1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年三月十五日(木曜日)
午前十一時三十二分開会
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委員の異動
三月七日委員井上清一君及び榊原亨君
辞任につき、その補欠として小滝彬君
及び鹿島守之助君を議長において指名
した。
三月十三日委員鶴見祐輔君辞任につ
き、その補欠として斎藤昇君を議長に
おいて指名した。
三月十四日委員斎藤昇君辞任につき、
その補欠として鶴見祐輔君を議長にお
いて指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 山川 良一君
理事
鶴見 祐輔君
宮澤 喜一君
羽生 三七君
須藤 五郎君
委員
大谷 瑩潤君
黒川 武雄君
野村吉三郎君
梶原 茂嘉君
佐藤 尚武君
国務大臣
外 務 大 臣 重光 葵君
政府委員
外務参事官 法眼 晋作君
外務事務官
(公使) 木村四郎七君
外務大臣官房長 島津 久大君
外務省アジア局
長 中川 融君
外務省欧米局長 千葉 皓君
外務省条約局長 下田 武三君
外務省移住局長 矢口 麓藏君
事務局側
常任委員会専門
員 渡辺 信雄君
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本日の会議に付した案件
○理事の補欠互選
○国際情勢等に関する調査の件(日ソ
交渉等に関する件)
○外務公務員法の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/0
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001・山川良一
○委員長(山川良一君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。去る七日井上清一君および榊原亨君が委員を辞任せられ、その補欠として小滝彬君および鹿島守之助君がそれぞれ委員に戻られました。また十三日には鶴見祐輔君が辞任され、その補欠として斎藤昇君が委員となられましたが、翌十四日斎藤君が辞任し、鶴見君が再び委員になられました。
次にただいま御報告申し上げました通り、鶴見理事が一時委員を辞任されましたので、理事が一人欠員になったわけでありますが、鶴見君が再び委員になられましたので、成規の手続を省略しまして、この際委員長において鶴見君を理事に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/1
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002・山川良一
○委員長(山川良一君) 御異議ないと認めましてさよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/2
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003・山川良一
○委員長(山川良一君) それでは次に国際情勢等に関する調査を議題といたします。外務大臣に御質疑のある方は順次お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/3
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004・羽生三七
○羽生三七君 私のお尋ねしたい問題は、日ソ交渉関係のことですが、実はこの問題は、先般予算委員会で鳩山総理にお尋ねしたときにも申し上げたのですが、現にロンドンで交渉が進められておるようなときに、私どもがあまり立ち入ってこれに触れていいか悪いかということも考えたので、私どももずいぶん考えてあのときに発言したつもりです。またその内容については触れませんでした。そのとき鳩山総理に申し上げましたのは、私がこの問題についてお尋ねしたのは去年の七月二十六日でした。それからもう七カ月経過しているので、その間私ども、わずかに新聞のロンドンにおける各社の特派員の報道記事を頼りに、日ソ交渉の内容を知っておるというありさまであります。だからあまり長いことですから、ときにわれわれがこの問題をお尋ねしてもそんなに妨げになるとは思わない。また私いろいろ考えてみたのですが、また私がここでお尋ねしてみても影響がありそうな段階ではないと思う。考えてみると決定的なところにきて何か新聞報道では奇跡が起らない限りむずかしいのじゃないかという説をなしておる向きがある。そこで近く松本全権も場合によったら自然休会で帰られるのではないかというようなことも流布されておるし、一体どうなっておるのか決裂もなければ妥結もないというような中間的な形態というのは一体どんなものか。そんなことも予想されておるようですが、一つこの機会に何か一応の現状なり見通し、それから決意、そういうものを一つ承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/4
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005・重光葵
○国務大臣(重光葵君) この交渉の内容につきまして、ある程度詳細にお答えするのには、少し準備を私は要します。一々書き物について申し上げる必要もあろかとも思います。が、しかし今のお尋ねのことは大体の状況をお尋ねになったように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/5
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006・羽生三七
○羽生三七君 大体でよろしいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/6
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007・重光葵
○国務大臣(重光葵君) これは私の記憶で、今私の頭にあることでお答えができるように思いますから、それで、そういうことで一つ御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/7
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008・羽生三七
○羽生三七君 それから途中ですが、いつ幾日、どういう所でどういう交渉があったということはよろしいですから、大体最近の事実に基いて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/8
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009・重光葵
○国務大臣(重光葵君) それを申し上げます。それを申し上げられないことは少しもございません。そこでむろん交渉についてはいろいろな項目があったということは、これは前から御説明を申し上げた通りであります。項目としては一番重大な問題としては引揚者の問題でございます。これは交渉とは別個にでも離れて日本側が強く主張するのであるということは、もう初めからの方針であることはこれは御存じの通りであります。この皆さん方の御意見も、そういう意見がずいぶん出たのです。それを参照もいたしましたのでございますが、それはあくまでこれは主張しなければならぬ、これは今日まで変りはございません。そうしてそれについてはソ連としてはこの平和条約ができたらば全部解決しようという態度であるということもお話をした通りであります。しかしこの引揚者の問題は平和条約は関係がなく、人道問題として取り扱うべきものであるから、条約ができないでもその前でも解決をしてもらいたい、少くともいろいろ考慮をしてできるだけの処置をとってもらいたいということは日本の強い、かつまた変らざる主張でございます。そうして今日でも松本全権は機会あるごとにその問題を持ち出しております。そうしてその点についてソ連の態度は今申し上げた通りであります。通りでありますけれども、それならば全部、そういう引揚者の問題は一切かまいつけないのかというと、ソ連もソ連としてはできるだけのことはしようということでいろいろ、たとえばこういう在留者はこれだけいる、これに対するこの状況はどうなっておるかというようなことをリストを出してこちらから要求しております。最近は厚生省関係者も向うにやって、そして松本全権と協力して、そうして日本側で正確なリストを出してそしてこれを調べてくれ、そして最近はいろいろ待遇の問題も一つ改善してもらいたいというようなことを申し入れております。そしてこれにつきましてはソ連の調べはこうであると言って、ある時期に向うの調査のことも返答してくれたこともあることは発表いたしましたし、御存じのことでございましょう。またその後もそういう態度をとっておりますから、これが全然、平和条約ができなければ全部の問題について取扱いを拒否するのだという態度では私はないと思います。そこで少しでもこれは改善をするように、また日本側の希望が達せられるように努力することは当然のことでありますからそうやって進んでおります。けれども全体の問題としては、この平和条約ができればすぐ解決するのではないか、こういう態度であることは従来御説明申した通りでございます。
それから大きな問題は領土の問題であります。これはちょっとあと回しにして、領土以外の問題で、たとえば通商の問題、それから漁業の問題、それから賠償請求権を放棄するというような問題等がございます。それから大きな信義の問題として、国際憲章は互いに遵守しようじゃないか、それから無論戦争状態はこれで終結するのだというようなことです。それから戦前の条約の効力の問題がまたございます。こういう問題を一々検討をする。それから紛争が両国の間に起った場合にはどう処理するかという問題がございます。それからまた内政不干渉の原則も議論をいたしております。こういうような交渉の対象となる項目がずいぶんございます。それをずっとやって来ておったのでございます。やって来ておったので今日の大体の経過から申しますれば、領土問題以外についてはずいぶん話が進みました。問題は結局領土の問題のようでございます。そこで領土の問題についてはいろいろございますし、これは主権に関係する問題であります。これと同じカテゴリーの問題で、海峡通過のソ連側の要求の問題がございます。日本の主権の下にある海峡の通過の問題等、もしくは国際海峡の通過、対馬海峡のごときそれであります。そういう問題について日本側の態度は、御承知の通りに将来長く主権を拘束されるような約束はこの際一切できない、こういう態度でございます。そこでこれはソ連が日本の態度を認めるかどうか。あくまでも将来のそういう問題について、約束を日本から取りつけるということを固執するかどうかに帰着するのでございます。これは日本の態度はさような将来の主権を拘束するようなきらいのある問題は、これは承諾することはできぬという態度は終始一貫変らないのでございます。領土の問題は南千島、歯舞、色丹、南樺太、千島群島の問題、南樺太、千島群島は御承知の通りこれはソ連だけでなくて、国際的の条約に、日本は他の国との条約にもこれは関係を持つ問題でありますから、これは国際的に解決をしようじゃないか、他の国の承諾も取りつけなければならぬ、むしろこれらの国と相談をして決定しようじゃないかという立場をとっております。これは一口に申せば国際的に解決しようじゃないかという態度をとっている。