1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年四月十二日(木曜日)
午前十一時二分開会
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委員の異動
四月十日委員久保等君及び森田義衞君
辞任につき、その補欠として山本經勝
君及び高良とみ君を議長において指名
した。
四月十一日委員山本經勝君辞任につ
き、その補欠として平林剛君を議長に
おいて指名した。
本日委員藤原道子君、竹中勝男君及び
高良とみ君辞任につき、その補欠とし
て山本經勝君、大和与一君及び森田義
衞君を議長において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 重盛 壽治君
理事
高野 一夫君
谷口弥三郎君
山下 義信君
委員
草葉 隆圓君
榊原 亨君
寺本 広作君
深川タマヱ君
横山 フク君
平林 剛君
大和 与一君
山本 經勝君
田村 文吉君
森田 義衞君
長谷部ひろ君
国務大臣
労 働 大 臣 倉石 忠雄君
政府委員
労働政務次官 武藤 常介君
労働大臣官房総
務課長 村上 茂利君
労働省労政局長 中西 實君
事務局側
常任委員会専門
員 多田 仁己君
説明員
労働省労政局労
働法規課長 石黒 拓爾君
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本日の会議に付した案件
○公共企業体等労働関係法の一部を改
正する法律案(内閣提出)
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001・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) それでは、ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
委員の異動を御報告いたします。四月十日付森田義衞君辞任、高良とみ君選任、四月十日付久保等君辞任、山本經勝君選任、四月十一日付山本經勝君辞任、平林剛君選任、四月十二日付藤原道子君辞任、山本經勝君選任、四月十二日付竹中勝男君辞任、大和与一君が選任、以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/1
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002・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/2
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003・平林剛
○平林剛君 私は公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案の改正の時期について、最初にお尋ねをしたいと思うのであります。戦後、労働組合法の改正につきましては、何回となく試みられて参りましたけれども、常にそのときの社会情勢によって、その労働法の改正がいろいろ議論せられることが多かったと思うのであります。この議題となっている公共企業体等労働関係法が当初制定された当時におきましても、やはり占領軍によって、その意図がどこにあるかということは識者も承知しておるところだと思うのであります。特にこの公労法は、占領下早急の間に立法されまして、その内容がいわゆる翻訳立法の最たるものであるという批判もかなり強いわけであります。技術的にも不備な点がたくさんありますし、その結果、今日まで公共企業体等の使用者も、また労働組合の方も、無用の紛争を招いておりましたことは事実であります。今度のこの法律案の改正の要旨を、政府が臨時公労法審議会に意見を求めた時期が一月十四日、ちょうどそのときは昨年から喧伝をされておりました総評の春季闘争が叫ばれておった、そういう時期にこの公労法の一部改正という問題が政府の方から打ち出されたということにつきましては、私はそこに大きな政治的な要素が加わっているのではないかという疑問を感ずるのであります。そこで政府はこの公労法の改正の時期を今度の国会に求めたその理由、その点について労働大臣から、私は御見解をお伺いしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/3
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004・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 私どもがこの公労法の審議会を設けましたのはなるほど一月ですが、私が就任いたしましたのは十一月の月末でありまして、そのころからもしばしば国会などで労働関係について、どういう考えをもっているかというお尋ねを受けましたときに、労働関係は特に人と人との関係を律するものであるから、あまり法律や規則で拘束するようなことを考えるよりも、よい労働慣行を作るように指導いたしていきたいと思う、ただしかし公共企業体等労働関係法だけについては、長年私どもが国会において労働関係を取り扱った関係上、これは経営者もそれから従業員も皆この法律の不備を指摘しておるし、この立法をされましたときに、私ども労働委員としてしばしばそういう点について問題があったのでありますが、ついそのままになっておる、こういうものは世間皆が改正を要望しておることであるからして、これだけは手をつける方がいい、こういうことを当初就任したときから申しておったのでありまして、そのころはまだいわゆる春季闘争というふうなスケジュールを出しておられないときでありますし、これはもう私が就任いたしましたときから、公労法についてだけは何とかもう少し明確にしたい、こういう理想をもっておったものでありますから、それを敷衍化してきたというだけでございまして、別にほかに他意はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/4
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005・平林剛
○平林剛君 倉石労働大臣が自由党の労働委員長の当時から、公労法のことについて非常に理解が深かったということは私も承知をしております。しかし後に指摘したいと思いますが、それにしては今度の改正案というものは非常にお粗末なものである、本質的な解決になっていないということを私は指摘をしたいと思うのですが、これはあとで申し上げます。しかし、この改正案の時期について、一部では、どうも適当な時期ではないという批判はかなりあると思うのです。なぜかといいますと、この公共企業体等労働関係法に重大な影響を与えると判断せられる国家公務員法の改正が、今、日程に上っておる、そういう際に少くとも制度の根本に触れるようなものを、これに先がけて行うことが適当であるかどうか、特に今度の法律案の骨子の中には、今までの調停仲裁の機関というものを改めて、別な機構にするという考えも含まれておるだけに、また三公社五現業、特に五現業と他の現業との関係においてもいろいろ議論せられている点が多いだけに、これと切り離してこれだけに手がけるということについては、かなり有力な意見もあって適当ではないんじゃないか、こういう見解もあるわけであります。私のこれは独断かもしれませんけれども、全般的な情勢から見てもう一つ言えることは、特に最近保守と革新の二大政党の時代に入って参りました。二大政党といいましてもまだ保守党の方が絶対多数を占めておる。国会においては多数政治でありますから、そういう意味ではある程度保守党の方もやりたいことはできる。こういうときに、特に国民も保守対革新が一体どういう政治をお互いに協議してやるだろうかという一つの期待を持っておるときに、しばしば問題のあった公労法を、しかも本質的な問題の解決を除いて行うということについては私は時期としてどうかなと思うのです。特にこれも後に指摘したいと思うのでありますけれども、それは一月の初めにはまだ春闘のことはどうか、時期ではなかったというふうに御説明になりましたけれども、時期的にはもう労働大臣はこのことは昨年から御存じのはずでありまして、私はこれについては争いませんけれども、春闘に対する今度の政府のかなり強い介入態度から見ましても、私は今度の法改正そのものが権力的な改正だというふうに判断せられるおそれは全くないとは言えないと思う。こういう疑問や意見に対して、特にこの時期が選ばれた。もちろん労働大臣が就任をされて第一に、一番体験の深かったことについてよくしようとする意図であろうと私は思いますけれども、こういう時期その他から考えて、特に今度の国会で通さねばならぬ——今度の国会で通さねばならぬという理由は何かほかにあるのではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/5
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006・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) この公共企業体というもののそのままの姿を国家的な立場に立って考えて理想的な形であるかどうかということについては、世間にもいろいろ議論がおありでありますし、私どももそれについてはいろいろ考えを持っておりますが、しかし、これを現在のままに存在せしめておく母上は、やはりそれに関する労働関係法というものがあるんでありますから、それをなるべくわれわれの考えておる理想的な形に変えたい、こういうのが私の考えでありまして、従ってこの法律の改正をお願いすることの主たるねらいは、提案理由の説明にも申し上げてあります通り、仲裁裁定というものについてなるべくもう実施に移せるようにしようではないか、そうしてそれを権威あらしめるようにしたい。平林さんもよく御存じのように、常に国会に持ち込まれたる紛争は仲裁裁定でありますから、これに重点を置いて、そしてこの三公社五現業の紛争が調停に出ました。今度はもう解決いたしましたが、この次いつそういうことがあるかわかりませんが、その前に法律の改正をしておいて、そうしてもう紛争を国会に持ち込むようなことのないように、政府としてはできるだけそういう仲裁裁定を履行する義務づけをしておる。すなわち仲裁裁定が尊重せられるような形にあとう限り改めたい、こういうのが私の理想でございますので、これはいろいろ私どもの考えておらないことを想像されて御批判をいただく前に、いい改正案を出したと言ってほめていただけると思っておったのでありますが、どうぞそういう意味でよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/6
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007・平林剛
○平林剛君 その点はもう少し審議してみないと、いい改正案になっているか、悪い改正案になっているかということは私は言えないと思う。特に、労働大臣は、今度の改正案で仲裁裁定というものがすみやかに実施に移されて紛争がなくなるというようなことをお考えのようでありまして、さてこれを実際問題に移された場合にその通りになるかどうか、これはむしろ今までだって運用によって幾らでもできた、今日まで紛争を長引かしておったのは別のファクターであったというのが、私が体験したところであります。これは労働大臣と見解が違うかもしれませんが、私は今日公労法がしかれてから一貫して紛争の原因というものはどこにあるかということを特に承知しておるものであります。しかし、倉石労働大臣のお答えを善意に解釈いたしまして、一応そういう理想に近づかしめるというお気持であるということは、そのまま聞いておいてもいいのでありますけれども、しかしもう一つ私はこの時期に関係をして感ずることは、一月の十四日に臨時公労法の審議会に委嘱をして、答申が二月八日に出てきた、大へんむずかしい法律にかかわらず、ずいぶん早くこの答申案が出たものだなあと、逆に言えば、私はこの委員の方の積極的な努力に対して敬意を表します。しかし、法案全般を見たところ、どうも先ほど指摘しましたように、私は感じとして拙速的な感じを受けるわけであります。これはもっとこまかく審議していけば明らかになるところでありますが、審議会の答申の中での重要なる柱については私は抜かされてしまっておって、結果的には尊重していないということになっている気がするわけです。本質的になかなか複雑な問題が隠れていることは私も承知しておりますけれども、先ほどのように、労働大臣が好意を持って、善意を持ってこの法律案を理想的な方向に持っていくのだという気持があるならば、公労法に明るい労働大臣としては、もう少し本質的なところまで手がけてもらってもいいのではないか、こういうふうに思うのであります。そういう意味でどうでしょうか、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、何となく間に合せ的な、臨時の非公式の諮問委員会というよりは、一つ公式の審議会というものを作って理想に近づけるように、改正について慎重を期するという考えは現在のところお持ちになりませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/7
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008・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) この審議会の委員の方々が非常な努力をされまして、私の方ではこの答申案をお願いをいたしましたときに、いつまでに出していただきたいとか何とかいう希望、それからまたこういう方向で政府は考えておるのだといったようなことは毛頭申しておりません。そうして御承知のように、第三者的立場にお立ちになっておられるのは、長年調停をやっておる藤林教授、それから労働法の公平な学者であると言われておる峰村教授及び大蔵省の関係がございますので、大蔵省をよく説いていただくためには最もよかろうというので長沼弘毅氏をわずらわして、そうしてあとはいろいろ経営側と組合側の代表に出ていただきまして、快くお引き受けを願って、ある日のごときは非常に夜おそくまで熱心にやっていただきました。大体専門家のおそろいでございますから、なるほど時間は短かかったかもしれませんが、回数は非常に多くの回数を重ねて、そうして重点的な問題はもちろん十分な御審議をお願いしまして、私はこの答弁案を拝見して、さすがに専門家ぞろいの委員の方々の御意見であると感心したのでありますが、大体において答申案の要旨を取り入れて原案を作ったわけであります。そこで、現在の公共企業体というものの運営から見て、私はまず政府の今度提案をいたしましたこの程度が、現在の段階では最も理想に近い改正案ではなかろうか、こういうふうに思いまして提案いたしました。あらためてこれをやり直すということは考えておりませんから、どうぞ一つ御賛成をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/8
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009・平林剛
○平林剛君 専門家ぞろいの各委員の御努力については、さっき私が申し上げたように敬意を表するわけであります。その委員の方々のこの公労法に対する基本的な考え方というものは、やはり法律そのものについてこれを置いておいた方がよいのか、廃止して他の労働法に一本にすべきか、あるいは公社や企業体、企業官庁のあり方を含めて徹底的に検討する必要がある、だからそういう上で根本的な改正を行うことが望ましいと答申案では述べておるわけであります。しかし、短時日では無理だから、可能な限りその欠陥を是正して現状を一歩でも前進させよう、そういうための結論に出たとも私は聞いておるのでありますが、しかし、政府がこの答申案については、私は全面的に尊重したものでないと思う。今労働大臣がお答えになったように、大体において入れているところはありますけれども、答申案は結果的に尊重されておるとは私は言えないと思うのであります。私は、これから指摘しようと思います中にも、公益委員の国会同意による任命などについては、どうも労働組合と使用者との関係に政治的な介入を強めて、そこから中立性がそこなわれていくというようなおそれさえも感じておるわけであります。そういう意味で私は今度は質問の観点を変えて、この法律改正の方向について、労働大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
大臣としては、この改正法律案によって、労使関係の改善についてはどれだけ意が用いられておるとお思いになるか。一つ具体的にそういう角度からお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/9
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010・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 改正案につきましては、答申は、私が申し上げた通り、ほとんど尊重いたして取り入れてあるのでありますが、平林さんも御承知のように、四条三項の問題、これは当事者の御意見が一致いたしませんでしたからして、そういう一致しないものをこちらの勝手にやることはかえって失礼であり、よくないと思いましたから、私どもとしては現行のままにやむを得ずこれはいたした、こういう点がございます。それから調停及び仲裁を請求する主務大臣を労働大臣にせよとの御意見でございましたが、これはそうでない方がいいと思っております。それからもう一つは、訓示規定を置いて、労使の話し合いの場合にしようといったような、そういう訓示規定を置けという答申がございますが、これもその点は削除してある。この三つくらいのものでありまして、私どもはことごとく答申の御意見をそのまま尊重いたした。こういうわけであります。それでただいま平林さんのお尋ねのように、労使関係の、このことに働いておられる人々の意見をどういうふうにこれによって伸ばし得るかということでございますが、私は公共企業体における従業員の方々が、それはいろいろな御希望もありましょう、あるいは争議権を持たせるべきであるとか、いろんな御意見もあるようでありますが、そのことは別問題といたしまして、とにかく従業員の方々が、一番今まで本法の取扱いの上で難渋をされましたのは、御承知のように仲裁裁定でありますから、その仲裁裁定というものは、政府としてはあとう限り実施できるようにせよ、これが三十五条に特に努力義務を挿入いたした——一部の方々の政党の方では、そういうことについて非常な非難もございますけれども、私は今回の法改正の趣旨からこれはぜひやるべきである。こういうことで仲裁裁定がほとんど実施できるようにいたした。こういう点によって、私は従業員の方々も本法改正の趣旨については十分に理解を持ち、そしてまた賛成をしていただけるところだと、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/10
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011・平林剛
○平林剛君 この公共企業体等労働関係法というものが基本的に言えば、占領下において労働組合を押えるという点で、多くの労働法の中でもよい法律でないということは識者の一致したところであります。また、私は憲法上から見て、労働者の基本的な権利がこれで押えられていくということは、常に主張しておったところでありますが、きょうはそういうことについては触れません。しかし、今日の政治情勢下を眺めてこの法律の存在がやむを得ないという現状におきましても、労使間の改善、つまりこの法律の趣旨であるところの社会福祉のため云々という目的を達成する、そういう見地から公労法を改正しようとする場合に、私は一番の重要な点は、今労働大臣が言われたように、仲裁裁定や調停案が尊重されて紛争をなくする、こういうところにあることは言うまでもないのであります。しかし、そうしたことを達成するためには第一には、三公社五現業に対して自主性というものを持たす、責任制を確立して、その企業内においてある程度財政的にも幅のあるものにするということ、もう一つは、仲裁裁定などに対して、政府やあるいは今までの国会が過去とってきたあいまいな態度というものを改めるというところに私はあると思うのであります。倉石労働大臣は、今度の改正のポイントが仲裁裁定を実施しやすいような形にするということを、しばしばお答えになっておりますけれども、私はこの点の改正は、私が指摘した二つの点が実行されれば、今までの通りでもよい、こう思うのでありますけれども、今度の改正で、それでは今までのようなことがなくなるとお考えになっておりますか。その点はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/11
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012・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、予算上資金上支出不可能な裁定の場合は、十六条二項によってやはり国会の承認、議決を要する、こういうことは変りのないことでありますが、その他の件については、部内のやりくりで今までは平林さんもよく御存じのように、たとえ業績が非常に上って、その企業体の中で繰り回しができるような場合でも非常にそういうことは厳格でありました。大蔵大臣の許可を要して、大蔵大臣がそれについて賛成をしない場合には実施することは非常に困難でありましたが、もはやそういう場合には、政府としては予算総則に関係なく、仲裁裁定を尊重することを努力せよということでございますから、ほとんど大部分の仲裁裁定はこれによって実施できるのではないかと、こういうふうに私は考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/12
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013・平林剛
