1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年四月二十六日(木曜日)
午前十時四十一分開議
出席委員
委員長 佐藤觀次郎君
理事 赤城 宗徳君 理事 加藤 精三君
理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君
理事 米田 吉盛君 理事 辻原 弘市君
理事 山崎 始男君
伊東 岩男君 稻葉 修君
北村徳太郎君 久野 忠治君
杉浦 武雄君 田中 久雄君
千葉 三郎君 塚原 俊郎君
並木 芳雄君 野依 秀市君
町村 金五君 山口 好一君
八木 一郎君 河野 正君
小牧 次生君 高津 正道君
平田 ヒデ君 小林 信一君
出席国務大臣
文 部 大 臣 清瀬 一郎君
出席政府委員
文部政務次官 竹尾 弌君
文部事務官
(初等中等教育
局長) 緒方 信一君
文部事務官
(社会教育局
長) 内藤譽三郎君
委員外の出席者
参議院文教委員
長 加賀山之雄君
文部事務官
(大臣官房総務
参事官) 斎藤 正君
専 門 員 石井つとむ君
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四月二十六日
委員伊藤郷一君辞任につき、その補欠として八
木一郎君が議長の指名で委員に選任された。
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四月十二日
次の委員会開会要求書が提出された。
文教委員会開会要求書
地方教育行政の組織及び運営に関する法律案並
びに地方教育行政の組織及び運営に関する法律
の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案に
ついて審査のため
衆議院規則第六十七条により、四月十三日午前
十時より文教委員会を開会することを要求する。
昭和三十一年四月十二日
文教委員長 佐藤觀次郎殿
文教委員 坂田 道太
加藤 精三
高村 坂彦
米田 吉盛
田中 久雄
杉浦 武雄
町村 金五
伊東 岩男
稻葉 修
赤城 宗徳
塚原 俊郎
千葉 三郎
四月十三日
次の委員会開会要求書が提出された。
文教委員会開会要求書
地方教育行政の組織及び運営に関する法律案並
びに地方教育行政の組織及び運営に関する法律
の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案に
ついて審査のため
衆議院規則第六十七条により四月十四日午前十
時より文教委員会を開会することを要求する。
昭和三十一年四月十三日
文教委員長 佐藤觀次郎殿
文教委員 坂田 道太
赤城 宗徳
加藤 精三
高村 坂彦
米田 吉盛
伊東 岩男
北村徳太郎
稻葉 修
杉浦 武雄
塚原 俊郎
田中 久雄
四月十四日
次の委員会開会要求書が提出された。
文教委員会開会要求書
地方教育行政の組織及び運営に関する法律案並
びに地方教育行政の組織及び運営に関する法律
の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案に
ついて審査のため
衆議院規則第六十七条により、四月十六日午前
十時より文教委員会を開会することを要求する。
昭和三十一年四月十四日
文教委員長 佐藤觀次郎殿
文教委員 赤城 宗徳
坂田 道太
高村 坂彦
加藤 精三
米田 吉盛
伊東 岩男
稻葉 修
北村徳太郎
杉浦 武雄
塚原 俊郎
田中 久雄
四月十六日
次の委員会開会要求書が提出された。
文教委員会開会要求書
地方教育行政の組織及び運営に関する法律案並
びに地方教育行政の組織及び運営に関する法律
の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案に
ついて審査のため
衆議院規則第六十七条により、四月十七日午前
十時より文教委員会を開会することを要求する。
昭和三十一年四月十六日
文教委員長 佐藤觀次郎殿
文教委員 赤城 宗徳
米田 吉盛
高村 坂彦
坂田 道太
加藤 精三
伊東 岩男
塚原 俊郎
杉浦 武雄
田中 久雄
北村徳太郎
稻葉 修
四月十七日
次の委員会開会要求書が提出された。
文教委員会開会要求書
地方教育行政の組織及び運営に関する法律案並
びに地方教育行政の組織及び運営に関する法律
の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案に
ついて審査のため
衆議院規則第六十七条により、四月十八日午前
十時より文教委員会を開会することを要求する。
昭和三十一年四月十七日
文教委員長 佐藤觀次郎殿
文教委員 赤城 宗徳
高村 坂彦
米田 吉盛
加藤 精三
坂田 道太
田中 久雄
杉浦 武雄
塚原 俊郎
伊東 岩男
稻葉 修
四月十八日
次の委員会開会要求書が提出された。
文教委員会開会要求書
地方教育行政の組織及び運営に関する法律案並
びに地方教育行政の組織及び運営に関する法律
の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案に
ついて審査のため
衆議院規則第六十七条により、四月十九日午前
十時より文教委員会を開会することを要求する。
昭和三十一年四月十八日
文教委員長 佐藤觀次郎殿
文教委員 赤城 宗徳
坂田 道太
加藤 精三
高村 坂彦
伊東 岩男
町村 金五
塚原 俊郎
並木 芳雄
杉浦 武雄
米田 吉盛
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本日の会議に付した案件
万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に
関する法律案(内閣提出第七七号)(参議院送
付)
夜間課程を置く高等学校における学校給食に関
する法律案(参議院提出、参法第七号)
公立養護学校整備特別措置法案(参議院提出、
参法第八号)
盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に
関する法律の一部を改正する法律案(参議院提
出、参法第九号)
教科書法案(辻原弘市君外八名提出、衆法第四
四号)
初等教育及び中等教育の教育内容等に関する法
律案(辻原弘市君外八名提出、衆法第四五号)
義務教育諸学校の児童及び生徒に対する教科書
の給与に関する法律案(辻原弘市君外八名提出、
衆法第四六号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/0
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001・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 これより会議を開きます。
まず万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律案を議題とし、審査を進めます。
この際暫時休憩いたします。
午前十時四十二分休憩
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午後三時三十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/1
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002・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
午後はまず参議院提出の三法案について提案理由の説明を聴取し、その後に午前に議題といたしました万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律案に関する質疑に入ることといたします。
それでは、まず参議院提出の夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律案、公立養護学校整備特別措置法案並びに盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案を一括議題とし、順次その提案理由の説明を、提出者である参議院議員加賀山之雄君より聴取いたします。加賀山君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/2
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003・加賀山之雄
○加賀山参議院議員 ただいま議題と相なりました参議院文教委員会提案の三法律案につきまして、その提案理由と内容の概略を御説明申し上げます。
まず夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律案について申し上げます。
戦後の新教育制度の一環として、昭和二十三年度から発足しました高等学校の定時制教育は、恵まれない勤労青年達に、大学進学への道にも通ずる正規の高等教育を与えるもので、多数の青年に明るい希望を抱かせつつ、技能と知識と教養を修得させる点で、大きね意義を持つとともに、多大の成果をあげて参ったのであります。しかしながら、近年、地方財政の窮迫と国の財政的援助の不十分なことからいたしまして、この画期的な制度が行き詰りつつあるという声が、次第に強くなって参っておるということも事実であります。
この際国としてもこれが振興につきまして何らかの適切な措置をする必要があると考えられますが、特に必要な、しかも緊急を要する問題としては、夜間課程に学ぶ生徒に対する給食の実施ということがあります。
今日、定時制課程に学ぶ約五十四万人の生徒中夜間の生徒はその七割の約三十八万人を占めておりますが、働きながら学ぶこれら青少年の体位が劣っており、結核罹病率の高いことに各方面の調査で明らかになっております。しかも、生徒達の多くは職場から直接夕食もとらないで学校へかけつけて、勉強し、帰宅後十時、十一時というおそい時刻に食事をしているのが実際でありまして、このような状況が発育途上にある生徒達の健康上誠に悪い影響をもたらすものであることは、きわめて明瞭でありまして、給食の実施はこれら生徒、及び関係父兄、教師より切実に要望されているところであります。
このような実情にかんがみまして、夜間の生徒に対する給食の実施は、国としても適切な援助を与えることが緊急を要する課題であると考え、今回本法案を提出致した次第であります。
次に本法案の内容について御説明申上げます、本案の第一の重要点は、第一条にかかげました目的でありまして、ここにおきまして義務教育諸学校を対象とする現行の学校給食法とはやや異った観点から、この給食が勤労青年の身体の健全な発達に資するためのものであるということを規定いたしております。第二点といたしましては、第二条以下夜間学校給食の実施についての諸種の規定をいたしておりますが、これは現行の学校給食法とほぼ同一の規定でございます。すなわち、夜間課程を置く高等学校の設置者は夜間学校給食が実施できるように努めるとともに、国及び地方公共団体も夜間学校給食の普及と健全な発達をはかるように努めることを規定いたしております。また国は、公立、私立を問わず、その設置者に対し、予算の範囲内で夜間学校給食の開設に必要な施設または設備に要する経費の一部を補助することができる旨規定するとともに、夜間学校給食用の小麦は、国が食糧管理特別会計の負担において価格を低廉にしたものを使用させることができる旨を規定いたしております。
なお、附則において本法律は公布の日から施行すると規定しておりますが、給食に使用する小麦又は小麦粉の価格を低廉にするための食糧管理特別会計に関する規定と、施設、設備費の国庫補助についての規定は、昭和三十二年四月一日から施行することといたすとともに、給食用の乾燥脱脂ミルクについては小、中学校と同様、関税を免除することとし、関税定率法の一部を改正いたしております。従いまして、本年は、準備段階として一部の希望生徒に低廉な乾燥脱脂ミルクを使用させるにとどめ、来年度から本格的な給食を行うことを企図いたしておるのでございます。
以上をもって夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律案の提案理由並びに内容の説明を終ります。
次に公立養護学校整備特別措置法案の提案の理由及びその内容の概略につきまして御説明申し上げます。
昭和二十二年に学校教育法が公布されまして、学齢に達した子女の就学義務がその保護者に課され、都道府県には、その区域内にある学齢児童及び学齢生徒のうち、盲者、ろう者または精神薄弱、身体不自由その他心身に故障のある者を就学させるために必要な盲学校、ろう学校または養護学校の設置義務が課されたのでございますが、同法の附則におきまして、これらの諸学校への就学義務並びにこれらの諸学校の設置義務の施行期日は政令で定めることになっておりました。
