1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年二月十六日(木曜日)
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議事日程 第八号
昭和三十一年二月十六日
午後一時開議
一 憲法調査会法案(岸信介君外六十名提出)の趣旨説明
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●本日の会議に付した案件
総評の春季闘争に関する緊急質問(田中伊三次君提出)
春季賃上げ闘争に関する緊急質問(赤松勇君提出)
憲法調査会法案(岸信介君外六十名提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑
午後一時三十四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/0
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001・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
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総評の春季闘争に関する緊急質問
(田中伊三次君提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/1
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002・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、田中伊三次君提出、総評の春季闘争に関する緊急質問を許可されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/2
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003・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/3
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004・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。総評の春季闘争に関する緊急質問を許可いたします。田中伊三次君。
〔田中伊三次君登壇]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/4
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005・田中伊三次
○田中伊三次君 私は、自由民主党を代表して、日本労働組合総評議会が現に行なっているいわゆる春季賃上げ闘争について、いささか所見を申し上げて、政府の御意見を伺っておきたいのであります。総評の主張を拝見いたしますと、独占資本の利潤を吐き出させ、大衆の利益を守り、国民生活を防衛するというのであります。しかし、国家内外の経済情勢から見て、わが国経済の現段階を思うとき、この際における、かかる大幅な、大規模な賃上げ闘争が、果して国民生活防衛のために役立つかどうか、これが第一の問題点であります。
御承知のごとくに、終戦十年にして、わが国経済はようやくにして立ち直り、特に、最近の経済情勢は好転のきざしも現われ、輸出は好調を示し、企業の業績また著しく向上しているかのごとくに見えるのであります。しかし、その好況に見える実態をしさいに検討するならば、輸出の好調なるものは、世界各国のほとんどが、将来への国際競争に備えて、自国内の生産規模の拡大に力を入れ過ぎて、目の前の輸出を顧みる余地が少かったからでありまして、この世界的情勢が、わが国の輸出を、ついに一時的な好況の姿にしておるのであります。各国がそれぞれの自国の生産規模の拡大を完成いたしました暁には、遠からずして激烈な国際競争に当面せずにはおれないというのが、世界経済情勢であると観測せられるのであります。このような立場に立つわが国経済のおもむくべき道は、ただ一つしかないのでありまして、それは、全力を尽して自己資本の蓄積に努力をし、生産規模を拡大し、生産性の向上を行いまして、企業の内容を充実し、生産コストを引き下げて、ひいて物価の引き下げを行い、これによって、内にあっては国内労働者諸君の実質的賃金の引き上げを招来するとともに、外に向っては国際価格のさや寄せに努力をし、さらに一段と輸出の飛躍的増進をはかることが、何よりも現下肝要なことであると存じます。(拍手)かくのごとくに、自己資本を蓄積し、企業内容を充実し、大いに生産規模を拡大して、生産コストの引き下げを行い、国際競争に備えていくことは、同時に困難な雇用問題解決の一助ともなるのだ、こう思われるのでありますが、多数の失業者をかかえた現在のわが国において、取り急いで打つべき手は、賃上げ闘争ではなくて、生産拡大、雇用問題解決を急ぐことでなければならないのであります。(拍手)これに関する政府の見解を、石橋通産大臣、倉石労働大臣から伺っておきたいのであります。
第二に、国家公務員、地方公務員など、公務員の賃上げ闘争について、また、三公社、五現業の公共企業体の賃上げ闘争について、政府の所見を聞きたいのであります。
