1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年五月二十五日(金曜日)
午前十時三十八分開議
出席委員
委員長 神田 博君
理事 小笠 公韶君 理事 小平 久雄君
理事 笹本 一雄君 理事 長谷川四郎君
理事 中崎 敏君 理事 永井勝次郎君
秋田 大助君 阿左美廣治君
宇田 耕一君 内田 常雄君
大倉 三郎君 菅 太郎君
島村 一郎君 首藤 新八君
鈴木周次郎君 野田 武夫君
淵上房太郎君 森山 欽司君
山本 勝市君 加藤 清二君
多賀谷真稔君 田中 武夫君
松尾トシ子君 松平 忠久君
出席国務大臣
通商産業大臣 石橋 湛山君
出席政府委員
総理府事務官
(公正取引委員
会事務局経済部
長) 坂根 哲夫君
大蔵政務次官 山手 滿男君
通商産業事務官
(企業局長) 徳永 久次君
通商産業事務官
(重工業局長) 鈴木 義雄君
委員外の出席者
検 事 香川 保一君
大蔵事務官
(主計官) 鳩山威一郎君
通商産業事務官
(重工業局産業
機械課長) 琴坂 重幸君
参 考 人
(日本工作機械
工業会顧問) 早坂 力君
参 考 人
(日本鋳物工業
会副会長) 高月春之助君
参 考 人
(日本バルブ工
業会会長) 石田謙一郎君
参 考 人
(経済団体連合
会事務局長) 堀越 禎三君
参 考 人
(東洋大学教授
中央大学大学院
講師日本興業銀
行考査役) 水島 廣雄君
専 門 員 越田 清七君
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五月二十五日
委員山本勝市君辞任につき、その補欠として加
藤高藏君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
機械工業臨時措置法案(内閣提出第九八号)(
参議院送付)
日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法
律案(内閣提出第八八号)(参議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/0
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001・神田博
○神田委員長 これより会議を開きます。
機械工業振興臨時措置法案を議題とし、審査を進めます。
まず本法案について御出席の参考人各位より意見を伺うことにいたします。御出席の参考人は、日本工作機械工業会顧問早坂力君、日本鋳物工業会副会長高月春之助君、日本バルブ工業会会長石田謙一郎君、以上三名の方々であります。
この際、一言参考人各位にごあいさつ申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず本委員会に御出席下さいまして、厚くお礼を申し上げます。申すまでもなく、本法案は重要産業の一つである機械工業の合理化を推進し、設備の近代化、生産技術の向上、能率の増進等をはからんとするものでありますが、戦後立ちおくれたわが国機械産業の将来に重要なる意義を有するばかりでなく、本法の適用を受けることとなる特定機械工業はもちろんのこと、適用外の機械工業にも少からぬ影響を持つことが考えられますので、この際本案についてそれぞれの立場から忌憚のない意見を承わって、本案審査の参考といたしたいと存じます。
御意見の開陳の時間はお一人おおむね十五分程度にお願いすることとし、その順序は委員長におまかせを願いたいと存じますが、また、御意見御発表の後、委員側から種々質疑もあろうかと存じますので、お含みの上お願いいたします。
それでは、まず早坂参考人よりお願いいたします。早坂力君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/1
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002・早坂力
○早坂参考人 私は、日本工作機械工業会顧問の早坂力であります。
私は、過般通産省産業合理化審議会で審議されました機械工業振興事業団の構想に多くの期待を持ったものでありましたが、本法案にはそのおもなる骨子は織り込まれていますので、これでは十分であるとは申されませんけれども、ぜひとも本法案が制定されるようにお願いいたす次第であります。
本案の対象となる特定機械工業は、わが国の機械工業のうちの基礎的な部門及び部品部門、このうちには基礎的なもの、共通的なもの及び輸出機器の部品が含まれていますが、これらが最初に指定されると思われますが、これらの工業は大部分中小企業で、今日はなはだ弱体であり、かつ合理化されていないのでありますが、これらが本法案によってその振興の効果を上げますならば、その影響は全機械工業に及びまして、その合理化を促進して総合的に機械工業の振興をはかるところに重要なねらいがあると思います。またかくのごとく特定機械工業が主として中小工業から選ばれるということは、この案がわが国の中小企業の健全な育成策として、まことに重要な意義を持つ点であります。またこの法案によりますれば、機械器具または部品の性能、品質の改善と生産費の低下をはかるために、設備の近代化、生産技術の向上、規格統一、専門生産制の確立の措置がとられまするが、基礎部門のうちには、工作機械工業が含まれておるのでございまして、全機械工業設備の近代化に対しては、まずみずからの合理化をはかって、その供給源となる点がきわめて重要であります。しこうして輸出産業としての機械工業を考えまするねらば、わが機械工業の持っておるところの工作機械設備の近代化をまずもって先決しなければならぬと考えるものであります。
今次大戦後、世界の工業国は実に驚くばかりの早さをもって工作機械の設備の近代化をはかっています。そのため戦前は工作機械の輸入国であった国が、戦後はそれぞれに工作機械工業国となりました。たとえばフランスのようにたとえばイタリア、ベルギー、オランダ、スェーデンなどの西欧諸国、そのほかにソ連及びソ連を枢軸とした国、ルーマニア、ハンガリア、ユーゴ、オーストラリア、中共など、いずれも同様であります。これは全く驚くべき事実であります。これは決して軍備のためばかりではありません。戦後の復興、生活水準を高めること、それから物資を安価に生産することのために、工作機械設備の近代化を急ぐのであります。今日フランスの工作機械設備は約五十万台あるといわれておりますが、ちょうどわが国と同じ程度の工業国であります。そして年産約五百億円の工作機械を生産されております。この国は工作機械の輸出国でありませんから、これらはすべて設備の近代化となります。また西ドイツは、今日約千二百億円の生産を行なってますが、輸出は約五百億円でありますから、年に七百億円の近代化をはかっているのであります。わが国は、工作機械は年産五十億円程度であり、輸入を五十億円といたしましても、せいぜい百億円程度の近代化しかやっていないのであります。同じ程度の工業国であるところのフランスは、その八五%は中小企業から成り立っております。それがわが国の五倍の早さで近代化をやっておるのでございます。これらの工業国は戦後すでに毎年これを行なって参りました。これに比べますと、わが国の工場設備は全くお話にならないほど老朽陳腐化したものでありまして、修理さえも十分に行われておりません。特に中小工業におきましては情ない状態であります。部品の精度が非常に高まった今日、中小工業の末端の作業者の労苦と、歩どまりが悪いということは当然でありまして、不経済きわまるものであります。自動車工業とかミシン工業などは特に互換性の部品を作らなければなりませんが、この部品工業の設備がよくないために、非常に互換性を害しておる。そういう結果、たとえばミシン工業のようなわが国の特色である組み立て工場と、それから部品工業とか分業しておる国柄であるが、その分業した部品がよくないがために、組み立て工場においてさらに部品の検査をしなければならぬ。検査をして相当なる廃品を出しておる。そういった部品ででき上るミシンというものは、結局値をたたかれていくというような結果になり、はなはだ不利益であります。この意味でも健全なる部品工業というものを育成しなければならぬことがわかるのであります。この見地からしまして、本法案が順序として特定機械工業の設備の近代化から始めまして、その合理化によって部品の品質の向上と生産費の低下に役立つことになりますると、これは機械工業全体、特に輸出産業に及ぼす効果は顕著であると思います。さらに規格統一と専門生産制への誘導によりまして、部品原材料の共同購入が容易になりますし、従って多量生産、計画生産が可能になるということは、一段と機械工業の合理化、近代化に迅速な効果があります。しかもこれが特定工業のごとき中小企業に実施するのでありまするから、中小機械工業の積極的な育成策となると思います。このようにしまして、たとえばネジとか歯車のような共通部品、その他油圧装置、クラッチ等完成ユニットに対するところの中小機械、工業が成り立つようになりますれば、これこそ大企業、中小企業を問わず、全機械工業への健全な部品の供給源となりまして、これは欧米先進工業国におけると同様な分業協力体制の機械工業が振興されるのであります。こういうふうなわけでありますから、私はこの法案に対して多年待望していたものの実現を期するのでありますから、非常にこれに期待をかけておったゆえんであります。
この法案は、このように待望されたものでありまするが、帰するところは各業種にわたる中小工業の育成策でありますから、資金の確保と指導運営に問題があります。事業団の構想ではかなり具体的方策が示されておりましたが、いずれこれは政令等によって、これに関してさらに明確を期せられると思いますけれども、本法の運用上の機関については慎重な施策の必要を認めるものであります。特に開銀融資のごときは、事業団構想を生かすような継続的確保を望みます。また資金の対象となる設備については、中小工業用を考えるときに、なお多くの試作機種が必要となります。これに対する助成のごときも、事業団構想では考えられておりましたが、ぜひこの法案に関連しまして在来国が行なっておりました新機種の国産化奨励というような措置を引き続きとられることを望むものであります。生産分野のごときも、これはこの法令にも示されていますが、生産分野のごときも道を整えまして、相互の実利から乱立を自然に避けるようにこの法令の運用をはかるべきでありまして、相手が中小企業であるだけに、適切な指導機関を考えなければならぬと思うのであります。また生産加工技術の向上につきましては、わが国の機械工業振興上、総合した研究機関の設置を私は要望するものであります。
総合いたしまして、この法案につきましては、私は工作機械工業会側から述べましたが、全体といたしましては、合理化資金の確保ということが前提となっておることでありまして、それらを通して、従来中小企業等における開銀の貸付などは、非常に手続が複雑でありましたが、そういうことの迅速化をはかるようなこともあわせ考慮する必要があるために、いずれにしてもこれらの法案の運用につきまして、いろいろ指導が要るのではないかと考えられます。私はこの法案に対しては、以上申し述べました通りに多大の期待を払うものでありまして、非常に賛成の意見を述べる次第でありますが、以上の希望条項もあわせ御考慮を願いたいと思います。以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/2
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003・神田博
○神田委員長 次に高月参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/3
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004・高月春之助
○高月参考人 私は日本鋳物工業会副会長の高月であります。本法案に対しまして、参考人として一言申し上げたいと思います。
本法案につきまして、先ほど機械工業の早坂さんから全面的に御説明がありましたので、私がこまかく内容を申し上げる点はございませんが、私の方の関係から申し上げますと、私の方は銑鉄鋳物の関係でございまして、銑鉄鋳物も、御多分に漏れず日本の技術レベルが非常に低下しておりまして、このレベル・アップをするためには、どうしてもこの法案を全面的に御援助申し上げ、また同時に通過させていただけば、これ以上のあとの問題は、政府において御指導のもとに、りっぱに運用すればけっこうじゃないかと思います。
なおこまかい点は、御質問がございましたら、後ほど御質問に御回答申し上げるといたしまして、本法案を通過させるように、私は全面的な支持者の一人でございます。以上で終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/4
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005・神田博
○神田委員長 次に石田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/5
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006・石田謙一郎
○石田参考人 私は日本バルブ工業会の会長であります石田でありますが、同時に東京商工会議所の中小企業委員長をやっておるものでありまして、実はこの機械工業振興法につきましては、はっきり申しますると、私どもは非常な不満を持っております。
それは第一に、なぜこのようにおそい時期にこういうものが出されたという点でございます。それから第二には、いろいろな国家予算の関係もあるでありましょうが、なぜこのような少い金額で、このような大きな問題が解決できるとお考えになっておられるかという、この二つの点なんであります。御承知のように機械工業、特に小さな下請に属するような機械工業については、いろいろなやり方があるのであります。大工業の基盤といたしまして、皆様すでに御承知のように、自動車の例で考えますると、フォードのやるやり方とシボレーのやっておりますようなやり方と、二つあるわけであります。フォードのようにあらゆるものをみずから生産する、こういう生産態勢と、それからゼネラル・モーターズが今日までとっております、下請を非常にうまく活用する生産方法と、二点あるのでありますが、この二つの方法のうち、私どもは日本のような国にとっては、やはりシボレーのやっておる、要するゼネラル・モーターズが現在までとっており、また現にやりつつあるような下請産業を上手に活用していく方法が正しいと思うのであります。そのような見地から見ますると、自動車工業はもちろん、あるいは造船工業、そのほかのいろいろな産業に対しましても、機械工業、ことに機能部門の育成ということは非常に重大なんでありまして、今日西独の繁栄を見ましても、あの輸出の大きな部分が機械工業に依存しておるという形を見ましても、これは賢明なる皆さんのすでによく御承知の通り、戦後におけるアメリカの援助資金その他を工場に十分つぎ込んだという結果が、あれを招来して、おるわけ並んであります。日本におきましては、戦後十一年の今日においてようやくそういうふうな施策が基礎部門である中小企業に実施されるようになったということは、私が冒頭に申し上げました通りわれわれとしては非常にその時期のおそいこと、金額の少いこと、それから条件のまだまだ諸外国に比して悪いことについて、はっきり申し上げますと、不満なのであります。しからばこれを不満であるからといって反対であるかと申すと、これはそうではないのでありまして、この実施を早くやってもらいたい、そうして金額もふやしてもらいたい。金利の点でも同様でありまして、現在中小企業者が借り入れる設備資金といたしましては、中小企業金融公庫の九分六厘というものでありますが、本法によるとこれが六分五厘でありますし、据置期間も三年、十年償還ということでありますから、この点においては非常にいいのでありますが、しかし六分五厘という金利が決して安いものでないことは皆さんのすでに御承知の通りでありますので、この点につきましてはいろいろ他の財政資金その他の振り合いもあることでありましょうが、何とかもう少しお考えを願いたい、かように考えるわけであります。全体といたしましては、この法案に対しましては、まさしく私ども中小業者にとっては待望しておったものが生まれようとしておるでありますから、よろしく皆さんの御審議によって一日も早く実施されんことを望みたい。ただし十五億円という開銀の資金では、まだまだこれは不十分であります。この数倍の資金をぜひ出すように御努力を願いたい、かように私は考えるのであります。
総括的にはただいま申し上げたような点でありますが、私は自分がバルブ。コックというような業界の会長でありますので、一応私どもの業界についてこの振興法との関係を振り返ってみたいと思うのでありますが、私は数年前にアメリカのバルブ業界を見てきましたが、このときに感じましたことは、日本の中小企業問題、特に中小機械工業の問題と、欧米諸国の中小機械工業界の問題と、非常に違うということを痛感させられたのであります。
〔小平(久)委員長代理退席、小笠委員長代理着席〕
それは日本においては、中小機械工業においては特にそうでありますが、大企業と非常に差のあることであります。その設備においてもそうでありますが、いろいろな問題において非常に懸隔がある。アメリカあたりにおきましては、私の業界にしぼりましても、大企業と中小企業との差というものはただスケールの大小のみであって、内容の大小ではないのであります。設備におきましてもそうでありますし、また技術面においてもそうでありますが、大企業と中小企業との差というものはほとんどない。むしろものによっては中小企業の方が専門にやっておるために、大企業よりもすぐれたものがあるということを痛感させられて帰ってきたものでありますが、こういうふうな基盤があって初めてシボレーのような自動車が、中小企業の下請を利用することによってできておるということを私は見出して帰ってきたわけであります。私が現在会長をしておりますバルブ・コック業界は、アメリカではボール・ベアリング業界と並んで、中小機械工業界の右翼にあるのであります。日本ではボール・ベアリング業界というのは比較的中以上の企業でありますが、アメリカではそうではないのでありまして、やはり中小企業です。私のバルブ・コック業界も同様でありますまして、この数字を申し上げることは繁雑になりますが、一応概観を申し上げますと、一九四七年においてアメリカでは生産額は約六億ドル、雇用人員が約六万人であります。機械台数二万台くらいでありますが、この業界が、ベアリング業界も同様でありまして、やはりそれくらいの業態であったのであります。日本におきましてはバルブ・コック業界と申しますのは、ドルに直しますと現在でも約三千万ドルくらい、アメリカの状況から見ますと約二十分の一の業界なんであります。人員はわれわれの方は約一万人、機械も約一万台であります。しかしその機械の内容に至っては、これはもう論ずるに足らないのでありまして、アメリカの機械から見ますと、生産能率においても、その優秀さにおいても論外でありまして、ほとんどスクラップにひとしいものが現在大部分であります。しかしながらこれを直すことは、現在のわが業界ではほとんどできないのでありまして、ただ幸いにして今日、いろいろ皆さんのお力もあるでありましょうが、中小企業の設備に対しては、中小企業金融公庫の金もどうやらワクが広がって三千万円になったのであります。これらの点から徐々に設備の改善ということが叫ばれておるのでありますが、私どもがこの数年先、少くとも一九五六年の先において果してバルブ・コック業界において欧米先進国と肩を並べ——生産額の大小は別といたしまして、一応生産技術の問題において、肩を並べることができるかと申しますと、これは問題にならぬのであります。この数年の間に相当の資金を入れ、そして設備を改善いたしませんと、現在すでにおくれております私どもの業界がますますその差をひどくしていく状況になると思うのであります。しかもバルブ・コック業界の状況を見ますと、先ほど私が申し上げましたように、バルブ・コック業界の生産額のうち、直接輸出に向けられておるものは少いのでありますが、間接的な輸出、たとえばプラントの輸出に付属するもの、あるいは造船に付属するものあたりを考えてみますと、これは相当な量であります。船が一隻一万トン級のものができますと、バルブは千五百万円くらいついて参るのであります。これらを見ますと、相当な額が出るということは、皆さんに御納得ができると思うのでありますが、これも現在の日本のバルブ・コック業界の設備でありますと、外国船主のいろいろな不満を買いまして、いろいろなお小言の種が常に生まれているのであります。しかも現在は、皆さんもすでに十分御承知のようにオートメーションの時代、原子科学の時代であります。このオートメーション、あるいは原子科学にはどうしてもいろいろな自動調節装置が使われます。それらに対しましても、バルブ・コック業界と申しますのは非常に大きな比重を持たされておるのでございますが、これもこのままで進みますと、オートメーション化が日本で進められて参ります道程におきまして、日本のバルブ業界は置き去りにされて、やがて現在の年額約六億円という輸入額はますます増大する危険があるのであります。輸入の増大は、これはいろいろな問題があるでありましょうが、ともかくこういうふうなものを欧米各国に依存しなければならぬというのは、どうしてもできないというのではなくして、その設備において非常な差があるためにこのように相なるのでありまして、これに対しましては、やはりこのような機械工業振興法というような法律によって保護される必要が十分あると思うのであります。そうしてこのような保護をもし与えられるならば、私どもは十分この業界も五年先において欧米先進国と太刀打ちができると考えておるのであります。私も幸いにして、わずかな期間でありますが、アメリカの業界を見て参りまして、われわれが相当な設備を与えられるならば、彼らに決して労るものではないという確信だけは得て帰って参ったわけでありますので、今回のこの法案に対しましては、全面的に実施の早いことを望むと同時に、その金額の増大及びこれを機会に、立ちおくれております日本の機械工業の業界及びその部品その他の基礎産業面におきましてなお十分の拡充をお願いしたい。
〔小笠委員長代理退席、委員長着席〕
ただしそのためには、金利の点におきまして当然、でありますし、金額の点においてももちろんでありますが、日本の将来にとっても大きな輸出産業の分野を担うところのこの機械工業界に対しまして御援助を与えられんことを強く要望を申し上げるものであります。
今回フィリピンとの賠償問題が一応解決したようでありまして、私も昨日フィリピンの商業会議所の副会頭のカルロス氏と会ったのでありますが、彼の話を聞きましても、フィリピンでいろいろな中小企業に関する設備を要望しておるようであります。これらに対して日本では援助をしなければならぬと同時に、まあ大へん失礼な申し上げ方でありますが、東南アジアにおけるこの軽工業その他の御援助を申し上げるときには、われわれがそれらを外へ出すと同時に、日本において、より優秀な事業を伸ばす必要が十分にあると思うのでありまして、その基礎となるものは、あくまでも機械工業界でなければならぬと私は確信をいたしておるのでありまして、こういう点からこの法案の促進を直もに望むと同時に、繰り返して申し上げますが、金利の点においても、金額の点においても、より以上の御援助をお願いしたい、かように考えて、私は参考人として陳述をいた魂ものであります。
御清聴をわずらわしてありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/6
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007・神田博
○神田委員長 この際お諮りいたします。当初本案については、本日御出席の三君のほか、日本機械工業連合会副会長井村荒喜君の御出席を願うことになっておりましたが、本委員会の都合により、その日時を変更いたしましたので、出席で逆なくなりましたので、参考のため、その意見を文書として取りまとめられたものを委員長の手元まで届けられております。参考のためこれを会議録に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/7
