいたしたい、こういうような次第でございますから、なかなか手が回りかねるのでありますが、しかしながら、見越しにせよ、今新増設の最も行われておりますのはスフ紡でございまして、スフ紡は、最近輸出の好調その他で需要も非常にふえておりまして、スフ綿の増産も——これも行き過ぎになるといけないというので一方では警告いたしておりますが、そういう関係もありまして、ある程度はやむを得ないという感じを私どもは持っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/5
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006・山口丈太郎
○山口(丈)委員 そういうふうにして、この法律がかえって刺激になって、一方においては大企業の増設が促進されつつある。しかもそれは綿紡だけではなく、いわゆる化繊においてもその施設の増設が急激に行われる、こういうようなことになれば、一時的には機械産業も潤うわけでありますし、またその機械の更新等についても、これはその前途には非常に望ましい傾向を持っておるわけでありますが、しかしその施設をしても、今申されるように今度は厳重に資材を規制して渡さない、こういうようなことになりますというと、またそこに、増設した工場の維持のためのいろいろの問題が派生してくる、こういうことになって、実は問題が非常に複雑になり、その解決は非常に困難になってくると思うのであります。もちろんこの増設されるものは近代的の施設が行われると思うのでありますが、もしそういうような施設が過剰であるとすれば、これは旧施設から新しい施設への、いわゆる転用施設としてこれを活用せしめるような方向に指導することが適切ではないか、こういうふうに私は考えますけれども、政府のお考えになっている点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/6
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007・小室恒夫
○小室政府委員 お示しの通りできるだけ新鋭の機械を動かして、もし過剰の設備があるならば、これは古い機械を格納し、あるいは最終の場合には廃棄するというようなことで、過剰設備の処理の対象にすることは当然だと思います。私どもは紡績設備については、とりあえず綿紡だけを過剰設備処理の対象と考えておりますが、また一方において、綿スフの最近の需給関係等もやはり考慮に入れなければなりませんが、過剰設備の処理に当たっては、今お話のような点を十分配慮して処理いたしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/7
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008・山口丈太郎
○山口(丈)委員 国内の処理について私のお尋ねをいたそうとする点は大体尽きたわけでございますが、御承知だと存じますが、私は昨日の質問にも申し上げましたように、南米、特にブラジル方面におきましても、日本との合弁会社として、大規模に紡績工場を建設するというような計画がなされておるようであります。またインドあるいはビルマ等の南方地域におきましても、そういう意欲は非常に盛んのようであります。この際私は、日本のすぐれた工場施設をこれらに輸出をして、積極的にプラント輸出を奨励していく、こういうことでないと、日本の加工品を輸出する、いわゆる製品を輸出する貿易だけにたよっているということでは、現在の日本の主たる貿易圏内におきましては、日本の貿易は伸張しない。従って日本経済を維持するためには、特にこのすぐれた紡績機械の対外輸出、いわゆる紡績工場の対外輸出ということが、いま少し積極的に行われてしかるべきではないか。政府はこういう点について、ただ国内における規制を考えるだけではなく、進んで、私が今申し上げたような措置を講ずることによって、機械メーカーの発展を期せしめるような指導を行うべきではないかと思うのでありますけれども、これに対してどういうような施策をとられつつ断りますか、またとろうとしておられますか、御計画がありますならば、その御計画を一つお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/8
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009・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 紡機の輸出問題のお話と思いますが、それにつきましては、われわれとしまして、先般来申し上げております通り、市場開拓等もできるだけいたします。またアフター・サービス等にも努力いたします。また現在では、輸出につきましては輸出入銀行での金融的な措置もございます。またそのほか、紡績会社あるいはそういった関係の企業進出といった関係もあります。さような場合いわゆる輸出保険というようなものがございまして、それらを総合いたしまして、プラント輸出の促進に大いに努力をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/9
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010・山口丈太郎
○山口(丈)委員 努力はせられておるというようでありますけれども、私のお尋ねいたしますのは、ただばく然と努力をしておるというだけでは、これは私の質問に対する答えにならないわけです。いずれにいたしましても、私は政府が努力をするという限りにおきましては、やはり具体的にその計画を持って進めなければならぬと思います。従って私は、その計画があるかどうか、またどういう計画によってそういう施策を進められておるかをお尋ねしたい、あるいはそれをお示し願いたい、こう言っておるのでありまして、なければない、あるならあると、一つはっきりして、いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/10
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011・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 紡機のプラント輸出につきましては、これは輸出会議に諮りまして目標を立てます。その輸出会議にはエキスポーター、メーカー、これらが集まりまして、大体各市場別に検討いたしまして、たとえばどのように今三十一年度は輸出するかというふうなことで目標を立てるわけであります。大体市場別にも、インドにはどのくらい、あるいは中南米にはどのくらいというふうに予定を立てております。また先ほど来の経済協力には、ビルマの関係とかいろいろ問題もございまして、現在進行しておる点もあるわけであります。その点実際問題として具体的に検討をいたしまして目標を立てて進みたい。これに対しまして先ほど来申し上げましたいろいろの助成措置を講じていきたい、こういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/11
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012・山口丈太郎
○山口(丈)委員 政府の施策について、私は各省の持ち合せておる計画を尋ねましても、抽象的なお答えばかりで、具体的にこうするという目標、計画が示めされません。これでは産業界が議会を通じてどういう方向で運営していくかというめどが実は立たぬと思うのです。国会を通じて政府の持っておられる計画を具体的にこうだということを示されて、初めて私は産業経済界の各層がその目標に向って具体的に今度は自分の計画を推し進めることができると思うのです。けれどもただばく然と審議会にかけてそしてその審議会の答申によってとか、あるいはまた協議会を設けてその協議会の議を経てとか、こういうことではさっぱり政府の指導の方針が明らかでない。こういうことでは私はどうも通産省に限らず、全体的に見て政府の責任政治ということにはならない。今日経済界の混迷いたしておりまする大きな理由の一つはそこに原因がある。常に経済界が不安定でありますから、労使間の問題につきましても、どうしても十分に所期の目的通りの解決ができないで、無用のトラブルを生ずる結果になる、こういうふうに私は考えるわけであります。特に通産省はわが国産業の中枢行政を扱われるのでありますから、従ってこれは日本経済を左右するきわめて重要な施策を行われておるのでありますから、それだけにわが国の経済に適応していく計画的指導性というものが、この国会を通じて国民の前に明らかにせられなければならない、かように考えるわけであります。ただその一つの部門であるこの法案の審議に当って、ただ繊維産業と機械産業との計画性についてのみをお尋ねいたしましても、今のような抽象的なお答えをもってしては、これはさっぱり業界の目標が立てられないと私は思うのですが、次官どうでしょうか、実際にいま少し業界に目標を与え得るような指針を、この際明らかにせられることが私は妥当ではないかと思うのでありますけれども、全然そういうお持ち合せはないのでしょうか、お伺いをいたします。
〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/12
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013・川野芳滿
○川野政府委員 機械の外国輸出の問題につきましては、国外から考えた面と国内から考えた面との二つの面があろうかと考えております。国内から見た面におきましては、国内機械メーカーの御奮起を願う。これには政府といたしましては確実なる市場を与える。こういうことであろうかと考えております。そこで国内の業界から見ますれば、外国等に輸出した場合に損害をこうむった、こんなときにおきましてはある程度の損害の補償を与える、こういう点も実は必要であろう、こういうふうなことから、先般御審議を願いました輸出保険制度の拡大、こういうことを実はねらったわけであります。さらに外国の面から見ますると、市場の拡大でございます。これにはどういう面の市場を拡大する余地があるか、こういう点を検討せねばなりませんので、従いまして今外国にも市場調査の人を派遣いたしまして、そうしてそういう面からどういう方面にはどういう機械の輸出が可能であるか、こんな事柄を現在調査させておるような次第であります。なお日本の機械は優秀である、こういうこともまた機械を買ってくれたところに示す必要がありますので、従いまして先ほど来局長が申されましたようにアフター・サービスということに重点をおきまして、日本の機械が優秀であるということを海外に実際に知らす必要がある、こんなことからそういう人を派遣するアフター・サービスの費用、あるいは市場調査の費用といたしまして、品ばかりでありません、二千万円の現実の予算を組みまして、そうしてその面からそういう方法をとりたいということで実は予算も計上いたしたような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/13
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014・山口丈太郎
○山口(丈)委員 今の御答弁によりましても、私はほんとうに過剰に陥らないための方策として、政府の言い分としては、工場が健全でなければ機械産業も健全にこれを運営することができない。だからまず加工産業を堅実にする。そしてその加工産業に提供する機械産業を維持するのだ、日本の機械産業の若干の犠牲はやむを得ない、こういうことで、実はあまりこの機械産業の犠牲につきましては、確たる計画性のある救済策はお持ち合せではないのではないか。従って、そういういわば無準備のままにこういう法律案を出して、その日しのぎの糊塗策をとられるということはきわめて遺憾に思うわけであります。もう少し末端に至るまでの計画性を先に発表をしてそしてその計画性に合致した法律案を提出される、こういうふうに望みたいのであります。
次に私は労働省にお伺いをいたしますが、今日アメリカにおきましても、あるいは東南アジア方面におきましても、せっかく伸びつつありましたわが国の繊維製品の輸出が、またまたアメリカの輸入制限あるいは各地におきまして制限を受けようとするような、きわめて憂慮すべき事態にあります。これは新聞紙上に報ずるところによりますと、日本の労働者の賃金水準というものは、いまだ先進各国の賃金水準に達していない、きわめて低水準において、生産コストを低め、しかも各国の水準よりも低い価格水準で売り出す、そしてまたまたソーシャル・ダンピングの傾向を帯びつつある、こういうような誤解を与えておるのではないかと思うのであります。しかるがゆえに、やはり世界労働機構の条約として締結をいたしましたものを批准する、そしてそのことが、日本の労働者の賃金水準というものが、決して世界の労働者の賃金水準と遜色のない努力を払いつつあるのだということを、国際的に信用せしめるものとして私は主張をしておりましたが、その批准は戦後終りまして、そのような措置はとられたけれども、今日実際に日本の貿易品、特に繊維製品が各所においてそういうような輸入制限の傾向を帯びつつあることは、憂うべきことであると思うのであります。これについて、労働省は少くとも、もしそのようなことが誤解に基くものであるとすれば、その誤解を解く努力を当然行うべきであると思うのであります。また通産省としては、それは誤解ではなく、事実であるといたしまするならば、その産業に対しては、やはり人の間隙を縫って不当に利益を得るというような手短かな考え方を排して、恒久的に国際的に信用を得るような行政指導を当然行なって、わが国産業の発展を期するような措置を講ずる必要があるのではないか。この際私は労働省及び通産省に対しましてこれらの点についてどういう処置をとられつつあるかについてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/14
