1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年四月二十四日(火曜日)
午前十一時一分開議
出席委員
委員長 佐藤觀次郎君
理事 赤城 宗徳君 理事 加藤 精三君
理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君
理事 米田 吉盛君 理事 辻原 弘市君
理事 山崎 始男君
伊東 岩男君 稻葉 修君
久野 忠治君 杉浦 武雄君
田中 久雄君 千葉 三郎君
塚原 俊郎君 並木 芳雄君
野依 秀市君 町村 金五君
山口 好一君 河野 正君
木下 哲君 高津 正道君
平田 ヒデ君
出席国務大臣
文 部 大 臣 清瀬 一郎君
出席政府委員
文部政務次官 竹尾 弌君
文部事務官
(初等中等教育
局長) 緒方 信一君
文部事務官
(社会教育局
長) 内藤誉三郎君
委員外の出席者
文部事務官
(大臣官房総務
参事官) 斎藤 正君
文部事務官
(社会教育局著
作権課長) 大田 周夫君
専 門 員 石井 勗君
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四月十六日
委員横路節雄君辞任につき、その補欠として平
田ヒデ君が議長の指名で委員に選任された。
同月十八日
委員町村金五君及び前田榮之助君辞任につき、
その補欠として福田篤泰君及び山本幸一君が議
長の指名で委員に選任された。
同日
委員福田篤泰君辞任につき、その補欠として町
村金五君が議長の指名で委員に選任された。
同月十九日
委員鈴木義男君辞任につき、その補欠として木
下哲君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十四日
委員小川平次君辞任につき、その補欠として久
野忠治君が議長の指名で委員に選任された。
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四月十九日
教科書法案(辻原弘市君外八名提出、衆法第四
四号)
初等教育及び中等教育の教育内容等に関する法
律案(辻原弘市君外八名提出、衆法第四五号)
義務教育諸学校の児童及び生徒に対する教科書
の給与に関する法律案(辻原弘市君外八名提
出、衆法第四六号)
同月二十一日
夜間課程を置く高等学校における学校給食に関
する法律案(文教委員長提出、参法第七号)(
予)
公立養護学校整備特別措置法案(文教委員長提
出、参法第八号)(予)
盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に
関する法律の一部を改正する法律案(文教委員
長提出、参法第九号)(予)
同月二十三日
夜間課程を置く高等学校における学校給食に関
する法律案(参議院提出、参法第七号)
公立養護学校整備特別措置法案(参議院提出、
参法第八号)
盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に
関する法律の一部を改正する法律案(参議院提
出、参法第九号)
同月十七日
広島大学教育学部三原分校存置に関する請願(
赤城宗徳君紹介)(第一九三七号)
同(高橋禎一君紹介)(第一九三八号)
同(重政誠之君紹介)(第一九三九号)
同(高村坂彦君紹介)(第一九四〇号)
同(熊谷憲一君紹介)(第一九六五号)
新潟大学教育学部高田分校に四箇年課程設置に
関する請願(塚田十一郎君外二名紹介)(第一
九四一号)
教育職員免許法施行法の一部改正に関する請願
外三件(高村坂彦君紹介)(第一九四二号)
地方教育行政の組織及び運営に関する法律等制
定反対に関する請願(島上善五郎君紹介)(第
一九五五号)
同(松平忠久君紹介)(第一九六六号)
同(下平正一君紹介)(第一九八六号)
同(原茂君紹介)(第二〇一六号)
教育委員の公選制確立に関する請願(下平正一
君紹介)(第一九五九号)
同(川俣清音君紹介)(第二〇一七号)
建国祭復活に関する請願外二件(相川勝六君紹
介)(第二〇〇四号)
同(保科善四郎君紹介)(第二〇〇五号)
同外一件(纐纈彌三君紹介)(第二〇〇六号)
の審査を本委員会に付託された。
同月十三日
地方教育行政の組織及び運営に関する法律等制
定反対に関する陳情書外三件
(第五三六
号)
地方教育行政の民主化に関する陳情書
(第五四三号)
紀元節復活に関する陳情書
(第五四四
号)
同外二件
(第五
九六号)
同外一件
(第六二九号)
盲、ろう等特殊学校に対する国庫補助増額に関
する陳情書
(第五六八号)
中学校に学校給食実施に関する陳情書
(第五六九号)
産休補助教育職員確保に関する陳情書
(第五七〇号)
青少年保護法制定に関する陳情書
(第五七一号)
養護学校設置に関する政令制定促進に関する陳
情書(
第五七二号)
靖国神社の祭しに関する陳情書
(第五九七号)
を本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
教科書法案(内閣提出第一二一号)
万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に
関する法律案(内閣提出第七七号)(参議院送
付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/0
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001・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 これより会議を開きます。
まず内閣提出の教科書法案及び万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律案を一括議題とし審査を進めます。質疑を許します。高津正道君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/1
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002・高津正道
○高津委員 教科書法案について質問をいたします。
旧民主党では教科書問題特別委員会をお作りの上で、教科書問題を相当御研究になっていたのですが、その御研究の所産がこの教科書法案というものですか。すなわちその研究の結果がここに現われてきておるものでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/2
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003・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 研究は十分いたしましたが、それのみがこの教科書法案に現われておるというわけじゃございません。特別委員会の報告は受けました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/3
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004・高津正道
○高津委員 すると民主党の教科書問題特別委員会の研究調査の結果のほかには、どういうものがそのほかに加わっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/4
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005・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 なお続けて申し上げたいと思いましたが、教科書問題を研究いたしましたのはもとの日本民主党でございました。日本民主党が自由党と合体して、今の自由民主党になったのでございまするが、自由民主党の機関じゃないのであります。前の党派の機関であります。その報告はすべて受け、党員各位よりいろいろ資料を持ち寄り、意見を調整し、わけても中央教育審議会の答申を参酌して本案ができたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/5
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006・高津正道
○高津委員 旧日本民主党の特別委員会には私は特別の偏見があったと思います。私が偏見がありというのは、そこでお出しになった「うれうべき教科書」を見ればすぐにわかるのでありまして、その「うれうべき教科書」の出版物を読んでみますと、わが党は他党に先んじて、わが党のみがこれをやるんだということをその序文の中にも書き込んで、非常に力んで書かれてあるのであります。教育委員会法案の場合に私はそらでちょっと言ったのでありますが、その偏見のいかに激しいものであったかということを原文の引用によって申しますが、こういうことが書かれてあるのであります。民主党のあの「うれうべき教科書」に対しては、学界からも教育界からも非常な攻撃が出たのでありまして、さすがにあれはひどかったと思われたのか、その後の版においてはその分を削除してありますけれども、最初に出された第一版には、実にこういう驚くべき文句が使われているのであります。
読んでみますと、「他国の侵略とは、必ずしも武力によるものでないとするなら、教科書を通じて、疑いもなく、ソ連や中共の日本攻略ははじめられているのである。日本の教職員たちは、或いはそれに力をかし、或いはぼう然とそこに立ちすくみ、或いはそれを知らずに、相たずさえて日本の教育の危機をつくっているのである。」ソ連や中共が教科書をもって日本の攻略を始めているのだ、それに対する教師の態度は三つに分れる。一つは、それに力をかしている。もう一つは、ぼう然とそこに立ちすくむだけである。第三の態度はそれを知らずに相携えて日本の教育の危機を作っているのだ。ソ連や中国が教科書を通じて日本の攻略を始めておるというようなことが書いてあって、そしてそのパンフレットの第三十一ページ以下わずか八ページの間に、日共及び日教組という言葉が十三回も書かれてあるのでありまして、だれが読みましても日本民主党の御認識によれば、日教組と共産党を全く一緒にしてあるのであります。
