1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年四月二十四日(火曜日)
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議事日程 第三十四号
昭和三十一年四月二十四日
午後一時開議
第一 地方財政の再建等のための公共事業に係る国庫負担等の臨時特例に関する法律案(内閣提出)
第二 地方交付税法の一部を改正する法律案(北山愛郎君外十名提出)
第三 地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第四 地方財政法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
第五 宮内庁法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第六 国家公務員共済組合法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第七 関税法等の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
第八 百貨店法案(内閣提出)
第九 国際金融公社への加盟について承認を求めるの件
第十 旅行あつ旋業法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
第十一 建設業法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
接収貴金属等の処理に関する法律案中修正の件(内閣提出)
特定郵便局長の任免等に関する特別措置法案(赤城宗徳君外二名提出)及び国家公務員法等の一部を改正する法律案(赤城宗徳君外二名提出)の撤回を求めるの動議(勝間田清一君外五名提出)
日程第一 地方財政の再建等のための公共事業に係る国庫負担等の臨時特例に関する法律案(内閣提出)
日程第二 地方交付税法の一部を改正する法律案(北山愛郎君外十名提出)
日程第三 地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第四 地方財政法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第五 宮内庁法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第六 国家公務員共済組合法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第七 関税法等の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
金融制度調査会設置法案(内閣提出)
日程第八 百貨店法案(内閣提出)
日程第九 国際金融公社への加盟について承認を求めるの件
日程第十 旅行あつ旋業法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
日程第十一 建設業法の一部を改正する法律案(内閣提出)
午後三時四十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/0
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001・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/1
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002・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から、接収貴金属等の処理に関する法律案中修正したいとの申し出があります。
採決いたします。本件を承諾するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/2
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003・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって、承諾するに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/3
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004・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 勝間田清一君外五名から、特定郵便局長の任免等に関する特別措置法案(赤城宗徳君外二名提出)及び国家公務員法等の一部を改正する法律案(赤城宗徳君外二名提出)の撤回を求めるの動議が提出されております。右動議を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。森本靖君。
〔森本靖君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/4
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005・森本靖
○森本靖君 私は、ただいま議題となりました、赤城宗徳君外二名提出による特定郵便局長の任免等に関する特別措置法案及び国家公務員法等の一部を改正する法律案、この二法律案の撤回を求めるの動議について、提出者を代表いたしまして、提案の理由を説明せんとするものであります。(拍手)
郵政事業において特定郵便局長のみを特別職とし、政争の具に供せんとすることは、郵政事業の民主的な発展と国民への郵政事業のサービスの低下をはかるものであります。かかる法案が成立することは、郵政事業が逐次民主的に発展をしてきた歴史の歯車を逆に回、反動の三等郵便局請負制度に戻す第一歩であり、時代錯誤もはなはだしいといわざるを得ないのであります。(拍手)さらに、この法案は、自由民主党の組織拡大と労働組合の分裂を策する、きわめて悪らつであり、厚顔無恥なる法案であります。(拍手)かかる法案の成立は、日本の将来に百害あって一利もないのであります。提案者は再思再考の上、この二法律案を撤回すべきが至当であると考えるものであります。(拍手)
四月十九日の朝日新聞の社説においては、「特定郵便局長の特別扱い」という題名で、この法案を鋭く批判しておるのであります。ここにその一節を御紹介すれば、「自由民主党が、党利党略的な法案を、またもや国会に提出した。」という見出しで、「なぜ、それを党利党略とみないわけにはいかないか、というと、特定局長にかぎり政治活動の自由を認めねばならぬ、という特別の理由が、どこにもないからである。特定局長も、郵政事案を行うために、政府の任命する公務員なのであるから、もしこれに政治活動の自由を認めるというならば、全公務員にも同じように認めるのが、当然である。まして郵政特別会計に属する郵便局職員は、一般公務員と違って、労働関係については、国鉄、電電など公社職員と同じ公労法の適用をうけている。仕事の性質が、一般の行政と違うとみるわけである。とするならば、政治活動についても、特定郵便局長だけでなく、全郵政職員に公社職員なみの自由を認めるのが、これまた当然である。」すなわち「自民党のこの法案は、特定局長が多く地方の有力者であり、その意味において政治的には保守系であるという現状をもとにして、自民党の組織を建直し、選挙活動の母体にしようという以外の、積極的な理由は、なんら見出しがたいのである。」と報道せられたのであります。
また、同日の毎日新聞の社説においても、次の通り鋭く批判をしているのであります。「自民党は小選挙区法案で、選挙制度調査会の答申を党略的に無視したことを強く批判されているが、こんどはそういう党利党略を特定郵便局に持込んだのである。」ということで、「特定局長にそういったことで、政治活動の自由を認めるとすれば、その下で働いている特定局の職員にも同じ自由を与えるべきだ、との対抗論が起きるのも当然である。もしこういった法案が成立したら、大げさにいうと郵便業務を投げ出して、政治論争に熱中し、いたるところ滞貨の山ができるかもしれない。ともかく局長が政治活動に乗出せば当然監督もおろそかになり、局長と職員、職員相互間にあつれきも生じようし、業務の能率が著しく低下することはさけえないのである。」郵政省事務当局はもちろんのこと、村上郵政大臣自身も、自由民主党の強引にして無謀なやり方に反対であったというが、これは当然である。自由民主党は、特定郵便局長が地方で占めている声望と、特定郵便局従業員組合が全逓にも加わらぬ中立組合であることに着目をいたしまして、これを抱き込む意図のようである。これは、明らかに、政治活動の自由を看板にして、自民党の勢力拡張をねらうものである。党のためには、政府事業がどうなろうともかまわぬという保守政党の根性であるというふうに報道せられておるのであります。(拍手)
また、四月十八日の産経時事においても、「すこぶる悪い前評判」「特定郵便局長の特別職化」という見出しにおきまして、「特定郵便局長を特別職にする法案が自民党から近く国会に提出される。小選挙区法案が党利党略の見本だと国会内外でやかましく論議されている矢先のこの法案提出は、こうした論議に油をそそぐようなものだと前評判はすこぶる悪い。そのうえ、肝心の郵政当局が反対しているのをはじめ村上郵政相も消極的態度をとっているが、名にしおう砂田重政同党全国組織委員長の進軍ラッパがついているだけに動きは微妙。そこで行政機関を政党の足場にしようというこの特定郵便局長の組織化の前途をうらなってみた——。」云々と、このように報道せられているのであります。
かくのごとく、あらゆる新聞の論調が、自民党の無暴と厚顔無恥なる態度にあきれ果てて、厳重なる警告を発しておるのである。(拍手)このように各新聞が報道するごとく、そもそも、本法案は、政府提案の小選挙区法案にも匹敵するところの、党利党略に基いた、最も反動的であり、下劣なる法案である。(拍手)すなわち、郵政省従業員二十数万名おる中で、一万四千名近い特定郵便局長のみに政治活動の自由と地方議会議員の兼任を許し、兼職を認めるというのが骨子であります。このことは、特定郵便局長が郵政省従業員中では一番保守的であり、また地方のボスが多く、自民党の下部組織としては最適であると考えたにほかならないのであります。自由民主党では、すでに、全国特定郵便局長会の幹部との密約において、本法案を提出するかわりに、自由民主党に特定郵便局長が大量入党することを条件としていると新聞は報道しておるのであります。(拍手)さらに、新聞によりますと、一万三千六百名の特定郵便局長のうち、三千数名がすでに入党し、二百円の自民党費を前払いしたとあるのであります。さらに、特定郵便局長一名当り二十名の自民党員を強制的に勧誘しなければならないというふうにいわれておるのであります。なるほど、大ボス、小ボスの存在と金と権力によって構成し、組織の筋金のない寄り合い世帯である自民党にとりましては、まことに都合のいい法案であるといわざるを得ないのである。(拍手)
このことをわかりやすく申し上げますならば、自由民主党の考え方は、郵政省は現業であり、他の五現業と一緒に政治活動を許すのが本来である。しかし、現業職員全部に政治活動を許せば、その多くは革新的であるので都合が悪い。また、その場合は、特定郵便局長は一事務官にならなければならぬので、特定郵便局長も反対するし、自民党には利益が少い。ともかく、そういうようなことよりも、世論がどうあろうと、郵政事業がどうなろうと、担当の郵政大臣が猛烈に反対であろうと、あるいはまた、専門家の自由民主党の逓信委員の諸君がほとんど反対であろうと、あるいはまた、善良なる良心的な全国の特定郵便局長の過半数でありますところの七千名以上の方々が絶対反対しようが、あるいは国民が大いに迷惑いたしましょうが、そういうことには全く馬耳東風でありまして、ただただ自由民主党が発展しさえすればよろしい、自由党万々歳であるという考え方にほかならないのである。(拍手)
そもそも、特定郵便局の制度の沿革は、遠く明治初年よりの歴史を持ちまして、その機構は封建性と従業員の搾取と犠牲において、さらに、請負によります莫大な利潤をむさぼるところの局長のもとに、三等郵便局制度として発展をしてきたものであります。それが、ついに、従業員の長年の悲願でございましたところの請負制度の変更が、昭和十三年、集配郵便局のみの給料をようやく局長請負から切り離しまして、国の直管といたしまして、その後年を経るに従って逐次改善をされて参ったのである。今日は、形式的には、特定郵便局制度というのは、局長の自由任用が最大のものであり、その他はほとんど普通郵便局と変りはないのである。過去数十年にわたりまして、従業員の汗とあぶらでようやく今日の民主的発展途上にありますところり郵政事業に対しまして、請負化と不在局長を許し、国民へのサービスの低下を来たし、歴史の歯車を逆に回し、郵政事業を破壊するところの本法案は、いかに自民党の諸君が党利党略とはいえ、恥を知り、おのれを知る者ならば、かかる法案はすみやかに撤回をせられまして、その不明とずるさを天下に謝してもらいたいと思うものであります。
