1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十一年三月十四日(水曜日)
午前十時四十五分開議
出席委員
委員長 佐藤觀次郎君
理事 赤城 宗徳君 理事 加藤 精三君
理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君
理事 米田 吉盛君 理事 山崎 始男君
伊東 岩男君 稻葉 修君
北村徳太郎君 田中 久雄君
並木 芳雄君 町村 金五君
河野 正君 小牧 次生君
高津 正道君 辻原 弘市君
野原 覺君 平田 ヒデ君
山本 幸一君
出席国務大臣
文 部 大 臣 清瀬 一郎君
出席政府委員
文部政務次官 竹尾 弌君
文部事務官
(初等中等教育
局長) 緒方 信一君
委員外の出席者
文部事務官
(大臣官房総務
課長) 齋藤 正君
専 門 員 石井つとむ君
—————————————
三月十四日
委員川崎秀二君、鈴木義男君及び柳田秀一君辞
任につき、その補欠として北村徳太郎君、高津
正道君及び山本幸一君が議長の指名で委員に選
任された。
—————————————
三月十三日
教科書法案(内閣提出第一二一号)
同日
写真技能師法制定に関する請願(島村一郎君紹
介)(第一二九四号)
同(草野一郎平君紹介)(第一三四三号)
教育委員の公選制確立に関する請願外三件(門
司亮君紹介)(第一二九五号)
戦争犠牲者慰霊の日制定に関する請願(小笠公
韶君紹介)(第一三〇一号)
の審査を本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
地方教育行政の組織及び運営に関する法律案(
内閣提出第一〇五号)
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の施
行に伴う関係法律の整理に関する法律案(内閣
提出第一〇六号)
私立学校法の一部を改正する法律案(河野正君
外二名提出、衆法第一一号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X01519560314/0
-
001・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 これより会議を開きます。
まず地方教育行政の組織及び運営に関する法律案並びに地方教育行政の組織及び運営に関する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案を一括議題といたします。提案理由の説明を求めます。清瀬文部大臣。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X01519560314/1
-
002・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 今回政府から提出いたしました地方教育行政の組織及び運営に関する法律案について、提案の趣旨を御説明申し上げます。
この法案は、現在の教育委員会制度を改正いたしますとともに、地方公共団体における教育行政の組織、運営に諸種の改善を加えようとするものでございます。
御承知のごとく、地方公共団体における教育事務は、その一部を除き教育委員会が担当しているのであります。この教育委員会は、まず昭和二十三年秋都道府県、五大市及び若干の市町村に設置され、昭和二十五年秋また若干の市に設置された後、昭和二十七年秋に至って全国すべての市町村に置かれたのでありまして、いわゆる六・三制の実施、教科内容の改善、社会教育の振興等に漸次その成果をあげて参ったのでございます。しかしながら、教育委員会制度は、占領下早急の間に他の諸施策とともに、採用、実施せられた制度でもあり、検討を加えなければならない問題を数多く包蔵しているのでございます。昭和二十七年全市町村に教育委員会が設置された後も、教育委員会制度に対する改正意見が、公の機関やその他の機関または団体からいろいろと述べられて参った次第でございます。
政府は、かねてより、これら諸種の見解を慎重に研究し、教育委員会の実情をもいろいろと検討をいたして参りましたが、この際現行の制度を再検討すべきであると考え、現行制度のとるべき点はとり、改むべき点は改め、加えるべき事項はこれを付加して、新たな立法を行うこととし、この法案を作成いたした次第でございます。
この法律案を提出いたしますについて、特に考慮を払いました重点は、次の二点でございます。
第一に、地方公共団体における教育行政と一般行政との調和を進めるとともに、教育の政治的中立と教育行政の安定を確保することを目標といたしたのでございます。
