1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年四月十二日(木曜日)
午前十時四十三分開議
出席委員
委員長 佐藤觀次郎君
理事 赤城 宗徳君 理事 加藤 精三君
理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君
理事 米田 吉盛君 理事 辻原 弘市君
理事 山崎 始男君
伊東 岩男君 稻葉 修君
小川 半次君 杉浦 武雄君
田中 久雄君 千葉 三郎君
並木 芳雄君 野依 秀市君
町村 金五君 山口 好一君
河野 正君 小牧 次生君
高津 正道君 野原 覺君
平田 ヒデ君 前田榮之助君
横路 節雄君 小林 信一君
出席国務大臣
文 部 大 臣 清瀬 一郎君
出席政府委員
文部政務次官 竹尾 弌君
文部事務官
(初等中等教育
局長) 緒方 信一君
委員外の出席者
文部事務官
(大臣官房総務
参事官) 齋藤 正君
文部事務官
(初等中等教育
局地方課長) 木田 宏君
専 門 員 石井 勗君
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四月十二日
委員久野忠治君、篠田弘作君及び平田ヒデ君辞
任につき、その補欠として小川半次君、北村徳
太郎君及び横路節雄君が議長の指名で委員に選
任された。
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本日の会議に付した案件
地方教育行政の組織及び運営に関する法律案(
内閣提出第一〇五号)
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の施
行に伴う関係法律の整理に関する法律案(内閣
提出第一〇六号)
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001・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 これより会議を開きます。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律案並びに地方教育行政の組織及び運営に関する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案を一括議題とし、前会に引き続き質疑を行います。質疑を許します。きのうの問題に関連して高津正道君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/1
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002・高津正道
○高津委員 第三十三条の二項に非常にこだわるようでありますが、間もなく第一条からの質疑が始められると思います。
教育委員会が、その所管に属する学校その他の教育機関の管理運営の基本的事項について必要な教育委員会規則を定める場合、その基本的事項に跛行を生ずるおそれがあろうかと思いますが、その場合の調整策はどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/2
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003・緒方信一
○緒方政府委員 教育委員会はその権限といたしまして、本法案の二十三条にもございますように、教育に関する事務を管理し、執行いたしますが、その権限に属します事項につきまして教育委員会規則を作りまして、そうしてその運営の基本を定めることは、これまた本法案にも規定してございますように、当然の権限でございます。でございますので、教育委員会はその判断によりまして、学校その他の教育機関を管理、運営するについて、これが基本になると考えますことにつきまして、教育委員会規則を制定するわけでございます。そのことをこの三十三条第一項にも特に明記したわけでございまして、それは御指摘のように、教育委員会の規則が全国のどの教育委員会も同じようにならなければならぬ、こういうことではないと思います。そこに、いわば跛行と申しますか、教育委員会によりまして区別ができてくることはやむを得ない、またそれは当然のことだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/3
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004・高津正道
○高津委員 教材とは何ぞやという質問について、いろいろ政府の側からその例を示されたのでありますが、学校において強制的にかつ一斉に採用するテストとか、ワークとかいうものとは違って、任意に購読されまたは利用されるもの、たとえば雑誌のようなものですが、クラスに六十人いて、その中から三人しか買わない、あるいは十人しか買わない、そうして教場でそれを使うものではない、こういうようなものは、やはり第二項その他法律でいう教材というものに入るのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/4
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005・緒方信一
○緒方政府委員 それが教材であるかないかということはなかなか抽象的には申しにくいと存じます。それが学校教育の学習指導のために供せられるということになりますならば、それは教材といわなければならぬと思います。しかし、今例示せられましたように、生徒全体に一斉に使用させるというものでなければ、これはおそらく三十三条の第二項の問題にはなって参らぬと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/5
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006・高津正道
○高津委員 教室において読めというものでもないし、一斉に使わせるものでもない、そのような学習関係の雑誌などの場合はおそらくは入らないであろうと思うというあなたのお言葉の中に、おそらくは入らないという言葉がついておりますが、そこは入らないと言い切れないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/6
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007・緒方信一
○緒方政府委員 私が申し上げておりますのは、教育委員会が届出をさせたり、承認を受けさせたりするその対象となるものは、おそらくは——おそらくはと申しますとあれでございますが、これは教育委員会の判断でございますので、学校で生徒全体に対しましてこれを使わせるというものについてかような規定は作ることになるだろう、こういうことを申し上げたわけでございます。特別に必要があれば、一斉には使わさぬでも、あるクラスのある部分の生徒に使わせるということであれば、あるいは問題になってくるかもわかりませんけれども、私の判断といたしましては、生徒全体に使わせるものについて、三十三条の第二項の問題を教育委員会としては問題にするであろう、こういうふうに申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/7
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008・高津正道
○高津委員 それでは、教育基本法等の法令に合致し、採択に当って不正行為も従来行われず、またその内容が適切であると認められる、そのような教材類に対し、地方教育委員会、都道府県教育委員会、文部省並びに文部大臣は、これらのものを保護、奨励される意思があるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/8
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009・緒方信一
○緒方政府委員 有益適切な教材を使って教育効果を上げることは非常にけっこうなことでございますので、たびたび話題にもなっておりますように、文部省におきましても、視聴覚の教材等を研究しまして、そしてこれを地方に指導しておるような実情でございまして、有益適切な教材を使われることは大いにけっこうなことと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/9
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010・高津正道
○高津委員 今でもその保護、奨励の策をとっておるのだと言われますが、それはこの法案の中のどういうところに見えるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/10
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011・緒方信一
○緒方政府委員 この法案は、教育委員会がその職務権限といたしまする事項を規定し、それを運営いたしますための規定を整備いたしておるわけでございまして、積極的にその内容について、たとえば今御指摘のような教材をどういうふうにやっていくかということについては規定してないわけであります。文部省がどういう政策をとるかというようなことにつきましては、これは別の問題でございます。ただこの三十三条二項と申しますのは、教育委員会が所管する学校において使われます教材についての取扱いについて、かような規定を設けるものとするということを規定したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/11
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012・高津正道
○高津委員 届出または承認を受ける教材類が非常に多くなることが予想されて、教師としてもその手数が煩雑なために、教師の教育意欲が減退するおそれがないものであろうか、これについては、大臣の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/12
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013・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 さようなことはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/13
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014・高津正道
○高津委員 それは非常に多くて、煩瑣をきわめるものであるということは次の質問で申しますが、そうすると、届出または承認の申請をする場合に実物見本を添付することになると思われますが、この点は実際はどうなるのでしょうか、局長からでもけっこうです。たとえばテストやワークについて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/14
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015・緒方信一
○緒方政府委員 今の御質問は届出をしたりあるいは承認を受けさせたりすることになれば、見本をたくさんつけて出さなければならぬ、非常に煩雑であるという御質問であろうと思いますが、これは昨日来いろいろと申し上げておりますように、この教材全体のものについてこういう規定を作るということではないのでございまして、教育委員会が必要と認めるものにつきましてそういう規定を作るわけであります。もしその規定の対象となりまして、届出をしたりあるいは承認を受けたりする必要のあるものになりました場合には、それはもちろんこういうものを使うということで、学校から、あるいはものによっては見本をつけるとか、あるいはそうじゃなくて内容を記載した書類を出すとか、あるいはまた口頭で過ごす場合もありましょう。その方法は教育委員会規則でいろいろきめるわけでございますが、さほど煩雑な手続は必要ではないのじゃないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/15
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016・高津正道
○高津委員 私はきのうも御答弁を熱心に聞いておったのですが、フリー・パスで通れるような名前をずっと列挙して、それに書いてないものが出てきた場合には、それは見本をつけて出さねばいけない、だからそれほど多数にはならぬだろう、こういうような意味に受け取ってようございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/16
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017・緒方信一
○緒方政府委員 承認を受ける必要のあるものは、教育委員会の承認がなければ使われないわけなんでございます。それから届出を要するというものは届出なければなりませんが、教育委員会の返事を待って使わなければならぬということには相ならぬと思います。届出を受けまして、教育委員会がその内容について、あるいはその教育的価値とか、あるいは価格とか、そういうものについて気づきがあった場合には、これは学校に対していろいろ指導したりするでございましょうが、届出のものは、何も返事を聞かなければそれが使えないという性質のものではないと思います。また、届出もしなくていい、承認も受けなくていい、こういう種類の教材ももちろんございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/17
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018・高津正道
○高津委員 届出の場合にはその見本が要るのでしょうか。よくわからぬのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/18
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019・緒方信一
○緒方政府委員 届出の方法についても、教育委員会がおのおのその必要によってきめるわけであります。だから届出のものは、全然見本は要らないというきめ方をする場合もありましょうし、あるいは、これこれのものは見本をつけて届けてくれとかいうように具体的に規定をすることになると思います。教育委員会の判断によって、その規則できめるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/19
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020・高津正道
○高津委員 メーカーから各都道府県の教育委員会だけに届出をする場合にも四十六都道府県の教育委員会があるわけです。そうして一社当りわずかに九円八十銭のものを出すとしても、六学年でそれを六倍しなければならぬ。さらに四十六都道府県で四十六倍しなければならぬ。国語、算術は学期ごとにあるものだからそれをまた六回しなければならぬ。理科、社会は前期、後期だから四回しなければならぬ。ロスをどれだけ見積らなければならぬということになると、三千二百五十円くらいの金になるが、もし全国のメーカーが送るとすれば実に大きな金になる。それで全国的に商売しておるのが二十四社あるということを聞いたのであります。それにローカルでやっておるものもあるし、それらの見本をみんな提供するということになれば実に億という金が要ることになってくる。この法案を制定する一つの意味は、経費の節減にあるというのでありますが、非常に煩瑣なことになり、非常な経費を伴う。その経費は、メーカーは机の上においてそろばんでかけるのでありますから、かえって高くなるような制度ではないか、こういう業者の意見を聞いたのでありますが、これに対するお考えを承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/20
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021・緒方信一
○緒方政府委員 この三十三条の規定は、教育委員会がその所管いたします学校その他の教育機関の管理、運営について、教育委員会規則をきめる、こういうことになっております。その場合に、学校における教科書以外の教材の使用について届出させたり、あるいは承認を受けさせろということになるわけでございまして、これはもっぱら学校と教育委員会との関係についての規定でございます。従って学校で教材を使用するというときに届出をさせたり、あるいは承認を受けさせるという規定でございまして、業者との関係は何らここに出て参りません。その点は御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/21
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022・高津正道
○高津委員 それで事務的な点は一応わかりましたが、この三十三条の二項というものは思想統制に非常に関係があり、元の民主党において学校教育や教育行政の運用についてどのようにお考えになっておるかということは、あの「うれうべき教科書」に露骨に現われておるわけであります。そのようなお考えをお持ちの文部大臣は今中央集権の頂上に座しておられる。そしてこの法律は中正だ、あるいは中正より左に片寄っていると考えられている。いやしくも左に対しては三尺ほどの厚い鉄壁で万里の長城をそこに築き、右の方は、カーテンもなければズロースもない、まるであけっぱなしの状態、こういうようなことをこの法律でお考えになっておるし、結果は必ずそうなると考えるのでありますが、文部大臣はどのようにお考えでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/22
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023・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 どの法律にも運用の際には注意しなければなりませんが、これだけのものができて、これをよく運用すればわが国の教育の中正を保つのに大へん役に立つものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/23
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024・山崎始男
○山崎(始)委員 ちょっと関連いたしまして一問だけお聞きしたいと思います。昨日映画フィルムを教材にいたしますときの扱い方に対してるる質問をいたしましたが、私が申し上げました要点は、一番取扱い方のむずかしいのは映画じゃないか。ほとんどこの規則が適用されますと、映画の実際の教材として教育をいたします道は閉ざされる。特に農山村においてはもう致命的であるという私は見方をいたしました。それは検閲の能力においてあるいはその技術的な面におきましても、あるいはまた事前にこれを検閲するという場合の費用の面におきましても、とうてい農山村では実行不可能だ、こういう見方をいたしました。おそらくこれは映画フィルムばかりではございません。この法律が適用されました結論として、視聴覚関係の問題が、これは統計的に必ず一年か二年先には出てくると思うが、一体文部大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、こう聞きました。ところがあなたの方はその御心配はありません。ただ統計的な数字の問題でなくて、教育効果というものは実質的な内容の問題だというふうなお答えがあったのであります。そういう文部大臣のお気持の中には、ただ統計的に受信機が学校にたくさん備わったとか、あるいは映画を見る回数が多いから、これは教育的効果が上ったというのではなくて、要は内容の実質的な問題だというようなお答えがあった。こういう点を総合いたして考えてみますると、何としても私には割り切れない。ただ割り切れる一点があるということは、今後文部大臣の方が自信を持って視聴覚教育の推進ができるというお考えの基本的な根本の中に、映画の場合でいいましたら、結局近い将来において、映画フィルムを教材として使ってもいいというためには、これは大学用の映画フィルムである、あるいは高等学校用の映画フィルムである、あるいは中学校、小学校用のフィルムであるというふうな、いわば中央においてそういうふうなワクをはめて、こういうものならば映画フィルムの教材として使ってもよろしいというトラの巻的な基本的な一つのたてりというものをお作りになるならば、それは私が心配するまでもなく、農山村に至るまでお前たち勝手に使いたければそういう判を押してあるものを使いなさいというならば、これは費用も何も要らない。これは比較的簡単だ。こういうことが予想できるのです。これ以外は大臣の御答弁を聞いておって自信のある御答弁ができないと私は考えるのです。そこで一点だけ一つ大臣のお答えが願いたいことは、将来これは大学用のフィルム、あるいは中学、小学校、高等学校用のフィルムだという判を押したようなものを、各都道府県あるいは地方市町村の末端に至るまでの教育委員会へこういうたてりをお出しになる、こういうことがあるかありませんか、これだけ一点お聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/24
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025・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 この規則は必要な教育委員会規則を地方教育委員会が作る、こういうことでございます。地方教育委員会は委員みずからの目で映画を下調べするほかに、またほかのものの判断を利用して、あるいは地方の委員会であれば、県でよかろうといったものを引用することもありましょうし、また今そういう制度はございませんけれども、中央で有志の者が寄って鑑賞の参考にするというようなこともありましょう。すなわち委員自身の目でみずから検査するものと限らないということだけは言い得られると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/25
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026・山崎始男
○山崎(始)委員 委員みずからの目で鑑賞するものだけには限らない、こう言われるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/26
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027・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 はあ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/27
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028・山崎始男
○山崎(始)委員 そういたしますると、私の今心配いたしておりまする中央の方から一本立に、いわゆる垂直的に大学用、中学校用、高等学校用、小学校用のフィルムならば、これは教材として大いに云々、こういうことを意味するということに考えられるのですが、そう解釈していいのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/28
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029・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 あなたのお考えは、文部省でそういうことをやってしまって中央統制をやるんだろうというところに話を落そうとするのでありましょうが、それで今やろうということを明約するわけにはいきませんけれども、しかしながら、地方の委員が自分の目で見ないで、ある公の機関または信用すべき私の機関でよかろうといったものを信用して、あれならいいという規則はできる見込みはあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/29
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030・山崎始男
○山崎(始)委員 やはり私が心配しておりましたように大臣も肯定されたと思うのです。それだけ聞いておけばけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/30
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031・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 辻原弘市君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/31
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032・辻原弘市
○辻原委員 一昨日来審議をいたしております三十三条の問題は、非常に内容が広範にわたっておりまするので、今までの審議におきましても、一応条文の解釈について立案者の意図する内容がどういうものであったかという点がわかった程度でありまして、実際上の取扱いにつきましては幾多問題と疑問を残しておりまするので、後刻さらに条を追って審議をいたします際、その点を法案の重要性にかんがみましてさらに具体的にいたしたいと思うのでありますが、最後にただ一点だけ私その問題についてお伺いをしておかなければならぬ重要事項があります。これは具体的にお伺いいたすことは避けまして、取扱いの基本について大臣の御所見と文部省の解釈を承わっておきたいと思いますが、今までこの問題について論じましたのは、主として学校教育でありましたが、同時に今日の教育体系から見まして、それと相対的な関係にある社会教育の問題、これは触れておりませんけれどもまことに重大でございます。従いまして、この三十三条の取扱いが社会教育にどういうふうな影響を及ぼしているのかという点であります。法文を読みますると、三十三条第一項には、「学校その他の教育機関の施設、設備、組織編制、教育課程、教材の取扱その他学校その他の教育機関の管理運営の基本的事項」云々、こういうふうにあるわけであります。これをそのまま読んできますと、一昨日来問題にいたしておりますのは、学校教育の範疇の中における教材の取扱いの問題でありましたが、「その他の教育機関」とありまするから、これをすなおに解釈いたしますると、社会教育のすべての機関も中に含まれてくる、こういうふうに私は解釈せざるを得ないと思うのでありますが、その点はどういうふうに解釈されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/32
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033・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 その通りでいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/33
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034・辻原弘市
○辻原委員 そういたしますと、この条項は学校教育に関する教材の取扱いのみならず、社会教育における教材の取扱いについても同様の制約というものが行われるということがこれは明瞭であります。その間における影響の具体的問題につきましては、これは後刻に譲ることにいたします。確認だけをいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/34
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035・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 第二項はしかし「学校における」ですよ。第一項、前半としては教育機関、図書館あるいは博物館等についてもその基本的の規則は作ってもらうつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/35
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036・辻原弘市
○辻原委員 第一項においては社会教育を包括して、それに必要な諸条件をここではきめる。第二項においては、学校における教科書以外の教材の使用について届出、承認を得せしめる、こういうことで区別を法律上いたしておることは今大臣の答弁にありました。ただこれは学校教育といい、社会教育といい、実際の教育の場における教材の取扱いというものは相関連をいたしておる問題であって、従って第二項において届出の承認の定めがなくても、いわゆる共通して使われておる、そういった社会教育の教材というものには、従って学校教育の面において制限を受ければ、当然社会教育の面においても制限を受けて、まことにこれは立法技術としては巧みにやっておると私は解釈をせざるを得ないのです。しかしその間の影響がどういうふうに起ってくるかの問題は、これは後刻に譲りたいと思います。
そこでしばしば私も関連質問をいたしましたが、大部な法律案でもありますので、しかもまた重要な疑問とする点がたくさんございますので、この際私は条章を追いまして第一条から御質問をいたしたいと思います。