そしてその論拠はどういうことであるかといえば、日本の共産党が教科書をねらっておる。そしてその編集陣に共産党が入り込んでおる。それから容共的な学者も教科書の編集陣に入り込んでいる。日教組には三、四十人のいわゆる講師団なるものがあるが、その講師団の中にも共産党も容共もおる、だから日教組というものは共産党に踊らされているものだという実に乱暴な論理で、そして日共及び日教組はと、日教組征伐のためにあのパンフレットが出ているような印象を与えるのであります。そのような考え方から教科書法案が出ているということは、それこそ憂うべき現象だと思うのでありまして、この法案の出た動機が非常に不純である。日教組に対してであるならば、また別な法律を考えればよいのであるけれども、パンフレットはまさに日教組をねらっておるのでありますから、そのようなイデオロギーを持ってこういう法案を出されては、教科書に変なゆがみが、あるべきはずの線、あるべきはずの姿からは違った線が出てくることになろうと私は考えるのであります。文部大臣の御所見をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/6
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007・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 わが党の前身の一つであった日本民主党で、教科書の問題を注意したのは昨年の夏、行政監察委員会で注意されたのと並行して注意いたしたのであります。実際に教科書を調べて見れば、相当の誤まりがあるというので、党内でも実は幾らか驚いたのであります。しかしながらそのパンフレットに書いてある通りを今回の法案としたのではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/7
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008・高津正道
○高津委員 あるいは民主党の自由党よりまさる、自由党より区別されたる特別の教育観であり、教科書観である。従ってそれがこの中に盛られておるかといえば、その教科書特別委員会の研究の成果はこの中に盛られておる。なお中教審の意見も参酌した、こう言われるのでありますから、それが入っておるということを私は問題にするのであります。あのような驚くべき偏見というものは、どこから来ておるかと申しますと、私はどうもあなたの頭の中に——牧野良三氏とあなたとお二人は、その特別委員会において、特別の重要な地位を占めて本気になっておられたことを私は漏れ承わっておるのでありますが、あなたの頭の中には、戦後開けてきた民主主義に対して、民主主義の諸制度——この国会議事堂のような大建築だと私は思うのでありますが、この大建築に対して非常な反感をお持ちになり、一種の復讐思想のようなものも手伝い、おれたちは戦前の政治家だ。失地を回復しようということも、人間ならばどうも浮かんでくるのでありまして、失地回復、復讐、こういう考えで出てこられたのであろうとわれわれは考えますので、非常におそろしい法案だという印象をわれわれは第一に持っておるのであります。
このことをもっと大臣によく知っていただくために申しますと、この間の四月十四日でありますが、文化放送で、巣鴨プリズンから出られたA級戦犯、その他の戦犯諸氏が釈放されて、その意見を私はレコードで二回聞いたのでありますが、その中で一番はっきりしておるのは荒木貞夫元大将で、ジャングルなどに入り込んで道がわからなくなった場合には、もときた逆コースをずっと帰れば必ずそこに帰れるのだ。アメリカの占領政策というものは、日本の今までのしきたりを全部ひっくり返すことであり、そうしてまた戦犯者を追放するということもその一つであるし、東京裁判もまたもちろんそれである。だから今までの日本のしきたりというものを全部ひっくり返されたのだから、その逆コースへ、もとの通りに直せば、そこから日本は出発しなければならぬ。私、私というのは荒木貞夫元大将です。私はこれより国民運動をやる。その先にまずわれわれは組織を持たねばならぬ、こう語っておるのであります。荒木さんのことで、もう少し私の覚えておることを言えば、教育勅語は全くの真理であって、日本の教育はこれをもととしなければならない、こういうようなことも言っておるのでありますが、「夫婦相和シ朋友相信シ」そういうようなところは異議はございません。これを古今東西にほどこしてもとらずであろうが、あの教育勅語の一番の山はどこであるかと申しますと、申すまでもなく「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ」という、そのために日本の全国民はみんな天皇一家の子孫であり、天皇一家族のみんな親戚のように、そこから出ておるものであって、家長である天皇の命令とあれば、いかなることでもしなければならぬぞというので、戦争のため国が一本にまとまって外国と戦うという、そこに力点が置かれておるとわれわれは見るのでありまして、荒木さんたちはそこをすっかり忘れておられるようでありますが、あれを教育の基本などにされたら、全くたまったものではないのであります。実に数百万人の犠牲者や罹災者やたくさんの犠牲を出して、ようやく戦争ではいけないという道をわれわれが見出して、ここに自信を持って国が進んでおるのでありますから、これに対して失地回復思想や、復讐観念やあるいは教育勅語に対するそのような認識のものが出てきてはならないのであります。そして橋本欣五郎元大佐、あの赤誠会の主催者は、これまた乱暴な意見を吐いておるのであります。今度の来たるべき選挙には、自分はもちろん打って出る。正々堂々と戦うのだ。そしてこれもずいぶんひどい話をしております。あるいは企画院の総裁をやった鈴木貞一元陸軍中将、この人の意見は、国会が軍部に頭を下げたからこういう戦争になったのだ。治安維持法を制定したり、総動員法を制定したり、それは議会がこしらえて自縄自縛になったので、とめるべき人間がとめないでおったから、あの戦争が始まったのであって、責任は自分たちにはないのだ。責任は政治家にあり国民にあり。こういうような全く自己反省を少しもしない戦犯諸君が出てきたわけであります。それに対してマイクを清瀬文相の方に向けると、清瀬文相はどう言われたかというと、あのくらい引っぱる力のある人々であるから、その人人に、同じ日本人である以上は、政界であろうとどこであろうと大いに出てやってもらわねばならぬ。私はこれを歓迎すると言われておるのであります。文部大臣の職責にある人が、このような思想の人間が何ら反省することなく出ておる場合に、それを歓迎するというようなことは非常に私は不穏当と思うのでありますが、これが民主党の一般的なイデオロギーなのであろうか、どうであろうか、それを非常に心配しておるのでありますが、あのパンフレットを見れば——まだ戦犯が出たことをあのパンフレットにはもちろん書いてあるわけではございませんけれども、「うれうべき教科書の問題」に現われたる反動思想というものは、全く驚くにたえたものであります。そのようなものの上に立って、そのような考え方からこの教科書法案が出ておるということは、私は許すことのできないことであると思うのであります。本日は大臣は答弁を非常に短かくするようにされておるやの印象を受けるのでありますが、私もこれだけ詳細に所見を申し上げて御答弁をいただこうとするのでありますから、やや詳細にお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/8
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009・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 前段御指摘の民主主義のことでありますが、前の日本民主党においても、今の自由民主党においても、民主主義を守るということにはもう懸命であります。もしあのパンフレットの趣意から言えば、やはり民主主義を守りたいから来ておるのです。民主主義以外のある偏向、すなわち自由、民主ということじゃない方向へ教科書が流れはせぬかという心配で調査を始めておるのであります。今世界に一種の思想のあることは高津さん御承知の通りであります。その方へ行きはせぬか、そうすれば民主主義が危うくなるというのがわれわれの心配でございます。荒木、橋本、鈴木さんが何を言われたか私知りません。これらの人と一緒に世間へ放送されるかどうか私のところへは告げないで、私が往年市ヶ谷の弁護——私は東条英機を弁護したのでありますが、それを顧みて感想がないかということでありましたから、当時を顧みればもはや十年、私と相手になったキーナン君はすでに死なれ、私の弁護した東条その他七人も死亡し、平沼さんもゆかれ、外務大臣であった東郷さんもゆかれ、感慨無量でございます。しかしながらこれらの人はいずれも力のある人であるから、方向は違っておったが、正しい方向へ向いて下さるならば、力のある人であるから国のためになろう。そのとき私の使った言葉は、英雄こうべをめぐらせばすなわち神仙、文化国家というレールに乗せたら文化の方へよくやって下さるだろうということを私は言ったのです。荒木さんや橋本君のおっしゃることを聞いて、それに賛成したものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/9
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010・木下哲
○木下委員 大臣に関連して一言だけお伺いするわけでありますが、大臣は、御自身が追放になっておった。その大臣が弁護士として、職業としていろいろなお仕事をなさることはけっこうだと思うのでありますが、追放になった方が、職業が弁護士であるからといって、戦犯の弁護をなさったということについては、どろぼうの嫌疑を受けた人がどろぼうの弁護をする、これに同じなものだと私は考えるのでありますから、その点大臣はどのように考えて弁護をなさったかということだけ、一言承わっておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/10