以上で私の簡単なる提案理由の説明を終りまするけれども、最後に、自民党の心ある議員諸君の、この動議に御賛成あらんことを切にお願いいたす次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/5
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006・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。これを許します。赤城宗徳君。
〔赤城宗徳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/6
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007・赤城宗徳
○赤城宗徳君 ただいま議題となっております特定郵便局長の任免等に関する特別措置法案外一件の撤回を求むる動議に対しまして、自由民主党を代表して反対の討論をいたしたいと思います。(拍手)
社会党におきましては、口を開けば、すべての法案に対して党利党略、こういうことをもって押しつけようといたしますが、私は、冷静なる観点から、これに反対をいたしたいと思うのであります。
現在、特定郵便局長といわれておりまする官職は、明治の初め、全国津々浦々に郵便取扱役が置かれましてから、郵便局制度の発展とともに、三等郵便局長、さらに昭和十二年から特定局長と変遷して参ったものでありまして、郵便取扱役、あるいはその後の三等郵便局長と称していた当時から、地方の有力者などの人材を任用し、局舎を提供せしめ、その能力を能率的に活用することによって、郵政事業の発展に寄与するところが大きかったことは、御承知の通りであります。大衆と直接に接触する現業局のうち、比較的規模の小さい特定郵便局長の任用は、御承知の通り、自由任用という特別の方式によって行われているのが現状であります。すなわち、満二十五年以上の者、当然女も含みますが、そういうもので、相当の学識才幹をを有する者から地域的に簡抜されることになっているのであります。このことは、一般公務員が競争試験によって任用されるという国家公務員法の原則を離れたものでありまして、特定郵便局長の特殊の性格を物語っているものであります。この任用の資格認定の基準は、現実の能力適否の問題のみではなく、将来長くその地域社会に対応して能力を発揮し得るかどうかという期待的要素が必要であります。そして、この自由任用のために、あまねく地方の人材を吸収し、その経営を終生の事業として、畢生の努力を惜しまないことになっているのであります。一般任用方式によったならば、今の成績と信頼を保ち得ないばかりか、国の経費が驚くほど増大化することでありましょう。
第二に、一般公務員と違いまして、特定郵便局長のみは、任命から退官まで何らの昇進もないのであります。また、その局を離れて他に転勤させられるというようなこともないのであります。このことは、特定局長が当該局舎や設備の所有者であることとも関係いたしまして、特定局が山村僻地に多く散在して、他よりの移入や交互異動がわずらわしい実情によるものであります。このように、特定郵便局長は、その土地に定着性を持って、自由任用により、転勤、転職がなく、また、局長以上に昇任することも、降任することもないという実情でありますからして、公務員には違いありませんが、一般職として取り扱うには不適当なのであります。
国家公務員法は、職員の採用を競争試験によることを定め、例外として選考を認めておりますが、特定郵便局長には選考基準の定めがないので、従来の通りに行われておるのでありますから、一般職にすることが不適当なのであります。そういう関係からいたしまして、一般職から特別職に移すことは、国家公務員法の適用面から見ましても当然のことなのであります。ただ、この場合、特別職に移しますれば、一定範囲の政治活動が禁止のワクからはずされますけれども、現実的には、市町村議会議員に立候補できるようにしたいということであります。というのは、特定局長は、所在の信望ある人物を長く勤続せしめる関係上、大衆との親密性を増し、地域社会の世話役的役割として、市町村の自治制に参画を慫慂されてきておることが多いのであります。現に、昭和二十四年の兼職を禁止された際に、全国に二千数百名の局長が市町村議会議員を兼ねていたという事実もあるのであります。兼職により、市町村行政と郵政行政とが密接なつながりを持って、郵政事業にプラスになる面が非常に多いのであります。このことを強く非難する向きもありますが、現に、権力行使を伴わない国鉄とか、専売とか、電電の三公社の職員は、いずれも市町村議会議員を兼職し得ることができますし、五現業の一つである郵政の中の特殊の立場の沿革を持っておりますところの特定郵便局長に一定範囲の政治活動を認めることは、何らの矛盾がないばかりか、むしろ当然過ぎるほど当然であります。(拍手)そのことは、あまり色めがねをかけて見ないようにしていただきたいと思うのであります。
この意味におきまして、ただいまの撤回を求むる動議に対しまして反対をいたす次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/7
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008・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。
本動議につき採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/8
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009・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立少数、よって、勝間田清一君外五名提出の動議は否決されました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/9
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010・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第一、地方財政の再建等のための公共事業に係る国庫負担等の臨時特例に関する法律案、日程第二、地方交付税法の一部を改正する法律案、日程第三、地方交付税法の一部を改正する法律案、日程第四、地方財政法等の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。地方行政委員会理事中井徳次郎君。
〔中井徳次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/10
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011・中井徳次郎
○中井徳次郎君 ただいま議題となりました地方財政の再建等のための公共事業に係る国庫負担等の臨時特例に関する法律案につき、地方行政委員会の審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、地方財政の改善と再建に資するため、昭和三十一年度以降三カ年間に限る臨時的措置として、国または地方公共団体が行う公共事業につき、その地方負担の軽減をはかることを目的としたものでありまして、その内容は、第一に、国または地方公共団体が行う公共事業費等につき、国の負担または補助の割合を引き上げること、第二に、受益者分担金制度を活用し、収入の充実をはかるため、政令でその標準を定め得るものとしたこと、第三に、事業費の算定方法に特例を設け、公共事業費にかかる受益者分担金等の額は、公共事業費にかかる分担金または補助金の算定の基礎としないものとすること、以上の三点であります。
本法案は、去る二月二十八日本委員会に付託、同二十九日太田自治庁長官より提案理由の説明を聴取し、四月十七日質疑を終了、討論を省略して採決を行いましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決しました。
次に、政府の提案にかかる地方交付税法の一部を改正する法律案及び日本社会党の提案にかかる地方交付税法の一部を改正する法律案につき、委員会における審議の経過及び結果の概要を御報告申し上げます。
まず、政府案について申し上げます。本案は、地方歳入の大きな支柱となっている地方交付税の総額を増加することにより、他の諸施策と相待ち、赤字発生の要因を含んだ地方財政の現状に一段の改善を加えようとするもので、このため、所得税、法人税及び医税の収入額に対する地方交付税の税率を、現行の百分の二十二から百分の二十五に引き上げることをそのおもな内容とし、その他、交付税額の算定の基礎となる基準財政需要額及び基準財政収入額の算定について、別途予定される地方行財政制度の改正に伴い単位費用を改訂する等、所要の改正を行おうとするものであります。この改正の結果、本年度における交付税の総額は、昭和二十九年度分の精算額十二億余円を加え、千六百二十八億円となるのであります。
本案は、二月十五日本委員会に付託、同月十七日太田自治庁長官より提案理由の説明を聴取、自来、昭和三十
一年度の地方財政計画及び関係諸法案とともに慎重審議し、四月十八日質疑を終了いたしました。
次に、日本社会党の提出にかかる案について申し上げます。その内容は、交付税の税率を、現行百分の二十二から百分の二十七に引き上げようとするものであります。
本案は、四月十六日本委員会に付託、同月十八日、提案者代表として委員北山愛郎君より提案理由の説明がありましたが、これは国の予算の増額を伴うものでありまするので、内閣の意見を徴しまたところ、本年度国の予算もすでに成立した後のことでもあり、賛成しがたき旨の意見の開陳がありました。
かくて、同日両法案に対する質疑を終了し、これを一括討論に入り、委員永田亮一君は、自由民主党を代表して、政府案に対して賛成、社会党案に対して反対の意思を表明し、委員川村継義君は、日本社会党を代表して、社会党案に対して賛成、政府案に対して反対の意思を表明されました。採決に入り、社会党の案は賛成少数をもって否決され、政府案は原案通り可決すべきものと決しました。
最後に、地方財政法等の一部を改正する法律案につき、地方行政委員会の審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本法案は、地方財政の再建に資することを目的としたものでありまして、その内容は、第一に、今回義務教育費国庫負担法が改正され、義務教育職員の恩給経費の半額を国庫が負担することになるので、これに伴い、地方財政法における経費の負担区分に関する規定を整備すること、第二に、同じく地方財政法において都道府県が実施する事業で、受益市町村から負担金を徴収することのできる「事業」の範囲を、「土木その他の建設事業」と改めること、第三に、赤字団体が、地方財政再建促進特別措置法の実施前にすでに整理した職員の退職手当に充当する起債を、地方財政再建促進特別措置法に規定する財政再建債として、利子補給を受け得ることにしたこと、以上の三点であります。
本法案は、去る三月九日本委員会に付託、同十三日太田自治庁長官より提案理由の説明を聴取し、四月十八日質疑を終了、討論に入り、委員永田亮一君は自由民主党を代表して本案に賛成、委員川村継義君は日本社会党を代表して反対の意思を表明されました。採決の結果、本案は賛成多数をもって可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/11
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012・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。川村継義君。
〔川村継義君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/12
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013・川村継義