これはそうしなければならぬと考えておるわけでございます。それから南千島の問題は北海道に直接接属しておる島であり、そしていまだかつて日本の領土でないということを争われた島ではない。歴史上にこれはソ連も千島樺太交換条約、明治八年でしたか、その条約にもはっきりそういうような対象にならなかった島である。しかも地理的関係からいえば日本の本土、すなわち北海道に直接しておる島であり、日本としては北海道の一部と考えておるのみならず、ここに住んでおる人は戦争直前には一万人以上もおりました。それは日本人である、日本人以外は住んでいなかったということを顧みても、これは日本が当然返してもらうということを要求するのは理由がある、こういうことで今要求しておるのであります。また歯舞、色丹の問題については、全然これは北海道の一部であるという議論も強いのでありまして、歯舞、色丹は日本にソ連側は譲渡するというようなことには異存がないというふうに言っております。しかし日本としてはそれは譲渡ではないのであって、今度戦争を終結する機会に、その帰属をはっきりきめるという問題で、譲渡というような考え方は受けるわけにはいかぬのでございます。そこでソ連としては南樺太、千島、南千島は無論のこと、歯舞、色丹もこれはソ連がもう過去の条約関係からいってみてもこれはソ連のものだ、こういう建前をとっております。ここに領土問題について解決のできない二つの主張が対立しておるわけでございます。そこでさようなことでありますから、この交渉はどこまで参りますか、今のところでは領土を含めた全部の問題を解決するというところまではなかなか進みかねておる状況でございます。合意のできる問題は十分合意に達するように努力いたしておりますが、どうしても合意のできぬ問題はこれは合意できぬということを明らかにするよりほかにしょうがございません。その上で処置をするということになりますが、一時交渉は休むということもこれは考えられないことではございません。そういう問題についていろいろ国内的に双方とも考える時間を要しますから、まあさような今状態に相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/9
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010・羽生三七
○羽生三七君 そこで実は大臣が今お答え下さったことは、依然として私の質問の出発点にあるような気がするんです。それはくどいようですが、私どもが去年以来こうやって質問を差し控えておったのは、何かじゃまになってもいけない、交渉の妥結のすみやかなることを希望はするが、しかもまた日本にとって好ましい妥結であることを希望するけれども、何かじゃましたようでもいけないから私ども遠慮しておりましたが、しかしこれは私、鳩山さんにも申し上げましたが、こんなことは必ずしも意味のあることではないけれども、ずうっと日清戦争、日露戦争、それからヴェルサイユ平和条約等、この種の戦争終了後の講和会議の始まるときから妥結に至るまでの期間というものを一応調べてみたのですが、実にみな早くできておる。一番長いものでも数カ月、短いものでに一カ月かそこらでみな締結しております。そのときだってもちろん領土問題があったわけですね、だから今でも私はそういうことがあったからといって、決して拙速を尊べとは言わないし、日本がどうなってもいいとか、百パーセント日本の主張は譲っていいとか、そんなことを私言うわけでは全然ございません。しかし去年の七月以来この問題を取り上げてきてお尋ねするのも、私どもしびれを切らしておって、やっときょう久しぶりでお尋ねするわけです。しかも私がこれをお尋ねしても、全然そんなことで日ソ交渉の妨げにも何にもならないほど、新聞によればもういよいよこの主張が違っているということが明確になって、奇跡の起らない限り妥結はなかろうという明確な報道すら伝わっているんです。そうでありますから、これは条約上の問題よりもむしろ何といいますか、この妥結の方式なり、それから鳩山内閣の政治的な責任とか、むしろそういう方面に問題のウエイトがずうっと私は傾いてきたと考えている。そこで両国が、この間の再開になってからの話し合いでは、国交の正常化の熱意は日本も相手方も少しも変らない、それを確認し合いながらもなおかつ妥結に至らないということは、一つはやはり交渉の方式をもう一度考え直す必要があるんじゃないかということが一つ。それからもう一つは、今のお話でいくと相手方が百パーセントの譲歩をしない限り妥結はしない、おそらくソ連もやはり日本の徹底的な妥協がなければ妥結はしないといっている。これではこの交渉は妥結は困難になる。だから私は拙速とか、どれだけ譲ったらいいとかそんなことを言うんじゃのですよ。しかし外交というものはある程度話し合いでどこかに妥結点を見出さなければ、この結論というものは出ないと思うんですが、絶対こっちの主張以外のものはもうないということになるならば、もう先は見えているような感じがするのですが、一体この辺は、それじゃまたかりに自然休会みたいな形になっていってだらだらと、また極端なことを申し上げますが、六月の参議院選挙なんかとも若干関連があるように新聞報道にもあるんです。私はこの前鳩山さんに申し上げましたが、そういう内政上の、しかも政党の党内事情に関連させるべきでは断じてない。そういうことを主張してきたのでありますが、そうすると鳩山さんは、場合によっては政治責任をとると言われましたが、今は自然休会でまだ根本的に話し合いはつかなくても話し合いの過程でありますといったら、これはいつまでたったって政治的責任も何もありはしないし、私は非常におかしな段階に来ておると思うのですが、重ねて、交渉の技術的な内容の問題はとにかくとして、あまりにも長過ぎるということ、それで実際話し合いということがあるのかどうか、百パーセントお互いに譲り合わぬということであくまでやるのか、それから今の国内政治との関連、政治的責任との関連、そういう問題について一つ外相の御見解を伺いたい。
それからもう一つ、ちょっと初めに申し上げましたけれども、この交渉の方法をもう一度検討するお考えはないかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/10
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011・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 外交問題に対していろいろ御配慮をいただいた上の御質問であることを私十分感謝いたします。今私が申し上げたことは今日までの経過でございます。経過の大要でございます。これは新聞なぞを読まれて得られた知識からみれば、あるいは目新しいことは一つもないじゃないかと、こう言われるのだろうと思いますが、しかし実は私がこの交渉の内容を申し上げる自由は持たないのであります。持たないのにもかかわらず、今日はこういう程度のことは申し上げても相手国に対して不信にもならないし、また当然私は説明しても差しつかえないと、こう信じて今申し上げたのでございます。さようなことについて、この一つの項目についてもずいぶん時間を要しました。そういうわけで申し上げられるだけのことを私は申し上げたつもりでございます。その点は御了解を願いたいと思います。
さて、この交渉があまりにも長くかかるじゃないか、いろいろ交渉の短かかった例も言われました。しかし長い例も私はたくさんあると思います。それじゃ長く交渉がかかるから早く切り上げてこれはもう妥結さしたがいいとか、またこちらが主張を撤回してそうして早くまとめた方がいいということになると、これはまた別問題で、大きな問題になるのです。そういうふうに長くかかっても、主張すべきこちらの主張は、まげられぬ主張はまげんでいくということにしなければならぬと私は思う。いつかは通り得る、正当な主張ならば通り得るとこう考えるのでありますが、しかしそれは国の利害を大局及び小局上から判断して、私は譲ることは譲って差しつかえないと思っております。妥結に導くように努力をしなければならぬということは私はそう考えます。考えますけれども、ただ長く続くから早く譲るがいいという議論には賛成できません。御質問もそういう御趣旨でもなかったのですが。そこで重要な問題については、時をかけて、そうして向う側も今はまげられぬという主張も、またいろいろ研究してみ、また時がたつに従ってあるいは時が解決するということになり得ないとも限りません。これは国交調整の実例ではございませんが、ソ連革命があって全然国交も何もなかった。そのうちに国交を回復する日ソ基本条約というものをこしらえました。これはまあこの問題の初めに出ましたように四年半もかかっておる。容易なことではございません。私はそれに関係をしないこともございませんでしたが、なかなか容易なことではない。そこで今日半年以上もかかっている、長いのでありますが、それかといって、今見切りをつけるということは私にはできんのです。そこで今お話の通りに、交渉方法を変えたらいいじゃないか。それはどういう交渉方法があるかということは、これは目的を達するためには検討しなければなりません。検討しなければなりませんけれども、それならばほかにいい方法があるかです。私は今ほかにいい方法があるということを考えつかぬのであります。それは日本が譲歩するという考え方ならばどういうことでもできますが、向うに対して譲歩してもらいたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/11
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012・羽生三七
○羽生三七君 いや、鳩山さんの考え方はどうですか。一月二十六日の記者会見の、戦争終結宣言でやるというあれも一つの方法じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/12
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013・重光葵