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011・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 それより前に弁護士の任務ということを一口申し上げなければならぬ。弁護士はいやしくも人の権利を弁護するものなのです。行いがどうであろうと、どういう犯罪人であっても、いざ検察官が検断する場合においては、これに対抗するだけの権利の主張をしなければならぬ。それが弁護士の職務であります。私は公職を追放されましたが、国民の権利行為、それを弁護するということは追放されておりませんです。いかなる人でも今の文芸復興以後の憲法においては、個人の権利はたといそれが窃盗犯であろうと政治犯であろうと、訴追者に向って対抗するところの権利の主張をしなければならぬ。そのために私は弁護に立ったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/11
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012・木下哲
○木下委員 今弁護士としてのいろいろお話がございましたが、そのときに私が今申し上げたどろぼうの嫌疑を受けた者がどろぼうの弁護をするということは——権利の保護をするために弁護なさるということはけっこうなのでありますが、御自身が嫌疑を受けたと同じことに対して弁護なさるということは、私考えますのに、信義からしても、ほかのいろいろな民事事件、刑事事件ならけっこうでありますが、これに関しては遠慮するだけの気持が必要だと私は思うのでありますから、大臣はその点についてあくまでも職業としてやったのだということでお話がございましたが、私はそれについて遺憾であるということを申し上げまして、関連でありますから質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/12
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013・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 私は犯罪の嫌疑は受けておりませんです。ただ公職から追放になっただけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/13
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014・高津正道
○高津委員 民主党の再版された改訂版のパンフレットを読ましていただきますが、はしがきです。「日本民主党が、七月十五日、他党にさきがけて、教科書問題特別委員会を設けたのは、けっきょくは、教科書問題を通じて、日本の教育の再建を、ねがうからにほかならない。この特別委員会は、現在の教科書制度およびその内容のうち、とくに偏向教育をはらむ教科書の内容を重視して、これが調査をなし、日本の教育の危機にたつ実情をあきらかにするとともに、きたるべき教育改革の基礎資料をつくりあげることを目標としている。」こう書かれてあるのでありますが、今度の教科書法案では、偏向教育の教科書をなくするということが第一の目的でしょうか、あるいはまた定価を安くしようという点に重点があるのか、あるいはどういう点に重点があるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/14
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015・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 過日も申し上げましたが、重点の一つは検定を合理的に能率的にやることが一つであります。そのうちにはあるいは右に偏し、左に偏せざるように公正な立場をとるように検定することも、御説の通り一つであります。もう一つは採択の不正を防ぐということが一つであります。発行、供給の円滑を期することも一つ。第四には価格をなるべく安くしよう、こういうふうなことを考えてこの案はできております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/15
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016・高津正道
○高津委員 今四つ並べられたのでありますが、私はその中のどれに重点がかかっておるかということをお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/16
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017・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 これはいずれも同等であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/17
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018・高津正道
○高津委員 今の私の読み上げた民主党の基礎資料を提供するとして作られておる特別委員会の重点はどこにあるかと言えば、日教組攻撃、もう一つは偏向教育をはらむ教科書の内容、それを改めるのだ、そこに一番重点がかかっておるのであります。従いまして四つある中ではそこが一番重点ではないのですか、こうお伺いするのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/18
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019・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 今答えた通りであります。これは一集、二集、三集と三回発行しておりますが、これを通じてごらん下さると、価格のことも大へん心配をして、安くいたしたいということを考え、また採択についてのスキャンダルがないようにということも非常に力を入れて書いております。発行供給の円滑もその通りであって、まず同等に、わが国の教科書問題全般について、熱心に研究したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/19
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020・高津正道
○高津委員 採択の不正を防ぐということを第二に申されたのでありますが、この法案を見ると、一つの県を全部同じ教科書に——一種類の教科書を使う場合に、一つを全県に使うこともできる、また県を幾つかに分けてやることもできる、こういうふうに私は法案を読んだのでありますが、そのように採択区域を広げるということになれば、その県を自分の得意先としてつかむか失うかということは、会社にとっては大問題でありますから、あらゆる運動方法を使うことになり、そのために今よりも激しい売り込み戦が行われまして、明治三十五年だったかのあの教科書疑獄のようなものが、このたびのこのような教科書法案のために起きるようなことになろう。こういうことは、この法案についてだれもが気づく点でありますが、その点に対して、概括質問でありますから深くは触れませんけれども、そこらは大きいところだろうと思うのであります。採択の不正を防ぐというためのこの法案で、もしもその激しい売り込み戦のために大教科書疑獄が起きた場合はどうなるか。われわれの見解から言えば、起きるに違いない、こう言うのであります。その点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/20
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021・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 どの制度でも両面ありまして、一方において、採択を使用者すなわち児童父兄のために便利にする、そういう要求と、そのためにまた採択区域というものをこしらえて、一括して大きな需要者が現われるということになれば、あなた御指摘のような心配も起るのでございます。両方かね合いで法律は作らなきゃなりませんが、このスキャンダルのことについても、前の党派以来非常に私ども心配いたしたのであります。しかしながらまず今度の法案では、採択の責任者を明確にしております。そのことがまずこういう不正事件を防ぐ一つの基準になるのであります。それからまた、採択の方法手続もこの通り法律できめて適正にするのであります。今までも責任者は学校教育法等に規定してあったのでありまするが、今度ははっきりしております。それから他方売り込みに行く方、すなわち発行者、また今まで特約といった供給者、それなどの不正行為を禁止いたしまして、違反がある場合には商売をとめさせるぞという規定まであるのであります。一般刑法のほかにこういう規則がございまして、これを厳重に励行することによって不祥事件が起らないように努めなければならぬと、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/21
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022・高津正道
○高津委員 教科書会社が売り込みの競争で違法があった場合などは教科書の商売をやめさせる、そういうようなことが法案に書いてあるから、その方に対しては、私の質問するような問題についてはそのおそれはない、こういう御答弁だと承わったのでありますけれども、前の教科書事件の場合、役人が収賄して悪いということも、業者が贈賄して悪いということも、法律にはその時代といえどもやはりあったのでありまして、その方面については取締り規定があるから大丈夫だということにはならない、大きな業者のみがこれに参加し得る熾烈なる売り込み戦が開始される事情にあるのだ、この法案が通ればそういうことになるのだ、これに対する答えが聞きたいのであります。前よりももっと大規模なスキャンダルが起るような事件が発生することになるのだ、こう私は考えますが、それに対して御見解を承わりたい。質問の意味がおわかりになったでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/22
