1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年三月二十九日(木曜日)
午前十一時五分開会
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委員の異動
三月二十八日委員高木正夫君辞任につ
き、その補欠として森田義衞君を議長
において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 重盛 壽治君
理事
高野 一夫君
山下 義信君
常岡 一郎君
委員
草葉 隆圓君
紅露 みつ君
榊原 亨君
寺本 広作君
深川タマヱ君
横山 フク君
竹中 勝男君
山本 經勝君
田村 文吉君
森田 義衞君
長谷部ひろ君
衆議院議員 木村 文男君
国務大臣
厚 生 大 臣 小林 英三君
政府委員
外務政務次官 森下 國雄君
厚生政務次官 山下 春江君
労働政務次官 武藤 常介君
労働省労政局長 中西 實君
事務局側
常任委員会専門
員 多田 仁己君
説明員
厚生省引揚援護
局長 田辺 繁雄君
労働省労政局労
政法規課長 石黒 拓爾君
参考人
日本赤十字社副
社長 葛西 嘉資君
日本赤十字社外
事部長 井上益太郎君
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本日の会議に付した案件
○未帰還者留守家族等援護法の一部を
改正する法律案(内閣提出、衆議院
送付)
○社会保障制度に関する調査の件
(引揚者促進に関する件)
○引揚同胞対策審議会設置法の一部を
改正する法律案(衆議院提出)
○公共企業体等労働関係法の一部を改
正する法律案(内閣提出)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/0
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001・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) それでは、ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
委員の異動報告を申し上げます。三月二十八日付、高木正夫君辞任、森田義衞君選任。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/1
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002・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案及び社会保障制度に関する調査を議題といたします。
本日は、本問題に関連いたしまして、日本赤十字社副社長葛西嘉資さん、同じく外事部長の井上益太郎さんのお二人に参考人として御出席を願っております。お二人の方々には、御多忙のところ御出席下さいまして、大へんお待たせをいたしまして失礼いたしました、まことにありがとうございました。これから御意見の発表をいただくのでありまするが、その要点等につきましては、さきに御連絡いたしておきました通り、未帰還者の実情について、引き揚げ促進の交渉経過及びその問題点について、これは北鮮地区その他も入れていただいてけっこうでございます。未帰還者等の通信及び慰問等の現状について、その他引き揚げ促進上参考となるべき事項等でありまするが、時間の関係もございまして、はなはだ勝手でございますが、二十分程度の一応御意見の発表をお願いいたしまして、後刻各委員の質疑にお答えを願いたいと考えております。
それでは、日本赤十字社の副社長葛西嘉資さんにお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/2
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003・葛西嘉資
○参考人(葛西嘉資君) 過日書面をもっていただきました意見の聴取事項についてでございますが、実はあの未帰還者の実際の実情等につきましては、その数等については政府において詳しい資料がありまして、私どもも大体のところはそのことを基礎にいたしましてやっておりまするので、私からここで重ねて申し上げる必要はないかと思うのであります。ただ、私ども最近北鮮に行って参りましたので、北鮮におりまする未帰還者のことについてだけちょっと御参考に申し上げたいと思います。
北鮮におる未帰還者の数はざっと大体二千くらいということになっているように承知いたしておるのでありますが、その中で特に六十八名ばかりのごく具体的な者につきまして、私ども日本赤十字社におきまして北鮮におると思われる日本人の名簿というものを作りまして、個人別にそれを書いて書面にいたしましたものがございます。この中には北鮮の官憲によって抑留されたというような技術者、それから当時受刑をしておった受刑者、それからそのほか先般の戦争のときに抑留された者というようなもの、それからそのほか終戦前からおった人で帰らない人という、はっきりわかっておる者六十八名についてちょっとこんなものを作りまして、これを二部ばかり私ども参りましてすぐ朝鮮赤十字の当局の方へ提出をいたしました。これは承知いたしましたというわけで、向うで調査を約束しまして受理いたしました。私どもが帰るまでの間に、全部はとてもわからぬが、若干の者については討議する用意がある。しかもある程度の者は書面にして渡せるだろうということを向うの責任者から聞いておったのでありますが、出発までの間もう十数回にわたって督促をしたのでありますが、結局はいただけませんでした。しかし今後書面によって通知をするということを聞いて参りました。
そのほか私どもが特に御参考に申し上げておいたらと思いますことは、政府の委託によりまして、この未帰還者の中の特にとりわけ顕著な者だけを赤十字の関係でありますが、安否調査ということをやっておるのであります。これはソ連地区におる安否調査は詳しい者を入れると相当の数になるのでありますが、最近やりましたものは四百名ばかりの者について、個人別に名前を書いてソ連赤十字に出しておるのであります。この点はまだソ連の方から何らの返答を得ておりません。しかしながらそのほかに個々にやったものについては、ソ連赤十字の方から四十九名について安否の調査の返事が参っております。今後これは政府の方の資料をいただきまして、そうしてわれわれの方からまた安否調査の形式でやることにしております。先般日ソ交渉がありましたものですから、あの期間中は臨時にやめておったのでありますが、必要であるということでありますれば、さらに継続をしてやるつもりでおります。中共の地区につきましても、未帰還者中の特に顕著なものの安否がはっきりしないものについては、やはり安否調査ということをやるつもりで準備をいたしておりますが、現在まで中共の方に出しましたのはわずかに六十八通ばかりのものであります。中国紅十字会に出しましたものが六十八件でございます。回答はしかしなかなかはっきりいたしませんのでありますが、そのうち安否調査をやって帰国したものが六十八のうち約八件というようなことに相なっております。
それから次にお尋ねがありました引き揚げ促進の交渉の経過及びその問題点という点でありますが、私ども今度参りましたのは、本年の一月に立ちまして北鮮に参りましたのは、北鮮におります日本人の帰国に関する打ち合せのために行ったのでありますが、このいきさつを申し上げますと、御承知のように、一昨年の一月から日本赤十字の方から北鮮の赤十字に対しまして、北鮮におる日本人で帰国を希望しておる者を返してもらいたいということを依頼しておったのでありますが、ちょうど昨年の五月ごろからそれが具体化して参りまして、昨年の八月ごろから平壌に希望者を集結させておったのであります。ちょうど私ども参りましたときには四十八名の人を平壌に集結しておりまして、この人の帰国の問題の打ち合せということが私どもの主たる目的であったのであります。そうしてことしの一月実は参ったのでありますが、行きましたところが、いろいろと日本の方から北鮮の方に呼びかけがあったり、あるいは北鮮の内部におけるいろいろな動きがあったりいたしまして、日本人だけの希望でありませんで、日本におる朝鮮人の北鮮への帰国、在日朝鮮人の帰国問題というものがちょうど出て参りまして、いわば先方はこれを交換条件ではないと申しておりましたのですが、事実上その問題からとまりまして交渉が実は長引いたわけでございます。詳しく申し上げますと、実は昨年の十二月三十一日に北鮮の赤十字の方から日本の方に、日本におる朝鮮人の生活の問題、あるいは教育の問題、あるいは帰国希望者の帰国の問題という非常に広範な問題について討議をしたいから、北鮮の赤十字の代表を日本によこしたいという電報が参りました。受けたのは本年の一月元日であります。そういうものが来ておったのでありますけれども、これらの問題は御承知のように、非常に複雑なむずかしい問題でありまするし、かりに帰国問題だけを取り上げてみたにいたしましても、御承知のように、現在南北両朝鮮に分れておる実情等から、簡単に解決ができません。私ども出発までにこれらの具体的な国の方針というものがまだ確定する段階に至らなかったのであります。従って私ども行きましたときには、その問題はまだ結論に到達しておらないから、今度行く赤十字の代表団は、これらの問題を討議する権限がないのだということを北鮮の赤十字の方へ明瞭に意思表示をしておいたのであります。ところがその意思表示にかかわらず、実際問題になりますると、大村収容所の問題、大村収容所において、向うの言うところによりますると、何とかいう一名の人が李承晩のテロによって殺された、他の北鮮系のこれらの人々はまた自分の生命の危険すらも感じて非常に明日の命もわからないというようなことで非常に心配をしておる、緊急なこれらの問題をぜひ一つ公式に討議をしてもらいたいというようなことでありました。具体的にはどういうことで手間取ったかと申しますと、今度の日本赤十字と北鮮赤十字との間でいかなることを議するかという議題の問題で問題になっておったのであります。北鮮赤十字が提案いたしました議題というものは実は三つの問題があります。一つは今の平壌に集結している日本人の帰国の問題、これは日本赤十字としても異議はないのであります。それをやる。それから第二は、両国居留民の問題というわけで、北鮮におる日本人の安否調査の問題もそれに含めまして、日本におる朝鮮人の問題、非常に大きな問題をひっからめて第二の公式の議題にしたい。それから第三は、両赤十字間の提携を緊密化する問題ということであります。この問題もまた非常にちょっと聞くといいんでありますけれども、実際問題になりますると、北鮮の赤十字の代表を日本によこして、そうして日本におる朝鮮人の実際の実情を見たり、あるいは大村収容所等の視察もしたいというようなことがその内容になっておったのであります。私どもはこれらのことを討議する権限もありませんし、それから今私どもが用意なくして北鮮に行っておって、北鮮と日本赤十字の間だけでこれらの問題を議するということになりまするというと、これは大事な在日朝鮮人の問題というものがほとんど解決ができなくなる、非常にむずかしくなる、あるいはまたできなくなるおそれもある、こういうふうに考えられたのでございます。と申しますのは、御承知のように、南北両朝鮮というような非常にデリケートな関係にもありまするし、また、日韓の非常なむずかしい関係もありまして、どうしてもこのわれわれが北鮮でこれらの問題を公けに議するというわけにはいかないというふうに考えたのであります。従って、形式的にはこれらの三つの議題の問題の中に、われわれは第一の問題だけはこれは即座に賛成をしたのでありますが、二、三の問題については討議をする権限もないし、用意もないし、また両赤十字の間のこの会議に対する約束が違うではないかというようなことを一カ月間毎日毎日やり合っておったのであります。先方はそういうことは言ったにしたところで、非常に緊急な問題なんだから、日本人のことを日本人が心配しておるのと同様に、われわれは日本におる朝鮮人のことを心配しておるのだというような人情論と申しますか、人道上の問題と申しましょうか、そういうことでぜひ議題で討議をしたいということを申したのでございます。日本の方からもいろいろな団体、あるいは在日朝鮮人から北鮮の赤十字、あるいはわれわれ代表団に電報をよこしたりなどいたしまするし、また北鮮なんかにおっては、そういうふうないろいろの動きがあって、毎日新聞にそれらのことが載る。あるいはまた、平壌に滞在しているわれわれ代表団にも、向うにいる朝鮮人から、日本赤十字は何たる涙のないようなことを言っているではないかというような手紙が舞い込んできたりなどいたしまして、一カ月間ずいぶん苦心というか、いやな思いをさせられたようなわけであります。しかしながらこれはどうしてもわれわれがもし北鮮でそういうふうなことを述べたり、議論をしたりすることになりますれば、結局問題はぶちこわしになるということを心配して、最後までこの問題は拒否し続けてきたのであります。と申しますのは、さっき申し上げましたこの在日朝鮮人の問題、教育の問題でありますとか、あるいは生活の問題でありますとかいうようなことになりますと、これは赤十字として関係するということもどうかと思う。多分に政治上の問題であり、国と国との問題であるように私どもには思えるのでありますけれども、かりに引き揚げの問題にいたしましてもそう簡単にはいかないわけであります。どうしてもこの日本におる朝鮮人の問題というものは、当国会等でも非常に御研究をいただいて私は解決していただかなきゃならぬ大事な問題であるように思うのであります。この問題を解決せねばならぬからこそ、軽々にわれわれが出先で不用意に発言をしてはならぬというのが、われわれがんばった理由であったのであります。しかしながら、どうしてもそれをやってくれと言って向うは譲りません。そこでちょうど二月二十四日の日であると思いますが、新聞にも出ておったのでありますが、二十三日の日にとうとう先方は公式の会談においてわれわれが、われわれというのは、北鮮側が共同コミュニケの中に盛り込みたいと思っている第二、第三の問題は次のようなことなんだということを、われわれが発言をやめてくれと強く要請したにもかかわらず、これは三時間も休憩をしてもんだのでありますが、もんだ末にとうとう向うの首席代表から発言をしてしまったのであります。そうなりますと、もうわれわれはそれを拒否するには、拒否する理由を述べなければならない。事実上在日朝鮮人の問題を公式に議さなければならぬ。公式に議するということはどういうことかと申しますと、ちょうどこの会談が何も秘密の会議でも何でもないというようなことで、新聞記者等をその会議に入れて、新聞記者等の傍聴の上でやっておったのであります。朝鮮人の新聞記者は申すまでもなく、プラウダであるとか、あるいはチェコの記者であるとかいうような、主としてヨーロッパの共産系の国の新聞記者も列席しておるのであります。あるいはロイターというようなものもありまするし、あるいは新華社等もあるのでありますが、こういうふうなものの列席している会合でそういうことをやることは、われわれとしてはできないというわけで、とうとうこの会談はもうだめだというようなことで、私どもといたしましては、もう最後だというふうに考えたのであります。
その前に、約一月間近くの間に、われわれの方としましては平壌におります日本人の帰国の具体的な問題については、ここにおります井上部長の方から九カ条の具体的な当方としての要求、日本の赤十字側としての要求はすでに先方に出ております。
それから、日本人の安否調査の問題も、先ほどお目にかけましたような、ふうなもので、向うが調査を約束して受理をいたしております。従ってかりにこの会談がだめになったといたしましても、今後日本赤十字と北鮮赤十字の間で電報で往復することによってほぼその目的は達せられるというふうに思われましたので、確信ができましたので、とうとう一つ会談をこの際やめにしようじゃないかというふうに決意をいたしまして、二十四日の日の午前、私団長として単独でありますが、一人で向うの首席代表をたずねまして別れのあいさつを述べたのであります。どうしてもあなた方の方が公式な会談でこれをやらなきゃならぬということを述べられ、昨日ああいうふうなことであった以上は、もう会談を続行することはできないと思うというようなことで、まあ赤十字のことでありますから、会談を決裂するというような激しい方法でなしに、握手をして別れ、会談を終結させようという別個の形式で別れのあいさつを述べて、今後一つ日本人の帰国問題は帰ってから電報でやるからよろしく頼みたいというようなことであいさつをいたしました。そういたしましたら、第二、第三の問題はそれではやめるけれども、日本人の問題だけは一つわれわれの方も準備ができておるから、早急にまとめて帰ってくれというようなお話でありましたので、それは願ってもないことなんで、それでは一つそういうことにしましょうということで、あとわずか数日の間に平壌に集結しておる日本人だけの帰国の問題、具体的に申しますれば、第一議題の点だけは話をつけまして、そしてあとの問題は将来に残して、会談を終った、こういうことでございます。
こういうふうなことになりましたのは、どういうことかと申しますと、私どもどうしても日本におって現在朝鮮人で生活に困っておる者が十万余りもおって、そうして生活保護法の金も二十数億というようなものを一年に使っておるというようなことであり、そのうちに帰りたいというものがあればこれは帰すのが当然である。どうしても帰りたいのは帰してあげなければならぬ、そのためにはやはりここで議せずに、早くしっかりした日本におる朝鮮人の帰国の問題なら帰国の問題について、日本としての政策を確立していただいて、そうしてその線に沿うて、あるいは政府みずからやるなり、あるいはそれが工合が悪ければ赤十字がやるなり、あるいは何なりして、これはどうしても解決をせなければならぬ。いいかげんにその場限りのことを言って帰ってはならぬ、こう考えたからなのでございます。私どもも十分熱意もあるし、日本の政府御当局、あるいは国会等においてもそれぞれ熱意のあることは十分北鮮側もわかっておるだろうから、これは将来の問題として帰りたいということで、これは繰り返し、繰り返し申したわけでございます。希望を申し上げますれば、すみやかに国会においては、これらの問題について政府御当局を鞭撻されるなりいたしまして、なさっていただくことを私どもは希望をいたします。その場合に、赤十字はどの部分を受け持ってやれというようなことであれば、これはいかなる努力でもせねばならぬ、かように考える次第でございます。従って、大きな問題が将来に残ったということになるわけでございます。
そのほか、朝鮮に一体どのくらいの希望者がおるのかというようなことは、一切そんないきさつではっきりわかりませんでした。御承知のように、受刑者とか、あるいは技術者等の人たちが待ちわびる心の会というような会を作りまして、そして十年余りも安否を気づかっておる人たちがございまして、この人たちのことを思いますと、何とも申し上げる言葉もないのでありますが、先方はとにかく用意もあると言いましたし、資料もあるからこれを出すと言っておりました。今度船が北鮮の遮湖の港に参りますのが、来月の十七日から二十二日までの間に船を出せることになりました。そして井上外事部長がその船に乗る予定になっておりますから、行きましたらさらに書面にして渡し、それの督促をしてもらいます。これは電報で照会して、なお現地で照会するつもりであります。できるだけのことを聞いて参りたい、こう思っておるわけでございます。
それからもう一つ、帰りに中共の中国紅十字会に寄りましていろいろ打ち合せをいたしたのであります。ちょっと御報告申し上げたらと思うことがありますので申し上げますが、それは千名余りの戦犯の帰国の問題でございます。この点については先般、片山哲氏が向うに行かれましたときに周恩来に会って、そして六百名ないし七百名の戦犯の釈放が近くあるだろう、それは病人であるとか、あるいは年をとっておる人というようなものが選ばれるであろう、そしてそれを帰すであろうというような話があったということでありましたので、具体的にもう少し突っ込んだ情報をぜひ聞きたい、戦犯の釈放をぜひしてもらいたいというようなことを向うの会長の李徳全などに会いまして頼んだのでありますが、これは行きにも、帰りにも頼んでみたのでありますが、戦犯釈放の問題は、私どもの印象でありますが、なかなかそう簡単にはいかない段階になっておるような印象を受けました。片山さんが得られた情報以外には、何ら新しい情報を得ることができなかったわけでございます。先方に私どもは、戦犯の釈放というような人道上の問題は、一つ政治的取引の具にしてもらっては非常に困るというようなことも述べたのでありますが、その際には、明らかに今度の戦犯釈放の問題は政治的には考えない、政治的取引の具にしないということを紅十字当局責任者ははっきりと申したのであります。私どもはそれを信ずるよりほかないわけであります。そんなような段階でなかなか困難な段階にあったような印象を率直に受けて帰りました。戦犯の釈放につきましては、御承知のように、日本赤十字といたしましては、役員会がありましたり、あるいは先方の当局者に会ったとき等には、常に赤十字の立場からぜひ早期に一つ帰すことをお願いするということは、これはもう機会あるごとに申しておるのでありまするが、私どもの率直な感じをもって言うことをお許し願いますならば、何かもうそういう段階は通り越したような私は感じを、ことに中共で話を聞いて以来持っております。何とか、国会なりあるいは政府等でこの交渉をして人道上の立場から一日も早く帰ることを希望いたしたい、かように考えております。
なお、時間がありませんので簡単に申し上げますが、未帰還者への通信及び慰問品等の現状についてでありまするが、これは御承知のように、通信の方は、ソ連の場合には、俘虜通信でできることになっておりまするし、中国の場合には、中国紅十字会に私どもがあっせんをいたしまして、手紙を家族等から取り次いでおります。私どもが今度ちょうど初めて太原の戦犯管理所に訪問いたしまして、太原の戦犯者の代表者から聞いたのでありまするが、留守家族からの通信は年に二回、三回くらい必ず着いておるということとをはっきり申しておりました。出したものは着いているような模様であります。これは太原でございます。ソ連等の場合は、まだはっきりわかりません。
それから慰問品の点でございますが、中共の戦犯につきましては、非常に心配をしておったのでありまするが、先般赤十字の代表が撫順の戦犯管理所にたずね、今度私どもが太原の管理所をたずねたところによりますると、衣食――住もそうですが、については私は率直に言えば心配の要らない状態だ、こういう印象を持って参りました。食べ物等は十分ある。それで、ことに戦犯者の口から聞いたのでありまするが、いろいろな食べ物等を送るけれども、それは必要がないのだ、自分らは十分あるということであります。これは戦犯の顔色を見たり、あるいは病人の数等を実際太原等で見たりなんかいたしますというと、中共関係においてはそういうまあ心配はないのじゃないだろうか、こういう印象を受けて参りました。もちろん、留守家族の方から心のこもった贈りものというふうなものを届けることについては、これはちっとも差しつかえないことでありますが、特に食糧の補給というようなことについては必要がないのじゃなかろうか、こういうふうな印象を受けて参りました。ただソ連の場合につきましては、先般第五次の帰還者並びに第六次の帰還者等から聞くところによりますると、これは心配せねばならぬ状態だというようなことであります。非常に心配をいたしまして、特に第五次の場合にはビタミン等が非常に不足しておるというような話でありましたので、ビタミンを送りたいというようなことで、御承知のように、ソ連赤十字にビタミンを送るが、受け取ってくれるかというようなことを聞いてやったのでありますが、これは返事が来まして、抑留者については十分それらの点も心配をしておるから、特に送ってもらう必要がないというわけで断わられております。従って、これはビタミン等の入った菓子を送ることによって、ビタミンの補給をしようというようなことになっております。このソ連の場合には、そういうふうに非常に心配すべき事情ではないかというようなことで、第一次の場合は別でありまするが、昭和二十九年の二月以来、第二次から第六次までの間には、これは全部留守家族の人たちにもお話をいたしまして、留守家族の方から慰問品を出してもらって、迎えにいく船で、ナホトカでそれをソ連の赤十字に渡すという方法をとっております。で、なお留守家族がそういうものを出せないとかあるいは十分でないような場合は、日本赤十字の方で慰問袋を作りまして、そうして送っております。現在まで送りました慰問袋の数を御参考に申し上げますと、日赤の分といたしましては、第六次までに約三千十五個、全部の数が一万三千五百八個行っております。特にこれは、今月にナホトカへ参りました第六次の帰還船では非常に多く、六千二百六十九個というような数を送っております。これは家族はもちろんのこと、厚生省あるいは日赤、それから国会の方からもお送りいただいております。そのほかいろんな方面から送っていただきまして、この第六次には、六千二百六十九個というような慰問品を送っております。
なお、慰問品がほんとうに戦犯に着いたかどうかというような点が心配になるという家族の御意見もありまするし、ちょうど昨日でありまするが、ソ連赤十字に実は手紙でそれらの点を確かめることにいたしました。ソ連の赤十字の方では、日本の、第五次ですか、六次ですか、はっきりわかりませんが、の慰問品の中には、名宛人のない慰問品があった、これはそのほかの戦犯者に便宜分けてやっておる、それはそれでいいのか、あるいは別に何とかしてもらわなければならぬのか、返事をよこしてくれというような手紙がソ連から参りましたので、それはそれでよろしい、名宛人のないのはほかの人に分けてもらってけっこうだという返事を出すと同時に、一つ今度は着いたならば着いたということを、個人なら個人でもいいし、あるいはその収容所なら収容所の代表者に、何個着いたというようなことで一つ受け取ったということをはっきりさしてもらいたいというようなことを申して、向うの同意を得たいということを申し込みました。それからなお、今後ソ連からの帰還者があった場合には、私どもとしては慰問品を送ります場合に、これは厚生省の御協力を得てやらなければならぬと思いますが、留守家族等も慰問品の中へ俘虜郵便の形式で小包を受け取ったというしるしのある手紙をちょっと入れまして、そうして送ってやる。そうすれば、何のだれがしが受け取っても、ぽいとほうり込んでおけば全部着いたということもはっきりしますから、そういうふうに今後はしたいと思う、それについて意見をお知らせ願いたい、こういうふうにいたしております。