その後、盲学校及びろう学校につきましては、昭和二十三年度から、政令によって、就学義務及び設置義務が学年進行をもって施行されまして、本年度をもって完成を見ることに相なりましたが、ひとり養護学校のみは、今日ねお義務教育のらち外に置れているのでございます。
しかるに、昭和二十九年度においての学齢児童生徒のうち肢体不自由児の数は約十二万人、身体虚弱児は約二十七万人、精神薄弱児は実に七十八万余人と推定されるのでございまして、これらが学齢児童生徒の総数に対して占める比率は、それぞれ〇・六七%、一・五五%、四・五%に達しておりますのに対しまして、これらの児童生徒を収容して教育を施す学校といたしましては、昭和三十年度の調査によりますると、全国に公立二校、私立四校・計六校の養護学校を教えるにすぎず、この六校に収容しておりまする児童生徒の総数はわずかに三百二十六人というきわめて少数でありますのみならず、これらの児童生徒のための一般義務教育諸学校における特殊学級の増設すらも遅々として進まず、わずかにその必要数の五十分の一に相当する約一千学級が全国に設置されているにすぎないのが現状でございます。
去る昭和二十九年の第十九回国会におきまして、盲学校ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律成立の際、本院文部委員会の附帯決議として、盲者、ろう者以外の心身に故障のある者に対する義務教育の現状にかんがみ、これが充実を図るため、関係法令及び養護学校、特殊学級等の教育施設の整備其他必要な措置を講ずることが、全会一致をもって議決され、衆議院文部委員会におかれましてもこれと全く同趣旨の附帯決議が付されております。また同年十二月に答申された中央教育審議会の特殊教育並びに僻地教育振興に関する答申中にも養護学校を義務制とする前提として、その設置を進め、これを設置しようとする地方公共団体に対して、国は財政措置を講ずること、特殊学級の設置のための年次計画を立て、これが促進のために必要ね教育及び設備につき財政上の措置を講ずること、ということが指摘されたのでありますが、学校教育法公布以来すでに九カ年をけみする今日、いまだに養護学校の教育に対する根本的措置が講じられませず、本年度においてようやく一校新設のための経費として千五百万円の予算計上を見たにすぎない実情でございまして、このような現状のまま推移いたしますことは、教育基本法にうたわれております教育の機会均等の趣旨にもとりますばかりでなく、今日手をこまねいて彼らの教育をおろそかにいたしますことは、他日彼らの生活保障のため莫大な経費を必要とすることとなり、国策上から申しても賢明を欠くものと申さなければなりません。
如上の理由によりまして、本法律案は、養護学校における義務教育のすみやかな実施を目標として、公立の養護学校の設置を促進してその教育の充実をはかることを目的とし、建物の建築・教職員の給料その他の給与等に要する国及び都道府県の費用負担その他必要な事項に関して特別の規定をいたしております。
内容の主要点について申し上げますと、その第一点は、公立の養護学校を新築または増築する場合に要する経費の二分の一を国が負担することとし、危険校舎の改築に要する経費の三分の一以内を国が補助することといたしたことであります。
第二点は、教職員給与費は都道府県の負担とし、その実支出額の二分の一を国庫負担として、義務教育費国庫負担法の例にならい、教材費についてもその一部を国の負担としたことであります。
第三点といたしましては、教職員の給与の種類及び額を当分の間、各都道府県の条令により、盲学校ろう学校の教職員の給与の種類及び額を基準として定めることといたしました。
第四の点は、本法の施行期日についての規定でございます。すなわち、第三条から第六条まで及び附則第六項の規定は昭和三十二年四月一日から施行することを附則において規定し、第二条の建築費の負担関係につきましては、すでに本年度予算に計上されておりまする関係上、本年度からこれを施行することを明らかにいたしたのでございます。
なお附則におきまして、教育公務員特例法、地方財政法等について所要の改正を加えております。
以上をもちまして公立養護学校整備特別措置法案の提案理由の説明を終ります。
次に、盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案について御説明を申し上げます。
御承知の通り、昭和三十一年度予算には盲学校、ろう学校の高等部生徒全員に対する教科用図書購入費について国がその三分の一を補助する経費約二百万円が計上されております。
このことは、盲学校、ろう学校の教育が特殊事情にあることによるものと考えられるのであります。すなわちかような特殊教育は義務教育九カ年だけでは十分と申せないので、盲者やろう者が社会に出て普通人と伍して働けるようになるためには、少くとも高等部へ進み、適当な職業教育をおさめることが、ぜひとも必要であり、そのような意味合いから、就学奨励の一端として、今回の措置がなされたのでございます。
しかしながら、教科書代の三分の一を補助するということは、設置義務を課せられている都道府県が三分の二を支弁することを期待しての措置でございまして、これはやはり、小学部、中学部の児童生徒に対する教科書代の支弁方法と同様に、国と県が半分ずつ持つことが適当であると考えるものであります。
よって、昭和三十一年度に限っては盲ろう学校高等部生徒の教科書代を国が三分の一以内支弁することといたし、昭和三十二年度以降は、盲ろう学校及び養護学校の高等部の生徒の教科書代の二分の一を国が負担することと規定いたしました。これが本法律案の第一の改正点でございます。
次に、現行法第三条では、この種の就学奨励費の支給方法を規定しておりますが、同条第二項におきまして、県教育委員会から経費の交付を受けた校長は、政令の定めるところにより、現物または金銭をもつて該当者に支給しなければならないと規定しております。政令は、現物支給を建前といたしております。
このような法令のワクがあるために、現場においては種々困った問題があるのでございます。
すなわち、この就学奨励費は貧困度に応じて段階がありまして、そのため、生徒に支給する寝具、日用品、学用品等の物品に差異が生じまして、生徒児童に差別感を抱かせる結果となり教育上、種々の支障を生じております。
それ故、現金支給を主として、特別の場合のみ現物を支給し得ることと規定をいたしたのであります。
次に第三の改正点について申し上げます。
現行法は、その制定当時国会の修正によって養護学校の生徒児童をも就学奨励の対象といたしたのでありますが、いまだに義務制になっておりませんので現実にはその措置がなされていないのであります。
この現実は、養護学校教育の振興を阻むものであると考えられますので、先ほど提案理由を述べさしていただきました公立養護学校整備特別措置法案と並行して、養護学校教育の普及を促進するために昭和三十二年度以降、養護学校の生徒児童も、盲ろう学校の生徒児童と同じく、この法律の恩典が受けられるよう現行法を改めた次第でございます。
以上が、本法律案の提案理由並びに内容でございます。
右三法案につきましては参議院文教委員会におきまして慎重に協議検討を重ねました上、この際きわめて適切な措置であると思料いたしましたので、全会一致をもちまして委員会提案として発議いたし、四月二十三日の参議院本会議におきまして全会一致をもちまして可決された次第でございます。
何とぞすみやかに御審議下さいまして、御賛同下さいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/3
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004・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 以上をももまして三法案についての提案理由の説明は終りました。三案に関する質疑は後日これを行うことといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/4
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005・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 これより万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律案について質疑に入ります。質疑を許します。河野正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/5
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006・河野正
○河野(正)委員 著作権の特例法に関しまして先日から引き続いて御質問をいたしたいと思いますが、先日私が質問いたしましたいろいろの質問の過程、あるいはまたその後辻原委員から行われました質疑の過程、あるいはまた本日非公式でございましたけれどもいろいろ当事者から承わりましたいろんな論議の状況、こういったものを通じて私どもが考えますることは——もちろんこれは政治的な問題でございませんから、これは取りまとめ方にいろいろございましょうけれども、私どもが第三者として本案を見て参りまして問題と考えまする点は、大体私二つに大別されるのではなかろうかというふうに考えて参ります。
まず第一点につきまして問題点を提示いたしまして質疑を行いたいと思いますが、それは今度の著作権の問題を通じまして最も直接の実例実害を受けますのは、これは著作権を設定されまする著作権者の方々であるというふうに考えます。ところが今日までいろいろ御意見を承わっておりますると、政府といたしましてはいわゆる著作権者を保護するための法律である、いわゆる保護政策と申しますか、著作権者の権利を守るための法律である、かような御趣旨のようでございます。ところが直接この著作権の法律と実利実害の関連を持って参ります著作権者の方は、この法案に対しましてきわめて強硬な反対の態度を示されております。この点は、法理論的あるいは技術的だという点は別といたしまして、私ども第三者として非常に割り切れぬ感情を持ちまするのは、政府が先ほどから申し上げますように著作権者の権利を守るための法律だ、ところが守ってもらおうとする著作権者は反対だ、ここに私ども第三者といたしまして非常に大きな第一の矛盾を感じて参ります。そこでまずその点を一つ大臣から御所感を承わってみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/6
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007・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 本日非公式に供述をされた方がありますが、これは著作権者全部の意見と私は了承しておりません。私も及ばずながら一、二著作権を持っておりますが、第一誤解されておることは、アメリカで裁判が起ったら立証の義務は被告にあるとおっしゃるのです。そんなことは決してございません。英米法においては原告に立証の責任があるのです。それを第一誤まっておられるのです。横書賠償を訴えようと思えば、おれが著作してCをつけた、何月何日に発行したという証明は原告にあるのです。原告がそれを証明する際に日本政府の登録証を持っていけば、これは有益でありますが、それだけで勝てるとは思いませんよ。しかし非常に都合のいいことなんです。それを逆に非常に熱心におっしゃられて——あの方は私知っておりますけれども、きょうは平生と別人のような熱意をもっておっしゃいますが、ここが一つ違っておる。私はやはり本法案の趣旨を十分に了解して下さるならば、多くの著作者は賛成されると思うのです。登録のことは何も今度が初めてじゃないのです。現在の著作権法の第十五条を見て下さるというと、第一項には、著作権の相続譲渡の登録があり、第二項には変名の著作権者でもやはり登録することができるとあり、第三項には現に著作権を有するといなとにかかわらず、著作物の著作年月日の登録ができるのです。そして今の日本の現行法では著作年月日が必要だからその登録を許しておるのです。今度は条約に入った結果、発行年月日が要るようになりましたから、発行年月日の登録をなすことができるのです。法律がなだらかにできていて、今度の修正しようという著作権法自身をごらん下さるというと、非常にいい法律だということがわかります。ずっと終りの三十五条を見て下さるというと、これは立証の責任のことです。そこで今の十五条を引用して第五項に著作物の著作年月日の日付を推定する規定があります。今度入れますから、発行年月日の推定を受けるのです。非常にいい規則でありまするが、元の台本たる現在の規則を見ないで、あの規則だけを取り出して非常におっしゃいまするけれども、私は日本の著作者のために非常に有益な保護規定である、かように信じておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/7