わが国の教育は、地方公共団体の努力に負うところがきわめて大きいのであります。すなわち、国立及び私立の学校を除いて小中学校の義務教育はもとより、高等学校、幼稚園さらには大学に至るまで市町村や都道府県の手によって維持経営されておるのでありまするし、青少年教育、婦人教育をはじめ、各般の社会教育もそれらの地方公共団体の手によって推進されているのであります。したがって、わが国の教育の振興をはかりますためには、これらの地方団体における教育行政の運営が中正かつ円滑に行われることが必要であります。
知事や市町村長は、申すまでもなく、民主的な公選による機関でありますが、本来独任制でありますから、教育のごとく中立を要求せられる事務については、別に会議制機関をもって事務を担当せしめる必要があります。
しかしてすでに述べましたごとく、教育の振興のために、わけても義務教育の普及をはかりますために教育に関する事務の相当な部分を市町村が担当しているのでありまして、学校その他の教育施設の整備だけでなく、学校の運営を管理助成し、教職員の指導に努め、社会教育の振興をはかる上には、この市町村に期待するところ大きいものがあります。その上町村合併の進展の結果、市町村の行政能力は、強化されようとしているのでありますから、この法律案は、都道府県のみならず、すべての市町村に会議体の執行機関として教育委員会を存置することといたしました。なお、従来の運営の実際にかんがみ、その組織及び権限に必要な改正を加えたのであります。すなわち、委員の選任方法は直接公選の制度を改め、地方公共団体の長が議会の同意を得て任命すること等の措置を講ずるとともに、教育委員会と知事や市町村長との間の権限に調整を加えることといたしたであります。すなわち、いわゆる予算案、条例案の二本建制度を廃止しますとともに、教育財産の取得及び処分の権限、教育事務にかかる契約の締結の権限、収入または支出の命令の権限を知事や市町村長に移すことといたして、両者の関係を調整し、地方公共団体における教育行政の円滑な運営とその振興をはかりたい所存であります。第二にこの法案の重点といたします点は、国、都道府県、市町村一体としての教育行政制度を樹立しようということであります。わが国の教育は前にも述べました通り都道府県、市町村の個々の地方団体の努力に負うているのでありますが、それらは決して個々独自のものではなく、全体として国の教育を構成すべきものでありますから、まずもって、国の教育としての必要な水準を保持するものであることの必要であることは、いうまでもありません。さらにまた各都道府県ごとに、府県内の教育運営の調整がはかられなければならないことも、もちろんであります。
この点を考慮いたしまして、現行の教育委員会法が、個々の地方団体ごとの教育事務の処理を強調しているにとどまるのに対し、この法案では次のごとく是正いたしておるのであります。すなわち、小中学校の教職員等の人事権を都道府県の教育委員会が行使することとしたのであります。これは、一つには、これらの教職員の適正な配置と人事の交流を促進するということを考慮したものであります。さらに、給与の負担団体と任命権者の属する団体とを一致させることとしたものであります。御承知の通り、教育委員会が市町村に設置されてから、都道府県内の教職員の適正配置に支障が生じたことは、広く各方面から指摘されたところであります。このことは、市町村の設置する学校でありましても、個々の市町村ごとに人事を管理することが無理であることの証左でありまするし、また現在都道府県が小中学校の教職員の給与を負担いたしておりますことも、市町村の担当する義務教育等の振興をはかる上に、都道府県の協力が必要であることを物語っているものであります。
今回、小中学校等の教職員の任命権を都道府県委員会に担当させようとしますことは、これらの学校の運営を円滑に行う趣旨にほかなりません。しかしながら、都道府県の教育委員会が単独でこの任命権を行使いたすことは、事実上困難でございますので、市町村の教育委員会の内申をまって行うことといたすとともに、市町村立学校における教育は当該市町村の事業であること、これらの教職員は当該市町村に属する職員であるとすることからして、市町村の教育委員会は、これらの教職員の服務の監督を行い、その職務の遂行の適正を期すべきものといたしておるのであります。
このほか、文部大臣及び教育委員会相互の間の関係を次のように考えておるのでございます。
