1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年五月二十八日(月曜日)
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議事日程 第五十一号
昭和三十一年五月二十八日
午後一時開議
第一 へい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
第二 採血及び供血あっせん業取締法案(内閣提出、参議院送付)
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○本日の会議に付した案件
国家公安委員会委員任命につき同意を求めるの件
東北開発に関する決議案(岸信介君外十一名提出)
日程第一 へい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
日程第二 採血及び供血あっせん業取締法案(内閣提出、参議院送付)
午後一時三十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/0
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001・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/1
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002・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) お諮りいたします。内閣から、国家公安委員会委員に小汀利得君を任命するため、警察法第七条第一項の規定により本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/2
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003・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/3
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004・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、岸信介君外十一名提出、東北開発に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/4
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005・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/5
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006・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
東北開発に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。小金義照君。
〔小金義照君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/6
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007・小金義照
○小金義照君 ただいま議題となりました東北開発に関する決議案の趣旨弁明をいたします。
まず、決議案を朗読いたします。
東北開発に関する決議案
わが国産業経済の再建は、人口の過剰、国土の狭小に加えて、原料資源の大半を国外に依存する現況にあるため、これが伸展と雇用の拡大は真に容易ならざるものがあり、この際国内資源の未開発地域たる東北地方の開発こそはわが国経済再建のため必要にしてかつ重大なる役割を果すものである。
同時に東北の経済的後進性を克服し住民の福祉の増進を計ることは目下の急務である。
よって政府は、速やかに東北開発に関する総合計画を樹立し、ただちにこれを実行に移すため、昭和三十二年度に各種の予算措置を講ずるなど、これが施策に関し万遺憾なきを期せられたい。
右決議する。
〔拍手〕
新潟県を含めて、東北地方は、その自然的条件及び社会的条件に恵まれなかったために、後進地域として取り残されて今日に至ったことは、世間周知の通りでありまして、この間において各種の開拓政策ないしは匡救対策が論議せられ、また実施されたことがあるのでありますが、これらはいずれも総合性を欠き、かつ一貫性を持たぬ、いわば弥縫的のものでありましたので、相当額の国費が投ぜられたのでありながら、ついに抜本的な効果をあげ得なかったのであります。特に、戦前わが国が盛んに海外に進出しておりました時代においては、この東北地方は、あたかも忘れられたる存在であったかのごとき観を呈しておったといっても、あえて過言ではないのであります。しかしながら、不幸なる敗戦によってわが国が海外の領土その他一切を失いました今日、残されたこの狭小な国土に九千万人の同胞が生存して参るためには、これらの国土を残るくまなく開発利用することが、資源関係において海外依存度の高いわが国においては、残されたただ一つともいうべき方法でありまして、特に、この新潟県を含めての東北地方のごとく、ほとんど未開発のままに残された地域につきましては、その開発の必要性は最も大きいのであります。
しかも、この地域には、地下資源、水力資源、森林資源、未開墾地等、各種の貴重なる資源が豊富に存在しておりまして、開発の手が差し伸べられるのを待っている現状でありまして、他の地域に比べて開発の効果のきわめて大きいことは、識者のひとしく認めているところであります。また、この地域の産業は、おおむね零細な第一次的のものでありまして、その生産性はすこぶる低く、そのために、雇用の機会もきわめて限定せられ、住民所得の水準もまた全国平均の六割強にすぎず、従って、年々増加する人口を吸収するに由なく、これまた人口の東京その他の大都市への流出の原因をなしているのであります。従いまして、今日、ただいますみやかに総合開発計画を樹立して、これに基く適切な施策を強力に推進し、よってもってこの地域の豊富な資源を開発利用し、その各種産業を振興育成することは、ただにわが国経済自立の達成をすみやかならしめるゆえんであるのみならず、同時に、当地域における雇用の増大、住民所得の増加、生活水準の向上、人口収容力の拡大等を実現し、不健全な人口の大都市集中化を防止することとも相なるのであります。
よって、本院は、政府がすみやかに東北地方の総合開発計画を樹立するとともに、これに要する初年度経費を昭和三十二年度予算に計上して、右に関する適切な施策を強力に推進することを強く要望するものであります。
以上をもって本決議案の趣旨弁明といたします。満場一致をもっての御賛成をいただくよう希望いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/7