○平林剛君 改正案の要綱で政府の説明する第二点では、その点仲裁裁定をできる限り尊重する精神を明らかにした改正の文句の挿入は確かにありますし、給与準則や給与総額の制度に若干の改正はあるようでありますが、まあこれは私に言わせれば、ないよりある方がましだという程度の改正だと思うのです。先ほど申しましたように、今までだって政府の態度がこの公労法の目的に沿うように運用されておりますれば、私は今日ほどの紛争や摩擦は起きなかったと思うのでありまして、特に今までの法律の第一条第二項には、関係者の義務がちゃんと規定されてあって、今度の改正をやらなくったって、その大精神においてはお互いに裁定は尊重しなきゃならぬ、関係者は極力努力しなきゃならぬというような精神というものは立法精神の中に入っておる。それができなかったところに問題が私はあったと思うのであります。だから今回のような給与準則や給与総額の若干の改正がありましても、もっとはっきり、裁定というものは関係当事者も政府も拘束するのだとか、あるいは仲裁裁定は労働協約と同一の効力を有するのだと、まあ予算上資金上不可能な内容の裁定は、国会において所定の措置があるまでは、その履行は猶予されるというふうに、裁定というものについての権威というものを与えるような改正をする、そうでなければ、予算上資金上不可能な内容の裁定があったときには、政府は何日以内に必要な予算を付してその承認を求める。この程度の字句が入って改正をされるというならば、私は今までの紛争をある程度積極的に解決する策になり得るかとは思うのであります。しかしそれがないというと、さっき言ったように、まあある程度の改正ならば、政府の気持次第で今までだってどうにでもなった程度のものじゃないかということが言えると言わざるを得ないと思う。今度改正をされたとしましても、今後の関係者の運用いかんによっては、どっちにでも転がる余地が残っているのじゃありませんか。私はそう思うのでありますが、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/13
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014・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 最初の、その公共企業体の経営当局が今までもやはり大蔵大臣にいろいろな相談をいたしました。このことは平林さんもすでに御承知のように、この公共企業体というものが、国の特殊な機関である。そうしてまた現実的に申せば、専売は専売で、一年の予算に向って、千何百億かの益金を繰り入れるということになっておる。それから国鉄や電電公社は、ただいままではそういうことはいたしておりませんが、国鉄のごときは非常な、経理内容に不足を生じたときには、一般会計の繰り入れまでやっておるといったようなこと、そういう特殊な立場でありますからして、これはやはり国全体の立場からものを判断していかなきゃなりません。その点において大蔵大臣がいろいろ相談にあずかることは、これは国家としては、また国民としても、そういうふうに慎重にやらせることは当然だと思うのでありますが、そこで、しかし労働関係の場合に、この公共企業体に従事しておられる人々のために作られたこの公労法の立場から申しますというと、今のお話によりますというと、仲裁裁定は政府も拘束する。従って国会にその予算が出されたら、国会はただ形の上だけで政府の出した予算をのむことによって、仲裁裁定の実施をなすべきではないかと、こういうふうな御意見かとも存じますが、そういうことはこれは他の方面から考えてみますというと、かりに国会というものは政府の出した予算案を必ず協賛しなければならないというものではございませんので、国家最高の機関である私ども国会は、独自の立場に立って、政府の提案せられたる予算を審議するものでありますからして、法律によって必ず、政府の提案した予算は、この件に関してだけは、国会もまたその趣旨を尊重して、必ずその予算に賛成しなければならないものだと、こういうことは他の方面から考えましても不可能だと思います。ことに、かりに政府が出された仲裁を、法律に基かないでも、これは政府として予算を編成して出すべきであると政府が考えて国会に提出しても、国会は独自の立場でこれを拒否することが当然あり得るのでありますから、やはりこれは予算に関しては最終的に国会の議決を要するという第十六条二項の建前は、どういうふうな角度から考えてもいたし方のないものである。従って法の建前から、政府としてできる限りの努力をして、仲裁裁定を実施せよと、こういうことは、これは仲裁裁定を実施させるこの法律上の努力としては最大限度のところであると、こういうふうに解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/14
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015・山本經勝
○山本經勝君 関連して……。ただいまの大臣のお話、一応大臣のお話として承わるのには筋の通っているように思うのですが、ところが先ほどの大臣の、平林委員の御質問に対してお答えになったものを見ると、仲裁裁定を守らせるようにする必要がある、このようにおっしゃったと思う。そこで、そういうことは何を意味するかというと、つまり裁定の問題当事者である国鉄、全逓、その他国営事業、そういうところに働く労働者、こういう立場ですから、そこで、仲裁裁定を守らせるようにするということは、政府が受け入れられるようにする、こういうことになるのです。そのことが、今お話になっていた予算というものは、国会の最高決議機関としての決定に縛られるものだ、これも仰せの通りだ。そうしますと、私は非常に大きな矛盾がここに歴然と現われてくる。三十五条、改正案にも三十五条に……。これは順守の義務、あるいは努力の義務といいますか、そういうものが規定されている。また十六条の二項は今お話のように、一応その場合にどういう手続をとるべきかということが示されて、政府当局として、どういう手続をとるべきか、つまり仲裁裁定が行われた、しかしながら、そのことが予算面あるいはその他資金上の操作に困難である、こういうような状態が起って、もう一応調停として政府が認めたということになりますと、今度は事後の問題は、国会に対する予算の請求である、あるいはそれに対する検討を国会に訴える、こういうことになると思うのですが、そうなった場合に、これは非常に大きな矛盾が現われてくる。ところが、仲裁裁定の裁定の内容を受け入れるかどうかということ、受け入れるべきかどうかということの判断は、やはり私は政府にあると思うんですよ。それでそうなりますと、このせっかく開かれている道を、今度改正によって閉ざすという結果になる、こういうふうな私は憂慮を抱く。そこでもうちょっとわかりやすく、具体的に一つお話を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/15
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016・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 山本さん御承知のように、仲裁裁定が出ましたときには、この予算上資金上支出不可能な点があればこれは政府は拘束されるものではない、そこでそのことについては国会の議決を待たなくてはならないということでありまして、予算関係以外のその他の待遇の問題であるとか、いろいろな問題は仲裁裁定が下ったときにおいては当事者双方を拘束するわけでありますから、その点には文句はございません。そこで、予算上資金上支出不可能な仲裁案が下ったときには、政府は国会の議決を求めるということでございますから、国会が最終的に意思決定をして、その仲裁裁定はやはりその通りにすべきものであるという国会の議決があれば、そういうふうにしなければならない、こういうのが法の建前であると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/16
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017・山本經勝
○山本經勝君 そのお話は、一応先ほど申し上げたようにわかるのですが、そこに大きな矛盾を感ずるのです。つまり予算は政府を拘束する、こういうことになるでしょうね。そうしますと、その予算のワクの中で、今大臣のおっしゃるように仲裁裁定を守れるようにするということになれば、もう予算が先にきまるのを待っておれば仲裁裁定も何も要らぬということになると思う。むしろ私はここで労使の関係というものを見直していく必要があると思う。やはり使う者と使われる者という立場の相違は、この間も質問を申し上げたのですが、使われる者の立場では、やはりその労働の報酬をもって生活をするという現実がある、そこで物価の変動やいろいろな客観情勢の変化に伴ってやはりその生活の容態が変化すると思う。そこで苦しいときには値上げの要求をするでしょうし、またよりよき生活をすることは憲法も保障しておるのですから、それを上げる努力を労務者はするでしょう。そこで問題が提起されてくるのでありますから、結局この現実の労使関係というものの立場、つまり働いて賃金を受けるというものもやはり社会生活を営んでおる。ですから現実から出てくる問題は必ずしも予算と関連がなく出てくると思う。そこで当然仲裁裁定なり調停その他の方法によって、争議権を剥奪されておる公共企業体関係の労務者にしてみますと、何らかのやはり改善措置あるいは現状を擁護する方法を講じなければならないというのが現実に出てくる、ところが、仲裁裁定は最終的に服従の義務を課する強力な決定をなすわけだ、そうしますと、その決定は仲裁裁定がなされることが受け入れられる政府側の予算のワクを閉ざしておくということであるならば、仲裁裁定は何らの意味も私はないと思う。そのことは逆に今度裏返していいますと、仲裁裁定については、少くとも国家の予算のワクの中で裁定をするような機構にするというのが、率直にいって私は労働大臣のねらいではないかと思う。そうしますと、先ほど申し上げましたように、労働者の現実の生活と経済情勢の変化というものに即応する生活を守ろうという努力が何ら実を結ぶことができなくなってくるということにこれはなってくると思う。ここに私はこの法改正そのものに対して重大な疑義と矛盾が歴然として現れてくる、このことは私は大臣として否定なされないと思う。しっかりした御回答をいただかなければ、しょせん理解は困難である。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/17
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018・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 山本さん御承知のように、今日まで数年間しばしば調停仲裁が出されましたけれども、予算をいじらなければならないようなことで話し合いの妥結いたしましたものはありませんで、全部、内部の移流用を、国鉄なら運輸大臣と大蔵大臣との話し合いでそうしてやって解決されてきました。また、具体的に出て参りました仲裁案もやはり大体そういうことなんであります。今度なども、国鉄のたとえば調停案で第二項のところで、五千円以上業績手当を出す、こういうことでこの業績手当の五千円も二十数億になりますけれども、これはやはり国鉄自体の経理内容の、予算総額の中でやり繰りができた。それからまたその年度内における収益をそういう方面に使うことができるのでありますからして、そういう建前で実際の問題としては、予算をいじらなければならないような非常に広範な仲裁案というものは出ておりませんが、しかしそういうこともあり得るということを想定して、やはり予算というものは、その年度予算というものは三公社五現業は国の機関でございますから、国会において議決をするということが最終的な権威のある決定機関でありますから、そこで決定されたものを上回るような仲裁裁定が出ましたときにおいては、政府は一体どのようにやるか。政府は自由に出すわけにいきませんからして、やはり予算上、資金上決定されたる予算の範囲内で、そのワク内で取り扱うことのできないものは、国会の議決を待つ以外には、今日の日本のすべての制度の上からみてそれは当然なことだと思います。政府が責任回避をするわけではありませんので、政府としてはやりようもないことなんで、予算がすでに限られておるわけでありますから、そこで国会に審議を求める、今までの具体的なやり方は労働委員が仲に入りまして、そうして当事者、この組合側と経営側と大蔵省との三者の間に入って、そうして政府部内でやり繰りを許せる範囲でこの仲裁案は実施できるではないかというようなことで今までやって参りました。ところがもっと大幅な予算の、この新しい予算を作らなきゃならないという場合には、政府としては国会の議決を求める、法律にそうなっておりますし、またそうすべきが当然なことだと思うのです。政府がほかに支出し得る余裕がないんでありますから、これは補正予算を組むなりあるいはその次の予算提出時期にそれを盛り込んだる予算を提出するか、いずれかの道を選ぶほか方法はないのでありますから、この点は少しも矛盾はないことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/18
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019・平林剛
○平林剛君 私は他の質問に変えようと思ったのですが、今の点についてもう少し労働大臣にお答えを願っておきたいと思います。結局先ほどから私が質疑をした仲裁の裁定がうまく実施されるように、またそれが尊重されるように、政府に対してできるだけ努力をしなければならないという義務づけをするというのが三十五条の改正のねらいだと、こういうふうに私は理解をしたわけであります。そのことで具体的に質問をいたしますが、そうすると、これは今までの政府の態度よりもこの法律を改正することによってそれぞれ違ってくる傾向が現われなければ改正の意味をなさない。つまり私が指摘しましたのは、これを改正せんでも、今までの政府の態度を改めれば今まででもできたじゃないか、こういうふうに言った。労働大臣はまあこれを改正することによって今までと違った段階が現われてくるということを期待せられております。またそういうふうに運用するつもりのように私は聞いたのでございますが、それは間違いはございませんね——。それで、それじゃ私聞きますけれども、たとえば予算上資金上不可能な仲裁裁定というものが出てくる。その場合に、もちろん裁定は必ずしも予算の編成の時期に当っていることに限りませんから、国会がきめたときはそれを想定しないできめる場合もあるわけで、賃金を引き上げるという場合にはほとんどがこれに該当すると思うのであります、少額のことは別にしまして。その場合に政府の態度が問題で、これは予算は国会の審議に待つべきものだということでも理屈としては通るかもしれませんけれども、常にわれわれが問題にしておったのは、そのとき政府が、「政府は、当該裁定が実施されるように、できる限り努力しなければならない。」と改正する以上は、今度国会に出すとき政府としては、この裁定を尊重しなければならぬと思います。予算上はこういうふうにしたらできると思いますという程度の意見は出して国会に付議するつもりがあるか。つまりそういう程度にこれが修正されるかどうかという点を聞かしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/19
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020・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 法律の建前からは、従来もそうでありますが、国会に議決を求める、こういう場合には、政府は当然その仲裁裁定の予算上資金上支出不可能なりやいなやということについて国会の議決を求めた場合に、当該委員会にかかりましょう。そのときに政府の考え方をその委員会で述べる、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/20
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021・平林剛
○平林剛君 明確じゃないと思うのですが、政府の考え方を述べるその場合に、この法律改正が行われる以上、今までの態度を変えてもらわなければならぬわけです。この場合に、政府の方では、今度の仲裁裁定については、それまでにこうしたら実施できるんだというものを積極的に出すという意味が含まれておるのか、そうでないのかということを私は聞いておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/21
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022・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) その努力義務については、御承知のように、今度はこの改正に加えて公共企業体の方の法律にも若干の改正を加えるということは、つまり特に国会で議決を求めなければならないような、予算の審議を願わなければならないようなものは別として、政府部内でできるだけやりくりをして支出をして、そして仲裁裁定の実施ができるように努力をせよ、こういうことなんでありますから、予算を伴うもの、予算を請求しなければならないようなものにつきましては、従来通り国会の議決を求める、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/22
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023・平林剛
○平林剛君 当該の企業体において金のあるものを政府が出させるように努力するというのは、この改正がなくなって、今までだって当然にそういうふうに書いてある、それがまた本法の精神。そこが変ってくるということは、予算上資金上不可能な支出を内容とする裁定については、これは十六条の定めるところによって出すというのは昔も今も同じことです。そのときの態度については、積極性があるという変化がなかったら、改正の趣旨というのは意味がないんじゃないかと私は思うのですが、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/23
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024・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) それは私どもはそうは思いません。つまり出されました仲裁裁定を、政府部内での努力によって、あとう限りの努力をして、その仲裁裁定の実施ができるように努力せよと、こういうことでありますからして、それに加えて、先ほども申しましたように、公共企業体の関係法律も、たとえば国鉄、専売等のそういう法律も手直しをいたしておるのでありますから、そういうことで政府部内の努力によってできるものは、できるだけの努力をして支出するようにせよ、こういうことでありますから、従来から見ると非常な進歩であります。ただ国会の議決を求めなければならない、予算をいじらなければならぬものにつきましては、これは今日の日本の機構の建前からいって、国会の御審議を願って、国会で最終的意思決定をしていただく、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/24
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025・平林剛
○平林剛君 その点はどうも今のお答えだというと、三十五条の、できるだけ努力しなければならないという意味が、まさに半減どころか三分の一ぐらいになってしまうので、それほど自慢できる改正じゃないということは明らかですね。もう一つ、私はそれならば、これは初めから国会がきめてある予算を越えないものであれば、労働者の待遇改善については大よそ目鼻がつくようです。今日の段階においてやはり労働組合が求めておりますのは、そのときの情勢によって違いますけれども、多くは予算を越えるもの——、予算上資金上不可能のもの、越えるものを希望しておるのが紛争を起してくるもとになっておる。そうでなかったら当然紛争なんか起きてくるはずはない。そういう意味では、その予算上質金上不可能な内容を持つ裁定に対しての政府の態度がしっかりしなかったら、今までの繰り返しになると私は思う。この点は私はもう少しこの三十五条についての問題については、政府の方もこれからの問題になると思うのですが、私の言うようなやり方でできないこともない。そういう点は運用の面においてもやらなければならぬと思う、これは直さないつもりならね。
別な観点からお聞きしますけれども、この、できるだけ努力しなければならぬという政府の努力というのは、こういう場合はどうなんですか。たとえば裁定が出た。その裁定は予算上資金上不可能とする内容を持っていたものである。しかしこれについて政府が補正予算を組めば実施ができる。この場合にはたまたまその時期に裁定が出た場合には、当然政府は補正予算を国会に出すということも、できるだけ努力しなければならないというところに含まれておるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/25
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026・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 仲裁裁定を尊重するということは、今の、今回の法律の改正案の中で私ども考えておる最低限度のことはこれでできますが、このことによって補正予算を組まなければならない義務づけを政府に与えるということは私は不可能だと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/26
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027・平林剛
○平林剛君 補正予算を組む努力をしてもいいわけでしょう。これを否定する法律ではないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/27