○国務大臣(重光葵君) それは私は解決にはならぬと思うのです。総理も、だんだん私は聞いてみると何も解決しないで戦争終結を宣言して、そうして国交を開くという考え方は自分はなかったのだ、こういうことをその当時においてしばしば説明をして、私もその説明をはっきり受けたのであります。それだから、それはまあ鳩山総理の意見ではなかったということを御承知を願って、鳩山総理の意見でない、そういう別の意見、方法があるじゃないかというお話になるわけでありますが、それは戦争終結の宣言をいたしまして、そして国交の一応の回復をやる、こういういわば西ドイツの方式とでも申しますか、そういうことがあるということは事実であります。しかしそれは日本が領土問題その他をすべて譲るという決意ができなければ、私はそういう方法は持ち出すというわけにはいかぬと思います。というのは、ソ連は領土問題その他持っておるのだから、これで戦争は済んだのだ、国交も回復するのだということになれば、永久にこの状態を認めるということになります。それよりも、時間をかけても、まだまだ望みを捨てないで、これから日本が不誠意なことなら別として、もし正当と日本国民が信じているならば、それは維持していって、それが実現を他日に待つということも一つの考え方だろうと思います。だから時が長くたつから、いらだってそれを早くまとめよという、そのまとめるのも先方の態度の緩和によってまとまることなら、これは歓迎しなければなりません。しかしそうでないとするならば、わが方だけに一方的に譲歩といいますか、態度を緩和してこれをまとめるということならば、今日領土問題以外のその他の問題については、実は互譲妥協の結果、だんだん進んで参りました。向うの言い分だけでもございません。こちらの言い分だけでもございません。だんだん進んで参りましたが、領土の問題はなかなかそういうわけにいかぬのが、私は今日の日本としても、国内の世論から見て、これはよほど困難なことであり、いま少し時をかけなければならぬ。ソ連側もそうです。そう考えるのも私はやむを得ないことじゃないかと思っておるのでございます。そうですから、決して日ソ交渉において日ソの国交回復ということをないがしろにするということは私は絶対にいかぬと思います。それですから、これは双方努力をするということには異存もなし、またそうなければならぬと思いますが、無理に今日日本が妥協して譲歩してこれをまとめなければならぬとかいうことでなくして、他日の機会をまた待つということも一つの考え方である、こういうふうに考えるのでございます。これはこういう点において、おそらく、私は、今日まで承知しておるところの、また国会内の議論を伺ってみますと、非常に社会党のお考え方と、その点において異なるものがあると思います。これは御意見の差になります。御意見の差になりますが、私どもの考え方も、また私どもの相当な考え方として御理解を願わなければならぬように考えます。私は決して社会党の諸君のお考え方を、それは全然そういうものは意味をなさぬものだと、こう申し上げるわけじゃございません。われわれと考え方を異にされておる部分が相当あるんじゃないかと思います。これはやむを得ないことでございますが、しかし私どもとしてはさような考え方でおり、また決定は何もしたわけではございませんけれども、今の状況は、なかなか領土問題、主権に関係する問題は、妥結することはなかなか困難であるということを御報告申し上げる程度にとどめたいと思います。十分に一つお考えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/13
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014・羽生三七
○羽生三七君 もう一点だけでやめておきますが、私は日本の主張は全部譲ってしまって、言いなりになれということを言っているわけじゃなし、またどんな場合でも、拙速でもいいと絶対に申しているわけじゃない。私はどうしても百パーセント向うが妥結しない限り、道がないんだというならば、やはりその方法を再検討する必要がある。しかもお互いに国交回復の熱意を持っていることならば、方法そのものから考えて、領土問題はあらためて他の機会に検討してはどうかと考えておりましたか、しかしこれは議論になり意見の違いにもなりますから、これ以上は申しませんが、どうなんですか、こうやっていって無限に長びく、それは三年も五年もというばかなことはないけれども、一体めどもなしにこれはどこまでいくやらという気がしますが、まあ自然休会にでもなってしまうというようなことで、国内的に見れば、一体政治責任はどうなるのかわからぬような、全く奇怪な状態に入るんじゃないか、この点だけお答え願って、私はこの問題に関する質問をやめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/14
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015・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 特にソ連とのこういう交渉でございますが、そういうことは今度まとまらぬで永久にめどがつかぬじゃないかというふうには私は感じません。これはやはり国際情勢の大きな変化ということも常にあることでございます。あるいはまた国の内外に対する変化ということもあることでございます。ソ連はむろんのこと、こちらもそうですが、将来は、決してこれが妥結を絶対に見ないんだという考え方は、私はどうしても受け入れることはできません。それから、それはまたいろいろ努力をしていけばいろいろな道がつくということも考えられるのでありますから、そう私は思い詰める必要はないと思う。そこで政治的責任を言われる。政治的責任は、すべてのことについて問われて差しつかえないと思います。私どもがこういう工合に国としてこの交渉をしておるそのことについて、責任は持たなければいかぬ、その結果についても責任はとらなければいかぬ。しかしそれが今そういうことになったからすぐ政治的責任を、そうですがそれじゃお前が、政府がとるから……。そういうふうな責任のとり方なら、何と申しますか、簡単ではありますが、相当幼稚なように私は思う。責任はとらなければならぬ。国家のこれだけのことをどんどん進めていく責任もとらなければならぬ、交渉の責任もとらなければならぬ。無論そうです。しかしながらそれが行き詰まって一時延期なら延期で自然休会に押し詰めるということになっても、それはそれに対する責任は無論とらなければならぬと私は思うが、それが何というか、国会の責任問題としてこれを取り扱うべきであるかどうかということは、これはまた別の問題として一つ考えなければならぬと思います。私ども当局者として今日まできちんと掲げた方針のもとに全力を尽して参りました。行き届かぬ点はそれはずいぶんございましたでしょうが、自分としては……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/15
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016・羽生三七
○羽生三七君 私は質問じゃなく、意見だけ一つちょっと簡単に。私の政治的責任と言ったのは、今度自然休会に入るときに議会で責任をとるとか、そんなことを言うのじゃない。そんなことを考えておりません。またそういう性質のものじゃない。ただあまりにこの自民党は、これは党内の問題に関係し過ぎると思う。そんなことはないとおっしゃるけれども、私は関係あると思う。特に参議院選挙に関連さしたり、あるいは確かに旧自由党系と、旧民主党系……、芦田さんのような方もおるし、とにかく中がまとまっておらぬから、そういうこともこの交渉の運び方に非常に大きな関係がある。そういう全体の意味で、いろいろな意味の責任があることを申し上げたのであります。さっき大臣が言われたような意味の責任、もし追及があるとすれば、まだ少し先の時間の問題でしょうが、それはまたそのときにしまして、きょうは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/16
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017・山川良一
○委員長(山川良一君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/17
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018・山川良一
○委員長(山川良一君) それでは速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/18
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019・須藤五郎
○須藤五郎君 今、羽生さんの日ソ交渉に関しての質問がありました。私の大体質問しようと思った点を羽生さんはされたわけですが、先日鳩山さんが予算委員会におきまして、この領土問題を解決するかぎは、やはり戦争の危機をなくさなければならぬという、それが領土問題を解決するかぎじゃないだろうかという意味の発言をしていらっしゃったと思うのです。これに対して外務大臣はどういうふうな見解を持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/19
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020・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 私はその言葉はよく今記憶しておりませんので、ちょっとお答えすることができません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/20
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021・須藤五郎
○須藤五郎君 それじゃその言葉としなくても、領土問題を解決する一番いい方法は、結局日本が戦争の危機というものを、戦争の危険というものを直していくということが、この領土問題を解決する一番いいかぎではないか、そういうふうに私は考えるのですが、それに対する外務大臣の見解はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/21
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022・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 領土問題に対する日本の主張は、もうすべて出しておりますから、その主張によってやって参っておるわけであります。戦争を回避するということは無論必要でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/22
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023・須藤五郎
○須藤五郎君 いや、戦争の危機を、危険をなくするということ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/23
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024・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 危険をなくするということも無論考えなければなりませんけれども、それは今直接の領土問題の交渉の議論にはそう関係は……。直接の関連をさして議論をしているわけでは、ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/24
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025・須藤五郎
○須藤五郎君 これはもう古い話になりますが、私たちが昨年ソビエトを訪問してブルガーニン、フルシチョフに会ったときの印象からいたしましても、歯舞、色丹は北海道に接近しておるから考慮しようというような意味の話もありました。しかしその中に、すべての問題はとにかく日本と現在戦争状態の間ではいろいろの困難な問題は解決がしにくいのだから、戦争終結宣言をして、外交官を交換した上で話し合いすれば、すべてお互いに了解のいく話し合いができると思うし、そうしてソビエトもその準備をしている、用意をしているのである。ここで問題なのは、日本が戦争状態を終結しようというソビエトの呼びかけに対して、これこれの条件を入れなかったら、その戦争終結宣言の要求にも応じないのだという態度は、これはソビエトの面子をそこねる問題ではないか、ソビエトの面子に関する問題だということをそのときはっきり言っておるわけであります。そして重ねて、ソビエトは何ら日本の面子をそこねるようなことをしていないではないか、だからこういう状態では話し合いができないのだから、ソビエトの提案は何ら無理のない提案と思うから、どうでしょうか、日本はこれを受け入れて、その上でお互いにいろいろな点で話し合おうじゃないか。こういうことをソビエト首脳部がそのとき言ったと思うのです。ですから今、羽生さんが言ったように、方法をかえようかという問題も、そこにやはり今日のようなやり方ではデッド・ロックに乗り上げてしまって、話がどうにもならないから、だから戦争終結宣言をやって、その上で話し合いをしていくなら、今日できない相談も道が開けていくのではないだろうか、こういうふうにも考えられるわけでありますが、外務大臣はそういう方法を選ぼうという気持は絶対持たないのでしょうか。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/25