私どもは何にしましても、ソ連の抑留者の方々については、ただいまのところでは、慰問品を、もっと送ってあげなければならぬのじゃないかというようなわけで、機会がありましたらばさらにやりたい。政府でも御尽力いただいておるようでありますし、やりたいと思っております。また、緊急を要するような場合には、ジュネーヴの方へお願いをいたしまして、金を送りまして、ジュネーヴから急送するというふうなことも考えなければならぬのじゃないかというふうにも考えております。従来はこれはスイスの方でやっていただいた例もありまするから、緊急であればそういうこともしたいと思っております。他は御質問によってお答えすることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/3
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004・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 次に、外事部長の井上益太郎さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/4
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005・井上益太郎
○参考人(井上益太郎君) ただいま葛西副社長から非常に詳細な御説明がありましたので私として特に申すことはございません。ただ、二つの点だけちょっと補足いたしたいと思います。
第一の点は、今度交渉に参りました場合、葛西副社長が申しましたように、日本赤十字の代表団が人道的見地から、また赤十字の原則からいって、在日朝鮮人の問題を議することは当然のことであって、それをしないということは非常にけしからぬというふうな言い方をたびたびいたされました。で相当激しい言葉で攻撃を受けたわけでありますが、この点は、赤十字の権限というものと、赤十字代表の権限というものはこれは全く別のものであります。それはどんな国際会議におきましても、あるいは赤十字国際会議の場合でありましても、あらかじめ、いつ、どこで、だれが何を議するかということについて、あらかじめ合意がありませんと、国際会議というものは開くことができないのであります。赤十字が毎年国際会議をやりますが、それについては、あらかじめ、どこで何を議するかということは討論してきめるわけであります。これは赤十字国際会議を含む国際会議の原則でありますから、われわれはただそれに従ったまでのことでありまするから、何も決して人道主義に反したとか、あるいは赤十字の原則を無視したとかという非難は当らないと思います。ことに、在日朝鮮人問題は非常に複雑な問題でありますし、日本政府の方針もまだこのときはきまっておらなかったように承知しておりますので、われわれがそういうことをやったということは、決してこれは赤十字が人道主義に反したということの非難は当らないと思います。また、これについては、島津社長が、日本人を引き揚げることに協力してくれれば、在日朝鮮人の引き揚げに日赤は努力するということを、一九五四年だと思いますが、電報で申し入れております。その約束を日赤がほごにしたものでは決してありません。そういうことは赤十字の権限でありまして、だからといって、今日の会議で赤十字代表がそれを議さなければならないという理屈は一つも出てこないからであります。この点を一つ申し上げておきたいと思います。
第二の点は、日本赤十字といたしましては、在日朝鮮人の問題を至急に解決をする必要があるというふうに考えております。これは何とかして、今年中にこれを実現するということが非常に必要だと思っております。これは日本赤十字の意見でございます。その二つだけつけ加えて申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/5
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006・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) お二人のお話に対しまして、何か御質問がございましたら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/6
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007・竹中勝男
○竹中勝男君 ちょっと葛西さんにお尋ねしたいのですけれども、未帰還者が北鮮に二千人あり、そのうち六十八名についてこちらから名簿を作って調査を要求された。またソ連については四百名の安否調査を出されたというのですが、その六十八名あるいは四百名というのは顕著なものというふうに言われたのですが、どういう標準で、そういう安否調査の人選をされたわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/7
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008・葛西嘉資
○参考人(葛西嘉資君) ごもっともなお尋ねと思いますが、実は、北鮮の場合で約二千人と申し上げましたのは、御承知のように、政府の方において調べておられるある時期、昭和二十一年の何月とか、昭和二十二年の何月とか、昭和二十三年の何月とか、ある時期において生存が確実だと推定される人を集計した数でございます。これは中共の場合にも、ソ連の場合にもそういうふうな数があるわけでございます。しかし、このある時期において生存資料が確実だというものを、それを全部一応お説のように、安否調査という形で出すのも一つの方法なんです。しかしながら、実際問題で考えて参りますると、ばっと一ぺんに出してしまうことが有利かどうかというような、日本の立場に立って有利かどうかというようなことを考えますると、必ずしも有利だとは思えないわけなんです。そこで顕著なと申しますか、あるいはなくなっただろうと思うような人で明瞭なものがあれば調べていいわけでありますから、そういうものを出す、あるいはこれはもう確実だというものも出すというようなことで、実はソ連等の場合には四百名近く出しましたというのは、そういうような見地で、実はその中からピックアップいたしましてそうしてやっているわけであります。これはやはり一ぺんにどかっと何万という、あるいは何千というようなものがいきますると、事務的にも問題であります。そこらのところを考えながら出しているわけであります。これはもちろんその資料を持っておられる当局と十分打ち合せの上でやっているわけであります。
で、北鮮の場合は、今の二千人と申し上げましたのは、ある時期において生存しておったと推定される者の集計の数であります。従って現在ああいうような戦争等の行われましたあとでどうであるかというようなことを考えると、あるいはこれは調査ができないのじゃないかというようなことも考えまして、最も明瞭なものを六十八名だけ選びましてそうして出したわけでございます。ソ連の場合も同様でございます。中共等の場合にもそんなふうにしてやっておりまするし、今後もそういうふうにしてやるわけでございます。これはまあ具体的に申しますと、向う側から申せば、比較的調査のしやすいものを先ず出していくということが返事がもらえるというような点から、そういうふうな数が出ているわけでございます。今後もそういうふうにして参る方針でございますので、なお御意見等があれば承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/8
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009・竹中勝男
○竹中勝男君 大へん適当な方法だと私も考えておりますが、六十八名についての安否調査の結果、まあ、わかったものが何人かというふうに出てくるわけですね。それで大体六十八名の選び方といいますか、調査というような、サンプリングの一つの方法のような形でそうしてその中から何パーセントがわかった、そうすると現在どれくらいの未帰還者があるかということを推定される、そういう意味もあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/9
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010・葛西嘉資
○参考人(葛西嘉資君) これはちょっとそのパーセンテージで、たとえば半分であったから五〇%だというふうに割るということはちょっと私は危険なんじゃないかと思います。これはそこに草葉委員おられますが、草葉さんが大臣をしておられるころに李徳全がちょうど来られましたときから、そういうふうな数字は当時の大臣から李徳全に渡されている――渡されましたのですね。そういうこともありますし、だからこの数字というものはパーセンテージじゃちょっと私は無理だと思います。ことに北鮮の場合にはああいうふうな戦争が行われたあとであります。戦後ではだいぶ違うと思います。ことに六十八名については、だんだんあとになりましてから向うの主席代表の柳基春から話をしたのでは、あなたの方が出したあのうちの一部については若干の資料があるので、それを書面にしております――その書面を渡したいと思いますというようなことを言いましたのですから、全部でないことは残念ながら想像できていることですが、一部についてはあるということを確かに先方の責任者が申しております。私どもはこれを期待しているわけであります。今後調べますと言いましたし、それからわれわれの方の日本にいる在日朝鮮人と同様のレベルでこれを解決するということを向うも約束しているのであります。向うでも大事に慎重にしかもできる限りの調査をしてくれるものと現在のところは期待いたしております。われわれは機会あるごとにこれを要求するつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/10
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011・竹中勝男
○竹中勝男君 そうすると、現在の時期で大体どれくらい北鮮にはそういう日本人が抑留されて、あるいは向うに生活しておるというような見通しを持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/11
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012・葛西嘉資
○参考人(葛西嘉資君) 今のお尋ねでありますが、先般、去年の五月だと思いますが、畑中政春氏などが向うに参りましたときに、向うで聞いたといってわが方に電報できました。その数によりますと、大体北鮮には二百人くらい、日本人の人が二百人くらいということを申しております。私行きました機会に、そのことは向うははっきり言いませんでした。わかりません。ただしかし、私どもが行きましたときに、これは初めの、まだ例の議題問題で深刻に議論しない前でありますが、そのときには、新聞やあるいはラジオなんかでそういうことをいって、帰れる者は帰れるのだということで一つ放送してもらいたいというふうなことを願ったわけでありますが、議題がそっちの方に入らないというようなことで、実はそれも最後までやってくれなかったようであります。われわれが行って、日本人の、帰国の希望者の帰国問題をやっておるということは、毎日々々向うの新聞に出ておりましたから、機会があれば平壌のわれわれあてに手紙くらいはくるかと思っておったのでありますが、朝鮮人からはだいぶきておりましたが、日本籍の者からは一通も手紙が実はきませんでした。大部分の人はおそらく朝鮮人と結婚しておる婦人というようなことではないかと、これは想像でありますが思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/12
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013・竹中勝男
○竹中勝男君 そうしますと、ある時期には、日本では大体二千人程度北鮮におるという推定をされたわけですね。実際においては二百人くらいというと、だいぶ数の開きがあるのですが、二千人というふうに推定されたときの事情はどういうわけなのでしょうか。どういう根拠でそういうふうに推定されて、向うに申し込みされたのでしょうか。この草葉さんのときと言われるときは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/13
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014・葛西嘉資
○参考人(葛西嘉資君) これはその事情は、私が申し上げるよりもむしろ政府の未帰還調査部の方へお尋ね願った方が正確だと思いますが、ただ二千人ということは、私どもは公式に北鮮の方には申し込んでおりません。二百人ということも、雑談でこういうことがあったがということを言っておってただ若干おると思う、向うもごく少数の日本人がおるということを電報で公式に言っております。ベリー・スモール・ナンバー・オブ・ジャパニーズ、それがおると言っておるだけであります。公式にはそれだけしか言っておりません。これは軽々に一体どれくらいおるかということを言うか言わぬかということは、私ども権限も与えられておりませんし、向うには何にも言っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/14
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015・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 御質問もあろうかと思いますし、またお二かたには非常に御迷惑ですが、たまたまソ連引き揚げ交渉のためにロンドンに行っておりました田辺引揚援護局長が一昨日帰朝されまして、きょうお見えになりましたから、この方から御意見を聞いて、一緒に御質問願うというふうにしたいと思いますが、(「異議なし」と呼ぶ者あり)それでは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/15
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016・竹中勝男
○竹中勝男君 今の数の問題は、中共にもソ連にも日本が初め言ったのと非常に違うのです。非常に著しく違うのですね。そういう点は、最初にこの委員会では研究する必要があると思いますので、あらためてまた申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/16
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017・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 途中で恐縮ですが、それでは田辺引揚援護局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/17
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018・田辺繁雄
○説明員(田辺繁雄君) 御指名によりまして、簡単に御報告申し上げさしていただきます。
一月二十八日にロンドンに到着いたしまして以来、松本全権の随員といたしまして引き揚げ問題に関するいろいろの補佐をいたしましてやって参りました。引き揚げ問題を含めての交渉の全体に関する問題につきましては、いずれ全権がお帰りになりましてから詳しく御報告する機会もあるかと思いますが、私全権の御指示によりましていたしました範囲のことをお話し申し上げたいと思います。
到着して間もなく、二月一日の日に、こちらから先方に届いておりました、ロンドンに到着しておりました一万余名の未帰還者の名簿カードを先方に持って参りまして、ソ連大使館に持って参りまして、カードの性質をよく説明すると同時に、先方に対してその調査を要望したわけでございます。一万余名と申しますのは、ソ連においてかつて生存しておったという資料のある者全部の資料でございまして、その一枚心々のカードには本人の姓名と本籍地、性別、年齢及び最後に生存しておったという時期と場所が書いてございます。それが帰還者の証言によるのである場合と、それから現地からの通信による場合と区別してあります。終戦以来今日、昨年の十月一日現在でそれが全部で一万一千百七十七名でございます。そうして調査を要望する趣旨は、ソ連の官憲において現在保有しておる資料と照合の上で現在どうなっておるかを書いてほしい。資料があった場合において資料によって現在生存しておるか、あるいはすでに死亡したか、資料がないなら資料がないということを言ってもらいたい、この三種類に分類して返事をしてもらいたいということを申し入れたわけであります。さらに三月十三日の正式会談におきましては、松本全権から、未帰還者の調査に関してさらに申し入れをいたしまして、その促進を要望せられたわけでございます。さらに三月十九日に、松本全権の御指示によりましてソ連の大使館に入りまして、調査を要望せられた趣旨をさらに詳しく説明いたしました。これは一等最初に持っていったときに説明しましたものをさらに敷衍したものでございまして、生存者については生存の状況、死亡者については死亡した時期、場所、死亡の原因等を知らしてほしい。それから生存者につきましては、希望するならばすぐ帰れるようにあらゆる便宜を与えてほしい、そうして希望すればすぐ帰れるのだということ及び便宜が与えられるのだということを十分周知徹底さしてもらいたいということを申し入れたわけでございます。さらにその際には、一枚一枚のカードになったもののほかに、それと全く内容は同じでございますが、連名簿になったものを作成いたしまして、それを先方に渡しておきました。この連名簿は先方におきましてわれわれの方に要望してきたのでございます。一枚々々のカードでは調査上不便であるというので、連名簿になったものを作成してほしいという向う側の依頼に基いて、現地において作成したものでございます。なおその際調査の趣旨といいますか、われわれの方で向うに要望しました趣旨ということはこういうことであります。十年間肉親の安否を案じながら待ちわびておる家族の立場を考えて、日本側としては、この現在の消息を明らかにするために必要な一切の手段を尽したい、こういう考えからソ連側に対して、ソ連の持っている資料に基いて調査を要望するということを申しました。調査の趣旨と家族の安否を十分向うに伝えたわけでございます。前後三回にわたりまして、マリク名簿と申しますか、ソ連側が提出した名簿に載ってない未帰還者で、ソ連にかって生存しておった居留資料のある者を、昨年の十月一日で集計した名簿と及び連名簿によった名簿とそれから一枚々々のカードによったものというものを両方先方に渡して参ってきたわけでございます。
非常に簡単でございますが、私が全権の御指示によりまして直接やって参りました範囲につきまして御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/18
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019・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) どうか御質疑を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/19
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020・竹中勝男
○竹中勝男君 今の継続ですが、日本の考え方は、最初は北鮮に二千人くらいおるだろう、ある時期におったというふうな推定を出しておられるようですね。それから中国においてもそういう数字が出ておる。またソ連については一万一千百七十七名という者が、まあ日本の政府の手元においてはソ連におるという推定をしておるわけですが、今度は実際に先方において判断する人数とはだいぶ開きが――北鮮では十分の一という数字を大体今報告されておるわけですが、中共ではどういうように向うは返事をしておりますか、日本のこちらから申し入れているのに対して。一つの点はそれと、もう一つは、ソ連からまだ何もこちらから出された一万一千幾らという数字に対しての回答はないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/20
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021・田辺繁雄
○説明員(田辺繁雄君) 先方では日本側から提出した資料をもとにして、向うの持っている資料と照合の上で返事をしてもらいたいということを要望したわけでございます。先方では、日本側の方から提出いたしましたカード名簿、それに基いての調査は今時間がかかるということを申しておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/21
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022・竹中勝男
○竹中勝男君 向うが持っておる名簿というものはどれくらいな数字になっているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/22
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023・田辺繁雄
○説明員(田辺繁雄君) その数字は、どのくらいの資料がありますか、それはわからないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/23
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024・竹中勝男
○竹中勝男君 それは聞かれなかったわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/24
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025・田辺繁雄
○説明員(田辺繁雄君) それが完備しておりますれば直ちにすぐ返事できるのでございましょうが、それがどの程度まで整理されているかわからないわけでございます。私の方で持っている資料では、少くとも入ソし、生きておったという資料があるわけでございまして、全部について向うで資料を作っているかどうか、それは百パーセントわからないわけでございます。これは今後――従って資料がない場合にはやむを得ないことでございまするので、資料がないということを返事してほしいということを要望したわけでございます。これはまあ終戦直後のああいった時期でございますので、名簿を作るひまもない時期にいろいろな不幸な事態にあった人もあるわけでございますと想像されますので、向うとしては、われわれの出してきた資料と、向うで現に持っている一切の資料と照合して返事をしてくれるように申したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/25
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026・竹中勝男
○竹中勝男君 まあいつごろということは向うはまだ回答して参りませんか。それが一つと、それからもう一つは、日本の政府は中共にどれくらい日本人が抑留、あるいは戦犯、あるいは残留しているというように調査しておられますか。その点、それから中共の方はどういうように日本人の数を考えておるかという問題。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/26
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027・田辺繁雄
○説明員(田辺繁雄君) 現在何人生存しておるかという現実は私の方では一一調査したわけでございませんので、正確にこれを把握することは困難でございます。従って大体の推定になるわけでございます。いわゆる戦犯者と称せられるのが一千六十八名でございましたか、そのほかに約六千名前後と推定いたしております。しかし、中共地域における未帰還者全部と申しまするというと、この四万三千七百七十一名、これが昨年十月一日現在の資料でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/27
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028・山下義信
○山下義信君 二、三の点につきまして、政府並びに今回全権の随員として御足労願いました――まだ随員の御資格でありますかどうかわかりませんが、田辺局長に伺いたいと思います。
まず最初に、日赤副社長並びに井上外事部長から先ほど御意見を拝聴いたしますと、今回の北鮮の会談の中で――会談の中というよりは、北鮮の会談におきまして非常に大きな問題になりましたのは、いわゆる在日朝鮮人の引き揚げの問題なんです。この問題が壁にぶつかって北鮮会談が長引いていろいろの御苦労を下さったんです。今両参考人のお話を聞きますというと、日赤においてもこの問題に対して尽力をするということの公約がなされて、ただ出先の交渉に当った方々は権限もないし、方針もきまってないから、これを議題にすることもできなかったし、交渉の相手になることもできなかったというお話である。なお井上外事部長の御意見では、日赤としても人道上の立場から、われわれが北鮮にいる日本人の帰還を望むと同じように在日朝鮮人の帰鮮の問題もできるだけ努力し、すみやかにそれを実現することを強く望んでおるということであります。しかしながら、両参考人の御意見を聞いても、これらの問題は政府当局が方針をおきめにならなければどうすることもできないことである。日赤としてはこれ以上は手の施しようがない状態であるから、一日も早く在日朝鮮人問題についての政府当局の御方針を御確定に相なるように、また国会においてもそういうふうに一つ御努力願いたいという今の御陳述があったのです。私はこの際、在日朝鮮人問題についての政府当局の御態度は、どういうふうな御方針をもって今後お進みになるお考えであるかということを、この際承わっておきたいと思います。