現行制度のもとにおきましては、文部大臣や都道府県委員会は、都道府県または市町村に対して技術的な指導、助言または勧告の範囲を越えることはできないこととされているのであります。このような現状を改めるため、文部大臣や都道府県教育委員会の積極的な指導的地位を明らかにいたしますとともに、文部大臣は、教育委員会や地方公共団体の長の事務処理に、法令違反等の事由がある場合には、必要な是正措置を要求して、教育行政の適正な運営を確保いたしたい所存であります。また教育長の任命につきまして、文部大臣なり、都道府県の教育委員会の承認を要することといたしたゆえんのものは、教育委員会における教育長の地位に照らし、これにより教育行政の国、都道府県、市町村一体としての運営を期したいと考えたからにほかなりません。
以上が、この法案の基本的な考え方となっているものであります。
なお、最後に、五大市に対する特例と、この法律の施行期日について簡単に付言をいたします。
五大市に対しましては、この法律で、教職員の人事権を大幅に法定委任いたしましたが、それは五大市の規模と能力にかんがみ、実情に即させようとする意図に出たものであります。
また、現行制度からの移行を円滑ならしめるため、本法の施行期日を本年十月一日といたしました。
なおただいま、地方教育行政の組織及び運営に関する法律案の提案理由と、その趣旨を御説明申し上げたとおり、同法案によって、教育委員会の委員の選任方法は公選制によらず任命制に改められ、市町村立学校の教職員の任命権は都道府県の教育委員会に属せしめられることとなり、さらに教育長の選任方法に変更が加えられるほか、教育財産の取得及び処分を地方公共団体の長が行うものとすること、文部大臣及び教育委員会相互の関係を明らかにし、指導機能を強化するとともに文部大臣の教育に対する責任を明確にすること等の措置がとられることになりますので、これに関連して、多数の関係法律との調整をはかる必要が生ずるのでございます。ここにそれら所要の規定を取りまとめて、この法律案を提出した次第であります。
以上、簡単でございますが、この法案の提案理由を御説明申し上げました。
何とぞ、地方教育行政の組織及び運営に関する法律案とあわせて、慎重御審議の上、すみやかに御賛同賜わらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X01519560314/2
-
003・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 次に緒方初等教育局長より補足説明を求めます。緒方政府委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X01519560314/3
-
004・緒方信一
○緒方政府委員 地方教育行政の組織及び運営に関する法律案の概要につきまして補足して御説明申し上げます。本法律案は、地方公共団体における教育行政が適切に行われることを期しておるものでありまして、その趣旨に基き教育委員会の設置及び組織、教育委員会及び地方公共団体の長の職務権限、学校その他の教育機関の設置及びその職員の身分取扱い、文部大臣及び教育委員会相互間の関係等、地方教育行政の組織及び運営の基本となるべき事項を広く規定いたしております。これに伴って、現行の教育委員会法は廃止されることとなっております。この法律案は、本則六章六十一カ条、附則二十五カ条からなっておりますが、以下その内容につきまして章を追ってその要点を説明いたします。第一章においては、この法律の趣旨を規定いたしました。この法律案が、地方公共団体における教育行政の組織と運営の基本的事項を定め、教育本来の目的達成をはかることを目的とする旨であることを明らかにしたものであります。第二章においては、教育委員会の設置及び組織について必要な規定が定められております。第一節では、教育委員会の設置、委員及び会議について規定しております。まず、教育委員会は、都道府県及び市町村はもちろん、教育事務の全部または一部を共同処理する市町村の一部事務組合にも置くものとし、委員会は五人の委員で組織することを原則としておりますが、町村またはその一部事務組合にあっては事情により三人の委員で組織することができることといたしました。
委員の選任方法につきましては、従来とって参りました委員の公選制度を改めまして、地方公共団体の長が議会の同意を得て、地方公共団体の長の被選挙権を有する者のうちから任命することといたしました。次に、地方公共団体における教育行政の運営が中正と安定を保ちかつ円滑に行われることを目標として教育委員会を設置するものでありますから、任期四年の委員を毎年一部ずつ改任する方途を講ずるほか、委員がその任にある間におきましては、地方公共団体の議会の議員、地方公共団体の長、その他の職員と兼ねることを禁止し、また委員の構成が一党一派に偏することのないよう常に、五人の委員で組織する委員会にあっては三人、三人の委員で組織する委員会にあっては二人以上、すなわち委員の過半数が同一政党に所属する者で構成されることのないよう配慮いたしました。その他委員が政党その他の政治的団体の役員となり、または積極的に政治運動を行うことを禁止するほか、委員の服務、欠格条項、解職請求等について必要な規定を設けました。