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026・重光葵
○国務大臣(重光葵君) これも私がたびたび説明いたしました通り、あなたがモスクワに行かれて聞かれたソ連の意見はそうだっただろうと思うのです。日本としては日本としての意見を持っておる、主張を持っておるのであります。そのときにあなたがたは、日本の主張をはっきりして下さることをわれわれは期待しておったわけであります。ところがソ連の言うことを全部聞けば、その通りである。それはそういうことはいけないのみならず、モスクワではそう言っておるけれども、われわれのふに落ちぬ点があるのです。歯舞、色丹は日本本土に接近しておるからこれは返すのだ……、南千島は歯舞、色丹と同様接近している。それは今までだって日本の領土でなかったことはないのです。どうしてそれも同じように取り扱ってくれないかということがすぐわかるし、それからほかの方法というのは、戦争終結宣言をやろうと、戦争終結宣言をやろうということは、先ほど申し上げた通りに、平和条約をこしらえて、戦争終結宣言をその中にちゃんとしょうということにソ連もはっきりと承諾をしてロンドン交渉を進めておる。それを全然無視してやろうということはできることではないと思うのです。私はそういうことはたびたび説明を申し上げておるのでありますから、その点御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/26
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027・須藤五郎
○須藤五郎君 ソビエトに行ったときに日本の主張を言わなかったとあなたはおっしゃるけれども、これはあなたの、今の政府の主張であって、日本の主張ではないと思っている。私たちはやはり戦争終結宣言をして、そうしてその後いろいろな問題について話し合うべきであるという主張を持っておる。ですからソビエトのその説に対して、社会党の諸君はソビエトの主張を支持しますとはっきりそのとき野溝団長が声明している。私たちもそれが話し合いに応じていく道であるというふうに考えて帰ったので、あなたからそういう文句を言われる立場には私はないと思うのであるが、要するに戦争に負けた国の日本がですね、そういう今とっておる態度が正しいのであるかどうか。ロンドンタイムスなんかは、日本は少し思い上っているのじゃないかというような非難もされておるようなんでありますが、こういう態度を続けている限り、こういう今日のような状態を打開していくことができないこととなるならば、羽生さんは三年、五年あとのことはともかくというような意見でありましたが、私は三年、五年はおろか、これはこのような状態が今後何十年続くのかわかないのじゃないかというような危惧すらも持つのです。こういうことにこだわっておったら、それは日本の現状として、こういう今日の状態が今後何十年も続いていいものかどうか、その見解を一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/27
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028・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 私は、モスクワに行かれて、ソ連の主張が正しいのだと、あなたは言われますが、そういうふうなことが非常に日本の主張を実現する上において故障、じゃまになっておるということは、これは事実であろうと思います。これはしかし日本の国内においてみんな同じような気持を持ち得なかったというのは大きな欠点であるかもしれません。ほかの普通の人が……今社会党の人が云々と言うけれども、社会党の人が全部そういうわけでは私は決してないと思います。大体国として交渉する以上は、その国の立場は十分その国の人は一応主張するということは当然のことのように考えますけれども、それは任意のお考えでございまして、それは私はこれ以上申し上げません。申し上げませんが、先ほど申し上げました通りに、時間がかかってもまとまるべきものは私はまとまると、こういう考えを持っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/28
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029・須藤五郎
○須藤五郎君 もうそこまで行くと見解の相違になると思うのでありますが、そのとき行ったのは今の与党の自由民主党の代表も多数いらしゃったということも一つ考えておいていただきたい。その人たちからも、そのソ連の側の言ったことに対する反駁がなぜそのときになされなかったかという点。ですから、あながちあなたの主張している方式が今日の国民の全部が考えておる方式でないということも私は言えると思う。それからやはり話し合いをしていくうちに、あなたのような方式もあるだろうし、またわれわれの考えておるような方式もあるということ、それが将来日本にとってどちらが大きな利益をもたらすことであるか、日本のためにどちらがなるかということ、これも私たちは私たちの方式が日本のためだという確信を持っておる。あなたはそれと反対の確信を持っているから、ここまでくると話はもう話し合いにならないわけでありますけれども、そういう気持をわれわれは持っておるということをはっきり申し上げたい。それで第一話し合いをしてやっていかなくて、今日のような状態が続いていくならば、貿易の問題だって発展しませんし、漁業の問題だって困る。おそらくこのような状態が続くならば、次のサケやマスの漁業なんかに対しても大きな影響がくるものであると思うのです。そういう状態が今後何十年も続いていくとすれば、私の説と、今日あなたの言っておる説をいれなかったらどうにもならぬと言っておるのと、こう比べて、どちらが日本の将来の利益になるのか。第一戦犯の家族が一日千秋の思いで待っておるが、この話が解決しなかったら、その戦犯すらも帰ることができないような状態に私は陥ってしまうのじゃなかろうか。あなたががんばるためにこういう空気がずっと続くということが日本の幸福であるか、利益であるかという点をもう一度よく考えていただきたい。そして一日も早く日ソ交渉が妥結するような道を選んでいただくことが私たちは日本の大きな利益である、そういうふうに私たちは考えております。これはまあ私の意見になりますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/29
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030・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 私も一言。ソ連の言うことを全部聞けというあなたの口から、日本の利益はこうだということを伺うのは私は少し矛盾が——大いに矛盾があると、こう考えます。それはそれにしておいて、今これを日本が譲らなければ漁業の問題もひどい目に合うぞ、不利益になるぞ、抑留者を帰してもらえないぞと言われるが、私はそうは考えません。公海における漁業の問題なんぞにソ連が不当な圧迫をするということは、私はどうしても信じ得られません。そういうようなやり方ではないと私は思う。また人道問題にしても、これを解決しなければ人道問題もやらぬのだ、そういうことも私は信ずることができません。さようなことはおのおの必要に応じて十分話し合いをしていくことができるように感じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/30
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031・須藤五郎
○須藤五郎君 重光さんは僕が発言するといつも非常に物を曲げて……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/31
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032・重光葵
○国務大臣(重光葵君) いや曲げませんよ。(笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/32
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033・須藤五郎
○須藤五郎君 曲げていくようですが、私はソビエトの言うことを全面的に聞けということを言っておるわけではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/33
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034・重光葵
○国務大臣(重光葵君) でもさっき言ったじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/34
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035・須藤五郎
○須藤五郎君 話し合いをしていく一つの方法として、戦争終結宣言をして、その後すべての問題を話し合いをしたらどうだ、こういうことを言っておるのであって、ソビエトの言い分を全部聞けと言っておるのとは多少わけが違うと思うのですね。私たちはその話し合いの方法を言っておるわけです。やり方について話し合いをしておるのであって、あなたは領土の問題を解決しないと話し合いに応じないぞという条件つきです。私たちはまず戦争状態を終結したらいいじゃないか。その後においていろいろな問題について話し合いをするという方法が、今日あなたの言っておる方法で解決できないような問題すらもそういう方法でやったら解決ができるのじゃないか、そういう見通しを持っておるから、そういう方式をとったらどうですかということを言っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/35
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036・山川良一
○委員長(山川良一君) 質問を続けて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/36
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037・須藤五郎
○須藤五郎君 それじゃ質問をいたします。
