1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年二月十七日(金曜日)
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議事日程 第九号
昭和三十一年二月十七日
午後三時開議
一 憲法調査会法案(岸信介君外六十名提出)の趣旨説明に対する質疑(前会の続)
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●本日の会議に付した案件
憲法調査会法案(岸信介君外六十名提出)の趣旨説明に対する質疑(前会の続)
昭和三十年度一般会計予算補正(第1号)
昭和三十年度特別会計予算補正(特第4号)
昭和三十年度政府関係機関予算補正(機第1号)
総理府設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
家事審判法の一部を改正する法律案(内閣提出)
午後四時五十四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/0
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001・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより会議を
開きます。
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憲法調査会法案(岸信介君外六十
名提出)の趣旨説明に対する質疑
(前会の続)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/1
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002・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 憲法調査会法案の趣旨の説明に対する質疑について前会の議事を継続いたします。下川儀太郎君より、病気のため、発言を継続することを放棄する旨の申し出がありました。森三樹二君より質疑の通告があります。これを許します。森三樹二君。
〔森三樹二君登壇]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/2
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003・森三樹二
○森三樹二君 私は、日本社会党を代表いたしまして、自由民主党より提案されました憲法調査会法案に対し質問せんとするものでありますが、本法案こそは明らかに再軍備のための憲法改正の前提をなすものであり、九千万国民は、ひとしく、本法案の質疑応答には耳をそばだてて傾聴しておるのであります。(拍手)従って、鳩山総理並びに提案者は、この際明確なる答弁をせらるるよう切望してやまないものであります。まず第一にお尋ねしたいの、昨日、提案者の山崎君は、現行憲法は連合国最高司令官の要請による押しつけられた憲法であり、きわめて短期間に立案、制定されたものであるから、再検討を加えるため調査機関を設けるべきであるとの趣旨を述べられたのであります。しかしながら、私は、当時の憲法改正特別委員の一人といたしまして、現行憲法の成立に参加し、その実情をつぶさに承知いたしております。当時提出されました憲法草案は日米の憲法学者が中心となって、世界の最高標準ともいうべき人権宣言を前文に掲げ、基本的人権についても、また、各国の憲法の最もすぐれたものをその内容としていたのであります。しかも、われわれは、委員といたしまして十分質疑を継続し、自由なる意思をもって原案を修正することの可能なることを確認したのでありまして、前文並びに第一条等に、主権在民の規定を初め、各条文中に相当の修正を加えたのであります。かくして、三ヵ月の長きにわたって、連日慎重審議の結果、委員会並びに本会議とも、ほとんど満場一致をもって成立したのでありまして、この憲法を押しつけられたものと主張する自由民主党の諸君の中には当時の芦田委員長を初め多数の賛成者がおられたのでありまして(拍手)今さらみずからの不明と欺瞞を暴露したものであり、その責任は重大といわなければなりません。(拍手)これらの諸君が憲法改正を目的として本法案の提出者あるいは賛成者となっておられるのでありますが、その政治責任をいかに考えられるか。これをもってしても、諸君は押しつけ憲法と解されるかいなか、首相並びに提案者にお伺いしたいのであります。(拍手)次に、第二点として、憲法改正の限界についてお伺いしたいのであります。提案者の山崎君は、現行憲法の、平和主義と民主主義並に基本的人権の尊重の三原則は守らなければならないと強調されておつたのであります。この原則こそは憲法改正の重大限界であり、この基本理念を無視した改正などは断じてあり得ないのであります。しかるに、政府与党は、再軍備のための憲法第九条の改正によって平和主義を破壊し、天皇を元首の地位に復元することによって主権在民の民主主義を否定し、さらに、勤労者の団結権を不当に弾圧するとともに、言論、集会、出版、結社の基本的人権を制限せんとしておるのであります。提案者の唱えるこの三原則は、そのみずからの手によって抹殺されんとしておるのであります。(拍手)鳩山総理並びに提案者の所信をお尋ねしたいのであります。質問の第三点は、本法案が、憲法改正を目途とし、その前提をなす以上は、明らかに憲法改正案に準ずべき性格を持っておると断ぜざるを得ないのであります。従って、今回の提案が、憲法第九十六条所定の、総議員の二分の三以上の賛成を得ずして提案されたことは、良識ある政治行動と言うことはできないと信ずるものでございます。(拍手)また、本法案は憲法調査会を内閣に置くと規定しておりまするが、もしかりに置くといたしましても、何ゆえ国民代表機関たる国会に設置しないのであるか。国民は国会を通じてその論議を十分傾聴せんとしておるのであります。政府与党は、国民の世論と反撃をおそれるの余り、かかる民主政治に逆行した調査会を設けたものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)なお、憲法調査会を内閣に置く場合におきまして、その構成人員の人選その他一切は政府与党の力に偏重し、世論を圧殺して多数横暴の結論を打ち出し、これをあたかも正当なる改正論のごとく宣伝されるおそれがあるのでございまするが、その構成は実にへんぱをきわめたものと考えるのであります。これについてても、鳩山総理並びに提案者の御所見を伺いたいのであります。(拍手)