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008・河野正
○河野(正)委員 大臣の御答弁を承わって参りますると、そういった考え方も私どもはわかります。ところが今度の提案されましだ法律というものは、いわゆる行政上の監督権を強化するとかあるいは取り締るのだとか、そういった法律でございますならばまた別でございますけれども、しかしながら政府の提案されました趣旨というものは、先ほどから大臣あるいは局長もるると説明されますように、著作権者の権利を守ってやるところの、言葉を平たく申し上げますならば、親心で作ったところの法律である、かように先日からるる説明されておるわけでございます。ところが親心を示してもらうわけでございますから、これは常識的に考えてみますると、欣然として著作権者の方からそういつた法律を作ってくれというような申し出があることの方が私はむしろ自然的ではないかというふうに考えるわけでございます。ところが政府の方では親心、要するに権利を擁護するための法律である、当然喜んで受けていただかなければならぬ、著作権者——これは私どもとは関係ございません。著作権協会の関係であるのでございますけれども、こういった保護を受けられる方々が反対である、この辺の事情は私どもといたしましても何か割り切れぬものがございます。その点について大臣は訴訟その他法律的な立場からいろいろと御説明いただきました。私もそういった立場、大臣のお心持はわかりますけれども、もし紛争が起ってもこういった法律を作っておけば非常に有利になるのだ、著作権者の権利というものがそういったことによって訴訟その他が非常に有利に展開するのだというふうな御趣旨を、あなた方が十分著作権協会なりあるいは今日まで強く反対してこられました方々に対しまして納得せしめられましたならば、私はそういった今日起っておりますようね異論は起って参るまい、ところがそういった異論が強く行われ、しかも本日非公式でございましたけれども、非常に強い反対の声が今日上っておる、その辺に私ども何か割り切れぬものがあるのでございます。そこで大臣は法理論の立場から御指摘になりましたが、そういった立場を誤解して著作権者の方々が強く反対しておられるのか、あるいはまたその背後に何ものかがあって反対しておられるのか、その辺をもう少し——私ども政治家としては直接に関係はございませんけれども、第三者といたしまして、そういった点は政府といたしましても、親心で作られた法律でありますから、やはり十分納得のいく御説明を願って、この問題を円満に収拾されました方があとくされもありませんでいいと思います。その辺もう少し納得のいく範囲において御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/8
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009・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 この論点については、今申した通りでございます。あの協会のうちにも私存じ上げておる方もありますし、もし皆さんのお力でこの法律案が成立でもいたしましたら、私は極力御説明申し上げたい、かように思っております。それらの人々によく説明すれば御納得下さることだろう、何もこれは登録を強制する法律でもありませんし、いやなればおやめになったらいい。けれども登録しておかれるというと、日本でも役に立ちますが、アメリカでも、紛争が起って自分の権利を主張する時分に、こうしておるのだといって持っていくなり、郵送でもするなりすれば、非常に訴訟の便宜を得ることだと私は信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/9
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010・河野正
○河野(正)委員 その点は私どもいずれが是であり、いずれが非であるかという判断を下すわけには参らないのでありますが、なお一点お伺い申し上げたい非常にわかりにくい点がございます。それは今度日本が万国著作権条約を批准をいたしまして、いよいよ二十八日から発効するわけでありますが、この万国著作権条約というものは、これはもう私がいろいろ申し上げるまでもなく、今までのベルヌ条約とパン・アメリカン著作権条約、この二つの条約の橋渡しをするというのが、万国著作権条約の精神であり、趣旨であると考えておるわけであります。そういたしますると、今日までベルヌ条約とパン・アメリカン条約と二つあり、そこにいろいろ問題があるので、それを橋渡しするために万国著作権条約ができたということになりますと、今度万国著作権条約に示されましたコピー・ライト、いわゆるCを実行していくということだけで、大体著作権の権利が発生するのではないかというふうに私は考えるわけであります。ベルヌ条約とパン・アメリカン条約との二つが両立しておったという事態の中におきましては、登録という必要も若干考えられるのではないかということも考えられます。ところが今日では万国著作権条約ができまして、ベルヌ条約とパン・アメリカン条約との二つを橋渡したわけでありますから、大体万国著作権条約のコピー・ライトの記号で事足りるのではないかと私ども第三者としては考えるわけであります。ところが万国著作権条約に批准しながら登録制を設けるということは、何か二重登録ということになるのではないかという感じを第三者として持つわけでありますが、その辺の事情を一つ御解明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/10
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011・内藤誉三郎
○内藤政府委員 これはお話のようにCで著作権が発生するわけであります。発生しますけれども、アメリカでは、条約でも認めておりますが、訴訟の場合には納本登録をしなければ訴訟は成り立たないわけであります。著作権発生の要件としては登録は必要はないわけであります。しかし訴訟になった場合には、現行法におきましても、著作権年月日の登録とか、実名登録、相続登録というのもありまして対抗要件になるわけであります。そういう趣旨で、訴訟の場合を考慮して、この登録制を設けたわけでありまして、別に万国条約の趣旨にもベルヌ条約の趣旨にも違反してないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/11
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012・河野正
○河野(正)委員 その辺がちょっと私どもわかりにくいと思うのですが、そういった紛争がいろいろ起ってくる、起ってくれば困るので、ユネスコが中に入りましていわゆる万国著作権条約ができたというふうに私どもは理解するわけです。そういたしますると、紛争が起るとどうせアメリカの国会図書館の登録局に納本、登録いたしまして、そうして証明書で争うということでございまするから、その紛争が起っても、いよいよ訴訟になってくるということになりますれば、これはもう問題外でございますけれども、その以前におきましては、大体ベルヌ条約あるいはパン・アメリカン条約の上に万国著作権条約ができたわけでございまするから、それに加盟いたしますれば、この万国著作権条約の精神からいくとその必要はないのではなかろうか。もしその必要を認めるということになると、何のために万国著作権条約にわれわれが批准したかという点に多少私は疑問が生じてくると思うのでございまするが、そういった立場から一つ御解明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/12
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013・内藤誉三郎
○内藤政府委員 これは今申しましたように、万国条約では御承知の通り・今までアメリカは納本、登録制度をひいておりますから、納本、登録をしなければ著作権というものは発生しないわけです。ですから権利侵害というものは起きてこない。しかし今度初めてCと年号と氏名を書けば著作権が発生する。こうなりましたので、当然著作権の侵害が起きてくると思うのであります。その場合に、従来は著作権が発生しないのだから、権利が発生しないところに権利侵害はないのですけれども、今後は非常に権利が主張できるわけなんです。その場合の権利侵害に対して、それに対抗する手段を講ずるのは、これは当然ではなかろうかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/13
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014・河野正
○河野(正)委員 その点、これは第三者としていろいろ論議されておりまするから、納得のいくということで御質問申し上げたい点でございまするが、もし大臣がおっしゃいますように、これは著作権の権利を擁護するところの保護政策である、権利を守っていくところの法事であるということになりますると、午前中はイタリアの問題も出て参りましたが、万国著作権条約に批准いたしております各国も、やはりそういった登録制を持つということが生まれてくるのではないか。日本も著作権を守らなければなりませんが、今までベルヌ条約を持っておりました西欧諸国におきましても、やはり著作権を守るという考え方につきましては同様だと思うわけでございます。そういたしますると、欧州各国におきましてもやはりこういった登録制というものがとられておるべき筋のものではなかろうかというふうに、常識的に考えるわけであります。ところが午前中もいろいろ論議されましたが、イタリアは内容は別といたしまして、形式的にはあるといたしましても、その他の国々はほとんどないようなことでございます。しかしながら著作権の権利を守っていこうという考え方は、日本であろうがフランスでございましょうが西ドイツでございましょうがこれは変りはないと思います。ところが諸外国ではこういった制度を持たない。日本だけ持つということになりますと、何かその背後にお考えがあるのではなかろうかという疑問を私ども第三者として持つわけでございます。
そこでお尋ね申し上げたいのは、諸外国ではないということでございますが、ことに日本がこの登録制にいろいろな反対があるにもかかわらず固執せられる点につきまして、若干の御解明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/14
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015・内藤誉三郎
○内藤政府委員 現在まで十八カ国がこの万国条約に批准しておるのでありますが登録のございますのはフィリピン、ハイチ、アメリカ合衆国、コスタリカ、チリーで、この法案が通りますれば日本も入るわけでございます。現行著作権法の中には登録制がございますので、私権に関する重要な問題でございますから、将来争いが生じた場合に私どもとしては万全を期しておく必要があると考えたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/15
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016・河野正
○河野(正)委員 最後に問題になりますのは、いろいろな反対を押し切って登録制をとるということが著作権を擁護する一つの方法だと、大臣からも法理論的な立場、訴訟技術的な立場から先ほど来申し述べられましたから、一応了承するといたしましても、紛争が起った場合にこの問題が有利に解決するということが前提とならなければ、やはりこの問題をそのまま了承することはちょっと無理ではないか。これは著作権協会の当事者の方々が御賛同願っておれば別でございますが、非常に強く反対の意思を示しておられるのです。政府が先ほどから御答弁なさっておりますように、紛争が起ったが、登録をしておったために非常に訴訟が有利に展開するということになれば、これは問題ないと思います。そこであえて登録制をとられる以上は、やはり紛争あるいは裁判を有利に展開するということが前提にならなければならぬと考えます。この点は先日私が申し述べましたし、また本日いろいろ論議されておったようでございますけれども、何といたしましてもこれが一番重要で、これが成果を上げなければ政府がおっしゃっておられる親心が成り立たないわけでございます。これは登録制をあえて強行するためには非常に重要な問題となると思いますので、この点を重ねて御解明願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/16