この十八日にアメリカの国務長官ダレスが来ると伝えられておりますが、これは日本政府が正式にダレスを招待したものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/37
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038・重光葵
○国務大臣(重光葵君) いや、ダレス長官はパキスタンにおける会議に列席をいたしました帰途、各国の首都を歴訪し、また最後には日本にも来る、こういうことなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/38
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039・須藤五郎
○須藤五郎君 では、ダレスは自分の意思で来るということなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/39
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040・重光葵
○国務大臣(重光葵君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/40
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041・須藤五郎
○須藤五郎君 そうすると、ダレスが日本にやって来るのは、日本政府との間にどのような話し合いをするつもりでやって来るのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/41
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042・重光葵
○国務大臣(重光葵君) それは向うのことでございますからわかりませんが、今何も予定はございません。予定はございませんが、こういう人が来たときに日本側が、特に私どもがいろいろ意見の交換をするということは適当なことであろうと思って、それをやります。しかしたった一日のことでございますから、はなはだ十分に行かぬことをおそれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/42
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043・須藤五郎
○須藤五郎君 意見の交換をしようと思っておるとおっしゃるのですが、その予測される問題はどういうことを考えていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/43
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044・重光葵
○国務大臣(重光葵君) まだ何も予測をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/44
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045・須藤五郎
○須藤五郎君 ソ連の首脳部がインドへ行って非常に好成績を上げたというので、ダレスさんはそれをまねしてインドへ行ったところが、インドでは非常に冷遇をされた。そこで唯一の勢力範囲である日本へ立ち寄って、日本で一つ何か点数をかせいでやろう、日本から何か色よい返事をもらって帰ろうという考えをもって日本へ寄って行くのだろうと思うのですが、ダレスはアジアで公館長会議をやろうとしておりますね。それから先日はSEATOの演習がなされた。それからまたSEATOの理事会が開かれた、こういう点から考えても、今度ダレスさんが来る最大の目的というものは、日本をSEATOに加入させることに関して、日本の確約を得るために来るんだろうということは、これはまあだれでも想像できることだろうと私たちは思うのですが、こういう話が出たとき、SEATO加入の問題に関して日本の確約を得ようとするような発言がなされた場合、あなたはダレスに対してどういう返事をなさろうとするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/45
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046・重光葵
○国務大臣(重光葵君) ダレス米国務長官がアジア方面に来るということに対して、今非常に反感を持った御発言がるるございまして、これは私はその点については遺憾に存じますしまた私はそうは思っておりません。それからアメリカがSEATOに対して日本を入れるようにするようになっておるんじゃないか、日本はそれに対してどういう意向を持っておるかということを、今あなたは非常にお知りになりたいと思っておられるようでありますが、実は私はそういうようなことは、何にもまだ話に上っていないということを先ほど申し上げたのであります。それに尽きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/46
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047・須藤五郎
○須藤五郎君 あなたはこの前アメリカへ行ったときの共同コミュニケの中で、そういう意味の発言をやっぱりしているんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/47
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048・重光葵
○国務大臣(重光葵君) していないです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/48
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049・須藤五郎
○須藤五郎君 ここに書いてあるじゃないですか。これはそういう意味でしょう。「日本ができるだけすみやかに自国の防衛のために第一次的責任をとり、かくて西太平洋における国際平和と安全の維持に寄与することができるような諸条件を確立するため、実行可能なときはいつでも協力的な基礎に立って努力することが合意された。またこのような諸条件が実現された場合には、現在の安全保障条約をより相互性の強い条約にかえることが適当であろうということも合意された。」というようなコミュニケが発表された。これは将来日本がSEATOに加盟して協力しようという意図をもってなされたものであるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/49
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050・重光葵
○国務大臣(重光葵君) それはその共同声明に書いてある通りであります。その通りです。その通りでございますが、今SEATOの問題は起りもしなかったし、またこれから何らかそういう話し合いがあるのじゃないか、意図があるのじゃないかというお説でございますが、そういう意図はございません。これで御安心を願いましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/50
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051・須藤五郎
○須藤五郎君 それじゃもう一つ聞いておきますが、もしもSEATOに加盟を要請された場合、あなたはそれにどういうふうにお答えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/51
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052・重光葵
○国務大臣(重光葵君) そういう問題は起っていません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/52
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053・須藤五郎
○須藤五郎君 起った場合はどうかと聞いておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/53
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054・重光葵
○国務大臣(重光葵君) そういうことはお答えできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/54
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055・須藤五郎
○須藤五郎君 それじゃ次にもう一つダレスから要請をされるのではないだろうかと想像ができる問題は、自衛隊の増強の問題です。自衛隊の増強の督促をされるのではないだろうかと思うのでありますが、自衛隊増強の要請がされた場合は、これはどういうふうにご返事になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/55
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056・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 自衛隊は増強するというのが方針でございます。これは日本のために自衛隊を増強する、そうして政府はいろいろな計画を持っておるということは、もういろいろな機会で御説明申し上げました。そういう問題が、米国との間には条約関係があります。その条約関係も自衛力の漸増ということが条約関係にございます。それに尽きております。今特にその問題が起っておるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/56
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057・須藤五郎
○須藤五郎君 日本の国民は今日ダレスが来るということについて、大きな不安を持っておるわけなんですね。またダレスがやってきて、日本に不利益な問題を押しつけていくのではないだろうか、そういうような不安を持って、実はあまりダレスを歓迎しておらないのがこれが実情です。でありますから、労働組合におきましては、ダレスが来る十八日には反対デモでもやろうというような機運さえもちょいちょい出ておるということを私は聞いておるわけなんですが、先日原水爆禁止に関する国会で決議がなされましたが、この決議に対して英国は正式の回答をよこした、ソビエトにおきましては、最高会議において日本のこの決議を取り上げて、そこで研究をしておるようでありますが、アメリカからは何ら返事がきていないように思うのです。この際外務大臣はダレスに会ったときに、原水爆禁止に関して全国民の要望を伝え、そうして一つ禁止をアメリカに要望をなさる意向を持っていらっしゃるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/57
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058・重光葵