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028・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) そういうことだけについて、補正予算を作って国会に提案すべしということを政府に義務づけることは不可能だと思います。政府が補正予算を組む場合に、やはり今度の仲裁案についてはこれを補正予算を組んで同時に提出した方がいいという他の情勢があれば、それは政府はそういうことをいたすことは一向差しつかえもりませんが、法律によって義務づけをすることは不可能だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/28
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029・平林剛
○平林剛君 この三十五条の、「政府は、当該裁定が実施されるように、できる限り努力しなければならない。」という抽象的な文句は、当然後段に倉石労働大臣が答えられたように、情勢が許すならば補正予算も組む、情勢が許すならば積極的に仲裁裁定が実施されるような予算的裏づけをしてお互いが困らないようにする、裁定が実施されるようにするんだという意味も否定しておるわけではないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/29
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030・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) だから、私が申しておるのは、その時期が、そのときによっていろいろ違うでありましょうが、裁定が下った。このことによって政府はこの法律に明示いたした程度の努力義務を持ってそうして仲裁裁定ができる場合もありましょうし、あるいはまたその次の機会に何かいろいろな情勢で補正予算を編成するような場合があって、これはやはりああいうものも同時に組む方がいいと政府が認定をいたせば、そういう時期には補正予算を編成することもあり得るでありましょうが、仲裁裁定が下ったときに常に補正予算を組んでいかなければならないという義務づけをいたすことはできないと、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/30
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031・平林剛
○平林剛君 第三十五条の意味は、私が指摘したような点をもっとはっきりさせなければ、これはまあしないよりはした方がいいという程度の改正だということを私は言いたい。
それでは今度はこの努力という具体的な事実は、さっき言いましたように、国会がきめてあるところの予算の範囲内において移用、流用ができる、そういうものについてはもう紛争——ごたごたさせないで実施できるような仕組みになっているのだと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/31
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032・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 大体そういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/32
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033・平林剛
○平林剛君 そうすると、たとえば予備費が組んであって、それで大蔵大臣が承認さえすれば移用、流用ができる。あるいは人件費が、その他の事由によって、ある程度余裕があった場合、それで移用、流用が認められて実施ができるというような場合には、すなおに実施できるというふうに理解していいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/33
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034・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 政府委員の方から御答えをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/34
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035・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) 御説明申し上げます。人件費の点につきましては、給与総額ワク内でございますならば、大蔵大臣の認可を要せずに、仲裁裁定実施のために支出いたすことができます。
それから予備費の使用につきましては、これは予備費が余っておりさえすれば全部裁定に使っていいということではもちろんありません。そのときの情勢によりまして、合理的に予備費が企業の健全な経営上どうしても必要である、ただし、それを一部裁定に実施しても、企業の合理的な健全な運営に差しつかえないということになって、閣議の承認あるいは大蔵大臣の承認というものがありますれば、これは当然使用できるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/35
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036・平林剛
○平林剛君 今の形式的な答弁は私は今の通りわかるのです。今までだってそうしなければいけなかった。ところがたとえば予備費の流用ができるのだと国会で審議しても、他にも影響があれば、政府は慎重に検討中でありますということで紛争は長引く、こういう事例が今まで多かった。人件費が余った場合には、当然大蔵大臣の承認がなくてもできるような今事務当局の答弁があった。今度の専売公社の調停案をごらんなさい、人件費の中に余裕はあった、しかし大蔵委員会で私がその点を追及したら、いやこれは製造数量が少なくなったので余ったものでありますから、これを調停案尊重の方に回すわけにはいきません、結局尊重しなかったじゃないですか。そういうことを言わせたのは政府当局だ、もっと言えば、他の五現業や公務員に影響することをおそれてああいう曲げた調停案尊重の結論になったのじゃないか。これは今までの——今度の法改正によってはああいうことは少くともなくなるということに理解していいのですか、労働大臣から伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/36
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037・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) そういう点についてはできるだけの努力をせよと、こういうことでありますが、私どもはもちろん公共企業体の労使関係を正常に戻して、できるだけ仲裁裁定を尊重することをやらせたいという考え方でありますが、やはり平林さん御存じの通り、国民経済全体ということを考えます場合に、大蔵大臣がいろいろ心配をして、そういう立場において政府の主張することは御了承願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/37
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038・平林剛
○平林剛君 まあ三十五条の改正の趣旨については、今の質疑応答で大体どの程度のものかということがわかった。問題は、やはり私はこういう字句の修正ではなくて、根本的には政府の仲裁裁定に対する態度というものを改めない限り、これだけで紛争を円満に解決するということは困難である、従ってこの改正があるなしにかかわらず、公企労法によるところの紛争は、政府はもっと慎重な態度で臨むべきだということを指摘しておきたいと思います。
今度は、改正点の細部的なことについて質問していきたいと思います。
本法の改正案の第一であります第二条の第二項の第二号の内容につきましてお尋ねをいたします。これによりますというと、「二箇月以内の期間を定めて雇用される者以外のもの」が、今度は「日日雇い入れられる者以外のもの」と、こうなりまして、相当程度の労働者がこの法律でいう職員ということになるわけでありますけれども、法改正で職員として新たに取り扱われる人員数は大体どのくらいになっておりますか。三公社五現業までですか、幾らあるか、参考のために。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/38
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039・中西實
○政府委員(中西實君) 三公社だけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/39
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040・平林剛
○平林剛君 三公社……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/40
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041・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) 二条二項の一号の改正は公社だけの問題でございますが、現在公社に雇用される者であって職員になっておらない、すなわち「二箇月以内の期間を定めて雇用される者」及び「日日雇い入れられる者」の合計数は、これは公社本庁におきましても各出先が勝手にやっておる点もありますので、正確な数はなかなかつかみがたいようでございます。私の方で調べましたところによりますと、電電公社につきましては、一日で平均しますと、季節によって違いますが、大体約一万人である。そのうちの約半数が二カ月以内、現在のところは二カ月以内という形になっておるようでございます。専売公社につきましては、これは御承知の通り、季節によっても極端に差異がございます。私の方で聞きましたところによりますと、葉タバコ収納期におきましては、約このために三万人、葉タバコ耕作期においては約一万人、それから造林に関する者が約二万人、こういった者が季節によって雇用されておる、これはもちろん全然、ほとんどいなくなる時期もあるということでございます。それから国鉄につきましては、これは約一日平均しまして、異動がございますが、約一万人前後である、こういうふうになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/41
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042・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/42
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043・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 速記を始めて。
それでは委員会を一応休憩いたします。
午後零時九分休憩
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午後一時十九分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/43
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044・山下義信
○理事(山下義信君) 午前に引き続いて、これより開会いたします。
委員の異動を報告いたします。四月十二日付をもって、高良とみ君が辞任され、森田義衞君が選任せられました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/44
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045・山下義信
○理事(山下義信君) 公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案を議題といたします。
午前に引き続き御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/45
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046・平林剛
○平林剛君 午前中第二条関係の質問をいたしておりましたから、そこから質問を続けたいと思います。
先ほど、この法改正で新たに公共企業体の職員として取り扱われる人員数に関してお尋ねをいたしましたが、そこでこの法律改正に関連をして、少し疑問の点が出てきたわけであります。公労法の改正とあわせて公共企業体関係の法律改正も用意されておりますが、専売公社法の第十九条、職員の範囲と資格の点についても改正をされておるのでありまするが、こちらの方の改正法案によりますというと、「この法律において公社の職員とは、公社に常時勤務する者であって、役員及び二カ月以内の期間を定めて雇用される者以外のものをいう。」とあるわけなんです。公労法の第二条の第二項によりますというと、これには「前項第一号の公共企業体に雇用される者であって、役員及び日日雇い入れられる者以外のもの」とありまして、この関係から二カ月以内の期間を定めて雇用される者を中心として考えますと、公労法上の職員と、公社法上の職員というものは必ずしも一致していないのでありますが、こういう点には矛盾が出てくるのじゃないでしょうか。政府の一つ御見解を聞きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/46
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047・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) 御指摘の公社法上の職員の範囲と、公労法上の職員の範囲とが食い違う点につきましては、これはもちろん一致することが一般論としては望ましゅうございますけれども、それぞれの立法目的上、この立法目的に適合するように職員の範囲を定めますにつきましては、法体系の異なる法律によって違うことはやむを得ないところであります。他にもまだその例があると思うのであります。今回の職員の範囲につきましても、公社法上の職員というものは、単に労働関係の統一的取扱いという面だけから判断するわけにも参りませんので、食い違いました次第で、やむを得ないものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/47
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048・平林剛
○平林剛君 法律上の解釈が同じ職員であっても、公労法上の職員と公社法上の職員が一致しない結果、一番問題になる点は、これらの該当する職員に対して、公社法上の身分保障その他を適用するかどうかという点が別の問題として起きてくると思うのでありますが、こういう点についてはどう考えられておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/48
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049・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) 公社法上の身分保障、分限等の規定につきましては、これは従来公社法上の職員とされておりました者の範囲と、今回の改正以後におきましても同様でございまして、その間に変化はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/49
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050・平林剛
○平林剛君 実際上これらに該当する職員は、形式上は二カ月以内の期間を定める雇用でありながら、実質的には常用と変らない雇用形態が非常に多いのであります。まあ今度のように日々雇い入れるというようなことに法律が改正をされますというと、こういう点は今までのような形式的な取扱いばかりではできないということになるかもしれませぬけれども、従来は二カ月以内の期間を定める職員について、いろいろな点について私は問題があったと思うのです。労働法上から見ますというと、こういう改正をして職員に入れるということは、今日まで労使間にあった議論というものを一つ解決するという意味では、いい悪いは別にして、一応片づくと思うのでありますけれども、待遇上の問題についてはやっぱりこれからこの法律改正に基いて議論が起きてくると思うのであります。
私はそこでお尋ねしたいのでありますけれども、これは労働大臣の方がいいのかもしれませんが、先回国会で、こういう形式はともかく、実質的にほかの職員と同じものに対しては極力定員に繰り入れるとかあるいはその待遇等についても実質的に変らないように努力をすべきだという意味の付帯決議がされたように記憶しておるわけです。行政機関の定員に関する法律案、これに対する付帯決議として満場一致決定になっておるわけであります。この趣旨からすれば、前の待遇も一般職員と同じような工合に是正をする方向に持っていくのが本当じゃないかと思うのです。こういう点は労働省はどう考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/50
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051・中西實
○政府委員(中西實君) やはり期間を短かく限って雇用される者につきましては、この期間の定めなく全部恒常的に雇用される者と、そこにその機構の中におきましてやはり身分的に差異があり得るのじゃなかろうか。これは何も政府関係の機構ばかりじゃなしに、民間の企業においてもそういうことがあり得るわけなんでございまして、従ってもとより実質的に同じような仕事をしておるものにつきましては、それが臨時的なものであろうが、なるべく同じ取扱いになるのがいいとは思いますけれども、やる仕事、またその責任の度合い等から見まして、臨時的な期間のものにつきましては、若干常勤の一般職員とは違った取扱いになるということはやむを得ないのじゃなかろうか、これは結局各企業体の実態に即して、さらに各企業体において労使双方の意見も調整して考えるべきものだというふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/51
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052・平林剛
○平林剛君 まあ今のお答えで、結局今後公共企業体の労使の間で、その問題については相談をしていくという方向のように私は理解いたしました。ただ私特に今までの体験からいきまして、二カ月以内の期間を定めて雇用される者の中には、全般的とは言いませんけれども、中には大へん気の毒な立場の人が多いように思う。実質的に恵まれていないと思うのです。特に今度こういうふうに職員の解釈というものが公労法上と公社法上違って参りますというと、たとえば二カ月以内——以上ならいいのですが、以内の者たちに対する保障というものが法律の中では明らかになっていないわけなんです。私はこれらの人に特に不当労働行為的な問題が多くなるのではないか。一般の職員に対しては割合と良心的な運営がせられるのでありますけれども、労働組合の方でもなかなか手が届かないこれらの職員に対しては、どうしてもそういう問題が起りがちである。法改正の中で政府も一部説明しておりますが、今後は不当労働行為事案が起るかもしれないから公益委員をふやす、そういうことを言われる。これと同じようにこうした人たちの中にはやはり不当労働行為的なものがあるのだ。たとえ弱い立場のものであっても、これを保護するというような考え方が労働者の中になくちゃいかぬので、こういう点については何かお考えになったことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/52
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053・中西實
○政府委員(中西實君) 民間におきましても、臨時雇用の問題は常に組合側においても問題にしておりますし、われわれとしてもこれについて考慮はいたしております。ただ仕事の性質上、やはり臨時的な、ある一定期間を定めた雇用というものがあり得るのでございまして、できれば雇用の安定という点から考えますると、できるだけ必要な人間は常用にするということが適当かと思いまするけれども、やはりいろいろな仕事の形態からしまして、臨時でやる方がかえっていいような仕事もありいたしますので、その点につきましては、結局いろいろな労働条件その他の点につきましては、今回の改正では労使の話し合いによって、しかも今度は公労法の関係で同じ取扱いになりますので、大きく一般の組織の中へ入って、そうして強力なる交渉によってその間の関係が打ち立てられていくということが期待できるじゃなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/53
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054・平林剛
○平林剛君 まあ臨時職員とかあるいは見習いというような名目で、形式的には整っているけれども、実質的には一般の職員と何ら変りのないものについては、国会の決議をもって常用にするという方法があるのでありますから、これは労使の間に具体的に話し合っていくと思います。また、二ヵ月以内の期間を定めて雇用される人たちについては、直接法律改正とは関連がないにいたしましても、今後労働省の方では、しかるべき適当な指導をしていきたいということを希望しておきまして、ほかの問題に移ります。