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023・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 あなたの心持はよくわかっております。われわれが教育上、父兄の負担上、またちょっと親が転宅すれば教科書が変るといったようなことも非常に都合の悪いことであり、世間からこれをないようにしろという要求があるのです。そういう教育上の要求と、これに応じて統一採択をする場合の弊害とをかね合って、世の中の要求には従いつつ、またそれからおのずから生ずる弊害を防ぎたい、この二つの希望でこれは組んでおるのでございます。この本案二十八条に事前防止のことも書いております。それからまた三十七条には事後においての処置も書いております。もっとも、すぐあなたはおっしゃるだろうと思うのです。法律は死んだものなんだ、やはりこの運用ということには、過ぎずまた足らざることなく、適当なふうに運用して、人間界にさようなスキャンダルが起らないようにいたしたいのは、行政の責任者の務めでありまするから、十分やってみたいと、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/23
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024・高津正道
○高津委員 県を単位に運動をする場合には、八、九十もある教科書出版会社の中で、それに参加して大相撲に選手として出るということは、大会社のみのなし得ることであって、小会社は歯も立たないようになるから、従って大会社間において熾烈なる売り込み競争が起ることになるであろう、なるに違いないと私は考えるのであります。あなたはそういうことは規定があるからならないというが、必ずなるに違いないのであります。四日市のあの大きな土地や施設を小さいものが払い下げの運動に出るはずはないのであって、大きな会社だけが参加して熾烈なる売り込み戦というものが展開されるのだ。この事実を認めなくちゃ困ると思うが、あなた認めてもいいでしょう。どうですか、その事実を否認しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/24
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025・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 あなたの今の言葉に二つ否認しなければならぬことがあるのです。一つは県を一本にするということは原則じゃないのです。この案は自然的、経済的、文化的の条件に照らして、ある地域というので、一県一区ということじゃございません。けれども、ある場合には、もし小さい県でもあるのであったら、自然的、経済的、文化的一つだという県をやってもよろしいというので、一県一区は非常に少いと思います。
それから競争の相撲場に出るのが大きな会社だということは私は考えておりません。みな同等に、一番の競争の目標は何といっても、じきにスキャンダルとおっしゃるが、教科書のメリットです。いい教科書はとられるに相違ないです。それが第一のことであります。そこでだれがとるか責任者が不明であるというのであったらいけませんから、採択の責任者を法律でちゃんとやっております。それからまたそういう教科書があるということが均等に知らされなければならぬが、それ以上こういうことをしてはいけないんだということを明らかに明定しておく。それが二十八条でありましたか……。それからもしそののりを越えた場合にはこういう責任があるのだ、ここまで注意いたしておるのでありまして、あなたがおっしゃるような、この法律を実行したらスキャンダル横行とまでは考えておりませんが、十分に注意しなければならぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/25
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026・高津正道
○高津委員 第二十一条の第一項を読んでみますと、「都道府県の教育委員会は、その都道府県の区域を分けて、市若しくは郡の区域又はこれらの区域をあわせた地域を基準として、採択地区を設定しなければならない。ただし、県にあっては、次項の規定を考慮して適当と認められるときは、その区域を一の採択地区とすることができる。」あなたの御説明の通りでありますけれども、一県一区にやってもいい、それを二つに割ってもいい、三つにもできることはできる、だから一県を一つにするあるいは大県を二つにする、そういうことができるのであって、今までとはずいぶん変ってくるのであります。そうすればそれの参加者は大会社で確かに専門店の一つ——いい呉服物を売る店があって、それに特殊ないい物を持って参加するということも例外的にはあり得るかもしれませんけれども、そういう大きな採択圏をとる場合には大会社が勝つのであって、品物さえよければ勝てるといったって、石けんの会社であろうが砂糖の会社であろうがビールの会社であろうが、どうもわれわれにビールの会社ができるものでもないし、みんな独占に落ちつくのでありますが、それでいいのができれば問題はないけれども……。それじゃこういう点をお尋ねしてみましょう。
そのような熾烈な売り込み戦の参加者になり得るものは大教科書会社に限られる。例外もあろうが大体そうなる。そうすると現在の教科書出版界は四、五社の独占となることが私には予想されるのであります。こうなると二つの問題があります。その一つからお尋ねをします。その他に七、八十社もあるのでありますが、その中には専門店のごとき優良なのが相当あるけれども、それらをつぶすことになりはしないか。資本力が乏しければ、いい品物は持っておるけれども、いいということの宣伝が売り込み運動に負けますから、品のよさは八十五点、資本力乏しい、品のよさは八十点、資本力大なりということであれば、今の資本主義の社会では資本力大なる八十点の品が抜くのであります。勝つのであります。こういう弊害を伴わないかということをお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/26
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027・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 初めから人を見ればどろぼうと思えで、悪いことをするばかりだといったようなふうには私は見ないのです。何といっても今度選定するのは公平ないい選定機関ができておると思いまするから、やはり選定を得る一番の条件は教科書がいいということでございます。それゆえにその競争に当って、大きな資本力ということはすぐスキャンダル、大きな資本で買収する、そう私は見ておりませんです。ですから競争するのは小さい会社でも大きい会社でも対等と思っております。大きな会社で大きな金をまくなんといったらたちまちにしてスキャンダルで、これはわかってきますよ。今回の案はさっき指摘したようにあらかじめそういうことが起らないような規定までこさえておるのです。起れば商売がとまってしまって何億の投資がふいになる。それからまた刑法というものがあって、贈賄罪の規定もありますから、私はそうあなたのおっしゃるように無秩序に大きなやつが出ていって弱肉強食になる、そうは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/27
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028・高津正道
○高津委員 資本主義の社会の法則を見ておりますと、強い者が勝って弱い者が滅びる。いかなる説教をどれだけ繰り返そうともこれをくつがえすことのできない冷厳な事実がある。その法則は経済学者も私はみな認めておるのだと思うのです。ビールの会社が三つ、四つしかないでしょう。だれも歯は立たないですよ。それから今三日ほど前の新聞が報道しておりますが、ガソリンの乱売戦が始まる。その結果通産省の見方は、それで業界が整理されるから、いいぐあいに整理されることを望んでおる、こういう記事があって、冷たい法則だけかと思えばそれに政府の精神が加わってそれを期待しておるという。全く私は残忍なことだと、一つの経済記事も私にはそう読みとられると思うのでありますが、資本の集中という冷厳な原則があり、そうして企業整備が行われ、そこに大企業のみが育ち、それが今度独占の段階であらゆることをやっておるのでありますが、あなたは大企業が悪いことをするはずはない、大企業のみが悪いことをするはずはないと言われるが、悪いことをするようになる独占行為というものは非常に弊害を生むのであります。
そこで私は問いをほかに移します。今までの問いは、質をたっとぶべき教科書の世界において、すぐれたる質の教科書会社というものが振わない状態になるであろう、こういうことを申し上げたのでありますが、こまかい論争になりますから次に移ります。
政府は常に中小企業の育成ということを政策にうたい、合同をされたあなた方の自由民主党においても、選挙の場合に中小企業の育成、助長というようなことを約束されるのであります。そうして現在鮎川義介氏などは、保守にあらず革新にあらざる第三の政党を作ろうといって、これも中小企業の利益を守ろうとしておるのでありますが、その中小企業の育成を言われるのに、このような方式に教科書の採択ということをきめれば、中小企業は力がないから、例外的にはどこかの県へ、今までの手づるもあって何らかの形でよい教科書がいくかもしれないが、しかし大きな採択の単位になるのでありますから、これに立ち向うのは大きな会社で——スキャンダルのあるなしは今別にして、大きな会社だけがその大会戦に参加するのであるから、中小企業育成という方針に反して、これらの会社はこの法律によって教科書出版をやめなければならないようになるであろう、そういう犠牲者が現われると思うが、そのことに対して、かねてしばしば主張される中小企業の育成という公約とこれは矛盾する法案ではないか、これが一点であります。
