1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年五月二十九日(火曜日)
午後二時三十八分開会
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委員の異動
五月二十八日委員西川彌平治君及び後
藤文夫君辞任につき、その補欠として
川村松助君及び小林政夫君を議長にお
いて指名した。
本日委員堀末治君、松澤兼人君及び小
林政夫君辞任につき、その補欠として
斎藤昇君、大和与一君及び後藤文夫君
を議長において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 松岡 平市君
理事
伊能 芳雄君
宮澤 喜一君
森下 政一君
小林 武治君
委員
井村 徳二君
大谷 贇雄君
川村 松助君
佐野 廣君
斎藤 昇君
横川 信夫君
小笠原二三男君
加瀬 完君
永岡 光治君
中田 吉雄君
大和 与一君
河野 謙三君
後藤 文夫君
野田 俊作君
鈴木 一君
衆議院議員
鈴木 直人君
国務大臣
国 務 大 臣 太田 正孝君
政府委員
自治政務次官 早川 崇君
自治庁次長 鈴木 俊一君
自治庁行政部長 小林與三次君
事務局側
常任委員会専門
員 福永与一郎君
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本日の会議に付した案件
○地方自治法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○地方自治法の一部を改正する法律の
施行に伴う関係法律の整理に関する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/0
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001・松岡平市
○委員長(松岡平市君) これより会議を開きます。
地方自治法の一部を改正する法律案、地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案、以上両案を一括して議題に供します。これより質疑を行います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/1
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002・松岡平市
○委員長(松岡平市君) この際委員の異動がありましたから御報告いたしておきます。二十九日、委員松澤兼人君は辞任せられ、新たに大和与一君が委員に任命せられました。同じく委員小林政夫君が辞任せられ新たに後藤文夫君が委員に任命せられました。同じく委員堀末治君が辞任せられ、新たに齋藤昇君が委員に任命せられました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/2
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003・松岡平市
○委員長(松岡平市君) 質疑のおありの方は、順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/3
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004・小笠原二三男
○小笠原二三男君 この前小林さんにお尋ねしたんですが、第二条、追加になっております第五項の三号で、「市町村の事務の処理に関する一般的基準の設定」という点についてお尋ねした際に、この「市町村の事務の処理に関する一般的基準の設定、」とは、何か限界がある範囲の基準なんであって、一般的などの市町村のいかなる事務についても、一切の基準を決定することではないのだという話でしたが、そういうことはどこで読みとれるか。そういう点、もう少し説明願っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/4
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005・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) これは、今度の改正は、自治法の二条の二項、三項を受けて規定いたしておるわけでございまして、その点は、この五項をごらん願いますと、「都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、第三項に例示されているような第二項の事務で云々」のものを処理する。それでございますから、第三項に一応例示がございます。その第三項の例示というのは、第二項の事務を例示するとおおむね次の通りであるといいまして、第二項を受けておるわけでございます。第二項は、「普通地方公共団体は、その公共事務及び法律又はこれに基く政令により普通地方公共団体に属するものの外、その区域内におけるその他の行政事務で国の事務に属しないものを処理する。」こういう限定がございまして、要するに府県であれ、市町村であれ、この二項の範囲内で事務を処理する権能があるわけでございます。そこで、その一つがいわゆる「公共事務」でありますから、府県なら府県内における各種の公共事務が一つ。それからその次が「法律又はこれに基く政令」で、いわゆる委任事務といっておりますが、具体的に府県の事務としてはっきりされたものが一つ。それからその次が、三番目に、いわゆる「行政事務」といったものがあるのでございます。それでございますから、その範囲に属する事務について、府県と市町村との事務の配分を分けたわけでございます。そこで、今の三項は「一般的基準」と書いてありますが、これは、衆議院の方でもずいぶん議論になった問題でありますが、市町村のたとえば職員の数とか機構などというものの基準をこれできめられやせぬか、そういう疑いがあるじゃないかという問題があったわけでございますが、そういう問題は、そもそも府県の権能じゃないのでございまして、市町村の公共事務ですから、そういう権能はない。しかしながら、市町村がいろいろな行政活動をやるにつきまして、府県は、何と申しますか、統制条例と申しますか、その行政事務の統一をはかるために、市町村の行政事務について必要な規定を設ける規定が現にあるわけであります。これは、たとえば自治法の十四条の条例の規定がございますが、十四条の三項をごらん願いますというと、都道府県は、市町村の行政事務に関し、条例で必要な規定を設けることができる。市町村が住民を統制するようないろいろな事務について、あまり市町村ごとにばらばらになっちゃ困る。そういうものをまとめる。つまり統一的な基準を府県でやり得るという実は前提で、現在三項の規定があるわけでございます。つまりそういうようなものがこの自治法の二条の二項で府県の事務になっており、その他それぞれの個別法におきましても、こういう類の規定がございまして、そういうこと値、府県といたしまして、市町村の事柄についてもやり得る範囲のものにつきましてはこの規定でやり得る、こういうことでございます。この規定によって市町村のことは何でもできる、こういうことにはならないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/5
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006・小笠原二三男
○小笠原二三男君 だから、この条例の制定及び罰則の委任等の条項で、現行法としてきまっておるものがありながら、なぜここへ取り上げて、こういうものを設定するという条文を明らかにしておくというのは、その範囲はどういうものですか。今度は具体的には……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/6
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007・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) これは具体的に、これによって具体の事務の中味をこの法律で示そうという気はございませんのでございまして、いやしくも市町村の行政事務について統一的な基準を作る必要があれば、府県としてでもこれは作り得ると思うのでございます。その事務の中には、現在でも限定されていないわけでありまして、現在そもそも普通地方公共団体の事務は、二条で包括的に書いてあるわけですから、限定がないわけでございます。ただ包括的に書いてあるのを、府県の段階と市町村の段階だけで、府県はこういうもの、市町村はこういうものというものをおおむね類別しよう、こういう関係で今度規定を作ったわけですから、それぞれ府県は具体的のこういう事務とこういう事務をとるという意味の限定的な意味はここにはないのでございます。市町村との比較上、府県に行うべき事務を例示いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/7
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008・小笠原二三男
○小笠原二三男君 どうもピンとこないのです。現行法の十四条では、「都道府県は、市町村の行政事務に関し、法令に特別の定があるものを除く外、条例で必要な規定を設けることができる。」こうある中の今改正しようとする
「市町村の事務の処理に関する一般的基準の設定」というのが一部なんですね。基準の設定もあるだろうし、行政事務そのものの具体的な扱い方を条例できめる場合もあるだろうし、いろいろあるだろうが、それは現行法で規定されている。にもかかわらず、この「一般的基準の設定」というものだけを抜き出して、ここに明文化しておかなければならない根拠、理由というものがわからないというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/8
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009・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) それは要するに五項の各号に通ずる一般的な問題と関連するのでございまして、要するにこの五項に掲げました問題は、都道府県というものが市町村との比較においてどういう事務を処理するか、そういう一般的な原則を掲げたわけでございます。その掲げた一般原則を四項に分けて、一つはそういう広域的な事務、あるいは統一的な処理を要する事務、あるいはこの連絡調整に関する事務、こういうような式に大づかみに分類をしたわけでございまして、その分類をした連絡調整に関する事務の例示の一つとして、そういう市町村の事務の調整をはかる必要のあるものがあり得るということをこれは例示しただけなのでございます。それでございますから、この例示の範囲をどれだけまでこの法律に書き上げるかという問題は一つあるのでございますが、ここには、いろいろ各省とも相談をして、最も特長的な問題を掲げておこうじゃないかということで、例示として書いたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/9
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010・小笠原二三男
○小笠原二三男君 だから、書いたことはいいのだ。書いたことはいいが、そんなこととはかかわりがないわけですよ、この「市町村の事務の処理に関する一般的基準の設定」というのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/10
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011・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) いや、その書いたこと、つまり大づかみに四つに、連絡調整の事務というふうに分けて書いたから、そういう連絡調整に関する事務といっても、これは抽象的じゃなかなかわかりができない。そこで、それをさらに上にある程度の事務を例示をする必要があるのじゃないか。そういうことによって、府県の仕事というものをなるべく具体的に浮び上らせよう。しかし、浮び上らせようとしても、すべての府県の事務を全部制限列挙することは不可能でございますから、その中で一番特長的な、普通に行われそうな問題をここに例示することにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/11
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012・小笠原二三男
