1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年五月二十九日(火曜日)
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議事日程 第五十二号
昭和三十一年五月二十九日
午後一時開議
第一 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案(笹山茂太郎君外三名提出)
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●本日の会議に付した案件
河野国務大臣の日ソ間の漁業協定及び海難救助協定に関する交渉の経緯についての発言及びこれに対する質疑
繊維工業設備臨時措置法案(内閣提出、参議院回付)
日本国とフィリピン共和国との間の賠償協定の批准について承認を求めるの件
日程第一 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案(笹山茂太郎君外三名提出)
日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
機械工業振興臨時措置法案(内閣提出、参議院送付)
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案(参議院提出)
午後一時十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/0
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001・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/1
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002・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 河野国務大臣から、日ソ間の漁業協定及び海難救助協定に関する交渉の経緯について発言を求められております。これを許します。国務大臣河野一郎君。
〔国務大臣河野一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/2
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003・河野一郎
○国務大臣(河野一郎君) 私は、去る四月十二日、漁業及び海難救助に関する協定を締結するためソ連邦代表との間に交渉すべき政府代表に任命されましたが、私とともに代表に任命されました松平駐カナダ大使及び欧州各地の出先外交官中から任命せられた随員とはパリにて落ち合い、四月二十七日夕刻、ソ連代表イシコフ漁業大臣及び随員の出迎えを受け、モスクワに到着いたしました。私は、翌二十八日、松平代表及び随員を伴いイシコフ漁業大臣を往訪し、会議の運営等について打ち合せを行いました。その結果、会議は、総会、漁業専門委員会、海難専門委員会の三つに分つこととし、総会は、両国首席代表以下随員全部出席のもとに一般討議を行うほか、漁業、海難両専門委員会の報告を受け、その結果について採否の決定を行うこととしました。二十九日の第一回総会の冒頭に、わが方は漁業及び海難救助の二協定案を提出し、ソ連側は研究の上意見を述ぶることを約しました。
メーデーの前後三日間は、ソ連邦の祭日のため会議を休みましたが、五月三日の第二回総会において、先方は、わが方の両協定案に対し意見を表明し、四日から、両協定案の審議を、専門委員会において午前、午後を通じて行うことといたしました。
五月五日、ソ連側は先方の漁業条約案を提出し、また、海難協定に関しても順次ソ連案を提出してきたのであります。私は、漁業、海難の両専門委員会が毎日開催せられつつある間に、必要に応じイシコフ漁業大臣と会見し、専門委員会の報告に基き折衝を行いましたが、前後を通じ約八、九回会談を重ねたのであります。
かかる会議を通じ、日ソ双方の見解は大幅に歩み寄り、五月九日からは漁業条約、海難協定の起草を始めることとなりました。右起草委員会の仕事も満足な進渉を示したので、五月十二日夜、漁業条約、海難協定の署名を行う段取りとなったのでありますが、十二日署名直前に至り、本年度の出漁に関する暫定了解について、ソ連側が、私とイシコフ漁業大臣との間の交渉において私の了解したところと異なる申し出をなしました。すなわち、本年度の六万五千トンの漁獲量についても、平和条約が発効するか、外交関係が回復するか、いずれにするも、国交が正常化するにあらざれば同意できないとの主張をなし来たったのであります。これは私といたしましてはどうしても容認できぬところでありますので、先方の再考を求め、約二時間にわたって議論を戦わしました結果、イシコフ大臣はブルガーニン首相と協議すること、及び、十四日中に回答をよこすということを約束いたして、その日の署名は行わぬこととなったのであります。しかるに、十四日午後五時、先方は、本年度は暫定的に漁獲量を六万五千トンとすることに同意する旨回答して参りましたから、私としても、直ちに漁業条約、海難協定に署名することといたしたのであります。
漁業条約並びに海難協定及び付属の交換文書は、外務省から発表せられた通りでありまして、これらは、日ソ間の平和条約が署名せられて効力を発生するか、または外交関係が回復したときに効力を生ずることとなっておりますが、本年度の北洋の安全操業は一応確保せられることとなつた次第であります。
なお、また、右条約及び協定をすみやかに実施するため、おそくとも七月三十一日までに日ソ間の国交正常化の交渉を再開することが必要であることについても、私とイシコフ・ソ連邦漁業大臣との間に同意したのであります。
なお、私は、五月十日、イワノヴォの収容所を訪問し、抑留邦人各位を慰問いたし、異境の空に、戰後十一年になるにかかわらず、なお帰国できぬ人々の生活を、しみじみと見て参りました。私としては、ただ万感の胸に迫る思いでございましたが、長年の御苦労を謝し、国民の思いをお伝えした次第であります。五月九日、私がブルガーニン首相と会見した際、同首相は、国交が正常化すれば抑留邦人は直ちに帰国せしめるとのことでありました。
以上をもちまして私の報告といたす次第であります。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/3
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004・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。穗積七郎君。
〔穗積七郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/4
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005・穗積七郎
○穗積七郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま河野代表から報告の、ありました日ソ交渉について、鳩山総理、重光外務大臣並びに河野代表に、重要な問題に限って、数点のお尋ねをいたしたいと思います。
このたびの取りきめは、その内容についてはさておき、ひとまず日ソ両国政府間において正式な漁業条約並びに海難救助協定が結ばれ、両国間の国交回復に有力なる糸口がつけられたことは、まことに同慶にたえません。
そこで、政府に率直にお尋ねいたします。従来、政府は、日ソ交渉に当つて、われわれの忠告にもかかわらず、常に、引き揚げ、漁業、貿易、国連加盟等、こちら側がほしいと思うもののみを食い逃げをしようという、卑屈なる態度をとって参つたのであります。このたびにおいても、河野代表に魚だけ食い逃げしてこいと、ワクをはめて送り出したのであります。ところが、行ってみますと、ほしいものを取るためには国交回復がすべての条件であることを、身をもって知らされたのであります。われわれをもって言わしむれば、言わぬことではないと言いたいのでございます。(拍手)そこで、政府の対共産圏外交に対する基本方針について、今後この認識を改むべきだと思いますが、政府、ことに外務大臣の御所見を伺つておきたいのでございます。(拍手)
同時に、総理にお尋ねいたします。このたびの取りきめは、ロンドン交渉による妥結を想定した場合よりは、はるかにわが国にとって不利益なる内容となったのでございます。これは、まさに、政府の二元外交の矛盾が暴露したために、それによって、はなはだしく国益を害しておると思うのでありますが、政府の政治的責任をどうお考えになっておられますか。みずから顧みて恥なきを得ないとわれわれは考えるのであります。総理の御所見を伺いたい。(拍手)
そこで、さらに、このたびの条約は、漁業条約である以上に重要な意味を持っておるのは、国交回復の予約条約となっておることであります。そこで、国交回復となりますと、一にかかっておるのは領土問題であることは言うまでもありません。そこで、まず河野代表にお尋ねいたします。あなたとブルガーニン首相との単独会談における内容と申しますか、先ほど、河野代表は、一番大事なこの会談の内容については黙して語られなかったのであります。ブルガーニンから、歯舞、色丹を除く以外のすべての領土問題については根本的にだめであるという強硬なる態度が重ねて示されたはずであります。これに対して、あなたはいかなる態度をとられましたか。先方の主張に進んで同意を与えないまでも、これに反対の意思表示は行わず、黙して、相手の線による国交回復に黙認を与えて帰ってこられたと思いますが、いかがでございますか、お尋ねいたします。
さらに、交渉妥結の時期についても何らか触れておると思わざるを得ないのであります。ソ連側は、正式に調印いたしました漁業条約並びに海難協定のみならず、本年度の漁業に関する暫定取りきめに対しましても、その効力の発生は国交回復後という強い態度をとっていた。ところが、本年度の漁撈については、七月三十一日までに国交交渉に当るならばこれを認めるということに、話ができ上ったのであります。だが、しかし、再開の義務は、妥結の義務を負っておるものではありません。ソビエト側が、食い逃げ根性の強い日本政府を相手にして、こんな抜け穴を気づかないで、ほっておくはずはありません。河野代表は、本年度の漁撈の取りつけを行う際に、八月十日までとは言わないまでも、何らか早期妥結のゴール・ラインを約されたのではないか、お隠しにならずに、率直に御報告をいただきたいのでございます。(拍手)この二つのことに触れられたことは、両方とも妥当であり、しかも、けっこうなことでありますから、何ら憶する必要はない、度胸を据えて、この際国民の前に明瞭に示していただきたいのでございます。
この領土問題につきましては、最終的な政府の決定は、言うまでもなく、鳩山総理がみずから下さなければならない。ですから、この際、総理自身の領土問題に対するお考え方を伺っておきたいのであります。
われわれは、領土問題については、南千島のみならず、北千島、南樺太も、その領土権を主張すべきであるということは言うまでもないが、現在の時点において、ソ連のみを相手として、話し合いによって歯舞、色丹以上のものを取り戻すことは無理がございます。従って、ソビエトのみとの話し合いにおいては歯舞、色丹にとどめ、楠千島以北の領土については将来に問題の解決を残し、将来、小笠原、沖縄の完全復帰と見合って、政治的に解決すべきであると、われわれは信じておるのであります。(拍手)