一体、公務員の賃上げの道は、法律の定めるところに従って、まず人事院が給与改訂の勧告を行い、これに基いて給与法の改正が行われ、政府が予算の裏づけを行うことによってのみ公務員の給与の引き上げが行われるのでありまして、同盟罷業、怠業のごとき争議行為を行うことは厳に禁止されておることはもちろんであります。さらに、注意すべきは、争議行為でなくとも、仕事の能率——役所の仕事、公共企業体については職場の仕事、役所、職場の仕事の能率を低下させるような一切の怠業的行為も、また争議行為同様に、断じて許さないのであります。それは、国家公務員法九十八条、地方公務員法三十七条、これに厳として明文の存するところであるのみならず、公共企業体の職員のとるべき態度につきましても、公共企業体等労働関係法、この公労法の第十七条に同様趣旨の明文が存在するのであります。公務員は争議行為は禁止されておるが、また公共企業体の職員は争議の行為は禁止されておるけれども、争議行為でない、それ以外のことは、何をやっても自由である、憲法に基く団体行動権に基く行動であるから差しつかえがないなどと申しますのは、この三つの法律の明文を読まざる人々の言うことであります。(拍手)しかるに、ここに注目すべきことは、政府は、従来の賃上げ闘争に対して、かくのごとき厳然たる法律があるにかかわらず、この法規に基く取締りが十全でないと私は見るのであります。まず第一に、休暇につきましては、組合の指令を受けて、同時多数の要求であることが客観的に明らかである場合においてさえも、休暇の要求に対しては、上司はこれに休暇を与えておるということが事実であります。休暇は権利であると主張する人々がありますが、休暇はすべて許可を必要とするのでありますから、正確には権利とは言えないのであります。休暇の許可を請求する権利があるというのが正当でありまして、これをもって直ちに休暇の権利ありと言うことは妥当ではないと考えるのであります。(拍手)そこで、重要となりますのは、さて休暇を与える場合の許可の基準をどう扱うかという問題でございます。私は、組合の指令を受け、賃上げ闘争に参加するおそれのある客観情勢を認め得る場合においては、先に申し述べました法律に基いて、職場の仕事の能率を著しく低下せしめるおそれありと考えられるので、断じて許可を与えるべきものにあらずと信ずるのでございますが、政府の見解を伺いたいのであります。(拍手)
次いで、定時出退庁、ひいて超過勤務の拒否の問題でございます。組合側は、超過勤務を拒否することは労働基準法三十二条に基くものだといってこれを論拠としておるようでありますが、御承知の通り、公務員には労働基準法は適用はないのである。従って上司の命令あらば、その命令に従う義務があることは当然でございます。ただ、公共企業体につきましては、本来は労働基準法の適用があります。ありますが、三公社、五現業ともに、いずれも現在はこれに関する組合との協定が有効に成立いたしておりますので、これまた、超過勤務に関しては、上司の命令に服従する義務が協定の結果生じておるわけであります。(拍手)組合側のいうがごとくに、超過勤務の拒否が自由だなどということになるならば、それぞれの仕事の能率は著しく低下することとなって、勢い違法となるを免れないのでありますが、この点に関する政府の明快なる見解を伺っておきたいと存じます。
さらに、すわり込みについて一言いたします。一般の各種団体の行うすわり込みの場合と同じように、組合の行うすわり込み運動は陳情活動にすぎないと抗弁しておりますが、これくらい職場の仕事の能率を低下さす行動はあるまいと私は考えるのであります。政府の所見を明確にしていただきたいと存じます。
もう一つ、ピケについて一言いたしますが、ピケは憲法二十八条に基く団体行動権に基く行動であると主張いたしておりますが、これは実に驚き入った主張であります。ピケは本来争議行為としての罷業行為を完全ならしめるために行われる補助的な行為でありますから、罷業という本体の争議行為が許されない立場に立っておる公務員や公共企業体の職員に、補助的行為としてのピケだけが許される筋はないのであります。(拍手)ピケは、争議行為の許される場合にのみ、補助的行為として許さるべきものでありまして、争議行為の禁止されておるところにピケだけが適法に存在するということは、理論の上からも断じて許されないことでございます。
また、職場大会につきましても、仕事の能率を低下さすことは言うまでもないのであります。
以上申し述べましたような休暇闘争、定時出退庁、超過勤務の闘争、すわり込み戦術、ピケないし職場大会の行為は、いずれも役所や職場における仕事の能率を著しく低下せしめるものと認めるので、先に申し述べました国家公務員法、地方公務員法、公労法の明文に基いて、断々固としてこれを取締り、官紀を保持し、もって法の権威を維持すべきものであると信ずるのでありますが、私は、さらに、この際、取締りのやり方について一言いたしておきたいと存じます。
まず申し述べたいことは、官紀を保持し法の権威を維持するための取締りといたしましては、言うまでもないことでありますが、この法律に規定された罰則適用の面におきまして、警察力の動員、検察権の発動はもちろん、行政面においては、何ものにもおそれず、峻厳な行政処分を断行するとともに、治安の面におきましても、特に慎重なる態度をもってこれに臨む必要があります。従来の取締り態度は、検察庁、警察庁、一般行政官庁相互間の連絡協調が十分ならざるうらみなしとしない実情にありますので、ことに各行政官庁相互間の取締り対策は、首尾一貫を欠くことが多く、お話にならない事例が少くないと考えますので、かかる緩慢、不徹底なやり方では、わが党の主張する法規に基く取締りの実をあげることはとうてい不可能であると考えます。この点に関する具体的な政府の取締り方針を伺っておきたいのであります。