第二節では、教育長及び事務局の組織について所要の規定を設けております。教育長の任命に当り、都道府県の教育長は文部大臣の、市町村の教育長は都道府県教育委員会の承認を得るものといたしましたのは、地方公共団体の行う教育行政に国または都道府県としておのずから必要な水準の維持と調整をはかり、国、都道府県及び市町村一体としての教育行政制度を樹立するため、教育委員会における教育長の地位にかんがみ、その人選に適切を期せんとする趣旨に出たものであります。
なお、市町村の教育長について委員のうちから選任することといたしておりますのは、機構の簡素化をはかったものであります。その他教育委員会の権限に属する事務を処理させるための事務局の設置、事務局の内部組織、指導主事その他の事務局職員の設置、その職務、定数に関する規定、その他職員の身分取扱いについて所要の規定を設けました。
第三章においては、教育委員会及び地方公共団体の長の職務権限について必要な規定を定めました。地方公共団体の長と教育委員会との調和を進めるため、従来、教育委員会の権限とされていた教育財産の取得及び処分の権限、支出命令権、教育事務のための契約の締結権は、これを地方公共団体の長の権限とし、予算案、条例案についてのいわゆる二本建制度は廃止して、両者の権限を明示し、地方公共団体における円滑な教育行政の運営を期待しようとするものであります。しかしながら、教育委員会の所掌事務にかかる歳入歳出予算その他特に教育に関する事務について定める条例その他の事案につきましては、教育委員会の意思の反映をはかるため、その議案を作成する場合に地方公共団体の長は、教育委員会の意見を聞かなければならないことといたしました。
その他教育財産の取得は、教育委員会の申し出を待って、地方公共団体の長が行い、長の総括のもとに教育委員会が管理するものといたしました。
なお、実情に即応して教育行政が運営されますため、教育委員会の事務は、教育長、学校その他の教育機関の職員に委任できることとし、また、都道府県の教育委員会は、市町村の教育委員会に事務の委任を行い得る方途を購じ、委任事務について市町村の教育委員会を指揮監督できるものとすることといたしました。
第四章においては、地方公共団体に設置される学校その他の教育機関について基本的な必要規定を設けました。地方公共団体が設置する学校その他の教育機関のうち、大学は地方公共団体の長が、その他のものについては教育委員会が所管することを明らかにし、これらの教育機関の職員について、その設置、任命及び人事管理について必要な規定を設けるとともに、校長その他の教育機関の長に所属職員の進退について任命権者に意見を具申することができる旨の規定を設けて、これらの長の地位を明定いたしました。
さらに、教育委員会は、その所管する学校その他の教育機関の施設、設備、組織編成、教育課程、教材の取扱いその他の教育機関の管理運営の基本的事項について必要な教育委員会規則を定めるものとする旨の規定を設け、この規則には学校における教科書以外の教材の使用について、教育委員会に届け出させ、または承認を受けさせることとする定めを設けるものとする旨の規定を設けました。
次に、都道府県がその給料等を負担する市町村立学校の教職員の身分取扱いにつきまして、現行制度とは異なった人事制度をとることといたしました。昭和二十七年の市町村教育委員会の全面設置以来市町村の教育委員会が、その管理する学校の教職員の人事管理を行なってきたのでありますが、人事交流、任命権の行使と給与負担の調整等その運用の上において支障を生じている面もございますので、今回都道府県が給与を負担する教職員の任命権は都道府県の教育委員会が市町村の教育委員会の内申を待って行うものとし、必要に応じて都道府県の教育委員会は、その事務の一部を市町村の教育委員会に委任し、また市町村の委員長等に補助執行させることができることとする規定を設けました。従いまして、これら教職員は、身分は市町村の公務員でありますが、都道府県の教育委員会が任命権を行使いたします関係上、その任免、給与、分限及び懲戒に関する条例は、都道府県の条例で定めるものとし、市町村間を異動する場合においても、地方公務員法の分限規定にかかわらず特別の形式で取扱いができることといたしました。しかし、一方教職員は市町村が設置し管理する学校に勤務し、市町村の処理する教育事務に従事する職員でありますから、これら教職員の職務の執行が適正に行われているか否かという服務の監督は学校の管理者である市町村の教育委員会が行うことといたしますとともに、任命権者としての都道府県の教育委員会は、これら教職員の任免その他の進退を適切に行うことができるよう、市町村の教育委員会の行います教職員の服務の監督について一般的な指示が行い得るよう規定を設けました。