われわれが以上のごとく申しますのは、次のような条約上または政治上の根拠によるものであります。南千島に関しまして、日本外務省は、従来、安政の条約、日露交換条約またはポーツマス条約等を振り回して、その固有の権利のあることを主張して参りましたが、これらの条約は、すべて、終戰後は通用しない古文書にすぎないのでございます。従って、われわれがここで問題にしなければならないのは、終戰後の諸条約でございます。終戰後の諸条約の取扱い方において、歴代の保守内閣は、遺憾ながら、次のような幾多の弱点を暴露して参りました。第一に、降伏文書受諾のときに、その中に示しておりまする暴力で取った領土とは一体具体的にどこどこをさすものであるかを、おそれをなして確かめなかった大失態がございます。また、日本国固有の領土四つの島以外の諸小島とは一体どこどこまでをさすものか、これまた確かめなかった手落ちを見のがすわけには参りません。(拍手)第二に、特にさらに重大なる弱点は、サンフランシスコ条約でございます。この条約の領土条項において、日本政府は、われわれの反対にかかわらず、唯々諾々として、南樺太、千島列島に対する一切の権利を放棄して、証文に判をついて批准いたしたのでございます。(拍手)また、同条約のうち、小笠原、沖縄の領土権をあいまいにごまかされたのも、これまた失態の一つであります。今日になって、外務省は、桑港条約中のクーリール島というのは北千島だけであって、南千島は含まないという解釈を下しておりますが、矛盾もはなはだしい。当時、桑港平和条約が国会において審議されましたときに、吉田内閣は、このクーリール島というのは歯舞、色丹以外の一切の島を含みますと国会で言明いたしまして、しかも、これが速記録に明瞭に残っておるのでありますから、おおい隠そうとしても国際的におおい隠すことのできない弱点であるといわなければなりません。第三に、このたびの日ソの交渉に当って、重光外務大臣は米英に救いを求めたのに対して、イギリスは、講和条約のクーリール島の中には南千島を含むことは明瞭であるという回答をよこしておるのでございます。また、アメリカですら、歯舞、色丹を含むかどうかということすら不明確であるという答えをせざるを得なかった。さすがに、アメリカも、ヤルタ協定の手前から、ソ連に対して南千島を主張せよと言い出し得ないで、日本に対しては、この問題の解決は後に譲って国際司法裁判所に提訴したらどうかというのが、アメリカの日本に対する提案だったではありませんか、このような条約上の弱点を、終戦後の保守内閣は、われわれの反対にかかわらず、次々と積み重ねておいて、ソビエトのみを相手として南千島の完全復帰をこの際要求することは、理の通らざるところであるとわれわれは考えますが、総理大臣の明快なる御所信を伺いたいのでございます。(拍手)
さらに、聡明なる総理にお尋ねいたします。これら諸島の領土権の問題は、ソ連にとっては、また同時に重要なる政治上の意味を持っておることは言うまでもありませんでしよう。日米安全保障条約のもとにおいて、これらの諸島を無条件に今日日本に返還いたしますならば、それは、そのまま日本に返したことではなく、アメリカに軍事基地を提供するという意味を持っておるのでありますから、従って、ソ連の側の政治判断といたしましても、日本がやがて真に独立と平和の政権が樹立できて、そして、桑港条約の改訂、安保条約の改廃によって米軍軍事基地の撤退を要求し、小笠原、沖縄の完全復帰を求めるという交渉と見合ってのみ、この北の二つの島の領土権復帰の問題はソビエト側から初めて考慮されるという、こういう政治的な判断を鳩山総理はどういうふうにお考えになっておられるか、この際率直に伺っておきたいのでございます。(拍手)
以上の条約上、政治上の諸事情を勘案いたしまして、さらにまた、国交回復を正式にこの際約しました今日においては、昨年の秋、自民党が党議として決定いたしました、南千島を無条件に事前に返還すしめることがソビエトとの国交回復のすべての前提条件であるという、全く動きのとれない党議を、鳩山総理はこの際根本的に再検討をする必要があると思いますが、御所見はいかがでございましょうか。(拍手)
次に、また、進んで総理にお尋ねいたします。領土問題に対する態度と重要なる関連を持っているのは、今後の日ソ間の国交回復のための交渉地と、国交回復の方式とでございます。今日、政府、与党の間には、ロンドンにおける平和条約方式を主張する者と、モスクワまたは東京における、いわゆるアデナウアー方式またはその中間の方式を主張する者との二つの流れがあるように、われわれは見受けます。平和条約方式は慎重派または反対派によって唱えられ、アデナウアー方式は早期妥結派によって主張されているかのごとくに見受けられておりますが、これは、論理的に考えまして、われわれは必ずしも相関、必然関係はないと思うのでございます。本来をいえば、この際領土問題について鳩山総理が決断をされて、割り切った態度をとられさえするならば、すでに松本全権によってたくさん進展いたしておりまする平和条約の正式な締結を完了して両国間の根本的な問題を一挙に解決するのが理の当然であると存じますが、総理のお考えはいかがでございますか。
ただ、総理自身、あなたがこの線に沿って党内や世論をまとめる力がないならば、平和条約方式はかえってじゃまになりましょう。そこで、あなたが立ち往生して、国交回復そのものを犠牲にしようとするならば、次善策ではあるけれども、国交打ち切りよりは、暫定協定による国交回復もまたやむを得ないというのが、われわれ社会党が先般発表いたしました鳩山内閣に対する助け舟であったのございます。(拍手)また、このたび河野代表がブルガーニン首相と会ったときに、ブルガーニン首相から領土問題について強い態度を示された河野代表が当惑して引き揚げ問題に言及したときに、そういうことで党内がまとまらないならばというので、君に教えてやるが、平和条約のほかにアデナウアー方式というものがあるのだよと教えたのは、ブルガーニンが自民党内部の党内事情を見透かしての提案であったのでございます。
さらに、アデナウアー方式によるとしても、総理の御意見を伺いたい。単に、西ドイツのごとく、抑留者の送還、大使の交換を約するのみでなく、国連加盟への協力、内政の不干渉、貿易協定の予約等をこれに書き加えることも可能でありましょうが、総理は果していずれの方式によって国交回復の道を選ばれんとするか、この際明確に伺つておきたい。
続いて、これと関連して、妥結の時期の目標についても伺っておきたいのでございます。ここで、領土問題について党内をまとめることなく、いたずらに便々として日を送りますことは、国際信義に反するのみならず、また、来年度の漁業出漁に対しても障害となるのでありますから、総理大臣は今日およその見当をつけたお考えを持っておらなければならない。もし、鳩山内閣が、今度の日ソ国交交渉再開を参議院選挙のスローガンとしてむなしく宣伝しながら、そのあと、また再び立ち消えとなるようなことがあるならば、これは、ソビエトに対してではなく、日本国民に対しても食い逃げをした、許すべからざる政治的犯罪といわなければならないのであります。(拍手)総理の決意を伺いたい。
次に、本年度の漁業に関して、河野代表に簡単にお尋ねいたします。日本の今年度の捕獲量は、日本の予定いたしました半分にも満たず、三千二百五十万尾ということで切られたのでございます。今日まで、あなたの手によって政府が許しました、しかも、それは、情実と因縁にからんで、無計画に、放漫に許しました母船、独航船、そのために、水産界は、この三千二百五十万尾ではとうてい採算がとれないというので、実は大きな不安と混乱を招いておるのであります。これは全く政府のでたらめな水産政策の重大なる責任であって、われわれはこれを追及しないわけには参らぬのであります。河野農林大臣の御所見と、さらに、この事態収拾のための今後の責任ある公正なる対策を示していただきたい。
さらに、今年度漁業における監視機関についてお尋ねいたします。今年度の監視機関はいかなる構成によるか。すなわち、監視の実行は両国おのおの自主的に行うのか、日ソ合同機関によるのか、またはソビエトの公務員のみによる一方的な監視を認めたのか、具体的にこの際伺っておきたいのでございます。
以上に関連いたしまして、重光外務大臣にお尋ねしておきます。日本政府は、これから出します漁業許可証に対して裏書きをいたすはずであります。先般赴任いたしましたチフヴィンスキー公使並びに狸穴のソ連代表部に対しまして、いかなる法的資格と権限を認めるつもりであるか。しかも、これは早く認めなければならない事態に立ち至っておりますが、いつ、いかなる形式で、いかなる資格において認めるつもりであるか。重光外務大臣の明快なるお答えを願っておきます。
続いて、河野代表にお尋ねいたしたいのは、あなたは帰り道にアメリカに回られました。そうして、ダレスとも会談をした。その内容について、ここで一言も発表しておられない。どういうわけでございましょうか。この際、その内容を明確に報告していただきたい。日ソ交渉について一々アメリカの意向を伺うということは、今日に至ってもなおかつアメリカに対する従属外交に甘んずるものであって、われわれの断じて承服し得ないところでございます。(拍手)
また、あなたは、アメリカの東海岸への出漁問題について話されたようであるが、その中で、日米加三国漁業協定による西径百七十五度以東についての出漁は、にべもなく断わられたようでございます。もし、しかりとすれば、元来、日米加漁業協定は、このたびの日ソ漁業条約よりもさらに苛酷なものであって、百七十五度以東の水域には日本の船は一そうも出てはいけない、一尾の魚もとつてはいけないというのでございますから、従って、これにならつて、李承晩ラインも、豪州のアラフラ海における宣言も、制限ではなく、ことごとく完全なる禁止の方針をとってきております。従って、ここで河野農林大臣にお尋ねいたしたいのは、この際近い将来に日ソ間の漁業条約が効力を発生いたしましたときには、直ちに日ソ米加を加えます四カ国の北太平洋における漁業会議を提案し、この会議により、または個別の交渉によって、この苛酷なる日米加三国漁業協定についてもその改訂を求むべきであると思われますが、御所見はいかがでございましょうか、伺っておきたい。(拍手)
私は、時間の都合で、漁業問題に対する質問は以上にとどめておきますが、最後に鳩山総理に一言申し上げて、その決意を伺いたいのでございます。
鳩山さん、あなたは、保守党の中では目に文字の多い方でありますから、中国の善人国を滅ぼすという名言を御存じでございましょう。善人国を滅ぼす。まことに含蓄のある言葉でございます。政治に必要なるものは善意ある知識と着想のみではない。より以上に必要なるは、この着想を実行する決断の力であるという意味でございましょう。あなたが、いみじくも、昨年日ソ、日中との国交回復を提案されましてから、すでに一年有余となった。あなたは、今、大死一番の決断をもって、日本の外交史に足跡をとどめる政治の大きな事業をなし遂げて日本の政治舞台を去るか、あるいは、優柔不断、ついに善人国を滅ぼすの汚名を着て消えうせるか、一にあなたの決断にかかっております。善人鳩山さん、国を滅ぼすか、しからざるか、最後のあなたの心中に秘める決意を伺つて、私の質問を終ることにいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/5
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006・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) ただいまの穗積君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/6
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007・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 穗積君が第一にお聞きになりましたのは領土問題であります。日本国民が日本国有の領土の返還を強く主張するということは当然の希望であります。(拍手)ソ連がこれに対しまして反対の考え方をしておるのも承知しております。どうにかして両国の見解の相違が調整せられることを欲しております。(拍手)