第一条についてお伺いいたしたいことは、先般若干この点に私も触れておきましたが、また他の委員諸君からも質問がありまして、大臣からも御答弁がございました。その質問をいま一度大臣に私は繰り返して申し上げたいのでありますが、それはその法律がどういった目的において作られておるのか、またこの法律の運用によっていかなることを達成しようとするのか、こういうことが大ていの法律案の第一条にはうたわれておるものであります。ところがこの法律案の第一条を見ますると、この法律の第一条は読むまでもなく、この法律はどんなことを定めておるかということの趣旨だけがうたわれておるのであります。ひるがえって従来の教育委員会法をながめますると、ここには明らかに私が申し上げましたように、この法律によっていかなることを達成しようとするかということと、この法律はいかなることを定めておるのかという、この二つのものを定めておるのであります。すなわち第一条には「この法律は、教育が不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきであるという自覚のもとに、」以下云々という、その目的を明示しておるのであります。しかもこの現行教育委員会法の第一条の目的というものは、明らかに教育基本法の十条によって定められている教育本来の目的というものを受けて、教育行政において教育万般の目的を達成するために、かかる内容をもって法律を定めるのだ、こういう趣旨に規定されておるのであります。その第一条の目的を受けて内容を明示するのは、第二条にかかっておる。ところが今度の政府提案のこの法律は、現行の第一条をそのまま削除いたしまして、現行の第二条を第一条に持ってきているところに私は重大な疑問があるのであります。お伺いいたしたいのは、なぜそういうような現行の、理念的にきわめて重要な法律運用の結果によって達成せらるべき目的というものを明示しなかったかという点が、私のお尋ねいたしたい点であります。なお補足いたしますと、せんだって、この点に対する大臣の御答弁がありましたが、それはきわめて事務的な御答弁でありました。少くともわれわれといたしましては、教育内容または教育行政あるいは実際の教育指導万般にわたって、特に教育というこの仕事においては、いずれもが一貫して流れる一つの理念と申しますか、あるいはわかりやすく言えば精神的な支柱といいますか、そういうものがずっとみなぎっていなければならぬ、そういうものはあらゆる機会に表現せられて、そして絶えずその衝に携わるものが、それらの条章に目を触れるごとに、少くとも自覚を促され、本来の目的に対する刺激を与えられる、こういうような体にしておくことが、やはりその理念の目的を達成するに重大な方法であろう、かように考えるのであります。そういう見地から何がゆえに従来の二条をもって一条というふうに、単なる組織法の目的あるいは趣旨とするようなものに置きかえたかということを、大臣から承わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/36
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037・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 過日お答えいたしました通り、教育に関する行政の法規でありますから、わが国の教育の基本たる法規、すなわち教育基本法はひとり第十条のみならず、全般をこれかぶっておるのであります。これを否定する考えは一つもございません。ただ元の法律は、教育委員会だけの法律なんです。当時教育委員会というものの性質が、まだ日本ではよくわかっておらなかったという時代の情勢もあります。それゆえに教育委員会というものは、こうこうだということを一条に書いておりまして、その当時としては適切であったかもわかりません。しかし今回の法律は委員会だけの法律じゃないのです。ほかの教育機関のことも書いております。すなわち地方教育行政の組織全般を書いたつもりであります、また運営も書いたつもりなんです。それゆえに教育委員会の目的を書こうと思えば、一条でなくて、教育委員会の章にそれは入れるべきものでありますけれども、そのことは今日教育委員会の何たるかはよく民間にもわかっておりますし、それからまた教育基本法の趣旨をこれにかぶるということも当然でありましたから、それは書いてありませんけれども、現に第五十二条には、教育本来の目的達成を阻害する場合には措置をするとあり、「教育の本来の目的」というのは教育基本法に書いてある目的でございますから、趣意においてはこれがいいと思います。昭和二十三年ごろの教育に関する法規の学校教育法においては、学校とはいかなることをするものじゃということは書いてございません。お手元にあると思いますが、同じ年にできました学校教育法では、第一条に学校の定義をしておるだけであります。およそ学校においてはこういう教育をせなければならぬなんていうことは書かないで、第十八条に至ってこの目標を示しておる、こういう書き方をやっておるのでありますから、今回は教育委員会の目的とか、町村長の目的とか、あるいは学校教師、すなわち教育機関のほかの目的とかといったようなことは省略いたしました。しかしながら趣意においてはあなたのおっしゃる教育本来の目的を達することが窮極のすべての教育法の目的でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/37
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038・辻原弘市
○辻原委員 今大臣が説明なさった言葉で、私はこの法律の性格というものが実によく現われておると思うのであります。それは従来の教育委員会法は、いわゆる地方教育のそれ自体についてのみ定めておったものである。いわゆる教育委員会だけのことを規定しておったものである。ところが今度の法律はそうではない、こういうのであります。そうではないという通りに、そうではない条章がたくさん入っております。従来の現行の教育委員会法にはなかったというよりも不必要であった「第五章 文部大臣及び教育委員会相互間の関係等」というような条項が新たに加わってきて、一体大臣はいかなる権限を有するものかということがここに一つふえてきておるのであります。このことは申し上げるまでもなく、従来の法律の体系なり、あるいは教育行政の運用のあり方からいたしますると、大臣の権限は文部省設置法で定めておるだけであって、それ以外においては付随的な条章はあっても基本的な問題は設置法についてのみ定めておるわけであります。ところが今回のは、従来設置法において定めておいて、それでしかるべくと解釈せられる大臣の権限が、この地方教育の中に入り込んできておる。従ってそれを技術的にないしは体系的に取りまとめるといたしますると、いわゆる教育委員会という概念には当らない結果が生まれたのだろう。そういうふうに考えますと、ここに昭和二十三年に作られた現行の教育委員会制度の考え方の根本というものと、今日提案せられたこの法律案との間には、少くとも相当の懸隔があるということは、これは事実だろうと思うのでありますが、大臣はそれをお認めになりませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/38
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039・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 同じことであったら立法の改正の必要はないので、元の委員会法よりは進んだいい規定を加えておるのであります。また元の委員会法のうちでよかったものはそれを保持しておるので、違っておることは事実であります。御議論もありましょうが、われわれはいい方へ違えた、こういう考えなのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/39
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040・辻原弘市
○辻原委員 私はそういう常識的なお答えをいただくつもりはないのであります。法律がしばしば改正される。しかし法律の中にはその法律が目的とする一つの思想があるわけであります。私は技術的に変ったとか、そういうことについて変ったのに、同じであるか同じでないかを大臣にお伺いしておるのではございません。問題は本来持っておった思想あるいは理念、こういうものに重大な変革を来たしたのではないか、こういうふうにお伺いをしたのであります。その点あなたは変えないならば法律改正案を提案する必要はないであろう、また改正をして進歩したものにするのだ、こういうふうにおっしゃっておられるのでありますが、進歩ということは単に最も新しい時期に改正されるということが進歩でない。改正されることによって後退する場合がある。私どもがここで進歩ということは、少くとも教育基本法に定められている教育理念に徴して、その考え方がさらに発展せしめられている場合においてのみ、この教育行政のあり方が進歩したと判定するのであります。私はさように判定しております。あなたはその判定の基礎はどこに置いておられるのでありますか。基本法の考え、基本法の精神をそっくりそのまま受け入れて作られた委員会制度の理念、こういうものに徴して、なおかつ今回の改正案は進歩であるというふうに制定されるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/40
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041・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 これは非常に進歩いたしておると思います。教育基本法並びに現在の教育委員会法の第一条にありまする通り、教育本来の目的を達するために民主的で中正な委員会を持つということはちっとも変りません。しかしながらやってみるというと、第一同じ一つの公共団体でありながら、町村長系統と委員会系統とがとかく調和ができなかったこと、また同じ国民に対する教育でありながら、県の間の連絡がとれなかった、中央との連絡がとかく疎遠でありました。この間横須賀の追浜で四十二人の子供の頭を竹でなぐって、中には血が出て泣いて帰ったという子供があるのだが、文部大臣、これをどうしたらいいかということは、はなはだ戸惑うのです。やはり幾らか縦の連絡もなければならぬという、この連絡調整をはかったことが一つ。それから今日の情勢で、直接選挙だけが中立を保つゆえんじゃなくして、真の中立を保とうと思えば、同じ党派のものが委員会を独占しないようなふうの制限をつけて、それをつけるのだったら選挙にこういう制限はつけられませんから、そこで世間でいう任命制でありまするが、任命というのは昔の言葉で、選定制といった方がほんとうはそれの方がいいのです。町村長が議会の同意を得て選定する制度を持つ。それから委員の数も、今まで県は七人、町村は五人と規定しましたが、小さい町村では三人でよかろうというて簡素にやりました点、実際をいうてこれはわれわれ本を読んでやったのではございません、多くの経験を集積して、この方が妥当だろう、こういう結論に到達したので、やはり進歩と思います。決して退歩ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/41
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042・辻原弘市
○辻原委員 進歩か退歩か、だんだん議論をしていきますとわかって参ると思うのでありますが、あなたは先ほど教育委員会法制定後に設らけれた学校教育法であるとか、その他の法規の中に、必ずしも理念的な目的を明示していないものもあるので、同様この法律はそういった従来の第一条を削除しても何らその取扱いは変らないのだ、こういうふうに申されました。またあとでつけ加えられたように、この学校教育法の第十八条では、いわゆる学校そのものにおける教育理念というものに触れておる。私はあなたがお考えなさっていられるように、この教育委員会制度というものの取扱いを、立案の当初に当って他のいろいろな法律よりも——法律には重要でない法律はありませんけれども、しかしながら新しくこれによって大きな教育改革を行うのだという、そうしたウエートをかけた法律であることを考えると、今あなたが言われるような程度の認識でもって、この委員会法が作られたものであるというふうには理解をいたさないのであります。少くとも教育行政組織というものが日本の教育の民主化の支柱であるという見解のもとに、従来のいろいろな誤まり、欠陥というものを大きく一擲する意味において、目的というものをきわめて重視してこの法律の中に盛り込まれてきた、私はこういうふうに理解をするのであります。そこに私とあなたの一つの認識の相違がある。あなたは教育委員会法というものも他の法律と何ら変らない、その法律が目的とした、提案者が意図したウエートというものについては何ら考慮なさらないでお考えなさっている点に、従来の委員会制度のあり方というものを軽視せられている原因があるのではないか、こういうふうに私は理解をするのでありますが、それに対する御見解はどうでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/42
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043・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 少しも軽視をいたしておりません。
それからもう一つ前のお答えに少しまたつけ加えたいことがありますが、試みにこの法律の目次をごらん下さると、第二章が教育委員会のことです。第三章が教育委員会及び地方公共団体の長の職務権限、第四章が教育機関のことで、これは学校のことも入っております。第五章が文部大臣及び教育委員会相互間の関係、それから最後に雑則とありますが、この雑則は別として、この四つのことがあるので、これを総括するような説明的なものを置くとすれば、前の法律のように委員会だけのことをいっておっては足りないのです。第四章に学校を含んだ教育機関のことを書いておりますから、もし書くなればやはり教育基本法第五条のことも六条のことも書かなければならぬ、あるいはまた教育の方針に関する第三条のことも書かなければならぬ、また政治教育に関する第八条も書かなければならぬので、やはりこの法律全体の総則にそれを書くとすれば、教育基本法全部を書くのが一番安全です。全部を書くなら、これは法律としてあるのですから、書かぬと同じことで、教育基本法を守って地方の教育委員会なり教育機関なり文部大臣が活動するということでありますから、これはむしろ書かなかったということではなくて、ない方がいいのじゃございませんか、よく御研究を願いたいのであります。私は心から、何も地方の委員会を軽視する考えは少しもございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/43
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044・辻原弘市
○辻原委員 そういう詭弁を弄されるところに、私は非常に軽視している点があると思うのであります。それは従来の委員会法でも、その目的というものは基本法全体を受けたものですから、あなたの議論のように第一条を書くならば、従来のものだってこれは全部書かなければならぬ。ただ違う点は、これは地方教育に関する行政組織ということを中心にして、その場合にこの行政組織を作るに当って従来の反省に立って、いかなる考えでもってこの委員会を作らなければならぬかというところから、私は第一条が生れてきたものであると認定するわけです。ですから今あなたが書くなれば全部書こう、こういうふうに言われるけれども、一番肝心なものについてそれを強調して、その筋を違えないようにして教育行政をやるということが委員会法提案の骨子であり、また委員会制度を制定した根本の考え方である。
そこで私はそういう議論を繰り返すよりも、当時に翻って、あなたはこの委員会基本法を何ら無視するものではありません、また現行の教育委員会制度を軽視するものではございませんと、こうおっしゃる。ところが私どもが理解をいたしております現行教育委員会制度のあり方、これはやはり制定をされました当時の国会における政府の提案の理由また質疑応答によってかわされました当時の記録、こういうものによって、私どもはその目的がさらにこの条文に出ている精神を裏づけているものである、こういうふうに考えますので、それについて若干お伺いをいたしますが、まず当時の提案理由を私は精読をしてみます。それには当時の文部大臣が、この委員会法の提案に当って最も重要な点は三点あるということを強調いたしております。そこを申し上げてみると、「以上三つの眼目が本法案制定にあたりましてとられた根本方針であります。」こう書いてある。その三つの眼目とは一体何かということがそれまでるる述べられてくるのでありますが、そのうちの第一は、当時の速記録によって見ますと、「まず、教育行政の地方分権」であるとしておるのであります。そして「地方分権としては、都道府県、市、東京都の特別区、人口一万以上の町村及び特別教育区に、それぞれ原則として、権限上一般行政機関から独立した教育委員会を設置して、その地域の教育に関する責任行政機関といたしまして、従来国が教育内容の細部にわたるまで規定し、かつこれを監督していた態度を改めまして、教育の基本的事項のみを定めて、これが実際上の具体的運営は、これら委員会の手に委ねることとしたのであります」と、こうある。(「変っていない、その通りだ」と呼ぶ者あり)それを変っていないと見る人の目は、私はいささかゆがんでおると理解せざるを得ないのであります。その通りでありまして、これくらいがわからぬならば、私は文教委員の資格がないと思う。すべての権限はあげて教育委員会にゆだねる、そして地方分権であるという趣旨が第一の眼目であり、基本方針であるとしておる。次は何かといえば、「前述の地域に設けられる教育委員会の委員の選任方法は、一般公選といたしまして、地方住民の教育に対する意思を公正に反映せしめることによって、教育行政の民主化を徹底いたすこととしました。従って地方の教育は、国の基準に従って、地方民の代表者の手によって、その地方の実情に即して行われることになるわけであります。」これを第二の眼目としておる。次には「最後に、教育の本質的使命と、従ってその運営の特殊性に鑑みまして、教育が不当な支配に服さぬためには、」どうしているかといえば「その行政機関も自主性を保つような制度的保障を必要といたします。」と書いてある。その制度的保障の一つとして、「教育委員会は、原則として、都道府県、または市町村における独立の機関であり、知事または市町村長の下に属しないのでありまして、直接国民にのみ責任を負って行われるべき教育の使命を保障する制度を確立することにいたしました。」こういうことなのであります。(「同じことじゃないか、その通りだよ」と呼ぶ者あり)この考え方が、現行の教育委員会制度の最大眼目といたしておるところであります。同じことではないかというが、その中の一点の眼目である公選を任命に切りかえておるということは、これは明らかに異なった事実であります。
そこで平場の意見は別といたしまして、大臣の御意見を私は承わりたいのでありますが、この三つの点が進歩したとあなたがおっしゃる考え方、現行の委員会制度を尊重いたしまして、教育基本法を尊重いたしまして、今回の改正案はただそれを進歩さしたものでありますというわけですが、そこに私もまたこの法案に対して、少からぬ疑問を持つ方々の大きな反対理由があると思うのです。一体いかなる形においてこれらの点が進歩しているかという点について、私はもう少し具体的に御説明を賜わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/44
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045・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 そのときの森戸文部大臣の説明は、今あなたがここでお読みになりましたが、もう一つ簡単に言えば、第一は独立性ということです。第二は民主性ということです。第三は自主性ということです。こう言っていいと思います。第一の独立性ということは、それはいいことなのです。しかしながら、一つの国の、日本のような同じ言葉を話す唯一民族の地方教育でございます。法律でも、国民全般に対して責任を負うのですよ。その村に対して負うのじゃないのです。国民全般に対して責任を負う。地方教育というのは、独立という言葉はりっぱであっても、やはりほかの方と摩擦などが生じてはいけませんから、横には町村長と連繋もし、縦には府県、文部大臣と連繋もし、そうして穏やかに教育をやっていく、こういうことは私は進歩と思います。何も一つの原理だけを突き通すということが国の政治じゃございません。そこが学者先生と私と意見が違うのです。独立だからといって、個々別々に小さいからに入っているということは、そうじゃございません。やはり市町村は一つの公共団体である、住んでおる人は一つの地域社会ですから、村長を敵とし、あるいは公安委員会とは別々であるし、何か違う、教育委員会だけは別天地だというのはこれはよくないので、ふんわりと一緒に連繋することがよろしいのです。
第二の民主性というのは、必ずしも直接選挙そればかりが民主性じゃございません。一番民主国のアメリカの大統領も直接選挙じゃないのです。でありますから、直接選挙で信任する町村長と直接選挙によった町村議会とが寄って、なるべくは村内ですが、広く日本国内からも集めていいので、いい教育委員を一つ選ぼうじゃないかといって仲立ちをしてやるということも、私は退歩じゃない、進歩だと思います。
自主性ですが、これは全く自主性を明白にいたしております。第二十三条と二十四条を見てごらんなさい。二十四条は村長のことなんです。村長より先に全般的に教育委員会の権限をどっと広くやって、ただしかし町村長は一つの法人、公共団体の代表者ですから、第三者に対して権利義務の主体として契約をすること、不動産を取得すること、登記所において登記すること、これを一般の民法の原則のようにその代表者にまかしてあるのであります。教育の自主性はちっとも妨げられておりません。きのうから教材のことがやかましく言われましたが、教材についてはこの教育委員会の方で規則を作るというので、非常に自主性です。村長が作りはしません。きのうからいろいろ論議がありましたが、教育委員会に力を与え過ぎるというあなた方の論です。すなわち委員会の力はよけい進歩しているわけです。でありますから、この三点とも森戸さんの時代よりは五年間の経験によっていい法律ができつつあるのであって、喜んでいただきたいと思っているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/45
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046・辻原弘市
○辻原委員 三点の問題について当時よりもはるかに進歩をしたということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/46
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047・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 その通りです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/47
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048・辻原弘市
○辻原委員 私どもがこの点を重視する理由は、日本の過去の教育が、スムーズに国民全体のものとして今日まで発展をしていっている形態をとっておるならば、それは大臣の議論もあるいはそうであるかもわかりません。しかし問題は申し上げるまでもなく、こういう委員会制度を作りないしは従来持っていなかった教育基本法という、教育理念を法律化したというような大きな転革を来たした、過去の教育とは転革を来たした。そして将来にわたる日本の教育の理念というものを——教育の理念というよりも国家的な理念というものを少くとも置きかえた、そういうふうな前提に立って、またそうしなければならなかった反省に立って私は論じておりますので、その点については、これは大臣の御説明を了とするわけには参りません。なぜかと申せばまず、今大臣は独立性と自主性、この点について抽象的議論を排しまして、問題は、あなたも少くともお考えになっておられるだろうと思うのだが、一つは、だれとの関係かといえばこれは国との関係であります。地方の教育は地方住民の手にという原則、従ってそれに対応するものは国であります。だから、国と地方との関係というものはどういうものでなければならないかという原則的な事項が基本法によって定められ、また教育委員会によって定められておる。その間において、国との関係において自主性、独立性というものを保ち得たかどうか。保ち得ている点がさらに明確になっておるかどうか。さらに明確になっておるとするならば、それは進歩でありましょう。いま一つは、あなたは穏やかにまとまったという表現をされた。それからふんわりと——ふんわりとということはどういうことかわかりませんが、ともかくふんわりとこうやるのですね。町村それから都道府県、それをふんわりとまとまるようにしたんだ。その言葉の中にも現われておりまするように、教育委員会というものの対応する一つのものは、これはやはり町村長に対して、ないしは知事に対して、一般行政に対応するもの、それから国に対応するもの、この二つのものに対して少くとも国の秩序、行政というものを根本的に破壊しないということを前提に置いてその自主性、独立性というもの、これを強調しているのが現在の教育委員会制度である。なぜ少くとも国民もそれがきわめていい方法であるとし、諸外国の指導も甘んじて受け入れる態勢にあったかということは、これは私は当時のいろいろな文献によって——あなたは多分東条さんの弁護をされましたのでどうかわかりませんけれども、今日重要な立場にいらっしゃる方たちの論説あるいは見解をいろいろ探ってみましても、そういうことが具体的にまたきわめて強烈に表現されている。一文を一つあなたの御参考に供してみますると、現在最高裁判所の長官である田中耕太郎氏が書いた文でありますが、その文の中にはこういうようなことが載っております。これは当時の文部省の、今日もまたこの中にいらっしゃる人がたくさんおる。ちなみに名前をあげてみますと、当時の初中局長の辻田さんが監修しておる。それから相良という人、この人は最近まで総務課長をして、今四国のどこやらに行っておると思うのであります。それから天城勲、宮地茂、安達健二、蛭田浩二、これらの人の共同執筆になる「教育委員会、理論と運営」という本の中に、この田中耕太郎氏のあれがあります。私が今名前をあげた人は、今日文部省の枢要の地位にすわっておられる人もあるだろうと思う。これらの人が共同執筆をし、当時の責任者である初中局長が監修をして、さらに現在の最高裁判所の長官である田中耕太郎先生がその「教育委員会、理論と運営」というものに対して賛意を表されて寄せられた文であります。時間をとってはなはだ恐縮でありますが、大臣の御参考に供するために申し上げてみたいと思います。「明治以降のわが国の教育行政の状態はどうなっていたか。教育は中央においては、文部省の官僚的な監督のもとに呻吟窒息していたとともに、地方においては地方長官の同じく官僚的な支配に服せしめられていた。そうして中央地方ともに、それが政治的激流の侵入による影響を免れなかったことも周知のごとくである。」と書いておるのであります。そこで田中耕太郎氏は「特に、地方教育界の元老である中学校の校長諸氏が、自分の教え子格の、年令三十才に満たない、教育については全く無経験な、出世の段階として単に数ヵ月ぐらいしか在職しない青二才の尊大横柄な態度に、内心のふんまんを押えながら、表面は唯々諾々としてその頤使に甘んじ、その結果として自然去勢され、卑屈になっていく情ない状態についてたびたび聞かされた。また私は某県において選挙の当時一校長が候補者に使用中のゆえをもって講堂を選挙演説場に貸与することを拒んだことを理由として、その候補者が県当局に強請し、その校長を首にした話を耳にしたことがある。かような事態はわが教育界の普遍的病弊となっていたといってよい。私はかかる事態に直面して、トルストイとともに「余は黙することを得ず」との叫びを発せざるを得なかった」こう言っておるのであります。このことは何を意味するかといえば、過去の教育が地方の教育に対して不当な干渉をしたというこのことに対する全国的な、一般的な病弊を根絶しなければいけないというところに、国に対して自主性、独立性を強調する教育委員会精神というものが現われてきたものであると私は理解しておる。さらにこれは当時の辻田初中局長の答弁を見ますと、あるいは当時の森戸大臣の委員会における答弁を見ますと、一体かほどに地方分権をして、自主性、独立性を国に対して持たせなければならぬ根本理由は何か、こういう意味の問いに対しては、その最も大きな根源は官僚支配にございました、あるいは軍部の圧迫でございました。しかし軍部の圧迫というものは、今日の状態においては起ってきておりません。将来はわかりません。清瀬さんがおっしゃられるような憲法改正が行われて、漸次その軍備態勢というものが強化された暁においては、どういうことが起るか予測できませんけれども、今日の段階においては軍部の介入、軍部の圧力というものはございません。しかしながら官僚の一つの力というものが、これは皆さんを前に置いてはなはだ恐縮でございますけれども、私は個人を申し上げております。官僚というものが存在していることは事実であります。そこでこの官僚支配というものを教育の上から払拭することが自主性を保たせるゆえんでございますというふうに力説をしていらっしゃるのであります。これを今度の法律で、大臣の御説明の言葉を借りて申しますと、そういうことはございません——私がここで質問を切って尋ねますと、おそらくそういうことはない、国の責任を明確化するとおっしゃるに違いないと思う。ところが、時間を省く都合上大臣の答弁も私は申し上げますが、(笑声)そこで大臣というよりも、教育に対する国の責任を明確化するという言葉を吟味いたして参りますと、問題は国といっても抽象的なもの、大臣といっても、きょうあって、あすはわかりません。清瀬大臣今はごりっぱであられましても、党内事情によってはあすはわからないのであります。ところが依然として長く教育の実際の権限を握るのはやはり行政機関に属する——言葉はいいか悪いかわかりませんけれども、一般に言っておりますから私も申し上げますと、文部官僚ということであります。ですからそれは国の責任の明確化、言いかえてみれば、それは文部官僚の権限の強化ということにすぎないのであります。そういたしますれば、ここで今あなたがこの法律でともかく国と地方の関係で、もう少し国も責任を持たせるようにしなければいかぬということは、当時において質疑応答の中に明瞭となっておる。国の権限を強化することは、民主的な教育の方向ではない、これは逆行しているということは、大臣のお孫さんにおいてもよくわかられると思う。この点いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/48