○小笠原二三男君 これは、ただ例示したというにとどまることであって、現行十四条のそれとは重複しておるものではない、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/12
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013・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) これはそういうことでございまして、重複しておるわけじゃないのでございまして、この例示は、要するに第二条の第二項のワク内に入ってくる事務がこれはございます。第二項のワク内に入ってくるのは、十四条もそのうちの一つだし、その他いろいろな各種の法令で府県の事務として特定されておるものもあるし、それからそれぞれの公共事務として一般的に入ってくるものもあるし、各種各様の事務が第二条の二項にあるわけでございます。それで一般的にある第二項の事務を府県と市町村について、性質上府県らしきもの、それから市町村らしきものに分けよう、こういうことでございますから、重複とか、そういう問題は全然起らないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/13
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014・小笠原二三男
○小笠原二三男君 そうすると、この市町村の事務の処理に関する一般的基準の条例ができたとしましてその条例と違う市町村の事務処理上の規定というものが具体的に市町村にある場合には、やはり現行法のそれのごとく、当該市町村の条例に無効とすると、こういうことになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/14
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015・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) その通りでございまして、その事務が市町村の行政事務に関する事務として具体的に作る場合は、十四条の規定に基いて作ることに具体的になるわけでございますから、十四条の規定が当然に働く、当該条例につきましては働くということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/15
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016・小笠原二三男
○小笠原二三男君 それから、具体的な事務について、こうするああするということを規定するのではなくて、一般的基準という形で、この包括的に一つのめどを定めておくというようなことも、やはり現行法の十四条の精神とは違反しないということですか。現行法の十四条においても、一般的基準の設定というような原則的なことをきめて、これを市町村に強制して行くというようなことが許される立法の精神でできておるものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/16
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017・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) これは、十四条をごらん願いますというと、「市町村の行政事務に関し、」と書いてありまして、むしろ市町村の行政事務については、どういうきめ方をどうしようが自由にむしろなっておるわけであります。しかし、われわれの考え方としましては、府県は、いやしくも市町村の行政事務について規定をするとすれば、そういう細目のことをきめる必要はない、むしろ一般的な基準だけを必要ならきめて、あとの細目のことは市町村にまかすべきだ、こういう趣旨がこの二条によってむしろ現わされておるとお考え願っていいじゃないかと思っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/17
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018・小笠原二三男
○小笠原二三男君 この前もお尋ねしましたが、指定都市においてもやはり府県が上にある、と言うと、これまた誤解を受けるかもしれませんが、府県が一般的基準を定めて、指定都市というようなものにまでこれを適用していく、こうい形がこの改正法だけではまあ考えられるわけでございますが、指定都市は別になるわけですか。やはりこういうふうに府県が一般的基準をきめ、それによって指定都市といえどもこれに従って事務処理をする、こういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/18
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019・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) この第二条といたしましては、指定都市とかかわりなく、すべての府県、市町村に通ずる一般的通則でございます。しかしながら、指定都市につきましては、今度一章を設けまして、特別に特例を設けるわけでございますから、指定都市について特定の事務については市みずからやる。たとえば営業三法に書いてありますような条例ですね、営業規制の条例は市の権限に、市でもある程度作り得るという建前を、特例を設け得るという建前を今度の特例でやろう、こういう考えでございます。そういうことでございますから、今度の特例によって、これに対するさらに例外が出てきて、指定都市は指定都市として、普通の市町村と違った地位を府県に対して持つということになるのが今度の特例の趣旨でもあり、また精神でもあると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/19
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020・小笠原二三男
○小笠原二三男君 特例によって委譲された事務については、当然そうなると思いますが、委譲されない事務についても、結局指定都市の一般的な行政事務ですよ、それについても、やはり府県は他の市町村同様に基準をもってやらせると、こういうことになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/20
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021・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) それは、そういうことになると思います。これは市町村の問題で、指定都市については、特定の事務について特例を設けようというのがあの事務でございますから、あの事務がさらに十分であるか不十分であるかということの一つの立法論が、これは一つあり得ると思いますが、今度の場合におきましては、ああいう住民の生活に密接した保健衛生とか建築とか、そういった事務について多くの特例を設けるという建前になっておりまして、それ以外の事務につきましては、一般的な原則が働く、こういうふうに御了解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/21
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022・小笠原二三男
○小笠原二三男君 それで、実際上特殊な性格をもつ都市が一般の町村等と事務処理をする場合に、何と申しますか、適切であるとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/22
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023・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) これは結局、指定都市のような大都市が現在府県に対してどういう地位を持っているかという問題で、これにつきましては、もうすでにほかの法律で、ある程度指定都市自身が独立の権限を持っているものもこれはあります。たとえば道路などは、指定都市がやっているわけでございますから、その他の法令で十万以上とか、そういうような段階で、ある程度例外を設けられている行政事務もかなりあるわけでございます。それから、今度法令できまっておる、非常に顕著な、市民生活に縁のある都市的な行政というものも、ある程度大巾に委譲したわけでございますから、このあとに残るとすれば、農業関係とかその他の行政、それは相当あろうと思いますが、それにつきましては、とりあえずこの形で動かして行きたいと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/23
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024・加瀬完
○加瀬完君 今、小笠原委員の市町村の性格の質問に関連がある問題でありますが、都道府県の性格といいますか、今度の第二条の改正によりますと、今度府県の性格というのが非常にあいまいになっておる、こういう批判が一部にあるわけです。たとえば府県の固有の事務というものが例示されておりますけれども、これも非常にあいまいである。一方府県の財政的措置として、この前から私が述べておるのでありますが、行政規模の縮小という方向がたどられておりますし、そうしてさらにまた、府県の固有事務というものがこの前よりも明確でなくなって参る。そうして市町村との競合あるいは指定都市との競合を府県に避けさせるということになりますけれども、府県の性格があいまいであれば、競合が必然的に生じてくるのではないか、こういうことも考えられるわけであります。特にこの前の自治法の改正案には補完事務ということがありましたが、これはなくなったわけであります。今度は指定都市というものが一応取り上げられて参りました。指定都市と府県というものは非常に競合する場面が多いわけであります。こういう点で、それじゃ府県の性格というのは何だということになると、広域行政ということがうたってある。この広域行政というのは一体何だということになると、総合開発計画でありますとか、あるいは治山治水事業、電源開発、利水事業、林産資源や水産資源、こういった天然自然の保全、こういったものがあげられておるわけであります。しかしこれは、今例示されたような広域行政としての府県のやるべき仕事というものは、国土計画的な性格というのが非常に強いために、国との関連あるいは府県相互の関連、こういう関係に立たなければ、なかなか実際の府県行政というものはやっていけなくなるというふうな傾向を持つものではないか。そうなってくると、府県自体でやる固有の事務というのは一体何が残るのか、こういう問題も起ってくるわけでありますが、これを自治庁の方はどうお考えになっておるか。
〔委員長退席、理事伊能芳雄君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/24
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025・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) 今、加瀬委員のお尋ねでございますが、今度の改正は、むしろ都道府県のそういうまあ地位というものと市町村の性格を明確にしようというのが基本的な考え方でございまして、この規定ではなお不十分だといういろいろの御議論があり得ると思いますが、かりに不十分だといたしましても、これによって大いに府県の地位というものが私は現行の規定のままから見ればきわめて明瞭になっているのではないかと思うのでございます。そこで、そうした府県というものの職能を仕事の面から明確にしようとしてこれを設けたのでございますが、今補完事務というお言葉もお使いになられましたが、これは、いわゆる学者も補完事務と言っておりますし、われわれもそういう言葉を通常使っておるのですが、ここに書いてあります、一般の市町村が処理することが不適当だと認められる程度の規模の事務、これはわれわれの考え方からいたしますれば、いわゆる補完事務に当るものと考えるのでございます。一般の市町村ではやりにくい。しかしながら、非常に力のある市町村ではやれるかもしれぬが、一般の市町村ではやりきれない、第四号に掲げてある事務がみんなそれでございまして、そういうものは、当然府県がこれは自分の事務としてやるのが当りまえだ、こういう考え方が一つあるわけです。それとともに、今仰せられましたような、市町村の区域を包むような広域的な行政は、これは府県がやるのが当然ではないか、市町村としてはてんでんばらばらにやってやれる仕事でもなし、また、やることが適当な仕事でもないのでございまして、それは、この府県が府県の仕事として自主的にやるのが当りまえじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。もっとも、そのいわゆる広域事務でも、県のレベルをこえるような特殊な大きな仕事があろうと思います。これは、国みずから、国自身の仕事、直轄の仕事として特殊なものはやってしかるべきだと思いますが、それ以外のむのは、まず府県の段階で、府県のいわゆる固有の事務として処理するのが当然だという気持をこの一号に現わしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/25