第三に、右に述べましたごとく、公務員並びに公共企業体の職員の賃上げ闘争は厳重にこれを取り締ることになります場合に、しからば、これらの人人に対する給与の対策は一体どうするかについて所見を申し述べたいと存じます。(「給与の対策はどうした」と呼び、その他発言する者あり)公務員の給与の改訂は、人事院の勧告が、言うまでもなく、その基本でございます。また、公共企業体の職員の給与の改訂は、公共企業体仲裁委員会の仲裁裁定が最終的決定となっておるものでありますが、すでに、政府は、これらの人々の給与改訂の唯一の道と考えられる人事院の勧告、仲裁委員会の仲裁裁定につきましては、誠心誠意これを尊重し、その財源措置に対しては心からなる苦心を傾ける必要があります。また、給与改訂についての人事院の勧告に対しましては、前後数次にわたりまして、誠意ある実施を見ておるのでありますが、ヤジ諸君のお話の通り、財源の都合とは申しながら、完全実施はいささか時期においてずれたことは遺憾であります。今後は、一昨年末、及び昨年末における期末手当の勧告に対する場合と同様に、その完全なる勧告実施に全力を傾けて参りたいと存じます。また、仲裁裁定についても、従来ともすれば完全実施に欠くるところなしとしなかったのでありますが、この点につきましても政府は深く省みるところがなければならないのでありまして、これは重大なる政府の決意を必要とすることでありますから、この際特に鳩山内閣総理大臣の言明を得ておきたいと存じます。
最後に明らかにいたしたいと存じますことは、春季賃上げ闘争に関連して、政府の労働政策の基本的態度についてお尋ねをしておきたいと存じます。およそ、労使間の問題なるものは、どの国においても共通の悩みでありますが、単に取締りを厳重にするというだけではだめなものであります。労使間の一般的、基本的問題につきましては、政府と組合と経営者の三つが、日ごろ円満なる話し合いを遂げておることが必要であると痛感するのであります。歴代労働大臣は、いずれもこの点について相当なる苦心を払われたことと存じますが、その結果はあげて見るべきものがまことに乏しいのは、すこぶる遺憾であります。ここに倉石労働大臣のこれに関する所見をお伺いをいたしまして私の質疑を終ることにいたします。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/5
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006・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 田中君の御質問に対しまして、特に私から答弁をせよという点について私から答弁をいたしまして、その他の点につきましては関係閣僚から答弁をしてもらいます。違法行為については厳重に取り締れという御議論がありましたが、もちろん、政府として違法行為は厳重に取り締る決意を持っております。(拍手)さらに、人事院勧告と仲裁委員会の裁定に対しては尊重をしろというお話でありましたが、もちろん、人事院の勧告並びに仲裁委員会の裁定に対しましては、衷心から尊重をいたします。この完全実施のために、政府はもちろん努力をする決意を持っております。
右、御答弁申し上げます。(拍手)
〔国務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/6
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007・石橋湛山
○国務大臣(石橋湛山君) 田中君からの御質問の中で、私に特に関連のあります点をお答え申し上げます。賃金は、一般的に申しましてできるだけ高いことが希望されるのであります。これは、単に勤労者のためばかりでなく、経済全体の繁栄の上から申しましても、賃金は低いことを必ずしも望みません。しかしながら、その賃金が支払われる基本になりますところの生産の増ないし生産性の向上のない賃上げは、すなわち企業の経営を困難ならしめ、やがては将来の実質賃金を引き下げる原因になるものでありますから、さような賃上げは好ましくありません。従って、現状におきまして、全般的に申しますと、日本の経済はまだまだ実質資本の蓄積をうんと要する、実質資本をうんと蓄積して雇用量をふやす、同時に、その力によって生産性を向上することが、今日の場合においては何よりも大切と存じますので、田中君の御意見の通り、私としては、今日は単なる賃上げには賛成ができないのであります。ぜひとも蓄積の増大に各党とも御努力下さるようにお願い申し上げまして、私のお答えといたします。(拍手)
〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/7
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008・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 田中さんにお答えいたします。
第一点の、経済情勢と賃上げのことにつきましては、ただいま通産大臣からお答え申し上げました通りであります。そこで、私は、給与担当の閣僚といたしまして、公務員のベースのことについて御報告を申し上げて、御了解を願いたいと存じます。
公務員に対する給与のべース・アップについては、二千円ベース・アップをなせというお話でございますが、昭和二十九年の一月に、人事院の勧告に基いて、政府はベースを改訂いたしました。それ以来の物価の変動を見ますと、二十九年一月から三十年十二月までの間に、消費者物価は一・九%、小売物価は三・四%、卸売物価は五・五%の下落を来たしているわけでありまして、その上に、三十一年度予算におきましては、政府は、鉄道運賃は上げないとか、消費者米価は引き上げない、それからまた、財政の乏しき中にもかかわらず、比較的少い所得者に対しては減税をいたしているような実情でございますので、この際は公務員のベース・アップは不可能である、しかしながら、三十一年度予算において、公務員法に定められましたる定期昇給については、この原資を確保する、こういう方針で進んでいる次第でございます。(拍手)