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049・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 今御引用の田中耕太郎君その他合作の本は、私読んでおりませんけれども、今御引用の限りにおいては適切なことと思います。それを発行したときは、それだけの意義がなければ、なかなか旧教育から新教育への切りかえはできませんので、いい本だと思います。けれども、辻原さん、およそ改革をする時分には、非常な力で引くものであります——それはフランス革命のようなことは別ですけれども、そのときの熱情でやると、引っ張り過ぎることがあるのです。そこで両三年の冷却期間で少しこれを修正するということは退歩じゃない、進歩です。外国ではどうか知りませんけれども、わが国は何しろ一民族一国家の国でありますから、教育制度を日本に持ってくる場合においては、このくらいのことはいいので、私はこの間ロンドン・タイムスの記者に会いましたが、大体今度の案は、イギリスの案に非常によく似てきたというのであります。シューパーインテンデント、つまり教育長を政府が承認する、文部大臣が承認する、向うもそうなっております。それから必ずしも選挙でなくてもカウンティの委員はきめる。また英国とわが国との国情もよく似ておるので、ことに議院内閣制を今度やったのですから、このくらいのところにちょっと引き戻すといいますか、修正を加えたのは、当時敗戦後まだ東京の焼け跡に煙が上っておったような時分に、田中耕太郎君のような熱情家がこういうことをされ、森戸君のような進歩主義に徹した大臣がこういうことをやられたのは、当時としては英断、果断でよかったと思いますけれども、五年間の冷却期間を置いてずっと考えてみますと、今回のように改めることが日本人のためでございます。私は心からそれを信じております。あのときは民主革命というような言葉もはやったのですけれども、このままにこれを長くやっていくということは、民族のためではございません。これだけの修正をやるのはいいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/49
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050・辻原弘市
○辻原委員 大臣の御表現によりますと——これは大臣の信念でありますから、私は人の信念に対しては、それはいけないとか、それがいいとか、そういう尊大なことは申し上げませんし、そういう権限もないでありましょう。ただしかし、大臣の表現された今の信条が、私は率直だと思うのです。そういうふうに率直におっしゃればいい。法律家の正体を現わしまして、わからないような御答弁よりも、率直におっしゃる方が、国民に冷静な判断を与える基礎になる。あえて大臣に忠言を申し上げます。ただいまの答弁が私は率直であろうと思う。それは終戦後は確かに田中さんのような、あるいは当時の文部省が行なったような——文部省というよりも、国全体が行なったような、一つの情熱に託して、そうして従来のものを払拭する強いモメントでもってわあっといかなければならない。そのことはよくわかる。私もどうだった、そこまではおっしゃらなかった。大臣がどうされたかはおっしゃらなかったが、そういうことだった。ところが少し引っぱり過ぎた——引っぱり過ぎたということは、その次に来るのは、よりそれを引っぱるというのじゃなくして、少しよりを戻そうかというのが、物理的な現象の法則だろうと私は思う。引っぱり過ぎたので、少しこれは戻す方が民族将来のためであろう、こうおっしゃる。ということは、先ほど大臣が申されましたように、この方向へ行こう、この方向が正しいんだ——この方向というのは、少くとも教育においても、日本の国全体が徹底した一つの民主化をやらなければならぬ、その方向に少し引っぱり過ぎた、それでちょいと戻すのがこの法案だ、こういうことになります。そうするとそれは進歩ですか。これは言葉の使いようで、引っぱり過ぎて少し戻すというこの理解なら、私はだれでもわかると思う。私どもはそうは考えないけれども……。しかしまた大臣のように、引っぱり過ぎたから戻す、それもよかろう、それも一つの考え方、ですからどっちかということを明瞭にしなければ、同じ方向にこれを引っぱっていくのか、それともちょいとよりを戻すのか、そこの点は、これは基本的な問題ですから、その点を確認してよろしいかどうか、大臣におっしゃっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/50
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051・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 率直に申し上げます。引っぱり過ぎたというのは、当時の情勢として、森戸君、田中君のほかに、社会的にもう一つの力が加わって引っぱり過ぎたのです。ゼネラル・マッカーサーです。(笑声)でありますから、今日独立して時間のたったことも一つ、日本人が自覚を取り戻したということも一つです。もう一つ、たとえて言えば、いい洋服であったけれども、レディメイドなんです。からだに合うようにこれを少し改造する。肩がこらぬように、ほどき直すとか、首が大き過ぎれば首を詰めるとかいったような修正というものは、私は賢い者はすべきものだと思う。政治というものは、国民が大工なんです。制度のための国民じゃなく、国民のための制度なんですから、日本民族によく合うようにするということは、進歩であって、退歩ではないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/51
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052・辻原弘市
○辻原委員 そういたしますと、結局大臣がこの法律を提案された、またこの法律の性格というものは——当時さあ行こうと、田中さんや、その他当時の国民の大多数のものが勇んで情熱に託していったばかりでなしに、片方においてはゼネラル・マッカーサーがその強烈な圧力をかけたというわけですね。そこででき上ったものはレディメイドであった。こういうことで日本の国情にそぐわないという結果を来たした。言いかえてみますと、この法律もやはり占領行政の是正にある、こういうふうに私は承わってよろしいかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/52
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053・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 それは私のこの法案説明の中にも言っております。何分占領中早急の間にできたものだから——それだけが唯一でございません。しかしそれは今回改正を思い立った動機のおもなものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/53
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054・辻原弘市
○辻原委員 そこで私はもうちょっとその問題を突っ込んで大臣の御見解を承わっておきたいのですが、占領行政の是正ということは、いかなる民族もそうであろうと思いますけれども、これは民族感情に非常にピンとくる表現であります。それが高ずると、これは排他的な民族感情をそそる結果になる。だからこの言葉を使われる場合には、非常に慎重を期さなければならぬというふうに私個人は考えているのでありますが、しかし今大臣が言われた言葉のその心底というものをもう少し明らかにしておいていただく必要がある。というのは、よく言われるのでありますが、現に私たちが使っている洋服にしろ何にしろ、およそ今日われわれが営んでいる生活、これが文化的と言えるかどうかわかりませんけれども、昔よりは文化的、その生活は大なり小なりやはりこれは諸外国から入ったものである。また日本の憲法にいたしましても、議会制度にしても、日本本来のものではないはずであります。日本の法律もまたこれは明治初年にドイツあるいはフランス、こういう方面から学びとってきたものである。それらのすべてのものがもちろん占領という状態とは違うけれども、しかしながらわれわれは身につけている。ところが占領行政だからということは、外国のものを押しつけられたから、外国のものをわれわれが唯々諾々としてのんだからいけないという観念に結びつけやすい。そうでなしに、もちろん占領行政というものは、われわれ民族の好まざるものであったことは事実であります。そういう状態を欲すると言うものは、日本民族だれ一人ないだろうと思うが、しかしわれわれが学びとったいいものまでも、その占領行政という名に籍口されてこれをついばんでしまわれるというような結果が起れば、これは後退であろう。そこでその点を明確に大臣のお考えは区別せられているだろうと思いますが、念のためにその点をお伺いいたしてみたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/54
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055・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 今辻原君のおっしゃったことはきわめて穏健なお考えで、私その通りに考えております。大賛成です。われわれ日本人はややもすると民族感情にかられ過ぎる民族でありますから、そこで占領中だから悪いといって、玉石ともに焼くようなことをしてはならぬ。よいことはやはり保持しようというので、教育委員会という、一つの同じ公共団体の中に二つの執行機関というものは本来なかったのだけれども、やはりこれはよかろうと思って保持いたしているのでございます。それから昔は教育を監督しておって、明治五年以来勅令で教育法を作って監督しておったけれども、やはりこれは国民の権利に関することだといって、教科書も教科書法といって立法事項にありまするし、大体いいと思ったことはことごとく保持いたしまして、これは行き過ぎだというところまでを修正してあるのでございます。全体、教育委員会法といいますか、あんな法律は、七十年間なかったものです。それをやはりこの通り保持いたしておるので、感情にかられることなく冷静にまた賢明に日本の教育の振興をやりたい、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/55
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056・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 清瀬文部大臣が臨時閣議に出席されますので、午前の会議はこの程度とし、暫時休憩いたします。
午後零時十一分休憩
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午後二時三十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/56
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057・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。野原覺君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/57
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058・野原覺
○野原委員 午前中同僚の辻原委員から、第一条につきましてお尋ねをいたしたわけでございますが、それに対する大臣の御答弁を私は拝聴いたしておりまして、依然として私の疑点が解消をいたさないのであります。そこで私は少し方面を変えまして、第一条についてお尋ねをいたしたいと思いますることは、第一条は「地方公共団体における教育行政の組織及び運営の基本を定めることを目的とする。」これがこの法律の趣旨であろうかと思うのであります。ところが読んでみますと、「この法律は、教育委員会の設置、」、ここまではわかるのですが、その次に「学校その他の教育機関の職員の身分取扱その他」と特に抜き出してうたっておるのであります。つまり大臣の御答弁によりますと、この法案はもとより地方教育行政の組織及び運営に関する法律案でございまするから、「この法律は、教育委員会の設置、」、その次に「地方公共団体における教育行政の組織及び運営の基本を定めることを目的とする。」、こう読めばすっきりしておるのですが、特に「学校その他の教育機関の職員の身分取扱その他」と、このことを特段に引き出されたのは、よほど何かの理由がなければならぬと思いまするので、この点に対する大臣の御見解をお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/58
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059・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 これは「教育委員会の設置」が一つであります。それから「学校その他の教育機関の職員の身分取扱」が一つであります。なおそのほかに、「地方公共団体における教育行政の組織」これも一つであります。またこれ全体にかけて「運営の基本を定める」、こういうことでありまして、別段他意はないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/59
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060・野原覺
○野原委員 「地方公共団体における教育行政の組織及び運営の基本」、この中に「学校その他の教育機関の職員の身分取扱その他」ということ一切が包含されるのではございませんか。「教育機関の職員の身分取扱」だけを特段にうたっておるわけです。この目次を見ても御承知のように、第二章は「教育委員会の設置及び組織」となっております。第三章は「教育委員会及び地方公共団体の長の職務権限」、第四章は「教育機関」、第五章は「文部大臣及び教育委員会相互間の関係等」、こうなっておる。特に「教育機関の職員の身分取扱」と、目的ともいうべき第一条の法律の趣旨の中に、このことだけを引き出された理由があるはずです。そのことをお尋ねいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/60
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061・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 あなたがこの目次を見て下さったのでよくわかるのであります。ここに書いてあることの大体は目次に示してありますが、これを縦に書いた文章にすれば第一条のようになるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/61
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062・野原覺
○野原委員 どうも、わかるだろうと言うけれども一向わからぬのであります。これは緒方局長からでもよろしゅうございますが、事務当局の見解をお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/62
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063・緒方信一
○緒方政府委員 これは御説の通りに、地方公共団体におきまする教育行政の組織運営の全般にわたる問題につきまして、その基本を定めた法律でございます。その中でここに取り出して書きましたのは、おもな事項をここに出しまして、「その池」でしぼっておるわけでございまして、「教育委員会の設置、学校その他の教育機関の職員の身分取扱」、これは非常に主要な事項でございますので出したわけでございます。その他先ほどもお話ございましたように、目次にありまする全般の事項について、その基本についてきめた法律がこれだ。これを示したのが第一条の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/63
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064・野原覺
○野原委員 そうしますと、「学校その他の教育機関の職員の身分取扱」がこの地方教育行政の組織及び運営に関する法律の最も主要な点だ、それと「その他」と一緒にして「地方公共団体における教育行政の組織及び運営の基本」ということになるのだ。最も主要な点は「学校その他の教育機関の職員の身分取扱」、ここにあるのだ、この点が実は最も力点を置いてこの法律を作ったゆえんのものだ、こういうことになるわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/64
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065・緒方信一
○緒方政府委員 これは、ここにありまする内容を構成しておりますいずれの事項も、相当みな大事な問題だと存じます。「教育委員会の設置及び組織」あるいは「教育委員会及び地方公共団体の長の職務権限」をきめましたこと、いずれも主要な事項でございますけれども、この第一条としましては、そのうちの教育委員会の設置と職員の身分取扱い、これを取り出しまして一応書きまして、その他の事項全般にわたるものであるということを書いただけでありまして、この法律としましては職員の身分取扱いの問題は相当重要な問題ではございますけれども、これが一番大事なものだという趣旨ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/65
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066・野原覺
○野原委員 では大臣にお尋ねしましょう。今事務当局の見解は大臣もお聞きの通り「学校その他の教育機関の職員の身分取扱」、これだけが特段に重要でないのだ、「その他」も重要なのだ、実はこの第一章から第六章まで書かれておること一切は、この法律の内容であるから、どれがどうだということはない、こういう初中局長の見解であります。私も率直に言ってその通りであろうと思う。そうだとすれば、なぜこの第一条につまらぬ文句を入れるのです。こういうものだけを特段に入れるから体裁がおかしくなるのだ、私は入れる必要はない、第一条は「この法律は教育委員会の設置、」くらいまではいいとしても、「地方公共団体における教育行政の組織及び運営の基本を定める」と包括的にうたい上ぐべきものではございませんか、これはどうなっておりますか。これはあなたの方で全くの落度である、そう言えばそうなんだということでしたら、率直にそのようにおっしゃっていただきたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/66
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067・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 この第一条はやはり必要な条文であり、きわめて適切に書かれておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/67
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068・野原覺
○野原委員 そういう突っぱね方をいたしますと、私もまた執拗に食い下らなければならぬ。
この第一条というのは私どもに言わせると全く意味がないのです。実はこの法律の題名が地方教育行政の組織及び運営に関する法律案、そういう法律なんです。ところが第一条をどんなにしさいに吟味しましても、この法律は「地方公共団体における教育行政の組織及び運営の基本を定めることを目的とする。」という言葉に尽きるわけであります。これは大臣も、私ども同僚の諸君が何回もお尋ねしておるのに対しまして、現行の教育委員会法は理念的な目的を明確にうたっておった、ところがこの理念的な目的は教育基本法の第十条にうたっておるから必要はないという答弁をしておるのであります。ところがその答弁にも非常に問題があって、数時間にわたってこれも同僚諸君が追及いたしております。何となれば教育基本法第十条の理念的な目的というものは、この法律全体からいって実は根本的に否定をされておる。ここが私どもとあなたとの根本的な意見の食い違い、意見の相違なんだ。基本法の第十条を考えて実はこの法律を作ったのだといいますけれども、基本法の第十条の精神をほんとうに生かそうとするならば、任命制ではだめだし、あるいは教育委員会の予算上における二本建の問題も考慮しなければならぬし、特に文部大臣の地方教育行政に関与するこの関与権だけはやはり何とかしてブレーキをかける必要がある。ところがそれが依然として考えられていない、従って教育基本法第十条の目的というものは考えられていないのです。この法律のどこを探しても考えられてない、考えておるというのは全くの詭弁なんです。私はこの問題はこれ以上蒸し返しませんが、第一条は死文そのままで、全く意味がない。どういう法律の趣旨なのかわからぬ。この法律の題名を繰り返しただけなんです。こういうようなうたい方も、理念的にも問題があるばかりでなしに、法律技術的に相当問題点ではないかと私どもは考えるわけであります。
そこでもう一点第一条でお尋ねをいたしますが、「教育行政の組織及び運営の基本を定めることを目的とする」という、一体基本とは何ですか、これを明確にしてもらいたい。「教育行政の組織及び運営」までは私はわかる、「運営の基本」とは一体どういうことなんですか、これをお教え願いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/68
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069・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 基本という文字は日本の現行法規にもありまして、教育基本法という法律があります。すべてその組織のおもなことを基本といっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/69
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070・野原覺
○野原委員 教育基本法の基本でございますか。教育基本法は教育の基本ですが、またその上に基本ということをいっておりますから、どうも明確じゃないのですが、これはどういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/70
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071・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 基本は基礎となり本旨となることであります。で、日本の戦後の法律は、ほぼ同時代にできましたものは、同じ用語は同じように御解釈願いたい。現行の地方自治法の第一条にも、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立する」こうあるのです。基礎、根本ということが基本であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/71
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072・野原覺
○野原委員 基本というのは文字通り解釈いたしますと基礎、根本、基本の基は基礎の基であり、本は根本の本なんです。私はそういうことは尋ねておりませんが、地方教育行政の組織及び運営の基本は、私どもにいわせると、これは教育基本法だと考えられます。間違いでございましょうか。教育基本法が地方教育行政の組織及び運営の最も基本になるものだ、こう思いますが、大臣はいかがお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/72
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073・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 教育基本法は教育全体の基本であります。教育の目的もありますし、機会均等のこともありますし、それから不当の干渉を受けないという教育というものの基本です。今回はそのうちの一部分の地方行政組織及び運営の基本なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/73
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074・野原覺
○野原委員 どうも答弁が私どもに納得できないのであります。あなたは午前中の辻原君の質問に対して、実は教育基本法の全体が、基本法に盛られておる十何条かのこの簡単な文句が、地方教育行政の組織及び運営のこの法律の総則ともいうべきものである、理念的目的をなぜ書かぬかという私どもの質問に対して、それを書くということになれば教育基本法はみな書かなければならぬじゃないか、こういうことを仰せられておる。そういうふうにあなたがおっしゃるから、やはりあなたも教育基本法が地方教育行政の場合におきましても基本だと考えていらっしゃることは間違いない。その点は私どももそう思います。ところがまたここに基本ということを特段にうたわれるものですから、一体あなたは教育基本法は最も根幹の根本という言葉をよく使われますが、そういうものであって、ここに規定されておることはその根幹の根本とまではいかぬけれども、やはり土台になるものだ、こういうふうに私どもは常識的に解釈したいと思いますが、その通りですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/74
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075・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 基礎というのは建築でいえば下の土台の石です。その上に立った大きな柱が根本です。運営の基礎、根本、こういうふうにお考え願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/75
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076・野原覺
○野原委員 この点はどう考えて下さいとお願いされてみましても、考えようがありません。しかしこういうことで押し問答してもきりがございませんから、私は次に進みます。
第二条については、これは簡単な条文でございますから特段に問題は提起いたしませんが、第三条は相当問題のある条文でございます。第三条「教育委員会は、五人の委員をもって組織する。ただし、町村の教育委員会にあっては、条例で定めるところにより、三人の委員をもって組織することができる。」とあります。そこでお尋ねをいたしますが、三人の委員をもって組織されるような教育委員会とはどういう教育委員会を想定しておるのでございますか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/76
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077・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 人口、面積等の比較的小さいものが、五人を持たずして三人でやろうという条例を作るであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/77
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078・野原覺
○野原委員 そういたしますと、これはさきの条文に関係があるわけでございますが、三人の教育委員会ということになれば、そのうちの一人が委員長になる、そうして今度残された二人のうちの一人が教育長ということもあり得るわけですね。そうすると、平の委員は一人ということになるのですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/78
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079・緒方信一
○緒方政府委員 これは三人の教育委員会にありましては、ただいま仰せのようなことになり得る場合がございます。しかし委員といたしましては、三人とも委員でございまして、三人の委員で組織された合議機関であることには変りはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/79
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080・野原覺
○野原委員 教育委員会をなぜ設けたのかということに対しては、事教育行政は重要であるから独任制の機関であっては間違いを起しやすいし、相当影響もあるから合議制にしたのだということが、やはり教育委員会を置いた趣旨に関する大臣の今日までの答弁であります。なるほど委員が三人おる場合には三名とも委員でございましょう。しかしながら、その中の一人が委員長ということになると、委員長は平の委員と違った特別の権力を持ってくる。特に今回の教育委員会法を見ると、これはあとで指摘いたしますが、これは随所に出てきておるが、可否同数のときには委員長に決定権があるのです。それから委員長は現行教育委員会法にないところの、教育委員会を代表する権限を持っておる。代表権というものが出ておるわけです。代表権があり決定権があるという、しかも会議の招集も委員長だ。この招集については問題がございますから私はあとで申し上げたいと思いますが、こうなりますと、一体三名の場合に一人が委員長、他の一人が教育長、そうして平の委員は一人だということになれば、この平の委員と教育長を兼ねた委員と委員長を兼ねた委員、この三名の委員の間の力のバランスというものは非常に不つり合いでしょう。この点は大臣、お認めになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/80
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081・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 会議を開くときは委員長と委員でございます。三人寄れば必ず合議体は成立するのであります。昔から三人寄れば文珠の知恵で、一番いい合議体と思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/81
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082・野原覺