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008・神田博
○神田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
以上で各参考の御意見は一通り伺ったのでありますが、参考人に対する質疑の通告がありますので、これを許します。なお質疑はできるだけ簡潔にお願いいたします。小平久雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/8
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009・小平久雄
○小平(久)委員 きわめて簡潔に参考人にお尋ねをいたしたいと思います。
まず高月さん及び石田さんにそれぞれの立場でお答えを願いたいと思うのですが、この法案が通過いたしますと、先ほど御陳述のように機械工業全体の合理化のため非常によい、こういうことはわかるのでありますが、一面また特定機械工業というものが指定され、その結果この業界にある程度の影響——いい方面もあるかもしれませんが、反面この指定漏れに対する影響ということも考えなければならぬと思うのですが、そういう点で、それぞれの業界に一体具体的にどのような影響が予想されるか、一方は非常によくなるが、一方は非常に犠牲を払うというような現象が著しく起きないものかどうか、こういう点について御意見を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/9
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010・石田謙一郎
○石田参考人 私は実は先ほど申し上げましたように、商工会議所の中小企業委員会もやっておりますので、その点は実は相当心配しております。例を私のバルブ業界にとりますと、私の方は現在全国で五百余り工場がございます。そのうち下請が約四百あります。自分で生産しておりますものが百余り、であります。今回の法案で、そのうちこの法案に該当いたしますものを考えますると、三分の一の三十くらいであろうと思うのです。その場合に、しばらく下請の四百をおきまして、あとの百余りの工場のうちの三十と七十の問題を、実は相当心配したのでありまするが、この問題につきましては、今日までのいろいろ議員諸公の御努力によりまして、中小企業金融公庫におきましては、現在代理貸しによって一千万の設備資金を出しております。直接貸しでは本年度から三千万円まで出せるように相なりました。ただし据置期間と償還期間が御承知のように一年の五年でありますから、非常に短かい。金利が九分六厘ということでありますから、これも負担が多い。これはもう約分ばかりの差がありますの、で、相当こたえると思います。この点について私は、心配をいたしたのでありまするが、業界の中で、この点について金の高についてはそのような方伝で行けるのじやないかということに意見が一致いたしました。要するに、下請に対しましては、このほかに国民金融公庫の金が二百万余り出ますので、設備の補修ができる。それからそれ以上のものに対しては、今お話し申し上げた通り、皆さんの御承知のように、一千万までが代理貸し、三千万までは直接貸しの方法ででき得るという形ができておりますので、本法案によりまする設備資金は、それ以上であるという考え方、それから、同時にこの審議に当っては慎重にやるということ、それからただ単なる拡張にならないようにするということ、そしてこの資金の放出によって、いたずらな生産設備の拡充のみになってしまって、他を制圧するというふうなばかげたことのないようにすること、この点について十分お互いに審議しようじゃないかということに問題が落ちつきまして、ぜひ自分の業界にもしてほしいということに相なりました。また会議所においても、その点は同様でありまして、やはりいろいろ問題がありました。こちらにも陳情が出ておると思うのでありますが、全中協あたりからもいろいろな問題が出たのでありますが、しかしこれも全体として見て、日本の機械工業がおくれているということを認識して、そのためにはこの法案をやはり適用していただいて、水準を高めていただくことが、おくれている他のものにもやはりそれに追随するようにする企業努力と申しますか、意欲を与えるであろうという見地から、一応いろいろな中小企業対策を十分おやり願うと同時に、やはりやっていただくより道がないのだということに落ち着いたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/10
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011・高月春之助
○高月参考人 ただいまの御質問でございますが、今度の特定機器の全体的の御質問か、私の方の鋳物関係のみの御質問か……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/11
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012・小平久雄
○小平(久)委員 業界の影響でいいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/12
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013・高月春之助
○高月参考人 では申し上げます。今回の特定機器の中に、われわれ銑鉄鋳物の方は強靱鋳鉄というものをあげております。この強靱鋳鉄は、御承知かもしれませんが、普通鋳鉄と、それから強度の高い鋳物を作るものと二つに分れております。従ってこの強靱鋳鉄の内容を見ますと、ミハナイト鋳鉄、ノジュラー鋳鉄というような、外国の技術導入のありました技術レベルの高いものを特定機種にあげられております。現在におきましては、日本の中小企業におきましては、まだこの強靱鋳鉄を百パーセントりっぱなものができるようなものがございませんので、大企業の方におきましては、外国技術導入によってこの強靱鋳鉄というものを作っております。その技術の流れが自然に幾分か流れては参っておりますが、これに対しましては、従来のような日本の鋳物を作っているような感覚と申し上げましょうか、そういう面ではこういうような高度の鋳物は作れない。従って従来われわれの方の業界の銑鉄鋳物というものは、ちょうど日本刀を作ると同じような問題でありまして、勘と熟練の二つによって鋳物ができている。しかしながら時代が進歩して参りますに従って科学の力が必要になりますので、それには、科学の力と申しますことは、設備と同時に計器類のオートメーション・システムに徐々に変らなければりっぱなものはできない。それは今の御質問の、ほかの中小企業に圧迫があるのではないかということでございますが、これは徐々に需要が伸びていくので、この特定の強靱鋳鉄の育成をやりましても、ほかの中小企業の、従来の鋳物を作っております業界に影響を及ぼすことはほとんどないと思います。むしろ強靱鋳鉄をこの法案によって育成し、早く中小の特定の機器のレベル・アップすることが、日本の機械の進歩であると思います。終戦後外国から鋳物の技術の導入がありましたが、これらはただ資本の大きな力のあるところだけが技術導入できる、そのほかに学界でもいろいろ研究しておりますが、その研究が中小企業の方では設備資金が足りないために、その設備ができないために、技術レベルが向上できない。今の御質問のような他の中小企業に及ぼす圧迫というものはほとんどないと思います。ましてやこれから需要増しが多くなるので、その需要がこれくらいの御援助と、この法案の立法による育成ぐらいでは、とても需要というものはやっていけないと思う。従って私は御心配の中小企業の圧迫の点は全然ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/13
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014・小平久雄
○小平(久)委員 両業界における影響の見通しにつきましては、ただいま伺ったわけでありますが、元来中小企業において設備の合理化というか近代化というか、それのおくれておった最大の原因は、もちろん資金の面もありましょうが、資金自体というよりも戦後における需要の不足というか、そういう点が一番大きかったろうと思う。需要がどんどんあって、機械を入れかえてもその償却も相当できるというような見通しさえあれば、これは資金はむしろ何とかなるというか、資金融通の道はおのずから開けたのではないか、むしろ需要が少いということが一番の根本的な原因であったのではないかというように考えるのですが、今鋳物工業界についてはむしろその心配はない、こういう話でありますが、石田さん、バルブの関係なんかの場合はどうです。今度新たにこういう近代化をやる、合理化の推進をする、そういうことをやるについて、せっかく指定は受けたが、どうも機械を入れかえるだけの企業的な採算の見通しが立たぬというようなことで、しり込みするというような心配はないものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/14
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015・石田謙一郎
○石田参考人 実はこの点については、お話の通り中小機械工業は海外マーケットの不足ということが問題なんでありますが、一応いやな思い出でありますが、戦争のときを振り返っていただくとわかりますが、戦争の最中に海軍の艦政本部の第四部、五部というのが二つできておったのであります。一つは民間のバルブでありますが・一つは商船のバルブであります。海軍があえて軍艦及び商船のバルブを管理しなければならなかった理由と申しますのは、その当時において、やはりバルブ業界というものが当時の船の建造に非常に重要な要素をなしておった、そのためにあえて商船のバルブまでも海軍が管理をしたという例がございます。今日におきましても、最近の輸出船のブームに際しまして一番隘路となりましたのは、実はバルブであります。先ほど申し上げましたように、一万トンの船ができますと、少くとも約一千五百万のバルブが出るのでありますが、こういう例を見ましても、日本の海運界の現状という大きな問題は、ちょっと私どもには直接わからぬのでありますが、いろいろお話を伺いますと、やはり輸出船もやると同時に、今後国内船も相当やらないと、日本はいろいろな金の問題で工合が悪いように伺っておるのであります。やはり働き出すという意味で、日本の船をたくさん持ちたいというのが各船主の御意向だそうでありますから、そういうような点からしましても、バルブ工業界に関する限り、少くとも造船のバルブはそう極端に減少することはない。現状では、外国船の進水がおくれておる大きな理由は、バルブ業界がその設備を充実できなかったためにおくれているのが非常に大きな理由であります。
もう一つは、船以外に、御承知のように現在石油化学その他の問題が盛んに論議されております。それから日本の水力電気におきましても、すでに大体経済的な水力発電というものは終えたそうでありまして、これからは高能率の火力発電に重点を置くだろうと思います。またこれを翻って考えてみますと、東南アジアの賠償問題が片づきますと、いろいろこの問題でも各国と競合して、高能率の火力発電の設備を電力関係からお入れになることになるだろうと思いますが、その場合に、やはり同様にこのバルブの問題がつきまとってくると思うのであります。先ほど申し上げましたように、アメリカでは年の生産額は現在六億ドル以上で、十億ドルに近いと思います。三千六百億円でありますか、そのくらいだと思うのでありますが、日本ではまだ百億円にならぬのであります。このような現状から見ますとバルブ業界は現在の生産額ではまだ足らないと私は思うのです。足らないのでありますが、今のような設備で悪いバルブを作っておったのでは輸入がふえるだけになってしまう。この間において積極的な御援助をいただいてすることによって、そういうふうなオートメーション、原子科学あるいは造船、石油化学というふうなものに対応できるような形になるのじゃないか、かように考えるので、マーケットの問題についてはこういう御援助をいただいても御心配はなかろうと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/15
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016・小平久雄
○小平(久)委員 最後に、早坂さんに簡単にお答え願いたいと思うのですが、こういう法案が出まして、これはおそらく通過すると思いますが、こういう情勢に対して、今度はこういう法律が通って相当需要もできるということで、工作機械工業会あたりがただ漫然とかまえておられたのではどうかと思う。こういろ情勢に対応して何か対応策というか、一体どのような決意で臨んでおられるか、そういう点を一言だけ承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/16
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017・早坂力
○早坂参考人 私が最初意見を述べましたように、この法案が通りますのには設備の更新ということが前提になっておる。従って、その設備の供給源が工作機械工業会にあるので、業界がこのためにうけに入るような気持でやるということは大いに戒むべきことであると思いますし、おそらくそういう考えを持つ者は一人もないと思います。特にこの法案の対象は、先刻いろいろ話があったように、中小企業を合理化することによって大企業とも関連さして、全機械工業を振興するにあるのでありますから、中小企業に対する機械設備についてはさらに考慮すべきものが多々ある、こういうことから、従来の工作機械業界は、在来の軍あたりの指令に基いた点があって、おおむね大企業に向ったような機械設備を考えて作っていた点はあるのであります。今日まで国産化されたものでもそういう程度のものがすでにできておりますが、これは必ずしも中小企業に対応するものではない。中小企業を平均的に考えて彼らに与える機種はまださらにあります。その機種の新たな国産化も必要でありますし、また中小工業向きということも考えなければならない。また特に分業して専門家にでもなれば自動機のようなものも必要になります。し、従って、業界に課せられた使命はずっと重大になりますので、今申されたように、漫然とこれに臨んでいるということは決してありません。
先刻申しました通り、今、年産五十億程度でありますのが、フランスで五百億であります。そういうやり方をあまり奨励していない国のフランスが、何がゆえに五百億の工作機械が要るかという実態を考えますと、それは中小企業が多いのであります。中小企業が八割五分もある。その中小企業が実際的に近代化されている。しかしこれは必ずしも、アメリカが豪華をねらっているような機種でもって考えてはいない。やはり中小企業を平均した最も実質的な機械を選んでやっている。やはりこういうことが、われわれが今計画し、またその方向へ進んでいるゆえんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/17
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018・神田博
○神田委員長 この際参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中にもかかわらず、本案審査のため長時間にわたり貴重な御意見の御開陳をいただきまして、厚くお礼を申し上げます。どうも大へんありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/18
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019・神田博
○神田委員長 次に、去る四月十六日参議院より送付され、本委員会に付託されました日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/19
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020・神田博
○神田委員長 本案は参議院において修正されておりますので、この際委員長から念のため参議院の修正部分について概略申し上げておきたいと存じます。
参議院のおもなる修正点は、附則第五項及び第六項の八幡、富士製鉄の発行する社債並びに開銀からの両者に対する貸付金についての一般担保制度の適用期間に関するものでありますが、現行法によれば本年八月五日までに期間が終了することになるのを、改正案では当分の間適用できるよう改正しようとするものであります。参議院修正では、これを二カ年間延長しようとするものであります。
まず、本法案について、御出席の参考人各位より御意見を伺うことにいたします。
御出席の参考人は、経済団体連合会事務局長堀越頂二君、東洋大学教授、中央大学大学院講師及び日本興業銀行考査役水島廣雄君、以上二名の方々であります。
この際参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席下さいまして、厚くお礼を申し上げます。申すまでもなく、本法案は目下政府において検討中の企業担保制度の法制化と密接な関連を持っておりますので、この際これらの問題を中心としてそれぞれの立場から忌憚のない意見を承わって、本案審査の参考といたしたいと存じます。
御意見の御開陳の時間はお一人おおむね十五分程度にお願いいたしたいと存じます。また、御意見御発表のあと、委員側から種々質疑もあろうかと存じますので、お含みの上お願いいたします。
それでは、まず堀越参考人よりお願いいたします。堀越君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/20
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021・堀越禎三
○堀越参考人 私、経済団体連合会の事務局長をいたしております堀越であります。きょう私が参考人としてここへ呼ばれましたゆえんは、おそらく、日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案の提案理由になっております企業の担保法、今一般担保法という言葉で言われておりますが、この法律が果して近いうちに成案として国会に提出される見通しがあるかどうかという問題についての御疑念からだと察しておりますので、その点について申し上げたいと思います。この日本製鉄株式会社法廃止法の二年という期限がつきましたのは、二十九年四月二十四日にこれが二年延長されておりますが、その当時企業担保制度というものを法務省において立案せられておりまして、われわれの団体の方にも御下問がありました。そこでおそらく二年の間にこの企業担保法というものは成案になるから、この二年間ぐらいこれを延長しておけば、二年先には、この企業担保法によって、八幡製鉄及び富士製鉄ともに、財団の組成をしないでも社債も発行ができることになるというお見通しからこうなったのだと思うのでありますし、また政府側といたしましても、担保法が成立する見通しがあるという御答弁をなさっておったのだと存ずるのであります。実はその当時のわれわれの会合におきまして、この企業担保法案に対して反対いたしましたおもなる理由は、これは主として銀行から出ました反対でございましたが、銀行は当時まだオーバー・ローンをかかえておりますような状態であります。一方企業の方におきましても、公認会計士の制度がありながら、実はまだ一部のごく限られたる監査をやっておるにすぎないというようなことでもあり、企業に対する不信というものもだ強かった当時であります。しかし企業といたしましては、この提案理由にもございます通り、工場財団制度、その他わが国の担保制度は、主として不動産抵当を中心とするもので、人的、物的の諸要素が総合されて活動されている企業体に対する担保制度としては、不十分である——不十分とございますが、不十分どころではなくして、はなはだもって企業としては不便を感じておりますので、いち早くわれわれの団体におきましては、かかる企業担保法のような、英国のような法律を早く確立していただきたいということを要望しておりました。その要望に基いて、法務省といたしましてもこの企業担保法案というものを一応立案せられましたが、当時の実情から、銀行としてもまだ確信がないということで、もう少し検討した上でやってもらいたいということで、延ばしていただいたような次第であります。その後、昨年の八、九月ごろから、御承知のごとく日本の経済界の情勢は、非常な目まぐるしいくらいなテンポで変って参っております。銀行のオーバー・ローンはなくなりました。企業も非常に内容が充実して参ってきております。特に来年からは、公認会計士の監査も正規監査に入ります。そういうような関係で、人の考え方が、今日は二十九年とはよほど変って参っておると思うのであります。また一面、この企業担保法の適用におきまして、大企業にのみ一応限ってこれを適用し、そして漸次範囲を広げていくということになれば、銀行としても、安心してこの企業担保法に基いた融資ができることにもなりますので、何らかそういう方途を講じ、あるいはいろいろ話し合いをいたしましたならば、もう法案そのものはでき上っておりますので、これに対して多少の修正をするというようなことによって、あるいは案外早く国会提出の運びに至るかもしれないと思うのでございます。従ってとにかく今日非常な社債を持っておりますものといたしましては、今から八幡製鉄、富士製鉄の財団を組成しなければならぬということになりまして、一時無担保になるということはかなり不安を持つ次第でもございます。その混乱を避けます意味におきまして、本法律案を通過をいたしますようにお願いいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/21
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022・神田博
○神田委員長 次に水島参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/22
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023・水島廣雄
○水島参考人 ただいま堀越さんがお話なすった通りの情勢でありまして、私から特に申し添えることはないように思われるのでありますが、実はこの富士、八幡、すなわち旧日鉄法の中に織り込まれておりましたところの法定の先取特権、こういうものは大体イギリスの浮動担保からきておるとかあるいはアメリカのブランケットもしくはゼネラル・モーゲージ、こういうような制度ないしはフランスの営業質、こういうふうな一連の信用経済の拡大というか、要するに企業に対して債権者が信用を拡大していく、与信の範囲を拡大していく、こういうふうな考え方からきておるわけでありまして、今度の企業担保法案なるものを法務省の当局から一般に発表されたようでありましたが、このもとも、今堀越参考人からお話のありました通り、イギリスの浮動担保がもとであります。イギリス、では御承知の通り非常に国民性自体がそうなんでありますが、彼ら特有の信義の観念というものは私どもの想像以上でありまして、一般の企業に対して金融機関の信頼が非常に厚いのであります。のみならずこういう物を確定をしないという一般の財産、いわゆる特定の物に担保を確定しないような与信の範囲というものは、相手方に対する非常な信用の拡大でありまして、イギリスではこの債権はもうほとんど社債に限っておるのであります。しかもこういう浮動担保をつける場合あるいはゼネラル・モーゲージ、こういうようなものをつける場合には、実際には信託というもっともっと信義的なものがこの中に介在いたしまして、信託の理論でもって社債の運営が円滑にされておって、企業金融というものも非常にスムーズに動いておるのであります。わが国の社債を見ましても、この信託の制度がほとんど取り入れられておりまして、かりに企業担保法案が今のままではあるいは少し日本の実際経済社会の取引にはそぐわない点があると思われますが、この法案がある程度実社会の現状にマッチするように修正されましたならば、あるいは信託の理論が今ほとんど日本で適用されておりますから、こういう信用ある受託会社が裏づけしまして、そうして募集の受託あるいはゼネラル・モーゲージといいますか、企業担保の受託者として金融の介在をしますならば、日本の経済界あるいは特に大企業の発展というものは推して知るべきものがあるのであります。こういう苦心味におきまして、何らかの新しい大きな経済の動きに着目しますならば、今度の富士、八幡というふうないわゆる廃止法の延長に伴う法案といろものは、私は全面的にいいことだろう、こう考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/23