次に、憲法改正の基本構想についてお伺いしたいのであります。憲法調査会を内閣に設置する以上は、一応の構想がなくてはならないと思うのであります。今回の憲法調査会設置の意図は、明らかに、憲法第九条を改正して、自衛のためと称する陸海空の自衛隊を軍隊として合法化し、重光・ダレス会談の密約した海外派兵までも可能ならしめんとするものであって、断じて許すことのできないものであります。(拍手)かの朝鮮動乱を契機といたしまして、アメリカ当局は、アジア人にはアジア人をもって戦わしむべしという、それこそ押しつけた憲法を制定せんとし、当時の吉田内閣は警察予備隊を作り、現在は二十数万の自衛隊に増強され、さらに、攻撃武器であるオネスト・ジヨンや原子爆弾を搭載するB57までが日本に持ち込まれている現状であり、平和憲法は明らかに鳩山内閣の手によって戦争準備の憲法に切りかえられんとしているのであります。(拍手)自由民主党の諸君の言う自主的憲法の制定とは、それこそアメリカの政策転換に左右せられたといわざるを得ないのであります。(拍手)私は、この際、憲法改正よりも、安保条約並びに行政協定を改訂し、真に日本の自主独立を達成することが、より重大であると考えるのでございます。(拍手)今や、世界の大勢は、昨年秋のジユネーヴ巨頭会談以来、軍備を縮小し、原子戦争を防止して、平和共存に発展しつつあるのであります。過般、本院においても、原水爆実験の禁止の決議まで行なって、わが国が真に平和愛好国民であることを広く世界に表明したのであります。かかるときにおいて、軍隊を合憲化し、交戦権を認めることによって、海外派兵と原水爆使用のおそれある憲法改正は断じて許さるべきでないと考えるのであります。なお、これの改正に伴い、徴兵制を施行せんとする意図ありやいなや、われわれは、これについても、鳩山総理、重光外相、船田防衛庁長官並びに提案者の御答弁を求めるものであります。(拍手)
なお、天皇の地位について、国の元首として旧憲法と同一の地位の復元を考えておらるるが、これこそ天皇を絶対の主権者に置きかえる危険性を包蔵するものでありまして、われわれは、かかる天皇主権に反対するのであります。次に、家族制度の復活が意図されているとのことでありますが、旧憲法下における家族制度が、個人の人権を無視し、支配者の権力保持のために作られた忠孝の美名のもとに、国民は天皇に、妻子は家長に束縛され、その結果が、一枚の赤紙による動員召集となり、あるいは人身売買ともなって、幾多の悲劇を生んだことは周知の事実であります。(拍手)われわれは、かかる意図に対しても、総理並びに提案者の御答弁を願いたいと思うのであります。
最後に、鳩山総理にお尋ねしたいのでありますが、総理は、憲法改正を早急に実現したいとの念願から、小選挙区制を施行し、与党が三分の二以上を獲得することをねらっておるのであります。かかる暴挙は憲政の邪道でありまして、今や、保守、革新の二大政党政治は軌道に乗らんとしておるのであります。政党は堂々と政策をもって戦うべきであり選挙戦もまた、憲法改正是か非かをもって国民の審判を受くべきであります。金力と弾圧に都合のよい小選挙区制によって多数を獲得せんとするがごときは、まことに卑劣きわまる手段であるといわざるを得ないのであります。(拍手)現行憲法の改正は、戦争の惨禍による大きな犠牲によって獲得した民主主義を破壊し、天皇主権による独裁政治の復活であって、日本民族は再び一大不幸に陥ることは明白であります。
私は、ここに、憲法改正を前提とする本法案の撤回を要求し、悔いを千載に残ざざるよう警告して、質疑を終了する次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/3
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004・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) ただいまの森君の発言中、もし不穏当の書辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。
山崎巖君。
〔山崎巖君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/4
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005・山崎巖
○山崎巖君 森君の提案者に対する質問に対して御答弁を申し上げます。