○野原委員 私は三人寄れば文珠の知恵ということを聞いておるのじゃない。(笑声)私は少くとも三人制の教育委員の場合には、三人が同等の力を持っておるならば合議制というものの意味が成り立つのです。ところが、一人の委員は委員長という非常に実力を持っておるのです。そうして片方のもう一人の委員は、教育長というこれまた何といっても実力を持っておる。そして残された一人の委員だけが平委員、これは力がないのですね。こうなると、合議制というものは三人が対等で話をし、対等の力を行使する場合に合議制の妙味が発揮されるのであって、力のアンバランスということになれば合議制でないのですよ。これはどこかのだれかその力を持ったものが、独裁をやるかあるいは専行するかということになるじゃないですか。そうなると、あなたが教育は大事だから合議制にするんだ、独任制というものは承知できないんだというこの趣旨から見て、第三条のこの三人の委員をもって組織された教育委員会の場合はあり得ないのじゃないか、あなたの趣旨が生かされていないんじゃないかということを尋ねておるのです。もっと的確な御答弁をお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/82
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083・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 三人のうちで、一人が会議の主宰者であとの二人が平委員ということは、会議としてはいいことだと思います。もう一番人間の大事な裁判、場合によっては命まで失う裁判所も、一審、二審は三人でやっております。一人が裁判長だ、それが不公平だということは聞きませんから、やはり小さい村で三人で合議なすって教育委員の仕事を執行なさるということは、非常にいいことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/83
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084・野原覺
○野原委員 もう一つお尋ねしたいことは、この場合に委員長が教育長を兼ねても差しつかえないものかどうかということであります。お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/84
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085・緒方信一
○緒方政府委員 別にそういう制限規定はございませんから、そういう場合も起り得ることはあるものと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/85
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086・野原覺
○野原委員 そうなりますと、委員長が教育長を兼ねた場合には、これは非常に強力な委員ということになると思う。教育長は常時教育の事務を執行する、委員会にかける原案作成から何からやる者が、これがしかも委員長なんです。残りの二人の委員というものは平委員です。こうなれば、これは全く独任制の教育機関と同じ結果を招くおそれがあるのじゃないか。この点はあなた方の方でこの法律を作る場合に、これは手落ちであったと率直にお考えじゃありませんか。私はこうなると、合議制の機関というものを信頼できなくなるのです。全く片手落ちだ、これは独任制と同じになりますよ。いかがですか、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/86
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087・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 私は簡素な合議体としてはやはり三人でいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/87
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088・野原覺
○野原委員 大臣にお尋ねしますが、この三人の場合は市町村教育委員会になろうと思います。市町村教育委員会の場合は、教育長はその教育委員の互選ということになっておる。御承知でしょうね、教育委員の中から教育長を出すということになっておる。そうなると、教育長を兼ねた委員の力というものは平委員よりもあるかないか、まずそれからお聞きしましょう。あなたはないと言うか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/88
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089・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 合議体として合議する場合には、おのおの一つの発言権と一つの表決権を持っております。ただしかしながら、委員長は可否同数の場合、もっとも三人ならば同数の場合は想像できませんけれども、委員長としての裁決権は持つことになります。世の中に、三人で合議をするということは、民間における業務組織でも、組合でも、今言った裁判でもあることでございます。三人だからといって合議体じゃないというわけにはいきません。小さい村にあってはなるべくは簡素にする方がいいので、これでよく目的を達することがあり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/89
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090・野原覺
○野原委員 三名だから合議体であるとかないとかいうことを私は聞いておりません。三名の場合に——それではもう一つお尋ねいたしましょう。教育委員が委員長を兼ねた——教育委員の中から委員長を出すのです。委員長を兼ねた教育委員の力というものは、この法律ではどういうことになっておるかお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/90
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091・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 会議体を開いて、出席し、討論採決する場合は平等でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/91
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092・野原覺
○野原委員 あなたは平等のことばかり言うのですけれども、それじゃ委員長の権力、委員長はどれだけの力を持っておることになっておりますか。この法律は御承知でしょう、それをはっきり条文を指摘して、御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/92
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093・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 委員長は会議を主宰することと、外部に対する代表をいたしております。しかしながら表決権は平等でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/93
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094・野原覺
○野原委員 会議は委員長が招集すると第十三条には書いてある。委員は会議を招集することはできないのです。だから、自分の村に大へんな問題が起った、これはえらいことだと考えて、委員が委員長に会議を開いてくれといっても、委員長が、いやおれは会議を開く時期じゃないと思うと突っぱねたらどうにもならぬじゃないか。会議を招集するということは、非常な権力ではございませんか。この点をお認めですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/94
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095・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 それは五人の場合でも同様であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/95
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096・野原覺
○野原委員 あなたのおっしゃる通り、五人の場合でも同様なんです。従って委員長を兼ねた委員というものは非常な力を持ってくる。このことを認めるかどうかということを言っておる。代表するとは、一体どういうことです。それじゃお尋ねしますが、これはあとで問題にしようとしましたが、第十二条によりますと、第三項に「委員長は、教育委員会の会議を主宰し、」会議を主宰するということは、会議の取りまとめ役という意味であろうかと私は思うのでございます。その先に「教育委員会を代表する。」と書いてある。一体「教育委員会を代表する。」とはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/96
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097・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 外部に対し、その団体の意思を表明することでございます。また外部からの表明を受けることでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/97
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098・野原覺
○野原委員 団体に対して、これはやはり法律上の代表という言葉の意味であろうかと思うのであります。外部に対してその団体の意思を表明するのは委員長でなければできぬのであります。ほかの委員が表明しても、それはその委員会の意思とは受け取れぬのであります。これもまた大へんな権力でしょう。同じ委員でありながら、委員長でなければ意思の表明をすることもできない。
それから第十三条においては、招集権は委員長にあるのですから、他の者がどんなにじたばたしても、委員長が招集しないと言えば、それまでなんです。しかももう一つは、可否同数のときは、委員長の決するところによるのでありますから、委員長は委員として数えられるとともに、最後の採決の場合においては委員長が決定するのですから、これも大へんな権力である。こういうように委員長は非常な力を持っている。その力を持っておる委員長が、特に問題になってくるのは三人制の場合であります。人数が少いものですから、それだけの力を委員長が持っておる。しかもこの法律のどこを探しても、委員長は教育長を兼ねてはいかぬという条文はないのですから、おそらく小さい村になれば、いろいろな便宜の都合から教育長を兼ねてくると思う。三人委員が出た、その三名の中で特殊な人が委員長になり、教育長も兼ねるということになれば、外部に対して代表するのは委員長——会議の招集権、会議の採決権、しかも委員会にかける原案作成は教育長がやる。自分が作って、自分が外部に発表する。会議では形式的に相談したということにはなりましょうけれども、実質的には独任制と同じことになるのじゃないか。実質的には何といってもなるですが、あなたはならぬと言うかわからぬ。あなたの答弁は、ならぬと言えばそれまでかもわかりませんが、なるのじゃないですか。委員長が教育長を兼ねるということを許しておるということ自体問題があると思わぬかということを私はお尋ねしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/98
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099・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 あなたのはだいぶ御議論でございますが、表決権は平等にあるのです。やはり合議体であります。ちょうど裁判長と両陪席の日本の裁判制度が合議体であると同じであります。もっともそのうちの一人が、委員長はおれがなるのだといって出しゃばる、これはいけませんけれども、これも互選によっておるのです。どこに不公平がありましょうか。今の民主政治はこうするのです。もしそれが悪かったら、五人の場合でも、七人の場合でも同じことです。大か小か、程度の問題です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/99
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100・野原覺
○野原委員 五人の場合には、教育長の教育委員からの互選ということはあり得ない。これもまたあり得る場合が起るかもわかりませんが、大体においてそういう事態は少いのです。市町村教育委員会の場合に、やはり問題が出てくるのです。そこで教育長を——これは傍聴しておられる方の中には教育委員の諸君もたくさんあるようです。あなたは、教育委員会の実態というものをちっとも知らないで、ただあなたの党の一方的な人々の陳情だけを聞いて作られたから、そういうことをお考えかもしれませんが、教育長というものは、やはり教育の事務執行者ですから、非常な力を持っております。これが委員長と一緒になったら、何といっても力があるのです。実質上は合議体でなくなるのです。形式上は三名おって相談したということになるか知らぬけれども、自分が作った原案を自分が一対一のときには採決する実力を持つ。可否同数の場合には決定する実力があるじゃないですか。これをあなたはどうしてもお認めになりませんか。私はもっと親切な尋ね方をすれば、教育長というものは、教育委員の中から互選すべきではなかったという見解を持つものです。しかしこのことは、ここではおきましょう。これは先で言うとして、しかも委員長が教育長を兼ねるというこのことだけは考えておくべきではなかったか。教育本来の合議制の趣旨を生かす意味から、この点を考えなかったのはいささか手落ちでなかったかということを親切に尋ねておるのです。あなたは、これはなるほどそういえばそうだというなら、そうだとおっしゃって下さい。多数を持っているのだから、臨時国会でも開いて、また法律改正をやったらいいじゃないですか。率直にあなたの御見解をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/100
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101・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 町村における教育委員会はむしろ五人が原則です。そのときにも教育長は互選するのです。委員長も互選するのです。五人の場合でも委員長が教育長を兼ねることはございます。何も三人の場合に限ったことはないのであります。しこうしてこの構成で運営することができるとわれわれは考えて、あなたがおっしゃるまでもなく、このことについては念には念を入れて非常に考えた結果、これが日本の現状には最善なりという結論に到達しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/101
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102・野原覺
○野原委員 五人の場合でも問題が出てきます。しかしながらそれは三人のところに特にその問題が強く出るではないかということを私は指摘しておるのであります。しかしあなたはあくまでも問題はないということであります。あなたの答弁はそれでいいでしょう。しかしこの速記をたくさんの国民諸君が読んだときに、何という常識のない文部大臣かと実は国民は泣く。そのことを私は指摘して次に移りましょう。文教委員会というのは法律を流すとか法律をいたずらに作ることを急ぐとかいうことで私どもはやっているのじゃない。国民から信託されたお互い国会議員です。従って端的に率直にこういう点はもっと考えるべきであったというならば、あったということを示されたらいい。そういうことを言ったら、社会党から突っ込まれるからというような考えでは困る。私どもはそういうつまらぬあげ足とりは絶対にしないということを申し上げておきますから、御安心の上で御答弁願いたいのであります。
それでは第四条に入りたいと思います。第四条は「委員は、当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で、人格が高潔で、教育、学術及び文化に関し識見を有するもののうちから、地方公共団体の長が、議会の同意を得て、任命する。」とあります。そこでお尋ねしたいのですが、「人格が高潔で、教育、学術及び文化に関し識見を有する」というこの判断はどなたがするのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/102
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103・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 それは地方公共団体と地方公共団体の長がするのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/103
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104・野原覺
○野原委員 地方公共団体の長が一時的にはするわけですね。そうしてその条件にかなった者をあげて地方議会に相談をするわけですね。まあ大体そうだろうと思います。
そこでお尋ねしたいことは、地方公共団体の長並びに地方公共団体の議会が交替をする。非常な問題を起して、汚職、疑獄をやるんです。汚職、疑獄をやる人がたくさんおります。ほとんどやる。それからその議会も地方公共団体の長も汚職、疑獄に非常に関係をしておって、地方住民から指弾されて、いよいよ議会の改選ということになり、地方議会の勢力が完全に交替をするんですね。あるいは地方議会が全員出なくなるという事態も起るんです、問題によっては。もうその地方公共団体の長は落選して今度は出てこない。あるいは候補に立たぬということもあるでしょう。こういうように地方公共団体の長なり議会が交替をしたときには、一体前の地方公共団体の長と前の議会がこうだと認めておる人間でも、今度は問題になってきようかと思う。その辺はどういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/104
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105・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 地方公共団体の議会が議事能力を失えば、同意はできぬことになります。また地方公共団体が天然または人為の原因で推薦、すなわち委員となるべきものの同意を得るための原案を作ることができない物理的心理的の状態があれば、それはできません。けれどもこれはすべての会議に共通なことであって、教育委員会の委員の同意だけに限ったことじゃございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/105
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106・野原覺
○野原委員 地方公共団体の長なり議員が改選をされたということは、住民の意思が前の地方公共団体の長、及び前の地方議会を認めないということになったわけであります。私は少くとも教育委員は、公選か任命かというところの議論で申し上げましたように、地方住民の意思によって教育委員は決定されなければならぬじゃないか、こう私どもが申したときに、大臣はそれは任命でも十分達成できると言ったのです。ところが任命で教育委員が出ておるのに、この教育委員を任命した知事も議会もすっかり変えられちゃった。つまり地方住民の意思が、その長も議会も認めない、こういうことになってきた場合に、地方住民の意思は、任命された委員に対しても何らかの意思表示をしておると私は思う。任命されたその委員が、これまたしばらく続くわけだ。直ちに改選されるということにはなっていない。あなたはこの点をどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/106
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107・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 いわゆる同意のときに、地方議会として議事能力があれば完全な同意でございます。それから後に批判が起って、リコールその他があって資格を失うても、それは失うてから後のことであって、同意の日に同一の時間に議事能力があれば、それで住民を代表いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/107
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108・野原覺
○野原委員 この点はやはり地方住民の意思による委員でなくなってきたと私は思うのであります。ところがそれに対する規定も不備です。これは考えなくちゃなりません。それをあなたは考えないとするならば、やはり任命制というものは地方住民の意思に直結されていないということを、率直に認めなければなりません。あなたは任命制は地方住民の意思が十分生かされるというならば、これを任命した首長、議会が地方住民から否認されておる、全くボイコットされておるという事態の解明ができないからであります。しかしあなたはこの点についてもがんとして、なかなかうんと言わぬわけであります。
そこで私は方面を変えてお尋ねしましょう。第四条の第三項であります。「委員の任命については、そのうち三人以上(三人の場合には二人以上)が同一の政党に所属することとなってはならない。」これが今回の法律では、教育の政治中立を確保したんだという、最もあなたの得意とする条文であるようでございますが、私がお聞きしたいのは、地方公共団体の長というのは政治色の強いものだと見ております。今日の地方議会もそうです。これは都道府県知事、市町村長、それから市町村議会から、都道府県の議会に至るまで、わが国が政党内閣である関係もあって、相当政治色が強い。そこでその政治色の強い長が任命する、政治色の強い議会がこれに承認を与えるということになれば、どうしても教育委員というものには政治色が出てくるじゃないか、こういう私どもの議論に対して、今日まで大臣は——この第三項を読んで下さい。五人の場合には三人以上が属したらいかぬ、三人の場合は二人以上が属したらいかぬということになっておるんだから、一般的に色彩の強い者にはなりませんということを言っておる。しかしながら実情はそうじゃないと思う。というのは、何となればこういう事態が起るでしょう。それは任命直前に離党するのです。自由党の知事が、自由党から五名の教育委員を出せぬものですから、五名のうち少くとも三名を確保しないと、自分の思った議決をしてくれぬというので、二人だけはかまわぬから党籍離脱の必要なし、お前は離脱しなさい。これは合法的なんだからいいのだ、こういう場合の保証は一体どこでやるのですか。こういう場合そういう心配が出てこぬですか。今日の都道府県知事はそういう人が多いのですよ。あなたも党人ですからよく御存じの通り、これはやりかねませんよ。やりかねない場合の制度的な保証を、一体この法律のどこで考えているかということをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/108
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109・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 離党すれば、離党後においては党の統制に服しませんから、それでもいいでありましょうが、精神からいえば、そのために離党したような者は採用しない方がいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/109
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110・野原覺
○野原委員 採用しない方がいいと思うというのは、あなたの希望である。法律に採用してならぬということが書かれていない限り、採用されます。従ってこれはなるほど党の党議に服する義務は生じないかもしれませんけれども、そういう関係で離党したような人は、どうしてもその党派に片寄った教育行政、片寄った考え方を持つということは当然なんです。ただいま参議院において松野鶴平さんが議長になったようであります。そうして議長だった河井さんが党友になったといたしますと、これはどういうことになりましょうか。ああいう経過で党友になった河井さんは、おそらく次の参議院の選挙その他で自由民主党から支援をいただくということになれば、人情的にも自由民主党に忠誠を誓いますよ。そういうことが事実上問題なんですよ。党員であるとかないとかじゃない、その党派に片寄った考え方を持っておるということが問題でございましょう。そこでそういう場合の保障はどこにもないじゃないかということを私は申し上げておるのであります。どっかにあるならお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/110
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111・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 その保障はないんじゃないのです。よろしいですか、委員となる人はまず人格高潔ということなんです。腹の中では党員でありながら、ほおかむりをして、離党届を出して委員になろうというのは、人格高潔じゃございません。法律に書いてないことはないのです。
ただ、もう一つは、民主主義は、多数決には信頼しなければなりませんので、それが悪ければ町議会の同意を得るはずはないのであります。これが民主政治のもとにおける保障でございます。これ以上立ち入ってしゃくし定規の規定をたくさん作るべきじゃございません。人格高潔の者を選べ、教育委員会の政治中立上必要だから二人以上は選ばない、こういう精神を腹に持って合議体たる町村議会が町長に同意を与える。この構造に信頼しないといって、これ以上あんまりしゃくし定規の規定は作るべきではないと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/111
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112・高津正道
○高津委員 教育委員の任命を規定している第四条についてお尋ねします。教育委員として任命される者の資格条件を見ると、三つあげてあります。第一は当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者たるを要すとなっておりますが、これはよしといたしまして、第二の今問題になっておる人格が高潔な人物という規定であります。人格の高潔ということは常識的にはわかりますが、具体的な角度から二点承わっておきたいことがあります。すなわち多くの失業者や生活困難の国民があるときに、非常にぜいたくな生活をすることは罪悪であり、不道徳であろう、それも大きい罪悪だと、私はかように考えるものであります。この種のぜいたくな生活者は、この人格高潔という条件を持っていないものと認めたいのでございますが、大臣の御所見はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/112
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113・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 この人格という文字は、現行の法律にあるのです。あなた方が年じゅう引用されるところの教育基本法の第一条に、人格の完成、非常に完成されたものは仏でございます。けれどもみんな完成の途上にありまするが、一般の標準よりは人格の高い人で——今ぜいたくなことをおっしゃいました。ぜいたくは悪いことです。その限度を過ぎて、一方で飢えた人が道に満つるのに、それに自分だけはぜいたくするということは、完成したる人格じゃございません。けれどもものは比較でありまして、自分のからだがるい弱なために他の人よりも美食するという場合もありまするが、これはどうも具体的に言わぬと、きちっとしたメートル尺で指すようには参りません。けれども原則としてはあなたの御意見と同一であります。人が貧乏しておるときにぜいたくして得々としている、これは人格の完成を得たものじゃございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/113
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114・高津正道
○高津委員 もう一つ具体的にお尋ねしますが、概してその裕福な生活者の中には、めかけを持っておる人が比較的に多いのが事実であります。人格の高潔を強調しておるこの法律で、めかけを持っている人を教育委員たる欠格者とみなしているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/114
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115・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 蓄妾のことも、これもいいことじゃございません。しかしながら人格のいかんは総合的に考えなければなりませんので、一方において多少の欠点はあっても、他方においてまた学問が非常によく、信仰心に富み、世間のつき合いもよくする、慈善事業にも参与するといったような場合に、多少の欠陥があったからというて、その次の欠格条項でわかりますが、欠格条項者と同じようにこれを選べないといったようなことは、今日の国民の道義基準からはいかがかと思いますが、私がここで寸尺を切って申し上げることは遠慮いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/115
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116・高津正道