○国務大臣(重光葵君) ダレス長官が来ることについて、国民的にあまり歓迎をしないと言われますが、私は必ずしもそうじゃないと思う。またいろいろ反対デモ云々ということを言われましたが、どうかそういうことのないように一つ御尽力を願いたいと思います。(笑声)それはそれにしておきまして、原水爆の問題はこれはもう国会の、衆参両議院において決議までされたことであります。そうして政府は従来の方針もこの決議で出しておるのでありますから、この決議の実行を忠実に熱心にやっておるわけでございます。それによって機会あるごとにその実現をはかろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/58
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059・須藤五郎
○須藤五郎君 それは今回ダレスが来たときに、ダレスに対してもその要請をなさるというふうに解釈していいわけでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/59
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060・重光葵
○国務大臣(重光葵君) どういう話し合いをするかということは、まだ全部は実は決定をしていないということを先ほど申し上げました。それによって御了解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/60
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061・須藤五郎
○須藤五郎君 それじゃ要請をするかしないかもまだ決定していないということなんでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/61
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062・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 私の申し上げることはそういう国民的の要請についてはあくまでその実現をはかるように努力をいたしたい、また努力をするということを申し上げたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/62
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063・須藤五郎
○須藤五郎君 それじゃ次に今日国民の中には沖縄、小笠原の日本復帰の問題も大きな関心の的となっておる、ですからこの国民の要望をダレスにお伝えになる考えがあるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/63
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064・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 小笠原の問題、琉球の問題は絶えず米国側とは交渉を続けております。それで御承知を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/64
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065・須藤五郎
○須藤五郎君 それからココムの禁輸解除の問題ですね、これに対してあなたは今日どのような努力をしておられるか。それとまたダレスが来たときにこのココムの禁輸解除に対しても何か要請をなさるお考えであるか。
それからもう一つアメリカの綿糸の輸入制限の問題、これに対してあなたはアメリカに対して、ダレスに対して要請をなさるお考えであるかどうか、この点を伺っておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/65
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066・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 中共に対する輸出禁止の緩和ということについては関係国及びお話のココムの機関に対しては日本の希望を実現するために努力を続けておりますから、日米の通商関係についていろいろ困難がある、この困難の排除についても努力を続けておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/66
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067・須藤五郎
○須藤五郎君 一昨日ですか、アメリカからハーストがやってきまして、あなたとハーストとの間に、質問者に対して答えたその記事がきょうの読売に出ておるわけです。で、ハーストの、現在外交の分野で日本が直面している最も重要な問題は何だと考えるかという質問に対しまして、われわれが最も関心を抱いているのは東南アジア地域の平和と安全の問題である、こういうふうにあなたは答えていらっしゃるわけであります。この中に一番……、この答えは私はけっこうだと思うのですね……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/67
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068・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 少し間違っていますよ。東南アジアと言いませんよ、私は東アの地域と、こう言っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/68
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069・須藤五郎
○須藤五郎君 ああ、東アの地域というお答えですか、この新聞には東南アジアの地域と書いてある。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/69
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070・重光葵
○国務大臣(重光葵君) それは新聞の間違いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/70
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071・須藤五郎
○須藤五郎君 ああ、そうですか、それならばなおよけいいいお答えです。私は東南アジアの地域と書いてあるために一つ御質問しようと思ったわけです。というのは、これだけでは日ソ、日中の国交回復の問題が抜けてしまって、やはりわれわれがほんとうに重大な問題は、あなたのお考えに従ってもやはり日中、日ソとの国交を回復しない以上、東南アジアの諸地域の平和すらも私は困難じゃないかと思いましたので、東南アジア諸地域の平和問題だというので、ちょっとその中には日ソ、日中の国交問題が抜けていると思って私は質問しようと思った。東ア諸地域ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/71
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072・重光葵
○国務大臣(重光葵君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/72
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073・須藤五郎
○須藤五郎君 よろしゅうございます。
それからもう一つ、ずっとおしまいの方の質問に、日本の防衛に関してアメリカが現在与えている援助をやめるならば日本の安全保障に関する立場はどうなるでしょうという質問に対して、現在の国際情勢のもとでは全アメリカ軍が日本からすぐ撤退することは、日本ばかりでなく、東南アジアの安全保障を危うくすると、こういうふうにあなたは答えておられる。これは間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/73
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074・重光葵
○国務大臣(重光葵君) その通りです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/74
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075・須藤五郎
○須藤五郎君 この東南アジアの安全というのは……。東南アジアの安全保障を危うくする、こう書いてありますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/75
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076・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 東南アジアに限ったわけじゃないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/76
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077・須藤五郎
○須藤五郎君 東南アジアの安全保障を危うくすると新聞には出ておるわけですね。そうすると、東南アジアの安全保障を危うくするというあなたの考えの根拠はどこにあるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/77
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078・重光葵
○国務大臣(重光葵君) それも東アでしたろう、私は原文を見ないとわかりませんが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/78
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079・須藤五郎
○須藤五郎君 それなら東アでもよろしゅうございます。これは東アにしましょう。東アの安全保障を危うくするというお考えでもいいのですが、それを、そういうことを考える根拠はどこにあるのか、危うくするというのは、アメリカ軍が帰ってしまって東アの平和を危うくするというならば、その危うくするという考え方の根拠はどこにあるかを私は伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/79
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080・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 私はそういう質問をされるあなたのお考えをむしろ伺いたいくらいで、それは日本の防衛、今自衛軍をこしらえております、それからその自衛軍だけじゃ足りないから日米安全保障条約において米国は日本に軍隊を置いております。そういうようなことはただ酔狂で置いているわけでも何でもありゃしない。むろんやはり全体の平和、安全の保障をそういうことによってするために置いておるのでありますから当然のことであります。そういうふうにお考えにならないのはおかしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/80