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017・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 第一、発行の日が日本の法廷で争いになる場合には、今回の登録の謄本を提出すればそれで問題は決するものと思います。日本の裁判慣例は公文書は否認せない慣例になっております。アメリカでは事情が違いまして、外国の公文書は私文書と同じでありまするから、やはりこれだけをもって一発で勝つわけにはいかない。日本において登録局というものがあるのだ、そして登録局のこれが公けの証明だ、これだけの証明は宣誓の上だれかが証明しないと証拠にとれないのです。向うの民事法廷は神に向ってうそを言わぬといった宜誓証言が一番であります。それなしに外国の文書一発で勝つわけにはいかない。しかしながらこれがありましたら非常に容易になります。その証人を日本から呼ばぬでも、向うにおります領事なり大使館員なりで証明しますから、それでいけると思いますので、非常に便利な方法だと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/17
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018・河野正
○河野(正)委員 もし大臣の仰せになりますように、この登録を行うことによって、その証明書を提出することによって裁判が有利に展開することになりますならば問題はないと思いますけれども、私どもは今日まで不幸にいたしましてアメリカが日本の法律を無視したという例をたくさん拝見して参りました。
そこで私どもが心配いたしますのは、今日このよう血反対を無理に押し切って登録制をとられ、しかもアメリカが日本の登録を無視するということになりますならば、これは全く大臣の親心というものは意味がないことになりますので、私どもはその点を非常に心配しておるわけでございます。大臣はそのような登録制をとることによって証明書を提出する。しかも日本政府が提出するので、信憑性も非常に強い。従って有利に展開するだろうというような一つの時期を持っておられるものと考えまするけれども、しかしながら今日日本の国内にいろいろなアメリカとの紛争が起っております。ところがそういった紛争に対しまして日本の裁判所が下しました判決、こういった判決がほとんどアメリカから否認されるというふうな実例がたくさんございます。もちろんそれは駐留軍関係だとおっしゃればそれまででございますけれども、本質的に日本の法律を無視していく態度というものは私は変ったことはないというように考えておりまます。そこで私どもややともいたしますると、せっかく大臣が親心で、そうすることによって非常に著作権を守るために有利になるのだというようなお考えでございましても、あるいは失礼でございますけれども、向うがそれを無視するかもわからぬ、この点が一つ私どもの心配でございますし、また著作権協会の方々が言っておられる中の一つの大きな要素になっておろうと思います。
そこで一つ事務当局にお尋ね申し上げたいのは、先ほども答弁がありましたように、チリー、フィリピン、その他におきましては登録制をとられておるそうでございますが、そういった登録制をとっております国とアメリカとの間に紛争が起りました場合に、何かそういった紛争というものが有利に展開したというような実例、調査資料を持っておられまするかどうか、この点は非常に参考になりまするので、一つ本席上でお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/18
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019・内藤誉三郎
○内藤政府委員 今までは先ほど申しましたように、アメリカで著作権が原則としては発生していないので、特に著作権国に納本登録しておれば別ですが、そうでない限りは、日本の著作権は保護されておりませんので、そういう実例は今後発生する問題でございますので、現在はそうないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/19
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020・河野正
○河野(正)委員 ちょっと私の言葉が足りなかったので誤解されたと思いますが、日本は今後の問題だろうと思います。ところが先ほど諸外国の中でフィリピンとか、チリーとか、そういった諸国が登録制をとっておるというふうなことでございますから、そういった国とアメリカとの紛争において、こういった問題がどう取り扱われたか、そういった調査資料があるならここで御発表願いたいということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/20
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021・内藤誉三郎
○内藤政府委員 そういう資料は私ども今手元にございませんが、近くパリにおいて政府間会議もありますので、各国の資料も相当詳しく出ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/21
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022・河野正
○河野(正)委員 この点は国際的な政府間会議もあるということでございますから、その点についてはさらに後ほど御質問申し上げたいと思いますが、こういった紛争の問題につきましては、午前中も非公式でございましたが、いろいろ論議がかわされて参りました。その中で私ども若干疑問を持ちます点は、登録が一年以内に行われなければならないということでございます。そういたしますると、これが任意登録でなくて、完全登録というような形になりますれば別でございますけれども、任意登録というものは強制せぬということで反対がある場合には、任意登録というようなことで非常に便利な答弁になるわけでございますけれども、私どもから見て参りまして、任意登録という問題につきましては多少疑問を持って参ります。と申しますのは、これは午前中の非公式の懇談会の席上でも論議されて参りましたが、紛争が一年以後に起ってくる。そうすると登録されぬわけでございますので、それはこの法律の庇護を受けて参るわけには参りません。そうすると、任意登録でございますけれども、結果的にはやはり全部一年以内に登録しておかなければならないということになるのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。そこでもちろん十年、二十年先に登録してもらうと、それは調査資料その他内容を検討する場合に非常に不便だということはわかりますが、これは午前中の懇談会の席上でも論議されましたように、こういった紛争の起る事例は非常に僅少だというようなことでございます。僅少でございますならば、何も登録を一年に限ったことでなくて、要するにそういった紛争が起ってきたときにいつでも登録されるというような形をとって参られますれば、私はある程度政府の親心ということもわかります。ところが一年ということに限られますと、それもたくさんな紛争の事例が起ってくるということになりますと、これは政府としても十年、二十年さかのぼって調査することはなかなか困難でございますけれども、紛争が起ってくる事例というものは非常に少いということを先ほども強調されております。局長も再三御指摘されております。そういたしますと、むしろ登録期間を一年で切るということは、親心と申されますけれども、かえってそれが弊害になるおそれがある。紛争が起って、さあ登録しようと思っても登録されないということになって、かえって一年間に登録するという規定が災いするのではないかというふうに考えるわけでございますが、その点いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/22
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023・内藤誉三郎
○内藤政府委員 一年以内と切りましたのは、今お話のように信憑性の問題になると思います。十年、二十年先になって登録したものをこちらでも確信が持てないという点もございますので、やはり一年という年限を切ったわけでございます。ただ今お話のように、対米関係で保護される著作物はやはり相当限定されてくると思います。おそらく一年間に大体何十万、何百万と出ている著作の中で非常に限定されてくると思うのです。しかし私どもは全部がこの保護の対象になるとも考えてない。おのずからそこに限界が出てくると思う。そういうものは一年内に趣旨を徹底させますならば登録していただけると思っております。あまり長くなりますとかえって信憑性という点において問題が出てくると思いますので、この登録の更新力を強めるためにも一年以内に限った方がよいのではないか、かように考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/23
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024・河野正
○河野(正)委員 ところが先ほど午前中の論議もございましたが、今度の登録の問題で一番問題になるのは何であるかというような質問に対しまして、新聞紙であろうというようなお答えもあったことを承わったのでございますが、新聞等は同じ一日々々の日刊にいたしましても、何々版何々版ということで、大きな新聞社になりますと、二十版くらいになるというようなお話も承わっております。そうなりますと、私どもは手続の面から考えましても、あるいはまた手数の面から考えましても、あるいは経費の面から考えましても、登録制というものは限局される。だから登録で一番問題になりますのは、新聞雑誌というようお話を聞きますると、一部でございますけれども、その一部の著作権というものは非常に煩雑な手間を要することになるわけでございますが、その点はいかがになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/24
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025・内藤誉三郎
○内藤政府委員 新聞などの場合に著作権が発生するというのは、たとえば新聞小説とか——ニュースは著作権は発生しませんから、新聞小説とか記名入りの論説が著作権になると思いますが、これは非常に限定されておるものであります。ですから新聞小説の場合を考えて、一年で大体完了するということ歪、一年の終りに登録していただけばいいと思います。そういうふうなことを考えておるので、毎日々々を登録していただくというふうには考えていないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/25
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026・河野正
○河野(正)委員 新聞の内容につきましても、いろいろ専門家の立場から見ますれば意見があると思いますが、私どもいろいろ静かに思いをめぐらしましても、大体連載小説あるいは漫画あるいは署名入りの報道記事、あるいはまた論説、あるいは広告のごときもさようであるそうでございますが、いろいろ多種多様にわたっておると思います。そうしますと、一々内容が違うわけでございますから、やはり結果的には一日々々のものを登録するというふうなことになあるのではないかと思いますが、それの技術的な面はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/26
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027・内藤誉三郎
○内藤政府委員 その必要がある、ぜひこれは著作権で保護したいという確信のおありのものはしていただかなければならぬと思うのです。していただいた方がいいと思いますけれども、特に対米関係においてどういうものが最も関心があるかということは、おのずから限定されると思うのです。全部が著作権保護の——もちろん保護しければなならぬですけれども、訴訟の要件にはならないと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/27
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028・河野正