そこで、公務員の団体行動につきまして、田中さんから種々お尋ねがございました。これについて詳しく申し上げると時間がかかりますから、官房長官談話を発表いたしておりまして政府の方針はあの通りでございますから、御了承願います。そこで、あの方針によって私どもは善処いたして参りたいのでありますが、不幸にして若干の違法な行為があるということであるならば、遺憾ながら、これは取り締らなければならないというわけであります。
人事院勧告及び仲裁裁定のお話がございました。人事院勧告も仲裁裁定も尊重をすべきものであることは、総理大臣の御説明の通りでございますが、ここに公労協の問題がございます。現在、すでに新聞の伝うるところによれば、第一波といわれて、国鉄の従業員が争議行為に近いようなことをしているように伝えられておりますけれども、これはまことに残念に存ずるのでありまして、三公社、五現業の従業員は、法律の定めるところによりまして、昨年来、この公共企業体の調停委員会に、当事者双方が納得の上で、調停案をきめてくれということを申請いたしているのであります。しかるに、これに対して、一部の方から、ゼロ調停を出すというふうな政府の圧迫があるそうだが、そういうものは排除して、そうして労働組合側の要求の通りの調停案を出すべしという、驚くべき申し入れをなしているのでありまして、調停委員会や仲裁委員会というものは、なるほど司法裁判権はありますまいけれども、裁判所に近い厳正公平なる労働運動の取扱いをいたす機関であって、これに対して、政府は、一部の人がいわれるように、これに関与する考え方もございませんし、また、さようなことは、法律の建前上、そういうことを論ずるのははなはだ法律を侮辱するものであると存じまして、私はまことに残念にたえないのであります。
さらに、最後に、田中さんのお尋ねでございます。鳩山内閣の労働政策はどこにその基本的理念を置くかというお尋ねでございますが、このことは、政府もしばしば声明いたしておりまする通りに、政府は、あくまでも、労使関係というものは平和裏に解決していくべきものである、話し合いで協調していくべきものであるという考え方は変らないのでございます。従って、この内閣が成立いたしましてから、労働省内に、三者構成で、組合側も、経営者側も、第三者の公平な立場に立っておる学者その他の人々もお招きいたしまして、三十数名をもって労働問題懇談会を開きまして、しばしば労働政策の基本的な問題についてお話し合いを願って、これを政府の労働政策の参考とすべくいたしております。また、昭和三十一年度の予算にお願いいたしておりますのは、企業別の労使協議会、いわゆる造船であるとか、あるいは鉄鋼であるとか、繊維であるとかいうような八大産業に向いましては、労使協議会を作りまして、そこで企業別に日本の産業のあり方について御相談をいたしていこうというのでありまして、政府は、どこまでも健全なる労働運動を助成すると同時に、労働者諸君の御協力によって日本の産業を推進していくのが、鳩山内閣の労働政策の基本的なものの考え方であります。どうぞさように御了承願います。(拍手)
〔国務大臣大麻唯男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/8
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009・大麻唯男
○国務大臣(大麻唯男君) 労働運動の健全なる発達は、私ども常に願っておるところでございます。従いまして、警察は決して労働争議に介入しょうという考えは持ちません。ただ、しかしながら、もしその間に違法な行為がありましたならば、厳正公平にこれを取り締るつもりでございますから、これだけははっきり申し上げておきます。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/9
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010・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、赤松勇君提出、春季賃上げ闘争に関する緊急質問を許可されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/10
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011・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/11
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012・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしとめます。よって、日程は追加せられました。
春季賃上げ闘争に関する緊急質問を許可いたします。赤松勇君。
〔赤松勇君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/12
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013・赤松勇
○赤松勇君 私は、日本社会党を代表いたしまして、春季闘争に関する質問を行いたいと思います。私の質問は、鳩山内閣総理大臣に対する質問でございますから、総理大臣から明確なる御答弁をいただきまして他の閣僚の答弁を要求いたしません。さよう御了承願います。
