1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年四月二十七日(金曜日)
午後三時七分開会
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委員の異動
本日委員木村守江君辞任につき、その
補欠として寺本広作君を議長において
指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 三輪 貞治君
理事
西川彌平治君
白川 一雄君
阿具根 登君
河野 謙三君
委員
古池 信三君
高橋 衛君
苫米地義三君
中川 以良君
深水 六郎君
海野 三朗君
国務大臣
国 務 大 臣 正力松太郎君
政府委員
総理府原子力局
長 佐々木義武君
経済企画政務次
官 齋藤 憲三君
通商産業政務次
官 川野 芳滿君
事務局側
常任委員会専門
員 山本友太郎君
説明員
原子力委員会委
員 石川 一郎君
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本日の会議に付した案件
○日本原子力研究所法案(内閣提出、
衆議院送付)
○原子燃料公社法案(内閣提出、衆議
院送付)
○核原料物質開発促進臨時措置法案
(内閣提出、衆議院送付)
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001・阿具根登
○理事(阿具根登君) ただいまから委員会を開きます。
まず委員の異動について申し上げます。本日、木村守江君が辞任され、寺本広作君が指名されました。
以上報告いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/1
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002・阿具根登
○理事(阿具根登君) 原子力三法案を議題に供します。質疑のある方は、順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/2
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003・海野三朗
○海野三朗君 私は、さきに正力国務大臣に対して、学者の研究の自由についてその意見を尊重し、かつその保障を与えるように再三にわたって質問したのでありますが、私が納得のいく御答弁が得られなかったので、この際重ねて御質問申したいと思うのであります。
まず、基本的な問題としまして、事科学の研究に関しましては研究のテーマの選択、研究方法の進め方、それから研究費などの問題については研究当事者である学者の意見が基礎となり、それをもととして政策の問題が初めて立てられるべきものでありまして、逆に政策が優先して研究の自由を束縛するようなことがあっては科学のほんとうの発達は期待できないばかりではなく、国の政治を誤まることとなると思うのでありますが、大臣はこの基本的立場をお認めになりますか、御所信を承わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/3
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004・阿具根登
○理事(阿具根登君) 海野委員に申し上げますが、正力国務大臣から答弁を願いますか、先ほど座談の中で出ましたように原子力委員の石川一郎君がお見えになっておりまして非常に時間が短かいようでございますから、次から石川一郎君に対する質問を早目にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/4
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005・正力松太郎
○国務大臣(正力松太郎君) ただいまお尋ねの点、御趣意に私は全く同感なんでありまして、政府としても学者の研究は十分尊重いたしております。決して今まで制肘を加えたつもりはありません。それからなおあるいは政策の方を重んじやしないかというお話でございますが、これはこういう場合からの御想像だろうと思います。先般武山にすべきかどうかということについて異議がありまして、それは原子力として、研究所としては学者は武山の方がいいと言いました。ただ国家全体から見て原子力だけでなしに、国家全体の政策から見なくちゃならぬので閣議にかけたのでありまして、これは原子力問題だけならば武山ということを学者がきめればそれは異存はないはずであります。それで従って政策的に見て武山は考慮しなくちゃならぬという考えを持ちましたから、原子力委員会に対してもいかぬとは言いました。政府としては武山については防衛上考慮しておるところもあるのだ、ただこれを頭に置いてもう一ぺん考え直してくれぬか、おそらくあのときにおいて委員会がどうしても武山だということを主張するならば政府もこれに従うたかもしれません。が、委員会の方ももし政府がどうしてもこうしろというなら確かに委員会は反抗したに違いありません。しかしそうでなかったのです。ただもう一ぺん考え直してくれと言うて学者に対しては努めて礼儀を尽したつもりでおりますから、その点はどうぞ御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/5
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006・海野三朗
○海野三朗君 石川さんにお伺いしたいのでありますが、実はこの経団連の方がはなはだ私が考えますというとふに落ちない点がありまするので、この際この原子力にも関係すると思うのでありますけれども、経団連の方としましてはたとえば過日の旧日鉄の担保についてのあの法案、その際に何ゆえにこの企業担保を法律化しないのであるかといって責めた際に経団連の方が賛成しない、それだから法案を作らないのだ、経団連の方から反対の声があったので法案を作らないのだというお話でありましたが、ああいうふうな企業担保法というようなものについてはまだ時期尚早だという考えを持っておられたようでございますが、この際ついででありますから石川さんにこの点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/6
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007・石川一郎
○説明員(石川一郎君) これは議会で、こういう所で御答弁することが適当であるかどうか存じませんけれども、あるいは雑談というふうにしてお聞きとり願うことができるのでございましょうかどうか、お聞きいたしたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/7