それで、本日は外務大臣の御出席を求めておいたのでありますが、大臣が御出席なけらねば、外務省の責任者から御答弁を願いたいと思うのですが、どなたが見えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/28
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029・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 政務次官が見えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/29
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030・山下義信
○山下義信君 それでは政務次官から御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/30
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031・森下國雄
○政府委員(森下國雄君) ただいま参りまして、大へんおそくなりましたのですが、北鮮の問題を解決することは御承知のように非常にこれは何と申しますか、国際問題がまだ解決してないので、今すぐに打ち出すわけには参りませんけれども、この問題を早期に解決したいと思いまして、去る二十五日大村収容所に参りまして実情を調査いたして参りました。昨日帰って参ったのでございます。この問題に対しましては、本省と相談を続けており、できるだけ早くこの線を打ち出して、一日も早くこれを具体的に現わしたいとかように考えて、今せっかく検討中でございます。それだけ申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/31
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032・山下義信
○山下義信君 それでは、その問題はそういう程度にとどめておくことにいたしましよう。
日赤関係のことでいま一つ関連して承わりたいと思いますのは、最近ハバロフスクの収容所の状態につきまして、政府はどういうふうな実情調査をなさろうとするお考えでありまするか、あるいはまた政府みずから調査する方法がなけらねば、日赤をして調査団を組織し、これを派遣し等の方法でもおとりになりまして、すみやかに実情を明らかにして、事態を明白にし、国民の不安、あるいはその関心に対して真相を明白にするというお考えがありますかどうか、また関連いたしまして、収容者の慰問等につきまして、政府はいかなる方針をおとりになるお考えでありますか。この際、外務省当局のお考えを承わりたいと思います。関連して厚生大臣の御所管に関係がありますれば、厚生大臣からも御所見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/32
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033・森下國雄
○政府委員(森下國雄君) お答え申し上げます。ハバロフスクのこの問題は、ロンドンにおきまして西大使を通じて今交渉をしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/33
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034・山下義信
○山下義信君 どういう御交渉の最中でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/34
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035・森下國雄
○政府委員(森下國雄君) 実情を調査すると同時に、一日も早くその帰還の、帰す方法についていろいろ交渉を進めております。主として、実情を調査することの交渉が第一であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/35
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036・小林英三
○国務大臣(小林英三君) 今山下さんの御質問の、先般のハバロフスク収容所におきます事件につきまして、私どもが、第六次のソ連引揚者の報ずるところによりますというと、減食懲罰が行われまして、そうして主食は通常一日につきまして七百八十グラムのものが四百五十グラムに減食されておりまするほか、副食物につきましても通常よりもかなり減食されているという報告を得ているのでありまするが、これは事実といたしまするというと、きわめて重大な問題でございまして、このことによって、せっかく十年余にわたりまして抑留者の方々が持ちこたえて参りました生命身体に損傷を来たすことが憂慮されておりますので、ただいま外務政務次官から御報告がありましたように、現地のロンドンの大使を通じまして、この問題について調査し、また日本政府としての希望を申し込んでおるわけでございますが、厚生省といたしましては、これらの対策といたしまして、御承知のように、慰問品を継続的にこれらの抑留邦人に届ける必要がある。これは国会でも非常な御希望、御決議もあったのでありまして、とりあえず二月分と三月分を、価格にいたしますというと、一回分が、一カ月か約百六十万円ばかりになります。両方合せまして三百二十五、六万円になると思いますが、これを、二カ月分をまとめまして届けているのであります。一人当りが一カ月分千二百円、実質的には千五、六百円のものでありますが、非常に安くなっておるのでありますが、千三百六十五人分を慰問品といたしまして、先般の第六次引揚船でありました大成丸をもって、引揚者の出迎えのときにことずけましてお送りしたわけであります。今後引き続きこういう問題もやって参りたいと考えております。同時にこの問題につきましては、日赤の方でも非常に御協力を願っておるわけでありますが、今後この生命身体に危険を及ぼすような問題につきましては、外務省を通じて交渉中であるのであります。そこで、ただ問題は、慰問品が果して現地の人々に届くかどうかという題題をわれわれは憂慮いたしておったのであります。先般大成丸をもって送りました二カ月分につきましては、これは向うの方から日赤を通じまして、すでに他にかわったような人の慰問品をどうするかというような回答も来ておりまするから、多分これはそういうような処置を向うでもわざわざ聞いてきたくらいでありますから、その二カ月分の慰問品は現地に届いておるものとは思っておるのであります。ただ、今後の問題といたしまして、われわれがほんとうに現地の引揚者に確実に届くということを知ることは、これは政府はもとよりでありますが、家族の人たちのほんとうに知らんとするところでございます。これを今回の問題につきましても、現地の収容所におられます邦人の代表が確かに受け取ったという領収書をほしいと、こういうふうにしたいと思っておるのであります。これから後の問題につきましては、これは船便で参りますというと、米国経由でありますけれども、二、三カ月はかかるのでありまして、今後運輸省等とも相談をいたしまして、慰問品のための船を、海上保安庁の巡視船等を利用いたしまして持って参りたいというので、ソ連の了解のために外務省でその問題についても、今の問題はこれは別にということはありませんが、届けることは船でやります。海上保安庁の船でやるということに、運輸省とも連絡をいたしておるわけであります。今後持っていきますものにつきましては、日本赤十字にも交渉してもらって、収容所ごとの代表者の名前で領収書がほしいということを先方に御交渉願うということになっておるのであります。それからなお今後は、個人々々の領収書を添えて出して、それに一々サインを押してもらって、それでこちらが安心ができるようにということで、その点は日赤を通じまして、ソ連の赤十字社にそういうようにしたいがどうかという問題について御交渉を願っている段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/36
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037・山下義信
○山下義信君 御懇切な答弁をいただきましたのですが、慰問品を御心配いただき、その送り方、受け取り方につきましてはいろいろ御尽力をいただきまして感謝します。
私の伺いますことは、ハバロフスク収容所の実情調査並びに慰問等のために現地に日赤等を使って、日赤に調査団あるいは慰問団等を作らせて派遣させるというようなお考えはないかということを聞いたのですが、外務省の方にもそれに対する御答弁がない、厚生大臣もお答えがなかったのでありますが、私はそれは西・マリ交渉で実情をお尋ねになるのもよろしいけれども、それは正確なことも回答するでしょう、しかし、できるならば日赤のような組織を通じてですね、人道的立場から現地へ派遣するということは、国民が等しくあるいは望むのではないかと考えられるので、政府にそういうお考えがあるかということをお尋ねいたしたのでありますが、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/37
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038・森下國雄
○政府委員(森下國雄君) 外務省としましては、日赤を通じてそういう今のようなハバロフスクの実情を調査、慰問するということは、これはやりたいという希望を持っております。しかしそういうことをどういう形においてやっていくか、さらにこれは一段の検討をいたして、実情に即してまた実現できればけっこうだと思います。そうして一方そういう方法をもってこれを慰問し、また調査をし、またロンドンを通じてそうした調査を、両方から調査をしながら一方慰問をする、実情を調べるということはいいことだと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/38
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039・山下義信
○山下義信君 その点重ねて実現の促進を要望いたしておきます。田辺全権随員に伺いますが、わが方から提出されました一万一千四百余名の生存者の名簿を提出になったということでありまするが、この生存者であるという一万一千四百余名のこれは生存しておったというこの資料、おそらくこれは終戦直後の昭和二十年、二十一年当時からの生存の資料の合計であろうと考えられますが、これは今日、現在生存という確証がある数字なんですか、それとも昭和二十年、昭和二十一年から逐年今年に及ぶまでの生存の確認された数字であって、この一万一千四百余名は今日日本政府において現在生存確実であるというこの資料がある数字でありますか、その辺いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/39
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040・田辺繁雄
○説明員(田辺繁雄君) これは先ほど私の言葉が足りなかったと思いますが、これは終戦後昨年の十月一日現在までの間に、一定の時迄においてソ連において生存しておったという資料があるのであります。従って昭和二十年のいつかに生きておったというだけで、今日まで何ら資料もないものも、また古い時期に生存しておって今日もそのままであるという資料も含まれております。同時に、最近に生存しておったという資料からなるものも入っております。昭和二十五年以降健在であったという資料からなるものは三百八十五名でございます。それ以外のものは一万七百九十二名でございます。従って御質問の現在絶対生存確実かどうかということは、これは比較的の問題でございまして、比較的最近において健在であった資料からなるものは、今日も生存の確実度が高い、それからそれ以外の古い時期において生存の資料のあった人は生存の確実度においては三百八十五名、つまり最近において生存しておったという資料からなるものは低い、これしか日本側にはわからないのであります。のぞいて見るわけにはいかないのでありまして、そこでわれわれの方で現在どうなっているかということを一応向うの方でも調査して欲しいというのが、これが調査の趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/40
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041・山下義信
○山下義信君 私は今回の田辺随員の御使命は非常に重大であって、そのことをなされたことは、松本全権の複雑多岐なる交渉に比較すれば、抑留邦人の在否、引き揚げ促進という一問題に問題がしぼられて簡単明瞭であるようでありますが、あなたの使命は非常に重大である。それでお帰りになりまして、その点に関する御報告の一言一句はただに在ソ留守家族の人たちが耳目をそばだてるのみならず、全国民がその御報告の一言一句には非常に関心を持つのであります。先ほど竹中委員の御質問にお答えもありましたが、羽田にお帰りになって記者会見なされた記事が昨日なり、本朝なりに出ておりますが、私にはわからなかったことがある。こちらではカードを提出した、ところが名簿に作ってくれというので名簿に作り直して出したこう新聞に書いてある。何のことであるか、カードで出したのでは便利が悪くて名簿に直した、何のことであるかと思ったところが、本日の質疑応答によって、それは先方のソ連のいわゆるマリク名簿というのがあり、向うの名簿に照会のできるように突き合せて名簿を作った、こういうことである。それなれば先方の持っている名簿というのは、どのくらいの人数が載っておったかと竹中委員が質問したら、よくわからなかったと言う、これは外交の機微であって答弁ができないというような問題ならばいざ知らず御自分の目で見られ、わざわざロンドンまでおいでになって目で見られて、先方の方の名簿にこういうものが出ておったということはごらんになっておるのでありますから、ソ連側の名簿に登載されてあったものがかようなもので、その名簿というものはこの程度のもので、こういう種類に配列されておった、こういうものであったということは私はよくわかるように御説明相なるべき義務があるのじゃないかと思う。非常に重大でありまするから、その名簿にはおよそ五千名が登載されてあったか、三千名であったか、その記載の模様、体裁がどうであったか、雑駁なものであったか、どうであったか、わが方の提出したその名簿とカード、いわゆるこちらの資料と突き合せて見たときに格段の差があったとか、その内容を私はお話しに相なることが今回の使命の御報告のおそらく大部分であると言ってもよいのではないかと思う。帰還促進はもとよりでありますが、これは全権の使命だ、あなたは、この一万一千有余名の抑留邦人の生死安否、これをすみやかに調査させるということが重大な使命であったように私は考えておりまするから、その辺の模様をいま少しく詳細に御説明を願いたい。そして先方が調査した結果どういうふうな解答をしたか、どうすると言うたか、できるだけ早く調査して回答しようとする、それらの先方の回答文の印象はあなたとしてどう受けられたかということは、これは皆が気づかうところでありますから、たとえ先方が言うことがうそになっても、それは先にいってのことでありますから、あなたには責任ない。随員としての受けられた印象を明確に私はお示しを願いたいと、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/41
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042・田辺繁雄
○説明員(田辺繁雄君) これも私の説明が足りなかったために、誤解されておる点があるように思われますので一言つけ加えさしていただきますが、マリク名簿と申しますのは、昨年の九月五日でございますが、向うから今日抑留されておる日本人の数はこれこれで、それはでれだれだという名簿を出してきたわけでございます。それがいわゆるマリク名簿でございまして、その名簿に載っていないが、先ほど申し上げましたように、かつてソ連に生存しておった、昭和二十年の終戦のときから今日までの長い十年間にわたり、一定の時点において生存しておったという資料のあるものをこちらで出したのであります。また、マリク名簿というものを去年実は出していただきまして、それと私どもの方で持っておる名簿と調整いたしまして、それに載っていない資料を向うに出したわけであります。その調査を要望するゆえんというものは、十年間肉親の安否を案じない日とてはないこの家族の立場から、非常に心配しておった日本政府としては、これは法律にも書いてある通り、その消息を明らかにする責任がある。そこで日本側としては、一切の手段を尽したいという念願からいろいろやっているけれども、何と言いましても、実情を一番よく知っているのはソ連側のはずである。そこでソ連に対しまして調査を要望したのでありますが、ただ漫然と要望いたしましても、従来日赤が過去六回にわたって安否照会をやっておりますが、満足な回答を得られたことがございませんので、古い時期のものもございますので、現在ソ連の官辺の持っておる調査資料とよく照合した上、回答していただきたいということを申し出たわけでございます。そのわれわれの調査の趣旨とそれから留守家族の気持というものは、先方に十分私は通じたと感じております。向うが一枚々々のカードになったものでは調査に不便だから、それを同じ内容のものを、連名簿にしたものをほしいと向うから言ってきたわけであります。従って同じ種類のものを一枚々々のカードにしたのと連名簿になったものと両方日本側で提出したのであります。これは内容は同じものであります。そういった点からみまして、また私がその間質問をし、向う側でやっているいろいろの印象から申しまして、これは十分向う側でできるだけ調査をしようとする気持があるということは、私に十分感得されたわけであります。今日オーストリアにおきましても、ドイツにおきましても、イタリーにおきましても抑留者の送還は一応終っておりまして、すべてその公表された未帰還者の数字以外の未帰還者に関するいろいろの調査の要求をいたしております。日本側ではそれを今やっているわけであります。私の受けた印象といたしまして、また向う側が一枚一枚のカードになったものでは調査に不便であるから、それと同じ内容のものを連名簿にしたものをほしいと言った点からみましても、向う側としては、われわれの提出しました資料に基いてできる限りの調査を、時間がかかるとは言っておりましたが、調査をする考えがあるような感じを抱いて帰りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/42
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043・山下義信
○山下義信君 なお承わりたいことはありますが、他の委員の御質疑があるかと思いますが、肝心なことは調査の依頼しっぱなしということは、おそらくあるはずはないのでありまして、これはいつごろまでに調査をしてもらいたいとか、いつごろまでに調査してもらえますかということを言うのは、これは私は常識だろうと思う。これまた先ほど竹中委員が御質疑になりましてお答えのなかったところでありますが、田辺随員はその点を御依頼になりましたか。ただできるだけ早くとか、今のお言葉では、相当時間がかかるだろう、こういうふうなお話がありましたが、この調査の回答をいつまでにしてくれるようにというような要望といいますか、念押しといいますか、そういうものはなさらんかったのですか。ただ調査してくれと言いっぱなしでお帰りになったのですか。いつごろ調査の回答を期待しておられまするか。これは全般の日ソ交渉とも関連のあることだろうと思いますが、そう関連をさせないで、その点だけについて、およそいつごろになったらば、ソ連側の調査がわかるだろうと随員は御期待されますか、その点を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/43
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044・田辺繁雄
○説明員(田辺繁雄君) ただいまお話の通り、私その点は実はいつごろまでという時間的な制限は十分つけたかったわけでございますが、これは日ソ交渉というものの現在の段階におけるいろいろの関係上、今来ている随員の向うの方では、そこまでの回答をいただくことは困難であるように思いました。ことに急いで変な回答をよこされるよりは、みっちりした十分な調査をしていただくということが大事でございますので、むしろ十分向うの資料を整理せられて、検討せられて、みっちりと調査したいい回答をいただきたい、今まで探したが見当らないという程度の回答では困るのであります。十分みっちりした調査をしていただくようにお願い申し上げまして、この点は今後もまだ問題があることでございますので、十分その点は、外務省を通じまして続けて参りたいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/44
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045・山下義信
○山下義信君 最後に、外務政務次官が見えておりますから、これはすでに昨日来新聞で報道されていることでありますが、政府におかれては、この抑留者の引き揚げ促進の問題を、あるいはその他の漁業問題等もあるかもしれませんが、要するところ、休会になった従来の日ソ交渉とは切り離して、この抑留者の引き揚げ促進の問題については別途に日ソ交渉をされるということが報道されておりますが、これは事実でございますか。その御方針等につきまして、この席で承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/45
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046・森下國雄
○政府委員(森下國雄君) お答えを申し上げます。ただいまの抑留者引き揚げの問題は、一応松本全権がこちらに帰って参りましても会談を打ち切ったのではございませんので、随員がロンドンに残っております。従ってこの抑留者の問題は、その随員間におきまして常に交渉を続けておりますし、今後さらに続けさせるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/46
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047・山下義信
○山下義信君 なお、外務大臣がお出ましですと非常に都合がよろしいのですが、しかし、政務次官に承わって、御承知であるかもわかりませんが、厚生大臣、厚生政務次官もおそろいでございますからこの席で承わるがよろしいと思います。ことに本日は、本委員会に付託されました未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案に関連が非常にありますから承わりますが、外務大臣は閣議において、留守家族に対しての援護の強化のためにあるいはある程度の補償をしていく、何らかの援護をいたしたいというような御意見が発議されたということでありますが、この点につきまして、外務省としてはどういうお考えを持っておられまするか承わりたいし、厚生省とされまして、厚生大臣は、その点についてどう考えておられるかということを承わりたいのであります。これは考えとしましては、あるいは長期抑留者に対して、あるいはまた今後交渉が相当長引く、抑留期間が長引いていくというこの長期抑留者の留守家族、その人たちの犠牲に対して国が補償していくというようなことについての考え方は、私どもはこれは一つの考え方であるということはわかるのであります。しかし、こういうことを考えられる裏には、なおこの引き揚げの交渉は長期にわたる、早急には実現を見ないのではないかと予想される外務大臣の腹があるのではないかというような気持がするのです。いろいろそういう関連しましての憶測もございますが、そういうことは別として、留守家族に対する国の措置としまして、そういうことが政府部内において問題になっておるのでありますれば、どういうふうな考えでおいでになるか、どういう御構想であるかということにつきまして、この際承わっておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/47
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048・森下國雄
○政府委員(森下國雄君) 仰せの通りでございまして、閣議においてこれが問題になった、話が出たということは承わりましたが、外務省としてはその所管ではないのではありまするけれども、外務大臣は非常にこれを心配いたしておりまして、そういう話が出たと、かように承わっておりまして、これが決定したとは承わっておりません。閣議のことは厚生大臣の方からその模様を一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/48
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049・小林英三