○河野(正)委員 その点はいろいろ申し上げましても、私どもが実際にタッチしておるわけではございませんから、技術的なものはこれ以上追及もできませんが、なお具体的な問題につきまして二、三御質問申し上げたいと思います。
それは第一発行の場合は問題ございません。ところが改訂あるいは増補というようなことで、第二、第三発行というようなことが生れて参りますね。この点はどの点を改訂したのか、あるいは増補したのか、これはやはり具体的に調査しなければならぬと思うのです。これは単に申請書を受け付けて、そして形式的に登録するというようなことだけでは、改訂、増補というような場合には、やはり問題が起ってくるであろうというように考えるわけでありますが、やはり著作権の信憑性と申しますか、そういった点を考えて参りますと、これも当然考えられて参ります。そういった場合の処置はいかがなるわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/28
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029・内藤誉三郎
○内藤政府委員 これは第一発行だけを対象にしておるのでございますから、改訂、増補のようなものは対象になりません。すなわち第一発行から保護期間が二十八年というふうにアメリカでは保護しておりますが、それだけを対象にするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/29
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030・河野正
○河野(正)委員 そうすると第二、第三発行で非常に大幅に改訂するとか、あるいは増補するというようなことがありますと、内容はきわめて変ってくると思うのですが、その場合はやはり対象にならぬわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/30
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031・内藤誉三郎
○内藤政府委員 それは第一発行だけを対象にしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/31
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032・河野正
○河野(正)委員 第一発行だけが対象になるということで、第二、第三発行は対象にならないということになれば問題ないと思いますが、さらに質問を続けたいと思います。
先ほどちょっと局長も述べられましたように、五月か六月に国際的な政府間会議が行われるということでございます。この政府間会議でどういうことが議題になるかわかりませんが、おそらく日本政府といたしましては今度特例法を設けられる、こういった資料を持参されまして、そしてこの資料を中心にして会議に臨まれることであろうというように考えるわけでございますが、内容はさようなものでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/32
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033・内藤誉三郎
○内藤政府委員 中身については別にきまっておりませんが、ともかくこの万国条約が実施されまして間もないことでありますので、各国に非常に疑問が多いわけでございます。ですから各国の取扱いについての政府間会議を招集しておるわけでございまして、当然私どもとしては日本の国内法規も参考資料として持っていかなければならぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/33
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034・河野正
○河野(正)委員 この政府間会議でどのような議事が行われるか、今日から予測するわけには参らぬと思いますけれども、そこで各国からいろいろな資料が出されて、あるいはまた討議が行われるだろうということは想像されるわけです。そこでどういう結論が出てくるかわかりませんけれども、私どもが期待いたしまするのは、万国の政府間会議が行われて何らかの結論が出てくる、それがたまたま今日日本で提案されております著作権の特例法・こういった法案の内容と一致したものが各国から出てくる、意見が出てくるということになると、これは問題がないと思いますけれども、もしそこで登録制ねんか必要ないのじゃないかというふうな各国からの意見が出てくるということになりました場合には、いかがになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/34
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035・内藤誉三郎
○内藤政府委員 それは私はそういう意見は出ないと思います。つまり国内法規については、法の自主性を認めておりますから、条約に抵触しない限りはそれは各国の自由でございますから、そういう意見は出るはずはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/35
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036・河野正
○河野(正)委員 それは局長の個人的な主観だと思うのでございます。と申しますのは、先ほどから申し上げますように、万国著作権条約ができました。そこでその万国著作権条約のもとでそれぞれ各国が権利を守っていこうというのでございますから、各国ともできるだけ歩調を合せていこうという考え方があると私は思うのです。それで日本だけが飛び抜けていろいろな処置をなさるということは、各国が万国著作権条約のもとで歩調を合せていこうという足並みが乱れてくると思うのです。それですから、結局なるたけ意見の調整をやっていこうという考え方は各国から出てくると思うのです。これは常識で考えられるわけですが、おそらくそういった考え方、思想の統一ということはあろうと思うのです。そこでそういった意見は出てこないのだというような——局長の主観でございましょうけれども、しかしながら各国とも歩調を、足並みをそろえていこうじゃないかというふうな考え方は、私はどの国においても同じような考え方を持って臨まれて出てくると思うのです。そこでたまたま日本だけが特例を設けたということになりますならば、一つ歩調を合せようじゃないかというような意見も出てくるかもしれません。そういった場合に国際信義と申しますか、もともとユネスコの万国著作権条約というものは、パン・アメリカン条約とベルヌ条約とをうまく調節していこうというのがユネスコの精神でございますから、そういった精神からいいますと、やはり各国の意見に同調するということが、私は国際信義の建前から申し上げましても当然ではなかろうか、かように考えるわけでございます。そういった事態が生まれました場合に、政府としてはどういう御所感を持たれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/36
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037・内藤誉三郎
○内藤政府委員 そういうことはなぜ起きないかと申しますと、アメリカはすでに納本登録主義をとっておりまして、アメリカ国民には厳重にそれを施行しておるのであります。それがすったもんだの結果ここまで譲歩したのでありますから、各国について、そういうことは個々の訴訟の場合の要件について、あるいは登録制云々についてということはおそらく起きないと思うのです。ただ問題はベルヌ体制とアメリカの条約関係、これをどういうふうにユネスコ条約の中で、まだ相当不備な点もあるようでございますから、それをどう調整していくかというような問題が起きるのではなかろうかと私は思うのです。あとは、条約に定めた以外のことは、大体共通問題はそこに来ると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/37
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038・高津正道
○高津委員 関連して。関係者は非常に迷惑に思い、そうして強く反対をしておるのにこういうことを出されるのでありますが、それはアメリカとかイギリスとかその他どこかの先進国が日本政府に勧奨あるいはサゼスチョンを与えたのであるかどうか、それを一点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/38
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039・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 そんなことは決してありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/39
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040・高津正道
○高津委員 さっき文部大臣は、午前中の参考人の述べたそのような強い全面的反対は全部を代表するものではない、自分はそのメンバーの一人に入っておるが、自分は賛成だ、午前の開陳された意見には自分は反対で、この法案には賛成だ、賛成者が一人は明らかにここにいるのだから、こう言われるのは全く形式論で、今の日本著作権協議会というものの幹部が出て代表しておるのに、実態はインチキで、この協議会の中に入っておっても異議を申し立てるというような、何か証拠でも持って言うのですか。それを一つ。個人一人は問題になりませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/40
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041・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 会員全部に通達されて、会議体の要件を備えた会員の代表的の意見であると思われません。この会に入っておる全部が、幹部はそんな意見を持っておるということは存じません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/41
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042・高津正道
○高津委員 それはあなたの認定で、いやしくも協議会の代表が出ておれば一々当った上で、そういう決定を多数決によってきめておるのだと思うが、それではお伺いするのですが、文部省としては、もちろん文部大臣としても急いでやるべきことが一ぱいあると思うのです。現在の日本ぐらい淫祠邪教の弊害というものが現われて、まさに文明国の恥辱だと思う。これも文部大臣の責任でございますけれども、認証を取り消すとか何とかそんなことをちっとも急いではおやりにならない。僻地教育の問題だって、教育から見ればすばらしく大きな問題です。専任の担当官も文部省にいないように聞いておるくらいであります。急ぐべきことをちっとも急がない、あるいはまた教育の効果はクラスにどれだけ学童を収容するかというその量に比例して考えられる。模範校なんというものはみな一クラスの人数の少いのは御存じの通りであります。だから教員の定員増ということも、文部大臣としては何よりも先に考えなければならないと思う。あるいはまた戦災の犠牲を受けた危険校舎や老朽校舎が一ぱいあって、ずいぶん力を入れなければならぬ。そんなことをちっともやらない。われわれから見ればやっておるとは思えない。それほど文部省の役人が急いでやるべきことは、これから幾らでも数え立てられるほど多いのに、こういうような相手のちっとも喜ばないものに手をつけられるということは、行政整理などという場合にも備える、そういう意図さえも加わって事業量をだんだん内藤さんなどが頭をひねって広げていくように私は受け取れてしようがない。その点についてお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/42
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043・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 文部省の仕事をふやして行政整理の際に備えるというそんな不純な動議はちっともございません。それから文部着所管にいろいろ重要なことがあることは高津さんお示しの通りでございます。それゆえに皆さんの御賛同を得て、教科書法も早く御審議願いたいと思います。ただこれを急ぎますのは、二十八日になれば条約上の関係で困ることになるのです。それで非常に急いでおるので、どうぞきょうじゅうに御審議願いたいと心から願っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/43