国交回復の方式につきまして、平和条約方式をとるのか、あるいはアデナウアー方式をとるのかというような御質問がありましたが、国交の回復は平和条約方式により行われることが通常であると思います。ロンドンの交渉もこの通常の方式で進められてきたものでありまして、ソ連側も何らこれに異議を唱えていなかったのであります。特別の事情がない限り、右方式を通じて国交を正常化いたしたいと考えております。今後について十分検討をいたすつもりでおります。
日ソ交渉の妥結の時期について、どんな腹がまえをしているかという御質問がありました。漁業交渉の結果に関するコミュニケの中にも、おそくも本年七月三十一日までに国交正常化に関する交渉を再開することが必要であることに同意をした旨述べられております。政府は、右によりまして、日ソ間の国交正常化のための交渉を再開する準備を進める覚悟でございます。(拍手)
日ソ交渉の見通しについて、時期についてお話がありましたが、これは私にはわかりません。(拍手)
中共との関係について、最後に御質問がありました。中共との国交調整は国際的視野に基きまして判断せらるべきものでありまして、中共が国際間の平和な一員として広く世界各国に設められる以前に中共との国交回復問題に乗り出すことは時期尚早であると考えております。(拍手)しかしながら、経済交渉を密にすることは非常に必要でありまするから、その道に沿うては、できるだけ努力をいたしたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣重光葵君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/7
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008・重光葵
○国務大臣(重光葵君) お答えいたします。
御質問の大部分は御意見の表示でありました。御意見のあるところは十分傾聴いたして、外交の運営に参考に供したいと思っております。(拍手)
なお、日ソ関係について、お前に認識不足はないかと言われます。認識不足のないように、せいぜい努力をいたしておる次第でございます。(拍手)私は、日ソ国交調整をはからんとするわが政府の従来の方針は決して間違っていないと考えおります。(拍手)
さらに、領土の問題について、日ソ交渉のことに関連して御質問がございました。この問題について、今日までの方針を何ら変更いたしておりません。将来交渉が再開する上はどう発展をするかということは、今日交渉開始前には明言することはできません。
最後に、ソ連の東京に派遣した派遣員の資格の問題の御質問がありました。これは、漁業問題処理のために必要なる地位は認めるつもりでございます。
以上。(拍手)
〔国務大臣河野一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/8
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009・河野一郎
○国務大臣(河野一郎君) ブルガーニン会談におきまして、領土問題についていろいろお尋ねがございましたが、これは、両国の取りきめいたしましたものをごらんになればおわかりの通り、領土問題について、私がブルガーニン氏と意見の一致を見るとか、また、ブルガーニン氏の主張に対して同意を与えるとかいうようなことでありますれば、ロンドン方式で話は進むことができるということになるはずでございます。しかるに、ブルガーニン氏の方から、ただいまも、どういうことか知りませんが、アデナウアー方式という話が出ました通りに、国交の正常化という言葉で言っておりますが、そういういずれかの方法によって両国の関係を調整して参ろうということを先方が言うておるくらいでございます。従って、領土問題は、ブルガーニン会談において、私がそれに対して同意を与えるとか結論を出すとかいうような大それたことを申すはずがないことは、御承知いただけると思うのでございます。(拍手)
次に、両国の交渉の妥結の時期でございますが、これは開始の時期を七月三十一日から始めることが適当と思うということで意見が一致したのでございまして、交渉でございますから、早くまとまるか、話が長引くか、これは私のわかるところではございません。なるべく早くまとまればけつこうと思いますけれども、これは交渉のことでございますから、そういうことの約策のあるべきはずもないと思うのでございます。
その次に、漁獲量の問題についてお話がございました。これは、ソ連側と日本側とは、第一、サケ、マスの一匹の大きさについても計算が違うのでございます。向うは遡河直前の魚のことでございますから目方がついております。こちらは海でとる魚でありますから目方が少いのであります。従って、向うは六万五千トンを三千二百五十万匹と計算いたしますが、われわれの方はこれを三千七百五十万と計算いたします。のみならず、この漁獲の水域につきましても、昨年と今年を比較するわけには参りませんので、われわれどもは、この水域を全水域の計算をして、目下、せっかく、適当に、ことしの漁業をうまく収拾するように対策を考えておる次第でございまして、この点については、お尋ねの点と、われわれどもの考えておりますところとは、いささか違うのでございます。どうかその点も御承知を願いたいと思うのでございます。
次に、監視の方法はどうするのかというお尋ねでございましたが、これは両国がそれぞれの国内法によって規定しておりまする点——わが国におきましては、それぞれの母船に監視員を乗せまして、これらに対して十分監督をいたすということにいたしておりまして、これはソ連との間に共同でやるとかどうするとかいうこと、この点については一言も触れておりませんが、もちろん、われわれは十分な監督をしていきたい、こう考えております。
次に、アメリカ訪問のことについて御意見がございましたが、これは非常に誤解があるのでございまして、御承知の通り、日米加三国の漁業協定の関係がございまして、昨年の秋に三国の漁業水産委員会がわが方に開かれました際に、今年度の漁業計画をこの委員会で説明をいたしました。説明をいたしましたにもかかわらず、今回の協定の結果、これを変更せなければならぬことになりましたので、一応この点について説明をいたしておくことの方が国交上妥当であろうという考えのもとに、この説明にアメリカに参った次第でございます。私はそういう目途においてアメリカに参りましたところが、たまたまダレス国務長官から会見の申し出がありましたので、私はこの会見の申し出に応じたのでございまして、私からダレス氏に会見の申し出をして何ら話し合いをいたそうということをいたしたのではないのでございます。その点も御承知を願います。
次に、日米加三国の漁業協定をさらに四国の協定にするような意思はないかということでございますが、そういうことは私は考えておりません。
大体、以上御答弁申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/9
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010・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 岡田春夫君。
〔岡田春夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/10
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011・岡田春夫
○岡田春夫君 私は、社会党と同じように、政府の反対党の労農党員として、鳩山内閣の今まで行われつつある政策、今後行わんとしている一連の多くの政策に対しては絶対に反対であります。しかしながら、今回モスクワにおいて行われた漁業交渉において、漁業条約並びに海難救助協定及びこの暫定協定が調印されたことについては賛意を惜しむものではありません。われわれは、この両条約の調印ということが国民の利益に一致しているものであり、しかも、国民の期待に沿うものである限りにおいて、われわれは賛成をしなければならないと思います。国民の最も強く要求しているのは、漁業条約を通じてすみやかに日ソの国交回復を締結することである。この国交回復の早期妥結の線があくまでも実現される限りにおいて、河野農相がモスクワにおいて交渉いたしましたこの過程のぜひともすみやかなる実現を要求するものであります。
われわれは、この立場に立って、時間も制限をされておりますから、主要な問題の二、三についてお伺いをいたしたいと思います。
まず第一に、この日ソ漁業交渉の基礎となるべき点について伺いたいと考えております。関係閣僚の御答弁を願いたいと思います。今回の漁業交渉は、去る三月の二十一日、ソビエトの制限措置が発表されて以来、いろいろな経過を通じて、ともかくも今日妥結に至ったのであります。このことは二つの国の間においていろいろな意見の相違があっても、もし両国の間において誠意を持って話し合いで交渉をするならば、この話し合いによって両国間の意見の相違は必ず妥結し得るということを明らかにしている。ここに、誠意を持って話し合うという、国家間における話し合いの外交の原則の正当性が、この機会において立証されたといわなければならない。重光外務大臣が今までとって参りました、力の政策に依存して平和を維持するという、このような政策が行き詰まって、今や平和共存に基く話し合いの外交の道が日本の国においても具体的に進みつつあることを、われわれは忘れてはならないと思います。今回の妥結は、この話し合いの原則に基いて、日本側が誠意を持って交渉したばかりでなく、ソビエト側もまた誠意を持って妥結のために話し合いをしたことを、われわれは忘れてはならない。しかも、農林大臣がソビエトにおります間において、先ほども御答弁があったように、ブルガーニン首相と会見をして、この間において、ソビエト側が日本との国交回復が望んでおること、そして、この国交回復については、ロンドン方式であろうとも、アデナウアー方式であろうとも、すみやかに妥結を望んでおり、この考え方に基いて漁業両条約の中に国交回復の条項が挿入されている。ソビエトが日本に対する国交回復を求めるのは、日本に対して戰争を求めていることではない。ソビエトが日本に対して敵対関係にあることを求めているのではない。国交回復ということは戰争状態の終結を意味する。ひっくり返して言うならば、平和の状態の持続を意味する。国交の回復は対日平和を求めているものであるとわれわれは考えている。河野農林大臣にこの機会にお伺いをいたしたいことは、ブルガーニン首相と会見をしたときに、国交回復を望んでいるソビエトの基本的な態度というのは、日本に対して戰争を求め、あるいは敵対関係を求めているものではなくて、対日の平和を求めているという点が明らかであったと思うのであるが、この点について農林大臣の率直な御感想を伺いたいと思います。
第二の点は、このようなソビエトの態度であるとするならば、日本の国内態度については、われわれは大きな転換をしなければならない。吉田内閣以来、今日の鳩山内閣に至るまで、ソビエトに対しては常に反ソ的な態度をもって終始した。あたかも仮想敵国であるかのごとき態度をもって、自衛隊を増強したり、渡航制限を行おうとしたり、このような態度をもって終始一貫してきた。われわれは、このときにおいて、日本における反ソ的な国内政策というものを改めなければならないときにきていると思う。この点は鳩山総理はいかがお考えになるのであるか。もっと具体的に伺うならば、反ソ的な態度として現われている渡航制限や、あるいはココムの制限というようなものは、この際撤廃をして、経済と文化の交流を積極的に進める政策を行うのが、現在日本に与えられている政策でなければならない、外交方針でなければならないと考える。のみならず、中国に対する態度に対しても、鳩山総理は、再三、必要があるならば周恩来首相との会見もあえて否定をしないということを言っているけれども、ほんとうに今申し上げたような平和共存の立場に立って日本の外交方針をきめるものとするならば、中国に対する国交回復についても、すみやかなる努力をする必要があると思うが、総理大臣はいかにお考えになっておるか。(拍手)