○高津委員 人格のいかんは総合的に見るべきであって、その他の点で慈善事業においてもその他すべていい場合には、多少の点は——その多少の中にめかけを持つことをあなたは入れて、それは大目に見てもいいのだ、こういうことを言われましたが、それは入れるべきではないでしょうか。全国の婦人有権者から見れば、大きな大きな問題なんですよ。それで承わつておきたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/116
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117・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 私も大体においてあなたと同じ感想を持っておりまするが、しかしながら人格のいかんは総合的に見たいという私の意見には変りございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/117
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118・高津正道
○高津委員 この第四条の第三項に、五人の教育委員の場合、三人以上が同一の政党に属することになってはならないと規定してあります。すなわち二人まではいい。しかしある政党の綱領、政策さらにその考え方に完全に賛成しながらも、入党手続はとっていない。さっきの話は離党の話でありましたが、まだ入党手続はとっていない。この種の人々を言論界ではしばしば同調者と呼んでいるのでありますが、この法律では、この同調者をある一つの政党に属するものとみなすのでしょうか。それとも同調者は政党所属者でないから、幾人任命してもよろしいという御解釈でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/118
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119・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 入党しておりません人は、党の根本主張等に共鳴はいたしておりましても、党員じゃございません。従って党の節制には服しませんから、それは除いて差しつかえないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/119
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120・高津正道
○高津委員 入党の手続をしていない同調者はかまわないと、このようなお説でありますが、具体的に聞きますと、ここに一人の欠格者らしい人間がいる。彼は入党していない。しかし彼は選挙の場合にある特定の政党の選挙運動を参謀的の立場で行なったという経歴の持ち主ではある。この法律がこのような人物は、この政党の準党員とみなして、教育委員にはなれないと規定しているものと私は考えたいのでありますが、大臣の御見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/120
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121・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 選挙の運動員は、必ずしも候補者と同一政党の人に限らぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/121
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122・高津正道
○高津委員 それは人夫的にビラを張るというような仕事でなしに、参謀的な地位で働いた。あるいはある特定の政党の党員以上のほんとうのその政党人だ。入党しているかいないかを人が知らないが、全くその政党の者だとだれでも認めておるような人間、手続をしていなければ、それを今の限定された二人、その以外に加えてもいい、こういう御解釈でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/122
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123・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 党派によって入党の意思表示のやり方は相違すると思いまするが、その党の規定によって党に加入の手続をするまでは、いかに党の綱領に賛成をし、また候補者のために選挙運動をいたしましても、これを党員とは申さないでいいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/123
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124・高津正道
○高津委員 そのような大臣の解釈でいきますと、選挙運動で大いに働いたものに論功行賞として教育委員のポストを与えるというような、そういう任命が大いに行われる余地があって、大臣は一つの党派の支配という形の現われ方に制限を加えてあると言われるけれども、それはほとんど党員と同じでありますから、大へんな弊害がある。論功行賞に用いられる場合がしばしばあろう、こういうお尋ねであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/124
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125・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 選挙運動の論功行賞として、民主的で中立を必要とする教育委員会の委員に推挙することは、望ましいことではございません。それを訂正するの作用は、合議体たる議会の同意でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/125
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126・高津正道
○高津委員 ここは幾ら議論をしても長くなる一方でありますから、私はさらに角度を変えまして、この第四条は、国民に教育委員を選挙する権利を、すなわち貴重なる選挙権を従来与えておったものを、それを今度奪うことになるのであります。大臣を私が尊敬しておるのは、普通選挙運動という選挙権獲得のために非常に苦労をされて、大きい功績を残された点であります。すなわちわれわれの今日議会に議席のあるのも、普通選挙権のおかげということも言えるのであって、われわれの草分けであり、その面では大した人です。そうして明治以来、直接国税十五円を納める者を、それをまた広げて、十円にし、七円、五円、三円というように範囲を広げるのでも、どれだけ人々が苦労をしたかわからないわけであります。そういう資産のようなことを全部撤廃して、普通選挙をしくためには、どれだけ若労をしたかもわからない。選挙権というものは、そのように大切なものであって、今日婦人参政権になり、人口が男女の比率は女が多いのでありますから、たとい女が議会に出ていないまでも、政治家の議論やその政策が女の利益に反するような法律であれば、次には選挙に出られないかもしれないくらいに、女はその選挙権によって自分の利益を守ることもできるようになっているのであります。国民が教育行政に対して選挙権を持っておるというのは、非常に貴重な権利だと思うのであります。憲法を読んでみますと、その第十五条には、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」第三項には、「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」というように、憲法でも書いてあるのであります。今まで一生懸命選挙権獲得のためにやってこられたのでありますが、今あなたが大臣になられたときに、一番情熱を持ってその選挙権を剥奪して、任命制はいいのだ、任命制はいいのだと言って骨を折られるが、一生涯あなたが努力されたことを、今度はどんどん消していく仕事を、人生の終りのところでおやりになるのは、非常にあなたのためにとらざるところでありますが、これは憲法十五条の違反行為にはならないものでしょうか。与えてあった権利をさっと取るのは、これが国民の意思だ、多数党の意思だと言われるのだが、この点はどういうものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/126
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127・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 高津さんが私の壮年のころの運動に論及されたことは、私も恥かしく思う次第であります。ただ、普通国会の選挙の場合は、この国会が人間の権利義務に関することを扱うのです。基本的人権は失わないという保障はありますが、所有権の制限でも、個人に対する処罰でも、刑法でも、それをずっと振り返って、人間の意思による普通選挙によらなければならぬということは、これは基本的要請であります。憲法がいかに改正されても、この重大権利は動かすことはできません。地方団体はその一部分のことを委託されておりますから、町村議会もまたある程度において同様な理論になるのであります。それゆえに町村議会の議員選挙権は、これまた動かすことはできません。町村議会という一つの生きた団体がありますが、その団体の中で、ある事務、ここでは教育であります。またほかの場合は警察、公安委員であります。これなどの選定の仕方は、直接選挙による場合も民主的であり、その選挙されたる団体の機関たる町議会が選定するということも、また一つの方法であります。これを町村の議会の同意にかからしめる選定方法にするということは、私がかって主張いたしました普通選挙理論にはごうも抵触するものではございません。また現行憲法の規定にも抵触するものではございません。民主主義の道理を後退せしめるものでも何でもないのであります。ここの区別を達識なる高津さんの御鑑識を賜わりたい、かように私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/127
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128・高津正道
○高津委員 国会に対する選挙権を奪うのではなしに、地方自治体の教育委員の選挙権を奪ったのである、ものが違うと言われますが、私の言うのは、地方の自治体の仕事の中で、教育も相当大きな部分を占めるのでありまして、その他の一般行政の投票権と、それから教育の投票権と、二つ与えられておったのであります。すでに向うにちゃんと与えてあったのです。それを奪うということは、それは人権を縮小する行為であって、あなたのお説によれば、間接選挙になるのだ、自治体の長が任命する方がかえって合理的で、運営もうまくいくのだというお説でありますけれども、すでに与えてある権利である。その自治体の公民として、選挙権が二つ今まであったわけです。その一つを奪い返すということはどうですか。国会に対する選挙権というものは大事であった。そのためにあなたが御苦労なさっておることに対しては敬意を表しておるということを私は申したのでありますが、自治体の二つの中の一つは剥奪してもちっとも人権に対しては何でもない、こう言われるその論拠が、私にはまだ明らかにならないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/128
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129・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 本来地方公共団体は、一つの生きた組織体でございます。この組織体の意思を決定するために、完全なる合議体ができておるのであります。その意思をもって、事務の一つであるところの教育に関し、教育委員会をきめるということは、ごうも今日の民主主義理論には反しておりません。反しておらぬ以上は、政治家の考えは——そこまでは法律家の考えであって、政治家の考えは、どっちが目的に合するか、合目的であるかということであります。無制限の直接選挙によりますと、一方の党派がみな委員を独占する場合もある。それは不公平な結果になるから、制限して、二人以上は同じ党派が出られぬといったような制限のもとに選定する方が私はいいと思うのです。
先刻婦人のこともおっしゃいましたが、今日の実情から見れば、県における選挙というものは非常に大規模で、参議院の選挙と同じ広さです。今日婦人で教育に関し、関心を持っている人は非常に多い。ことに家庭を保つのが婦人でございます。今の選挙法は変えられまするけれども、このままにやればりっぱな考えを持っておられる婦人も、教育委員会においてはとうてい男子だけの数は得られないと思います。けれども各県各町村にそういうふうな人があれば、選挙運動に及ばずして、議会でもってあそこの奥さんを頼もうじゃないか、賛成、こう出ていって、婦人のチャンスも非常にふえるのです。すでに民主主義の理論に反せぬ以上は、今度は政治家は目的を考えて、目的に近いものを一つやろうということでこの案は提出しておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/129
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130・高津正道
○高津委員 直接選挙の方がより民主的であるというのがあなたのいつも言われる常識であり、良識でもあると思います。納得ができませんけれども、関連質問でございますからこれで質問をやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/130
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131・小林信一
○小林(信)委員 関連して。私は非常に第四条については問題を考えておったわけなので、大臣もごまかさずにお答え願いたいと思うのです。前もってお伺いしたいことは、この法律は、教育委員会というのか、教育というのか、あるいはその教育にも国家的な目的を持った教育というのか、そこら辺をほんとうに大臣の御意思を聞いてないのですからわからないのですが、以前よりも発展するのだというような御主張をなさっておられます。最小限度の問題として、大臣の御見解では、政治的な中立性あるいは民主性はそこなうことはないということを今までもお述べになっておられますが、今までよりも減退するなんてことは絶対にないという御主張でございますかどうか、あらかじめお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/131
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132・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 民主主義という尺度においても、今までよりは民主主義が減退することはないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/132
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133・小林信一
○小林(信)委員 この法律が出ますと、現在の町村長、市長、知事によって現在の教育委員は全部やめさせられるかどうかわかりませんが、とにかく現在の首長によって教育委員が任免されることになるわけですね。これも伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/133
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134・緒方信一
○緒方政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/134
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135・小林信一
○小林(信)委員 これはあまり画一的な考え方かもしれませんが、今の首長と称するものは、教育行政を除いた他の一般行政に対して適当な人間であるという建前で、市民なりあるいは村民なりの負託を受けておる者だと思う。もちろん教育行政をつかさどっても何の差しつかえない者があるかもしれませんが、一方において教育委員会制度があって、教育行政において政治的中立性を確保するとか、民主主義を確立する。そのために教育委員会というものは、別個に選ばれておったのですから、厳密にいえば、選挙するものは首長選挙と教育委員会委員の選挙は区別されてあるわけです。今この法律が出ますと、教育行政に対しては責任を持たない、学校を作るとか、内容を整備するとかいうような問題で、市町村長は教育費に金を出すというようなことで、間接には関与しておりますけれども、教育内容、つまり先ほど申しました政治的中立性を確保する、不当な支配を受けないという問題に対しては、やはり選挙民がそれに該当する者を選んでいる今日なんです。そういうような現状において、この市町村長にそういう仕事をする教育委員の任命をさせても何ら差しつかえないという見解でこの法案をお作りになられたか、あるいはその途中において、それに対してはこういうふうな問題を考えたがこうなったのだとか、あるいは法律的に過去においてもそういう前例があるのだというようなことをお考えになっておられたかどうか、この際ほんとうにまじめに——文部大臣はまじめな方として信頼しておりますけれども、これはほんとうに私たちの勉強にもなることで、法律的には非常に明るい大臣でございますので、この際お伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/135
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136・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 あなたのお問いの趣意はよくわかりました。今の市町村長が選挙される時分には、現在の地方自治法の権限を持つものとして住民は投票している。ところが直接教育行政をやるのではありませんけれども、教育行政をやる者を選定するということは、選挙当時よりは権限が拡大しております。そこに御着眼のお問いと思います。今回別に出ました地方自治法の一部を改正する法律の二百五十二条の十九によりますと、五大都市の方は、市長のみならず市会議員もまた十六種の新たなる権限を今度はもらっているのです。選挙以後においてある種の権限がふえることも減ることも前例もありまするし、現にわれわれやりつつあることでございます。それゆえに今回この地方教育行政の組織及び運営に関する法律を、衆参両院で、権限の拡張にはなるけれどもよかろうということで御同意下されば、かくのごとき立法は憲法に違反するものでもなく、合法の法律として成立し執行し得られるものと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/136
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137・小林信一
○小林(信)委員 まことに法律的には理路整然としてお述べになられて納得しなければならぬような気がいたしますが、しかし今お話しになられたような点は、そこには権限の拡大がありましても、一般行政という点でそう隔たりはないわけです。しかし私が先ほど念を押して申しましたように、不当な支配を受けないとか、あるいは政治的な中立性を確保しなければならぬとか、民主主義を育てるものであるからこそ教育委員を選んだという、この政治とはっきり区別して考えられた教育委員を、何らそれに対して選挙民が考えなかった市町村長によって推薦をされても任命されても差しつかえないということは、何か教育を今まで大事だと考えておったその大事な考え方というものが、この法案が通ることによって根本的にくずれるような気がするわけです。大臣は、衆参両院を通ればとにかく国会が認めたものであるから差しつかえないとは言いますけれども、それほど重大視してきた教育に対して、大勢が賛成したから、国会を通ったからといって、それでもって大臣がほんとうに全面的に満足されておるかどうかを、私は念を入れてお聞きいたすわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/137
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138・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 さきに申しました通り、今回は自治法の改正の二百五十二条の十九とともに地方団体の長の権限が移動いたしました。もし通ればです。それが違憲でないということが確立しますれば、それから先は政治問題で、どっちが合目的か、どちらが国民のためによろしいかという価値判断の問題でございます。われわれはこの場合には、やはり長の裁量によって地方合議体の同意を得て任命するということが、村のため、町のため、ひいては県のためにいいということであったら、すでに合憲だという法律の調べをパスした以上は、あとは価値判断の問題で、この方が私どもはいいと思っております。実際にこれが通過してやってみると、日本の教育は非常によくなる、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/138
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139・小林信一
○小林(信)委員 大臣は、今まで任命制に対して私たちが不満を申しますと、いいじゃないか、首長が人格高潔な人を選ぶのだから何が文句があるかというような御主張なんですが、その選ぶ条件というものは、幾らでもこの中へ盛ることができると思うのです。選ぶ人というのが、きのうも私教材よりも人だ、こういう問題を申しましたが、やはりここにおいても同じだと思うのです。選ぶ条件がどうであっても、選ぶ人というのが問題であって、おそらく首長たるべき人でありますから、私がそれほど心配することはないと思いますが、しかしそこに先ほど申しましたような、純然たる教育行政に対しましては大きなる条件というものがあるわけなんです。その条件を無視しても——無視するというのか、これを阻止しても、大多数が賛成するならばそれでよろしいというような御見解だけで、この法案作成に当ったかどうか。こういうこともお聞きしなければ、この法案の真価というものも国民にはわからないわけですから、私はその点をさらに念を押してお尋ねすると同時に、私はおそらく大臣が、簡単に、人間を選ぶのだ、人格高潔な者であればいいのだ、教育に対して理解を持てばいいということで、そう深い教育的な識見、才能に触れるものでないからいいのだというようなことで御答弁になると思ったのですが、割合御丁寧な御答弁を受けてうれしく思っておりますが、しかしさらに法案の内容を検討して参りますと、教育委員に非行があった場合にはこれを不適当なものだとか、あるいは非行があった場合にはこれを免職することができる。もちろん議会の同意を得るわけなんですが、そういう権限が直ちにやはり現在の首長に与えられるわけなんです。そういうふうな点を考えてみましても、現在の首長に直ちにそういう権限を与えることは、この教育の原則であります三つの問題に非常な影響を与えるものであり、それを軽視する法律になる、私はこう考えるわけなんです。それからこの際私は大臣に申し上げたいですが、午前中のお話の中にそう首長に権限を持たしておるのではない。わずかに二十三条ですか、二十四条だけの問題だと言われますが、そういう条項は少くとも、この第七条の条項というふうなものは、これはただ一条でございますけれども、実に大きな権限が与えられておるわけなんです。これを簡単に大臣は、大したことはないのだ、財産権がどうの、こうのということだけを申されたのですが、こういう大きな全体をしっかりつかんでしまう、左右する権限というものが与えられておるわけなんで、そういう場合に法理論的に考えてこれが今後前例となる点から考えても、ただいま申されましたように、地方自治法の権限拡大と同じに考えて差しつかえないかどうか、念のためにもう一ぺんお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/139
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140・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 第七条の罷免のことも、これも選任と同じく重大なことは小林さん御指摘の通りであります。しかしながら人間は生きもので、心身高潔で教育に識見があると思いましても、そのうち病気にもなり、病気の中には精神上の病気もありますし、さような場合にどうすればいいか、この規定をしなければなりませんので、そこでこれも長一人が罷免するというのではない、議会の同意を得て罷免する、こういう構成をとったのであります。これと同じ考えは警察法の第四十一条の第二項にもそれをとっております。警察のことは非常に大切なことで治安に関することだ。その委員が初めはよかったけれども、中途で何か変になったという場合にも、ほっておけませんから、これと同じく議会の同意を得て長に罷免の権を与えております。同様な考えでこの安全方法をとった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/140
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141・小林信一
○小林(信)委員 大臣にお聞きした点はそうでないのです。この権限を与えることを私は云々しておるのではないのです。法の建前からは当然この条項はあってしかるべきものとも私は考えますが、この権限を行使させるのに、いわゆる教育のこともつかさどってよろしいという国民の負託を受けた人ならとにかく、今日の首長がやはりこれを適用できるというわけなんです。新しく委員を任命すればその翌日非行があるかもしれません。そういう場合にその首長が非行なりと認めるというようなことが至当であるかどうか、私はそこをお伺いしておるわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/141
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142・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 先刻選挙の日には持っておらなかった委員の選任権をあとでくっつけた、それがどうも憲法理論でいけないのではないかというお問いでございましたから、その点についてもよく考えて憲法には違反しないと考えたのであります。それと同じ理屈で、第七条の罷免もそのように考えております。ともかくも憲法の関門をくぐって合法な法律がそれでできるということがきまりましたなら、その先はそれが目的に合するかどうかという価値判断の問題で、先刻私が自治法の法文を引いて答えた場合と同じ答えになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/142
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143・小林信一
○小林(信)委員 その問題から推しても、何か大臣の方が老獪なところがあって、ごまかされるような気がするのです。首長が選ぶということにおきましても、将来こういう権限まで与えなければならぬから、今の首長に簡単にその権限を与えることはどうかと私は尋ねておるわけなんです。大臣は今度は逆に持ってこられて、そういうことが可能であるから、非行があった場合にはこれを処罰することは差しつかえないじゃないか、こう言うのですが、そういう将来の教育行政に対してこれはその非行が問題になるわけなんですが、あった場合にそれを首長の判断によって——たとい議会の同意を得るにしても、発議は首長がするわけです。そういうことまでする権限を与えられるのだから、軽率に現在の首長に対してそういう権限を与えることは私問題だと思うのです。それで大臣にお聞きすれば、大体それくらいの見解でもってお作りになられたというふうに思うのですが、もし最初お尋ねしました、あくまでも今後の教育行政も政治的な中立性を確保して、不当な支配に属させないようにする、これを真剣に文部大臣がお考えになるならば、少くともこの法律案をもし通すお考えがあるならば、新しくそういう意向でもって選択された市長が出た場合に、教育委員がその手によって任命されるくらいの考えをされたかどうかを私は聞いたのですが、そういうふうなお考えはなく、簡単に国会を通りさえすればいいというお考えだと承わってしまったわけなのです。まことに残念しごくです。そういうことでは、やはり何でもかんでも法律さえ通せばいい、簡単に教育行政ができればいい、原則であるところの三つの問題等はどっちでもいいというふうに私はとらざるを得ないわけなのです。
委員長にお願いいたします。これは法律を作る場合に今後の事例にもなることだと思うので、法制局からどなたかを呼んでいただいてこの点を解明していただきたいと思う。その取り計らいをお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/143
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144・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 その取り計らいをいたします。野原覺君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/144
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145・野原覺
○野原委員 ただいま小林委員から質問された点はきわめて重要な内容を持っておるように私も拝聴いたしたのであります。それは、大臣もお認めのように、現在の首長というものが、子供の教育を託するに足る人としては選んでいない。地方住民は現在の市町村長、府県知事をなるほど自治体の長としては選んだのですけれども、自分たちの子供の教育を託する人としては教育委員を選んできておるわけです。その点をマイナスして選んでおる。このことをあなたもお認めだろうと思いますが、この点は大事な点でございますから、大臣がこれを認めるか認めぬかということは私は明確にお聞きしておきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/145
