1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年二月二十二日(水曜日)
午後二時十四分開議
出席委員
委員長 大矢 省三君
理事 亀山 孝一君 理事 鈴木 直人君
理事 永田 亮一君 理事 吉田 重延君
理事 中井徳次郎君
青木 正君 唐澤 俊樹君
木崎 茂男君 櫻内 義雄君
灘尾 弘吉君 丹羽 兵助君
森 清君 山中 貞則君
加賀田 進君 川村 継義君
五島 虎雄君 櫻井 奎夫君
西村 彰一君 門司 亮君
出席国務大臣
国 務 大 臣 太田 正孝君
出席政府委員
総理府事務官
(自治庁財政部
長) 後藤 博君
総理府事務官
(自治庁税務部
長) 奥野 誠亮君
委員外の出席者
専 門 員 円地与四松君
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二月二十一日
委員川崎秀二君、北山愛郎君及び中村高一君辞
任につき、その補欠として小澤佐重喜君、西村
榮一君及び中村英男君が議長の指名で委員に選
任された。
同日
委員中村英男君及び西村榮一君辞任につき、そ
の補欠として中村高一君及び北山愛郎君が議長
の指名で委員に選任された。
同月二十二日
委員北山愛郎君及び中村高一君辞任につき、そ
の補欠として久保田鶴松君及び西村力弥君が議
長の指名で委員に選任された。
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二月二十一日
地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
六九号)
同月二十日
市町村職員共済組合法の一部改正に関する請願
(熊谷憲一君紹介)(第六九二号)
同外二件(吉田重延君紹介)(第七七四号)
公衆浴場業に対する固定資産税軽減に関する請
願(五島虎雄君紹介)(第六九三号)
同(永田亮一君紹介)(第六九四号)
同(古井喜實君紹介)(第七七九号)
公衆浴場業に対する事業税軽減に関する請願
(五島虎雄君紹介)(第六九五号)
同(永田亮一君紹介)(第六九六号)
同(古井喜實君紹介)(第七七八号)
木材引取税撤廃に関する請願(薩摩雄次君紹
介)(第六九七号)
同(平野三郎君紹介)(第七三三号)
同(坂田道太君紹介)(第七七五号)
同(植木庚子郎君紹介)(第七七六号)
同(瀬戸山三男君紹介)(第七七七号)
私鉄に対する事業税改正に関する
請願(山口丈太郎君紹介)(第六九八号)
同(五島虎雄君紹介)(第七八〇号)
公給領収証の交付制度廃止に関する
請願外一件(田中伊三次君紹介)(第七三四
号)
公給領収証の交付制度廃止等に関する請願
(田中伊三次君紹介)(第七三五号)
同(田中伊三次君外一名紹介)(第七三六
号)
軽油引取税の設定反対に関する請願(五島虎雄
君紹介)(第七八三号)
の審査を本委員会に付託された。
本日の会議に付した案件
派遣委員より報告聴取
地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
六九号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404720X01019560222/0
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001・大矢省三
○大矢委員長 これより会議を開きます。
地方税法の一部を改正する法律案を議題といたします。当局より提案理由の説明を聴取いたします。太田国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404720X01019560222/1
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002・太田正孝
○太田国務大臣 ただいま議題に供されました地方税法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概略を御説明申し上げます。
政府は、明年度において地方財政の再建並びにその健全化をはかることを重要施策の一つといたしているのでありますが、この方針のもとに、あとう限り自主財源の充実等を期すべく、地方税制の面におきましても、鋭意検討を加えて参りましたところ、昨年十二月地方制度調査会及び臨時税制調査会から明年度地方財政に関連して地方税制改正についての答申がありましたので、その趣旨をも尊重いたしまして今回の地方税制の改正を企図いたした次第であります。