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015・堀秀夫
○堀説明員 お答えいします。ただいまお話がありましたごとく、日本の労働者の賃金水準と各国の労働者の賃金水準を比較いたしますときに、単純に為替換算だけによりまして比較いたしまするときに、アメリカ、イギリスその他に比べて日本の労働者の賃金水準が相当低いということは事実でございます。ただ実際的に比較いたしまする場合には、やはり単純な為替換算だけでなしに、その貨幣の購買力、特に労働者の場合においては食糧の購買力という点を加味して比較しなければならないと思うのでありましてその食糧、物価等によりまして、名目賃金水準を割りました、いわゆる食糧賃金の比較によって見ますれば、その幅はだいぶ少くなるわけでございます。そういう点の誤解が一つあると思うのであります。
それからもう一つは、たとえば紡績関係が非常に低賃金であって、ソーシャル・ダンピングを行なっておる、こういう非難もよく聞くのでありますが、ソーシャル・ダンピングかどうかという問題は、御承知のようにやはりその国々の一般的な生活水準、それから賃金水準、それとその産業の賃金水準とを比べてみて、一般的な賃金水準に比べて著しく低位にあるというような場合に、その非難が成り立つと思うであります。たとえば紡績等について見ますれば、一般の製造業の賃金水準に比べて必ずしも低位にあるとは考えられないわけでございまして、たとえば労働省の統計によりましても、昨年平均で見まして、紡織業の女工さんの賃金は、一般製造業の女工さんの賃金よりも六%程度上回っておる、こういうことになっております。要するに国民所得の問題、それから一般的な産業の賃金との関連においてこの問題は議論しなければならないと思うのであります。そのような意味におきまして、いろいろな誤解も生じておるようでありますが、従来におきましても、日本の在外公館を通じあるいはILOのいろいろな会合等を通じまして、その誤解を解くべく努力をして参ったのであります。ただいま先生御指摘のように、この問題について誤解を解くことは、わが国の輸出振興上きわめて重要な問題と思いますので、今後とも御趣旨に沿いまして各国の誤解を解くようにさらに努力を続けたいと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/15
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016・小室恒夫
○小室政府委員 ただいま御指摘の通り、米国等において日本品の輸入制限を推進しております勢力の中で、日本の繊維労働者の低賃金という問題をとらえておるのが相当あるわけであります。輸入制限法案の中にも、そういう見地から賃金水準の問題を特に条項に織り込んでおる法律案もあるのであります。今の日本の繊維労働者の賃金水準については、労働省のお答えの通り私どもも考えるのでありますが、他方においてわが国の繊維品の輸出価格というものは、わが国の輸出部面における過当競争あるいは国内の需給の関係等からいたしまして、各国の繊維品の価格水準に比べて異常に低い場合が相当ございます。例のワンダラー・ブラウスの場合も、向うのブラウスの二ドルに相当するものがわが国のものは一ドルで売られておるというように、非常な差がある例もあります。いずれにしても、わが国の繊維品の輸出の場合の価格がどうも低過ぎる。もう少し秩序立った輸出を行えば、また国内における需給の根本的な調整ができるならば、もう少し輸出値段を上げていくことができるし、また異常に下ることを防止することができるというふうに私どもは考えておりまして、輸出の分野においては輸出入取引法の運用あるいはチェック・プライスを設けるとかあるいは最低価格の協定もいたすということもいたしておりますが、やはり問題は国内における輸出品の生産の、あるいは需給の調節をはかることが大事である。そういう見地から国内において需給が非常に不均衡になりました場合には、紡績の操短勧告、あるいは織機における操短というようなこともある時期に実施して参りましたが、その根本を直す意味で私どもは設備の新増設の秩序ある実施をはかりたい、過剰なものがさらに過剰になることにならぬようにいたしたい、こういう趣旨で、この法律の根本のねらいも今の繊維品の輸出価格の維持安定というところにあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/16
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017・山口丈太郎
○山口(丈)委員 今両省の方から御答弁がありましたが、さらに労働省にお尋ねいたします。今の御答弁によりますと、紡績産業の労働者の賃金は、一般製造産業の賃金水準に比べてたしか二%高いというようなお答えを聞いたと思います。しかしそれは月収総額において多いので、こういうことが必ずしも賃金が高いということを意味しないと思います。古いことでありますけれども、日本移民がアメリカでボイコットされたのは、これはたしか八時間労働制をアメリカの労働者がとって、この基準を守ろうとしたときに、日本の労働者は産業に忠実である、使用者に忠実であるということで、その八時間労働制を破って、基準外によって高賃金を得ようとしたところに移民排斥の大きな理由があったと伝えられるのであります。また紡績品のソーシャル・ダンピングというそしりを受けましたのも同じでありまして、日本は大体世界労働基準を守っておらぬ。言いかえますと、時間外によって労働者の収入をふやしておるのだ、そして一人当りの生産を上げて、これによって製品の価格を下げておるのだ。まさに私は今日もその通りだと思うのです。はなはだしきに至りましては、今もなお一昨年来のある工場の争議のごとく人権闘争と言われるような深刻な争議が発生するというようなことも行われておるのが実情であります。おそらく紡績に限らず、日本の各事業場がこの国際労働条約によって定められた、あるいは労働基準法によって定められた八時間労働というこの基準を厳密に守っておるところは一カ所もない、こう申しても差しつかえはないと私は思います。いかほど日本は国際労働水準を守って、そして製品を適正価格で売り出しておるのだと言っても世界は信用しない。しかしながら日本の経済実情からいたしまして、私はそれを一気に実現しようというのではございません。それは私もよく了解をいたします。けれどもだからといって、今日あまりにもそういう目先の利益のために将来を失うような行政指導はこれを逐次改めていかなければ、将来日本の産業はゆゆしい結果を招来していくと私は思いますが、これらについては労働省はどういう見解をとっておられるか、一つお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/17
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018・辻英雄
○辻説明員 ただいま御指摘がございましたように、労働基準法におきましても、諸外国におきますと同様八時間制を建前といたしておりまして、八時間の中において最も効率的な業務運営が行われますことが最も望ましいわけでございます。しかしながらただいまも山口委員からお話のございましたように、諸外国におきましてもある程度の時間の弾力性が定められておるのでありまして、わが国におきましても基準法におきまして一定の女子、年少者等に対する特別の制限あるいは一般成年男子における労使協定による時間外労働の制度等のありますことは御承知の通りでございます。実際の労働時間がどの程度でありますかにつきましては、ただいま持ち合せている資料について申し上げますと、本年一月の綿スフ紡績業の三十人以上の事業場におきます女子の労働時間は、一日当り八・〇四時間という結果になっております。従いまして問題のございますのは、むしろ率直に申しましてそれ以下の中小のところにおきましては、あるいはこれをこした労働時間の延長が合法に、あるいはときとして違法に行われておる場合もあろうかと思いますけれども、いわゆる比較的多数の労働者を雇用いたしております近代的な工場におきまして女子の違法な労働時間が大規模に行われておるというようには私どもの方は毛頭考えておらないのでございまして、問題はむしろ小規模の、極端に申しまして零細な事業場における違法な時間外労働というのがある程度存在しておりますことは御指摘の通りでございまして、これに対しましては、私ども全監督官を動員いたしまして年間で約三十万程度の事業場の監督をいたす等によりまして、できる限り努力をいたしておる所存でございまして今後ともそのような努力をやって参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/18
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019・山口丈太郎
○山口(丈)委員 私も本院に参るまでは労働基準関係につきましても協力をして参りましたので、実情につきましてはよく承知をいたしております。そこで特にこの繊維産業のうちの中小企業におきましては、家内工業が多い関係もありまして、その工場の設備及びその労働の状況等はきわめて劣悪な状況にあります。きのうの大臣の答弁によりますと、問題はやはり大きな紡績工場から織布工場等のメーカーへ合理的にその資材を回すということが必要だ、こういうようなお話もございました。しかし私は、それを受け入れるに際しても、これらの弱小企業は逐次その地域別に共同して行うような組織を作らしめるように指導して、そこへ材料も流し、あるいは労働に関する諸規定も、そのような規模の中で規制をしていく、こういうことにいたしますならば、今申しましたように日本の製品に対して外国からいろいろの誤解を招くようなことも生じないことになりますし、のみならず、実質的に合理的に日本の労働者の賃金を策定し、これを増大することができる、私はこういうことを考えるのでありまして、従ってこういう点については特に労働省においては、今後の労働指導を適正化していただくようにお願いをいたしたい。
また臨時工と本工の問題でございますけれども、これにつきましても私は、やはり身分によってその待遇は明らかに差別せられておるのでありますから、従ってこれは、厳密に申せば法規に違反しておるものと思います。しかしそれも日本の経済実情から見ました場合には、ある程度これを容認するといたしましても、行き過ぎて長期にわたって臨時工を放置して、そうして同一工場に働きながらその身分の差別を余儀なくせられるようなことは、許しておくことのできないことであると思いますから、従ってこの臨時工に対します適切なる措置を講ずるように御指導願いたいと思います。
第三に、私は通産省にお願いをいたしたい点は、こういう工業施設の臨時措置法が提出せられたのでありますけれども、私は昨日来御質問申し上げております通り、この法に限らずすべてでありますけれども、特に影響を及ぼすところ非常に大なるものがあるこの法律案を提出になったのでありますから、従ってそれは本来ならば、この法案を提出する前に、関係いたします諸施策についての具体的な計画を立てて、その計画に基いて法律を出す、こういうことが建前でなければならぬと私は思うのでありますけれども、不幸にしてそれを欠いておられるのであります。しかも御質問を申し上げましても、その内容は具体的には何らお持ち合せがないといっても差しつかえない事情は明らかであります。私はこういうことで、一方においては中小紡績に犠牲をしいる、いわんや機械産業に対しては非常に大きな不安を与えるような施策をあえてされるということは、一考をわずらわしたい。そして、もしこれが成立施行せられるというのでありますならば、私はこの機械産業の保護育成、維持育成のために一つ格段の努力を払われて、今まで私どもの申し述べました諸点を十分に取り入れられて、御勘案あらんことを希望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/19
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020・小平久雄
○小平(久)委員長代理 この際、連合審査会開会の件についてお諮りいたします。ただいま本委員会において審査中の繊維工業設備臨時措置法案について本日社会労働委員会より連合審査会開会の申し出がありましたが、これを受諾するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/20
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021・小平久雄