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044・河野正
○河野(正)委員 だんだん二十八日が近づきましたから、私も結論に近づきたいと思いますが、先ほどから申し上げますように、当事者でございます著作権者の方々は非常に強く反対しておられる。大臣の御見解によりますと、一部の人々の意見だというようなことでもありますけれども、その点につきましては、午前中いろいろ論議されて参りました。ところが一応そういった著作権者の方々が民主的に反対の態度を決定されたということをわれわれは考えて見ます場合に、一応民主的にこの問題の結論が出されたということになりますと、一部異論はありましても、協会の方々が反対しておられるということを否定することはできないだろうと考えます。ところがそういったほとんど私どもに関係なくて実利実害をこうむりますのは著作権者でございますが、そういう人々が大体政治的機関を通じて全面的に反対をしておる。しかもあえて保護政策であるという形において無理やりに押し通されますと、世間でよく言います検閲制度の復活ではないか、あるいは憲法第二十一条の違反ではないかというような意見も出て参るわけであります。そこで文部大臣の申されますように、二十八日から万国著作権条約が発効するということも事実でございます。しかしながら登録制の問題というものは必ずしも万国著作権条約の発効とともに日本の特例法が成立するということは理想的な立場から申し上げますならば、理想的かもわかりませんけれども、しかしながら今日いろいろ異論が出ております。しかも実利実害を受けます著作権者から異論が出ております。そういう立場から考えてみますと、この万国著作権条約が二十八日から発効するから本特例法は必ず成立しておかなければならないということではないと思います。もちろんこれは円満に片づきますれば万国著作権条約の発効とともにこの法案が成立することが一番望ましいと思いますが、必ずしも万国著作権条約が発効するからといいましてこの著作権の特例法がそのうらはらとなって成立されなければならぬということではないと思います。
そこでお願いというようなことになると思いますが、御要望いたしたい点は、もう少し納得ずめでこの法案を成立せしめるという御意思はないかどうか。先ほど大臣もちょっと触れられましたが、今日いろいろ誤解で反対しておられる向きもあると思います。しかし、自分の知っておる範囲では反対しておられる向きもあるから、十分誤解も解きたいと言われますから、そういう機会を通じてこの法案を成立さしていく、これが一番円満な解決方法だと思いますが、その点いかがお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/44
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045・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 先刻も申し上げました通り、きょうの非公式公述人などの一番の誤解の前提は、訴訟になれば原告には立証責任なく、被告にあるのだ、その頭から来ておるのです。それは非常な誤解です。ここにも弁護士の方がおられますが、日本でも外国でも、訴えを起した原告が証明しなければ、すなわち第一発行日というものは、その証明なくして原告は立てるものじゃないのです。それをきょうの方は、被告に証明があるのだから、原告となる日本人はそんなことをせぬでもいいと言われたが、これは非常な誤解ですから、もしこの法案が通過しますれば、よくこれらの人にお目にかかって誤解のないようにいたしたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/45
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046・河野正
○河野(正)委員 それから一点、これも一つお願い申し上げたいのでございますが、ここにいろいろ論議され、あるいは著作権者の方々が心配されて反対しております一つの問題といたしましては、登録制をとる、その証明がアメリカの国では紛争が起った場合に効力を発生するかどうか、この点は今日反対されておる一つの大きね原因になっておると思う。そこでもし登録制をとることによって、その登録制というものが将来アメリカにおける紛争において非常に効力を発生するというような一つの見通しといいますか、確信といいますか、そういったものがつけば私は今日の反対の根拠というものは薄らぐと思うのです。この点は私ども要望したいのですが、できれば、条約というわけにいかぬかもしれませんが、あるいは覚書程度でもけっこうでありますが、日本の登録についてはアメリカは尊重するのだというような一つの話し合いができれば、私はこの問題を円満に解決する一つの大きな力になると思います。その点いかがか。これは解決の一つの方策でございますから一つお尋ね申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/46
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047・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 そういうことがで送ればいいのですが、第一発行日がいつであるかということは裁判上の問題なんです。おそらくはアメリカの裁判所の認定を拘束するような条約は困難であろうと思います。一つ事件が起って、陪審員、または陪審員のない場合に裁判官が、日本における第一の発行日はいつかということの事実認定の問題なんです。事実認定は今言う通りアメリカでは宣誓に頼りまして、宣誓のある証拠が一番なんです。日本の国の政府及び日本の政府の機関は、アメリカの法廷では唯一の証拠じゃないのです。しかし少くとも日本では、政府機関の証明はみなこれを認める慣例を弁護士もとっておりまするし、裁判官もとっておりますけれども、アメリカの方ではそのままうのみにはしてくれません。しかしながら日本政府の証明があわて宣誓した証人が、日本政府にはこういう機関があって、この書面は日本政府が正当に発行したものだという証言をいたしますれば、これは信用されます。あなたの党派にもりっぱな弁護士がたくさんおられまするが、御研究を願えば、みな同意してくれると思います。その方法を利用しますれば、この登録、証明というむのは、非常に便利でいいものだということは、おわかり下さると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/47
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048・河野正
○河野(正)委員 最後に、たまたま五月、六月には国際的な万国会議があるということでございまするから、その席上において、日本では登録制をとるのだ、この登録制の信憑性については、十分尊重してもらいたいという要望は、私はできると思うのです。これは実際尊重するかせぬかということは、裁判でなければはっきりせぬと思いますけれども、しかしそういった要望は、私はできると思うのです。そういった要望をするのが、五月、六月の国際会議ではなかろうかというふうに私は判断するわけです。そこで少くともそういう席上において、そういう要望をするなり、あるいは意見を述べたり、こういったことを積極的にやっていただく、こういったことは著作権者を納得せしめる一つの方策になりはせぬかというようにも私どもは第三者として考えるわけです。そこで五月、六月の万国国際会議でどのような議題が出てくるかわかりませんけれども、私の申し述べましたような意見は、十分御尊重なされまして、善処されんことを最後に要望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/48
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049・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 御説まことにごりっぱな意見で、この法律ができましたら、パリの会議のみならず、できましたらすぐにユネスコにこれを送り、またアメリカの政府にこれを出しておくということは、あなたの御意見を尊重いたしまして、やるべきものだと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/49
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050・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 山崎始男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/50
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051・山崎始男
○山崎(始)委員 最後にこの附則の三項の登録に関する点につきまして、一点だけ簡単にお聞きしてみたいと思います。それは万国著作権条約というものが実施されますのにつきまして、アメリカでは一九五五年の九月十六日に法律の七百四十三号で、いわゆるアメリカ国内における著作権法の一部改正をやっておるのでありますが、この一部改正の内容を文部省の方ではお調べになったことがありますかありませんか、ちよっとお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/51
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052・内藤誉三郎
○内藤政府委員 調べてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/52
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053・山崎始男
○山崎(始)委員 そういたしますと、この取扱いの問題でかなり重大ね問題が起ってくるおそれが、私はあるのじゃないかと思うのです。それは、ちょっと簡単にその法律の内容を要点だけ抜いて読んでみますると、前段があるのでありますが、「著作権侵害に対する訴を提起する場合のほかは、合衆国著作権局に登録することは要求されない。そのような登録は、著作権保護の第一の期間内」まあ二十八年間らしいのでありますが、「第一の期間内ならば何時でも行うことができる。この登録は著作権を取得するための要件ではなく、訴訟を提起する前の手続要件である。」「万国著作権条約加盟国の国民で且つ又合衆国市民もしくは合衆国に帰化した者以外の」すなわちこれは日本人なんかも含まれるわけでありますが、——「以外の、著作者によって、加盟国で第一公刊された著作物に就いて、著作権を要求するために合衆国著作権局に強制的に登録する必要はもはやなくなるわけだが、特定の場合」——すなわちこの特定の場合というのは、訴訟の場合をさしておるようでありますが、「特定の場合には第一公刊後直ちに登録した方が有利なことがある。即ち外国人の登録は、合衆国制定法の規定によれば、第一公刊の日附以後六カ月以内に申請が提出されれば、手数料の支払を必要としない。」といっておる。「又登録は合衆国に於ける市場取引を容易にし、且つその著作物が表示の要求された方法通りに第一公刊されたことを示すことによって、将来起り得る困難な問題を除く著作権要求の永久的な記録となる。」云々、こういうふうに解説をされておるのでありますが、ここで私がお尋ねしたい非常に大切な一点があると思いますのは、先ほどから文部大臣のお話を聞いておりますると、この法律はアメリカとの間に著作権の侵害に関してのそういう訴訟事件が起ったときに、親心として著作権者を保護するのである。それがためにまず百二十円の手数料を出して、国会図書館を経由して文部省へ登録をする。登録をされておるならば、将来訴訟が起ったときに、絶対的な要件ではないが、その紛争が起ったときの重要なる一つの信憑力を持った——すなわち文部省に登録されておるということは、その訴訟のときの重要なる信憑力になるのだ。いわば文部省が登記所みたいな形の役割におなりになるわけでありますが、ただしそれはアメリカとの紛争関係において万一訴訟のときの絶対的な要件ではないということは認めていらっしゃる。そうですね。そうなりますると、このアメリカの国内法と比較いたしてみますると、このアメリカの国内法では、今までは納本、登録をして、アメリカの国会図書館へ出しておった。