その他これら都道府県がその給料等を負担する教職員の定数は都道府県の条例で定め、各市町村ごとの定数は、都道府県の教育委員会が市町村の教育委員会の意見を聞いて定めるものとし、その他職階制、研修、勤務成績の評定について規定するほか、地方公務員法の適用その他について必要な規定を設けることといたしました。
第五章においては、文部大臣及び教育委員会並びに地方公共団体の長との関係について規定いたしました。従来、文部大臣の都道府県または市町村に対する関係及び都道府県の教育委員会の市町村の教育委員会に対する関係については、それぞれ地方自治法及び教育委員会法に技術的な指導助言または勧告をなし得る旨の規定があり、文部省設置法にも若干の規定が設けられておりましたが、地方公共団体における教育行政に対する国の指導的地位を明らかにし、国、都道府県及び市町村の教育行政は相連係して運営せられるべき態勢を樹立するために、ここに一章を設けて文部大臣及び教育委員会相互間の関係等について規定を設けました。
まず、文部大臣は都道府県または市町村に対し都道府県の教育委員会は市町村に対し、必要な指導、助言または援助を行うものとし、その内容を例示いたしました。次に、文部大臣は、教育委員会または地方公共団体の長の教育に関する事務の管理及び執行が法令の規定に違反する等教育本来の目的達成を阻害しているものがあると認めるときは、教育委員会または地方公共団体の長に対し必要な是正の措置の要求を行うことができることとし、それが市町村長または市町村教育委員会の所掌にかかるものであります場合にあっては、都道府県の教育委員会をして行わせることといたしました。
その他文部大臣は、これらの指導、助言、援助及び措置要求を行うため必要があるときは教育委員会または地方公共団体の長の執行する事務について調査を行うことができることといたしました。
さらに、都道府県の教育委員会は、市町村の教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の組織編成、教育課程、教材の取扱いその他学校その他の教育機関の管理運営の基本的事項について、教育委員会規則で教育の水準の維持向上のため必要な基準を設けることができることとし、また都道府県内の公立の高等学校について、通学区域を定めることとしております。
第六章においては、学校給食用物資の取得のあっせん、教育委員会と保健所との協力について所要の規定を設けましたほか、いわゆる五大市に対する特例等を規定いたしました。すなわち、指定都市に対しましては、都道府県の教育委員会が行使することとなります教職員の任免、給与の決定、休職及び懲戒に関する事務は指定都市の教育委員会に法定委任することとし、これら教職員の研修は、指定都市の教育委員会が行う旨を定めました。
なお、指定都市の教育委員会の教育長につきましては、委員のうちから任命することとせず、都道府県の教育長と同様委員のほかから文部大臣の承認を得て教育委員会がこれを任命することといたしました。
さらに、特別区に関する特例及び教育事務を処理する組合を設ける場合における必要な規定を整備いたしました。
最後に附則といたしまして、この法律は、昭和三十一年十月一日から施行するものとし、教育委員会の設置及び委員の任命その他教育委員会の組織に関する関係規定は公布の日から施行することといたしました。
現在教育委員会の委員である者は、昭和三十一年九月三十日までの間、同日以前にその任期が満了します委員につきましては、その任期満了の日まで、なお、委員として在任するものといたしました。委員のうち、議会より選出された委員につきましては、昭和三十一年九月三十日までの間、同日以前に公選による委員の任期が満了する場合にあっては、その任期満了の目まで、なお、委員として在任するものといたしました。
この法律が公布になりますとき、すでに教育委員会の委員の選挙の告示が行われているものについては、選挙を行うこととし、この法律公布後昭和三十一年九月三十日までの間に委員に欠員を生じたときは、公選の委員が一人もいなくなったときを除いて、この法律の規定に従って同日までを任期とする委員を任命することといたしました。
次に、現に教育委員会の教育長として在任する者は、昭和三十一年九月三十日までの間、同日以前に任期が満了した場合または公選による委員が任期が満了するかすべてが欠けたときはその日まで、なお、教育長として在任するものといたしました。