○国務大臣(小林英三君) 今、山下委員からお聞きになりました日ソ交渉が今のような状態になっておる点について関連いたしまして、今後の留守家族の処遇等の問題について政府はどういう考えを持っているかというような御質問であったと存じますが、これは先般総理大臣を中心としましてこの問題をいろいろお考えになっていることは事実でございますが、まだ具体的の問題につきましては決定をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/49
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050・山下義信
○山下義信君 お話が出ましたことは、新聞にすでに出ておるのでありますから私どももわかっております。私どもじゃありません、皆が新聞を見ております。実現の見通しが、何かの形で実現の見通しがありますか。所管大臣としての御所見はいかがでありますか。実現もせぬようなことをまるで何といいますか、好飼をぶら下げて留守家族を喜ばせる。留守家族どころではございません。七百万の引揚者みな同じような気持でおるのであります。もらえるかもらえぬかは別として、同じような関心を持っております。そういう好餌といいますか、何と申しますか、そういうことを、閣議の席や総理以下関係大臣が集まって言っておいて、そうしてできるかできぬか、まだわけのわからぬ状態というのは私は非常におもしろくないと思います。でありまするから、所管大臣として、そういう話が閣議で出たら、大臣とされてはその線に沿うて実現するというお考えでありますか。そういうお説が出ても、国家補償なんというものはできない、それをやるというと大へんなことになる、七百万の引揚者みんなに及んでくるということになり、長かろうと短かかろうと、抑留された期間の間に対して国がある一つの補償をするということになれば、多少にかかわらず、軽重にかかわらず、長短期にかかわらず、みなやらなければならぬから、実現は不可能ならば不可能とおっしゃい、厚生大臣の所見はいかがでありますか。そういうできもしないことの好餌を掲げて、そうして泣いている抑留者の何といいますか、あめをねぶらせ、頭をなでるということは、誠意がないと思います。無責任な片言隻語ではいけないと思います。でありますから、閣議でそういう話が出た以上は、何とかまとめてそれを実現させるというお考えがあるのか、あるいはそういう抑留者に対して国家が補償をする、あるいは一時金なんかの形で措置をするというようなことは不可能であるか、やろうとすればできるのか、やる方針であるのかということは、具体的なことはこれから御検討になりましょうが、大体として政府のお考え、決意というものは当然これはなくてはならぬ問題であります。でありまするから、私は重大な影響があると考えますので、この点御所信を明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/50
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051・小林英三
○国務大臣(小林英三君) 今の山下さんの御質問並びにこの御意見につきまして、先ほどの御質問につきまして、私の言葉が少し足らなかったと思います。閣議で、こういうふうな問題につきまして出たことはまだないのであります。私が申し上げましたのは、先般の新聞に載っておりましたいわゆる鳩山総理を中心として、こういう問題に触れられたことにつきまして申し上げたのであります。もちろん私といたしまして、閣議に出ました場合におきましては、それらの留守家族の全般の問題つきましても考慮すべきものであると思います。その際には、十分に検討いたしますし、私が所管大臣としての良心におきまして、でき得る限りは私の意見も十分申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/51
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052・山下義信
○山下義信君 私は質問を終りますが、今申し上げましたこの問題が明確にならなければ、現在審議中の未帰還者留守家族等援護法のこの法律案は審議をすることはできません。これは非常に重大であります。でありまするから、今ここであるいは即答を求めることはかたきを強いることになるかもしれませんから控えまするが、できるだけ早く、政府の方においてそういうお考えがあるのならば、可能か不可能かを御検討になり、どういう案でまとめていくかという御方針をすみやかにおきめに相なりまして、次回までに具体的な御答弁を得たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/52
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053・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/53
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054・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/54
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055・田村文吉
○田村文吉君 簡単な問題ですが、平壌に四十八人が集結したということはどういう人たちがそこへ集められたのですか、集まられたのでありますか、それがおわかりになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/55
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056・葛西嘉資
○参考人(葛西嘉資君) お願いをしたのは、一昨年の一月に希望者を帰してくれと言ったのですが、具体化したのが昨年の五月ごろから具体化して、そうしてどういう経路を通じたのか知りませんが、とにかく四十八人だけ日本へ帰りたいという者をぽつぽつ集めた、これは一ぺんに集まったのではないようであります。だんだんに数がふえてきておったと、ところが四十八人集まった中で、これは子供を加えてでありますが、だんだん集まってみると、いろいろ考えてみると、子供の教育のことなんかを考えてみて、そうしてお父さんが朝鮮人で、そうして自分は、あまり日本へ帰りたいと言って帰ってしまうと、子供の将来のためでないというようなことで、十二人今度は帰る意思を放棄しました、これは外事部長が行って確かめました。向うもそう言っております。本人に会って、そうして四家族十二人が残り、今度帰るのは三十六人であります。で、おそらくああいう国でありますが、本人の希望も聞いてやる。中には、だれが帰るからというのを聞いたからというのもあるだろうと思うのです。そんなことで、朝鮮側でそういう希望を確かめてそしてそれをわれわれの代表団も確認をして帰りたい者は帰す、残りたい者は残す、自由意思でやる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/56
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057・田村文吉
○田村文吉君 それ以外には帰りたいという人がないということに了解していいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/57
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058・葛西嘉資
○参考人(葛西嘉資君) それは今のところはそういうことだと、まだやっぱり、行って聞いてみると、だれとかさんは帰りたいと言っているがというようなのがぽつぽつあるようでした。実際には、ところがもういろいろ家庭の事情などがありまして、ただ具体的にわれわれが聞きましたのは夫婦になっている、ところがおやじが何か悪いことをして刑務所へ入っている、夫婦別れをして本人は帰りたい、ところが夫婦別れを、入っている方が承諾しないというようなことで、それで帰れないというような者もあるようです。今のところは大体こういうことだろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/58
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059・田村文吉
○田村文吉君 犯罪か何かを犯したためにという名目で押えられているような人がいるのでしょうか、いないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/59
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060・葛西嘉資
○参考人(葛西嘉資君) これは私どもにはわかりませんでした。おそらく中共の場合にいたしましても、犯罪を犯して残っておる者がおるということでございますから、そういうものは数は少いからどうかわかりませんけれども、もしあるとすれば、北鮮にもあると、これは独立の主権で、司法権の作用で押えておるものですから、これは希望があっても帰れないのは、これは日本におる外国人でも同様でございますから、同様であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/60
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061・高野一夫
○高野一夫君 葛西さんにちょっとお伺いいたしたいのですが、この北鮮の方で、抑留所に収容されておる日本人あるいは一般市民の中にまじって生活している人たちの生活状況ですが、これは先般来、ハバロフスクの収容所に収容されている人たちのいろんな生活待遇状況をしばしば非常にいいようなふうのみやげ話を聞かされて、しかも昨年末ハバロフスクから引き揚げてきた人たちのほんとうの話を聞いて非常に差のあることがわかったのです。それで北鮮の方からのたよりも、新聞に出るのは、音楽をやって楽しんだり、あるいはダンスをやったり、安来節を踊ったり、ピンポンをやったり、いかにも愉快そうな生活をしている写真が出て、そのほか非常に待遇その他においてもいいような報道のみが日本に伝わるような感じがしてならない。一方また一般市民の中に入って生活しておる日本人、そういう人たちがどういう生活状況であるかということは、この在日朝鮮人の問題ともいろいろからんでくると思いますので、それにからんでまたわれわれ考えたいと思うので、その点あなたがお感じになった点を率直に、簡単でけっこうですから、お聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/61
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062・葛西嘉資
○参考人(葛西嘉資君) お答えいたします。その前にちょっとお断り申し上げたいと思うのですが、北鮮の場合には、抑留という観念はないのであります。それで日本人がおるとすれば、これは市民生活を一般に他と同様に送っておる、外国人として他と同様に送っておる、こういうことでございます。従って平壌にあるのも、あれは抑留所ではなくて、集結所と、これははっきり言っておりますが、帰りたい者を便宜そこに集めておるということであります。
それから一般の方の生活状況でありますが、どういう生活をしておるかということは、私ども日本人に会いませんでしたから、全然北鮮の場合はわかりません。しかし私どもの見たところでは、北鮮の現在の一般の生活状況というものが、これは非常に低うございます。食糧、衣料というようなものは最低のものの配給というような格好でできておるようでございます。しかし非常に低い生活、これはもう戦争の直後でございますから、無理もないと思うのです。ただ、四十八名の集結所に集まっておった帰国希望の日本人が、これは向うも申しておりましたが、大体朝鮮における中流以上の生活だと申しておりましたが、私どもは結論から申し上げますと、これを認めざるを得ないと思いました。認めました。で顔色も悪くありませんし、それから集結所の状態でも旅館の一部をさいて入れておりまして、相当な待遇をしてくれているものと、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/62
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063・高野一夫
○高野一夫君 ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/63
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064・葛西嘉資
○参考人(葛西嘉資君) それからちょっともう一つつけ加えますが、ダンスをしたという話でありますが、中共の戦犯の管理所を見て参りましたが、これは私どもの見たところでは、ことにまた昨年の秋あたり赤十字の代表が撫順を見たところでは、これは労働もさしておりませんし、レクリェーションなどをやった。それからあとは学習でありますか、そういうことをさしておりまして、衣食住ともこれまた心配する状況ではないと思いました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/64
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065・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) それじゃまだ御質問の方もあると思いますが、非常に長時間にわたりまして、お二人の方にはいろいろ御協力を願いましてありがとうございました。
また場合によりましては、書類等によっていろいろお聞きする問題もあろうと存じますし、あるいは全般的な引き揚げの問題、慰問品の送付等に御協力を願わなければならないと思いますので、何分の御協力をお願いいたします。非常に長時間にわたりましてありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/65
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066・井上益太郎
○参考人(井上益太郎君) 正確に申し上げる必要があると思うのでございますが、朝鮮の方で集結している人の中で帰りたくない人が出てきた。しかしそれをやはり収容しているんだ、それはどういうわけかというと、日本の代表団が来るのだから、そのときに意思を確認してもらいたいということを言ったんです。これは拒否いたしました。意思を確認するかどうかという決定権は主権の問題で、これは朝鮮の赤十字社にあるのだ。だから、われわれが朝鮮赤十字社がそういうふうに認定されればその通り認める。ただわれわれとしてはここに来たんだから、事情はよく聞こうと、こういうふうに申していたわけであります。実情は間違いありません。ですからもちろん事実的には確認してきましたが、法律的には共同確認をしたわけではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/66
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067・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 非常に長時間にわたってありがとうございました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/67
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068・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) それではこの際、議題を追加いたしまして、引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案を議題といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/68
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069・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) では、引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案を議題に追加をいたします。
提案理由の説明を木村衆議院議員にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/69
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070・木村文男
○衆議院議員(木村文男君) ただいま議題となりました引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案の提案理由について御説明申し上げます。
改正点は、法附則第七条に規定する引揚同胞対策審議会の存立期間を三カ年間延長することであります。
引揚同胞対策審議会は、第二国会において議決された引揚同胞対策に関する決議に基き、昭和二十三年総理府に設置された機関でありまして、この審議会は引き揚げ促進並びに遺家族及び留守家族の援護等に関する諸問題につき、民間の陳情を審議し、かつ、実情を調査して、引き揚げ同胞対策を考究し、その結果を内閣総理大臣に報告することを目的としておりまして、設置以来今日まで十九件の報告を行いきわめて重要な役割を果してきたのでありますが、その存立期間が昭和三十一年八月三十一日をもって満了することになっているのであります。
しかるに、未帰還問題の現状は、日ソ交渉の開始等により、その解決に明るい見通しが出てきたとはいえ、これらの地域にはなお多数の残留者及び状況不明者がありまして、これら未帰還者の帰還促進及び状況不明者の調査究明の問題が残っており、また、国内的には遺家族及び留守家族の援護の問題等があるのであります。
かかる重要な諸問題の解決をはかりまして、未帰還問題の終局を全うするためには、この審議会の活動に待つべきところがきわめて多いと考えるのであります。以上の事情からこの審議会をなお存続する必要があると思うのであります。現在未帰還者の帰還促進と調査究明を行うことは、未帰還者留守家族援護法第二十九条の定めるところにより、国がその責任において行うべきことを明らかにしておるところであります。
審議会の存続期間は、右の未帰還者の帰還促進及び調査究明についての国の努力目標である三カ年計画及び未帰還者留守家族等援護法の一部改正に対応してさらに三カ年存続させる必要があると考えられますので、この改正法案を提出した次第であります。
何とぞ慎重に御審議の上、御賛同賜わりますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/70
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071・高野一夫
○高野一夫君 今日は朝鮮の問題について参考人においで願っていろいろ話を聞き、質疑をいたしたわけでありますが、この問題に関連して早急に考えなければならない大きい問題として、先ほど来、山下委員並びに竹中委員から、在日朝鮮人の問題にも及んで御質疑があったわけであります。この点について、私は一点だけ外務省に伺っておきたいことがあるのであります。それは何かといいますと、例の出入国管理令によりまして強制退去を命じられた朝鮮人の問題である。これは直接の主務官庁は法務省だと考えますけれども、これを朝鮮の南鮮、北鮮の政府とどういう交渉をされるかということについては、当然外務省が参画しておられるはずだと思います。そこで、大村の収容所に強制退去を命じた朝鮮人が一体現在何名くらいになっておるか、それが北鮮と南鮮とでどういう比率になっておるか。もう一つは、北鮮と南鮮の政府に対して、この強制退去を命じた人たちの引取方についてどういう折衝を行われて、どういう誠意ある態度を南北朝鮮の両政府が示したかどうかということについて、外務省側の、今までの経過を簡単でけっこうですから、聞かしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/71
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072・森下國雄
○政府委員(森下國雄君) ちょうど出入国管理令に違反して現在大村収容所におります者を一昨日調べて参った次第でございます。現在大村収容所におります者は千四百三十三名おりまして、千四百三十三名のうち、千二十八名が出入国管理令に違反して抑留しておるものであります。そして残りの四百二十名が刑罰関係のものであります。四百二十名のうち十五名だけは、病気で市内の病院にこれを収容いたしております。行きまして実情を調べてきたのでございますが、こまかないろいろ問題もありますけれども、このうちから北に帰りたい人と、南に帰りたい人と出て参っておりまして、これを詳細に調べましたところ、出入国管理会に違反した者千二十八名のうち、五十四名は北に帰してくれ、こういうふうに申し入れております。それから四百二十名のうち、病人を差し引いた四百五名のうち、二十九名は北に帰してもらいたいと言っております。それで、北と南に分けて収容所には収容いたしておりまして、これらに自主的にいろいろなことをさせておるようでございますが、これらの人々をどういうふうにして北鮮に帰してやるか、どういうふうにして韓国に帰してやるかということを、実は先般、私的懇談ではございましたが、国内的には法務省と再三懇談をいたしまして、何とかして、この連中を北鮮では引き取ると言っておりますし、韓国の方では困ると言っておるのでございますから、この間の話し合いを何とかしたいと思いまして、法務省側との懇談も松原政務次官と、とにかくどんなことをやってもこれを一つ打開しなければならない、それから韓国側のこちらの参事官や公使とも個人的にこの話し合いを進めて参ったのでございます。御承知のように、これが一番われわれの話の最初は、これを先に抑留者を互いに帰してやることが日韓会談を開く国民感情を一番やわらげる第一段階だから、この抑留者の問題を解決しようという話し合いまでありまして、それで私実は行って参ったのでございますが、だいぶその話もよく進みつつあるように、今さような状態になってきておるわけでございまして、会談がこれからも開かれていくとしますれば、きわめてよくなってゆく今が非常にいいチャンスじゃないか、この機会をのがしてはならないという気持で、実は私ども私的会談も続け、そして一日も早くこの問題を解決したい。もっと露骨に申しますると、法務省として、このうちで問題であるこの四百二十名の刑事関係者の者を、どういう技術的な形で釈放するかということにまで入ってきておるわけでございまして、この点の問題はいろいろ何回にどうするか、保証をどういうふうにするかということも話は出ておりまして、きわめて話は接近いたしておりますので、せっかくその辺で努力いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/72
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073・高野一夫
○高野一夫君 詳細な答弁をいただきましたが、私もこの問題は日韓会談というような外交問題はもちろんでありましようが、それはわれわれ委員会の所管ではございませんけれども、先ほど葛西さんから伺った北鮮の在留同胞の問題とからんで重要な問題だと考えて、実はお聞きしたわけでありますが、さようなふうに好転のきざしがあるということは、まことにうれしいことだと思いますが、ついてはもう一つ、こういうことが在北鮮の同胞引き揚げ、そのほか北鮮とのいろんな交渉にどういう影響があるかということについて、外務省側の見解を伺っておきたいことが一つあります。
それは厚生省に関係していることでございますが、実は生活保護の受給者が非常に朝鮮人に多いということであります。しかも実態を調査いたしますれば、この生活保護の受給者に該当しないような相当の生活をしている朝鮮人が強引に受給者になって、そうして不当に日本の金を生活費に流用している、こういうことで、これはかねてわれわれが厚生省に厳重に申し入れいたしまして、厚生省もその調査を厳重にするという態度をとっておられるやに聞いてはおりますが、こういうような調査を厳重にして、この不当なる受給者の整理をする、当然日本としては整理しなければならぬものだと思いますが、こういう整理を断固としてやることが、今後の北鮮における在留同胞の問題を解決するに当っていい影響があるものやら悪い影響があるものやら、これはむしろ断固としてこの内地の受給者の始末をつけた方がかえっていいんじゃないかしらぬと思うのでありますけれども、これは外務省あたりからお考えになって、どういうことになりますか。生活保護の問題にも及びますが、当然先ほど来議題になっている引き揚げの問題に直接影響があることと考えますので、一応伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/73
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074・森下國雄
○政府委員(森下國雄君) これは大へんなお金も出ているようでございますが、この問題はこれは主権の問題でございまするから、日本政府でこの決定をすることができると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/74
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075・高野一夫
○高野一夫君 別に影響はございませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/75
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076・森下國雄