まず第一に、私は、政府の雇用及び賃金対策の根本政策について、鳩山総理大臣に質問をしたいと思うのでございます。政府及び日経連は、勤労所得が四九%にまでなったのは、労働者の取り分が大きくなり、生活は向上し、家計が黒字になっている証拠である、こう言っております。しかしながら、この資料の消費実態調査は、労働者の生計費調査でなく、高級官吏、医師、商店主、工場主などの高い所得の階層を多く含み、また、日雇い労務者や臨時工などの低い所得の階層が少く含まれているのであります。このことは、毎月勤労統計平均一万六千円以下の家計が全く赤字に苦しんでおるという事実を見ても明瞭でございます。また、政府及び日経連は、あらゆる指標は労働者の賃金が戦前水準を越えた、こう言っております。なるほど、労働者の実質賃金指数は戦前水準に返ってはおります。が、しかし、この中には、戦前になかった勤労所得税その他二〇%が含まれておる。その上、この指数は、家賃を月三百円という驚くべき低い水準に押えて計算しておるのであります。これらの誤まりを訂正しただけでも、実質賃金は戦前の七〇%にしか当っておらないということが明らかになっておるのでございます。(拍手)この低賃金にもかかわらず、労働者諸君の努力によりまして、労働生産性は一七三、また、生産は戦前の一八〇%を突破しようとしておるのであります。(拍手)
こうした低賃金の犠牲と労働生産性向上の上に、独占的大企業は利潤と企業の独占化をどのように高めていったかというと、まず、資本の独占化は、三井、三菱、安田、第一、住友の五大財閥で、石炭四六%、鋼材二五%、造船八一%、硫安六六%、セメント六〇%、綿紡七七%の生産を握り、また、昨年九月の決算を見ますると、三百三十四社の大会社は純利益六百七十八億を上げ、昨年三月に比較いたしまして、百十億もその利潤は増大しておるのでございます。かかる利潤は、経営者が独占すべきでなく、低賃金と生産性向上の犠牲となった勤勉なる労働者に当然公平に配分さるべきであると考えるのでございますが、それにもかかわらず、日経連は、生産性が上っても、その利潤は労使の公平なる分配や雇用の拡大に向けず、資本の蓄積に向けると言っておるのでございます。これはまさに巌流島の挑戦状ともいうべきであって、日本社会党は断じて黙過し得ないのでございます。(拍手)
今次民間企業労働者の闘争は、このあくなき利潤の独占と、公正なる労働者の生活権擁護のための要求を拒否したことから発するのでありますから、その責任の一切は、独占資本と、それに相呼応して独占資本の低賃金政策を代弁、強行せんとする政府にあることは、一点疑う余地のない事実であると存じます。しかして、生産性が高まっても雇用に向けないという日経連の声明は、政府政策の根本をなす経済五カ年計画を根底からくつがえすものといわなければなりません。政府は、経営者が雇用量を拡大しないという方針、これをどう修正する考えであるか、この点、私はぜひ聞かしていただきたいと思うのでございます。
御承知のごとく、資本主義下における雇用の選択権は、政府にはなく、経営者にあるのであります。彼らは、これを動かすことのできない固有の権利とし、自由主義経営の鉄則と考えておるのでございます。従って、企業の国営化をやるか、あるいは雇用強制法でも作って彼らを規制する以外には、雇用量の増大は期せられないのでございます。しかしながら、自由主義経済のもとでは、保守政権のもとでは、おそらくそれは困難なことであると思うのでございます。かくして、もはや雇用の拡大は社会党の政策を待つ以外には断じて道はないということを、今や事実が立証しつつあるのでございます。(拍手)日経連が利潤の公平な分配を拒否したことは、政府の常に言う労使協調の政策が根本からくずれ去ったものといわざるを得ないのでございます。これについて、鳩山内閣総理大臣の確信のある御答弁をお願いしたいと思います。
なお、この際明らかにしておきたいのは、全企業の六〇%を占める中小企業の問題でございます。わが日本社会党の中小企業に対する賃金対策は決して画一的なものではなく、その企業内容の実態に即して、すこぶる弾力性のある賃金対策を考えておる。それゆえに、最低賃金法、家内労働法、下請調整法等をもってこの中小企業の保護救済を考えておるということを、この機会に明らかにしておきたいと考えるのでございます。
なお、政府は、今度の総評あるいは一般労働者の賃上げ要求を、一律画一の要求ではないかという批判を下しておりまするが、決してそうではございません。現に、全駐留軍労働組合は八百円、全国ガスは基準内の一五%、電器労連は個別要求方式をとっているのでございます。
次に、私は、公務員の賃上げ要求について、この際一言しておきたいと思います。封建的な主従関係から発達した近代社会における労使関係は、双方が平等の立場から交渉、協約するという民主的原則の上に立っておるのでございます。憲法第二十八条が示す団結権、団体交渉権かすなわちそれであります。それゆえに、国民の公僕である政府は、常に中立の立場に立って労働行政を行うべきであります。(拍手)話し合いの場は団体交渉であり、最終的には、民間の場合は労働委員会、国鉄等、三公社、五現業の場合は調停及び仲裁委員会であります。それに引きかえ、国家公務員は、今のところ、話し合いの場を持っていないのであります。昭和二十三年七月、マッカーサーは、公務員及び三公社、五現業から争議権を奪い、その代償として、公務員及び三公社、五現業の給与が民間給与を下回らないよう、人事院を設け、それに勧告権を与え、公共企業体には公労法に基く調停権を与えたのであります。官公労の闘争は、かかる観点から批判すべきであると思うのでございます。