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024・神田博
○神田委員長 それでは参考人に対する質疑の通告がありますので、これを許します。多賀谷真稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/24
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025・多賀谷真稔
○多賀谷委員 経団連の堀越さんにお尋ねいたしますが、経済団体連合会では、これは銀行も入っておると考えておりますが、そうしますと、現在の経済情勢では、銀行を含めて企業担保法を成立してもいい条件ができておる、こういうように金融界も含めまして経団連の全体の意見として考えてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/25
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026・堀越禎三
○堀越参考人 今日の段階というお言葉でございましたけれども、本日ただいますぐにできるかという御質問だとしますと、まだ多少無理じゃないかという点はございますけれども、今、企業の内容がが非常に変化しつつありまして、非常に堅実化しつつありますので、ここもうしばらく時間をかしていただけば、企業担保法の内容も、今の参考人のお話もございましたように多少の変更をしていただいて、そしてやればできるのではないかと思っております。まだ具体的に皆さんと話し合っておりませんので、私自信そう想像しているだけでありますが、具体的に話し合っていけば、もう少し具体化した答えができるのでありますが、まだそこまで話をしておりません。私自身としては近いうちにはそういうことになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/26
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027・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実は川越さんも御存じのように、旧日鉄法廃止法案がずっと一部改正の形で存続しているわけです。昭和二十七年の第十三回国会では一応財団を組成するという前提で延ばされ、さらに昭和二十九年の第十九国会におきましては、今度は企業担保法を出すからということでこれを二年間延ばしたわけです。またこのたびも法案が出て参りました。そこで私たちは率直に言いまして、やはり企業担保法を作るということならば、早く作ってやらなければ、常に毎年二年間ぐらいずつ延ばしていかなければならぬ。そういたしますと、それじゃ八幡、富士というような大製鉄会社のみこういう待遇をするのか、こういうことになりますと、われわれ政治家としては非常に困るわけであります。やはり企業担保法というものが早く制定を見、一般企業にも当然及ぶというような形式をとらなければならないと思うのです。ですから今できるということは国会の情熱でもございませんけれども、できればわれわれは次の十二月から始まります通常国会へかけたい、そうすると、審議をしておれば少くとも来年の五月ごろからは実施の段階になる、あるいは次の国会にできなくて、その次の通常国会ということになりますと、まあ来年の十二月からの国会にかかり、再来年できるということになるわけであります。少くともこの二年間に参議院の修正案もありますから、われわれはどうしても企業担保法を作ってやらなければなるまい、もうその間にできなければできないという見通しのもとに、八幡や富士には手数もかかり、時間もかかるでしょうけれども、一つ工場財団をお作り下さい、こういわざるを得ないのです。今、国会は企業担保法は審議になっていないのです。次の通常国会に提出されて、そうしていろいろ審議をする、その状態においては大体あなたの方では賛成をするというような段階になるかというのが一点。
もう一つは、いろいろ修正をすればということがございましたが、経団連としては、どういう点が従来出されております民事局の参事官案の案に対して御批判がありますか。こういう点を修正してもらえばいいという点がありますかというのが第二点。
さらに第三点は、社債の発行に限るという考え方であるのか。一般的な社債だけでなくて、ほかの担保にもこれを適用する、こういうようなお気持であるのか、あるいはまた企業の規模においてそれを適用していきたい、こういうようなお気持であるのか、そういう点を承われればけっこうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/27
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028・堀越禎三
○堀越参考人 第一点でございますが、この十二月の国会に間に合うかというお話でございますが、実は先ほどもお話し申し上げましたように、まだ十分に話し合いをいたしておりませんので、確信を持ってのお答えはできませんが、できるだけわれわれとしては急いでこれを成案の運びにいたしたいと存じております。法務省の手続の関係もいろいろあると思いますので、どの程度に時間がかかりますか、予想はなかなかむずかしいのでございますが、できるだけ、少くとも来年の十二月の国会には間に合うようにわれわれとしては努力をいたしたいと考えております。
それから第二点のどこが問題になったのかとおっしゃいますことは、これは特定担保の問題でございますが、特定担保をやれば企業担保の方の効力がなくなって、特定担保の方が優先するといったような点に多少問題がございます。二十九年で、前のことで私ここでその準備をいたして参りませんでしたのでまことに申しわけがないのでありますが、たしか私の記憶はその点が問題になったと思います。いわゆる特定担保でございますね。そうしますと、甲銀行がこの企業担保法によって甲企業に対して会社全部を担保にして金を貸すと、別の乙銀行がある一部門の会社の資産に対して特定の担保権を設定するということになれば、それが優先するという点に甲銀行としては非常な不安を感ずる。先ほどのお話もございました通り、これは全く信義の問題でありまして、会社自体の信義というものが守られなければなかなかむずかしい問題だと思います。従いまして私たちといたしましては、これはさしあたっては第三点のお答えになりますが、銀行が信頼し得る程度の大企業に一応限るべきではないかといったような考えをいたしております。そうして漸次実績を見つつ広げていくということが一番円滑にこの企業担保法を実施するゆえんではないであろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/28
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029・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そうすると社債とかなんとかに限定するわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/29
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030・堀越禎三
○堀越参考人 一応社債だけに限定したらどうかという意見もございます。しかしそれに対しては大企業としては不満足なんでございます。社債だけではどうも満足ができないのです。社債だけでございますと、やはり銀行から借りようとすれば、財団設定をしなければならぬという問題がございます。企業としての目的は財団設定の手続、費用、これらを免除していただきたいということなんでありますから、できれば全般に対してやって、むしろ適用を受ける企業をしぼっていくというようなことにいたしたいことがわれわれの方の実際の望みなんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/30
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031・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そういたしますと、大企業ということになりますと、大体経団連の方ではどの程度の企業をお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/31
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032・堀越禎三
○堀越参考人 この前二十九年のときに問題になりましたのは、大体払い込み資本金四十億円、あるいは三十億ということが問題になっておりました。あるいは二十億と言っておる人もあります。その点ははっきりきまっておりません。あるいはむしろ基幹産業に限るとかいう考え方もあったようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/32
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033・多賀谷真稔
○多賀谷委員 水島参考人にはまことにお気の毒ですけれども、水島さんは、素直に言いまして、日本興業銀行考査役としてできなくて、一つ学識経験者としてお尋ねをいたしたいと思いますので、しばらく御猶予を願いたいと思うのです。
政府の民事局は見えているでしょうか。では、香川さんの方から従来問題になった点を一つご説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/33
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034・香川保一
○香川説明員 私どもの考え方では、企業担保法案を作成いたしました経緯は、従来から財団組成手続が非常に手数と費用がかかる。こういうことから簡素化の要望がございまして、研究して参ったのでありますけれども、現行のの工場抵当法の基礎的な考え方を変えない限りは、工場財団等の財団組成手続を簡素化できないという見解から、すっかり構想を別にしました企業担保法案というものを考えてわけでありますが、そういう意味合いから申しまして、別に企業担保法というのは、特に一定の範囲を限って、特定の会社だけに適用するというふうな考え方でできたわけではないのであります。しかし、何分にも画期的な制度でございますので、案を広く一般にお示しいたしまして、それについて御意見を聞いたわけであります。一番問題になりましたのは、まだわが国の経済の実情からいって、企業担保法を全面的に適用するほど信用度は高くないという点が問題になりまして、経済界、特に金融界から、一定限度の大きな会社に限るべきだ、そういう意見もございますし、また他方には、そういう一定規模以上の会本社に限ったのでは、財団の簡素化というふうな意味からも、あるいは担保制度のあり方としても十分でない。従ってすべての企業に適用すべきだというふうな、大体大きく申しまして意見が二つに分れておったわけであります。そのほか、しからば一定規模以上の会社に限るとすれば、どういう限り方をすればいいかというふうな点につきましても、意見が区々でございまして、その点について私どもも企業担保法がかりに国会で制定されましても利用されない、あるいはむしろ経済界で憂えておられるような弊害のあるような制度であっては意味がないわけでありますので、さらに深く各方面の意見もお聞きいたしまして、成案を得たいと考えておるわけでございます。問題になりました点は、今申しました適用する範囲をいかに制限するかということが、一番大きな問題点であったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/34
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035・多賀谷真稔
○多賀谷委員 企業担保法ができましたときに、従来の工場財団との関係はどうなるのですか。これはやはり法律としては残しておくのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/35
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036・香川保一
○香川説明員 企業担保法の考え方は、大体浮動担保と申しますか、結局一定の時期までに担保の客体の範囲が確定しない、要するに企業の動いているままの姿で担保に供しようという制度であります。そういう担保制度が経済界でも御指摘のありましたように、すべての企業についてそのまま円滑に利用されるというわけには参らないだろう、と申しますのは、やはり企業によってはいろいろの種類もありましょうし、あるいはその企業者の信用度と申しますか、そういうものもございましょうし、従いまして結局浮動的なそういう担保では十分でないというふうな場合もあろうかと思いますので、財団抵当制度はそのまま並行的に存置しておくのが適当だろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/36
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037・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そうしますと、企業担保法ができても利用できない企業は、工場抵当法の適用を受ける、またそれを利用する、そういうことはわかりますが、同一企業で企業担保法の適用を受けて、そして信用借りをした場合もあるし、さらに工場抵当法の財団を設けることもある、こういう競合する場合も出てきますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/37
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038・香川保一
○香川説明員 実際の企業担保法が制定されまして施行になるという場合を想像いたしますと、特定のそれぞれの企業によりまして、これは債権者側との話し合いできまることだろうと思うのでありますが、企業担保権だけでもってすべての債権者が融資する、あるいは社債を発行するというふうな企業もあろうかと思いますが、あるいは企業によりましては、ある債権者の見方としては、企業担保権で十分だというふうなことになっても、他の債権者からは、財団抵当でなければ困るというようなこともあろうかと思うのであります。それは要するに、そのときどきの債権者と債務者である企業との間の話し合いと申しましょうか、そういうことでいろいろのケースが出てくるであろうと想像されるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/38
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039・多賀谷真稔
○多賀谷委員 企業局は見えておりますか。——実は今香川参事官にお聞きしたのは、日本にもすでに電源開発株式会社にはいわゆる法定先取特権といいますか、あるいはゼネラル・モーゲージといいますか、それが許されている。これは電力会社は、旧公益事業令にも全部あったから何も異論はないのでありますが、そのほかに工場抵当法の適用を受けるという条文が現行の電源開発株式会社法にはあるのですね。それで私、あの電源開発株式会社法を見ていると、先取特権を法定で許しておきながら、抵当法の適用を受けるという適用が現在ある、これはどういうわけでできたんだろうかという疑問を持っているのですが、あれについてどういうふうにお感じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/39
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040・徳永久次
○徳永政府委員 電源開発法に今のような、ある意味でダブったように見える規定がございますが、あの経緯を聞いてみましたら、こういう事情からだったそうでございます。御承知のように一般担保をきめております適用の範囲というものは、社債発行にとどまつておるということが一つであります。社債以外に相当大きな長期の借金をすることがあり得るという場合に、一般担保の規定は社債に限っておりますので、その関係から財団が要るかもしれないという事情が一つ。ことに電源開発の当初の時期におきまして、場合によってその資金を外資によって入れよう、長期の借金を入れようというようなことを考えておったこともあったわけでありますが、その際に一般担保は社債に限られておって、電源開発は、ある意味の政府機関みたいなものでございますから、政府の保証以上に電源開発会社の財団抵当、財団の設定を要求されるかもしれないというようなことも考えてああいう規定を置いたようでございます。しかし、現実にはあの規定が何も働くようなことになっておりません。それは外資については政府の保証だけで十分だというようなことでいっております。さようなことで、ただいま何も働いておりませんが、そういう実際上の必要があるかもしれないという顧慮で入れたという事情でございます。一般担保の規定が、今度の企業担保法で問題になっておりますように、社債のみならず長期借入金にも適用し得るというような構想であればいいのですけれども、従来特別法にあります一般担保、ことに電力会社にあります一般担保の規定というものは一応社債に限っておる。それをそのまま一応まねしたら長期借入金の方に不便があるかもしれぬということを考えに入れたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/40
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041・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そうしますと、一般の電力会社も工場財団を組織していますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/41
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042・徳永久次
○徳永政府委員 これは私詳細に存じておりませんが、あるいはあとで水島さんにでもお聞きいただけば非常にはっきりすると思うのでありますが、私聞いておりますところでは、一般電力会社は社債は一般担保によってやっております。そのほかにやはり長期の資金というものを借りております。ところがこれにつきましては事実問題といたしましては法的裏づけがない形で借りている。これは金融機関としましても、極端に表現すれば無担保の状況というような格好になっておるわけであります。この面からも、企業の担保法みたいなものができれば、電力会社にはやはりある程度貸付の形での長期資金融通の必要がございますし、貸付の安全確保という意味からも一般企業担保法が望まれておるというふうに聞いておるわけであります。従いまして、一般的に九電力では別に工場財団は設定してないというのが通例であるように承知いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/42
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043・多賀谷真稔
○多賀谷委員 旧日鉄株式会社は、これはいわゆる一般の先取特権の規定があって、工場財団を設定してない。それを今度設定しなければならぬといっても、費用もいるし、時間もかかるから、むだじゃないかということになっておるのです。私、企業局長に聞きたいのですが、いわば国営の会社から民間企業に払い下げになるとか、あるいは移るとか、こういう問題は、八幡だけではなくて今後も起り得ると思うのです。あるいは、電源開発株式会社が今公益法人ですけれども、純然たる私企業に移る。さらには、旧公益事業会の適用がなくなるということになれば、これもまた同じです。石油開発株式会社でも同じでありますが、東北興業株式会社でもその通りであります。東北興業株式会社が一つずつ企業を民間に移していった例もあるのでありますが、こういう担保制度が公企業と私企業とでは違うということは非常に困ると思うのです。今後社会党が政権をとれば公企業にかなり移していくだろう。英国の鉄鋼のように、一回移したらどうも都合が悪いというので、保守党になったらそれがまた私企業になったというように、基幹産業にそういうことがあっては困りますけれども、比較的公企業から私企業に企業の形態が移るというような場合も考えられる。これは今の八幡、富士だけの問題ではなくて、今後もあり得ると思うのです。私企業であろうと公企業であろうと、担保制度だけは一本にしておかなければ、結局明治二十何年からのことを討議をしなければならぬ。こういうようなことでは会社にも非常に御迷惑をかけると思うのでありますが、こういう点について企業局としてはどういうようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/43
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044・徳永久次
○徳永政府委員 従来、株式会社の場合に、その社債の発行等に一般担保制度を認めておりました意味というものは、一般担保という制度が大企業の近代的な企業経営の実態から見て合うのだという外国の例もあるわけですが、それを日本で適用します場合に、政府の監督のありまする会社というものは、その限度において、一般の私企業よりも非常に信用度が高いといいますか、政府の経理監督というような面もおのずからつきまとっておるのでありますから、その意味から認めたということであったのではなかろうかというふうに考えるわけであります。そういう近代企業の実情に即したい担保制度が外国にあるということで、そういう形において一部取り入れたのが過去の例であったということでございまするけれども、しかし翻って、そういうものを取り入れていない現状を考えてみますれば、あまりに無用な手続をしているというのが現状でございますので、それを少しでも改善していくことが産業金融を円滑にしていくことになりますので、その意味で、企業損保というような制度が日本にできることが非常に望ましいのではないかということを私ども考え出しましたが、これは日鉄の廃止法とからんで考え出したということでは実はなかったはずでございます。日鉄の廃止法の経緯をごらんになりますれば、御承知のように、最初のときにはわれわれもそういうことをよく知らなかったものですから、工場財団の方に切りかえなければならぬものかなあというくらいに考えて、そういう程度に考えておったのであります。その後外国の制度等から見て、また、産業界も困っているというような事情や、無用の取引をしているというような事情から、何かよその国がやっているような制度を日本に導入することはできないだろうかというようなことで、法務省の方にもお願いしまして、法務省の方としても、それはいい制度だから、何か勉強してみようということで、大へんな御勉強をいただいて、ある一案ができたというような段階に来ておるわけであります。私どもとしましては、日本の産業界、金融界の状況から見まして、いろいろな複雑な状況もございますので、この制度がすぐ全面的にはいかないにしても、漸進的にでも少しでもそれが適用になれば、世の中のむだが省けるといえば語弊がありますが、産業金融の円滑化に資するということで、ぜひ漸進的にでもしていただきたいということを考えました。それに関連いたしまして、日鉄法廃止法の時期と関連して考えますれば、常識的に見まして、企業担保法がある程度全面的でない形にできたとしましても、旧日鉄の分割会社であります八幡、富士が適用を受けないということは考えられないというような気がいたしますので、さような趣旨から、企業担保法ができますまで、廃止法の特例としまして、従来も持っておりました一般担保の制度を生かしていただきたいということをお願いしておりますような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/44