その改正の方針といたしますところは、第一に、非課税範囲を縮小し、租税負担の均衡化をはかりながら増収を期待することであります。きわめて特別の場合を除けば、一部の人または物等について非課税を認めることは税制上極力避けるべきであり、特に地方税の場合においてしかりでありまして、この意味におきまして、今回は、地方における自主財源充実の観点から大幅な増収を期待し得るものについて非課税範囲の縮小をはかったのであります。すなわち、従来固定資産税を課されていなかった国及び地方団体の所有する固定資産のうち国及び地方団体以外の者が使用しているもの、国有林野の土地、地方団体の所有する発電施設、日本専売公社、日本国有鉄道及び日本電信電話公社が直接その本来の事業の用に供する固定資産等に対して固定資産税相当額の負担を求めることといたしたのでありますが、これら固定資産の所有者が、国、地方団体等であることにかんがみ、特に固定資産税相当額の交付金または納付金を固定資産所在の市町村に交付しまたは納付するようにいたし、この制度につきましては、別途国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律案として御審議をお願いすることにいたしております。なお、このほか、地方税法自体におきましても、同様の趣旨により日本放送協会及び日本中央競馬会の所有する固定資産に対する非課税制度を廃止することといたしたのであります。
方針の第二は、受益者負担の制度を拡張し、施設充実に要する財源を確保することであります。国民の租税負担が一応限界に達しているとされている現在におきまして、さらに施設充実に要する財源を確保するのには、その充実した施設によって受益する者に負担を求めることはやむを得ないことであり、反面その財源は関係の事業に充てることとすることが適当であると考えられますので、この趣旨のもとに目的税制度を拡充しようとするものであります。その一は、道府県税としての軽油引取税、その二は市町村税としての都市計画税の創設であります。
方針の第三は、税務行政の規律を明確化することであります。税務行政の規律を明確にすることによって納税者の納得を得ることができ、またその取扱いに公正が期せられるのでありまして、このことは、納税秩序を確立するための基本的な条件であると考えられます。今回、不動産取得税における住宅の定義、遊興飲食税における徴収猶予の制度、自動車税における課税方式等について改正いたそうとしておりますのは、いずれもこの趣旨に基くものであります。
方針の第四は、財源調整の機能を強化するための措置をとることであります。このたびの改正によりましてかたり大幅に自主財源の増強をはかっているのでありますが、なお自主財源の不十分な地方団体に対しましては、別に提案いたしました入場譲与税法の一部を改正する法律案によりまして入場譲与税制度の持つ財源調整の機能をさらに強化し、そこから得られる財源を振り向けることとするのもやむを得ないものといたしているのであります。
以上の方針による改正のうち地方税法に関するものの内容の概略を御説明申し上げます。
第一は、総則に関する事項といたしまして、現在個人の道府県民税は原則として市町村が市町村民税とあわせて賦課徴収することとなっているのでありますが、市町村が徴収した道府県民税が過誤納となった場合、納税者及び市町村の双方の便宜をはかり他の市町村税の場合と同じくこれをその納税者の未納の市町村税に充当することができることとするものであります。特定の場合に道府県が個人の道府県民税と市町村民税をあわせて徴収した場合における事例についても同様に取り扱うことといたしております。
第二は、道府県民税及び市町村民税に関する事項といたしまして、その地方団体内に事務所、事業所を有しないが、寮、クラブ等を有する場合に均等割を課することができることといたしたのであります。これによる増収額は三百万円程度であります。また給与所得者のうち年金受給者のごとく特別徴収によることが著しく困難であると認められる事情がある者に対しては、普通徴収の方法によることができることとしたのであります。
第三は、不動産取得税に関する事項といたしまして、住宅の定義を「人の居住の用に供する家屋または家屋のうち人の居住の用に供する部分」と改めることであります。これによって併用住宅を建築した場合は常にその住宅部分について百万円の基礎控除の特典が認められることとなるのであります。
第四は、娯楽施設利用税に関するものでありますが、学生、生徒等のスケート場の利用に対しましてほすべて非課税とすることとしたのであります。これは学校によってはスケートを正科としているところもありまして、学生については、スケートを娯楽の見地から律するよりも、スポーツの見地から律する方が適当であると考えられるからであります。これによる減収額は三千八百万円程度であります。またパチンコ場等に対する本税の徴収方法について従来の申告納付のほかに道府県の選択により普通徴収の方法によることができるものとしたのであります。
第五は、遊興飲食税に関するものであります。従来遊興飲食税の徴収については発生主義の立場から行為の行われた月の翌月に、その行為にかかる税額をすべて納入することになっていたのでありますが、昨年十一月公給領収証制度の実施に伴って特別徴収義務者は遊興飲食等の行為のあったときに、料金及び税額を受け取るといなとにかかわりなく、すべて領収証又は領収証となるべきものを作成することとなりましたので、料金が売掛になっているかあるいは現実に収入になっているかは領収証制度を忠実に履行している限りは明確になっておりますので、その種のものについては売掛部分について三カ月以内の徴収猶予をすることができることとし、この部分については延滞金を免除するものとしたのであります。また、貸し倒れとなった場合等にはすでに遊興飲食税を立てかえて納入しているときは還付し、いまだ納入されていないときは、納入の義務を免除することとしております。