私どもが憲法調査会法案を提出いたしました理由は、昨日提案の際に申し上げた通りであります。すなわち、現行憲法の多くの長所は、これを尊重擁護すべきはもとよりであります。従いまして、民主主義、平和主義並びに基本的人権の尊重の三原則を尊重、擁護することは、憲法検討の基本原則として貫きたい所存でございますので、森君のお述べになりましたような意図はないことを、重ねてここにはっきり申し上げておきます。(拍手)しかしながら、一面、現在の憲法は、昭和二十一年、占領の初期において、きわめて短期間に立案、制定せられました。また、実施の経験にかんがみましても、種々検討すべき点がありますことは、明らかな事実であります。(拍手)わが国が独立いたしました今日、これをつぶさに調査、検討しようとするにほかならぬことを、御了解を願いたいのであります。憲法第九条にお触れになりました御質問でございましたが、私どもが憲法の検討を必要と認めましたのは、決して第九条の改正のためのみではございません。提案理由に申し上げました通りに、わが国独立の完成のためにも、国家の繁栄、国民福祉の向上のためにも、各条章にわたりまして、わが国情に照らし検討を要する点は多々あるように考えるのであります。従って、ただいまの御疑念のように、侵略のためや海外派遣のための軍備を強化したり、昔のような徴兵制度を復活するようなことを考えているものではございません。(拍手)もとより、ただいま御意見にございましたような、アメリカの要請や強圧によって憲法を改正しようとするものではないのでありまして、自主独立に対するわれわれの押えがたき熱情から憲法を検討しようとするものでございます。
なお、安保条約や行政協定をやめてからでなければ憲法を再検討してはならぬということはあり得ないと思います。
森君は、また、本調査会法案を三分の二以上の議員の賛成者をもって提案さるべきものであると主張せられましたが、私どもといたしましては、本法案の提出が国会法の要件を備えておりまする以上、何ら差しつかえないものと考えております。
また、調査会を国会に置かずに、これを内閣に置きましたのは、委員は、提案理由に御説明申し上げましたように、国会議員のほか、学識経験ある者が同列として組織するのでありまして、調査会はこれを内閣に置くことが最も適当であり、先例から見ましても妥当なやり方であると考えた次第であります。しこうして、これを内閣に置きましても、提案理由で申し上げました通り、広く国内の衆知を集め、自主的に、かつ民主的ルールに従ってその運営を行うようにいたしておるのであり、十分な、公正な世論を反映できるものと確信をいたしておる次第であります。社会党におかれましても、本調査会をわれらとともに共通の広場として、憲法問題の検討のため欣然参加せらるることを期待いたし、かつ切に望むものであります。(拍手)
天皇制及び家族制度についてのお尋ねでありまするが、わが自由民主党は、ただいま調査会を設けて研究調査を進めておる段階でございまして、具体的な結論を出すまでには至っておりません。しかしながら、私どもといたしましては、往時の天皇制の復活のごときは全然考慮いたしておりません。あくまでも国民主権の原則を堅持しようとするものであります。また、家族制度につきましても、旧戸主権の復活というような封建制度を決して考えておるものではございません。全然そういうことは問題に相なっておりません。要は、この問題につきましても、憲法調査会において、衆知を集めて、慎重なる審議をわずらわしたいと存じております。
基本的人権につきましても一言お触れになりましたが、基本的人権の尊重は、さきにも申し上げました通り、憲法検討の際、われらの持つ基本原則であります。その精神をますます徹底しようとこいねがうものでありまして、いたずらにこれを制限するがごとき意図は断じてございませんことを、重ねて申し上げておきたいと存じます。
以上をもって御答弁といたします。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/5
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006・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 森君に対する答弁は大体において山崎君がいたしましたから、私はこれを重複いたしません。ただ、特に私に、小選挙区制を憲法改正のためにとるのは不都合だという御質問がありましたが、選挙法改正は決して憲法の改正とは関係はございません。(拍手)
〔国務大臣船田中君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/6
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007・船田中
○国務大臣(船田中君) 森君の御質問のうち、防衛庁に関するものにつきまして答弁を申し上げます。
現行憲法第九条におきましても、自衛のために国力に相応する最小限度の防衛力を持つということは禁止いたしておりません。従いまして、現在の自衛隊が憲法違反なりという結論にはならぬと存じます。
なお、憲法第九条についての検討も、もちろん憲法調査会において行われることと存じまするが、その検討が行われたからといって、侵略的な軍備を持つというようなことは毛頭考えておりませんし、また、徴兵制度の問題につきましては、先ほど山崎君から御答弁のありました通りに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/7
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008・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 外務大臣は本日病気のため出席されておりませんので、その答弁は適当の機会に願うことといたします。
これにて質疑は終了いたしました。
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昭和三十年度一般会計予算補正(第1号)
昭和三十年度特別会計予算補正(特第4号)
昭和三十年度政府関係機関予算補正(機第1号)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/8
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009・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、昭和三十年度一般会計予算補正(第1号)、昭和三十年度特別会計予算補正(特第4号)、昭和三十年度政府関係機関予算補正(機第1号)、右三件を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/9