国家公務員法及び公労法が制定されて以来、仲裁委員会の裁定は、十五件のうち、わずかに三件実施されたにすぎないのであります。また、人事院は、政府の圧力で、過去二年間民間給与を下回る事実を確認しながら、諸般の事情によりと称し、当然五%以上の物価及び生計費の増減のあった場合勧告しなければならない法律上の義務を怠り、また勧告を無視して参ったのでございます。のみならず、物価の地域差による給与のアンバランスを補給する地域給の勧告も、政府は見向きもしないで、今日まで、じゅうりんしてきたのでございます。(拍手)かくして本来中立性を保持しなければならぬ政府みずから、日経連と相呼応し、政治権力を行使して賃金ストップ政策を強行してきたのであって、今次官公労の闘争は、こうした政治的背景の上に自然発生的に起きたものといわなければなりません。(拍手)
人事院は、昨年七月十六日、公務員の給与は民間給与に比べ低位にある、と、国会及び内閣に報告している。その報告によれば、そのベースの基準となる八級職の公務員と民間給与とを比較してみますと、公務員は一万六千九百二十円であり、民間給与は一万八千八百二十円となっており、従って、公務員と民間給与とは約二千円の差額があるのであります。加えて、その後半年間における民間給与の値上り分を加算いたしますならば、公務員と民間給与の差額は優に二千円を上回っているのであります。この政府の科学的と称する統計を見ても、公務員の二千円アップの要求は断じて不当でないと、われわれは確信をしておるのでございます。
わが党は、かかる観点から、事態の円満かつ合法的解決のために、人事院及び調停委員会に対しまして申し入れを行いました。岸幹事長は、これを調停委員会の中立性を侵すものとの談話を出しておられますけれども、調停委員会はベース・ダウンの機関ではなく、ベース・アップを調停する機関でありますから、べース・アップを内容とする調停案をすみやかに出して、事態の円満な解決をはかれと申し入れることは当然であります。(拍手)社会党の態度こそ合法的であって、調停委員会のゼロ調停を期待する政府及び自民党こそ調停委員会の中立性を侵すものといわなければなりません。(拍手)次に、政府の警告の問題に移りたいと思います。休暇は、公共企業体職員はもとより、一般公務員についても、労働基準法三十九条及び同法準用によって、年間二十日を認められたところの当然の権利であります。また、管理者の承認についても、これは一種の形式行為でありますので、今までの慣行として事後の場合もあり得るのであります。
また、ピケ、デモ等についても、争議権は奪われておるとしても、憲法第二十八条によって、当然団結権、団体行動権は基本的な権利として認められておるのでありまして、労働法学者も、この点は、おおむね一致して認めておるところであります。(拍手)また、政府は、定時出退庁及び超過勤務拒否を違法ときめつけておるが、定時に出勤し、定時に退庁することこそ、基準法に照らして守らなければならない当然の原則であります。超過勤務拒否については、いわゆる所定の労働時間外に過重な労働をなさしめるものであって、超過勤務を実施するかいなかは、その職員の健康その他の都合にゆだねられているものであり、強制さるべき性格のものでは断じてないのであります。国家公務員について同法の準用はないと先ほど田中君は言いましたけれども、あの人は法律を知らないのかもしれない。国家公務員についても同法の準用は当然にあるということを、この際申し上げておきたいと思うのでございます。
要するに、われわれは憲法二十八条の見地からこの問題を論じており、政府及び自民党は古い官吏服務紀律の見地から論じているので、論争は平行線をたどっているが、見のがすことのできない一つの事実は、労働者の団結権をこのように制限するのは、これを積み重ねることによって、究極において憲法第二十八条の団結権、団体行動権を廃棄せんとする、政府と自民党の隠されたる反動的意図が背後にあるということをわれわれは指摘したいのでございます。(拍手)わが党は、政府の、かくのごとき破壊的、挑発的、かつ恐怖政府を思わせる権力介入とあくまで戦い、憲法第二十八条を守る立場から、弁護士団を動員し、発生する具体的事件を法律的に取り上げ、合法的な法廷闘争をもって対抗することを考えているのであります。そこで、この際総理大臣にお伺いしたいことは、具体的事件が発生し、法廷闘争となり、労働者の行動が違法行為でないとの判決があった場合、政府のどなたが責任をおとりになるか、総理みずから責任をおとりになるのか、それとも労働大臣か、この際確信のある御答弁をお願いしておきたいと思います。
次に、私は、許しがたい政府の暴言についてこの際政府の所信をお伺いしたいと思います。それは、去る八日、自民党の総務会におきまして、船田長官はこう言っておる。自衛隊本来の使命は国内の治安維持にあるので、春季闘争がゼネストに発展して、警察力で収拾がつかず、自衛隊の出動を求められるようなことがあれば、当然自衛隊を出動さすべきである、こう言っておるのであります。おそらく、この船田長官の総務会における発言によって、今や自衛隊の本質が明瞭になったと思う。自衛隊は国を守る軍隊ではなくして、この自衛隊こそ、独占資本家を守る自衛隊であり、自由民主党の自衛隊であるということは明瞭になったのであります。(拍手)
さらに、自由民主党は、先般きわめて愚劣なる声明書を発表してこの声明書の中で、「みずからの政治的野心と革命的闘争の野望を満たそうとする暴挙にほかならない」こう言っておる。私は、どなたがこの声明を起草されたか知りませんけれども、少くとも革命的闘争というのは、一九一七年ソ連に起きたような、いわゆる政治的なゼネストをさすものであって、今次春季闘争は、国家権力を奪取したり、国家の機構を変革しようというような政治闘争では断じてないということを申し上げたいのであります。せっかくでございますが、新制中学校の社会科の知識すらないような、かくのごとき愚劣きわまる声明は、そのままそっくりお返しをしたいと思うのでございます。(拍手)