○政府委員(森下國雄君) 影響は、デリケートな問題ではありますが、一方大村収容所等における生活、食糧とか――今北鮮でもってダンスパーティをやったとか、映画を見たとかしておりますが、あの収容所でもダンスパーティもやっておりまするし、映画もやっておりますし、あるいは食糧はむろんのこと、医療設備も非常によろしゅうございますから、歯科関係までよくいって参っておりますので、私はああいう方面はよくしておくことがいいと思いまするけれども、この問題は引き揚げ問題に、これを断行したから影響があるとは考えられないと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/76
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077・高野一夫
○高野一夫君 援護局長に伺いますが、先ほど山下委員の御質問に対して二点だけあなたの御答弁がなかった。それはいわゆるマリク名簿、ソ連から出された名簿の数はこちらから出した一万余りの数とどういう差があったかと、こういう山下委員の御質問があったのです。
もう一つは、その名簿の内容は相当正確なものであったか、粗雑なものと考えられたかどうかと、こういう点について非常にこの点は私は大事な点だと思うのでありますが、山下委員がこの点について御質問があったけれども、あなたの御答弁はこの点触れられなかったと思う。この二点についてであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/77
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078・田辺繁雄
○説明員(田辺繁雄君) マリク名簿と申しますのは、昨年の九月五日にソ連側から捕虜の人数はこれだけであって、こういう人だという名簿、それから民間人の名前は、こういうものと向うが出したわけであります。これは抑留者の名簿であります。つまり現在服役中の人の名簿であります。これははっきりしたものであります。私の方で出した名簿は、その名簿に載っていない人であるが、しかし終戦以来昨年の十月一日現在の間に集結して生存しておった人、むろん現在までに生存しておった人の名簿であります。マリク名簿は、それではないのであります。それを調査してほしいと要望したわけであります。マリク名簿については、これは向うが現在生存しておると確認した数でございます。それ以外の人はわからないから、これは現在どうなっているか調べてくれ、現在生きている人があるならば、それは全部帰してもらいたい、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/78
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079・高野一夫
○高野一夫君 それじゃこっちから出された名簿を向うが見て、それを認めるか認めないか、何らの見当もつきかねて別れた、こういうことになるわけですね。それで調査を依頼された。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/79
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080・田辺繁雄
○説明員(田辺繁雄君) こちら側から出した名簿と申しますのは――名簿ないしカードと申しますのは、帰還者の証言、または現地からの通信によって、終戦以来今日まで、いずれかの地点においてソ連内に生存しておったという資料のあるものばかりであります。それがその後どうなっているかということが、こちらにわからないわけです。そこで、ソ連側の方で持っている資料と照合して返事をしてほしいということを要望したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/80
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081・竹中勝男
○竹中勝男君 向うで持っているマリク名簿以外の名簿というものについては、あなたは調査されなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/81
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082・田辺繁雄
○説明員(田辺繁雄君) ソ連がどういう資料を持っているか、これは私の方である程度の推定はいたしておりますけれども、これを一々見せろと言って向うの中に行くわけに参りませんから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/82
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083・竹中勝男
○竹中勝男君 見せろと言わなくても、こちらで一万何千という数を持っていかれたのですから、向うは大体どれくらいの名簿を持っておるわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/83
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084・田辺繁雄
○説明員(田辺繁雄君) ちょっと御質問の趣旨と私の申し上げている点が食い違っているようでありますが、私の方では捕虜及び抑留者に関しては、先方で収容所に到着したときに必ずそのカードを作る建前になっていることを承知いたしております。やはり規定がございまして、その規定によって収容所においては、捕虜が到着した場合においては、直ちにカードを作ることになっておる。従ってカードを作った限りにおいては、その資料によってわれわれから出した名簿が合っているかわかるわけであります。カードができない間に死亡した者が相当数あるとも想像できるわけであります。私は当時の、終戦直後の入ソ直後の混乱した状態も考えられるのであります。こういうものは、過去ざっと十年前のことでございますので、現在持っている資料によって判断する以外、向うに要望しても、照会しても見当らない、こういう回答では私の方では何もならないわけであります。現在ソ連の持っている資料を基礎として、それに私の方の出した資料と照し合せて調査をするということを申し上げたわけでございます。向うでどのくらいの資料を持っておりますか、これは私の方ではわからないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/84
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085・小林英三
○国務大臣(小林英三君) ただいま御審議願っております未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案につきまして、山下委員からこの審議に関連いたしまして、当然にして、しかも適切な御質問がございました。私もとりあえず御答弁申し上げておいたのでありますが、山下委員の御質問の要領につきまして、この際でき得れば、政府といたしましてはっきりした御答弁を申し上げる必要もあると存じまして、今山下政務次官を直接政府に参らせまして、官房長官その他と打ち合せましてはっきりとした政府の態度を聞いて参りました。その結果に基きまして、私からこの機会に政府の態度をはっきりした方がよろしいかと存じますので、申し上げたいと思います。
先般新聞に出ておりました問題につきましては、あれは多分一部の閣僚が、何かそういうような留守家族の待遇の問題について座談的に話をしたのが漏れて、新聞の想像等に基いて出たものと解されるのでありまして、もちろんこの問題につきましては、大蔵大臣も全然タッチしていない、官房長官も全然タッチしていないのでありまして、政府といたしましては、留守家族のああいう待遇等につきましては、先ほど山下委員からもちょっとお触れになりましたように、これは一視同仁公平にやるべき問題でありまして、日ソ交渉がこういうようなことになっておりましても、ソ連の抑留者、ソ連に関する留守家族の問題について云々するというようなことでは参るまいと存じておりまして、厚生大臣といたしましては、留守家族全般の処遇の問題につきましては、今後十分にこれを推進をして参りたいと思っております。この機会に、山下委員の御質問に対しまして、政府の態度をはっきりいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/85
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086・山下義信
○山下義信君 了承しますが、結局厚生大臣の御声明は、重光構想といいますか、新聞記事に出ましたような構想については考えていない、今そういうことをする考えはないという打ち消しの言明と了承いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/86
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087・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/87
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088・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 速記を起して。
本案に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/88
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089・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 御異議ないと認めます。
一応委員会を休憩いたします。
午後一時二十七分休憩
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午後二時四十三分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/89
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090・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) それではただいまから社会労働委員会を再開いたします。公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/90
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091・山本經勝
○山本經勝君 この公共企業体労働関係法の改正について労働省の方で改正の必要があるという根本問題、一応御説明を伺っているんですが、その中で特に占領当時、占領治下に作られた法律であって、実際に今日の情勢にそぐわぬものだというようなことやいろいろ理由をあげられておったのですが、私どもこの改正案なるものを一応見せていただきますというと、なるほど言われるような現在の実態にそぐわぬ節節があったかもしれないが、それは運用の面で補充が十分できる課題と思う。ですからそういう条文の削除なりして現行法石やっていってもそう不都合はないように思う。それからまた答申が一応出ておりますが、この審議会の答申なんかについて考えてみても、こうした相当大幅な改正をする必要があるようにも見受けぬ。そこでまず第一点として改正の必要があるという具体的な内容を、これは長いお話を伺わなくても大体わかっておりますが、一応基本点を簡潔に一つ御説明をお願いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/91
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092・中西實
○政府委員(中西實君) 仰せのごとく、この公労法が非常にできの悪いことはもう周知のことでございますけれども、とにかく今日までやって参りましたので、現行法でやってやれないというものではないことはもちろんでございますけれども、しかしながらいかにも占領下の立法としてもう法文技術的に間違いもあり、また日本の実情に沿わない点もあり、さらにまた規定が不明確なために、そのためにかえって紛争が起るというような点もございますので、そこでできれば改正したいということはかねがねの要望でございまして、たまたま今年に入りまして臨時の非公式の審議委員を委嘱いたしまして御答申をいただき、その答申の内容をほとんど改正案の中へ盛ったわけでございます。要点は提案理由の説明で申しましたのでございますが、第一点は、結局団体交渉の手続を改めたい、すなわち米国からの直輸入制度である交渉単位制度という、きわめてこの難解な、しかも日本の実情に合わないものが取り入れられておりました。これを廃止して、一般の日本の労働組合の団体交渉のやり方にするというところが大きな点でございます。
それから第二点は、仲裁制度が争議権がないかわりといいまするか、最後の紛争の決着のためにとられておるのでございまするが、その仲裁裁定が出ましたあとの措置について、従来往々にしてこれが紛議の種になっておりました。で、仲裁裁定が出ますれば、これを尊重することは当然でございますけれども、しかしながらやはりそのことを気持の上におきましてもはっきりさそう、それからまた具体的な取扱いの上におきましても、できるだけ仲裁裁定はそのまま実行できるような措置にした方がいいんじゃなかろうかというので、この点を今回の改正案で改正しようとしておるわけでございます。
それから第三の点は、調停委員会、仲裁委員会というような紛争調整の機関がございますが、この機構並びにその委員の任命方式というものがまことにこれ調停、仲裁をしまするのにふさわしくもなし、また若干重複的な制度になっておりますので、従って行政機構の簡素化ということもございますので、これを統合いたしまして一つの委員会にする、そうして委員の任命方式も合理的なものにすることによって、調停、仲裁というものが円滑に行われ、その結果がまた十分に実施されるように確保する、こういった点も大きな点でございまして、あと条文個々につきましては、それぞれ従来から改正したいと思っておりましたところを答申案の線に沿いまして改正案に盛った次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/92
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093・山本經勝
○山本經勝君 今の交渉単位制度の第一点の問題でございますが、これは一応ほとんど削除になって非常に簡素化されておると思うのですね。その点ではそう問題がなかろうと思うのですが、ただしこの交渉単位というよりも、目的なりあるいは前提その他関係組合の実態を見ますというと、必ずしも公共企業体の同一企業の中に一本化された組織だけではないわけなんです。そうなりますとそのどの組合でも交渉権を持っている、こういうことになると思うのですが、そうなりますと、いわゆる悪く解釈いたしますと、これは公共企業体等においてそういうことはないと思いますけれども、民間企業のように第一組合から第三組合、多いのは第四組合というようなのができた前例がありますが、これらがそれぞれ交渉権を認められているという形になって参りますと、組合内の交渉あるいはまた紛争の処理にしても非常に困難を伴ってむしろ逆になると思うのです。それで、そういう点からむしろこの点では今後の処理についても煩瑣な問題を惹起する要因にはなっても、そういう点でむしろ簡素化されたということにならないんじゃないかと思うのですが、その点どうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/93
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094・中西實
○政府委員(中西實君) お説のような御意見も確かにあろうかとは思いまするが、民間の例を見ましても、日本は御承知のように、いわゆる企業組合というのが圧倒的でございます。それで終戦以来ほとんどの大きな企業、まあ中企業あたりまでは組合を持っておるのでありまして、その間労働紛争議が起り、場合によって第二組合あるいは第三組合というものの発生を見たこともございます。しかしながらそれはほとんどが一時的な現象でございまして、組合員が非常な無理押しの争議をしたというような場合に分裂するというのが例でありまして、しかしながらそれも若干日がたちますると必ずやはり一つになり、さして妙な組織関係にはならない、現になっていないというのが実情でございます。そこでそうだとしますると、結局この単位制度という非常にまあわけのわからない、しかも日本の国民性から言いましてもやはり組合単位で交渉するというのがこの一般の観念でもありしますので、それをことさらに人為的な単位制度というものでやっておりまするとかえってその間にトラブルが起る。この廃止については、かねがねから組合関係においても要望がございました。今度の答申案におきましてもこの点につきましては、全員一致して廃止に賛成をされたといういきさつもございまして、私どもは組合が正常に運動しておる限りは御心配のようなことはないのじゃなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/94
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095・山本經勝
○山本經勝君 先ほど局長がお話しになりましたこの仲裁裁定が紛議をかもしたということを言われたのですが、私たちが今日まで仲裁裁定、調停その他いろいろな状況を見て参っておりますが、この紛議が起ったということはこの公労法でもってきめてありますように、仲裁裁定が出れば当然その裁定に政府が拘束されることが原則だと思うのです。それに対して労働関係の問題として、この裁定そのものを政府が尊重しないところに問題が起ったのじゃないかと思いますが、その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/95
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096・中西實
○政府委員(中西實君) この立法の当初におきましても、争議権がないそのかわりに、最後の紛争処理機関として仲裁制度がとられた。そういう限りにおきまして仲裁裁定が尊重さるべきことはこれはもう申すまでもありません。歴代政府におきましてもその気持はあったろうと思うのでございます。ただ結局三公社また五現業、この予算がすべて国会によって審議され、きまるものでございます。従って予算の審議権というものはやはりあくまでも国会に残るというようなことで、予算上実施不可能なる場合にはどうしてもやはり国会に来ざるを得ない。結局政府当局としましても、こういった観点でやむなく国会に審議をお願いし、時に裁定そのものが実施されなかったという例もございます。しかしながら過去二十件の仲裁裁定のうち金額を削りましたのは一件だけでございまして、一番最初国鉄の賃上げのとき一件だけでございます。八件はそのまま実行しております。十一件は金額は変えないで施行の時期を若干ずらしたと、こういうことでまずまずまあ尊重はしてきたということが実績においても一応言えるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/96
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097・山本經勝
○山本經勝君 そこで公共企業体等労働委員会の問題ですが、これはどういう規定がかりにありましても、この改正案によりますというと、公共企業体等労働委員会というのは従来あったあっせん、それからまた調停、仲裁、これを一手に引き受けて統一されるお考え方のように承わっておりますが、その場合に、この委員会のメンバーがどういう人々であるかということが非常にかかって重大な問題になってくると思う。労使各側それぞれ同数の三名である、案によりますると公益側は五名、こういうことになっておる。そうなってしかもその労使双方の同意を得て作成された名簿の中から、すなわち公益側委員の名簿の中から大臣が任命するという形をとられることになっております。これは私ども民間ですが、労働委員会で五年ばかりお世話になった。そうして三者構成の妙味というのは実はその運営の中にあるのだと思う。これは裁判とは違って黒白をつけてそれで終りという事態でないことは局長も御承知の通りであります。そうしますと、どこかで納得をして折り合すということが、かかってこの労働委員会の性格で主要な任務だと思う。もしその三者構成の妙味が失われたら、この種の労働委員会というものは官僚化してつまらぬものになるか、あるいはまた一方的な片寄った、へんぱなものになって実効が上らない。つまり私の申し上げたいのは、やはり労使関係はどこまでも本来自主的な解決が望ましいけれども、あるときは第三者の意見も取り入れて判断することが必要でしょう。そこでこの労働委員会の三者構成というところが――実に今日まで十年余りも重要な役割を果してきたことは御承知の通りなので――ここでこの公益委員の数を五名にして労使各側の三名、十一名という構成になされなければならぬ理由が私どもはうなずけないのです。今申し上げたように、どこまでも納得がいっておさまらなければ、公共企業体といわず、おるいは民間企業といわず、労使の関係というものは円滑に行かない。そうすれば生産も能率も向上しない。そのことが企業自体に及ぼす重大な課題になってくるのでありますから、少くともこの構成については人選の上で公平であるばかりではなくて、数の上でも私は今日までやってこられた同数でけっこうなんだと思う。これを私はしいて五対三、三という比例に置きかえなければならぬという理由が全くこれうなずけないのです。その点について懇切な一つ御説明をお願いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/97
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098・中西實
○政府委員(中西實君) 現行の制度は調停委員会、それからさらに仲裁委員会がございまして、調停委員会は労使、公益三、三、三の構成でございます。その上といいますか、仲裁委員会はこれは公益ばかりで三人となっております。そこで今度は委員会を一つにいたしまして、調停の段階におきましては今山本さんがおっしゃいましたように、確かに三者構成の妙味を発揮する、従ってその際にはできるだけ労使、公益同数でやるというのが建前かと思います。ただこうした関係におきましては最後の締めくくりとして仲裁制度がございます。そこで本来今の仲裁委員会の三人と調停委員会とを入れますると、実は数からいいますると三、三、公益六になるのでございます。しかしながら今度一つの委員会にするということになりますれば、六というのもおかしい、そこでこれは仲裁を担当するという意味におきまして奇数の五をとったわけでございます。仲裁委員会は結局今度できます公共企業体等労働委員会の中で、公益委員だけが寄りまして仲裁委員会を作ってやるわけでございまして、従って同数ではちょっと公益委員の荷がかち過ぎる、ことに今度は不当労働行為制度も整備いたしまして相当事案も上ってくるのじゃなかろうか、これはやはり公益委員だけでやることになっておりますので、仕事の量からいいましても公益委員にかかる仕事の量が非常に多いというところから、三、三、公益委員は五ということにしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/98
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099・寺本廣作
○寺本広作君 関連して……、今の点につきましては私どもの属しております会派では全く反対の疑問を抱いているものが非常に多いので、政府の考え方をただしておきたいと思います。と申しますのは、一般労働委員会ではただいま山本先生からお話の通り、三者構成、同数でやっておりますが、この公共企業体の労使というのは、一般の企業の労使関係より非常に違うんじゃないか、ことに五現業ではみな国家公務員という建前になっておるし、身分も同じだ、公社でもやはり普通の会社の労使と違って、最終的には国家がその経理状況の結末をつけるというようなものであるから、労使の対立というのは、そう公社や現業にはないんじゃないか。そうしてみると、この労使というのがしばしば意見が一致して一体になる、労使は一本だと見なければならぬ。それと公益とが対立するということになると、三者構成でなく、むしろこの委員会は二者構成じゃないか。例が悪いけれども、ちょうどあの国際労働会議、ILOに三者構成の委員を各国が送っておるわけですが、現在共産圏諸国から送ってくる労使代表は、本来労使代表でなくて一本のものじゃなかろうか、三者構成でなく二者構成じゃないかという議論がしばしば行われております。それと全然別個の問題でありますけれども、一般の企業に比べると、公社、現業では労使の対立というものが非常に希薄なんじゃないか。それで給与問題になるとしばしば意見が一致するということで、そうしてみると、労使の三、三、六人に対して公益も六人と従来の通り、今政府からは従来三、三、六だったのを今度三、三、五にしたのだというお話がありますけれども、少くとも三、三、六でないと均衡がとれぬじゃなかろうかという意見が非常にあります。
