1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年二月二十一日(火曜日)
午前十時二十九分開議
出席委員
委員長 山本 粂吉君
理事 江崎 真澄君 理事 大平 正芳君
理事 高橋 等君 理事 保科善四郎君
理事 宮澤 胤勇君 理事 受田 新吉君
大坪 保雄君 大村 清一君
小金 義照君 薄田 美朝君
辻 政信君 床次 徳二君
福井 順一君 眞崎 勝次君
粟山 博君 横井 太郎君
茜ケ久保重光君 飛鳥田一雄君
石橋 政嗣君 稻村 隆一君
片島 港君 細田 綱吉君
森 三樹二君
出席国務大臣
内閣総理大臣 鳩山 一郎君
労 働 大 臣 倉石 忠雄君
国 務 大 臣 船田 中君
出席政府委員
法制局長官 林 修三君
総理府事務官
(調達庁次長) 丸山 佶君
外務事務官
(欧米局長) 千葉 皓君
委員外の出席者
議 員 山崎 巖君
専 門 員 安倍 三郎君
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二月十七日
委員薄田美朝君辞任につき、その補欠として山
本猛夫君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員山本猛夫君辞任につき、その補欠として薄
田美朝君が議長の指名で委員に選任された。
二月十七日
憲法調査会法案(岸信介君外六十名提出、衆法
第一号)
同月十八日
労働省設置法等の一部を改正する法律案(内閣
提出第六二号)
同月二十日
長野県長野市の地域給引上げの請願(西村彰一
君紹介)(第六八四号)
金鶏勲章年金復活に関する請願(薩摩雄次君紹
介)(第六八五号)
同(中曽根康弘君紹介)(第六八六号)
同(植木庚子郎君紹介)(第六八七号)
同(久野忠治君紹介)(第七六九号)
東北地方に薪炭手当支給に関する請願(八田貞
義君紹介)(第六八八号)
同(池田正之輔君紹介)(第七六六号)
同(助川良平君紹介)(第七六七号)
同(愛知揆一君紹介)(第七六八号)
公共職業安定所職員の給与調整に関する請願(
柳田秀一君紹介)(第六九〇号)
同(春日一幸君紹介)(第六九一号)
愛知県形原町及び西浦町の地域給引上げの請願
(杉浦武雄君紹介)(第七三一号)
旧海軍特務士官等の恩給不合理是正に関する請
願(福田昌子君紹介)(第七三二号)
北海道津別町の地域給指定に関する請願(永井
勝次郎君紹介)(第七六〇号)
神奈川県藤沢市の地域給引上げの請願(小金義
照君紹介)(第七七〇号)
岡山県津山市の地域給引上げの請願(小枝一雄
君紹介)(第七七一号)
京都府福知山市の地域給引上げの請願(柳田秀
一君紹介)(第七七二号)
吉松町に自衛隊しよう舎設置の請願(池田清志
君紹介)(第七七三号)
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本日の会議に付した案件
憲法調査会法案(岸信介君外六十名提出、衆法
第一号)
労働省設置法等の一部を改正する法律案(内閣
提出第六二号)
調達庁に関する件
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/0
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001・山本粂吉
○山本委員長 これより会議を開きます。
憲法調査会法案を議題とし、まず提出者より提案理由の説明を求めます。山崎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/1
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002・山崎巖
○山崎巖君 ただいま議題となりました憲法調査会法案につきまして提案の理由及び法律案の概要について御説明を申し上げます。
現行憲法が民主主義と平和主義並びに基本的人権の尊重にその基本的原則を貫く点におきましては、何人もこれを不可とするものはないと信じます。しかしながら、現行憲法が昭和二十一年占領の初期において連合国最高司令官の要請に基き、きわめて短期間に立案制定せられたものであり、真に国民の自由意思によるものにあらざることは否定しがたき事実であります。さらにまた過去約九カ年におけるこれが実施の経験にかんがみまして、わが国情に照らし種々検討を要すべき点の存することも、これを認めなければならないと存ずるのであります。
ここにおきまして、この際新たなる国民的立場に立って現行日本国憲法に全面的検討を加えますことは、わが国独立の完成のためにも、はたまた再建日本将来の繁栄と国民福祉の向上のためにも、きわめて緊要なことであり、そのためにはすみやかに有力なる憲法の調査審議機関を設けることが必要であると考えまして、ここに本法律案を提出いたしました次第であります。
本法律案は、右の趣旨に基き日本国憲法に検討を加え、関係諸問題を調査審議するための機関として憲法調査会を設けんとするものでありますが、その構成につきましては、憲法問題の重大性にかんがみまして広く衆知を集め、公正なる世論を反映せしむるため、国会議員三十名及び学識経験ある者二十名、合計五十名以内の委員をもって組織することといたしておるのであります。また調査会には会長一名、副会長二名を置くことになっておりますが、いずれも委員の互選によることといたしております。右のほか、調査会には専門委員及び幹事を置くとともに事務局を設くることとし、事務局長以下の職員をして事務を処理することといたしておるのであります。この調査会はこれを内閣に置くのでありますが、その運営につきましては特別の諮問をまつことなくあくまで自主的な立場において調査審議せんとするものであり、その結果については内閣または内閣を通じて国会に報告することといたしておるのであります。
以上が本法律案提出の理由並びに法律案の要旨であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに可決せられんことを切望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/2
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003・山本粂吉
○山本委員長 これより質疑に入ります。通告がありますので、順次これを許します。高橋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/3
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004・高橋等
○高橋(等)委員 私は悪法改正の心がまえにつきまして、首相のお考えを承わりたいと存ずるのでございます。
もちろん憲法は国の基本法でございます。その改正は国民生活のすべての面に影響を持つものでございます。従いまして、国会の審議に当りましてもきわめて慎重であり、冷静を要するものでございます。本憲法調査会設置法におきましても、こうした態度で当らなければならないと考えております。また審議に当りましては、全国民の考え方を総合いたしまして、国民的立場でなされねばならないことももちろんでございます。従って私は本日も良心の命ずるところに従いまして、私の信念を吐露してお伺いを申し上げたいと存ずるのであります。
まず第一点は、憲法改正の必要性についてでございます。憲法改正はもちろん国民投票を必要とするものでございます。国民の前になぜ調査会を置かなければならないか、憲法改正を前提にした調査会を置く必要性を十分に、具体的に認識せしめることが必要であると考えるのであります。ただいま提案理由の御説明にいろいろと申されておりますが、そのうちに「過去約九カ年におけるこれが実施の経験にかんがみまして、わが国情に照らし種々検討を要すべき点の存する」こう申しております。こうした点につきまして、果していかなる点で政府が不便を感じておったかということ、また国の独立の完成のためにも至急にやらねばならないということをしばしば言われておるのでありますが、具体的に国民が納得するようなこの点に対する説明が必要だと思うのでございます。これらの点に関しまして総理の御所見をまずお伺いをいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/4
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005・山本粂吉
○山本委員長 質問者の高橋君にお諮りいたしますが、鳩山内閣総現大臣は着席のまま答弁を願うことに御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/5
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006・高橋等
○高橋(等)委員 御病身でございますから、その通りでけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/6
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007・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 お許しを得まして、すわったまま答弁させていただきます。
ただいまの御質問の憲法改正を非常に慎重にやれという、そういうような概括的のことはもとより当然なことであります。私どもが憲法改正をしなくてはならないというように考えましたのは、山崎君が先ほど説明いたしました通りに、占領中にでき上った憲法ではあり、外国の強い示唆があって、短期間にでき上ったものであるから、独立を完成した今日においては、日本の多数の国民の自由意志によって独立にふさわしい憲法に改正をした方がいいと思いまして、憲法改正をした万がいいということを決意した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/7
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008・高橋等
○高橋(等)委員 また提案者にいろいろと後ほど伺うことにいたしまして、次にこの調査会設置法案は、これは議員提案でございますが、政府の考え方といたしましてお伺いいたしてみたいのでありますが、調査会はどれくらいの期間存続すればその目的が果せるであろうか、すなわち言葉をかえていいますれば、憲法改正に要する期間というようなもの、これは改正成案を得る期間でございます、これについては総理はどういうように見通されておるか、それを承わっておきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/8
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009・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 今日まで日本の憲法の改正、制定については非常に長時間を費しておりまして、とにかく日本の国法、基本法を制定するのでありますから、時間はずいぶんかかるものと政府は予定をしております。決してこれを急速に拙速をやるというような考えは毛頭ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/9
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010・高橋等
○高橋(等)委員 ただいまの総理のお答えに私は満足をいたします。
そこで憲法改正は国民投票を必要といたすことは申すまでもないのでございます。従って改憲に当りましては国民のほとんど全部の賛成声得るというととが問題の本質上必然であり、また必要であると考えるのであります。たとい衆参両院におきましてそれぞれ三分の二以上の議席を改憲賛成側が獲得したといたしましても、それだけで直ちに改憲に乗り出すというととは間違いであると考えます。もし改憲に当って国論を分裂せしめ、国民各層の深刻な対立を来たすようなことがありましては、国家として取り返しのつかないととにはると思います。国家あっての憲法であり、憲法あっての国家ではございません。ところが現状におきましては、早急に憲法を改正しようとなさいますようなときは、もちろん内容にもよりますが、必ず国論の分裂を来たし、深刻な対立を招くと考えます。これらの点につきまして、要するに国民が改憲に対してどの程度にこういう理解を持っておるかというようなことに関する首相の見解はどうでございましよう。また改憲のためには、その趣旨等を徹底をさして、国民世論の理解を求める必要があると思うのであります。これに対していかなる施策を首相としてお考えになっておるか、この点を承わらしていただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/10
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011・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 国民に憲法改正の必要を納得せしむるのには、ずいぶんな時間がかかると思います。これもやはり憲法調査会の任務としてやってもらいたいというのが憲法調査会法案を作るときの目的であります。むろん、今高橋君のおっしゃった通りに、全国民が一致して憲法改正をやるというような気分になることも非常に必要なことでありますから、自由民主党としては、その趣旨にのっとって、社会党に対しても憲法改正調査会法末を共同提案にしたいという交渉をしたのであります。これは自由民主党としては当然になすべきことをやったものと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/11
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012・高橋等
○高橋(等)委員 そこで、問題が少し離れるかもしれませんが、一つ承わっておきたい。最近新聞紙上その他で小選挙区制に関しまして、いろいろな区分けその他の発表を次々といたしております。これは首相の関知されるところではないことはもちろんでございます。ところがこの小選挙区制につきまして、憲法を改正する意図のもとに小選挙区制をやるというようなことを言われる人もあるし、国民の中にはそう考えておる人もある。これについては首相も本会議の席その他において絶対にそういうことはないということをおっしゃっておられます。そこで首相にお伺いいたしたいのでございますが、先ほど申しましたように、議席が三分の二になりましても、国論がこれについてこないならば、憲法改正はできないのだから、小選挙区をやることが憲法改正と必然的につながったものであるということは、少し考え方がひがんでおると思うが、首相は小選挙区制の実施を早期にやった方がよいとお考えになるかどうか、この点を伺わしていただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/12
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013・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 お答えをいたします。選挙法の改正をして小選挙区にしたいというような現在の行き方につきまして、私は少しも関知しておりません。選挙法と憲法改正とは無関係であると私は思っております。ただ小選挙区制を主張する人は、小選挙区制の方が選挙が楽にできるという考え方ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/13
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014・高橋等
○高橋(等)委員 もうちょっとそこをお願いいたしだいのでありますが、政府としての立場で、この選挙法改正の調査会等もおやりになって、御諮問なさっておるのであります。政府として小選挙区制を早くやった方がよいとお考えにねっておるかどうか、その点をもう一度伺わしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/14
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015・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 小選挙区については、まだ現内閣できめたことがございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/15
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016・高橋等
○高橋(等)委員 それでは次に移らしていただきますが、先ほどの、社会党に対して憲法改正調査会法案の提案に当ってわが党から共同提案を申し入れて、これを社会党が断わったということでございます。これはまことに遺憾に思います。憲法改正につきましては、国論を統一するために、社会党の協力を必要とすることはもちろんでございます。従って調査会には必ず社会党の議員等の参加を得ることが必要であると考えます。社会党も、左派、右派にお分れになっておりましたときの左派の綱領あたりを見ますと、社会主我政権ができたときには、その時分の社会主義にかなうところの憲法に作り直すんだ、かなうように憲法の改正を行うんだということをはっきりうたっておる。ところがその後合同を機会に、そうしたことは私は多分清算をなさっておられることと思うのでありますが、なお合同の際におきまする左派社会党あたりの綱領の承認の全国代議員会等におきましては、この綱領に憲法改正のことはうたっておらないが、しかし社会主義政権ができたときに憲法改正をやるのは当然のことであるから、われわれは何も言っておらないんだ、こういうことを責任者が公式の席で御答弁をなさっておられることは、記録に明らかであります。
そこで私は、こうした考え方を持っておられるのに、どういうわけで憲法改正についての調査をやる調査会を設置するについて、共同提案をしようというのを拒否せられたか、全く理解に苦しむところであります。およそ国民的の利益の前には保守も革新も同一歩調をとることは当然といわねばなりません。英国の保守党、労働党のごときは、この点のモデル、ケースであります。また諸外国の革新政党の中で独立のための軍備を否定しておるところはどこもないということも、私はこのためだろうと思うのであります。しかるにわが国の現状は、国民の利益に関しまする重大問題につきまして、保守、革新の間にはなはだしい懸隔のあることは残念にたえない。社会党も憲法改正につきまして、保守党内閣がやるのは反対だが、自分の手でやるのは賛成だというような態度を清算されまして、国民全体の利益のために憲法改正調査会に参加をせられ、その主張を国民の前に明らかにする、そして憲法改正の大業に協力せられることが大政党としての態度であり、国民に対する義務であると私は考えます。
そこでこの点は憲法改正上非常に大切なことと考えますが、首相は先ほど来共同提案をすることについて断わられたのは遺憾だと言われますから、本調査会に社会党の参加を希望なさっておられるであろうことは十分に察知をいたしますが、並み大ていのことではなかなか社会党も参加をなさらぬだろうと思う。しかしここは一つ襟度を開いて、今申し上げたような大きな国民的利益の前に、社会党の本調査会に対する参加を求められることが絶対に必要だと思う。そのために首相はどういうような決意を打って社会党の参加を求められるか、社会党の参加がない場合に、この調査会をどういうように運営をしていかれるつもりか、これを一つ伺わしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/16
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017・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 自由民主党が憲法の改正について、社会党の参加を求めて幹事長が社会党に対して交渉しましたことは、公知の事実であります。そういう事実はありますが、遺憾ながらそれは達成できなかったけれども、憲法改正調査会の委員には社会党の人も入れて、共同して憲法改正に努力をいたしたいという希望を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/17
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018・高橋等
○高橋(等)委員 ただいまの御希望を実現なさるために、あらゆる努力を尽されることはもちろんでありますが、どうぞその点につきましては、特に御努力を払われることを衷心から私は希望いたします。
なお一点、これは憲法改正の点で、第九十六条の改正について、今月の十九日に新聞で見たのでありますが、十八日の朝に秋田県の郷里へ根本官房長官が帰りまして、そのときに憲法改正の手続については、私見として、まず憲法第九十六条の改正を国民投票に問うて、そのあとで改正憲法草案の全文を一括して国民に問うのが場当然だと述べておる。これはどの新聞にも大体出ておりますから、言われたことに相違ない。一国の官房長官の発言でありますから、これはあらかじめ政府部内でそうしたお考えがまとまりつつあると考えられても、私は仕方がないと思うのでありますが、ここで首相にはっきりとお考えを承わりたい。果して憲法第九十六条の改正を先に国民投票によって求められるつもりかどうか、またその場合は九十六条をいかに改正しようと考えておられるか、おそらくあとの段は御答弁がいただけないかとも思いますが、これは大切なことでございますから、ここで国民の前にはっきりさせておいていただきたい思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/18
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019・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 私はその官房長官の談話については何ごとも存じておりません。そういうようなことをきめたこともございませんが、これは官房長官自身の考えがあるいは間違って伝えられたのか存じませんけれども、それについて確かめたこともございません。私個人としてはそういう考えを持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/19