さらに、声明はこう言っておる。「われわれは国民経済の興隆と国民生活の繁栄のため、労働運動の正常化と健全化を希う見地から、総評傘下の組合員諸君が此度の幹部の企図に対し、厳正な判断を下して良識ある行動に出られんことを望む」そこで、私は、これを次のように読みかえたいのであります。われわれは、自由民主党及び鳩山政府の正常化と健全化を願う見地から、自民党傘下の全党員諸君が、このたびの自民党幹部の企図に対し、厳正なる判断を下して、公労法及び国家公務員法を遵守するよう良識ある行動に出られんことを望んでやまない、と申し上げたいのでございます。(拍手)
また、倉石労働大臣は、労働大臣に就任されました際、私はプロレスのレフェリーのような公平な態度で臨みたいと言っておられます。ところが、どうでございましょう。まだリングの上に上っていないところの相手の労働者を、すでにこのレフェリーはレスラーになって、武装して、情容赦もなく弾圧、どうかつ、威嚇をもってなぐりつけておるのでございます。(拍手)かくのごときは、断じて公平なるレフェリーでもなければ、また、中立性を保持しなければならぬ労働大臣のとるべき態度ではないのでございます。私は、倉石労働大臣は個人としては尊敬しておりますけれども、今日、自由民主党及び鳩山内閣を基礎として労働行政をつかさどっておられますが、この労働行政は、現下の状態をさらに混乱に導くところの、破壊的な、挑発的な、全く私どもの排撃すべき労働行政と考えまするから、労働行政の担任者としては不適格でございます。鳩山内閣総理大臣は、この際倉石労働大臣を罷免なさる意思があるかどうか、これを一つ明確にお答え願いたいと思うのでございます。(拍手)
以上をもって私は質問を終りたいと思いますが、重ねて申し上げます。私は鳩山内閣総理大臣に対して答弁を要求しておるのでございまして、その他の閣僚の答弁は要求いたしません。なお必要があれば再質問するということを申し上げまして、私の緊急質問を終りたいと思います。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/13
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014・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 赤松君の御質問にお答えをいたします。
第一に、労働賃金裁定の基礎について御質問がございましたが、この点につきましては、先刻石橋通産大臣並びに倉石労働大臣より説明がありまして明瞭だと思いますから、私は重複しません。
第二は、組合の正当なる行為に対して干渉する考えは持っておりません。ただ、その違法顕著なるスト行為に対して法治国として干渉しなくてはならないのは、これは当然でございます。
第三について党の声明書の撤回の意思があるかというようなお話がありましたが、撤回の意思はございません。(拍手)
倉石労働大臣罷免の意思があるかという御質問がありましたが、罷免の意思はございません。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/14
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015・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより憲法調査会法案の趣旨の説明を求めます。提出者山崎巖君。
〔山崎巖君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/15
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016・山崎巖
○山崎巖君 ただいま議題となりました憲法調査会法案につきまして、提案の理由及び法律案の概要について御説明を申し上げたいと存じます。現行憲法が民主主義と平和主義並びに基本的人権の尊重にその基本的原則を貫く点におきましては、何人もこれを不可とするものはないと信じます。しかしながら、現行憲法が、昭和二十一年、占領の初期において、連合国最高司令官の要請に基き、きわめて短期回に立案、制定せられたものであり、具に国民の自由意思によるものにあらざることは、否定しがたき事案であります。(拍手)さらに、また、過去約九ヵ年間における実施の経験にかんがみまして、わが国情に照らし種々検討を要すべき点の存することも、これを認めなければならないことと存するのであります。ここにおきまして、この際新たなる国民的立場に立って現行日本国憲法に全面的検討を加えますことは、わが国独立の完成のためにも、はたまた、再建日本将来の繁栄と国民福祉の向上のためにも、きわめて緊要なことであり、そのためには、すみやかに有力なる憲法の調査審議機関を設けることが必要であると考えましてここに本法律案を提出いたしました次第でございます。(拍手)本法律案は、右の趣旨に基き、日本国憲法に検討を加え、関係諸問題を調査、審議するための機関として憲法調査会を設けんとするものでありまするが、その構成につきましては、憲法問題の重大性にかんがみまして、広く衆知を集め、公正なる世論を反映せしめるため、国会議員三十名及び学識経験ある者二十名、合計五十名以内の委員をもって組織することといたしておるのであります。また、調査会には、会長一名、副会長二名を置くことになっておりまするが、いずれも委員の互選によることといたしております。右のほか、調査会には専門委員及び幹事を置くとともに、事務局を設けることとし、事務局長以下の職員をして事務を処理せしめることといたしておるのであります。