それからまた、この公益の選び方も労使の意見を聞いてということになっております。そうすると、その労使が本質的には同じものだということになると、企業側の意見を聞くということになると対立したあれは出てこない、本来の公益的な意見は出てこないのじゃなかろうかという心配が非常にあるわけです。意見を聞いてというから、反対でもこれは政府は国会に持ってきていいのだと、こういうこともありますけれども、今日の国会運営の実情から申しますと、議運で人事を承認する場合にはきわめて厳格にやっておられます。この場合に反対意見がついてきたのがまず議運を通る可能性はほとんどないと思うのです。そうしてみますと、ここでこういう公益というのは本来消費者大衆というか、こういう公社、五現業といったような事業を持つ性質からいって、消費者大衆の利害というものは相当強く反映されていいと思うのですが、この公益代表にはそれが反映しないんじゃなかろうか、こういう点から、一般の労働委員会に比べて公益代表のその労働委員会内における立場というものは、一般の労働委員会よりむしろ希薄なのではなかろうか、こういう点を懸念する意見があります。この点について、政府はこういう懸念についてどういう意見を持っておられるのか、この際伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/99
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100・中西實
○政府委員(中西實君) 確かに民間企業の紛争を処理する一般の労働委員会と、それからこの公企体等の紛争処理の調停委員会、仲裁委員会とはその重要性、それから紛争を処理するに当っての心がまえというようなものも違うというふうにわれわれも考えております。ことに公企体の給与問題というような問題になりましては、なかなか民間の紛争議のように単に紛争を処理するというだけの頭で処理すべきじゃないというような気持もございまして、従って公企体の調停委員会といたしましては、結論は公正、妥当かつ合理的なものを出して、これによって当事者に納得をしてもらうということが必要じゃなかろうかと思うのでありまして、従って今寺本先生のおっしゃったようなことは、民間の紛争議を処理する労働委員会との差ということにおきまして、一応われわれとしてもその配慮を実はいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/100
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101・山本經勝
○山本經勝君 今のお話だとなおさら私は、公益側の委員を従来の三名を五名にふやさなければならぬという議論はおかしくなってくると思う。寺本先生もおっしゃったのですが、つまり労使の関係が、民間の自由企業の中にある労使の関係と違うと言われたが、私はこの関係は違わないと思う。使う者と、使われる者という関係においては違わない。そこで違う理由がどこにあるかというと、公共企業体関係、つまり三公社、五現業、こういったものは実はその総元締めは政府であり、国家である。違いがあるとすれば、その一つは、基本的には労使の関係という関係じゃなくして、その企業の運営が根本的にたとえば政府の手にある、こう申しても不都合じゃなかろうと思う。そうしますと、この企業の運営が労働条件に及ぼす関係というものは、当面のそのときどきの賃金や労働条件の改変が、いわゆる三公社、五現業等において直接使う者と、使われる者との関係の中で利害関係があり、ある面ではつながりがあるかもしれないが、これは民間企業でも同様なので、たとえば工員の組合と職員の組合と分れておる企業組合のたくさんあることは御承知の通りです。そうしますと、職員の中で高級職員は利益代表と称して係長以上は大てい経営側に立っておる。ところが、その工員の昇給もしくは賞与の増額ということが行われますと、職員が自動的に昇給し、あるいは賞与等が増額される。こういう実態にあることは、これは中西局長にしても、その他、万人の認めておるところである。こういう関係において利害のつながりがあることから、多少そこに公共企業体等の中でいろいろ手心を加えてきた事実はあったと思います。そこがたとえばよくいわれる公社、五現業等の一家とか一族とか非常に清い言葉であるが、出ている。ところがそのことでは全然官業界の公益委員と称する人々によってそれができるかといったら、それは全くの企業のものの考え方であって、そういうものでそれが是正されて、いわゆるこれらの企業体の何といいますか、運営によって利益を受ける第三者、すなわち純粋な意味での、利益を国民大衆にもたらすものである、こういうことにはなってこない。ここは非常に今後の重要な争点に私はなって参ろうかと思います。で、特に私ははっきり伺っておきたいのは、先ほど局長のお話では、私の質問に答えられたのは、三人では荷がかつ。なるほど大きな世帯でありますから、しかもそれを三公社、五現業と申しますと八つになる。それだけのものがかえっておるのだから非常に困離であることはわかる。しかしそれであるなれば、さらにそれ以上に大きなやはり民間企業の労働委員会の実績を見られてもこれは荷がかつとは考えられぬ。それを補佐するに十分な事務局の構成もある。そうしますと、荷がかつということは私は理由にならぬと思います。また従来それでやられてきた。私はむしろ局長に正直にお答え願いたいのは、そのほかに五名にした理由があるのではないか。少くとも私は今度の案を見ますというと、そのうちの公益委員の二名は二十何条ですか、二十条の六項ですか、二人、二人は常勤にしようというお考えがある。三名は非常勤で、そのうちの二名は常勤にする、こういうことになっておるようであります。そうしますと、この考え方は私は非常に問題があると思うのです。五名を一般と同じように非常勤の人であって、しかも国民的な視野で、第三者的立場に立つということになるかもわからない。ところが、そのうちの三名はまずそのような形に置かれたとかりに仮定しても、二名は給与をもらって、国鉄その他政府側の給与を受けて常勤として働かせる。そうなりますと、委員会の構成そのものは、私の申し上げている三者の関係、三者のいわゆる同数によって構成されてきた今までの運営よりも、非常に片寄った運営がなされるという心配が考えられている。ですから私はもう少しすなおな気持で一つお話を願い、かつ御説明いただかないと困るのです。企業体が、企業の形式が公共企業であれ、民間企業であれ、私は労使の関係というものは使う者と使われる者という立場、こういう関係がいささかも変更されるべきものではない。ただ利害の関係が一種のつながりを持っているということは先ほど申し上げたように、これまた民間企業であれ、公共企業であれ、その他公益企業であれ同様なんです。そこでしいてここで五人を出さなければならないということ、そういうことはもうすでにうなずけない。運営の手続、その他のこまかなことはあとで御質問を申し上げます。その点から基本問題としてお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/101
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102・中西實
○政府委員(中西實君) これは全く他意がございませんで、現行が調停委員会三、三、三でございます。従って労使の数を三人以上にふやすということはこれは行政機構簡素化を全面的に政府として考えております限り無理かと存じます。従って労使は三人というのは現行の通りです。そこで公益でございますが、先ほども申しましたように、仲裁と調停とあっせん、それはすべて一つの委員会でやるわけでございます。そこで従来仲裁に公益が三人おり、調停にも三人おり、足せば六人になるわけでございます。実は調停をやります際に参加した公益委員が、仲裁の際に入るのがいいのか悪いのか、全く同じ構成での公益委員が仲裁をやる、こういうことになりますればもう一般仲裁制度があるのが無意味でございます。従って若干の重複はありましても、新たな公益委員が同じ事案につきまして仲裁任務に当るということが望ましいのじゃなかろうか。そうしますと、どうしても三人では不足でございまして、やはりまあ六人以上はこれは簡素化の趣旨に反するということなれば、奇数の数として五人がいいのじゃなかろうか。で、さらに先ほど言いましたが、不当労働行為制度というものが今度相当手続的に整備いたしまして、事案もふえるかと思います。この処理が公益委員会で処理されます。この事務が相当あるのではなかろうか。
もう一つ、この常勤の公益委員を二人以内置ける、これは公企体におきましては民間の企業と労使関係は今同じだというようにおっしゃいましたけれども、しかしながら企業そのものは民間企業と非常に差異がございます。で、一つには国の企業であり、その公益性から見まして全く民間企業とは性格を異にいたします。それから職員の身分にいたしましても、現業官庁はこれは全部国家公務員でございます。三公社にいたしましても、その身分は一応公務員に準じて取り扱われるというふうに法律でもなっております。そういうふうに相当性格も違い、それなればこそまた争議権もなく、そのためにやはり問題を調停、仲裁で片づけるということになっておりますので、従ってこの公益委員の使命たるやきわめて重いのでございまして、公正妥当かつ合理的な結論を出すには、やはり三公社、五現業の実態というものを日ごろからよく研究して調査しておる通暁した人がいなければ妥当な結論は出せない。それには片手間の委員さんではどうにも処理ができないのではなかろうか。従って予算が許しますれば二人、場合によっては一人、二人以内の常勤の公益委員を置く、これは若干一般の企業の紛争処置をいたします労働委員会と違うところではなかろうか、また違う性格を持っているものじゃなかろうかというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/102
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103・山本經勝
○山本經勝君 局長に申し上げたいのは、企業体の性質、そういう点の違うことは私は十分存じております。ところが企業体が違うことが労使の関係の状態が違うということにはならないということを先ほど来申し上げておる。しかもその関係が全体に何々一家とか変な言葉を最近しばしば聞くのですが、そういうふうな関係になることは給与その他労働条併の改善や変更が即全体に影響するからです。それからまた人とのつながりもあるでしょう。こういう点についても私は民間企業体と何ら変りはない。このことを先ほどから強調している。
そこで今お話の公益委員は、調停のときに各側の委員とともに調停に参加をし、さらにその同じ同一の問題が、調停が成立せず不幸にして仲裁に持ち込まれたとき、こうなったときに、仲裁委員が同じ調停に参加した公益委員であるという点に矛盾があるというふうにお話しになったように思うのですが、私はむしろ問題の本質を調停の中で十分こなすと思うのです。この関係は民間の労働委員会にもございます。これは公共企業体等労働関係法だけではないのでございまして、仲裁というのは、申し立てによりという条件が多少違ったにいたしましても仲裁がある。ところが同じ委員が仲裁をやっておって、それで不都合のあった事例を私は寡聞にして聞いておりません。そこでむしろ、そういうあっせんから調停に移り、さらに調停から仲裁に移されたという、この間三つの段階を経て同じ公益委員がやっても、私は任務という規定の上に立って公務を行なっているのですから、私はそう支障が起るものではない。ところが今局長のお話を聞いておりますと、多少問題にデリケートな関係があるかもしれない。それは企業体の特質によって起るという関係があるなれば、それはただ国家の営んでおる企業であり、しかも予算に縛られるという関係、そこでこの関係からいくなれば、国家公務員の場合でもまた地方公務員の場合でも同様です。だから私は少くとも今お話しになるような理由の範囲では、とうてい五名にしなければならない理由に私はならぬと思う。局長は直接こうした事件の取扱いをなさったことはないかもわからぬ。私はすでに五年間にわたって労働委員会というものの実際の運営を見、かつ各種地方における調停委員会等についていろいろ協力をしたこともある。また事情も大体わかっておる。そこで今の運用上の問題で、もし問題があるならば、三名でやってもうまく運営すればできる。ところが三名でなくて五名にしなければ絶対にできぬのだという根拠にはどうしてもならぬのですが、さらにその点の解明をもう少し納得のいくようにお願いをしなけばならない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/103
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104・中西實
○政府委員(中西實君) 一般産業におきましては仲裁制度がございます。しかしながら、それはその当事者の納得したときだけでございまして、そこで中労委を含めまして全国の労働委員会で仲裁事案を取り扱いましたのは名古屋で一件、そのほかこの十年間にもう一件ぐらいありましたのですか、仲裁というものはほとんどないのでございます。しかしながら公共企業体におきましては最後は仲裁で行う。しかも強制仲裁、これは本質的に私は違うと思うのでございます。そこで実は三、三、三でもいいのじゃないかというお話でございましたが、今が三、三、六で実はやっておるようなわけで、従って公益委員の仕事の分量から言いましても三ではこれは無理ではなかろうか。それから調停をやった者が仲裁に入る、仲裁委員として入ることが矛盾とは申しません。そうでなくて、もちろん五人にいたしましても、どうせ仲裁に移った場合には若干名は、あるいは一人、あるいは二人が、その同じ人が仲裁委員にもあるということでなければ運用がつかないと思いますが、やはり仲裁ということになりますれば、できればやはりこの調停のときのいきさつにとらわれずに判断をするという人が委員に加わることは、やはり仲裁制度を公正なものに、結論を導き出すのに望ましいのではなかろうかということを申したので、矛盾するとは思っておりませんが、やはり三人ではそういった望ましい姿もまかない切れないということ、これは私も中央労働委員会で二年間やって参りましたが、やはり公共企業体等の調停委員会におきましては、ぜひやはり今申しましたように、調停、仲裁の段階において若干構成が新たになるという方が運営がスムーズにいくのではなかろうかというように確信しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/104
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105・山本經勝
○山本經勝君 そうしますと、先ほどお話のように、常勤者を置くということは、いろいろなこの公共企業体の内部の諸問題にですね、精通してよろしい。そこで私は、むしろ今日まで長い間やってこられた公益委員の方が多数おいでになると思う。私どももそれは十分でないまでも一応知っております。またその他の人々でも一度、二度問題の取扱いをすれば、やっぱり努力をして、勉強するでしょうし、それはわかってくるものだと思う。で、常勤を二名置くことを私は前提にして、五名になったように印象づけられている。ですから、そこら辺がどうも解明不十分なんです。
それから仕事の分量かふえたと言われますが、公益委員がなす最終的仲裁と言われるものは結局判定なんですね。公益委員という立場に立って、その紛争なり、あるいは賃金給与に関する問題、その他労働条件あるいは不当労働の問題を含めて、いわゆる判定をする仕事なんです。そうすればこれは人数ではなくて、私は一人でもいいのだと思うのです、率直に申し上げて。ところがそうなりますと、たとえば三つの公社、そうして五つの現業という関係であるから、多少無理かもわからぬ。年がら年中私はこの公共企業体関係が紛争を起して仲裁をやっているという事例を聞いておりません。しかもこれは大体起る時期はそれぞれ一年に一回、大きくいっても一年に一回ないし二回程度なんですよ。こういう状況から見ても、三人あれば私は十分だと思う。それからまた一人では……先ほど申し上げた極端な例ですが、なるほど相談相手も要りましょうし、判定という仕事をするのだから、そのときにはいろいろな知恵を集めて、良識を集めて、つまり三人寄れば何とかというもので、いい知恵が出るでしょう。そういうあれから考えましても、五人もあっててんやわんややっておったのじゃ、むしろ任事の分量はふえても減ることはない。三人で十分だと思うのです。この点で、一応意見の食い違いのある点があるといたしましても、仕事の分量が多くなるということから、あるいはその事の性質から五名必要であるという理由は生まれてこない。そうすると残った問題は、五名にしておいて三名を非常勤で二名を常勤者にする、この前提がどうもくっついておると考えられる。しかもその二名については、私はお伺いしたいのは、どういう身分上の取扱いをなさるのか、一応ここに条文には二項目あげられておりますが、この点についても私は全く理解ができない。以上のところ御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/105
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106・中西實
○政府委員(中西實君) 数の問題は先ほど来るる申し上げました通りでございますが、特にこの常勤につきましてお疑いがあるようでございますが、実は強制仲裁によって最後片づけるという、この特別な関係がございますので、われわれといたしまして、もし人を得られ、あるいは財政的に許されるならば、公益委員は全部常勤にしたいくらいに思っているのでございます。で、たまたま五人のうち二人ということになりましたが、実は初めは三人ぐらいは常勤にお願いできないものかというふうに、関係方面ともまあ話し合いを進めておったようなことでございます。たまたま二人が常勤で三人が非常勤ということで、お疑いが出たかと思いまするが、これは全く他意はございません。で、この公益委員に対するわれわれの期待は、結局やはり単に紛争を処理するというだけじゃなくて、やはり公正妥当な合理的な結論を見出してもらう、で、それには世間的にも達識な方をお願いしなければいけない。で、そういう方をすべて常勤ということは、これはとても人を得られませんし、とうてい不可能でございます。そこでやはり原則は非常勤にいたしまして、しかしながら、たとえば労使関係あるいは財政関係、これらに詳しい方をやはり二人ぐらいは常勤で、日ごろ御検討いただいている、そうして事あるときに妥当な結果を導いてもらう、一般民間の紛争におきましては私もあっせん委員としてやったことございますけれども、そのときそのとき双方の言い分を聞きまして、そうして何とか処理ができるものでございます。しかしながら最後公企体におきましては強制仲裁で世間も納得し、労使も納得してもらうというものを出すのでございまして、従ってこれはやはりちょっとその場だけで勉強して事済むというものではないのではなかろうか。なるほど賃上げの問題につきましては、年に一度、あるいはある年とない年とございます。しかし日ごろ相当の件数が賃金以外にいろいろと起って提出されておるのでございます。それでやはり日ごろから公企体の実態をよく知った者がおりまして、迅速妥当な結論を出すというためには常勤が必要だ、それでその常勤が二人がいいか三人がいいか、そこらはまあ特に二人でなきゃならないということではございませんが、まあ予算の関係その他もございまして、五人のうち二人ということにきめたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/106
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107・寺本廣作
○寺本広作君 私は山本先生の非常に突っ込んだ御質問で私自身も少し疑問が起ってきておるのですけれども、大体この問題は法案の原案を作られた労使公益の三者一致して賛成してこられた点で、私たちはあまり問題がないのじゃないかと思っておったんですが、山本先生の今の質問でいろいろ若干疑問になる点があるから、その点ただしたいと思いますのは、これは公益委員は五人と、こういうことになっておりますけれども、具体的な争議の案件の処理に当る調停委員は、公益委員は常に三人、それから三人をこえることはない。仲裁も具体的な案件を処理するのは三人をこえることはない。五人集まって調停をやったり、仲裁をやったりするということはないのじゃなかろうかというふうに思うのですがね。
それからもう一つは常勤ということで、常勤の人二名とこうありますが、中央労働委員会でもたしか常勤という制度はないが、相当常動的に月のうち二十日とか二十五日とか勤められている人は何人かあるわけですね、そこらの実情を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/107
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108・中西實
○政府委員(中西實君) 今寺本先生がおっしゃいましたように、現実事案に対して調停をし、あるいは仲裁をする場合には三、三、五のものが全員がかかってやるのじゃございません。これは条文にもございますが、調停の際は労使は同数でそこへ公益委員が入る。従ってまずやはり取扱いは一、一、一というので調停がなされるのが普通じゃなかろうか。場合によっては二、二、二、あるいは二、二で公益委員が一というような場合もあるかと存じます。それから仲裁の場合、これは公益ばかりでやるんですが、これは条文にもございますが、三人あるいは五人、五人の場合もございますが、三人でやるという場合もあるということでございます。
それからあとの御尋ねでございますが、中労委におきまして、まあ私もおりましたのですが、七人の公益委員がおりますが、大体が学校の先生とか、そのほか、ほかに仕事を持って忙がしくしておられる方が多いのでございますが、中に特にお一人はほとんど中労委が専門のようにやっていただいておる方がございます。この方がおられますので非常に楽をするといいますか、全体の運用がうまくいっておるということはございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/108
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109・山本經勝
○山本經勝君 先ほど局長にお伺いした常勤委員の身分、お答えなかったのですが、ちょうど寺本先生の御質問があったからあれしておったのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/109
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110・中西實
○政府委員(中西實君) 常勤委員の身分は、これはやはり特別職の公務員でございます。これはまあ非常勤も同じでございますが、特別職の公務員、そうしていわゆる行政委員会の委員、これはもう非常勤も常勤もその点は同じでございまして、単に常勤、非常勤の違いだけでございます。そのために給与は若干違います。それから若干常勤の人につきましては、中立性をさらに非常勤の人よりは一そう厳重にする必要ががあるというので、二十三条にございまするように、政治活動について若干非常勤の公益委員よりは制限が重くなっております。これは今度のこの法律の委員の常勤ばかりじゃございませんで、他の行政委員会の委員にも例がございまして、その例によって、こういうふうに規定されておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/110
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111・山本經勝
○山本經勝君 今のお話ですというと、特別職の公務員である。このことについては非常勤でも同様である。非常勤のこの種行政機関内の委員は公務員ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/111
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112・中西實
○政府委員(中西實君) 特別職の公務員でございます。
それからちょっと先ほど間違えましたが、非常勤と常勤の方では二十三条で政治活動じゃございませんで、「報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと。」を常勤なるがゆえに禁止しております。政治活動につきましては、非常勤も常勤も一緒でございます。その点に訂正いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/112
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113・山本經勝
○山本經勝君 それで今の常勤二名以内ですね、一応二名以内となっておりますが、二名以内を置かなければならぬということは、ただこの業務というよりも、その主体である企業体関係の実態をよく把握するために必要だと言われるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/113
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114・中西實
○政府委員(中西實君) そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/114
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115・山本經勝
○山本經勝君 そのところで非常に問題が私は起ってくる。つまり企業の実態については団体交渉の対象にならぬということは前公労法でも明白になっておる。また今回もそのことは明らかになっておる。そうしますと、企業体を中心にして、企業体がやはり一つの事業として営まれて参りますから、その企業体の中で、企業体の実態をよく正確に知るということは、悪く解釈するならば、つまり国鉄の経営、あるいは全逓その他三公社、五現業、こういったような国家企業に対する、企業を中心にした観点から公益的な性格が出てくるかどうかということに大きな疑問が生じて参ります。そこで公益といわれるものが、先ほどお話しになりましたように、国民的な見地で一般の利用者に対する、あるいは需要家に対する利益の公正な処理をするのだというような見地であると初め言われたのですが、そうじゃなくて、これは公共企業体関係の企業そのものの利害を含ませることによって、むしろ使用者側に立つべき位置にあるとか、そういう人を公益委員として、しかも利用していこうということは、これはますますもって私は奇怪だと思う。ただ企業の性質から、こういった公益的、公共的であるということは私は何も否定するのじゃない。ところが、ことは労使間の問題を処理する機関なんです。そうすると、先ほど申し上げたように、使う者と使われる者という立場にあるのですが、その間の問題をむしろ使う者の立場に立って、公益委員の名において、争議権を剥奪されたこれらの労働者、あるいは従業員の問題を取り扱っていくということが、果して公益という資格に該当するかどうか非常な疑問を生ずる、その点一つ御解明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/115