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010・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/10
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011・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
昭和三十年度一般会計予算補正(第1号)、昭和三十年度特別会計予算補正(特第4号)、昭和三十年度政府関係機関予算補正(機第1号)、右三件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。予算委員長三浦一雄君。
〔報告書は会議録追録に掲載〕
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[三浦一雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/11
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012・三浦一雄
○三浦一雄君 ただいま議題となりました昭和三十年度一般会計予算補正(第1号)、昭和三十年度特別会計予算補正(特第4号)、昭和三十年度政府関係機関予算補正(機第1号)につきまして、予算委員会における審議の経過並びに結果について御報告を申し上げます。
この補正予算三案は、去る十四日委員会に付託されました。
まず、一般会計予算の補正について、その概要を申し上げます。
本補正は、第二十三回国会において実施されました地方財政についての臨時措置に伴う財源の補てん、食糧管理特別会計の損失補てん、義務教育費国庫負担金、生活保護費等の不足額補てん、その他必要最小限度の歳出の増加を見込み、歳出三百五十四億余万円を追加計上し、これに対する財源といたしまして、租税等の増収二百十八億余万円を充てるとともに、歳出において公共事業系統費その他既定経費の節約、繰り延べ等により百三十六億余万円を捻出、充当いたすものでございます。すなわち、これによりまして、昭和三十年度一般会計歳入歳出予算総額は、二百十八億余万円を増加し、一兆百三十三億余万円ということになります。
次に、補正のおもな内容について申し上げますると、まず歳出におきましては、臨時地方財政特別交付金百六十億円がございます。これは、地方財政の窮状に対処するため、さきに交付税及び譲与税配付金特別会計で百六十億円の借り入れを行い、これを臨時地方財政特別交付金として地方団体に交付する臨時の措置がとられておったのでありますが、今回、その財源として一般会計から同特別会計へ借入金相当額百六十億円を繰り入れるものでございます。
また、地方交付税交付金の追加は、三十年度において、所得税八十五億円、法人税十億円、合せて九十五億円の増収が見込まれておりますので、その二二%に当る二十億余万円を計上いたしておるのであります。
次に、食糧管理特別会計へ繰り入れますのは、同会計において三十年度末百六十七億円の損失が見込まれるのでございますが、そのうち、一般会計からのインベントリー・ファイナンス相当額百億円をこえる部分、すなわち六十七億円についてこれを補てんせんとするものでございます。
また、生活保護費は、最近の実績に基いて、所要見込額が当初予算を上回る状況であるので、その不足額で補てんせんとする等のため二十三億余万円を追加計上されたものであります。
義務教育費国庫負担金につきましては、二十九年度の不足額十二億余万円及び期末手当〇・二五月分の増額に伴う三十年慶の不足見込額十二億円を補てんせんとするものでありまして、合計二十四億余万円が追加計上されておるのでございます。
そのほか、国債費の追加額十二億余万円、旧軍人遺族等恩給費の不足額十七億余万円、国際金融公社出資金九億余万円、日本電信電話公社交付金八億余万円等、必要最小限度の歳出の追加が行われておるのでございます。
次に、これらの歳出の追加に必要な財源といたしましては、最近における経済の好転による所得税、法人税、砂糖消費税、物品税、関税等の増収百六十億余万円、特殊物資差益寄付金三十億円、そのほか、国際電信電話会社の株式の売払代、旧タイ国特別円債権返償金、金融機関調整勘定利益分配金等七十八億円、合計二百六十八億余万円が見込まれておるのであります。
一方、上級タバコの売れ行き不振による専売納付金四十九億余万円が減少の見込みでございますので、差引歳入の増加額は二百十八億余万円になっておるのでございます。以上の歳入と歳出との差額百三十六億余万円は、歳出の節約、繰り延べ等によって捻出したのでございます。すなわち、公共事業系統費につきましては、事業の節約、繰り延べ等により六十四億余万円を減額し、賠償等特殊債務処理費において三十億円、農業保険費において二十八億円、外航船舶建造融資利子補給その他において約十四億余万円等の節約不用を見込んでおります。
特別会計及び政府関係機関の予算につきましては、主として一般会計の補正に伴いまして、交付税及び譲与税配付金、資金運用部、国債整理基金、郵便貯金等の各特別会計及び日本専売公社の予算の補正が行われておるのでございます。
以上が補正の大要でございます。
次に、補正三案に対する委員会における質疑のおもなるものについて御紹介申し上げます。
まず第一に、さきに、政府は、三十年度予算は地固めの予算であり、一兆円は絶対に堅持し、将来補正予算は組まないと、しばしば言明したにもかかわらず、今回その言明に反して一兆円のワクをくずしたことは政府の責任ではないかという質疑がございました。政府は、これに対しまして、諸般の事情から一兆円を若干上回ることになったけれども、健全財政の基礎をくずしたものではないという答弁がありました。