第六は自動車税に関する改正であります。その一は、従来揮発油には揮発油税及び地方道路税が課せられておりますのに軽油にはそれがなかったので、その間の負担の均衡を保つため軽油自動車に対する税率を揮発油自動車のそれの五割増しに定めていたのでありますが、今回軽油引取税が創設されることとなりましたので、この税率区分を廃止し軽油自動車に対する税率を揮発油自動車に対する税率まで引き下げることといたしたのであります。これによる減収額は昭和三十一年度二億九千七百万円の見込みであります。その二は、自動車の所有者が変った場合、都道府県間に異動があった場合等における従来の取扱いを改めまして、すべて月割をもってそれぞれ課税することとしたのであります。さらに、年の中途で自家用車から営業用に変更になったこと等によりその適用税率が異なることとなった場合も、それぞれの月割額の合算額で課税することとしたのであります。その三は、所有権留保付売買があった場合は、実際の使用者である買主に対して課税することができることとしたのであります。最近自動車の月割販売が相当行われているのでありますが、一旬の租税公課は買主が負担する契約をしているにもかかわらず、現行法では販売会社に課税しなければならないこととなり、実際の納税上種々の不便があったのを是正しようとするものであります。
第七は、固定資産税に関するものであります。日本放送協会及び日本中央競馬会の所有する全固定資産を非課税の範囲から除くこととし、特に日本放送協会が所有する固定資産で直接その本来の事業の用に供するものに対しては、その公共性にかんがみ課税標準は価格の二分の一、昭和三十一年度においては、激変を避けるため四分の一といたしています。この改正による増収額は昭和三十一年度八千百万円、平年度九千五百万円の見込みであります。
第八は、電気ガス税に関するものでありますが、日本国有鉄道が直接一般交通のための旅客または貨物の運送の用に供する電気に対しては、電気ガス税を課さないこととし、一般の地方鉄軌道事業者におけると同様の取扱いといたすのでありまして、これによる減収額は、昭和三十一年度四億円程度であります。
第九は目的税として軽油引取税を創設しようとすることであります。軽油引取税は、すべての都道府県が課税するものとし、特約業者からの小売人または消費者の軽油の引き取りを課税客体とし、納税義務者はその引き取りを行う者としたのでありますが、徴収は特別徴収の方法によることとして、特約業者を特別徴収義務者とし、毎月引き渡した軽油の容量を課税標準とし、営業所所在の道府県にその翌月の十五日までに申告納入することとしております。なお代金決済の実態に照し、揮発油税の徴収と同じく担保を提供した場合は、二月を限って徴収猶予を認めることとしております。税率は、一キロリットルにつき六千円であり、揮発油に対する揮発油税及び地方道路税の合計額一キロリットルにつき一万三千円の約半額であります。本税は、目的税であることから、道路との関連の有無、免税手続の難易等を勘案して免税の範囲を定めております。すなわち、船舶の主たる推進機関の動力源に供するもの、国が設置管理する航路標識の光源に供するもの、鉄道車両または軌道車両の主たる推進機関の動力源に供するものその他これに類するもの、陶磁器の製造工程における焼成用に供するものその他政令で定める事業を営む者が政令で定める用途に供するもの、農業及び林業用の機械のうち政令で定めるものの動力源に供するもの、輸出するもの等については免税措置を講じております。本税の税収入は、その徴収に要した費用に充てた残額は、すべて地方道路譲与税の場合と同様に道路に関する費用に充てるものとされるのであります。なお、五大市の長がその区域内の国道及び府県道の管理責任者とされておりますので、区大市所在の府県は、その徴収した軽油引取税を道路の面積を基準として五大市に交付することとし、五大市はその交付された額を道路に関する費用に充てなければならないこととしております。本税の収入額は、昭和三十一年度二十四億五千四百万円、平年度三十七億九千六百万円の見込みであります。
第十は、同様に目的税として都市計画税を設けようとすることであります。市町村は、都市計画事業に要する財源に充てるため、都市計画税を課することができるものとしていますので、課するかいなかは市町村の任意であります。この税は、都市計画区域として決定された区域の全部または一部の区域で市町村の条例で定めるもののうちに所在する土地及び家屋に対して課することとし、課税標準は固定資産税の場合と同様その土地及び家屋の価格とし、税率は百分の〇・二をこえることができないことといたしております。徴収については、固定資産税とあわせて行うこととにより手続の煩雑化を来たさないよう配慮いたしております。目的税でありますので、収入は全部都市計画事業または土地区画整理事業に要する費用に充てなければならないものとしております。税収入額は昭和三十一年度三十億三千九百万円、平年度三十四億三千七百万円と見込んでおります。