○小平(久)委員長代理 御異議なしと認めさよう決定いたします。
なお、本日は商工委員会、大蔵委員会連合審査会を午後一時より開会する旨公報をもって御通知いたしておきましたが、ただいま決定いたしました社会労働委員会の連合審査会も、先方の委員長と協議の上、これに合せて行うことにいたしたいと存じますので、御了承願います。
質疑を継続いたします。多賀谷真稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/21
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022・多賀谷真稔
○多賀谷委員 先日の質問に続いて政府に質問いたしたいと思いますが、まずこの法案の第二条に、第一項も第二項もそうなっておりますが、ただし書きがありまして、「特殊の構造を有するため糸の製造の能率が著しく高い精紡機であって、通商産業省令で定めるものについては、この限りでない。」、同じく第二項にもそういう規定があるのです。要するに、性能の高い機械の場合はその限りでない、法律の適用外になっておる。これは一体どういう理由でそういうようにお取り計らいになりましたか、お尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/22
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023・小室恒夫
○小室政府委員 私どもは繊維産業の合理化、特にまた機械設備が新鋭化するということは、海外に対する競争力の増加する点もありまするし、最も望ましいと考えております。特に新鋭の度の著しいというか、能率の高い機械については、これを据え付けることを奨励し、またこれを製造することを奨励する趣旨から、制限の外に置いたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/23
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024・多賀谷真稔
○多賀谷委員 先般以来私たちは、設備の制限だけをしても、生産量の制限をしなければ意味がないではないか、こういうことを盛んに言ってきたわけであります。私は何も新しい、能率の高いものを入れるなという意味ではありません。しかし法律の外に置く手はないと思うので、やはり法律の中に入れて、そういう設備を更新する場合にはいろいろな処置を講ずればいいのであって法律の外に置いて登録もする必要がない、こういうことはどうも解せないわけです。登録は一応して、そういう設備については特別の考慮を払うというなら別ですが、法律の外に置くということになりますと、結局生産量はますます増大をする。そうするとこの法律そのものが意味をなさなくなる、あるいは法律の外に置いた新鋭の機械によってさらに法律内部の問題を逆に調整しなければならない、こういう問題も起るかと思うのです。一体なぜ外に置かれておるか。法律がこれでは死んでしまうじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/24
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025・小室恒夫
○小室政府委員 新鋭の程度、高能率の程度によってはおっしゃるようなことが起り得るわけでありますが、私どもが通産省令で指定いたそうと考えておりますものは、通常の能率の高い機械というのでなくて、よほど特殊の例外的なものだけであって、そのためにこの設備制限の趣旨が死んでしまうというようなことはないと確信いたしております。もちろんこういうものも登録の対象にしたらいいじゃないかというお尋ねは、まことにごもっともでございますが、実はこれは機械工業方面からの要望もあってこういう点を考えたような次第でありまして、考え方としてはそれは両方とも成り立つかとは思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/25
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026・多賀谷真稔
○多賀谷委員 都合のいいときだけは機械工業の要望とか、繊維工業の要望とか、労働組合という名前も引き出されますけれども、私は先般から言っておるように、この法律がきわめて一貫していない。ことに生産量を押えるというのがやはり最終の目的でなくちゃならぬと思うのです。それがために、生産量を抑えるについてはいろいろな困難な点があるから、一応設備を規制しよう、そうすると、能率のいいものを外に出すというのは、どうも法律が初めから何を意図しているのか私は理解に苦しむ。過当競争という場合には、やはり生産の非常にいい機械からできておりますところの製品もその中に入ってくるのですから、非常に高能率のものが外に出ておる。それがどんどん回転をするというような状態がもし来るとするならば、それによって今度は今までの登録を漸次制限をしていかなきゃならぬ、こういうことにもなっておる。しかもあなたの方は、この登録の効力については、相続権とか合併という包括的な承継の場合は当然ですけれども、売り渡しにしても、あるいは借りる場合にしても、全部効力がくっついている。そういう機械にその効力を順次継承させていっておるというような状態においてその非常ないい設備を全然法律のワクの外に置く、あるいは登録はさせるけれども、新規の製造その他買い入れについては、あるいは届出でいいとかなんとかということならば、話も少しわかるのですけれども、全然法律の外に置いておる。行政機関が介入することができない。あなたの方は省令でやると言われるけれども、省令でやるくらいならば、初めから法律は要らぬということを言っている。どうも私ははっきりしない。なぜ高能率のものを外に置かれるか。これは合理化カルテルで、合理化していくという方針ならば、これはまた別なんです。ですから不況カルテルですか、合理化カルテルですかと言うと、両方でもない。しかもこれは輸出のためだ。それだけですかと言うと、いや、そうではない。そうして今おっしゃるように、過当競争の中に当然入っていく大きなフアクターである新鋭の高能率の機械による生産の分については、全然法律の外に置く、こういうことでは法律が全然死んでしまうじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/26
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027・小室恒夫
○小室政府委員 先ほど申しましたように、特別の例外的な高能率機械というものだけを通産省令でしぼるのでありますが、もちろんこれがいいものだということになれば、だんだん普及して参りましょう。普及して参ります場合には、これは通産省令からはずしていくという運用をいたしていく。従って行政の弾力的な運用は実際には保てる、こういうふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/27
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028・多賀谷真稔
○多賀谷委員 はずしていく、そうして今度はこの法律の中に入れる、こういうことになりますと、そこで私は非常たトラブルが起ると思う。なぜ起るかといえば、従来のよりも、はずすものについては少くとも高能率です。ですから従来のワクがまた制限をされる、こういうことにならざるを得ない。それを余分に認めれば別ですが、余分に認めれば、法律が死んでしまいますから、それも実際はお困りでしょう。どうもあなたの方ではいろいろな政治勢力の妥協でできたのかもしれませんが、法律として全く一貫していない、何を今おやりになっておるのか、どう考えても私ははっきりわからないのです。どうですか政務次官、御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/28
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029・川野芳滿
○川野政府委員 ただいま局長から御答弁申し上げましたように、この新鋭機械が普及いたしたというような場合におきましては、これをはずす、こういうわけでありますから、従いまして、特殊の機械だけをはずす、こういうことでございますから、そう大した打撃はなかろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/29
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030・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実際問題としてはあるいは起き得ない、こういうように考えられるかもしれませんが、しかし一万錘の機械を一人で運転できるような機械というのは、今ないこともない。そういう状態になると、これはもう特殊な構造を持っておりますから、はずされる。しかしその生産量は非常なものだということになりますと、どうなりますか。結局それが普及しておるから、今度は法律のワク内に入れようということになれば、その一万錘分だけが今度は法律によって規制を受ける。そうすると全く混乱をするんじゃありませんか。わざわざ混乱させるような法律を作る必要はない。初めからあなたの方が今法律を作ろうとして提案されておるので、そういうことが予想できるのですから、何もわざわざこれだけを——あるいはこれについての取扱いを緩和するというのじゃなくて全然法律の外に置くのですから、私は全く意味をなさない、かように考える。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/30
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031・小室恒夫
○小室政府委員 法律の中に置いて届出願うということも確かに一つの方法だと思いますが、その場合でも、あとで許可制の方に組み入れれば、そういう同じような問題が起りますし、私どもは先ほど来申しましたように、紡織機の技術が進んで非常に新しい優秀な機械ができる、これはほかでまねするものもないし、最初は試験的に使ってみる、そういうような時期にこの省令の適用をやっていこう、こういうつもりでいるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/31
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032・多賀谷真稔
○多賀谷委員 どうも私は理解に苦しむ。非常に性能のいい機械を法律の外に置いて生産制限をされるというようなことは、全然意味をなさない。そういう工合なら初めから法律をお作りにならない方がいい。最近は新機械を更新するというのが日本経済の大きなテーマですけれども、日進月歩で進んでいる、こういうような状態で新鋭の機械は別に置くということは、この法律が過当競争を抑え、そうして生産量の抑制をするという法律の建前をとるならば、これこそ私はこれによって法律が死んでしまう、かように考えるわけです。いや、それは行政におまかせ下さい、こう言われるけれども、あなたの方は行政でできないから法律を作ろう、こうおっしゃるのだ。私はどうもこの点は解せない。しかも最近聞くところによると、この法律によって制限を受ける機械以外の機械を作って実際はその運用をしようということが本日の新聞にも載っておりましたが、そういう動きさえあり、そうして今まで業界の方は自主的にいろいろな行動をやっていない業界ですから、この点同じ法律によって規制をされるならば、これはこんな大きな脱法行為ができるような抜け穴を持っている法律を御提出なさるのはおかしいじゃないか、かように考えているわけであります。これについて同じことですからあまり質問いたしませんが、政務次官からもう一度御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/32
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033・小室恒夫
○小室政府委員 はなはだ勝手ですが代理で……。一、二の例をあげますといいのですが、高周波でもって乾燥する機械であるとか、また紡機の方でも二、三私ども考えているものがございますけれども、これは一々こまかいことを申し上げるのも、実は私も細部について説明できませんし、お聞きになる方も御迷惑かと思いますから、ここでは御答弁申し上げませんが、これはよほど特殊なものでございます。それから省令で規定する際に、こういうものを設置した場合は届けてもらうように省令の方に書くつもりでおります。どこでどういう状態でやっているか全然わからぬというような、野放しにはいたしておりません。ですから法律自体で対象とはいたしませんけれども、行政的に登録したと同じようにどういう状態になっているか、私どもは把握していくつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/33
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034・多賀谷真稔
