1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十一年五月八日(火曜日)
午前十時二十七分開会
―――――――――――――
委員の異動
五月八日委員井上知治君及び松浦清一
君辞任につき、その補欠として木島虎
藏君及び江田三郎君を議長において指
名した。
―――――――――――――
出席者は左の通り。
委員長 青木 一男君
理事
野本 品吉君
宮田 重文君
千葉 信君
委員
青柳 秀夫君
井上 清一君
木村篤太郎君
木島 虎藏君
西郷吉之助君
佐藤清一郎君
江田 三郎君
木下 源吾君
田畑 金光君
永岡 光治君
吉田 法晴君
梶原 茂嘉君
豊田 雅孝君
廣瀬 久忠君
堀 眞琴君
衆議院議員
山崎 巖君
古井 喜實君
国務大臣
国 務 大 臣 吉野 信次君
政府委員
法制局長官 林 修三君
法制局次長 高辻 正巳君
事務局側
常任委員会専門
員 杉田正三郎君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
○憲法調査会法案(衆議院提出)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/0
-
001・青木一男
○委員長(青木一男君) ただいまより委員会を開きます。
委員変更についてお知らせいたします。
五月八日井上知治君、松浦清一君が辞任されまして、その補欠に木島虎藏君、江田三郎君が選任されました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/1
-
002・青木一男
○委員長(青木一男君) 憲法調査会法案を議題とします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/2
-
003・吉田法晴
○吉田法晴君 ちょっと速記をとめて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/3
-
004・青木一男
○委員長(青木一男君) 速記をとめて。
午前十時二十八分速記中止
―――――・―――――
午前十一時三十五分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/4
-
005・青木一男
○委員長(青木一男君) 速記開始。
憲法調査会法案の質疑に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/5
-
006・堀眞琴
○堀眞琴君 私は今度の憲法調査会法案の提案者に以下数点についてお尋ね申し上げたいと思うのです。
まず第一に、その成立の過程に関しての質問であります。提案者の提案理由の説明の中にも、それからまた委員の質問に対する答弁の中でも、現在の憲法というものが自由意思によるものにあらざることは否定しがたき事実でありますと、このように説明されているわけであります。きのう本委員会における参考人のお話の中にも、この問題に触れてお話があったわけでありまして、私どもはまず第一に、この憲法の成立過程に関して、提案者の考えている考え方をここで明確にしておく必要があるのではないかと、こう思うので質問いたしたいと思うのであります。
まず第一には、マッカーサー草案がなぜ出されたかということであります。この点に関しては昨日も鈴木君からるる説明があったのでありますが、提案者の方からはまだそれに関する詳しい何らの説明も、具体的の説明も実はあまり聞いておりません。なぜわれわれはマッカーサーからああいう草案を提示して示唆をされたのか、その事情を提案者はどのように見ていられるか、あなたはまだ押しつけられた憲法であるとか、あるいはマッカーサー憲法であるというような言葉はお使いになっておりませんが、しかし前の前の国会での提案者である清瀬さんは、それをはっきり言われているし、清瀬さんは、その後も文部大臣になられてからも、そういうことをしばしば言われているわけです。果してほんとうにマッカーサーから押しつけられた憲法であるのかどうか、マッカーサー憲法と呼ばるべき性質のものであるかどうか、こういう点はこの憲法の性格をわれわれが考える場合に、一番大半な点ではないか、このように考えられますので、まず第一に、マッカーサー憲法草案というものがなぜ出されたのかということをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/6
-
007・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) ただいま堀さんから、現行憲法の制定の経緯についてのお尋ねがございましたので、お答えを申し上げたいと思います。
提案理由にも申し上げておりますように、現在の憲法は昭和二十一年の占領の初期に、その当時まだわが国は非常な混乱の最中であり、国民の一般としましても、非常な何と申しまするか、虚脱状態にあった時代だと思います。そういう際にマッカーサー元帥の示唆に基いて現行憲法ができていることは、これは否定しがたき事実であると思います。そういう意味合いにおきまして、ほんとうに国民の盛り上る自由意思によって現行憲法が制定をみていないことも、私はこれも疑いの余地のないところではないか、こういう意味から、私どもはもう一度今日独立しました現在におきまして、ほんとうに国民の盛り上る自由意思によって現行憲法に再検討を加えたい、これが提案理由で申し上げておりまする趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/7
-
008・堀眞琴
○堀眞琴君 私がお尋ねしているのは、なぜマッカーサーから現在の憲法の基本となる原則について示唆があったかということをお尋ねしている。あなたのお答えはマッカーサーから示唆を受けて作られた憲法であり、それには国民の自由なる意思が少しも加わっておらないという説明なので、私の質問とはちょっと食い違っておるわけです。私はなぜマッカーサーが二月十三日ですか、政府に対して現在の憲法の基本になる諸原則を含んだ草案を提示して示唆を与えたか、この点をお尋ねしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/8
-
009・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) マッカーサー元帥は現行憲法制定以前に草案を示して示唆を与えましたのは、私は大きな点はやはり日本の民主化をはかるという点にあったものではないかと想像いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/9
-
010・堀眞琴
○堀眞琴君 その点が私は重要な問題だと思うのです。すでに政府の側で、御承知のように松本私案ができております。その私案をマッカーサーの司令部においては、これは日本の民主的な方向に沿うものではないというので、示唆を与えた。あなたが、今民主化の原則に従ってというお話がありましたが、あなたは当時政府の方において作られた松本私案というものが、民主的な内容を含んだものであるとお考えになるかどうかをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/10
-
011・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 松本私案ができましたのは、その当時の占領直後の国内情勢をいろいろ勘案されましてできたものと、私は想像いたすのであります。しかしながら、今日からどちらの案が日本の民主化のために大きな役割を果したかと比較検討いたしますならば、率直に申し上げまして、日本の民主化のためには、現在の愚法の方がより以上であったということは、断言してよろしいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/11
-
012・堀眞琴
○堀眞琴君 今のお答えによりますと、松本私案より現在の憲法の内容をなすところのマッカーサーの示唆の方がより民主的であると、こういうお答えのように思うわけです。そうしますと、今度の法案の提案理由の説明の中に盛られておる考え方とは、まるで違った方向になっておるのじゃないかと思うのです。要するにマッカーサーの草案による示唆というものは、松本私案が民主的な内容を含んでおらない、従ってポツダム宣言やあるいは初期の占領方針の民主化という方向においては、松木私案では適当ではない、こういうことを判断したのが、 マッカーサー司令部だと、従って日本の民主化のためにということで、草案が提示されたものとみなければならぬと思う。で、きのうのこれは廣瀬君の質問にもあったと思うのですが、何しろ現在の憲法改正をしようという考え方を持っておる人々の間には、マッカーサーから押しつけられた、あるいはそれは日本的な民主主義の原則をその中に盛っておらない、こういう点があげられておるわけです。あなたの御説明ですと、マッカーサーによって提示されたものは松本私案よりも民主的である、こういうことになりますと、その憲法の原則となったマッカーサー草案というものは、決して非民主的でもなければ、むしろ民主的な方向において日本の将来の方向を示唆したものだと、こう見て間違いないと思う。そうなりますと、マッカーサー草案が出されたということは、これは押しつけでもなければ、むしろ日本の民主化の方向に沿うての示唆ではなかったかと、こう思います。その点重ねてお尋ねしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/12
-
013・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) マッカーサー元帥が草案を示唆されまして、それによって日本の民主化が非常に進んでいった、この民主化の問題につきまして、現行憲法が民主主義を基本原則としておる、この点は私どもも全くこれを尊重していきたいという気持であります。ただ私どもが特に申し上げておきますことは、要するに制定の経緯であります。先ほども申し上げたように、占領の初期において、ほんとうに国民の盛り上る自由意思の、何というか、表現ができなかった時代、言論も御承知のように非常に抑制されているああいう時代にできた憲法でありますから、もう一度独立しました今日において、再検討する時期がもう到来している、これが私どもの考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/13
-
014・堀眞琴
○堀眞琴君 あとの力は、私がこれからお尋ねしようとする問題についての御答弁のように思われます。私は今またその成立過程について、国民の意思が十分盛られたか、どうかということについては質問しておらないのです。私の質問は、なぜマッカーサー草案が出されたかという一点にしぼってお尋ねしているわけです。なお、松本案に対しましては、向う側で、民主的な線に沿うた日本の統治機構の広範なる自由主義的改造とは言うことができないという批評を、向う側では下しているわけです。この批評はもちろんポツダム宣言の線に沿うた上での批評であり、従ってまた連合国側の代表的な批評と見ても間違いないと思います。それからまた第二次大戦を、ファシズム打倒の線で戦った国際的な民主的傾向の、その批評であると申してもいいのではないかと思うのですが、そういう点から申しまして、松本案が当時日本の民主化には逆行するものである、決して日本の統治機構の広範なる自由主義的改造とは言うことができないということの中に、その点が明確に現われていると思う。従ってマッカーサーの草案が出されたということは、私は十分意味があることだし、なお国民の意思というお話かありました――国民は明治の初期以来、民主化の運動を続けて参ったことは、私がここで申し上げるまでもないと思う。ただ当時は御承知のようないきさつで、官憲によってそれが圧迫されてきた、あの十年代の連動にしろ、三十年代の運動にしろ、あるいは第一次大戦後の運動にしろ、すべてがすべてと言っていいくらいに、ともかく民主的な国民の念願といいますか、宿願というか、そういうものがほとんど実現をみないで、今日、いや第二次大戦後まできたわけであります。第二次大戦後に一応解放され、民主的な権利も認められた、すでに憲法のできる前に、総司令部においては、御承知のように指令であるとか、覚書であるとかいうものを出して、数々の民主的な政策を日本の政府をして行わしめているわけです。国民たちはおそらく第二次大戦後のこのアメリカのとった政策なり措置なりに対して、非常に喜びの気持をもって私は迎えたと思うのです。なるほど終戦後のこんとんとした状態はありました。しかしむしろこんとんとしておったのは日本の政局、当時の政局、特に戦争前あるいは戦争中その政権の座についておった人ないしはそれに近い人々が、むしろ混迷しておったのであって、国民の、大衆というものは、この大戦後の民主化政策に対して、むしろ非常にこれを喜びとするばかりでなく、国民自身が立ち上りつつあった、こう申してもいいのではないかと思います。そうなりますというと、国民の意思とは関係なしにというお話ではなくて、むしろ国民が何十年もの間念願としてきたところのものが、ここでマッカーサーの草案によって、示唆を受けたことによって、それが実証された、こう見てもいいのではないかと思いますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/14
-
015・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 先ほども申し上げましたように、マッカーサー元帥の示唆によりましてできました憲法によって、日本の民主化か進みましたことについて、国民の非常に同感である点は、御所論の通りだと思います。ただ私が申し上げるのは、先ほども繰り返して申し上げるようなことになりますけれども、先ほども申し上げたように、その当時のほんとうの国民の自由な意思がこの懸法の上に十分反映しているかどうかという点に私どもは疑問を持って申し上げておるわけであります。従いまして今日もう一度振り返って、現行憲法に再検討を加えたいというのが私どもの趣意であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/15
-
016・堀眞琴
○堀眞琴君 その国民の自由な意思が反映しているかどうかという問題は、要するに帝国議会における審議の過程とかその他のことを私は指すものだろうと思います。私の質問しておるのはまだそこまで入らぬ。マッカーサー元帥が出された草案というものが当時国民によって非常に歓迎されたのではないか、あるいは国民の意思を代弁したものではないか、なぜなら先ほど申し上げたように、明治以来の日本人が念願としてきたところのものが少くともマッカーサー草案の中に盛られておった、こういうことが言えると思う。これは国民の大半の人々の偽わらない気持ではないかと思うのです。もちろんかなりラジカルな考え方を持つ人々は決してこの憲法草案が完全なものだとは思っておらなかったと思います。私自身もそうなんです。私自身も実は正直に申し上げますと、憲法ができて憲法普及会ができたときは、ブロックの憲法講義の講師に頼まれて参りまして各地で講演をやりまして、私はワイマール憲法と比較しながら、この憲法の説明をやったことがある。私自身はまだまだ、たとえば社会生活に関する規定がきわめて不十分であるとか、あるいは労働者の権利に関する規定がきわめて不十分であるとかいうような点について、私自身は必ずしも完全なものだとは思っていない。しかしそれは一部の急進的な人々の考え方であって、国民の大半はむしろマッカーサー草案に盛られた思想、あるいはその原則というものが、憲法の中にも書いてあるように歴史の試練に耐えて今日まで来たものだという考え方の上に立って、この草案を支持したのではないかと思うのです。あなたのお話ですと、国民の自由なる意思がそこに少しも盛られておらない――これはあとでの審議の過程に入るのです。憲法草案が正式に帝国議会に提出されて、その審議の過程において国民の自由なる意思がどの程度に反映したかという点では問題になるかと思いますけれども、そうではなくて、あの草案が出されて、そうして松本草案がその前に出されておった、この二つを比較して、むしろ松本草案は明治憲法から幾らも出たものではない、依然たる天皇の地位の保障が含まれておるあるいは国民の基本的な権利等についても明治憲法と大して違いはない。単に国会の権限が若干拡張される、その他内閣の責任制が確立されるという程度のものでありまして、決して明治憲法から根本的に違ったものとして松本草案ができておらない。で、明治憲法は、これは私から説明するまでもなく、欽定憲法であり、しかもプロシア憲法の焼き直しであるということは、だれでもが知っておる通りである。その明治憲法のもとに国民の大衆が非常な抑圧を受けて完全な基本的権利すらも法律によって押さえられるという、そういう中で生きてきたわけですから、この松本草案が出され、ついでマッカーサーの草案が出されたというこの経過を見て、国民たちはおそらく自分たちの意思を代弁してくれたというくらいにさえ当時の国民は考えたのではないかと思うのです。その点についてはどのようにお考えになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/16
-
017・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 御指摘のように日本の民主化のために現行憲法ができましたことにつきましては、国民の一般といたしましては非常な賛同をしたものと私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/17
-
018・堀眞琴
○堀眞琴君 国民もマッカーサーの草案に賛同したと、こういうお答えであります。
そこで今度はその点に関連して、日本の憲法草案のいよいよ帝国議会における審議に入るのでありますが、その前に、マッカーサー草案を元にして日本の政府で草案を作っておりますね、その草案は言うまでもなくマッカーサー草案の指示に基いて、その原則の大半を入れて作られたものであることはこれは言うまでもない。しかし提案者がしばしば、自主的な憲法ではない、占領下において作られた憲法である、日本の政府の意思あるいは国会の意思、国民の意思は、今お話がありましたように、歓迎はしておったが、しかし自由にその意思が表明されておらない、あるいは反映しておらない、こういうことでありますが、政府の案ができまして、この要綱を発表したのは三月六日でありますね。あの政府の要綱とマッカーサーの草案とを比較するというと、かなり重要な部分において修正が行われておる。修正というよりは日本の政府当局の見解において、これならば日本の実情に即するであろうという見解のもとに幾つかの重要な修正が行われておるわけであります。まず第一に、第一章から始まるわけでありますね。マッカーサーの第一章第一条がそうだし、第八条がそうだし、それから第十四条、これは十四条は第三章になりますか、基本的権利に関する条項ですね。それから二十八条がそうたし、それから第四章に入るというと第四十一条がそうであります。いずれもこれらの修正個所というのは非常に重要なところであります。たとえば、第一条の「皇帝」とあるところを「天皇」と直して、単なる文章字句の修正ではなくして、やはり国民主権の基本的観念の上に立って天皇の地位ということを考えるという点において日本の政府の見解によってこれを修正しておるわけです。それから第二章の、マッカーサー草案では第八条になっておりますが、現行憲法の第九条について同様であって、それからことに基本的権利のところに入りますが、基本的権利のマッカーサー草案の十四条では「人民ハ其ノ政府及皇位ノ終局的決定者」であるという規定があります。これが削除されておる。それから二十八条では土地や一切の天然資源の究極的な所有権は国家にある、いわゆる土地国有を規定しているわけです。これを削除しているわけですね。それからまた一院制度を二院制度に直すなどのことについて重要な修正が行われている。従ってマッカーサーの草案によって政府の原案が作られたとはいうものの、その間には日本の立場において必要とする十分な修正が行われて政府案がで寺ておる、こう見て間違いないと思いますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/18
-
019・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 御指摘のように、マッカーサー草案と日本政府が作りました草案は、たとえば一院制度を二院制度に改めましたり、あるいは「土地及一切ノ天然資源ノ究極的所有権ハ人民ノ集団的代表者トシテノ国家ニ帰属ス」と、この条文が削られたりした点は大きな変化があると思います。ただこういう問題につきましても、その当時日本政府は一々総司令部の承認を得て原案を作っておるようであります。従いまして司令部の意思が現在の憲法の上に十分表現されておる、現われておるということは、これは間違いない事実、だと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/19