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008・阿具根登
○理事(阿具根登君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/8
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009・阿具根登
○理事(阿具根登君) 速記を起して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/9
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010・海野三朗
○海野三朗君 この原子力の利用問題につきましては、経団連としては石川さんのお立場ではどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/10
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011・石川一郎
○説明員(石川一郎君) 実はこの原子力の問題をもう少し産業界なり経済界が強く取り上げなければならぬということを考えましたのは、私が一昨年の二月アメリカに参って帰ってきてからでございます。それから後学会等の雑誌等に私いろいろの意見を出しまして、経団連でもまだその時分には日本内地の方もそう熱心になっておらなかったのだけれども、委員会というふうなかた苦しいものでなく懇談会というようなもので研究を進めたらどうか、これは要するに生活水準の向上の問題とか、あるいは産業革命にもなりますし、またエネルギー問題を常に研究しておるものですから、早くそういうことで幾らかずつみなが頭を養って参ったらどうかということでずっとやって参ったのであります。なおその後各方面におきまして小さいグループがたくさんできまして、そうしてそこで御研究なすっていらっしゃったものですから、それと連絡をとってお話し合いを伺ったりなんかしておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/11
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012・海野三朗
○海野三朗君 この研究の自主性ということを今まで私も機会あるごとに唱えてきたのであります。国会に出る前からこれは唱えてきたのでありますが、この研究者の自主性という点を十分尊重していただかなければほんとうにこの発達ということは期せられない、こういうふうに私は思っておりますので、こういう点についてはやはりいかようにお考えになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/12
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013・石川一郎
○説明員(石川一郎君) 今おっしゃったようにわれわれも考えておりますし、基本法にもそういうことが出ておりますし、ただ問題は学校で研究なさるとか、あるいは研究所で研究なさる問題につきましては、重複しようと何しようとうんとやった方がいいと思っております。ただ、しかし相当大きな装置を作って何億もの金をかけてやるものについてはそう方々でできませんから、できるだけそれを皆さんで御利用なさって御研究願いたい、こういうふうな考えを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/13
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014・阿具根登
○理事(阿具根登君) ほかに石川一郎君に御質問ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/14
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015・海野三朗
○海野三朗君 ただいま国務大臣から武山のお話を承わりましたが、これは見方によりましては国防優先という感じを国民に与えておるのであります。こういう点はいかようにお考えになっていらっしゃいますか。いろいろ御説明を承わったのでありますが、国防優先ということではこの原子力の問題も妙なことになるのではないか。初めに平和利用ということを前提に置きながら、基本法には幾らりっぱなことをうたったってそれはどうでもなるという印象を国民に与えておるように私は思うのです。国防優先ということでは昔の日本に逆戻りしておるのじゃないか、こういうところを非常に私懸念するのでありますが、そういう点の御説明を一つ承わりたいのです。国防優先であるという結果になりましたが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/15
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016・正力松太郎
○国務大臣(正力松太郎君) ただいまの御質問について私もごもっともと思っておりますが、しかし決して今度の武山問題は国防を優先するために武山をいかんということにしたわけではないのでありまして、ただ私どもの説明なり言葉が足りなかったためにそういう印象が一部にあったかもしれませんが、先ほども申し上げましたがごとく、武山をいかんとした理由は国防上武山は必要だからいかんとしたわけじゃないのでありまして、ただ武山は国防上にも関係あるのだ、まだ国防計画も立っておらないのだから、一応一つ原子力委員会ではもう一ぺん考え直してくれんかということを政府が言ったのでありまして、先ほど申し上げたように決して武山がいかんというのではないのでありまして、国防上の計画が立っておらんのであります、だからできればもう少し待ってもらいたい、再考してくれ、そうして委員会の方でもせっかく政府が言うならば、もともとこの前申し上げたごとく原子炉の実験炉、それから動力炉を区別するということはよくないのであります。これは海野委員は専門家でいらっしゃるから御承知だと思います。そういう分離するということは二軍の手数になるのです。従って敷地選定にしても初めは両方合同の所を探したわけです。ところがなかなか合同のいい所が見当りません。それではむしろ分離してでもやったらどうかということで、分離するというと武山が優勢だということになったのでありますが、そのうちに水戸の東海村という所が出てきて、あそこならば合同でもできるという話もあったのです。あったのですが、分離してやると武山が便利だという点があったのです。だからまず武山というふうにやったようなわけであります。