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008・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 討論の通告があります。これを許します。八百板正君。
〔八百板正君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/8
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009・八百板正
○八百板正君 ただいまの東北開発に関する決議案に、日本社会党を代表して賛成の意見を申し述べます。
経済的にも文化的にも東北のおくれを取り戻して日本の平均並みに引き上げること、それから、東北の持っておる未開発、未利用の資源を開発するということ、この二つは、両方とも非常に大切なことであります。
まず、東北のおくれておることについてでありますが福島県より北、今は新潟を含めて東北七県といたしますが、よくいわれている言葉に、白河以北一山三文ということがあります。これは東北がさげすみを受けてきた長い歴史を物語るものでありますが、実際に、その文化程度、民度は、関東、関西と比べて格段の相違があります。試みに、東京の木戸口たる停車場を上野駅と東京駅と比べてみますと、乗客の客種がこんなにも違うかと、その上野の客の見劣りする東北の程度の低さに驚くのであります。これは、統計の上にも、東北住民の一人当りの所得は国民所得の全国平均に比べて六〇%ないし七〇%となって現われ、その数字は東京、大阪地方に比べて半分にもどうかということになります。人口はと申しますと、北海道が日本一密度が低いので、一平方キロ当り五十ないし六十名で、東京、大阪を除いた関東、関西の十分の一と概算せられるのでありますが、東北はこの倍くらいの数字になっておりますから、全国の五分の一ともいえるのであります。
東北がおくれた理由はいろいろありまして、寒いから、あるいは雪が降るからなど、気候の原因もあるのでありますが、しかし、私はドイツやフランスの土も踏んでみましたが、この地を含めて、欧州、北欧なども、東北地方より必ずしも気候条件がいいとも思われませんでした。また、経済的後進性を招いた原因は、東北人の遠慮がちで利にうとい性格もあります。大体ぼんやりしておりまして、なぐられても、二、三十秒もたってから痛いと思い、それからそろそろ憤慨するというような人情でありますから、気の早い相手はもうおりませんし、万事はあと回りになって、いつも貧乏くじを引くわけであります。また、歴史的に見ても、日本の政治の上で東北は支配を受ける立場にばかり立たされておりまして、幕府時代には外様政策をとられて下積みにあり、明治維新では薩長の勢力や官軍に反抗し、多くは賊軍の名を着せられ、その後の資本主義発展の中でも立ちおくれとなり、資本の蓄積は不可能のまま今日に及んでおります。ですから、東北の特徴は、娘の身売り、出かせぎ、低賃金、東京などへの移住となって現われ、日本の社会と経済の発展をうしろから引っぱる悪い影響を与える禍根をなして参ったのであります。
次に、東北の未開発、未利用の資源的開発を考えてみまするに、これも前に述べたことと切り離して考えることはできないのでありますが、たとえば、東北は人口が少い。経済開発がおくれておる。これを十年計画で直接間接何千億かの金をつぎ込んで開発し、その結果二倍の経済価値を持つことになったとする。そうすると、日本はちょうど東北七県と同じ面積の領土を別に発見してふやしたと同じ結果になるのであります。北海道でも同様のことが行われる、他の地域でも後進性が総合開発によって克服される、こうなれば、朝鮮、台湾、樺太を合せました以上の、はるかに大きな拡大ともいえるわけであります。
世界地図を見ますと、不合理がいろいろと目につきます。ずいぶんと資源の分布や人口の密度の不合理が目につきますが、腕ずくで割り込むわけには参りません。また、世界国家というような、全人類がその国家と民族の隔たりを取り除いて平和の中に分ち合うという夢の世界の実現も、そうすぐには考えられないのであります。われわれは、わが国土の中に徹底的な開発をやり、これを完全に利用して生活の領域を拡大するために、近代の英知と資本の全努力を払うべきであります。(拍手)限界というもののない科学の世界を思うと、日本が狭いなどと悲観する必要もない。太陽も水も、空気も、海水も、地上地下、その利用をきわめ、深く掘り下げますならば、道は幾らでもある。日本が狭い、貧しいというのは、単に地球の海面に現われた露出面積が小さいだけだということになるのではないでしょうか。
さて、手近な東北の開発にまず施策を向けますならば、山林資源、耕地の高度利用、農業の高度化、地下資源の活用、砂鉄、チタン、石灰石、低品位炭、電源の開発、道路、港湾等々、あれもこれも問題の多いのに面くらうありさまであります。
さて、こうは申しますが、東北の開発は明治初年以来かけ声だけでありまして、幾たびか、ちょっとした具体策も立てたのでありますが、実績はさっぱり上っておらないのであります。今度もまた単なる決議に終るのでありますならば、私どもは賛成することができないのであります。熱意と決意を込めて当りますならば、この決議の趣旨は行政上の措置でも進められる面も少くないのであります。しかしながら、この本格化は、もちろん、新たなる立法と予算措置並びに勇断ある経済施策を必要とするものであります。地元資本の蓄積なき後進地域の開発は、国家の責任と思い切った財政支出で行われることが望ましいのであります。(拍手)
しかし、現在の政情を見ますとき、私どもの考えるこの資金や開発方式が、必ずしも全幅的に採用されるものでもないように思われるのであって、民間資本の投資ということも併用され、むしろ比重がこれにかかるとも考えられるのであります。この場合、投資のできる、いわば引き合うような環境を整えるために、まずそれまでは財政投資でいくということがあり得るわけであります。しかし、これは、企業の良心と公共性を失いますと、もうからぬところは政府にやらせて、もうかるところは私的資本がやるという形になり、その結果は、東北の安い資源と電力や低賃金を吸い上げて、これを利潤追求の場とし、東北の後進性が単なる企業の利益に利用されるということにもなりかねないのであります。(拍手)単なる工場誘致が即開発と考えたり、開発を一部の者が食い物にするということが、この決議案の結果繰り返されるようなことは、許しがたいところであります。(拍手)看板はりっぱであっても、そうなると超党派的というわけには参らぬ場合が起るのでありまして、この点、一本くぎを打っておきたいと存ずるところであります。(拍手)後進地開発ということは、ある程度政党の政策以前のものでもありまするから、少し党の立場は違っても、一緒にやれる面が多いはずでありまするので、食い違いのないよう、各党とも力を合せて参りたいと思うのであります。(拍手)
本決議は、おざなりの決議ではないこと、自民党も、政府も、社会党も、共通の政策を立てることに謙虚なるべきこと、この理解と信頼の上に立って、ここに全幅の賛意を述べて、私の意見とする次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/9