-
020・堀眞琴
○堀眞琴君 おっしゃる通りそれらの修正箇条については、司令部との折衝が必要であったことは私も知っておるわけです。おそらくどの条項の修正についても、向う側との折衝が必要であったんだろうと思います。当時は占領時代であります。総司令官が一切の権限を持っておったわけです。ただわずかに日本の政府をして行政を行わしめるという間接統治の方式をとっておった。従って占領時代において、総司令部と折衝することはこれは当然なわけです。その場合総司令部がもしも日本の民主化の方向、しかもそれは単なる総司令部だけの考え方ではなくて、第二次大戦を戦い抜いた国際的な民主主義の勢力と申しますか、そういうものの一つの方向であったと思うのです。日本も従来の軍国主義を清算して、そして民主的な国家にこれが再建されるのだという方向において民主化政策を打ち出し、日本の憲法が修正されることを連合根側としては熱望しておった。そのことは当時の向う側の声明やらあるいは報告書やらを見れば十分にわれわれはこれを知ることができるわけです。向う側と折衝したから、向う側の意思が憲法そのものの中にそのまま反映したのだ、あるいはそれがそのままそこに映し出されたのだということには、私はある点ではならないと思うのです。いろいろ向う側としては、日本の民主化の方向ということに大きな方向を置いて、それを大原則とし、その上に立って日本の憲法が作られることを望んでおったわけです。そう考えますというと、向う側と折衝したそのことだけで、向う側の意思による憲法だということにならないと思うのです。今あげた、たとえば第一章、第二章、第三章、第四章にわたっての最も重要な修正事項を見ましても、これはマッカーサーの示唆した草案の中でもきわめて重要な規定の中に入っておると思うのです。決して枝葉末節の修正ではないと思う。そういうような重要な修正も、向う側と折衝し、向う側がこれを受け入れたというのは、日本側の自由な判断に基いての修正を期待しておったからだと思うのです。のみならず、この憲法草案について、自由にこれを審議せいということは、向う側の考え方でもあります、決してマッカーサーの提示した草案をそのままのめというのではなく、あの線に沿うて、できるだけ民主的な憲法作れ、民主的な政府を作れ、そしてその民主的な政府を作ることは日本国民の責任である、こういう基本方針を総司令部としてはとってきたと思うのです。そういう中で、日本の草案ができたわけですから、日本の草案が向うからの意思だけでできたものだと、単に折衝したというだけの事実で、それを言うことは私は間違いではないかと思いますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/20
-
021・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 日本の憲法草案も、マッカーサー元帥の示唆しましたマッカーサー元帥日本国憲法草案をもとにして作ったことは、これは疑いのない点だと思います。そのうちで、どうしても困るという一、二の点は、先ほど申し上げましたように、司令部に折衝いたしまして、その修正に応じてもらって、修正をいたしております。むろん字句の点等におきましては相当修正がございましょう。しかしもとの原案は何と申しましても、マッカーサー元帥の示唆しました草案が原案になっております。そういう点をお考えをいただきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/21
-
022・堀眞琴
○堀眞琴君 私もそれは認めているのですよ。マッカーサーの、原案が草案のもとをなしたということは私も認める。しかしその原案であるところのマッカーサー草案というものが世界の民主主義の原則の上に立ったものであるということは、これはあなたも先ほどお認めになっておる。従ってその点では、たとえば明治憲法がプロシア憲法を一つの模範として作られたと同じく、大体どこの国の憲法でもどっかの憲法というものがいわば一つの模範になるということは、これは私からお話を申し上げるまでもないと思う。フランスの革命の憲法のがベルギー憲法の母法となった。あるいはフランス革命憲法はアメリカの独立宣言が模範になったというようなことは、これは世界共通の、いわば民主主義というものが世界共通の原則であるというところから来ておると思う。マッカーサー草案は民主的な原則をその中に持っておった、だから国民もこれを歓迎したし、それからまた日本の民主化を促進する上においてこれが適当であると考えて、政府の側においても、これを原案としたということは当然だと思うのです。ただその原案とする際に、日本の実情に即した重要な修正が行われた。この修正が行われたことは、提案者は向う側との折衝で行なったのであるから、決して日本の自主的な修正ではないというような印象を受けるような答弁をされておる。私は日本の自主的な意志においてこれらの修正が行われて、向うとの折衝の上でそれが成立したと思いますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/22
-
023・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 先ほどから申し上げましたように、修正につきましては、一々向うの許可を受けてやっておる、その点が私は問題であろうと思うわけであります。ほんとうに自主的にやったものとはどうしてもその点におきましても考え得られないことではないかというふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/23
-
024・堀眞琴
○堀眞琴君 一々向うの許可を得てやっておる、こういうお話ですが、もし日本の民主的な意思というものが、草案を作る場合は政府だけの意思でありますが、政府に自主的な意思がなかった、向う側の許可を得て全部やったのだ、従って向こうの許可のもとにおけるところの草案であるということならば、こういうような、今上げた若干の修正箇条はきわめて根本的な修正箇条でありますが、こういう修正箇条というものはおそらく向うでは許可しないということに私は当時の情勢としてはなるのではないかと思う。なぜなら極東委員会におけるところの諸情勢を見ましても、それは明白ではないかと思うのです。そうなりますと、おっしゃる通り許可を受けておりますけれども、しかしその許可は日本政府の民主的な意思に基く修正を承認する、こういう関係になっていると思います。向うからこれはこうせい、あれはこうせいということで全部が全部押しつけられて来たものではなくて、むしろ向うの出された原則にのっとってこちら側が自主的に草案を作り、そして根本的な修正を行なったものだ、こう見なければならぬと思いますが、その点くどいようですがもう一度御答弁を願いたいと思う。単に許可されて初めて修正ができたのだから、だから自主的な意思などは働いていない、こういう御答弁では私ちょっと納得ができないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/24
-
025・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 日本政府としては、今修正についていろいろ申し出をして許可を受けました部分以外にも修正があったことと想像します。松本烝治博士の生前中のお話を伺っても、松本博士としてはいろいろの点で修正を申し出ておられるようでありますが、そういう点についてほとんど許可を得られなかったというような重要な点もあるようでありますが、そういう点から考えて、私どもとしましては、これはほんとうの日本政府の意思といいますか、国民の意思といいますか、そういうことを十分反映しておるものとは断定できないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/25
-
026・堀眞琴
○堀眞琴君 松本国務相からその他の件についても修正を向う側に折衝した。しかし、それの許可されない部分もあったと、私はそれも知っているのです。しかし、どういう点が許可されなかったかが大ざっぱにいいまして、個々の点にはともかくとして、大ざっぱにいえば、それらはいずれも日本の民主化にとって必ずしもプラスになるものではないと判断されたものについては、これは向う側でこれに対して承認を与えなかったということはあると思う。しかし、それはその内容が日本の民主化にとってプラスではない。むしろ、マイナスである、こういうものであったと思うのですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/26
-
027・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 向うの示唆を受けました当時に、堀さんも御承知のように、この憲法の草案については根本原則並びに基本形態は変更してはならないと、こういうことがはっきりうたってあるわけです。従いまして、その範囲以外のものについては修正の自由を認めたものと思います。しかしながら、この基本原則並びに基本形態に関係するような字句についてはほとんど修正を許していないと思うわけであります。従いまして、松本烝治博士からいろいろの点で申し入れをされましたけれども拒否されたということも、博士の生存中に伺っているような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/27
-
028・堀眞琴
○堀眞琴君 マッカーサー草案の基本的な部分については変更を認めなかった、その通りです。なぜ変更を認めなかったといえば、これは根本原則になる部分は世界の諸民族に共通な民主主義の原則を含んだものだからであります。ですから、これを修正するなり削除するなりすることは、民主主義の憲法を作ろうとする場合にこれを許すことはできないということは私は当然ではないかと思うのです。自主的な意思ということだけで民主主義に逆行するような方向の規定を設ける、あるいはそういう修正をするというようなことは許さるべきことではない。当時の情勢としてはそうだし、また現在においても私は同様だと思うのですが、そういう考え方が向う側にあったことは事実です。従って、またそういう考え方は正しい考え方だと思うのです。何でもかんでも民主主義の原則に反しても、たとえば修正するそのことが自主的だということになったのでは、日本の民主的な建設であるとか、あるいはその基本法としての民主憲法なんというものは、私はできるはずはないと思うのです。民主的な憲法であるからには民主主義の原則が守られなければならぬし、国民主権、基本的人権の尊重、そういう民主的な基本的権利を擁護する政治組織の大綱をきめる、これが近代憲法の私は基本的な内容だと思うのです。それで、従って、松本さんがたとえば天皇の条項に関して、あるいはつまり国民主権の問題に関して、並びに戦争放棄の問題に関して、向うに幾ら折衝しようとしても、向う側としては民主主義の原則を守るという建前からは、これを認めることができないことは、私は当然ではないかと思いますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/28
-
029・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私もたびたび申し上げておりますように、この現在の憲法の長所でありまするところの国民主権、あるいは基本的人権の尊重、あるいはまた真の平和主義を尊重していくというこの原則につきましては、これを尊重していきたい、こういう趣旨をたびたび申し上げておるわけであります。従いまして、ただいま堀さんの御質問のように、この原則についてわれわれが一向何ら反対をしていないということを御了解をいただいておきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/29
-
030・堀眞琴
○堀眞琴君 私は、あなたが現在国民主権や、平和主義や、基本的人権の尊重を考えておって、何らこれを変更しようと思うものではないという御答弁を私は要求したのじゃないのです。当時民主主義の原則、最も基本的な原則となる部分について、向う側でこちらの変更あるいは修正を承認しなかったということは当然ではないか、私はこういうことを質問しているのです。で、提案者は、どのようにその点をお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/30
-
031・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 要するに、私どもが申し上げておりますのは、その内容の点を申し上げておるわけじゃないのでありまして、その憲法の制定の経緯、そこにほんとうの国民の自由意思がなかったということを繰り返して申し上げておるわけでありまして、その点を御了解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/31
-
032・千葉信
○千葉信君 議事進行。担当大大臣、先ほどからお見えにならないようですが、どうされたか。それを確めているのも時間がかかりますから、ここらでそろそろ時間ですから休憩に入って、また午後に再開したら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/32
-
033・青木一男
○委員長(青木一男君) 他の委員会に出ておられます、吉野国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/33
-
034・千葉信
○千葉信君 他の委員会に出られておるか、衆議院の方に行って本会議に出られておるかわかりませんけれども、こういう重要法案を審議しておるときに、なるべく担当大臣は出席していてもらわないと、質問者の方で提案者に対して質問もあるでしょうけれども、一緒にその担当大臣に対してもやっぱり質問事項はあるはずですから、なるべくわれわれとしては担当大臣の出席を希望するわけなんです。ちょうど今お昼の時間ですから、幸いといってはおかしいけれども、残念ながら担当大臣がいないのですから、ここで休憩して、午後に再開してもらうように動議を提出いたします。(「異議なし」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/34
-
035・青木一男
○委員長(青木一男君) それでは暫時休憩して、一時十五分から再開いたします。
午後零時十八分休憩
―――――・―――――
午後一時三十二分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/35
-
036・青木一男
○委員長(青木一男君) 休憩前に引き続き会議を開きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/36
-
037・堀眞琴
○堀眞琴君 吉野国務相はすぐ見えるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/37
-
038・青木一男
○委員長(青木一男君) すぐ見えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/38
-
039・堀眞琴
○堀眞琴君 それでは午前中に引き続いて質問を継続いたします。
先ほど私は松本案とそれからマッカーサー草案との遅い、そしてそれがなぜマッカーサーによってマッカーサー草案が出されたかということについての質問をしたわけでありますが、なおライフの昨年の十月三日号に、日本の憲法がマッカーサーによって支持されたいきさつについて若干簡単なここに記載があるわけです。それを見ますと、ホイットニーはこう書いているのです。日本が民主的に再建されたのは従来の封建的な憲法が改正されたからだ。国民は初めからこの憲法改正に対しては非常に期待をしておった。むしろこれを促進しておった。だがその憲法の改正については政府の一部の反動的なものがこれを阻止しようとしておったのだ。そこでその憲法草案を出すことになったのだという工合に書いて、なお、松木国務相の態度などについても、これはホイットニーが書いたのですから、まあホイットニーの観測だと思うのですが、松本国務相はきわめていんぎんに、常にいんぎんだが、いつも常に従来の明治憲法を解放するなんていうことをむしろ妨げる、こういう明確な意思を持って総司令部と折衝しておった。そこでホイットニーからいわゆるマッカーサー草案というものが松本委員会にあてて提示された。そのときに、もしこの松本憲法調査委員会がこの草案を受け取らぬならば、マッカーサーはそれを日本国民の投票に付してもいいんだということを言ったとも書かれている。この間の事情は、もちろんホイットニーの書いたものでありますから、あるいはたとえばその他のホイットニーの書いたものと比較して必ずしも全部が全部正しいとは私は申し上げるわけじゃないんですけれども、しかし国民がこのマッカーサー憲法草案というものをむしろ非常に歓迎しておったということは、はっきり言うことができるのじゃないかと思う。なお、昭和二十一年のあの帝国議会時代の最後の選挙ですね、あの選挙のときも憲法草案が与野党間の一番大きな論争の的になったと思う。あれが選挙のスローガンで一番大きかったと思う。もちろんそのほかにもたくさんの選挙スローガンが掲げられましたが、憲法問題があのときの総選挙の大きなスローガンであったということはいなめない。そのときに野党側は、ともかく国民の意思に沿う憲法、民主的な憲法だということを建前として選挙戦を遂行したと思います。そんな関係から見ますというと、国民はむしろマッカーサーの草案を大いに歓迎しておった。自分たちの意思があれによって表明された、マッカーサーが代弁してくれたのだというぐらいに考えておったと思う。その点まだ十分に納得できませんから、提案者にお答えを願いたいし、それから吉野国務相は午前中ちょっとお見えになって、私の質問になったら御用で御退席になりましたので、これ、吉野さんには、なぜ松本私案が退けられてマッカーサーの草案に基いての日本の政府の草案ができたかということ、その一点。それからもう一点は、民主的に日本の草案が作られてないというお話ですが、しかしマッカーサー草案に対して日本政府草案は重要な個所において修正をやった。もちろんその修正に当っては総司令部との間に常に折衝が行われ、向うの承認のもとにおいてなされたことは言うまでもない。しかし修正された個所はきわめて重要な部分で、あったということ、それから基本的な部分原則についてはもちろん向う側でも修正を認めない。これは私は世界の民主主義の原則を取り入れたものですから、これは当然のことだと思うのですが、それらに関して憲法担当の国務大臣として吉野さんはどう考えておられるかということを吉野さんにはお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/39
-
040・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 先ほども申し述べましたように、現行憲法の民主主義の基本原則につきましては、何人もこれを不可とするものはないと存じます。またますますこれを尊重していかなければならぬというのが私は一般の国民の考え方であろうと存ずるわけであります。昭和二十一年の総選挙の際に、憲法の問題が選挙の題目になりましたことも私どもは記憶をいたしております。私ども十分当時のことを――私は記憶違いがあるかもしれませんが、その当時憲法について改正の是か非かということを国民に問うたことはないのじゃないか、むしろその当時は、大体憲法の草案というものがきまりまして、それについての特別の反対もなかったのか、あのときの選挙ではなかったかと、あるいは記憶違いかもしれませんが、こう記憶いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/40
-
041・吉野信次
○国務大臣(吉野信次君) 当時の事情は実は私もつまびらかにしよがないのですが、お尋ねの点は、松本案とマッカーサー案とは違っておりますから、しかして権力者たるマッカーサー司令部は、自分の意思というもの通りにこれを強行したのですから、松本案はその意味において受け入れられなかったのだろう、それからまたマッカーサーの案につきまして、きのうも鈴木さんのお話がありましたが、日本の方でもこれは修正を加えたということはありますのです。しかしきのうのお話を伺っても、修正を加えていいかどうかというようなことを、まずもって司令部に尋ねていって、そうしてそれでやってもいいと言うから、やったというお話がございましたから、おそらく修正された個所につきましても、司令部というものは承認したと思う。私はこれは暗黙かあるいは明示か存じませんか、承認が働いておったということだけは、これは厳然たる事実だと私は承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/41