従って委員会に向って政府から差し戻されると、委員会はもともとそういうのですから、満場一致それでは水戸がいいじゃないかと、こうなったわけでありますが、ただこれは内輪の話でありますが、いいことはいいけれども、政府から差し戻されてすぐ水戸というといかにも武山がだめだからしたように見えるから一週間ばかり決定を延ばしたらどうだ、そういう意見は委員五人のうち二人はそういう意見でありました。一方急ぐのじゃないか、だから多少世間から誤解を受けるかもしらんけれども急ぐからいいものはいいものとしてやろうということであれはきめた、これが真相であります。決して政府の差し戻しにも武山いかんと書いてありません。武山については一つ考慮してくれと、こうなっております。そうしてそれが今申したよう点で全会一致水戸がいいのじゃないかということになったわけであります。これはもうほんとうで、世間では政治的にどうだとかあるいは正力が、委員長が独断でというのはこれはみなうそです。これはもうほんとうにそういうことであります。ほんとうにどの委員も、私は元来水戸がいいということを、二月のときから水戸にきめた方がいいということを私個人は考えておりましたくらいですが、その証拠には現地に見に行った委員諸君初め技術者もなかなかよかった、よかったと異口同音にこれは言うたわけでありますから、これは決して自分で手前勝手に申しているわけではありません。あのとき行った新聞記者にお聞きしてもわかります。事実そういうわけですから、私どもの発表に多少のまずいところがありましたけれども、事実悪いものを水戸にしたのじゃないということでありますから、この点はどうぞ御安心を願いたいと思います。従って決して防衛優先という意味でもないということなのでありますから、どうぞお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/16
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017・海野三朗
○海野三朗君 次にただいま私の申し上げました立場からして二点についてお伺いをいたしたいと思います。
先ず第一点は研究所法の第二十四条の基本計画についてでありますが、研究所の業務運営というのは原子力委員会の議決を経て定められる基本計画に基づいて行われることになっているのでありますが、この基本計画には長期計画と年次計画、研究テーマ、研究方法など詳細な点に至るまできめられるのかどうか、その点をお伺いいたしたいと思います。と申しますのは、この基本計画の定め方いかんによっては原子力研究所の研究員の研究は全くその定められた範囲を越えることができなくなるのではないかという懸念であります。言いかえますと、学者が自発的に思うように研究したいと考えても、それが認められなくなるのではないかというおそれがあるからであります。研究と申しますのはヒョウタンからこまが出るか何が出るかわからない、ほんとうに予測することができないものなのであります。それはただ研究者のみが知っている世界である、作り出す世界であります。この研究者の発案によるその研究計画と申しますかそれが根本になっていかなければならないと、こう思うのでありまして、原子力委員会がつまり研究員と直結するようになっていなければならないのではないか。直結しないでただ原子力委員の人たちでもっておきめになるのでは足が地につかないのじゃないかというおそれがありまするのでこの点をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/17
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018・佐々木義武
○政府委員(佐々木義武君) この第二十四条に基づきます基本計画の内容でございますが、ただいま考えておりますのはお話のように長期の計画と当該年度の計画と二つ考えております。両方ともまだ研究中でございましてできてはおりませんが、しからばその内容いかんという問題ですけれども、まあ、まだはっきりきまったわけではございませんが、ただいま考えている段階では、たとえてみますと原子炉の津設計画、あるいは人材のと申しますか、技術員の養成計画、あるいは諸材料の整備計画といったようなのが内容の主たるものでございまして、決して研究者そのものの研究自体を縛るというふうなことはこの計画の中には含まれてございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/18
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019・海野三朗
○海野三朗君 原子力委員会と研究員、つまりほんとうの研究をする主任研究員とのつながりはどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/19
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020・佐々木義武
○政府委員(佐々木義武君) 委員の皆さんが直接研究所の研究所員と直結するというふうにはただいまのところはもちろんなっておりませんが、ただ委員会と研究所の首脳部あるいは主たる研究所の方たちと定期の話し合い等を随時開いておりまして、この間意思の何と申しますか、そこを来たさないようにということで、まあ極端にいいますと一心同体的な運用方法をやっておりますから、研究が逐次進むに従いまして研究者の研究成果も十分委員会には反映いたすでありましょうし、また委員の皆さんが考えておられることも研究の助長のためにそれぞれお話があれば研究者にも伝わるというふうな運営方法は十分とり得るのじゃなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/20
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021・海野三朗
○海野三朗君 私が心配しますのは、原子力委員会だけでこれをやっていこうということではいけないのです。研究員、つまり研究に直接当っておる人たちの意見がこの原子力委員会に反映されるような条文になっていないと困ると私は思うのでありまして、その例は幾らも私はたくさん持っておりますが、まずこれは大学にしてみてもわかるのです。助教授の若手の人たちのやっておることはこれは第一線に立ってやっていますから、その意見がだんだん寄り集まって教授会に現われるという形になっているのです。これはもう不文律でそうなっておるのです。これだけの法文で見ると原子力委員会だけでつまり政策だけをきめてそうしてやっていこうというのでは下の方が思う通りに動けなくなる、私はその点を懸念するのであります。その点はどういうふうにお考えになっていますか。私はこの法文がこれで不備だと思うのはそれなんです。研究員と原子力委員会の委員とのそのつながりが何か明文化されていないとこれは困るのではないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/21