そうして初めてそこに日本人としての著作権の権威者であるというところの登録が実証されてきた、こうなるのでありますが、これがこの法律で読みますと、全然要らなくなった、こうなるのであります。この改正法規を見ますると、第一公刊の日付以後六カ月以内に申請がされるならば手数料は要らない。今まで四ドルか何ぼか払っておったというのが一銭も要りませんと、こういうことをいっておる。そうしてその登録をしておくならば、市場取引を容易にする、おまけに将来起り得るいろいろな著作権に関する侵害の問題のときに保障される、保障とまでは書いてありませんが、著作権要求の永久的な記録となると、こういうふうに書いてある。そういたしますると、せっかく文部省の方で親心でこの法律を提出されましても、非常に熱心な著作権者というものが、直接日本の政府を通過せずに、日本の政府であったら一件百二十円の手数料をとられる、そしてしかも訴訟のときにはそれが絶対的な要件ではないとこういわれる。それならば一銭も手数料を払わなくてもいいアメリカの国会図書館へ直接に持っていくことが起り得ることも予想できる。(「郵送料が大へんじゃないか」と呼ぶ者あり)百二十円が問題ではないのでありまして、アメリカに直接送っておくということの方が、日本政府へ登録をするよりは万一訴訟のときには永久的な記録となる、こうなっている。そういたしますと手数料の問題は別にいたしましても、一銭も要らずに万一の訴訟のときの保障が、むしろアメリカへ直接登録した方がいいということになる。こういうことがもし是認されるならば、私はせっかく親心としてこの法律をお作りになっても、著作権侵害のときの万一の用心をされる著作権者は、田本政府なんかは相手にせず、アメリカに直接持っていくということが起ってくる。登録の手続の事務的な実際の面から見た場合に、私が今申し上げたような予期せざる奇妙な現象が起ってくる可能性が、アメリカの国内法の改正によって付随的に起ってくるのじゃないかというふうに考えられるのでありますが、この点に対して御解明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/53
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054・内藤誉三郎
○内藤政府委員 著作権発生の要件として、万国条約を批准した以上、納本登録というような手続が要らないという意味の改正をしたわけでございます。訴訟になった場合には、納本登録は当然するわけでございます。その場合に訴訟になる前に、第一発行後六カ月間を限ってその間に二冊を納本し登録をする。登録用紙というのは、こういう非常にめんどうなものですが、これに全部記入してアメリカまで送らなければなりません。ですからこの登録用紙をもらってきてこれに書き込んで送って、本を二冊つけて著作権局へ届ける。六カ月間を限って四ドルが免除される。六カ月たてば当然四ドル払わなければならない。こういうことでありますから、アメリカに登録されることは一向に差しつかえないと思います。その道はけっこうだと私は思いまするが、かえってお得にはならないと思います。アメリカ以外のハイチ、コスタリカ、チリー、その他の国もございますが、こういうような国に対しては効力はございませんから、合衆国だけに対しては、それは一つの有効な方法だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/54
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055・山崎始男
○山崎(始)委員 今回お出しになりましたこの法律は、アメリカとの間に万一訴訟が起った場合に日本の著作権者を保護するという親心が主体だと承わっておりますが、そういたしますと、せっかくあなた方の立法のお気持の中の、アメリカに侵害されないようにという親心が素通りをしてしまう。今も言うように、あなた方の方の法規では一年、アメリカでは六カ月、半年間は少い。そこは不利だ。しかし郵送料は別とすれば手数料は一銭も要らない。日本は一件について百二十円とる。こういうふうな問題がありますが、要点は、登録しようという熱意のある人は、万一の訴訟のときにこの自分の権利を保護しようという気持が主体でなければならぬと思う。してみると六カ月とか一年とか、手数料の百二十円というようなものは付随的なものであって、私はこれが全体ではないと思うのです。百二十円出してアメリカまで送れば送り賃がなんぼ要るかということを計算されるかもしれませんが、要は、日本の政府に登録をして、訴訟のときの有力なる証拠にしようというよりは、アメリカまで直接送って訴訟のときの絶対的な有利な証拠にしようという気持の方が強く動くのじゃないか。こうなりますると、せっかく法律をお作りになりましたが、日本政府は素通りにして、極端に言いますれば、日本の著作権者が、日本の国会図書館で一応記録をとどめて、国会図書館に登録をしたという証明を持って文部省には出さずに、そのまま素通りしてアメリカの国会図書館の方へやっておく。そうすればこれは今言う永久的な記録となると同時に、その商品を売る場合にも市場取引を容易にし云々といろいろな利点がついているということで、こういう点から考えますと、せっかく親心だといってお作りになったものが、実際の立場からいいますと、そういうような素通りをしていってしまうということが考えられてくる。アメリカ以外のよその国の例は私も知りませんけれども、たまたまアメリカでは、著作権法に対する一部改正ができている。この法文からいいますと、今私が申しましたような心配が当然起ってくる。そうなりますと、日本政府がせっかく御苦心なさってお作りになったこの法律案が、アメリカに関する限りは、登録するのにはむしろ逆に日本政府を通過せずに直接にアメリカにアメリカにといってしまうという現象が起きてくるおそれが多分にあると思いますが、そういうおそれがあるかないか、もう一。へんお気持をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/55
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056・内藤誉三郎
○内藤政府委員 私どもはそういうことをされることをとめるわけではありません。しかし手続は相当複雑でございます。向うから用紙をもらつてそれに全部記入しなければなりません。これは英文で書いてありますが、なかなか容易でない。そのほかに二冊納本しなければならぬ。そのほかに送料もございますから相当経費もかさむし、事務的に煩瑣でありますので、その煩瑣な手続を簡素化するためにこの制度を設けたのですから、私どもはこの制度が活用されることを強く期待しておりますが、もちろんアメリカに直接おやりになることを阻止する意思は毛頭ありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/56
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057・山崎始男
○山崎(始)委員 もう一ぺん申し上げます。手続が煩瑣であるとか、その書類なんかもうるさいということは、登録しようという人はそういうことを考えないと私は思う。登録をするということは、あくまでも万一の場合の被害を防ぐために登録をする。田地や山を買って登記所に行って登記するのは、第三者に将来侵害されないためにするのでありますから、その手続が少々うるさかろうが何しようが、これはやります。文部省に百二十円出して登録したならばこれは絶対的なものとなるのだと言われれば、あなたの論法は成り立つ。ところがそうではない。絶対のものではない。おそらく相当有力なる証拠にはなるであろうということであって、万一の訴訟のときの絶対要件ではない。これは認めていらっしゃるのですから、今あなたがおっしゃったような御答弁ではあまりにも形式的であり過ぎる、こう私は申し上げておきたいのであります。
最後に一点だけ私は御注意申し上げます。法律は申し上げるまでもなく国民のためにある。主権者である国民のためにあるのが法律なんです。文部省がせっかく親心だといってお作りになった法律が、これを実施していく過程において主権者である国民がこの法律によって逆に被害を受けるという事態がもし起ってきますと、これは非常な悪法になってくる。きのうあたりからいろいろお話を承わっておりますと、総括的に見て、この著作権者の方々はこういう法律ができるということはありがた迷惑だという声が大きいとわれわれは見ております。そうしますと、今後実施していかれる上において親心と、それから被害を受ける人たちがそこに分離をされた格好になってくるということがありますと、われわれ国会議員といたしましても国民に対して非常に相済まぬわけでありますので、法律はこれから一応これで発効するといたしましても、どうぞそういう点は十分留意されまして、この法律発効後のあらゆる情勢をよくごらんになって、万一そういう事態があったならば、さっそく法の改正をやるとか何とかするだけの率直な、謙虚な気持があってほしい、私はかように思うのであります。この点は法律が実施せられます前に、私はあえて御注意なり御忠告を申し上げておきまして、私の質問を終りといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/57
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058・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 これにて本案に関する質疑は終局いたしました。
これより万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律案について討論に入ります。
別に討論の通告もないようでございますので、討論を省略し、直ちに採決いたしたいと存じますが御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/58
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059・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
これより採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/59
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060・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決することに決しました。
なおお諮りいたします。ただいま議決されました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/60
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061・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/61
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062・辻原弘市
○辻原委員 ただいま著作権法の特例に関する法律案が議決されたのでありますが、質疑応答の間におきましても政府にいろいろな要望が出されておりますが、私は議決された今日の事態に立ちまして、一点要望をいたしておきたいと思います。
それは万国著作権条約締結の経緯というものが明らかにせられたわけでありますが、その経緯にかんがみまして、提案されましたこの法律の趣旨というものは、あくまでもこの万国条約の趣旨から逸脱するものではないのであります。従ってこの法律の施行後の運用につきましては、その趣旨に立脚をいたしまして、あくまでもその保護の任に当ると同時に、いやしくも保護に名をかりて著作そのものに対して制約を加えるような印象を与えたり、事実上著作者に対して格別の不便を与えたりすることのないように、この点においては特別の御考慮を払っていただきたい。
さらに付則第三項の運用は、これは特に種々の、著作権協議会等々の意見もありましたその経過からも、これについては任意登録が事実上強制登録というがごときそういう取扱いに堕さざるように、この点も特に関係者等との連絡をはかりつつ、万国条約の趣旨に照らして法の運用を十分に行われるように、この機会に私は強く要望しておきたいと思います。この点に対する大臣の御所見を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/62
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063・清瀬一郎