-
042・堀眞琴
○堀眞琴君 山崎さんの御答弁に対してはあとで御質問します。吉野国務相の今の御答弁に対して、確かに総司令部に対して承認を求めて――修正をする場合に承認を求めたことは、これは厳然たる事実であります。決して総司令部の承認なしに、日本政府側が、あるいは後に帝国議会にかかった場合に、帝国議会がこれを修正したとは思いません。しかしそれは修正したということもまた事実です、厳然たる事実であります。そしてまたその修正が向う側からの命令で修正したのではなくて、こちら側の自主的な立場においてそれを修正し、それに対する承認を求めた、こういう順序になると思います。向うから修正をすることを日本の政府の方に申し出てきて、それに基いて日本の政府が修正したのではない、こう見なければならんと思うのです。ことに土地の国有の問題とか、あるいは国会の一院制度の問題、一院制度、二院制度の問題であるとか、あるいは皇位の決定は、最後の決定者は国民であるというようなマッカーサーの草案に盛られた規定についての修正は、向うからの示唆に基いてやったのじゃなくて、こっちの自主的な意思において修正したものだと思う。その点は今のお話とちょっと違っておりますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/42
-
043・吉野信次
○国務大臣(吉野信次君) いやその通りだと私は思います。お話の通りだと思います。ちっとも私はそれを否定したことを申したわけではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/43
-
044・堀眞琴
○堀眞琴君 そうしますと、日本の憲法草案、つまり原案ですね。帝国議会にかけられた原案というものは、これは日本政府の自主的な意思によって作られた、もちろん先ほどからのお話のように、マッカーサーの草案を根本にしてはおります。それが土台にはなっておりますが、しかし日本の政府が自主的にその根本の原則にのっとって、日本の草案を作ったのだということも、これもお認めになると思います。それからまたそれこそ原案の中に盛られた、今申し上げたような修正の諸点については、これまた向うの承認を必要とするものであったことは間違いないが、しかし、と言って、それの修正に当っては、日本の民主的な意思が働いておったのだたということも、これも間違いないと思う。従って日本の憲法の原案、帝国議会にかけられた原案というものは、日本政府の原案であり、マッカーサーの原案でないということも、また事実だと思いますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/44
-
045・吉野信次
○国務大臣(吉野信次君) なかなか言葉が非常にややこしいのでなんですが、先ほど申しました通り、私はその詳しい事情は知らないので、ございまして、つまりこの民主的に、堀さんのおっしゃる自主的に修正されたというものか、全部果して自主なりや、あるいはそのうちに司令部側の軽いサゼスチョンか指示があったかどうか、そういう事実問題については、私は知識はないのです。そうしてまたかりに自主的にやったとしましても、それは厳然たる事実です、お話の通り。しかしそれについてまたマッカーサー司令部が承認を与えたということも、これも厳然たる事実なんですね。ですからこの二つの厳然たる事実をどう組み合せるか、あるいは組み合せないで、一つの片方だけをみるかという違いだろうと思います。堀さんはその場合に、二つの厳然たる事実の片方の方だけをおとらえになって、これは自主的だと、こう言いますし、また一部の――一部のというか一部の人は、承認があった、しかし承認というその大きいそこに何か窮屈さがあったのじゃないかと、こういう見方もあるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/45
-
046・堀眞琴
○堀眞琴君 吉野さんは当時の事情を御存じないと言われるので、どうも私らも困るのですがね。私は別に一方の日本の修正した部分だけを重要視して、それだけで自主的だということを申し上げているつもりはないのです。私はその自主的な例として、それを申し上げている。なお、総司令部の方ではチェックした部面もあると思います。しかしその総司令部の態度は、少くとも初期の占領方針のもとにおいては、ポツダム宣言の実施と、それに基いての占領政策を遂行していくというところに、総司令部の考え方はあったと思います。しかも総司令部のそういう考え方の方向は何かといえば、民主主義の方向です。従ってもしチェックしたとすれば、日本の修正要求が、民主的でない修正個所であったがためにチェックしたのだと、要するに日本の民主化ということが、当時の一番大きな目標であった、その民主化の目標に沿うての修正である、それから向う側の承認にしても、民主化の方向に沿うての承認である、こう言うことができると思うのですが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/46
-
047・吉野信次
○国務大臣(吉野信次君) まあそういうことも言えると思います。しかし私は今から、まあこれは一知半解なことを、堀さんのような専門家に対して、申しわけないのですけれども、私の承知しているところでは、日本の占領政策というものを、いつきめたかといえば、八月の二十幾日に、バーンズ国務長官であって、そのときに陸軍、海軍というものの次官できめた、それを九月の六日の日にフラッシュしてきた。その内容を私は見ませんが、これは相当にひどいものであったということは、これは堀さんも御承知の通りだと思います。そこであとで外務省の当局者は、そのフラッシュしてきたもののテキストがあるに違いないから、テキストをぜひ見せてくれと言ったけれども、ついにこれは日本国民には示されないのでございますね。それから先ほどそういうものが一体どういうものであったか、それについてマッカーサーというものは、やはり占領政策というものをずっとこれからやってきたということも、私は想像し得ると思います。それですから、どうも司令部というものの意向が那辺にあったかということの推測は、これは立場々々によってやはり多少のそこに、何といいますか、取り方が違うのじゃないか、こういうふうに思うのです。それですから、今その表面のポツダム宣言による日本の民主化というものによって、マッカーサーがこれは忠実にやっただろうという御見解に対して、私はこれを否定する材料を持たない。しかししんからその通りかどうかということになりますと、これはおのずから私のまた見解であって、それがその通りだということを申し上げることもどうかと思います。ただそれを否定する材料を持たないということだけは、言い得るだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/47
-
048・堀眞琴
○堀眞琴君 初期の占領政策を遂行したアメリカ側の意向がどこにあったかということは、おのずからこれは完全に理解ができない面があるのです。おそらく九月二十二日の対日初期方針が出る前に、軍当局においてはある具体的な日本の管理方針というものをきめたと思うのです。おっしゃる通りだと思う。バーンズ長官はむしろこれにはそう積極的に私は参加しておらないと思います。軍としての立場、特に国防省関係の方針というものがあったであろうと想像されるわけであります。しかし少くとも初期の方針においてはそういう、たとえば日本を従属化するとか、あるいは将来はこう持って行くのだというような方向は、少くとも初期の方針の中には出てきていないと思うのです。初期の方針――私は初期というのは、大体憲法が作られたまでの段階だと思うのです。厳密に言えば一九四六年の五月のあの食糧メーデーが一つの向う側の占領方針の明確になった最初の時期だと思いますけれども、しかしそういう、たとえば食糧メーデーのときに、対日理事会において、アメリカ側があのような発電をしたというような事実はあるとしても、少くとも日本の制度の民主化ということは、やはり向う側としては連合国に負う責任としてマッカーサーを初めとしてむしろとらざるを得なかったと思うのです。マッカーサー自身は……。その軍の方針、八月の二十一日だか二十二日のあの方針、あるいはその前のポツダム宣言の発せられる以前からの、おそらく日本支配の方針というものが国防省関係にはあったと思うのです。そういう方針はあったにしても、それが明確化するのはずっとあとの方で、初期の対日管理方針の中にはそれはまだ出てこないし、また出すこともできなかったと思うのです。極東委員会が最高の権限を握っている。マッカーサー総司令官というのは極東委員会の決定に従って日本を管理していうわけです。しかもこの極東委員会の方向というのはポツダム宣言の完全な実施というところに方針があったわけです。そしてまた第二次大戦を戦ったのが民主主義擁護のためということになっております。従って日本の民主化ということが当面の大きな課題であったと思うのであります。それとマッカーサー自身の、日本をその後に、初期の方針からさらに発展して、そして四六年、七年、日本の年号でいう二十一年、二年の段階との間にかなり私は違いがあると思うのであります。日本の憲法が作られたのは対日の初期の占領時代のことです。従ってマッカーサーの方の考え方は、やはり旧憲法を根本的に改正する。それこそが日本を再建する。少くとも制度的に再建するただ一つの道であるという工合に考えておったことは間違いがないだろうと思います。ですから政府の方から明治憲法を一歩も出ないような松本案というようなものが出されて来れば、これに対してチェックするのは当然だと思うのであります。それからまた世界民主主義の原則に従って新しい草案を示唆するということもこれまた私は当然ではないか、そういうような観点から私は総司令部の案に対して日本の政府が修正した方だけを見ておるという工合にとられると私は大へん困るのです。私は当時の占領政策なり、あるいは当時の国民がどのようにこれを受け取ったかというような観点から、この問題を質問しているわけなんであります。で、私はもう一度吉野さんにお伺いしたいのですが、スキャップというか、総司令部といいますか、総司令部のとった態度が私は民主的な方向に日本を再建するというところに当時はあった、こう見て間違いないと思いますが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/48
-
049・吉野信次
○国務大臣(吉野信次君) そういえばまあそうだ、そうありたかったと私は思うのです。ただそこがどうも私には肯定もし否定もする材料を持たないのですね。それですから、堀さんのおっしゃる通りに、アメリカの軍部が主としてきめたいわゆる対日管理方式という初期のものが、そのものが初期の占領政策に現われたか現われなかったかということは、私はそれに対してこれがそうであったともそうでなかったともする材料を実は持たないわけであります。ただ、ただですよ、これは新聞雑誌の片々たる記事ですけれども、少くともその当初に、あとでアメリカのあの委員会において糾弾されたサービスなんという人間もここに来ておったのですね、それですから初期において今おっしゃったようないわゆる高遠なる――高遠というか、世界に対して恥じない日本の民主化の政策というものを堂々とそれのみをスキャップが、アメリカがやったかどうかということについては、私はそうだということを、まあ片々たる事実ですけれども、そういう事実があるのですから、ちゅうちょせざるを得ないというふうに私は考えております。しかし堀さんのお話のことを私は否定もし、また肯定もする材料を持っていないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/49
-
050・堀眞琴
○堀眞琴君 それでは先の方へ進みます。政府の原案が帝国議会に提出されたわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/50
-
051・青木一男
○委員長(青木一男君) ちょっと堀君に申し上げますが、今衆議院の本会議から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/51
-
052・吉野信次
○国務大臣(吉野信次君) ちょっと失礼しますが、緊急質問がありますからごかんべん願います。すぐ帰って来ます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/52
-
053・堀眞琴
○堀眞琴君 いいです。帝国議会の審議に付せられることになったのは六月二十日ですね、それから衆議院、貴族院を通過するまでの間にかなり長い日数をかけて帝国議会、当時の第九十帝国議会においてこれが審議が行われている。この審議の過程において国民の意思が反映しなかったということを提案者はしばしば申されているわけです。私はどういう意味で国民の意思が反映されなかったとおっしゃるのかわからないのです。ただ先ほどの場合に一々向う側の承認を得なければならなかったのだ、従って国民の自由な意思というものがそこに反映しなかったのだ、こういうだけの意味で国民の意思が反映しなかったとおっしゃるならば、それは私はちょっと筋違いじゃないかと思う。なるほどスキップから常に修正する場合に承認を求めなければならない、しかし、といって数カ月を費して帝国議会でこれを審議し、帝国議会の議員は国民の代表であり、しかもその議員は戦争中の議員ではないのです。総選挙が行われ、そうして新しく選出された議長がこれを審議したわけです。いわば国民代表によって審議された。今日と同じような普通選挙で選出された議員であり、国民の意思が議員を通して反映されたことも事実だと思います。それから国民の大衆はちょうど憲法審議の始まる前後から非常に民主的な運動が盛んになって来ております。いつか鳩山さんは当時国民は非常に混迷をしており、虚脱状態にあったというようなことをこの委員会の総括質問のときに答えられた。ところが事実はそれに反してむしろ虚脱状態であり混迷を重ねておったのは当時の政府あるいは政府の背後にある保守勢力であったと思う。むしろ国民の大衆というものは民主化運動に非常な盛り上りを見せておったと思うこれらが不十分ながらもともかく帝国議会の憲法審議に反映していると思いますその点山崎さんから、単にスキャップから一々承認を求めて行かなければならなかったから国民の意思が反映しながったというだけの意味なのか、そのほかにも理由があるのか、御所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/53
-
054・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 現行憲法が当時の帝国議会に提出されまして、相当の期間いろいろ慎重な御審議があったことは私どもも承知いたしております。ただ当時の帝国議会でございまするが、その審議はただいま堀さんからもお話がございましたように、修正については一々司令部の許可を受ける、また司令部の意見によりまして、 かえってこちらの方で考えていない項目までも現在の憲法の中に挿入させられる、こういう点から見まして、ほんとうの現在のような国会のあり方ではなかったことは事実ではなかろうかと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/54
-
055・堀眞琴
○堀眞琴君 今のお話ですと、一々向うの許可をとらなければならなかった、大体こちらで修正しなくともいいと思っていたものが向こうから示唆を受けて修正しなければならなかった、この点が国民の自由な意思が反映しないという理由だ、こうおっしゃるのですが、しかし、これはマッカーサー草案と日本の原案との修正個所の問題のところで申し上げたようにですね、向う側の意向は、日本のともするというと反動的な、あるいは自治憲法に逆戻りしようとする意向すらも政府の一部の中にはあったのだ、と、ホイットニーがライフの中に書いておる。これに書いておるのです。これが、私はやはり当時の実情ではなかったのかと思うのです。特にその点で、天皇制の護持の問題というのは一番大きな当時の支配階級――という言葉を使っては大へんまずいのですけれども、とにかく保守勢力の一番のインテレッセだったと思うのです。そういうインテレッセをあくまでも何とかして貫こうとするのが当時の保守勢力の態度だった。それをチェックするのが、私は世界の民主主義の原則の上から言って当然だと思うのです。ですから、向うがチェックした、あるいは向うが許可を与えなければならなかったということのその裏には、日本を民主化する、世界民主毛主義の方向に従ってこれを民主化するという、そういう大きな原則があったからこそそれをやったと思うのです。もしそうでなくて、向うの方が、後にアメリカ占領軍が日本に対してとったような態度をその当時もとっておったものとすれば、これをチェックしたり、あるいはまたその許可を一々得なければならないということは、日本にとって非常な拘束になると思うのです。そうではなく、向うが民主的な方向に日本の憲法を修正しよう、こういう態度をとっているときなんです。こちら側から修正について一々許可を取るということも、占領時代であり、これは当然なことであり、しかも、向う側の許可というものは、その方向、民主的の方向において行われた、という工合に私どもは解釈するのが当然だと思う。そういう点は提案者としてはどのようにお考えになっていらっしゃるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/55
-
056・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) アメリカの司令部が日本民主化の意図をもっていろいろの示唆をしたという、ただいまの堀さんの御所論に対して、別に私は反対はいたしません。ただ、審議の過程を見ましても、今も申し上げますように、一々許可を得る、あるいはまた国会が希望しないところまで無理に挿入させられたというようなことが、私は自主的、民主的の憲法だと言うことができないという理由であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/56
-
057・堀眞琴
○堀眞琴君 日本の国会、当時の帝国議会が欲しない条項についても修正を向うから押し付けてきた、こういう今のお話でありますが、具体的にはどういう個所ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/57
-
058・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) たとえば、現行憲法でも、非常によく疑問になりまする総理大臣の文民の規定のごとき、審議の過程において入ったように私は承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/58
-
059・堀眞琴
○堀眞琴君 この文民の規定と言いますがね……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/59
-
060・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 今総理大臣と申しましたのは国務大臣の間違いであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/60
-
061・堀眞琴
○堀眞琴君 文民の規定ですが、これはシビリアンという意味でしょう、原文では。シビリアンというのは、つまり軍人の経歴を持たない人という意味でここへ入れたのだと思うのです。当時の日本に対するアメリカの対策としては、日本の軍国主義を一掃する、日本の国民が非常な不幸に陥られておる、圧迫を受けておったのは日本の軍国主義にある、従って、軍国主義を一掃し、日本の民主化を達成するというためには、旧軍人の職歴を持つ者については、これを内閣の一員にすることはできない、こう考えるのは、アメリカたらずとも、日本人で少くとも民主的な日本を再建しようと思う者ならば、だれでもが考えるところじゃないか、私はそういう点で、その危険が日本国家、当時の帝国議会が意図しなかったことを向う側が示唆した、無理にそういう字句を入れさしたということで御答弁になるのはどうかと思いますが、重ねてその点の御所見をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/61
-