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020・高橋等
○高橋(等)委員 先ほど首相はこの憲法改正については、国論の帰一を待って慎重にやらなければならぬ。明治維新当時の憲法改正についても、非常に長い時間かかつおる。だからそうしたことを考えあわして決してあせってやろうとしておらぬ、こういうことを御発言になりました。実ははなはだ失礼な言い分でございますが、総理は不幸にして病魔に冒されました。この総理が冒されておられます病魔は、国民は非常に何かものをせくといいますか、急ぐといいますか、そうしたようなことが起りやすい病気のように一般的に判断をされておる。そこで総理は一国の首相として、非常な重責にあり、責任を持った立場において、これらのことはもちろん克服をされておられることを私は信ずるのでありますが、しかし国民はそうした不安な考え方をその点で持っておりますので、本日の御発言は大へん私はうれしく思いますが、なおどうぞ、そうした態度で一つお進み下さいますことを特にお願いを申し上げまして、私の質問を終らしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/20
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021・山本粂吉
○山本委員長 稻村君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/21
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022・稻村隆一
○稻村委員 私が最初まず鳩山首相にお尋ねしたいのは、鳩山首相はしばしば憲法軽視の言動があります。立憲政治家として憲法軽視の言動ほど私は罪悪のことはないだろうと思います。その前に私首相の了承をいただきたいのは、私は個人としては、首相を非常に尊敬しております。なぜかなれば首相の経歴からいっても、帝国大学を出て、すぐ市会議員になり、代議士になり、そしてしかも東条内閣のときは議会における少数のリベラリストとして非常な弾圧をされたことも知っております。それから首相の先代和夫博士は、大隈伯とともに早稲田大学を作って、わが国の自由民権運動に尽されたことを知っおります。知っておりますから、首相に対して非常に理解を持っておるのですが、首相の最近の憲法を侮辱せられる言動は、私は立憲政治家としては罪悪だと思うのです。たとえばいかに民主的な憲法があっても、その憲法を侮蔑することによってワイマール憲法はあのようになってしまって、ドイツの二度目の悲劇になっておる。それからまた歴史的に言うならば、スペインはかって世界で一番完備した民主的な憲法を待っておったが、憲法を蔑視した言動、行動がアルフォンゾ十三世の独裁、それから革命、それからフランコの独裁政治というような陰惨な政治になった。私は過去における首相のリベラリズムを積極的に守った行動を非常に尊敬しておるのでありますが、去る一月二十八日午後一時に神田の共立講堂で自主憲法期成議員同盟の演説会がありまして、そのときの首相の演説の内容が、一月二十八日の東京新聞や朝日新聞などに出ております。そのときの鳩山首相の演説の要旨は、国民の多数の人は現在の急法は平和憲法であるといちずに思っているようであるが、これは考えをもう一度めぐらせば、平和憲法というのは、そういう名前の技術によってわれわれをだましているのである。従って現在の憲法は平和憲法ということは至当ではない、こういうようなことを言っております。私は憲法問題を総理大臣が学問的にとうだとか、理論的にこういう不便があるから、これはこうしなければならぬということは差しつかえないと思う、大いにけっこうであると思う。しかしながらごまかしの憲法であるというような、いやしくも憲法を侮辱するがごとき言動は断じて私は許すことができないと思うのですが、この点に対して総理大臣はどう考えられるか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/22
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023・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 稻村君の御質疑に対してお答えいたしますが、もちろん国政運営の上に憲法を尊重すべきことは私も承知をしております。憲法を尊重しないで国政を運営するという希望は持っておりません。私が共立講堂で演説しました趣旨は、平和を維持するということに反対するわけじゃないのです。憲法が平和主義をとっておる、自由主義をとっておる、基本的人権をきめたというようなことについて少しも非難する気分は持っておりません。平和主義も、世界の平和ということは、われわれがどうしても考えなければならず、努力しなければならない事柄であります。自由主義もそうです。われわれも自由を尊重していくことについては人後に落ちません。けれども平和主義をとり自由主義をとるのに、現在の憲法は適当しているかどうかということを論議することはまた別の問題であります。現在の世界の平和が、現在のような自衛力を持たなくてもいいというような書き方で、世界の平和を維持することに足りるか足りないかというととは、われわれが論議する値打のある問題だと思います。私個人としては、日本は自衛力を持って、必要があれば飛行機も持つがよし、海軍も持つがよし、陸軍も持つがよく、自分で自分の国が守れるような自衛力を持つ国になる方が、かえって世界の平和に貢献ができるという考え方をしているのでありまして、そこは意見の相違なのであって平和がきらいだ、憲法を侮辱するというのとは全く別の問題でありますから、どうか誤解のないようにお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/23
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024・稻村隆一
○稻村委員 そのことは私は今の御説明で納得はしませんが、しかしこれは言ってものれんに腕押しになりますからやめますけれども、そこで私は、首相はこの間の本会議におきまして河上丈太郎氏に対する答弁の中でも、やはり憲法は押しつけられた憲法であるというふうなことを言っておられる。それからまた今の山崎氏の提案理由の中にも、これは占領治下に連合軍司令官から押しつけられた憲法であるというふうな意味のことを言っておるわけであります。そこで私はお聞きしたいのでありますが、一体憲法の制定は一人の政治家の政治論とかあるいは主観とか人生観とか世界観というふうなもので作られるものではない。これはわかり切ったことです。憲法には憲法の歴史があるわけです。私は終戦後の主権在民の憲法は非常によくできていると思うのです。私も実は若いときから社会運動、農民運動をやりまして、ひどい弾圧を受けた。言論、結社、集会の自由も何もない。しかも追放されました。けれども私は終戦後に警察から威嚇されることのない、自由な憲法ができたことに対して、非常に明るい気持になった。これは私だけじゃない。日本国民は歓呼の声をあげて、この言論、結社、集会の自由を有する主権在民の憲法を歓迎したのです。これは押しつけられた憲法じゃない。しかも憲法の歴史を見ればわかるのでありまして、大体われわれの先輩である明治における自由民権の人たちも、やはり一様にアングロサクソン的な憲法を要求したのです。そうしてそのアングロサクソン的な憲法は、世界憲法の模範であることは、これは私がここで言うまでもない。たとえはチャールズ一世を倒したクロムウェルの兵士たちが、憲法は君主から与えられたものじゃない、これは人民の協定である、こういう言葉を使った。それをもととしてクロムウエルが当時議定書というものを作ったのです。このイギリスにおける考え方が、アメリカの独立戦争のときに、このクロムウェルの兵士たちが使った人民の協定なる言葉が、初めて成文憲法としてアメリカの憲法になったわけです。だからして、アメリカの憲法は世界における民主憲法、成文憲法の模範であることは、これはだれでも知っておることです。そこでフランス革命はアメリカの独立戦争より少しあとです。フランス共和国憲法はアメリカのこの憲法を模範にして作ったわけです。ところがこのフランス革命の影響がヨーロッパ各国に伝播いたしまして、プロシャを除くヨーロッパのたいていの国の憲法は、これはフランス革命を仲介としてアメリカ憲法を模範とした憲法なんです。
そこで日本の自由民権運動の歴史に移りますが、歴史を基礎としない議論は空論です。いろいろ言ったって問題にならない。自由民権運動の人々もやはりアングロサクソン的な憲法を要求したのです。ところが当時の日本の憲法は官僚がこれをやった。伊藤博文とか山県有朋とか官僚がやった。それにはいろいろな理由がある。日本が近代国家に成長するには、一面においては民権思想をとり、民権主義をとり、一面においては国家主義的な強大な権力を必要としたのです。これは近代国家として成長するのにはやむを得ない方法であった。ところがそれをちょうど日本の官僚はプロシャにとった。そうしてプロシャの国家主義を輸入したことは御存じの通りであります。そうしてその国家主義は非常に膨大な官僚機構と、それから強大な軍事的な勢力を基礎としたものなんです。常に民権主義と対立するものなんです。そこでちょうど日本はドイツのように、民権主義はこの国家主義の前に非常に圧服されまして、そうして妥協いたしまして、イギリスのような憲法でなくて――力関係でやむを得なかったかもしらぬが、とにかく欽定憲法というものができたわけです。非常に政府の力の強い、行政権力の強い、それが今日の日本の悲劇の原因だと思う。もしあなたのお父さんや大隈伯爵のような人々の考えておる――大隈伯は明治十四年に、有栖川宮と一緒になって憲法を一挙にやろうとして失敗いたしまして野に下った。それ以来日本では、そういうことが日本の悲劇であった。そうして日本は敗戦によってこの国家主義と官僚主義と軍国主義が滅びてしまった。そうしてアングロサクソン的な民権主義だけが残ったのです。だからしてなるほどこれは一面から言うならばアングロサクソン、アメリカから押しつけられた憲法だと言うかもしらぬけれども、しかし民主主義は人類共通の遺産です。ある一個人が発明したものでもなければ、ある民族の独占でもない、これは主権在民の民主憲法といったらアングロサクソンのものなんです。その主権在民の憲法が終戦後日本に初めてできた。そうして国家主義が滅びた。そういう憲法の歴史をかえりみるならば、これは少しも押しつけられた憲法ではないですよ。それをただ自分の主観的独断から憲法の歴史を無視して押しつけられた憲法だ、押しつけられた憲法だと言うことは、全く憲法の歴史を無視した議論だと思うのですが、鳩山首相ともあろう人がどうしてそういうことを言われるかということ、しかも提案者の考えは間違っておる。ちっとも押しつけられた憲法ではない。それからなるほど占領軍の示唆があったかもしらぬけれども、前の多数党というものはいつでも選挙というものを――私ども知っておるが、必ず権力をとったものが多数党になる。権力と金力で買収した。政友会が天下をとれば政友会が多数党になる。憲政会が天下をとれば憲政会が多数党になる。これは偽わられたる国民の世論ですよ。偽られた、うその多数党ですよ。ところが終戦後は全く言論、結社、集会の自由のもとに何人からも圧迫されることなく、国民はほんとうに自分の自由意思によって議員を選んだ。その国民の自由意思によって選ばれた議員が、しかも国民とともに歓呼の声をあげて、この主権在民、言論、結社、集会の自由を有する憲法を歓迎して、そうして正当の手続によって議会において満場一致、これは制定されたのです。いろいろ連合軍からどうだったとかこうだったとかあったけれども、これは議員の知るところじゃない。国民の知るところじゃない。これをどうして押しつけられた憲法だというのですか。全く事実に反しているじゃないか。うそじゃないか。こういう独断的なことを決して言うべきものじゃない。そういう独断的な考えによって憲法改正を考えるがごときことは、誤まっている。特に自由民権運動の何たるかを知らない官僚出身の政治家が、軽々に憲法改正をとなえるがごときは思わざるもはなはだしいと思う。首相もよっぽど考えて、憲法の歴史を無視したことを言われることは気をつけられたがよろしいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/24
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025・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 稻村君の言われるところにも、私は共鳴する点がございます。あなたは私の考えを誤解していらっしやると思います。日本の現在の憲法でも、主権在民、民主政治にしたというようなことは非常にいいことだと思っておりまして、この民主政治を直そうとはしておりません。あなたはイギリスだのアメリカだのフランスの例をお引きになっていろいろおっしゃいましたけれども、アメリカでもイギリスでもフランスでも自衛軍は持っております。私は自衛軍は持った方がいいというのであります。アメリカやイギリスのやり方を非難をしているわけでもないのです。ですからどうか誤解のないよう私の考え方を正解をしていただきたいとお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/25
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026・稻村隆一
○稻村委員 私は誤解は少しもしていないと思うのですが、押つけられた法だとかいうことを言われる。それから提案者の説明にもそういうふうなことを言っておる。現行憲法は、昭和二十一年占領の初期において、連合国最高司令官の要請に基き、きわめて短時間に立案制定せられたものであります、こういうことを言っている。しかしこの主権在民のアメリカ的な憲法を受け入れる素地は十分に日本にあったのです。野蛮人に主権在民の憲法を持ってきたからといって、それを受け入れるものじゃないのです。憲法にはそういうふうな長い間の歴史があったのであらて、ただそれをアメリカ憲法を模範としただけで、短時日で憲法ができたというようなことはどこの歴史にもあった。たとえばアメリカの独立戦争、フランス革命、みな短日月に憲法が制定されている。しかし短日月で憲法は制定されて差しつかえない。ちゃんと模範がある。そういうことを理由にして憲法を改正するというようなことは――私ははっきりあとで質問で申し上げますが、要するに国家権力に対する郷愁が、多くの人たちをして憲法改正を言わしめている、私はこう言いたい。そこで私は憲法学者じゃないから、ここで憲法論をやろうとは少しも思わない。山崎さんも、主権在民の民主主義を守る、こう言っておるのだが、しかし言うことだけではこれは信用できない。それは今度の憲法調査会を内閣に置くということ――これはそもそも私は山崎氏が言うこと、あるいは首相が主権在民を守るということを信用できない。首相の意思がどうであっても、これは間違った方向にいく。むしろ基本的人権を制限する方向に逆転する、こういうことを私は思う。それで憲法の第九十六条でありますが、憲法の――これは憲法論を私はやるのじゃない。議員である以上は多少は憲法ぐらい知っていなければならぬ。そこで憲法第九十六条に「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」こうはっきり言っておる。しかも憲法の第四十一条には、「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」といっている。こういう重要な問題に当っては、当然調査会等は議会に置くべきなんです。内閣に置くということは、これは私は間違っていると思う。そこで内閣に提案権があるということは、これは政府も言っているし。学者の下部も言っておる。憲法第七十二条に「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、」云々というのがある。これによって憲法改正の提案権は内閣にもある、こういう考えを主張しているわけです。そこで私は、これも法律理論はともかくとして、憲法の歴史からいって、憲法改正の提案をこの内閣がするということは根本的に間違っている。これはあくまでも議会がやるべきであると思う。何となれば、憲法制定の歴史は、政府とか君主とかいうふうな行政権力との長い間の闘争の過程から、国民の自由を守るために憲法が制定された。ところがむろん内閣は行政府じゃない。特に政党内閣においては、議員の多数党の代表が内閣を組織して行政権を支配するのだから、これは行政権そのものではない。それはわかっておる。内閣は行政権と立法権との間の連鎖である、これもわかっておる。しかし内閣総理大臣が一たび何かやるときにはすべて四囲の官僚がやる。私は決して官僚を悪いとは言わない。官僚は大いに必要である。しかし官僚というものは行政権を拡大する本能を持っておる。これは官僚として仕方がない。その官僚が立案したものが内閣の議案になって議会に提出されれば、これは実際問題として特に多数党政治においてはなかなか修正ができないのです、議会政治は要するにしろうと政治なんだから。そうして立法技術者というくろうとが作ったものをなかなか修正できない。知らないうちに全然自分の意図と違った法律ができたりしているのです。そういう点を考慮するときにおきましては、内閣はむろん行政権そのものではないけれども、しかし内閣に調査会を置くということは、結局行政機関がこれをやるのだから、官僚がこれを作るのだから、そこで基本的人権を著しく制限するおそれが十分にある。その点イギリスなんかにおきましては、憲法改正等の憲法的な問題を議するときにおきましては、必ずこれを議会に置くことになっているのが慣例になっている。これは憲法を守る立場から当然のことである。内閣に調査会を置くということは、法律的にはいろいろな理論は立つかもしれぬけれども、実際的には議員の発議権の侵害なんです。またこれに賛成する議員は、私はみずから議員が発議権を放棄するものだと思う。この点一体総理大臣はどう考えておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/26
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027・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 憲法改正を国民に発議する場合におきましては、むろん国会においてやりまして、国会に三分の二以上の議席がなければできないことになっております。ただ憲法改正調査会というのは、外部から学識経験者を入れますものですから、学識経験者を入れてよき憲法を作りたいというために、そういうような手続をとりますときには、これを内閣に置くというのが先例になっておりまして、違反ではないのでありますから憲法調査会は内閣に置いたわけで、国会には置かなかったわけであります。国民に発議をする場合におきましては、つまり憲法改正案を作り上げて国民に訴える場合におきましては、国会の議決を経、しかもそれが三分の二以上て議決がなければ国民に対して発議できないということは憲法上明らかなことであります。これを動かすというような考え方はむろん毛頭持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/27
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028・稻村隆一
○稻村委員 三分の三の国民の賛成がなければ改正できぬということは、これはもうわかり切ったことです。しかし私の言うのは、内閣に置くということがいかぬ、官僚が立案するのだからこれはいかぬというのです。そしてこれを議会に出してもし三分の二以上の多数で可決された場合においては、国民は必ず誤解する。議会の大多数が可決したのだからこれはよいものであろう、民主的なものであろうという誤解をする。大多数の人々は、憲法がどうだとか理論的なことはなかなか理解しがたいのです。だから官僚が行政権を拡大し、立法権を制限し、基本的人権を制限するようなものを作っても、これが通る危険がある。そこで、そういう危険を防止するためにどうしてもこれは議会に置かなければならぬと言うのです。これを議会に置かないで内閣に置くのは、さっき憲法の歴史から申し上げたのですが、非常に危険である。どういうわけでこれを議会に置かないかと、言うのです。これは法律的にはどうか知らぬけれども、実際的には議会に置くことが正しいのじゃないかと私は思う。これは私は不思議に思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/28
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029・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 政府は、行政府の意思がその審議を左右するということには全然ならないと確信をしております。ただ、調査会の審議は議員と公正な学識経験者が集まってやった方が便利だと考えただけでありまして、行政府の意思がその間に介在するというようなことは夢想もしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/29
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030・稻村隆一
○稻村委員 それについて私はなお申し上げたいことがあります。とにかく議会に置かないで内閣に置いたことは絶対に間違いだと思うのですが、時間がありませんのでこれ以上申し上げません。
次に憲法第九条の問題、これはしばしば首相が、これはいかぬ、こういうふうな第九条で再軍備できないような憲法はいかぬのだ、それで改正を思い立った、これが鳩山首相の憲法改正の根本的な考え方のように承わるのであります。そこで私は鳩山首相にお尋ねしたいのですが、首相は、在野時代には、吉田前首相が憲法改正せずして自衛隊を持ったのは違憲である、こういうことを言われておられたのです。今度はそれを訂正されたようなんですが、その点について私ははっきりいたしませんので、首相の考え方をお聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/30