以上のほかなお次のような点についての改正をいたしております。
その一は、自動車損害賠償責任保険にかかわる収入金額を正味収入保険料の百分の十とすることであります。同保険が強制保険であることと、その付加保険料の割合が低いことにかんがみて、現在の百分の三十五を引き下げようとするものでありまして、これによる減収額は七百万円程度であります。
その二は、外航船舶を運航する法人の事業税の課税標準である所得の算定について特例措置を定めることであります。御承知のように海運業に対しましては、収入金額を課税標準として課税しておりましたのを、昭和二十九年四月一日以後所得を課税標準とし、その所得の計算は法人税の計算の例によって算定することに改めたものでありますが、その際、法人税の所得の計算上損金とすることを認められる減価償却額のうち、いまだ損金経理の行われていないいわゆる減価償却不足額の莫大なるものをかかえており、それは、所得を課税標準とすることになっても、事業税においては当然にただちには損金として繰り越されないため、自来法人税と事業税との間に所得の計算が異なることとなったのであります。このこと自体はただに税務行政上その所得計算を二重にしなければならないばかりでなく、そもそも海運業のわが国経済に占める特殊な地位にかんがみ、国策として海運業を助長している際でもありますので、法人税における場合と同様の取扱いをすることによって、所得課税に切りかえた時期における減価償却不足額の損金としての繰り越しを認めることとし、また欠損金の取扱いについても減価償却不足額の取扱いとの均衡をとるため、同様に法人税について認められる損金としての繰り越しは認めることとして、税額算定の簡易化をはかることにいたしたいと考えます。
その三は、国民健康保険税につきまして、被保険者一人当りの保険税額や療養給付費の増大に伴い、課税限度額を現行の三万円から五万円に引き上げることであります。
その四は、軽油引取税及び都市計画税の創設に伴い、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う地方税法の臨時特例に関する法律の一部を改正して、軽油引取税にあっては合衆国軍隊及び国際連合の軍隊等が軍隊等の用に供する軽油の引取、都市計画税にあっては軍隊等の所有するものに対しては課税しないこととしております。
以上御説明申し上げました地方税法の改正案による昭和三十一年度の増収見込額は、入場譲与税、国有資産等所在市町村交付金及び納付金を含めて百二十億三千九百万円、平年度百八十三億八千四百万円の見込みであります。
以上をもって今回提案いたしました地方税法の一部を改正する法律案の提案理由及び内容の概略の説明を終ることといたします。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに本法律案の成立を見ますようお願いいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404720X01019560222/2
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003・大矢省三
○大矢委員長 これにて説明は終りました。
本日はこの程度にいたし、質疑は後日に行うことといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404720X01019560222/3
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004・大矢省三
○大矢委員長 次に、地方財政の実情及び町村合併の促進状況について実情調査のために、さきに委員の派遣を行いましたので、この報告を派遣委員より聴取することといたします。
九州方面を森清君から報告願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404720X01019560222/4
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005・森清
○森(清)委員 本委員会の九州班の国政調査の結果を私が代表して御報告申し上げます。
今回の調査は、第一に地方財政の実態、第一に町村合併の進捗、第三に地方の行政、財政及び税制の改善に関する三つの項目について行なったものであります。調査の対象は福岡、佐賀の両県でありますが、両県を選んだのは、前者は九州の産業経済を代表する県であり、後者は九州における最大の赤字県であり、それぞれ異なった特色があるからであります。われわれ吉田、川村、加賀田、森の四委員は円地専門員及び直江調査主事補を伴って一月十五日東京を出発し、十六日から十九日までの四日間にわたって、福岡県では県庁のほかに福岡市、田川市、鞍手町、前原町及び太宰府町を、佐賀県でに県庁のほかに伊万里市及び佐賀市について調査いたしました。なお佐賀県では大坪、井手及び八木の三議員が参加されました。