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010・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/10
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011・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
この際高碕国務大臣から発言を求められております。これを許します。国務大臣高碕達之助君。
〔国務大臣高碕達之助君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/11
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012・高碕達之助
○国務大臣(高碕達之助君) ただいま御決議に相なりました東北開発につきましては、政府といたしましても多大の関心を持っておるのであります。現在におきましても、すでにその総合開発計画を調査のために実行いたしておのであります。今後におきましても、御決議の御趣旨を十分尊重いたしまして、すみやかに総合開発計画策定によりこれに努めたいと存じます。と同時に、その実現につきましては、財政の許す範囲におきまして予算措置を講じ、その実行に遺憾なきを期したいと存じます。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/12
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013・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 日程第一、へい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案、日程第二、採血及び供血あっせん業取締法案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。社会労働委員長佐々木秀世君。
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〔佐々木秀世君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/13
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014・佐々木秀世
○佐々木秀世君 ただいま議題となりました、へい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案及び採血及び供血あっせん業取締法案につきまして社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、へい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
現行のへい獣処理場等に関する法律は、昭和二十三年、第二回国会において制定せられたのでありますが、近年、市街地または住宅地域等における養豚場及び養鶏場等のいわゆる畜舎が、蚊やハエの発生の根源地となり、あるいは飲料水を汚染する等、環境衛生上きわめて好ましからざる状態にありますので、これら畜舎についての指導、取締りの適正化をはかるとともに、斃獣処理場及び畜舎の構造設備について具体的な基準を設ける等、環境衛生の改善向上をはかろうとするのが、政府の本法案提出の理由であります。
本改正案の要旨は、第一は、清掃法に規定する特別清掃地域のうち、一定の区域内において、一定数以上の牛、馬、豚、綿羊、ヤギ、犬、鶏もしくはアヒルを飼養する施設を設けた者に対し、都道府県知事に届け出る義務を課したことであり、第二は斃獣処理場及び畜舎の構造設備の基準を政令で明確に規定することとしたことであり、第三は、罰則を整備したことであります。
次に、採血及び供血あっせん業取締法案について申し上げます。
現在、人の血液から製造される医薬品の品質、及び、患者に輸血を行う場合における保健衛生上の危害防止につきましては、薬事法及び医師法、歯科医師法により指導、取締りが行われているのでありますが、近年血液製剤の利用が盛んになるにつれ、その原料となるべき人血が血液製剤以外のものに利用されるため、医療上不可欠の血液製剤等に不足を生ずることがないよう、これを規制するとともに、被採血者の保健衛生その他の保護をはかる必要があり、また、輸血のための血液あっせん業者については、現在何ら取締り規定がなく、放任状態にありますため、種々の弊害が起っている実情にかんがみ、必要なる取締りを行おうとするのが、政府の本法案提出の理由であります。
本法案の要旨は、第一は、採血及び人の血液を原料とするものの製造は、医療及び血液製剤等の原料とする目的以外には、原則としてこれを禁止したことであり、第二は、血液製剤等の原料とする目的で採血する業者については、その業務所ごとに厚生大臣に申請させ、一定の条件に適合しない者については許可を与えないこととしたこと等であり、第三は、供血あっせん業を行わんとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならないこととしたことであり、第四は、血液製剤等の原料とする目的で、または輸血の目的で人体から相当多量の血液を採取しようとする者に対して、健康診断その他被採血者の健康保護に関する義務を課する等、被採血者の健康保護をはかったこと等であります。
両法案は五月十六日本委員会に付託せられ、同十八日政府より提案理由の説明を聴取した後、審査に入り、同二十五日質疑を終了し、討論を省略して採決に入りましたところ、両法案は全会一致原案の通り可決すべきものと議決した次第でございます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/14
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015・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/15
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016・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/16
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017・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 本日はこれにて散会いたします。
午後二時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05619560528/17
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