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031・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 自衛隊法が議会を通過いたしまして、国家が自衛のためには自衛隊を持ってもいいということになったものでありますから、国の財政が許す最小限度において自衛隊を持ってもいいという解釈に私も変えた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/31
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032・稻村隆一
○稻村委員 そういう解釈なら、何も今できたばかりの、九年しかたたない憲法を改正する必要はないのです。私はこの第九条を改正して再軍備をする必要は全然ないと思うのです。特に私の申し上げたいのに、脱線するかもしれませんけれども、ここに辻委員がおられますが、辻委員の師匠である石原完爾将軍は、満州事変の直後に「最終戦論」という本を書いた。その中に武器が最高度に発達すれば戦争は不可能になるから永遠の平和が来る、まさにその時代が来つつあるというふうな予言的なこと言っているのですが、今日はまさにその時代でありまして、水爆発明は実際戦争を不可能にしている。おのおのおどかし合っているけれども、戦争はありませんよ、実際上。戦争がないのに、日本は何を好んで憲法を改正して、国民を苦しめてまで、国民の経済を苦しめてまで再軍備をする必要があるかというのです。特に私がこの憲法第九条改正に反対する理由は、再軍備とともにまた再び官僚主義、国家主義、そういうものが台頭するのです。戦争になると基本的人権が――戦争にならなくとも、軍国主義国家というものは常に基本的人権を制限するのです。抑圧するのです。これは憲法学者もはっきり言っておる。戦争はない。不可能になっている。そういうときに何を好んで憲法を改正して、そうして再び日本の政治を反動的な傾向に追いやる必要があるかというのです。それをわれわれはおそれる。鳩山首相が、自衛隊を憲法を改正せずして作れるというなら、憲法を改正する必要はないじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/32
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033・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 憲法九条にはとにかくああいうような明文があるものでありますから、いろいろの世上には議論があります。自衛隊法によって自衛軍は持ってもよいという論があるが、同時に、自衛軍を持つことはできない、憲法上不都合だ、違憲だという論もあるのです。でありますから、自衛のためには軍隊を持ってもよいということを明瞭にすることが必要だと私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/33
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034・稻村隆一
○稻村委員 私はなおお聞きしたいことがたくさんある。鳩山首相の御答弁は非常に不満足でありますけれども、時間がありませんし、ほかの委員の方も待っておられますので、私の質問はこれで終りとしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/34
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035・山本粂吉
○山本委員長 茜ケ久保君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/35
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036・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 憲法調査会の法案が提出されまして――先国会もでありますが、今回また出されました憲法調査会法案の提案理由を見ますと、アメリカから押しつけられた憲法であるから改正の必要があるということを強調しておられるのであります。鳩山首相のいろいろね会合やあるいは国会での答弁、その他の御発言、また今同僚稻村君の質問に対しましても、あなたは、憲法第九条を改訂して、いわゆるかつての陸軍や海軍、空軍が公然と持って、再び日本が戦争への準備をするために、どうしても憲法改正が必要であるということを強調されておる。そうしますと、いわゆる憲法調査会法案を出された自民党の諸君が主張される、アメリカがこれを強要したのだから改正するということと、鳩山首相のいわゆる陸海軍を持てないような憲法はいかぬとおっしゃるこの御主張との間に、大きな食い違いがあると思うが、鳩山首相にここで一つはっきりさしていただきたいことは、自民党のアメリカが強要した憲法であるから改正するという御主張であるか、ないしはまた憲法第九条ではいわゆる陸海軍が公然と持てない、戦争ができないような憲法は反対であるから改正するとおっしゃるのか、この点をはっきりと御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/36
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037・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 私は、憲法を改正して戦略戦争をまたやるというような考え方は持っておりません。そういうような考え方は私は持っておりませんが、民主自由党の幹部においても一人も持っておらないと思います。あなたの誤解です、それは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/37
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038・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 私がお尋ねしているのは違うのであります。憲法改正を必要となさるその主要点が、首相の考えと自民党提出の法案の説明とは違っているのであります。首相は、いわゆる陸海軍を持てぬような憲法だから改正しなければならぬと強調なさるし、自民党の提案理由は、アメリカが押しつけた憲法であるから改正を必要するとおっしゃっている。その二つに食い違いがあるので、その点首相はいわゆる陸海空軍が持てないから改正するとおっしゃるのか、あるいはアメリカが押しつけた憲法であるから改正しようとおっしゃるのか、この二つのどちらが首相の根本的な憲法改正の主張であるかということを聞いておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/38
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039・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 私は自民党と同じように、今日の憲法は占領時代にできた憲法で、他国の強要によってできて、しかも短い時間によってでき上ったものであるから、独立した今日においては日本国民の自由意思によって直した方がよかろうということを申したので、自由民主党の主張と私の主張と少しも変っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/39
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040・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 しからばお聞きいたしますが、日本の現存しておるいろいろな制度あるいは法律の中には、これまたアメリカが強要し、アメリカが一方的に押しつけたものがたくさんございます。そうしますと、いわゆる国民が現在平和憲法を非常に喜んで、実にりっぱなものである、世界に冠たる憲法であるという考えを持っておるにもかかわらず、自民党の諸君や鳩山首相は、ただ単にアメリカから一方的に押しつけられたものであるから改正するとおっしゃるならば、その他のいわゆる占領中にアメリカが日本に押しつけたいろいろな法律や制度もお変えになる所存であるか、この点をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/40
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041・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 私も占領時代にできた諸法令といいますか、それらについては再検討する必要があると常に考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/41
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042・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 そうしますと、私はこれは第二十二回国会でもちょっとお聞きしたのでありますが、時間がなくて首相のほんとうの意思がお聞きできなかった。それはあの大化の改新以来の大革命といわれました農地解放であります。この農地解放につきましては、日本の六百万の小作農民が何百年来の地主の搾取にあえいで、日本の農村の民主化を非常にはばんでおった、あるいは非常に混迷をさせておった、この何百年来の小作農民の要望が、マッカーサーの指令によってあの農地解放という大革命が完成された。ところが最近一方においては地主諸君が、いわゆる解放農地国家補償連盟というようなものを作って、いろいろな運動をしておる。その間にはこれは憲法改正と相並行して、憲法改正の完了後は必ず農地解放の逆転換を行なって、解放農地がやがて再び旧地主に奪還されるといったような運動がなされておる。農地解放は全国六百万の小作良民の非常な要望と非常な歓喜をもって迎えられた革命であるけれども、国民にとってりっぱな憲法であるけれども、占領中にアメリカが無理にさせたのであるから改正するとおっしゃるならば、今のこの全国の地主階級がやっている運動の通り、たとえ六百万小作農民にとって救世主的なものであっても、これがアメリカが押しつけた法律であり、アメリカが押しつけた改革であるから、これもまた日本流に改正するということが出てくる。こういった点に対して首相のはっきりした言明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/42
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043・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 農地解放の改正については考えておりません。先刻私が申しましたのは、安保条約だの行政協定等には幾分か直したい点があるということを言った意味で申したのでありまして、農地解放の改正を考えてああいう言葉を使ったのではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/43
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044・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 そうしますと、自民党諸君の提案した憲法改正の理由は非常に薄弱であると思う。憲法は現在の日本にとって決して悪いものではない。全国民はみな喜んでおる。しかるに皆さん方はただ単に占領中にアメリカが押しつけだものであるからという理由で改正するとおっしゃる。土地解放いわゆるこれはりっぱな制度である。もちろん一部地主は非常に反対しておるが、大多数の小作農民あるいは農民は喜んだ、この農地解改は改正する必要はないとおっしゃるならば、憲法もまた、たといアメリカの占領中に制定したものであっても、あるいは時間的に多少の無理があったとしても、国民が喜んで、いわゆる平和憲法、人権主張の憲法として、これを受け入れておるにおいては、何ら改正する必要はないと思うが、何がゆえに憲法だけを改正されるか、こうなりますと、やはりこの第九条、戦争のできない、陸海空軍が持てないと鳩山首相のおっしゃるこの第九条のような憲法は、いかぬという理由が大きくここにクローズ、アップすると思うのであります。自民党の諸君は、ただ単に押しつけ憲法ということでごまかしておるけれども、その本体はあくまでも再軍備を強行して、再び日本を戦争に追いやることができないから改正するということが、本意ではないかと思うのであります。首相いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/44
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045・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 先ほどフランス、イギリスの例をとって、今日日本が憲法を改正するのは、せっかく民主主義をとった憲法を直してしまうのでけしからぬというお話しがありましたが、フランスでは占領中の憲法は無効だというくらいに規定がございまして、とにかく占領中にこしらえられたものは、その国民の自由意思というものが多分に含まれておるとはどうしてもいえないのでありますから、独立の体制を日本が回復した今日は、日本国民の多数の自由意思によって直したらよかろうということを申したのでありまして、これはフランスなどはむしろ認めておる方であります。フランスの憲法は占領中の憲法は無効だというふうにきめているくらいなのでありますから、御了承を願いたいと思います。西ドイツの方でもやはり同じです。占領中は憲法改正をしてはおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/45
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046・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 鳩山総理や自民党の諸君のお話しを承わっておると、まことにどうも自分に都合のいいことばかりおっしゃっておるようであります。と申しますのは、占領中に押しつけられ、あいはアメリカが一方的にやったのだからということをおっしゃいますけれども、それならば先ほどちょっと首相もお触れになりましたが、私どもが今いろいろたくさん困っておることがありますけれども、特に国内に六百数十カ所、四億一千万坪という上厖大なアメリカの軍事基地がある。これはアメリカさんはいかにもおためごかしに、日本を防衛するためにとおっしゃるけれども、私はそんなことは信用していない。この六百数十カ所、四億一千万坪に達する軍事基地を制定している基本になっているところの日米安保条約あるいは行政協定、こういったものも一応形式的には講和発効後ということになっておりますけれども、実際はいわゆる日本を永久占領と申しますか、日本をアメリカの軍事基地にするためのこういった条約を作るために、むしろ講和条約は締結されたと思う。このようなものに対しても自民党の諸君や鳩山首相は敢然として、これを一つ国民の世論に従って――全国民は、だれ一人軍事基地に賛成しておらぬ、安保条約に賛成しておらぬ。当時の一部の議員の諸君は賛成したけれども、今日の全国民はみな反対である、こういったような条約や行成協定を国民の世論に従って改正するなり、あるいはこれを廃棄するという御決意があるかどうか。この憲法をアメリカが押しつけたものでないかという理由で、ここに敢然として改正を企図される鳩山首相は、翻ってまたこのような国民の絶対的な輿望である軍事基地の撤廃、安保条約、行政協定の改訂にも、そういったいわゆる勇断をふるってやる決意があると思うが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/46
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047・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 日本は、とにかく憲法によりまして、陸軍も持てない、海軍も持たない、空軍も持たないということで、全く無力の国になりましたから、アメリカと共同防衛をいたしまして、他国の侵略に備えたのであります。アメリカと共同防御をして他国の侵略に備える以上は、やはりアメリカの希望をいれて基地もこしらえ、陸軍も置き、海軍も置き、空軍も置くということが必要になったのであります。その必要がまだ今日存在している以上は、これらの安保条約、行政協定等を直ちに廃するということはできませんけれども、だんだんに日本の防衛ができるに従って、安保条約、共同防衛について作ったところの諸条約を変更するということは、もちろんだという意味を先刻申したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/47
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048・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 その前提としてこれをお聞きするのですが、鳩山内閣の閣僚が、その自分の所管する事項に対して公式に発表したものは、当然その閣僚の責任において、鳩山内閣のその部門に対する発言と私は考えていいと思うのでありますが、以下お聞きすることに対する鳩山首相の見解を私ははっきり聞きたい。それは船田防衛庁長官は、長官に就任した当初において、こういうことを言っておられる。いろいろ防衛構想を話した中で、憲法改正をして徴兵制度をしく必要がある、こういうことをおっしゃっている。私はこれは新聞を読みます。徴兵制についてはどういうふうにお考えであるかという質問に対して、軍ということになれば、兵隊の補充が必要になってくる。共産圏の悪法には、祖国防衛は人民の崇高な義務であると書いているが、第一線の兵隊が倒れたあとの補充をやるためには、憲法にそれができる規定がなければならないだろう。今の憲法下ではそれができないことになっておるから、この点でも憲法を改正しなければならぬ。こういうことをおっしゃっておる。当然船田防衛庁長官は、憲法改正をして徴兵制をしがなければならぬということをおっしゃっている。鳩山首相は過去において幾たびか憲法改正と、あるいは再軍備と徴兵制とは考えていない。軍を増強するけれども、徴兵制は考えておらぬということをたびたびおっしゃっている。しかし当の防衛庁長官である船田国務大臣は、はっきりとこのように、いわゆる軍ができて第一線で兵隊が倒れた場合に、その補充をするためにはどうしても徴兵制をしがなければならぬ、ところが今の憲法には徴兵制をしく規定がないから、当然これは憲法を改正して、徴兵制をしがなければならぬということをおっしゃっているが、この船田防衛庁長官の発言と鳩山首相の徴兵制をしかぬということの中には、私は内閣として大きな矛盾があると思う。鳩山首相はこの船田防衛庁長官の徴兵制への意図と鳩山首相の徴兵制をしかぬという点とは、どちらが真であるか。もし鳩山首相があくまでも徴兵制をしかぬとおっしゃるならば、船田防衛庁長官のこの意図はどのようにわれわれは解釈すべきか、この点をはっきり御明答願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/48
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049・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 憲法を改正して徴兵制度をしく意思は今日持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/49
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050・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 私はその答弁では満足いかぬ。現にあなたの閣僚である船田防衛庁長官がおっしゃっておる。船田さんはいわゆる軍の責任者である。その軍の責任者が、その責任において、徴兵制をしかねばいかぬとおっしゃっておる。そのためにも憲法を改正せねばいかぬとおっしゃっておる。憲法改正が鳩山首相のおっしゃるように、第九条を改正して、堂々と陸海空軍を持つということを主張なさっておる反面において、もしそうした陸海空軍ができまして、将来日本が、いわゆる自衛軍であっても何であっても、戦争が予想される、戦争に参加することも当然である。そうなった場合に、第一線の兵隊が次々に倒れて、補充がつかぬということがあっては困る。従ってどうしてもこれはそういうことを予想して、憲法改正には徴兵制をしかねばならぬということをおっしゃっておる。私はただ単に鳩山首相が簡単に、徴兵制をしく意思はないとおっしゃっても、軍の要請、しかも特に鳩山首相は軍の創設、いわゆる陸海空軍の創設、軍隊を持つということに重点を置いていらっしゃる。たびたび言うように、そういったこととこの点は、私はどうしても納得がいかない。今はお考えにならぬけれども、では将来は徴兵制をお考えになるのか、こういった点をはっきり一つしてもらいたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/50
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051・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 私もただいま申しましたように考えておりますが、自由民主党も同じようなことをきめておるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/51