○清瀬国務大臣 今辻原君の御指摘になられましたように、この法案が法律となりました以上は、その運用については十分注意いたします。わが国の著作権所有者の権利が完全に保護せられるように運用いたしたいと思います。
それからこの法案の趣意、わけても附則三項の趣意は関係者によく了解していただくような措置をとりたいと思っております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/63
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064・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 次に議員提出の初等教育及び中等教育の教育内容等に関する法律案、教科書法案並びに義務教育諸学校の児童及び生徒に対する教科書の給与に関する法律案を一括議題とし、提出者辻原弘市君より順次提案理由の説明を聴取いたします。辻原君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/64
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065・辻原弘市
○辻原委員 ただいま議題となりました初等教育及び中等教育の教育内容等に関する法律案、教科書法案並びに義務教育諸学校の児童及び生徒に対する教科書の給与に関する法律案につき、一括して提案の理由を御説明申し上げます。
政府は今回教育委員会法の改正法案及び教科書法案を提出されました。これらの法律は、占領政策の是正の名のもとに、戦後ようやく健全に育成されつつあります民主主義の精神に基く国民教育に対して、再び国家権力による中央集権的統制を加えられる危険を包蔵するものでありまして、世論も強くこの点を批判いたしていることは御承知の通りであります。これに対し、今回提案いたしました三つの法案は教育の画一的な国家統制を排し、地方の実情に応じた自主性のある、中正な教育を助長し、かつ必要な水準を維持向上させ、もって教育本来の目的が実現されるように初等教育及び中等教育の教育内容並びに教育の主たる教材としての教科書に関する行政制度を是正し・整備するとともに、義務教育無償の原則にのっとり、義務教育諸学校の児童及び生徒に対して教科書を無償で給与しようとするものでございます。
最初に初等教育及び中等教育の内容等に関する法律案につき、その大綱と提案の趣旨を御説明申し上げます。
初等教育及び中等教育の教育内容に関する事項は、現在学校教育法の規定によりまして、当分の間、文部大臣が定めることとされているのでありますが、これを地方の住民に直接基礎を置く都道府県の教育委員会が定めることといたしました。第二条第二項において学校の教育課程は、都道府県の教育委員会が定める学習指導要領を基準とすると規定してありますのがこれでございます。これは、民主主義社会における教育制度の建前として、教育は他の一般行政と異なり、国家権力が支配することは好ましくないという理由かでありましてへ教育の政治的中立を確保し、民主主義教育を実現するため教育は、国民自身の手の届くところに置くべきであるという現行教育委員会法の立場に立ち、さらにこれ存推進しようとするものにほかなりません。同じ趣旨におきまして、中央には、文部省の所轄のもとに、独自な行政委員会たる教科委員会を設置いたしました。この独立した機構によって、専門的立場から、地方の教育内容に関する行政につき指導と助言を行い、国民教育にとって必要であり、かつ、最少限度のサービスを行うものといたしておるのであります。すなわち、教科委員会の権限は、第一に小学校中学校及び高等学校の教科及び学科を定めること、第二に都道府県の教育委員会において、学校の教育課程の基準としての学習指導要領を定める際に参考とすべき大綱を作成すること、第三に教科書の検定、発行の事務を取り扱うこと、第四に教科書の給与に関する法律を施行すること、第五にその他教育内容に関する事務につきましては都道府県の教育委員会に指導と助言を与えること等をその権限といたすものでございます。
なお、このうち、教科関係の権限につきましては、後ほど詳しく御説明申し上げます。
さらに教科委員会には中央教育課程審議会、都道府県の教育委員会には地方教育課程審議会を置くことにいたしました。中央教育課程審議会の委員は、地方教育課程審議会より各一名ずつと、学校の教育内容に関し専門的知識を有する者四十六名計九十二名で組織することとし、学習指導要領制定の参考とすべき大綱の制定及び教科書の検定等の事務その他の事務を執行する場合においては、教科委員会はこの審議会の議決を経なければならないことといたしました。
地方教育課程の審議会につきましては、その委員は、小学校、中学校及び高等学校の校長及び教員を代表する者三十名及び学校の教育内容に関し専門的知識を有する者三十名計六十名をもって構成し、都道府県の教育委員会が学習指導要領を定める場合には、この審議会の議を経なければならないことといたしました。これらの審議会を設置いたしました理由は、現場の教員の代表や教育に関する学識経験者を参与せしめ、もって現場教育の意志、並びに世論を公正に反映せしめる事といたしたのであります。
最後にこの法律の施行について御説明申し上げます。教科委員会や中央及び地方の教育審議会は、この法律施行とともに直ちに発足いたしますが、現行制度から切りかえるため多少の日時を必要といたしますので、この法律は昭和三十五年四月一日以後における学校教育に関して適用するものと定めました。
第二に、教科書法案に関し御説明いたします。この場合、政府案と対比しつつ順次御説明申し上げたいと存じます。
まず、教科書検定の制度についてであります。
政府案は、いわば国定化一歩手前のものというべきであります。すなわち、文部大臣が勝手に任命した検定審議会において厳重な検定を行うのでありまして、教科書の編集内容に対しても時代錯誤的な制約をきびしく加え、政府与党にお気に入りの教科書だけを合格させ、もって教育の内容を政党が支配することとなるおそれが非常に濃厚であるといわなければなりません。この法案におきましては、教科書の検定は、教科委員会が中央教育課程審議会の議を経て行うこととし、中正、かつ、適切な検定を保障いたしました。注意されなければならないことは、検定の基準であります。憲法及び教育基本法の精神に反していないか、または客観的誤謬がないかについて厳重な検定を行うべきことは当然でありますが、現在文部省において各教科ごとにかなり詳細な学習指導要領を定めており、教科書は、これに準拠していることが必要とされておるのであります。
この法案におきましては、先ほど申し上げましたように教科委員会は都道府県が学習指導要領を定める参考とすべき標準を定めるだけでありまして、教科書の検定に際しましての基準は、この学習指導要領の標準とは別に、国民教育に必要な最少限度の大綱が定められ、教科書は、この大綱に基いておればよいこととなり、検定の基準に非常に広い幅が認められることとなるのであります。これは、イギリスなどの先進諸国においてすでに採用しているところのいわゆる採択の自由化に向い一歩前進するものでありまして、その結果は、編集者の自由な創意に基いて、それぞれ・特色を持った多種多様の教科書が生まれることとなるのであります。従いまして、検定の際に内容が類似しているなどという理由で検定を拒否するという政府案の建前はとらないのであります。そして、この多種多様な教科書の中から、現場の教師が自己の地域の実情に即して生きた教育を行うべく最も適切と考えるものを採択すればよいというのがこの法案のとりまする基本的な構想の一つでございます。
その二は教科書の採択であります。教科書の採択は、地域社会の要求と児童及び生徒の心身の発達に即して立てられた学校の教育指導計画に基きまして、直接学習指導に当ります教師によって各教科書が検討され、その計画に適合するかどうかによって選定されることとならなければなりません。この意味におきまして、教科書の採択は、学校の校長が教員の意見を聞き採択することといたしました。
さらに常時教科書の研究に資するために都道府県の教育委員会は、郡市単位に二ないし三の教科書展示施設を設けることとし、国は、これに対し、必要な補助を与えることといたしました。常設展示会のため業者負担が増し教科書の価格が上ることのないように処置する深い配慮でありまして政府案に対する特色の一つであります。
その三は発行及び供給に関する制度の整備についてであります。政府案におきましては、発行業者及び供給業者につきまして登録制度を設け、これらの業者に対する規制と監督を行なっているのであります。この法案におきましては、供給業者につきましては登録制度を取り入れておるのでありますが、発行につきましては、教科書の学校教育における地位にかんがみ、常にその内容を第一義に考えるのでありまして、検定の自由化の建前に当然に伴うものとして発行の自由はあくまで保障しなければならないと考えるものであります。
教科書の発行者の資格につきましては政府案におけるがごとき制限は何ら設けておりません。しかし、なお発行につきましてもその事業の重要性と公共性とにかんがみ、悪質な発行者には適当な措置を講ずることができることとし、教科書の迅速かつ、確実な発行供給を確保することにも意を用いてあるのでございます。
以上の諸点が政府提出法案と社会党提案の法案との主要な差異でございます。
なお、最後に申し上げておかねばならないことは、この法律は、附則第二項の規定によりまして昭和三十八年三月三十一日限りその効力を失う時限立法でありまして、附則第三項により昭和三十八年四月一日以後における教科書の検定、採択、発行及び供給に関しては、この法律に規定する教科委員会の権限は、その一部を除き、都道府県の教育委員会に属させることとするほか、この法律の趣旨に適合した立法措置が講ぜられなければならないとされておることであります。これは、初等教育及び中等教育の教育内容等に関する法律案により、教育内容は都道府県の教育委員会が定めることといたしました趣旨からして、それと密接な関連のある教科書の検定等に関する行政も、都道府県の教育委員会において所管すべきものでありますが、現在の地方行政機構の整備状況及び教科書発行の実情等にかんがみまして、地方に移譲して円滑にとり行なっていくことができるまでには、なお、数年の年月を必要といたしますのでかように定めた次第でございます。
第三に、義務教育諸学校の児童及び生徒に教科書を給与することに関する法律案について御説明いたします。
教育はまことに国の基であり、国家興隆も一に民主主義的教育の充実に基くものといわなければなりません。この意味におきまして、憲法も「義務教育は、これを無償とすると規定しているのであります。この義務教育無償の原則にのっとり、義務教育に対する国の責任を明らかにすると同時に父兄の教育費を軽減するためにこの法案は、義務教育諸学校の児童及び生徒に対して教科書を無償で給与するとともに私立の義務教育諸学校の児童及び生徒に学校法人が教科書を給与した場合には、その経費につき、国が補助することとするものでございます。
この給与は、教科委員会が実施することとし、義務教育諸学校を付置または所管する大学の学長、都道府県の教育委員会または市町村の教育委員会が管理者となり、それぞれ義務教育諸学校の校長を通じて給与することといたしております。
この法律は昭和三十三年度以後に使用する教科書に関し適用いたし、年次計画によりまして、昭和三十三年度には小学校の第一学年に限り、以後昭和四十一年度まで毎年度順次一学年ずつ延長するものでございまして、昭和四十二年度に至り初めて全義務教育諸学校の児童生徒に教科書が給与されることとなるのであります。その経費は最初の年度において約十億円、この法律が完全に適用されることとなる昭和四十一年度以後は毎年百四十億円程度の経費が必要とされておるのでございます。
以上簡単でございますが、三法案につき提案の趣旨を御説明申し上げましたが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御賛同下されんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405077X03219560426/65
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066・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 これにて三案に関する提案理由の説明は終りました。三案に関する質疑は追ってこれを行うことといたします。
本日はこの程度とし、次会は公報をもってお知らせいたします。
なお散会後理事会を開きます。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時三十二分散会
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