○多賀谷委員 高周波のような特殊なものだというお話ですけれども、どうも全然初めから法律の外に置くということは私は解せない。それが生産と関係のないものなら別ですけれども、法律の外に、しかも能率のいいということを銘打っているものを適用の除外というような、法律として初めから大きな脱法的な行為を予定をしてわれわれがこれをいろいろ審議するならば、どうも賛成するわけにいかない、かように考える。私は悪く考えれば、十大紡なんかは、その能率のいい、しかも法律の外に置けるような機械を購入する能力があるから、これを書かれたのだ——私は考えませんが、こう考えるような人もいるのです。ですから私は初めから法律の体裁としてどうも解せない、これだけを申しておきます。
時間の関係がありますから、次に質問をいたしますが、この前私が質問いたしましたときは、私不勉強でありまして、不況カルテルとか合理化カルテルというのは、昭和二十二年に独禁法ができました当時からあった規定だと思っておったわけです。その後いろいろ情勢が違っておるから、必ずしもこれを適用するのが妥当でない点もあるかもしれないからこういう法律ができたと自分では理解しておったのですが、いろいろ調べてみますと、これは昭和二十八年の九月に実施になった規定である。しかもその前に、二十七年にあなたの方において操短勧告をされておる。今後は行政措置としてはそういうことはいたしませんからこの法律を認めてくれといってお出しになり、公取委員長はこれは独占禁止法の最後の線である、こういうことをおっしゃっておる。今後は一切行政勧告による操短はやらないか、いや、やりませんから、この法律をお通し下さい、こういうことを言っておるのですから、その経緯から見ると当然当時の法律——しかも当時かなり不況の状態である、その不況の状態にこれだけの条件がかけられて、今後は大臣が行政勧告による勧告はしない、この法律でいくのだ、こういうことを、言っておる。こういうことになりますとこれは私は重大な決意を持たざるを得ない。なるほど政府は変っておるかもしれませんが、しかしながら同じような政党の結合によってできておる政府である。ですから前の大臣の答弁は全然知りません、今度新たにいくのだとは言い得ない政治的な責任があると思います。ですから不況であり、生産がこういうふうに過剰になる、あるいは乱立する、こういうことが当時予想されて独占禁止法の改正ができたということになりますと、やはり独占禁止法を改正するときの趣旨に従ってやってもらわなければならぬ。もうこれが最後の線であると公取委員長は独占禁止法改正の際に言っておる、そうすると今度できました法律によって全く独占禁止法は破壊されてしまう、そういうことは許されない。しかもそのときの論議の中心になっておるものは繊維産業である。繊維産業が議論の中心になっておる、そうして繊維産業のために不況カルテルを入れた。その不況カルテルを全然お使いにならないで、しかもその後操短をし、今度あれをそれよりも軽い線の条件の場合でも共同行為ができるような法案を提出されるということは、私はこれに対して政治的責任を追及したい。この法案は独占禁止法一部改正の際に言明した政府の態度と全然違っておる。一体政府はどういうふうにお考えであるか、政務次官から御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/34
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035・川野芳滿
○川野政府委員 まことに恐縮でありまするが、実は勉強が足りませんので、局長から答弁をいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/35
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036・小室恒夫
○小室政府委員 独禁法の改正は昭和二十八年に、その際に行政勧告についてはいろいろ問題のあったことも承知しておりますが、昨年実施いたしました操短勧告、これは不況カルテルということでなくして、輸出に対する正常化あるいは関連織機部門の操短に対する補完的役割その他を考慮いたしまして、全然別個の立場から操短を勧告いたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/36
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037・中崎敏
○中崎委員 今の問題は公取委員長の責任にも関する重要な問題でもあるので、公取委員長からこの問題に対する回答を要求しておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/37
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038・多賀谷真稔
○多賀谷委員 あとの機会に公取委員長からの言明を願いたいと思いますが、小室さんはそういう会議には当時企業同次長として出ておられますから事情に詳しいだろうと思うのであります。二十七年の操短勧告をめぐって独占禁止法の一部改正が出された。あるいはそれだけではないかもしれませんが、それも大きな要素である。そうしてそのときにはやはり繊維産業の操短についていろいろ論議が経済安定委員会でなされておる。その速記録を見ますると、今申したようなことが書いてある。そうして公取委員長はこれが最後の線だと言い、今後は行政権による勧告はしないと言っておる。ですからいかに抗弁しようとしても、同じような状態におかれて、そうして同じような条件においてやはり勧告操短が行われておることははなはだけしからぬと思う。一つ法案は通して下さい、この法律によって今後はやりますからと言っておきながら、法律をたな上げして行政勧告しておる、もちろん法律による条件が適用してないからである。そうして独占禁止法の精神を全くじゅうりんしておる、いや違反の行為を行なっておる。それは個々の会社に直接勧告するのであるから、共同行為でないという、これは形式論であります。一般の状態においてそういうことが行われれば、これがもし行政権によるものでなければ当然公取としては権限を発動せざるを得ないような状態である。それを政府がやるからということで、しかも政府が個々の会社にやるという形式論で逃げるとはけしからぬ。しかも今度の法律は明らかに独占禁止法と競合するのですよ。ですからこの法律が出れば独占禁止法はその範囲において適用を除外される、あるいは適用を停止するということが当然出ますよ。しかしながら独占禁止法がそういう場合を予想しての法律を作る、それも二十二年に作ったという法律ならともかくとして二十八年のころ当然不況が予想されて、その後一部改正になっておる。しかもそのときには繊維は操短が行われた後である。不況であるこういう状態の中において、そういう法律が出されている。そうして政府は最後の線であるということを言明しておるのに、こういう法律を出されるのはけしからぬと思いますが、これは大臣から御答弁を願いたいと思います。一体独占禁止法がそれほどいやなら、あなたの力で独禁法の廃止の法律案を出されたらよい。これは独占禁止法の精神に反した法案なのですよ。今まで抗弁をされ、あるいは答弁をされておりますけれども、輸出と言い、何と言っても、結局過当競争と不況のカルテル、こういう状態なのですから——不況カルテルの条件だって過当競争ですよ。ですから私は全く議会を侮辱した法案がこう次から次に出されては、はなはだけしからぬと思います。一つ責任ある御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/38
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039・小室恒夫
○小室政府委員 過剰設備処理の共同行為については独禁法に抵触するわけでありますから、法律の明文でもってこれを適用除外したわけであります。操短勧告につきましては確かに昭和二十八年の独禁法改正の際に非常に議論のあったところでありまして、その点もしんしゃくし、また不況カルテルの規定もよく検討いたしました上で、これはやむを得ざる処置としてあえて操短勧告をいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/39
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040・多賀谷真稔
○多賀谷委員 この日本で非常に生産の多いあるいは非常に過剰であるというのは、これは普通の経済状態では、繊維だけの問題ではないのでございます。とにかく人間が多い、ですからあらゆる産業の中にそういうことが起ってくるというのは、残念ながらこれは日本産業の悲劇です。それを繊維産業だけをすくすくとその保護の中に入れようという場合には、対消費者との関係あるいは関連産業との関係が十分考慮されなければならぬ。それを踏みにじって繊維産業だけを何とかして温存したいという考え方は、全く独禁法の精神に違反するものだと私は思うのです。ですから、われわれはその意味においてはどうも賛成できないし、先ほどからの答弁でもはっきりしない。全く技術的な答弁をなさっておるけれども、私の質問の答えには全然なっていない。ただ、いろいろな事情を勘案してということだけが私に対する答弁になっておる。ですから、そのいろいろの事情というのはどういう事情であるのか、なぜ独禁法を踏みにじってまで、これを無視してまでそういう法律を作らざるを得ないのか。独禁法を——初めからこの需給関係のアンバランスの場合を考慮してやるのですから、それが需給のアンバランスの場合を考慮してない、全然独禁法で予想してない状態が起ったならばともかくですが、独禁法で初めから予想しておる場合が起ったのに、独禁法を適用しないで、狂かの法律によって緩和するということは、法律であるならば何でもできるかもしれませんけれども、これは今までの政府の答弁と非常に矛盾をする、私はかように考えるわけであります。再度御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/40
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041・小室恒夫
○小室政府委員 この法律の第一条の目的に示しておりますように、輸出の正常な発展をはかるということがこの法律の大眼目でありまして、わが国の輸出の四割弱をささえておる繊維産業において、特に過当競争の弊が著しく、またその影響が彼らにおいてきわめて深刻であるという情勢からいたしまして、特に繊維産業から先に、設備の新増設の制限なり、あるいはまた過剰設備の処理なりの道を開きたい、こういうふうに考えているわけでありまして、繊維産業を保護するというようなお話もございましたが、輸出産業の第一位であり、また輸出面で最も問題のある産業をまず規制する、こういう考え方でございますので、不況カルテルの方の角度からこの法律を見ていただくと、これはちょっとむずかしいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/41
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042・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そう説明をしなければ説明がつかないからそう説明をされておる。需給のバランスが破れた、何とかしてこれを保護したい、しかしながら今の独禁法ではうまくいかない、だから輸出の目的ということを書かれておる。そこで私たちが質問しますと、局長はあくまでも輸出の目的だと言われる。政務次官は第一条の通りだと言われるけれども、大臣はそうは思わぬと言われる。ですから、いろいろ審議をしておりますと、全くこの法案のどこを見て言っておるのかわからない。答弁に非常な食い違いがある。それでは生産量を押えて不当な競争を防ぐのかといいますと、いや、高能率のものは法律のワク外だとおっしゃる。ですから、全く矛盾だらけじゃないですか。それとも原案は非常にすっきりしておったのですが、あらゆる方面から圧力が加わって満身創痍になった姿がこの法案であるのか、まずこれをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/42
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043・小室恒夫
○小室政府委員 関係する各方面の意見は、できるだけ広く参酌して最後の法案を作りました。
それから先ほど来申しておる点で、これは現実のウェートからいうと、きわめて小さなものだけを、つまり数量的にいって設備のきわめて小さな段階にとどまるものだけを省令で規定するという趣旨でありますから、理屈の上で申せば確かに大きな抜け穴のような感じがいたしますけれども、現実面ではそういう運用でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/43
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044・多賀谷真稔