また、地方財政の問題につきましては、地方財政の健全化ということについて政府の構想いかん。これに対しまして、地方財政の健全化のためには、政府は格段の配慮を払っておる、まず、昭和三十年度においては、今回の補正をもって、特別交付金の財源として配付金特別会計へ百六十億円を繰り入れる等のほか、一般交付税及び入場譲与税の増額等、できるだけの財源措置を講じた、さらに、三十一年度においても、地方団体側でできるだけ歳出の節約、行政機構の合理化、簡素化等、方途を講じてもらうと同時に、政府においては、交付税率の引き上げ、地方財源の偏在の是正、公債費の軽減等、必要な措置を講じているのであるが、今後においても、税制その他の面について根本的な対策を立てる所存であるということでありました。さらに、公共事業につきましては国の補助金負担がはなはだ不十分であり、そのため地方の超過負担が累増して参って赤字の原因をなしておるのであるが、これに対する対策いかんという質疑がございました。これに対しまして公共事業費の削減は個々の事業及び地方の実情をよく考慮した上でやっておる、年度内に消化できないものを特に繰り延べたということであり、また、補助負担額につきましても、三十一年度予算において、補助率を増し、基準単価についても改訂を加えて適正を期したという答弁がございました。また、この補正による予算の削減から生ずる残余事業の処理をどうするか、さらにまた、経済五ヵ年計画と公共事業各般の計画との関係についていかようにするかという質疑に対しましては、政府は、今回の補正によって繰り延べた事業は、今後優先的に措置するの方途をとる、さらにまた、各種の事業計画は、経済五ヵ年計画との関係において十分連絡の上、できるだけ合致するように努力する、財政の許す範囲において重点的に実施して参りたい、こういう答弁でございました。なお、旧タイ国特別円債権返償金と国債費との関係、賠償等特殊債務処理費、あるいは砂糖、バナナ等特殊物資の差益寄付金等につきまして、熱心なる論議がかわされたのでございますが、その詳細は会議録に譲ることとし、この際省略させていただきます。本日、質疑終了後、討論、採決の結果、多数をもって本補正予算三案はいずれも政府原案の通り可決いたした次第でございます。以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/12
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013・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより討論に入ります。北山愛郎君。
〔北山愛郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/13
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014・北山愛郎
○北山愛郎君 ただいま議題となりました昭和三十年度予算補正三案に対し、私は、日本社会党を代表して、簡潔に反対の態度を明らかにせんとするものであります。(拍手)第一に、この三百五十四億円に及ぶ補正の性格が、一見して、当初予算の見込み違いと欠陥をごまかし切れず、しぶしぶ一部の手直しを行う誤謬訂正の予算であることを指摘しなければなりません。(拍手)補正の内容は、災害等の新しい財政需要に応ずるものでもなく、まして、政策の前進を示す何ものもございません。百六十億の地方財政交付金にせよ、生活保護費の不足にせよ、あるいは食管会計の赤字にしろ、ほとんど全部が、当初予算編成の際すでに予測せられ、われわれによって指摘されたもののみであります。(拍手)当初予算の編成に当り、地方財政、社会保障費の増額を組みかえ要求し、あるいは臨時国会の召集を要請して補正予算の提出を求めたに対し、政府は、補正予算は出さない、一兆円のワクは守る、地方財政に赤字は出ないと強弁しましたが、すでに補正予算は提出され、一兆円のワクは易々として破られ、権威あるべき政府の言明は次々に変改され、総理、閣僚の言葉は春の雪よりも淡く消え去り、日ソ交渉早期妥結の夢とともに行方不明にならんとすることは、まことに遺憾千万と申さなければなりません。(拍手)
上信なければ下これにならうとか、大蔵事務当局は、過ぐる臨時国会において、地方財政と年末手当の要求に対し、財源がないと強弁し、本年度の税収は予算額を確保するのがやっとであり、自然増は出ないと言明したが、百六十億円に上る増収がこつ然として出現、計上しておる。この人を食ったやり方を見るときに、その場その場の旨いのがれに終始する政府官僚に対し強い不信を覚えるのは、ひとり私のみではないと思うのであります。これに加えて、与党の予算編成に対する干渉は、政策実現の域を越え、党利党略に堕落して、足して二つに割るかと思うと、初め増額したものを幾ばくもなく減額する等、政府の無方針に拍車をかけるがごとき事態を招来していることを見のがしてはなりないと思うのであります。今回の補正においても、公共事業費が実に六十四億円の削減となっているのでありますが、御承知の通りに、昨年、当初予算において自民両党の修正によって三十億円の公共事業費が増額せられ、十二月、臨時国会では、大混乱のあげく、逆に八十八億円の減額となり、今回はそのうち二十四億円を復活するという、この複雑な経過を顧みるときに、ふやしたり、減らしたり、またふやしたり、千変万化、まことに端倪すべからざる政府与党の御活躍に対しては、ただただ驚嘆を禁じ得ないのであります。(拍手)