第二は、そういう犠牲者が現われることがわかれば、それらに対しては損害の補償をするのが当然であろうという考え方も浮かんでくるのでありますが、この二点について大臣の御答弁を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/28
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029・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 今の高津さんのお問いはその背後に大きな思想問題を含んでおります。自由競争を放置する、世間でいう資本主義社会においては、大資本が勝って小資本、ことに中小企業は滅びるのではないかと、この法案の規定のワクよりもう少し大きなところから御質問がきておると思うのであります。しかしながら社会主義経済がいいか、資本主義経済がいいかの原則論をここで申し上げることは、あまりにも事重大でありまするから、やはりこの案では民主主義、自由主義の上に立って、社会主義制度は前提としておりません。世間でいう資本主義の制度でございます。資本主義制度において小資本を保護するために独占禁止法ができておるのであります。すなわち、この案には書いてありませんが、別にわが国は公正取引委員会というものを作って独占の禁止をやらしております。その延長といたしまして、本案には宣伝行為のワクをはめておるのです。さっき引用した二十八条です。すなわち、学校関係者に利益を供与するとか、採択関係者の組織的な利用をするとか、あるいは採択の公正を誤まらせる行為をするとか、その行為が具体的に何であるかは慣行によりおのずからできると思いますが、すなわちできた教科書の売り込みに対して、ここまではしてもかまわぬが、これはするな。すなわちこういう本があるということ、この長所を知らす程度の競争はできるけれども、それ以上はするな、こういう規定になっておるのです。でありまするから、大資本を持っておってもそのワク内でしか競争はできません。小資本のものもそのワク内なればついていけるので、すなわち大資本と小資本と平等の力で競争ができるように仕組んであるのでございます。今の経済組織ではこれが限度でございます。それを違反したものは処罰される、営業を停止されるというのでありますから、この案がよく運用されれば、高津君御心配のようなことは消滅するのではないか、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/29
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030・高津正道
○高津委員 資本主義の社会を全く甘く見ておられるが、独占禁止法があり、公正取引委員会があると言われるが、だんだんそれは影が薄くなる一方じゃないですか。さらに三公社五現業といい、国家公務員、それらに対して人事院なるものがあるが、人事院は廃止のせとぎわで、勧告をしたいと思っても、それさえもようしないような状態です。資本主義に対する弊害の防止措置としては、たとえば労働省に少年婦人局があって、少年婦人の利益を守るような局があるが、それをつぶそうつぶそうとして保守政党はねらっているではないですか。資本主義にはちゃんとそういう悪いことの起らないようなブレーキがあって、自由に競争ができるのだと言われるけれども、大企業のやっていることを見れば、大企業は勝手に国家資本をとっております。たとえば炭鉱ならば炭鉱の住宅を建てるために国家から金を引き出す、そうしてあとではそれを払わなかったでしょう。政府は打ち切りにしたのです。また造船業が一千億円も安い金利で国家から融資を受けている。(「教科書の会社からもとっているだろう」「相当あるらしいぞ」と呼ぶ者あり)それもあるだろう。それで自由競争の世界でも全く公平な、だれでも何でもできるようになっているのだ、独占が悪ければだれでもそこへ乗り出して何でもやれるようになっていると言われるが、大資本が勢力を持っておって、中小企業が競争場裡のスタートラインに立てないように現在なっているのです。そういうような本質というか、根本的なところをまるで見ないで、全く自由競争で、岩崎弥太郎がいつでもどこへでも現われ得るような組織になっているかのように言われるのでありますが、私は社会主義経済と資本主義経済との原則論の比較をやるのではなしに、この法律に現われているやり方では、七、八十もある出版会社の中で全く十指に満たない四、五の会社の利益をはかる結果となりますよということを言っているのです。今資本主義をやめて下さいということをここで注文しているのではないので、この法案はそういう作用を伴うに違いない。これは常識であります。あなたは県も一つの採択単位になり得るという法律を出しておいて、そしてどれでも競争が公正に行われるから何の間違いもない——公正に行われ得ない法律じゃありませんか。力のあるものだけがそういう大戦場に臨むチャンピオンたる資格を得られるので、法律的には小さい本屋にも資格はありましょうが、実際にはそれができないのです。そういう事実を認められるかどうかです。白を黒と言いくるめるようにしないで、ある場合には野党の言うことももっともだ、そういう弊害もあろう、こう言われてもいいでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/30
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031・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 教科書の採択について一番初めに本質的に考えなければならぬことは教育目的であります。どろぼうが入るからもうお金は要らぬといって捨てるわけにはいかぬ、そういう弊害は除くべきものである。一番いいことは教育目的であります。それは小さい採択区域がいいということを生む場合もありましょうし、大きな方がいいとその土地の人が言って大採択区域をとることもありましょう。それがすなわち教科書の選定委員会の仕事であります。また地方教育委員会の仕事であります。だからあとからどういう弊害がなんていうことを考慮せずして、こうしたら子供のために一番いいというので、採択区域の大小なりあるいは選定委員なり決定することが第一でございます。そうして弊害があればこれを除くことに全力を注がなければならぬ。弊害の方を先考えてしもうて、子供の方をあとから考えるというのじゃいけない。それゆえに一県一採択区域にしろとは書いてないのです。やはり郡市の単位なんですけれども、ほんとうにそこの県の人が一県を同じようにしよう、中学校へ入る時分も県内で中学校がそうたくさんない、小学校の教科書も一つがいいということをおっしゃるのだったら、その自由は認めるということです。それを認めまして、そうするとある本屋が採択されるということがきまるということになると、非常に競争が激烈になる、そのことは正直にあろうと思います。これはあなたのおっしゃる通りです。けれども競争激烈の余り脱線行為をしちゃいかぬ。教科書の宣伝はこのワク内でせい、だから小さい企業者もその宣伝の場裡には行けるようにする。そうして責任者を明定しておくからして、悪ければ処罰される。こういうことで違反行為をミニマイズして、あるいはなくしていこうというのがこの案でありまして、世の中のことはやはり人間が一番大切なんで、たといどういう主義がいいかといっても、主義ばかりにおぼれちゃいけないので、そのときの事情、そのときの人間、そのときの文化の程度から、まずこのくらいが一番よかろうといって作った案がこれでございます。
〔委員長退席、山崎(始)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/31
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032・高津正道
○高津委員 教育目的にかなうということが重点でなければならぬというお説には私は同意いたします。しかし教育目的にかなうためには、明治以来の大教科書疑獄というものの経験もわれわれ生かさねばならぬから、これでは大きなスキャンダルの起きる危険性をはらまないか。しかし私は了承してはおりませんけれども、それは済んだとして、七、八十もある教科書会社の中で、どんな小さいものまでも参加してはならないということはこの法律案には一つも書いてないので、参加できる建前になっておる、それはよくわかりますが、冷厳な経済の世界では少々県へ書類を出したくらいでなかなか納得してもらえない。いろいろな運動方法を用いてそれをやらねば会社の死活にかかわる問題でありますから、その県を失えば……。だから大きいところはこの戦争に臨み得るけれども、下の方はただ文書を出すくらいだけではいけないので、落伍することになり、中小企業育成という方針から見て、多大の犠牲者を出す法案である、こういうことは専門的な知識を要しないで常識的な結論でありますが、その事実をあなたは御否定になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/32
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033・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 この案は軍縮法案と同じことなんです。金を持っておっても金を使ってはいかぬ、組織を持っておっても組織力を使ってはいかぬというので、教科書の売り込みには一つのワクがはめてあるのですよ。その一つは公設の展示会です。展示会は日本じゅうに六百ほど常設します。そこに教科書が並べてあって多くの人が行って見ます。そうすればいい悪いはたいていわかるのです。自分で教科書を書くことができなくても、人の書いたもののいい悪いはわかる。悪いものをとればすぐにおいがして参りますから、国民は敏感です。それからまたこういう教科書を出しましたという公報というものがあります。選挙公報と同じことです。そういうふうに正しく競争する方法がちゃんときめてあるのです。毒ガスを使ってはいかぬ、原子爆弾を使ってはいかぬということが書いてあるのです。でありますから大きな何億という資本を持っておるものも、何千万円くらいの小さい会社も同じ率で競争ができるのです。マラソン競争と同じことです。だから公平な案ですよ。しかしながら世の中には裏道を行く人もあります。だから裏道を行くことをまず防ぐことにわれわれは行政的に努めなければなりません。法制的には独占禁止法とこの法律の二十八条その他の規則でやっておるのでありまして、まあ人間の知恵で考え得ることはこのくらいのことであろう、こう私は考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/33