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052・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 首相の答弁にまだ納得がいきませんけれども、まだ私どもはこの問題は相当長期間を要するものと考えますので、一つそこを逐次ただしていきたいと思います。本日私は決して鳩山首相の今の御答弁に満足をしなければ、これで了ともできません。今後この問題を徹底的に究明することを保留して、私の質問を打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/52
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053・山本粂吉
○山本委員長 眞崎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/53
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054・眞崎勝次
○眞崎委員 私は二、三の問題につきまして、この際首相の御信念を伺っておきたいと存じます。第一には、国家と憲法とはどっちが大事と考えておいでになるか、伺いたいのでございます。これは自明の理のようでございますが、これがはっきりせぬために、日本は混迷の裡にあると思うのでございまして、また刻下の実情が、隣国との関係やあるいは国内の事情から見まして、まさにこれをはっきりしておくときに到達しておると思うのでございますから、この点についてまず御所見を伺いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/54
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055・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 眞崎君にお答えをいたします。むろん国家があって憲法があるのでありますから、国家を第一に重んじます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/55
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056・眞崎勝次
○眞崎委員 第二には、憲法に疑義のあるもの声そのまま存続しておくことは、国家にとってこれより危険なことはないと私は考えます。すでに首相からも御答弁かあり、社会党からも質問の中にありましたように、憲法第九条には、国家構成の重大要素である軍備について疑念を持っておます。これをこのまま存続することは、国家また国民にとって非常に危険不幸であると私は考えます。たとえば一世を驚倒せしめた昭和十一年の二、二六事件のようなものでも、研究してみますと、せんじ詰めるところは、明治憲法に対する解釈が二様に分れておったからだと私は思います。明治憲法の統治権の主体が天皇にあり、天皇中心にすべての政治が運行されたということは疑いもないことでありまして、その趣旨に基いて、軍隊に賜わった御勅諭もあるいは勅語も、それに基いてできておりまして、しかるに一方この当時の政界の上層部には、天皇機関説と称して、この精神的の中心の分を抜き去ったような解釈がされておったために、そういう解釈の相違が、かような不祥事を起こしたところの根本だと私は考えますがゆえに、この最も重要なる軍備に対する疑念を有するような憲法をそのまま存続することは、国家にとってこれより危険なことはないと思いますから、この点について御意見を伺いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/56
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057・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 私は眞崎君と全く同感であります。そのような考え方をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/57
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058・眞崎勝次
○眞崎委員 第三には、現代戦、すなわち近代戦に対する認識を非常に一般が欠いておるために、議論が区々になっておると思うのであります。社会党の諸君は、もちろん戦争はない、ないとおっしゃいますが、実際は第二次大戦後、戦争の様式はすっかり変っておりまして、いわゆる冷い戦争、冷戦、思想戦、これでもって他国を撹乱して、その国がみずから自爆作用を起して崩壊するような戦法をとっておるのでありまして、最後に必要となれば、いわゆる武力を使う戦法に変っておるのであります。かような戦法からいきますと、つまり国境ということも明瞭にわかりません。思想戦においては国境がはっきりわかりません。また平和と戦時の境がはっきりいたしません。今日日本は私は決して平和とは考えておりません。いろいろな基地問題に対する状況から、すべての今日行われておるストライキの状況から、違法行為と思われるものが公然と行われろような事態になっておることは、決して私は平和と思われぬので、いわゆる冷い戦争の現われてあるとこれを解しておるのであります。次に、敵と味方の区分さえもはっきりわかりません。それからまた第一線と後方部隊との境もわかりません。従って武力というものの意義、すなわち戦争の勝敗を決する力が、今日は非常に変ってきておるのでありまして、この意味から申しますと、憲法第九条の戦力と申しますのは、国家のありとあらゆる有形無形のもので、一つとして戦力でないものはないのでございますから、国家が戦力を否定するということは、国家自身の存立を否定することになり、少くとも独立を否定するものでありますから、すみやかにこれを改正する手続と、国民によく認識させる方法をとらなければ、国家は非常に危険な状態になると私は考えます。この点について伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/58
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059・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 ただいまのお話のように、冷戦というものはますます激烈になっていくというのが世界的の認識であります。どの国でも冷戦がひどくなっておるとみな考えております。つまり思想戦が非常に猛烈なことは、各所において現われる著書によって見ましても明瞭でございまして、その思想戦が猛烈だということは、われわれが想像する以上であります。全くただいまのお説には同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/59
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060・眞崎勝次
○眞崎委員 第四には、憲法というものは、いわゆる御承知のように、国家の基本法でありまして、国家の伝統と民族性、これにまた世界の進運に伴って適切であり、なお人間性の根本をも加味してこれを立案しなければ、かえって反対の結果を来たして、民主主義を希望しながらやがて独裁の結果を来たすような危険を生むことは、世界の歴史の示すところでありまして、今日の日本の憲法は、バランスのとれた、すなわち政治の要締である国家の統制力と個人の自由とをどこに折り合いをつけるかということが一番私は大事と思いますが、この観点からいたしまして、いたずらに個人の自由のみに走り過ぎて、国家の統制力を失い、このために裁判でもあるいはストライキでもすべての状況を見ておりますと、国利民福をもたらすゆえんでないと考えますので、どこまでも憲法の観点は、国家の統制力と個人の自由をどこに折り合いをつけるかということをもととして、そして国家の伝統と民族性と、世界の進運に即るように作るべきものである。すなわちこのように改めなければならない。そうしなければ社会党諸君の言われるような民主主義もかえって破壊する原因を作って危険だと考えますが、この点について御所見を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/60
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061・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 国民の権利というものと国民の義務というものとは常に同列に置いて考えなければなりません。われわれの自由を主張すると同時に、われわれの義務を主張しなければ、これは民主主義ではないのであります。民主主義というものをはき違えまして、自分の権利を主張することだけが民主主義だということを考えるのは非常に幼稚な考え方で、民主主義というものは自分の自由を主張すると同時に、他人の自由を尊重しなければ、民主主義というものはないのでありますから、こういうような考え方に民主政治を行うと同時に、民主政治というものの根拠はどこにあるかということを、国民によく納得してもらう必要があると私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/61
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062・眞崎勝次
○眞崎委員 これで私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/62
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063・山本粂吉
○山本委員長 片島君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/63
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064・片島港
○片島委員 簡潔に要点をお尋ねしたいと思いますこの提案理由の説明につきましても、民主主義と平和主義並びに基本的人権の尊重というこの原則を貫く、こういうふうに書いてあるのでありますが、この民主主義と平和主義、この二つの事柄について現在の憲法が貫いてあるその最も根本的な条章はどこでございましょうか。これを最初にお伺いしたい民主主義と平和主義ということを、特にこれは現憲法において何人もこれを不可としないというこの民主主義と平和主義、これはどこの条章をさしてそういうふうに言っておられるのか、鳩山総理の所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/64
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065・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 お答えをいたします民主主義の根本は主権在民にある。簡単に言えば主権在民がすなわち民主主義だと思います。平和主義というものは戦争の放棄と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/65
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066・片島港
○片島委員 ただいま主格在民と戦争の放棄ということが民主主義、平和主義である。それに基本的人権を加えた三つ、この三点は何人もこれを不可とするものではない。その他の点について占領中にいろいろと押しつけられた憲法である、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/66
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067・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 そのようにお考え下さってけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/67
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068・片島港
○片島委員 それではお伺いしましよう。ここに占領中に押上つけられた憲法であるから自主的な憲法を一つ作りたい、こういうお話であります。ところがただいま戦争の放棄とは言われましたけれども、たびたび第九条について鳩山総理は、自衛力を持つということを明記したい。現在でも実は自衛力を持っておるけれども、これではいろいろと疑念が出てくるので、これをはっきりいたしたいということを言っておる。ところがマッカーサー憲法と言って失言をいたしました現在のこの憲法は、なるほどアメリカの示唆に基いてできた憲法でありますが、しかしそれと同時に現在の自衛際――その最初の出発は警察予備隊、この警察予備隊が太ってだんだんと大きくなって自衛隊になったのであります。これを作るように命じたのもマッカーサー元帥であります。憲法を押しつけたのがマッカーサー元帥ならば、日本に自衛隊を生みつけたのもやはりマッカーサー元帥である。そうしますと、最初に日本の憲法を作りますと遂には戦争放棄、武力放棄、こういった第九条を作っておりましたが、諸般の事情から、アメリカの考え方から自衛隊というものを日本に作らせた方がいいことになって、警察予備隊が大きくなって今日のようにだんだん成長して参りました。これ以上成長するならばますます第九条に疑念がわいてくるのである。鳩山総理が第九条においてある党派特に社会党のごときは、自衛隊は違憲であるということを言っておると言って、こういう誤解をなくするために、疑念をなくするために自衛隊をはっきり書きたいと言っておられるが、そういうジレンマは、鳩山総理がそういうジレンマに陥る前にアメリカ自身が、自分で作って押しつけた憲法と自分で押しつけた自衛隊の成長との間に、みずからジレンマに陥っておるではありませんか。そういたしますと、アメリカの高官が、責任ある当局が、日本にあの憲法を押しつけたのは、日本にああいう憲法を作らせたのは間違いであったということを、言ったのも当然であります。作るときもアメリカの要求による、かえる場合もまたアメリカのジレンマを解決をしてやるというやうな憲法改正の行き方は、自主的な憲法ではないと私は思うのでありますが、総理は、これでもやはり自主的な憲法である。憲法改正をするんだという確信がありますかどうか、その点をはっきりしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/68
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069・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 もとより日本が独立したからそれにふさわしい憲法を作りたいという考え方であります。私の先刻の答弁が言葉が足りませんで、誤解があるといけませんが、戦争を放棄するということを申しましたのは、むろん侵略戦争を放棄するという意味であります。そういう意味でありますから、誤解のないようにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/69
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070・片島港
○片島委員 それは鳩山総理ともあろうお方が――世界中どこの憲法を見ましても、よその国を侵略するための軍備を持つということはどこにも書いてはありません。これは当然自衛であり防衛であります。そういう侵略をやる軍隊は作らないということを言っておるのだということは、これはどこの国だってそういうことは言っておりませんよ。私が聞いておりますのは、アメリカの示唆に基いて今の憲法ができた。しかし最初民主主義になれない日本人としてはちょっとびくっとしましたけれども、十年の間これを育てて参ったのであります。いかなる法律を作りましても、その畑、その土壌が適しない場合には、その法律は十分消化せられません。日本の梅を満州に作ってもアンズの子みたいなものができます。その畑に向かなければその法律は十分成長はいたしません。日本の国民はこの憲法を受け取って、日本の国情に向くように育てて参ったのであります。向うが押しつけたにいたしたところで、なお日本に向くように作ってきた。ところがあなた方のいう生みの親、アメリカの方では、責任ある当局者が、間違っていた、こういう子供を生んで与えたけれども、育て方が間違っておった。どうも育て方が気に食わぬから、この子供は殺してもう一つ新しい子供を生んでやるからそれを育てなさい、こういうことで自主憲法と言えるかどうか。生みの親より育ての親ということがあります。われわれが育てて参っております。日本の国に向くように育てて参っておる。その土壌に適合しない法律は日本には発展しない。こういうような情勢にある憲法が自主憲法と言い切れるかどうか、この点を私ははっきりとしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/70
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071・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 憲法改正について、アメリカからの要請というものは一つもありはしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/71
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072・片島港
○片島委員 鳩山内閣が成立をいたしましたときに、重光外相は、日本が完全なる独立を獲得するために今後努力するという方針を述べておられるのであります。これは日本が完全に独立をしておらぬということの証左でありますが、私は、自主的な憲法を作る場合には、その国が完全な独立した体制でなければ自主的な憲法はできないものと思うのでありますが、首相は、現在の日本は重光外相が言われた通り完全に独立をしておらない、また完全に独立をしておらないうちにおける憲法も十分自主性を持っておるかどうか、この点をお伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/72
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073・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 私はサンフランシスコ条約以後は日本はほとんど完全に独立をしたものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/73
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074・片島港
○片島委員 鳩山総理が完全に独立しておらないと言ったというのじゃなくて、重光さんが完全なる独立を獲得するために今後努力しょうということを鳩山内閣発足に当って申しておられる。これは鳩山内閣の外相としても日本が独立しておらぬということを明確に言った。現在の内閣の総理が日本は完全に独立をしておると言われるなら、これは何をか言わんやであります。これは見解の相違であります。
それでは私はお聞きいたしますが、憲法改正の必要については鳩山総理は非常な熱意を持っておられる。特に衆議院の今国会の本会議において、河上議員の質問に答えて、非常に興奮をして、何回もテーブルをたたかれた。参議院で憲法に反対であるというような放言をして、非常なる失態を演じられたくらい、憲法改正について非常なる熱意を示しておられるのでありますが、憲法調査会ができました場合には内閣に置かれるのでありますから、総理と憲法調査会の会長とが、この調査会の運営についてのイニシアティヴをとられるようになる。そういう重要なる地位になられると思う。そうなりました場合、憲法改正について非常なる熱意を持っておられるならば、その構想についても、もちろん明確ではなくしても、何らかの夢を描いておられるに違いない。しかしそのたくさんの夢をここで羅列をしていただきましても、これは大へんでございますから、それは後日に譲ります。私は第九条の改正につきましてお伺いしたいのでありますが、アメリカといろいろ公式、非公式に日本政府が話し合いをせられる場合において、アメリカの方から日本の防衛力増強についての熱意が常に述べられておるということは万人ひとしく認めております。そういたしました場合においては、わが国の現在の自衛隊をもっていたしますならば、アメリカ軍がだんだんと撤退をする、それに相応して日本の自衛力を増強して参りますためには、現在の自衛隊をもってすれば、日本の財政力及び法律的な観点から、そうアメリカの要求するような――またアメリカが要求しなくても、日本自体でもこれから先相当の増強をするということは困難であろうと思います。財政的にも法律的にも困難であろうと思う。そういたしますならば、どうしても財政的にゆとりのできるような方法を考えなければならぬし、法律的にもそれが可能なような体制を作らなければなりますまい。そこで先ほど茜ヶ久保君の質問に出て参りましたのは、こういろ観点からすれば、それは首相がどういう考えでおろうとおるまいと、徴兵制度以外には相当大幅な増強ができないということは、これはいかなる人といえども了解しなければなりません。船田長官が言われたのも私はもっともだと思います。おそらく私は徴兵制度ということも数々の首相のまぼろしの中の一つに入っておると思うのでありますが、この点を明確にしておいていただきましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/74