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022・佐々木義武
○政府委員(佐々木義武君) その点は私の考えとしましては、むしろ運用そのものの問題でございまして、法文そのものの問題ではないようにも考えられるのじゃなかろうかと思います。そこで先ほどお話申し上げましたのは、むしろ運用面で海野委員の常々御主張なすっている研究者の自由、あるいは自主性と申しますか、こういうものがかえって阻害されぬように弾力性のある運営方法をとるのが一番妥当じゃなかろうかというふうにも考えられますので、むしろ先ほど申し上げましたように、研究所の研究員の自由な研究の結果を委員の皆さんにも十分反映するようないろいろ話し合いの機会を作ったり、あるいは報告の検討会を持ったりというふうな常時接触を保つというふうな行き方が一番実効的じゃなかろうかというふうな考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/22
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023・海野三朗
○海野三朗君 どうも私はそこがはっきりしないのです。この基本計画を作成するに当って、原子力委員会は単に原子力局や科学技術庁の役人の作った案を基礎とするだけではなくて、学者の意見を聞く機会を持つ必要があると思うのであります。この法律案を見ますると研究所の研究員となっている学者の意見を基本計画中に取り入れるための手続、研究員の意向を原子力委員会に反映させる方法などを定める規定が全く見当らないのであります。一方においてこの法案は第三十六条において内閣総理大臣は研究所に対して、その業務に関し必要な命令をすることができるという監督規定だけが設けられておりまして、学者の研究について政府がそういう研究をしてはいけない、こういう研究をしなさいと命令できることになっているのであります。さらにまた三十二条の補助金の規定を見ましても、学者の研究は予算の面で縛られます関係から、時の政府の意向によって左右されなければならなくなる結果が生じてくるのであります。こうして見て参りますと研究員には研究の自主性がほとんど認められていない。そうしてただその監督権がここに法文化されているのです。これでは仏作って魂入れずという結果になるではありませんか。そこを話し合いでできるという御答弁ではあるけれども、それはごまかしですよ。それはできるものではない。これを法文の中にお入れにならなければ片手落ちではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/23
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024・佐々木義武
○政府委員(佐々木義武君) 実は先ほど少し勘違いいたした答弁を申したかもしれませんが、基本計画の作り方、これは法文上では原子力委員会の議決を経てということだけになっておりますが、それでは原子力委員会そのものが一体これをきめるときにどういうふうな手順でただいまのところ進めるかという実情を申し上げるとあるいは回答になるのではなかろうかと思いますので実情を申し上げますと、この委員会の下部機関と申しますかに参与会というのがございます。その参与会には学界も産業界の方も皆お入りになっています。それからもちろん研究所の方も理事の皆さんも入っております。そしてその参与会の下にさらに専門委員というのがございまして、これもたくさん必要に応じましてそれぞれの専門家が参加しておられます。ほとんど学者の方が多いのでありますが、そういたしまして、問題によりましてこの専門委員の皆さん、あるいは大局的な問題であればその参与会ということでそれぞれ議論を戦わせまして、そうして十分この原子力研究所の意向、あるいは研究成果というものが反映できるようにその参与のルートを通じましてこの基本計画が作られる、こういうような格好になっておりますので、ただいまの参与の方たちも研究所自体の参与、あるいは顧問と申しますか、そういう方たちがほとんど大部分の方がまたこの原子力委員会の参与にもなってございまして、両方兼ねている方がほとんど大部分でございます。そういう関係もございまして、少くともこういう基本計画を作る際には十分研究所の意向というものは織り込んで作り得るものだというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/24
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025・海野三朗
○海野三朗君 研究所の意向というものを原子力委員会に反映させる方法などを定める規定が全く見当っていないのです。その点はどうお考えになりますか。規定ができていない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/25
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026・佐々木義武
○政府委員(佐々木義武君) これは先ほど申しましたようにむしろ運用そのものの問題でありまして、法律でございますから研究所の意向を尊重すべしというような条文になりますが、別にそういうものを作らんでも基本法で明確な趣旨が出ておりますし、またその基本法に基きましてこういうかくのごとき法律ができてございますので、そういうところはむしろ基本法の精神をくんで、運営でこれをやっていくといういき方の方がよいのではなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/26
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027・海野三朗
○海野三朗君 それは御答弁がごまかしのように私にはみえるのですが、研究所の意向を原子力委員会に反映させる方法、それをきめる方法が全くここに見当っていない。運用のその方法よろしきを得ればよろしいじゃないかとあなたが言われるけれども、どうもそれは私は納得できないのでありますが、あなたは納得していらっしゃるんですか。それで研究所の意向を原子力委員会に反映させる方法を定める規定が全くこれに載っていないじゃないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/27
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028・正力松太郎