○川村継義君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました、わが党提出の地方交付税法の一部を改正する法律案に賛成し、政府提出の地方交付税法の一部を改正する法律案並びに地方財政法等の一部を改正する法律案について反対の討論をいたしたいと思います。(拍手)
反対いたします第一の理由は、破綻に瀕した地方財政の再建に当って、政府は、政府みずからの責任を回避し、糊塗しようといたしているからであります。昭和二十八年末において四百六十二億円の赤字をかかえ込んだ地方自治団体が、さらに、昭和二十九年度の決算において、普通会計分のみをもってしても赤字団体二千二百八十をこえ、その実質的歳入不足額は実に六百四十九億になっているのであります。この膨大な赤字をかかえた地方財政に破局寸前の苦しみを与えているものは一体何でありましょうか。われわれは、もちろん、その破綻の一部の責任は地方自治団体が負うべきものであることも知っております。しかし、この大半の責任は、国の地方行財政制度施策のもたらすものとして、当然国が背負うべきものであることは、すでに解明されたところで、疑義を差しはさむことのできない事実であります。(拍手)本議場においても幾たびか論議を重ねられた問題でありますので、重ねて述べる必要もないと思いますけれども、しかし、次の諸点は再度明らかにしておかねばなりません。
昭和二十五年、再軍備の開始と資本集中の政策が露骨になって以来、最大の犠牲者が地方自治団体であったことは、今日おおうことのできない事実であって、このことは、地方財政の赤字が昭和二十五年再軍備と時を同じくして発生し、防衛費の累増と比例して赤字が増大したことによって明らかに示されていることであります。これは、国が財源の多くの部分を防衛関係費に振り向けるに従って、平和建設の事業費と国民福祉のための財政が漸次地方公共団体の責任に帰せられ、その負担が加重された経過に見ても明瞭であります。災害の復旧、道路、河川、橋梁等の公共事業、教育施設の拡充、失業対策、社会福祉事業の経費が、一般財源によらず、一部を地方団体で支弁され、これがため地方債の元利償還額は年々百数十億円あて増加し、昭和三十五年には九百六十億円に達するというそのことが、今日の地方財政に対する一大重圧と化しておることも、またその一つで、御承知の通りであります。このほか、国は制度、機構の改悪によって国の負担を地方に転嫁し、これまた地方財政を破綻せしめたことは、一昨年の警察法改正、または町村合併についても、政府は拙劣な三カ年計画で無理な天下り合併を施行しつつ、新市町村建設の財源措置を行わず、逆に増税と赤字の急増を招いたことは、ずさんな行政指導の結果であって、政府の責任は重大であるといわねばなりません。(拍手)これらに対し、昨年鳩山内閣のとった地方財政対策は、全くお話にならない無知と無能を暴露したものでありました。
御承知の通り、ごまかしに満ちた昭和三十年度地財計画に対する世論の反撃ものすごく、ついに臨時国会を開催し、政府はしぶしぶ百六十億円の臨時交付金を出さざるを得なくなり、焼け石に水を注いだのであります。一方、地財再建促進法の制定を見るや、三十一年度の財政計画の実施と呼応させて、その適用を強要し、極度に地方自治団体の行財政政策を圧迫し、あるいは地方住民の福祉につながる事業を押え、地方自治の発展施策をつぶし、公務員の大量整理をそそのかすなど、すべて政府みずからがなさねばならない政治責任を糊塗し、回避し、あげて地方自治団体の犠牲の上に求めているのであります。
三十一年度の地方財政については若干の努力と考慮が払われたことは、われわれといえども、これを認めるにやぶさかではありません。しかし、ただいま委員長の報告にもありました通りに、政府は、本年度交付税の総額を、二二%を二五%に改めんといたしております。その総額は、二十九年度の精算額を含めて一千六百二十八億円であります。これは三十年度に比べて約二百二十億円の増ではあります。ところが、政府は三十一年度百八十五億の起債を減じており、本年度の元利償還額は政府資金約百億でありますので、二百二十億の交付税額の増は、何ら地方財源にプラスしていないのでありまして、政府の欺瞞政策といわねばなりません。(拍手)政府が地方財政再建の重要性を認めて重要施策に掲げ、根本的対策を講ずると口にするほど重要視していない証拠でしかありません。地方財源の支柱である交付税を、地方税の増徴等をやってもなお不足を生ずる額の補てんを目途としている、と言っていることに徴しても明らかであります。外国の軍隊のために使う金は出しても、日本国民のために使う金は出せないというのが、現政府の実体であるようであります。(拍手)
政府は、まさか、民主政治の基盤たる地方自治体を財政的に混乱に陥れ、やがては自治体の本旨をゆがめ、中央集権的制度に移行させ、中央官僚の支配権を確立し、その失地回復を企図する遠謀術策を弄しておるのではありますまいが、地方財政再建の重要性を認めるならば、赤字発生の重圧を除き、健全化を促進するために、すべからく、わが社会党が提案するごとく、交付税率を少くとも二七%とし、国の財源をそれだけ地方に委譲して、地方財政再建への国の責任を果すべきであります。(拍手)
自民党は、合同前ではありましたが、昨年、第二十二特別国会において、地方財政の窮状を座視することができなくなり、その率を二八%に引き上げる法律案を提出したのであります。よもやお忘れにはなっていないはずであります。わが党が、国家並びに地方の財政事情等をあらゆる角度から検討し、提案いたしました交付税率二七%への引き上げ案は、与党のただ一つの良心的決定を実現させようとするものであることも、とくと銘記せられまして、ぜひ賛成願いたいのであります。
反対せねばならない第二の理由は、政府がみずからの責任を糊塗するばかりでなく、地方財政確立のために、さらに地方住民には二重、三重の地方税の増徴を背負わせ、その結果に基く改正の内容であることであります。さきに政府が提出いたしました軽油引取税、都市計画税及び国鉄等三公社を含む交付金、納付金制度の創設は、いずれもバス、鉄道の運賃、電話電報料、住宅使用料の引き上げの原因となり、そのまま大衆に負担させられる危険が多いので、取りやめるべきであるとわれわれは反対いたしました。地方自治体の自主財源を強化することには、もちろん、われわれといえども反対するものではありませんが、その方法は、直ちに国民大衆にその負担が転嫁されるような新税によるべきではなくて、たばこ消費税等の税率を引き上げて、国の財源を地方に委譲するとか、あるいは、大法人や独占資本に対する国税、地方税の特免、軽減措置の改廃等によって行うべきであると主張いたしたのであります。御承知の通りに、三十一年度地方税は二百九十億円に上る自然増を見込んでいるばかりでなく、新税創設によって約四百億円の増徴となります。政府、与党が所得税において勤労控除の減免を掲げ、減税政策なれるかのごとく宣伝しても、その裏で地方税の増税を行うがごときは、明らかに国民を愚弄するもはなはだしいものでありまして、地方財政の立て直しを国民大衆の大いなる犠牲によってなさんとするがごときは、断じて許さるべきではありません。さきにわが党の地方税法の一部改正に対する修正案が与党の賛成を得られなかったことは、国民のために返す返すも残念しごくといわざるを得ません。
これら新税の創設に伴って、地方交付税法における基準財政需要額の算定方法に関し、その単位費用の改訂を試み、あるいは、交付金、納付金制度の創設に伴って、基準財政収入額の算定方法を改訂しようとする内容を規定いたしておりますが、特に、わが国民主教育の変革をもたらすばかりでなく、地方行財政に重大な関係を持つ教育委員会法の改正審議に当って、地方行政委員会の合同審査の申し入れをも拒否し、ついに、去る二十日、本院において無謀にも政府、与党が強行採決をあえてした、あの問題の法案についてであります。その教委法の改悪、教育委員の公選制の廃止を前提とした単位費用等の改訂などは、ともに、われわれの断じて容認することのできないところであります。(拍手)
次に、地方財政法等の一部改正案について申し述べます。改正案は、義務教育職員の恩給費に対する国庫負担制度の創設に伴う所要の改正等を加えておりますが、問題とせなければならないのは、二十三国会において成立いたしました地財再建促進特別措置法の一部を改正し、財政再建団体が、財政再建計画の承認の前に、退職手当の財源に充てるために起した地方債は、財政再建債とみなすということであります。政府は、累積された二十九年度末の地方財政の赤字を解消するためと称して、周知のごとく、さきに地財再建促進法を成立させました。それに基いて、政府資金わずか百五十億の再建債を予定し、それと引きかえに地方自治体の権能を圧縮し、民主政治の基盤をなす地方自治の本旨をゆがめんといたしております。この再建債のほかに、退職債六十億を予定いたしましたことも、御承知の通りであります。
地方団体の赤字発生の一因は、政府の施策に基くとはいえ、地方自治体は膨大な地方債を背負い込んで、その元利償還にその命を削られているということであります。地方債の総額は五千億を突破いたしております。昭和三十一年度の財政計画において、公債費は実に六百二十三億に達し、その金利は、預金部及び一般市中銀行の金融機関を含めて、三百億を突破いたしておるのであります。この地方債の解決に手をつけようとすることなくして、地方財政の再建はあり得まいと考えられます。すなわち、地方債償還の繰り延べをはかるとか、大幅な利子補給をするなどの根本手術を施すべきでありますのに、わずかの再建債で地方自治体をつり上げようとしたり、退職債のごときは六十億も予定して、地方公務員の首切りを促進し、かてて加えて利子補給もやろうという、脅迫と、おためごかしで、しゃにむに再建促進法の適用を強要するがごとき、地方財政再建の熱意を乗り越えて、何かためにせんとする政治的陰謀さえ感ぜざるを得ないのであります。(拍手)首切りに出す地方債があれば事業関係の地方債に回せ、しこうして、大幅に利子補給をして地方財政の再建促進をはかれ、とわれわれは要求せねばなりません。
最後に、以上申し述べた通り、政府は、地方債についても、その根本策を策定することをなさず、地方交付税率の引き上げも申しわけ程度にとどめてしまったのであります。それに反して、あるいは地方行政機構の合理化に籍口して、地方自治法の改正、あるいは教育委員会委員の公選制廃止、公務員の整理のための法案、または国民大衆の負担と犠牲による地方税の増徴をはかるなど、一方的に、地方団体の責任においてその目的を達成せんとする政府の政策に対して、強く反対の意向を表明いたしまして、政府提出の二法案についての反対の討論を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/13
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014・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 永田亮一君。
〔永田亮一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/14
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015・永田亮一
○永田亮一君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました二つの地方交付税法の一部を改正する法律案につき、政府案に対して賛成の意を表し、日本社会党の案に対して反対をいたし、また、政府提出による地方財政法等の一部を改正する法律案につきまして賛成の意見を述べて討論を行わんとするものであります。(拍手)
政府並びに与党は、赤字に悩んでいる地方財政をどうして再建するか、また、どうして地方自治を安定せしめるかということに日夜苦心を重ねて参ったのであります。昨年、政府は第二十三臨時国会を召集いたしまして、もっぱら地方財政問題解決のために全力を尽したのでございます。この臨時国会の成果は、大体において二つあったと思いますが、その一つは、地方における過去の赤字のたな上げを行なったこと、すなわち、地方財政再建促進特別措置法の制定によりまして、過去の累積した赤字を解消したということであります。その二は、昭和三十年度におきまして、単年度に赤字の発生しないように臨時の財源付与を行なったことであります。この、政府の行なった、二つの、まことに時宜を得た、有効適切なる措置によりまして、それまで赤字に悩んでおった地方団体が、あたかも旱天に慈雨を得たるがごとく、いかに感謝をしているかということは、皆さんもよく御承知の通りであります。(拍手)