このような無方針、無定見と、足したり、割ったり、ふやしたり、減らしたりした結果が、この補正予算でありまして、予算編成の責任者が、みずから、この補正を評して、栄養価なきとうふのおからのごときものと言ったと伝え聞くのでありますが、まことに至言であると申さなければなりません。しかしながら、そのとうふのおからにもひとしい補正の中に、われわれは重要な問題が含まれておることを感ずるのでございます。すなわち、第一は、地方財政について、政府な、臨時特別交付金、地方交付税、入場譲与税等百九十二億を与えて、当面の対策としておるのでありますが、これによる修正地方財政計画の歳入合計は九千九百八十八億、しかるに、昭和二十九年度の地方財政歳出の決算の規模は実に一兆一千七百億円にも達し、三十年度の計画よりも一千七百億円も上回る財政規模にあることを思うときに、今次の補正における地方財政対策は一時のがれの弥縫策であり、破局に瀕した地方団体は、もはやこのような水っぽい注射では立ち直ることができないことを深く痛感するものでございます。(拍手)百六十億円の臨時地方財政交付金と並行して、おそるべき財政再建促進法が施行せられましたが、多くの地方団体は、赤字たな上げの再建債を借りることによって、数年の長きにわたり準禁治産者の状態に陥ることをおそれ、法の適用をちゅうちょしている現状であります。増税、行政整理、首切り、事業の中止、行政サービスの低下等の荒れ狂う中で、地方自治は深刻な苦悶に直面しておるのであります。内に毒を含むフグの刺身のような地方財政再建特別措置法と、わずか百六十億円の臨時交付金では、極度に行き詰まった地方団体の必死の努力と要望に対し、あまりにも冷淡かつ貧弱であると申さなければなりません。(拍手)第二には、公共事業費の縮減であります。今回の補正によって、国土保全、道路、港湾、食糧増産等の事業費は千四百九億円となり、昨年度に比し実に百十億の減額となり、また昭和三十一年度予算には千四百十九億円、すなわち減額された本年度の公共事業費とほぼ同額が計上せられ、繰り延べと称する六十四億円は行方不明の状態にあるわけであります。鳩山内閣の最大の公約たる四十二万戸住宅政策すら、公営住宅二千戸を削減している現状でありますが、これらの公共事業等の著しい後退は、もはや政府与党が国土の開発と国民福祉のための建設に対し真の熱意を失ったことを明瞭に示しているといわなければならぬのであります。(拍手)年々二千数百億の風水害と三百億以上の火災による損失を受け、文教、交通、都市、社会福祉施設及び住宅のはなはだしく立ちおくれているところに、正しい産業と貿易の発展の基盤はあり得ないのであります。狭い国土の一五%しか利用しない農業をもって八千九百万の人口を養うことができないことは明々白々の事実でございます。この国土の荒廃と生活文化の後進性が明治以来の軍国主義と戦争政策の結果であることを深く顧みるときに、今日真に祖国を愛する者は、保守と革新のいずれに属するとを問わず、全力を傾けて国土の平和建設にこそ立ち上るべきであると信ずるものであります。(拍手)自衛隊をやめて平和国土の建設隊に改編すべきときであります。外国に軍事基地を提供し、国民の税金でその施設を負担する余裕があるならば、その金を公共事業費に回すべきでありましょう。経済の自立を達成し、独立を完成する道は、憲法の改正ではなくして、平和な貿易を拡大し、国土資源の開発のほかないことは、小学校の児童でも知っておるところであります。(拍手)しかるに、外は日ソ、日中の国交早期回復を怠り、内は国土建設のための公共事業費を削減し、建設省を廃して内政省に編入し、建設行政の後退を企図するがごときは、独立の道に逆行し、国民の輿望に遠くそむくものといわざるを得ないのでありまして、われわれは、この公共事業費の削減に対しましては、断固として反対の意を表するものであります。(拍手)この補正予算は、一言にしていえば、再軍備を中核とし、独占資本の利益に奉仕する昭和二十年度当初予算の必然の悪として生じた付属品にすぎないのであります。年々の予算編成に際し、政府は、まず軍事費についてアメリカの御承認を得、次には大資本に対する数百億円の免税特典と莫大な産業投融資の条件を満たし、最後に地方財政、社会保障、文教等、国民大衆のための経費が組まれるこの予算編成の方式、態度そのものにこそ、今回のようなごまかし訂正をなさなければならない根本の原因があるのであります。(拍手)与党内一部の人々の、防衛費を削って地方財政や公共事業に回せという正しい主張も、スチーム・ローラーのような再軍備費に押しつぶされるというところに、同情に値する深い事情が察せられるのであります。政府与党がかような再軍備予算を続ける限り、栄養価のない、とうふのからのような補正は、今後も何回となく繰り返されるでございましょうが、しかしながら、憲法を改正し、いよいよ軍事費が大手を振っていばり出すことになったならば、今回の補正のごときこま切れの手直し予算ですらも不可能なる事態がくるであろうということを、私は、最後に強く政府与党各位に忠告をいたしまして、反対の討論を終るものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/14
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015・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。昭和三十年度一般会計予算補正(第1号)外二件を一括して採決いたします。三件の委員長の報告はいずれも可決であります。三件を委員長報告の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/15
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016・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって、三件とも委員長報告の通り可決いたしました。
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総理府設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/16