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075・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 ただいま、先刻申しました通りに、徴兵制度のことは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/75
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076・片島港
○片島委員 徴兵制度は考えておらない――しかしあとになって、あれは言葉が足りなかったとかいうようなことをおっしゃらないように、ここで確認をしていただきたい。ところでダレス長官は中共に対しての進攻を三度計画したということを公けの席上で述べておる。現在日本にアメリカの軍事基地がありますが、重光外相がアメリカに参りました当時に、アメリカ政府当局との覚書の間に、西太平洋の共同防衛ということを覚書をし、これがアメリカの新聞に海外派遣を了承したものであるというような、報道がなされたということは、総理も御承知だろうと思います。アメリカがそういう計画をしたのであります。しかし、世界の諸情勢によって中止をしたのであります。計画をしたということはその決意をしたということでありますが、もしアメリカが大陸に対する積極的な進攻計画を立て、決意をして、日本に現在軍事基地がありますが、日本に対して協力方を要求してきました場合に、総理はこれを受け入れられる考えがあるか、絶対に拒否せられる決意であるか、この点を明確にしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/76
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077・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 海外派兵のことは全く考えておりません。外務大臣が海外、派兵についてダレス氏と話をしたというようなことは、これは間違いでありまして、ダレス氏に対して海外派兵のことを重光君から提言をしたというととは、これは全くないのであります。明瞭に取り消しをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/77
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078・片島港
○片島委員 いや、私はしないとか、考えておらないとか、考えておるとかいうことじゃありません。私が言っておりますのは、アメリカの方から、日本の軍事基地を使って向うに進攻するというような事態が参りました場合――もうすでに三回そういう決意をしたことがあるのであります。総理は、今は何も考えておられません。しかし、そういう事態が参りました場合には、それに御協力をなさるおつもりであるか、絶対に協力をしないで拒絶をせられる決意があるかどうか、この点イエスかノーか、それだけを明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/78
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079・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 日本の憲法では、明瞭に、自衛のためにだけ軍隊を持ち得るのであります。将来においてもそうであろうと思っております。自衛のための軍隊を持つものが海外派兵をするということはあり得ないことであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/79
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080・片島港
○片島委員 先ほども私指摘いたしましたが、今まで侵略のためという派兵はありません。派兵でありましても自衛であります。防衛であります。でありますから、私はそういう言葉のあやを言っておるのではなく、政治的にアメリカの方から、こういう事情によって君の国をあらかじめ防衛するためには、こういう事態をわれわれは決意をしたが、協力をしてくれと言ってきた場合に、それを拒否せられるか、あるいは最少限においてでも協力せられるか、この点を御答弁願えればよろしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/80
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081・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 そういうような企てに協力をする意思は毛頭ありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/81
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082・片島港
○片島委員 それでは絶対にこれを拒否するというふうに了解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/82
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083・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 協力はしないということを明瞭に申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/83
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084・片島港
○片島委員 私は、時間がありませんから一問だけあとお尋ねしたいと思います。先ほど高橋君からの質問で鳩山首相は、憲法調査会の委員には社会党からの御協力を願いたい、願うように努力をしたいということを言っておられましたが、社会党としては、まだこれが通過をいたしておりませんから態度はきめておりません。この憲法調査会に、社会党からは一名も入らないようにわれわれがこれを拒絶いたしました場合、またあとの残りの学識経験者についてはどういう基準で選択せらるるかわかりませんが、各党からそれぞれ適当な人を推薦するというようなこともあり得るかと思うのでありますが、それらの推薦もお断わりをいたしました場合には、与党の議員だけと、与党から都合のよい委員だけをもってこの調査会を運営していかれるお考えでありましょうか、との点を明確にしていただきたい。
〔発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/84
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085・山本粂吉
○山本委員長 お静かに願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/85
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086・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 入らない場合には説得をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/86
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087・片島港
○片島委員 説得をしても入らないときはどうするかというのです。大体私たちは入らないだろうと思うのでありますが、入らないと遂には自分たちだけでやられるかどうか。これははっきりしております。入るか入らぬかであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/87
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088・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 社会党がそういうような態度に出ても、憲法改正を断念するわけには参りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/88
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089・片島港
○片島委員 社会党が委員を送らず、また学識経験者をわれわれの方から推薦も何もしなくても、与党と自分たちの都合のよい人たちばかりで運営せられると了解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/89
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090・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 ただいままでの答弁で御了解を願います。――ただいままでの答弁で御了解を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/90
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091・片島港
○片島委員 了解いたしません。(発言する者あり)しかし答弁しなければ君、おかしいじゃないか。出す場合と出さない場合と二つしかないのだから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/91
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092・山本粂吉
○山本委員長 私語をやめて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/92
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093・片島港
○片島委員 これは明確にしておいていだきたい。社会党が入らない場合にもやれるならやってよろしゅうございますよ。何も自由でありますよ。だからそれだけでやられるならばやられると、これだけは一つ御答弁を願いだい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/93
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094・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 ただいま申しましたように、社会党がそういうように全然協力をしない場合においても、憲法改正を断念せよという要求には応じません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/94
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095・片島港
○片島委員 それではどうぞその点はごかってにやっていただくととにいたしまして、私はこの程度においてこの次まで質問を保留いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/95
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096・山本粂吉
○山本委員長 受田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/96
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097・受田新吉
○受田委員 私は、もはや質問の時間が差し迫っておりますし、総理のお帰りの約束の時間も来ておるようでありますから、一言だけこの法案の取り扱いと、並びにこの法案に関連した重要な問題一点だけを指摘しておきまして質疑を次回に譲りたいと思います。
われわれは、国をあげてこの憲法問題を討議しようとしているこの委員会の性格からいっても、昨年の七月三十八日に議員提案で出された憲法調査会法案なるものは、委員会でわずかに三時間、本会議に直ちに持ち込まれて急遽これを参議院に持ち込むようなあわただしさをもって取り扱いをされているのであります。国をあげて、全国民の世論の上に立って大事な問題を調査しょうというこの法案の性格からいって、かかる取り扱いは非常に手落ちであった、こういう反省を提案者である諸君も、また内閣総理大臣も自覚されておられるかどうか、この点を一点まずお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/97
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098・山崎巖
○山崎巖君 今回の憲法調査会法案は、私どもはきわめて重要な法案だと考えております。従いまして、この審議につきしては、十分議を尽して遺憾なきを期せられるようにお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/98
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099・受田新吉
○受田委員 総理の決意も……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/99
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100・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 むろん同感です。先刻から申しました通りに、社会党にも相談に入ってもらいたいというくらいでありますから、協議をして、協力をして進行したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/100
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101・受田新吉
○受田委員 先ほどから与党委員の諸君の発言の中に、なるべく時間を制約して議員の発言を押えようという声もあります。このいまだかてない重要法案の提出に当って、総理は今後この委員会の審査を慎重にするために、われわれの委員会の要求があるときには、連日でも御都合のつく限り御出席をいただき、主任国務大臣としての責任を果たしていただくかどうか、及び政府委員の方々や提案者である山崎さんその他の人々も、りっぱにこの審査の慎重を期するために出席を完遂していただくかどうか、御決意のほどを伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/101
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102・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 できるだけ出席をする覚悟であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/102
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103・山崎巖
○山崎巖君 私ども提案者の責任を持ちまして、できるだけ皆さんの御審議に御協力を申し上げるのは当然であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/103
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104・受田新吉
○受田委員 私に次会に質疑をする前提となる一言だけ総理にお尋ねして質疑を終りたいと思うのでありますが、
この憲法とそれから条約の関係ですが、条約は憲法に優先するのか、で法が条約に優先するのか、憲法九十八条の精神からいいましては、憲法の最高法規的規定が書いてありますし、また条約国際法規等の尊重規定が、掲げてあるのでございますが、その優先原則はいずれにあるかということを御答弁願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/104
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105・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 抽象的の御質問に対して答弁するのはむずかしいと思います。(「憲法か条約かどっちなんだ」と呼ぶ者あり)そういうことならば憲法が条約に優先すると申すのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/105
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106・受田新吉
○受田委員 憲法が条約に優先するという場合には、条約、国際法規等の関係で憲法改正の制限がされておるような場合には、これはいかように取り扱われたらようしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/106
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107・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 日本が自分の国で自分の憲法を改正したいというその権限を、条約によって制限をせられておるというようなことはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/107
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108・受田新吉
○受田委員 ポツダム宣言にはアメリカ、英国及び中国にソ連が入っておって、国際法規的なりっぱな宣言がされております。この宣言のうちでソ連だけは依然として戦争状況の継続がされておるのでありますが、この点ソ連に対するポツダム宣言の約束を履行する上においては制約はないとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/108
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109・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 具体的に問題がないと答弁しにくいのですが、さようなことはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/109
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110・受田新吉
○受田委員 ポツダム宣言には、その第九条に武装解除の後における平和的生産的な生活を日本国民にせしめるというりっぱな約束がされております。この約束を果した日本としては、非武装的平和主義に徹する上において、この約束に違反するような憲法改正がされてよいかどうかという点であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/110
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111・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 法則局長官から答弁いたします。
〔「総理の答弁を聞いている。」と呼び、その他発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/111
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112・山本粂吉
○山本委員長 一応政府委員の説明をお聞きになって、その後に鳩山総理大臣の話を聞いて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/112
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113・林修三
○林(修)政府委員 今のお話しでございますが、今の日本としまして、平和条約ができたあとにおいて、憲法の規定においてその主権が――そういう意味の法改正の権限が制限されているということはないと存ずるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/113
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114・受田新吉
○受田委員 総理も同様ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/114
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115・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 その通りに先刻御答弁いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/115
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116・受田新吉
○受田委員 これはソ連との関係において私は答弁を要求しておるのでありまして、ソ連以外の国との関係は平和条約において一応解決せるものである。この点戦争状況の関係にあるソ連との関係を明示していただきたいということを要求しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/116
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117・林修三