○多賀谷委員 法律審議としては非常に重要な部面でありますから、私は、この点につきましては大臣が見えてから再度質問したいと思うのです。独禁法を一部改正した場合と状態が非常に変っているとはわれわれは考えられないけれども、こういう法律を出されておる。さらに、そのときの政府の言明、こういうものと関連して大臣に質問をすることを申しておきまして、この質問は続いていたしません。
次に、私は重工業局長にお尋ねいたします。機械産業の面についてでありまするが、先ほど繊維局長は、今非常にかけ込み注文があって、そのかけ込み注文がなくなると断層ができる、普通の状態から見るとそう大きな断層ではないけれども、今かけ込み注文があるから大きな断層になるのだというお話をしました。そういうことが事実であるならば大して問題にならないのですけれども、私にはどうもそういうようには考えられないのであります。と申しますのは、あなたの方から出ている資料を見ますると、絹、人絹織機につきましてのいろいろの今までの統計が出ております。さらに生産設備合理化実施計画として第一回の中央打合会が行われ、そうして、昭和三十年から昭和三十五年までの五年間の設備合理化実施計画というものが決定されております。この資料を見ますると、昭和三十年から三十五年までに絹人絹織機を三万六千台更新する、綿スフ織機は四万一千九百台更新するということになっております。同じくあなたの方で出された資料によりますと、そのうち昭和三十年の内需が一万五千四百二十六台、これは絹人絹織機であります。綿スフ織機は昭和三十年の内需が二万一千八百二十一台。こういうことになりますと、結局昭和三十一年から昭和三十五年までに、二万五百七十四台が絹人絹、綿スフが三万七十九台ということになると思う。これはあなたの方の資料ですよ。そうしますと結局、この一年間で大体一万台ぐらいから一万五千台ぐらい作っておりました絹人絹織機を、五年間において二万台しか作れないということになり、生産は全くがた落ちになる、こういうふうに考えざるを得ないのです。年間四分の一ぐらいにしかならない。同じく綿スフ織機にいたしましてもこういうふうな状態か出るのですが、仕事は結局二年分ぐらいしかない、それを五年間にやらなければならない、こういうことになると考えられるわけですが、これでは先ほどの繊維局長の答弁とは全然食い違うと思う。今後の生産の関係は一体どういうようになっておるかお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/44
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045・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 ただいま、過去の綿スフ織機及び絹人絹織機の更新の問題について御質問がございましたが、大体資料にお配りしてあります通り、絹人絹織機につきましては、昨年の更新が二万五千四百二十六台であります。それから綿スフ織機におきましては、一万一千八百二十一台であります。それで、五カ年計画と申しますか、三十年から三十五年までの、設備促進協議会においてきめました数字がございますが、その第一年目の入れかえ計画は絹人絹織機にいたしましても、綿スフ織機にいたしましても、大体この生産を上げましたものより若干低目の数字でございまして、実は入れかえの方は予定あるいは予定以上に行われてきております。
それから将来の計画でございますが、実はお手元にお配りいたしてあります繊維機械五カ年計画といたしまして、三十二年度分と三十五年度の推定を出してございます。それと大体昭和三十年度の実績の比較をしておとますが、三十年度におきましては、綿スフ紡機につきましては輸出、内需合計しまして八十一億の推定を出しております。三十年度の実績は輸出、内需合せて大体五十五億、こういうふうになっております。また綿織機関係は輸出、内需合計いたしまして三十二年度は二十三億でございます。それから三十年度の実績といたしましては二十億、こうなっております。さような見通しでございます。また三十五年の推定は、この表にございます通りの数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/45
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046・多賀谷真稔
○多賀谷委員 この繊維機械五カ年計画というのは、あなたの方では金額でお出しになっておるが、こういう表を出されましてもわれわれしろうとにはわからぬのです。金額で計画表を出すというきわめて珍しい計画表をあなたの方はお出しになっておるが、私どもはこれによってすぐ逆算ができないので、数量でお示しになると私はけっこうであると思うのです。しかし私が申しておるのは、少くともこの第一回の中央打合会で、この合理化実施計画をして今申しましたように数字をあげておる。そうするとそのうちですでに昭和三十年度においてはあるいは設備の更新をしたのかもしれませんが、要するに五年間にやるのが二年分くらいの仕事である。二年分の仕事を五年間でやれというような状態になっておる。なぜかと申しますと、あなたの方では、内需についてはそうどんどんふえるということをお好みになっていないというのが今度の法案であります。あるいは更新をする分については、今までの登録をはずしてその同じ登録を次の新しい機械にするということはありますけれども、計画は内需の方はどんどんふえるという計画ではない。要するに台数がふえるという計画ではない、更新はする、こういうように承わっておるわけです。ですからそういう状態を見ますと、二年の仕事を五年でやらなければならぬ、こういう状態になる。そうすると機械産業というものは全く壊滅に瀕するのじゃないかと私は思う。この三十年度の数字というのは、三十年の一月から十二月まででございますから、いわゆるかけ込み注文というのは比較的少い時期であると私は思う。ですから平常といいますか、正常な状態における統計をとってみましても、今申しましたように、二年分の仕事を五年でやらなければならぬ、こういう状態になる。そうすると繊維機械産業は全く壊滅になるのじゃないかということを申し上げておるのです。これに対して御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/46
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047・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 先ほど申し上げました通り、大体の数字を申し上げますと、綿スフ織機につきましては三十年度の実績が五十五億であります。それに対しまして三十三年度は輸出内需合計いたしますと八十一億、こういうふうな伸びを示しております。さらに三十五年度に参りますと、この数字が百十一億ということになるわけでございます。それから絹人絹織機等もございますが、たとえば綿織機について見ますと、三十年度の実績が二十億でありますものが三十二年度は二十三億ということになっております。さらに三十五年度は三十億になっております。こういうふうな数字で、伸びを見ておるわけでありまして、先に行って、先細りになるというわけではございません。それからやはり繊維産業が安定して参るに従いましてわれわれとしましては、できるだけ更新需要を期待します。それと同時に繊維設備が全然ストップになっておるわけではございません。あるいは合成繊維とかスフとかいうようなものにつきましては伸びる余地があるというふうにも聞いております。かような事情を考え、さらにわれわれとしましては輸出先を開拓して輸出も大いに伸ばそう、こういうふうなことを今後考えておるわけであります。従いまして数字としては先に行って先細りになるということはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/47
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048・多賀谷真稔
○多賀谷委員 重工業局長は五カ年計画でやると称して金額だけをおっしゃっておりますけれども、どうも私は納得できない。なぜかと申しますと、先ほどからの説明によりますと、結局綿などについては、合成繊維その他の関係あるいは輸出等の関係によってあまり伸びを見ておらないのです。国内の需要にいたしましても、綿糸は昭和二十九年度が五億百万ポンド、それから今度は三十五年度が五億二千四百万ポンドという状態であまり伸びがない。ところがあなたの方の説明を聞いておりますと、今度はどんどん機械がふえていくようなお話をなさっておる。それではふえていくのは更新だけかというと、更新の方の資料では二年分の仕事を五年かかってやらなければならないような状態になっておる。それじゃ輸出がそんなに伸びるのかというとそうではない。これはどこかに数字の食い違いがなければ手品である。ですから、これは数字の統計の問題ですからもう少し正確にお答えを願いたいと思います。あなたの方が同じ時期に出された資料ではどうもふに落ちないのです。とにかくこれは、こういうふうに同じようにずっと仕事が毎年続いていって、今法律が施行されて注文が切れて、当座の一カ月か二カ月くらいだけの断層であるのか、あるいは将来に向っての断層であるのか、こういう点をはっきりしなければ私たちは非常に困ると思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/48
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049・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 先ほど来申し上げております通り、内需の方も繊維産業が安定して参りますと将来の更新需要というものが相当伸びて参ります。また先ほど来申し上げております通り、ストップされる設備の面とふえる部分と両方ございます。さようなわけで、繊維機械年別需要見通しというものを繊維局で作成してお配りしてありますが、それに大体内需関係の需要が想定され、それに基いてわれわれとしては内需を計算し、かつ輸出については従来の知識経験から将来を推定いたしまして、輸出、内需を分けて合計したわけであります。従ってそういうふうな結論から見まして、将来の需要としては相当伸びてくるという見込みであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/49
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050・多賀谷真稔
○多賀谷委員 この五カ年計画によるところの総合繊維需給表によりまして、たとえば綿糸にいたしましても先ほど申しましたように五%程度の伸びを見られておる。五%なんというものは、この五カ年計画に基く需給の状態からいきますと、この綿だけについて見れば、機械の数は輸出は別としても減るのが当然であると思う。それは生産性が向上しますから、この数字から見れば内需は、結局機械の台数そのものは減っていかなければならない。ところがあなたの方は更新のほかにさらに内需が伸びるとおっしゃっておる。それがわからないと言うのです。ですから少くとも内需関係においては機械は台数がふえるという状態にはない。ただ入れかえだけがある。そこで入れかえ分はどうかと見ると、入れかえ分は今申しましたように、平常の二年分の仕事を五年でやらなければならぬという状態にあるではないか、こう言っておるのです。ですからその点をまず明確にお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/50
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051・小室恒夫
○小室政府委員 繊維の需要の点でありますが、お示しの通り綿糸に換算いたしました綿製品の需要は五%ですか、ほんの少しふえるという程度でございます。従って綿紡績部門については、これは更新だけの計算にしております。もっとも今後輸出が伸びる、あるいは内需等についてもわれわれの予想と違った要素が出ますれば、それはそのときの需給の計算をしてまた別の新増設を認めるということになるかと思いますけれども、ただいまのところでは綿紡績については更新だけ、大体特に新設がふえるのは合成繊維紡績という計算になると思います。それからスフ紡績、梳毛紡績等は今後スフ綿がふえる、あるいは羊毛等についても輸入をだいぶ最近では楽にしておりますから、そういうような関係等もにらみ合せてみますと、若干ふえるのではなかろうかと思いますけれども、私どもの計算は実はこれも更新だけになっております。というのは繊維産業総合対策審議会で毛紡等についても過剰であるというような一応の結論が出ておりますからそれに敬意を表した。実際にはこの辺はまだ相当動き得る数字でありますが、一応かた目に抑えてそういうはじき方をしております。
それから錘数というお話でありますが、これは混打綿機械から前紡工程、それから精紡工程等いろいろ機械がありまして、一連の設備になっておりますので、これが全体として発注があるということが問題なんで、なかなか錘数換算ができない事情がございまして、大体こういうものについては金額でもって今までも資料を出しております。ただ新増設の制限の方は、最終段階の精紡機を抑えることが技術的にも簡単でありまするし、そういうやり方をしておるわけであります。