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026・加瀬完
○加瀬完君 第四号のいわゆる例示されております、一般の市町村の規模においてはできなくて、府県にさせた方が適当であろうという事務は、市町村が拡大されて参りまして、あるいは町村にいたしましても、町村合併などによりまして規模が大きくなってくるわけでありますから、四号に掲げました事務というのは、将来だんだんと——現状の市町村では行えないものでも、やがて市町村の事務の範囲に入ってきていいものがたくさんあると思うのです。それから一号に掲げてある内容も、市町村の地域も拡大されますから、市町村だけで、たとえば土地改良でありますとか、市町村区域内の利水事業でありますとか、こういうものは、県の単独事業というようなものが押えられる関係から、市町村独自でやらなければならないし、また、やっていけるような傾向にもなっておると思うのです。そうなって参りますと、県独自でやらなければならないものというのは、県独自のものというものよりは、むしろ県の地域を超越した広い意味の国土計画的な立場での業務ということが主体になってくるという傾向がどうしても生じてこないか、
〔理事伊能芳雄君退席、委員長着席〕
あるいはまた、ワクを府県の地域内に考えても、その府県の地域内の、たとえば開拓、干拓の問題にいたしましても、治山治水の問題にいたしましても、これは国との関連というものが、国とのつながりというものがなくてはできないというふうな仕事が府県としてよけい残ってくるのではないか。そうすると、これは、今度の改正法に二百四十六条の二でございますか、総理大臣のいわば監督権というものが一応掲げられておるわけでございますが、そういうふうな性格のものが、国の指導監督というものが、どうしても府県行政というものに入ってこなければ、府県行政そのものがやっていけないというふうな一つの宿命といいますか、性格というものを持たせられてきておるというのが、この改正法案における府県の性格ということにはならないか。こういう心配を私は持つのです。この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/26
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027・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) それは、今お話の通り、市町村が合併をいたしまして、規模、能力がだんだんふえていく。ふえてくれば、当然市町村としていけるだけ行政事務をやった方がいいのでございまして、われわれといたしましては、基本的の方向としてはそうあるべきものだと考えております。市町村でできる仕事は、できるだけ市町村にやらすべきだと考えております。しかしながら、現実の問題といたしましては、市町村が合併して、一万前後、かりに一万三、四千、四、五千になったといたしましても、その市町村でたとえばこの四号に掲げられておりますような仕事が全部処理できるようにすぐなるかといえば、なかなかそれはできない。ある部分はもちろんでき得るようになるだろうと思いますが、一般的に、できるような市町村にはとてもすぐにはなれぬと思います。たとえば高等学校一つ考えましても、高等学校が自分で経営できるようなのは、相当の規模の大都市でなかったら、実際これはできぬわけでございまして、そういう意味におきまして、第四号の事務というものも、相当これは広く残らざるを得ないと思います。それからもう一つ、第一号のいわゆる広域的な事務というものも、市町村がやれば、それは小さな土地改良とか、林道や山道はもちろん市町村でやってもらいたいと思いますが、府県道のようになったり、相当規模の土地改良事業のようなものになったり、あるいは河川にしろ、運河にしろ、そういうようなものは、なかなか単独の市町村じゃできないものがこれは相当多いのでございます。でございますから、そうした中間の仕事というものは、どうしても当分これはあるに違いないのでありまして、さりとてそういう仕事は、全部国が乗り出してやった方がいいかといえば、これもやっぱり行きすぎだろうと思います。国がやるのならば、これは相当大規模の仕事をさせるべきでございまして、どうしたって、こうした中間の、自治団体が自主的にやらなくちゃならない事務の分野というものは、これはきわめて広範なものがあろうと思うのでございます。だんだん市町村へ下りてから少くなっていくということは、これは事実ですが、また少くすべきものだと、私はそう思っております。しかしながら、現実には、大半の仕事というものは、これは残らざるを得ない、そういうふうに考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/27
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028・加瀬完
○加瀬完君 問題は、与えられたる権能の広域行政が、できるだけの府県に財源措置が講じられておるかどうか、いわゆる財源があるかどうかという問題になると思う。そこで、たびたびここで問題になりますように、現在の県というものはほとんど赤字で、政府からすれば、これは再建団体として出発をして、赤字解消をしてもらいたい対象の団体ばかりといってもいいと思う。こういう団体に対しまして、大体政府のとっておる方針は、行政規模を縮小するということと、今度の法案の中にもはっきりと目的として打ち出されておりますように、機構の簡素化による経費の節減ということをねらっておる。こうなってきて、一強対象になりますものは、県独自の単独事業を縮小しなければならないという事態、これは県の予算編成の一強問題点になっておる。で、単独事業というものをうんと押えられるような予算編成しかできないような財源しか与えられておらないところの府県にも、たとえば総合開発計画とか、あるいは電源開発とか、広い意味の天然資源の保全といったようなことを広域行政の立場でやろうとしても、これは財源的にさえぎられておって、ほとんどできないじゃないか、そうすると、こういう広域行政で定められておるものをやるとすれば、国からの補助金があったり、国と何か共同事業みたいな関係でやるものでなければこういうものはできないという現状にもなっておる。こうなってくれば、国とのつながりというものを離れて、広域事業といわれたって、府県の広域性というものを伸ばし得ないように今度の自治法案というものは形作られておるということにならないか、これでは、自治法という改正の中で、府県というものが大幅に自治権が伸張されたと言い得るかどうか、私の伺いたいのはこの点なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/28
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029・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) これは、加瀬委員のおっしゃいましたのは、まあ府県のそういう法律的な地位、権能というものよりも、そういう現実の与えられた、あるいは行使し得る権能を現実にやるためには、金が、自主的な財源が与えられなくちゃいかぬのじゃないか、こういう問題だろうと思うのでございまして、これは私は、もうおっしゃる通りだと思うのでございます。一般的な権能がありましても、個々の団体がその仕事を活発にやるためには、まあそれぞれの団体によって、必要のある所もある、必要のない所もある。かりに必要があったといたしましても、財源がなくちゃこれはやれないことは明瞭でございます。だから、そういう問題は財政の問題として、いかにして自主財源というものをできるだけ保障するか、確保するかという問題で解決すべき問題だろうと思うのでございます。それは、今日の国民経済の実情から、十二分に解決されておらぬことは、これはまあ事実でございますが、こうした法律上の、行政上の権限を一方で考えるとともに、他方において自主的な財源をできるだけ充実強化していくということをあわせて考えていく必要がこれはあると思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/29
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030・加瀬完
○加瀬完君 それで、ここできめられたような広域行政というものを府県が進めて参りますと、どうしても、一番先に私が問題にいたしましたように、これは府県単独ではなくて、府県相互間あるいは国との関係ということでなければ、この広域行政というものの意味を全うすることができないという結果にならないか。結果にならないかというのが言いすぎであれば、そういう傾向を多分に持つことにならないか、こういう心配があるわけですが、この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/30
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031・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) それは私は、この第二条の改正とはまたこれは別の問題でございまして、要するに第二条の改正は、地方公共団体の内部における、府県と市町村との事務の配分をどうするか、こういう問題を取り上げたわけでございます。今度は、それと別に、地方公共団体一般と国との間における事務の配分調整をどうするか、こういう問題が別にあるはずだと思うのでございまして、その問題を合理的に調整をするという問題点が起きてくるわけでございます。これはまあ中央政府と府県、市町村との間における事務配分の問題としていろいろ論ぜられておる問題でございまして、その問題は、個々のつまり行政法規で国がどれだけ権限を保留をするか、あるいは国みずからやるか、あるいは国が指揮監督権を保留するか、あるいはどういう形で関与するか、こういう問題として別途それぞれ解決すべき問題が少くない、そういうふうにわれわれも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/31
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032・加瀬完
○加瀬完君 昭和二十六年に、地方行政調査委員会議ですか、これの勧告によりますと、府県の性格規模というものについては道州制というものをとらない。府県は、大体人口二百万程度を押えて、府県で一応の規模を持ち得るようにする、こういう点を勧告をいたしておるわけであります。ところがその後、地方制度調査会ですかの答申によりますと、道州制をあわせ考えるというふうに変化しておる。それから府県の性格については、国家的性格を有する事務を処理させるというふうに変っておる。今度の改正案は、おそらくこの地方制度調査会の案というものに沿っておると思うのでありますが、そうなって参りますと、広域行政というものは、当然道州制というものを考えざるを得ない伏線ということに私はなると思う。湾、この広域行政についていろいろの固有事務というものを示しましたのは、一体道州制というものを考えて、政府は、答申案によれば、道州制とあわせ考えるという立場に立って、やがて道州制ということをも考えなければならないという伏線として、府県の性格に広域行政のこういう固有事務というものを入れたのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/32