さらに、わが自由民主党は、昨年の末に、昭和三十一年度の地方財政方針を決定いたしたのでありまするが、それは、まず、今までのような実態と離れてしまった地方財政計画というものを改めまして、その算定の基礎を昭和二十九年度に置くという画期的な改革を断行いたしたのであります。そして第一に、地方の行政機構の簡素合理化を行なった。第二番目には、地方債の運営を合理化し、さらに第三番目には、国庫の補助、負担金を引き上げ、そして最後には、公務員の給与の実態調査を行いまして、それを反映して給与費の是正を行なったのであります。これらの措置によりまして、赤字発生の原因を取り除き、しかも、なおかつ不足する財源措置につきましては交付税の税率引き上げをすることを決定いたしたのであります。今回、政府は、これらのいろいろの地方行財政の適切なる改正を行いまして、しかる後に交付税率を今までの二二%から二五%まで引き上げようというのでありまして、この政府の行わんとする施策は、窮乏のどん底にあえいでおります地方財政を救うための最も正しいやり方であり、また、有効なる特効薬を与えるものであります。われわれは、政府のこのたびの措置に満腔の賛意を表する次第であります。(拍手)
ただ、ここで問題になりますのは、社会党の一部の方々が言われるように、それなら交付税の税率をどんどん上げたらいいじゃないか、多ければ多いほどいいじゃないかという議論をする人があるのでありますが、これは全く地方財政の本質を忘れた、しろうと考えというべきであります。(拍手)現段階におきましては、政府が実行しております通り、各方面の行財政制度の改革と、その運営の改善により、できるだけ経費を節約し、むだを省き、一方においてまた収入の増加をはかって、その実績を見きわめた上で、合理的な地方財政計画を立てて、その上になお不足する分は、必要やむを得ない、補充的な、また調整的な財源を国から付与するというのが、ものの順序であります。また、実情に即する最も適した道と思うのであります。これに反しまして、社会党の提案は、二七%に引き上げようというのでありますが、社会党の諸君が地方財源に大いに寄与したいとおっしゃるそのお心がけに対しましては大いに敬意を表します。しかしながら、ほかの一切の手を打たないで、一挙に二七%までにも引き上げるということは、全く実際に即応しない空想論であります。責任の地位を離れて、ただ理想のみを論ずるということは、いとたやすいことでありますが、もし不用意にこの案を実行するとするならば、いたずらに混乱と副作用のみ起り得るであろうことは火を見るよりも明らかでありまして、ほんとうに責任をとる者の、とうていなし得ざるところであります。(拍手)
これを要するに、政府案は、実情に即し、公正妥当にして、国と地方の双方の要請にこたえるものでありますが、社会党案は、現実を離れて、ただ一つ覚えのように交付税率のみを引き上げるということは、単なる人気取り政策と言うのほかはありません。また、社会党案が実行されるならば、昨年来、国の施策にこたえて、まじめに、真剣に財政再建のために努力を払いつつある地方団体をして、何だ、ばかばかしいという気分を起させ、その結果、安易な道を選ばしめ、再建意欲を失わしめるということは、国を誤まるものであります。われわれは断固として反対せざるを得ないのであります。(拍手)
本年度予算はすでに成立をいたしました。また、地方財政計画も決定した今日、全国四千七百の地方公共団体は、政府案の成立を一日千秋の思いで待望いたしておるのであります。私は、この際、一日もすみやかに政府案が通過することこそ地方財政の危急を救う唯一の道であると信じて疑わないのであります。これが、私が政府案に賛成をいたし、社会党案に反対をいたすゆえんであります。
次に、地方財政法等の一部を改正する法律案につきまして簡単に申し上げます。この改正案のおもなる目的は、第一には、義務教育職員の恩給に要する経費の半額を国庫が負担するということであり、第二には、退職する公務員の退職手当の財源に充てるために起した起債に対して利子を補給してやろうというのであります。この二つのことは、地方財政の窮乏を打開し、その再建を促進するものでありまして、まことにけっこうなる案であります。だれが考えてみても、反対をする理由などは少しもないのであります。(拍手)それを、なぜに社会党の諸君が反対をされるのか。
ただいま川村君の御意見を承わっておりますると、その理由は、役人の人員整理というものを一人もやっちゃいかぬということらしいのであります。今日、国民は税金が高くて困っておる。その一つの大きな理由は、役人の数が多いということなのであります。わが国は、敗戦後に公務員の数がどんどんとふえて参りました。昭和三十年一月現在におきましては、国家公務員、地方公務員を合わせると、実に二百八十七万人にも達するのであります。かりに一人の公務員が四人の家族を持っておると仮定をいたしまするならば、それで千五百万人になるのであります。日本人が六人集まったら、その中の一人は役人であるか、あるいは役人の家族であるということになるのであります。行政機構をもっともっと能率的に簡素化して、これによって少しでも税金を安くしてほしいというのが、偽わらざる国民の声ではありませんか。(拍手)社会党の諸君は、この現実に目をおおって、あくまで一人の人員整理にも反対する、こういう態度は、一部公務員にこびを売らんとする卑劣なる態度といわねばなりません。(拍手)これは、ちょうど、本年度予算の審議に当りまして、社会党は国民経済を無視し、総評の圧力に屈して、あえて二千円ベース・アップを唱えた暴挙と軌を一にするものであります。われわれは、高い税金を払っている国民の気持を考えるとき、断じて反対せざるを得ないのであります。(拍手)私は、社会党諸君の良心に訴え、よろしく反省せられんことを要望いたしまして、私の討論を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/15
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016・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) ただいまの永田君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取調べの上、適当の処置をとることといたします。
これにて討論は終局いたしました。
これより採決に入ります。
まず、日程第一につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/16
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017・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
次に、日程第二につき採決いたします。本案の委員長の報告は否決であります。本案を委員長報告の通り否決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/17
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018・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り否決いたしました。(拍手)
次に、日程第三及び第四の両案を一括して採決いたします。両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/18
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019・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
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日程第五 宮内庁法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/19
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020・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第五、宮内庁法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。内閣委員長山本粂吉君。
〔山本粂吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/20
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021・山本粂吉
○山本粂吉君 ただいま議題となりました宮内庁法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、宮内庁事務の能率化をはかるため、宮内庁法に所要の改正を行い、それに伴って国家公務員法及び特別職の職員の給与に関する法律の整備を行おうとするものでありまして、そのおもなる内容は次の四点であります。
第一点は、宮内庁の内部部局の所掌事務の一部につき所要の調整を行おうとするもので、従来、管理部にありました物品管理事務を長官官房に移し、金銭物品両会計事務の統合を行うこと、並びに、侍従職と管理部に分属していた調理及び供進事務を一元化して管理部の所掌事務としたことであります。
第二点は、宮内庁と皇宮警察との事務連携の緊密化を促進するため、宮内庁長官が必要あると認めるときは、皇宮警察の事務につき、警察庁長官に所要の措置を求めることができるとしたことであります。
第三点は、宮内庁の内部部局である侍従職、東宮職及び式部職の長としての侍従長、東宮大夫及び式部官長並びに侍従職の次長である侍従次長の官職石及び権限を明記したことであります。
第四点は、現存の京都事務所、正倉院事務所及び下総御料牧場の責任の所在を明確にするため、これらを宮内庁の付属機関として規定したことであります。
本案は、三月九日当委員会に付託され、同十三日政府の説明を聞き、四月六日質疑に入り、十七日質疑を終了いたしましたところ、宮澤委員より、自由民主・社会両党共同による修正案が提出されたのであります。その要旨を申し上げますと、京都事務所が宮内庁所掌事務の一部を分掌することにかんがみ、これを付属機関とするよりも地方支分部局として規定しようとするものであります。
かくて、討論省略、採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決すべきものと議決せられた次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/21
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022・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/22
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023・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/23
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024・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、日程第六及び第七とともに、内閣提出、金融制度調査会設置法案を追加して、三案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/24
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025・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/25
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026・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
日程第六、国家公務員共済組合法の一部を改正する法律案、日程第七、関税法等の一部を改正する法律案、金融制度調査会設置法案、右三案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長松原喜之次君。
〔松原喜之次君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/26
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027・松原喜之次