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034・高津正道
○高津委員 あなたはどうも原則論にとらわれて困るのでありますが、もう原則論からいえば、あなたの現在の思想の構成過程ということが私の頭に浮んでくるのです。あなたが東条英機の弁護をなさって、全国の同類の人がそれをどんなに感謝したであろうか、そうしてあなたが政界から追放のうき目にあわれて、同類がみんな寄ってたかって政治の進行を、今のやつらが、若い者らがと言ってながめておられた、その心情は私にはわかるのであります。寄ってくる者がみんなそういう者でありますから、そうではなかったはずのあなたが、だんだんそういう思想に固まって、右へ寄れば寄るほど、集まり来たったあなたのお取り巻きは——はがきも手紙も電報も来ましょうが、それらがみんな右へ寄られるたびごとに拍手かっさいするものだから、日本の世論ここにありとでも思われて、だんだんあなたは過去のところから現在のところに変られていったのだ、私はその心理過程をそういうように見ておるのであります。現在の内閣の中でも最右翼に立って——位だって相当いいのでありますが、思想的に最右翼に立って、あらゆるこういう法案に対して熱を持って、どんどん、どんどん説明してこられるのであります。あまり議論が長くなるようなら本会議にかけて採決しましょうというようなことをほかの大臣は言わないのに、あなたはしばしば言われるのでありますが、私にはよほど熱心な、逆コースのかたまりのように見えてしようがないのであります。人には親切であろうし、清廉潔白な生活をなさっておられるかもしれぬが、いい日本語はぎしぎしという言葉です。なめらかの反対のぎしぎしして、無理やりに力で、小選挙区方であろうが、この法案であろうが、通すことから生まれてくる教育界の大混乱——いかなる聖人君子といえども、おとといときのう、きょうとあした、という一日のずれがわからないものですから、ずっと運ばれていって、ひょっと前のスタート・ラインに比べれば、大へん歩いておる。わからないでおるけれども、周囲に古い者ばかりが寄って話をすればそうなる。若い女の子の中に入って話をしており、青年とだけつき合っておるとだんだん人間が若くなる。あなたの周囲に悪者どもがいろいろ寄ってたかって——いや、ここには悪者は一人もいません。東条さんを尊敬しておるような人がたくさん集まって、あなたに非常に感謝し、尊敬しておる。右からばかり尊敬されて、引っぱられて、あなたの今のお考えが形成されたのだ、心理学的に私どもはそのように拝察いたしておるのでありますが、私は困ったことだと憂えておる次第であります。どうも根本論の相違でありますから、本日は私自身の質問はこの程度で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/34
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035・山崎始男
○山崎(始)委員長代理 答弁要らないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/35
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036・高津正道
○高津委員 そういうような御反省を願って、ぎしぎしして、しゃにむにとか、無理やりとか、何が何でもとか、そういうもんでなしに、御説明も、それからお考えも願えれば非常に幸甚だと思いますけれども、それができるものかできないものか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/36
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037・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 私の一身に対して御親切なる御忠告をちょうだいしてありがたく存じます。御忠告のように、これから円満に、婉曲にこの案の御審議をお進め願いたい、かように思っております。ただ、しかし、この案自身はそう右に行ったものでも左に行ったものでもなく、今日わが国のとっております民主主義教育を遂行するのに一番適切な、これより高くてもいけませんし、低くてもいかぬ、現在一番、英語で言えばオポチュニイ、ちょうど都合のよい案だ、かように考えております。どうぞ慎重に御審議願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/37
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038・山崎始男
○山崎(始)委員長代理 河野正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/38
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039・河野正
○河野(正)委員 著作権特例法案に対しまして若干質問を行いたいと思います。
今度出て参りました著作権の特例法案は、いわゆるベルヌ条約の著作権法と米国の著作権法、この両著作権法をユネスコのあっせんによりまして調整していくためというのが提案の趣旨でございます。私どもこの法案を最初見、あるいはまたこの法案に直接関係のございます日本著作権協議会、あるいはまた文部省の諮問機関でございます著作権制度調査会等々の意見を承わって参ります際に、いろいろとこの法案に対しまして疑問を持つのでございます。今度提案されました著作権特例法案の提案の趣旨は先ほど申し述べた通りでございますが、そういった提案の趣旨に対して一番大きな疑問は、そのうちの、ことに登録制の問題でございます。このような問題は、政府の提案の説明にもかかわらず、ベルヌ条約と米国の著作権法との調整をはかろうとするユネスコのあっせん、努力と申しますか、ユネスコの精神にもとるものがありはしないか、特に登録制の問題を通じまして私どもはさような考えを持つわけでございます。まずその点に対しまして、これは精神でございますから大臣の方から御答弁をしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/39
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040・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 別段私は矛盾はいたしておらぬと思っておるのであります。現在でもわが国は、御承知のように著作権発生には別段登録を要しておりません。やはりこれでいいのじゃないか、かように思っておりますが、何かお問いの点で私が理解せぬことがありましたら、もう一度おっしゃって下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/40
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041・河野正
○河野(正)委員 これでいいんじゃないかというようなお話でございますけれども、この法案を見て参りますと、明らかに登録制の精神が取り入れられております。そういたしますと、今度ユネスコであっせんいたしました精神というものは、ベルヌ条約のもとにおきますいわゆる無方式主義と申しますか、それから米国著作権法に基きます方式主義、この無方式主義と方式主義というものが両方並立することがあり得るということが、このユネスコであっせんされました精神であるというふうに私ども考えておるわけでございます。そういった無方式主義と方式主義とが両方とも並立し得るというユネスコの精神にかかわりませず、今度の特例法におきましては登録制という問題が取り入れられております。そこで私が冒頭に御質問申し上げましたように、これはユネスコの精神に反するのではないかというような意味を、私は大臣に御質問申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/41
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042・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 わが国のこの法律でも権利の発生は著作の事実に基くわけであります。ただそれを法廷において訴える時分には登録が要る、こういう二つの間に橋をかけておるのでございます。詳しいことは政府委員より説明をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/42
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043・内藤誉三郎