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045・多賀谷真稔
○多賀谷委員 水島参考人にこの際お尋ねいたしたいと思いますが、今われわれは旧日鉄法廃止法について審議をしておるわけです。そこで当然企業担保法の問題が、浮び上って参りました。そこで先生に、ごく概略でけっこうですが、一応各国の担保制度の実情を若干お話し願い、さらに民事局の参事官室から出ておりますあの法案について意見もお伺いいたしたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/45
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046・水島廣雄
○水島参考人 簡単に各国の制度をということですが、まともにやりますと二日あっても三日あっても定りませんので、ごく大ざっぱでごかんべん願いたいと思います。
まず企業担保の大宗と申しますか、もとはと申しますと、一般に日本的な、大陸法的な考えからいいますと、一番なじみの深いのはドイツであります。御承知の通り、千八百年来の初めから、ドイツはリューベックとかバーデンとかいう各ラントにみな鉄道財団抵当を持っておったのであります。これは御承知の通りバーンアインハイテンですが、この鉄道財団の制度が、ちょうど日本の明治三十八年のあの日露戦争が終ったあとの、産業がいんしん期に入りましたときに模範とされたものでありまして、日本の財団抵当とはちょと違いまして、先ほど徳永局長やあるいは香川参事官もお話のように、もう少し企業担保的になってきておるのであります。日本がとったときは少し違うのでありまして、内容が日本は非常に狭くとっております。向うは、日本の一般の鉄道抵当、これは御承知の通りで説明を略しますが、一般の鉄道抵当のほかに、営業資金だの、経営資金だの、みんな含んで、日本の財団抵当の範囲よりも、構成物が非常に多い。だから、担保の客体が多いということが一つ。これはスイスやオーストリアにも、形を変てて受け入れられておりますから、大体日本の財団抵当は、ドイツ、ベルギー、スイスにあったああいう財団抵当と同じようです。執行も、普通の競売から強制管理までいくというようなことで、大体同じようなものです。それからドイツには、企業担保としては、工場財団によく似た特殊の工業のものがあります。それからもう一つ、ドイツは非常に大陸法的で、今何もかも観念的に企業の総体をつかんで担保にするのが、ドイツ流ではなかなかできなかったのです。御承知のように、ドイツは確定主義とか一物一権主義とかいって、ものの確定を概念的にきめないと、どうもこうもいかなかったのですが、たった一つ、ドイツにもゼネラル・モーゲージ式なゲネラル・ヒボテークという一般担保法があったのであります。御承知の通り、ドイツが第一次大戦で敗れましたときに、そういうものがあったのであります。これはいわゆる政府の行政上の一般担保なんでありますが、ライヒ鉄道法上の施設を全部総括的に担保に供したのです。これは御承知の通りドーズ案でしたが、ヤング案で敗れまして、講和条約にはあまり役には立ちませんでしたが、とにかくドイツにも一般担保があったということだけをお含み願いたい。
次はフランスに参りますが、フランスは御承知の通り十九世紀の初めまでは農業経済です、アウタルキーでしたが、中小工業が発達しましてだんだん物的な信用が要るようになりましてからは、フランスでも何か集合的なものを考えなくちゃいけないというふうな観念が盛んになりまして、ユニベルサリテと申しますか、フランスではイダンティテ、物が変っても同一なような物との考え方があるのです。これはフローティング・チャージと法的によく似通っておるのですが、こういうふうな考え方でできましたのがフランスの代表的な企業担保でありますところの営業質です。日本にも学者がだいぶ紹介されておりましたが、アメンドされる前の原型は一九〇九年のフランスの営業質でありましたが、これはちょっと考え方が進んでおる面もありますし、香川さんや徳永さんがお話になったような日本の企業担保よりもおくれておる面もある。フランスのものはあるいはもうすでに皆さん御承知かもしれませんが、企業の一番真髄がとらえられておる点においては、日本の企業担保よりも進んでおる。それは商業権とか賃借権とかのれんとか日本では招牌と訳しておりますものとかの、この四つだけをエッセンシャルされたもので、本質的なもので、そのほかに、おくれている点では、フランスでは営業用の什器とか営業用の動産が入っておるのでありますが、今申しましたように大企業的なものではないものでありますから、フランスでは営業用の不動産は全然入ってないのであります。それからもう一つは、一番大事なところの商品が入ってないのであります。これは企業担保からいうと全く意外なことであります。不動産がないからフランスでは営業質といいます。フランスでは大陸法で、不動産を入れると抵当になるものですから、質的なものですから、どうしても動産が主ですから、質という名前をつけたのです。もう一つ、商品はあまり変転が激しいものですから、営業主と相手方との立場も考慮してこれも削ったのであります。要するにこの三つを省いております。
詳しく申しますと、大へん時間がたちますので、この辺でフランスをやめまして、次はイギリスへ飛びます。イギリスでは御承知のようにフローティング・チャージがありまして、これは香川さんや徳永さんにもう十分御説明を皆さんお伺いになる機会があったかと思いますが、私も二十八年の日本の学術会議、それから二十九年の日本の私法学会で発表したのでありますが、これは今皆さんの手元におありかと思いますが、法務省が発表した案とほとんど同じであります。要するに信託が入っておりまして、社債の担保はほとんど大企業です。先ほど申しましたように信用付与からきておりますから、ほとんど大企業だけの社債に限られておるようであります。もちろんごく例外として一部分の財産に限り、また社債以外の特定の債権にやった例がありますが、こんなものはもうないものだと理解していただいてけっこうであります。要するに全部のものが担保になっている。出たり入ったりするのを一々日本の民法のように——日本の民法では債権者の承諾を得ないで担保物件を変更滅失したり出したりしますと、民法の百三十七条で期限の利益を喪失してしまいますから、これはおよそ何にもならない。こういうふうに当事者の契約で品物や権利が自由に出たり入ったりするというのを公けに認め、それから執行の場合はフランスと同じように特別の考慮が払われております。フランスには包括競売があるのですが、イギリスでは執行の場合は、これはりオーガニゼーションと申しますが、今度の会社更生法でとりましたように、債権を生かしていく、企業を生かしていく、こういう考え方で、これはドイツの強制管理よりもはるかに進んでおりまして、管理人とマネージャーというものを選びまして、どちらでもよろしい、管理人がいけなければマネージャーでやってもらう、あるいは二人でやるならばレシバー・アンド・マネージャーといったような格好で、どちらでもいけるようになって、なるだけ会社をつぶさないというような趣旨になっております。これは皆さんのお手元にありますから省略さしていただいてよろしゅうございますね。
次にアメリカへ大急ぎで参ります。アメリカは御承知の通り一番大きなのが、日本で昭和八年に改正になりましたオープン・モーゲージであります。ほかにもう一つはクローズド・モーゲージ、クローズドされているモーゲージであります。これはほとんど社債に使われるのでありますが、御承知の通り英米法は全部信託が根幹になって、債権者と債務者の間に信託者、受託者が入っておりまから、非常にスムーズにいくわけなんでありますが、クローズドの場合は、ほとんど全部の総財産が担保になって、社債を出されて一回切りですぽっと切ってしまう。一回の社債を出すときは、その財産が一つの順位になる。一順位になら一順位というもので切ってしまう、あとはその同一順位では社債が出ない、だから社債権者には一番安全なんでありますけれども、債務者にとっては一番つらい社債の出し方であります。
それから次は、クローズドせずにオープン・モーゲージ、この中には日本でやっているオープンエンド・モーゲージ、すなわちリミテッド・オープン・モーゲージ、制限したものとさらに無制限の二つがあります。大体日本で今やっているのは額を制限したものでありますけれども、財産のうちの一定の、額まではワクをとっておきまして、市場の売れそうになったときには十億なら十億のワクをとっておきまして、一億、二億、三億と十億になるまで何回も出していく、しかも出したものの担保順位はみんな同一順位であるこういうふうなやり方、それからもう一つ、全然ワクがなしで出しておるそれは、一回の社債の総額がきまっていない、ワクをきめていない。出せるだけ信用だけで出していく。こういうようなやり方がありまして、この場合も実は財産を、将来のものを全然これでは排除できないのかというと、排除できる場合があるのです。特約によって排除できる。新しく入ってくる財産を排除できる場合もある。それからまた特に排除しない場合もある。これはもう全然今までの企業の一定の財産を担保にしておいて、さらに将来のものまでも確実に担保にしようという場合で、有名なブランケットであります。これは将来の取得財産を特に担保にしよう、こういう場合に、アメリカでは後の財産を取得する場合は担保に入るのだぞという約束をしますから、アフター・アックヮイアード・プロパーティ・クローズ、こういうふうなことを言っておる。それはなぜそういうことを英語で特にうたわれたかと申しますと、さっきフランスの話をしましたが、フランスでは将来の取得財産は入らないのであります。将来財産はフランスの営業質には入らない。それから形成の過程にある財産もフランスでは除いておるものですから、、アメリカでは特にアフター・アックワイアード・プロパーティ・クローズ、いわゆる自後取得財産約款——自後に財産を取得すると当然財産に入るという約款ですが、こういうものを取得します。これはブランケット——空白なんですから、いつどこから財産が入るかわからない、先のまとまりがないのでブランケットと言っております。ブランケットという言葉が担保についたのが、俗伝品でブランケット・オア・ゼネラル・モーゲージ、こういう言葉を使うものですから、日本人が間違いまして、よく一般担保、一般担保と言っておるのですが、これは大きな間違いなんでありまして、先ほども私ちょっと気がついたのですが、法務省では最初一般担保といっておられたようですが、今度は企業担保に直していただいたのであります。これはちょっと話が違うのでありますが、企業というのは営業、経営とは違うのです。ドイツ語で言いましても、ベトリーブとウンターナーメンは、全然違いまして、今でこそ日本では企業も営業も同じように使っておりますが、企業担保という言葉は、今度のは非常に意味がありまして、あれは企業担保という言葉を全然御存じない方がお作りになったのかもしれませんが、企業は大体植民政策の冒険的な大きな事業をさしたのであります。ウンターナーメンというのは、冒険的で、そもそも大企業で、生産するこの三つの要素を持ったものが企業です。それ以外の小さいものが営業、ベトリーブです。大体企業、ウンターナーメンという意味で、今度の企業担保法というのは実にいい名前なんです。だからこういうふうな意味が含まれておるかどうか、今では企業と分業ということを一緒にしておりますが、大体これだけの差が語源にはあるのであります。最初は法律でははっきり区別しておりました。後にこれはいつの間にか大体一緒になってしまいました。営業も企業も、何もかも同じように使っておりますから、これはどうお使いになろうと勝手ですが、学問的にはそういう区別があったのであります。そこでブランケットとか、それからフランスの営業質でもフューチュアーの財産がどんな形で入ってくるかということがわからないから、意思表示はなかなかしにくいが、一たん入ったものは営業質にしても出しやすくなってくる。たとえば日立なら日立がある、富士、八幡がある、富士、八幡の機械を自由に出していくこれは現実にあるものが入ってきたのだから自由に出しやすい。将来入ってくるものは目的が特定していないからなかなか特約がしにくい。そこでドイツ法流ではこれができない。ドイツではエルトマンという学者だとか、あるいはカイナート——ドイツの衆議院のカイナートですね、ああいう議員が二十三名でカイナート案を出したのです。そのときの原案は大体第一回はもう否決してしまった。それはなぜかというと将来入ってくる財産は意思表示をしてもわからない。ところが一ぺん入ってきた財産は出ても確定しておるのだからよいのじゃないか、意思表示でわかるのじゃないか、そこでドイツでは自由に入ってくるやつを認めていないものがたくさんあります。将来入ってくる財産いわゆる集会品的なものの考え方というものはだめなんだ、意思表示ができないのだ、これは法律的にはつかみようがないというのでカイナート議員は敗れたのであります。しかしそのかわりドイツにはそれと同じようなものを小作財団という形で作りまして、小作財団ではカイナートの意見を一部とりまして、アメリカやイギリスと同じようにカイナートの案をとった小作財団では営業の必要において自由に出すものはいいのじゃないかという観念をドイツでも思い切って認めたのであります。こういう考え方がフランスの営業質にも、それからアメリカにも、それからフローティング、チャージにも、今度の日本の企業担保法にもたくさん盛られて——こういうものはみな先ほど申しましたように信用が基礎になっておりますから、だんだん経済取引が進んで信用取引に移行していくというふうな現在におきましては——今の第二の御質問にお答えすることになりますが、非常にこういう法案が現状に即して、ある程度金融機関の満足し得るような形に修正されれば、私はこういう企業担保法ができることは非常に賛成なんであります。それからまた、せっかくできたところの富士、八幡がこの際なくなるというふうなことは、現在たくさん企業もあり、こういう企業担保、いわゆるフローティングとかブランケットをつけたような法定先取特権のある会社がたくさんあるのでありまして、せっかく既得権でこういうものを認められておる富士、八幡が今ここですぐ財団を作るというのはいかがなものであるかと考えておりますので、第二の質問にあわせて、企業担保はある程度修正されればよいのじゃないかと私は思います。それから富士、八幡も今のような各国の制度と経済の動きとを看取するならば、富士、八幡の既得権というものをもう少しお延ばしになって、経済情勢にお沿いになるように審議していただいた方がよいのじゃないか、こういうようにお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/46
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047・多賀谷真稔
○多賀谷委員 第二の質問といいますのは、日鉄法の廃止法についてではなくて、今民事局から出ておりますあの試案に対して一応あなたの御意見を伺っておるのです。具体的な批判があれば、どういう点が問題であるのか、その点をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/47
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048・水島廣雄
○水島参考人 それではその点についてごく簡単に述べさせていただきます。この法務省の案の批判ということは、どうも私にははなはだつらいことなんです。実は私の浮動担保を紹介したときにも、もう学界でもみな相当お知りになっておったようですし、法務省もいろいろな案をお持ちになっており、学界でもいろいろな意見のあることもよく御承知の上でいろいろな苦心をされてお作りになったので、まあ早く言うと、私の考え方も相当この法案と一致した点が多々あるのでありまして、自分も相当関係のあることを批判せよと言われることは私としてもはなはだつらいことなんですが、金融機関といたしましては、先ほど堀越参考人がおっしゃいましたように、何だか特定担保を全面的に優先させるというふうに一般に解釈されておりますので、全面的に優先させるということになれば、せっかく担保をつけても、みなあとから一金融機関が浮動担保をつけ、あるいはあとから他の金融機関が全部特定担保を持っていったならば、浮動担保というものは無力になってしまうのじゃないか、極端に言えばこういうふうな考え方が割合広く行き渡っておるのじゃないかというふうに懸念しますので、あるいはもう一度この法案は関係者の方によく諮っていただいた上で、もう一度練り直して時勢に沿うようにしていただきたい。そうしていただかないと、あるいはすぐこのまま出すということは無理かと思います。今述べましたことはお答えにはそぐわないことをよく知っております。私は批判ということになりますとはなはだつらい立場にありますので、ごかんべんを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/48
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049・神田博
○神田委員長 この際堀越、水島両参考人にごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ長時間にわたり本案審査のため貴重な御意見の御開陳をいただき厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/49
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050・神田博
○神田委員長 再び機械工業振興臨時措置法案を議題とし、政府に対する質疑を継続いたします。質疑の通告がありますので順次これを許します。加藤溝二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/50
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051・加藤清二
○加藤(清)委員 私は機械工業振興法の問題についてほんのちょっとだけ承わりたいと存じます。
まず第一番目に重工業局長にお尋ねしたいのでありますが、これには予算が伴っておったことでございますので無理からぬと存じますが、すでに業種の指定が行われておると思います。その業種の範囲でございますが、これが業種指定を受けた業界と受けない業界とではここに大きな相違ができて参りますが、それについて、どうせその法律をもって保護され、育成されるということであるならば、自分たちの業界もぜひ仲間に入れてもらいたいという希望がずいぶんあるわけでございますが、この希望があった場合には業種の指定の種類をふやす用意がございますか、ございませんか、まずその点を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/51
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052・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 この法案で指定いたします業種は政令によって指定いたすわけでございます。先般御説明申し上げました通り、主として機械工業のうちの基礎部門及び部品部門を中心として指定いたしたいと考えております。とりあえず考えている業種は十七、八ございますが、今後またかような概念に該当しまして、日本の機械工業の上から見まして重要度が非常に多く、現在立ちおくれている、これをどうしても盛り上げなければならぬというふうなものでございまして、業界でも特にそういう希望がありますものにつきましては、資金関係ともにらみ合せて十分考慮いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/52
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053・加藤清二
○加藤(清)委員 考慮をするということは、資金さえふえれば将来業種をふやす用意があるということでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/53
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054・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/54
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055・加藤清二
○加藤(清)委員 それでは承わりますが、この初年度用意されました業種指定の場合の基礎観念と申しましょうか、目的と申しましょうか、それはただいま基礎部門と部分品部門と言われましたけれども、基礎部門及び部分品部門でもなおおくれているところの方が多いと思いますが、これを限定なさる場合にどういうところで線をお引きになったのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/55
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056・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 大体日本の機械工業の現状から見まして、基礎部門あるいは部品部門に属しておりますもので特に立ちおくれている、しかしながら伸ばすことが非常に重要である、かような観点から大体十七、八業種をとりあえず選んだ、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/56
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057・加藤清二