○国務大臣(正力松太郎君) ただいま海野委員の申された御意見ごもっともでございますが、これは私どもはこういう考えでおりますので、基本法に研究の自由というふうに大きくやっておりますから、それであるいは十分尽きるのではないか。ただこれを運営する、研究自由にしてあるけれども、根本方針だけはどこがとるかきめなければならない。それでその中心は原子力委員会だと、研究は自由なんだと、しかしながらこの中心点は、原子力委員会にあるんだと、こういうことにしまして、しかし委員会にあるにしても、この委員会は万能でありませんから、それこそ衆知を集めなくちゃならぬということで、それで先ほど佐々木局長が申し上げましたごとく、委員会はさらに参与という学者のグループも作る、さらに専門委員というものを置いて、そうしてそのほかさらに学術会議に対して、政府は諮問をするということにしておるし、それからさらにまた御承知の通り、産業会議というので民間の意見、また民間の学者の意見も聴取するというふうにして、皆聴取しておりますが、要するに根本は、研究は自由であると、その中心は原子力委員会だと、そうしてその原子力委員会は、今いろんな点において衆知を集めておるということでありまして、決して委員会は専行であるわけじゃない、また学者の意見は一つも束縛しておらず、十分に研究させるようにするつもりでこの法案をこしらえたつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/28
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029・海野三朗
○海野三朗君 国務大臣のお気持はよくわかりまするが、基本法を定めてあるからとおっしゃるけれども、この個々の法案の中には、それが研究員の意向を原子力委員会に反映させるその方法を一つもきめてないのです。それでありますから、ここに非常な疑義が生じてくるので、この点を一つはっきりさせておいていただかなければならないと思うのでありますが、研究員の意向を原子力委員会に反映させる方法、どうしてやっていくかということがその規定が全く見当っていなくて、そうして総理大臣は、「研究所に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。」これは当然なことであります。これはもう当然なことでありますが、ここに当然なことを監督規定がちゃんと設けられておる、それよりももっと当然でなければならない研究員の考えが、原子力委員会に反映させようとするその規定が抜けておるということは、これはどうしても片手落ちではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/29
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030・正力松太郎
○国務大臣(正力松太郎君) 先ほども申し上げましたごとく、研究の自由をやっておりまして、原子力委員会中心だと、そうしてやれば研究の自由であるということは当然だと思いますので、私はこれは明文でなくてもやれると思いまして、この点は海野委員の趣意をよく実際上に表わしますから、その点は一つおまかせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/30
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031・海野三朗
○海野三朗君 総理大臣の監督規定が設けられておる、従って学者の研究については政府が、そういう研究をしてはいけない、こういう研究もしろと、こう命令ができるということになっておるのです。それからまた三十二条の補助金の規定を見ましても、学者の研究は予算の面で縛られます関係から、時の政府の意向によって左右されなければならなくなる結果が生まれてくるのではないでしょうか。私はその点をおそれるのです。どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/31
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032・正力松太郎
○国務大臣(正力松太郎君) そういうことはないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/32
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033・海野三朗
○海野三朗君 この監督権が設けられてありますから、当然そういうことをしてはいけない、こういうふうにしろというて、研究者に命令をすることができるようになっているのであります。それを私は言うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/33
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034・正力松太郎
○国務大臣(正力松太郎君) 私は、大方針だけは委員会できめますので、そしてその方針のもとにやることは自由になっておりますから、これで十分御趣意のような目的が達せられると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/34
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035・海野三朗
○海野三朗君 そうしますと、この、そういう際にそういうことによって、つまり監督の規定が強化されておるということのために、学者の研究が阻害されるおそれがあると思うのでありますが、そういう点はどうなんでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/35
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036・正力松太郎
○国務大臣(正力松太郎君) 決して阻害されるようなことはないと信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/36
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037・海野三朗
○海野三朗君 まあ正力国務大臣がおられておやりになるんであれば、それはその時代はいいかもしれませんけれども、末長くどうこうということを考えてみまするときに、ここに非常な危険性をはらんでおるのであります。つまり仏作って魂入れずという結果になりやすいのだということを私は非常におそれる。なぜおそれるかというと、総理大臣が非常な権限を持っておりまするから、研究の自主性ということがうたってない、従ってその研究はお前やる必要ないのだ。いやこういうことをやれといったって、研究者の心理というものは決してそれに盛り上ってくる気持がわいてこない。自分のきらいな、自分の研究したいと思う方面でない別の方面をやれと言われたって、人間の心にくいは打たれないと同様に、どうしたって身が入らなくなってくるのです。私はその点をおそれる。監督の強化のみを法にうたっていて、そうしてその自主性が認められていないということは、この法案の大きな穴である、欠陥であると私はこう思うんですが、国務大臣はどんなふうにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/37