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017・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、総理府設置法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/17
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018・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/18
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019・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。総理府設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。内閣委員長山本粂吉君。
〔山本粂吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/19
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020・山本粂吉
○山本粂吉君 ただいま議題となりました総理府設置法の一部を改正する津律案につきまして内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。本案は、売春関係諸問題がきわめて重要であり、かつ複雑であることにかんがみまして、内閣総理大臣または関係各大臣の諮問に応じて売春対策に関する重要事項を調査審議させるため、総理府の付属機関として売春対策審議会を新たに設けようとするものであります。本案は、一月二十八日当委員会に付託され、二月八日政府の説明を聴取し、翌九日法務委員会と連合審査会を開き、政府に対し質疑を行なったのでありますが、その内容は会議録によって御承知を願いたいと思います。かくて、本日質疑を終了、討論に入りましたが、日本社会党を代表して石橋委員より、今日政府はもはやかような諮問機関を設けて売春問題を調査審議させるという段階ではなく、今や売春禁止の立法をなすべきときである等の理由をあげ、本案に反対の旨を述べられました。次いで、採決の結果、多数をもって原案の通り可決すべきものと議決いたしました。以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/20
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021・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/21
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022・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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家事審判法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/22
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023・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、家事審判法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/23
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024・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/24
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025・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。法務委員長高橋禎一君。
〔高橋禎一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/25
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026・高橋禎一
○高橋禎一君 ただいま議題となりました家事審判法の一部を改正する法律案につきまして、委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。家事審判法施行以来、家庭裁判所が家庭の平和と健全な親族共同生活の維持のために大きな成果をあげつつありますことは、周知の通りであります。しかしながら、家庭裁判所において審判がなされ、あるいは調停が成立いたしましても、これらにより定められた義務の履行が十分完全に保障されなければ、家庭裁判所に救済を求める紛争は、終局的に解決されたとは申されません。現行法のもとにおきましては審判、調停によって定められた扶養、財産分与その他家事債務の履行を確保する手段は強制執行でございます。ところが、現状を見まするに、家事債務はその大部分は少額であり、また、近親者、あるいは、かつて近親の関係にあった者相互間におけるものである関係上、強制執行の手段に訴えることは、一面必ずしも実際的でなく、また、他面、感情上これを回避するの傾向を生じ、せっかく審判、調停によって義務が確定いたしましても、不履行に終ってしまう場合が少くないのであります。このような現状に対し、家事事件を担当する家庭裁判所側、日本調停協会側及び民間各方面から、家事債務履行確保制度創設を要望する声が高くなって参りましたので、これに応ずるため本改正案が提出されたのであります。