以上、この法律案の概要について説明申し上げました。
次いで、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案について、御説明いたします。
この法律で整理をいたしております法律は、二十に及んでおります。いずれも、地方教育行政の組織及び運営に関する法律案(以下、新法と略称します。)の内容と関連する事項を調整し、もしくは、同法の施行に伴い新たに付加すべき事項を規定し、または不用規定を整理いたしたものであります。
まず第一条においては、地方自治法の整備をいたしました。
同法第二十条は、教育委員会の委員の選挙に関する規定でありますが、公選制の廃止に伴い、同条を削除いたしました。
次に教育委員会の委員長に代表権が付与されたことに関連し、議会における説明のための出席義務を委員長といたしますとともに、教科内容という用語の変更に伴い、関係規定の用語の整備をいたしました。
従来、助役は、当分の間教育長を兼ねることができるとされていました。新法により市町村の教育長は委員の中から選任されることとなりますので、この規定は削除すべきところではありますが、財政上の事情を考慮いたしまして、昭和三十二年三月三十一日までの間に限り、本則にかかわらず、助役は、教育長を兼ねることといたしました。
本法第二条においては、恩給法に必要な調整を加えました。これは新たに発足いたします教育委員会の教育長、または事務局の職員についても、従前の教育長または事務局の職員と同様の恩給法上の取扱いをいたすこととしたのであります。
第三条では、市町村立学校職員給与負担法に必要な調整を加えました。現在の同法第三条には、その給料等を都道府県が負担する市町村立学校の教職員(以下、県費負担教職員という。)の市町村ごとの定数は、都道府県の条例で定める定数の範囲内で市町村の教育委員会が定めることを規定しておりますが、今回、右の定数は、都道府県の教育委員会が、市町村の教育委員会の意見を聞いて定めることに改めましたので、これに伴い、同条を削除いたしました。
次に、本法第四条においては、教育公務員特例法に所要の調整を加えました。市町村立学校の教職員の主要部分を占める県費負担教職員については、その任命権を都道府県教育委員会が行使することになりましたことに伴い、採用志願者名簿の制度はその意義を失いましたので、その制度を廃止し、規定の整備をいたすとともに、教育長の選任方法の改正、指導主事の資格の変更に伴い、教育長及び指導主事の任用資格を同法から削除いたしました。また、校長の任用資格に関する規定は、別途整備することとして整理をいたしました。その他教育長の給与、研修等に関する規定の整備または整理をいたしたものであります。
第五条では、文部省設置法に所要の調整を加えました。新法に規定してあります文部大臣の権限、すなわち、文部大臣の教育委員会または地方公共団体の長に対する必要な措置要求と、都道府県及び五大市の教育長の任命にかかる承認の権限を文部省設置法に明定いたしました。
第六条は、社会教育法の一部改正でありまして、従前の教育委員会制度が採用していた条例案その他の議案に関するいわゆる二本建制度等の廃止に伴いまして、社会教育委員の定数等に関する条例案、公民館設置条例案等に関する不用規定を整理いたしました。なお、現行第三十九条の公民館に対する指導助言は、公立公民館については新法の規定により措置することとし、私立公民館について規定した次第であります。
第七条は、公職選挙法の一部改正でありまして、改正部分は同法中数十条にわたっておりますが、これらは、全部教育委員会の委員の公選制を廃止したことに伴い不用となった部分の整理でございます。
次に、第八条から第十二条までは、図書館法、文化財保護法、産業教育振興法、博物館法及び青年学級振興法につき、指導、助言関係の規定を整備し、または準用規定の消滅に伴う不用規定を整理して、大体第六条と同趣旨の調整をいたしました。
第十三条及び第十四条は公立学校施設費国庫負担法及び危険校舎改築促進臨時措置法の一部改正でございまして、これらの法律の規定に基く国の負担金または補助金の返還をさせる等の場合の釈明者は、現行制度においては教育委員会となっておりますが、新制度におきましては、地方公共団体の長が教育財産の取得を行うとともに、収入または支出の命令権者となることに伴いまして釈明者を地方公共団体の長に改めました。
第十五条では、従来町村合併促進法に規定されていた教育委員会の委員の定数及び任期に関する特例を削除しました。この規定は、教育委員会の委員の公選制を前提といたすものであると考えられますので、かかる特例を認める理由に欠けることになったからであります。