今度は第三条の点についてお尋ねをいたします。第三条の点は、私一点だけ質問がありますから、誤解のないような答弁をしてもらいたいと思います。これはかなり長い文章の改正になっておりますが、本条の要旨は、労働組合法の適用条文を整理して、所要の読みかえ規定を設けたものと理解をするわけでありまするが、この中に、改正案によって交渉単位制度を廃止することに伴い、交渉委員が労働組合または組合員のために団体交渉する権限を有することを明らかにしているようでありますが、この中の言葉で「労働組合を代表する交渉委員」とこうありますのは、今までの交渉委員の制度の運用あるいは性格を変えるものじゃないと思うのでありますが、いかがでしょうか、労政局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/54
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055・中西實
○政府委員(中西實君) 交渉委員になり得る者につきましては、従来の交渉単位がございましたときと変りございません。従ってここに読みかえをいたしましたのは、従来なかったものですから、非常に運用上死文同様になっておりましたが、今度はこれを読みかえて労働組合の代表と交渉委員、その交渉委員は従来と変りがないので、特にこの法律によって交渉委員の性格を変えたというものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/55
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056・平林剛
○平林剛君 その点はよくわかりました。
それでは第四条の第三項について、これは今度の改正要綱では含まれておりませんが、「公共企業体等の職員でなければ、その公共企業体等の職員の組合の組合員又はその役員となることができない。」こう現行規定にありますのは、労働組合の間でかなり議論があることは御承知の通りだと思うのです。臨時公労法の審議会におきましても、先ほど労働大臣からも御説明がありましたように、多少意見の食い違いはありましたけれども、答申案では四条二項の改正は前提とはしておりますけれども、この規定を廃止することが適当である、こう述べておるわけであります。私も現在の法律は、法律で公共企業体の職員でなければ組合の役員になってはいけないとかどうとかというようなことを規定することは、労働者の団結権を侵害するものだというふうに思うのでありますけれども、答申案の中では一つの方向を示唆しているにもかかわらず、この規定をそのままにした理由はどこにあるのでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/56
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057・中西實
○政府委員(中西實君) 公労法の、特に労組法から別個にありまする大きな一つの点は、十七条によって争議権を禁止いたしておるところでございます。しかしてこの点につきましては、立場々々で御異論もございましょうけれども、これを存続いたしまする場合には、十八条によって、その争議行為の違反に対して解雇をもって争議行為の禁止ということを補完いたしているのであります。そういたしますと、この関係からいたしまして、やはり四条三項というものはどうしても残しておく必要があるのではなかろうか、純団体団結権という点から考えますると、いろいろ議論もあろうかと思いますけれども、現在の大事な十七条、十八条という建前をとっている限りは、やはり四条三項というものがありませんと運用上非常な支障を来たす。従ってこの点につきましては、根本的に検討して彼此考えて、改正をするということも考慮されまするけれども、この点について答申案にありますように、意見の一致を見ませんでした。そこでこの際は、これを触れないでそのままにしておくという態度をとったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/57
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058・平林剛
○平林剛君 どうもその点が私はまだ納得できないものがあるわけでありますが、公共企業体の職員でないものが組合の役員であるというようなことは、これは一体法律の精神からいって、別な角度から考えてみますと、この法律の精神からいって、どれだけ公共性というものを侵害されるのかという私は疑問にぶつかるわけですね。そういう点についてどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/58
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059・中西實
○政府委員(中西實君) 公共企業体等労働関係法第一条で目的をうたっておるわけでありまして、結局公共企業体等の性格からいたしまして、その「正常な運営を最大限に確保し、もって公共の福祉を増進し、擁護すること」これを目的とするわけでございます。従って労使の話し合い、さらに労使間の安定ということにつきまして十分なやはり配慮をする必要がある。そこで先ほど言いましたように、十七条で争議行為の禁止が定められておりまして、それに違反した者につきましては解雇されるということになっております。そういうこともございまするので、ここに四条の三項をおいて、一応職員でなければ役員または組合員になれないというふうになっておるのでありまして、根本的に純団体法的な論議をすればいろいろの論議もございましょうけれども、一所ずらしますると非常に混乱を生じますので、意見不一致の点ということで、現行通りにいたしたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/59
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060・平林剛
○平林剛君 まあこの議論はすればいつまでも長く続くのでありまして、私は今の政府の答弁では納得できないのであります。特にこの点は、明らかに労働組合の団結権に対する侵害を法律が行なっているということになると思います。私はどう考えても、たとえば解雇された職員が労働組合の幹部や組合員等で、それがどれだけ公共の、法律の目的の阻害になるかということがおそらく政府だってうまく説明ができないじゃないかと思うのです。そういう点では、ここのところは早急に改正しなければならない、いずれにしても早急に結論をつけなければならない問題だと思うのです。そういう点について今回触れていないのは遺憾だと思うのですが、まあ百歩を譲って今日までの事例を見ますというと、その意思に反して解雇されたところの職員が、その解雇の効力によって現在では正当な手続——裁判所で争っているわけでありますので、解雇の効力が確定するまではとにかくその限りではない。まあ役員をやっていてもいいとかいうような規定を設ける程度は、私は当然の理論だと思うのです。労働大臣も御承知のように、今日まで政府のえらい人たちが、たとえば刑法上の罪を犯す、そうして政治責任を問われるというと、よく吉田総理大臣などは、いやこれは裁判所でもって今、黒白をきめてもらっておるんだ、それが確定するまでは何とも言えないということで、いつも政治責任についての追及をのがれていたわけでしょう。こういうところはそういうふうな態度でやられる。ところが、事労働問題に関しては、その意思に反して解雇されたことが妥当であるかどうか、不当行為であるかどうかということがわからぬことであるにもかかわらず、先回国鉄に起ったような事例がある。こういうことはまことに矛盾をしておるし、不当だと言わざるを得ないと思うのです。だからせめてその当、不当を今争って、係争中であって、結論が出ない期間においては従来通りの立場でおれるという程度の改正をするくらいのことは必要だと思うのですが、御意見をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/60
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061・中西實
○政府委員(中西實君) 十七条違反の場合には十八条によって解雇しなければならないものだ、これは審議会の答申案審議の際にも解雇はせらるべきものなんだということで、見解が一致いたしました。そこで、その解雇について訴えを起し得ることはなるほど当然でございますが、現実から申しましても、たとえば国鉄の三年前の解雇事案につきましての裁判がいまだに結論が出ていないというようなことでございます。役員の選出は一年ごとに行われておる。今の裁判制度で結論がつきますのには相当な年月を要するというようなことになっております。従って一応十八条によって解雇されたという者につきましては、やはりそのときからはっきりと職を解くのが妥当であるというふうに考えております。もちろん組合におきまして役員の改選というものは、ある一定の手続を経てやらなければいかぬ。従ってその間は現実問題としてやはり役員にとどまるかもしれませんが、法律上におきましては、これは役員の資格を失って欠員になったということで、われわれの方としては考えていきたいというふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/61
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062・平林剛
○平林剛君 私はその考えが間違っていると思うので、その点はどうしてもこの法律の悪い点だと思うのであります。だからこれはやはりこういう機会には今までの例もあるわけであります。特に私強調したい点は、たとえば今の私の主張のように、法律改正をされたとしても組合というものはそれぞれその利害を考えて、解雇された者は自主的に選ばぬというようなことをきめるくらい成長しているわけです。だからそういうような現在の組合において、解雇された役員がかりに組合の役員になったところでさほどおそろしい企てをしたり、あるいは公共性に反するようなことがあり得るとは思えない、この点はやはり公共企業体等労働関係法の性格が労働者を押えるという方面に力を入れている点だと思う。労働大臣の理想からいえばこんな点をいち早く直して、そうして労働者の団結権が法律で侵害されないように改正されるべきだと思うのです。労働大臣その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/62
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063・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) この点につきましては、答申は今局長から申し上げましたように、経営側と従業員側との意見が一致いたしませんでしたが、当初私どもとしてはこれを改正してもいいではないかというような考えでおったのですが、答申案がああいう結果でありますので、かえってこれは紛争を生ずるようなことがあってはいけないから今回は現行法通りにしておこう、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/63
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064・平林剛
○平林剛君 労働大臣の答えを聞きますというと、政府でもこの項については改正をしてもいいという意見がおありのようでありまして、まことにそうでなければうそだと思うのであります。答申案の中でも、四条の二項の改正は前提としてはいますけれども、この規定は廃止するのが適当であると、こう述べておるわけであります。そういう意味では、もう少しこの点は御検討願うことを要望しておきたいと思うのです。
私は次に、第十九条関係についてお尋ねしたいと思うのです。これは委員会の機構の整備、委員の定数、あるいは公益委員の任命制度、公益委員中の二名の常勤制度、その他なかなかこの法律案の改正の最大の点がこの中にあるように思うのであります。私は従来の調停、仲裁の制度を今度のような労働委員会制度に切りかえていく、こういうことにつきましては、その方向が公労法のような法律を廃止して、一般の労働者と同様の機構で労使問題を取り扱うという方向を指向している限り、あるいはそれに近づけるような努力がある限り全面的に賛成であります。しかし一面この制度のねらいによりますというと、この制度のねらいは政府の説明によりますと、機構の簡素能率化と言われておるわけでありますが、公共企業体の労使の紛争をできれば調停段階で解決をしてしまって、なるべく裁定の方は少くしようじゃないかというような考えも何か隠されているような気がするわけです。つまり裁定が出るというとうるさくてしようがない。裁定が出ればとにかく政府としてもこれに対して最大限の努力をしなきゃならぬ。かなり裁定となるというといろいろ議論が起きてきまして、法律と、協定と同じだとか、かなり政府の方も苦しい立場になるから、この点は一つ調停のうちで片をつけようというような考えがあるような、これはまあ推測でありますけれども、気がするわけです。もっとも紛争が調停の間で解決できるということはけっこうな話でありますけれども、そこにはちょっと釈然しないものが私あるのであります。ある意見によりますというと、従来調停、仲裁、この二つの機関の性格というものを、一つの方は、調停機関の方はどっちかというと積極的にあっせんやあるいは調停を進める、そういう性格を持っている。仲裁の方はどちらかというと、受動的の方で消極的だ、こういうそれぞれの機関の性格があって今日までの労使間の紛争の処理に当ってきておるわけです。この異なる二つの性格をもった機関を一つにまとめる、こういうことは無理なんだというような見解も私はお聞きしておるわけであります。これについて政府の方は、こういうことをしてもかえって運営はうまくいきますよという自信がどういうところから生まれてきたか、この点はまあ初めて新しい制度に移るというわけでありますから、一つ詳細に聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/64
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065・中西實
○政府委員(中西實君) 仲裁、裁定、あっせん、それぞれ性格は特色を持っております。今すべてをあっせんの段階で片づけるように考えておるじゃないかというお話でございましたが、もちろんおっしゃるように紛争があっせんあるいは調停の段階で片づくことが望ましいのでありますけれども、しかし今度こうしましたにつきましてま、私どもはかえってこれはもう紛争の問題にもよりまするけれども、こういった争議権のない公企体等につきましては、仲裁で片づけるというのがかえって合理的ではなかろうかという気もいたしております。なお、この調停をやります調停案なるものが出ますれば、それとえらくかわったような仲裁というものは、これは現実考え、ましても出っこないんであります。従って従来二つの委員会があり、二つの委員会それぞれに事務局があって同じような調査研究をしておる。これはまさにむだでございまして、これを一つにして、そして事務局機構も強化する、さらにまた委員会におきましても調停、それから今度仲裁になりますれば公益委員だけでやるのでありますけれども、その間かえって円滑に事が運ぶんじゃなかろうか、現に、これは例は非常に少いんでありますけれども、一般民間の紛争処理機関である中央地方労働委員会、これを仲裁、調停あっせん、すべて同じ委員会でやるという例もございますので、諸般のことを考えまして、これの方がかえって簡素化にもなるし、事務の円滑な運営を期待できるという確信のもとにこの案を考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/65
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066・平林剛
○平林剛君 もっと簡素化をするということになれば、一般労組と同じようにその委員会でやらした方があれでしょう。あなたの御説明の趣旨によけいかなうということにもなると思うのですね。そういう点は、私は政府の労働者全般に対する労働行政というものは統一してくれは、当然そういう方向へ向っていかなければならないと、理論的にいきますとなると思うのです。まあ公共企業体、現在の段階においてはそれぞれこまかく面倒を見てくれるところの、三公社五現業について面倒を見てくれる委員会があるという方が自主的な得な面があると思うが、労働行政全般からいけばやはり公労法が将来廃止されるということになると、そういう方向に行かなければならないと思う。そういう意味では、私は構成については反対をしておるわけではありません。ただ今度のように五・三・三というような委員の構成になって参りますというと、構成の点では山本委員の方からあらためて質疑があると思いますが、私はほかの点でお尋ねをしておきますが、労働委員の数が五・三・三でかりにやられるような場合にですよ、これが調停、仲裁という段階を経るわけですから、どうしても調停に当った委員が同じ議案についてさらに仲裁に当るということはあり得ると思うのですね。調停に当った委員がさらに仲裁にも当るということは現実の問題としてあり得るわけです。この場合にその二つの仕事を兼ねる委員にとっては、やはりいろいろな意味で前案に固執するとか、自説を強調するとかいう意味で、心理的な影響は表われてくると思うのです。あるいは他の仲裁委員、携わっていなかったところの仲裁委員から見れば、それに対してもやはり前にやっていたところの御苦労もあるからというので、微妙な影響を与えることはもちろん予想できると思うのであります。結果的にみて調停案そのものがそのまま裁定になってゆくというようなことになると思うのでありますけれども、もしそういう可能性が強くなるということになれば、むしろ時間が長くかかると、紛争の処理のそれが結果だけに終りはせぬかと私は思うが、そういう点はどういうふうに考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/66
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067・中西實
○政府委員(中西實君) 調停の段階で片づけばもうそれに越したことはございませんけれども、しかし問題の性格からやはりどうしても仲裁にいく場合の方の多いことが予想されるのでありますが言われるように、五人の公益委員の中でやはりだれかが調停委員会の公益委員になるわけであります。そして仲裁の場合にはやはりダブることもあろうかと思います。しかしこのことは、別に問題の処理の円滑が得られると思うので、弊害はなかろうと思いますが、今度の春季闘争における調停委員会の運用からみましても、心ある労使の、委員によりましては意見は言うが、最後は引っ込んでいる。公益だけで一つやられた方がいいなというような声も聞いたくらいでございます。従って別に調停それから仲裁にいくということによって事が非常に長引くとか、そういうことよりはやはり調停の段階で片づかないものは仲裁で片づくというのが妥当ではなかろうかと、その間特に不都合はないのじゃなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/67
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068・山下義信
○理事(山下義信君) ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/68
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069・山下義信
○理事(山下義信君) 速記を起して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/69
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070・山本經勝
○山本經勝君 御質問申し上げますことは、午前中の問題にちょっと戻るのですが、しかし焦点は若干違っております。大臣にお伺いしたいのですが、今日まで現行公労法が運用されてきた過程で、たとえば裁定が受け入れがたいものである。予算上資金上政府として受け入れられない、こういうことで国会にかかって予算の検討をしたというような事例も起らずやってきた、こういうふうに大臣おっしゃった、その通りでいいのでしょうか。そういう状態であるとするなれば、今度改正される趣旨そのものが根本的に私は問題になってくると思うのであります。というのは、三十五条による仲裁の裁定に対する順守義務といいますか、あるいは政府としては順守することは原則としてなされるが、さらにそれを実現するための努力をされるようになっている。ところが午前中の平林委員の質問に対してお答えになったところでは、予算上資金上操作の困難な問題について補正予算を組んでも努力をなさる、こういうことになるのかということの御質問に対して、必ずしも補正予算を組んでというふうには言えない、こういうことをおっしゃったようです。そうしますと、努力というのは一体どういうことなのかさっぱり意味がわからない。そういう点を一点、大臣の方から御弁明願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/70
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071・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 従来この法律による調停、仲裁の出ましたものについての今までのことを先ほどちょっと申し上げたのでありますが、もう少し詳しく、大体どんなようなことで今まで妥結してきておるかということをお話し申し上げますというと、大体私の申し上げることが御了解願えると思うのですが、予算を動かさなければならないような大きな問題は仲裁裁定というものではほとんどありません。その点について、政府委員の方から今までのことを申し上げれば御了解願えると思いますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/71
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072・山本經勝
○山本經勝君 一つ一つの裁定について経過を詳細に御説明になるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/72
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073・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) そうじゃないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/73