その次は漁業制限の問題でありますが、農林大臣は、出発するに当って公海上の漁獲制限などをして、乱獲などということはもってのほかだ、という考え方で御出発になつたように、われわれは聞いている。ところが、いよいよモスクワで交渉をしてみると、新聞記者団にあなたが発表しておられるように、ソビエト側は自分が考えておったよりももっと豊富な科学的な調査の資料も提供してくれたし、そうしてまた、自分たち日本側の知らないような資料さえ出してくれたのには驚いた、ということを言っておられる。こういう点を通じて、あなたが日本を出発する前において漁業問題を交渉する態度、そのこと自体が大きな誤まりであったことがおわかりになつたはずである。大体、日本のとっている公海自由の原則というのは、これは資本主義の初期における、いわゆる十九世紀的な思想の現われであつて、今日、公海上の漁獲制限の問題は、国際的な常識になっている。この点は何もソビエトばかりではない。カナダにしても、あるいはアメリカにしても、公海上の漁獲制限を認めているではないか。しかも、去る二十三日にジュネーヴにおいて国連の国際法委員会が開かれたときにおいても、沿岸の国は公海上の漁獲制限に対して特殊な利害関係を持つことが決定をいたしているのである。こういう点から見て、今や公海における漁獲制限は国際的な常識になっているのである。
そこで、私のいわなければならないことは、今までの水産政策というものは、公海自由の原則に基いて、沿岸漁業から沖合いへ、あるいは沖合いから遠洋漁業へという、遠洋第一主義に日本の水産政策が進められてきた。しかし、この水産政策が、公海自由の原則の修正によって、今や大きな転換をしなければならないところに立ち至っているのである。李ラインの問題にしても、日米加漁業条約の問題にしても、あらゆる面において、水産政策の再転換、再検討が必要になっていると思うのであるが、この点についてはいかにお考えになるか。そして、また、この日本の誤まれる水産政策によって、中小漁民並びに中小漁民と同様に漁業労働者たちが極端な苦しい状態に追い込められている。沿岸漁民は、アメリカの演習場のために漁をすることが許されなくなっている。そして、また、独航船は、今年だけは全部出られるとしても、制限が行われる。四十八度線以南の流し網、こういう漁業についても制限が行われる。六万五千トンの制限を河野農林大臣が大資本漁業のためにのみ使って、四十八度線以南の流し網漁業を犠牲にするということであるならば、われわれは断じて許すわけにはいかない。(拍手)私たちは、この点から考えて、この誤まれる日本の水産政策に基いて犠牲になっている中小漁民並びに漁業労働者に対する犠牲の補償を政府は行わなければならないと考えるが、この点については、いかにお考えになっているか。最後に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/11
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012・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 岡田君、申し合せの時間が過ぎましたから、なるべく簡単にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/12
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013・岡田春夫
○岡田春夫君(続) 最後に、時間が過ぎたので簡単に申し上げますが、国交回復を急ぐのならば、総理にお伺いしたいと思うが、なぜ今度の漁業両条約を今国会において承認をお求めにならないのであるか。この点について、いまだに閣議の承認もとれず、そして、今国会の承認もとらないということは、明らかに自民党の内部の対立を考慮してやっているにほかならない。(拍手)もし鳩山総理が真に日ソの国交回復をすみやかに妥結せんとすることを考えるならば、あなた自身が、身をもって、日ソの国交回復のために、自民党の中における反対派を切ってでも押し通していかなければならないはずである。(拍手)そして、また、みずから、あなたが、国交回復のために、陣頭に立って、妥結するように努めなければならないと思いますが、この点についての御意見を伺いたいと思います。
最後に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/13
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014・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 岡田君、なるべく簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/14
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015・岡田春夫
○岡田春夫君(続) 最後に、重光外務大臣に申し上げなければならないことは、あなたはこの国会の劈頭において外交方針の演説をされた。その方針の演説は、対米従属、力の政策を強行するということであった。しかし、河野農林大臣の手によって日ソの交渉が進められているということは、この力の政策の行き詰まりが具体的に現われて、平和共存のための外交政策が進みつつあることを現わしている。もはや重光外務大臣を守ってくれる者は明治時代の外交官以外にはなくなつたことを現わしている。(拍手)それならば、外務大臣は、この際、あなたがほんとうに男ならば、この状態に立って外務大臣をおやめになったらいかがでありますか。外務大臣自身、時代のずれを準備ができ次第、国会には必ずかけるわけであります。
〔国務大臣重光葵君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/15
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016・重光葵
○国務大臣(重光葵君) お答えしまはっきり自覚してやめられんことを私は望みます。この点について率直な御意見を伺いたいと思います。
以上、簡単でありますが、私の質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/16
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017・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 漁業交渉の根拠について御質問がありました。これは話し合い外交の政策の一つの現われではないかというようなことでありました。むろん、わが党が世界平和政策を政策の根拠としておることは、天下周知の事実だと私は思います。戰争をしないで平和政策の実現を期したいということは、私はたびたび国会において述べておりますから、この点について疑う人は私は少いと思います。
それから、中共との交渉についてお話がありました。ココムの制限の撤廃に努力をしないかというようなお話がありましたが、中共との通商はできるだけ緊密にしたい、増大したいということは、たびたび申しております。その障害となるココムの制限を撤廃したいのは日本の利益として当然のことでありまして、これは返事をする必要のない質問だと考えます。
第三は、国会になぜ早くかけないかという最後の御質問でありましたが、
御質問の中に、力による政策はやつてはならないというような趣旨のお話がございました。その通りに私は考えております。(拍手)私は、国会の劈頭におきましても、平和外交の推進ということを申して参りました。力の外交は、私はやつてはおりません。外交は話し合いによるべきであるというお話もその通りであります。話し合いによることが外交でございます。
それから仮想敵国なんぞは考えておりません。そんな観念を持ってやつてはならぬと考えております。(拍手)
〔国務大臣河野一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/17
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018・河野一郎
○国務大臣(河野一郎君) ブルガーニン氏との会談の中において平和を強く主張されたかというお尋ねでございましたが、これは一時間数十分会談いたしましたので、その間いろいろのやりとりをいたしましたが、要するに、両者の間に意見は一致いたしまして、両国の関係を正常化することが一番適当であろうというようなブルガーニン氏の御意見でございますし、われわれとしても、また、そう考える次第でございます。
第二に、水産政策を変更する必要はないか、もしくは、漁獲制限をして適当に規制をする必要があるのじゃないかということでございます。これはその通りに考えます。その通りに考えますが、さればと申して、わが方だけ一方的にむやみに制限をする必要はないということでございまして、これは、双方話し合い、関係国話し合いの上でその処置をとる必要があるというように考える次第でございます。
それから、四十八度線以南の漁船について云々ということでございましたが、こういう点については私ども全く同感でございまして、これら中小の漁業者に対しては優先的にこれを保護し、六万五千トンの割当についても深く考慮を払う必要があるということは、全く同感でございます。さよう御承知を願いたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/18
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019・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/19
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020・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) お諮りいたします。参議院から、内閣提出、繊維工業設備臨時措置法案が回付されております。この際議事日程に追加して右回付案を議題とするに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/20
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021・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
繊維工業設備臨時措置法案の参議院回付案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/21
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022・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/22