○加藤(清)委員 わかりました。それでは承わりますが、立ちおくれているという点としかしながらこれを将来伸ばす必要がある、こういうところで、予算の許す範囲において指定が行われた。これは予算が限られておりますから、当然のことながら、業種が限られるという点についてはよく私にもわかります。しかしながら問題は伸ばす必要性及び立ちおくれの程度の査定という問題になるわけでございます。そういうことによって順位がきまってくるわけでございます。私寡聞にしてほかの機械のことはよく存じませんけれども、先般来本委員会において皆様方に慎重御審議を相願いましたところの繊維設備工業の問題、これは与党の賢明な方々の案によって附帯決議もついておりますが、その附帯決議の精神からいっても、当然繊維の機械部門を将来振興させなければならないことになっておる。私どもはこれに反対をいたしましたがそれはその精神に反対したのでなくて、まだまだ足りないというところに反対をしているだけのことでございますから、この附帯決議なり、修正の趣旨というものは大いに伸ばしていただきたい、そうすれば私どもも賛成だ、こういうことでございます。そこで特にこの際私が繊維機械部門をほんとうに取り上げてこれを政府みずからの手によって指導育成してもらいたいということは、ほかでもございませんけれども、繊維の将来を考えますと、内地の繊維は御承知の通り、どうしても化学繊維に向っていくのでございます。化学繊維というものは本元がアメリカでありイギリスである。ときにはイタリアという点もございますが、主としてアメリカでございます。このアメリカの機械の考え方というものは、われわれの考え方のような家内工業的なものでなくて、すでにオートメーション化していることはあなた方がよく御調査で御存じのはずでございます。これと拮抗していかなければならぬ。今日かの国から受けております機械に支払います特許料これを考えましてもずいぶん膨大なものでございますが、ほんとうに繊維を伸ばそうとすれば、当然これを将来はわがものとしなければならないと思うわけでございます。そこにあなたのおっしゃるところの伸ばす必要のある部門、こういうことがこれは決定的な問題となるのであります。それと同時に内地において綿とか絹の織機部門、これがもう国法によって制限されるということになりました場合に、機械部門は死んでよろしいということなら別ですが、生きていけということならば当然のことながら後進国への輸出ということを考えなければならない。ところが後進国への輸出は御承知の通りイギリス物であるとか、チェコ物であるとかいうものと市場において相当激烈な競争をしなければならないわけでございます。しかもこの機械は——後進国が繊維の自給自足、工業化に当って一番先に取りつくものが軽工業でございますが、一番取りつきやすいのが目につく衣料であり、技術的にそれほど難渋をしなくともいけるところの繊維でございます。さてそうなりますと、後進国は競っていずれの国から機械を仰いだならば自分の国の繊維を自給自足のところへ持っていけるかということについては一斉に今研究を進め、すでに購入実行の段階に立ち至っておるわけであります。こういう際に価格のみならず、技術の面においてもよほど進歩させたものを持っていかないと、遺憾ながら商社がどのように努力いたしましても、海外市場においてはとうてい拮抗することができない、こういう状況でございます。これもあなたのおっしゃいました伸ばす必要性という点でこれは最も白眉ではないかと思っておるわけであります。にもかかわりませず、ここで申し上げておかなければならぬことは、あなたのおっしゃる基本範疇であるところの基礎部門の中には入らぬにしても、部分品部門には当然入る。繊維機械の部門というものは、ほかの機械とは違って、長い歴史を経てきておると同時に、注文生産という形式によってきておるのであります。従って部門部門がスイスの時計ほどではありませんけれども、専門化しておるわけでございます。同じものと申しましても、先ほども参考人の公述にもありましたように、勘と技術がすぐれておりませんと、せっかく作りました鋳物が十分な効果を発揮しないばかりか、織りきず、織りむらというものを作るということに相なるわけでございます。従ってそれをなるべく少くするために勘と技術とのすぐれた養成工、技術工が少くとも一人前になるのは十年間くらいを今要しておるわけであります。この十年間を要した技術工が作り上げた鋳物を、材料の関係その他でいびつになります関係上、少くとも鋳物を三年間くらいは枯して、つまり放置して、経済的にいえばそれだけ資本が寝るわけでございますが、そういう苦労までして作り、また鋳物なるものが非常に細分化され、専門化されて作られているという状況でございます。こういうところは本法案を適用するに最も適したところであると思うにもかかわりませず、この中のスピンドルさえも入っていないということは、いかような原因でそうなさったのでございましょうか。繊維工業の設備制限のときのあの考え方と、今度の考え方とはどうも矛盾して、繊維工業設備のと遂に指導育成するとおっしゃった言葉が、あくる日に審議しておりますこの法案の中に入っていないということは、どうもやはり私が想像した通り、政府のおっしゃることはから手形に終るような気がしてかなわぬのでございますが、一体いかなる理由によってこの繊維部門だけはオミットされておるか、その点をまず承わりたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/57
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058・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 繊維機械工業の重要性につきましては、ただいまお話のあった通りでございまして、われわれとしましても繊維機械工業の技術向上の問題、あるいは輸出振興の問題について十分考えていきたいと存じます。
先般の繊維産業設備制限の際にも申し上げました通り、当面の問題は、やはり繊維産業関係の設備の制限の結果、どう生産を維持するかという問題で、国内の需要の維持あるいは輸出の促進ということにできるだけ努力を払いたいと思っております。
それから機械工業それ自体の合理化の問題は、この前の繊維工業設備制限のときのお話のときにもお答え申しました通り、われわれといたしましては資金の関係がございまして、当初の計画には入れておりませんが、来年あるいは再来年さような機会に機が熟しましたならば、今お話の機械のスピンドルとかかような繊維機械の部品については、この指定として取り上げていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/58
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059・加藤清二
○加藤(清)委員 大へんけっこうなお話を承わったわけでございますが、内地で制限をされるということになりますと、当然将来は輸出にたよらなければならぬということに相なるわけでございます。繊維機械の輸出の実績をながめてみますと、造船に次いで、ミシンと肩を並べるほど機械部門の輸出では指折りの方でございますが、今後この状況が維持されると思うたらとんでもない大間違いでございまして、すでに中共でも織機部門は輸出の傾向になっております。それから繊維については、後進国が競って先ほど述べましたような傾向にございますので、各国の繊維機械の輸出は、政府それみずからが非常な熱意をもって行っておるのでございまして、補助金等の施策も相当厚い程度に行われておるようでございますが、わが国においてはそれほどこの部門は、過去においては政府の援助を受けておらずにひとり立ちでいっているのでございます。ひとり立ちでいけるからほっておけばいいかというと、世界の情勢は、そういう安易な考え方を許さない状況に相なり、もしここで政府の援助なりあるいは指導なりということを怠るならば、ここ数年を経ずして繊維機械の輸出が低下の一途をたどるということは、くろうとでなくても、しろうとでも見通しをつけているところでございます。
そこで内地でこれほど打撃を受けた業界に対して、たよるのは輸出だけだというならば、輸出市場で機械それみずからが競争できるような指導なり援助なりをされるのが当然の政府の任務である。それをやられるのが重工業局の使命である。私はかように考えているわけでございます。そこで予算が許せば早急にとおっしゃいましたけれどもかりに本年度の予算が十六億であろうと、それが十三億に削られようとも、その中へ部分品の一つくらいの部門は頭を出しておっても決して差しつかえはない。むしろ少い予算の中へでも入るべきものが、政府の考え方のどこかの間違いから入れることを得なかったというふうに解釈しているのでございますが、ただいまの御答弁によりますと早急にスピンドル程度は入れる用意があるという話でございますが、一体それはいつの時期に入れられる用意がございますか、とかく政府のおっしゃることはから手形に終りがちでございますので、この際はっきりとその時期を承わっておきたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/59
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060・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 その問題は、いつというお話でございますが、業界の機運が熟しまして、合理化でも早くやりたい、かような時期にはできるだけ早くわれわれとしては取り上げたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/60
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061・加藤清二
○加藤(清)委員 もう業界ではすっかり、機運ができておるどころの騒ぎではない。何とかしてもらわなければならぬということは、繊維工業の制限のときに十分意思が反映しておるはずでございまして、もしそのようにおっしゃるならば、いかなる態勢を整えたならば、あなたの方が御許可になりますか。その態勢の基準などをおっしゃっていただければ、実はこうなっておりますということを私はここで申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/61
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062・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 機運と申しますか、われわれといたしましても、この法案の準備の過程におきまして、今後の目標をどうするか、基準をどんなふうに持っていくか、いろいろ調査する問題もあるわけでありまして、そこで私の申し上げましたのは、今年度は一応従来考えておりました基礎機械、部分品部門で予定しております十七、八業種で大体資金の額に限度がありますので、さような点で、そこに、先ほど参考人のお話から見ましても、こんな額では少いというふうなお話もございまして、そこへ果して繊維機械が割り込めるかどうかという問題も考えなければいけないと思いますが、もしさような余地がございましたら、それも考えたい。それからまた来年度できるだけ資金を獲得してさような時期において考えたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/62
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063・加藤清二
○加藤(清)委員 わかりました。それでは押し問等をやることはやめますが、私は不敏にしてほかの業界のことをよく知りませんので何ですが、私はほかの部門と繊維機械部門とを比較してみても、あなたのおっしゃるところの指導育成の必要度という問題は、決してまさるとも劣らないものである。ただ、最初に調書をとられました折に、何がしの調書の不備があったとか聞いてはおりますけれども、それはほんの一部分の業界の事務員がいいかげんにこれを軽く見積って、ちょこちょこと書いて出したものだから、そういうことになったのであって、それだけでもって判定をされるということは、入学試験の場合に、内申書だけできめてしまったと同じことになるので、本人の実態をよく調べて御決定が願いたかったわけですが、それも今となっては取り返しがつかないとおっしゃるならばほんとうは私はこれから取り返しがつくと思う。百歩譲って当局の意思を尊重しますが、次に入れる時期だけは聞いておかぬと工合が悪いわけです。時期も不明であるというならば、私は今度はそれに指定になるであろうと思われる業種と比較検討して、いずれが重要であるかの討論を一ぺんやってみたい。せめて時期など聞かぬことには——百歩譲れば全部譲ってしまうという勘定になるから、五十歩ぐらいは譲りますが、全部が全部譲るというわけにいかぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/63
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064・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 私のお答えがあるいは明瞭でなかったかもしれませんが、私としてはさような機運が熟すればできるだけ早く取り上げたい。そして本年度は一応資金に予定しておるものがございますが、それに差し繰りができまして、今年度においても考えられたら追加いたしたい。来年度においてはこれは新しい問題でありますから資金をできるだけ確保して、その際においてしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/64
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065・加藤清二
○加藤(清)委員 わかりました。それじゃ資金がありさえすれば当初にでもやる、しかしそれができぬ場合には、来年度予算においては筆頭に入れる、こういうことでございますね、そう解釈してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/65
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066・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 筆頭にという言葉は、ほかの産業の筆頭かどうかはわかりません。とにかく来年度において研究したい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/66
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067・加藤清二
○加藤(清)委員 来年度に研究じゃ困るので、研究は今からやっておかなければいかぬ。来年度に入れるというのか、来年度に研究するというのか、はっきりしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/67
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068・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 今の言葉はあるいは適切でなかったかもしれませんが、来年度に取り上げたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/68
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069・加藤清二
○加藤(清)委員 それではもう一点で終りますが、来年度入れるという見通しがすでに立って、その必要性を痛感していらっしゃるというならば、この際私はそれを実行に移すために次のことを提案してみたいと思う。それはほかでもございませんが、この法律がもし通過いたしますると、審議会が設けられることに相なっておりますね。その審議会の答申と政府の意向とを相マッチさせたところで実行に移す、こういうことになっておるようでございますね。そこで審議会の中に繊維機械部門——輸出では指折りの、一、二を争うところの部門であると同時に、日本総体の輸出の三分の一を占める繊維、その機械を作る部門の代表をここへ加えるということは、これは時宜を得たものであり、最も必要であると思いまするが、それを入れる用意はございますか、ございませんか。その点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/69
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070・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 機械工業審議会は一般機械関係の方、あるいは特定機械関係の方、さような方も考慮しておりますが、繊維機械の場合もただいまお話の通り、これは今後非常に大事な問題だと思いますので、われわれ事務当局といたしましてはこの問題を考えたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/70
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071・加藤清二
○加藤(清)委員 それではこの際政府当局に要望を申し上げたいと存じますが、何と申しましても、斜陽とかどうとかいろいろな空気はございますが、繊維は外貨の点においても三分の一占め、輸出の外貨獲得についてもまた同じように三分の一を占めている。これが繊維の実態なんです。そこでこれをとってみますと、材料は大体六億から七億ドル程度費しておるわけであります。ところが輸出がやはり六億から七億で、輸出の最高峰を占めておるわけでございます。そうなりますと国内の衣料は、繊維業界の努力によって材料代は全部輸出でかせいで、そのロスによって国内の衣料を満たしておるのが日本の現状である、こういうことに相なるわけであります。これは膨大なことなんです。これを農業と比較いたしてみますと、農業においては政府の施策なり、あるいは援助なり保護なりということが膨大に行われておるわけでございます。農業の生産部門に対して農林省という省が一つあるわけです。日本の総人口の約三割から四割がこれに従事しているわけなんです。にもかかわりませず食糧が足りない。それで年々歳々二千万石から二千五百万石というものを購入しているわけです。これと繊維と比較いたしてみますと、繊維の方は材料代によけい食う食うといいますけれども、その材料代は輸出によってちゃんとベイになっているわけです。それでどうかといえば、国内の衣料は繊維業界の努力と英知と技術によって全部出まかなっている、こういうことです。あまり援助ももらわぬ。特に機械部門に対して今まで政府の援助が何ほどあったかといえば、農業におけるところの機械部門に与えられた援助よりもはるかに少い。そうでしょう。こう考えて参りますと、機械部門が日本の国民経済、国民衣料に貢献したその量というものは、農業よりもはるかに大きい、こういうことがだれしもうなずけるわけです。そういう部門を将来、この傾向を後進国にも譲るということは、これは東洋における最新の先進国である日本の義務でもあり、繊維の最高峰といわれている日本のとるべき最良の諸外国に対する恩恵でもある、こう思うわけなんです。それのもとをつかさどっていらっしゃるのがあなた様であります。だからあなたはこの部門に対しても、もそっと活眼を開いて指導育成し、日本の国民衣料をより安くするのみならず、この恩恵を諸外国にも及ぼすという大きな見地に立っておやりになれば、あなたのお仕事も意義がありますし、今の上程されております本法案も非常に意義深いものになる、こういうことでございますので、一つぜひ以上申し述べました要望をこれに加味されて、一そう本法案が意義づけられるようにしていただきたい、こう思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/71
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072・神田博
○神田委員長 この際午後二時まで休憩いたします。
午後一時八分休憩
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午後三時十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/72
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073・神田博
○神田委員長 休憩前に引さ続き会議を開きます。
機械工業振興臨時措置法案を議題とし質疑を継続いたします。田中武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/73
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074・田中武夫
○田中(武)委員 先日質問中に時間がきまして中止いたしましたので、残っておる点につきまして一、二お伺いいたしたいと思います。先日ちょうど技術の問題についてお伺いしておるときに時間がきたと思うのですが、第六条の三号の技術の制限の項目、これを一つ具体的に、制限ということについてはどういうふうにやられるのか。この中に技術の公開とか技術をお互いに融通し合うというようなことも含まれているのか、そういうことも含めて技術の制限ということを考えているのか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/74
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075・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 ここで技術の制限と書いてございますのはちょっとわかりにくい文句でございますが、これは独禁法の用語に基いたわけでございます。しかしわれわれといたしましてこの技術の制限でねらっておりますものは、部品とか原材料の規格の統一とかあるいは単純化、かようなことをねらっております。御指摘の技術の公開というような概念はここではやりにくいんではなかろうか。技術の公開は一面においていい面もございますが、一面また各企業の特色もありますので、かような点はよく業界とも話し合って慎重にやってもらいたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/75
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076・田中武夫
○田中(武)委員 局長の先日のお話では、日本の機械工業は諸外国に比べて技術的にもおくれておる、こういうお話もありましたので、これの技術的におくれているという点をカバーをして、日本の機械工業の技術的な水準を上げるためには、お互いの持っている技術を公開し合うとか、あるいはともに研究をして水準を上げるということが望ましいのではないか、こういうように考えますし、またそういうことがこの第六条の共同行為の一つの目的でもないかと思うのですが、そういうことと共同行為との関係はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/76
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077・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 パテントの問題とかノー・ハウの問題になりますと非常にむずかしい問題になると思いますが、そうでないものでも、特に今お話し申し上げました規格の統一とか単純化の場合を通じましても、お互いに製品なりそういうものについて検討し合うわけでございますので、さような機会にそういう点を取り上げてやっていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/77
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078・田中武夫
○田中(武)委員 技術の点は、私の希望としては、水準がおくれておるということであるので、できるだけ行政的な強力な措置によってそのおくれている水準を上げていくことが望ましい、こういうことでお伺いしておったわけですから、そういう趣旨に従って、パテントの問題等々ありますが、できるだけ水準を上げていくんだ、こういう施策を要望いたします。