○内藤政府委員 お話のようにベルヌ条約では無方式でございまして、納本、登録というようなことはいたしておりません。従いましてわが国の現行著作権法は、著作という事実に基いて著作権が発生しておるわけであります。この場合でも著作年月日の登録というものを置いているわけであります。これはやはり争いが生じた場合等に現行法でもあるわけであります。ところが今度の万国条約になりまして——アメリカはお話のように納本、登録という方式主義をとっておりますけれども、万国条約によりますと C と著作の年と氏名を書けば著作権が保護されるということになっております。しかしながらこの事実によって著作権は発生するのでございます。にもかかわらず訴訟等が起きた場合には、アメリカの法律によってやはり納本、登録という手続をしなければならぬ。その納本、登録をする訴訟の場合に第三者証明が必要になってくると思われますので、この登録制をしいたわけでありますが、これは任意登録でございまして、現行の著作年月日の登録と同じ趣旨のものであります。ただ第一発行の年月日が保護期間の問題で今後争いになると思いますので、著作年月日の登録をすることを得というふうにしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/43
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044・河野正
○河野(正)委員 ただいま大臣並びに局長からも御答弁いただいたわけでございますが、この登録制をとった趣旨は、紛争が起った場合を考慮してそういった制度をとったんだという御答弁のようにお伺いいたします。そこで問題になりますのは、これは国内では問題になりませんから、主としてアメリカの国内におきまして——ベルヌ条約のもとにおける著作権と米国の著作権法と二種類あるわけでございますから、いわゆる紛争が起ります場合は、アメリカの国内においての紛争だと私ども考えるわけであります。そうする場合に私どもが先ほどからいろいろと疑問を持って参ります点は、もし紛争がアメリカの国内におきまして起ったと仮定いたします。その場合に日本の法律で規定することによって、アメリカにおけるところの紛争が解決せられるものかどうか。この点は日本の法律とアメリカの法律でございますから、おそらくいろいろと問題が起ってくるものと考えます。先ほど大臣あるいは局長の御答弁によりますと、そういった紛争が起った場合を考慮して登録制をとるということでございますから、その登録制をとります以上は、やはりアメリカの国内の法律に対して日本の法律が効力を発生するということが前提になければ、私はおかしいと思うのです。ところが私どもが疑問を持ちまする点は、こういったアメリカの国内で規定されておりますることを日本の法律で済ますことができるかどうか、ここに私は一つの大きな疑問があると考えるわけでございます。その点に対しまして、ほんとうに確信を持ってそのようにお考えになっておりますかどうか、この点はきわめて重要でございます。もしアメリカの国内に紛争が起った、ところが日本の法律ではどうにもならぬということになるならば、この登録制というものは全く無価値、無意義になるわけでございますので、そういたしますとこれは人間の盲腸と同じように全く無用の長物でございます。
それから登録制に対するいろいろな弊害というものは後ほど述べますけれども、そういった弊害をいろいろはらみながら、何も効果のない法律を作るということは全く私どもの理解のできないところでございます。もしアメリカの国内で紛争が起ったとしても、それを日本の法律で何とかうまくやっていけるのだという確信を持って、この登録制をお認めになるのかどうか、私はこの点がこの特例法の中の一番大きな問題であろうと考えますので、この点を一つ明確に御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/44
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045・内藤誉三郎
○内藤政府委員 アメリカの裁判所が、紛争の場合にいかに処理するかという問題だと思うのでございますが、この場合に日本の国内法にどういう手続がしてあるかということはもちろんアメリカの裁判所も一応審査すると思うのでございます。その場合にアメリカの裁判所はこれによって必ずしも拘束を受けるとは限りませんけれども、少くとも日本の国内法上認めた登録というものは反証のない限りアメリカの裁判所は尊重してくれると、私どもは期待しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/45
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046・河野正
○河野(正)委員 ただいま期待しておるということでございまするけれども、そこに一番大きな問題があるわけでございます。それが期待しておる通りそのまま通れば問題ないのでありまして、これは単に著作権問題のみに限らず、いろいろな場合に言えると私は思うのでございます。これは少し野卑な言葉でございますが、いわゆる向うふんどしというようなことでございまして、それも登録制をとることによっていろいろ後に問題を起さないということになるならば別でございますけれども、登録制をとることによってやはり国内におきましていろいろ問題を残してくるわけでございます。これはすでに局長も御存じの通りいろいろ問題を残して参ります。たとえばこの法律によりましても、登録いたします場合には一々一件百二十円の手数料を払わなければいかぬ。ところがそれも特殊な出版物であるとか、あるいはまたその他の登録を要するものでございますならばまあまあと考えるといたしましても、極端な例は、たとえば新聞あるいは毎日出版いたしますような出版物もいろいろあると思いますが、そういった問題のありまする新聞その他雑誌、出版物というものも、納本制度でございませんけれども、やはり一々登録しなければならぬ、そういうものを持参しなければならぬということになりますると、これは、ことに手続上の問題からいたしましても、あるいはまた手間の問題、時間の問題からいたしましても、非常に繁雑になってくると思いますし、これは実際問題といたしまして、民間におきましては非常に問題が残ってくる問題でなかろうかというふうに私は考えるわけでございまするが、そういったいろんな問題を残してくるにもかかわらず、ただいま局長の御答弁によりますると、そういう点いろいろ問題があるけれども、まあそうやっておった方がアメリカのいろいろな紛争の場合に参考になりはしないか、尊重してくれはしないかという、まことに心もとない御答弁でございます。そういった紛争が起った場合を考慮して作られたにもかかわらず、その登録制というものを向うが尊重してくれぬこともないというようなきわめて薄弱な根拠のもとに提案されるわけでございますし、なおまたただいま申し上げますように、具体的にはその背後にはいろいろと大きな弊害というものが伴って参ります。そういった弊害というものも十分考慮した上でこのような制度をおとりになったかどうか、この辺の事情を一つつまびらかにお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/46
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047・内藤誉三郎
○内藤政府委員 訴訟になった場合に、アメリカでは納本登録というものは改めてするわけですが、訴訟が起きますのは、やはり、十年、二十年先のことでございますから、そのときに第一発行年月日がいつであったかということはだれかが証明する必要があると思う。その第三者証明をするのが法律的に、日本の国内法上こういう登録制があるということになりますれば、アメリカの裁判所も一応これは尊重するだろう、その場合に強い反証のあがらぬ限りは、この登録をもって第一発行の年月日と推定するという国内法もございますので、反証のない限りは当然尊重されるべきだと思います。
それからなお今御指摘の、新聞とかその他の話が出ましたけれども、新聞で問題になりますのは、ニュースはとんと問題になりませんので、論説とかあるいは小説というようなものでございますが、小説の場合にどういうふうにするとか、あるいは論説の場合にどういうふうにするという問題はあると思います。しかし著作権を対米関係で保護しなければならぬというものは非常に少いと思う。現行の中でも、現在の著作権法の中で著作年月日の登録をいたしておりますが、これも非常に限られておりますが、特に今回は対米関係において著作権を保護し、訴訟においてもこれを確保するというものに限定されると思いますので、件数は非常に少くなると思う。お話のように国会図書館の納本の問題もございますので、文部省といたしましては、現物を持参されなくても、受領証によって私の方で図書館に照会いたしまして、その事実を確める、こういう考えを持っておりますので、必ずしも現物をお持ちにならぬでも登録の事務はできることになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/47
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048・河野正
○河野(正)委員 私も詳しいことはよくわかりませんが、ただいま局長の御答弁を承わって参りますと、何か登録制を採用しておくとアメリカにおいていろいろ紛争が起ってきた場合に、アメリカ当局が尊重してくれるでないかというふうな話もあるわけでございますが、尊重でございますから、それが有利に展開するか展開しないかということは別問題でございましょうけれども、しかし私どもが知っております範囲におきましては、アメリカにおきましてはいわゆる国会図書館の登録局に納本しておかなければ、そういったいろいろな問題は効力がないというようなことを私ども承わっておるわけでございます。そういたしますと、局長がただいま申されましたように、尊重されるだろうというようなお話でございますけれども、アメリカの国会図書館の登録局に納本しておかなければ効力がないというようなこと、これが事実といたしますならば、先ほど局長がおっしゃいますように、たとい日本国内に登録しておきましても、アメリカの国内に起りました紛争というものを解決する有利な事例には相ならぬというように私どもは考えるわけでございます。その点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/48
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049・内藤誉三郎