この調査会は、これを内閣に置くのでありますが、その運営につきましては、特別の諮問を待つことなく、あくまで自主的な立場において調査、審議せんとするものであり、その結果については、内閣または内閣を通じて国会に報告することといたしておるのであります。
以上が本法律案提出の理由並びに法律案の要旨であります。何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに可決せられんことを切望いたします。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/16
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017・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) ただいまの趣旨の説明に対する質疑に入ります。下川儀太郎君。
〔下川儀太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/17
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018・下川儀太郎
○下川儀太郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案になりました憲法調査会法案に対し、いささか質問せんとするものであります。
なお、本論に入る前に、若干提案者に質問いたしたいと思います。すなわち、本提案者である山崎巖君の警保局長時代に私は治安維持法に問われ、死に値する屈辱と辛苦を与えられましたが、年変って、今日、その捕えた者と捕えられた者が憲法改正をめぐって対決することは、まことに感慨無量でございます。(拍手)しかし、私はいたずらに個人を責めるのではございません。そのあなたの背後にあって権力をふるった冷酷無情な明治憲法に対する痛烈なる怒りを私は覚えるものでございます。(拍手)私は、それらの過去を思い見るときに、明治憲法の代弁者として、いろいろと過去における人々がやって参りましたそれらのあやまちを、もしみずからが反省するならば——今度の憲法の改正案の中には、いろいろと旧憲法の復活という意図が盛られておりますが、もし提案者にして過去のすべての反省の上に立つならば、こうした提案とか、あるいは憲法改正のリーダーにはなり得ないと私は考えます。(拍手)しかるに、現実は、そのいすにすわっておる。私は、その正体の中に、本法案の性格と意図するところがそこに見えておるのであります。すなわち、この姿こそが、権力政治へ逆行せんとする鳩山内閣並びに自民党諸君の偽わらざる夢であろうと私は考えます。(拍手)過去の暗黒政治を顧み、憲法改正の論議を前にして、提案者は何を考えておられるか、その反省の上に立っての所見をお伺いしたいと思います。(拍手)
次に、これも特に聞きただしておきたいことは、本案は過ぐる第二十二国会に提案せられております。このときに、この法案の重要性によって多くの世論が巻き起っている際に、その審議に当って、内閣委員会におきましては、わずかに三時間で通過せしめられたのでございます。まさに、議会政治の否認、民主主義の仮面をかぶったファシストの正体を私は見抜きました。すでに、本案は、わが国の運命を決する再軍備その他の重大法案を内蔵しているだけに、その審議には慎重を期さなければなりません。従って本案に対する扱いについて、政府及び自民党は、昨年の轍を繰り返すのか、はたまた民主的ルールを守らんとするのか、まず、この点について、鳩山総理並びに提案者から、自民党を代表して、明確なる答弁をお願いしたいと思います。(拍手)次いで本論に入りまするが、鳩山総理並びに自民党の諸君は、現行憲法をアメリカ憲法、マッカーサー憲法と非難し、それを改正の根拠とされておりまするが、天につばきするにひとしいものであります。なるほど、形式的には、マッカーサー占領当時、アメリカの示唆するところが多かったかもしれませんが、しかし、形式は問題ではないのであります。それは、かつて日本の憲法がドイツ憲法やフランス憲法等、と呼ばれたのと同様に、問題はその憲法がとっている原則であって、特に重視すべきは、西欧諸国家の憲法の基幹として作られている民主政治と人権尊重の精神でございます。これはすでに世界のものとなっております。従って、現行日本憲法が尊重せられるゆえんは、これら西欧諸国の憲法よりはるかにヒューマニティに貫かれている点でございます。真実に愛情に燃えた平和憲法の美をみずから刈り取らんとする道は、決して文化国家の政治家のなすべき行為ではないと考えますが、鳩山総理並びに提案者の御答弁を願いたい。(拍手)また、押しつけ憲法と言っておりますが、平和憲法制定当時は、明らかに、各党一致をもって、各所に随喜と賛美の声をあげております。それで、今日に至って自民党は豹変し、みずから賛美した憲法を押しつけ憲法と言うゆえんは、まことに今日の日本政府並びに……日ソ交渉等によって……あるいは防衛の対象の中に……
〔「どうした、どうした」「脳貧血だ、病気だ」「休憩しろ、休憩しろ」と呼び、その他発言する者多し〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/18
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019・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 暫時休憩いたします。
午後二時四十分休憩
〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X00919560216/19
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