その骨子は、第一、家庭裁判所は家事債務の履行状況を調査し、義務者に対し義務の履行を勧告することができること、第二、家庭裁判所は財産上の給付を目的とする家事債務を履行しない者に対し、その履行を命ずることができ、この命令に従わない者には過料の制裁を課すること、第三、家庭裁判所は金銭の支払いを目的とする家事債務の履行について、義務者の申し出により、権利者に支払うべき金銭の寄託を受けることができることの三点でありまして、以上が提案理由の要旨であります。さて、法務委員会におきましては本案がわが国司法制度一般にも関連を持つ画期的にして重要な改正である点にかんがみまして、政府並びに最高裁判所事務当局に対し、終始、真摯活発なる質疑を展開し、慎重審議を重ねて参りました。また、家事審判の実務に造詣深き弁護士代表、調停員代表、在会評論家及び民法、民事訴訟法等に識見高き学者を参考人として招き、二日にわたり、それぞれ意見を聴取いたしたのであります。質疑応答のおもなるものを御紹介いたしますと、家庭裁判所が自分のやった裁判をみずから執行すること、わが国裁判制度の本則を乱すものではないか、すなわち、現在の強制執行が家事債務の履行確保に適さないものであるならば、家事事件の権利者に対し、事情に応じ訴訟救助の道を講ずるとともに、簡易な強制執行制度を考うるべきではないか、また、普通の民事裁判、調停等においても、家事事件と同様、小額債権及び救助を要するものと考えられる債権者を含んでいるが、家事事件の債権についてのみかかる履行確保の制度を新設し、普通の裁判、調停等と別個の取扱いをしようとすることは、司法制度を乱すものではないかとの質問がありました。これに対して、政府より、家事事件における権利者は女性が圧倒的に多く、その対象となる金額も五万円以下という小額のものが大部分であり、また、扶養、離婚による慰藉料、財産分与等の争いが近親者間の感情問題とからんで、とかく強制執行の手続をきらう傾向が強いのが家事事件の特殊性であり、すでに、全国の家庭裁判所においては、職員の援助という名目で債務履行の状況調査並びに勧告を実行し、また、裁判官の責任において金銭の寄託にも応じており、相当の効果を上げている実情に照らして、今般これらの点を法制化しようとしているものである旨の答弁がありました。
また、調査、勧告の制度は、権利者の申し立てがなくとも職権でやれるようになっているが、乱用のおそれ等はないかという質問に対しまして、権利者の申し立てによることを要しないこととしたのは、手続や費用の点で権利者の負担をできる限り軽減するためである旨の政府答弁がありました。なお、また、履行命令に従わないときは五千円以下の過料に処することにしているが、命令違反があれば、過料は何回でも繰り返すことができるのか、過料の繰り返しは小額債務については弊害を生ずるおそれもあり、国家のふところがふえるだけで、債権者の保護にならぬではないかとの趣旨の質問に対し、政府より、履行命令の効果を確保するため過料制度は必要であって、正当の事由なく命令に従わない限り、何回でも課することができる旨の答弁がありました。次に、参考人の方々の意見を要約してみますと、家庭裁判所は非訟事件的に家事事件を処理すべきであり、身分関係の債務と一般金銭債務とは異なった取扱いをするのが実情に適するのみでなく、それは世界の傾向であって今回の改正はむしろおそきに失するうらみがあるという賛成論が大部分でありました。かくて、二月十七日質疑を終了し、討論省略の上、採決に入りましたところ、自由民主党及び日本社会党から本改正案に対する修正案が提出されました。すなわち、家事審判法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。第十五条の二中「家庭裁判所、」の下に「権利者の申出があるとき」を加える。というのであります。修正理由は、義務履行の調査、勧告を職権のみでやることは、この際行き過ぎのきらいがありますので、権利者の申し出があったときに初めてこの調査、勧告をするようにすべきだというのであります。よって、修正案並びに修正部分を除く政府原案を一括議題とし、採決いたしましたところ、全会一致をもって修正案通り修正議決せられた次第であります。次いで、自由民主党及び日本社会党共同提案による附帯決議が提出されました。決議の内容は
一、家事々件の小額債権については、その執行を容易ならしめ、且つ簡易化するため、政府は速かに適切なる方策をたてること。
二、第二十八条の過料制度運用については、慎重を期し適正に行われるよう深く留意すること。右決議する。というのであります。本決議案を採決いたしましたところ、多数をもって可決いたしました。その他詳細は会議録に譲ります。以上、御報告を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/26
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027・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/27
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028・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって本案は委員長報告の通り決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/28
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029・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。
午後五時五十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X01019560217/29
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