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033・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) 今度の改正では、そういう問題を全然考えておりません。伏線とか、そういう気持もこれは全然ないのでございまして、要するに現在の府県と市町村というものを前提にして、その府県と市町村のあり方というものを合理的にしようじゃないか、そういう趣旨にすぎないのでございます。しかしながら、今仰せられました通り、いろいろな広域的な行政は、現在の府県の力ではとてもやり切れない。もっと広範な地域でやるべき仕事があるのじゃないかという問題が当然にあるのでございまして、そういう問題は、そもそも一体どういうやり方でやるか。現在の府県の区域そのものがいいか悪いかという別の問題としてさらに検討すべきものがあるだろうと思うのでございます。そこで、そうした問題になってくると、これは、現在の府県を前提にするというよりも、府県そのもののあり方を根本的に検討しようという、きわめて重大な基本的な問題でございまして、その問題は、地方制度調査会におきましても、これからの府県制度の根本問題として検討しようということになっておるわけでございます。それは、問題はいろいろありますが、その問題につきまして、どういう結論が出るようになるか、これはきわめて重大な、しかも広範な問題でありますので、それは地方制度調査会の根本的検討を待とうと、こういうただわれわれの考えでございます。それとかかわりなく、要するに現在の府県、市町村というものを前提にして、それぞれの府県、市町村としてのあり方を合理的に動くようにしようじゃないかという趣旨が今度の改正でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/33
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034・加瀬完
○加瀬完君 たとえば現行法においても、例をあげれば利根川関係治水事業費負担金というものを利根川関係の府県は仰せつかっておる。で、この改正案によれば、まあ利水事業と言おうか、総合開発と言おうか、あるいは治山治水事業と言おうか、こういう項目に当てはまって、たとえば利根川の関係治水事業というふうなものは、府県自体はいやだといっても、これはやらなければならない関係になるだろうと思う。お前の方は、当然これは固有事務だから、これを拒否するわけには参るまいという立場を当然政府はとって参ると思う。そうなってくると、府県なら府県の財政計画といいますか、予算計画といいますか、こういうものではやっていけない関係が生じてくるということになるわけであります。これは果してその府県だけで、府県の固有事務としてやり切れるということになるかどうか。そういう影響があるとすれば、この広域行政というものの考え方の中には、国がある程度この広域行政の目的に掲げておるようなことをさせるために、府県にやらなけりゃならないような一つの新しい性格を与えたんだ、これではまるで国の事務の補助機関という形に府県がなってしまう、こういう心配を当然生ずるわけです。この点はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/34
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035・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) 今仰せられましたのは、この自治法の今度の改正とは私は関係はない問題だと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/35
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036・加瀬完
○加瀬完君 関係はないけれども、助長されることになる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/36
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037・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) と申しますのは、助長するという問題でもないのでございまして、要するに河川という問題には、大小さまざまこれはあるわけでございます、現実に。そこで、非常に小さな、小川のようなものなら、これはもちろん町村がさばきのつくようなものなら町村がやってもよいが、普通の中小河川のようなものは、数町村の区域にもわたりますし、とても市町村の力ではこれはさばきがつかないだろうと思います。そういうものは、本来都道府県が都道府県としてやるのが一番ふさわしいことでもあるし、府県がやるべき仕事だと思うのでございます。ところが、それが原則だといたしましても、川には、今仰せられましたように、利根川のような、きわめて大規模なものがあって、数府県にまたがって、その河川計画というものは、上流から下流にわたって一貫的にやる必要がある。しかも計画が一貫的であるだけでなしに、その工事につきましても非常に巨額な金が要る、とうてい小さな府県ではしょい切れぬという大工事が予想されるわけでございます。そういうふうなものにつきましては、特に河川法で、直轄工事として建設大臣がみずからやると、こういう建前になっておるわけでございます。それでございますから、そういうものは、河川法なり港湾法なり、それぞれの法律で、非常に大規模なものは、土地改良法にも似たようなものがありますが、非常に大規模なものは国が直轄でやらざるを得ない、そういう特例があるわけでございまするが、一般に地方公共団体がやっていい仕事につきましては、それは広域の団体である都道府県の事務として、自主的にやらせるのが適当であろうと思うのでございます。その趣旨をここに書いたわけでございまして、これは、やることによってだんだん国の方へ事務を持ち上げていくとか、国の関与を大きくしようというようなことは、全然これは考えておらぬ。またそういう趣旨もないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/37
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038・加瀬完
○加瀬完君 結局こういう事業というのは、一体府県の固有事務なのか、むしろ国の固有事務なのかということを考えないで、財源も府県に与えないで、大きなさらに負担の増長する、助長されるような業務というものを府県の性格の中に与えるということに問題があるのじゃないかということを言いたいのです。かりに今の利根川を例に出すと、昭和二十五年から二十九年までの計を出しますと、群馬は四億六千万、栃木は一億四千万、埼玉が八億三千万、東京が四億四千万、千葉が十二億、茨城が八億、こういう金額が数年の間に負担金として支出されておるのであります。東京を除きましては、いずれも大なり小なり赤字を背負っておる県、その赤字の大部分というのは、特に千葉、茨城あたりにとりますと、利根川の負担金というものはその二分の一を占めておる。こういう状態をそのまま続けておいて、国の当然業務であるべきところの治山治水とか、あるいは災害復旧、こういったようなものも一部地元負担、府県負担という形を残しておいて、さらにその財源というものは何も与えておかないで、府県の固有事務として、総合開発としてやるのだ、治山治水事業もやるのだ、天然資源の保全もやるのだということをきめたって、動きがとれないということにならないか。一体自治法の改正のときに、こういう問題が審議されたか。あるいは財源を与えないで、また国の片棒をかつぐような、こういう広域行政を与えるということについて論議はなかったか、こういう点を詳しく伺いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/38
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039・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) 今のお話はごもっともでございますが、それは結局都道府県の仕事と国の仕事というものをどういうふうに配分するか、こういう問題になるだろうと思うのでございます。それでこれは、地方自治法だけの分野の問題でございますから、地方自治法で取り上げましたことは、要するに地方公共団体に属すると考えられる事務について、府県と市町村の問題を中心に考えたわけでございます。でありますから、一般の治山治水事業も、通常の河川とか通常の山の経営管理というものが、私はこれは都道府県の事務であって少しも不思議ではない。しかしながら、そういう非常に大規模な治水事業があったり、治山事業ということは、当然にこれはあるのでございまして、そういう特殊なものは、それぞれ法令の特別の規定によりまして、国の直轄事業として施行さるべきものだと考えておるものでございます。それで、国の直轄事業として施行されても、今仰せられました通り、負担金のかけ方が必ずしも現在の地方の負担能力にマッチしておらぬのじゃないかという問題は、これはあろうと思います。それはいわゆる補助金などにつきましても、高率補助の問題をどう考えるか、負担金につきましても、国の負担というものをどう考えるかという問題で、それぞれ合理的に解決すべき問題が少くない、私はそれはその通りだと思うのでございます。それでございますから、自治法の改正だけでは当然すべての問題の解決は、これはできないのでありまして、これとともに、税財政の措置を一面において総合的に考えて、初めて私は十全の行政の運営ができると思うのでございます。そこいらの点もいろいろ考えたのが本年後の財政計画の問題であり、税財政の措置なのでございますが、これにつきましては、なおそれは不十分な面も残っておることは認めざるを得ない。これはさらにこれからの問題として、解決を進めていくべき問題であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/39
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040・加瀬完
○加瀬完君 地方に財源が不十分でも何でも、幾分こういう固有事務の性格が変った面が行われるように与えられておるのなら、私はこういう問題を提起しない。財政計画というものは、この自治法の改正によって府県なら府県の性格の変化、あるいは業務の変化というものに対応するような与え方をしておらないところに問題があると思う。そこで、もう一つ突っ込んで聞くと、府県なら府県が独自な考えで、われわれは府県の固有事務というものに予算の集中をすればいいのであって、そんな国のいろいろな計画によるところの、あるいはこれが法律によっても、そういう負担金などは、府県の自主財源の建前からはしばらく応ずることができないという立場をとったとすれば、あなた方は、総理大臣は必要の場合地方団体に対し是正、改善の措置を求めることができるというこの法文というものが当然適用されることになるだろうと思うけれども、これはどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/40
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041・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) 自治団体が自主的にどういう事務を選択し、取捨をしてやらるるか、それはまたどういう範囲でやらるるかというようなことにつきましては、これは自由でございますから、そんな法令違反などという問題が起りようがないのでございます。ただ、一つは、他の法律で直轄事業をやる場合に、負担金というものは法律上義務づけられておるものは現にあるわけでございまして、その法令違反というものが、その法律上の義務が守られなかったらどうするかという問題は、これはあり得ることだと思うのでございます。しかしながら、大ていの場合は、そういう地方に負担を要するような仕事を施行する場合におきましては、それぞれの地元の府県、市町村の意見も聞いて仕事が進められていることが、これは通常なのでございます。かりにそうでなくても、根本的にそうした場合の負担金の負担率というものは適当か不適当か、なお、もう少し国が大きく持つべきではないかという問題は根本的にあろうと思います。それは、そういう問題として、なお具体的に解決すべき問題でございますが、今度の改正ともかかわりなければ、なお自治法の先ほどお話のありました二百四十何条の規定とも全然関係のない問題だと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/41
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042・加瀬完
○加瀬完君 それでは例を引きますが、只見川のような、新潟なら新潟、福島なら福島というような、両県の争いのような問題が起りましたときに、この改正法によれば、これは新潟県なら新潟県の電源開発としてやって一つも差しつかえないものであるし、福島なら福島でやって一つも差しつかえないものではありますけれども、そこで、お互いに競合が起りましたときには、政府は当然何らかの措置といいますか、関係づけというものをすることになるでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/42