○林(修)政府委員 結局ポツダム宣言というものは、御承知のように、当時英国、フランス、アメリカ中国、及びソ連の共同して発したものでございます。従いましてその四カ国が実は日本と平和条約を結んだ今日に播いては、この四カ国との関係においては平和条約で日本は完全に主権を回復したわけであります。ソ連との関係においてはまだ平和関係を回復しておりませんけれどもポツダム宣言を作った基礎は、この平和条約によって、そのうち四カ国がなくなっということによって、当然続いて日本をそういう意味において拘束するものとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/117
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118・受田新吉
○受田委員 ソ連とは戦争状態が継続されている。従ってポツダム宣言の約束を果す責任が日本にあるのだ。同時にソ連と戦争終結宣言がされたかどうか、あるいはソ連との平和条約が締結されたというときになれば、この問題は簡単に解決すると思うのでありますが、現実に終戦宣言もされておらぬし、また平和条約もソ連との間に結ばれておらぬ、こういう場合においてポツダム宣言の約束をした一国との間における日本の関係はいかようになるものかということをお尋ねしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/118
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119・林修三
○林(修)政府委員 先ほどもお答えいたしました通りに、 ポツダム宣言は五カ国共同のものでございまして、五カ国の意思が今まで続いておるわけではございません。従いましてソ連とはむろんまだはっきりした平和関係にはなっておりませんけれども、あのポツダム宣言がそのままの力でソ連とだけの関係において日本を拘束するものとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/119
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120・山本粂吉
○山本委員長 残余の質疑は次に延期いたします。
暫時休憩いたします。
午後零時二十八分休憩
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午後一時五十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/120
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121・保科善四郎
○保科委員長代理 休憩前に引き続きまして会議を開きます。
委員長不在でありますので、理事の私が委員長の職務を代行いたします。
労働省設置法等の一部を改正する法律案を議題といたし、政府より提案理由の説明を求めます。倉石労働大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/121
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122・倉石忠雄
○倉石国務大臣 ただいま議題となりました労働省設置法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
今回の改正の要旨は、労働者の福祉の向上をはかろ目的をもって、労災補償の事務を整備しその円滑な遂行を期するために、労働省労働基準局に労災補償部を設置し、また労働衛生に関する専門的調査研究を行うために、労働省の付属機関として労働衛生研究所設置することでありますが、あわせて特殊技能試験審議会についてはすでにその設置の目的を達成したのでこれを廃止することとし、これらを一括して改正案とし提案いたした次第であります。
まず、労災補償部設置の理由について、御説明申し上げます。現在労働省労働基準局においては労災補償課を置き、労働者災害補償保険法の施行及び労働基準法に基く第八章災害補償に関する事務並びに前国会で新たに制定せられましたけい肺及び外傷性脊髄障害に関する特別保護法に基く給付及び負担金その他の徴収金の徴収事務をもあわせ行なっております。しかし、これらの事務は、きわめて複雑多岐であろ上に最近その事務量は急激に増大し、事務の円滑な遂行を期するためには機構の整備充実を緊急に行う必要がある状態になったのであります。すなわち、労働者災害補償保険におきましては、保険料率は過去の災害実積を基礎として料率を業種ごとに定め、特定事業についていわゆるメリット制度を採用しており、また給付については、業務上外の認定、障害等級の決定、休業補償費のスライド制等を実施しておりまして、一般社会保険に比し事務内容がきわめて複雑であります。さらに労災病院等の保険施設の設置及び整備並びに運営の事務をあわせ行なっており、またいわゆるけい肺法に関する事務や労働大準法における災害補償に関する事務等を加えますとまことに所掌事務は多種多様であります。しかもその事務量は適用事業場並びに労働者の増加と法律改正による適用範囲の拡大、新規制度の採用等により逐年増加しており、特に最近においては労災病院等の保険施設の急激な整備拡充が行われているため、事務量の増加がさらに顕著となっております。以上要するに事務の複雑多様性並びに事務長の急激な増加に対処するために労災補償部を設置いたしたいと存ずるのであります。
次に、労働衛生研究所の設置の理由につき御説明申し上げます。労働基準法施行以来労使関係者の理解と相待って、わが国の労働衛生の水準は相当の向上を示して参ったのでありますが、今なお個々の具体的な問題についてみますと、数多くの未解決な問題が残されており、これを解決するため労働衛生に関する科学的研究の促進が強く要望されているのであります。しかして、職業病の診断基準、工場事業場における健康管理基準、労働環境の測定基準、有害作業環境の恕限度、労働衛生保護具、労働環境測定器具等に関しまして、労働衛生行政に直結した立場から行政運営の科学的な基礎となる研究を行うことが喫緊の要務とされているのであります。よってこれに対処するため労働衛生に関する研究機関として労働側生研究所を労働省の付属機関として設置いたしたいと存ずるのであります。
最後に特殊技能試験審議会の廃止の理由について簡単に御説明申し上げます。労働基準法に基き行われる特殊技能試験につきましては、同法施行当初、その基準及び運営について広く学識経験者の意見を徴する必要がありましたため、特殊技能試験審議会が設置され、汽罐士試験部会、起重機運転士試験部会、映写技術者試験部会等六部会に分れて、毎年各種試験の基準及び運営について審議を行なって参ったのでありますが、今日の段階におきましては、所期の目的を達成いたしましたので、行政機構簡素化の線に沿ってこれを廃止したい所存であります。
以上がこの改正案を提案いたしました理由及びその内容の概略でございます。何とぞ御審議の上、すみやかに可決賜わらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/122
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123・保科善四郎
○保科委員長代理 本案に対する質疑は次会に渡ります。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/123
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124・保科善四郎
○保科委員長代理 次にアメリカ駐留軍基地問題につきまして調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。福井君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/124
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125・福井順一
○福井(順)委員 今日基地問題は、わが国の最も、重要な問題として、各地に紛争を巻き起しておりますが、最近砂川町の紛争が一応落着いたしましたので、基地問題の将来につきましても明るい見通しができたやに考えられる向きもありますけれども、これは全く事実とは逆でありまして、その低流におきまして、全国各地の基地問題はますます重大な段階に到達して、その深刻さははかり知れざるものがあるような状態であります。私は先般本委員会から福岡の板付航空基地に調査団として調査に参りまして、ますますその感を深うしたのでありますが、こういう紛争を巻き起すに至った原因は、政府にも必ずしもその責任の一端がないでもない、私はこう考えるものであります。それは、今まで基地問題に対しましては、政府で国民の前に明らかにしない問題が多い。たとえば航空基地の拡張問題にいたしましても、どことどこの航空基地をどういうように拡張するか、一体それを何のために拡張しなければならないかというようなことにつきましても、国民は全く知らされていない。こういうことから無用の疑心暗鬼を生じまして、反対のための反対までするような結果にもなったのだと考えるのであります。例をあげて言いますならば、私は昨年の五月の十七日に鳩山総理大臣のところへ陳情に参りました。それは木更津の航空基地が拡張されるというような話を聞きましたので、その前にも約半年にわたって数回調達庁へ行ったのでありますけれども、さっぱり要領を得ない。そこで鳩山総理大臣のところへ陳情に参りましたけれども、鳩山首相は一向にこの事実を御存じない。また当時の担当大臣であった西田労働大臣も、自分はいまだかつてそういうことを聞いたことはないというような話でございました。かようなわけでありますから、これは国民が知るわけがない。そこで発表されるとやたらに疑心暗鬼を生んで反対をする。またこの航空基地の拡張問題がアメリカとの防衛分担金の折衝の具に供されたのではないかと思ってみたり、あるいはまたアメリカのただ単なる要請によってなされるのではないかと考えたりしておるのであります。こういうわけで、これから先政府といたしましては、国民に十分納得させなければならない。そういう意味におきまして、担当大臣であられるところの倉石労働大臣は明敏にして有能な国士的な風格の方でありますから、今後は率直に、しかも簡明に国民の前に本問題を披瀝していただきたい、こう思う次第であります。
そこで労働大臣にお伺いしたいのであります。先般来けんけんごうごうとして言われておる五カ所の航空基地拡張問題につきまして、一体これは所期の計画通りに実行するのかしないのか、またどの程度の規模でいつ完了する計画であるか、それを率直簡明にお話し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/125
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126・倉石忠雄
○倉石国務大臣 五カ所の航空基地や拡張につきましては、しばしば政府が申しておることでありますが、行政協定による条約上の義務を履行するということで、その理由は、もうすでに皆さんも御承知のように、だんだん航空機の形が変って発達してきて延長しなければならないということで、延長をする約束をいたしておるわけであります。これはなるべく早く私どもの方では拡張して提供する義務を持っておるわけでありますが、御承知のように、地元で土地の買収その他のことでいろいろ協定が結ばれないでおるところがございますから、それでおくれておるわけでありますが政府としては既定の方針に基いて、五カ所の飛行場はなるべく地元の御協力を願って、すみやかに拡張をして提供いたしたい、こういう方針で進んでおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/126
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127・福井順一
○福井(順)委員 今労働大臣が話をされたような理由でありますならば、この航空基地拡張の目的が、ただ単なるアメリカの要請によって行われるものでなくて、日本防衛のためどうしても必要であるということであるならば、日本国民たるものだれ一人として反対する者はなかったと私は思うのであります。ところが、先ほど申し上げましたように、一向にその理由も、規模も明らかにされない。これは政府の首脳部が非常に不熱心で明らかにしないのではなくて、ある程度まで御存じなかったというのがほんとうであろうと思うのであります。従いまし、もう少しはっきりと言い得る段階に到達いたしましたならば、どういう規模で、いつごろ拡張計画を完遂するのだというようなことを、はっきり国民の前に御説明願いたい。そうすれば国民としても協力するにやぶさかでないと思うのでありますが、重ねて御所見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/127
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128・倉石忠雄
○倉石国務大臣 五飛行場については、これは既定の方針通り遂行していくということについて御了解を願ったことだと存じますが、個々の飛行場については、それぞれ先方との折衝もありますので、まだ全部が全部どれだけの規模にするということの決定しておらないものもあります。しかし、原則として五飛行場は拡張して提供するということでございますので、なお拡張規模について打ち合せも済んでおらないところは、続け協議いたしておる最中でありますから、決定次第それぞれ地元の方にも申し上げて御了解を得たいと思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/128
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129・福井順一
○福井(順)委員 そういたしますと、木更津の、航空基地も五カ所の一つでありますから、やがては拡張されることになるわけでありますけれども、これも今まで責任のある担当大臣から、木更津の航空基地は必ず拡張するという御答弁は承わったことはないのであります。あるいは五カ所が四カ所になるかもしれはいといったような話も、漏れ承わったこともあるくらいでありますが、われわれはこれが日本防御の見地からどうしても必要であるということならば、これは国家に協力する以外にないのではないかということを考えまして、反対のための反対は一切避けて参ったのであります。アーミー、ゴー、ホームというような敵本主義の反対を避けまして、そしてもっぱら公共の利益も勘案し、また現地住民、現地漁民の利益擁護のためのみにわれわれはこの運動の限界を保ってきたのでありますが、その点につきましてもどうもはっきりしない。しかしながら、どうしても拡張やむを得ないということならば、何とか現地の漁民の損害を少くする方法を考えたいということを勘案いたしておりましたところが、昨年五月に千葉県当局から第二案というものが出まして、そしてこの第二案によってて拡張するならばどうだという御提案がありましたので、それならば第一案よりもだいぶ被害が少い、第二案ならば調査をすることはよかろうという承諾を与えまして、現在着々と海面のボーリングをいたしまして、調査を進めておるような状態であります。そして今までに木更津の航空基地の問題については何ら紛争を起しておらないのであります。しかも先ほど申し上げましたように、五月の十七日に鳩山首相に陳情いたしておるのでありますから、航空基地の反対運動としては最も早かった。そしてその後約一、二ヵ月して砂川基地が反対をしたのであります。当時は木更津においては、おそらく一大紛争が起るだろうと予想されていたにもかかわらず、何らの紛争もなく当局と話し合いをしまして、そして現在調査を進めておるということは、私どもがそういう指導をし、また現地の住民や漁民が国家目的というものを良識を持って考えてくれまして、そして国家に協力してくれておるということでありますから、何ら紛争が起きないということを、何らの反対もないのだというように曲解されないように、労働大臣にぜひ一つお願いしたい。そこで何とかしても第二案を採択してもらうようにお骨折り願いたいのであります。これは当時から調達庁に現地と県から第二案ということを申し入れ、調達庁といたしましては米軍に対してこれを強く要望し、そういう案が採択されることを運動するということを確約したのでありますけれども、最近現地の方々が調達庁へ行って米軍の方で第二案がどういう扱いを受けているのだということを聞きましたところが、まだ米軍には話がしていないということを言ったそうであります。これはまことに調達庁の長官としてけしからぬ話であり、また非常な怠慢であります。こういうけしからぬ怠慢な人をあんまり相手にするわけにもいかないのでありますが、ぜひ倉石労働大臣から、第二案採択について日米合同委員会にかけて強力に推進するようあっせんする、運動としてやるということをここで言明していただきたいとお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/129
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130・丸山佶
○丸山政府委員 ただいまの第二案の取扱いについて実情を私から申し上げたいと思います。長官がちょうど病気のため不在でございますので、私でお許しを願いたいと思います。お話の通り第二案というものは、現在の滑走路の方向を変えまして、従って海にかかる部分を少くして、ノリその他の漁業に及ぼす被害を少くする、こういう案でございまして、お話の通り六月に千葉の地元からのお話がございまして、調達庁で十分検討してみましたところ、被害の点等は軽減の方向に向う、しかしながら一方現在の滑走路というものの振り向けという、技術的なあるいは経費の面における大きな問題もございます。そういうむずかしい問題ではありますけれども、第二案によるならば地元の要望にもかなうことでありますので、これを真剣に討議して進めたい、こういうことで軍とは十分話もいたし、また六月の末と思いましたが公文書も出し、八月の末には軍からも、これは第一案とともに真剣に検討いたそう、こういう返事が参っております。そういう事情でございますので、第一案、第二案に関係ある海面あるいは陸上ともに調査する、こういう段階で現在に至っておりまして、調査が進んでおりますので、この調査の完了の暁にはどれをとるべきかという結論が出るものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/130
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131・福井順一
○福井(順)委員 第一案によりますと、千葉県随一のノリの養殖場あるいはハマグリ、アサリ、など稚貝、稚魚の養殖場であるこの宝庫がすっかりだめになってしまうわけでありまして、あまつさえ小櫃川という川から流れる海流がこの滑走路に突き当って海流が変ってしまう、そこでぬたという沈澱物ができて付近百数十万坪という海面は、ノリや稚魚、稚貝の宝庫としての性格を全く失ってしまうのでありまして、これは何としても第二案で実現できるように考えてもらいたい。また第一案は絶対に反対でありまして、第二案ならば何とか一つ考慮してみようということでありますから、ぜひ一つ何としても第二案として考えていただきたいということであります。これは労働大臣としてももう一回米軍に対して強く第二案を採択してくれるようにお骨折りを願うということを、ここで重ねて一つ言明明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/131
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132・倉石忠雄
○倉石国務大臣 日本の防衛上必要なために作る飛行場ではございますけれども、やはりわれわれといたしましては、地元の方々の利害関係も十分尊重して考えなければならないことは当然であります。そこで第二案にいたしますと、飛行場の滑走路の位置を幾らか動かさなければならないといったような、技術的になかなか難問題もあるようでございますが、ただいまそういうことについて検討しておる最中でございますから、地元の方々の御要望になるべく沿い得るように政府としては努力をいたすつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/132
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133・福井順一
○福井(順)委員 了承いたしました。ぜひ一つ労働大臣のお骨折りをお願いしたいと思うのであります。
次に、この木更津の航空基地から流れた廃油の問題で、二十九年の六月二十八日に十二漁港組合より、二十七年十月から二十九年の五月までの被害補償額二千百四十八万円の申請が、調達庁へ出されているのでありますが、この問題はその後どういうことになっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/133
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134・丸山佶
○丸山政府委員 現在までの実情を申し上げて御了承を得たいと思いますが、これに得しましては必ず米軍基地から出たものの原因によるものであるか、あるいはその他の原因に基くものであるか、その事実認定の問題で軍側と再三再四折衝調査をいたしましたが、残念ながら現在まで確たる原因の究明ができおらないために、補償の措置もおくれておるのであります。私どもといたしましては現地の調査、それから基地に働いておる者、木更津の市長さんの御調査等、十分なる資料と思いますものを添えまして、軍側の基地から出たものに基くものであるという立論のもとに折衝をしておりますが、軍側といたしましては、基地から出た痕跡をとどめることは認めるが、それが出た程度は被害を及ぼすにはあまりに少い、問題にならない程度のものである、むしろあそこの付近にある石油貯蔵庫等から出るものではないか、あるいは付近を航行する船舶からの廃油ではないか、その他種々なる反論等をあげておりまして、残念ながらこの原因は一軍の基地の問題であるということに今の結論はなっておらないのでございますが、 つい最近、二、三日前と思いますが、またしても相当大量の廃油がその付近の海面を荒らした、こういう事実の報告がありましたので、現在軍並びに私どもの調達局の地元で調査をしておりますが、こういうことによってあるいは過去の問題に対する何らかの原因究明の端緒が得られのではないかと考えておる次第であります。海流その他の関係等もいろいろ調べて、双方ともこの問題には真剣に取り組んでおりますので、近く何らかの方向による結論が出し得るのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/134