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038・正力松太郎
○国務大臣(正力松太郎君) 私はこの規定でも御趣意に沿うと思うておりますけれども、万一そういうことの起った場合には、あらためてもう一ぺん考えたいと思っておりますから、今はこれでやり得ると思っておりますから、どうぞこれで御了解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/38
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039・海野三朗
○海野三朗君 私はそれで非常におそれますということを申し上げたそのわけは、まあ理研にしても同様であります。理研のお話で今ちょっと御参考のために申しますが、今は故人となりました仁科芳雄君、あるいはサイクロトロンから原子核の分裂については、アメリカに決して劣っていなかったんです。そうしてそのサイクロトロンを作りますときに、アメリカの学者と相談して、この理研のサイクロトロンと同じ大きさのものを作ったのであります。ところがお金がないために三十万円しかあの当時出してやれなかった。ところがその当時アメリカはすでに三十億ドル使っておった。その結果はどうなったかというと、向うから原子爆弾が吹っ飛んできた。ところが核の分裂は、そういうことは仁科君はすばらしい学者であり、そんなことは百も承知しておる。承知しておったけれども金がないためにできなかった。
当時の政府はどうであるかというと、そんな研究は、核の分裂なんかはやることはないのだ。殺人光線のようなことを考えて、そうして最も有効に国防に役立たなければならないという軍部の意向であって、軍部がその当時にいわゆる監督権と申しますか、実力を持っておったものでありますから、軍部がそういうふうな考えを持っておりましたから政府は従って金を出さない。出さなかったからあたら学者が指を食わえてあのありさまを傍観するにすぎなかったのであります。こうして考えますと研究者の自主性というものは、何ものよりも尊重せられなければならない。
私はこの前も申し上げましたように、この研究というのは、政治、経済の研究じゃありません。自然科学の研究でありますから、どんなことをやらせたって決して国が困るようなことは出てこようはずがないので、また科学の本来の使命から考えましても、平和的利用に持っていくのが科学者の使命でありまするから、これにまかせなければならないし、またまかせた以上にはそのヒョウタンからこまが出るか、何が出るか、全く予想もつかないところのすばらしい世界を生み出すところの能力を持っておる研究者、その研究者が立案するところのものには国をあげてこれに従っていくべきものである、それでこそ初めて科学が十分進歩するものである。で、時の監督権のみを強化されておって、研究の自主性が認められていないという点から申しまするというと、この法案というものは点数をつけてみればあまりいい点数をつけられないんじゃないか、まあせいぜい六十五点ぐらいの点数のように思うのでありますが、政府から天下り的に示される、原子力の政策を押しつけられて、しりをたたかれて、与えられた研究のテーマに従事させられるロボット、いわゆるロボット化してしまっては研究者の使命を果すことができないのであります。つまり政府から見ますれば、研究者というものは人夫か奴隷のような存在にしかすぎなくなってしまうじゃありませんか。私はここに研究の自主性というものを叫びますゆえんのものは、この自主性を尊重しなければ決してすばらしいことが生み出てこないのです。私はそれで強く再三再四正力国務大臣に迫るわけでありますが、この自主性をうたっていない、これはとんでもない大きな穴なんです。衆議院は何をしておったか知りませんけれども、失礼ながら衆議院の連中で研究をやってきた議員は一人もいない。私はこの研究に三十有余年命をささげてやってきましたから研究者の気持がよくわかるのであります。そこで昨日の朝日新聞に湯川君のことが出ておりましたが、政治的考慮にいや気がさしたのだというようなことや、それから自分の身体が政治的に扱われることはやり切れない気持だというようなこと、これを私は思いますときに、権力の方が先に立って、研究者の自主性、最も尊重しなければならない研究者の自主性ということが妨げられるというところのおそれを湯川君は持っておるからこういうふうな態度になったと私は思うのであります。この湯川君にもこの間国務大臣と一緒に会合をいたしました席において、湯川君、それから有澤廣巳君、それから藤岡君に言いましたのは、私は何も要求はないけれども曲学阿世の徒になってはならないのだとこれだけははっきり言った。湯川君、ノーベル賞をもらったからといって曲学阿世の徒になってもらっては困る、あくまでも科学者の使命を果してもらわなければ困ると申しておいたのでありますが、この平和的利用とだけなっておりますけれども、どうもこのあり方を見ますると、研究者の自主性ということが認められてないように思う。車に乗っておって、その車がどこへ行くのかわからぬというおそれを多分に持っておるように思う。それで湯川君などもこういうことを申しておるのではないかと私は思うのでありますが、こういう点について私は大臣にお伺いしたいのであります。ほんとうに政府がわが国における原子力研究の飛躍的発展を真に望まれるならば、第一線にあって研究に専念する学者の意見を政府が謙虚に聞き入れて、専門家である研究員の考え方を基本にして原子力の基本計画を立案すべきものであると私は信ずるのでありますが、国務大臣及び局長はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/39
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040・正力松太郎