まず福岡県の財政の実態でありますが、福岡県の財政は赤字といっても、他の赤字府県と比較すれば大したものではないが、九州全体の経済の約半額を占める富裕県である福岡県でさえも赤字になったというところに問題があるのであり、そこにわれわれの調査対象として選んだ理由があるのであります。
赤字が出て参ったのは昭和二十六年度でありますが、これは翌年には解消して黒字となりました。しかし昭和二十八年度は災害のあった年で、一躍決算額において五億九百七万四千円の赤字を出し、翌二十九年度には一億五千五百十七万三千円にまで赤字を減少せしめたが、三十年度にはまた急激に増し、決算見込額として八億四千九百七十二万五千円の赤字となりました。
また赤字の内容を見ると、消費的経費も投資的経費も二十八年度になって急激に増加しており、前者においては、人件費が二十八年及び二十九年には著しく増加し、後者においては災害復旧事業費が二倍半の激増であり、そのほとんどが補助事業費であり、これに伴って普通建設事業費も激増を見ているのであります。なお一般財源が逐年減少の傾向にあることは注目すべきことであります。
地方財政の赤字では、どこでも人件費が問題になるのでありますが、福岡県においても同様でありまして、歳出総額中に占める人件費の割合は、昭和二十五年度の四二%から二十六年度に四七%、二十七年度に四九%となっていますが、しかし人件費を経営的一般財源に比較すると、二十五年度に七三%であったものが、二十八年度に一躍……。〇%となり、二十九年度一二六%、三十年度見込み一二四%となっています。もちろんこれは義務教育費国庫負担金を除いてあるから、これを含めて計算すれば、それぞれ八五%、九七%、九三%となりますが、それにしても一般財源のほとんど全額を占めているのは問題でありましょう。なお人件費の約七割を占めるのが教職員費であります。しかし赤字の負担が重くなったのは、右の経営支出に基くものよりも、二十八年度における災害以来、復旧事業等による負担が大きいのであって、これは県財政の国庫依存財源の依存度が二十七年の三九・三%が二十八年に五三・八%に急増し、以後増加の傾向があり、三十年度見込みは五七・一%であるのを見ても明らかであります。
なお注意すべきは、朝鮮事変のブームにより福岡県は富裕であったのでありますが、蓄積を今日まで食いつぶして来たのであって、実際の赤字はもっと大きいのであり、その貯蓄分も尽きてきたので、今日その赤字が表面に現われてきたということであります。
次に町村合併の状況は、三十年十二月一日現在で百四十カ町村が減少して七市四十一カ町村となり、合併進捗率は八九%であるが、われわれ調査に参った当時では、進捗率が九二%に上っていましたから、きわめてよい成績であると印さねばなりません。
なお福岡市、田川市、鞍手町、前原町及び大宰府町の合併市町村につきその財政その他の状況を調査したが、赤字については、合併前には決算上赤字でなかったものが、合併後に赤字になったのは、剰余金皆無でかえって赤字を持ち寄ったこと、仕越し工事に対する国庫補助の未収、旧借入金の負担、引き継ぎ職員、議員及び各種委員の負担、退職手当等によるものであるが、これは全国的に多少とも共通した問題であると思います。
次に地方の行政、財政及び税制の改善に関しては、行政上、国の事務が他方に押しつけられているのを整理し、財政上自主税源を与えることであり、税制上県民税及び事業税の非課税規定を整理縮小し、納期後における県民税の徴収方法を合理化し、不動産取得税の税率を百分の五程度に引き上げ、遊興飲食税の基礎控除及び免税点制度を廃止して税率を軽減すること等が要望されました。また行政上の改善の一翼として、地方公務員制度を原則として国家公務員制度と同様とし、職員の研修制度も共通にし、労働三法は地方公務員についても適用せず、退職年金制度は国家公務員等と在職年数を通算し、災害補償制度を改善し、教育委員会及び公平委員会を廃止する等の意見がありました。
次に佐賀県は九州における赤字県としては自治庁調査の昭和二十九年度決算によれば、鹿児島県の十億一千七百万円に次ぎ八億九千九百万円であって第二位であるが、その財政構造のよくない点においては、九州地方における赤字の代表県とされているのであります。佐賀県の昭和二十九年度の決算総額では二億五千五百万円の赤字であるが、これは三十年度歳入予算を前食いし、繰り上げ充用金によって収支のつじつまを合せたものであって、この赤字額に事業繰越分の二億一千一百万円と支払い繰り延べ分の四億二千四百万円とを加算した合計額八億九千万円が実質上の赤字をなしているのであります。もちろんこれは人件費、事業費及び一般行政費の節減と行政の能率化、出先機関の統廃合を行い、かつ歳入面の増収をはかって約三億円程度の予算縮減をはかった上で、なおかつ生じた赤字であります。従って三十年度の予算は健全財政の建前で編成されたが、歳入規模が惨たんたる状態でありますので、期末勤勉手当の全額を未計上とし、恩給費、失業対策費、公債償還費等の義務的経費及び公共事業費はその一部を計上し、単独事業と補助事業をほとんど全部未計上とすることによって辛うじて収支の均衡を得たくらいでありますから、一月以降の支払い分その他に関する追加予算六億円に対しては、追加財源は皆無であるからこれだけ単年度の赤字となるので、これに二十九年度の赤字八億九千万円を加えれば、昭和三十年度末において十五億円の赤字が予想されるという容易ならざる状態であります。