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023・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、参議院の修正に同意するに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/23
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024・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、日本国とフィリピン共和国との間の賠償協定の批准について承認を求めるの件を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/24
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025・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/25
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026・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
日本国とフィリピン共和国との間の賠償協定の批准について承認を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長前尾繁三郎君。
〔前尾繁三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/26
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027・前尾繁三郎
○前尾繁三郎君 ただいま議題となりました、日本国とフィリピン共和国との間の賠償協定の批准について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
フィリピン共和国は、昭和二十六年九月、サンフランシスコにおいて平和条約に署名したのでありますが、賠償問題が解決されるまでは条約の批准を行わず、従って、わが国との平和関係を回復しないとの方針をとりましたため、わが国としては、あらゆる努力を払って賠償問題の早期解決をはかるよう、フィリピン政府との間に交渉を重ねて参ったのであります。そして、この間、昭和二十八年三月、沈没船舶引揚に関する中間賠償協定を締結して賠償の一部に資することとし、さらに、その後、両政府間で、最終的の賠償取りきめを行うための折衝を重ねて参りました結果、本年三月、その大綱について意見の一致を見るに至りました。よって、直ちに協定文及び関係文書についての具体的交渉を開始し、双方が満足する案文を得ましたので、四月二十七日マニラにおいて仮調印を行い、次いで五月九日、高碕全権を首席とするわが全権団とフィリピン全権団との間で正式署名が行われたのであります。
この協定によりますと、わが国は五億五千万ドルにひとしい円に相当する役務及び生産物を二十年の期間内にフィリピンに提供することとし、その年割額は、初めの十年間に二千五百万ドル、次の十年間において三千万ドルとしているのであります。賠償の実施方式につきましては、毎年両国政府間の協議により実施計画が作成され、その範囲内で、フィリピンが日本に設置する使節団と日本人業者との間で直接に結ばれる賠償契約によって、フィリピン政府が役務及び生産物を入手することとし、わが国はその賠償契約の履行に要する経費を支払うことによって賠償義務を果したものとすることになっているのであります。そのほか、協定は、使節団に一部の外交特権を認めること、賠償契約の紛争の解決について最終的に日本の裁判所に提訴し得ること、協定の実施についての協議機関として合同委員会を設置すること等については、いずれもビルマ賠償の場合と大体同様に定められているのであります。
また、種々問題になりました経済開発借款に関しましては、一億五千万ドルを目標額とする民間の商業借款に対し、でき得る限りの便宜をはかることを交換公文の形で取りきめており、さらに、賠償協定の署名と同時に、両国の全権委員は両国が均衡のとれた貿易の伸張のため、貿易金融協定の改訂及び通商航海条約の交渉を早期に開始することを予期する旨の共同声明を発表しているのであります。
従って、この協定による賠償義務は、わが国に相当大なる負担を課するものではありますが、過去の戰争においてフィリピンに与えた莫大な損害に対し、わが国は、今回約束した賠償義務を誠実に履行することによって、両国間に友好関係を樹立し、さらに将来、政治、経済の各般にわたる協力、提携の実をあげ得ることとなるので、本協定は、究極において、わが国の利益に資するものであると思われるのであります、
本件につきましては、五月十七日に本院において重光外務大臣から発言があり、質疑が行われ、同日、本委員会に付託されたのであります。翌十八日から二十九日まで八回にわたり委員会を開き、重光外務大臣から提案理由の説明を聴取した後、高碕国務大臣から日比両国間の賠償交渉の経過について報告され、続いて、鳩山内閣総理大臣、重光外務大臣、高碕国務大臣、石橋通商産業大臣、一萬田大蔵大臣並びに政府委員に対し質疑を行い、また、産業界及び財界の代表者を招致して参考意見を聴取する等、慎重審議を遂げたのであります。
これら質疑のうち、特に重要な二、三の点をあげますれば、まず、委員から、政府は五億五千万ドルの賠償を約束したと言われるが、事実は、そのほかに二億五千万ドルの経済借款に関する話し合いにより、総計八億ドルの賠償を負担することになるのではないか、特にフィリピン側はさように了解しているのではないかとの質疑がありました。これに対して、政府側から、この経済借款は純粋な民間人間の契約であって、両国政府は、交換公文により、単に借款の提携を容易にし、促進することにいたしておるだけで、この借款ができなくとも政府の責任となるわけではなく、賠償協定のごとく、国家間の法律上の権利義務を定めるものではない、この点においては、フィリピン側においても何ら誤解はないものと信ずるとの答弁がありました。
また、委員から、今次五億五千万ドルの賠償は、わが国にとり、あまりにも過重の負担となるものではないかとの質疑があり、これに対し、政府側から、この総額は日本の財政から申して相当大なる負担であることはもちろんであるか、年々の負担額は二千五百万ドルとなっており、わが国現在の支払い能力としては耐え得られないものではない、ことに日本人の役務及び資本財を供与するものであるから、フィリピンの経済の発達に寄与することとなり、それがわが国にも利益あるはね返りが来たることを期待し得るとの答弁がありました。
また、委員から、賠償の支払いは、それだけわが国の正常の輸出貿易を減退し、貿易の不均衡を来たすおそれはないかとの質疑があり、これに対し、政府側から、賠償の支払いは、これを短期間だけを見れば、わが国の通常輸出に圧迫をこうむることとなるであろうが、本協定発効とともに実現する両国間平和の回復による国民感情の融和、さらに、近く期待される通商条約の締結等により、貿易の伸展をもたらすことは必至であるので、将来長い目で見れば、これを償って余りがあるものと信ずる、との答弁がありました。
〔議長退席、副議長着席〕
また、委員から、賠償の実施については、日本の業者が不当に高い値段で売りつけるとか、競争の結果投げ売りをするとか、質の悪いものを売りつけるとか、または贈収賄等の不正事件が起りやすいと思うが、その点はいかなる措置をとられるかとの質疑があり、これに対し、政府側は、この点については政府は細心の注意を払うつもりで、業者の選択につき、適当な者を推薦することができることになっておるので、十分な指導をしていきたいとの答弁がありました。
かくて、質疑終了の後、今二十九日討論に入り、日本社会党を代表して穗積七郎君から反対の意向が表明され、自由民主党を代表して愛知揆一君から賛成の意向が表明され、直ちに採決の結果、本件は多数をもって承認すべきものと議決いたした次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/27
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028・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。細迫兼光君。
〔細迫兼光君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/28
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029・細迫兼光
○細迫兼光君 政府は、フィリピンとの間の賠償協定に調印いたしまして、ここに、われわれの前に、その承認を求めております。これに対し、私は、日本社会党を代表いたしまして、この承認に反対をせざるを得ないことを、まことに遺憾とするものでございます。(拍手)フィリピン国との間の賠償協定をすみやかに締結いたしまして、両国間の親善友好を増進する糸口を作るべきことは、わが党の最も熱望しておるところであります。それだけに、ここに反対の意思を表明しなければならぬことは、わが党の全く遺憾にたえなく思っておるところであります。(拍手)
この賠償問題を論議するに当りまして、まず第一に、私は、日本社会党を代表いたしまして、フィリピン国民に対し、心からおわびを申し上げたいと思います。太平洋戦争において、わが軍隊によりフィリピンを侵略し、これによりまして引き起しました大きな破壊、また、そこにおきまして心なき軍人によって行われました多くのいろいろな悪いこと、これによってフィリピン国民に与えました大きな悲しみ、苦しみ、この大きな損害に対しまして、私はここに衷心より陳謝の意を表明いたします。
思うに、賠償は、国民の陳謝、謝罪の誠意の表われでなければなりません。十億ドルをもってしても、二十億ドルをもってしても、このフィリピン国民が受けました悲しみ、損害、これを慰謝するに十分とは申されません。そのことは、私もよく心得ておるつもりであります。それだからこそ、なお、賠償は、誠実に、確実に履行せられなければならないのであります。今われわれは多くの資源を失いました。国の財政は非常に縮小せられました。あまつさえ、間違つた再軍備によりまして、財政はいよいよ窮屈であります。一部の独占資本家層を除きまして、一般の国民の生活はまことに苦しいのであります。戦前においては、一般国民の生活におきましては、税金のことがあまり気にかからなかったのでありまするが、現在、一般の生活におきましては、税金のことがまず第一番に気にかかるというのが実情であります。われわれは、すでに多くの賠償支出をいたしました。これから先、また長きにわたって、ビルマに対し、フィリピンに対し、インドネシアに対し、ヴェトナム、ラオスに対し、年々賠償を支払っていかねばなりません。
大体、高碕国務大臣の説明によりますれば、国民所得の〇・六%、一億ドル、三百六十億円くらいは大丈夫だろうという説でございまするが、われわれは、まず未解決でありまする、前吉田総理大臣が軽々しくガリオア、イロアの援助を債務と心得てしまつたことから生ずるその重荷も、将来支払つていかねばなりません。これら、この先年々支払っていかねばならぬ金額は、およそ私は四百億円をこえるではないかと心配しておる状態であります。一般国民の生活は極度に苦しく、税金の負担は極限を越えております。私は、賠償協定が果して誠実に履行せられるかどうか、顧みて自信が持てないのであります。そうして、もし誠実なる履行が不可能に陥った場合における非常なる悪影響、フィリピンとの友好関係に破綻を来たすではないかということを憂えるのでございます。われわれが遺憾ながらこの協定にあえて反対いたしまするのは、ただに、軽ければ軽いほどいい、一文でも安ければいいという考えからではないということを、まず御理解願いたいと思うのであります。