〔小平(久)委員長代理退席、笹本委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/51
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052・多賀谷真稔
○多賀谷委員 繊維局から出されておる資料も百万円単位で、これも金額で、しかもこれは毎年同じように算術計算をして平均を出されておる。どうもあなたの方は合理化だと言いながら、同じような算術計算をされたり、それから機械の方は伸びるように書いてありながら、実際繊維の需給関係は伸びるように書いてない。私通産委員会に来たのは今度初めてですけれども、こんなずさんな資料を出されて、率直に言ってどうもはっきりしないのです。なぜ金額なんかでお出しになるのか、金額がわかれば台数で出せばいいのです。これは台数で出すのが当然でしょう、計画ですからね。それを金額で何百万円というような、しかも値段も違いますよ。値段のことは何も書いてない。何台というような出し方をすればいいが、何百万円、何百万円、五カ年計画は何百万円、そんな計画書はどこを探してもないですよ。やはりぼくは何万錘とかあるいは織機なら何台、それから単価は幾ら、単価だって変りますから、一応単価はすえ置くとしても、幾らというように書かれておられるのが至当であるのに、五カ年計画あるいは見通しという数字が何百万円という表では、われわれはどうも納得がいかない。そこで先ほども申しましたように、需給表とそれから機械の関係、これは輸出を入れてもどうも納得がいかない。これは次の機会までにもう少し正確な統一した計画書や見通しというものを出していただきたい、かようにお願いをしておきます。ここでいくら議論をしておってもはっきりいたしません。ですからもう少しはっきりしたデータをお示し願いたい、これをお願いしておきます。と申しますのは、あなたの方でしょっちゅう設備合理化の打合会ということを盛んに言われておりますが、その打合会の台数に基いて私は質問をしておる。それも一つの大きなやりたいという目標、その目標が十分達成をされてもこういう状態である、こういうことを私は申しておるのであります。目標ですからあるいはうまくいかないかもしれません。いくと仮定しても二年分の仕事を五年でやらなきゃならぬ、こういう状態になるじゃないか、こういうことを言っておるのです。なぜはっきりしないかといいますと、あなたの方で幾らごまかされても実際は首切りが起ったりするのです。そうすると労働省の方では計画の立てようがないですよ。あなたの方では、いやこれで三十年通りうまくいくのだ、三十二年も三十三年も三十四年もうまくいきます、こういうことになれば失業者は出ないということになるのです。ところが実際問題としては失業者が出る。こういう状態になりますと、何のために政府が五カ年計画と銘打って総合対策を立てたかわからない。ですから私は実際は機械の方はこれだけ減産をするなら減産をするというはっきりしたデータをお示し願いたいと思うのです。こういういいかげんなデータをお示しになるというのは、非常に国会に対する軽視だへかように考えざるを得ない。同じ通産省でも、この前出された石炭合理化法案の場合は、あれも必ずしも正確ではありませんでしたが、また見通しは違っておりませんけれども、一応曲りなりにもその当時を基準にしてデータが出たわけです。私としてはもう少しはっきりしたデータを出していただきたい。これによりますと、結局失業者はあまり出ないということでしょう。失業者が出ないならばこんな大騒ぎをする必要はないのです。ですから私はもう少しはっきりしていただきたい。と申しますのは、六カ月くらいの断層であれば失業保険でやっていける。何も騒ぐ必要はない。それで再雇用してもらえばいいのです。ところがそういう断層でなく、継続的な機械産業の不振がくるんじゃなかろうか、こういうことを考えておるわけです。ですからごまかしでなくて、はっきりした統計を私はお示し願いたい、かように考える次第であります。
続いて労働省にお尋ねいたしますが、先ほど統計部長は、一般の産業に比べて、ことに製造業に比べて六%女子の労働者では賃金が高い、こういうことを言われておる。ところが通産省から出されておる資料は、そういうように残念ながらなっていないのです。通産省が出しております資料は、女子の一般製造業の平均賃金が八千五百六十八円。それに対して紡織業の労働者の賃金は六千七百三十九円。しかもこれは全産業の中で二番目に低位にある。一番は家具装備品、こういう職種が一番低い。その次が紡織業の産業の労働者の賃金が低い。要するに業種別に見ますと二番目に低い、こういうことになっておるのであります。ところがあなたの方は、いや一般の製造業よりも六%高い。こういうことでは私ははなはだけしからぬと思うのです。一方においては非常に低いといいながら、一方においては非常に高いという。ですから一体その間の食い違いはどこから生じたか。それから私は言っておきますが、おそらくあなたの方は、その後争議があって賃金が上ったから、その上った分だけ高いのだ、こうおっしゃるかしれない。しかし賃金の統計というのは、その上ったときだけをとるんでなくて、過去数カ年において繊維の労働者は賃金が上ってきていないのです。ですからやはり正常な状態においてとっていただきたい。要するに繊維労働者が賃上げをして上ったら、その上った分と見合うような他産業の賃金ベース・アップが行われて後に統計をとってもらいたいと思う。繊維だけが上ってよそはまだ賃上げをしておらないときに統計をとって、これは六%高いと言われるのは、統計部長として、その職からいって非常にずさんなお話し方ではないかと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/52
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053・堀秀夫
○堀説明員 お答えいたします。先ほど私が申し上げた資料は、昭和三十年平均の各産業の女子の平均賃金でございます。従いまして、一時点だけをとったものではありませんので、昭和三十年を平均した数字でございます。それから、おそらくこの点だろうと思いますが、私が申し上げましたのは、紡績業の数字を申し上げたのでございます。これの製造業の昭和三十年平均の女子常用労働者の平均賃金は、八千二百四十九円であります。それに対しまして、綿及びスフ紡績業、これは特別集計をしておる特掲産業でございますが、これの女子の労働者の平均賃金が、昭和三十年平均いたしまして八千七百八十五円、結局六・五%高い、こういうことになっておるわけでございます。通産省がお出しになりましたのは、今ちょっと横で拝見したのですが、昭和三十年十月の数字になっておったように思います。それが一点と、それからもう一つは、通産省のものは紡織業の女子労働者ということで出しております。紡織業の女子労働者は、織布部門、織物関係はずっとみな含んでおりますので、それは私の方の統計でも、昭和三十年平均で七千四百九十三円、これは九〇%、おそらくその点が食い違っておるものと思います。私どもの数字は今のような状況でございます。御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/53
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054・多賀谷真稔
○多賀谷委員 先ほど山口委員は、繊維産業の労働者の統計だということを言ったと思う。あなたの方は、賃金のいい、いわば十大紡のような賃金を持ってこられてお話になっておる。あるいは十大紡でないかもしれませんが、企業別から言えば、大体どういうものからの数字ですか、お示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/54
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055・堀秀夫
○堀説明員 私の方の申し上げましたのは、毎月勤労統計の数字でございます。三十人以上でございます。先ほど山口委員に申し上げましたのは、紡績の例をとって申し上げたので、山口さんもあとで紡績と言っておられましたから、そういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/55
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056・多賀谷真稔
○多賀谷委員 労働省が、賃金が実際高くもないのに高いような説明をされると、非常に困るのです。あなたの方は、労働者を保護する立場にあるのです。ですから、あなたの方ではっきりした説明をされなければ困るのです。今輸出が問題になっておるのは、織布部門も含めてです。ことに織布部面でも、小さな企業の労働者は非常に賃金が低いと思います。ことに三十人未満の賃金が、やはり私は大きな社会的問題を含んでおると思います。ことに織布の部門は三十人未満がかなりあるわけで、十台とかあるいは工合とか、こういう形が多い。あるいはこれは家内労働に逃げておるかもしれません。ですから、私はここに日本の労働者の賃金の最も低い部門があると思います。ですから、そういうことを強調していただかなければ、政府は連帯性があるかもしれませんけれども、もう少し正確にお答えを願いたい。とにかく統計に出てくる数字というのは、今申されたように、三十人以上である。三十人以上でも、かなり上の方の抽出であったり、その他ありますから、正確とは言えませんし、さらに繊維の場合には、三十人未満が非常に多い。あるいは家内労働に逃げておるということになりますと、やはり繊維の労働者はもっと低賃金にある、こういうのが大体間違いのない理論であろうと思うのです。ですから、一般の女子労働者に比して六%も高いというようなことをこういう席で言われることは、私ははなはだけしからぬ、かように思うわけです。そこで日本の今の繊維産業の労働者の低賃金、これは過去におけるよりもあるいは若干是正されたかもしれませんけれども、やはり低賃金だと思うのです。ここに私たちは外国が日本の製品に対して輸入の規制をしたり、あるいはガット加入に際して三十五条の援用を受けたりする理由があると思う。ですから、繊維産業に関する規制の法律案を出すよりも、むしろ最低賃金法でも出した方が、そういう誤解を解くには貢献をする、私はかように考えるわけです。統計部長はどういうようにお考えであるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/56
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057・堀秀夫
○堀説明員 外国との関係で、日本の繊維産業の低賃金がよく問題になりますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたようにやはり外国との比較、ソーシャル・ダンピングの問題を論ずる場合には、その産業の賃金を単に為替換算しただけでは非常に問題がある。従いまして、これは食糧、物価に引き直して食糧賃金として比較することが大事である。それからその国における一般的な産業と比べて、その産業の賃金がどのようになっておるか、不当に著しく低く下っておりはしないだろうかというような点を、国民所得、一般生活水準、一般賃金水準、この関連において問題を取り上げなければならないと思うのでありまして、こういう点につきましては、今後ともいろいろな機会を通じまして、その点の認識につきましては外国の誤解を解くように努力したいと思っております。
それから最低賃金の問題、これはいろいろ問題になっておりまして、先生御承知のように、すでに中央賃金審議会においてだいぶ前に答申が出されております。ただその答申におきましても、いわゆる最低賃金を四業種について実施する場合に、実行性ある措置がとられなければならないということを言っておるのでありまして、その点がいろいろ経済的に問題になりますので、この点におきましていろいろ検討はしております。
それから最近労働問題懇談会というのが労働省側に設置されました。これに総評、全労、その他からもいろいろな方がお入りになっておるのでありますが、ここにおきまして最低賃金の問題を、大企業と中小企業との賃金較差問題との関連等におきましていろいろ御討議願いまして、それによりまして労働省としては善処していきたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/57
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058・多賀谷真稔
○多賀谷委員 外国に対して説明をされる場合はそれでいいと思う。ただ為替の関係だけでなくて、やはり食糧賃金あるいは実質上どういう生活をその国で営んでおるかということによって比較する、こういうことでもいいと思うのです。しかしコストに現われてくる面というのは、やはり為替の賃金である名目賃金である。ですからその国の商品が安いか安くないかということになりますと、やはり名目賃金になると思う。そこで私はこれは繊維局長がいいと思いますが、繊維におけるコストのうち労務費の占める割合はどの程度であるか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/58
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059・小室恒夫