佐賀県が赤字を出したのは昭和二十七年度からであり、飛躍的に激増したのは二十八年度であるが、これは災害が大きな原因をなしており、以後減退を見ないのであります。その内容を見るに、国庫依存度は六二%であって類似県の五九%に比して高いが、それだけ自主財源が少ないのみならず、その伸びがよくないことを示しており、県の一般財源が伸びない程度と赤字額とは大体同額であって、一般財源で義務的経営経費がまかない得なくなったことが、赤字の根本的原因をなしているのであります。そのため公債が増額することとなり、従って公債償還をどうするかが、赤字克服の中心問題となってくるのであります。二十九年度の決算では公債費が三億六千百七十五万三千円であって、四・五五%を占め、類似県の三・六五%に比し、はるかに負担が大きいのであり、この償還は県独自の財源ではどうすることもできないものであって、国の財源の付与を要望しているのであります。
赤字克服のためには国庫からの支給以外には自力で歳入をはかるよりほかはないが、今日ではこれ以上県民税も事業税も増徴は困難であり、負担金や分担金の増額もできない。事業も現在の三分の二である十億円程度に減じ、単独事業はほとんど中止し、起債を抑制し、職員を整理しても、これらはいずれも再建整備法を待たず、すでに実行してきているところであるから、これ以上は困難であると思われるのであります。入場税の国税移管のごときは、地方財政の不均衡を是正して、財政充実に資するためのものであるにもかかわらず、人口割で戻されるために佐賀県ではかえって八千万円程度減額するという矛盾もあるのであります。
要するに木県は農業県であって、県民は相当裕福であるにもかかわらず大企業が存在しないために歳入が少ないのであり、また大産業の一つである炭鉱業は不況のためにかえって失業問題に悩むという状態であります。しかも金融上では預貯金の約半額は農業協同組合に入れられるために、一般金融がまことに窮屈であり、起債も不消化となるので政府資金が要望されているのであります。なお財政困難を来たす特異な原因として、地盤軟弱のため道路、橋梁及び海岸堤防等の経費が多く、鉱害復旧費、医療扶助費、失業対策事業費、生活保護費、結核予防費等が多額であるということもあります。
次に町村合併の進捗状況は昭和二十八年十月に二市百二十町村であったものが、今年一月一日現在で七市五十四町村となり、差引六十六町村の減少を見ており、国の基本計画に対して八八彩の進捗率を示しているが、これは育成の不徹底もあるが、首長及び議員の多くが改選後日浅く公約抱負の実施や、任期に対して執着があること、基本財産の処置についての利害関係や、山間部の合併効果に危惧があること、合併上一部分村となるも、伝統に対し愛着があること等のためであります。これに対し合併市町村の育成について確固たる措置がなされねばならないと考えられます。
特に伊万里市と佐賀市については、市の当局及び議員等より聴取あるいは懇談をしたのでありますが、伊万里市は合併前に黒字であった町村が、合併によって四千万円の赤字を持ち込んだことが、昭和二十九年度決等で六千七百万円の赤字を生じた根本原因であります。これは合併町村が財産処分等がってに行なったがらであって、これは全国的にしばしば見られるところと同様であります。しかし伊万里市は自主再建六カ年計画で赤字を解消する方針であり、また炭鉱業界の不況とデフレ経済に伴う特異事情があるけれども、合併後は佐賀県全面積の十分の一を占め優秀なる港湾を擁し、大工場の誘致等、将来有望なる市であるから、赤字を克服して発展を見ることは、そう年月を要しないであろうと思われたのであります。
佐賀市も合併のため三千九百六十四万円の赤字を持ち込まれており、また昭和二十五年度の地方行財政制度の改革によって、逆に一千九百四十五万五千円の赤字を生み、上水道及び学校の施設費が増加した等の理由によって、一億一千七百十八万円の赤字総額となっております。
次に改善に関する意見としては、佐賀県は財政上では交付税及びたばこ消費税の増額、受益者負担制度の拡充、公債費に対する財源措置、起債の適正化をはかって、償還期限の延長、金利引き下げ、地方債の政府引き受けが望まれ、また公共事業等の補助率引き上げ、義務教育費の全額国庫負担、補助単価の改正及び零細補助金の廃止を要望しており、行政上は各種行政委員会制度の改廃及び整理統合による縮小、公務員の俸給基準の改正と停年制の設置を要望しており、税制では県民税、不動産取得税及びたばこ消費税の税率引き上げ、遊興飲食税の改正等を要望しております。また合併新町村の育成には、その立法化と国庫の補助を要望しております。