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116・中西實
○政府委員(中西實君) 先ほど企業の実態を常時把握するということ、これは少し舌足らずでございまして、この法案の十二ページの条文でいいますと二十五条の三第二項、これにもございまするように、企業の実態の常時把握はもちろんでございますが、それだけじゃなくて「職員の労働関係の状況その他委員会の事務を処理するために必要と認める事項」たとえば一般公務員の給与の状況とか、あるいはまた経済全体の状況、そういった諸般の労使関係の処理に必要な実態を研究し調査する、こういうことでございますので、従ってこの委員が使用者側についてしまうような格好になるという御懸念はないのじゃなかろうかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/116
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117・山本經勝
○山本經勝君 その点なんですが、問題は公益委員を従来あった六名か知りませんが、とにかく新たに五名にしてその中に常勤二名を置いて常勤二名には特に企業の実態を知らせ、それからよく理解させる……、それから労使の関係つまり労働条件その他について適切なものがないというならばそれはいわば監督するものですか、あるいは決定されたものの実施状況を見て回るというのか、これはどうか知りませんが、そういう関係になってくるというと、ますますこれは奇怪なものになってくる。私が申し上げているのは、むしろこの数の問題にこだわるというよりも、こうしたいわゆる常勤者を置いてそういう労使関係の取扱いをしようと考えるという魂胆が、非常に悪い言葉ですが別にあるとこれは見ざるを得ません。しかも別の条項では予算のワクの中からはみ出るような調停なり仲裁なりそれを押える意図があるのだというふうに私は理解せざるを得ぬ。そこら辺がどうも不明朗であり不明である。そういう結果になるというおそれが私ども感ぜられるものですから、そういうことがないのだというはっきりした御説明をいただかないと、これはなかなか納得がいかぬわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/117
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118・中西實
○政府委員(中西實君) いろいろと御想像いただくといろんなこともあるかと思いますけれども、われわれは率直に申しまして民間の企業における紛争議と公共企業体等の紛争議におきましてはその解決の方法において非常な違いがある。公共企業体におきましては争議権がありませんで、そのかわり強制仲裁でいく、従ってその結論は単に紛争を処理するというだけのものじゃございませんで、公正妥当適切なる合理的な結論を出すということでなければならぬと思うのであります。このことは容易なことじゃございませんで、よほど打ち込んで日ごろから勉強し研究いたしておりませんければできないわけでございます。この最後の解決方法が違う、そして仲裁裁定で大体において、問題をぴしゃりと解決する。もちろん金の問題におきまして予算上どうしてもできないということは、これはどうしても国会の審議を否定できませんが、それを除きましてはこの仲裁裁定におきましてぴしゃりと片づける。これは民間の紛争議と非常に違うところでございまして、従ってそれを処理するものにつきましては相当こういった打ち込んだ日ごろの勉強をし得る人を持ちたいというのが念願でございまして、われわれとしまして他意を持っておるということは全然ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/118
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119・山本經勝
○山本經勝君 今の公正妥当ということを非常に強調なさるわけです。それは、もっとも公正妥当でなければならぬことが公正妥当でなかったならおそらく事態の収拾にならないから、やはり私は問題の処理にあると思う。単なる紛争の処理じゃないと言いますが、この機関はどこまでも紛争がなければ要らぬですよ、こういうものは……。先ほどお話のように、行政機構を簡素化するという建前からも国家の経費を使うことなんですから、これは当然です。ところがそうでなくて今日まで、また現に、たとえば国鉄、全電通は解決がついたといいますが、その他の現業関係については未解決にある。そういう状態で紛争しておることは事実なんですね。そうすると紛争の事態収拾をするということは私は大きな役割だと思う。そこで公正妥当な結論がその中に得られることが当然だと思う。公正妥当な結論がこういう構成では私はむしろ困難であると思う。それは先ほどから何回も繰り返して申し上げておるように公益委員の性格が変って参ります。これは私はどうもそういう気がしてならぬというのをいろいろな想像をめぐらしてというお話でございましたが、今までの経験から想像をめぐらさざるを得ぬ。ですから強制仲裁という方法があるので、公正妥当な結論を出すために常勤者を置くといわれるようなことは、私は全くの詭弁だと思う。それは少くとも先ほど申し上げたように、結果的にはどういうように弁解なさっても公共企業体関係の利益代表の側に立つ立場に追いやられる。そうしますと、むしろ五名になさったことは、そうした五名の中のいわゆる公益的性格を持っておる他の三名の意見がむしろこの二名によって中心的にリードされていく。労使の間における公益的性格とは全く違ったものになってくる。それではさっぱり冒頭申し上げたような三者構成による納得ずくでの問題の解決ということにはなってこないと思う。むしろそのこと自体が紛争の種になっていく。こういうふうに考えますが、重ねて一つ御説明を願っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/119
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120・中西實
○政府委員(中西實君) まず第一に公益委員の能力といたしまして、今の現行の調停委員会の公益委員に聞いていただいてもわかると思うのでありますが、たとえば、賃金問題につきまして早々の間に適当な結論を出すということはこれはもう不可能だ、とても荷が重いというのがおそらくお気持であり、またわれわれにも直接そういうことを漏らされております。私もそうだと思うのでありまして、日ごろ他に職を持っておられまして、そうして急に問題が起ったからといってこの際にひょっと話を聞いて適切妥当な結論を出すということは、これはおそらく不可能じゃないか。それでこういった給与問題につきまして、現行の委員さん方も非常にもういわゆる能力的に制度として疑問を持っておられるというのが実情でございます。従ってわれわれとしましては、日ごろから勉強をお願いする方を置いておきたい。それからもう一つ、いろいろとごそんたくなされば御心配もございましょうが、任命に当りまして労使の委員の意見を聞くわけでございます。この公正なるべき委員会の委員につきまして、労使に不信な念があればこれはもう成り立ちません。従って労働側におかれましても非常に反対だというような人を任命できるはずもなし、したところが制度として運用されるわけじゃございませんので、そうしかく御心配なさる必要はないのじゃなかろうか。候補者を出します場合には当然納得し得られる方を推薦するわけでございます。その点はそう御心配なさる必要はなかろうというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/120
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121・山本經勝
○山本經勝君 今のお話の中で、任命に当って労使の意見を聞くという言葉があった。これはなるほど条文の中にも、案の中にも現われております。そこで今までの公労法は労使の意見を聞くのではなくて、同意を前提にしておったと思うのですが、その点の相違はその通りですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/121
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122・中西實
○政府委員(中西實君) 今までの仲裁委員会の委員のごときは、全くこれは政府に関与の余地はございませんで、現行法、御承知のように、中央調停委員会の委員長が推薦したものにつきまして、労使の選考委員が選定して、それを機械的に総理大臣が任命する、こうなっております。一般の労働委員会の方は、公益委員につきまして、労使の同意を得るということになっております。これは国会の同意ということになっておりますので、国会の同意ということの前に、また労使の同意というのはどうも理論としてもおかしい、従って労使の意見を聞き、国会の同意を得る、こういうふうにしておるわけであります。しかしながら、実際の運営におきましては労使いずれかがとことん反対だというものにつきまして、これをさらに手続を進めるということはなし得ないのでございまして、実際の運用におきましては、まず同じように運用されるのじゃなかろうかとお考えいただいてけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/122
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123・山本經勝
○山本經勝君 その労使の意見を聞くということは、なるほどきわめて民主的でいい方法のように見えますが、実はそれは聞いてもこれは耳に響いたというだけで、実際には取り上げられなかったりすることもこれは自由だと思うのですよ。そこで一定の名簿なら名簿というものがあって、その中から公益委員の任命に当ってこれを任命したいがどうかということについて、もし労働側がそれは反対であると言うたならば取りやめになるほどのものと理解していいですか、この意見を聞くということは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/123
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124・中西實
○政府委員(中西實君) 現行の調停委員会の公益委員の任命等につきまして、やはり労使の同意をとることになっておりますが、いまだかつて反対を押し切ってやったというようなことはございません。そんなことをしました場合に、結局制度としてこれが活用されませんので、われわれとしまして、労使いずれかの絶対的な反対を押し切るということは考えられません。ただ積極的に賛成ができないが、まあやられるならけっこうだというような場合もございますし、いろいろの場合があります。五人おりますればその五人の組み合せというようなこともございまして、一人々々見ますればあるいはいろいろな話もありますが、五人構成ならいいという場合もございます。いずれにしましても、労使の意見を十分尊重してやる、そうして根本的な反対があればやらない、またやれないというふうにわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/124
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125・寺本廣作
○寺本広作君 この点は私も伺っておきたいと思うのですが、労使の意見を聞いて聞きっぱなしになったのでは、これは大へんなので、やはりこの意見は、実際上は国会の同意を求める際はつけて出されるのでしょうな。この人には御賛成がありました、この人には反対がありましたということは実際上つけて出すんでしょうな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/125
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126・中西實
○政府委員(中西實君) 手続といたしまして、両議院の同意を得る場合に、それをつけるのは要件ではないというふうには感じます。ただ意見はどうだったというお尋ねがおそらくあるだろうと思いますので、その際にはこういうことでございましたというふうに御説明はしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/126
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127・山本經勝
○山本經勝君 この国会の同意を得るということは非常にいいことだと思うのですが、ところが国会の同意というものはきわめて何といいますか、この委員が性格的に、あるいはその他いろいろな今までの行きがかり上、どういう人であってどういうことをやられたかということをはっきり知悉していない場合も往々起る。特別な委員会の委員任命等に当って私ども全然知らぬ、知らぬけれども、まあよかろうということで簡単に通った事例が相当にある。ところが実際上やってみますと、いろいろな業務の進行状況を見ますと、これは大へんな委員を出したものだとあとで驚いたような事例も率直に申し上げて多数あります。それで国会で同意を得るからということが、またこの委員の任命に当って民主的にきめたということにならないし、それからまた意見を求めてまるきり反対ではなかったが、他に適当な者がないものだから、まあしいてそう言うならそうしておこうかということで通過する事態もございましょう。しかしいずれにしても、その任命そのものが一応の手続を経て任命される。ところが、今までの形でいいますというと、中央調停委員会の委員長が公平な立場で指名をする、こういう形になっておる。これは今までの方がずっといいんだと思うのですよ、率直に申し上げて。これはこの点でも今の公労法の政府提案なるものは改悪であると言われても不都合ではなかろうと思う。そこら辺が何らの保証が得られぬ。任命に当って労使の意見を聞く。今まで私の経験でも、先ほど寺本先生の言われたことと関係があるのですが、たとえば、民間の労働委員会の公益委員を任命する知事なりあるいは大臣が一応最終的に任命をするのですが、名簿を作って諮る、そうすれば、労働側が賛成する者については使用者側が反対である。使用者側が推薦する者については労働者側が反対である、こういう形になってくることが往々にしてある。だから実際上の問題として、これはむずかしい問題でありましょうが、意見を聞くということは私はとうていむずかしい。いわゆる少くとも同意を得て得られない場合に、最終的に任命をなさっても、そのことがそれはつまらぬといっても仕方がないわけで、先ほど局長自身お話になっている組み合せという問題は、実際の運営上の問題として出てきていると思う。そうすれば今までの形で中央調停委員会なり、あるいはこの構成された労働委員会の委員長といいますか、会長が任命することにしても一つも不都合ではない。意見を聞いて、その意見を取り入れてそこで決定しようとおっしゃるならば、しいて国会に持ち出して国会の同意を得たり、総理大臣の任命にされなくても済むと思う。そこら辺の状態でもまさに大きな疑問が沸き上ってくる。次官がおいでになりますから、次官の方から御説明願えればさらにいいと思う。一つそこら辺を具体的にお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/127
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128・中西實
○政府委員(中西實君) さきに私一応御説明申しましたが、この「両議院の同意を得て」ということになっておりまして、その前にさらに労使両委員の同意を得るということは、これは理論的にもおかしい。この今度変えました任命方式につきましては、これは答申案におきましても全員御賛成になったところでございます。およそ国政におきまして責任の所在というものがやはりはっきりしなければいけないのではなかろうか。現行の中央調停委員長、これが推薦した者が土台になって任命されるというのは、いかにもどうも理屈にも合わず、責任政治という点からいいましてもきわめて変でございます。しかも現行におきましては、三十日の間に選考委員が選任いたしませんければ、総理大臣が職権でやれるというような規定もあるわけでございます。今度はそういう非常手段も規定してございません。やはり当然責任ある者が発案いたしまして任命していくというのが、これが責任政治の常道かと存じます。それでほかにも行政委員会というものがございますけれども、この行政委員会はつまり労使の間に立って紛議を処理するという委員会で、特別の使命を持っております。従って労使双方から信頼されないような委員会は、これはもう制度として成り立たないわけでございまして、従ってこの任用に当りましては、双方の信頼を得るような機構にするということは、もう責任者として当然考えるところでありまして、あまり思い過ごしの心配は要らないのじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/128
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129・山本經勝
○山本經勝君 局長のお言葉ですが、これは思い過ごしをいたしておりません。私も長い経験を持っておりまして、どういうような場合に、どういうような状態が起るか、そういう点は私も一応心得ておるつもりなんです。今言われた責任政治の建前から、大臣が任命するのが当然だ、しかも公共企業体として国家が投資をして企業を営んでいるのだ、こういうことをおっしゃった。それであるならば、労働条件その他に国家の意思に沿うように、この委員会を運営するのだという気持が、今のお言葉の裏にあると思う。これはもう少し責任ある立場で御解明願いたいのですが、これは大臣がお見えになりませんから、一つ次官の方からお話しを願いたい。
もう一度申しますと、責任政治という建前から、内閣総理大臣が国会の同意を得て任命するというのが適当だと言われた。ところがそうなれば、現行法の中央調停委員会の委員長なるものは、そういう責任政治制の中に立ってのいわゆる任命でなかった、あるいはまたその任命された中央調停委員長その人がいいかげんにいたしておる、こういうことになるのかどうか。私はそこらは全く理解がゆかない。局長のお話もさることながら、大臣のかわりに次官もおいでになりますので、一つ次官の方から責任ある一つ御解明をいただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/129
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130・武藤常介
○政府委員(武藤常介君) ただいま山本先生の御質問でありますが、もちろん政府はある程度の責任を負うことは同様でありましょうが、今度五人にしましたことに対して、あるいは一方に偏しはしないかというような御質問がありまして、これに対しまして労政局長から再三お答え申し上げましたが、今度は御承知のように、次の条項におきまして、給与準則あるいは給与総額等に関しましても、今までと違った扱いにまで進めてゆきたい、こう委員会の決議を、政府もなるべく実行しなければならぬような義務的なもののように持ってゆこうというような条項にし、従ってこれらの調査あるいは準備等も完全にいたしておかなければならぬ、こうところから出たことと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/130
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131・寺本廣作
○寺本広作君 今の公共企業体労働委員会の委員の任命方式の問題についての質疑応答、これは何も立法趣旨というものがまだ立法的に明らかになっておらずに、一部分について質問が行われておるから、非常に局部的な質疑応答になっているのじゃないかと私は聞いておったのですが、私はこういうふうに考えているわけです。従来の任命方式は、労使の双方の満足があれば、これだけで事足りた任命方式であった。ところが現実の問題は、労資の満足するだけの人間が調停案なり仲裁案なりを出したのでは、あるいは最終的に片づかぬ。というのは、予算上、資金上の問題があったり、それを国会で承認を経なければならぬ。それには満足しておるけれども、それには満足するだけで、手続で任命した場合には、問題が最終的に片づかぬ。やはり国会との関係というものを考えて、その調停案なり仲裁案なりが実施不可能な場合には、国会にきてもすべりいいようにするということで、労使の満足プラス国会の同意ということで任命方式が考えられておるのじゃないか。従ってこの任命方式がとられた一番大きな立法理由は、こういう方式が今までの方式よりも三公社五現業の労資紛争を最終的に、円滑に片づけるためにより有効である。そういう判断でこの法律がここへ出てきているのじゃないか。立法趣旨はそこにあるのじゃないかと私は理解しますが、いかがですか、局長から御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/131
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132・山本經勝
○山本經勝君 私は実は寺本委員の御質問は、しまいの方は御質問ですが、実は解説だと思う。それで寺本委員は、元労働政務次官をしておったことは承知いたしておりますが、今はやはり次官もおいでになり局長もおいでになる。そこで今の解説は、これは非常に矛盾していると思う。それで私が伺っている事柄の内容は、そうではありませんかというのでお問いになっている。これはこの委員会の運営上問題になり、おもしろくないことになると思う。この点は委員長はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/132
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133・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 質問を続けて下さい。関連して発言を許したのですから、あなたの御認定で一つ質問して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/133
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134・寺本廣作
○寺本広作君 まだお答えがありませんから、答えを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/134
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135・中西實
○政府委員(中西實君) 答申案をお手元にもお配りしてございますが、この任命方式のところは、答申案にも全会一致賛成されておるところでございます。この趣旨は、結局公企体の紛争処理は、仲裁裁定で処理する、しかるにその仲裁裁定が従来往々にして裁定は下ったけれども、その後に紛議が起った、それにつきましては、多分にこの委員の任命方式ということも関係しておりますので、従って今回のように、公企体の労働条件、その他の予算との関連もございまして、従って国の最高の機関である国会の同意を得るというのが、最も妥当ではなかろうかというので、おそらく答申案におきましても、全員が賛成されたということに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/135
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136・山本經勝
○山本經勝君 ちょっと、これは一つこの委員会として御理解願っておきます。先ほど寺本委員からお話がありましたが、いわゆる労働委員会の構成その他この案の局部だけを取り上げておるというふうにお話があった。しかし私はそうじゃない。冒頭この案の骨子をなすものは何かということをお伺いしたところが、交渉段階の問題とか、あるいは労働委員会の構成とか、あるいは一定のワクが考えられているというようなことを一応総括的にお話しになった。そこで、その中で問題点は、まず重要な個所としてこの点があるのだということで今御質問を申し上げたのです。そこで誤解のないようにお願いしたい。
そこで、次官のお話になりました、先ほど政府が責任をもって実行のできる案ということになりますと、――いいですか、政府が責任をもって実行のできる案ということになりますと、政府の持っておる予算のワクの中でやれということに私はなると思う。そういうことになりませんか。次官どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/136
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137・武藤常介
○政府委員(武藤常介君) 従来は、御承知のように、給与総額というものが決定されておりまして、その範囲内で政府は、勧告されても、あるいは調停案が出ましても、その範囲内でなるべく実行していくということでやったのですが、今度はその点に幾らか若干の改正を加えていま少し融通のあるようなものにしよう。しかし最終の決定はもちろん主務大臣の決定にまかせるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/137