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074・山本經勝
○山本經勝君 それじゃかいつまんで一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/74
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075・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) 現在までの裁定のうちで、御承知のように、金額そのものを削りましたのが一件、それから時期をずらせて金額をそのままのみましたのが十一件、ほか八件は、これは予算に関係のあるものもないものも含めまして完全実施、こういうふうになっておるわけでございます。しかしその完全実施になりましたもののうちでも、これは最初から予算に全然触れないで、問題なく完全実施になったというのは、むしろ一応予算上不可能であるということで、国会の議決を求めるために国会に提案いたしました後におきまして、ある場合には補正予算が可決になり、自然可能になった。ある場合には予算の流用が認められて、その限度で可能になった、こういうようなふうになっておるわけでございます。公社の中の金をいかようにやりくりしてもどうしても、たとえば一般会計から補給金をたくさんもらわなければ実施できなかったというような事例はなかったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/75
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076・山本經勝
○山本經勝君 そうしますと、補正予算を政府の方から提案なさって処理されたこともあるのですね。——そこで大臣にさらにお伺いしたいのですが、そういうことであるならば、結局従来の規定をそのまま踏襲して本年に参ってもそう故障はないのではないか、こういう考え方が起る。そこで変えなければならない理由はそのほかにありはしないか。これは最近言われている今後として起る事態に対処して、予防的に法規を改正すると言われるようなことは、これは全く驚くべき事態に将来なってくると思う。こういうことが起りそうだから、あらかじめ法律を作っておく、あるいは改正しておく、こういうことになりますと、私は何といいますか、非常に国政の運営上重大な問題だと私は思うのですが、そういうことがあるのかないのか、大臣のお考えの中に、何らか別の目的があるのかないのか、その点を一つ明らかにしていただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/76
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077・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) ただいまのようなお話は、私どもとしてはまあ非常に意外なことを承わるものだという感じがするのでして、私のほんとうの趣旨は先ほどから申し上げておりますように、この公労法というものの成立当時から不徹底な法律だ、せっかくある仲裁裁定制度というものをなるべく実施することができるように、できるだけすることが法の目的ではないかということで、その点に重点を置いて改正案を考えましたことなんで、ほかに全く考え方はございません。そこでこの努力義務のことについて具体的に申し上げますというと、なおその点について理解していただけると思いますので、補足して政府委員の方から、その趣旨を盛り込んだ具体的な運用について御説明申し上げた方がいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/77
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078・中西實
○政府委員(中西實君) 仲裁裁定を尊重すべきものであるということにつきましては、これはまあ従来からやはり同じかと思います。しかし、特にやはり法文におきまして努力義務をうたったということにつきましては、その精神がきわめてはっきりしてきた。それで具体的には政府当局においてこれを処理しまする上において、従来ももちろん尊重の気持で処理してきたのでありますけれども、さらに法律にこういうふうに明文化されますれば、そのことが徹底して今後処理される。それからさらに御承知のように、三公社、五現業につきましては、予算総則で給与総額というのがございます。従って、従来金に関する争いの調停案あるいは仲裁案は大てい給与総額に触れてくる。従って給与総額をこえるという場合には、常に予算上不可能ということで国会にきたわけでございます。従って、仲裁裁定が出ましたあと、それから組合から言いますれば、国会闘争というようなことになるわけであります。われわれとしまして本来経済闘争であるべき争議が国会闘争、まあ政治闘争ということになるということは、これは制度上きわめて遺憾であり、できるだけそういうことは避けたい。そこで今度は公社法のそれぞれ該当条文につきまして仲裁裁定が出た場合、流用によって処理できるという場合には、予算総則の給与総額にかかわらず、一般会計処理の手続によりまして流用によって処理してゆく、直ちに予算上不可能ということで国会に持ってくるようなことのないように措置する、従って今回の改正によりまして相当私は早急にしかも国会というものの関係なしに事が済むという場合が非常にふえてくる、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/78
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079・山本經勝
○山本經勝君 こういうことが言われているわけです。全逓つまり郵政省関係では全電通つまり電信電話公社等におきまして特に顕著なんですが、企業の合理化といいますか、いわゆるマイクロ・ウエーヴを利用することによって企業整備が考えられておる、これは一部には現実に問題になっておると聞いておりますし、そういう状況も私も若干わからぬことはない、あるいは国鉄等におきましても同時にそうした機械化の促進がなされようとしている、そうしますと、人員整理が伴うということも予想される、そういう中からこういうふうな改正を持ち出してくるところに非常に大きな一つの疑念があるのですが、こういうことは直接労働省としてそうした計画に参画されているわけではないと思う。しかし、その結果起る労使間の問題というものは私は起り得ると思う、そこら辺について大臣の決意なり、考え方を一点伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/79
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080・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) ただいま御指摘のような問題は私は聞いておりませんが、そういうようなことで紛争が起きました場合に、調停、仲裁ということになりますというと、これは給与の問題ではございませんからして、そういうことについてかりに調停案というものが出たというときに、それは私ども国会で論議する必要のないことでございますから、管理上の問題でありますから、経営当事者と労働組合との間に話し合いが起きることでありまして、公労法で私どもがとやこう言うべき問題にはなって参らないと考えます。ことに、そういうようなことを私どもは今承わることがむしろ初耳でございまして、全然そういうことを予想してこの法の改正を考えたわけじゃございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/80
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081・山本經勝
○山本經勝君 そうしますと、私どもこの前ちょっと御質問申し上げた点なんですが、従来あったあっせん、調停、仲裁、こういった三本立ての段階を経たそれぞれの委員会が労働委員会に統一されて、そうしてその公益側の委員の任命手続というものを見直していかなければならぬ、こういうことになってくると、そこで私の申し上げたいのは、少くともこの前から強調しました仲裁裁定がいわゆる活殺与奪の権利を握っておる。しかもその決定に対しては服従の義務が法律の明文で規定されている、そうなりますと、その仲裁人あるいはこの委員会なるものは非常に重大な権限と責任とを持っている、この重大な責任と権限を持った仲裁に当るところの公益人の任命の手続が従来あった規定によれば、労使双方の同意を基礎にして、そうして大臣が任命される、こういう手続であった。ところが、これを改めて、今度は労使双方の意見を聞いて作り上げられた明文の中からいわゆる国会の同意を得て内閣総理大臣が任命する、こういうふうな手続に変更された理由が私はきわめて重大になってくると思う。伺いたいのは、このいわゆる労使双方の同意を得た公益委員であるということは、この日本の法学者の専門家といえども、仲裁裁定が強力な執行権と同時に服従の義務を課している限りその仲裁に当るところの委員について、少くとも労使双方が同意することがいわゆる訴訟法から見ても適当な方法であることを強調している。にもかかわらず、単に意見を聞いた範囲において、その意見は取り上げようと取り上げまいと政府の御自由なんです、こういう格好で作られるところに非常に問題がある。いわゆる法というものがやはり文章化された表現の中ではいろいろに解釈も生まれ、それよりもむしろ掘り下げて、運用の面で妙味が発揮できるということをこの間も強調されたんですが、そういう観点に立ちますと、この公益委員の人が非常に問題なんです。あるいは仲裁、あっせん、調停等に当るこれらの中心になる公益委員というのが非常に重大なんです。ところが、同意を関係者が与えずして、しかもそれを単に意見を聞いた範囲でもって適当に任命する、たとえば意見を聞く場合にも、五人の委員をあげられるときに十人なりあるいは十五人なり、そういった多数の委員の名前を一応並べておいて、その中から適当に意見を聞いたということで任命をするということができると思う。そういう方法になってきますと、従来の法の持っていた持ち味といいますか、運用の面での妙味というものは全く抹殺されてしまう。しかもこのことは民主的な労使間の問題処理というものをいわゆる官制化された法規解釈と適用だけに事務的に処理されてゆくという心配が大きくなる、そのことが先ほど申し上げた質問とも関連を持ってくるわけですが、この点をどういう考えの上に立って、同意でなくて、単なる意見を聞いて任命手続をするように変えられたのか、この点大臣の方から一つ御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/81
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082・中西實
○政府委員(中西實君) この前も申し上げたかと思いますけれども、国会は国家最高の機関でございます。従ってこの国会の同意を得るということは、手続といたしましても最高の慎重な手続だと思うのであります。そこで、今回の改正におきましても労使の委員の意見を聞いてやるわけであります。従来のやり方から見ますれば、それは今回は意見を聞くということになっておりますけれども、およそこういった委員の任命で、かつてのようなああいう制度は各国どこを見ましてもございません。イギリスにも仲裁委員会がございますが、これは日ごろあらかじめ当事者の意見を聞いて二十人なりあるいはそれ以上の名簿を作っておきまして、そうして必要のあるときには、その中から随時関係大臣である労働大臣が任命するということになっておりますのでありまして、かつてのように一々当事者である組合のその人事の同意を得なければできないというような制度はまずないんじゃなかろうか。今回はしかしながら、こういった委員会の性質から労使の委員の意見は十分に聞く、しかしながら、最後は国家最高の機関であるところの議会の同意を得て、そうして任命する。私は筋から申しまして、任命方式として最も妥当なものじゃなかろうかというように確信いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/82
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083・山本經勝
○山本經勝君 今お話を承わっておると、全くどうも奇怪なお話だと思う。もっとも、日本の国の現状というものがたとえばイギリスやその他各国の状態とかなり違うことは局長も十分御承知だと思う。今日本の国会では何が行われておるか、世界中で注視をしておりましょうが、たとえばこれは小選挙区の問題にせよ、あるいはまた憲法改正の問題にせよ、教育法案の改正の問題にせよ、世界各国が注視をしているのです。こういう国の実情であればこそ、私は憂慮をするのですよ。今のようなお話は、全く何といいますか、事務的に、ものが機械的に順調に運ばれる状態や、一定の基礎がちゃんとでき上っているということじゃなくて、過渡的な状態、大きく旋回する国の客観情勢の中で、最も当らぬ、局長として適当でないお話だと私は思うのです。ところが議論は別といたしましても、少くとも国の最高機関である国会であることは御説明を伺うまでもない。ところが、この国会に諮ることによって、強制される権限というものは一そう強くなってくる。しかも先ほどの労働大臣の、質問に対するお答えによれば、いわゆる仲裁裁定を守れるようにするというのです。仲裁裁定を守れるようにする、そのことは政府の受け入れられるようにするということなんです。いいですか。そうなりますと、仲裁裁定をする人が、どのような立場でどのような判断をするかということが、かかって重大になってくる。私はこれはきわめて重大な問題だと思う。そこで私が申し上げているのは、いやしくも国民である公共企業体等の従業員の組織が、その当事者間で話し合いができなくて、そうしてそれを、それじゃ第三者の公正な意見として、なるほどその決定には服しますという、ほんとうに心からの服従の気持によって協力することにならなければならぬと思う。そのためには、法学者はこう言っている。いわゆる訴訟法上から見ても、やはりその権限を持った仲裁委員については、同意が前提であることが妥当である、また良識であり、かつ、良俗である、こういう解釈を明らかにしております。そういうものをふんだくって、そうしてこれを強行せねばならぬということについては、これは何としてもただいまの御説明では理解がいかない。従来の通りに、同意にしたらどうなんですか、大臣。これはそれでいても、決してすべての業務の遅滞が起って、行政的な事務の推進が行えないということではないと思う。先ほどの大臣のお話のように、今日まで多年にわたって幾多の困難な問題が処理されてきた、こう言われる。そうであれば、この手続を今までの通りにやっても、決して私は政府の行政的な点から支障は起らないと思う。この点を大臣から私は説明を伺わなければならぬと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/83
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084・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) この仲裁委員会を構成する委員は大切な仕事をしていただくことであり、りっぱな人物が出ていただくようにしたいということは、私ども全く同感でございまして、人選に当りましては、もちろん権威ある人選をいたしたいと思いますが、さらにその仲裁委員会を構成する方々の任命方式は、やはり私どもとしては、国家最高の機関である国会の御承認のもとに内閣総理大臣がこれを任命する、こういうふうにする方が仲裁委員会の権威を増すことでもありますし、かたがたその方が理想に近いではないか。今、山本さんは、現在の国会の状態とか、いろいろ内容のことについてもお触れになったようでありますが、現在の政局のことについては、これは御批判はどなたも御自由でございましょうが、今のような政府が未来永劫続くわけでもありませんし、山本さんの方で政権を担当される場合も当然近くあるでありましょう。そういう場合にも、やはりその皆さんの構成される政府が責任をもって人選された人をそのときの国会で承認をする、こういう形がやはり最も公平妥当ではないか、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/84
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085・山本經勝
○山本經勝君 今、社会党が政権をとったらというようなお話もございましたが、これは社会党が政権をとったらこういう法律は作りません。(笑声)まず問題が起らないようにする考えでありますから、この点は一つ……。それで私は大臣にざっくばらんに申し上げて、同意を基礎にしてやるということは、法学者なんかそう言っておりますが、これはお聞きだと思いますが、私はこれはきわめて必要なことだと思います。で、今後の問題としても重要な問題だと思います。ましてこれは私は突っ込んだことを伺うようですが、労働組合法並びに労働関係調整法に基く労働委員会の運営等についても、大臣はそのようなお考えを持っておられるように伺ったことがある。それで、まあその問題と今直接どうこうと申し上げるのではありませんが、少くとも裁定が、民事上の裁判所の決定と同じ効力を持ち、それから、しかもその決定には、先ほどから議論になっておりますように、一応順守の義務を負わしている。そうなりますと、この前提である委員会の構成メンバーについては、少くとも関係労使の双方が一応納得して、それならけっこうでございますということでないというと、単に意見を求めるということは、意見は取捨選択されて、適当にそのときの責任者によって選任されると思います。そうなると大へんである。それで一応閣議なら閣議に諮られて国会に出される。そうすると現在の国会構成では、どのようなことでも、政府の思う通りに通っていくというのが現実の姿だと思う。その点が私は非常に今後の労使の関係をさらに険悪なものにしやしないか。つまり労働者の意見は、私は労働者の意見通りにして下さいと申し上げているんじゃないが、少くとも日本におります現在の就業労働者、失業労働者を含めて、働くことによって生活するこの多数の国民大衆をやはり対象として考えなければならぬ。そうなりますと、少くともその組織労働者の意見で、これならよかろうということが基礎にならずして、それでしかも強制力がある、しかも国会の承認を得てさらにその権限を拡大し、しかも待遇においても特別職の地位に置かれる。しかも内閣に属させる。こういうような機構ですから、私は少くともいま少しく慎重に考える必要がある。そうなれば勢い従来の同意によってやられるということが何をおいても私は必要だと思う。この点はいわゆる大臣が今お話になったようなことでは理解がいかないんです。これは大臣直接管轄になる労働関係としてお考えになる場合に、私は少くとも党の政策はそうあるかもしれない。しかし行政を執行される面で大臣が責任があるんだから、その点はもっと何といいますか、良心的に一つお考えを願いたい。ですからその点もう少し突っ込んだ御意見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/85
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086・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 私はこの仲裁委員会の委員というものについての重要性を、山本さんとともに、深く認識をいたしておりますから、かえってこういうふうな改正原案のようにすることの方が、仲裁委員会の権威を高めて、そうしてりっぱな仲裁裁定を出していただくのに一番妥当な方法だと、こういう考え方で提案をいたしておるのでありまして、まあこれは一つ私どもとしては、仲裁委員会の委員の人選については、もちろん非常に大事な仕事ですから、りっぱな人を選ぶのでありますが、国会の御承認のもとに決定していただくわけでありますから、この方法をぜひとも御賛成を願いたいと、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/86
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087・平林剛
○平林剛君 労働大臣の今の考え方によりますと、仲裁権関というものは、これは権威のあるものであって、またりっぱな人を求めて、紛争を円満に解決をしたい、それは一応考え方としては成り立つと思うんですけれども、いかにりっぱな人で、いかに権威があったとしても、労働組合や、あるいは使用者の方に対して、いや、あれじゃ困るんだというふうに、同意を得られないようなままの状態であっては、権威やりっぱな人が何の役にも立ちませんよ、紛争を解決する場合には。やはり紛争を解決するための機関としては、権威やあるいはりっぱな人より、その前に、その人の言うことには従うという信頼がなかったら私はだめだと思うのです。労働問題を処理する場合に。この場合、私は当然労働組合や使用者の完全な意見の一致をみて、この人の言うことなら聞こうということの方が、私は権威なり、りっぱな人よりももっと大事な前提だと思うのです。そういう点では今度の場合、使用者委員及び労働者委員の意見を聞いてというふうに、今までより後退した感じを与えることは、決して今言われた本法の目的である紛争を解決するには役立たない、私はそう思うのですよ。
それから労働大臣は最近の労働運動の傾向をどうお考えになっているか知りませんが、少くとも三公社、五現業の今の状態を見てみますと、今度のは調停案にかけた方がいいのか、これは仲裁裁定に持っていったらいいのかという議論をしているじゃありませんか。つまりこの調停委員会に出したならば、どうもいい結論を出してくれないから、はだかのままでいこうか、あるいは闘争を組織して、それでいい結論を得るようにやった方がいいじゃないかという議論が、たくさん出てくるような始末じゃありませんか。そういうことならば、調停なり仲裁なりに対してほんとうに信頼をしていない、あるいは信頼ができないような傾向が深まってきたというふうに見るのが、私は正しい見方だと思います。そういう方向は正しくない、それを直すためには、どうしても調停なり仲裁なりの機関に、紛争を解決するためには、そこへ持っていって平和的に調整しようという気がまえであれば、私は角をためて牛を殺すようなものだ。労働問題についての権威としての労働大臣、少し方向が違ってきているように思う。そういう意味で、私はこの意見を聞いてというのは、やはり前のように同意を得て、なかなかめんどうくさいことでしょうが、そういう立場で労使の信頼を得た委員を選ぶということの方が、私は大事だと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/87