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146・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 そのことは今小林委員にお答えした通りでございます。
なおつけ加えまするが、一体公共団体、自治体というものはわが国では明治二十三年に起ったものですけれども、これは大体としては地域団体として自然発生的の生きたオーガニズムと見なければならぬ。それで長は全体として名のごとく長で、その団体の執行機関である。向うではメイヤーと言うのです。それから議会は団体としての意思機関であります。それゆえに、あとから個々の法規の改正で権限が多少ふえたり減ったりいたしましても、その任期の間はその団体の議決機関、その団体の執行機関、代表機関として続いていいと思うのです。それゆえに、今まで警察と公平委員会と人事委員会の選任しかしておらなかったが、さらに法律が変って教育委員の選任もするということができるようになった、こういう法律は決して今日の世の中で、日本だけではなくどこの国の常識からいっても憲法に違反するところの立法だとは考えておりません。いずれ御所望によって法制局長官も呼ばれるそうでありますが、今同じような法律学を研究したものとしては同様のことになると私は思います。あなた方も心のうちではそうじゃないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/146
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147・野原覺
○野原委員 とんでもない。私はそう思っておるならあなたにこういう質問はしないのです。賢明なる坂田委員が大臣に何か示唆を与えておったようでありますからこれ以上は申し上げませんけれども、あなたもとんでもない発言をされたら、またとんでもない問題が起きるということを私は申し上げておきたい。しかしこの際はとやかくは申し上げません。
そこで、小林委員に申した通りだ、こう言うのですけれども、そこのところがはなはだ困るので、現在の首長は子供の教育を託するに足る人として選んだのであるのかないのか、それをはっきりおっしゃって下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/147
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148・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 町村によって時期は違いましょうが、今の町村長は、現在の自治法、また教育委員会法のあるときに選んだのでありまするから、選んだときの権限はこの二つの法律の権限であります。しかしながら、今回二つの法律とも改正が行われますので、改正法においては権限がふえるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/148
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149・野原覺
○野原委員 つまり、子供の教育を託するに足る人として選ぶのは、今日までは教育委員であったはずです。大臣も御承知の通り。だから今回この改正法案が出てきた。従って、現在の市町村長、都道府県知事は子供の教育をあずける人として選んだのじゃないと思います。これは間違いですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/149
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150・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 私の先刻のお答えによって御了解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/150
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151・野原覺
○野原委員 明確におっしゃっていただきたい。私どもはその可否いずれかを尋ねておる。このことに対して、あなたは、だれがどう言ったから、さっき私がこう言ったから、ただいまは御了解をしていただきたいということでございますが、一体今の市町村長及び知事は、教育をあずける人として選んだのかどうか、これは全国の教育委員あるいは全国の国民も明確なあなたの意思をお聞きしたい。どういう認識であなたがいらっしゃるかをお尋ねしたいのです。そのことについて、どちらかということを簡潔に言って下さったらけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/151
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152・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 現在の知事及び現在の町村長が選ばれました時分には、今の教育委員会法による権限と自治法による権限を持つものとして選ばれております。もう一つ言えば、われわれが今企てようとする教育委員選任の権限はない時代に選挙されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/152
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153・野原覺
○野原委員 教育委員会の権限を持つものとして選んだものは教育委員だ、教育委員会の権限を除いた自治法による権限として選んだものは自治体の長であります。その通りですね。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/153
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154・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 今度の規則でも、教育行政を自分がせいということじゃないのですよ。二十四条の権限はありますけれども、教育行政をするところの委員を選任するということがふえたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/154
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155・野原覺
○野原委員 一体大臣は私の質疑に対して明確な御答弁をしないのであります。私は、これは国政で、審議しなければならぬ責任がございますからここで質疑を繰り返しておるのでございまするが、あなたは常に言を左右にしていらっしゃる。こういうことになれば私どもとしてはこの法案を審議することができないことになります。今の市町村長は、教育委員会の権限に基くものは教育委員だから、それ以外の自治体の責任者として選んだと思う。それが一体間違いかどうかということを聞いておるのです。いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/155
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156・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 別の言葉を言って誤解を生じてはならないと思って、非常に正確に法律に即して言っておるのです。今の町村長も知事も、教育に関しては識見がないとはだれも思っておりませんけれども、選んだときの法律は地方自治法と今の教育委員会法であります。それだけの権限を持つものとして選ばれたということは私も認めておるのです。それ以上に、別に子供を教える力がないものとして選挙されたかという問いに対して、そうですと言うのも少し間違いです。やはり学校の建築なり何なりについては教育のことに関与さしております。正確に言えば、今の自治法とこの教育委員会法との総合による権限あるものとして選ばれておるのです。もう一つ明らかに言うならば、今問う人の意図を参酌して言えば、今度の委員を選定するという権限は新たにつけ加わると言っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/156
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157・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 委員長から大臣にちょっとお尋ねしますが、この問題はあなたらの党の並木芳雄君から、もしこの教育委員会法が通ったときに、町村長を解散して民意に問う考えがあるかという質問がありました。そこで、今の町村長あるいは県知事というものは、御承知のように教育委員会が現存しているときにやったので、教育委員の権限を与えられていないのです。そこのところを問い合せられておるので、あなたらの党の中でも問題が起きているのですから、その点を一つはっきり答弁していただきたいと思います。
〔「はっきりしているよ」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/157
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158・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 はっきりしていないから聞いているんだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/158
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159・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 先刻小林君からのお問いもそれでございました。私もそのことに意を用いて、今回の立法では、ひとりこの場合のみならず、また自治法の一部改正で、十六ヵ条の片方の権利を、五大都市においてはこっちへ持ってきた。すなわち、市長、町会議員の選挙が済んでから、これらの人に選挙後にある権限を与えたり、ある権限をとったりするのはどうだろうか。選挙のときのその法規と違うのだがという意味は、よくわかっておるのです。それに向って私は、あとから権限がふえることも減ることもよく考えたが、それは差しつかえがないものと思うということを、先刻来繰り返して申し上げておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/159
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160・野原覺
○野原委員 繰り返しあなたはおっしゃっておりますが、なお与党の諸君の一、二名の方は、頭がよくて非常にわかっていらっしゃるようですが、私どもは理解できない。今の都道府県知事、市町村長は、教育委員会の権限を持つ者としては選ばれていないのです。これは間違いですか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/160
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161・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 それは間違っております。問題は、教育委員会じゃなくして教育委員会の委員の選任です。その選任の力はなかったのです。今度つけるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/161
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162・野原覺
○野原委員 そうすると、現行の教育委員会の権限と言えば、これは現行の教育委員会法に明記されておる。この権限行使が、今の知事、市町村長はできるのですか。これをお聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/162
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163・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 この法律が通過するまではできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/163
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164・野原覺
○野原委員 つまり、できないというところから見てもわかるように、教育委員会の権限は明らかに持っていないのです。これは間違いじゃないですね。私はすわりませんから簡単に言って下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/164
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165・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 この法律が通りましても、教育委員会のする権限は持つように至らないのです。今もありません。ただ法律が通りましたら、その委員を選定する権限は持つようになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/165
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166・野原覺
○野原委員 つまり教育委員会の権限を持っていないということは、子供の教育を託する人としては選んでいないということだ。つまり教育委員会の権限は、子供の教育を託するために法は権限を与えてきたのです。つまり地方住民にとっては、自分たちの子供の教育は教育委員さんにやってもらうといって選挙したのです。子供の教育を除いたことを自治体の長にやってもらうといって今日まで何年か選挙をやってきたのです。そういうように、その権限のない者で、子供の教育を託するに足る人として選んだのじゃない。そういう権限のない者を、今度は改選もしないで、直ちに子供の教育を託するに足る人を任命する権限を与えるということは、明らかに問題がございますね。これは問題がないというあなたの御説明がとても私はわからない。問題があるでしょう、権限を持たないのだもの。あなたは、国会がこの法律を通したら、国会が認めたのだから、法律は非常に強力なものであり、法律というものは国民の意思だからという形式的な議会主義、形式的なものの考え方で言っている。しかし本来権限がないのです。本来権限がないものを国会がいかに認めようと、これはやはり住民の意思に合っていないということが言えると思う。もう一度これはいずれ法制局その他の参考人諸君を私どもは招致したいと思う。単に法制局の担当者だけではございません。この問題は、実はこの法律を通過させるかいなかにとっての最も重要な問題でございますから、私どもはこれらの法的な見解を明快にする意味からも、参考人の招致を委員長に要求いたします。従って参考人が決定した上で明らかになろうかと思いますが、今一度私は大臣の御見解が聞きたい。参考人が来た上で、なおあなたにただすべき場合の参考として承わっておきたいのです。できるのか、できないのか、もう一度伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/166
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167・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 だいぶ長い御質問でありましたが、私、要点をよく聞きますると、現在の長は教育委員会のするような仕事を託されておらぬかということでありましたが、それはおりません。それから現在の長、これは教育委員を選定するという権限もない時分に選挙されておったことは、あなたが御説明するまでもなく事実でございます。しかしながら、今わが国の憲法のもとにおいて合法的にこの法律が通過いたしましたら、選挙当日の彼の権限がいかがであっても、新たなる権限をつけるということは、ちっとも差しつかえがない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/167
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168・野原覺
○野原委員 具体的に参考人についてはあとで申し上げたいと思いますが、参考人の要求を委員長において取り計らわれんことを要望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/168
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169・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 ただいま野原委員の要求のありました件につきましては、追って理事会に諮り決定することにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/169
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170・野原覺
○野原委員 そこで第四条は、実はこの法律の公選か任命かという任命を規定した条文であって、今日までいろいろな角度から論議されたわけでございますが、なおどうもはっきりしない。大臣が今日まで答弁されたことが矛盾撞着もはなはだしいのであります。そこでもう一度お伺いしたいことは、これは大臣もゆっくりお聞き願いたいのですが、五名の場合は党員は二名だけだという。そこで党友的な者が三名選ばれても、これはやむを得ないことに法律はなっております。議会によってはある特定の政党だけで占めているところもあるのです。また全国にはあり得るのです。そうなりますと、党員が二名、その党員に近い者、シンパ、同調者、そういう者が残り全部だ、こういうことがあっても、これはやむを得ないのじゃないかと思います。この法律はそれを拒否する保障を何にもしていないのです。これは大臣もお認めだろうと思うが、いかがですか、それからお聞きしましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/170
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171・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 それ以上のことは合議体の自由裁量にまかす、すなわち多数にまかすという民主主義に依頼するわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/171
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172・野原覺
○野原委員 やむを得ないということであります。私どもはそういう点から見ても、今回のこのような首長による任命の行き方というものは、教育の政治的中立という点から考えて、教育委員会が党派的な委員会になるおそれがあるのではないかと思う。これは否定ができないと思うのです。党派的な委員会になってもやむを得ないという意味で、大臣はただいま申されたのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/172
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173・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 無条件で五名を直接選挙する場合よりは、中立を保つのによき方法だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/173
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174・野原覺
○野原委員 やむを得ないということは、委員会が党派的であっても仕方がないということなんですか。正式の党員は二名です。残りはかつて党員であった者、あるいはその党に対する同調者——その議会が全部特定の政党である関係もあり、もちろん自治体の首長が特定の政党に属する者である場合、その党派的な者で全部固めることもこの法律は拒否していない。そういう点から考えても、あなたが実は任命制にしたのは、あるいは三名以上はその党員でないということにしたのは、党派的な委員会にするためだということは全くここでその正体を暴露してしまっておる。党派的な委員会になるおそれが明らかに出てくるじゃございませんか。こういう任命制でいって教育の政治的中立はどうなるのですか、お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/174
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175・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 こうやらずに無条件の直接選挙によりますと、五名全部が一党独占ということも起るのです。この方法によれば二名しか同党派は現われてきません。あなたはそれに同調する者があるなどとおっしゃるけれども、党派に属して悪いというのは、党のうしろからの制限を受けることが一番危険なんです。それは二名以上はありません。この方が安全でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/175
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176・野原覺
○野原委員 全くとんでもない見解を繰り返されます。そこでもう一つお尋ねしたいことは、今日の地方議会というものは、あなたも御承知のように住民の意思で決定されることは申すまでもないのであります。従って地方議会が住民の意思で決定されたから、その議会が承認するところの任命制というものは、これまた住民の意思によるところの任命だ、これも私は理屈としては間違いでないと思います。しかし理屈としては間違いでなくても、今日のわが国の地方自治体の実情、わが国の議会勢力、しかも都道府県知事なり市町村長という首長のものの考え方、お互い党人としてのものの考え方というものは、えてして情実人選になりやすい傾向があろうと私は思う。しかも特定の党派の知事と議会ということになれば、その弊たるやまことにおそるべきものがある。そういう場合に、そういった片寄った議会勢力なりあるいは片寄った情実人選が行われないという制度的な保障がこれではどこにもないじゃないですか。あなたは二名ということで保障しておる、同調者があってもそれは仕方がないのだ、そういうことを言ったらきりがないのだ、こういうお考えなんです。わざと党籍につかないで正式の党員以上の活動をしておる者が、党員の中には今日あるのです。これが今日の実情なんです。そういう点から見ても問題があるのじゃないかということを私どもは再三指摘をいたしておるのであります。その場合に地方住民の意思によって直接に決定されるならば、地方住民の一人々々の親たちが、自分の子供を預けるに足る人はどの人かということでやるのでしょう。今日は選挙に弊害があって組合色の濃厚な委員がたくさん出るからということでございますが、これは過渡的にそういうことも二、三あったかもわかりません。しかしこれは長い日本の民主主義の訓練の中で是正されるのです。角をためて牛を殺すといいますけれども、あなた方の教育に対する考え方というものは、全くとんでもない方向をたどっておるということを私は指摘しなければならぬと思う。その点に対するあなたの御所見をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/176
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177・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 たびたび申し上げます通り、ものには長所も短所もあるのであります。しかしながら野放しに直接公選にいたしますと、一党に独占されることもあります。また選挙された者が政治団体の役員となり、その他積極的に政治運動をする委員が半数または全体ということもあるのであります。今まで私は引用しませんでしたが野原さんこれを一つごらん下さい。第十一条の第五項です。こういう安全方法も考えておるのです。すなわち「委員は、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。」こんな規則というものは直接公選の委員にはつけることはできません。これが選任なればこそそういう制限もつけられるのであります。でありますから、この方法によって委員会を構成いたしますと、やはり中立性の落ちついた委員会ができようと私は思っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/177
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178・野原覺
○野原委員 あなたは第十一条の第五項を指摘されて、あなたの真意をくめという要望のようでございますけれども、第十一条の第五項に対しても私どもは別の角度から問題があるのです。これはいずれ第十一条審議の際に申し上げようかと思います。もう一度くどいようですけれども附則の第八条をおあけ願いたい。附則の第八条には教育委員会の委員の任期がうたってございます。「その定数が五人の場合にあっては、二人は四年、一人は三年、一人は二年、一人は一年とし、その定数が三人の場合にあっては、一人は四年、一人は三年、一人は二年とする。」こうある。ところがこの委員というものは特定の首長が特定の議会の承認を得て任命をしたものです。私がさっきも申し上げましたように、その特定の首長も特定の議会も地方住民からボイコットを食らった。とんでもないろくでもないことをするから、すっかり入れかえをさせられてしまった。そういう場合でもこの教育委員というものは変らない。これは選挙のあり方から見て、地方住民の意思がそこにないことが明快になるのですから、そういう場合には私は変らなければならぬと思う。ところがその場合でも附則第八条によって変えることができない。一体こういうことがあっていいのか、全く地方住民の意思を考えていない立法じゃないですか、その点は何と御説明になるか、変えなくてもいいのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/178
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179・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 その情勢ができるまでに合法的に成立した町村または県議会の同意を得て任命されたのは、その後に至ってあるいは知事なりあるいは町村長が不評判になったからといって、運命をともにしなければならぬものじゃございません。ただ教育委員それ自身が信望を失し、はなはだよくないという場合には、この法律案では教育委員のリコールの方法をきめております。少し回りくどい方法でありますが、ともかくもリコールができるのでありますから、住民の意思にまるきり離れた者が長くすわっておるということはできないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/179
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180・野原覺
○野原委員 つまり私は地方住民の意思がやはり重要であろうと思うのです。この点はあなたもお認めになってこられたのであります。私どもはそういう意味で直接公選と言ったのですけれども、あなたは任命の方がより地方住民の意思がはっきりすると言ったのです。地方住民の意思ということに重点を置くならば、私はその任命した首長が否定され、これに承認を与えた議会がボイコットされた、そういう場合が起ったときには、地方住民の意思はそういう議会なりそういう首長から任命され承認を与えられたその委員に対しても何らかの意思を表明しておると考えなければならぬと思う。その点が考えられていないじゃないかというのです。地方住民の意思による委員ではなくなっておるのです。これが附則の第八条では考えられていない。それでもあなたは一たんきまったんだから任期があるまではそれでいこうとおっしゃるのですが、そうなれば、地方住民の意思はじゅうりんされたことになります。つまりじゅうりんされても差しつかえない、これはもう仕方がないことだ、こういうお考えで、あなたはただいまおっしゃっておるのかどうか、承わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/180
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181・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 あなたの設例によっても、選任をしたときは、地方住民の信望があったのです。またそのときは議会も議会としてよかったのです。その瞬間をとらえてみれば、信任されたところの町村長、信任を持っておった議会で選んだのでありますから、すなわちその選定の結果は、永続して人民の意思を代表したものと見てもいいのです。その後後発的にたまたま村長が気違いになったり、あるいは町村会が悪いことをしたといって職をやめましても、選任されたときは健全なる住民の代表でありまするから、これを代表として尊重すべきであります。ただ疑義を生ずるのは、その選任された委員それ自身が今度はいけなくなった、それならばリコール、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/181
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182・野原覺
○野原委員 当然改めなければならぬと考えますが、あなたはそれも必要がない、こういう意見であります。改める必要がないというあなたの考え方は、明らかに地方住民の意思はどうあろうとも、一たんきまったものは仕方がないという考え方であって、このことは全く教育委員の何たるかも知らない、私に言わせれば、失礼ですけれども、これは誤まった見解であるということを申し上げたいのであります。