もう一つ理解してもらいたいことは、われわれは決して政府の反対党であるという党派根性からこれに反対しておるものではないということであります。日ソ交渉におけるわれわれの態度を見ていただきたいと思う。保守合同以前におきまして、鳩山総理が早期妥結の方針に対して熱意を示されておりましたとき、私どもは党派を越えてこれを支持、激励する態度をとつておりました。また、現在におきましても、政府、与党の一部に、南千島返還ということを絶対な前提条件とするというような、ぶちこわし的な主張のあることを知りまして、これに警戒しながらも、しかし、鳩山総理の早期妥結、国交回復を早くという、その方針を堅持することに、われわれが激励的な態度をとっておることを見ていただきたいと思うのであります。われわれは、決して党派根性からこれに反対をしようとするものではありません。われわれが反対するのは、賠償協定の誠実なる履行に自信が持てないからであります。万が一不履行に陥った場合の、きわめて悪い結果を憂うるからであります。
なお、協定の内容について言えば、五億五千万ドル、二億五千万ドルという数字の出てきた数字的根拠が全く国民の前には示されなかったままで今日に及んでおります。これに対する国民の納得のいかない感じも否認できないのであります。また、多くの国々によって批准せられ、またフィリピンも調印しておりまするサンフランシスコ平和条約にうたわれておりまするところの、日本からの賠償方式は役務によるという、この基本的方式に対しまして、この協定が違った方式をとっておるということに対する国民の不満もおおいがたいものがあると思うのであります。(拍手)また、すでに、この席で、わが党の戸叶さんや、あるいは守島君によって指摘せられました多くの不満の点、あるいは不安の点がございます。たとえば、ビルマや、あるいはインドネシアとの賠償問題に対する影響、あるいは、すでに仮調印までした大野・ガルシア協定が今日こうした形に変つてきたところの経過の説明、これがきわめて不十分で、納得のいかないこと、鳩山総理が突如として軽々しく八億ドルで胸をたたいたことからこの協定が出発したというような経過、普通の貿易が、これは必然的に圧迫を
こうむるであろうこと、あるいはまた、外貨の事情に及ぼす非常な不安な影響、さらに、この協定ができ上れば賠償ブームが起るであろうというようなことがいわれておりますが、一部の独占資本家的方面では、この賠償に乗って不当な利益を得る、一般国民は、さき申し上げましたような苦しい生活を続けながら、税金の犠牲を払わなければならぬという、こういう片手落ちの状態が出ることの防止策について、何ら信頼すべき施策が表明せられていないこと、(拍手)これら、数え上げますれば、いろいろな不満な点、あるいは不安な点があることも、事実でございます。しかし、もともと、賠償は、さき申し上げましたように、謝罪の表現でありまして、それによってわが国の利益を企てるべき性質のもりではありませんから、これら利害得失の関係のものは、一切ここに私は目をつぶろうと思います。
繰り返して私が強調したいことは、賠償は陳謝の誠の表現でなければならぬということであります。陳謝の誠は、われわれの強い反省に基いて初めて生ずるものであります。しかるに、最近、政府、与党の中には、全く反省の片りんも見えない言動が現われておることは、まことに遺憾であります。(拍手)たとえば、清瀬文部大臣を筆頭とする考え方——大東亜戦争の功罪は後世の歴史家が決定するであろうというような、こうした言動が現われております。そうして、再軍備の増強へ増強へ。これでは、隣接諸国に対しまして不安と疑いを与えるのは当然ではありませんか。(拍手)全くもってのほかと申さなければなりません。(「議長、時間」と呼ぶ者あり)
最近、三笠宮は、その「わが思い出の記」の中で、次のように申しておられます。「私がここで言いたいのは、聖戦という大義名分が、事実とはおよそかけ離れたものであったこと、そして内実が正義の戦いでなかったからこそ、一そう表面的には聖戦を強調せざるを得なかったのではないかということである。こういう考え方を持つた当初は、少し極端かなとも思ったが、『暴戻なる支那軍』の鉄道爆破事件が、実は一部の幹部の陰謀によるとはいえ、とにかく『暴戻なる関東軍』のしわざであったことを知るに及んでは、もはや極端だと思わなくなった。」三笠宮は、なお続けて言っておられます。「最近またまた『のど元過ぎれば熱さを忘れ』たような議論が一部で行われているようだが、こういう話を聞くと私は背中に水をかけられたようにぞつとする。」……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/29
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030・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 細迫君、申し合せの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/30
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031・細迫兼光
○細迫兼光君(続) こうした三笠宮のような考え方の筋によって日本の政治が動いておるならば、あるいは、ビルマも、インドネシアも、フィリピンも、賠償は要らないと言ったかもしれないと思うのであります。(拍手)現在の日本の政治の動き方は返す返すも残念であります。
これを要するに、われわれは、利害関係は抜きにいたしまして、誠実なる履行に確信が持てません。ことに、これは協定の中には含まれておりませんが、民間の経済開発借款に関する交換公文による約束に至っては、全然その実現に確信が持てません。それは、実行ができなくても政府は責任がないという説明でありますが、そんな一時的な気安めのような交換公文の付随しましたこの協定、誠実なる履行の確信が持てないこの協定に、あえて賛意を表することのできないことを、重ね重ね遺憾とするものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/31
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032・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 愛知揆一君。
〔愛知揆一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/32
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033・愛知揆一
○愛知揆一君 私は、ただいま上程せられました日本国とフィリピン共和国との間の賠償協定の承認につきまして、自由民主党を代表して賛成をいたしたいと存じます(拍手)
私が本協定に賛成いたしまするゆえんのものは、この協定が妥結、調印を見るに至りましたその基礎に、日比両国民が過ぎ去った忌まわしき戦争の記憶を捨てて、互いに新しき理解と信頼の関係を打ち立てんとする善意が存在することを確信いたすからでございます。(拍手)去る五月九日に本協定の調印が行われました際、フィリピン共和国のマグサイサイ大統領は、この賠償協定の調印は日比両国の関係に新しき時代を画するものであるとの声明を発しておるのでございます。フィリピンの国民といたしましては、思うに、他国の戦争によって、罪なくしてその生命財産に損害と苦痛とを受けたのでありまするから、いかに膨大なる物的の賠償を受けてもなおかつ満たされぬものを感じても、無理からぬところと存ずるのであります。それにもかかわらず、今日では、フィリピン国民は、われわれ日本国民に対しまして、われわれが真に平和を愛好する国民として東南アジア諸民族と相ともに、アジアの繁栄、ひいては世界の福祉に寄与せんと望んでおる熱意を認めまして、すみやかにわが国と国交を回復して、正常なる外交、経済関係を回復し、相協力せんことを望んでおるのであります。私は、われわれ日本国民といたしましても、フィリピン国民のこの善意にこたえなければならないと存ずるのであります。(拍手)
〔副議長退席、議長着席〕
もとより、今後二十年の長きにわたりまして、総額五億五千万ドル、千九百八十億円というような賠償は、わが国経済にとりましては決して軽からぬ負担ではありまするが、あえて、フィリピン国民に対する誠心誠意の償いのしるしとして、本協定に基く賠償義務を負担することといたすべきものと私は存ずるのでございます。(拍手)また、いわゆる二億五千万ドルが純然たる民間借款と相なりましたことも、私は適当の措置と認める次第でございます。われわれ日本国民といたしましては、この際、この協定の締結を契機として両国間の経済提携を緊密にし、互いに有無相通じて両国民の福祉を増進し、思いを新たにして、アジアの発展と世界の平和に寄与するの決意を固むべきときと考えるのでございます。(拍手)
本協定の成立により、フィリピン共和国はサンフランシスコ平和条約に対する批准を与えるでありましょう。わが国は、ここに東南アジアの重要なる一国との間に国交の回復を見ることになるのであります。かくのごとく、東南アジア諸国との間に逐次正常な国交が回復し、友好と信頼を基礎に、相互の経済的な向上をはかり得るようになりますることは、大企業、中小企業を問わず、わが国経済に繁栄をもたらし、わが国民の雇用を増大し、生活水準を向上することに資するのはもちろん、東南アジア諸国民の経済振興を通じまして、広く世界人類の福祉に寄与するものと、私は確信するのであります。(拍手)
私は、社会党の反対の御意見を伺っておりますと、それは反対のための応対であり、また反対の弁解論であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
私は、以上の観点から本協定に賛成するのでございまするが、三つの点につきまして政府に対して要請をいたしたいと思うのであります。
まず、本賠償協定の成立が日比両民間の新しき親善関係の門出となることは疑いのないところでありますが、一たび協定を締結いたしました以上は、わが国としてこれが履行を誠実にいたさなければならないということでございます。これがためには、わが方におきましては、関係担当業者の誠実なる行動、不当な競争の排除、また、相手国の受け入れ態勢の円滑化等、適切な措置をとることが肝要でありまするが、これらの問題を、相手国の十分な信頼を受けつつ相協力して解決し、賠償の実施が両国の長き将来にわたり真の利益と友好関係をもたらすよう、政府は特に周到なる研究と特段なる配意をわずらわしたいのであります。
次に、わが国といたしましては、賠償によって役務や生産物を提供するのでありまするが、これがために、わが国の正常輸出が減少し、経済の縮小を来たす結果となることは、何としても避けなければなりません。この点は、賠償の額の多寡よりも、さらに大なる問題とも言い得る点でございます。幸いにして、賠償問題解決の基礎に存する両国民の意図が両国間の経済関係の拡大にあることは疑いのないところであります。すなわち、本協定の調印の際発表せられました共同声明において、両国間の貿易を均衡した基礎の上に拡大するため、すみやかに具体的措置を講ずべき趣旨が合意せられておるのであります。従って、私は、政府に対して、一日もすみやかに友好通商航海条約の締結、貿易支払協定の改訂等につきフィリピン政府と交渉を開始し、両国間の関係を正常化し、差別待遇を廃し、貿易拡大の道を開くため、特段の努力を払うべきことを要請するものでございます。