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081・須藤五郎
○須藤五郎君 何を言っているのですか。私はアメリカ軍がいなくなったら東アの平和を、安全保障を危うくするという根拠はどこにあるか。それじゃどこを仮想敵国としてあるかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/81
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082・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 一体仮想敵国をこしらえなければ軍隊が必要でないなんというのはまたどこからそういう考えが出るのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/82
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083・須藤五郎
○須藤五郎君 危険のないものなら必要がないじゃないか、どこに危険があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/83
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084・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 国家としてはちゃんと、どこの国だって防衛力を持ってない国家はない。それが戦争するからと、どこの国と戦争するためにやるのだということは一つもありやしないわけです。やはり自分の国家の存立をちゃんとやるためには自衛力というものは必要である。これはもう通念であります。国際間の通念であります。それじゃソ連はどうしてあれだけの大軍を持っているのですか。何のために持っているのですか。どこから、日本から侵略するということはむろんない。しかしソ連としては世界の大勢上今日ちゃんとこれだけの防衛力を持っていなければならぬと、平和安全を維持するために必要であると、こう思っておるからだろうと私は思う。日本も当然、それはどこに行っても間違いのない私はやり方だと、こう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/84
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085・須藤五郎
○須藤五郎君 あなたのは私の質問をゆがめた答弁です。感情にとらわれないでもう少し冷静に答えられたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/85
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086・重光葵
○国務大臣(重光葵君) いえ、私は冷静だ、あなたの言うことがおかしいじゃないですか。(「もういいだろう」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/86
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087・須藤五郎
○須藤五郎君 いやいやそうじゃないのだ。アメリカ軍が日本から撤退することは日本ばかりじゃない、東南アジアの安全保障を危うくするという答えが私にはどうしても了解がいかないわけです。なぜならば今日ソビエトも中国も平和共存ということは非常に強く打ち出している、そういう政策をずっとやっている。それはインドでもちゃんと認めておることなんです。ビルマでも認めていることなんだ。ただ一人日本の重光外務大臣だけは認めないというのじゃ、これはもう話にならないわけなんですね。アメリカの軍隊がいることが実は戦争の危機を作ることなんです。だからアメリカ軍がいなくなったら平和なんです。アジアの平和というものは確保できるのです。ところがあなたの考えは逆なんだ、アメリカ軍が撤退したらアジアの平和は守れないという、この考え方、ここに私は大きな問題があると思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/87
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088・山川良一
○委員長(山川良一君) 須藤君、見解の相違だと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/88
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089・須藤五郎
○須藤五郎君 見解の相違になります。見解の相違になりますが、そういう答弁をしておったのでは僕は非常に心もとないわけですよ。まあいいですわ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/89
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090・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 私はそういう問題については根本的な、何というか議論を上下することはあまり重要でないかと思いますが、これでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/90
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091・須藤五郎
○須藤五郎君 もう一つ、私貿易の問題についてちょっとお尋ねしておきたいのですが、去年の春第三次日中貿易協定が作られたときに私たち訪ソ議員代表が鳩山総理にお会いしてその協定内容の実現方に協力と支持を求めに行ったときに、鳩山さんはこれはけっこうだと、だから支持もしましよう、協力もしましようというお答えがあったと思うのです。それに対して重光さんはどういうふうなことを考えていらっしゃるか伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/91
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092・重光葵
○国務大臣(重光葵君) その御質問のちょっとポイントを言って下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/92
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093・須藤五郎
○須藤五郎君 そのポイントですか、それはね、ココムの禁輸制限緩和に対する協力ですね。それから通商代表部設置問題、それから支払協定の整備、この三つの問題です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/93
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094・重光葵
○国務大臣(重光葵君) その問題については政府としてはでき得る範囲内においてそれを役立たせるように支持して行こう、こういう考えで支持して来たわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/94
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095・須藤五郎
○須藤五郎君 それではお尋ねしますが、この第三次協定も四月一ぱいで切れるわけなんですが、次の第四次協定に対して政府みずから協定に当り、中国政府と日本政府との間に第四次協定を締結しようというお考えは持っていらっしゃらないのでしょうか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/95
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096・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 政府みずからが当るという考えを持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/96
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097・須藤五郎
○須藤五郎君 なぜですか。政府は直接協定を結ぶことができないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/97
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098・重光葵
○国務大臣(重光葵君) これは今日までそういう協定を直接中共と結んでいないという理由とその方針を繰り返し申した通りであります。それを御存じの上での御質問でしょう。その方針は変えないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/98
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099・須藤五郎
○須藤五郎君 国交回復がしていないからというのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/99
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100・重光葵
○国務大臣(重光葵君) ええ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/100
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101・須藤五郎
○須藤五郎君 そうですが。そうなると私は一つ質問をしなければならぬと思うのですが、日本とインドネシアはまだ国交回復していないのですね。支払協定、貿易協定を一九五二年の八月七日にちゃんと政府間でやっておるのです。インドネシアとやって、なぜ中国とできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/101
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102・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 国々によってやっぱりこれは考えなければなりません。この国でやったからこの国とやらなければならぬということは私どもどうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/102
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103・須藤五郎