そこで私は第五条に入りたいと思います。第五条は「委員の任期は、四年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。」「委員は、再任されることができる。」何も問題がないような規定のようでありますが、これは私どもここでお尋ねしておかなければならぬ大事な点がある。それは、ただいま申し上げました附則の第八条であります。附則の第八条によれば、年を追うて一名ずつ任命がえすることになっております。参議院においても半数交代だ。今日までの教育委員会も半数交代なんだが、一体これはどういう理論に立って、どういう実益があるから逐年一名ずつの任命がえとしたのか、一体どういう理論的根拠に立って、どういう効果があるからこういうことにしたのか、承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/182
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183・緒方信一
○緒方政府委員 第五条の規定は、委員の任期は四年でございます。ただ最初に任命されます委員につきましては、先ほど御指摘のように、附則第八条によりまして一年ごとの交代の制度をとっておるのでございます。従いまして、これはあるいは蛇足かもしれませんけれども、最初一年の任期で任命されました委員は、一年で任期が切れます。その次に任命される委員は四年の任期として続くわけであります。こうやって繰り返していくわけであります。従ってこの制度をとりますと、任期が一緒に終るということがないわけであります。このことはどういう理由かというお話でございますが、一斉に委員が交代しないことによりまして、教育委員会の事務の運営が一貫性を保つ、安定性を保っていくことを期待しているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/183
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184・野原覺
○野原委員 私の質問に対する御答弁がなお十分でないように、私質問者としては思うのであります。私も原則として委員の任期が四年ということはわかっておる。それはわかっておるけれども、毎年一名ずつかえていく。ところがこれを半数交代にするというのが大体今日までの常識的な交代制なんです。そこで私はむしろ教えてもらいたい。この点は、一体どういう有利な点があって、こういう特殊な措置をとったのか、その長短を比較してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/184
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185・緒方信一
○緒方政府委員 これは特殊な方法ではないのでございまして、現在におきましても、公安委員会、人事委員会はこういう制度におきまして一年ごとの交代をいたしております。これはただいまお話のように、半数交代といたしましても、半数は一緒に交代してしまいます。一年ごとの交代でございますと、その一貫性というものはなおよく目的が達せられると思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/185
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186・野原覺
○野原委員 あなたは一名ずつかえれば一貫性が保てると言う。一貫性を保つということが重点なら、かえてはいかぬ。それじゃいかぬのですよ。それでは特定の者が永久に委員をするということになるでしょう。むしろ半数交代にする方が何としてもいいですよ。というのは、私は一年なり二年なりその年限は申し上げませんけれども、やはり半数くらいは新らたに入れかえた方がいろいろ問題が出てくると思う。任期は四年でも、それは罷免の規定もあります。心身の故障とか、これは非常に重要ですが、非行があるとか職務上の義務違反があるとか、大へんな条文になっておるので、この第七条は私どもは相当な時間をかけないと終ることはできぬくらいの重要な条文です。これでやるだろうが、一名ずつの任命がえというようなやり方は、これはなるほど一貫性という点では一貫性があるかもしれませんけれども、しかし地方住民の意思あるいは相当問題があるというふうな場合の救済策にはならぬかのように思います。しかしこれは大したことでもありませんから、技術的なことでもあろうかと思いまするから、第五条のこの任命が之については、私はこれで質問を終る。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/186
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187・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 高津正道君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/187
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188・高津正道
○高津委員 一ぺんにかえないし、半数ずつもかえない、毎年委員をかえるようになっておるということは、任命権者が任命される教育委員を引っぱっていくのに、非常に都合のいいようなからくりになっておる、よくやった委員は再任させるというような仕組みになっておるのであります。
そこで私はお尋ねいたしますが、宮原誠一氏を会長とする日本社会教育学会で、きのう地方教育委員会制度の改正案に対して検討をして、われわれに対しても要望書を出されたのでありますが、その要旨は、教育委員の任命制は、社会教育に政党からの影響を伴いやすく、ことに委員会に対する予算措置を通じて地方公共団体の首長の選挙対策的諸活動との関連を青年教育、婦人教育などに生ずるおそれが多分にある。この部分についてお尋ねをするのでありますが、私もまさにその通りの弊害があると思うのです。われわれが議員生活をし、選挙にも立候補してここに席を得ておるのでありますが、落選をした人が首長になって、そうして社会教育機関を今日でさえ相当に動かしている。青年団に対する補助金だとか、婦人会に対する補助金だとか、あるいはこれが社会教育と考えるような宣伝をずっとやって歩くのでありますが、教育委員会の仕事であるのに、首長はそういうことを今日でもするのであります。その首長——市長でもけっこうですよ、首長が教育委員会を動かしてそういうように運動をさせることになれば、社会教育は非常に政党の弊害を伴うということが言えると思います。任命した人間が政党人の場合が非常に多いのでありますから……。もう一つは、文部大臣が頂点に立って権限を持っておりますから、中央からの画一的な影響も受けやすい。この点について大臣のお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/188
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189・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 社会教育もまた教育委員会の関与するところであることはあなた御説明の通りでございます。ただ教育委員会は、直接選挙をした場合のように、一党派が今度は独占しないことになっております。たかだか二人しか同党派はないのです。その二人も、政党の団体役員などはこれはとりません。また積極的な政治活動はしないということは十一条五項、先刻指摘した通りでございます。それゆえに、今回の法案が皆さんの御同意を得て通過いたしますれば、社会教育等はなおさら中立性を維持するのに役立とうかと存じておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/189
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190・高津正道
○高津委員 二人しか制限を置いていないのでありますから、委員会が政党的な色彩で動かないように制限を設けてあると言われるけれども、同調者、その政党の共鳴者、そういうものは差しつかえないという大臣の答弁でありますから、二人だけは政党に入党しておる、あとの三人は同調者であるという場合は、まるで全部で占めるような任命ができるのである。やり方が悪ければ一名の人間は任期がきたらそれで罷免し、補充の場合再任しないで今度は別の人間を入れる。二年目も同じであります。それだから、もし自分のめがねにかなっていない場合があれば、五人とも全部同じようなものにすることもできる。法律から見れば、ただ二人だけが入党しておるのだ、へんぱにはならないと言われるが、任命権者である各市町村の首長はあなたの属せられる自由民主党が非常に多いのでありますから、社会教育もみんなそういう色になるおそれがあると思われるのでありますが、あらためて大臣より伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/190
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191・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 世の中のことと申しますものは、絶体的のことはできないのです。しかしながら、可能な範囲においては、全部直接選挙で一党が看板をかけた党員からなっておる場合と、今回のように二人だけしか党員はないといったような場合とでは、私はやはり今回の案の方が中立性を保ち得るものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/191
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192・野原覺
○野原委員 それでは第六条に入りたいと思います。第六条によりますと兼職禁止の条文が書かれておるわけであります。「委員は、地方公共団体の議会の議員若しくは長、地方公共団体に執行機関として置かれる委員会の委員若しくは委員又は地方公共団体の常勤の職員と兼ねることができない。」いわゆる完全なる兼職禁止の条文であります。どういうわけでこういう完全なる兼職禁止の条文にいたしたのか。つまり第六条の規定の精神はどこにあるのか、どういうわけでこういう条文にしたのかということであります。大臣にお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/192
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193・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 今申す通り、地方団体の議会の議員、これと離れて教育に関する行政委員会としての教育委員会を置いた以上は、地方議会の議員と兼職すればやはり完全なる独立ができませんです。それからまたその他の場合でも、兼職といいますと、やはり片一方の職業と同じからだの人間であるとすれば職務の影響を受けますから、あなたのおっしゃる通りこの委員会の独立性を維持するためにかような規定と相なったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/193
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194・野原覺
○野原委員 兼職すれば完全なる独立ができない。教育委員の性格からいっても完全な独立ということが大事であることは申し上げるまでもございませんから、ただいまの御答弁に関しては私は了解いたします。さて、そこで、この六条でせっかく書かれた兼職禁止の精神がこの法律案では阻却されておるのであります。大臣御承知だろうと思います。どういうわけで一体そういう阻却をしたかお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/194
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195・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 兼職を避けるのは独立性を保つためでありますが、あなたの阻却というのは何をおっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/195
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196・野原覺
○野原委員 どうもぴんと来ないようですから申し上げます。第十六条です。教育委員は完全なる独立をしなければならないと第六条で規定しながら、市町村教育委員会の場合には、第三項で教育委員が教育長を兼ねることができる。「市町村又は第二条の市町村の組合に置かれる教育委員会は、第六条の規定にかかわらず、当該市町村委員会の委員のうちから」云々と書いてある。私はこのことを言っている。教育長というものは当然常勤でなければ務まるべき筋合いのものではないのです。ところが第六条を見てみますと、「地方公共団体の常勤の職員と兼ねることができない。」と言っておりながら、このことを阻却しておるじゃないですか。第十六条の三項では、地方公共団体の常勤の職員だ、教育長は。そうなれば、この点に関する限りあなたの兼職禁止の完全なる独立の精神は失われると思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/196
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197・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 それは教育長は教育委員会の仕事をする役でございますから、お隣の議員さんと兼ねる場合と非常に違いまするから、旧法では町村に至るまで教育長は別のものを教育委員会が頼んできておったのでありまするけれども、今度はその委員会の委員のうちで兼ねるということで、兼ねるという文字には抵触のような心持ちもしますけれども、中でなるのですからこれはよかろう。お隣と兼職じゃないので、隣の息子と兼職じゃなくして、うちの息子を使おうというのですからこれはよかろう、こういう考えなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/197
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198・野原覺
○野原委員 大臣にお尋ねしますが、教育長というものは、これは教育長の職責の上から考えて、私は当然専門職でなければ勤まるものではないと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/198
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199・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 それで市町村の場合において、教育委員会の委員のうちの一人が教育長になりますと、その人は教育長の資格におきましては、法案第十七条のように「教育委員会の指揮監督の下に、教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどる。」ということになって、これは常勤するのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/199
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200・野原覺
○野原委員 一人の自然人が二つの人格を有することになる。一体選ばれた市町村の教育委員というものは、これは教育長として選んでいるのじゃないでしょう。その市町村の首長にしても議会にしてもそうでしょう。三人選ぶときには、教育委員として選んだんだ。ところがその教育委員として選んだ者の中から、専門職の教育長を置く。こういうことになれば、一体教育長の任にたえることのできない者ばかりということになるかと思う。そういう事態も起り得るのじゃないですか。教育委員としては人格高潔で適任だ。しかしながら専門職の教育長としては適任であるかどうかということは、議会にしてもその首長にしても、そういうことは考えて選んでいないはずであります。そこで三名が選ばれてから、その中の一人が専門職の教育長になるわけですが、もしなり得ない場合はどうするのです。だれも適任がなかったら、それはどういうことになるのですか。必ずだれかに押しつけなければならぬのかどうか、お聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/200
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201・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 この法律が通りまして、この法律のもとに町村長が町村議会の同意を得て五人の委員を選ぶ時分には、五人のうちにやはりだれかが教育長に選ばれるということは予想して初めから五人選んでおります。それゆえに予想しないものということには当らないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/201
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202・野原覺
○野原委員 私も大臣がお答えになったように考えるのであります。つまり任命する場合は、任命する委員の中から教育長というものを想定して、そうして三名を議会にしても首長にしても考えていくという大臣の御答弁は、その答弁の限りにおいてはこれは間違いじゃないと思います。しかしながらもう一つ突っ込んで考えてみると、市町村の教育長というものは、都道府県の教育委員会が承認するのです。それだから固定的に教育長というものを決定してしまって、一体何を都道府県の教育委員会に承認しろというのですか。私は都道府県の教育委員会が承認するということは、こういう条文は無意味になると思う。もうちゃんと教育長という動かすことのできないものを、想定しておるのだ。そしてそれを承認しろと都道府県の教育委員会に押しつけて、あなたに言わせると、国、都道府県、市町村、これは三位一体となって教育を進めなければならぬからと、こう言う。その三位一体になりますかんじんかなめの都道府県の教育委員会が何を一体どうするというのですか。きまっておるじゃないか。こういうようなむだな条文というものはやめてしまったらどうか。私はむだだと思いますが、あなたはそれでもむだじゃないとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/202
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203・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 すべて承認の場合はみなそうなるのです。持ってきた時分に一々苦情をつけるというふうなことはよくないことで、大体市町村でおきめになったことはよかろうと承認をいたします。しかしながら十年に一ぺんぐらいはこれはどうもというようなことがあり得るので、いわゆる権力分割で政治をする場合には、これはいつでもあることです。国会でも始終あることなんです。政府がある委員会の委員を任命しようというので、国会ではたいてい無条件に承認いたしております。けれども、あの承認ということがあるために、政府が人を選ぶのにやはり注意をして選びまするので、承認をして苦情をつけないといったような行政慣行ができましても、やはり承認制度というのはあることそれ自身ではや相当の役をなすのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/203
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204・野原覺
○野原委員 私は十年に一回にしろ、あなたのような考え方の人ばかりが都道府県の教育委員にはなりませんから、たくさんの市町村を包括しておる都道府県の教育委員会が、相当私は市町村の教育長の任命、承認については問題が起ってくると思うのであります。そこでどうしても承認できない、こうきた場合には、もう一ぺんまた議会に差し戻されて、そうして首長は任命がえをすることになるのですか、これはどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/204
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205・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 承認を得なかったら、やはり選定のしがえはしなければならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/205
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206・野原覺
○野原委員 選定は委員として選定するのでしょう。委員として選定されたものを、またし直すということは、一体どういうことだ。三名を委員として議会は承認をし、市町村長は任命している。それをまたし直さなければならぬという理由がないじゃないですか。どうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/206
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207・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 委員じゃございません。ここでお互いに言っておるのは教育長なんです。教育長は町村の場合にあっては、府県の教育委員会の承認を得て任命する。そこで承認を求めてきた、多くの場合には承認するでございましょうが、たまたま何かの理由で承認拒絶ということになりますると、やはりもう一ぺん任命をして、さらに承認を求める、こうなるのが当りまえであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/207
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208・野原覺
○野原委員 市町村長は教育長を任命する。それから市町村議会は教育長の任命に対して承認を与える。教育長について任命とか承認ということがどこの条文にあるのですか、お聞きをしたい。どこにあるのです。教育委員を任命し、教育委員についてその議会が承認するということは書いておるが、教育長について任命し、教育長をその議会が承認するとどこにあるのですか、教えてもらいたい。何条ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/208
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209・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 第十六条の第三項をごらん願いたい。私が読んでみましょう。「市町村又は第二条の市町村の組合におかれる教育委員会は、第六条の規定にかかわらず、当該市町村委員会の委員のうちから、都道府県委員会の承認を得て、教育長を任命する。」この規則をいっておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/209
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210・野原覺
○野原委員 この第三項は、当該市町村委員会の委員の中から、第六条の規定にかかわらず教育長を任命するということなんです。その市町村議会なり市町村長というものは、本来教育長を任命し承認するということはどこにもない。委員としては三名の委員を任命し承認するのですけれども、その任命承認された者の中から教育長を任命するのであって、この条文では、教育長というものは本来首長なり議会というものは問題にしないのじゃないですか。事実上はそういう想定をすることになるかもしれませんよ。しかし一体どこにあるかと言うのです。今あなたがお示しになった第三項は、私はそのようになっていないと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/210
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211・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 興奮しておっしゃるが、これは非常に簡単な条文で、サブジェクトは教育委員会で「教育委員会は、第六条の規定にかかわらず、当該市町村委員会の委員のうちから、都道府県委員会の承認を得て、教育長を任命する。」このサブジェクトは教育委員会であります。ここにある通りその文章の主格は教育委員会で、教育委員会は第六条の規定にかかわらず市町村委員会の委員のうちからこれこれの承認を得て教育長を任命する、ちっとも疑義がない文章であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/211
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212・野原覺
○野原委員 教育委員会は三名の委員の中から教育長を任命するのです。そこで地方議会が任命するのじゃないのです。承認するのじゃない。地方議会が承認し、その首長が任命するのじゃないのです。そこを私は尋ねておるのです。それは市町村教育委員会の互選によって教育長を任命するのであって、ところが地方議会というものは教育委員として承認したんですよ。それから市町村長が教育委員として任命したのです。ところがその三名に互選させたところが教育長の適任者がだれもいない。そこでやむを得ないから三名が、おいお前やれ、ことしは君がやりなさい——教育の専門職になるのは三名ともきわめて不適当な人間です。これは専門職ですから、やはり専門的なことがわからなければいかぬのです。教育という専門がわからなければいかぬのです。そこでだれかがなった。都道府県の教育委員会に持っていかなければならぬ、都道府県の教育委員会はどう考えてもこの人が教育長になるのは、従来現行法の助役が教育長をやるのと一緒ではないか、こんなことは困ると言って、都道府県の教育委員会から承認を得ることができない。その場合に市町村長は一体どうしたらいいのか、その場合どういうことになるのか。常識で言っては困る。私どもは法律を問題としておるのだから、法律ではそういう場合は一体どこで救済をすることになっておるかということを聞いておるのです。はっきり条文を示してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/212
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213・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 三名または五名の委員会は、本来この法律が通ればその中で教育長が定められるという性質で町村会から選定されておりますから、これらの者がお互いに寄って教育長をきめるということは越権でもなんでもないのであります。ただあなたの御説明の後段の、五名のうち相譲って、伯夷、叔斉のように、私はもうそれはごめんこうむりますと言ってみんな謙譲の美徳でならぬという時分にどうなるか、そういうことがありましたら、またその時と場合で任命しかえるとかなんとか行政的の措置があろうと思います。しかしながら本来五名のうちでだれかが教育長になるということを運命づけられた五名でありますから、やはりそのうち一人は当選するに相違ないのです。当選する人が辞退する場合にどうするということはすべての場合同じことです。ここの文教委員会でも委員長を選挙したらみな辞退してしまったという場合と同じことです。ですからそういう希有な場合をここでかれこれ言うに及ばぬと思います。その時に応じて解決の方法はあろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/213
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214・野原覺
○野原委員 解決の方法はないのです。どこの条文でどう解決するかということを聞くのに対して、あなたは常識的な答弁をしておる。そういう場合には困るのだからそれは常識的に措置したらいいじゃないかというのが、あなたのただいまの御答弁を要約したことになろうかと思う。これはどう考えても困るじゃないですか。この問題は後日問題にしましょう。早急にこれは一ぺん考え直して修正提案でも何でもやらなくちゃ大へんなことになる。ねえ、大臣、これはミスですよ。
それからもう一点私お聞きしておきたいのは、従来文部省は教育長というものは専門職でなければならぬ。教育委員はむしろ専門家というよりもしろうとといいますか、そういう教育の専門家でない方が望ましい、こういう見解を教育委員会の発足以来とってこられたように私は思います。これは間違いでなかろうと思う。ところがそのしろうとが望ましいという教育委員の中から専門職の教育長を持っていくということは、これは従来の見解を更改したもの、このように私は思うのです。そこで私はお尋ねをしますが、これは従来の考え方を変えたのか。教育委員はむしろレーマンが望ましいという従来の見解を変えたのかどうか。従来の見解というものは一体どこに飛んでしまったのか。それをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/214
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215・緒方信一
○緒方政府委員 ただいまの問題は昨日大臣の御答弁の中にもございましたけれども、先ほど問題になりました第四条でございますが、本法案におきましては、教育委員といたしまして長が任命いたします場合には、人格が高潔で、教育、学術、文化に関し識見を有する人を選ぶようになっております。従来は選挙でございますからこういう資格条件はございません。しかし今度は任命でございますので、こういう教育に関して識見を有する人を長が任命する、かような規定にいたしておるわけでございます。そこでこれは教育事務を具体的に執行に当るものでございますので、教育に関して識見を有するということを条件にいたしますことは当然だと存じます。しかしこれは全部が全部教育の専門家をここに集めようとする趣旨ではないのでございます。それは識見があればいわゆる教育事務につきましてはしろうとでもいい、しかし識見を持たなければならぬ、こういう趣旨でございます。しかしながら、それかと申しましてこの中に教育の専門家を排除している趣旨ではございません。その中に教育の専門家が入っても一向差しつかえない。かような組織にいたしておるわけであります。これは公選制を任命制に変えた、そこからきたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/215