次の第七条ですが、七条の各号の規定を見ますと、「必要な限度をこえないこと。」「害するおそれがないこと。」こういうように注意的な規定が書いてあるわけでございます。具体的に必要な限度をこえないとか、利益を不当に害するとかいうような認定は、どういう点に立ってどなたがなされるのですか。
〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/78
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079・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 その点は独禁法等にあります条項に準拠したわけでございます。しかしながらで八条でごらんの通り、認定は大体通産大臣がいたすわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/79
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080・田中武夫
○田中(武)委員 通産大臣がやるとして、それには審議会がやはり関与するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/80
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081・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 別段審議会は関与いたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/81
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082・田中武夫
○田中(武)委員 行政的措置としてあくまでも大臣の権限でやる、こういうことですね。そうした場合にかりにこの規定でおそれておるような必要な程度を越えたとか、不当に利益を害したというようなことが現われた場合、そのことによって損害を受け、犠牲を受けたりするようなより零細な企業、これに対する救済の方法とか、あるいはそれに対する何かの処置ということはお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/82
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083・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 同様の類似の規定が独禁法にもございまして、その例にならったのでございまして、従ってこの各号に適合するものでなければならないのでありますが、適合するものでなくなった場合にも、共同行為それ自体変更するとか、取り消すという措置を通産大臣が八条によってすることになっておりまして、矯正することになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/83
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084・田中武夫
○田中(武)委員 矯正することになっておるのですが、それによって犠牲を受ける部面があるでしょう。必要な限度を越えたカルテル行為がなされた、あるいは損害を受けたとかという場合に、それは大体がより零細な企業が受けるということになると思います。それに対する救済というか、そういうことによって犠牲になった場合はどういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/84
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085・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 その場合、御承知の通り八条で矯正規定がありますほかは救済措置を予想しておらないわけであります。これはほかの場合も同様でございまして、独禁法の場合、この前の繊維の設備制限の場合も同様だと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/85
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086・田中武夫
○田中(武)委員 十条に不公正の取引法を用いるときはこの限りでない、これは公正取引委員会との関係だと思いますが、こういう認定もやはり公正取引委員会の方でやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/86
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087・坂根哲夫
○坂根政府委員 不公正な取引方法を用いるときはこの限りでないというのは私どもの方で認定いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/87
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088・田中武夫
○田中(武)委員 大体この法案については私としてお伺いしたい点は終りましたので、最後に希望だけ述べておきたいと思います。
最初申し上げましたように、この法律の出発に当って最初予定しておった事業団がこういう法案に変らなければならなかったという事情に、当局なり政府の機械工業に対する態度が現われておるのじゃないか、このように思うのであります。むしろ通産当局よりも大蔵当局というか、あるいは政府全体としての考え方が、日本の機械工業に対する認識がもう一歩というところじゃないか、こういうように思います。今後この法案ができまして、適用に当ってはそういう点も十分注意していただきまして、強力なる推進をお願いしたい。——やめようと思ったら大臣が見えましたので、ことに大臣にお願いしたいのですが、今申し上げているのは、この機械工業振興法案が、最初は事業団ということで発足しようとしたが、しかしながらいわゆる予算折衝において本年度の三十億円かの予算が削られたというところから、やむを得ずこういう法律に変ってきたわけです。先日、大臣にかわって通産次官から答弁を受けたのですが、結局目的が達せられるからというのです。なるほどこの法律が思うように適用できた場合に、あるいは当初の目的は達せられるかもしれない。しかしその過程において、事業団の場合とこの法律によってやる場合とでは、大きな違いができてくる。ことに設備の更新等がすべて企業者の責任、危険の上においてしていかなければならない。事業団の場合は機械を貸してもらうんだから、負担もだいぶ軽いと思いますが、そういうような点について、今後この法律施行に当って、機械工業の振興のために当局として、十分注意していただきたい、こういうように考えておるわけであります。
大臣に最後に一点お伺いしたいのですが、事業団という構想がこの法律に変ったことによって、今後日本の機械工業の振興と一いう点について大臣としては別に支障はない、このように確信を持っておられますか、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/88
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089・石橋湛山
○石橋国務大臣 われわれとしても事業団の方がより有効であろう、こう考えて、最初そう考案したのでありますが、しかしいろいろな事情でこの法案の形が変りました。しかし実質においてはこれによっても十分その目的を達し得るということは、先ほど来事務当局から申した通りと私は信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/89
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090・田中武夫
○田中(武)委員 いろいろな事情によって変わったという点ですが、その事情たるや、通産省は大蔵省に押されたといいますか、通産省がこれだけの予算がほしい、こう言っているのに、大蔵省に削られたのじゃないか。そのためにやむを得ず窮余の一策としてこの法案を考えた。従って目的はこれによって達せられる、こう言われておるが、最初の構想からは相当変わってきたために、目的が果して達せられるかどうかということをわれわれ心配しておるわけです。と同時に、この機械工業にはいろいろと問題があると思う。この法律のようなことで果して目的が達せられるか。なるほど第一条には遠大な理想がうたってあるわけです。国民経済の健全な発展に寄与するんだ、これはけっこうなことであるけれども、この程度のことで果して達せられるか。私の申し上げているのはこういうことになるわけです。と同時に、第二条でいわゆる特定機械として指定せられるわけですが、こういう個々のものでやるだけでなく、全般的は機械工業の振興面、ことに工作機械等につきましては、先日も大臣のお留守のとき申し上げたのですが、大は戦艦から小はミシンの針を作るまで工作機械が必要である。しかも大部分は、戦時中無理して使ったところの、がたがたになっておる機械をまだ使っておるのが実情です。もっと本腰を入れていただかなければ、ほんとうの機械工業の振興ということはできないのじゃないか、このように考えますので、最後に大臣として、こういう機械工業に関してどの程度力を入れておられるのか、また今後どの程度力を入れようと考えておられるのか、その決意のほどをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/90
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091・石橋湛山
○石橋国務大臣 わが国が機械工業の振興をはかる、ことに機械工業の振興という中にも性能のいい機械を作るように、機械そのもの、あるいは資材の関係等について十分研究をして、いいものを作るようにしなければならぬということは言うまでもありません。従って、それに対して政府としても十分の力を尽さなければならぬ、そういうことですが、ただこの事業団の場合は、実は大蔵省だけではないのでありまして、部内においても、ああいうふうに手を拡げて果して考え通りに振り回しができるかということにもかなり問題があって、この機械の法案を作るまでには部内においてずいぶん長い時間をかけて練りましたし、また案も幾度も変ったのであります。必ずしも大蔵省だけの関係でこういうふうに変ったわけではありません。むしろ私としては、この案でスタートして、今の部品その他で割合に小じんまりと、はっきりした目標をつけてやっていくということの方が、機械産業全体の将来のためにはいいんじゃないか。やってみました結果、なお大規模にやるべき必要があればそのときにこれを考慮したい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/91
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092・田中武夫
○田中(武)委員 事業団の構想からこの法案に変わったことにおいて、通産省の考え方は根本的に変っていない、こういうふうに了承してよろしいんですね。——こういう部品のようなことで出発するけれども、こういうことで満足するのでなしに、将来はもっと大きなものを取り上げて、機械工業全体のことを強力にやっていくんだ、このように了承してよろしいんですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/92
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093・石橋湛山
○石橋国務大臣 その通り御了解下さってけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/93
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094・田中武夫
○田中(武)委員 最後に、今言われた決意に従って強力な施策を進めていただくようお願いいたしまして、私はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/94
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095・小平久雄
○小平(久)委員長代理 多賀谷真稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/95
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096・多賀谷真稔
○多賀谷委員 まず大臣に御質問いたしたいのですが、最近政府は、吉田内閣以来、東南アジアの貿易ということを盛んに言われておる。ところがくしくも、その東南アジアの貿易関係は、数字から見ますとむしろ下りぎみである。すなわち最近における中国その他近隣のアジアの関係の貿易が薄れておりますから、アジアでも東南アジアに重点を置かざるを得ないのですけれども、残念ながら、昭和二十六年を頂点といたしまして、二十六年では日本の全貿易の四一%が東南アジアとの関係にありましたが、二十七年が三五%、三十年はだんだんと下って二八%、こういうことになっておる。金額は一般に拡大されておりますから、必ずしもそれに正比例して下っているというわけではありませんけれども、比率が非常に下っておる。これは私はやはり東南アジアの現状というものを十分分析しなければならないと思うのです。ことに東南アジアは後進国であります。これらの国は最近初期の工業化に入っておる。工業化の段階ではいわゆる初期の段階になっている。でありますから、消費財の自給態勢をまず確立しておるという状態であります。むしろ日本からは、今後消費財については多くを望めない。そこで資本財ということになる。向うは、消費財は自給態勢が確立されますから、資本財の方をむしろ歓迎をする。そうなると、資本材については、果して日本は他の先進諸国に比べて優位にあるかというと、そうでない。今問題になっております機械工業におきましてはことにそれが顕著でありまして、機械工業は戦前にはあまり輸出されていない。そこで日本の品物は非常に信用度がない。少くとも先進諸国に比べて、価格が一〇%から一五%ぐらい低い、こういうようなことでなければ、私は先進諸国の品物とは太刀打ちできないと思う。そこで一体政府は、この東南アジアの後進国に対する機械輸出についてどういうように考えられておるか。ことに私は、価格が今申しましたように安くなくては、実際問題としては信用度のない日本の機械は入らないと思うのです。ですからそれらについて根本的にどういうふうにお考えであるか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/96
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097・石橋湛山
○石橋国務大臣 お話のように東南アジアの貿易は、私は軽工業品も決して望みなきにあらずと思いますが、重点は、割合から申しますと比較的重工業品にだんだん移って参ると思います。従って機械工業の発達、プラント輸出というものにだんだん重きが置かれますが、それには、お話のように価格が安いということはむろん必要であります。しかし残念ながら、日本の今の原材料の関係の上から申しまして、たとえば鉄等の関係から申して、いわゆる機械工業の先進国以上に日本の製品を安くするということは、非常に困難な事情にありますから、従って原料の供給についてなお一そう研究し、また豊富にする必要がある。従って、製鉄というようなものをもっと大いに盛んにして、その製鉄の原料の輸入等について新しいマーケットを開くということに、ただいま努力しておるわけであります。そういうことと同時に、これはやはりキャッシュで売るというよりは、一種のインベストメントあるいは延べ払いということになりましょうから、輸出金融ないし何かの形で投資をするというようなことで、日本のプラント輸出に結びつけていくことが非常に必要だろうと思います。こういうわけで、これもうっかりやりますと、国際関係でいろいろな問題が起りますが、何らかの方法で東電アジアのみならず、中南米等に投資ができるような日本の機構を作りたいということで、いろいろの角度から今研究をしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/97
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098・多賀谷真稔
○多賀谷委員 鉄鋼は、日本の立地条件からいいまして、私は必ずしも諸外国に比べて劣っていないと思うのです。ですから、鉄鋼はかなり優秀な機械もあるし、技術の提携もできておりますから、私は伸び得ると思うのであります。あるいは特別な日本の優秀さを誇っておる技術を持っております造船は伸びるでありましょうけれども、一般の機械は非常に伸びにくいだろう。この五カ年計画では、鉄道車両とか産業機械とか、あるいは農機具用機械とか電気器具というようなものが、かなり伸びるようにあげられておりますけれども、私はなかなか困難性があるのではかかろうかと思う。東南アジアの貿易も、必ずしもバラ色のような状態はしていないというように考えるのであります。今のような貿易は——むしろ世界の貿易拡大は、先進国と後進国の拡大ではなくて、先進諸国間の拡大になっておる、こういうような状態にもあるので、私は非常な困難性が予想されると思うのです。政府は今抽象的にお話をなさいましたけれども、たとえばアフター・サービスを含めてのサービス部門も、今各社が別々に支店を出して、あるいは出張所を設けてアフター・サービスまでやることは、なかなか困難ではなかろうかと思います。昔のように三井物産とか三菱商事が、世界的に出張所を持ち、支店を持って確立しておったときでも、なかなか困難でしたが、さらに、一般機械の輸出というのは、いわば新しい分野であります。私はかなり困難性があるのではなかろうかと思うのです。そこで、第一に海外において総合的な、政府といえばなかなか問題があるでしょうけれども、統合的なサービス機関を置かれる必要があるのではなかろうか、こういうことを考えるわけですが、大臣でも局長でもよろしゅうございますから、御答弁を願たい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/98
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099・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 海外におけるサービス等をやる機能を持つ機関を考えたらどうかというお話でございしたが、実は機械関係におきましては、重機械についてまず日本輸出プラント技術協会というものを昨年結成いたしました。それに対して、政府から約一億八千万円ばかりの補助をいたしております。この機構は、海外六カ所に出店を持っております。それと同時に、その機構はそれらのいろいろの機械輸出に関する事前調査というものをいたしますと同時に、技術的なコンサルタントの仕事をしよう、こういうわけで、今大いに努力しておるところでございます。
それからもう一つ、これは軽機械関係になりますが、やはり業界で個々にやられるアフター・サービスもございますが、何といってもそういうふうな業界をまとめたものも作りたいということで、農機具については昨年予算でビルマにサービス・センターを作ることをきめまして、国が補助してやるということで、今進行しております。また本年度の予算では、電気機械のサービス・センターをパキスタンに設けたい、かように考えております。
そのほか、写真機につきまして、これは国の予算ではございませんが、来年競輪の資金からニューヨークにサービス・センターを作るということで補助し、本年一度においてもこれを続けておる次第でございます。さようなことで、いろいろの方面から海外に対するサービスを、もちろん業界自身においてやっていただくことがまず第一でございますが、国としても、かような方法で補助して、大いに市場開拓に努力しておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/99
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100・多賀谷真稔
○多賀谷委員 価格引き下げについては具体的にどういうような考え方を持っておられるか、これは抽象的に言えばいろいろ言えるのですが、政府の具体的な政策としてはどういうように考えておるか、これをお聞かせ願いたい。今大臣から御答弁をいただいたのですが、きわめて一般的な、抽象的なはっきりしない御答弁でしたが、局長からもう少しお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/100
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101・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 その価格引き下げの問題はいろいろの面があると思います。材料の面もあると思いますが、主として問題は設備とか技術の問題になると思います。そこで何といっても設備の近代化をやらなければならないということで、従来大企業につきましては開発銀行から資金を十億とかその程度のものを年々機械関係には出してきております。従って、かような資金で自動車であるとかその他は相当近代化が進んできておるわけであります。それから実はそれと同じような趣旨もございますので、基礎部門とかあるいは部品部門、かような部門におきましても、この法案でねらっておりますものは近代化設備をこれに行いまして、その設備によりましてコストを安くしていく、かようなことのねらいであります。そのほか技術問題につきましては、いろいろ優秀な技術を海外から導入することもやっておりますし、国産それ自身の努力によって技術を向上させ、また国といたしましても、工業研究奨励金とか工業化奨励金とかかようなものを出して、大いに民間の技術の向上をはかるように努力してきておる次第であります。われわれとしては、かような各方面を通じて技術を向上し、コストを安くするという努力を従来も続けて参りましたし、また今後も一そうこれに努力を払っていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/101
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102・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実は私機械の輸出につきましてはちょっと奇異の感を持っておるのですが、それは比較的優良のメーカーあるいはまた独占的なメーカーの機械が案外伸びてない、これは他の産業とは非常に違う点ではなかろうかと思う。要するに国内市場において過剰生産状態にならないと輸出が伸びない。これは一般的にも言い得ることですが、機械についてはことにそれが顕著である、私はかように考えるのです。それにはいろいろ理由があると思うのですが、われわれが考えられる第一の理由は、利潤率はむしろ内需の方が高い。これは内需は今国内においては競争者がないけれども、一方国外に出ると、この機械類については非常な競争者がおる、これは先進国がおるわけであります。しかもそれは強大である、こういうところからそれは国内の方が安易だという点もあるだろうと思う。第二点は取引が継続的でなくて、不安だ、だから国内の方がどちらかといえばいい、こういう点があるだろうと思います。これは造船なんかがそうでありまして、むしろ計画造船をとった方が、輸出を受けるよりもいいというのが二十九年度のような状態であったと思う。あるいはまた国外に出ますと、独占の可能性がなくて——それは国内におった方が独占の可能性がありますから、どうしても内需に求めたがる。あるいはその後の手当がかかるわけでありまして、アフター・サービスが非常に金がかかる、手間がかかる、こういうことあるいは実際技術の水準が低いから、こういう理由もあるでしょうけれども、むしろ大メーカーあるいは優良メーカーが内需に利潤を追求して輸出に努力してない、こういう事実を発見することが残念ながらできると思うのであります。そこで政府においてはこういう輸出産業、今後日本はことに機械類の輸出を振興しなければなりませんが、優秀なメーカーが輸出へその態勢を動員するような間接的な、強制といえば語弊があるかもしれませんが、少くともそういう方向に向いていくような政策をとらなければならないのですが、こういうことについては省としてはどういうようにお考えであるか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/102