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043・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) これは、要するに只見川の開発の問題でありますから、一つは河川法の問題になり、あるいは電源開発促進法の問題等にもなれば、電気事業法の問題にもなるわけでございまして、それぞれの法律で、中央の各省が責任を持つべき部門につきましては、その権限を当然行使することになるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/43
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044・加瀬完
○加瀬完君 ですから、結局広域行政ということでまかせられた府県の固有事務というものを伸張して参りますと、それが河川法に関係したり、電源開発法でありますか、こういうものに関係したりして、結局国全体の計画から対処しなければならないという問題を当然起してくることになると思うのです。そういう傾向をたどらざるを得ない。それは府県に固有事務をまかせておいたのだといって、実質的には、やがて府県よりももっと広い立場の行政区域なり、行政措置なりというものを考えざるを得ないという結果を招くのではないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/44
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045・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) 重ねて申しますが、これは結局その事務によるのでございまして、事務によって、只見川のように、そういう数県にまたがる、しかもきわめて大きな開発事業もこれはある。利根川のような大規模な治水事業もありまして、そうでない、これは日本中の川が只見川や利根川のような川ではないわけでございまして、これはむしろ特殊な大河川だろうと思います。通常河川につきましては、そういう問題が起らぬのでございまして、そういうものはそれぞれ府県でやるのが、これは当然の措置だろうと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/45
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046・加瀬完
○加瀬完君 それでは質問を別にしますが、特別市と指定都市との問題がだいぶここで繰り返されたわけでありますが、特別市というものを廃して指定都市にして、特別市というものを一応形の上で消してしまった理由には、現在の府県と指定都市の間に、いろいろまだきめていかなければならない未解決の問題があるからということでございますが、その府県と指定都市というものをきめかねている一つの中に、指定都市をあの特別市の法文の通りにして、今よりも大幅な自治権を与えてしまっては調節がつかなくなる、調整がとれなくなって困るからという考えはないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/46
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047・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) これはつまりあれ以上権限を与えては調整がつかなくなる。その問題は突き詰めていえば特別市制の問題だろうと思うのでございます。権限を与えた極限が特別市になっちゃって、特別市といえば、府県の区域外に出て府県を二つ作るということになるわけでございます。そういう形になれば、今の府県全体として動いていくためには非常に支障もあるし、動きのつかない事態が出てくる。それでございますから、直ちに特別市というものを今のままの府県の前提でやるということに非常に困難があるのじゃないかということになるのでございまして、加瀬委員の言われました気持を突き詰めていけばそういうことになるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/47
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048・加瀬完
○加瀬完君 結局委任事務というものを大幅に委任できないのですね。指定都市が特別市のような性格の行政規模の拡大というものをやれば、非常に能率も上るはずであるのに、これを政府は抑えている。この大都市の行政規模の拡大というものを極端に抑えている。いかなる理由で抑えなければならないのかということにわれわれは非常に不審を持つのです。それはやはり府県あるいは大都市、こういうものを何か総括するようなと言おうか、これらを包括するようなと言おうか、そういう一つの行政機関なり、行政区域というものを考えておるから、無制限に大都市を特別市というふうに移行することは、させられないということになるのじゃないか、という疑いをやはりちょっと持ちたくなる。この点はもう一度改めて言いますならば、指定都市に特別市のよう血権限を大幅に与えないというのは一体何か、あるいは府県の性格というものをこれを広域行政といおうか、府県の地域を乗り越えなければできないような行政の性格を持たせているのは、一体どういうわけなのだろうか。この二点からもう一つ上の段階の何か道州制といわれておるようなことを、政府が考えおてるのではないか、というような疑問を持って質問を続けてきたわけでございます。これは政務次官どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/48
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049・早川崇
○政府委員(早川崇君) 加瀬先生よりの御意見だんだん承わっておりますと、府県の性格を明確にした、また特別市を削ったということが、道州制への布石であるという御心配、御心配というより一つの御意見でございまするが、これは地方制度調査会に諮って慎重に検討しなければならない問題でございまして、一面におきましては、明治四年の府県というあの区域が現在の交通その他で適合するかどうか、そういった基本問題ともからみます。政府といたしましては、しかしながら道州制という終着駅をきめまして、この自治法を作ったのではございませんので、その問題は他日に譲りまして、現状のままの府県制度の下において改良すべき点を改良したと、こういう次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/49
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050・加瀬完
○加瀬完君 それならば、地方制度調査会の第一次の答申にありました、国の出先機関を統廃合して、一応府県なら府県というものに合わせるものは合わせる、あるいはやめるものはやめる。国の出先機関と地方の機関との複雑な関係というものを統一整備すると、こういう答申が出ておるのでございますが、そういう事務配分についての基本的な事項というものを、今度の自治法の改正の中にはあまり取り入れられてありませんが、これは一体どうしたことか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/50
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051・早川崇
○政府委員(早川崇君) ただいま加瀬委員の申されました国の出先機関というものが非常に多いわけでございまして、府県の性格がだんだん国と地方の間の中間的性格という方向に進みますと、出先機関の統合ということも考えられるのでございます。しかしながらこの問題につきましては国家の所管庁とのいろいろな権限問題もからみますので、これまたこのたびは自治法の改正の中に編入することを避けたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/51
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052・加瀬完
○加瀬完君 そうすると現段階において、政府はたとえば道州制であるとか、あるいは政府の権限強化のための知事官選であるとか、内政省といいますか、内務省といいますか、こういうものの設置でありますとか、こういうことは全然考え及んでおらないというふうに了解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/52
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053・早川崇
○政府委員(早川崇君) 現在のところは一切白紙で、この問題は府県制度その他に御審議を願う、こういう立場でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/53
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054・加瀬完
○加瀬完君 修正をなさいました衆議院の方に伺いたいのでございますが、この行政委員会というものは、今度の自治法の改正によりますと非常に縮小されておりますといいますか、制限をされておるといいますか、委員会の予算執行に関する長の調整関与権といったようなことで、とにかく今までよりも下ってきたということは、これは第三者的にも言えることだろうと思うのです。この点について特に行政委員の待遇などについて、いろいろ御修正をなすったようでございますが、この御修正の御趣旨を伺っておりましても、どうも条例によってきめるということでありましては、結局行政委員会というものがやはり非常に現状よりも軽視されるのじゃないか、行政委員会というものによりまするいろいろの修練というものが、一つの民主主義を育成しておる場にもなったわけでございますが、こういう点、行政委員会というものを縮減をする、あるいは委員の待遇というものを落すと、こういうことでは官治主義の復活ということが非常に憂えられるわけでございますが、こういう点なぜ条例できめてもいいというようなことになって、もっと行政委員会の性格が十分に発動できるように御修正をなさることができなかったのであるか、この点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/54
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055・鈴木直人
○衆議院議員(鈴木直人君) 行政委員会の機構あるいは権限等につきまして、それぞれの単独法に規定されておりまして、その点につきましてはあまりふれておらないようでありますが、ただ地方財政の合理的な運営という点から、政府原案といたしまして、行政委員会の事務局とか、主としてそういうふうに予算的な関係から予算を負担する知事、市町村長たちがなるたけ合理的に運営できるように、最小の経費を使って最大の効果を上げ得るような考え方をもって、それぞれ行政委員会の事務局等の見た場合に、こうしたらいいじゃないかという考え方を勧告をすることができる、という程度の規定が政府原案として提案されておったのでありますが、衆議院といたしましては、その点につきましては一応政府原案を認めたような結果になったわけでありますが、ただその行政委員会の委員のいわゆる報酬でありますが、ことにその委員のうちに常勤の場合は、これは触れておらないようでありますが、非常勤の委員の報酬につきましては日給制をとるような原則が政府案として出ておったわけであります。もちろんそこには委員会の委員という言葉はないのでございまして、地方自治体の非常勤の職員、こういうふうに規定されておりまして、非常勤の職員は何ぞやということが二百三条の一項ですかにそれが書いてあります。それを見ますと委員会の委員が含まれておるということが発見されたわけであります。そこで委員会の委員以外の非常勤の職員につきましては別といたしましても、執行機関である委員会の非常勤の委員の手当につきましては、これは特例を開くことが現実に即して妥当であるという考え方を持ちまして、そういうことからいたしまして、主として委員会の委員を頭に描いたために、条例で特別の規定をすることができるということに狭めたのであります。初めは政府原案を削除しようと考えました。削除いたしますと、二百三条の一項によりましてあらゆる非常勤の職員が適用されることになりまして、結局幅が広くなりますので、すべて委員会の委員につきましては特例を開きたいという考え方で、その判定を府県の条例にまかしたという結論に最後的には到達をいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/55