○松原喜之次君 ただいま議題となりました三法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、国家公務員共済組合法の一部を改正する法律案について申し上げます。
この法律案は、主として次の四点について改正をいたそうとするものであります。
第一点は、別途今国会に提案されました健康保険法の改正に伴うものであります。すなわち、医療機関から療養を受けるときの組合員の一部負担金は、現在初診料のみに限られておりまするが、今回の健康保険法の改正によりますと、被保険者は、初診料のほか再診料、入院料等についてもその一部を負担することとなっておりますので、共済組合員につきましても、これと同様の負担を行うことといたしておるのであります。また、保険医療機関等に関する規定、不正受給者等に関する規定等につきましても、それぞれ健康保険法の改正に準じて整備することといたしております。
第二点は、国家公務員共済組合審議会の設置に関するものであります。すなわち、この審議会は、昨年十一月十一日の閣議決定に基いて、大蔵大臣の諮問機関として大蔵省に設けられたものでありますが、今回これを法定しようとするものでありまして、共済組合に関する基本的施策及び組合の運営に関する重要事項を調査審議するために、大蔵省の付属機関として設置することといたしておるのであります。
第三点は、共済組合年金制度の合理化についてであります。すなわち、現行法では、組合員であった期間が二十年未満で退職した者が再び組合員となった場合には、組合員であった前後の期間は合算されないこととなっておりまするが、この前後の期間を合算すれば年金受給の資格を得られる場合には、これらの期間を合算することといたしたのであります。また、廃疾年金を受けている者の廃疾の程度が軽減した場合には年金の額を引き下げ、また、五年以内にその廃疾の程度が進行した場合には、逆に年金額を引き上げる等の措置を行うこととするほか、退職年金の若年停止を受けている者が廃疾者となったときは、これを解除して退職年金を支給するなど、年金関係の規定を整備することといたしております。
第四点は、船員保険と共済組合との給付の調整に関するものであります。すなわち、船員保険の被保険者であり同時に共済組合の組合員である者について組合の行う給付につきましては、現在、共済組合法による給付と船員保険法による給付とのうち、いずれか有利な給付を共済組合で支給することとなっておりまするが、客観的にいずれが有利であるかを判定することは非常に困難でありますので、今後は原則として共済組合法による給付を支給することとし、ただ、本人が船員保険法による給付を選択した場合にはこれを支給することといたしております。
本案につきましては、黒金泰美君外二十五名より修正案が提出されました。修正の趣旨は次の通りであります。すなわち、今回の共済組合法の改正案は、一部健康保険法の改正に同調しておりまするが、健康保険法の改正案が修正されることとなりましたので、これに伴い、本改正案におきましても、医療機関等に対する立ち入り検査とありますのを検査等に改めるとともに、医師等に対する罰則が「罰金」とありますのを改めて「過料」とすることといたしたのであります。
本案並びに修正案につきましては、審議の結果、去る十七日質疑を打ち切り討論に入りましたが、日本社会党を代表して横山委員は反対の旨を討論せられました、
次いで、採決いたしましたところ、修正案並びに修正部分を除く原案はいずれも起立多数をもって可決され、よって本案は修正議決されました。
次に、関税法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
本法律案は、関税法及び関税定率法の改正を行おうとするものでありまして、そのおもな内容は次の諸点であります。
まず第一に、関税法の一部を改正する法律に関する改正点を申し上げますると、改正の第一点として、外国貿易船等が簡易手続により入出港できる場合を拡張し、従来の船用品または機用品のみを積みおろしする場合のほか、乗組員の携帯品及び郵便物を積みおろしをする場合においても簡易手続によることといたしております。
次に、従来不開港でありました小名浜港、水俣港を開港に、板付空港を税関空港に、それぞれ指定することといたしております。
その他、外国貨物で、刑事訴訟法の規定により売却等の行われたものは、関税法の適用上、輸入を許可された貨物とみなして手続の簡素化をはかるほか、収容貨物を廃棄処分できる場合を拡張し、また、収容貨物の換価代金を所有者に交付する場合、その貨物についての質権者及び留置権者の保護に関する手続を明確にする等、所要の規定の整備を行うことといたしております。
第二に、関税定率法の一部を改正する法律に関する改正点を申し上げますと、従来、学校等の給食用の乾燥脱脂ミルクにつきましては、関税を免除しているのでありますが、最近、免税を受けたミルクが実際に給食に供されないで他に転用されるおそれが少くない実情にかんがみまして、その用途外使用を制限するとともに、違反者に対する罰則を整備することといたしております。
本法律案につきましては、審議の結果、去る十七日質疑を打ち切り、直ちに採決に入りましたところ、全会一致をもって原案の通り可決いたしました。
次に、金融制度調査会設置法案について申し上げます。
この法律案は、昨年来資金の需給状況が緩和し、貸出金利は低下し、市中銀行の日銀依存が改まるなど、金融正常化が進展する一面、種々新しい問題も現われて参りましたので、金融制度の改善について根本的に検討するために、大蔵省の付属機関として金融制度調査会を設置しようとするものであります。
次に、この法律案の内容について概要申し上げますと、第一に、調査会の任務といたしましては、調査会は大蔵大臣の諮問に応じて金融制度の改善に関する重要事項を調査審議するとともに、必要と認める事項を大蔵大臣に建議することになっております。
第二に、調査会の組織につきましては、委員には金融または産業に関して深い知識と経験を有する者及び学識経験者二十人以内を予定いたしております。この他、特別の事項を調査審議するために必要あるときには、当該特別事項に関して深い知識と経験を有する者を臨時委員とすることができることといたしております。
本法律案は、去る二月二十四日大蔵委員会に付託せられて以来、慎重に審議を重ね、金融制度調査会が調査審議する事項等について質疑が行われ、日本銀行法の改正に関連して、日銀政策委員会の問題、支払準備制度創設の問題等について、活発な論議が行われました。
さらに、去る十九日には、参考人として日本銀行総裁新木栄吉君より意見の開陳を求めて審議を尽し、本日質疑を終了し、討論に入りました。小会派を代表して岡田委員より反対の討論が行われました後、直ちに採決にいたしましたところ、起立多数をもって本案は原案の通り可決いたしました。
次いで、小山委員より、各派共同提案になる附帯決議案が提出せられました。附帯決議案の内容は、
金融制度調査会の設置に当っては、中小企業金融、農林漁業金融等又は中小企業、農林漁業等に関して深い知識と経験を有するもののなかからも、特に委員若干名を選任して、中小金融制度、農林漁業金融制度等の改善に資せられたい。
右決議する。
以上の通りであります。
本決議案につきましては、異議なく、全会一致をもって可決いたしました。
以上、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/27
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028・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。これを許します。田万廣文君。
〔田万廣文君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/28
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029・田万廣文
○田万廣文君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました国家公務員共済組合法の一部を改正する法律案の政府原案並びに与党修正案に対して反対の意向を表明するものでございます。(拍手)
政府並びに与党は、社会保障制度、なかんずく、その中核ともいうべき医療保険制度の整備をその基本政策の一つに掲げまして、また、選挙の公約として、これを広く天下に声明し、よってもって、これを好餌として国民の関心を買わんとしてきたのでございます。ところが、去る四月十日、この本会議場で、政府並びに与党は、患者の一部負担制などを内容とする健康保険法の改悪案を、労働者や保険医の反対だけでなく、一般国民の反対までも強引に押し切って、これが強行通過をはかるという暴挙に出たのでございます。(拍手)このことは、実に、鳩山内閣がみずからその選挙公約を破棄し、鳩山内閣の正体である頑迷固陋な保守性をおくめんもなく暴露したものにほかなりません。(拍手)すなわち、鳩山内閣の本質は、再軍備か社会保障かの二者択一のどたんばに追い込まれまして、その結果、福祉国家の理想である社会保障を後退させるような時代錯誤の道をあえて選び、しかも、反面、かかる弱者の犠牲と負担の上に無謀な再軍備に狂奔せんとするところの反動性にあると言えるのでございます。(拍手)今日、ここに、また、健康保険改悪のしわ寄せといたしまして、共済組合法の改悪案が上程されるに至りましたゆえんのものも、こうした悪らつな鳩山内閣の魂胆から出たものと断定してはばからないのでございます。(拍手)
まず、反対の第一点といたしまして、この改正案は、健康保険法の改悪点を、何らその必要性と合理性が認められないにもかかわらず、そのまま供済組合法の中にまでも持ち込んでいるということでございます。健康保険法の改正案における一部負担制が、主として政府管掌健康保険の赤字補てんを目的とするものであることは、いなみがたい事実でございます。このことは、共済組合審議会の答申の中にもはっきりと、その冒頭に書かれているのでございます。ところが、共済組合における短期給付経済は現在均衡を保っており、また、従来、その支出損は、原則として保険料率の引き上げによってまかなってきた。従って、今回の政府案のごとき一部負担を導入することには、その趣旨から見て賛成いたしがたいということでございまして、答申意見の大前提として、はっきりと、かくのごとく明記されているのでございます。政府並びに与党は、この審議会の公正なる答申の精神を全くじゅうりんしてしまって、少しも顧みるところがないのでございます。
鳩山内閣は、こうした審議会を作るときには、その意見は十分に尊重すると口では言いながら、実際ではしばしば審議会の意見を全く無視する態度に出て参りまして、識者並びに国民の強い反感を呼んでおることは、最近においては、選挙制度調査会がその尤なるものであるといわなければなりません。(拍手)今回、また、せっかく専門家の衆知を集めてできましたところの審議会の真実の意思をくみ取ろうともしないで、故意にこれを無視されたことに対しまして、日本社会党は、国民とともに、その悪質な独善性を強く指弾せざるを得ないのでございます。(拍手)
反対の第二点といたしましては、共済組合が健康保険の改正に同調したおもな理由といたしまして、政府は、共済組合が健康保険の代行制度であり、黒字の組合管掌健康保険にも一部負担制が適用されること、共済組合のみに特例を開くと、保険医や支払い基金の手数を煩雑ならしめること、この二つの点をあげているのでございますが、これは単なる言いのがれの口実ともいうべきでございまして、首肯し得る理由として、はなはだ微弱であることは、ここに申し上げるまでもないのでございます。(拍手)
政府があげた理由の前半の部分につきましては、何らこれを理由とするに足らないことは、すでに反対の第一点で申しましたところによって十分明白でございまするので、再びこれを繰り返すことは避けます。ただ、共済組合への一部負担制の導入は、他の保険とおつき合いということにあるようでございまするが、それならば、日雇い労働者健康保険だけに限りまして一部負担制を導入しないという理由がどこにあるのか、全く納得がいかない。政府の方針は、この事実から見ましても支離滅裂で、全く一貫性を欠いているといわなければならぬのでございます。(拍手)政府があげた理由の後半の部分、すなわち、保険医や支払い基金の手数を煩雑ならしめるという点は、一方において組合や組合員の手数を煩雑ならしめるということには全く耳をふさいでいるのでございまして、まことに不可解千万な片手落ちの理由といわざるを得ないのでございます。