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088・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 私は日本の国民がだんだんとほんとうに労働運動に成熟してきますならば、なるほど人のやることですから、調停案とか仲裁案とかというものが、一方の方が納得できないような場合もあり得るかもしれませんが、やはりそういう仲裁機関というものを一たん設けた以上は、それには服従していく、こういうものの考え方の慣行を作る方がいいと思うのでありますが、今度のこの仲裁委員のことにつきましては、なるほどある場合においては、その経営側あるいはまた組合側が賛成しにくいというようなこともあるでありましょうが、もっと大所高所に立って、国民を代表しておる国会で御承認を願うのでありますからして、私はその点においては、やはりこの国会の承認を求めるという方が、より妥当であり、より権威づけるものではないかと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/88
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089・平林剛
○平林剛君 国会の承認を得れば権威があるというのは、それは労働組合と使用者だけで選ぶよりは、現在の組織の中ではその通りかもしれませんけれども、国会だって、これを権威あらしめるということよりは、むしろ国会の多数はおそらく労働問題を円満に解決してもらいたいという方に主力を注ぐというのが、私は国会議員の良識だと思うのです。選んだ公益委員に権威をつけてやるために、国会に承認をよこせ、そんなことを言う議員は、そうたくさんはいないと思うのです。できるだけ労使の間の紛争の円満な解決をするために全力を注いでくれよう、そのためにはこういうふうな機構にするぞということで、国会はこれにまかせると思うのであります。そういう意味では、私は労働大臣はばかに権威の方ばかりを強調されているようでありますが、やはり根本的な問題は、権威よりも労使の紛争を円満に解決するというところに目的がなければならぬ。そういう意味では、私はやはり労働者側あるいは使用者側委員の意見を十分聞くべきである、むしろそれについては政府が、多数であるから勝手にどんどん、言うことを聞かなければやるぞというような気がまえの中で委員会の構成を考えていきますと、今日労働運動の中に起きておるように、調停、仲裁機関をあまり信用しない。これを利用しないで力でいくという傾向にかえって追いやることになる。私はその点やはり使用者側委員、労働者側の委員の意見を聞いてというのは、この前、政府の説明によると、少くとも今までと同じ同意を得るという気持で運営するのだというようにお答えをしておったのを聞いたのでありますけれども、労働大臣はその点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/89
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090・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 人選に当りましては、もちろんそういうつもりで、実際の運用については十分慎重に考慮いたしながらやっていくつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/90
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091・平林剛
○平林剛君 この点については私、別に意見があるわけでありますが、今の労働大臣のお答えを次善の答弁としてお聞きしておいて、もう一つ次の見地からお尋ねしたい。
先ほどこういう機関にできるだけりっぱな人を選びたい、こういうお話がございました。りっぱな人の解釈にはいろいろあると思うのですけれども、私は労使から信用される、信頼しておまかせできるという人が選ばれることが望ましいと思うのであります。この場合ですね、比率については先回、山本委員が指摘しましたから、きょうは私は重ねて申しません。三者構成はやはり守りたいという気持は同じでありますが、かりに五・三・三の場合でありましても、政府の今度の案によりますと、公益委員のうち二名は常勤にすると言っておるわけですね。りっぱな人の解釈にはいろいろございますけれども、常勤にするという一つの条件をはめますと、公益委員の範囲というものは、選定の範囲というものが狭まれてくるのじゃないか、つまりかなり信頼すべき人で、りっぱな人であって、ぜひ公益委員をお願いしたいという人がありましても、常勤ということでは困る、おれはほかにもいろいろな仕事があって、とてもそれだけを専門にやるわけにはいきません、こういうことになって、労働大臣が言うような、権威のあるりっぱな人を集める意図と逆な方向にいくおそれが、私は常勤制度の中にあると思うのです。むしろ、かえって常勤制度を採用することによって範囲が狭められて、常勤にしてもらえるのだからということで、だんだん人物的にも、あるいは手腕の上においても、高いところから低いところへ落ちてくるという傾向になりはしないか、こういうふうに心配をするわけであります。そういう点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/91
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092・中西實
○政府委員(中西實君) 確かに御心配のようなことが、われわれも人を果して得られるかどうか、非常にこれはむずかしい問題であります。ただ法律上は、これは二人以内は常勤とすることができるということで、適任者があれば二人以内で常勤にいたします。しかしながら、ぜひ常勤を初めから二名以内置くのだというふうには考えておりません。まだ具体的な人選は考えておりません。もし適任者があれば二人以内を常勤とする、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/92
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093・平林剛
○平林剛君 今の政府のお答えによりますと、その程度のものであるならば、一つ私たち、この常勤制度については非常に疑問を持つのでありますから、御検討願っておきたいと思うのであります。特に私は、こういう常勤制度をやることについて、今までの経験からいきますと、弊害が出てくるのじゃないだろうか。たとえば五名の公益委員があり、その中の二名は常勤だとかりにいたします。この場合にはやはり五人の公益委員の意見というものは、どうしても二名の常勤の委員の人に引きずられるということになる。なぜかというと、私は常勤をしておるのだから、どこどこの企業の内容については詳しいですよ、あるいはかなりこまかい問題についても知るようになるということにもなります。また常勤をしている間には、それぞれ企業体、あるいは組合にも関係ができてくるでしょうが、いろいろ人情的な問題も起きてくるというようなことで、いい点もあるけれども、人を得られない場合には悪い方向にいく方がより強くなるということで、私はむしろこの常勤制度でなくても、これと同じ目的を達する方法もあり得ると思うのです。たとえば今までのように調停委員会があります、あるいは仲裁委員会があると、事務局長がいて、ふだん常駐していろいろ専門的に、当然職務でありますから調べておる。で、その人の意見で大体内容というものを熟知することができる。公益委員は同じ立場で、同じ判断で物事を処理する、そこで私は公正が期せられると思うのです。公益委員は何も常勤にしなくてもかえってよい運営ができるし、国会の中でもそれぞれの常任委員会に専門員という者がおりまして、あとの国会議員はそれぞれ大所高所から意見を述べて妥当な結論にもっていく。これと同じようなことをやった方がむしろ私はこの機関にすがろうとする労働組合や企業体に対して信頼されるようなことになるのじゃないだろうか、こう思うのでありまして、この点は、もしお考えがあれば御意見を聞きたいと思います。そうでなければ、私は特にこの点を強く要望しておきたいと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/93
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094・中西實
○政府委員(中西實君) この公労法の最も特色とするところは、争議権がない、そうして最後は仲裁で結着をつける、そういうところにございます。従って本来公正妥当、合理的な結論を出すべく仲裁を取り扱うこの公益委員、これは片手間では非常に無理じゃなかろうか。先ほど常勤が何でも知っているので引きずる、この引きずるのは悪い方に常に引きずるように言われますけれども、よく知って、その方に引きずるというそのことをまあ常勤はねらっておるわけであります。われわれとしましては、公共企業体等調停、仲裁につきましては、やはりこの委員の中に常勤の人を得られれば置いた方が非常にベターだ。それから事務局長というのがございますけれども、これは結局委員会というものは、委員が委員会を構成しているわけで、事務局というのはあくまでもそれの事務的な補佐でございます。どっちかといえば、この委員に使われる者であります。使われる者が主人の方を引っぱっていくというようなことは、これは制度的にもおかしいし、また事務局というものの発言はおのずから限度がございます。やはり委員の中に入りまして、よく事情を日ごろ研究している人もあり、同格の委員として発言するということでなければ、先ほど申したような効果はもたらし得ないのであります。従って適当な人を探しまして、ぜひこの委員会には常勤を置ければ置きたい。このことにつきましては、大体われわれの方でもいろいろ検討いたしましたが、大かたの方でこの事情を理解してくれておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/94
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095・平林剛
○平林剛君 今の答弁は何だか少しわからなくなったね……。大かたのところで理解してくれるとか、具体的なことだとか、また人選まで大体きまっているようなふうに聞える答弁でしたけれども……。私は今までこうしたことについて携わったことがありましたけれども、今度どういう人が出てくるかわかりません。しかしなかなか幅が狭くなっているのです。今はいいですよ、今はかりにいても……将来だんだん困ってくるようになります。今かりに一人、二人これはいいなという人があっても、制度としていく場合にあとでかえって人選に困る、法律があってもないような無用の長物で、実際は専門員を置くことができないという時代になればこんなことは意味がなくなってしまう、そう思うのであります。同時に私は一つ具体的な事例を指摘しますが、たとえばですよ、常駐の委員がおりますね、そうすると、企業体の中の仕事の内容がわからなければいかぬということで視察にいくでしょう。この場合、労働省にお金がない、予算がないからということで公共企業体の世話になる、そういうことが現実の例としてあったわけです。こういう現実に対して人は何と見るか、もちろん公正なる権威のあるりっぱな人を集めるのでありますから、そういうことについて公共企業体側から便宜を受けたとしても、公共企業体側にいい結論を出していくなんということは私は信じたくありません。しかしひが目で見れば、痛いところがあっても突けなくなっちゃうというのが私は人情じゃないだろうかと思うのです。そういうことはないというふうに信じますけれども、しかしそういうことがある。私はそういう意味ではなかなかこの常勤の制度というものについては、運用によっては非常に誤解を受けることになってお気の毒だと思うのであります。大体労働大臣は、その常駐の委員を置いて企業体の内容を調べるために現在の予算というものは、今までの予算よりもどれだけ取ってきましたか、今私が指摘したような事例が今後ないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/95
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096・中西實
○政府委員(中西實君) 予算はことしにおきましては、現在の機構で取っております予算の中でまかなう、もちろん運用いたしていきます上において不足が生じますれば、その際に追加は出さなければならぬと思っておりますが、現在のところは簡素化という線もございますので、一応現在持っております予算の中でまかなっていきたい、一応まかなえるのではなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/96
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097・田村文吉
○田村文吉君 関連して……。今の委員の選任の問題ですが、なるべくこういう委員は裁判官のような位置を持っておられるというようなことになれば、非常に安心して労使双方ともまかせることができるし、信頼ができるということになるのだが、今のような問題は、御質問のあった問題は、委員の任期が二年ですね、二年たつとかわるわけです。で、かなり政党の勢力に左右されるおそれがあるのではないかというところが今の平林委員の質問の意味であると思うし、私も実はこの制度については非常に興味を持っているのでありますが、やがてはひとり公共企業体だけでなく、あらゆるものに対してこういう制度が願わしい。労働裁判のような、これは憲法の改正までいかなければならぬと思うのでありますが、労働裁判所のようなものができて労使双方にとらわれないでいつも安全でいかれるということが願わしいこととこう思っておるのでありますが、労働大臣はそれについてどう考えておられるか、それが一つ。
それから今の常勤の委員ですね、どれくらい俸給が出るのでございますか、相当にいい人が使えるんですか。また位置は安全に職務の遂行ができるような人なんですか、そういう点は予算に関係があるので、どういうふうにお考えですか。第一項は大臣からお答えいただいて、第二項は政府委員でけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/97
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098・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 仲裁委員会はやはり準司法的な立場をもっておられるのでありますから、お説のように、きわめて公平妥当な識見を持っておられることが望ましいのでありまして、人選に当ってはそういうできるだけ努力をいたすつもりでありますが、一応任期を定めましたのは、やはり大体こういう委員というものの任期がございますので、決して重任を妨げないんであります。たとえば、中労委の中山会長のような方はずっと引き続いてやっておいでになるというふうなことでありまして、この委員の権威を持たせるためにできるだけの待遇をいたしたいと思っておるんでありますが、待遇のことについては、政府委員の方からお答えをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/98
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099・中西實
○政府委員(中西實君) 特別職の常勤委員につきましては大体きまっておりまして、月七万二千円、それに地域給がたしかついたと思います。罷免につきまして非常に厳重な手続になっております。公正なやはり執務ができるんじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/99
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100・田村文吉
○田村文吉君 今、中山会長のお話が出まして、ああいうふうに留任して適任の方がおられるというような場合も考えられるから、二年で切ったところで、さらに二年、二年と続いていくかもしれぬというのでありまするが、私は現在の労働委員会の一番の欠点は、あの労働委員の方々に位置の保証がないということ、これは一年たったらかわるというようなそういう点が、思い切ってほんとうに国民のために、国民の審判を下すことができないような位置にあられるということでないかと思うのですね。そういう意味で私はどんなりっぱな人といえども、やっぱり政党の支配を受けないわけにはいかない。また、資本家の支配を受けたりあるいはまた労働者の組合の支配を受けるということになると実は公正な扱いができないんだと、そこで何かこれはもっと年限を長くしてそして位置が、二人のものならば交代して、二年ごとに交代するとかいうふうな方法でも考えることがいいのではないかと、こう思ったのでありまするが、これは私は今後これは一つの範となりまして、いろいろの問題が今後労働立法の方から考えられると思うのでありますので、御所見を承わったわけなんですが、もう少しこれが長く任期をおいて、そしてこの位置が侵されないような位置にしてあげるというような方途は考えられましたのですか、考えられなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/100
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101・中西實
○政府委員(中西實君) 公益委員の任期でございますが、一般の労働委員会におきましても実は一年じゃあまり短いと、従って二年くらいにしたらどうかということで何度か論議されたことがございます。ところが非常勤の、つまり世間においても信用のあるりっぱな方というのは、やはりいろいろと仕事を持っておられまして、まあ一年ぐらいならやろうかということで御承認いただく例が非常に多うございまして、公益委員の方々の会合におきましては任期はせいぜい一年だといって、今まで二年にすることは若干反対が多いのでそうなっております。まあ一応の任期ということでいい方は重任していただく。それからこの職務は労使がおりますので、そうへんぱなことをいたしますると、直ちにやはり不信を買いますので、従ってやはり公正な立場でやられませんと、結局その地位におれないということでございますので、案外私は委員会の性格からいって、おのずから公正にさえやっておられれば、ずっと地位が続いていくんじゃないかと、こういう感じがいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/101
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102・田村文吉
○田村文吉君 それから今の第二十三条の第二項の一号ですが、政治的団体の役員となることはできないんですが、政治的団体の役員である人は差しつかえないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/102
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103・中西實
○政府委員(中西實君) これはやはり初めから工合が悪い一・……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/103
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104・田村文吉
○田村文吉君 いけないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/104
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105・中西實
○政府委員(中西實君) はあ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/105
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106・平林剛
○平林剛君 私は先ほど公益委員については労働者側、使用者側同等の数は主張しておりますが、同時に、公益委員はお互いに同等の判断で物事を処理できるというふうな立場に置くことが公正な結論を招くということを指摘いたしまして、また同時に、常任とそうでないものということに分けることになりますと、どうしても人選の範囲が狭まって参るという意味で、りっぱな人、権威のある人ということの範囲が少くなって将来困る、今あっても将来困るということになると思う。もう一つは、先ほどの経済的な面からいって困った問題も起きますよということを指摘したわけであります。で、特に先ほど関連質問に公益委員の待遇の問題がございましたから、私もその点について触れておきたいと思うのでありますが、現在の公益委員の待遇でありますと、人選する場合でも非常に困るのではないか、かりに固定した報酬については今のままでありましても、紛争があったときなどは、一つそのときの特別な手当を出すというようなことにして真剣に、また紛争が一日も早く解決するように大いに努力をしてもらうという制度にするべきではないだろうかということを考えるわけです。これは中央労働委員会の制度の中にはそれがあるように聞いておるわけです。こういうことは、今度の改正の中には含まれておりませんか。固定給のほかに、つまり紛争あっせんのあった場合にはお金を、まあそれに相当する報酬をもって労苦に報いる、紛争の円満な解決に当ってもらおうということはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/106