062・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) あるいは私の申し上げ方が悪かったかもしれぬと思うのでありますが、とにかく、そういうふうに、たとえば文民の規定のごときも、こちらの方の原案になかったものを、審議の過程において司令部から挿入を希望されてそれを挿入したというようなこの審議の過程を見まして、私どもはそれがほんとうの自主的民主的と言えるかどうかということを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/62
-
063・堀眞琴
○堀眞琴君 この文民の規定を途中から入れるようにというので入れたということですが、それはそうかもしれません。しかし、何度も言うように、日本の民主化ということが大原則なんですから、ややともすると、従来の日本の考え方からいけば、元陸軍大将、元海軍大将といったような人が、戦争後の日本の政界にも、あるいはその閣僚にもなるような危険は私はあったと思うのです。戦争前の内閣では、御承知のように、元軍人の経歴を持つ人が非常に多い。陸海軍大臣はもちろんですが、そのほかの大臣にしても、あるいは総理大臣にしても、軍人の経歴を持った者が非常に多いことは、これは申し上げるまでもないと思う。そういう日本の内閣のこれまでの歴史である。それをほんとうに正しい民主的な内閣を作り上げるためには、元軍人の職歴を持たない者を閣僚にするということは、これは当然だと思う。当時の帝国議会が気がつかなかった。そこで向う側がそういう示唆をしたということになるじゃないか。当時の帝国議会がこれに対して反対の意向を示したとすればこれは別です。私は反対をしたということを聞いていない。当時の自由党や進歩党は、これに対してどういう態度をとったのですか。その点お聞かせを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/63
-
064・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私もその当時の事情については詳しい記憶はございませんので、はっきり申し上げるわけにいきませんのでありますが、ただ、問題は、その規定を入れるそのことがいいか悪いかの問題よりも、そういう審議の経過をとったこと自体に問題があるということを申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/64
-
065・吉田法晴
○吉田法晴君 提案理由の説明その他から言いまして、ほんとうに国民の自由意思によったものであるかないかということが、大へん提案理由の必要な部分をなしております。その点は繰り返して今もお答えにもなっておるわけであります。ところが、その具体的な理由として、こちらに松本草案はもちろんのことですが、政府の案、示唆に基いて作った三月二日案等にもなかった、それをGHQから政府が希望しないのに出して来たという事実をもって自主的でなかったという大きな理由にせられるのでありますから、その間の事情を説明する資料を一つお出し願いたいと思います。秘密会の速記録は、これはまあお出しになるということでございますけれども、私どもの手元に今の憲法六十六条ですか、六十六条にございます文民でなければぬらぬという意向が向うから出た、こちらにはなかったという説明でございますから、その間の事情を説明する資料、証人でもいいですが、お出しを願いたい。想像ばかりではしょうがない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/65
-
066・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私、今の文民の規定について申し上げましたのは、巷間の著書の、ちょっと著者ははっきり覚えておりませんけれども、そのことから言ったのであります。(「頼りないじゃないか、おかしいぞ」と呼ぶ者あり)それから堀さんのただいまのお言葉の中でおっしゃっているのも一つの事実じゃないかと思っております。それからなお秘密速記録の公開の問題は、今日の衆議院の議運で大体の方針をきめてもらうことになっておりますから、後刻こちらに知らせることになっておりますので、その際秘密事項についての取扱いのことは申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/66
-
067・吉田法晴
○吉田法晴君 提案理由の重要な部分が国民の自由意思によるものにあらざることは否定しがたい事実であります。これは何べんも言っておりますから、私が言うまでもない。しかも、その実例として、今、日本の政府で考えなかった文民の規定等が向うから押しつけられてきたと、こうおっしゃる。それならばそれについて動かしがたい事実の証明がなければならぬと私は思うのであります。あなたはそのときおられなかった、どこかで読んだとこういうお話ですけれども、今の堀さんの発言を証言にせられるごときは、これはまさになっちょらん。(笑声)たれが考えてもそうでしょう。(「それはその通りだ」と呼ぶ者あり)これは堀さんはそれはあるいはそうであったかもしれぬ。しかし、そのときの空気は、戦争というものについて、再び戦争を繰り返してはいかぬ。戦争を繰り返してはいかぬから九条という問題も起って参りましたけれども、従って、従来のような内閣の中に軍人、あるいは旧軍人を入れてもいかぬと、これは私どももそのときの空気を覚えておりますけれども、それはそういう空気です。従って、こちらから出たか向うから出たか知らぬけれども、話が出たら、それはそうですということで私は条文の中に入ったと思うけれども、空気はそうだ。空気はそうだけれども、あなたは日本政府にはそういう考えはなかった、そして、向うから示唆されたと、こう言うのだから、そういう点のはっきりした生き証人か、あるいは事実――書いたものでもいいですが、事実をお出し願わなければ、あなたの言っている主張がこれは通りません。今のような、堀君の証言を証拠にして自主的でなかったというようなことを証明されるなら、これはまるっきりなっちょらんということを……、そのままでもかまいません、われわれはかまいませんけれども、お出しになった方がよかろうと思うから申し上げておるのです。どうですか、お出しになりますか、扱いだけ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/67
-
068・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私も実はその当時の速記録も十分読んでおりませんけれども、よく速記録なども読みまして、証拠になるものがありましたらお出しいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/68
-
069・吉田法晴
○吉田法晴君 速記録には書いてない、政府とマッカーサー司令部との関係ですから。ですからそれをあなたが読んだものも巷間読んだものがある云云というお話でしたから、何か根拠があってそういうことをおっしゃったんでしょうから、とにかくその証拠を出して下さい、こう言うのです。その証拠を出すか出さぬか。深したらどこにあったかどうかは、あなたの自由だから、お出しになるかどうかお尋ねしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/69
-
070・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) できるだけ探しまして御趣旨に沿うようにいたします。(笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/70
-
071・吉田法晴
○吉田法晴君 不正確だね。いいかげんな話だ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/71
-
072・堀眞琴
○堀眞琴君 私がいかにも文民の規定が入ったことについて私の質問がオーソリティがあるように思われては困る。私は質問をしているのです、文民の規定について。あなたは当時の帝国議会がそれを欲しなかった、にもかかわらず、向うから押しつけられたと、こういう御答弁なんですよ。だから、私は今、吉田君が言ったように、当時の自由党や進歩党はこれに対してどういう見解をとっておったのかと、こういう質問をしたところが、あなたは当時の事情はよくわかりません、こういう御答弁なんです。で、これは要するに、私はこういう規定が向うから示唆され、あるいは入れるように申し入れられたということは、そういう規定を入れることが、日本の軍国主義を一掃して、もう一度戦争を起さないようにしようという、つまり平和の希望や、日本の国家の平和的な再建を望むところから、こういうような規定が向う側によって日本側に申し入れられたと思うのです。その点を私どもは重要視しなければならぬ。あなたの方は、ただ向うからこういう規定が帝国議会に押しつけられた、だから審議の過程は必ずしも自由意思に基くものではなかった、こう言う。しかし、幾ら自由であったとしても、その帝国議会がもし反民主的な方向に向ってこれを修正しようとするなら、これはわれわれとしても、当時の帝国議会に対しては非常に残念だと思わなければならぬのですが、私はスキャップが存在していたことが非常に幸いであったと思うのです。そういう点でまあ吉田君から資料の提出を求められておりますが、できるだけ早い機会にそれらの資料について御提出を願いたいと思う。
さらに質問を続けますが、衆議院、貴族院、それぞれ相当の日数をかけて、特別委員会においてこれが審議された。さらに小委員会に付託されて逐条審議が行われた。修正等も行われた。その修正の場合には、先ほどから言うように、確かにスキャップの許可を特ておったということも事実なんです。それは私は否定しないのですが、その場合でも、ちょうどマッカーサー草案に対して、政府側が原案を作る場合に修正をしたと同じような考え方で修正した。つまり、民主主義の原則の上に立って、日本の実情に即しないものについては努めてこれを修正する、こういう態度をとったのだと思う。もちろん、それが民主的でないものについては、向う側でもチェックしたでありましょう。しかし、民主的な方向に修正されたものならば、向う側としてはこれに対して何ら異議を差しはさまなかったと思いますが、その点はいかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/72
-
073・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 大体の方向としましては、ただいま堀さんの御指摘のように、日本の民主化ということを原則に、基本的な態度としてとっております以上は、それに反するような修正を加えるということは、私は想像できないことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/73
-
074・堀眞琴
○堀眞琴君 そうしますと、つまり、自主的に審議されたということを御承認になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/74
-
075・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私は、その内容のよしあしを論ずるよりも、この過程を考えました場合に、これが自主的でないということを繰り返して申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/75
-
076・堀眞琴
○堀眞琴君 この憲法ばかりでなく、どの法律も、その内容が問題なんです。もちろん、その審議の過程におけるいろいろな、たとえば今あなたのおっしゃるような総司令部との関係ということももちろん問題になります。しかし、くどく申し上げるようですが、日本の民主化という大原則の上から、その内容がそれに沿うて定められており、そしてまたその方向に沿うて日本の再建が行われようとするときに、幾ら自主的といったからといって、その大原則を否定するような、あるいはこれに反対するような方向を自由に出せる、それが自主的なんだと、こういうことには私はならぬと思う。少くとも世界の歴史の発展の方向に沿うて、憲法でも、あるいはその他の法律でもきめられていかなければならぬと思いますが、あなたの言葉で、裏から申し上げますと、どんな反動的な立法であれ、こっちが自由にきめるならそれでいいんじゃないかと、こういう結論になると思う。私はそういうものじゃないと思う。ましてや憲法でありますから、あくまでも民主的な原則の上に立って、その方向がきめられていかなければならないと思う。ですからあなたは形式だけを問題にされているが、私は形式も考えながら、その持っている内容というものがより重要だという見解に立っている。これはどこまでいっても並行線になるかもしれません。しかしできるだけ私はこの質問を通じてあなたの考え方を改めていっていただきたいということを考えているんですよ、だからくどく申し上げているんですがね。で、その百日以上にわたっての帝国議会の審議において、その内容が民主的な方向に定められて、そしてそういう方向において現行憲法が制定されたとみなければならぬ。そうしてまた、国民大衆はこの帝国議会における憲法審議に対しては、非常な関心を示しております。私は何もここに民間にできた幾つかの憲法草案についての説明は申し上げませんが、とにかく国民大衆というものは、マッカーサー草案を基本にして日本の憲法原案が作られ、それが帝国議会において審議されているというので、新聞も非常に大きく取り扱っておりましたし、ことに特別委員会におけるところのいろいろな質疑等は、われわれが今日想像する以上に大きく新聞で取り扱っているんです。国民も従って非常な関心を持っておったわけです。そういう中でこの憲法原案が審議、可決されていった、従って私はその過程を実質的にとらえるならば、決して国民の自由な意思がそこに少しも反映しなかったと言うことはできないと思う。あなたの提案の一番大きな理由は、国民の自由な意思が反映しなかったという点にあると思うんですが、その点では私は、提案者としてはこの提案の理由というものが成り立たないのではないかとお考えになるのが当然だと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/76
-
077・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 日本の民主化の原則を貫いたというその点につきましては、私は何ら異議を唱えるものではありません。その当時からそれでよかったと思いますし、また今日憲法の再検討をいたします場合におきましても、この日本の民主主義の原則はわれわれはあくまで堅持していきたいということは、繰り返して申し上げておる辿りであります。ただ制定の経緯は、たびたび申し上げまするように、当時の帝国議会の審議にいたしましても、今日の国会の審議とは非常に違っておりました。占領治下にあった時代、しかも占領の初期におきまして、国会の審議の報告も一々司令部にやらなければならぬ。国会の審議についても、いろいろ向うから示唆を与えられるということが、果して自主的であり、ほんとうの民主主義であるかという点になると、私はその点では堀さんと見解を異にするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/77
-
078・堀眞琴
○堀眞琴君 去る四日のこれは田畑君の質問に対する山崎さんの答弁ですが、現行憲法は形式的には明治憲法と違う、明治憲法と現行憲法とは性格が同じかどうか、こういう質問があったときに、形式的には違う、こういう答弁をされているんです。形式的には違うという意味は、どういう意味なのか、田畑君から、全ての質問がありませんでしたので、私その点明治憲法と現行憲法とを比較してみて形式的な違いですね、ただ天皇主権が国民主権になったとかなんとかいうことの羅列をもって違うとおっしゃるのかどうなのか、その点ちょっとお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/78
-
079・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 明治憲法と現行憲法が形式的に異なるという答弁を申し上げましたのは、明治憲法は申すまでもなく欽定憲法であります。現行憲法は改正の手続は明治憲法によっておりまするけれども、結局国会におきまして国民の総意によってきめられたものと考える、その点は形式非常に違うと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/79
-
080・堀眞琴
○堀眞琴君 今の御答弁は大変よかったと思うのです。(笑声)国公の総意によってきめられた憲法である、そうするというと、国民の自由意思が反映しない憲法だというあなたのこれまでのお言葉は、そこですっかりくつがえってしまうのです。今あなたは国会の総意によってきめられた憲法であり、明治憲法は欽定憲法だと、そうすると提案の理由の説明がなくなるのですが、どういうのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/80
-
081・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) ただいま申し上げましたのは形式の違いを申し上げたのでありまして、現在の憲法が形式は国会の歳を経ておるから、これが国民の自由意思によってできたものと、こういうことを私は申し上げておるわけじゃありません。この制定の経過からみましてたびたび申し上げましたように、ほんとうに国民の盛り上る意思によって今日の憲法ができておるとは私はおもいませ。その点ははっきり申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/81
-
082・堀眞琴
○堀眞琴君 今、国会の総意によってできておる憲法だ、こういう御答弁だったのです。明治憲法は欽定憲法、現行憲法は国会の総意によってでき上った憲法、つまり国民の意思が反映した憲法だ、こういう御答弁であった、ところがそれを言い直されて、そういう意味ではない、こういう工合におっしゃられるのですが、その間のあなたの考え方はだいぶ違ってきてしまっているのです。先には確かに国会の総意によってできた憲法だ、こうあなたは答弁されているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/82
-
083・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私は、形式をお尋ねになりましたから、形がそういう形になっておると、しかし国民のほんとうの盛り上る自由意思によってできたものだということを申し上げておるわけじゃないのでありまして、その点は一つ誤解のないようにはっきりしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/83
-
084・堀眞琴
○堀眞琴君 この憲法改正の論拠の中に、「わが国情に照らし種々検討を要すべき点の存することも、これを認めなければならないことと存ずるのであります」、つまり国民の自由意思が反映しなかったということと、それからその後の九年間における実施の経験からみて、国情に照らして種々検討を要すべき点がある、こういうことを二つの理由としてあげられています。今までの質問は主として国民の意思が反映したかしないかの点について、私は質問を申し上げたのです。今度は実情に照らして、果して種々検討を要すべき点おそらくこの間発表になりました自民党のこの憲法改正についての基本的態度、これが山崎さんやなんかのお考えだろうと思うのですが、これを拝見しますというと、どうも私どもには納得ができないのです。そこでこの「国情に照らし種々検討を要すべき点」、どういう点が具体的に研究を要するか、これにはもちろん書いてありますがね、しかしこれが、果してこの書いてあることが直ちに「同情に照らして種々検討を要すべき点」であるかどうかということになるというと問題だと思う。たとえば第一条の象徴という問題、これなども私はかなりこれを詳細に読んでみたのですが、どうもこの「象徴」をほかの言葉に変えなければならぬという理由が見つからないのです。なぜ象徴という言葉が適しないのか、単に翻訳的である、あるいは憲法法上きわめて成熟しない言葉である、未成熟な言葉であるというだけの理由で象徴という言葉を変えようとされるのか、最近の発表の自民党の案では、必ず変えるとはいっていないのですけれども、しかし変えようとする意見もある、元首にしようとする意見もある、こう書いてあって、きわめてあいまいなんです。山崎さんはこの象徴という考え方をどのようにお考えになっておるか、それをお聞かせ願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/84