今回の改正案では、共済組合は赤字となっていないという理由で、一部負担金は一応これを取るけれども、あとでこれを払い戻してやるといったような規定が設けられております。もともと、一部負担がそれほど必要でないと考えられるならば、何がゆえに、わざわざ平地に波乱を起すような、こんな煩雑な手数をかけさせることにするのでございましょうか、全く理解に苦しむところでございます。政府の改正案は、保険医や支払い基金の手数の煩雑さを、組合や組合員の迷惑を顧みないで、これに転嫁してしまおうとするものでありまして、いやしくも健全なる常識を備える者から言うならば、全く児戯にもひとしい、ばかげたことといっても過言ではないのであります。(拍手)
最後の反対の点といたしましては、今回の改正案では、共済組合は、一部負担によりそれだけ余裕財源を生ずることとなりまするので、当分の間その範囲内で一部負担金の払い戻しその他の措置をとることができることを附則をもって規定しておるのであります。しかし、これは実に自家撞着もはなはだしい常道に反する措置であって、政府並びに与党は、ただ漫然と健康保険の改悪に同調したものであるという事実を端的に表明したものであります。このような、政府、与党の、安易な、健康保険という大きな問題の本質に反するがごとき考えは、われわれといたしましては根本的に反対せざるを得ないのでございます。
以上、私は、三つの理由をあげて、本改正案並びに修正案に対する反対意見を述べたのでありまするが、要するに、福祉国家の建設というものは、私が申し上げるまでもなく、社会保障制度の確立にあり、また、社会保障制度の確立によって初めてほんとうに国民の健康で文化的な最低生活が憲法の明文通り保障されると考えるものであります。(拍手)しかるにかかわらず、今回の改正案というものは、社会保障制度の前進ではなく、むしろその後退を意味するものでありまして、これによって、保守反動の鳩山内閣が、みずからその選挙公約を破棄し、ついにその馬脚を現わすに至った証拠であり、従って、また、勤労者はもとより、一般国民の鳩山内閣に対する信頼は、これによって全く地を払うに至ったということをここに明言いたしまして、反対討論を終るものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/29
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030・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。
これより採決に入ります。
まず、日程第六につき採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/30
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031・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り決しました。
次に、日程第七につき採決いたしま す。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/31
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032・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
次に、金融制度調査会設置法案につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります 本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/32
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033・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/33
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034・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第八、百貨店法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。商工委員長神田博君。
〔神田博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/34
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035・神田博
○神田博君 ただいま議題となりました百貨店法案について、商工委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
最近、わが国の経済は一般的に正常化して参りましたが、小売業における販売競争はますます激化の方向をたどり、ことに、広大な店舗と巨大な資本を擁する百貨店業者の競争は、小売業全般の過当競争を誘発するとともに、中小商業者の事業活動を圧迫して、わが国商業全般の正常な発達をはばむことにもなりかねない状況であります。従って、百貨店業者の事業活動の拡大を無制限に放置するときは、中小商業者は事業活動の機会を確保することがますます困難となるおそれがありますので、百貨店業の新規開業、百貨店業者の店舗の新設及び拡張等に関し規制を設け、その事業活動に所要の調整を加える必要があるというのが、本法案の要旨であります。
本法案は、二月十四日に本委員会に付託され、三月三日政府委員より提案理由の説明を聴取いたし、四月十三日、十六日と慎重審議が行われ、同日質疑を終了いたしたのであります。翌十七日、自由民主党及び日本社会党共同提案にかかる本法案に対する修正案が提出され、小笠公韶君よりその趣旨弁明が行われました後、討論に入り、自由民主党を代表して首藤新八君、日本社会党を代表して田中武夫君より、修正案並びに修正部分を除く原案についてそれぞれ賛成の意見を表明されました。
次いで、採決を行いましたところ、修正案及び修正部分を除く原案はそれぞれ全会一致をもって可決され、よって本案は修正案の通り修正議決された次第であります。
また、民主自由党及び日本社会党を代表して、松尾トシ子君より本法案に対する附帯決議案が発議され、採決の結果、これまた全会一致をもって可決されたのであります。
以上の審議内容の詳細並びに修正案及び附帯決議案の内容については、会議録によって御承知をお願いいたします。
なお、永井勝次郎君外十二名提出の百貨店法案につきましては、内閣提出の百貨店法案と並行して慎重審議を行なって参ったのでありますが、前述の通り、四月十七日、内閣提出、百貨店法案に対する両党共同修正案がなりました結果、本法案は提案者全員より撤回したい旨申し出がありましたので、本委員会はこれを許可することに決した次第であります。
以上、御報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/35
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036・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/36
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037・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/37
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038・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第九、国際金融公社への加盟について承認を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長前尾繁三郎君。
〔前尾繁三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/38
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039・前尾繁三郎
○前尾繁三郎君 ただいま議題となりました国際金融公社への加盟について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審議の経過並びに結果を簡単に御報告申し上げます。
国際金融公社は、国際連合の要請に基き、国際復興開発銀行、すなわち世界銀行が作成した国際金融公社協定によって設立されるものでありまして、加盟国、特に低開発地域の生産的な民間企業を助長することにより経済的開発を促進し、世界銀行の活動を補足することを目的とするものであります。すなわち、加盟国の開発に寄与するような生産的な民間企業が十分な民間資本を得られない場合に、民間企業の設立、改善及び拡張を援助するため、民間投資者と協調して、加盟国政府による償還の保証なしに、これに融資をせんとするものであります。
この公社は、世界銀行と同じく、業務上の公平を期しまするために、公社の融資した資金が特定国内で使用されるような条件を付してはならないこと、政治活動の禁止等によって、業務の運営は経済上の考慮のみに基くべきものであることなどを明らかにしておるのであります。
わが国がこの公社に加盟するためには、二百七十六万九千ドルの出資を行うことが必要であります。この出資金につきましては、昭和三十年度補正予算に計上され、すでに本国会において可決されております。また、この出資を行い、かつ、日本銀行を寄託所に指定するための法律案は、本国会に提出されております。なお、現在までに加盟の手続を終りました国は、米、英、カナダ、オーストラリア等十四カ国であります。また、この公社が発足するためには、三十以上の政府で七千五百万ドル以上の出資額を持つものが加盟することが必要であり、近くこの条件が満たされ、その発足を見るものと思われます。
要するに、わが国は、これに加盟することにより、経済開発のための国際的投資の分野に参加、協力することとなり、他面において、公社が投資を行いますと、これと協調する形で、わが国の民間資本の海外進出も促進され、さらに、それに関連して、わが国の生産品及び技術の輸出の増加も期待され、なおまた、わが国の生産的民間企業についても、しかるべき条件を備えた場合には、公社から直接融資を受けることもできることとなるわけであります。
本件は、二月十日外務委員会に付託され、委員会において政府側の提案理由の説明を聴取し、八回にわたり質疑を行い、続いて討論に入り、日本社会党松本七郎君及び小会派岡田春夫君から、それぞれ反対の意向が表明され、自由民主党石坂繁君から賛成の意向が表明されましたが、これらの詳細は会議録によって御了承を願います。
かくて、四月十八日、討論終結後、直ちに採決の結果、本件は多数をもってこれを承認すべきものと議決いたした次第であります。
以上、報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/39
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040・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。松本七郎君。
〔松本七郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/40
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041・松本七郎
○松本七郎君 私は、ただいま議題となっております国際金融公社への加盟について承認を求めるの件に対しまして、日本社会党を代表いたしまして反対の意見を述べんとするものでございます。
そもそも、この公社が成立いたしました経過は、一九五四年、一昨年の三月に米州会議が開かれました際に、アメリカから、カラカス宣言という、いわゆる反共宣言を発したのに端を発するのでございます。
〔議長退席、副議長着席〕
米国は、この反共宣言を南米諸国に承認させる代償といたしまして、経済援助をこれらの南米諸国にするための措置を約束しなければならなくなったのが、この公社の起りでございます。従って、そのいきさつから考えましても、この公社の主たる目標は中南米諸国にあるのでありまして、東南アジアあるいは中近東の諸国の開発は、第二義的なつけたしにすぎなくなるおそれが十分あるのでございます。その上、最近の中近東あるいは東南アジア諸国の米国に対する批判的なあるいは警戒的な動向にかんがみますると、将来中ソ両国と友好関係を維持しようとするおくれた国々に対する援助を故意に拒否したり、あるいは差別的に不利な扱いをするおそれなしとしないのでございます。(拍手)