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216・野原覺
○野原委員 今答弁を聞いてもはっきりするように、あなた方は時に応じ変に臨んで実に都合のよい主張をなさる。実は教育委員に立候補する者は現職の教員あるいはかって教員であったものがたくさんおった。ところがそれは困るというので、むしろレーマンがいいのだという指導を国民にやった。ところが今日になると、またこういう法律を作った手前もあるものだから、実は専門職はいいのだと言う。私どもは教育委員というものはやはり専門家があっていい、教育委員は専門家でなければいけないのだということを従来主張してきたのですよ。そういう点であなた方こそ御都合のいい変改をなさっていらっしゃる。そこで大臣にお尋ねします。教育委員というものは教育長を監督する権限を持っている。これは当然です。教育委員会というものを置いておるのだから、教育長のやったことを監督し、教育長は委員会の命に服さなければならぬはずで、これは規定の上からでも当然です。教育長にもし間違いがあったらその責任を追及するのが教育委員なんです。ところがその責任を追及し監督する委員会の命に服さなければならぬというその教育長が教育委員を兼ねるということは、これは一体どういうものかと私は言いたい。どこから考えても問題だらけです。監督される教育長が実は監督する委員であるとは一体いかなることです。しかもその教育長は教育委員長を兼ねることもできる。教育委員長という代表権、大きな権限を持った者が、それで教育の実務を執行するということでございますから、こういう考え方は、どう考えても独任制の機関構成であります。これは大臣が今日まで私どもに教育委員会という合議体を残した趣旨がここにおいて全く死んでしまうのです。このことをあなたは今にして残念とお考えにならぬか、このことに対してああ検討が足りなかった、なるほど野原の言う通りだとお考えにならぬかどうか、あなたの率直な御反省が聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/216
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217・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 お言葉を論じるようで恐縮でありますが、教育委員は教育長を監督するという規則はないのです。教育委員会は教育長を監督する。その通りです。今内閣制度を持ってくれば、われわれ閣僚は皆様の監督に服しているんです。しかし同時に私も本会議で皆さんと一緒に投票しておるのです。この議院内閣制度、イギリス流の政治というものはそう潔癖に言うてしまうものではないのです。入っては、教育委員会の委員の一人として教育長も一緒に相談にあずかり、その決定を今度は合議体たる教育委員会の監督のもとにやる、こういうことはいいことです。不即不離のいい行政組織であると私は考えておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/217
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218・野原覺
○野原委員 詭弁は一つ休み休みに言って下さい。教育委員会が監督するということぐらいはっきりしている。これはその通りだ。しかしその教育委員会を構成するのは教育委員です。その構成する教育委員が教育長を兼ね、そうして教育委員長も兼ねる。委員長というのは会議の招集権を持っておる。だから他の平委員が問題が起って会議を開いてくれと要求しても、いかぬ、こうはね飛ばされたら手の下しようがないのです。会議を招集するのは教育委員長なんだ。それが教育長だ。教育長の責任を追及しなければならぬという事態が起れば、特に教育長に注意しなければならぬという事態が起って、教育委員の一人が教育委員会を開かなければならぬ——あなたが言うように、委員会が意思決定の機関だから、執行機関は委員会という構成機関でございまするから、委員会を開かなければいかぬと平委員が文句言ったって、これは委員会の意思にならぬわけです。ところがその教育長は委員長を兼ねておる。これは開かぬです。これをもってしてもあなたは独任制と実質的には同じであるとお認めにならぬかと言っておる。開かぬのだからね。教育長の責任を追及のしようがないじゃないですか。どうして責任を追及するのか、この場合どうして教育長の間違いを委員会はただすのか、その法的根拠を教えてもらいたい。そういう場合は一体どういうふうにしてやるのか示してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/218
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219・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 教育委員長が委員会を開かないといったような場合は、それは困ったことでありますけれども、ほんとうの行政の運用じゃございません。国会の委員会でも委員長さんが雲隠れして委員会を開けぬようなことになって、それで困った例がここでもございます。それと同じことで、委員長がおらぬようになった場合にどうするかといって机をたたかれても、それは円満なる議事の運営をするゆえんじゃないから、そういうことがないようにいたしたいと答えるのほかはありません。委員会を開きますれば五人ですから、五人の合議体で意思決定をして、その合議体の監督のもとにそのうちの一人が仕事をする。株式会社でも支配人に命じてやらす事務もございまするし、重役の一人が常務取締役となって、一方では重役会に列し、一方においては支配人の仕事をするということもあるのです。そうあなたのように潔癖に言うてしまって、極端なことばかりおっしゃったら、これはにっちもさっちも動かぬ場合が起ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/219
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220・野原覺
○野原委員 そういう場合に、私が今申し上げたような場合に、一体その欠陥を是正する措置が、法文のどこにあるかということをお聞きしておるのであります。私は潔癖の立場から単純にあなたにどうこう言うのではない。私どもはやはり法律を審議する場合には完璧なものを作っておきたい。水の漏れないものを作っておきたいのです。あなたも法律家ですから御承知でしょう。法律というものはそういうものだ。常識ではとやかく言いましても、やはり問題点があればこれを技術的に是正しなければならぬじゃないですか。そういう場合に、一体どの条文で救済するのか教えてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/220
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221・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 教えてもらいたいなどと言われても、はなはだ困るのでございますけれども、教育委員会の運営には、法律は十五条を見て下さい。教育委員会規則というものを作るのです。その規則の中に、今までの会議体の経験によって、こういう場合にはこうするという適当な規定の方法もございます。それからどうしてもにっちもさっちも動かぬという時分には、皆さんは攻撃なさるけれども、指導、助言の方法もあるのでございます。そうして円満に運営するというのが、この法律の名のごとく地方教育行政の組織並びに運営の法律というのはそれなんです。運営というときには、多少手心がないとできやしません。しかしながら十五条の規則、熱誠なる運営または県の教育委員会からの助言等によって日本の教育がうまく運営されることを希望いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/221
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222・野原覺
○野原委員 教育委員会の規則では、この法律に違反した規則を作ることができるのですか。教育委員会規則は、十五条のこの規則は、この法律の条章に違反した規則を作ってもよろしいものですかお聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/222
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223・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 これはこの法律その他一般の法律に違反はできません。違反はできませんけれども、その限度内において各種の規則はできます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/223
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224・野原覺
○野原委員 会議の招集は委員長がやると法律の規定にあるじゃありませんか。会議の招集権は委員長にあるというのがこの地方教育行政の組織運営の基本なんです。会議の招集は委員長がやるというそれに違反した規則を作ることはできぬでしょう。だから委員長以外は招集できぬのですよ。委員長以外で招集できるというような規則は作ることはできぬのではないですか。それでは一体教育委員会は、教育長の責任追及はどうしてやるのですか。それを教えてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/224
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225・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 申し上げます。十二条には第四項に、委員長に事故あるとき、または委員長が欠けたるときは、あらかじめ教育委員会の指定する委員が職務を行う、こういう規則もあります。これらを対照されまして多くの会議体の議事規則のようにすれば不可能のことはなかろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/225
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226・野原覺
○野原委員 第十三条は「教育委員会の会議は、委員長が招集する。」こういうことでございまして、私はこの第十三条第一項の規定に違反する規則はできないと思う。私は教育長を兼任しておる委員長は、委員長に事故ありたるものとは思わない。それならばこれは委員長をやめなさい。そうして委員長は教育長と兼任はできないという規定を置きなさい。それをしていないのです。だから委員長が教育長を兼任するということ自体が、大へんな問題になるということを私は申し上げておるのですが、それでもまだ大臣はがんばって——なるほどそう言われればもっともだからこれは考えてみよう、あなたはどう言ってもそういう気は起きないのですかね。それはあまりがんばられない方がよろしい。これは人間間違いもあるのですから、考え直さなければならぬ機会もやはりあるわけでございますから、私はとやかく言わない。この点はまずいなということをお考えになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/226
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227・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 これは決してまずくない、いい法律だと思っております。わが国でも各国でも各種の議事規則の先例もあることであります。委員長が事故ある時分には、委員長代理も置けるのです。それからまた、多くの議事規則をごらん下さいますと、委員長が招集するということであって、事故もないのに委員長ががんばって招集せぬといった場合には、委員何名以上の要求があれば招集せい、それでも招集せぬ時分にはだれがやるといったような議事規則もたくさん例のあることでございます。第十五条による議事規則には、おのずからそういう規定を考えて作ることでございますから、あなたが議案をたたいて御心配下さるようなことは、これはもう起らないことであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/227
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228・野原覺
○野原委員 大臣、議案をたたくと言いますけれども、私どうも歯がゆいのです、あなたの御答弁が。ほんとうにくつの上からかくような感じがしてならぬのです。核心に触れて下さらないから、私は出しただけである。そこでお尋ねします。この条文には副委員長の規定はないでしょう。これは委員長だけでございますね。教育副委員長というものは置いていますか、お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/228
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229・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 副委員長の規定はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/229
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230・野原覺
○野原委員 そうしたら、委員長が教育長を兼ねた場合には、委員長代理を置かなければならぬということになるわけですか。そうしてその委員長代理が会議の招集権をどこかでやることになるのですか。そうならば私は了解します。それはどういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/230
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231・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 その場合は十二条の第四項でまかなえることと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/231
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232・野原覺
○野原委員 十二条の第四項は「委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときは、あらかじめ教育委員会の指定する委員がその職務を行う。」委員長が教育長を兼ねて事故あるのでしょうか。委員長です、依然として。それから委員長が欠けたときといいますけれども、欠けちゃいない。教育長を兼ねた委員長は現存しておる。第十二条の四項でできますか。できる解釈して下さい。しかも「教育委員会の指定する委員がその職務を行う。」これはあなたに言わせると、会議の議事規則その他だと言うけれども、議事規則はこの法文の条章に違反したことをきめることはできない。私はきょうトップに質問したでしょう。第一条に、「地方教育行政の組織及び運営の基本」とあって、この法律に抵触する規則は、私はできないと思う。そうならば、これは救済のしょうがないじゃないですか。それを一体どこでどう救済するのかを的確に示してもらいたい。十二条の四項では明らかにだめです。これがだめでないならば、だめでない解釈を示してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/232
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233・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 すでに先刻一両回申し上げたと思います。これができれば、議事規則がおのずからできるのです。そこで委員長が欠けたるとき、あるいは委員長が事故あるときは、委員会の指定する者が職務を行う、これを補充して、さらに欠けもせず、また事故もないのに招集しない場合については、何名以上の請求があれば代理者は委員会を招集するという補充規則は作り得るのであります。それは決して本法に触れません。また世界の議事法にはたくさんあることでございますから、それでいけるということを先刻も申し上げました。その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/233
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234・野原覺
○野原委員 その場合には半数以上の請求が要るわけですね。どうなんです。会議の招集を委員長がしない場合に、委員長に招集させようと思えば半数以上の委員の請求が必要なんですか。お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/234
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235・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 それが会議規則の定むるところによるのです。その会議規則は、全体が五人ですから、二人でいいということもありましょうし、三人が要るということも書けましようし、そこらは世界の議事規則の通例でありまするから、それを参酌して、よろしきに従って第十五条の規則により議事規則というものが作られると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/235
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236・野原覺
○野原委員 三人が必要だということになると、絶対不可能なんですから、これはもう問題外にしましょう。そこで二人としましょう。ところが三名の委員会の場合に、教育委員長が教育長を兼ねていないとすると、一人の委員は教育長、一人の委員は教育委員長、二人ですね。そうして委員長と教育長はやはり同じ責任を痛感しなければならぬ立場にあって、今残っておる平の委員が非常に憤激しておる。これは一人で会議を招集する権利があるというならば、第十三条の委員長が招集するということは無意味になってくる。大ていの場合こういう議事規則の手続は過半数ということになるでしょう。しかも教育長を兼ねるほどの委員長は、事実上実権を握って独裁的な権能をふるうことは間違いないのであります。私は、そういう点から、どう考えても教育長が委員長を兼ねるというこの問題は、あなたが今日まで述べてこられました教育委員会の合議制、教育委員会の安定感を得るために、独任制ではいけない、合議制でなければいけないという点から考えて、これは大きなミスではないか、このように思うのであります。
そこで今度は教育長が自治体の長あるいは地方議会の政治的圧力に屈したらどういうことになるのか。教育長を兼ねた教育委員長、そういう要職につく者は特に承認を与える地方議会とは密接な関係の人なんです。それから首長とも密接な関係の人なんです。これがそういうようなものの政治的圧力に屈したら、教育の政治的中立性は保てませんね。ここでもそういうおそれが出てきますね。だから教育の政治的中立と観念的におっしゃっても、実際運営してみると、今回のこの地方教育行政の組織及び運営に関する法律案によれば、保てぬということになる。それでも保てると言うならば、その保てるという説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/236
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237・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 教育委員には、この法律の趣旨をよく体得した人格高潔なかつまた識見の高い人がなるのでありまして、ほかの圧迫に屈するといったようなことを初めから予想すべきではございません。しかしながら、時あってそういうことがあり、信望に欠けた時分には、村民からのリコールも受けましょうし、また上級委員会からの援助、勧告もありましょうから、要は行政の運営でございます。どういう手段によりましても結局はこういうことになるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/237
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238・野原覺
○野原委員 何かに固執されたような御答弁ではなはだどうも質問が展開しないことを残念に思うのであります。私どもはこの逐条審議を一日も早く終りたいと考えております。特にこれは大臣も御承知のように私どもは相当馬力をあげて審議しておるのです。それに対してあなたの御答弁が非常に固執をされておりまするので、私も執拗に特定の点を十分究明しなければ質疑ができたことになりませんから、これはただしておきたいと思うのであります。従って第六条の教育委員が地方公共団体の常勤の職員と兼ねることができない、地方公共団体の常勤の職員は教育長です。私は教育長というものは常勤の職員でなければならぬと思う。ところがこの第六条を阻却して、第十六条でございますが、第六条でこういう基本的な精神をうたいながら第十六条に来ると、その精神を完全に剥奪する、一体こういうような法律はどこにあるのか、教育委員の完全なる独立のためにということに重点を置くならば、私は教育委員が教育長を兼ねるということはやはりやめなければならぬと思う。そこで大臣がおっしゃった第六条の兼職禁止の精神は完全なる独立ということは認めましょう。その完全なる独立という兼職禁止の精神は、法の実体において完全に抹殺されておるということをあなたは御承認になりますか、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/238
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239・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 どういういい法則にも必要なる例外はあるのです。原則として兼職は禁じても、内部の教育長はこれはやらそうということは可能です。あなたがいいとおっしゃる現行法でも助役が教育長を兼ねることを認めておるのです。これもそのときの便宜によったのでございましょう。ゆえに六条に原則としては兼ねないといっておいて、やはり市町村の委員会においては教育長と兼ねるという例外を設けることはちっとも妨げがない、どっちがいいかという価値判断の問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/239
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240・野原覺
○野原委員 助役が兼ねるということは私どもは反対してきておるのですよ。それを私どもの反対を押し切って助役にこういう重要な教育長を兼務させる、教育長の任務を与えておるということは政府が今日まで予算の都合等があってこういう便宜的なことをやってきた変則なのです。こういうことはいけないということを政府自体も今日までお認めになってこられたのです。教育長はやはり常勤の職員でなければいけません。私は政府、与党の中で今回の地方教育行政の組織及び運営のこの法案を問題にしたときに、実は地方教育委員会の教育長をどうするかということが相当大きな問題になったということを与党の私どもの心やすい方からも、あるいは新聞等を通じても承わっておるのであります。しかしここに出されてきたあなた方の結論というものは、私どもはどういう角度からながめても矛盾撞着の問題が実に山積しておるということを御指摘申し上げたいのであります。そこで第六条に兼職禁止の精神というものがせっかくうたわれておりながら、これが完全に抹殺されていることを遺憾に思います。
次に私は第七条に入りたいと思いますが、第七条は「地方公共団体の長は委員が心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認める場合又は職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、当該地方公共団体の議会の同意を得て、これを罷免することができる。」、教育委員罷免の規定であります。そこでお尋ねいたしますが、職務上の義務違反というこの判定はどなたがするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/240
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241・緒方信一
○緒方政府委員 これは長が認める場合でございますから、長がその判定をいたしましてそうして当該公共団体の議会の同意を得てこれが確定するわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/241
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242・野原覺
○野原委員 ではお尋ねしたいことは「委員たるに適しない非行」実にとんでもない言葉もあるものだと思う。一体この非行とは何です。非行といえば職務上の義務違反だって非行だと思うのだが、職務上の義務違反は特別に抜き出しておるから職務上の義務違反は入らぬのでしょう。そうなると非行とは一体具体的に何を言うのですか。これは詳しい罷免の規定ですから、今後教育委員に任命された方々にとっては重要な規定です。なお地方住民にとっても重要な規定です。非行とは何かお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/242
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243・緒方信一
○緒方政府委員 非行のあった場合という規定は従来の法律にもございます。たとえば地方公務員法の二十九条、これは職員の懲戒の規定でございますけれども、これにも一号、二号、三号とございまして、二号は職務上の義務違反、三号は全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があった場合、かように規定いたしております。ここでは教育委員として適しない非行があるというのでございますから、それはいろいろな態様があると存じますけれども、長がさように認定いたしました場合に議会の同意を得て罷免をすることでございます。これは具体的にどういうことかとおっしゃいましてもいろいろな態様がございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/243
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244・野原覺
○野原委員 地方公務員法にうたわれておることは私も十分承知をしておるのであります。私は地方公務員法に述べられておる非行についても実は多くの疑点を持っておるのであります。そこでこのたび政府からこういう提案がなされて非行という言葉があるからお尋ねをするのでございますが、実例をもって示して下さい。非行といってあげた以上はあなた方もはっきりこういう場合、こういう場合という例示ができるはずである。これはその首長がふさわしくない行いと判断した行い、それが非行だというばかげた考えはないのです。私としてはやはり立法者の意思、提案者の意思というものを明確に記録にも残しておきたいと思うのです。実例をもって非行とはどういうことか、大臣から十分詳しい御説明をしてもらいたいものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/244
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245・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 法律に違反しまたは道徳律に違反して、とうてい教育委員会の任務を果すに足らざる行いのあったことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/245
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246・野原覺
○野原委員 それでは初中局長緒方政府委員からお聞きしてもよろしゅうございます。私は例示をして説明してもらいたいと尋ねたのでありますから、やはり私のお尋ねにはお答えいただきたいのです。今大臣の御答弁は失礼でございますがきわめて抽象的であります。実例をもって示してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/246
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247・緒方信一
○緒方政府委員 これは先ほども申し上げましたように、また大臣の御答弁になりましたように、いろいろな場合があると存じますけれども、教育委員といたしまして職務を遂行する上に、これは地方公共団体の全体の住民の意思を代表してその利益に沿うような職務の執行をしなければならぬのでございますけれども、たとえば一部の者の請託を受けて非常に片寄ったことをやるというようなことがあった場合には、やはり非行の一つになるかと存じます。しかしこれは具体的にはいろいろと態様がございますので、それは一々ここで申し上げることは困難でございます。
〔赤城委員「議事進行について」と呼ぶ〕
〔「散会」と呼び、その他発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/247
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248・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 本日はこの程度にいたし、これにて散会いたします。
午後五時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X02919560412/248
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