佐賀市及び伊万里市も県の要望と同様であるが、なお地方税法の改正は国税法の改正と一元的に取り計らうこと、消防施設の新設、都市計画税の復活等が要望されており、教育委員会及び公平委員会の廃止はいずこにおいても同様に要望され、特に各種委員会の公選制の廃止が要望されているのは注意すべきでありましょう。
また合併市町村の育成には、同じくその育成法の制定と、地方交付税の特例の延期か要望されております。なお、合併促進法に規定されている国有林の払い下げの急速なる実現を強く要望されたのであります。
これを要するに、今回の国政調査によって、地方財政窮迫の問題は全国的に共通する原因として、国の事務で地方に押しつけられているもののないこと、地方の自主財源のきわめて少いこと、特に産業の発展していない農業県において財政がきわめて困難になっていること等が看取されるのであります。もちろんこれ以外に各都道府県特異の事情のあることは申すまでもありませんが、九州地方において今度調査に参った福岡県及び佐賀県のごとき、その意味において最も代表的なものであることは前述の通りであります。ことに九州において化部が工業地域であり、中南部が農業地域であるということが、各県の経済力の懸隔をはなはだしからしめるものであるから、むしろ九州を打って一丸とする道州制の設置を要望するという声のあったことは、まことに注意すべきであると思います。町村合併については、当面の問題として赤字その他の困難がありますが、将来を考えるならば結局有利なのでありますから、ここに適当な育成強化の立法化が実現されれば問題はないと思います。いずれにしても、地方財政を初め地方自治体にとってまことに困難な問題が山積しておりますが、これは決して解決不可能なものではなたいとの確信を深めることを得ましのは、今回の調査の収獲と信じます。
簡単でありますが、これをもって報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404720X01019560222/5
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006・大矢省三
○大矢委員長 次に東北地方の報告を丹羽兵助君にお願いします。丹羽君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404720X01019560222/6
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007・丹羽兵助
○丹羽委員 東北班の調査については便宜私から御報告申し上げます。
一月中旬に私外同僚三委員と調査員の計五名一団となり、宮城、福島の両県に参り、地方財政及び町村合併の状況等について県並びに県下二、三の市を実地調査いたしました。調査の結果は、これは逐一御報告するのわずらわしさを避け、ただこの際その要点の二、三をかいつまんで申し上げますと、まず財政事情では、現在宮城県は十九億五千万円、福島県は二十二億九百万円の実質上の赤字をかかえておりますが、両県ともその赤字額のほとんど全部が昭和二十九年度までに生じたもので、福島県ではわずが六百万円が、宮城県ではそのうち二億が三十年度に生ずる見込みの赤字となっておるのであります。要するに、宮城県では歳出約百三十一億に対してその一五%、福島県では歳出約百六十七億円に対してその二二%に当る二十億円前後の大きな赤字をかかえ、これが県財政を圧迫しているが、両三年来の財政再建の努力も漸次効を奉し、現三十年度としてはさしたる赤字は、政府の施策のいかんとも関連し、発生しないかもしれないという段階に進みつつあると思います。しかしながら本年度の財政運営には相当困難を感じているようで、特別交付税の交付や行政費の節約を勘定に入れながら、しかも職員の昇給昇格、昨年十二月の期末手当増額分等は未措置のままになっていると聞きました。
いずれにしても県財政の構造そのものがはなはだ弱く、県税の収入が全歳入のわずか一〇%余で、県債は宮城県で九・二%福島県で二二・二四%となっており、いかに自主財源が少いか、また支出面で消費的経費が多くを占めているかは、福島県の本年度決算見込みで見ても、投資的経費二五%に対し、消費的経費が六一・九%であることを見てわかるのであります。