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056・加瀬完
○加瀬完君 その他の非常勤職員の場合は別としても、行政委員会というものは地方行政に対しては非常に一つの有益な働きをしておると思う。この行政委員会を議会の議員などと非常な段階をつけるということは、これは私は真実の意味において地方における民主主義というものを発展させることに大きな阻害になると思う。一体なぜこの原案というものを削除できなかったか。削除できないとするならば、たとえば再建団体というような特殊な財政団体に限って、特例によって日割り計算でもいいというふうな形にして、原則として行政委員会というものを十二分に働けるような措置を講じなかったか、こういうふうに私は感ずる。この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/56
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057・鈴木直人
○衆議院議員(鈴木直人君) そういう考え方もありまして、立法技術的にしからばどういうふうにしてそれを現わすべきかということがいろいろ検討されました。それにつきましては今は議員を除くという言葉がございまするから、議員及び執行機関たる行政委員会の委員を除くという、そういう言葉で現わす方法も今の御質問のような意味において考えられたのであります。ところが執行機関たる行政委員会ということになりますると、百八十条でありましたか、そこに相当多くの行政委員会としての委員会が列記されてあるのでございます。それらを見ますと、中には実は特別にそれに例外的な特典を与えていない現状の姿が相当あるのです。あるいは選挙管理委員会とか、あるいは人事委員会とか、あるいは教育委員会とか、あるいは公安委員会とかいうような、相当活動しておられる委員会におきましては考えられるのでありますが、その他数個の委員会が列記されて、それが執行機関たる行政委員会として自治法の中に含まれておりまして、それまでも日給制を除くというふうに、はっきり法律的に除かせる、除外するということを修正することはあまりにうつに過ぎるのではないか、現状から見まして。現状におきましては日給制の行政委員会関係の委員がかなりあるのでありまして、そういうふうに法律できめてしまうというと、それらの日給制の委員会の委員にも今度は月給を与えなければならぬというようなことになりまして、かえってこれはまずいような結果になるということになります。しからば選挙管理委員会とか人事委員会とか、そういう二、三の委員会の名前だけをそこに列挙して除外例をやるかと申しますと、これまたいろいろ他の委員会との関係もございましてそういうわけにも参りません。結論的にはやはり条例によってそれぞれの府県市町村が、従来の慣習等に基きましてやることが時宜に適したことである、しかも条例が現在実施されております。ただし書きを規定すればその条例がそのまま生きていくという解釈の下に、特別な措置をしていかなくても現状が進んでいく結果になると考えまして、条例によって特別の規定をした場合にはこの限りでないという規定が、現実に即した、あまり摩擦のない方法であろう。こういうふうに考え、かつ条例というものは自治体の自主的なものでありますから、この自治体の自主性を阻害しないものである、かえって尊重するものであるという理論も立ちまして、そういうような結論に与党野党一致いたしまして、衆議院としては到達いたしたような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/57
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058・中田吉雄
○中田吉雄君 今度の自治法の改正は三つくらいの点に重点が要約できると思うのです。市町村と府県の性格をはっきりしたという点と、第二番目には大都市問題に対して一つの解決の方向を示した。常任委員会あるいは部局、委員会制度に手を入れて簡素化をはかるというような点に要約できると思うのです。
最初にまずあまり時間もありませんので……。市町村はこの基礎的な公共団体という概念規定を入れた点に、ずっと自治庁が自治法の改正法案を出されたことと関連して一つの危惧を持つのですが、私は、この基礎的な公共団体ということと、広域の地方公共団体という二つの概念規定は、対比するには不適当な概念規定ではないかと思うのですが、一体この「基礎的な地方公共団体」という「基礎的な」というのは、どれだけの実益その他を伴うものでしょうか。この点については昭和二十七年に地方制度調査会ができて、私もその一人として参画した当時から解けない一つの疑点であったわけです。われわれが反対しましたが、こういう概念規定がはっきり出ているのですが、一体その目的、どういう実益を伴う概念規定であるか、その点について小林部長の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/58
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059・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) 「基礎的な地方公共団体」という言葉は、われわれといたしましては今、通常使い古されておると考えているのであります。これはいろいろ御議論もあろうと思います。公けにも第一次の地方行政調査委員会議で、国と府県市町村との間の事務配分の基本をきめようとするときに、公けの答申に、市町村は基礎的地方公共団体であって、できるだけ事務を市町村に譲るべしという趣旨の答申があったのでございます。それからいろいろな学者その他の人も、いわば当り前のような形で使っておると思います。そこでわれわれといたしましては、現在普通地方公共団体とは、府県と市町村と二つございますが、この二つのものの性格を言い表わすために、いずれにどういう表現を用いた方が適当かとか、こういうことだろうと思います。そういたしますと、これは地方自治というものは、何と言いましても住民に一番直結して身近に住民のために仕事をやる、この地方団体というものが地方団体としての一番土台になるものと考えざるを得ないのでございます。そういう意味で市町村というものはまさしくそういう趣旨の地方公共団体でありますから、都道府県と比較いたしますれば、これは地方公共団体の土台になる、一番基礎になる地方公共団体であるという感じを表わしまして、それだから地方公共団体として通常身辺住民が自主的にやるべき事務というものは原則としてそこでやらせる、少くともそういう建前をとりたい。しかしながらそうは言っても市町村の力、規模というものにはおのずから限度がありますので、市町村にさばきのつかない大きな事務というものは、これもまた相当広範にある。そういう広範な自治事務を処理すべき地方公共団体というものは、何といたしましてもこれは不可欠だろうと思うのでございます。で、それを都道府県として現在あるわけでございまして、その都道府県というものを言い表わすのに、そうした基礎的な地方公共団体を包括しておる広域の地方公共団体、これもまた従来言い表わされておるとわれわれ考えております言葉を使ったわけでございまして、こういうことによって府県と市町村というものの性格がはっきり出るんじゃないだろうかという考え方で、まあわれわれといたしましては一般的に用いられておるという言葉を借り来たって表現をしたのでございます。これやったからどれだけの実益があるかと仰せられます。実益という問題になれば、それだからどうこうという問題じゃないと思うのでございますが、そういう気持を表わした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/59
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060・中田吉雄
○中田吉雄君 市町村は基礎的な地方公共団体で、都道府県は広域な地方公共団体、基礎的なという概念は、私は特にこの、さらにまた多くの学説等がとっているように、この日本における地方公共団体は市町村とこの府県の二重構造によって、二つの構造によって初めてこの地方自治の目的を完全に達する。そのことはいかに町村を合併して大規模な町村に再編成しても、とうていその府県との関連なしにおいては住民の期待に沿うことができない。こういう府県と市町村の二重構造は、明治二十三年に府県ができてそれからずっととられてきておる。もちろん府県の性格ももっと純化することは必要でございますが、そういう二つの構造が重なりあって相補うことによって初めて住民の要望にこたえるという、そういう市町村と府県に対する考えを持っている者からすると、これについていろいろ想像をたくましくしなくちゃならぬ理由があるんです。それはちょうど地方制度調査会ができた当時、そのときの大臣は塚田大臣でしたが、私ども個人的な話におきまして、吉田総理は自治庁の長官を任命するたびごとに、大臣に向って、何とか現行憲法を変えぬでも知事を私が任命するようにできぬか、こういうことを吉田総理はたえず言っているということを塚田大臣から直接聞いてることがあるんです。これは私まだ記憶に新たなところですが、そういうことから私はこの概念をここに昭和二十八年の答申に導き込んで、憲法の九十三条の第二項にあるように、地方公共団体の長は住民がこれを直接選挙すると、こういう規定があるわけですから、そこでこの憲法九十三条にいう地方公共団体とは、やはり基礎的な地方公共団体であるということにもってきて、憲法を変えんでもやはり知事を官選にしようというような、そういうような意図から、小林部長等はそういう考えでなくても、私はそういろ概念が導きこまれたんではないかと、私は基礎的な公共団体というと、まあもっとはっきりした形で二つのそれを規定してくると、やっぱり完全自治体とそれから行政区というような概念の方がもっとよく当るのではないかと私は思うのです。基礎的な地方公共団体、広域の地方公共団体という概念は相対する適切な概念規定ではないと思うのです。基礎的な公共団体に当るものは完全自治体であり、私は、もう一つのは行政区というようなそういうこととからんでこれは導きこまれたんではないかと、かてて加えて昭和二十二年に新しく自治法ができてそれから三年間地方議会に関係し、二十五年からずっと地方行政委員会に関係して参ると、毎回まあ能率化、簡素化等のためでもあるでしょうが、一貫してこの権限を縮小するという形等とにらみ合せてみると、私はそういうことではないかと思うのですが、そういうことはないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/60
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061・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) 今中田委員がいろいろおっしゃいましたが、基礎的な地方公共団体という言葉が公けに使われましたのは、最初の地方行政調査委員会議、いわゆる神戸委員会でございまして、これは何年でございますか二十年、六年だと思っておりますが、ちょっと今年月を忘れましたが、そこで今、中田委員のおっしゃいましたような地方制度調査会ができるずっと前でございまして、塚田長官が来られましたそれよりももっと大分前の話でございます。それでございますから、そういう知事官選論という議論が一部にあるのもまあ事実でございますが、それとかかわりなく使われた言葉だと思います。そこで今それならば府県と市町村を表わすのにどういう言葉がいいかと、これはいろいろ御議論もございますが、われわれもいろいろ考えたのでございますが、われわれの気持から申しますと、完全自治体であることは県も市町村も変りがない、両方とも完全自治体とは考えておったのでありますが、そこでまず県との関係においてこういう任命方法を変えるためには、一体どうしたらいいかという議論もこれはあります、特にその問題が出ましたのは、東京都の特別区の区長の任命につきまして、その議論が起ったわけでございますが、われわれの考えておりました、つまり普通地方公共団体ということは当然憲法九十二条にいう公共団体であって、これは当然現在の憲法のむとにおいては公選であるべしと、それ以外に選任の方法はとりようがないじゃないかという考えでございます。ただ特別地方公共団体という特殊な権能や地位を持っておるものについては、そこまでは憲法は要求しているのではないのじゃないかという解釈がこれは一方ここにありまして、それで東京都が特別区ということにつきまして、そういう問題も考えられたのでございます。われわれは、現在の府県は、市町村とともにその意味におきましては、完全な普通地方公共団体であると考えておるのでございまして、完全な普通地方公共団体が一重と二重に現にあるわけです。一重と二重にある完全な二つの地方公共団体というものの地位、性格というものを何らかはっきりさせる必要があるじゃないか。そういう意味でまあ土台に触る地方公共団体とそれからそれをおおっとる包括的な地方公共団体、こういう意味で言葉を使ったのでございまして、お尋ねのような問題とか疑念とかというものは全然この言葉の中には私は含まれていない、そういうふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/61