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135・福井順一
○福井(順)委員 私どもの方にもいろいろ資料がありまして、当時の司令官もこれは米軍の油に違いないということを認めた資料もあります。その当時の警察署長も証人としておるのでありますが、いずれにいたしましても昭和二十七年からの問題でありますから、これは早急に解決をするように、調達庁としても誠心誠意努力を傾けてもらいたい。労働大臣におかれましても、ぜひとも調達庁を督励して、一刻も早く解決するようにしてもらいたい。せっかく木更津の航空基地は何らの紛争もなく今までお互いに話し合いでやってきておりますから、こういうことに端を発して紛争が起るというようなことがないようにとくとお願いする次第であります。
防衛庁長官がほかの委員会に行かれるそうでありますから、先に防衛庁長官に御質問をいたしますが、千葉県九十九里の射撃場におきまして、自衛隊が今盛んに連日高射砲の射撃訓練をいたしております。これはいろいろな疑義がありますけれども、時間もございませんから詳しくは言いませんが、自衛隊が射撃訓練できる場合は、米軍の射撃が一時中止している、あいているときということになっております。それにもかかわらず最近ではほとんど連日連夜といってもいいように、常時ここで自衛隊が射撃をいたしております。これは法律にも違反しておるのではないか、条約にも違反しておるのではないかと思われる節もありますから、御一考願いたい。それからまたちょうどその米軍基地の三分の一くらいの場所を、常時ここに自衛隊が駐屯していろいろと射撃訓練を行なっておるのでありますが、こういうことにつきまして防衛庁長官の御見解を一つ承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/135
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136・船田中
○船田国務大臣 ただいま福井委員の御質問になりました点は、米軍側が安保条約、行政協定等の規定によりまして、日本において施設を使いあるいは演習場を使って、あるいは海岸を使って射撃をしておる、わが方の自衛隊といたしましては、その米軍のやっておる合間々々に、米軍の演習場を使いまして射撃の実施をやっておるということでありまして、主体はどこまでも米軍なのでありまして、米軍の許容される範囲内において自衛隊がやっておる。ただ自衛隊が最近かなり多く使っておるということも事実のようでありますが、これはこの前の国会のときにも福井委員から御質問がありまして、自来この使用につきまして米軍側にも注意をし、わが方におきましても十分注意をいたしまして、被害の大きく方方に及ぶことのないように、万全の処置を請じておりますが、なおこの上とも十分注意いたしまして、被害の一般の民衆の方々に及ぶことのないように努めていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/136
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137・福井順一
○福井(順)委員 その災害危険防止の点につきましても、米軍よりも自衛隊の方が射撃操作がまずくて、いろいろな被害をこうむる面も多いということを聞いておりますので、危険防止につきましては長官の一段の御考慮をわずらわしたいと思うのでありますが、地元で大へん心配をいたしておりますことは、もう米軍の射撃だけで大へんだ、それに米軍が撤退したあとも引き続き自衛隊でこの射撃場を使用するのではないかということであります。そこで前の国会のときに杉原防衛庁長官に、地元としては自衛隊が九十九里を射撃場として使うということは認めてないのだ、これは何としても今でもやめてもらいたいのだが、今は米軍の管理内でやっておることであるから仕方がないとして、米軍撤退後は必ず自衛隊は一緒に引き揚げてもらいたい、また適地を見つけてどこかへ移転をしてもらいたいということを要求いたしましたところ、前長官は、米軍撤退後は地元と相談の上で、地元の許しを得て使うようにしたいという答弁でございましたが、一つ防衛庁長官の御見解を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/137
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138・船田中
○船田国務大臣 この問題も、その当時政府から答弁申し上げた根本の方針が変っておりませんので、米軍の撤退した後に、自衛隊があの片貝高射砲射撃演習場を、そのまま引き続き使うかどうかということにつきましては、まだ決定をいたしておらないのであります。従ってこの演習場を米軍撤退後自衛隊の専用の演習場とするという計画を現在持っており、それを進めておるというような事実はないのでございます。ただ将来の高射砲の演習地につきましては、何とかして適当なところを見つけて、十分地元の方々との折衝によって御了承を得て、お話し上合いで演習場を作るようにいたしたいという希望を持っておりますけれども、しかし今直ちにあの演習場を使うかどうかということについて、まだ何もきまっておりません。十分実情も見まして、また地元の方々と十分な御了解を遂げて適当な演習地を得たいと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/138
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139・福井順一
○福井(順)委員 次に昭和二十二年四月九日千葉県山武郡九十九里海岸に米軍が突如やって参りましてこの地を接収して、ここで高射砲の射撃演習を始め現在に至っております。ところがここは御承知のように、大へん民家に近接しておるところでありまして、おそらくこんな民家に近接した射撃場は、日本中どこを探してもないことと思うのであります。当時は占領中のことでありまして、何としても反対運動をするということができないということから、現地の住民は泣き寝入りになってしまった。その後射撃場を移転してもらいたいというような運動も起きたことがありましたが、現在ではそういう射撃場を移転してもらいたいという運動は起きていないのであります。ところが何といたしましても、この射撃場はほとんで民家の中にあると言ってもいいくらい民家に近接をいたしております。しかも朝の九時から夕刻の五時まで百二十ミリというような大きい高射砲の実弾射撃をずどんずどんとやるわけでありますから、その爆風による被害、震動による被害というものはまことに甚大なものがあります。またこの爆音による文教上の支障というものもまことに甚大なものがありまして、従来多少小学校につきましては、防音施設をしているところもありますが、それはまだはなはだ不十分な状態であります。そこで昨年も本委員会におきまして、強くこれが陸上補償というものを数項目に分け要望をいたしましたが、それが今まで全然顧みられていない、なぜ顧みられなかったと申しますと、どうも行政協定十八条にも適用しない、あるいは特損法にも適用しない。また爆風、震動による科学的な根拠がないということでありましたので、地元県が金を出し合いまして、東京大学の生産技術研究所の糸川博士にお願いして、調査をずっと進めて参りまして、昨年でその調査ができたのであります。そうしてその調査の結果は、距離七百メートル以内では、戸障子がはずれてガラスが割れることがある。また地中にあるものでは、井戸のコンクリート壁に亀裂を入れ、漏水せしめることがある。たなの上の物が落ちたりするのもほぼこの範囲に属する。距離千五百メートル以内では、瓦がくずれて継ぎ目しっくいに亀裂が生ずる。また構造的に弱い家屋ではたてつけが狂う。距離が千八百メートル以内では、老朽化した壁に亀裂が入りまたは剥落することがある。大体三千メートル以内までは損害があるようだという調査の結果が現われてきたのであります。そこでこの調査に基いて再三調達庁に交渉いたしましたところ、調達庁長官、また次長もそうだそうでありますが。三月末日までには何らかの方法で陸上補償を出すということを確約されれておるのでありますけれども、これに対し労働大臣の御所見を一つ承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/139
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140・倉石忠雄
○倉石国務大臣 豊海射撃場のことだと思いますが、この件につきましては、損害に対する補償について、すでに地元被害者の方々から、ただいまお話のように、行政協定第十八条に基く補償申請が提出されておりますので、調達庁は数次にわたりまして折衝を重ねて参ったわけであります。そこでこの問題の法律上の責任帰属の問題につきまして、まだ先方との合意に達しておらないわけでありますが、政府は日米合同委員会にこれを提出いたしまして解決の運びとなっているわけであります。しかし一方において、ただいまのお話のような被害者の方々に対する救済措置は、もちろん急を要することであると存じますので、先方との合意に到達するのを待たずに、政府としては、ただいまお話のように、三月末ごろまでには何らかの措置をいたしたいということで鋭意努力をいたしている最中であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/140
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141・福井順一
○福井(順)委員 これは現地に行ってみられるとまことによく実情がわかるのでありますけれども、とにかく大きな爆音、爆風は人道上の見地からもまことに重大な問題と思うのであります。しかもこの標的機であるところの無人機が何回も人家に落ちて、つい最近では昨年の十二月にこの無人機が人家の庭に落ちました。また高射砲の弾片が何回も何十回もばらばらと降ってきている。おそらく今でもときどき高射砲の弾片が降っておるのではなかろうかと思われるような状態でありまして、地元の住民に聞きますと、まるで戦場にいるような気さえするということを言っております。こういうことでありますから、これはまことに重大な問題で、そこをよく政府としては考えていただかないと、下手をするとこういう基地は撤退してもらわなければならないというような運動にもなりかねないでもないのでありますけれども、そういう敵本主義の運動はわれわれはやらぬことにしまして、とにかく現地の住民に対して、必ず危険を防止する、また海上補償と同様に陸上補償を必ずするという約束で今までずっとなだめてきているような状態であります。それはもう三年も四年も前からこういう補償の問題が起っているにもかかわらず、今までの調達庁がとったような態度であれば、とても現地住民の気持をわれわれが押えていくことは不可能で、もうその限度にも達しておりますから、特にこれは一つ労働大臣から特別な御配慮を早急に賜わることをお願いする次第であります。聞くところによれば、二十三日に日米合同委員会にこの補償問題がかかるということを聞いておりますが、一体総額で幾らくらいこちらからは合同委員会に出されるつもりでしょうか。これを一つ承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/141
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142・丸山佶
○丸山政府委員 大臣の御答弁にもありましたように、合同委員会の問題は、責任の帰属、法律上米軍が負うべきものであるか、あるいは日本政府かという問題でありまして、補償額を幾らにするかという問題ではございません。地元の申請額はもちろん当局で知っておるわけでございますが、これを調査いたしまして、大臣がお話のように、合同委員会の結論いかんにかかわらず、三年越しの大問題でございますから、何らか三月末までには処置をつけたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/142
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143・福井順一
○福井(順)委員 何らかの処置をつけたいという話をもう何年も聞いております。従いましてそういうことを何度聞いても同じことでありますから、特に先ほど私が申し上げましたように、明敏にして有能、しかも国士的な風格の労働大臣に特に一つお願いをするわけでありまして、これは早急に政治的な気持で解決をしていただきたい。十八条には適用しない、あるいはまた特損法には適用しないというようなことを言っておるそうでありますけれども、そういうように条文の解釈をすればそうもなりましょう。しかしながら特撮法という法律は私たちが当時作った法律であります。この立法の精神というものは、被害をこうむった住民に対して償うということでありますから、条文をたてにとって何とか言いのがれして、補償をしないという精神ではないのであります。従いまして何としてもこれは補償をしようという精神があるならば、私は特損法に入れられないことはないと思う。現に東京湾におけるところの防潜網の非常に大きな被害が海上輸送業者にありまして、これは特損法に入らないということでありましたけれども、1年半非常な努力をいたしまして、政令をもって特損法に入れて、りっぱにこれを補償した経験を私は持っております。従いましてこの九十九里の陸上補償の問題にいたしましても、私の解釈をもってすれば、当時われわれがこの法律を作った場ときの精神をもってするならば、特損法に入らないということはないわけであります。どうか労働大臣は属僚政治にならないように、属僚の片々たる片言を聞かないで、もっと崇高な政治的な精神をもってこれを一つ早急に解決をつけていただきたい、こうお願いする次第でございます。労働大臣の御所見を一つ承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/143
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144・倉石忠雄
○倉石国務大臣 調達庁は非常に厄介な問題ばかり扱っておりますので、調達庁の人々は気の毒だと思っておりますが、この問題につきましては、私が就任いたしましたときも、早く解決をしなければならない問題であるというので、特に私に引き継きがありましたような次第で、調達庁としては鋭意努力を続けておるわけであります。とにかく相手方が軍でございますし、なかなかこちらの思うように話が進まなかったことは事実であります。さりとて日本の防衛に協力をして、御不便を忍びながら犠牲を払っていて下さる地元の方々のことを思えば、私どもとしても追い立てられるような気持になるわけでありまして、福井さんの御指摘のように、十分事情はわかっておりますから、ただいま申し上げましたように、三月末までには必ず一つ解決をしたいということで、その解決方法についてもできるだけ、有利にできますように、なお一そう努力をいたしますから、どうぞ御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/144
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145・福井順一
○福井(順)委員 大臣の御所見を承わりまして、まことに心強くありがたい次第であります。厚くお礼を申し上げます。どうぞそのように一つよろしくお願いをいたします。
それから委員長にお願いをいたしますが、木更津の航空基地は第二案というものもありますし、その他のいろいろの調査事項もありますので、本委員会から調査団を派遣していただきたい。これを一つお願いいたします。
それから片貝の射撃場問題につきましては防衛庁長官は、自衛隊がどういうことをやっているか一ぺん見られる必要があると思います。それは米軍と自衛隊との区分がはっきりしていない。そこで地元におきましても幾多の問題が起きております。はなはだびろうな話でありますけれども、米軍にはその施設があるけれども、自衛隊には御不浄の施設がないので、そこらじゅう穴を掘って何百人が御不浄をする。その中に現地民が落っこって、どうもまるでくそだらけになって困っているというような状態があった。一例をあげれば、そういう汚物の問題に至るま一で大へんいろいろな問題があります。そこで、これは防衛庁長官にぜひ一ぺんごらんになっていただく必要があると思いますから、委員長から防衛庁長官にぜひ一つできるだけ早い機会に現地を視察に行かれるようにお勧め願いたい、これをお願いいたしまして私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/145
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146・保科善四郎
○保科委員長代理 福井君の前の調査団派遣の件は、理事会に諮りましてきめたいと思います。あとの件は、委員長から防衛庁長官に要請をすることにいたします。茜ケ久保委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/146
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147・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 労働大臣にこの際お聞きしておきたいことがあるのです。それは、今自民党の福井委員からまことに基地の協力的な御発言があって、国民が全部基地に賛成するかのような錯覚を起すのでありますが、それはそれとして、現在政府でアメリカの要請によって折衝あるいは交渉をなさっておる立川基地外四つ、五つの飛行場のそれぞれの現在までの折衝の状況、それから現段階における状態を、簡単に担当大臣の倉石さんから一つ御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/147
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148・倉石忠雄
○倉石国務大臣 この五つの飛行場については、政府は既定の方針で皆さんに御協力を願って、条約土の工務を果すということについては決定いたしておりますが、その個々の交渉状況について、私はまだ現在の段階を全部よく存じませんから、事務当局の方から詳細に御報告をいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/148
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149・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 先ほど福井委員から非常なおほめの言葉をいただいた労働大臣としては、まことに心外な御答弁だと思うのであります。調達庁の担当大臣になられて日も相当たっております。しかもこの五つの飛行場の問題は、ほかの数百に達する個々の飛行場の問題と違いまして、おそらくアメリカとしては、日本の本土をアメリカの軍事基地として使う一つの重要な拠点だと思うのであります。それだけに反対の運動もこれまた強いのであります。私ども考えておることは、アメリカは、日本の自衛隊の増強があるとないとにかかわらず、そう長い間陸上部隊を置くとは限りません。海軍と空軍で、おそらく日本の基地を永久に確保する意思であろうと思う。そういった観点から、五つの飛行場の拡張ができるかできぬかが――アメリカが今後仮想敵国であるソ連の進歩した航空機に対抗する一つの航空基地を持つ意味で、基地設定の意思があると思うのでありまして、私はそういう点に日本の将来の運命を左右するような重大なものを持っていると思うのです。そういう重大な内容を含んでいる五つの飛行場の拡張の現段階を、担当大臣である倉石労働大臣が御承知ないということは、私はなはだ遺憾だと思う。立川もあんな問題を起しておりますし、私は何回となくこの五つの飛行場をつぶさに調査をして参っておりますけれども、現地の諸君のこの問題に対する真剣さというものは、全く私どもは日本国民として血の逆流するような感じを受けるのであります。そういった現地民には深刻な問題を与え、日本の将来に大きな影響を与える五つの飛行場の拡張の問題に対して、担当大臣がつぶさに御存じないということは、まことに私は怠慢至極だと思うのであります。こんなことでは私はこの問題は解決しないと思う。私どもはこれを断固排撃して、拡張を阻止する決意でもってやっておりますが、とにかく行政協定あるいは安保条約で縛られた政府が、この問題を解決するという点についても、はなはだ遺憾な点があるように私は思うのであります。しかし御存じないなら、ここで幾らお聞きしてもわからぬでしょう。これは倉石さんは一つ早急に勉強されて、五つの飛行場の折衝状態、現地民の苦しい状態をはっきり把握して、適当なりっぱな施策を講じていただきたいと思う。お知りにならなければやむを得ませんが、丸山政府委員から一つ簡明でけっこうですから、現在の折衝状況をはっきりおっしゃっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/149
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150・丸山佶