○国務大臣(正力松太郎君) ただいまの海野委員の尊き三十年の体験から出た科学者としての御意見を拝聴しまして、まことに私どもも御同感にたえません。それからまた仁科博士の話を聞いてもお話の通りであります。しかしその当時より今日はだいぶ進んだつもりであります。仁科博士のときは、とにかくアメリカの兵隊があのサイクロトロンを海に捨てたのであります。そして仁科博士は泣いたのであります。しかしそのときまでは科学が必要といっても尊重することは今より薄かった。今度は科学者を尊重しなければならぬということで御協力によって技術庁というものができ、科学者の優待も考えております。しかし何分日本は財政が苦しいものでありますから、優遇の方は思う通りにいかないのは残念ですけれども、今は一歩進めて科学者を優待し、科学技術者の意見も尊重しております。それから先ほども申し上げたごとく研究の自由ということは原子力のこの問題についてももう劈頭に言うておる。この劈頭に言う以上は、この精神はどこどこまでも尊重していきまして運用の面において御趣意の通り必ず実行いたしますから、この点は御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/40
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041・海野三朗
○海野三朗君 もう一つ私はお伺いしたいのでありますが、科学の成果、特に原子力研究の成果が今後の産業のあり方に革命をもたらすものであることは申すまでもありませんが、近来わが国における実業家、政治家、役人というような人たちの科学技術に対する考え方を見ますというと、いわゆるヤジウマ的でありまして、ともすれば近視眼的になるのです。直ちにもうかるか、もうからないかということがまず先決問題で、もうかるならばすぐやろう、もうからない研究はやめようじゃないかというようなことは近視眼的であって、非常に誤まりと思うのです。基礎的の研究というものは実用に速いもののように思われますけれども、この基礎的研究が最も大事なのでありまして、今申しました仁科君があのサイクロトロンでもって核分裂をやったあの当時にはもう非常な反対を食ったのです。ところがあにはからんや、アメリカが一歩先んじて原子爆弾を吹っ飛ばしてよこしたというようなものでありますから、この研究者の自主性の尊重ということを第一にどこかにこれはうたっておかなければならぬということを私は痛感するのであります。幾ら基本法の中にそれは書いてあるからいいというようにお考えになりましても、どうも私は何かにこれを書き残しておかなければならないじゃないか、こんな気がするのでありますが、局長はこれで運営よろしきを得ればいいというふうにお考えになって、ただそれだけのお考えでありますかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/41
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042・佐々木義武
○政府委員(佐々木義武君) 先ほども申し上げました通り、実は原子力局というものはございますが、私たちは努めて委員の皆さん、参与の皆さんの御意向を十分お聞きし、そしてそれを事務的に整理をするというのが私たちのむしろ任務じゃなかろうかというふうにまで思っておるのでありまして、決して監督規定があるからといって権限をもって研究所の研究に制肘を加えるということは実は毛頭考えておりません。従いましてさっき申しましたような原子力委員並びに参与の皆さん、あるいは専門委員の皆さん等は研究所のほとんど首脳部と申しますか、あるいは顧問等に御就任なさった方が多いのでございますので、その運用を十分にしていくならば、海野先生のおっしゃられる点、また御懸念になっておる点は十分解決するのではなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/42
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043・海野三朗
○海野三朗君 私はまだもう少しお伺いしなければならないのが残っておるのでありますが、この際この法案にやはり関連することであると思いますから、国務大臣である正力さんに私はとくとお伺いしたい。それは何であるかと申しますと、技術者の冷遇問題です。これは私はまず通産当局、経済企画庁、あの方面をやかましく攻撃したのでありますが、官庁方面におきまして技術者と事務官とは格段の差があります。同じ大学を出て十年たつというと二級ほど違ってきます。それからまた技術者は一般職につけないというような内規を作る、実にけしからぬところの規則を作っておるのです。こういうことが、みんな今までの事務官が高文をとった連中ばかりが官房長をやっておるから、そういう内規を作ってやっておる。ところが、その結果はどうなっておるかと申しますと、技術者というものは本省に入ったら課長にもなれないのだからやめろ、決して入るものではないということに、不文律になっている。こういうことが、この研究者の方、つまり研究の方に向く人がだんだん優秀な者が向きにくくなってくる。それで、これは根本官房長官にもこの聞きてもらいまして、激しく私は詰め寄ったのでありますが、本省方面においても技術者を冷遇し、つまり差別待遇をしておる、そういうことに対してはあなたが閣僚の一人でいらっしゃるから、内閣の方針としてはどういうことにおやりになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/43
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044・正力松太郎
○国務大臣(正力松太郎君) 先ほどもちょっと申し上げました通りに、今までは技術者というものに対して特に尊重する程度が少かったのであります。それで、今度はさっき申し上げた通り、技術庁というものができたようなわけでありまして、そうして技術者を特に普通の文官とは変りないことにいたしておりまして、現にその証拠として申し上げまするのは、今度技術庁に原子力局ができます。その局に次長というものをおきます。この次長は技術者から採用します。普通ならば必ず技術者でない者が当るのですが、原子力局が現に技術者を次長に当てます。で、そういうふうで、現実に私はそういたしますから、政府の方針もやはり同じく今までとは違って、技術者というものを優遇するものと私は信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/44
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045・海野三朗
○海野三朗君 技術者は一般職につけないというようなやはり内規があるようでありますが、あれはどうなんでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/45
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046・正力松太郎
○国務大臣(正力松太郎君) そういう内規は私はないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/46