第十六条では、地方公共団体の組合に教育委員会が全面設置されることに伴い、義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律中不用字句を整理いたしました。
第十七条においては、教育職員免許法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律附則中、教育長、指導主事及び校長の任用資格の特例に関する規定を、本決第四条の教育公務員特例法の一部改正で申し上げました趣旨から削除いたしました。
第十八条においては、女子教育職員の産前産後の休暇中における学校教育の正常な実施の確保に関する法律中、県費負担教職員の任命権者の変更に伴う不用規定を整理いたしました。
第十九条は、公立小学校不正常授業解消促進臨時措置法の一部改正でありまして、その趣旨は、本法第十三条及び第十四条と同様であります。
最後に、第二十条は、地方財政再建促進特別措置法の改正でありまして、同法第九条は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律中に同趣旨の規定が設けられましたことに伴い、これを削除したものであります。次に、附則でございますが、この法律は、新法と同様本年十月一日より施行することといたしておりますが、本法律案中、新法の教育委員会の設置関係規定に密接な関連のある部分、すなわち、委員の選任関係、新教育委員会の設置関係並びに教育長及び指導主事その他の事務局職員の人事に関する部分の改正規定のみは、新法の関係規定施行の日から施行することといたしました。
附則第二項から第四項までは、県費負担教職員の定数条例、給与条例あるいは教育公務員の研修または兼職に関する許可についての経過措置を規定いたしたものであります。
附則第五項では、旧法により恩給法の準用を受けていた旧教育委員会の教育長または事務局職員の恩給法上の取扱いについて所要の経過規定を設けました。
附則第六項は、地方自治法の一部を改正する法律案との調整をはかり、いわゆる五大市について所要の読みかえ規定を設けたものであります。
附則第七項は、この法律公布の日にすでに選挙期日が告示されている教育委員会の委員の選挙については、なお従前どおり選挙を行うこととしたものであります。
附則第八項では、改正前の町村合併促進法の規定によって町村合併後引き続き選挙による委員として在任している者は、本来の公選委員同様本年九月三十日を限度として、それまでに町村合併促進法の規定により定められた在任期間が満了する場合は、そのときまで在任することができることといたしました。
附則第九項では、従来教育長を兼ねてきた助役についての経過措置でありますが、この法律公布の日教育長を兼務している助役は、他の現に在任する教育長同様本年九月三十日を限度としてその任期中引き続き在任することを認めたものであります。
以上、本法律案の概略を御説明いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X01519560314/4
-
005・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 両案に関する質疑は追ってこれを行うことといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X01519560314/5
-
006・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 次に、私立学校法の一部を改正する法律案を議題とし、提出者より提案理由の説明を聴取いたします。河野正君。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X01519560314/6
-
007・河野正
○河野(正)委員 ただいま議題となりました私立学校法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由並びにその要旨を簡単に御説明申し上げます。
そもそも、国家隆昌の基盤を教育に置かねばならないことはもとより説明を要しないところで、しかも教育全体の中にあって私立学校が重要なる地位を占めておることもまた言うまでもないところでございます。このため、私立学校の公共性と特殊性を明らかにし、民主教育を確立するため私立学校のわが国教育における重責を十分に果させる意味で、昭和二十四年に私立学校法の成立を見たことはすでに御承知の通りでございます。
さて、私立学校法も施行以来六年を経まして、その間の実施状況にかんがみますに、同法には、いろいろと改正を要する点もあるように存ずるのでございます。特に、最近私立学校におきまして種々の問題が発生いたして社会的関心を呼んでおりますこともまた御案内の通りであります。