最後に、政府は、本協定に関する質疑応答におきまして、本協定の成立が他の求償国の賠償に影響を及ぼすものではない旨を明らかにいたしたのでありますが、この点はわが意を得たと申すべきところと存じます。今後の外交交渉上、さらに十分に配慮せらるべきことを、政府に対し希望してやみません。フィリピンは、今次の大戰におきまして真の激戰の中心となったのでありまして、その受けた損害と苦痛とは格別のものがあるのであります。五億五千ドルという多額の賠償義務をあえて負担せんとするゆえんも、この事実を前提とするがゆえであります。従って、フィリピンに認めた賠償額が他の求償国の賠償額に影響するようになることは、国民感情としても受け入れにくいところであるといわざるを得ないのであります。
私は、以上三つの点を政府に対し強く要望いたしまして、本協定に対する賛成討論を終りたいと存じますが、終りに臨みまして、マグサイサイ大統領を初めとして、過去四年間にわたり、困難なる事情のもとに、日比両国の親善関係回復のために不断の努力を続けられたフィリピン共和国朝野の関係者各位に対しまして心から敬意を表する次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/33
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034・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本件を委員長報告の通り承認するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。
氏名点呼を命じます。
〔参事氏名を点呼〕
〔各員投票〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/34
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035・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。閉鎖。
投票を計算いたさせます。
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/35
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036・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
〔事務総長朗読〕
投票総数 三百六十一
可とする者(白票) 二百二十七
〔拍手〕
否とする者(青票) 百三十四
〔拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/36
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037・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 右の結果、本件は委員長報告の通り承認するに決しました。(拍手)
本件を委員長報告の通り承認するを
可とする議員の氏名
阿左美廣治君 相川 勝六君
逢澤 寛君 愛知 揆一君
青木 正君 赤城 宗徳君
赤澤 正道君 秋田 大助君
荒舩清十郎君 有田 喜一君
安藤 覺君 五十嵐吉藏君
井出一太郎君 伊東 岩男君
伊東 隆治君 伊藤 郷一君
池田 清志君 池田 勇人君
石橋 湛山君 稻葉 修君
犬養 健君 今井 耕君
今松 治郎君 宇都宮徳馬君
植木庚子郎君 植原悦二郎君
植村 武一君 臼井 莊一君
内田 常雄君 内海 安吉君
江崎 真澄君 遠藤 三郎君
小笠 公韶君 小笠原三九郎君
小川 半次君 小澤佐重喜君
大麻 唯男君 大石 武一君
大久保留次郎君 大倉 三郎君
大島 秀一君 大高 康君
大坪 保雄君 大野 伴睦君
大橋 武夫君 大橋 忠一君
大平 正芳君 大村 清一君
大森 玉木君 太田 正孝君
岡崎 英城君 荻野 豊平君
奧村又十郎君 加藤 精三君
加藤常太郎君 加藤鐐五郎君
鹿野 彦吉君 神田 博君
亀山 孝一君 唐澤 俊樹君
川崎末五郎君 川崎 秀三君
川島正次郎君 川村善八郎君
菅 太郎君 木崎 茂男君
菊池 義郎君 岸 信介君
北 れい吉君 北澤 直吉君
北村徳太郎君 吉川 久衛君
清瀬 一郎君 楠美 省吾君
熊谷 憲一君 倉石 忠雄君
黒金 泰美君 小泉 純也君
小枝 一雄君 小金 義照君
小島 徹三君 小平 久雄君
小林 郁君 小山 長規君
河野 金昇君 高村 坂彦君
纐纈 彌三君 佐々木秀世君
佐伯 宗義君 齋藤 憲三君
坂田 道太君 櫻内 義雄君
笹本 一雄君 薩摩 雄次君
椎熊 三郎君 椎名悦三郎君
椎名 隆君 重政 誠之君
重光 葵君 島村 一郎君
首藤 新八君 正力松太郎君
白浜 仁吉君 周東 英雄君
須磨彌吉郎君 杉浦 武雄君
助川 良平君 鈴木周次郎君
鈴木 善幸君 鈴木 直人君
薄田 美朝君 世耕 弘一君
關谷 勝利君 園田 直君
田口長治郎君 田子 一民君
田中伊三次君 田中 正巳君
高岡 大輔君 高木 松吉君
高碕達之助君 高瀬 傳君
高橋 禎一君 高橋 等君
高見 三郎君 竹内 俊吉君
竹尾 弌君 竹山祐太郎君
千葉 三郎君 中馬 辰猪君
塚原 俊郎君 辻 政信君
渡海元三郎君 徳田與吉郎君
徳安 實藏君 床次 徳二君
内藤 友明君 中垣 國男君
中嶋 太郎君 中曽根康弘君
中村 梅吉君 中村三之丞君
中村 寅太君 中村庸一郎君
中山 マサ君 仲川房次郎君
永田 亮一君 永山 忠則君
長井 源君 灘尾 弘吉君
夏堀源三郎君 並木 芳雄君
楢橋 渡君 南條 徳男君
二階堂 進君 丹羽 兵助君
根本龍太郎君 野澤 清人君
野田 武夫君 野依 秀市君
馬場 元治君 橋本登美三郎君
橋本 龍伍君 長谷川四郎君
畠山 鶴吉君 八田 貞義君
鳩山 一郎君 花村 四郎君
濱地 文平君 濱野 清吾君
林 博君 原 捨思君
平塚常次郎君 平野 三郎君
廣川 弘禪君 廣瀬 正雄君
福井 順一君 福井 盛太君
福田 赳夫君 福田 篤泰君
福永 一臣君 福永 健司君
藤枝 泉介君 藤本 捨助君
淵上房太郎君 古井 喜實君
古川 丈吉君 古島 義英君
保科善四郎君 坊 秀男君
堀内 一雄君 堀川 恭平君
眞崎 勝次君 前尾繁三郎君
前田 正男君 町村 金五君
松浦周太郎君 松浦 東介君
松岡 松平君 松田竹千代君
松本 俊一君 松本 瀧藏君
松山 義雄君 三浦 一雄君
三木 武夫君 三田村武夫君
水田三喜男君 南 好雄君
村松 久義君 粟山 博君
森下 國雄君 森山 欽司君
八木 一郎君 山口喜久一郎君
山口 好一君 山下 春江君
山中 貞則君 山村新治郎君
山本 勝市君 山本 粂吉君
山本 正一君 山本 利壽君
山本 友一君 横井 太郎君
横川 重次君 吉田 重延君
早稻田柳右エ門君
否とする議員の氏名
阿部 五郎君 青野 武一君
赤路 友藏君 赤松 勇君
茜ケ久保重光君 飛鳥田一雄君
有馬 輝武君 井岡 大治君
井手 以誠君 井上 良二君
井堀 繁雄君 伊瀬幸太郎君
伊藤卯四郎君 伊藤 好道君
猪俣 浩三君 池田 禎治君
石田 宥全君 石橋 政嗣君
石村 英雄君 稻村 隆一君
今村 等君 受田 新吉君
小川 豊明君 大西 正道君
大矢 省三君 岡本 隆一君
加賀田 進君 加藤 清二君
春日 一幸君 片島 港君
勝間田清一君 上林與市郎君
神近 市子君 神田 大作君
川俣 清音君 川村 継義君
河上丈太郎君 河野 正君
木原津與志君 菊地養之輔君
北山 愛郎君 久保田鶴松君
栗原 俊夫君 小平 忠君
小牧 次生君 小松 幹君
五島 虎雄君 河野 密君
佐々木更三君 佐竹 新市君
佐竹 晴記君 佐藤觀次郎君
櫻井 奎夫君 志村 茂治君
島上善五郎君 下川儀太郎君
下平 正一君 杉山元治郎君
鈴木茂三郎君 鈴木 義男君
田中幾三郎君 田中織之進君
田中 稔男君 田原 春次君
田万 廣文君 多賀谷真稔君
高津 正道君 滝井 義高君
竹谷源太郎君 楯 兼次郎君
辻原 弘市君 戸叶 里子君
堂森 芳夫君 中井徳次郎君
中居英太郎君 中崎 敏君
中島 嚴君 中村 高一君
中村 時雄君 中村 英男君
成田 知巳君 西村 榮一君
西村 彰一君 西村 力弥君
野原 覺君 芳賀 貢君
長谷川 保君 原 茂君
原 彪君 日野 吉夫君
平岡忠次郎君 平田 ヒデ君
福田 昌子君 古屋 貞雄君
帆足 計君 穗積 七郎君
細迫 兼光君 細田 綱吉君
前田榮之助君 正木 清君
松井 政吉君 松尾トシ子君
松平 忠久君 松原喜之次君
松前 重義君 松本 七郎君
三鍋 義三君 三宅 正一君
三輪 壽壯君 水谷長三郎君
武藤運十郎君 門司 亮君
森 三樹二君 森島 守人君
森本 靖君 八百板 正君
八木 一男君 八木 昇君
安平 鹿一君 柳田 秀一君
山口シヅエ君 山口丈太郎君
山下 榮二君 山田 長司君
山花 秀雄君 山本 幸一君
横錢 重吉君 横路 節雄君
横山 利秋君 和田 博雄君
渡辺 惣蔵君 岡田 春夫君
久保田 豊君 小山 亮君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/37
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038・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第一、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。農林水産委員会理事吉川久衛君。
〔吉川久衛君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/38
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039・吉川久衛
○吉川久衛君 ただいま議題となりました、笹山茂太郎君外三名提出にかかる農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及びその結果について御報告申し上げます。
本案は、まず第一に、わが国の農林水産業施設が毎年災害により甚大な被害を受けており、しかも、その復旧事業がとかく遅延し、多くの仕越し工事を生じておる現状にかんがみまして、今回これらの施設に関する災害復旧事業を特に推進するため、緊急な災害復旧事業として政令で定めるものについては、政府はこれらの事業が三カ年度以内に完了できるよう、財政の許す範囲内において、国庫補助金の交付について必要な措置を講ずる旨を法文化し、もって施行者が迅速かつ計画的に工事を進め得る道を講じようとするものであります。
第二に、補助金返還の規定において、国が直接または間接に都道府県に補助した場合に、その年度に残額を生じたとき、当該年度の終了後、遅滞なく国に返還しなければならないことになっておりますが、工事の完成が、やむを得ない事情によって当該年度を越えざるを得ない場合には、その交付した補助金の残額は翌年度に事業を繰り越して施行する場合におきましては、その差額は翌年度の事業の終了のときに返還することに改正しようとするものであります。
本案は、自民党及び社会党各二名の議員の提案にかかり、五十二名の賛成署名を得て提出せられたものでありまして、農林水産委員会には去る四月四日付託になり、五月九日提出者を代表して笹山茂太郎君よりその提案理由の説明を聴取し、五月二十八日の委員会において、石田委員より、本案は質疑、討論を省略して直ちに採決を行うべき旨の動議が提出され、全員異議なく、直ちに採決を行なつたところ、全会一致をもってこれを可決すべきものと決した次第であります。
以上、御報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/39
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040・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/40