○小室政府委員 綿糸で申しますと大体八割近くが原綿代になると思いますが、その他の二割ちょっとのものは加工賃になります。その中の労務費というものは、資料はあると思いますが、今すぐにそらで申せませんが、ごくわずかであります。綿布になりますとむろんそれにまた加わって参りますが、またあとで資料について申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/59
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060・多賀谷真稔
○多賀谷委員 次に失対部長にお尋ねいたしたいと思いますが、実は先ほどからお聞き及びのように、政府では失業者の出るような統計が出てないのですが、われわれは失業者が出る、ことに繊維機械の労働者に失業者が出ると思う。この前刈谷の市長が見えまして、そうして刈谷には豊田織機が四千名の従業員を持っておる、さらに下請が五百ある、こういう状態であるから、この前の中小企業安定法の二十九条が発動された場合にもかなりの失業者を生んだ、今度もそれ以上生むであろう、こういうお話がありました。今度の場合は私たちが観測しますのには、必ずしも断層的な問題ではなくて、かなり続くのではなかろうか、少くとも二、三年はこういう状態が続くのじゃなかろうか、かように考えるわけであります。そこで、この法案が出ましたときに、失業者の状態を見ますと、全国的に散布されるような失業者が発生するという状態ではなくて、地域的、集団的な失業群が発生をする、こういうようになると思う。そこで、政府では一体どういうように御処置されるつもりであるか、これをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/60
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061・渋谷直蔵
○渋谷説明員 お答えいたします。この法律の実施によってどの程度の失業者が出るかという問題につきましては、きのうもお答え申し上げましたように、労働省としては重大な関心を持って見ているわけでございますが、先般来からの御説明にもありますように、通産当局としては設備の更新とか、あるいは輸出を促進するというような措置をとりまして、そう大きなしわ寄せがいかないのじゃないか、またいかないように極力努力をする、こういうふうに言っているわけでございます。従って労働省としても、この法律が現実に施行されまして、その施行状況を見ないと、どこの市に何名の失業者が出るかということが正確につかめないというのが実情でございます。ただ私どもとしては、かりにこの法律の施行によって不幸にして失業者が発生しました場合は、労働省としてできるだけの対策を講じて参るというのは当然でございます。幸いに最近の安定所の窓口の状況を見ますと、昨年の同月に比較して、求人の件数においても、求職の件数においても約二割程度の伸びを示しているのでございます。そういった状況も勘案して、安定所を動員して極力他部門への就職のあっせんを促進していく。必要に応じては、全国に職業補導の施設もございますので、こういった施設等も十分活用して参りたい。なお最終的な対策といたしましては、御承知のように失業対策事業の予算が計上されておりますので、最終的には失業対策事業によって生活の安定をはかって参りたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/61
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062・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実は通産省の方ではっきりした見通しをお立てになりませんから、労働省でもお困りであろうと思うのですけれども、具体的な問題に入る前に、もう少し一般的な問題についてこの際質問をしておきたいと思います。本年の三月の完全失業者の数字は百六万、こういっております。これは戦後最大の数字であります。昨年の同じ三月が八十四万であります。三月の月は大体完全失業者の最も多い月ですけれども、昨年に比べて二十二万人完全失業者がふえている、こういう状態になっているのであります。そこで私は、経済五カ年計画は確かに一般的には計画通り進んでおり、あるいは計画以上に進んでいる面もあると思うのですが、雇用の面だけは計画よりもむしろ非常な悪い状態になりつつある、悪化の一路をたどっている、かように私は判断せざるを得ないのです。ですから、先ほど求人求職が二割程度増している、こういうことですけれども、全般的な趨勢としてはやはり昨年よりも雇用状態は悪くなっているのじゃなかろうか。雇用状態と言えば語弊があるかもしれませんが、失業状態が悪くなっているのじゃなかろうか、かように考えるわけですが、部長から御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/62
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063・渋谷直蔵
○渋谷説明員 お答えいたします。一般経済界の活況に対比いたしまして、雇用、失業問題がそれほどに好転しておらない、むしろ停滞的な傾向を示しているというのは御指摘の通りでございます。それで、今回統計局から発表になりました労働力調査の完全失業者の数が百六万人と、戦後最高の数字を示したのでございますが、私どもでこれを検討いたしてみますと、対前月の増加数が三十一万人、その内訳を見ますと、女が二十三万人の増加でございます。それに比しまして、男がわずか九万人の増加、その内訳を見ますと、十四才から十九才までの年令層において二十万人の増加を示しております。二十才から三十九才までの年令層において十万人、従って対前月増加数三十一万の全部が十四才から三十九才までの年令層でふえているということになっているのでございます。この原因を分析してみますと、これは一応の推定でございますが、対前月において、労働力人口が二百三十三万ふえております。その二百三十三万の労働力人口の増加のうちで、女の増加が百五十万人というふうに圧倒的に多いわけでございます。従って今度のこの異常な完全失業者の増加の主たる原因といたしましては、御承知のように、ちょうど三月は新規学卒の時期でもございますので、新たに社会に出ます女子の労働力人口が急激にふえたということが、一番大きい原因ではないかと考えているわけでございます。特に中学、高等学校、大学を通じまして、新規学校卒業生の数は前年に比較いたしまして二十二万五千の増加という数字を示しているのでございまして、それらの点が今回の労働力調査に現われているのではないかというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/63
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064・多賀谷真稔
○多賀谷委員 女子の労働力が非常にふえてきた、こういうことになりますと、この五カ年計画が根本的に労働力の面においては変ってきている、変らなければならぬと考えます。それはなぜかと申しますと、労働力化率がふえてくる、こういう状態になると思うのです。ですから労働力化率がふえてきますと、これはちょっとふえただけでも著しい失業者を見るような状態になるのですから、私はこの五カ年計画も雇用の面からくずれていくのではなかろうか、かように考えるのであります。経済は物の経済からむしろ人の経済に移っている。今後の日本経済の大きな形はいかにして人をして職にありつけさすかということが日本経済の最も大きな形になってきているのであります。ですからこの雇用の問題を解決しなければならない。かように考えるわけですが、今まで六七・八%という労働力化率が今後どういうふうに推移するか、かような点について労働省ではどのようにお考えであるか。これをお聞かせ願いたい。と申しますのは、労働力化率が一家の中で主人の所得がだんだん高くなれば、こういう状態は起らない。だんだん労働力化率が下ってくる。ところがみな娘さんもあるいは停年でやめた人も全部働かなければならぬという状態にありますから、労働力化率がふえてくる。ふえてくることによって労働力人口を増し、さらに失業者を増していくという深刻な状態になるわけですが、その六七・八%という労働力化率が三十五年度においてはどういうようになる趨勢であるか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/64
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065・渋谷直蔵
○渋谷説明員 今回の経済五カ年計画を樹立する際にも労働力化率という問題は計画の根幹に影響を及ぼす重大な事項でございますので、非常に論議されたのは御承知の通りでございます。一応今回の五カ年計画におきましては、最終年度の三十五年度におきましては六七・八の横ばいという想定のもとに計画が立てられております。それから日本の労働力化率が諸外国に比しまして非常に高い数字を示しておるというのも御承知の通りでございますが、そのなぜ高いかという点をもう少し掘り下げてみますると、最近の五カ年間ぐらいの傾向を見ますると、六十才以上の年令層、それから女子の労働力化率、この二つか毎年若干ではございますが増加していっておるのでございます。それで中堅を占める男子の年令層におきましては、労働力化率はむしろ若干下っております。従いまして労働力化率の上昇をどうして食いとめるかということになりますると、この六十才以上の年令層と女子の労働力化してくる傾向を、どういうふうにしたならば食いとめられるかということにしぼられてくるのでございますが、これには御承知のように種々総合的な対策が必要なのでございまして、政府といたしましても、経済自立五カ年計画が一応出発はいたしましたが、その後の数字が相当また違ってきておりますので、その現実の数字とにらみ合せてまたこれを補正していこうということで、すでに会議を持っておるような次第でございますので、そういった数字等の推移もにらみ合せて十分検討して参りたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/65
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066・多賀谷真稔
○多賀谷委員 自治庁の方がお見えになっておりますので、一言お聞かせ願いたいと思うのです。それは平衡交付金の算定の基礎になります基準財政需要額の算定の際の、失業者に対します需要額の算定の単位であります。これは従来よりも表面では多いようになっておると思うのでありますが、時間がありませんから私から意見を申しながら質問をいたしたいと思います。
従来県におきましては四千二百二十一円でありました単位が、さらに五千六百二十九円になり、このたび一万五千九百十四円になりました。市におきましては六千八百七十五円でありましたのが九千百六十七円になり、一万五千九百十四円になりました。私たちはこれは画期的な改革であると思って、非常に安堵の気持を持って迎えたわけであります。ところがこれを詳細に調べてみますると、今までの失業者の単位というのを今度はとり方をかえて、県と市と合併をしておとりになっておる、こういうように聞いておるわけであります。こういうことになりますと従来よりもむしろ悪い率である、かように考えざるを得ないのですが、どうして後退をしたのか、それをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/66
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067・柴田護
○柴田説明員 従来は府県と市町村とそれぞれ同じ失業者数をとっておったのでありますが、現実の失業対策事業費というものは、県でやっております分と、市町村でやっております分と両方あるわけでございますし、府県でやっております部分につきましては、市町村はその部分については関係しない。従って従来のやり方でやって参りますと、同じ失業者数が吸収という形において二へん重複されて計算される形になる。従って県によりましては、県が非常にもうけて市町村が損をしておるというところも出て参りますし、また市町村がもうけまして府県が損をしておる、全般的に申し上げますと大体は県が得をしておったというような傾向が強いのでございますが、そういうようなやり方を改めまして、非常に精密にしたわけであります。従いまして単位費用はもちろん大幅に上っておりますが、それによって全然去年よりか基準財政需要額が減るということではないのでありまして、現在まだこれから作業を進めて参りまして、計算が出て参るわけでありますが、私たちの感覚では、失業対策事業費は相当ふえるつもりでございます。従いまして配分の仕方というものにつきましても合理的になりましたし、基準財政需要額の算定の結果そのものにつきましても、確かに改善されておると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/67
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068・多賀谷真稔