-
085・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 現行憲法のわが国情に沿わざる点はどういう点かという御質問でありますが、今、堀さんも御指摘になりましたように、わが自民党におきましては昨年の十二月に党内に憲法調査会を設けまして、ようやく実は最近基本的な態度と問題点というものをきめたわけであります。これはお手元に差し上げました資料によってごらんいただけば、前文を初めとしまして各条章にわたって私どもとしては今後日本の国情に即するような方向で検討を加えたい。これがお手元に差し上げておりまする問題点であります。もとよりこれは問題点でありまして、これをどういうふうに結論づけるかということは今後の問題であります。わが党の調査会におきましても、順次審議を続けまして結論を出して参りたいと考えております。なお本法律案が通過いたしまして内閣に調査会がかりに設置されるといたしますれば、その調査会におきましてもそういう点につきましてもいろいろ、かりに憲法改正を必要とするという場合には、これが問題になりはしないかというふうに私どもは考えているのであります。
今具体的に憲法第一章の象徴の問題についてのお話がありましたが、象徴の問題につきましては、問題点としてここに掲げられておりまするが、これをどういうふうに表現に変えるとか、あるいは元首にするとかいうような点につきましては、結論は全然まだ出ておりません。かつて自由党の憲法調査会におきまして、結論として元首という言葉を天皇にかえる名称として使いたい。天皇は国の元首であるというふうな表現をしたいという結論を一応出しております。ところがこの元首という言葉が、御承知のように明治憲法の天皇の地位でも復元するような誤解が世上非常にあるのであります。従いましてこの元首という言葉につきましてはよほど慎重な検討を要するというので、この問題点としてここに掲げておるわけであります。ただ現在の憲法では、堀さんも専門家であられますから御承知のように、天皇の地位と言いますか、国を代表するものについての規定が私どもは非常に明確を欠いておると思うのです。これは天皇の国事行為の第七条からもくると思いまするが、ある項によっては内閣の助言と承認により、ある項については認証を要するというような点から、国の代表者につきましてもいろいろ学説もあるわけであります。そういう点を明確にしたい。決して天皇の実権をふやすというような考え方は毛頭持っていたいのであります。国民主権の原則はあくまでこれを堅持していきたい。こういう考え方を持っておるわけでありまして、そういう点を問題点として今後われわれとしても検討を加えていきたい。これが現在の考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/85
-
086・堀眞琴
○堀眞琴君 山崎さんは象徴という言葉について率直にどういうお考えを持っていられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/86
-
087・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 象徴の言葉につきましてはわが党の調査会におきましても、ただいま申し上げましたようにまだ結論を得ておりません。議論としては象徴という言葉をそのまま存置すべしという意見もあります。あるいはまたこれを適当な言葉にはっきり変えた方がいいんじゃないか、こういう意見もございまして、まだ私の結論もここで申し上げる段階には至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/87
-
088・堀眞琴
○堀眞琴君 象徴という言葉では対外関係、国家を代表する関係において明確を欠く、こういうお話ですね。しかし象徴という言葉は、たとえばイギリスでは古くから憲法解釈の場合に使われておる。単に解釈だけでなく、一九三一年のウイストミンスター法では御承知のように象徴という言葉が明確に規定されているのです。グレートブリテンを構成する諸民族の結合の象徴としてキングというものはあるのだ。ウイストミンスター法はイギリスの憲法的規定です。イギリスでは古くから、古くからといっても十九世紀の時代からクラウンの地位について象徴という言葉がバジョットの憲法論を読んでも、あるいはダイシーの憲法論でもあるいはまたかなり進んだシドニー・ウエッブの憲法論でも、ことにシドニー・ウェッブの著書の中では将来大英国家が社会主義的構成をとった後においても、クラウンというものは大英国家を構成する各社会主義国家の結合の象徴だということが述べられている。象徴という言葉によってイギリスの国王の地位が憲法上保証され、そしてそれがまたグレートブリテンという各ドミニアンによって構成される国家の代表者であるということが、この象徴という言葉によっておのずから示されていると思うのです。特別にイギリスの国王を対外関係においてこれを元首とする、あるいは代表者とするというような規定は、今日までの憲法的な諸規定の中には出ていないわけです。イギリスの例だけ申し上げるのは、イギリスの場合が一番その点について明確な規定を作っているからなんです。私はそういイギリスの憲法や歴史や、あるいはまた現在においてイギリスの憲法がイギリス国家を構成している各ドミニアンによってどう考えられているかというようなことから見て、象徴という言葉が同時にまたグレートブリテンを代表する地位だ、こういうことを私はそういう工合に見ることができる。従ってことさらに象徴という言葉をやめて、元首にするということは非常に私は重大な問題だと思う。しかも元首という考え方、これはいろいろあります。現在の憲法の中に元首という言葉を使ったものはそんなには私は多くないと思います。私は数えてみないけれども、おそらく十とはないと思います。現在の憲法にですよ。古い憲法ですね、第二次大戦前あるいは第一次大戦前の憲法には元首という言葉が相当ありました。しかし現在世界において行われている憲法の中で、元首という言葉を特別に憲法上の規定としているものはごくわずか、十本の指を屈っすることができるかどうかというところだろうと思う。その元首という言葉が使われなくなった理由には、これはいろいろ憲法学上の問題があると思いますが、とにかく元首という言葉によって、たとえば日本の憲法が、明治憲法が持っておったような統治権の総攬者としての国の元首である。こういう考え方、あるいはまた共和制の国において執行権あるいは行政権の首長としての大統領が元首であるという考え方、それから今の憲法の中にもおそらく一つか二つくらい、外国に対する場合には、元首としての地位を持つのだということを規定したものが一つか二つくらいあると思いますが、元首という言葉には、そのようにそれぞれその内容とするところがかなりまちまちなんです。従って元首という言葉がむしろ象徴という言葉よりも明確を欠く、あるいはその元首たるべき者の地位なり、あるいはその権限なりについて、きわめて不明瞭であるというのが私は最近の憲法学において、憲法上において元首という言葉があまり使われなくなった理由ではないかと思うのです。それを何の理由があってこの際象徴という言葉をやめて元首にするか。あなたは元首にすると限っていないとおっしゃいますが、古い自由党の草案では元首ということが書かれていることはあなたもおっしゃった通りです。おそらく憲法調査会等において、この第一条が問題になる場合には当然象徴という言葉をやめようというような意見が、あるいは支配的になってくるのじゃないかということが懸念されるのです。そうなるとは思いませんか、懸念される、そういう懸念がたくさんあるのです。なぜ象徴じゃいけないのか。象徴で十分国家の対外的代表者としての天皇の地位というものが表明される、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/88
-
089・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 堀さんのお話のように、各国の憲法を見ましても元首という言葉を使っている国は、おそらくまあ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/89
-
090・堀眞琴
○堀眞琴君 幾つぐらいありますか。私、数えてみないからわかりませんが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/90
-
091・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) はっきりした数字は知りませんが、おそらく十カ国ぐらいじゃないかと思います。しかし国の代表者というものはどこの憲法でも――イギリスはむろん不文法で、ございますから、はっきりこれはせぬかもしれませんが、少くとも成文憲法であるところの国の代表者がはっきりしないという憲法は私はおそらくないのじゃないかと思います。現在の日本国憲法では、御承知のように学説としてもいろいろ――あるいは総理大臣と天皇が国を代表する地位を分ち合うという説すら一部にあるわけであります。そういうふうに不明確でございまするから、私どもはこの際はっきりさせたい、こういうことでありまして、先ほども申し上げましたように、自由党ではそういう結論は出しておりますけれども、今度のわが党におきまして研究しておりますのは、別に象徴をやめてしまうとか、あるいは元首にしてしまうとかいう結論は全然出ておりません。御心配のようなことはないと思います。なお、内閣にできまする憲法調査会におきましては、ぜひ一つ皆さんのいろいろの御意見を伺いまして結論を得られることが妥当であると、こういうふうに考えておりまするから、御心配のような点は私は少し取り越し苦労と申しますか、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/91
-
092・堀眞琴
○堀眞琴君 取り越し苦労とおっしゃいますが、実際取り越し苦労じゃなくて、そういう危険が多分にあるから私は質問しているのです。なお、国家の代表者としてのはっきりした規定を設けたい、これはおそらくは対内関係ではなくって、対外関係の面でお話になっていると思うのです。対内関係では政治の最高責任者は内閣総理大臣ですから、これはもう一点の疑問の余地がないと思うのです。対外関係において内閣総理大臣が代表者なのか、それとも天皇が代表者なのかわからぬ、それを明確にしたい、こういうお話ですが、対外関係において国の代表者は天皇であると、もし規定したとします、単にそれが象徴的な地位においてそういう対外関係での代表者ということであれば問題は、だいぶ違ってくる。ところがその後のあなたの方で出されている(2)の天皇についての国事行為の調整というところを見ますと、政治的な権限に属するものが国事行為の中に含ませられるような危険を持っている。自由党のさきに発表された草案では非常にたくさんある。今憲法の国事行為に関する規定の中には十の――天皇が国事行為として行い得るものは十だけ規定されているわけです。別に内閣総理大臣の任命と最高裁判所長の任命の権限、これは政治的な行為ですが、しかし国事行為としては十だけあげてある。ところが自由党の案を見ますというと、それをうんとふやそう、しかもそのふやされる部分には政治的な権限に属すると思われるものが大半を占めている。それらと関連さして参りますというと、単に対外的に国の代表者を明確に規定するということだけでなくて、それに関連しての天皇の権限の強化、あるいは政治的な権限をこれに持たしめるというような危険が起ってくるわけです。私は、ですからこの国事行為の調整というところに述べられていることと関連さして、これを問題としなければならぬと思う。国事行為が、従来のあったもののうち、従来の十の中にも政治的な意味を含んだものがたくさんあります。それらを削除し、そして天皇は国家の象徴である、対外関係においては国を代表するものであるというような規定を設けようとするならば、これは大して問題はないと思う。ところが現在でも政治的な行為が国事行為の名前において行われる。もちろん内閣の助言と承認が必要ですが、とにかく現在でもそうなんです。いわんやこれを拡大するというような考え方の上に立って、対外的に天皇を国の代表者とするということになりますというと、私の心配は単なる杞憂ではなくて、ほんとうに日本の国家の将来の民主化というものがここで非常に大きな脅威にさらされるようになるのじゃないか、そこで私はお尋ねしておるわけです。その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/92
-
093・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 天皇の国事行為につきましても、私どもは決して実質上の権限を今よりも強化するという考えは毛頭ございません。ただ形の上におきまして、資料にも申し上げておりますように、「現行憲法第七条における国会の召集その他の場合と同様実質はもちろん内閣の決定によるものとし、単に行為の外形が天皇の名においてなされる、この国事行為について調整を要する、こういうことがわれわれの考えでありまして、実質的に国事行為を天皇に与えるという気持は毛頭ないわけであります。しかしこういう点につきましても、憲法調査会におきまして十分御検討をいただきたいと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/93
-
094・堀眞琴
○堀眞琴君 山崎さんの御答弁は、憲法調査会ができてから十分検討するということなんで、どうも前に、一昨年に出された自由党の憲法改正に関する自由党案というものをまるで無視された御答弁をなさっておるわけです。なるほど最近発表されたものにはおっしゃる通りのことが書いてある。しかしあなたの党が、たとえばこれまでの選挙の場合であるとか、あるいはその他の会合等において、憲法を改正しなければならない、しかも具体的にこうこうであるということが公けの席でも述べられておる。私どもは一昨年あなたの党が発表された憲法改正に関する草案というものが、現在の自民党においても同じように考えられている草案ではないかと思う。今それはそうじゃない、自民党と自由党は違うのだというお話なら――改進党も同様に考えていますね、もう保守合同によって違うのだということなら、それはそれでよろしゅうございますが、しかし国事行為の調整というところですね、栄典を授与することと同時に、恩赦であるとか大赦というものもまた天皇の国事行為にしよう、そういったようなことが……それからまた「憲法第七条における国会の召集その他の場合と同様実質はもちろん内閣の決定によるものとし、単に行為の外形が天皇の名においてなされるものとする」、こういうことになってはおりますけれども、しかしここでいう実質が、国事行為の調整という名目で、そうして天皇の行われるところの国事行為の拡張がやはりあなた方が当然考えていられるところであると私は思います。そうなりますと、象徴という言葉を存置する、しないにかかわらず、問題だと思う。ましてや象徴という言葉を、たとえば対外的には国を代表するものであるということにかえてみても、その代表者ということによってまたそこに政治的な権限等も生じてくるわけです。そうなりますと、国民主権の原則はあくまでも尊重するつもりだと、こうおっしゃられても、国民主権の実質はその点からくずれ去っていくのじゃないかということが心配される。その点もう一度御所見を伺いたいと思います。大へんしつこいようですけれども、明確にしたいと思いますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/94
-
095・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 天皇の権限につきましては、先ほどからたびたび申し上げておりまするように、これを強化するということは毛頭ございません。この第七条の国事行為の調整と申しますのは、現在ある行為については内閣の助言と承認、ある行為については認証と、こういうような点において検討をして調整を要するのじゃないかという点を問題点にしておるわけであります。なお申すまでもないことでございますけれども、ただいまお話のように、自由党時代あるいは改進党時代には、一応の憲法改正についての意見を決定いたしております。しかし、これも今度の新党におきまする、自由民主党におきまする憲法調査会においては、参考にはいたしますけれども、決してこの結論にこだわるつもりはございません。われわれの党の調査会におきましても、できるだけ各方面の御意見を伺いまして、学界はもとより、また各界の意見を十分に伺いまして、取り入れるべきものはなるべくこれを取り入れていく、こういう方針で今進めておるわけであります。
繰り返して申し上げまするけれども、象徴という言葉につきましても、まだわれわれは結論を得ていないわけでありまして、これを元首にするとか、象徴をやめるとかいう結論は、まだ全然出しておりません。今度の内閣のこの調査会におきましても、こういう点こそ十分に御検討をいただきたいと存じておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/95
-
096・木下源吾
○木下源吾君 関連質問。今、天皇権の問題が出たようですが、これに関連して、今度の憲法調査会はやはり憲法を変えよう、部分的かあるいは根本的か、それは別として、変えようという意図を持っておるようでありますが、今までの歴史的に見て、憲法を変えるということは一つの革命ですね、革命的な一つのことになろうと思うのです。またそういうときに、しばしば憲法というものが既住においては改められた。そこで今度この調査会を出す根本の意図は、何かその革命的な何らかの意図を持っておるのか、またそういう条件が、どこかにあるのか、そういうようなことについて一つ御所見を伺いたい、まずそれをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/96
-
097・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 提案趣旨にも申し上げてありますように、現行憲法の国民主権の問題、あるいはまた平和主義の問題、あるいは基本的人権の尊重の問題、この三大原則につきましては、われわれはあくまでもこれを堅持し、またこれを大いに擁護していきたい、こういう考えであります。従いまして、憲法の改正点は、要するに制定の経緯と、それから過去九カ年におきまする実施の状況にかんがみまして、国情に沿うような憲法の改正と申しますか、再検討をいたしたい、こういうことでございまするから、そのことによりまして、ただいまの御質問はおわかり下さると思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/97
-
098・堀眞琴
○堀眞琴君 実は大へんわがままを申し上げて恐縮ですが、第一章のところで私はきょうの質問は打ち切って、次に、第二章以下の質問は次の機会に留保したいと思います。これで私のきょうの質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/98
-
099・木下源吾
○木下源吾君 今のお答えですが、今のお話のように、国民主権、平和、基本的人権、これはそのままだということになれば、今の憲法を何も変える必要はないのだ、こういうように考えられる。この点についてはどうですか、お考えは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/99
-
100・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 木下さんにお答え申し上げますが、私どもといたしましては、お手元に差し上げておりまする問題点をごらん下さいましても、前文を初めといたしまして、各条章にわたりまして、私は検討をする問題はたくさんあるように思います。従いまして三大原則はむろんこれは堅持して参りますけれども、国情に沿うように検討すべきものが多々私は現在あると、こういうふうに考えまして、この調査会の法案を提出したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/100
-
101・木下源吾
○木下源吾君 憲法を変える趣旨とすれば、わからぬこともない。大体言われていることは、国民主権を尊重する、そのままにしておく、今のようにやっておくのだというけれども、第九条の問題を改正するというようなことと関連しまして、やはり一口にいえば、皇軍を作るというところに基本的な考え方があるのじゃないですか、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/101
-