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138・山本經勝
○山本經勝君 給与総額が予算の中できまっている、そうしてそのワクの中で調停なりあっせんなり、あるいは最悪の事態になれば仲裁がなされる、こういうことになったら、私はこの労働委員会なるものの任務は何であるか、全くわからなくなってくる。それから、さらにこの場合融通を考えておられる、こういうことになりますと、これはどういうことなんでしょうか。その点がさっぱり理解ができない。それで、一応私なりに理解することを申し上げれば、給与総額という一定の予算のワクに拘束がある。従ってその給与総額のワクの中の裁定でない限り実行ができない、実行ができるようにするためには――いいですか、実行ができるようにするためには、委員の任命を国会の同意を得て五名にし、二名を常勤にしておくことが必要である、こういうふうに逆になってくると思うのですが、この点どうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/138
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139・中西實
○政府委員(中西實君) 個々の事案に対する仲裁裁定が、常に政府の意に沿って、そうして国会にも通りやすくなることを期待しておるというものでは絶対ございません。常に出ます仲裁裁定というものが公正妥当かつ合理的なものである、そうしてそれは公共企業体の性格上、国の全体の給与なら給与、その他労働条件すべてにつきまして関連がありますので、そこでこれは国の最高権威である、機関であるところの国会の同意を得るという任命方式にするのが最もよい人を任命し得る道ではなかろうかということでございまして、そうすることによって、ここに仲裁裁定が政府の気に入るようなものが出てくることを期待しておるものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/139
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140・山本經勝
○山本經勝君 国会の同意を得ることによって、つまり裁定がなされ、給与その他諸問題について国会の同意を得ておくなれば――これは国会の同意ということは、委員の任命についてですよ、そうすると政府が一応労使の意見を聞いて――それがどの程度に取り入れられるかは別問題といたしまして、一応この人々をという案ができて、そうして国会に諮られる、そのことがいわゆるその裁定をした給与その他労働条件の内容についてスムースに行えるものだ、こういうことと私はどうもつながりが理解できないのですよ。で、そこら辺を先ほどから伺っている。次官のお話によるというと、いわゆる責任政治の建前から、政府が責任を持って実行できるような裁定をするためにある程度の融通性を持った考え方の上に立って、つまり給与総額の予算のワクは一応あっても、その裁定が実行できるようにするということは、もし予算のワクを破っても、あるいはそれに拘束されることなく、この委員会が裁定するというのであるなればわかります。任命の手続の問題にしても人の問題でしょうが、しかしそれはまあ一応わからぬことはない。ところが、そうじゃない。お話になっていることはやはり食い違っている。問題は、給与総額の予算のワクの中で裁定がなされるようにするために、国会の承認を受けた公益委員を任命するのだというふうに、私は今局長のお話を承わった。ところが次官の方のお話は、そういうものではない。予算のワクの中にはめることは責任政治の立場から、あるいは政府が責任をもって実行する建前から必要であるけれども、ある程度の融通性というものは考えなければならぬ、こういうふうにお話になった。私は根本問題が食い違っていると思う。その点、どちらからでもよろしいですが、一つお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/140
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141・武藤常介
○政府委員(武藤常介君) ただいま申し上げましたのは、口が短くて、責任というやつがすべてに冠したようになりましたが、委員を任命することが、すべてその関係が国会の責任に行くと申したつもりはありませんのでございます。しかし、今度国会が同意を与えて決定した委員であれば、将来その委員が裁定等をした場合に、また特別な場合がありましても、国会も相当これに対して信頼を持つであろう、こういうふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/141
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142・山本經勝
○山本經勝君 これは今のお話、またあれなんですが、国会に承認を求めた委員が裁定をしたのだから、国会は責任を持つだろうし、また予算のワクとの配慮もその間になされるものであると、こういうふうに理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/142
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143・武藤常介
○政府委員(武藤常介君) そこまで責任を持つというまで、はっきり申し上げるわけではありませんですが、国会で承認した委員が裁定なされたものに対しては、比較的国会も承認しやすいというようなことを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/143
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144・田村文吉
○田村文吉君 関連。局長に伺いますが、今の山本委員の質問の、政府の、国会の承認を得るということは、将来予算上資金上等の問題が起る場合に関係することも考慮して国会の承認を得るというように、誤解じゃないが、ちょっと話を私は伺ったのですが、私はこの伺いたい意味は、そんなこととは関係なしに、政府が国民の代表である国会のあれを得るという意味でお尋ねになるのじゃないかと、こう私は考えているのですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/144
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145・中西實
○政府委員(中西實君) 公共企業体の最終的紛争を処理する方法の仲裁裁定、これは非常に国家的に見て重要である、従ってこの任命におきましても最も手続を重からしめると、そうしてその任命された委員の権威を高めるということが、もとより最も大きな目的でございます。従ってそのために他の行政委員会の委員も、同様両議院の同意を得て、そうして内閣総理大臣が任命する、こういうようにしたわけであります。もちろん先ほど政務次官もちょっと言われましたが、そういった国会の同意を得て任命しておるような方は、それだけ信用もされ、従ってそういった方々の出された案というものは、政府、国会においても処理するという場合に、十分に従来以上に尊重すべきものだ、こういうことももちろん私は含んでおるというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/145
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146・寺本廣作
○寺本広作君 関連です。ただいまの田村先生のお話に関連するわけですが、公共企業体労働関係の公益委員の任命に国会が同意することとすると、それは非常に、国民を代表する国会が同意するので、任命の手続が重くなるという一面もあるという今の政府の御答弁でございます。そういう意味からすると、もし労使の意見を聞いて国会が同意するということについて、何も政治的なあれがない、作為がないというふうに、世間から受け取られるような一般情勢ができるなら、中央労働委員会の公益委員なども、本来ならばこの国会の同意にかからしめていいのじゃなかろうかと思うわけでございます。と申しますのは、私は議院運営委員会に出ておって、あそこに出てくる各種の行政委員会の委員を見ておると、ずいぶん仕事のない委員会がたくさんございます。公安審査委員会とか、土地区画整理委員会とかというようなことで、ほとんど行政案件がないのに待遇が非常にいい。なぜかというと国会の同意にかからしめておるので、非常にその地位が重いというので待遇がいいのだ。ところが中央労働委員会などはほとんど徹夜々々で忙しい仕事をしている。そうして一般の大衆に及ぼす影響はきわめて甚大なる仕事をしている。それにもかかわらず待遇はきわめて酷薄である。なぜならば、これは国会の同意にかからしめていないから、重くないから待遇が悪いのだ、こういう説明であります。労使の意見を聞いて、国会の同意にかからしめるということについて、何も政治的な作為がないというふうに世間が理解するようになると、中央労働委員会なども、今政府が言われると同じような意味で、本来この国会の同意にかからしめるような任命手続が考慮されていいのじゃないかと思いますが、この点について関連してお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/146
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147・中西實
○政府委員(中西實君) 確かにおっしゃるように、公共企業体の調停関係の委員会と若干性格は違いますが、しかし中央労働委員会のごときは、きわめてわが国の経済に関係の深い、重要な任務を持っておるわけであります。従って従来から中労委の公益委員の任命につきまして、その任命の方式を変えて、国会の同意にかからしめたらどうかというお話がございました。この労働委員会は、御承知のように、終戦直後の労働組合法でできました。当時はまだ両院の同意を得て任命するというような方式もございませんでしたので、労使委員の同意を得て労働大臣が任命をする。その初めの方式がいまだに続いてきておるということでございまして、機会がありますれば、そういう任命方式に変えることも考慮されていいのじゃなかろうかというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/147
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148・田村文吉
○田村文吉君 今のようなお話、ごもっともの点もあると思うのですが、国会の承認も得て、きわめて公平妥当に仲裁裁定をやろうという場合に、政党に所属する人を、二人以上はいかぬけれども、一人は入ってもいいと、あるいはまた役員になってはいけない、一人は入ってもいい、こういうようなことは、ちょっと政党には所属しないということにはっきりした方が私どもはいいかと思うのですが、それに対して審議会でそういう地位というのは、もう論戦はなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/148
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149・中西實
○政府委員(中西實君) 確かにおっしゃるようなことが考慮されます。審議会におきましては実はそういう論議は別に出ませんでございました。でわれわれとしましては、これは実はほかの行政委員会の格好がこうなっておりますので、実はそれにならったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/149
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150・田村文吉
○田村文吉君 じゃ次に同じ問題で……。そうしますと、第二十四条の四項と五項の関係でございますが、四項の場合には、「公益委員のうち一人がすでに属している政党にあらたに属するに至った公益委員をただちに罷免する」、それから五項になりますというと、「内閣総理大臣は、公益委員のうち何人も属していなかった政党にあらたに二人以上の公益委員が属するに至った場合は、これらの者のうち一人をこえる員数の公益委員を、両議院の同意を得て」と、ここに「同意を得て」ということがある。前には「同意」ということはないのですね。これはどういう意味で、五項の方には「同意」云々があり、前の方には「同意」がないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/150
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151・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) 御説明申し上げます。
四項の方におきましては、「ただちに罷免」とございまして、五項の方では同意を得ましてと設けましたのは、四項では二人目の――一人の人がすでに政党に入っているときに、あとから入った人は、これはもう当然欠格条件に当る。そこであとの人はまあ当然そこで失格するべき筋合いでございますので、直ちに罷免する。ところが二人が一ぺんに同じ政党に入りましたときには、どっちの人を失格させるかということは、これは総理大臣限りで好き勝手にしては困りますので、そこで国会の同意を得るというふうにいたしたものでございまして、これも各種の国会の同意によって任命される各種委員会の例にならいましたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/151
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152・田村文吉
○田村文吉君 関連しますが、今のはあれですか、同一政党に必ずしも二人が入るということでない場合も想定されてよろしいのじゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/152
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153・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) 一人が、別々の政党に一人づつ入りましたときには、全然問題になりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/153
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154・田村文吉
○田村文吉君 ええ、なりませんけれども、この書いた条文からいくというと、問題になるように書いてある。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/154
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155・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) 「何人も属していなかった政党にあらたに二人以上の」五項の方でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/155
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156・田村文吉
○田村文吉君 そう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/156
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157・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) ああ、これは慣行的な解釈と申しますか、いろいろな例によりまして、これは二つの政党に二人がそれぞれ入るということでなくて、一つの政党に――英語なら単数がはっきりするのでございますが、そういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/157
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158・山本經勝
○山本經勝君 これは今政党の話は政党の話で一応あれなんですが、もう少しやはりはっきりしておきたい。
それから本日しょせんこれは質疑は尽せないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/158
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159・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) ええ、尽きませんから適当にしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/159
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160・山本經勝
○山本經勝君 それからまた一応検討してみまして、なお御質問したいと思うのですが、先ほどから言われた話の中で、私の質問も実はあいまいであったかもわからぬと思います。それでもう一度あとざらいをする意味において申し上げますが、この国会の同意を得るということは、非常に新しい、しかも民主的な方法であるかのごとく、局長並びに次官もそうおっしゃるわけなんですから、そこで国会の同意を得たことによって、その委員が仲裁裁定を行なったというような場合に、いわゆる国会が承認をした委員がきめたことであるから、政府は責任を持たなければならぬ、あるいは持つべきものである、こういうことなのか。いま一つは、政府が推薦をし、国会の承認を得た、責任を持たせた――責任政治の立場から政府が責任を持たせた委員が仲裁をし、裁定をしたのであるから、よしそのことが予算のワクやその他いろいろな問題があったと仮定しても、それは責任を持って実行に移すものである、こういうことなのか。その点が先ほど非常に不分明になっておる。そのいずれであったかをはっきりお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/160
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161・中西實
○政府委員(中西實君) 国会の同意にかけましたのは任命を重からしめ、権威を高めるというのが、主たる目的でございます。そうしてそういう方々が出された仲裁裁定というものにつきましては十分に敬意を表し、尊重する。しかしながら、それだからその出された仲裁裁定は常に必ず政府、国会が実行するように措置するという直接の関係はもちろんございません。一般論といたしまして従来ももちろん仲裁裁定は尊重すべきではございますけれども、こういう任命方式になって出されました委員が決定しましたものにつきましては、さらに従来以上に尊重さるべき筋合いのものになる。従って別に仲裁裁定は政府も尊重しなければならないという規定を入れましたから、そういう規定と相待ちまして、さらにできる限りこれが実行に移されるように政府も考え、また国会におきましてはこれは当然予算の審議権ということになりますので、国会におきましては当然その立場から御審議なさるのでありますけれども、しかしながらそういった任命方式によって出された委員の裁定に対しては、十分な尊重の気持を払われることは期待できるのじゃなかろうかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/161
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162・寺本廣作
○寺本広作君 関連して……、今の山本さんの御質問はすなおにあのままこの法律案では肯定した形になっておるのじゃないかと私は思うのですが、今度公益委員も国会の同意を得て任命をされるというような非常に重くなった任命手続をとると、それと、この法案の中に、その仲裁委員会が出したものは政府は尊重しなければならぬという条文が、任命手続が変ったのと同時に、尊重の義務が入ってきておるのだと、それは直接の因果関係はないにしても、とにかく山本さんの御質問の趣旨に沿う改正ではなかろうかと私は思うのですが、その点なお……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/162
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163・山本經勝
○山本經勝君 今の寺本さんのお話は、寺本さんと二人で団体交渉をするのは別なんですが、(笑声)私が言っているのは、先ほど言われたのは責任政治の建前から予算総額、給与総額というものが予算の中に取り入れられておる、そのワクの中にあるのだから、ワクの中で裁定をさせるために、政府は国会の同意を得て権威づけたという名において、適当な自分の好む人間をそこに押しつけていくと、配置していくというようなふうになりはしないかということを考えたから、私は逆に今のような質問を申し上げたわけです。ところが責任政治という言葉は非常に重要な言葉なんだが、そこで予算のワクというものはわれわれも背負っているわけなんです。ところが場合によっては、今回のもそうではないかと思うのです。調停案が一応示されて、その調停案について二重の解釈がなされて、それが今度は各企業体別に団交に回されていまだに紛争している。こういう状態はつまり調停に対する内容のあいまいさというよりも、私は率直に申し上げて悪く解釈しているのですが、これはおしかりのないように。で、むしろぬけぬけと二重の解釈のできるような調停案を出させたのではないかと疑っている。そこで、そういうものを出しておいて、今度団交に移して解決するのだから問題は非常に紛糾するのはこれは当然だと思う。ところが、これを実は処理するのは、仲裁委員会なり調停委員会の任務だと思うのです。そうすればむしろそこら辺でそういう自後の紛争をかもすようなことをするよりも、事前に合理的に解決をすることの方が望ましい。で、その場合に一定の予算のワクがあるのだから、それ以内に私はできないのだとすれば、予算が通過した後におけるこれらの問題は問題ないわけなんですよ。ところが問題がなおあるということは何を意味するか。やはり現実の問題の中に納得いかぬというだけでなくて、やはりそれぞれの企業体の中に、八つの企業体の中に、それぞれある程度の弾力性は持っておると思う。たとえば業績賞与という名において出すものとかりに仮定しても、その業績というものがあるわけです。ですから、ここでがっちりと拘束したものにしてしまわなくても、問題の処理は事実上できている。だから私は納得がいかぬのですが、このことは次回に直接関係のある議員に出てもらってよく解明を願うことにして、一応その問題の中で、先ほどの次官のお話の中にあったように、国会の同意を得たということによって責任のある委員の任命ができるのだ。今まではできなかったかというとそうではなかったと思う。で、労使双方の同意を得て構成された中央調停委員長がいわゆる仲裁委員の指名をしておる。で、それらの人々がやったということは私はやはりちっとも権威づけなかったものじゃないと思うのですよ。国法でもってきまって、そうしてそれが議会の承認を受けた制度として運用されてきた。私はむしろ運用の面で矛盾があったのじゃないかと思う。しかしどこも私は悪いとか、この点がだめだとか、こういう点はいけないとかとしいて変えるということは必要でないのじゃないかということを、私初めから強調しているのです。そこら辺のお考え方を重ねて一つ御迷惑ですが、お答えを願って、一応私の質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/163
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164・武藤常介
○政府委員(武藤常介君) ちょっと誤解されるといけないから……。
同意を得て任命したことと、それから将来その委員が裁定をされた場合にこれに対する国会の関係は関係がありませんから、あらためて申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/164
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165・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) ちょっと速記をやめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/165
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166・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) では速記を始めて。
本問題に対する本日の質疑はこの程度にいたしまして、残りは次回以後に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/166
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167・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 御異議ないと認めます。
それではこれで社会労働委員会を閉会いたします。
午後四時三十九分散会
――――・――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X01919560329/167
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