そこで、今回最も重要と思われます点につきまして、若干の改正を加え、私立学校及び私立各種学校の運営をより一層健全にいたすため、この法律案を提案した次第でございます。
以下簡単にその内容を御説明申しあげますと、第一に、第十条の改正は、現在私立学校審議会の委員の任命に関し、県によっては私立学校の教員からは委員を任命していないところがあるのでありますが、これは現行法からいっても教員のうちからも任命されることが望ましいとされているのでありまして、この趣旨が明確に実現されるように、教員、校長、理事のそれぞれから必ず任命しなければならないようにいたしたものでございます。第十一条を削除いたしましたのは、第十条の改正に伴いまして実情に沿わなくなったからでございます。第十九条と第二十条の改正は、私立大学審議会につきましても私立学校審議会の場合と同様に整理いたしました次第でございます。
第二に、第三十八条第四項の改正でありますが、改正の主旨は十分御理解いただけると思いますが、私立学校法成立の過程にあって私学の特殊性にかんがみ一応配偶者、三親等以内の親族いずれか一名は役員として認められたものでありますが、今日においては私学の経営者も相当の異動もあり、その必要がなくなったと考えますので、一名も含まないように改正したものであります。
第三は、第四十四条の改正でありますが、これは評議員の選出方法の改正でありまして、評議員会の重要な地位にかんがみ、職員中から選出される評議員については、職員の互選により選出されるものとし、真に職員の意見を代表する者が評議員として、私立学校の管理に参画できるようにいたしたのでございます。
また、同条中の第三項は職員及び卒業生以外の者から寄付行為の定めるところにより選任される評議員が評議員の総数の半数以内でなければならない旨の規定を加えた次第でございます。
第四は、第五十条の改正でありまして、そもそも学校法人の解散はきわめて重要なものであり、その社会的な影響もきわめて大きいのでございますが、現行法では解散事由の一つとして、理事の三分の二以上の同意があれば、別に寄付行為に定めがない限り、解散できることとなっておるのでございますが、これでは学校関係者の意見を無視したり、在学者、卒業者に対する配慮もなされずに解散されるおそれもございますので、これを改正いたしまして、この理事の同意による解散の場合には、必ず評議会の議決を必要とすることといたしたのでございます。
第五は、合併についての第五十二条の改正でございますが、これも右の第四の場合と同様に合併に際しましては、理事の同意のみならず評議員会の議決を必要とすることといたしたのでございます。
第六は、第六十四条の改正でございまして、これは私立各種学校についても以上のような改正に準じて、私立学校、私立各種学校となりまたは私立各種学校で私立学校となる場合には、やはり合併の場合と同様に評議員会の議決を要することといたしたのでございます。
最後に、附則について御説明申し上げますと、この改正法は、公布の日から起算して三カ月を経過した日から原則として施行いたすのでございますが、現に審議会の委員になっている者につきましては、この法律施行後最初に行われる改任のときから適用することといたし、また、評議員につきましては寄付行為の変更を要しますので、この法律施行後九カ月経た日以後に行われる改選から適用することといたし、さらに、理事につきましては、この法律施行後に改選される場合から適用することといたしたのでございます。また、現に解散合併等の手続を経てすでに所轄庁に認可が申請されている場合には、あらためて解散合併等の手続をやり直すのもいかがかと存ぜられますので、従前の例によって手続を変更することなく、解散合併等の手続が進行できるようにいたしたのでございます。
以上がこの法律案の要旨でございますが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X01519560314/7
-
008・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 本案に関する質疑は追って行うことにいたします。
次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午前十一時三十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X01519560314/8
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。