このように、この公社のおい立ちから考えてみまして、この公社が米国の世界政策の具に供せられる危険をはらんでいる点を、私どもは見のがすことができないと思います。(拍手)なるほど、この協定文の表面だけ見てみますると、いかにも合理的に、好ましいもののように見えます。けれども、その運営の面で幾多の危惧を抱かざるを得ないのであります。
まず第一に、私どもが注目しなければならないのは、この公社と世界銀行との関連でございます。政府の説明にもありますように、この世界銀行と今度の問題になっております公社とは姉妹関係にあるのでありまして、公社の理事は、世界銀行の理事がそのまま兼務をすることになっております。従って、世界銀行のこれまでの運営の実績がどのようなものであったか、その最近の動向を知ることが、私はこの公社の運営を予測する上に非常に大切だろうと思います。
世界銀行も、御承知のように、その協定文から申しますると、この公社と同様、表面はきわめて合理的でございます。それだからこそ、私どもはこの世界銀行には賛成したのであります。ところが、この世界銀行のその後の運営はどうかと申しますると、全く所期の目的に反しまして、大株主であるところの米国の一方的運営にゆだねられ、その世界政策の具に供されようとしておるのでございます。(拍手)
御承知のように、世界銀行は、単にその融資条件が非常に過酷であるというばかりではない。八幡製鉄の借款を見ましても、また、トヨタ自動車、石川島重工業、日本鋼管あるいは三菱造船の場合などを見てみましても、すべてその経営内容にまで干渉を受けておるのでございます。また、川崎製鉄の借款申請に対しましては、通産省に注文をつけまして、日本の鉄鋼行政にまでも干渉してきておる事実があるのでございます。このようにして、今では、さすがの日本政府の内部からでも、この世界銀行の借金に対しては大きな批判が出て参りました。これは屈辱的な借金であるとして批判されているほどでございます。(拍手)
外務委員会の討論に際しまして、石坂委員は、この世界銀行に賛成したのだから、社会党も当然この公社にも賛成すべきだというようなことを言われたのでございますが、今申しますように、私どもが賛成した当時は、まだ世界銀行は運営されておりません。協定の表面から見て、これは運営さえうまくいくならばけっこうなものであろうという意味で賛成をしたのでございますが、その後の実際の運営は、今申しますように、協定とは似ても似つかぬ不当な運営である状況を知るに至った今日、私どもは、世界銀行とうらはらの関係にあるこの公社によって再びだまされるわけには参らないのでございます。(拍手)電源開発の場合、あるいは農地開発の場合で明らかなように、今や、この世界銀行は、国際機関という体裁のいい看板を掲げたところの、アメリカ商品の押し売り機関と化しておるといっても過言ではないのであります。(拍手)従いまして、農林省の役人の批評を聞いてみましても、これは占領時代のGHQ以上のやり方だといって憤慨しておるではございませんか。(拍手)
ここで、私どもは、世界銀行の運営の最近の動向を示す一例として指摘しなければならないのは、エジプトのアスワン・ダムに対する貸付問題でございます。これに関する協定の詳細な内容は秘密で、まだ公表されておりませんから、伝えられたところの概要で見る以外にございませんけれども、それでも注目すべき点があります。それは、御承知のように、世界銀行からエジプトのこのアスワン・ダムが二億ドルの融資を受けることになっておるのでございます。この世界銀行については、私ども日本が引き受けておる出資額は二億五千万ドルであります。二億五千万ドルから引き受けておりながら、その融資を受ける限度は一億ドルといわれております。ところが、エジプトの場合は、わずか四千万ドルの引受額に対して、五倍に上るところの二億ドルからの融資を受けようという、ここに私は問題があると思うのでございます。このような状態を見まするならば、当然これは普通の銀行業務では考えられない有利な融資でございますから、私はここに米国の政策が反映されておるといわざるを得ないのでございます。(拍手)
御承知のように、ソビエトは、この世界銀行の利率に対して、きわめて有利な利率を提案しております。世界銀行は平均四分五厘から五分の利率でございますが、ソビエトの提案は、利率が二分二厘、償還期限が五十年からあるいは三十年となっております。だから、これではエジプトが世界銀行から金を借りることをちゅうちょするのは当然でございます。そこで、このソ連側の条件に対抗するために、世界銀行が、普通の銀行業務としてはとうてい不可能なような条件でも貸し出しをしようとする動きが出てきたことが、私どもは問題だというのでございます。米国として世界政策がやりたければ、独自の立場で、独自の機関を通じてやるのならば、これは勝手であります。しかしながら、世界銀行というこの国際機関を通じて、わがもの顔におのが政策を実現しようとするところに、私どもは承服できない点があるのでございます。(拍手)
新聞の報ずるところによって見ましても、あの第一回の余剰農産物受け入れ交渉の際に、もしも日本が農産物の受け入れを拒否するならば、世界銀行は日本に対して電力借款を認めない、こういうことを言明したと伝えられているのでございます。まことにこれは言語道断でございます。
ところが、それなら、今度の公社とわが国の関係において問題を拾ってみますと、先ほど委員長もちょっと触れられましたが、一体この金融公社からわが国は融資を受けることができるのかどうか、これが第一の問題でございます。委員会におきましても、その点が質疑応答されたのでございまするが、この点きわめてあいまいであることが暴露されたのでございます。
先ほど委員長の報告にもあるなしたように、この協定によりますと、融資を受ける対象、資格は、「低開発地域」と、こういうふうな規定がされております。そこで、自民党の山本議員は、まずこの問題を取り上げられまして、一体「低開発地域」とは何だ、そういう定義について質問されました。ところが、政府の答弁は、結局、「低開発地域」の定義はない、それは理事会によってそのつど決定されるほかないという、きわめてあいまいな答弁であったのでございます。それならば、一体日本は果して融資の対象になるかどうか、この点については、森下政務次官が、まず提案理由の説明の中で次のように述べられておるのでございます。「わが国の生産的民間企業についても、しかるべき条件を備えた場合には、公社から融資を仰ぐこともできることとなるわけであります。」こういうことを言われている。それなら、このしかるべき条件とは一体何かということになりますと、これについては何も定義はないらしいのでございます。こういうふうにして、公社によって日本が融資を受けるという、この利益を政府はふれ込みにしておるのでございますが、このような空虚な内容では、私どもは何ら期待をかけるわけにいかないのでございます。
さらに、高岡大輔委員と高碕経済企画庁長官との間に交された間答を見てみますると、さらに不可解な点がたくさんある。すなわち、高碕長官は、三月十三日の委員会におきまして、最初はこのように答弁されている。「さしあたり現在私どもの考えておりますことは、日本の国内の開発に必要な場合にこれを使うのであります。そういうような考えで、これを国際的に使うということはまだ考えていないわけであります。」このように答弁いたしまして、これに対して同じ日の委員会で、この高岡委員及び労農党の岡田委員がこの点を追及いたしましたところ、さっそく高碕長官は取り消しておるのであります。そうして、「先ほど高岡さんの御質問に対して、私は国際金融公社というものの金は日本の開発に使いたい、こういう方針でおるのでありまするが、これは多少疑問なようであります。後進国の開発のために使うということが前提になっております。日本は後進国でないということを認めております。こういうことなので、日本がこの金を借りて後進国の開発に使うならばいいが、日本自身が使うということについては、まだ多少疑問があるというようでありますから、それを訂正いたしますから、さよう御了承願います。」
こういう経過を振り返ってみましても、この協定というものは、条文解釈上いかに不正確なものであるかということを暴露いたしておるのでございます。(拍手)従いまして、わが党の穗積委員から、そのような状態であるならば、政府の提案理由と違うから、提案理由をやりかえろ、こういう要求をいたしたのでございますが、ついに、政府は、この矛盾と不統一をほおかむりのまま今日まできたのでございます。こういう状態で、どうしてこの協定の円満な運営が期待できますか。責任を重んずる議員ならば、このようなあいまいなものに承認を与えることはできないはずだと私は思うのでございます。(拍手)
以上述べましたような理由から、わが党は本協定に反対するのでございますが、過日の委員会で自民党の賛成討論のときに、その賛成の理由といたしまして石坂委員から述べられた点に、一言触れておかなければならないのでございます。石坂委員は、この協定にはタイやセイロン等も賛成しておるということを強調されたのであります。しかし、これはおそらくこの協定の表面だけの合理性に惑わされておる結果であって、この協定の正体を知るに至れば、必ず私はこれらの諸国も反対の空気が強くなることは明らかだと思います。現に、インドネシアは態度を留保しておるのでございます。最近、東南アジアでは、米国の世界政策に対する批判が高まりつつあるのでございます。特に見のがすことのできませんのは、SEATOに加盟しておるフィリピンやパキスタンまで公然と米国の政策を批判し始めておることでございます。また、何よりの証拠は、セイロンにおけるコテラワラ首相の失脚でございます。ここらで鳩山首相も大反省をしなければ、コテラワラの二の舞を演ずることになることを、私は警告せざるを得ないのでございます。(拍手)
政府、与党の意見を聞いておりますと、いかにも、ものごとを、静的に、あるいは形式的にのみ観察しておるようでございますが、今日の世界は日々に変化しており、特にアジアの情勢は急激に変りつつあります。政府、与党には、この点に着目する具眼の士がないのか。あるいは、あっても、おそらく冷遇されており、埋もれているのではないかと思わざるを得ない。(拍手)私は、これこそ、日本を再び悲劇のどん底に陥れるもとであることを反省していただきたいのでございます。
私どもが、もしも、公平に、低開発地域の利益のために、この経済開発に協力援助しようとするならば、この世界銀行とか、あるいは国際金融公社というような、閉鎖的な、ブロック的な運営のおそれのあるものではなくて、もっとあらゆる国が平等の立場で運営できる機関でやるべきと思います。この意味で、私どもは、第十回の国連総会で決定を見ましたところの国連経済開発特別基金、すなわちSUNFEDを一日も早く設置して、これを通じて低開発地域に対する援助をやるべきと思うのでございます。昨年、バンドン会議において、わが国は率先して平等互恵の原則を中心としたところの十原則を唱えたのでございまするが、この点からも、わが国こそ開放的なSUNFEDをすみやかに実現される責務があると思うのでございます。このことを私は特に強調いたしまして、本国際金融公社に加盟することには反対するものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/41
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042・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 石坂繁君。
〔石坂繁君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/42
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043・石坂繁
○石坂繁君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました国際金融公社への加盟につき承認を求むるの件につき賛成の意を表明するものでございます。(拍手)
今回設立せられんとする国際金融公社の目的及び設立の事情は、先ほど委員長御報告の通りであります。そもそも、わが国の外交の基調を自由民主主義諸国との協調提携に置き、わが国の経済自立をはかりつつ、特にアジア諸国との善隣友好と、これら諸国との経済協力に重点を置くべきものであるとなしますることは、わが自由民主党の基本政策の一つであり、政府またこれに呼応して、特に東南アジア経済外交の推進に努力いたしつつあるのであります。しかるに、また、東南アジア諸国は、今や民族自立の意気に燃え、その経済開発の熱意すこぶる盛んなるものがあります。インドはすでに本年四月をもって第二次五カ年計画に入りましたが、その他の諸国も、それぞれの国情によりまして多少の相違はありましても、あるいは五年ないし六カ年の経済計画を樹立いたしまして、鋭意その計画を実施中であります。