○丸山政府委員 現在話し合いと申しますか、折衝の継続中のものは、立川、横田、小牧の三カ所でございます。立川に関しましては、御承知かと思いますが、昨年の十一月に騒ぎをいたしましたが、現地調査をいたしまして、その調査の結果に基きまして買収値段、補償費等の交渉に入る、こういう段取りでございましたが、あそこにはいわゆる条件派、反対派と、一本にまとまったものでなく、二派ある。その条件派の方々につきましては、買収値段、補償等の話し合いを進めております。一方反対派と申される方につきましても、東京都知事から、やはり同じ都民であるから何とか自分の力ででも円滑に話し合いで進めたい、こういうことでございますので、私どももそれに越したことはございませんので、お願いいたしておるわけでございます。実は都知事が昨年の十二月に入られてから、私の承知する限りでは、一月の二十五日に都知事はいわゆる反対派の方々と会われて、もう一回最終的に、調達庁がだめであれば担当大臣に会って、円満な話を進めるようにという慫慂がありました。それに基きまして地元では、この十五日に都を通じまして、倉石大臣にお会いしたい、こういうことでございましたので、さっそく大臣は翌日会いたい、こういうお伝えをいたしましたが、向うの都合が悪いからちょっと待ってほしいということで、現在こちらでは、大臣はお待ちになっており、私どもも都知事の話による話がこのことによって円滑にいくように、一日千秋の思いで待っているのが現在の状況でございます。
横田の方は全部一本にまとまりまして、あの提供に関しましては、中学校の敷地問題その他いろいろの問題がございましたが、全部話し合いで片づきました。従いまして現在は、土地の値段を幾らで買うか、補償をどうするか、こういう値段問題を今話し合い最中でございます。
それから小牧の方は、あそこは関係市町村が五カ市町村ありますので、そのうちの全部が全部とはまとまっておりませんが、すでに三カ町村とは話上合いの段階になり、やはり値段の交渉中でございます。あとの二カ町村に関しましても、愛知県知事があっせんに大いに努力されまして、今どういうような条件その他ならばできるものかと、鋭意御努力なさっておられますので、その結果を待っておるのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/150
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151・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 先般の内閣委員会で倉石労働大臣は、できるだけ早くこの問題を片づけていきたいというお話でございましたし、私どものお察しするところでは、アメリカの会計年度の終末である六月末日ごろまでには、そのうちの一つくらいは何とか解決をしたいという御意思であったようでありますが、やはり倉石労働大臣としては、五つの飛行場のうち一つでも、六月末日ごろまでには解決したいという御意思があるか。さらに現在の折衝状況でどこかの基地が、当局の思うように、アメリカの会計年度の終りである六月末日までには、大体話し合いのめどがつくような御自信がおありになるかどうか、この点を一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/151
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152・倉石忠雄
○倉石国務大臣 米会計年度のかわるころまでには私どもの計画通りに達成しだい、こういうことで努力をいたしておる最中であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/152
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153・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 その中で一つくらいは大体お見込み通りに進む可能性のあるところがあるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/153
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154・倉石忠雄
○倉石国務大臣 今丸山政府委員の申し上げました三つともぜひやりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/154
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155・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 だいぶ答弁をおぼかしになるのですが、私は具体的に聞いているのです。それは御希望はその通りでしょう。従ってその希望のうちどの一つかでも、大体六月末日ごろまでに達成できるお見込みのあるところがあるかどうかを具体的に聞いている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/155
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156・倉石忠雄
○倉石国務大臣 今政府委員から申し上げましたような交渉の経過でありますから、私は三つともやる見通しでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/156
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157・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 御自信のほどはまことにけっこうでありますが、私が重ねて倉石労働大臣にお聞きしたいことは、これはもうすっと前からの懸案でありますが、基地の補償ない上は買収の価格であります。これは非常にまちまちでありまして、私どものずっと調査した範囲内においても、先般は倉石労働大臣はおいでにならなかったのですが、九州の都築等に参りますと、付近の住民が非常に積極的な協力をいたしまして、農地等も非常に苦しい中からこれを政府に提供しておるのであります。にもかかわらず買収価格ないしは補償の価格が非常に少いのであります。反面、反対が強いからということではないと政府はおっしゃるけれども、いつも例に出して失礼でありますが、私が直接関係した妙義等は、山の中の草っ原を一反歩三十六万円も出して買っていらっしやる。それは例にならぬとおっしゃるけれども、全然使いものにならない山の中の草っ原に一反三十六万円もお出しになってお買いになるということは、これは例になるならぬは別にして、現実にお買いになって金を払っていらっしゃる。政府当局は共進にせぬとおっしゃるけれども、基準にするせぬは別にして、現にそういうものを買い上げているのだから、これは一つの事実であります。最初から政府のおっしゃることに御無理ごもっともで自分の土地を提供した者に対しては、私の言葉で言わせると、踏んだりけったり、まるで買いたたきのような状態である。私は御承知のように、基地提供には絶対反対でありますけれども、現に提供した者、あるいは今後私どもの反対にかかわらず、提供しだ方がある場合には、やはり政府としては適当な価格を補償し、あるいは損害の補償をしなければならぬと思う。今申しましたように、現在まで政府のとってきた土地買収あるいはいろいろな損害賠償は、非常に差がはなはだしい。何ら基準らしきものがないというのでありますが、市場のせり売りみたいに、反対が強ければ値段が上ってくるのか、あるいは無条件に政府の施策に応じて提供する者には、先ほどの都築等の例に見るように、あくまでも買いたたくような態度でおいでになるのか、私は基地に反対であるけれども、実際設定され、また今後設定される具体的な問題については、政府としては誠意を持って万全の施策をしなければならぬと思う。この点まことに政府のやっていらっしゃることが、私どもから見ると、ふに落ちない点が多いのであります。倉石労働大臣は今後こうしたことに対して何らか一つの――はっきりした反対があろうとあるまいと、あるいは最初から無条件に出そうと出すまいと、一つの基準というものがここにあってしかるべきと思うのでありますが、政府の今後おとりになるそうしたものに対する御所見を、私は明確にここで御表明願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/157
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158・倉石忠雄
○倉石国務大臣 その拡張をいたして参ります土地の評価については、おおよそその近隣の状況もございましょうし、それからまた土地の方の御希望もありましょう。そういういろいろなことをしんしゃくいたしまして、先ほどお話のありました三飛行場につきましても、具体的に申せば、だんだん話が進行いたしておるのは、大体常識的な土地価格が評価の基準になっておるわけでありますから、私どもといたしましては、大体そういう常識的な価格で提供してもらうということで進めておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/158
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159・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 この点はもう少し労働大臣と質疑応答を重ねたいと思うのですが、何か時間の関係もあるようでありますし、欧米局長を呼んであるそうでありますので、労働大臣にもお聞き願って、また聞くこともありますから、倉石大臣お立ち会いの上、あと二、三欧米局長にお聞きして、きょうは質問を終りたいと思います。
欧米局長、これは具体的な問題でありますが、群馬県太田市の水道の問題であります。これは私どもはこういった場所でお聞きするまでもなく、当然日本の政府としてあのような重要な問題は責任を持って御解決願えるものと信じて、実は今まで遠慮しておったのでありますが、アメリカ軍のやり方がなかなか、私どもに言わせるとずるいと申しますか、まことに横暴と申しますか、太田市民をないがしろにするようなことが出て参りましたので、私はやむを得ずここでお聞きするのであります。あまり前のことはよろしゅうございますから、太田市の水道問題のごく最近の経過を、まず欧米局長から一つ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/159
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160・千葉皓
○千葉政府委員 簡単に申し上げます。太田市の市の地域に米軍のキャンプがございまして、従来ともそのキャンプで利用いたします水を太田市の水道から供給を仰いでおったのであります。幸いに前はその水で十分であったのでありますが、だんだんキャンプが大きくなると同時に、市の方も発展をいたすというような関係で、最近では全体として相当の水の不足を来たしておるという状況でございます。このことはもうすでに昨年の夏ごろからその傾向が現われておりまして、太田市の方からも、それから軍側からも、太田市の水道施設の拡張についていろいろ申し出がございます。政府におきましてはいろいろ検討いたしたのでございますけれども、結局これは太田市自体の必要と、いま一つは軍側の必要から出てきておるものでありまして、中央政府として直接これに対して援助をするまでの理由のないものであるという判断をいたしました。しかしながら状況がそういう工合でありますので、もし軍側と太田市との間に拡張について話がつくならば、必要な資金繰りについては政府が援助するということに決定いたしまして、その意思表示をいたしておきました。しかしながら昨年の秋以来再三軍側と太田市との間に折衝が重ねられましたけれども、市の方は、水道施設の拡張は、主として軍のキャンプがそこに存在するために必要になってくろので、拡張に要する経費は軍の方が負担すべきであるというように主張いたし、軍側の方は、もとより軍が来ておるために必要になってきておるのであるけれども、市の方の側でもいろいろ拡張の必要があるんじやないか、また軍が引き揚げました後には、全くその施設が市民あるいは市だけのものとして残るのであるから、その負担の全部を軍がせよという理由はないというようなことで、いろいろ折衝が重ねられたのであります。しかし、その間に多少意思の疎通が欠けておる面もあった模様でございまして、その結果軍はことしの一月でございます、なかなか太田市自体の拡張工事に期待してもあるいは無理であるかもしれないということで、基地内で水源を求めるという独自の計画を決定し、それを進めたわけであります。そのために市の方といたしましては、いつの間にか軍の態度が変って市の計画には同調してこないのであるということがわかりましたので、最近に至りまして、軍側と話がつかないために、結局従来給水いたしておりましたのを多少制限するという措置に出ましたために、市と軍側との間に対立を来たしておるという状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/160
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161・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 ただいま欧米局長から御説明がありましたが、その後市当局あるいは軍の方から欧米局長に調停を依頼してきたはずであります。そこで欧米局長みずから調停をされたはずであります。その結果何か料金等についても調停があったはずでありますが、その調停の内容について簡単に御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/161
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162・千葉皓
○千葉政府委員 私、実はまだ調停を依頼されておるというふうには考えておりません。軍側からは給水制限をされて困っておる、従って自分の力がある程度準備をするまで、従来通り水を供給してもらうように、市の方に話してもらいたいという申し出がありました。一方市の方からは、どういうわけで市の計画に軍側が協力してもらえないのか、その点もう少し軍側に当ってもらいたい。こういう話でございまして、私はなるべく両方の話が合うように、何とか調停の案を考えたいと、実は考えておりますけれども、まだ双方からそういうふうに調停をしてもらいたいという話はないのであります。しかしながら実はそのままほっておくわけにも参りませんので、先日も現場の状況を見なければならぬと存じまして、現地に参りました。まだどういう案でありましたならば、何がしか双方御満足がいくか、そういう案を考え中でありますので、はっきり成案を出すまでに至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/162
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163・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 私は太田市の問題は太田市だけの問題ではないと思うのであります。いわゆる市民に供給することを建前にやっておる水道施設が、たまたまその市内に軍事基地があるために、しかも太田市の場合には相当無理をして、市民の給水量を相当上回ったもの、しかも最初の協定よりもさらに上回ったものを軍に提供してきたのであります。料金につきましても、一般市民の負担よりも安い料金で供給しておる。こういうように実態の中で、これ以上軍の要請通りに給水しますならば、一般市民の供給量が非常に制限されて、いわゆる夏にでもなりますと、これは相当水道も枯渇して危殆に瀕するといったような状態で、どうしても増量するために、水道工事をさらに増設するということで、その金の負担は、具体的に軍が幾ら負担するか、市が幾ら負担するか、これは別でありますが、少くも軍としてそのような状態でありますから、当然太田市の水道の拡張には欣然として参加すべきであるのに、私どもの文書あるいはその他によって受けた報告によると、どうも軍は一方的に勝手なことをしているように思うのであります。たとえば欧米局長も調停ではなくとも、両方の話を聞いて何らかそこに妥結の点を見出したいという御努力をしている間に、突如として勝手に井戸掘りを始める。井戸掘りを始めるのもよろしいでしょうが、せっかくそうした詐術の過程におきまして井戸掘りを始めて、何か太田市の計画に水をさすというか、まるで反対なことをするというようなことであっては――私どもは私どもの立場として別個なものを持っておりますけれども、少くとも太田市としてもあのキャンプに対して相当協力している立場から、そういうことがないように、政府としてもやはりアメリカの方にも相当強硬な御主張をなさって、一日も早く軍と太田市との間に話をつけて、そういうトラブルが起らないような処置をすべきじゃないかと思う。もし欧米局長がその立場でなかったならば、これは基地でありますから、いわゆる調達庁なりあるいは労働大臣などにもやはり御心配いただいて、私としては、今のままの対立状態と申しますか、軍は軍、太田市は太田市というようなことではなくて、もう少し解決のめどをつけてもらうような努力を政府に要請したいのでありますが、政府としては当面欧米局長でけっこうですが、一つ自分から乗り出してあの問題を早く解決して、少くともその場合に軍の方に政府が肩を持つのではなくて、あくまでも太田市民全体の問題としてお考えになって、手を打っていただく意思があるかどうか。またそれに対して解決のできるめどがあるかどうか、おっしゃっていただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/163
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164・千葉皓
○千葉政府委員 先ほどそういう解決のめどをせっかくいろいろ考え中であると申し上げたつもりでありました。今のところ実を申しますと、まだはっきりとどうしたらいいという成案を得ておりません。ただ軍側におきましても、従来太田市並びに太田市民からキャンプに対して与えられた協力に対しては、非常に感謝をしておるわけであります。太田市または市民がいろいろな不自由を忍んできた。そうして軍への水の供給を潤沢にしてくれたということは、十分認識しておるわけであります。そうしてまた太田市の水道拡張計画についても非常な関心を示しまして、これにも協力したいという意図をある時期には示しておったのでありますが、何分にも経済的な問題がございまして、いろいろ軍側の予算の都合などもあるのじゃないかと存じますが、結局太田市の要求といいますか、太田市が期待していたところと軍側の考えとが一致しませんで、その間に多少意思が通じなかった面もありまして、今日のような事態になって非常に遺憾に存じます。しかし軍側は何がしか太田市に有利になるように解決したい、そういう希望は持っておると私は推察いたしておりますので、円満な解決が遠からずできると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/164
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165・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 この点いかがでしょう。今井戸を掘っているわけですが、井戸掘りが完成した暁には、太田市からの給水を待たなくとも軍自体自給自足できるのか、あるいは井戸掘りは太田市のある程度の水道給水を受けて、その補充としてのお役をなすものか、あるいは現在の軍の計画はこの点どのようになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/165
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166・千葉皓
○千葉政府委員 私は軍側の計画を十分承知いたしておりませんので、それができ上りました後にどうなるかということは、はっきり申し上げられませんが、しかしながら私どもの想像では、その工事ができましても相当太田市の水道に期待している。将来も太田市から相当量の水の供給を受けなければならぬのではないか、こういうふうに想像いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/166
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167・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 私もまだ現地を調査しておりませんので、私からも具体的なことは申し上げられませんが、この問題はやはり今まで長い間、千葉政府委員も御指摘のように、相当太田市民の駐留軍に対する協力ということがありまして、私どもからするとまことに残念な形体であるけれども、太田市民は相当協力しているのにもかかわらず、この場になって、たとい経費の問題はありましょうとも、私は軍のあの膨大の予算からすれば、太田市の水道増設に対する経費等はそう莫大なものとは考られません。従いまして私個人としてはまことに遺憾に考え、こういつたことを申し上げるのははなはだ残念でありますが、しかし太田市の現況を考えますときには、これはやはりほうっておけませんので、ぜひここでは希望として、せっかく調達庁もおいでになっておるし、倉石労働大臣もおいででありますから、一つ調達庁でも御協力願って、この問題をできるだけ早く、太田市民の利益を基本にお考えになって、解決の衝に当っていただく。そうして大きなトラブルの起る前にぜひ解決をしていただくように一応ここでお願いを申し上げまして、私あらためて現地に参りまして詳細に調査の上、またただすべきことはただしたいと思うのであります。
以上きょうは希望を申し上げて私の質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/167
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168・保科善四郎
○保科委員長代理 明日は午前十時より開会することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。
午後三時十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404889X00919560221/168
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