102・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 憲法第九条につきましては、もとより再検討いたしまする場合の重要な問題の一つであることは、ただいまお話の通りだと思います。ただ、しかしながら憲法再検討の場合には、第九条に限るわけではありません。先ほども申し上げましたように、前文を初めといたしまして、各条章にわたって、現在の国情に合うような再検討をいたしたい、こういう趣旨でございまして、決して私どもは九条のために全面的の検討をするということではないことをはっきり申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/102
-
103・木下源吾
○木下源吾君 それはその通りでありましょうけれども、前文からみんなということになれば――改めるということになれば、今言うた通り、国民主権であるとかあるいは平和、あるいは基本的人権、こういうものと関連してくる。従って私の今お尋ねしておることは、端的にいえば、皇軍を作るということになれば、今作っておる自衛隊に何か精神的よりどころを与える、同時にこれは昔のように、軍隊は天皇の軍隊だ、従ってこれは帝国憲法だ、帝国主義だ、帝国憲法になるのではないか、こういうようにわれわれは考えられるのですが、そこで端的に今具体的にお聞きしたのは、いわゆる皇軍を作るという目標でこの憲法の改正というものをお考えになっておるのではないか。果してしからば、これは大きな革命的仕事じゃないか。この新しい憲法ができたのは、日本は敗戦という大きな条件によって、そうして革命が遂行されたわけだ。これを今私の申し上げるような皇軍を作るために悪法を改正する、従って前文を改めなければならない。それを平和主義だ、あるいは国民主権だといってそれはごまかせるものではない。もしこれをごまかし得たとしても、それは内容においてはっきり矛盾が出てくるのじゃないか。それよりも端的にあなた方は、この憲法は、第九条に関連して、同時に今やっておる自衛隊というものをこのままではいけない、精神的よりどころを与える、それにはやはり天皇は、昔のような天皇主権ですね、そうして軍隊は天皇の軍隊だ、ここでやっていこう、こういうお考えであろうと思うからお尋ねしておるので、これを率直に一つお答えを願いたいのです。国民が今そういうことで、ごまかされるような状態にないのだから、はっきり言っていただけば、それでおのおの堂々と議論ができると、こう考えるので、どうですか、その点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/103
-
104・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私どもが現行憲法に全面的の再検討を要すると申しますのは、先ほども御質問にお答えしましたように、憲法九条、ことに第二項の問題でありますが、この問題も一つの重要な点だと思います。それはむろん私は率直に申し上げてよろしいと思います。ただ、しかし全面的の検討をいたすと申しますのは、決して九条だけに限っておりません。先ほども申し上げましたように、この三大原則を堅持しつつも、わが国情に沿うように、前文、第三章から第十一章まで、それぞれ検討を加えていきたい、そのためにこの内閣に調査会を作っていただきたい、これが今回出しました法案の趣旨でございます。率直に申し上げましてその通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/104
-
105・木下源吾
○木下源吾君 私のお聞きしておることにはお答えにならないので、それはいろいろ改正していかれれば、具体的には、この前は国民を臣民という言葉が使われておった。これをその国民したのだ。いろいろこういうようにみな改正をしていけば、国民を臣民にするというように改正をしていけば、みんなに関連をしていくのだが、帰するところはやはり天皇という制度、天皇主権にしなければそういうことにならないし、そうでなければあなた方の考えておるような再軍備を合理的にやることはできないのではないか。こういう点を考えていけば、あなた方何ぼこれは平和憲法である、平和だ、あるいは民主主義だ、あるいは基本的人権だ言うても、それと抵触するものが必ずできてくるのです。矛盾になるのです。これを矛盾なくして、やっていかれるというならば、今の憲法でいいじゃありませんか。こういうことに私は結論なると思うのです、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/105
-
106・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) せっかくの御意見ではございますけれども、私どもは木下さんとその点においては見解を異にするものであります。私は国民主権の原則はあくまで堅持して参りたいということはたびたび申し上げた通りでございまして、それは憲法九条第二項の改正と別に関係のない問題だと思います。国民主権の原則のもとに、憲法九条第二項を最小限度の何といいますか、国力相応の自衛力というものを、はっきり申すと憲法の疑問のないようにはっきりさせる。憲法九条第二項によりまして、従来から国会においても憲法違反説がたびたび起っているのであります。そういう点をはっきりさせたい、そういうことでありまして、決して国民主権の原則とこの今の問題とは相反するものでないと確信を持って申し上げていいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/106
-
107・木下源吾
○木下源吾君 かような国民主権、国民主権ばかりは変えないのだと、こういうようにおっしゃっているが、何ゆえにそればかりに力を入れられるか。憲法調査をして、そうしてこの改正するか、あるいは改悪するか知れませんが、それをやろうという。何ゆえにそれでは国民主権だとかあるいは平和主義だとか、基本的人権とか、それだけは変えないということを、今何のためにそういうことを言わなければならないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/107
-
108・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 国民主権の原則は、私は日本の民主化のためには絶対不可欠の問題だろうと思います。従いまして、これを変えるということは、今日わが国としてはとるべからざる問題であろうと、こういうふうに考えておるわけでありまして、国民主権の原則はあくまで堅持していくことが、わが国情に沿い、また今後の国家の発展のためにも適当であると、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/108
-
109・木下源吾
○木下源吾君 いやしくも調査会を作ってそうして新しいものを作ろうというときにだ、そういうことを何も考えの根本に置いてそうしてやらなくても、それを拘束したくたっていいじゃないか。これはどこでそういうことを考えておやりになったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/109
-
110・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私どもは国民主権の原則あるいは平和主義、あるいは基本的人権の尊重、これは動かすべからざる問題であろうというふうに考えております。これはそうじゃないという御意見の方もあるいは多少あるかもしれません。あるかもしれませんが、私どもはそういう考えであるということをこの際申し上げておるわけであります。憲法調査会におきましてほかの議論をされる方はこれは自由であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/110
-
111・木下源吾
○木下源吾君 初めは自由だというけれども、提案者はそういうことを拘束して言っておられる。これは何の意図を持ってやっておられるか。逆に言うならば、提案者は何かはっきりしたものを持って、ほかのものを持ってやる、こういうようにわれわれは考えても当然だと思うのです。それゆえにさっきからお聞きしておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/111
-
112・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 今いろいろ御質問がございまして、どういう考え方であるかというお尋ねでございましたから、私どもは今の三大原則はあくまで堅持すべきものであるということを申し上げただけでございまして、決して木下さんの御意見を制限するような趣旨で申し上げた意味ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/112
-
113・木下源吾
○木下源吾君 これは調査会は内閣に置くんでありましょう。で、少くとも国民主権の憲法、その趣旨に沿うならは、国会に置くべきじゃないのですか。そうだよ、その点がすでに国民主権というものを考えておらないという証拠ではないか、私はそう考えるのですが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/113
-
114・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 憲法調査会を国会に置くべきか、あるいは内閣に置くことがどうであるかという問題は、当委員会でもたびたび出ました御質問であります。その際にもお答えを申し上げておいたのでありまするが、今回の調査は、その構成をごらんになりますとわかりますように、国会議員三十名と学識経験者二十名、すなわち民間人を国会議員と同列に置きまして、そうして広く憲法問題に対しまする世論を調査会に反映せしめたい、こういうことでこの調査会の構成ができております。従いまして、民間人を同列にする委員会といたしましては、国会に置くことよりも内閣に置く方がより適当であろう。国会にこういう民間人を加えました委員会というのは、先例もございませんし、そういう点から考えても内閣に置くことが適当であろう、こういう趣旨でこの法案ができ上っているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/114
-
115・木下源吾
○木下源吾君 どうもおかしいな。その内閣に置いても民間人を置けば国会と同じような性格じゃないかと、こうおつしゃるのですか。国会は民間代表、国民代表だ、内閣に置いても、調査会の中に民間人を置けばこれは国会と同じものだと、こういうふうにおっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/115
-
116・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) そういう趣旨ではないのでありまして、民間人と国会議員を同列に置いた委員会でありますがゆえに、国会に置くことは適当ではなくして、内閣に置く方が適当である、こういうことを申し上げているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/116
-
117・木下源吾
○木下源吾君 私のお聞きしたいのはですね。この国民主権ということを強くまずあなたがうたっておらるる、こういうのであるから、しからばやはりその線に沿って、その趣旨に沿って、国民の主権というものをあくまでも中心にしてやるならば、国民のいわゆるこの代表、最高機関である国会に置くのが正しいではないか、こう私はお聞きしているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/117
-
118・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) この調査会におきまして憲法の問題を再検討をして、かりに結論が出ましても、これは別にその結論を直ちに国会に提出するわけではございません。国会はむろん、御承知のように、憲法の提案権につきましては、私どもは内閣にも提案権はあるという説をとっておりますが、国会、議院にあることは憲法の条章によって明らかであります。従いまして国会において、審議されます場合の一つのこれは参考意見にはなるかもしれませんが、この案自体が、その結論自体が何も国会において審議をされるものでは、ございませんのでございます。その点を御承知おきを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/118
-
119・木下源吾
○木下源吾君 いろいろおっしゃっていることは筋は通らない。これは通らないように仕組んでいるから通らない。これはやむを得ないだろうと思います。しかしもうすでにけさも私のところへきたパンフレットを見ますと、皇軍を作ることが一番いいのだ、こういうようなのを堂々とパンフレットをそういうものを配布しているんだ。あなた方は御承知だろうと思うんです。で、こういうようなことが一面において出版物でどんどん出ているし、あたかも、そうしてあなた方は何を作ろう、今度調査会を作ろうというのは、いろいろほかの草案を見ますと、自由党か民主党か、そういうような草案をちょいちょい見ますとね、その内容は、やはり国民主権というものは口に言っているけれども、条文に表わすやつはやはり天皇主権ですね、そういうようなのがどんどん新聞や何に、またこの草案になって出ておるのですね。ですから国民は、まあ端的に言えば一つのことをとってみても、また一銭五厘の兵隊をとるような憲法を作るのじゃないかと、いいですか、そういうように考えて心配しているのですよ。それを私は聞いておるのだ。あなた方はそうではないとこう口では今おっしゃっても、だんだんやっていくうちに、あなたはそうじゃないと思っておるのだろうけれども、こういう段階を経ていっていくうちに、今は一銭五厘のはがきがないから何だけれども、五銭の兵隊を何するのじゃないか、けさ私のところへ来た。パンフレットを見ますと、義勇軍を作るとかいう、もうそういうような傾向にどんどんみな行っておるのです。あなたたちはここでは、やあ国民主権だとか平和主義たとか、民主主義だとか言って、基本的人権を守るなんて言っておるけれども、国民の側には直接そういうなのがびんびん響いてきておるのですよ。ですから私どもはしつっこいようだけれども聞いておるのだ。まごうことはないのだ。今のこれを発議しておる側では、何とかして精神的のよりどころをそういう帝国主義の帝国憲法、いわゆるそういうものに進めていきたい、いかなければアメリカの要請に沿いかねるのだ、こういうように進んでいっておることは目に見えておる。事実そうなのだ。だから率直にあなた方が今ここの場面だけを言いのがれればいいのだという態度でなく、実はわが国の国情は、国民はまだ封建的であるし、家族制度もまた復活させにゃならぬ、共同社会なんて大きくて、とても国会議員もよけいとれないから、できるだけ小さい選挙区で、共同社会を小さくし、そうして家族制度というようなもので縛りつけておいて、そうしてつまり反動的な政治を行うのが一体日本の国情だ、それをやらにゃいかんぞ、こういうように考えておるのじゃないかと私は思うのです。また実際においてそういうことをおやりになっておる。ですから全体を見て、諸君のおやりになっておることは、何と言ってもこれは、国情というのは、古い国情に戻す努力を一生懸命しておるのであって、近代的な大きい共同社会にして、そうして生産を上げ、生活を向上させるという方向じゃないように見えるのです。ですから私は、私個人で何だかんだと言っておるのではなくて、国民が心配しておるのはその点であるからして、ここで明瞭に一つ言っていただかぬというと、憲法調査会というものを作って、すでに何か国民の世論のごときものを形成して、そうしてその内容においては反動的なものをどんどんこしらえていくのだ、こういうことでは国民は非常に心配なんです。名は憲法調査会であるけれども、実際はこれは反動革命ですよ。反革命ですよ。反革命的なこれは要素を持っている。考えはどうかしらぬけれども、要素を持っておる。そうでないというならば、証拠は何だと言ったら、あんた方は民主主義、平和主義、人権尊重だと言っておるけれども、それならばあんた方は何もこれを改正する必要がないのだ、具体的に一体どこを改正するのだということをおっしゃって下さい。それを聞きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/119
-
120・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私は先ほど来率直に私の考えを申し上げておるつもりであります。私はやはり現在のわが国情から見ましても、民主主義、平和主義並びに基本的人権の尊重という三大原則はあく玄でも堅持して参りたいわけであります。自由党時代あるいは改進党時代におきまする憲法改正の意見につきましても、表現の適否は別といたしまして、この三大原則はくずさないという方針のもとに検討を続けて参っておるわけであります。わが自由民主党の憲法調査会も、またもとよりその三大原則につきましてはこれを堅持し、またますますこれを伸ばしていきたい、こういう方針のもとに進んでおりますることは、お手元に差し上げております資料によりましてもはっきりすると思います。それではどういう点に検討を加える問題があるかという点でありますが、これは過日の委員会でも詳細に申し述べておりましたし、またお手元の資料をごらん下さいますると、大よそ私どもが問題にしておりまする点は明瞭であると思います。ここで貴重な時間を繰り返して申し上げることを差し控えますけれども、この資料をごらん下さいますれば、おのずから私はおわかりいただけるものと考えるわけであります。決して私どもは往来の明治憲法に郷愁を覚えて、反動の態度で憲法の再検討に臨むと、そういう気持は毛頭ないことは、私はおそらく私どもの今までの質疑応答によりましてもおわかりいただけるものではないかと考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/120
-
121・木下源吾
○木下源吾君 まあ内容については今後何日かかかっておるうちには明瞭になるだろうと思うのだけれども、私が今お聞きしておるのは、基本的な問題をあなたにお聞きしておるのですよ。そうして国民が一番心配しておる問題だな。今まで国会でしはしば大臣諸公がこれはマッカーサーから押しつけられた、占領下で押しつけられた、こういうようなことを言っている。今は独立したのだから独立の精神で一つやるのだと、こういうようにまあ言われておるのです。だがこの憲法はマッカーサーが押しつけたのか、あるいはだれが押しつけたのか知りませんけれども、すでに当時から、戦争に負けた、敗戦したのだというこの自己批判の上に立って、これが一番正しいのだ、今後は日本はこうでいきたいということは、国民もそう考えたことはあなた方だってこれは否定できまいと思うのですが、それでそういうように敗戦になったところの根本の原因は何だ、機構において誤った機構であり、そうしてこれを運営するものはまた世界観は非常に過激な世界観である、狭隘な世界観である、こういうようなことの結果、科学的に、自然に……、これはマッカーサーであるか、当時はそうではない。これは世界のいわゆる強国が、ソビエトも加わっておって、そうしてこの世界のこの状態においては、勢力の均衡の上に立って日本はこういうことをやるべきである、こういうようにしてこれはきめられてできたものでしょう。そこではなはだしく飛び離れたものができたのではないでしょう。これこそ世界勢力均衡の上に立って、そうしてどこの国はどう、どれはどう、日本はこれ、日本はこの情勢においてはこれをやるべきだ、こういうようにきめられたのです。従ってマッカーサーがひとり、占領しておるからこうだというようなそういう問題ではなかろうと思う。うちにおいてはただいま申し上げるような敗戦というものに対する自己批判をし、そうして当時だってあんたみな偉い人たちですよ。そういう人たちがかかって、当時の吉田さんあたりも何と言われたか、あなたもおわかりでしょうし、幣原さんが何と言われたかもおわかりでしょうしね、そういうわけでできたものを、ただこれはマッカーサーに押しつけられたのだ、戦争に負けたのだからやむを得ないでこれを何したのだなんというような、そういう子供だましみたいなことを言って、これを改正しなければいかぬと言ったって、これは国民納得しないと思う。相変らずあなた方はやはり何ですか、占領下においてマッカーサーからこれを押しつけられたのだから、今改正しなければならぬという理由を、それを最大の理由にしておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/121
-