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107・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) ただいまの制度は仲裁委員会には固定給だと思いますが、定額の報酬でございますが、中労委の場合にはこれは固定的な定額の報酬がございませんで、出席日について一日幾らと、日当的な報酬になっております。双方一利一害でございますが、一般にこういった委員につきましては固定給を差し上げた上に、さらに一生懸命に働いた人にもっと足し前をするというのはございませんで、固定給の場合には、おひまのときでもそれを差し上げる、しかし忙しいときもしんぼうしていただくと、そうでなければ、全部一日幾らと、いずれかよりいたし方がないと思います。
〔理事山下義信君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/107
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108・平林剛
○平林剛君 その点は私の誤解でした。しかし実際上労使が紛争があって夜おそくまでやってもらっておりますというと、大へん申しわけなく思うのであります。そうしてやはり気持の上から見て使用者側も労働組合の方も何とかしなければならないという気持が常に実際上の問題としてありますので、私はそれはやはり政府機関の中においてこうしたことについて配慮すべきではないかという見解をもって指摘をしたわけです。この点は私の誤解でありましたからこれでやめますが、もう一つ今回の制度の中で私の心配しておりますのは、政党の支配であります。先ほど申し上げました委員の任命のやり方についても、そういう誤解を受けると私は思うのであります。そういう意味では冒頭申し上げたように、今日保守と革新の二大政党でどういうふうに、しかも労働法に明るい倉石労働大臣はどういうふうにやってくれるかというふうに待っておる、そういう意味で政党の支配が強まるという誤解をなるべく避けるということが賢明であるというふうに思うのでありますが、特に今度の公益委員についてあれですね、政党の党員であってもいいように新たに書き加えられておる。この点は先ほど申し上げた二十三条の、関連質問がありました二十三条の、「政党その他の政治的団体の役員」この役員の範囲というところに関係があるわけでございますが、この点で私二つの疑問があるわけであります。政治団体の役員というのは一体どの程度までさすか。もう一つは、政党の党員であってよろしいということをことさらにこの中に入れた理由はどこにあるか、今まではなかったが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/108
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109・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) 事務的な点につきまして御説明申し上げます。政党の党員であってよろしいというわけではございませんので、現行法におきましては、調停委員会につきましては、これは政党関係につきましての欠格要件が一切ございません。それから仲裁委員会については政党の役員だけを禁止しておりますから、三人が同じ党員であってもよろしい、そんなことはあり得ませんけれども、法律上はそういうことになっております。そこで、今回は一つの政党に二人以上所属するようになってはならないということ、平党員についても制限を加えた。この制限は労働委員会の例にならいましたわけでございます。まあこれが常識的なところではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/109
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110・平林剛
○平林剛君 今のお話だと、今までの仲裁委員であっても政党の党員であって差しつかえないというふうになっていた、こういうお話ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/110
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111・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/111
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112・平林剛
○平林剛君 それは現在まで仲裁委員というものは現実の問題の人選としてはそうではなかった。私は今度こういうふうに出してきたというのは、今の鳩山内閣がそう見られるのはどうもこれはしようがないのですが、どうも政党が介入をするためにまたこれを出してきたというようなふうに一般的に見られるのですよ、これは鳩山内閣としては反省しなければならぬ点だと私は思うのですよ。特にやることなすこと、こういうふうにやっぱり見られる傾向が現われてきている。そういう意味ではこれはやっぱり公益委員は政党の党員でないようにしよう、従来の仲裁の制度を運営する場合にはそうでなかったのだから、私は眠った子を呼び起すような字句を入れてこういうふうにするというのは、労働大臣も賢明じゃないと思うのです。そういう点では、公益委員は少くとも公正であるという立場で、政党だから公正じゃないということは言いませんけれども、しかしなるべく理想に近い、公正であるという意味では、こういうことをことさらに書くという意図がどうも理解に苦しむわけであります。この点はぜひ私は検討を願いたいものだと思っておるわけであります。まあこれは希望として申し上げておいて、役員のことについて一つお伺いしたい。役員というのはどういう範囲をさすか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/112
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113・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) 役員につきましては、かって内閣と打ち合せまして通牒を出してございます。手元にございませんのですが、範囲は明確になっておりますので、後刻調べて申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/113
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114・平林剛
○平林剛君 それから、この条項で非常に微妙な表現になっておるのですが、「(公益委員の服務)」、第二十三条の積極的に政治活動をすることはいかぬと書いてあるのだけれども、大体これも消極的に政治活動をすることはいいというふうにとれるわけです。一体積極的、消極的の判断なんというのはだれがするのかわからない。今日、今度の任命制度全般を見て感ずることは、非常に政府の息のかかった人が選ばれそうだという空気もあるし、またこの公益委員の数字についても、今まで三者構成であったやつが、五・三・三になるということも何か含みがあるように聞えるし、また政党の党籍を持ってもいいということをここにことさらに書いた中にも、なるべく仲裁の裁定は政府の希望にかなった者を出してくれと言わんばかりのことが書いてあるし、非常に私は政党の支配という点で今度の改正には問題が含まれているように思う。ことにこの第二十三条の字句などについても何か釈然としないものがあるのでありますが、一体消極、積極の政治活動の区別なんというのはどこでつけるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/114
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115・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) 積極的に政治活動をするというのは、これは国会の御審議によりまして制定せられております今日のいろいろな委員会の組織法に軒並み入っておる規定、いわば例文でございます。従いまして、他の法律と同様に解すべきでございますが、内容的に申しますならば、おおむね国家公務員に禁止されている政治活動程度のものをいうと了解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/115
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116・大和与一
○大和与一君 関連して……。組合法第二条の、主として政治活動をやるのは労働組合と認められないというのと同じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/116
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117・石黒拓爾
○説明員(石黒拓爾君) あれは、団体的行動を目的としておるものでございまして、この場合の政治活動は、個人の投票であるとか、署名運動であるとか、こういうふうなことを申しておるわけであります。たとえば、選挙の場合の投票のごときはもちろん積極的政治活動には入りません。あれとは立法趣旨が違いますので、全然別個に判断すべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/117
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118・平林剛
○平林剛君 大体私はこれで各法律案の条章について指摘したい点だけは指摘をしたわけなんで、結論的に言えることは、先回の答申案、せめて答申案でももう少し検討を加えて今回の改正の中に含めるべきものがある。また、今度の政府が提出された法律案の中でも、従来から指摘をいたしました公益委員の任命の制度やあるいは数の問題、労使関係に政治的な介入を強め、中立性がそこなわれるおそれがある条項、あるいは公益委員の常勤制度が結局権威のある人、りっぱな人を集めることにならない。悪い言葉で言えば、古手官僚が登場してくるという将来のおそれを招く。いろいろ私がせめてこの指摘した程度だけでも何とか修正をすることが適当ではないだろうか、こういうふうに思うのであります。まあ倉石労働大臣も公労法のことにつきましては、きわめて理解がある一人でありますから、一つこの点については、あなたが労働大臣である間に前進するという意味で、私は積極的にもう少しよいところ、つまり議論してこの点はそうだというような点については、大所高所からそうした点について積極的な検討をわずらわしたいというふうに希望するわけであります。まあ私一人ばかり質問をして恐縮でありますから、今日は私の質問はこの程度にとどめまして、政府の善処を求めたいと思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/118
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119・山本經勝
○山本經勝君 大臣に確かめておきたいのですが、このいわゆる労使双方の同意という問題なんですが、これは非常に固執するようだが、しかしこれは労働大臣よく御存じなんで、法理論的な問題として私はまっこうから振りかざしているわけでも何でもないのです。現実問題の処理と、その処理に従って行政が円滑に運営されることが望ましい、このことについては大臣異議がないと思う。そうしますと、やはりその前提が同意にあると思う。この同意ということがなぜ取りのけられたのか、取りのけねばならぬのか、この点が再考の余地のある重大な問題であろう。ですから、それを従来やった通りに同意という形で進めるというお考えはないか、または再考の余地があるものなのか、その一点だけ伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/119
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120・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 私どもこの委員の候補者を出しますときには、ただ経営者及び組合に名前を持っていって、これですよというふうな態度をいたすのじゃありませんで、十分にこの人についてこういうふうにやりたいと思うということについては、丁寧懇切に御懇談をいたしてお示しをして推薦するのでございますから、十分に相手方の両者も理解していただける、そういうふうに思っておりますので、この人選をいたしました場合に、構成された五人の委員につきましては、先ほどからお話のありますように、権威ある仲裁裁定を出していただくことを期待いたしておるわけでありますから、これは原案の通りにぜひ御賛成を願いたいと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/120
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121・山本經勝
○山本經勝君 これは倉石労働大臣になってからではないのですが、前に特別国会当時に、第二十二国会当時ですが、前労働大臣の際に、労働基準法の臨時調査会というものを構成になった。あのメンバー等を見て参りますと、日本における労働関係の権威者といわれたような多くの専門家、学識者多数あったのですが、これらの人々がほとんどオミットされて、そうして実に何といいますか、集まった人々はずいぶん、むしろ労働運動というものについての実態に理解の少い人々があげられたように思っております。これは一人々々についてとやかく申し上げることは不都合だと思いますが、とにかくあの状態を見ましても、かりに推薦の方法が政府で一応これこれと名前を並べられて、経歴はかくかくというので紹介をされるでしょう。これは労働委員会では普通にやる方法なんです。そこでその中で、この人はよろしいが、この人は反対であるというようないろいろな意見が出てくると思う。その意見を聞くという場合に、その程度の問題であるなれば、少くとも十分意見は聞いたと、そこで推薦をされて、そうしてそれが国会に出される、こういうことになってくるので、非常に問題があるわけなんです。ですから、ここでまあ大臣のお話のように、一応原案の通りに協力をしてほしいと言われるが、このことだけに協力したのでは本来の大臣の目的には沿わないと思う。というのは、今後の運営の問題にかかってくる。ですから、むしろ将来の運営の面を含めて大臣がお考えになるのなれば、労使双方も推薦をすることがあるかもわからぬ、こういう人を出して下さい、そういうものを取り入れられる用意があるのかないのか。もしそうでなくて、政府はお考えになった一応の名簿を示して、説明して、どうかこれは賛成か反対かと言っても、一応名簿に載っているそのうちからつまみ上げていかれるのは政府の御自由だ、こういうことになっていくのだから、少くともそのメンバーの中には、十人になるか、十五人になるか知りませんが、ともかく労働者の組合、あるいは使用者側の希望される委員があるかもわからない。そういったものを推薦をする、そういう場合にそれを受け入れられる用意があるのかどうか、その点伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/121
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122・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 公式に経営者及び組合側から候補者を人選していただくということはいたさないのでありますが、常々こういうことについては、この法律ができますれば、いろいろ労働省としては各方面に接触を保っておりますから、こういうような方がいいのではないかということについてお話し下さることは歓迎することでございますから、諸般の情勢を総合いたしまして、私どもの方では責任をもって国会に御推薦をいたして、その御承認を願えるような人物を選びたいと、こういうように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/122
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123・山本經勝
○山本經勝君 あの推薦された人々で、国会の同意を得て総理大臣が任命されますと、そこで労働省設置法一部改正案の中に出ていたような記憶もいたしますが、この点はっきりいたしませんが、特別職になって任命されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/123
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124・中西實
○政府委員(中西實君) この両院の国会の同意を得て任命される者は、公務員法で特別職ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/124
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125・山本經勝
○山本經勝君 それで、それは内閣に属される、こういうことでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/125
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126・中西實
○政府委員(中西實君) 内閣総理大臣が任命するということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/126
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127・山本經勝
○山本經勝君 で、労働省に属するが、つまり内閣の職制の中の一覧表に出ておったように私思っておりますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/127
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128・中西實
○政府委員(中西實君) いや、これはできますれば、労働省の外局ということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/128
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129・山本經勝
○山本經勝君 そうすると、やはり予算を編成するのは内閣である。それからまた各省のそれぞれについては、労働省に属するから、直接労働省の職制の中にあると思うのですよ。そうした人が果して公益的な性格を維持することができるか、これは多分に疑問が起るのですが、その辺はどうなのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/129
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130・中西實
○政府委員(中西實君) この公労法自体の施行につきまして労働大臣も責任をもっておるわけであります。従って、一応労働省の外局ということになりますけれども、運用はこれはもう独立性をもってやりますので、従って別にその運用上影響が及ぶというようなことも考えられないことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/130
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131・山本經勝
○山本經勝君 二名の専従になられる方はどういうお建前なのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/131
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132・中西實
○政府委員(中西實君) これは特別職で常勤というだけで、そのほかの非常勤の人とは常勤、非常勤の違いだけで、あとは全部同じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/132
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133・山本經勝
○山本經勝君 裁定なんかに従事される場合に、裁定には当然委員の一人として参加されると同時に、日常調査業務等をなさるようになっておりますね。そうすると、その調査についてその人の感覚がどういうところにあるかということが非常にかかって重大なかぎになってくると、そこら辺でその公益委員が真に公益的立場に立てるのかどうかということになお今の御説明では疑いが持てる。で、先ほど申し上げたように、法律を運用するというものは人間なんですから、これらの公益委員である皆さんの双肩にかかっておる、公平妥当な線でもって処理されるかどうかということがかかって問題になりますから、そこでやはりその人の身分なり、立場、これは何といっても左右をすると思います。そこで常勤にされて、しかも労働大臣に属される、そうして特別職として活動になる、しかも日常調査業務等もやられる、こういうことになると、勢いのおもむくところ、これはむしろ公益委員というよりも政府側の立場に立たれる情勢に追い詰められていくと思うのです。そこにもう公益性は抹殺される、だから勢い二名の常勤者を置くということについても、この前もいろいろ質問申し上げましたのですが、これは再考の余地のある問題だと思うのですが、そこら辺の再考の用意があるかどうか、伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/133
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134・中西實
○政府委員(中西實君) この常勤の委員は、これは労働省に置くのじゃないのでありまして、機構上は、今度できますこの委員会はやはり労働省の外局ということになりますが、常勤委員は外局の、今度できます公共企業体等労働委員会のメンバーでございます。従ってそのやります仕事につきまして、労働大臣の指揮は受けません。全く労働委員会のメンバーとして独立性をもって動くということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/134