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103・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 今のお話いろいろごもっともな点があると存じます。ところで問題は、大メーカー、優秀メーカーが非常に輸出を怠っている、これに対して何らか策を講じなければいけないのじゃないか、かようなお話でございました。これは特に大メーカーが怠っているとおっしゃいましたけれども、必ずしも大メーカーが怠っているのではなしに、したいのだけれども、なかなか競争力がないので、十分できないのではないか、かように考えます。やはり機械メーカーといたしましては、大量に作って輸出ができますれば、価格も安くなる。従ってやりやすいということであります。しかしながらそれがやはり巨大な諸外国との競争のために非常にむずかしいということであります。従ってわれわれの方策は、何といってもコストを安くし、品質をよくするということに努力して、設備の改善なり技術の向上によって努力さしていく、同時にそれとかみ合せて市場の開拓等をはかる、かような方法が最も考えられるべき方策である、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/103
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104・多賀谷真稔
○多賀谷委員 機械メーカーはいろいろな製品を作る能力がある。ですから、ある製品が悪ければ他の製品に転換する。しかもこれはネーム・バリューがあるものですから、その変えた品物もどんどん売れる。こういうところがその品物だけを作らなければならぬという産業とは違うのです。転換のできないというのではなくて、幾らでも転換の余地があるのです。私はしたくてもできないというのはわかるのですが、そのしたいという努力がほかの産業に比べて非常に劣っている、こう考えるのです。多く作れば当然安くもなるし、そして利潤も得るのですから、輸出したいのは当然ですが、どうしても輸出しなければならぬという意欲が他の産業の連中に比べて薄いのじゃなかろうかと考えるのです。私は政府から生産力の集中度と輸出依存の度合いという資料を出してもらうように言ったわけですが、若干の資料が出ておりますけれども、同じ小さな品物でも軸受けとか、計算機とか、自動車とか、交換機というものは比較的三社、四社で独占をされている。そうすると、こういうところの製品はどうかといいますと、生産量のうちで少くとも二%から三%、多くて五%くらいしか輸出されていない。ところが、競争者の非常に多いミシンとか、自転車とか、カメラとか、紡織機とか、双眼鏡、こういうものは五〇%から八〇%、九〇%まで輸出されている。こういう統計を見ることができるのです。こういうことを言うと、あなたの方の自由経済にえらい賛成をしたような点もあるのですけれども、ここに自由経済のいいところがある。これを殺して全然独占してしまえば、これが全然伸びない、こういう形になるのです。ですから、日本におきましても、GHQが光学とか、双眼鏡というものの販売を禁止した。カメラとか双眼鏡は国内では使用できないだろう、こう言われたから、今日のような輸出の繁栄を見たのです。ですから、こういう点も一つ勘案する必要はないのだろうか。独占といいましても、今申しましたような企業は、企業そのものがそう大きな企業じゃないのですから、その機種については独占的な動きをしておりますが、専門家といえば、これはまたいいように聞えるのですけれども、要するに、輸出振興について間接的な強制のような振興対策が必要ではなかろうか。政府としては積極的な輸出振興が必要ではなかろうか。そうしなければ、今国内は割合に需要があります。ですから、安易にしておれば輸出は案外伸びない。そこで政府はかなり徹底的な政策をしなければ伸びない。しかも海外の状況はどうかといいますと、今申し上げましたように、非常に信用度がない。日本の製品が悪いというのではなくて、日本の製品を使ったことがないから日本の製品に対する信用度がない、こういう状態にある。でありますから、私は、機械産業については抜本的な輸出振興の対策が必要ではないか、かように考えるのですが、大臣どうでしょうか。機械産業について抜本的な対策はどういうものを考えられているか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/104
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105・石橋湛山
○石橋国務大臣 先ほど局長から申しましたが、やはり日本の機械だけではありますまいと思いますが、ことに機械については外国に知られていないということが非常に弱点でありますから、見本市には相当力を注いで陳列する、あるいは今年度は巡回船を出して機械類の展覧会をやるというようなことでやはり外国に宣伝をする。ことに東南アジアなり中南米に宣伝するということを第一にやらなければならぬと思います。それから今のアフター・サービスの問題になりますが、これも先ほど申し上げたように今やりつつあります。なお一つ今後も続けてだんだん方々の土地にアフター・サービスあるいはコンサルタントをやるような方法を講じていきたいと思います。そういうふうに積極的に向うに宣伝し、いろいろなサービスをして日本の機械を、プラント類の輸出をはかるということが第一だろう。あとは今度は品質の改善、価格の低下でありますが、これは先ほどからお話に出ましたようにいろいろ技術の向上とかそのほかいろいろのことをやらなければいかぬ。ただ今ちょっと多賀谷君からお話がありました、国内の使用を禁止してということまでは今考えておりませんし、またそれは果してどんなものかとも思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/105
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106・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そんなことは言わない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/106
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107・石橋湛山
○石橋国務大臣 何か国内で使わずにそれを出すとか。——やはり国内需要が相当なければなかなか機械でも発達はむずかしいと思う。やはり紡績機械にしましても職物にしましても、結局国内の繊維工業が盛んだったから世界でも有名になり、外国に輸出された自動織機の発明も日本で起ったというようなわけでありますから、国内の需要というものにやはり相当の重きを置いて輸出をはかっていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/107
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108・多賀谷真稔
○多賀谷委員 国内の需要を禁止していくということは言っていないのです。それは過去においてGHQがわが国のカメラとか双眼鏡を国内において販売を禁止する、あるいは禁止するような情勢にあったから、どうしても毛輸出が伸びた、こういう話をしたのです。それで今日の繁栄があるというようなことを話した。私は国内の需要を禁止するというようなことは言わない。とんでもないことなので、その点は御了解願いたいと思うのです。それからさらにたとえばスイスの時計あるいはドイツの光学機械、こういうようにスイスは時計でその輸出の四五%を出しているし、ドイツは光学機械がその輸出量の多くの部分を占めているわけですが、日本でもカメラとかあるいはミシンとか双眼鏡というものがかなり出ているのですが、こういう機種を何とか超重点的に考えられて、あるいは全輸出の三〇%か四〇%はいかないにしても、日本のカメラとか日本のミシンという、いわば世界的な優良な機種であると考えられるようなものに対して政策をおとりになるつもりはないかどうか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/108
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109・石橋湛山
○石橋国務大臣 むろんそういう希望は持っております。カメラのごときは幸いに相当優秀でありまして、アメリカ等、でも日本製のカメラが尊重されているようであります。従って先ほど局長が申しましたように、それにさらにつけ加えていろいろな設備をしまして、日本のカメラの宣伝を行うということをやりたいと考えております。むろん御希望の通りの希望を抱いておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/109
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110・多賀谷真稔
○多賀谷委員 先ほどからサービス機関を設けるとか、あるいは見本市を開く、こういうことをお話になっておりますが、これは官房長でもけっうですが、一体機械類について全予算はどのくらいあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/110
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111・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 さっき申しました日本輸出プラント技術協会に対する補助は一億八千万円であります。そのほかに電気機械のサービス・ショップが千四百万円、農機具は二千三百万円、それからさっき大臣がお話しされました輸出見本船の補助金が五千万円、大体国の予算で考えておりますおもなものはさようなものであります。そのほかに、実は先般の通商振興の予算からも機械が均霑する部分がございます。それからこれ以外に、実はただいま申し上げましたのは国の予算でございますが、競輪の売り上げから出ます振興資金で、輸出振興に使えるものがございます。先ほど申し上げましたカメラのサービス・センターは大体今年度三千万円それぞれ出す予定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/111
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112・多賀谷真稔
○多賀谷委員 大臣がいらっしゃいますので、一言お聞きいたしたいのですが、例の国産化の問題ですね。これは鳩山内閣の公約でもあって、国産の自動車を使うということから始まったわけですが、国産化の問題は一体どういうように進捗しておるか。宣伝ばかりはなかなか派手にやられたけれども、実際はあまりその公約通りいっていないのじゃなかろうかと思うのです。これは相当決意を秘めてやらなければうまくいかないと私は思います。何も私は——今川上局長が見えましたけれども、電源開発の機械も全部国産にせよというようなことを言っているのじゃない。大いに優秀な機械はどんどん輸入して、そうしてさらにそれをまねて技術の水準を高めることも非常に必要である。しかし日本で国産の品物を使ってもそう不便を感じないというものまで、いわば消費財的な機械などは当然国産でやるべきだ、かように考えておるのですけれども、大臣はどういう決意を持って臨まれておるか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/112
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113・石橋湛山
○石橋国務大臣 事務当局としてはむしろときどき行き過ぎるのじゃないかと思われるほど国産奨励をやって、電気機械類にしましてもできるだけ国内でできるものは国内でする、輸入品はなるべく使わぬという方針をかなり厳重にやっております。しかし今多賀谷君のお話の中にもありましたように、ものによっては、やはり国内の機械の性能を将来よくするためにもある程度の外国からの輸入品を入れる方がかえって刺激になっていい場合も相当あると思うのですから、そういうものについては、やはり外国品をある程度入れていこう、たとえば小型の発動機というものは国内でもできるのでありますが、しかしその小型の中にも外国製品に比較して、いろいろ目方とか、値段とかいうものの関係上、やはり外国品の方がはるかに優秀だというものがありますから、そういうものまでも全部これをチェックするということは行き過ぎになるだろうと思いますから、その点は行き過ぎにならないようにある程度は外国品を入れるということにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/113
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114・多賀谷真稔
○多賀谷委員 大蔵政務次官が見えておられますのでお聞かせ願いたいと思うのですが、今かかっておりますところの機械振興の問題でありますけれども、最初事業団の構想から発足したわけですが、それがこういう融資の形になって、そうして最初は三十億と予定をされたということを、私たちはこの法案が出る前から聞いておるわけです。ところがそれが十五億になった。こういう点は一体大蔵省ではこの機械振興ということについてどういう認識があるのか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/114
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115・山手滿男
○山手政府委員 初めいろいろ構想が出て参りまして、事業団を作りたいというお話があったことは事実でございます。しかしことしは、道路公団ができたり、北海道開発公庫の構想がいろいろ出たりいたしまして、いろいろ検討をいたしました結果、公団式のものをあまりめちゃくちゃにたくさん作ってもいかがであろうかということで取りやめることにいたしたわけでございますが、特にこの機械振興の方策につきましてはいろいろ検討の結果、融資でいってもほぼ何とかいけるだろう、こういうことで諸般の事情から公団方式をとらないことになったわけでございまして、最終的には財政上の都合、そのほかいろいろなことから十五億開銀にワクをつけるということになったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/115
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116・多賀谷真稔
○多賀谷委員 この機械工業の振興、ことに本案に盛られておりますのは、部分品とかあるいは基礎部門でございます。ですからこれがすぐに輸出振興その他に影響するというわけではなくて、かなりの時日を要するだろうと思うのです。ところが機械の輸出というようなものは、ことに資本材的な重機の輸出というものは現在早くしなければ、日本のごとく戦前から市場を持ちません国におきましては、私は今後の市場開拓はますます非常に困難になる、かように考えるのであります。東南アジアの方も今初期の工業化の方向へ入っておるわけであります。そこで私は重点的に政府としてはこれに政策の重点を置く必要があるのではなかろうか、かように考えるわけですが、十五億というようなことでなくて、なぜ当初のような三十億程度でやって——それから融資でいくのじゃなかろうかというお話ですが、事業団が機械を持って、それを貸与するというのと、融資で私企業にまかすというのは、私はかなり違うと思うのです。ですからこういう点につきましても、政府としてはどういうようにお考えであるか。いろいろ議論はあったが、大体結論はこういうふうになったということはわかるのですけれども、なぜそういうふうになったのかということが御説明になっていない。一体事業団の貸与方式と開銀の融資方式は実際上、あまり違わないのかどうか。私はかなり違うと考えておるのですか、政務次官はどういうようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/116
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117・山手滿男
○山手政府委員 今申し上げましたように、公団のような組織を作りますと、むしろ人件費あるいは事務費等に相当多額の金を食われてしまうような事態も起きましょうし、その点からも必ずしも公団によらなければうまくいかないというように考えたわけでもございませんし、ただ事業団方式でいきますと金融のつけ方が担保等の関係において、多少たやすくなる面があるというふうな御主張もあったのでありますけれども、その点につきましても十二分に開発銀行の方に連絡をいたしまして、中小企業であるからということで金融がつかないということのないように、いろいろ方法等をよく検討さすことにいたしましたわけで、必ずしも事業団を作らなかったからということでうまくいかないというふうには考えなかったわけであります。やはり機械工業の振興については、特にその特殊なものについて政府も大いに努力をいたさなければいけませんし、私どもも何とかこれをうまく処理させまして、特殊な機械を必要としておるものにつきましては、十五億あれば大体今年度は事足りるのではあるまいか、こういう認定を下したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/117
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118・多賀谷真稔
○多賀谷委員 歴代の政務次官は、どちらかといえば大蔵省におられた局長とか事務次官がなられておる。ところがわれわれは今度かつてわれわれの委員会に長くおられました山手さんが政務次官になられて、通産省の予算はさぞふえるだろうということを期待をしておった。我田引水をすることは私はその道ではないかと思いますけれども、もう少し私は理解ある政策をとられるものだと期待しておったのですが、案外で、通産省の方の予算も削られておるし、そうして最も必要な部面であるこの資本財その他の面における予算処置が十分になされてない。もっともその経済の基盤が自由経済でありますから、補助政策程度しかならないわけですけれども、それにしても今後日本の経済、ことに輸出は、重化学工業をもってしなければならない。ですからもう少し徹底的な、重点的な政策が必要ではないかと思うのです。ところが最初の予定が三十億であったのが十五億に削られた、最初からこういうことではどうも安心ならないという気がするのですが、一体今後はどの程度に開銀の融資を出されるつもりであるか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/118
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119・山手滿男
○山手政府委員 御鞭撻をいただきまして恐縮いたしておりますが、なかなかこの問題も、議論をいたしました、当時むずかしい問題であったのでありますが、事業団こそできなかったのでございますが、ともかくもこういう形で特別に考慮を払おうということになったわけでございまして、その程度で必ずしも十分ではないかもわかりませんけれども、今年はやってみてしんぼうしてうまくいかなければさらに明年度以降において積極的に考えるということにいたしたいと思っております。いろいろこの通産省の関係の予算等につきましても努力をいたしたわけでございますが、中小企業の関係だけでなしに、全体的に今後は予算の編成が財政と金融の一体化というふうなこと、いろいろございましたけれども、ともかく民間に相当の資金が出ておりました関係上、できるだけこの政府資金を投資をするということは、民間資金を活用することによってある程度控えていかなければ金融の方もいよいよ混乱をするおそれもあるからという考え方もありまして、予算の資金の総ワクも必ずしも十分ではなかったわけでありますが、この十五億という総額につきましても今後十二分に検討をいたしまして御期待に添えるようにやって参りたいと思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/119
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120・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実は先ほどから議論をしておるのですが、日本の機械産業の輸出は、戦前にあまり経験がございませんので、日本の品物を知らない。そういうところからいって信用度が少いのであります。非常に薄いのであります。そこで先進国に比べまして、少くとも同種で同等の品物でも実際は五%ないし一五%ぐらい値段が安くなくては売れない、こういうふうな実情にあるわけです。そこで政府としましても、これは不当競争という非難を招くと困るのですけれども、どうしても安く品物を売るように税制上あるいは輸出保険の金利を下げるというような面にも考えを向けなければならぬと考えるわけです。そこで大蔵政務次官にお尋ねいたしますが、耐用年数の問題にいたしましても、あるいは輸出保険料というような場合の料率の引き下げ、こういうものについては考慮になっていないかどうか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/120
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121・山手滿男
○山手政府委員 御承知のように最近日本製品の安売りということが海外の方でもいろいろ問題になっております。機械工業その他につきましてぜひわれわれがその輸出の振興に今後努力すべきことは当然でございますが、日本品の代表的な繊維製品や何かで、そういうふうな問題を起しておりまして、今日本がガットへ加入をいたし、今後さらに各国とうまく貿易をやって参ります上において、例の輸出免税措置とかいろいろな問題につきましても、できるだけ早くそういう特別扱いは中止をするようにという勧告を受けたりいたしております。これはどういうふうに処置をするかということについては十分周囲の事情を検討した上で、間違いのないような方策を立て、かつ海外をも刺激しないようなうまい方法を見つけなければいかぬわけでございまして、いろいろ中小企業関係には特に問題が多いわけでございますから、保険制度につきましてもそのほかいろいろなことにつきましても、さらに十二分の方策を立てて参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/121