○須藤五郎君 そうするとなんですか、インドネシアとはできても中国とはできぬという見解になるわけですね。しかしそういうことをやっておっては中国との貿易ということはなかなか現在より以上に拡大発展して行くということが非常に困難だと思うのです。それで今度の国際貿易促進協会で三月十日に発表したトレード・プランによりますと、ことしは片道五千万ポンドのプランを立てておるようでありますが、これを実現させて行とうというために、また日本の業者がこの中国貿易に対して大きな関心を高めてきておるわけですが、要望も強いわけでありますが、それを実現さすためにはどうしても政府が今日のような消極的な態度ではなく、より積極的な態度に出て行かないと私はできないのではないかと思うわけなんですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/103
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104・重光葵
○国務大臣(重光葵君) この民間の協定と申しますか話し合い、政府としてはでき得る限りにおいて助けて行きたいというような考え方を持っております。それがために今日までこのワク内において、国際義務に反せざる範囲内において日中貿易はどんどん進んでおります。そればワクをはずすことが終局の目的でございます。目的でございますからそれができるまではワクを尊重しなければなりませぬ。それでだんだん進んでおるわけでございます。それで行きたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/104
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105・須藤五郎
○須藤五郎君 あなたの国会の御答弁にもあったと思うのですが、国交を回復することは非常にまだ困難だと思う。しかし貿易をやって行くことはますます大きくやって行かなくちゃならぬと思っているというような意味の答弁が衆議院の予算委員会のときか何かにあったように私は読んでいるわけですが、そういう建前から第四次貿易協定には政府みずから当るというそこまで一つ踏み切っていただかないとあなたの趣旨にも沿わないことになるのではないかと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/105
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106・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 今こういう紙が来ました。なるべく答弁は簡単にしろ、こういうことでございます。私も簡単にしますが、どうぞ御質問もごく簡単にお願いいたしたいと思います。今政府はそういう直接貿易協定をやる意向のないことを申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/106
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107・須藤五郎
○須藤五郎君 私は鳩山総理に対する質問が申し入れてあったのですが、鳩山総理の御出席がないので、これはまた次の鳩山総理の御出席の機会に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/107
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108・山川良一
○委員長(山川良一君) それではほかに国際情勢等に関する御質疑はありませんか。
それでは質疑は終ったものといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/108
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109・山川良一
○委員長(山川良一君) 次に外務公務員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/109
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110・羽生三七
○羽生三七君 これは質問ではないのですが、これは衆議院において一部修正して本院に送付して来ておるのでありますが、それについてだれか、その修正者がその理由を説明するとか、そのかわりの人がするというようなことはしないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/110
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111・山川良一
○委員長(山川良一君) それは私から申し上げなければならないことですが、それについて御承知だと思いますが、これは衆議院から修正して送付して参りましたので、衆議院の方からそれについて説明してもらうように話をしておったのでありますが、その説明者が今日は参りませんので、政府の方からその説明をしていただくことにして議事を進めたらと思っておりますが、それでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/111
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112・羽生三七
○羽生三七君 それは原則としては好ましくないと思いますが、便宜そういうことであればそれでもいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/112
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113・山川良一
○委員長(山川良一君) それではそれで御賛成願うことにいたしまして、政府からその修正の点につきまして御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/113
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114・島津久大
○政府委員(島津久大君) 外務公務員法の改正の趣旨は先般提案理由の説明の際に政務次官から詳細御説明申し上げた通りでございます。問題となりました点は、特派大使が国会議員のうちから選ばれたといたしました場合、国会との関係上両院の議決を必要とするやいなやという点がございまして、この点は外務省の政府の原案から申しますと、国会法の第三十九条のただし書き以下で読みまして解決できる、かようになったのでございます。ところが衆議院の外務委員会で御審議の際に、そういう解釈では必ずしも事態が明確ではない。従来の解釈でできないことはないけれども、一部に異論があるからこの際その点を明確にしたらどうかというような御意見が出まして、それに基きまして修正案が出たわけでございます。修正案を簡単でございますから読み上げます。
このうちの3の「前項の外務公務員については、国会議員のうちから、任命することができる。この場合においては、両議院一致の議決を得なければならない。」この点が主眼でございまして、先ほど申しましたように政府原案におきましては、国会法の解釈でこういうことを書かなくても目的を達すると思っておりましたのでございますが、修正案ではこの点を明確にしたいという御趣旨でございます。これにつきましては政府としてももとより異論はない次第でございます。これによりまして特派大使、政府代表ないし全権委員が国会議員のうちから、任命することができるということがはっきりいたしました。同時にそういう場合においては両議院一致の議決を得なければならないという点も明確に規定されるわけであります。
以上の点が衆議院における修正の趣旨でございます。便宜上私から申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/114
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115・山川良一
○委員長(山川良一君) それでは本案について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/115
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116・山川良一
○委員長(山川良一君) それでは速記をつけて。
他に御発言もないようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/116
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117・山川良一
○委員長(山川良一君) 御異議ないものと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べ願います……別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/117
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118・山川良一
○委員長(山川良一君) 御異議ないものと認めます。
それでは採決に入ります。
外務公務員法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を衆議院送付案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/118
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119・山川良一
○委員長(山川良一君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成その他自後の手続につきましては慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/119
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120・山川良一
○委員長(山川良一君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたしました。
それから報告書には多数意見者の署名を附することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。
多数意見者署名
鶴見 祐輔 宮澤 喜一
羽生 三七 須藤 五郎
大谷 瑩潤 黒川 武雄
野村吉三郎 梶原 茂嘉
佐藤 尚武発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/120
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121・山川良一
○委員長(山川良一君) それではこれで散会いたします。
午後一時八分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102413968X00519560315/121
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