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135・山本經勝
○山本經勝君 最後に今の運営の面ですが、これはこの委員会にかかる問題は賃金、給与、その他労働条件、むろんのことですが、人事問題もかかると思うのです。あるいは紛争に関する諸問題も当然これは仲裁委には持ち込まれることがあると思うのです。そういう場合に、やはりその立場が非常に問題になりますから、少くともそこらの運営の面での重大な、何といいますか、合理性を確保する何らかの方法があるのかどうか、たとえば賃金要求を掲げていろいろな交渉、闘争等が展開されて、そのことが解決されずに、それが進行する間に、あの春季闘争等についても若干問題が起っておるようですが、こういうような紛争についても、事、人事に関係の問題ですが、これはやはりその争議の当否が問題になった際に、そのあっせんなり調停なりを受けて仲裁委に持ち込まれる場合があるかもしれません。こういう場合に、また重要な問題になってくると思いますが、そういう場合の扱いについては特段の配慮があるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/135
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136・中西實
○政府委員(中西實君) ちょっとお尋ねの趣旨が理解しにくいのでありますが、人事——個々の人事につきましては、これは管理運営の問題で、基準につきましては、これはお互いに話合いができることになっております。で、もしも解雇が不当だ、それが不当労働行為ということであれば、そういうことでこの委員会に訴え出られるわけであります。そうしますれば、この委員会の公益委員だけでそれの判定をする、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/136
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137・山本經勝
○山本經勝君 でありますから、今の人事の問題——一般的にいわゆる基準というものはもちろんありますね、その決定と実施が妥当であるかどうかということについて双方の意見が食い違うという場合もあり得る、たとえば、それが普通の場合でなくて賃金その他の労働条件に関する協議の進行あるいは闘争の過程で起り得る問題なんです。先ほどからその際の公平性というものを伺っている、これは非常に重大な問題になってくると思う、ですからその点を今伺っている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/137
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138・中西實
○政府委員(中西實君) 今の常勤、非常勤の公益委員、これは全く独立の性格を持って事に当るわけでありまして、従って公正に判定をするだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/138
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139・山本經勝
○山本經勝君 するだろうではたよりないのですが、そこら辺の何らかの……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/139
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140・中西實
○政府委員(中西實君) これはもう全く先ほどから言っておりますように、独立性を持った機関でございますので、従ってどこにも拘束されず、ちょうど裁判所が裁判をするように準司法的機関として判定をするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/140
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141・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 速記をやめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/141
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142・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 速記をつけて。
御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/142
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143・大和与一
○大和与一君 大臣にお尋ねしますが、なるべく重複しないつもりで質問します。衆参両院の本会議の議事録を拝見しますと、大臣はこの公労法というものが非常に不備な点がたくさんあって困っておるのだと、これはまあ御承知の通りこの法律ができるときに、騒然たる中に、内容も何も説明もなくて、いいかげんにできたということはよく御承知の通りだろうと思うのですが、公労法の今回のこの改正案以外に、ほかにもだいぶ不備な点があるのだと、こういうふうにお認めになっておると思うのですが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/143
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144・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) この法律は今御指摘のように、ああいうふうな時期にできましたので、立法に当りましては、私どもも十分な相談をし合う時間もなくてできてしまったようなわけでありまして、その条文それ自体からしてすでにわかりにくいようなところもあります。そこで、それからまた私どもは公企体というものについてもいろいろ検討を要すべき点があると思っておりますが、いずれにしても公企体というものがある以上は、これに関する法律が必要である。そこでその法律をいろいろ考えますというと、たくさん疑問も出て参りますが、とにかく経営当局も従業員も一番困っていると思われるのは仲裁裁定の点だ。そこでこの仲裁裁定のことに重点を置いて、決して万全とは私どもも存じませんけれども、その点をできる限り、この仲裁裁定が尊重されるような建前に移していきたいと、こういうので改正を考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/144
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145・大和与一
○大和与一君 そういう前提に立つと、その後きょうまでいろいろとまあ労使の問題がございましたが、それは政府自体がそういうふうに、あなただけでなくて、お認めになるわけだと思うのですが、今日まで労使双方からどうしてもこれじゃ困るという意見はずいぶんあらゆる機会を通じて届けられておったと思うのですが、きょうまでの政府の態度ははなはだよくない、そのために首切りが起った、あるいは労使の紛争がいたずらに長引いた、円満な解決ができぬ。たとえばイギリスのように、調停仲裁委員会できめたことは政府は責任を持ってすぐに予算措置がなされる、こういう全責任を持ってきちっとしたまとまりができれば、これは問題は非常にいいのですけれども、そうでなかったということは、今までの政府のやってきたことははなはだよくない、こういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/145
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146・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) この法律に従って仲裁裁定を処理いたしていくためには、御承知のように、予算上資金上支出不可能な調停が結ばれたときは、政府を拘束するものではない、こういうわけでありますから、政府が支出不可能だという認定をいたしましたときに、国会の議決を求めると、こういう手続については従来の政府のやりましたことは、私は不当ではないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/146
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147・大和与一
○大和与一君 一月の三十一日に社会党の多賀谷君が別間をいたしましたときに、公労法の改正については意見が一致しないというようなことであれば、自分はあえて改正を断行したいとは思わない、こういう御答弁をなさっていらっしゃいますが、これはどういう意味でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/147
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148・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 特に非常な、何と申しますか、政府の与党の力で、今、政府の与党は多数でありますから、その多数の力で、反対されるものを無理に押し切って法の改正をするということはよくないことだと私は考えました、この法律については。そこで皆さんが納得していただけるならば改正案を作ってみようかと、こういうことで審議会をお願いしたわけであります。そこでその審議会ではまとまらないところもありますから、その三者で意見がまとまらないものは現行法のままにしておいて、まとまったものは改正案として御審議を願う、こういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/148
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149・大和与一
○大和与一君 その審議会のまとまったと言われる案ですが、ちょっと、これはもし私が間違っておれば訂正しなくちゃいかぬのですけれども、たとえば委員会の構成、あるいは常勤の問題、これはその審議会の委員から聞いたんですけれども、これは別に審議されていないというふうに聞いておりますが、その点は如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/149
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150・中西實
○政府委員(中西實君) 具体的な、今おっしゃった点は話に出たことは出ましたが、はっきりと決定になったわけじゃございません。ことに常勤の問題につきましては、話が全然ございませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/150
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151・大和与一
○大和与一君 そうしますと、大臣のおっしゃったまとまった点だけをまとめたとおっしゃっても、今の二点については思い違いであったと、こういうふうにお認めになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/151
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152・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 私からお答えいたします。法律、案を改正するのでありますから、やはり一応体系を整えなければなりません。そこで四条三項のような点は止むを得ず現行法のままにいたしましたが、さらにこういう改正をする機会に、先ほどからお話の出ておりますように、仲裁委員会に権威を持たせるようにして、そうして準司法的な立場をできるだけ尊重するようにしたい。同時にまた三十五条などでは、政府に仲裁裁定をできるだけ実現し得るような努力義務を与えたと、こういう次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/152
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153・大和与一
○大和与一君 大臣がこの法律改正についてあまり強引に無理をするというような気持はないということを、先ほど、この前も本会議でおっしゃっているのですが、それならば審議会で実際に審議を十分されていない、こういう問題について、あるいはこれの適用を受ける組合側なんか、どうもこういうことじゃ困る、これはぜひやめてもらいたい。こういう意見が強く主張されておれば、これに対して再考する、十分耳を傾けて、できたらばその話をまとめていきたい、こういう気持が十分おありのような気がしますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/153
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154・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 審議会の模様を承わりましてもそうでありますが、やはり法律に対するお立場上どこまでも賛成をしかねると、そういう点が両者の間にあり得ることは、これはやむを得ないことでありますが、大和さんも十分御承知のように、いろいろ立場があって、多少不満なところがあるが、とにかくこの改正案の方が現行法よりも理想的であるということは、組合の方々、大衆もよく存じておられるところでありますから、私はそういう意向を尊重いたしまして、やはりこの改正案は皆さんにも御賛成願う方がいいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/154
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155・大和与一
○大和与一君 理想的ではないが、何分の一くらいは前進をする、こういうふうに大衆は理解をしているかもしれませんが、今のこの二点は、私たちもこれはぜひとも構成については五・五・五だとか、あるいは常勤のことはしてもらわぬ方がいい、こういう意見を強く持っているわけですが、たとえばストライキを破ります会社が、憲法違反だからいけないということを言うかと思えば、これは言わないで、政府の意のあるところを、御苦労したことについては理解した上に立って、この委員会で審議してもらっているわけだと思うのです。ですから、今私が話したようなこの二点については、なお大臣として、政府としてもう一ぺん一つ考えてみると、こういうことになると、やや話がうまく進むというようなことがあるかもしれぬと思うのですが、その辺は絶対いかぬなどと言わぬで、もう少し色よい返事もたまにはしてもらいたいと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/155
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156・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 提案いたしますまでに、十分そういう点についてもわれわれ研究をいたしました。それからまた審議会の途中から、この審議会の構成分子の方のお話を、部分的にはちょくちょくお聞きをいたしておりました。そこでこの原案を作ります前に、そういう点も十分資料として検討いたしましたけれども、今回の改正案はやはりこういうふうにする方がいいという私は認定をいたしまして、従って政府で提案をいたしますのでありますから、この運用の万全を期するというという責任については、私ども十分その責任を感じてやっておるわけでありますから、どうか一つこの改正原案で御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/156
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157・大和与一
○大和与一君 第二十条の二の、先ほどから問題になっています「意見をきいて」ということは、これまた大臣は三月九日の社会党の栗原君の質問に対して、「最終的に皆様方の御協賛を経て総理大臣が任命する」こういう言葉で答えておりましたが、そうなると、実際上いろいろとはっきりとおっしゃらぬけれども、同意がなくては実際上きまらないのだから、とにかく何がなんでもまとめてそうしてきまってくるのだ、こういうふうにおっしゃってもいいと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/157
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158・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) そのことにつきましては、先ほどもここでいろいろ論議をかわされたわけでありますが、私が「皆様方の御協賛を経て」というのは、その候補者を選任いたしますまでには、部内においてそれぞれ労使双方の御意見を承わった上で、私どもが責任を持ってその候補者をきめて、そこで国会の皆様方の御賛成を得て総理大臣を任命する、こういうことを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/158
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159・大和与一
○大和与一君 次に、団体交渉で大体話がまとまった場合には、そのまとまったことが実行されることが一番いい。しかし、今のところでは非常にいろいろな制約があって、きめようにも、団体交渉できめても、絶対に予算の流用ができないからやむを得ない、こういうことになっているわけですが、これを法律全体の不備な点もまだあるのだから、特にこの点については十分に御理解をいただいているのですから、これがほんとうにもっとよく練れてりっぱな案に改正されるまでは、今回は少しは幅が広くなったとは言えますけれども、できればこれを団体交渉のまとまったときには、国鉄の総予算の中といいますか、その中で少しは流用してもいい、このくらいのところまでいってもらえば一番いいと思うのですが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/159
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160・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 今のお話は調停案が出た場合の……調停を持ち出す前のお話でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/160
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161・大和与一
○大和与一君 いや、出る前ですね。団体交渉を並行してやりますでしょう。出る前もやるし、やっているから、団体交渉でまとまったときにはそれは国鉄の、たとえば公社のワク内で予算の流用、移用ぐらいはやってもいいということが、目安があれば団体交渉がまとまっていくと思うのですがね。そういうファウンデーションと申しますか、何かそういうことを認めるということになれば一番いいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/161
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162・中西實
○政府委員(中西實君) 労使で話し合いがまとまれば、それが実行されることは一番望ましいことと思います。現実にはそうなるのではなかろうかと思います。ただ予算の制約がございますので、従って会計法上流用の手続とか、そういうものはやはり省略するわけにはいかないのではないか。しかし双方で話がまとまったというものにつきましては、なるべくそれが実行されるように政府としても考えるべきだ、ただ会計の一般原則は、これは守らざるを得ないというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/162
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163・大和与一
○大和与一君 きょうはこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/163
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164・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/164
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165・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) 速記を始めて。
それでは、本日は本件に対しましては、一応この程度にいたしまして、次回に譲りたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/165
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166・重盛壽治
○委員長(重盛壽治君) それでは、本日はこれにて閉会いたします。
午後三時四十五分散会
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414410X02219560412/166
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