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122・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実は先ほども通産省にお話ししたのですが、ほかの産業と違いまして機械産業というのは、転換がきくわけです。ですからその転換がきく部門がかなり多いわけですから、その品物が売れなければ、今度はネーム・バリューを利用して他の機種を選ぶ、こういうことも割合に可能であります。そうしてむしろ独占的な優良メーカーは内需の方がどちらかといえば継続的に注文ももらえるし、さらにまた内需の方が相手が競争力が弱いものですからできる、さらに利潤もある。国外に一歩出れば競争力の強い強大なる先進国の機械がこれと太刀打ちをする。こういうところからむしろ独占的な企業でありますとかあるいは独占的な優良メーカーの方の機種が、造船なんかは別といたしまして比較的伸びていない。比較的競争力の多い自転車とかあるいはカメラとか双眼鏡とかいうものが伸びておる、こういうことをわれわれはこの数字からも発見することができるわけであります。そこで、とかくこの機械産業につきましては、内需に依存して輸出にあまり企業努力を払わない。もちろん努力をしないことはありませんけれども、むずかしいものですからどうしても引っ込みがちになる。そこで相当積極的な振興政策がなくては、機械産業の輸出というものはあまり望み得ないのじゃなかろうか、こういうふうに私は考えるわけです。今不当な取引をしておるということで非難をこうむっておるのは繊維でありまして、これらはむしろ私は低賃金から発しておるものだというように考えるのであります。もちろん機械産業を低賃金でないというわけではありませんが、機械産業あたりは今まで比較的そろい非難をこうむっておりません。ですから機械産業だけにこういう輸出の免税措置をするということは非常にむずかしいかもしれませんが、あるいは輸出ということでなくとも、一般的な輸出の貢献になるような価格引き下げの措置を講ずる必要があるのではなかろうか、こういうことを考え、ことに大蔵省ではこの点を理解していただきたいというように希望いたします。
次に、この法律から漏れる部門の一般中小企業ですが、これは中小企業金融公庫から借りることができるというお話でありますが、これでもやはり九分五厘の利子と一年据え置きの五年償還ということになっておるわけです。そこでこの法律が実施された場合に、この法律の適用がある工場はよろしいですが、その適用外にある下の方について何らかの措置が必要ではなかろうか、かように考えるわけでありますが、大蔵省としては今申しました金融措置について何らか考慮しておられるかどうか、お聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/122
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123・山手滿男
○山手政府委員 ちょっとほかのことで連絡があったために終りの方の御質問の要旨を聞きのがしておるのでありますが、私どもも機械工業の振興について特段の考慮を払わなければいけないという御説については全く同感でございます。ドイツ等では輸出の額が非常に多く、その中で中小企業による機械製品等がずいぶん大きな比率を占めており、非常に精巧な技能のすぐれたものがたくさん送り出されておる事実についてもよく注意をして、そのすぐれた点については日本にも取り入れられるように、改善できるように措置しなければいけないことについては全く同感でございます。ただこの中小企業の輸出振興、機械の振興につきましては、早急にばたばたとやろうと思いましても、技術の点、素材の点そのほかいろいろの問題があろうと思いますので、それらについても総合的な措置を今後鞭撻をし大蔵省も協力をしてとっていきたいと考えておる次第でございます。
そのほか、この法律に乗らないいろいろな中小企業の業種についてはどうするかというお尋ねであったかと思いますが、中小企業金融公庫、そのほかそういう方面に、特に輸出や何かに力がつきそうな産業を選んで選別融資をやらすようにしむけていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/123
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124・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実は同じ機種でも、予算上資金上ワクがあるものですから、結局ある程度しかその線に乗らないと思うのです。同じ機種を製造しておりましても、その下の乗らない分、これは中小企業金融公庫から借りられるということになりますと、本法案の適用者は六分五厘の十年償還ということになりますが、それ以下の企業は、それでなくともなかなか金融ベースに乗らないのに、九分五厘のしかも五年間の償還ということになりますと、かなり開きが大きくなる、こういうふうに考えるわけですが、この同じ機種を作っておりますこの法案適用外の工場についてはどういうようにお考えであるかお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/124
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125・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 その点同じ機種のうちで、この法案の適用により資金の融通を受けられるものと、それからそうでないものとの違いがあるんじゃないか、こういう御質問だと思います。ところでこの法案でねらっておりますのは、業種をまず選びまして、それによって機械工業審議会にかけ、合理化計画を作るわけであります。合理化計画でねらっているのは、やはり今後の日本の機械工業の競争力を与えるというふうな意味で、やはり同じものでございましても、品種の精度の高いもの、さようなものをねらうこと、たとえて申しますと、ネジであるとか歯車でありましても、普通のネジ、歯車ではございませんで、機械工業として今後要求される国際競争力に値するようなものをねらうわけであります。それに対しまして、これらを担当しておる従来の中規模程度の企業に対しましては、相当近代化設備として、その会社の規模といたしましては大きな設備をしなきゃならない、こういうことになるわけであります。たとえて申しますと、一千万円あるいは二千万円の資本金の会社が三千万円、四千万円の規模を持つ、かようなところから特別に資金の措置を講じまして、場合によっては十年の長期とかあるいは機械は持ち込み担保であるとか、あるいは六分五厘の金利とか、かような措置を講ずるわけでございます。ところでそこまで精度がいかないようなものの奨励は、やはり従来の中小企業金融公庫等によりますが、やはりこの場合は、近代化設備と申しましても比較的額も少うございます。三百万円とか四百万円とか、さようなふうになるんじゃないか。さようなわけで程度が非常に違いますものですから、この場合は、従来の政策以上にプラスしてかような特別の場合にはかような措置をとりたい、こういうふうな考えから出発しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/125
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126・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そうしますと、結局この法案の適用を受ける者とその適用から漏れる者との間には競争という状態は起らないですか。たとえば用途が違うとか、精密度が高い、こういうようなことで、結局同じものを作っておって、それが政府の援助によって非常に有利にかり、それと同じような競争市場を走るということはないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/126
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127・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 各業種によっていろいろ問題はあると思いますが、今日の午前中の参考人の御説明でもお聞きになりましたように、たとえて申しますと鋳物でございます。鋳物はこの法案では非常に強度の高い強靱鋳鉄をねらうわけでございますが、これは今後日本の機械工業の需要から見ますと相当ふえてくる状況であります。ところが現在あまりたくさんはない。かようなものを育成することになります。ところがこれを育成したから、それでは普通の鋳物の需要がなくなるかと申しますと、機械工業全体としてはレベルが上って生産が上っていく。さような分野で、従来の普通の鋳物の分野も広がっていくと同時に、今後さような新しい機械工業の要求に応ずるような強度の強い鋳物の需要が相当ふえてくる、これに対処する、かような考え方に立つわけであります。従いまして大体精度のよいものの需要もふえていきますけれども、そうでないものについても相当の分野が今後期待される、かような考え方になるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/127
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128・多賀谷真稔
○多賀谷委員 それは強靱鋳鉄のように、現在の鋳物会社では作っていない、こういう業種はいいと思うのですが、現在同じようなものを作っておって、それが非常に安く、あるいは品質のいいものが作られる、それが同じ用途で同じ市場で争わなければならぬ、こういうものがありますとき、私はこの以下の者に対して、何らかの保護措置を講じておかなければならぬという品種があるんではなかろうかと思うのです。これについてはどういうふうにお考えであるか。さらに先ほど参考人の話を聞きますと、たしかバルブでしたか、非常に問題があったけれどもこの法律の恩恵を受ける者は、生産拡大という方面には回さない、こういうことで話し合いがついたという話でしたけれども、生産拡大という問題を防ぐような法的な規制ができるのかどうか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/128
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129・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 先ほどは強靱鋳鉄の例をもって示しましたが、程度の差はございますけれども、大体ほかのものについても似たような事情でございます。たとえて申しますと、この法律で予想いたします歯車につきましても、大体ねらっておりますのは、歯車についてはDINという規格がございますが、それの四級から七級を目標といたしてねらう。そういたしまして、その対象のメーカーは、現在DINの九級以上を作っておられる方を対象とする、そうしてそれから落ちておる方は大体DINの十級程度の方でございますが、それを大体八級程度に引き上げる、こういうようなことで、ある程度精度的にも分れて参ります。さようなわけでございまして、もちろん八級と七級との差は完全に分れるかと申しますと、そうでもございません。大体のところやはりさようなことで、全体としていいものはいいもの、それから若干落ちる普通のものは、普通のものとして伸ばしていく、さようなことになるわけです。それからさらに普通のメーカーの方が将来大いにその上に伸びようという場合には、やはり今後の問題としてさようなものを考えていきたい、かような状況でございます。
それから今の後段の方の御質問の点は、私きょうの午前中の参考人のお話をよく聞いておりませんのでわかりませんが、この法案によりますと、やはり近代化設備を増設する場合に、今後そのまま増設を認める場合と、それからそれに伴って古い設備を処理する問題がございます。そういうようなことも合理化計画の場合において十分考えて、新しい設備をした場合に、旧式の設備が当該企業において要らなくなった場合は、それをスクラップとして処理するか、あるいは場合によっては、さらにまだ使えるものでございましたら、それをその次の段階の中小企業にあっせんして使わせる、かようなことも考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/129
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130・多賀谷真稔
○多賀谷委員 参考人の話は、結局この資金を増産に向けない、精度の高いものを作るのに向けて、これによって増産をされると市場を荒されるから困る、こういうことについてその業界でかなり異論があった。そこでこの法案を賛成するについては、一応この資金を受けたものは、近代化に向って、増産をするということでなくて、品質の改良をやるということで了解がついた、こういう話をされておった。そこでそういうように業界で自主的におやりになるところはけっこうですけれども、そういうような業界ばかりでないと思います。そこで法的規制が何らかあるのかどうか、こういうことをお聞きしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/130
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131・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 ただいまのような問題は、やはり合理化の基本計画を作ります場合に十分検討いたしまして、将来の需要等を考え、さような場合に新しい設備をどのようにするかということで大体考えていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/131
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132・多賀谷真稔
○多賀谷委員 ついでに、大蔵政務次官も見えておりますので、例の蓄積円による旧株取得の問題をお聞きいたしたいと思います。私が聞かんとするのは、ことにミシンの問題を中心としてお聞きいたしたい。実は本年の四月に、シンガー・ミシンの副社長あるいはその技術関係の技師が参りまして、そして今日本でパイン・ミシンとの協定の上で作っておりますメリット・ミシンが、案外国内に需要が伸びない。そこで今度はそのメリット・ミシンというのは東南アジアの方に出して、そうしてシンガー・ミシンを作ろう、しかもシンガーも今度は家庭用だけでなくて、工業用のミシンも作ろう、こういう計画がなされている。そうしてこれはそのままにしておれば、本年十月から当然行われますところの蓄積円による旧株取得によってこのパイン会社を乗っ取って、そしてシンガー・ミシン会社にしてやろう、こういう計画があるということで、実はミシンの労働組香の連中が非常に騒いでいる。これは組合だけでなくて、協会も騒いでいるだろうと思うのですが、これについてお聞かせ願いたいと思うのです。このシンガー・ミシン会社は、戦争前から持っておりました財産について、何かこの財産に対する補償があって現存円蓄積をしているのだという話があるわけです。ですから、こういうことになりますと、せっかく日本のミシンが伸びようとするのに、またシンガー・ミシンによってかつての日本のミシン市場のように全く独占をされるということになります、シンガー・ミシンによる日本の独占化、さらに日本のミシンの輸出が伸びないということになると思うのですが、これについてどういうようにお考えであるか、まず通産省から御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/132
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133・鈴木義雄
○鈴木(義)政府委員 シンガー・ミシンと日本のパイン・ミシンとの提携問題は、実は昨年もこの委員会で御議論になったと存じますが、一昨年外資提携の申請が出されております。それから昨年の秋に機械の無為替輸入の申請が出ております。しかしこれらはいろいろ検討いたしましたが、果して日本の経済に寄与するか、あるいは輸出に貢献するかという問題で、従来そのまま保留になっております。かような状況でございます。一方シンガー・ミシンは、パイン・ミシンに注文いたしましてメリット・ミシンというものを作りまして売り出しております。これは現在では、ある程度出ておりますが、まだそう大した数量でない、さような状況になっておりますので、今後御指摘のシンガーがパインとの関係をどんなふうにするかという問題については、まだ具体的に詳しい状況を聞いておりませんので、今後どういうように出るか、よく調べました上でわれわれとして考え方をきめたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/133
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134・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実は日米通商航海条約の議定書の蓄積円の旧株取得の禁止の問題が三カ年で効力がなくなっております。ほうっておけば本年の十月から当然蓄積円によって日本の旧株が取得できることになる。こういうことで、それを契機にどうもシンガー・ミシンではパイン・ミシンを乗っ取って、今度はシンガー・ミシンとして乗り出そう、こういう計画があるやに聞いているわけです。それでミシン協会としてはかなり騒いでいると思うのです。これについてどういうようにお考えであるか。その話がまだ具体的にお耳に入っていないのかどうか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/134
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135・山手滿男
○山手政府委員 パイン・ミシンの提携の問題について、ただいま通産省の方から御説明のありました程度のことは私どもも聞いておりますが、蓄積円によって云々という今お尋ねの件については、まだ何にも私ども聞いておりません。ミシンは日本の中小企業の製品としてはまことに重要な製品でございますので、せっかくの御指摘でございますから、さっそくよく調べて善処していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/135
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136・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実は戦時中の工場の賠償で、これは確かであるかどうかわかりませんが、三億四千万円ほど円がある。その蓄積円によって、議定書の失効に伴い、日本の会社の株を取得しよう、こういう動きがあるということであります。政府がまだ十分御調査ができていなければ、別の機会に一つ調査していただいて御答弁願いたいと思うのです。
大蔵政務次官にこの際お聞きしておきますが、この蓄積円による旧株取得の問題は今後どういうように解決されるつもりであるか、これをお聞かせ願いたい。すなわち失効と同時にどんどん入れるつもりか、あるいは国内法を作ってこれに対してある制限を加え、基幹産業なら基幹産業というふうに制限を加えるのか、あるいはその旧株のうち何パーセントまでは取得できないとするのか、あるいは寡小資本における日本の経済状態の中では困難であるということで、全面的に再交渉をされるつもりなのか、こういう点を一つお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/136
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137・山手滿男
○山手政府委員 蓄積円につきましてはいろいろと問題がございます。たとえて言えば、映画等の蓄積円等についても従来非常な論議があったところでございまして、それをせっかく向うの人たちとうまく了解をとげて、しかも日本の産業界、経済界にもあまり害のないような方向でこれが活用を許そうということで、映画蓄積円のごときは電源開発に導入させる等いろいろの処置をとっております。そういう蓄積円が中小企業などを対象にいたしまして妙な結果になるようなことではいけないから、むしろ蓄積円として内地にごろごろさせておくよりは、できるだけ送金も認めるような方策をとって、その禍根を断った方がよかろう、そういう議論も現在あるわけでございます。お趣旨の点につきましては、パイン・ミシンの問題、全然私具体的には聞いておりませんので、よく横討してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/137
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138・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実はこれについては、日米通商条約の中にも基幹産業にどんどん外資が入ってこないような制限もありますから、そういう意味においても、蓄積円によって旧株取得については制限ができるのではなかろうかという大蔵省の個人的な話もございましたけれども、そういう基幹産業でなくても、日本のいわゆる手の技術といいますか、そういう点で、あるいはアイデアなんかの点で、おもちやあたりは今後かなり伸びる製品である。ところが最近ルイ・マークス会社あたりがおもちゃ会社を自分の傘下に入れようとしている。(「入れちゃったのだ」と呼ぶ者あり)入れておる。こういうことで、やはり雑貨につきましても、私は日本の産業が外国の資本家の手によって牛耳られるのは非常に好まない。ですからこういう問題は単に基幹産業だからということだけではいけないと思うのです。ですからこういう点も一つ十分に研究されることをお願いいたします。実は本委員会でも外資の問題につきましては来週やることになっておりますので、その際にまた来ていただいて御答弁を願いたいと思いまして、本日はこの程度でとどめます。
最後に一点大蔵省にお伺いしますが、実は先般繊維機械の問題につきましていろいろ議論をしておりました際に、繊維工業においてその機械の耐用年数を短縮する、こういう話が出ておったわけであります。渡辺主税局長が見えまして、それには努力しようという話を承わったわけでありますが、単に繊維機械ばかりでなくして、私は工作機械その他の機械全般について一応耐用年数というものは検討する段階に遂ておるのじゃないか、かように考えるわけでありますが、これについて大蔵省政務次官から御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/138
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139・山手滿男
○山手政府委員 主税局長がどのようなお答えをいたしたか知りませんが、私も日本では従来工作機械等も古いものをいつまでも使っていくという習慣などもありまして、これは半面いい習慣であると同時に、半面非常な弊害のある習慣であると私は思っておりますが、できるだけよい製品を作らせるためにもお説のように各産業について耐用年数の問題を検討して合理的な結論を下させるようにいたさせたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/139
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140・小平久雄
○小平(久)委員長代理 本日はこの程度にとどめます。次会は来たる三十九日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。
午後三時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X05619560525/140
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