○多賀谷委員 配分の仕方というものは私もこれは賛成です。同じ人間を県も市もこの算定の基礎にするのは間違いです。これはいつかあなたであったかに質問したと思いますが、やはり実際行うところの事業主体がその財政需要額において適用さるべきである、かように考えるのです。ところがそれならば少くとも一万五千九百十四円というのは不当に安い。少くとも三万円くらいでなくてはこれはいけない、かように考えるわけです。あとの半分は自治体が支出をしなければならない。この今日の財政の窮迫しているときにそういう金の余裕はない、かように考えるわけですが、それならそれでなぜ、いわばその半分にも満たないような補助金を出されるのか、なぜ倍額にお出しにならないのか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/68
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069・柴田護
○柴田説明員 算定の方法の基礎を荒っぽく申し上げますと、吸収人員の数を計算いたします場合には、従来は大体府県の場合八百人くらいという想定をいたしまして、市町村の場合は百六十人というような想定をいたしております。これを今回は突っ込みにいたしまして、吸収人員を大体二千八百人程度、これは大体三十一年度の吸収人員を全国二千万人程度と踏んだものに相応するものでございます。計算して参りまして実際にこの失業対策事業費というものを算定いたします場合に、交付金だけではございません。税もその財源になるわけでございますし、またものによっては雑収入めいたものも入って参りましょうし、また地方債もついてくるということになって参りますので、現在の地方財政計画の算定のもとにおきます単位費用といたしましては、この程度でまずまずやむを得ないというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/69
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070・多賀谷真稔
○多賀谷委員 失業者が発生をして非常に財政を圧迫するという状態は、これは失業者に出すところの支出だけの問題でない。そういう町村は税収入も非常に悪い、あるいは生活保護法の適用を受ける者も実は増加する、こういうような状態になると思う。従来あなたの方でおとりになっておりましたのは、百七十万の県を考え、その百七十万の県には失業者は五千七百人いるだろう、その五千七百人の中でたった百八十人分しかあなたの方で見てくれなかった、あるいは市の方は十万人の都市を一応基準といたしまして、十万の都市には七百名の失業者がいるだろう、その中の百六十名だけを失対事業としてやればいいというのが従来の算定の基礎であったと思うのです。一体失業者が七百名いると言いながら百六十名しか見てやらない、あるいは五千七百名おると言いならが八百名しか見てやらない、こういう状態ですから、市町村及び失業者を多くかかえた県はこれによって非常に財政の窮迫を見る、こういうようになったと思うのであります。今度はそういう状態でなくて、一万五千九百十四円にしたということですから、われわれ逆算をしてみまして、一万五千九百十四円ならば大体交付税の算定の基礎には見ていただけておる、かように考えておりましたところが、あにはからんやそれは県と市で全然分離して、今までの算定とは全然違うのだ、こういうことになりますと、結局一万五千円ほどやはり足らないということになるわけであります。そういうことでは私は失業対策の遂行はできないと思うのです。なるほどあなたの方は税金もある、交付税だけではありません、こう言われますが、これだけ交付税をくれるならこれはまた話は別ですけれども、交付税の算定の基礎ですから、税金の問題は入らないのです。あるいは地方債を見てやるじゃないかということをおっしゃるかもしれませんが、地方債を見てもらっても、それは現在の自治体に非常にためになるような仕事をさしておるのじゃないのです。仕事を見つけようにも仕事がないのですからね。このほかにあるいは土地を買う金が要るとか、あるいは仕事を見つける金が要るとか、あるいは超過負担分が要るとか、こういうように市の財政はあなたの方でまるまる見られましても、そのほかにいろいろ出費がかさむ、かように考えるわけです。きょうは安定局長が見えておりませんが、私が労働省の安定局長にいろいろ質問をいたしましたところが、多賀谷さん、今度は大丈夫だ、今までのが一万五千九百十四円になったからということで私たちは安心をしておった。ところが出してみますと、今までの算定の基礎と全然違った算定をおやりになっておる。そうすると結局何ら上った状態にはなっていないじゃないか、こう言わざるを得ないのです。一体自治庁ではなぜこの負担額について全額交付税の算定の基礎に見られないのか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/70
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071・柴田護
○柴田説明員 お言葉を返すようでございますが、ある団体の失業者というものが全部地方団体で失業対策事業費によって吸収されるかといえば、私はそうじゃないと思う。これは公共事業費によって、公共事業費系統の仕事によって吸収されるものもございましょうし、民間のものに吸収されるものもございましょう。そこで基準財政需要額を算定いたします場合には、多かれ少かれどこの団体も失業対策事業をやっていかなければいけないのだ、そういう前提の上に立っていきます場合に、失業者に対する平均吸収率というものが出てくるわけだと考えます。ただおそらく御質問の趣旨は、そういうことを言っても、実際には現実に失業者が出て困っているところがあるじゃないかということをおっしゃるだろうと思うのでありますけれども、現実には確かにおっしゃるように非常に失業者が多発して困っておる都市もあるわけであります。そういう都市の財政需要というものを全部普通交付税の機械的算定のもとにおいて全部解消することは、技術的にできないわけであります。従いましてもしそういうことをかりにやりますならば、これはよけいな金をよけいな団体にやることになる。交付税の金の額は一定のワクがあるわけでありますので、その範囲内で合理的なものを考えようといたしますならば、どうしても普遍的なものについて普通交付税を算定していく、そういう失業者の多発地帯について、非常に困ります団体についてやはり特別交付税の場合に特別の配慮を払っていかなければ仕方がない。現に昨年も失業者の非常に多発しております市町村あるいは府県につきましては、それぞれ特別交付税の配付の際にその事情を考慮して、必要な財政需要を見て特別交付税を配付しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/71
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072・多賀谷真稔
○多賀谷委員 公共事業その他でも吸収される、これはもっともな話でありますけれども、私が先ほど申しましたように、市におきまして七百名の失業者があって、百六十名が失対のワクの中に入っていく、こういう算定では結局救われぬと思う。また今、平均吸収率でいっておるということでありますが、それじゃまるまるあなたの方は平均吸収率で出しておられますか。平均吸収率でいけば全額交付税の算定に見られておる、こう考えてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/72
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073・柴田護
○柴田説明員 大体入っております。八割程度であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/73
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074・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私はその二割というのがかなり問題であるというのと、さらに超過をしておる、著しく失業者が出ておる都市というのは、非常な窮迫の状態であると思うのです。ですから、私はそういう失業者という定義をもう少し厳格に出して、少くとも失業対策事業の適用を受けるような労働者、こういうことをシビヤーにやられて金額をお上げになったらいいと思う。せっかく今度は市と県をお分けになるのですから、その市と県を分けられるぐらいならば、もう少し、ばくとした失業者を考えられないで、失業対策事業、要するに補助金の対象になる緊急失業対策事業を適用する労働者の範囲を厳格に規定をされて、その範囲内において地方負担分の全額を交付税で見られる、こういうのが至当であると考えるのです。自治庁ではどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/74
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075・柴田護
○柴田説明員 私たちは現在の失業対策事業費関係の基準財政需要額の算定の仕方が完全だとは思っておりません。今御指摘のようなことも言えるかとも思うのでございますけれども、ただ地方交付税というのは一般財源でございますので、補助金の裏づけというものを全部見るのだというような考え方はおもしろくないと考えております。ただしかしながら失業者数というものの把握も完全じゃないじゃないか、また基準財政需要額を算定する場合の基礎も完全じゃないじゃないかと言われますならば、問題は確かに残っておるのでございます。ただそれを解決する前に失業対策事業というものは地方債を使わないのだ、一切一般財源でやるんだという原則を立てますならば、もっと規模も上げ、そうして十分な基準財政需要額を見ていく方法というものがとれるのじゃないかと思いますが、御承知のようにまだ地方財政問題は未確定でございます。従いまして現実にやはり地方債というものをある程度地方財政計画上のいろいろな仕事の裏づけとして見ておる以上は、その辺のところの判断は弾力を持って考えざるを得ないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/75
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076・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私は、すでに今までの失業状態が集団的多発市、たとえば呉市であるとか、大牟田市であるとか、こういうような市とか、あるいは今この繊維産業の法案によって起り来たるであろう失業群に見舞われる刈谷市とか伊丹市とか、こういう市の財政状態を思うならば、格段の努力をする必要があるのじゃなかろうかと思うのです、現在の失業者というのは、これは一般的に確かに日本は失業者を多くかかえておるのですが、さらに厳密に見ますと、これは地域的集団的にこの失業群がおる、ある産業がつぶれたというような状態、ある産業が非常な麻痺状態に陥った、こういう状態において部分的には著しい失業群の発生を見ておるのです。ですからそれに対処する必要があるのじゃなかろうかと思うのです。アメリカのように、石橋通産大臣の言葉をかりるならば、ちょうどスーパー・エンプロイメントという言葉を使っておられましたが、そういうような地域においてすら現在特殊な不況地域というのが多く出て、その特殊不況地域の対策というのが現在アメリカの雇用問題の最も大きな問題になっている。全般的に非常に景気がよくても、部分的には非常に景気の悪い産業が出て、それが集団的に地域的に集まっておるという関係において政府としていろいろな努力をしておるのです。これは自治庁にその話をしても御迷惑かと思いますが、アメリカなんかは、防衛産業のごときは、その不況地区には、同じコストであれば、必ず不況地区の産業に注文をする、こういうような規制までされておる。また特殊不況地区の対策については、万全の対策をとろうとしておるのです。自治庁としても、こういう特殊な不況地域に対しては何らか考慮してしかるべきだ。起債といいましても、だんだん赤字の累積を見て、その元利の償還だけでも大へんな状態に陥っておる、それだけでも重大問題である。そういう慢性的な失業ということに見舞われまして、仕事がない、こういう状態になってきておるのです。ですから私はこういう点につきましては一つ格段の御努力をお願いいたしたい。次の機会に私は責任ある自治庁の長官なりあるいは政務次官なりに来ていただいて、この問題をただしたい、かように考えまして、本日の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/76
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077・笹本一雄
○笹本委員長代理 本日はこの程度にとどめます。
次会は来たる二十一日午後一時より開会することにし、これにて散会いたします。
午後一時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05219560518/77
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