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062・中田吉雄
○中田吉雄君 そうしますと、市町村は基礎的な地方公共団体であり、都道府県は広域の地方公共団体であるという規定がありますが、両者とも完全自治体ということについては問題ないわけですね。そして将来もまあ府県の性格をもっと純化していくというようなことも必要でしょうが、そういう方向はやっぱし保っていく御所存ですか、その点はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/62
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063・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) 現在のこの地方自治法の改正並びに自治法の下における府県市町村は、今お尋ねの通り両者ともに完全な普通地方公共団体である、そういうふうに考えております。
それから将来この府県をどうするか、こういう問題はこれはまあ将来の立法論の問題になるだろうと思いまして、私個人の意見を申し上げたってどうこうなるものでもない。まあここらが、府県制度の根本的改革の問題の一環として世上一部には議論のある問題だろうと、そういうふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/63
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064・中田吉雄
○中田吉雄君 小林部長に少し技術的なことをお尋ねしますが、これまでの自治法で森下委員その他が相当質問された特市の問題とからんで、特市をはずして大都市という特例を設けて行政事務を再配分してとの問題の解決の一歩をとる、こういう方向にいかれたわけですが、大都市の問題と残存郡部と言いますか、との関連でその問題を解決しようとすれば、東京のような都制化、まあ特別市制のようにして府県の性格を与えてしまうか、行政事務の配分をやっていく今回のような措置か、いずれかだと思うのですが、やはり十六の仕事を委譲した形を今後とっていくというのですか。蝋山さんなんかの言っておるような地方都と言いますかそういう形をとろうとするのですか、どういう形を、やっぱし一つの方向をきめてやはりあれは私やっておられると思うのですが、都制のような形をやろうとするのか、さらに行政事務の配分を重ね、財源との配分とからんで事務再配分という形を進めるのか、その辺は府県との関連もあるわけですが、近く地方制度調査会に諮問されるといえば、すでに一応の方向は自治庁では検討をされてこういう方向にされたと思うのですが、それはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/64
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065・小林與三次
○政府委員(小林與三次君) 今中田委員のお尋ねの問題は、まさしく特別市というものの根本的改革の問題をどう考えるかという私は問題になろうと存じます。それにつきましてはこの自治法を改正するに当りましては、その問題につきましては全然方向も考えてまあこれはおらぬのであります。ともかくも差しあたっての問題として、特別市を現状に即して一応の解決策としてこうしなくちゃいかぬじゃないか、しかしながらこれじゃ問題もちろん解決つかぬのでありまして、さらに問題を掘り下げていくべき問題がございます。それにつきましては今中田委員のおっしゃいました通り、一つの事務配分をもっと強化するという問題もあれば、現行の自治法のように特別市を作っちまうという問題もあれば、あるいは東京都のように府と市と一体化させるという問題もあるし、あるいは分けてでもその間にまあ経済の連帯というような考え方もありましょうし、これは考え方いろいろあるのでございます。しかしながらいろいろありますが、いずれにいたしましてもこれはきわめて重要な問題でありまして、どうしても府県全般の問題をどう考えるかという問題の一環としてでなければ解決がつかぬのじゃないかと、そういうことでございまして、いろいろの問題、考えている点をそっくりそのまま地方制度調査会において、府県制度の根本的改革の一環として一つ御検討を願って結論を出していただきたい。こういう考え方でございまして、個人的にはそれぞれいろいろな意見の持主がございますが、自治庁としましては今度はこの問題はこういう解決、あとは調査会の自由なる一つ審議によって結論を見出していこうじゃないか、こういうことになっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/65
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066・森下政一
○森下政一君 関連して、ちょうど太田長官お見えになりましたから最後に私はだめ押しにお伺いしておきたい。今度の自治法の改正の中で特別市というものが抹消されたということは、これは大きな変革であると私は思うのです。ところが過日来このいろいろ質疑をしました例の十六種の事務を指定都市に大部分委譲すると、その内容も与党の方といろいろ研究調整に努められてほぼ明瞭になったというわけでありますが、ここで私は特に長官にだめを押して御意見を伺っておきたいことは、この特別市の運動、特に大阪市などにおきましては四十年もの長い歳月をかけて熱心にこれの実現を期待いたしまして、全市民的な運動を続けて参ったわけでありまするが、それはわずかに今度上げられておる十六種の事務をかりに全部が全部完全に指定都市に委譲されたからとて、これで特市が抹消されてちょうど償われたのだというふうな考え方をしておりません。特市というものはそういう事務の委譲で事足るような問題ではない。もっと全くねらいを別にした全市民的な大きな念願を達成したいという運動なんであります。こういうことを考えますると、もし政府当局がこの事務委護によって特市を抹消してもこれで大体いいのだというふうな考え方をしておってもらったんじゃ非常にこれは見当が違う。そうじゃないのだ。二十八年の地方制度調査会の答申に、その当時私は委員でもあったのですが、大都市制度を確立するということは当時の委員会の支配的な空気であった。ほとんど異論がなかった。ところでそれがために当面の措置すべきこととして、事務の配分によって何とかこの大都市制度の確立に一歩でも近づくべきだという答申をした、当面措置すべきこととして答申したことが、たまたま今度取り上げれたのであって、このことは大都市制度を確立するという要求をいよいよ強化していかなければならぬ。このことはやがて将来特市というものを実現するまでの当面の措置としての便法だというだけのことであって、特市と取りかえにするというわけのものではないと私は考えるのであります。これは長官が非常にいやがられるけれども、いろいろな勢力の陳情があって、政府としてはあっちへも顔を立てこっちへも顔を立てしなければならぬということから、特別市というものを抹消されたけれども、私は、今行政部長からも答弁があったように、このことこそやがて地方制度調査会にもう一度諮問を発して政府が各方面の意見を聞いて、この大都市制度の確立をどう解決すべきかということを諮らなければならぬと思う。自治庁としては今方針をもっていないと言われたことは、私はまさにそうあるべきだとこう思いますので、その御決意に変りがありませんか。これで特別市が解決したなんという間違った考えをもっていられないだろうと思いますけれども、その点をさらに念を入れてお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/66
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067・太田正孝
○国務大臣(太田正孝君) 先般も申し上げた通りでございますが、この委譲問題と大都市問題と引きかえに考えておりません。大都市問題につきましては、この前も申しました通り、地方制度調査会にかけましてその実行をはかりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/67
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068・中田吉雄
○中田吉雄君 一点だけ太田長官にお伺いしますが、自由民主党で作られました憲法改正の試案ですか、その中に、知事の選出について間接選挙のような形をやるという規定が入っていますが、地方自流の専任大臣とされて、それに御関係されたでしょうか、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/68
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069・太田正孝
○国務大臣(太田正孝君) その案は実は党全体の案でないようでございます。こっちには関連はほんとうにございません。私は関係しておりません。ちょっと申し上げます。何か聞くところによると試案のようでございまして、ほんとうに私は関係しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/69
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070・中田吉雄
○中田吉雄君 それは自由民主党の中に、何か憲法調査会のようなものができて、それにはやはり知事を間接に選ぶことを検討するということになっているのですが、私は、やはりこれは地方自治体というものが、ほんとうに民主主義の基盤として伸びるためには、市町村と府県とが二重の構造をとっていくことが大切であり、知事は直接選挙すべきだ。それはいろいろな欠点もありますが、任命制や間接選挙よりかもはるかに被害が少いものじゃないかというような考えからこういう質問をしているのですが、それとは別に太田長官の御所見はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/70
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071・太田正孝
○国務大臣(太田正孝君) 知事の選挙の問題は非常に大きい問題でございまして、私としてはまだ結論出ておりませんが、御趣意の点はよく研究いたしたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/71
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072・松岡平市
○委員長(松岡平市君) ほかに質疑はございませんか。……御発言ないようでありますから、質疑は終局したものと認めます。
これより両案を便宜一括して討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/72
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073・加瀬完
○加瀬完君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま委員長の申し出られました二案に対しまして反対をいたします。
近来政府の地方行財政に対する態度をみておりますと、地方自治を育成するというよりは、むしろ地方自治の簡素、能率化の名のもとに、国の指導監督権を強化していく傾きが非常に濃厚でございます。例をとるまでもなく、たとえば地方財政再建整備法によりましても、交付税等をみましても、地方公務員法の一部改正をみましても、特に地方財政計画をみればその傾向は一目瞭然であります。私は、この政府の地方自治に臨む根本的な態度について、まず反対をしたいのでございます。