122・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) ただいまの御質問もたびたび当委員会で私どもの考え方を申し上げたのでありまするが、憲法調査会を内閣に設置いたしまして、現行憲法に全面的の再検討を加えたいという理由は二つあるわけでありまして、一つは、現行憲法が、提案理由に述べ、おりますように、占領の初期におきまして、きわめて短期間に、当時の連合国最高司令官の強力な示唆によってできた。ほんとうに当時国民の盛り上るような自由意思によって制定されたものではないではないか、これが一つであります。
もう一つは、過去九カ年にわたりまして、実施の実情にかんがみまして、わが国情に沿わざる点がありゃしないか、その具体的な問題点につきましては、お手元の資料によってごらんを願いたいと思いますが、私が問題点として取り上げました点は、前文を初めとしまして、各条章にわたっておるわけであります。こういう点を、民間人を加えた、世論を十分反映せしめるような調査会を設置して、その調査会において適当な結論を出していただきたい、これが本調査会の設置の趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/122
-
123・木下源吾
○木下源吾君 あなたの言われることはほんとうに真実だろうと思う。それは、当時やはり日本の政治の責任者は、それぞれ皆制裁を受けたです、制裁を受けた。これも事実であります。これらの一切のことはだな、あなたのおっしゃられることは、日本のいわゆる当時の政治の責任者、戦争責任者、こういう人たちは、占領とかということで非常に拘束を受けて、これは痛切に考えておられるだろうけれども、いわゆる民主憲法、平和憲法、基本的人権を持った憲法というものは、これらの支配階級と離れた、指導階級と離れた国民には、より幸福なものであったということをお考えにならなければいかんと、ほんとうには……、この点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/123
-
124・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) けさも堀さんの御質問に対して詳細にお答えしたつもりでありまするが、アメリカの最高司令官によりまして示唆を受けましてできました現行憲法の、日本の民主化に役立ちました点につきましては、私どもも非常にこれを尊重といいますか、多とするものであります。その点につきましては何ら異議はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/124
-
125・木下源吾
○木下源吾君 今、私のお尋ねしようとしたのはですよ、それゆえに当時の指導者はだな、戦争に負けたから、自分の帝国憲法はこれで失わにゃならぬと、不本意ながら、やむを得ないけれども、国民の側は解放されてですね、大多数の国民はこれで、いい憲法だと、こういうように考えたことは事実なんですよ。で、今の大体復古的な支配階級の諸君は、それをもう同じように、国民もそう考えているんだろうというように、そういう考えをもってこの憲法調査会を作ろうというのではないか。それならば大いに見当が違っておりはせぬか、こういうようにお尋ねしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/125
-
126・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 繰り返して申し上げるようなことになると思いまするが、これは現行憲法の長所であります。ことに日本の民主化の問題につきましては、これに大いに賛成をいたしておるわけであります。しかしその内容がいい点があるからと申しまして、そのいい点はむろん尊重して参らなければならぬことはもちろんでありまするか、しかし制定の経過を見ますと、ほんとうにその当時、占領の当初、国民も非常に自分の意思を憲法の上に反映し得るという時期では私どもはなかったじゃないか。今日独立しました以上は、もう一度振り返って現行憲法に再検討を加えるという機会がもう来ておるのじゃないか。もう一つは、過去もう九年の間に、今問題点として皆様のお手元に差し上げておりまするような点は、十分検討をする時期が私ば来ておると、こういう趣旨で繰り返して申し上げておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/126
-
127・木下源吾
○木下源吾君 では具体的に言いますがね、この憲法ができてですよ、そうしてやはり重大な法律ができたはずですよ。御記憶にありましょうが、まず基本的人権では労働者の団結ですね、団体交渉権、罷業権というものを認めることになったのですね、これは労働者非常に喜んだですよ、労働者は。だが当時の戦争責任者の諸君は喜ばなかった。また農地解放しましたよ、それは農民非常に喜んだですよ、農民は働く農民は喜んだですよ。けれども大地主並びにこれとつながるところの支配階級は喜ばなかったのですね。また婦人に対する権利ですね、婦人の権利ですね、この解放は非常に婦人が喜んだですよ、そういう法律かできて。だけれども封建的な従来の何は喜ばなかったですね。こういうことを私は今思い起して言っているのです。あなた方は、よもやこれを昔のようなことには、それを逆転させるとはおっしゃらない、おそらく。けれども現行憲法においてそれだけの大多数の者が喜んだということ、だけは事実なんですから、これを改正するにおいては、この喜びを何らか制限しなければ改正する意義はない、そうでしょう。それですから今私は、くどくどしくお尋ねしているのはその点なんです。あなたたちは、マッカーサーに無理に押しつけられた。それは苦しい人々はあったに違いない。それだから変える、これはまあ当然おっしゃることであるが、しかしながら、この変えることにおいて、大多数の国民は喜ばない、苦しみになる、こういうことを考えてお尋ねしているので、なお国民にも非常な幸福と利益を与えるということを、どういう点で、おやりになるのか、こういうことをお尋ねしたいのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/127
-
128・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 現行憲法の日本民主化の問題に伴いまして、憲法以外のいろいろの制度、法制等におきまして、ただいま御指摘のようた非常ないろいろな制度ができておりますことについては、私どもも非常にけっこうだと考えております。こういうたとえば労働者の罷業権、団結権を初めといたしまして、そういう問題につきまして、これに制限を加えるというような考えは毛頭持っておりません。ただ現在の基本的人権の問題にしましても、やはりまだ追加すべきような問題がありはしないか。現に帝国議会の悪法草案の審議途上においても、社会党におかれましては、基本的人権に追加すべき一、二の問題も、修正案としてお出しになっておる例もあるようであります。こういう問題も、私どもはぜひ今回は検討したい。その以外においても、たとえば、この資料に出しておりますような、あるいは芸術の尊重の問題でありますとか、あるいは科学の振興の問題であるとか、こういう問題も、あるいは基本的な人権の中に取り入れて考えるべき問題じゃなかろうか。また帝国議会当時の社会党の修正案を見ますると、耕作する農民の保護というような規定の追加が考えられておったようであります。こういう日本の農村に対する何といいますか、規定、こういうものも何か検討をする十分価値がありはしないか、こういう点も私はいろいろ考えているわけであります。むろん現在そういう点については考えは持っておりません。(「でたらめ言うな」と呼ぶ者あり)そういう点につきましても、また十分検討をして、適当な結論を得たい、こういう趣旨で考えているわけであります。(「とはもないことを言うな」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/128
-
129・木下源吾
○木下源吾君 いや、まことにけっこうです。(「けっこうじゃない、でたらめだ」と呼ぶ者あり)そこでね、今お聞きしておりますことは法律でもできる、法律でおやりになっている、保守党の諸君がおやりになっている。せっかく解放した農地は再び地主に還元するように、今だんだんしている。国情に沿わぬから、あるいは時期に沿わぬということで、小作料もどんどん高くとれるようにしておりますし、基本的人権に対しても法律でいろいろ制限を加えてきておる、こういうような事実をわれわれが見ておる。実際に見せつけられておるのでありますから、そういうことを今度は一切を含めてこれ以上いくと憲法に抵触するというお考えが出てくるのは当然であります。だからして憲法を改正してこれを合理化しようというようにしか考えられないのです。もしもあなたが今おっしゃるようであるならば、ただいま申し上げましたようないろいろの法律で、そういうことを逆に法律でそれをおやめになったらいいので、できるのです。こういうようにまあ私どもは考える。現にもすでにあらゆる制限を加え、あるいは平和主義あるいは人権主義のこういうものに制限が加えられて、実際にはなしくずしにいってきて、もう憲法を改正するよりほかに手がないところまできているのでしょう。そうじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/129
-
130・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 基本的人権と公正の福祉のおそらく調整の問題をただいまお尋ねかと思うわけであります。現行憲法におきましても、公共の福祉によって基本的人権が制限されるという規定は、十二条、十三条と二十二条、こういうふうに規定がございまするが、これは一般の学説としてはすべての基本的人権はいろいろの条文にもかかるという学説も多いのであります。そういう点もきわめて明確を欠いておりますので、基本的人権を制限するという趣旨じゃなくて、その点を明確にしたい、そういう点を検討したいというのが私どもの考えでありまして、決して基本的人権を制限するためにこの問題の検討を、しようという趣旨でないことを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/130
-
131・千葉信
○千葉信君 議事進行について。質問する方は差しつかえありませんが、答弁する方はお見受けするとだいぶ疲れているようですし、ここらで十分ぐらい休憩して、少し元気を回復さしてやったら、それから再開をしたらどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/131
-
132・青木一男
○委員長(青木一男君) 速記停止。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/132
-
133・青木一男
○委員長(青木一男君) 始めて。それじゃ暫時休憩して、三時五十分からやります。
午後三時三十五分休憩
―――――・―――――
午後四時二十七分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/133
-
134・青木一男
○委員長(青木一男君) 休憩前に引き続き委員会を開きます。
山崎君より報告がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/134
-
135・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 現在の憲法調査会法案を御審議願っておりまする当内閣委員会におきまして、四月の二十六日、第二回の委員会だったと思いますが、委員の二、三の方から、帝国議会当時、憲法の審議に当って小委員会の速記録がいまだ公開されておらない、そこでこれをすみやかに公開するように努力せいという強い御要望があったのであります。その席には鳩山総理も出ております。総理も私も善処をお約束をいたしたわけでございます。そこで私は、越えて二十七日の日に直ちに党の幹部にも諮りまして、当委員会の御要望の次第を伝え、直ちに衆議院の議院運営委員長に申し入れをいたしたわけであります。その日の議運の多分理事会であったと思いますが、その問題を委員長から諮りましたそうであります。ところが、問題がきわめて重要であるから、党に持ち帰っておのおの能度を協議をしたいということであったようであります。そこで私は、だんだん時日がたちますので、毎日のように議運の委員長を初めとして関係者に解決を督促をいたしておったわけであります。ちょうど御承知のように先月の末、衆議院の方は他の議案のために非常に混雑をいたしておりましたが、越えて本月の二日の日に、さらに議運の理事会において委員長はちょっと問題を持ち出したようでありましたが、その日は実は結論を得ずしてしまったようであります。実は本月の四日と六日は議運の委員会は開き得なかったものでございますから、本朝またすみやかにこの問題の解決を願いたいという申し入れを、私、いたしたのであります。議院運営委員会の理市会並びに委員会におきまして、この問題を慎重に御検討になったようでありますが、その結論が先ほど事務局を通じて私の手元に参っておりますから、その結論を申し上げます。これは満場一致の御決定のように伺っております。
第九十回帝国議会衆議院帝国憲法改正案(政府提出)委員小委員会速記録閲覧に関する件(昭和三十一年五月八日議院運営委員会決定)
一、第九十回帝国議会衆議院帝国憲法改正案(政府提出)委員小委員会速記録の閲覧は国会議員に限り議長においてこれを許可する。削除した速記録の閲覧もこれを許可する。
二、閲覧者は速記録の複写公表又は頒布等をしてはならない。
三、閲覧は議長が指示する場所てこれをなすものとする。
以上でございます。なお、これに、先ほど念のためということで通知がありましたが、ノートも速記も御遠慮願いたい、こういうことを今決定なして、こちらへ通知がございましたので、御報告を申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/135
-
136・千葉信
○千葉信君 山崎さんが大へん御努力をされたらしいことについては、私もその御労苦を大いに多といたします。しかし、その衆議院における議院運営委員会の決定は、必ずしも私どもの期待したところとは合致しておりません。ことに、閲覧は許すけれども複写してもいけないとか、複写は一切いかぬとか、こういうことにたりますと、この悪法調査会法案審議のために私どもが役立てようとしましたことは、大半は無にならざるを得ない状態が出てくるかと存じます。しかし、これについては、この委員会して、後ほどこの問題についての取り扱い方ですか、と言っては語弊がありますけれども、たとえば、そういう条件のもとにおかれて、なおかつこの法律案の審議のために十分に役に立てることのできるような方法が考えられなければならないと思うのです。そういう方法がとれるかどうかということと、それからもう一つは、今、山崎さんから御報告を受けましたけれども、私ども、この資料提出については首相からはっきりした言明をいただいているのです。その言明は、出すという約束ではありませんけれども、何とかその問題については取り計らいますという御答弁をいただいておりますし、従って、そういう点から言いますと、約束をされた鳩山さんは、首相でもあると同時に自民党の総裁でもございます。自民党の総裁として、この問題について、その努力のいかんによっては、ただいま承わったような決定よりも、もっとわれわれの要求を満たすことのできるような結論が出たかもしれない。その点で、私は鳩山さんが十分そういう努力をされたかどうかということについて、寡聞にして知らないし、同時にまた、今の山崎さんのお話でも、あなたはずいぶん努力をされたらしい。しかし、一体、首相であり総裁である鳩山さんは、この委員会であれだけの言明をされながら、どういう御努力をされたかということについても、私どもとしても疑念を持たざるを得ない。ですから、そういう意味では、鳩山さんのおいでを願う機会を得て、その問題について、もう少しわれわれとしては御注文申し上げないこともありますから、今ここで直ちに、第一の点、一体閲覧の方法はどうするか、一人々々行って閲覧するという方法もあるでしょうし、委員会として、筆記を取らない、しかし、その御決定の趣旨に沿ってこの委員会として承わる方法もあるわけですし、そういう方法をあとでこの委員会で御協議願いたいと思います。それから、もう一つは、あとで鳩山さんのおいでを願って、機会を得て、ただいまの問題について、もう一度、私どもの疑念とするところ、総裁としての鳩山さんが、一体、党内でどういう御努力をしていただいたのか、この点をこの際は保留して、委員会は正常な形ですぐ質疑に入るでしょうから、その点ははっきり保留して今の御報告は承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/136
-
137・江田三郎
○江田三郎君 関連して。ちょっと山崎さん、しまいの方がはっきりわからなかったのですがね。もう一ぺんちょっと言っていただけませんか。ノートを何とか言われましたね、どうでしょうか。恐れ入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/137
-
138・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 先ほど読み上げました趣旨を敷衍する意味かどうかしれませんけれども、さらに追加のメモが参りまして、おそらくこの第二項の「閲覧者は速記録の複写公表又は頒布等をしてはならない。」という、これの補充の意味じゃないかと思いますけれども、ノートと速記は御遠慮を願いたい、こういうことを言って参った。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/138
-
139・江田三郎
○江田三郎君 ちょっと、山崎さんにお尋ねしていいのかどうか、どうもわからぬですが、ノートというのはどういう意味なんでしょうか。メモもとれぬということですか。ただ見るだけで、万年筆や鉛筆を使っては一切ならぬ、こういうように解釈しなければならぬのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/139
-
140・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) どうもこの趣旨は、複写をしてはならないとございますから、メモなんかとることをも御遠慮願いたいという趣旨じゃないかと思いますけれども、ちょっと私はそこを確かめておりませんので、はっきりしたことは申し上げられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/140
-
141・江田三郎
○江田三郎君 まるで秘宝か国宝に相応するもののような扱いみたいで、えらい、やかましいことになって、ちょっとその点あとで確かめていただけませんか。常識で考えてみて、一切万年筆や鉛筆を使っちゃいかんというのは、ちょっとどうも合点いかぬから、お確かめ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/141
-
142・永岡光治
○永岡光治君 私も質問に入る前に……、その点は何か非常に暗い感じを受けるんですよ。やっぱり、憲法、基本法を論議する際に、あらゆる文献、経緯というものは十分知った上で正しい判断を出さなくちゃならぬ。見るだけはいいが、書いちゃいかぬとか……頒布の問題は若干問題があるかもしれませんけれども、それにしてもやっぱり国民の憲法なんですからだれの憲法でもないのですから、それが、書いてもいかんし、ただ見るだけだというのは、何か御神体を神主さんでなければ見れないというようなもので、ちょっとおかしいと思うのですが、その真意を確かめてもらうと同時に、ぜひこれはそういう制限なしに、十分私たちが検討し得る、経緯を十分知り得る状態に置かなければならぬ。これは要望だけ私は申し上げておきます。これは吉野大臣もおられますから、これは憲法担当大臣としても私は要望いたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/142
-