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047・海野三朗
○海野三朗君 いやいや、それはないとおっしゃるけれども、事実そうなっているのです。一般職につけないという内規、内規ですから表向きに出されない規則なんです。ごまかしなんです。実際そうなんです。そうでありますから、今日まで通産省の官房長に技術者がなったためしがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/47
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048・正力松太郎
○国務大臣(正力松太郎君) ちょっとお答えしますが、今度原子力局に次長というものを技術者から採用しますから、内規があったらそれはできぬわけでしょう。そういうわけでありますから御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/48
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049・海野三朗
○海野三朗君 その原子力局は正力国務大臣のごとき明敏なる頭をお持ちになっていらっしゃる方がおやりになるのでありますから、そういう点は心配することはないと思いまするが、通産省とか、他の方面を見ますと、官房長なんというものは大てい技術官はなれないことになっている。しかも通産省などにおいては、重工業局長というのは、これは技術者かと思うとみんな事務官、石炭局長もみんな事務官、どうもそういうふうなあり方は、これは通産省全体といたしましても、通産行政がなっていないということはそこから出てくるのですよ。
〔理事阿具根登君退席、委員長着席〕
一とき事務官のようには技術官は運ばないからだめだというふうに考えておりますが、大きな損害をこうむっておるわけであります。私はそういう点ではこの技術官をもっと優遇しなければならないということを強く主張したいと思うのでありますが、今日の通産行政の手おくれはどこからきているかというと、技術官を差別待遇することにあるのですよ。私はそう思いますが、政務次官はいかがお考えになっていらっしゃるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/49
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050・川野芳滿
○政府委員(川野芳滿君) その問題につきましては、たびたび本委員会におきましても海野委員からおしかりを受けた点でありますが、そういう関係で実は今回の技術庁におきましても、相当技術官出の方々の優遇をいたす、こういうふうなことでございまして、海野委員の御趣旨はある程度実は達したのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でありますが、なお将来におきましても、そういう点については、さらに技術官の優遇の点等につきましても、できるだけ考慮したい、こういうふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/50
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051・海野三朗
○海野三朗君 いや、政務次官はそれの弊を認めていらっしゃるでありましょうが、今日各省をながめてみますと、通産行政がまるでなっていない。なっていないと申し上げますのは、私が理由をあげて申しましょうか。たとえば鋳物銑の問題ですよ。今鋳物銑がどれくらい使われているかと申しますと、ドイツあたりでもあの使用量というものは急ピッチに上昇している。ところが鋳物銑に対する先の見通しがついていないから、今日の需要者の三割か四割くらいしか与えていないのであります。これはなぜかというと、専門の技術者を重要視していないからです。事務的にばかり通産省がやっているから、こういうへまをやる。そうして日本全国の鋳物業は、今青息吐息なんであります。あるいはセメントの問題にいたしましても、あるいは繊維の問題にいたしましても、また機械工業にしても、困ってくるというと、石炭合理化法案なんというものでごまかす。また近くいろいろな私は合理化法案が出てこなければいかぬのじゃないかと思いますが、それはなぜかというと、通産行政ができていない、その根本は、重工業課長が百二十二もありながら、技術官の課長というものは、たった十人きりしかおらない、一割しかいない。技術官を最も優遇すべき通産省がそういうようなやり方、つまり技術者を優遇しないということ、私はガンがそこにあると思うのであります。過日から再三その点を申し上げておるのでありますが、技術庁はもちろんこれは技術者でなければいけません。しかし通産省方面なんぞについても、もう一段と現内閣時代において新しい考えのもとに、技術者をもう少し優遇していただかなければ……。原子力の研究所ができるに当りましても、技術者をもう少し優遇して下さらなければ、優秀なる人間が集まってこないようになるのではないか、私は懸念するのであります。こういう点についてなお政務次官の御決意のあるところを一つ承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/51
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052・川野芳滿
○政府委員(川野芳滿君) 私の決意は、先般も実は海野委員にお伝えを申し上げたつもりでございますが、御趣旨に沿うように今後さらに努力をいたしたい、かように存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/52
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053・三輪貞治
○委員長(三輪貞治君) 速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/53
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054・三輪貞治
○委員長(三輪貞治君) 速記をうけて下さい。
これをもって本日の質疑は終了いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X02619560427/54
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055・三輪貞治
○委員長(三輪貞治君) 本日の委員会はこれをもって散会いたします。
午後四時九分散会
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