具体的に反対の理由を申し上げますと、その一つは、今度の自治法の改正は一体根拠をどこにおくのか、何のためにこの自治法の改正をするのかという点であります。昭和二十五年以来、地方制度調査会あるいは地方行政調査委員会議、こういうものから何回かの答申が出ております。今度も問題になっております、たとえば市町村の性格あるいは府県の性格などにつきましても、答申の内容は御存じの通りであります。しかしながら、根本的に町村の規模というものを、あるいは府県の規模というものを人口だけに押えて行政の規格を作っていくということには、一つの大きな誤謬があると思うのであります。たとえば産業構造なり、あるいは社会経済の集中化なり、こういったような傾向、変化というものがまちまちである団体に対しまして、人口だけを押えて町村の規模を作りましても、府県の規模を作りましても、それは、今問題になっておりまする赤字団体を解消するという要素は何もできて参りませんで、むしろ赤字団体の集合体を作るといった傾きさえあるのでございます。こういったような根本的な問題が、今度の自治法の改正の上では何ら考慮をされておらないのであります。
それからもう一つここに強調したいと思いますのは、国家機構と地方自治体との関係をどうみていくかという問題であります。国家権力を別ワクといたしまして、地方自治体だけを問題にして参りましても、回生進歩というものは期することはできないと思うのでございます。たとえば地方自治体自身の立場、地方自治体の推進発展という立場というものが、一体どれだけ強調されているか、あるいは逆に国家計画への誘導をはらんでいるのか、こういうふうな区別をして参りますと、私は遺憾ながら政府の提案されました、本案を含み、すべての地方自治あるいは地方財政関係の法案というものが、国家統制への方向というものをたどっていると断定せざるを得ません。今までの地方自治体の歴史というものをみて参りますと、軍備拡張態勢と申しましょうか、こういうものが伸張をして参りますと、どうしても地方団体の行財政というものは衰微をして参ります。最近の例をあげましても、地方歳出の国庫歳出に対する割合を調査いたしますると、昭和九年は国庫歳出分の地方歳出が一、〇二四でありましたが、昭和十九年の戦争の最後のころに触りますと、〇、一九四とはなはだしく切り落されているのでございます。現在もこの傾向をたどろうとしているというふうな傾向を私どもは認めざるを得ないのでございます。たとえば警察法の改正などによりましては、これは地方費を節減する一つの目的であるといっておりながら、三十年におきましては五十三億、その前の二十九年におきましては百七億というふうに警察費は増加をしております。あるいは基地拡張でありますとか、行政道路といったような基地関係の費用は増大しておりますが、内政費といいましようか、公共事業費といいましようか、住民にすぐ関係の深いところの利益をもたらすところの経費というものは、いずれも切り落されているのであります。これでは地方自治の根底でありまする住民の生活向上の要求、負担軽減の要求、こういうものは全部オミットせられているという見方をせざるを得ないのであります。
反対の大きな第二点は、地方自治を伸展させようとするのであれば、地方自治が伸展する裏づけに掘るところの財政計画というものが、やはり伸張されておらなければならないのでございます。しかし最近の傾向は、たとえば最近までありました積立方式をみましても、昭和二十五年の決算をもとにいたしまして、増加分を新規財政需要額として見積って参るのでございますが、この増加分というもののほとんどが、地方的な事情よりは、国の政策的な事情によるものが多いにかかわらず、当然これは政府が交付金をもって支出をしなければならないものも、全部住民転嫁という形をとらされております。たとえば二十九年度の新規財政需要額は三百七十八億でありました。しかしこれは臨時事業費の節減二百三十億、その他節減による減百二十億、こういうものによってつじつまが合せられております。またその収入をみますと、全部住民に転嫁されまして、地方税の四百二十五億、地方譲与税の二百三十五億、雑収入の百八十二億というものが全部増であります。それに比べまして国庫支出の方は百四十二億の減、地方債が百三十九億の減、交付金は百六十億の減というふうに、地方負担をふやしましても国庫支出は減らしておる、こういう傾向で地方財政に臨んでおるわけでございます。これでは新しい交付税制度になりまして、ますますこのきずなが大きな原因となりまして、地方自治がどう改正されましても伸び得ないところの、裏づけられない財政ということを感ぜざるを得ないのでございます。それじゃ住民の担税能力はどうかということになりますと、住民の担税能力は非常に限界にきております。たとえば昭和二十五年を押えまして、一〇〇といたしますと、二十九年は一七〇%を示しておるのでございます。財源を政府がなんら与えないで、そして地方自治を伸張しようといってもこれは全然できないことでございます。地方自治法を改正するその前提としての地方財政計画の伸張というものをまず政府は責任を持つべきである。しかし現状においてはそれができておらない、こういう点が反対の第二でございます。
反対の第三点は、今私が質問を続けて参った点でございます。この自治法の改正というものが進展して参りますと、やがて知事の官選、道州制、あるいは内政省の設置と、こういったようにならざるを得ないという心配を持つからであります。具体的に言うならば今度の改正法の中で、長の財務行政の効率的運用ということが非常に強調されております。そして府県の性格というものが非常にあいまいもこであります。はっきりといたしました点は広域行政という点であります。この広域行政という点をたどって参りますれば、国との関連あるいは府県相互間の連絡調整というものがどうしても必要になります。そうすれば、内政省が必要であったり国の監督権の強化が必要であったり、あるいは道州制というものが必要であったり、あるいは国の監督を忠実に守り得るはずの知事の官選というものを必要とするという運びをとらざるを得ない、こういうことをわれわれは恐れるのであります。それがこれの証左といたしまして、指定都市というものを設けたけれども、これは特別市というものの今までの考えておりました権限というものからは、はるかに狭いものになりまして、特別市で監督の強化というものをある程度セーブしなければならない。そこで新しい制度の改革あるいは監督官庁の出現、そういうものをまたないで、特定都市だけに強大な監督を及ぼしてはならない、こういう形で事が運ばれたと、まあ邪推をしたくなるのであります。それが反対の第三点であります。
反対の第四点は、議会の権能なり行政委員会の権能なり立場なりというものが非常に狭くなりまして、官治主義の復活のにおいが濃厚であります。これでは民主主義訓練の場というものをわれわれは失わざるを得ないということを申し上げたいのであります。特に二百四十六条の二でございますか、内閣総理大臣が主務大臣の請求に基いていろいろと一般の行政事務について監督権を持つことになっておりまして、今までは行政事務は住民の代表である議会のみによって監督されておりましたが、議会の執行機関も含めて、政府に監督をされるということになるわけでございます。われわれは一体どうしてこういう干渉権を政府に与えなければならないかということの理解に苦しむのであります。この形というものが進展し伸張して参りますときには、再びわれわれの自治権というものが今のような状態におかれてこない。何の必要でこういうことを政府がするのか、こう考えますと、どうしても政府のと言おうか、現在の与党の方向でありますところの憲法改正に再軍備、こういったような政府の考える基本的政策のために地方自治が犠牲にされる、というふうな結論を見出さざるを得ないのでございます。
以上の点を指摘いたしまして、私の反対討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/73
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074・伊能芳雄
○伊能芳雄君 私は自由民主党を代表いたしまして、この法案に賛成するものでございます。
さきに政府は交付税法の改正あるいは地方税法の改正をはかられまして、それぞれ必要なる財源付与を行なったのであります。地方団体側にしてはでき得る節約は当然しなければならない、これを法規化したものがこの自治法の改正案である、かように存ずるものでありまして、必要なる財源は付与する、また一面において節約できるのは節約しなければならない。こういう両面から見なければならないのでありまして、どうしても地方税法の改正、地方交付税の改正と当然うらはらをなして、この法案が成り立たなければならないものである、かように考えるものであります。当初の考えられた線よりはだいぶ後退したうらみがございますけれども、少くともこのくらいのことは地方団体側にも当然要来しなければならないことであるとかように考える次第であります。
ただここに内閣総理大臣があるいは百五十八条による局部数に対する協議を受け、あるいは二百四十六条の二により法令違反の場合の適切なる措置の要求というような権限が付与され、また府県知事には同じく二百四十六条における、同様の場合における地方市町村に対する関係、あるいはまた百八十条の四における委員会の運営についての監督というような権限が付与されたのでありますが、これらの権限はその行使に当りましては、いやしくも行き過ぎのないように、特に内閣総理大臣の名に便乗して自治庁の官僚が地方自治体に対して、この法規以上のものに出るようなことのないように政府は厳にいましめていただきたい。同時にまた府県知事が市町村に対する場合におきましてもこの点を心得て、あるいは個人的な感情がこのうちにはいったり、あるいはわがままがはいったりしないように、特に指導に御注意を願いたい。この二点を十分政府において考慮されまして、法の実施に当りまして遺憾の安いようにせられることを特に希望いたしまして、私の賛成討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/74
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075・野田俊作
○野田俊作君 私は緑風会を代表いたしまして両案に賛成をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/75
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076・松岡平市
○委員長(松岡平市君) 討論は終局したものと認め直ちに採決にはいります。まず地方自治法の一部を改正する法律案を問題に供します。参考にまで申し上げますが、本案につきましては衆議院修正が含まれたものが原案でございます。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の挙手を求めます。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/76
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077・松岡平市
○委員長(松岡平市君) 多数と認めます。よって本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定されました。
次に地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の挙手を求めます。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/77
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078・松岡平市
○委員長(松岡平市君) 多数と認めます。よって本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定せられました。
なおただいま可決せられました両案につきまして、本院規則第百四条による委員長の本会議における口頭報告の内容及び第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/78
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079・松岡平市
○委員長(松岡平市君) 御異議ないと認め、よってさよう決定いたしました。報告書に付すべき多数意見者の署名のため、両案を可決することに賛成なされた諸君は順次御署名を願います。
多数意見者署名
宮澤 喜一 伊能 芳雄
川村 松助 大谷 贇雄
横川 信夫 佐野 廣
河野 謙三 井村 徳二
齋藤 昇 野田 俊作
後藤 文夫発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/79
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080・松岡平市
○委員長(松岡平市君) 御署名漏れはございませんか。……御署名漏れはないと認めます。
暫時休憩いたします。
午後四時二十九分休憩
〔休憩後開会に至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414720X04119560529/80
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