○内藤政府委員 お話のように訴訟になって納本登録をするわけなんです。ですから万国著作権条約によりますれば、 C と年号と名前だけで発生しますけれども、いざ訴訟になった場合にはアメリカの著作権局に納本し、さらに登録の手続をするわけでございます。しかしその場合に十年、二十年先になって登録するのですから、その登録の信憑性について第三者の証明が必要になってくると思うのです。もしこれをしないと私どもは行政上の欠陥になりはせぬか。自分がそのときにこれは第一発行だと言ってみたところで、第二発行か第三発行かわからないので、これは確かに第一発行の年月日だということを、少くとも証明書を添付すればそれがよほどの反証のない限りは尊重されるのが当然だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/49
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050・河野正
○河野(正)委員 これは専門的なことでございますから、私もわからない点も多分にあるわけでございますのでいかがかとも存ずるのでありますが、私ども承わるところによりますと、御承知のように文部省の諮問機関といたしまして著作権制度調査会というようなものがあるわけでございますね。ここでいろいろ審議が行われたということでございますが、この問題につきまして審議はあとにも先にも一回だけというふうにわれわれは承わっておる。しかもこの委員会は四十八名で構成するそうでございますが、著作権協議会の人々の言によりますと十八名、文部省の反駁論によりますと二十名ということでございますが、いずれにいたしましても四十八名の委員中過半数に達しておらない。これは諮問機関でございますから何も何名おらなければ成立しないということではないと存じますけれども、少くとも民主主義の原則に立ちますならば、やはり過半数の意思が当然取りまとめらるべきであるとわれわれは考えるわけでございます。ところがただいま御指摘申し上げましたように、一方におきましては四十八名中十八名、文部省は二十名、いずれにいたしましても過半数に達しておりません。そのようにきわめて出席率の悪い制度調査会でいろいろ審議された。ところがその審議の過程におきましてこの登録制に対しましては非常に反対の声もあった。これは文部省の方にも反対論の文書が出ておるようでございますが、いずれにいたしましても反対の声があったということはいなめないと思います。このように直接この著作権の問題に関係いたします協議会の人々が非常に強力に反対しておられる。ところが、私は現場におりませんからわかりませんが、いずれにいたしましてもそれを押し切ってこの登録制を採用されたということにつきましては、私はやはりわれわれ第三者といたしましても疑問を持つ要素というものがたくさんあると思います。そういった疑問を持つ要素が多分にあるにもかかわらず、この登録制というものは強行された、そのような意図が那辺にあったかということにつきまして、一つ明らかにしておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/50
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051・内藤誉三郎
○内藤政府委員 私どもは、今お話の著作権制度調査会は、条約の問題が一番問題があったのだから、その条約のときにこれは数十回も開いて慎重審議をいたしたわけであります。条約批准の手続をふまれましたあとで国内法の問題は大体条約の通りに規定したわけでございます。この点については大体著作権制度調査会の方も文部省におまかせ願っておったわけです。それを私の方としてはさらに念を押して開いた。しかし今お話の四十何名のうち二十何名というのは非常に成績がいいわけです。全員お出になることはほとんどございません。そこで二十数名お出になるという会は私どもの方としては出席率がいいと思っている。この制度調査会の中には著作権協議会の傘下団体もほとんど全部網羅されておるのです。ですからこの制度調査会のときにも、私もおりましたけれども、反対があったとは私ども聞いておりません。ただ今お話の新聞とかそういう雑誌の場合の登録はどうするかというような御質問は、二、三あったけれども、反対だという意見は私聞いておりません。私どもとしては今後の日米関係を処理する場合に、今までのベルヌ体制の場合には問題はないわけですけれども、日米関係は米国が納本登録という制度をとって、よその国の著作権を保護しない従来の例もありますので、できるだけ慎重にいたしたい。第一発行の年月日が問題になりますから、この年月日の登録をするというだけで、現行著作権法にも著作年月日の登録というものがございまして、それを発行年月日の登録にいたしただけでございます。反対されるのも、私非常にふに落ちないのであります。この問題は、私どもは当初の予算のときから問題にして、急にやったわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/51
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052・河野正
○河野(正)委員 制度調査会においては、ほとんど反対の声がなかったというふうなお話でございまするけれども、しかし私どもが承わったところによりますると、反対の声があったのだ、ところが参議院の文教委員会においては、局長が、制度調査会においては全然反対の声がない、全会一致でこのような結論を出したのだというふうな御報告をなさった。そこで参議院の文教委員会では、局長のそのようなお話をそのまま理解をして、この著作権の特例法に関する審議が非常に論議をかわすことなく、要するに制度調査会あるいは著作権協議会の意思がそのようであるならば、そのような人々の意思は尊重すべきだということで、この問題が非常にスムーズに片をつけられた。ところが実際問題としてはそうではなかったのだというような、私どもに対する申し出もあったわけでございます。そこで局長でございますし、またこの文教委員会という公式の席上でございまするから、よもや局長がそのような虚偽のことは仰せられぬとは思いますけれども、しかしながら少くとも私どもが承わっておりまする範囲におきましては、制度調査会におきましても——これは制度調査会における審議の過程でございまするから、著作権協議会とは多少問題は異なりましょうけれども、少くとも著作権制度調査会においては、何人かの反対の声があったというふうな意思なりあるいは意見なりというものが、私どもに申し出られておるわけでございます。ところがそういった意見が事実といたしますならば、局長が参議院の文教委員会において、全然問題にならなかったというふうな御報告をなさったことにつきましても問題があります。またあえてそのような態度をとられたことにつきましては、私どもがいろいろな疑問を持つ一つの非常に大きな要素にもなって参るというふうに私は考えます。そこでその点はやはりもう一度明確にしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/52
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053・内藤誉三郎
○内藤政府委員 参議院の文教委員会では、私の発言できめたとおっしゃるけれども、そういうふうには私了解していないので、この点につきましては江川教授の賛成者としての意見も聞かれたわけでございます。江川教授の意見としては、この向うのおっしゃる理由は問題にならない、ということをはっきりおっしゃった。それから中島さんと北村事務局長もお呼びになって、十分に審議を尽されたわけでございます。そうして最後に参議院の事務局の方で、一応北村事務局長の答弁要旨なるものをまとめられたわけでございます。そうしてこれに対する文部省の意見を逐一出せということで、私の方は逐一出したわけでございます。ところがその後になって、事務局長は参議院でおまとめになった資料に対して、この分は陳述しない、この分は事実を歪曲しておる、この部分は非常に趣旨の徹底を欠いておるというような文書を配付されたわけでございます。それで委員会としては、一たん公述された内容に対してまた反対の意見が出たという点が、私はむしろ非常に参議院の方々の心証に大きな影響があったと思う。私が申しましたのは、制度調査会にお諮りしたときは、制度調査会としては別に異論がなかったということは申し上げたのです。ところが、私の言ったことでなくて——さんざこの点は慎重に審議を重ねられたわけです。私の言った発言できめられたというのは、私は真相ではないと思いますので、参議院の議員の方々にお聞き下されば、その点は御了解いただけるのじゃなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/53
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054・河野正
○河野(正)委員 もう時間がございませんが、しかしながらなお若干の質問は残しております。ところがただいま申し上げますように、私どもの理解と局長のお話とには若干のずれがございます。そこでこの問題は二十八日までに片づけなければならぬ緊急を要する問題だと思いますので、一度委員長においては、著作権協議会から参考人をお呼び願いまして、参考人の意見を聴取した後に、最後的な結論を出すというふうにお取り計らいを願いたい。このことで私の質問を一応留保いたしまして、午前の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/54
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055・山崎始男
○山崎(始)委員長代理 了承しました。
午前の会議はこの程度とし、暫時休憩いたします。
午後零時四十五分休憩
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〔休憩後は開会に至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03019560424/55
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