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041・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/41
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042・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案、機械工業振興臨時措置法案、右両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/42
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043・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/43
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044・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案、機械工業振興臨時措置法案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。商工委員会理事笹本一雄君。
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〔笹本一雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/44
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045・笹本一雄
○笹本一雄君 ただいま議題となりました、内閣提出、日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案、並びに、内閣提出、機械工業振興臨時措置法案につきまして、商工委員会における審議の経過並びに結果につきまして御報告申し上げます。
まず、日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案について申し上げます。
日本製鉄株式会社法廃止法は、昭和二十五年八月五日施行後、昭和二十七年四月十二日第一次改正を経て、昭和二十九年四月二十四日第二次の改正が行われ、この措置により、旧日鉄の第二会社である八幡製鉄、富士製鉄両会社が本年八月四日までに発行する社債と、明年八月四日までの日本開発銀行の両社に対する貸付金について、一般担保の効力が認められているのであります。八幡、富士の両社にこのような措置を認めました理由は、旧日鉄は、日鉄法により一般担保による社債の発行が認められていましたため、同社の資産については、数十年間全く工場財団組成に必要な措置が講ぜられていなかったことにかんがみ、旧日鉄の資産を引き継いだ両社に対しても、財団組成完了までの過渡的措置として、一般担保の特典を与えて参ったのであります。しかし、両社の工場財団組成は、引き継いだ資産がきわめて膨大であることと、手続が複雑なため、現在に至るも完了していないのであります。
一方、政府におきましては、現行の工場財団制度その他の担保制度は、主として不動産抵当を中心とするものであり、人的、物的諸要素が総合されて活動している企業体に対する担保制度としては不十分であり、かつ、工場財団組成の手続はきわめて複雑であるとの見地から、昭和二十九年第二次改正が行われる以前から、英国の浮動担保制度に範をとり、一般担保制度に関する一般法、すなわち、企業担保法案を研究して参ったのでありますが、何しろ、この企業担保法案は、わが国法制史上画期的な制度でありまして、なお各界との十分な意見調整を必要とせねばならぬ点がありますので、本国会に提出される運びに至らなかったのであります。
この企業担保法案が成立しますると、八幡、富士両社は当然その適用を受けるものと予想されまするので、この法律が制定されるまでの過渡的措置としまして、本廃止法をさらに改正して、一般担保制度を当分の間存置しようとするのが、本法案の趣旨であります。
本案は、参議院におきまして先議されました。参議院におきましては、本廃止法はあくまでも日鉄法廃止後の経過措置を定めたものであり、企業担保法とは切り離して考えるべきである、従って、八幡、富士両会社は早急に工場財団組成の手続の完了に努めるべきであるとの見地から、「当分の間」を二年延長することに修正して、本院に送付して参ったのであります。
商工委員会におきましては、三月八日、川野通商産業政務次官より提案理由を聴取し、五月二十五日、参考人を招致して、本法案並びに企業担保法案についての意見を聴取いたしました。審議の内容につきましては速記録に譲りますが、おもに、政府は企業金融の円滑を推進するために、現行の担保制度を根本的に再検討して、一般担保制度の法制化、すなわち、企業担保法の制定について格段の努力を払うべきであるとの立場から、熱心な質疑が重ねられたのであります。
五月二十九日質疑を終了いたしましたので、討論を省略して採決に付しましたところ、全会一致、参議院送付案の通り可決すべきものと議決いたした次第であります。
次に、機械工業振興臨時措置法案について申し上げます。
御承知のごとく、わが国の機械工業は、終戦当時壊滅的な打撃をこうむつたのでありますが、昭和二十四年には一応の立ち直りを見せ、昭和二十九年には、その生産は早くも戦前基準の二・六倍に達したのであります。しかしながら、戦前最高の昭和十九年に比べますと、まだ五〇%にすぎない現状であります。機械工業は、重要基幹産業でありますとともに、輸出産業としてもきわめて有望であります。すなわち、外貨手取り率、雇用効果がきわめて高く、また、東南アジア等、今後工業化の進展が予想される広大な市場にも近接しておりますので、わが国経済発展のために今後最も輸出増強をはかるべき産業であると考えられるのであります。
そもそも、わが国の機械工業は、戦前、軍需産業として急激に膨張した産業でありますので、現状においては設備が過剰であって、しかも、それらの設備はすでに老朽かつ陳腐化しているのであります。このような設備状態に加えて、狭隘な国内市場において、多種類寡量生産の過当競争を行わねばならぬ等の悪条件が錯綜しております。ために、機械工業界は、合理化したくても合理化できないというのが現状であります。従いまして、先進諸国の機械工業に比べて技術水準が著しく低く、輸出競争力も劣弱となっておりますので、有望な輸出産業でありながら、なかなか伸びがたいというのが、わが国機械工業の現状であります。
本法案は、以上のような状態を改善して、本来の実力を発揮せしめるために、とりあえず、現在最も合理化のおくれている基礎共通部門の合理化を強力に推進するために立案されたものであります。
本法案の要点は、第一に、通商産業大臣は、機械工業審議会の答申に基いて、機械工業合理化計画を立てることであります。第二に、政府は合理化のために必要な資金を確保することであります。第三に、通商産業大臣は、合理化計画推進のために必要があると認めるときは、公正取引委員会と協議した上、共同行為の実施を指示することができる等であります。
三月八日、川野通商産業政務次官より提案理由を聴取し、五月二十三日より審議に入りました。五月二十五日、特に参考人を招致して、本法案に対する意見を聴取いたしました。審議の内容につきましては、本法施行に際しての合理化計画、資金計画等につきまして熱心な質疑が重ねられたのでありますが、その詳細は速記録に譲ります。
五月二十九日質疑を終了しましたので、討論の上、採決に付しましたところ、全会一致をもって可決すべきものと議決した次第であります。
採決後、本法案に対する附帯決議案が小笠公韶君より提出されましたので、採決に付しましたところ、これまた全会一致をもって本法案に附帯決議
を付することに決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/45
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046・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/46
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047・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/47
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048・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、参議院提出、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案を議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/48
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049・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議
に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/49
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050・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。議院運営委員会理事長谷川四郎君。
〔長谷川四郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/50
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051・長谷川四郎
○長谷川四郎君 ただいま議題となりました国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案について、委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、今回任期の終了する参議院議員の秘書にも期末手当を支給することができるようにしようとするものでありまして、参議院の提出にかかるものであります。
委員会は、審査の結果、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
右、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/51
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052・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/52
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053・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/53
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054・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X05719560529/54
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