このときに当り、本公社が設立せられ、わが国がこの公社に加盟いたすことになりまして、公社の目的とする加盟国、特に東南アジア諸国のごとき低開発地域の民間企業への国際的投資活動に参加協力することにより、他面、公社の活動を通じてわが国の民間資本、生産品及び技術の海外進出を助長することになり、また、わが国自身の生産的民間企業に対する公社からの融資をも期待することができるのであります。
ただ、ここで要望いたしたいことは、わが国が、本公社の投資に関連いたしまして、単に低開発地域の経済発展に協力するということだけでなくして、公社への投資が加盟国としてのわが国にも均霑せられ、わが国自身の経済発展にも大いに役立てられるよう、別段の努力を払われたいということであります。
ただいま、松本君が、わが国に対する融資を期待することはできないというような趣旨を申されたのでありますけれども、加盟国としてのわが国にも均霑することは、協定自身によって明らかであります。(拍手)しかし、私が遺憾に存じますことは、公社の定款その他公社の活動に関する細目が、今日まで、実は必ずしもはっきりしていないことであります。従いまして、今後これらのことが決定いたしまする際には、わが国の利益、東南アジア諸国の利益及び総体としての低開発地域の利益をもよく考慮いたしまして、本協定第一条の目的に十分に合致するよう有効適切なる努力を払われるよう、特に要望いたす次第であります。
さらに要望いたしたいことは、わが国が真に東南アジア経済外交を促進せんといたしまするならば、わが国の目立的、自主的東南アジア政策が確立せられる必要があると思います。さきに米国際開発諮問委員会議長ジョンストン氏が来朝いたしまして、本公社とは別に、東南アジア向け投資に当る公共会社設立の構想を発表いたしまするや、あるいは一萬田構想、あるいは高碕構想などが伝えられ、これに財界また相呼応して、積極的に動き出しているごとくであります。しかしながら、これらの構想は、いまだ具体的の方向が確定いたしておりません。政府は、よろしく、すみやかにこれら官民の構想を調節し、日本としての総合的、具体的方針を決定すべきものであると思います。現在の輸出入銀行の機構の拡大、海外投資保険制度の完備等、もとより必要でありますけれども、さらに百尺竿頭一歩を進めまして、アジア諸国と互恵平等の原則に立ち、官民共同出資の開発公社のごときものを設立するの必要を痛感いたす次第であります。
委員会におきまして、労農党岡田春夫君は、本公社に対しまして、もはや加盟国が取り消しておるのではないか、これすなわち本公社が適当でない証拠であるという趣旨の反対を述べられたのであります。なるほど、ユーゴスラビア及び中国が加盟取り消しをいたしましたことは事実であります。しかしながら、前者は、地理的等の関係からいたしまして、本公社との利害関係薄く、後者、すなわち中国は、その引き受け株数六千六百四十六株、この出資金額六百六十四万六千ドルの巨額に上っておるのでありますが、中国が加盟を取り消しましたのは、そのドル払い込みの都合からであると推測されるのであります。いずれも特殊事情によるものでありまして、あえてこの論は本公社に対する非難に当らざるものと考えます。また、同君は、そうしてまた、ただいま松本君も言われたのでありますが、本公社の事業は主として東南アジアを対象とするものではなく、主として中南米に重点を置いたものであると言われたのであります。しかしながら、これは全く誤解に出ずるものであると考えます。米国は、中南米を不適当と認めまして、国連傘下においてこの公社設立を企てたものであります。さらに、また、ただいま松本君は、日本は本公社に加盟するかわりに、よろしくSUNFEDを育成すべきであると言われました。もちろん、日本はSUNFEDには賛成であります。これが実現に期待いたしておるのであります。しかしながら、SUNFEDは主として政府企業であって、損益を度外視した長期の大公共企業を目的としておるものでありまするが、これに反しまして、本公社は生産的民間企業で、比較的小企業の育成、助長に重点を置いておることは、協定第一条の規定において明らかであります。ゆえに、SUNFEDの成立と本公社への加盟とは何ら矛盾するものではありません。ゆえに、これらの反対理由は当らざるものだと考えます。(拍手)
なお、ただいま、松本君は、社会党がさきに開発銀行に関係いたしましたことに対しまして、いろいろ事情を述べられたのでありまするが、さきに開発銀行、世界銀行の設立に賛成しまして、今その補助機関であるこの公社に反対せられますことは、私は、その前後の矛盾、はなはだ了解に苦しむところであります。しかも、松本君も指摘せられたのでありますが、この公社に対しましては、東南アジアの中立主義陣営であるインド、ビルマ、セイロン等も加盟の意図を表明しておるのであります。しかして、わが国は当初からの理事国でありまして、わが国、わが国のみならず、ビルマ、セイロン、タイ三国の利益をも代表することになっておるのでありまするが、この協定に反対せらるる社会党の諸君は、わが国のこの地位を放棄すべしと主張せられるものでございましょうか、私の了解することのできないところであります。(拍手)いわんや、この公社加盟に必要なる国内法制上の措置である国際金融公社への加盟に伴う措置に関する法律案、すなわち、わが国の予定せらるる持株数二千七百六十九株に対する出資金額二百七十六万九千ドル、この邦貨換算九億九千六百八十四万円の出資、及び、日本銀行を寄託所に指定する内容を持った法律案に対しましては、三月二十三日、大蔵委員会におきまして、社会党の委員諸君も賛成せられ、同法案は全会一致をもって原案通り可決せられております。(拍手)しかも、同法案は、三月二十七日、この本会議において、これまた、社会党の諸君も何ら反対なく、全会一致可決せられておるのであります。しかるに、本日は、この公社協定に反対せられる。私は、この前後のはなはだしき矛盾撞着を、何といたしましても了解することができないのであります。(拍手)すなわち、私をして言わしむれば、今日の社会党の反対は、全く理由なき反対であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
以上の理由によりまして、私は、この公社の目的及び将来の活動がきわめて重要かつ有益であると確信いたし、この公社への加盟につきましては承認すべきものであるとして賛成いたす次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/43
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044・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本件は委員長報告の通り承認するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/44
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045・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 起立多数。よって、本件は委員長報告の通り承認するに決しました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/45
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046・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 日程第十、旅行あっ旋業法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸委員会理事畠山鶴吉君。
〔畠山鶴吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/46
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047・畠山鶴吉
○畠山鶴吉君 ただいま議題となりました旅行あっ旋業法の一部を改正する法律案につき、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします。
本改正案は、旅行あつ旋業法施行三カ年半の実績に徴しまして、旅客等の保護の徹底を期するため、取締りの規定を整備しようとするもので、登録要件の強化、登録の更新制の採用、旅行あつ旋約款の届出、職員による営業所等への立入り検査並びに罰則の強化がその内容であります。
本法案は、去る三月十四日予備審査のため当委員会に付託され、翌十五日政府より提案理由の説明を聴取し、二十八日本付託となり、審査いたしました結果、四月三日質疑を終了し、討論を省略、採決の結果、全会一致をもって原案通り可決いたした次第であります。
以上、御報告を申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/47
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048・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/48
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049・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/49
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050・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 日程第十一、建設業法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。建設委員会理事大島秀一君。
〔大島秀一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/50
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051・大島秀一
○大島秀一君 ただいま議題となりました建設業法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
まず、本案の提案の理由並びに要旨について申し上げます。現行建設業法は、建設工事の適正な施行を確保するとともに、建設業の健全な発達に資することを目的といたし、特に建設工事の請負契約に関する紛争につきましては、同法に規定する建設業審議会が解決のあっせんをすることとなっておるのでありますが、今日までの経過にかんがみ、さらに建設工事の紛争を適正かつ迅速に処理するため、新たに建設省及び都道府県に建設工事紛争処理機関を設置し、建設工事の請負契約に関する紛争につき、あっせん、調停または仲裁を行わせることとしようとするものであります。
本案は四月十七日本委員会に付託されたのでありますが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
かくて、四月二十日、討論を省略して採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/51
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052・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/52
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053・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/53
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054・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 本日はこれにて散会いたします。
午後五時五十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X03719560424/54
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