赤字の発生原因としては、全国に共通のもののほか、東北地方に特別なものとしては、この地方の後進性による公共事業量の多いこと、償還能力を無視した起債、さらに宮城県では連年の災害のほか、水害冷害等をあげております。もとより財政再建については両県とも真剣に対処し、努力を重ねております。歳入の増加と経費の節減に努め、すでに相当の成績をおさめておりますが、人員整理のごときも宮城県では一割二分に当る六百三十名の整理を完了し、福島県では定員の二割整理を目標とし、すでに一割五分の整理を終ったと聞きました。再建特別措置法の再建団体の指定を申請するかいなかは、なお研究中で十分明らかではありません。宮城県では慎重に検討し、一応独自の再建計画表など作っておりますが、これによると、昭和三十七年度までに四十六億円の赤字を生ずることになり、この赤字は国の総合経済六カ年計画の構想に基く国民所得の推移に応じた地方交付税及び県税収入の増加等に期待して、解消する計算となっておりますが、この期待が実現しない限り、現在のままでは再建の工夫をこらすも、なお八年かかっても赤字がなくならない見通しとなっていることは注意すべきことであります。従って県は今国会の成り行き等情勢を見きわめようとしておる段階で、ただ県下では塩釜市が申請しようとの意向を議決したやに聞きました。福島県の方は当局の言うところによると、赤字の性格が明瞭であって、将来については健全性があるから、過去の赤字について再建法の適用を受けるよう、その心組みで準備している様子であります。
市町村の方の財政状況は、宮城県では黒字団体六十六に対し、赤字団体は五十四あり、金額は八億七千余万円、福島県の方は、黒字団体五十七に対し赤字団体は七十九あり、金額は四億四千八百万円であります。その財政構造を全体としてながめますと、税収が歳入の四一%となっておりますが、支出の面で消費的経費が全歳出の約七〇%に達していることは、やはり注目すべきことと思います。
次に町村合併につきましては、宮城、福島の両県ともそれぞれおおむね計画目標の八一%、八八%と進捗し、良好な成績をあげております。
ただ残り未合併町村には各種の合併障害があり、またすでに合併しながら分村問題を起しているところが、宮城県で十二件もあるようであります。
なお合併に関して、いろいろな意見や要望があったのでありますが、要するに促進法の有効期限後、すなわち本年十月以降における未合併町村に対する措置及び新町村育成について、いかなる方策を講ずるか、国の基本的態度を早く決定してほしいということであり、特に合併町村の新町村建設計画については、各省庁を初め政府諸機関が、その実施に積極的に協力するよう統一態勢を整え、新年度からすみやかに事業の実施に着手できるようしてほしいということでありました。
右のほか広く地方行財税制一般についても、多くの意見や要望を聴取してきたのでありますが、すべてここには省略し、別な資料や最初申し上げた概要報告についてごらんを願うこととしてはなはだ簡単でありますがこれをもって御報告にかえます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404720X01019560222/7
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008・五島虎雄
○五島委員 後藤財政部長に資料の要求をお願いしたいと思うのですが、さきの補正予算における交付金の各都道府県配分の明細、同じく特別交付金の各都道府県に対する配分の明細書があれば、以上二つを資料にして御提出願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404720X01019560222/8
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009・中井徳次郎
○中井委員 三十年度の交付税がきまったと思いますから、府県の一般交付税、特別交付税の比率、大都市とか、二十万くらいとか、十万程度、五万程度というのに分けていただきましてこの次の委員会までに一つ資料をお願いしたい。市町村の特別交付税はきまっておらぬようですから、きまらないものはきまらないままでけっこうですからお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404720X01019560222/9
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010・後藤博
○後藤政府委員 普通交付税と年末の交付金と特別交付金、それから特別交付税の三つに分けてですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404720X01019560222/10
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011・中井徳次郎
○中井委員 三つに分けてやって下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404720X01019560222/11
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012・大矢省三
○大矢委員長 それでは本日はこの程度にして、次会は公報をもってお知らせいたします。
これにて散会いたします。
午後三時五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404720X01019560222/12
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