143・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 御趣旨の点はまことに私もごもっともだと存じます。私どもも実は公開ができるものならばぜひ公開してもらいたいと、こういう希望を衆議院の審議の際からも実は持っておったわけです。また当委員会におきましても、非常に強い御要望がございましたが、ありのままを実は議運の方にも申し出たのでございます。ところが、先ほど読み上げました中でお聞きとりいただいたと思いますが、この速記録が、削除した速記録の閲覧もこれを許す、この削除した点が一つ問題ではなかろうか。これは私の想像も入っておりますけれども、こういう速記録でございまするから、あまり公けにすることをこの際差し控えたい、そういうことからそういう御決定になったものではないか、こういうふうに私は想像をいたしております。なお、そういう点につきましても、もう少しどういういきさつであったかということは聞き合せてみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/143
-
144・青木一男
○委員長(青木一男君) 質疑をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/144
-
145・永岡光治
○永岡光治君 昨日参考人を呼びまして、当委員会では十分、経緯だとか、それぞれの学識経験者と称せられる方々の本法案についての見解というか、考え方というものを聞いたわけですか、そういう立場に立って、私は昨日のそういう参考人の公述を振り返りながら、この際明確にしておかなければならない問題があると思うのですが、そういう意味で、その点に主として限定をいたしまして御質問をいたしたいと思うのです。若干今までの質問に重復するところがあるかと思うので、極力それは差し控えたいと思いますので、その点をあらかじめ御了解いただいて始めたいと思うのですが、田上教授の話によりますと、憲法調査会を作るそのことは、この法案上は必ずしも強い反対はしない。ということは、自由にこの調査会で論議するということになっているから、これはその意味では反対はしない。ただしかし憲法を改正するという意図をもってこの調査会を作るということであれば非常な疑問があると、こういう趣旨の、要約すればこういう趣旨の公述であったかと私は記憶いたしております。そういうことになりますと、この点で一つ明確にしておかなければならぬのは、やはり山崎さん以下各国会議員の方々が本調査会法案を提出したということは、改正を明らかに意図しておるものと、何か知らぬけれども、検討してみてくれ、こういうものではおそらくないと私は思う。たとえばそれは今までの質疑の中で明確になりましたけれども、自民党の憲法調査会の資料としていただいております内容をみましても、こういう点にわたって一応検討してみたい、これは改正になるかどうかは別でありますか、こういう問題点があるということを言っておられましたが、おそらく改正の意図がなくては無意味だと私は思うのですが、その点はどのように解釈したらいいのか、おそらくやはり改正をしようという意図で調査会を作っていくのではないかと思いますが、その辺の見解をもう一度ただしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/145
-
146・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私どもの党におきましては、御承知のようにすでに憲法調査会を昨年の暮から党内に設置されまして、憲法の再検討と申しますか、改正についての調査を進めておるわけであります。従いまして党といたしましては、政策の中にも掲げておりますように、憲法改正の問題を実現したいということは間違いのない点であります。ただ今回の内閣に置きまする調査会は、たびたび申し上げたと思いまするが、広く学識経験者等も加えまして、憲法改正の要否、かりに改正を必要とするならばどういう点を改正するか、こういうことを使命といたしておるわけであります。従いまして、ほんとうに新たな立場でこの調査会は憲法を全面的に御検討願い、そうして憲法改正の必要ありとするならば、どういうふうな方向にいくということになると思います。まず憲法改正の要否からこの調査会は御審議を願うということになるとと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/146
-
147・永岡光治
○永岡光治君 その点はちょっとまだ明確でありませんが、やはり改正の意図があると、こう解釈していいのですか、そうではないのですか。ただ自由に一つ、いわゆる学者グループと言いますか、学者があらゆる法律案を研究するという意味での、そういう意味の調査会なのか、それとも改正をしたい、そういう意思に基いて調査会を作ろうとしておるのか、いずれなんですか、明確にしていただたきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/147
-
148・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 今回できまする内閣に設置される憲法調査会は、ただいまの御質問にも申し上げたように、憲法改正の要否をまず大いに検討して、そうしてその結論として改正の必要ありという場合には、その改正点について漸次調査を進めていく、これが私はこの調査会の使命であると考えております。ただ私どもの党といたしましては、もうすでに政策の中にも憲法改正というものを打ち出しておりますので、私の所属する党の政策といたしましては、憲法改正という方向に進んでおることも事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/148
-
149・永岡光治
○永岡光治君 私が聞いているのは、その提案者の意思は那辺にあるか、いずれにあるかということを聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/149
-
150・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) この憲法調査会法案によりまして設置せられまする、内閣に設置せられまする調査会は、むろん憲法改正の要否から検討するというのかこの法案の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/150
-
151・永岡光治
○永岡光治君 もちろんそれは憲法改正要否の問題から総括的には入っていくだろうと思うのですけれども、提案者はおそらく、まあ教授が法律の研究をするという意味での単なる調査会ではなくして、やはり憲法改正をすべきであるという観点から、そういうものから、やはりこれは検討を進めらるべきであるという、そういう考えのもとに、私は提案者の方は、憲法改正の要があるから、それではどういうものをやるべきかということについて、この調査会に一応検討してもらおう、こういう趣旨が提案者の意思であろうと私は解釈するのですが、そうではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/151
-
152・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私の立場から申し上げますと、憲法改正の問題を党で取り上げておりますので、改正の方向に向いたいという心組みでおりますことは事実であります。ただこの調査会は、党の政策を押しつけるとか、あるいはまた、それをぜひやってもらいたいとか、こういう趣旨で設置するわけではないのでありまして、従いまして、調査会が設置されましたならば調査会の独自の立場におきまして憲法改正の要否から御検討を願う、こういうことになると思います。むろん学者が集まってその研究をするというだけではないのでありまして、むろんその結果につきましても、結果が出れば内閣に報告し、内閣を通じて国会に報告することとなっておりますので、結果を期待しておることは事実だろうと思います。しかしそれは療法改正の要否からまず検討して、そうして出ました結果を期待している、こういうふうにお考え願いたいと思うわけであります。私どもは党の立場を決してこの調査会において固執するということでないことを繰り返して申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/152
-
153・永岡光治
○永岡光治君 私は結果がどう出るかということを言っているわけじゃなくて、少くともこの憲法調査会を作ろうと思い立った動機というものは、憲法改正の要がありと、こういう認定に立って、しからばどういう条項をどう改正するかということについて、今作ろうとするこの調査会のメンバーの方々に検討願おう、こういう意味で作られたものと解釈せざるを得ないのですが、その結果改正を必要としない意見があるいは出るかもしれない。しかしそれは結果論であって、今この調査会を作ろうという意思は、単に憲法上の条項についていろいろ学者が自由に討論して研究するという意味じゃなくて、憲法改正の要がありと認定をしたから、それではどういうものをどう改正するかという研究を願うという意味でこの調査会を作った、私はこう解釈せざるを得ないと思うのですが、私の見解が正しいのじゃないかと思うのですが、あなたの立場に立つ解釈というものは、どういうものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/153
-
154・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) この調査会が設置されました場合には、この調査会自体が自主的に運営をし、自主的に調査を進めていく建前であります。従いまして、この調査は初めから憲法改正という問題を前提として設置するものではございません。改正の要否をまず検討をして、そうして改正を要するということになれば、さらに問題点について順次結論を出していく、こういう趣旨でございます。ただ提案者の立場は、どうかということになりますと、私は自民党の党員でありまするし、また憲法調査会の関係者でもありまするから、改正の方向に向いたいという考えは持っていることは、これはもう事実でございます。しかし調査会自体の運営は全く自主的にお願いをしたい、こういう趣旨で今回の提案をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/154
-
155・永岡光治
○永岡光治君 これはまあ、提案者は改正したいという意図があればこそ提案したのであろうと、その点は明確になりましたので、続いてお尋ねいたしますが、改正をするに至った気持ですね、なぜ悪法を改正しなければならなくなったかという、こういうことについて、いろいろ質疑応答の中に明確になったことは、大きな第一点は、向うから与えられた憲法である、要約すれば。従ってこれは国民の自由意思を反映したものでないから、それを反映したものにしたいと、こういうのが一つの理由になっておるようであります。そこで、私はこの点についてさらにたださなければならんと思うのでありますが、言うならば、形式が整っておらない、形式が好ましくないからこの憲法改正を必要とするんだという、こういうことになると思うのですね。成立の過程にあなたは疑問を持っているという、その観点からこれを改正しなければならんということを主張されておるのだと思いますが、その点間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/155
-
156・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私どもが改正を要すると思います理由の一つは、憲法制定の経緯でございます。その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/156
-
157・永岡光治
○永岡光治君 それで、この改正をしようというあなたの考えは、あるいはまた自民党の考えは、しきりに、平和と、自由と、それから民主主義と、基本的人権と、こういうことを強く主張いたしておりますが、流れている現行憲法ですね、その基本精神を変えようとしている考えがあるのかないのか、その点をまず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/157
-
158・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 現行憲法の長所でありますところの民主主義、平和主義、基本的人権の尊重、この三大原則を変更する意思は毛頭ございません。ますますこれを伸ばしていきたい、こういう考えでおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/158
-
159・永岡光治
○永岡光治君 そうすると、この憲法の精神は全くその通りだけれども、ただ形式が悪いから変えると、こういうことにしか受け取れないのですが、それじゃあおかしいじゃないですか。形式が悪いから変えるというのは、理由になりません。私は、どういう形式であろうとも、自分の望むものであるならば、それが正しい。非常に国民の希求するものであるならば、それは改正をする理由にならんと思うのですが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/159
-
160・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私どもは、現行憲法の制定の経緯を考えまして、たびたび申し上げまするように占領の初期にアメリカの最高司令官の強力な示唆によってできた、それが本当に真の国民の自由意思をこれに反映さしておるものとは思えない、これが一つの理由であります。それでは、この憲法の長所である三大原則を守っていくならば、別に改正は必要ないのじゃないか、こういう御疑念のように今承わったのでありますが、私どもは、この三大原則につきましてはこれを堅持する、しかしながら、過去九ヵ年のいろいろの実績、この実施の実情にかんがみまして、今お手元に差し上げてありまするような現行憲法に検討を要すべき問題点が多々あるように思うわけであります。こういう問題点につきまして、一つ慎重な御検討を願い、また広く世論を反映して適当な結果を得ていただたきたい、これが今回特に憲法調査会法案を提出いたしました理由でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/160
-
161・永岡光治
○永岡光治君 その実情に合うか合わないかは、これから論議を進めて行けばこれは明確になると思うのですが、私の聞かんとするところは、実情に合わないから改正するというならば、これはあなたの考え方は成り立つと思う。しかし、しきりに言われておるのは、押しつけられた憲法であるからこれを改正するという理由をあげておるのですね、理由をあげておる。しかし、いろいろ聞いてみると、この根本精神は崩さないのだと、あなたはおっしゃる。それならば、これも与えられた憲法だからということ、それで再検討しなければならぬということになる。もし与えられた憲法が改正の要ありということになれば、当然そうでしょう、そうなくちゃならぬでしょう。ただ、いいところは変えない、それじゃ与えられた憲法という理由じゃない。いいから変えないというならこれは理由としてわかるのですよ、ただしかし、与えられた形式は不満だからこれは検討するのだ、改正するのだという、そういう理由であるならば、それはおかしいじゃないかと言っておる。いいところは改正しない、ほかのところは改正する、なぜ改正するかというと、押しつけられたから、悪いことを押しつけられておるし、あなたの立場から言えば、改正を要するところも与えられたものであるし、改正を必要としないところもまた与えられたものである。そうなれば、それは、その理由は成り立たないのじゃないかということを私は言っておるのだが、それはどう解釈されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/161
-
162・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私どもが第一にあげております憲法改正の理由は、たびたび申し上げますように、制定の経緯をよくお考えをいただきたいと思うのであります。ちょうど占領の直後、アメリカの占領政策が始まった早々アメリカの強力な示唆によってできておる、これはもう隠れない事実だと思います。これが本当に独立した今日のような国民の自由の意思が、この憲法の上に反映しておるということは、私は断じがたい点であろうと思います。従いまして、そういう意味からも、もう一度、独立した今日におきまして、わが国の憲法を全面的な国民の自由意思による自由な立場において検討したい、そのことは理由があると思う。それだけではございません。(「答弁にならぬ」と呼ぶ者あり)過去九カ年の実績にかんがみまして、実情に合うような方向に検討を加えていくこと、この二つの理由を合わせ兼ねまして私どもは憲法の全面的の検討をいたしたいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/162
-
163・永岡光治
○永岡光治君 これはおかしいですね。あとの方の、あなたは実情に即さない点があるからという立場でこれを改正するというならば、あなたなりの一つの理由が成り立つと私は思うのですよ。しかし、前提をなす経緯が気にくわぬからということで改正をするならば、全部これを改正しなければならぬわけです。しかし流れておる基本原則は、たとえこれは与えられたにしても、これはいい、いいからこれは改正しないということになれば、これは理論が矛盾するわけですよ。私はそのことを言っておるのです。一体それはおかしいじゃないか。それに対してあなたの答弁はなっておらぬと思うのです。なつちょらんという言葉が先ほどあったけれども、全くなっちょらん。いいところも与えられておる、改正を要すべきところもこれは与えられておる。だから与えられたという前提に立ってこれは改正するなら、両方から改正しなければならぬということになるわけですよ。だから御都合主義でそういう理由をつけておると考えざるを得ない。第一に、物事を作るのに、いろいろ知識を集めて、よりいいものを作ろうというのは、人間の常ですよ。オリジンのもの必ず最高と言えませんからね。やはりいろいろ、いいものを取り入れることは私はいいと思う。それをまた理想に近づける。私もこれは、教育勅語を出して恐縮ですけれども、あなた方は非常に――私たちもその教育を受けて参りました。あれで「知識を世界に求め」とあったわけですから、あらゆる方向にわたって知識を求めるということは当然なんです。たまたまそういうようなことが、与えられた、あるいは向うから示唆を受けたからということで、悪いなら別です。しかし、いいものはいいものとして私たちは当然取り入れるべきであると思う。だから、与えられたからとか、よそから来たものであるからということで憲法改正の理由にすることは、ちょっとおかしいではないか、これが私の主張なんです。その理由は撤回せざるを得ないものです。それでなければ根本からあなたの矛盾があるわけですよ。そうでしょう。同じ与えられたものであるから改正するというなら、基本的の問題についても全部これは改正しなければならぬということにならざるを得ないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/163
-
164・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) たびたびのお尋ねでございますが、私は、現行憲法の長所でありまする三大原則を尊重していくということと、その制定の経緯が其の国民の自由意志によらないから検討するということとは、別に矛盾はないと思います。私どもが改正を要するという点は、長所はこれを尊重しながら国情に合うような方向で検討をしたいという建前と、それから現在の憲法の制定の経緯が真に国民の自由意思によるものでない、この二つの点をあげているわけでおりまして、その間、何ら私は矛盾はないように思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/164
-
165・永岡光治
○永岡光治君 矛盾があるんですよ。三大原則はこれはいいから改正をしないんだ、しかし他の面については改正の必要があるからこれは改正するんだ、しかしそれは、改正を要する点は、実情に沿わないというあなたは理由をくっつけている。それならば、あなたなりの理由は一応成り立つということを申し上げている。しかし経緯がどうも納得するものでないからこれを改正するのだという理由であるならば、それは三原則であろうと何であろうと、この憲法そのものについてこれはもう改正しなければならぬという立場に立ったというならば、これは廃止ですよ。廃止、制定という新しい形式を踏まなければ意味をなさないということになる。成立の経過が納得するものでないからという理由をあげるならば、当然これは全部の、どの個所といえども与えられたということになるわけです。だから私はあなたに質問したいのは、与えられたからこれを変えるという理由は、これは理由にならぬじゃないかということを申し上げているんです。日本の国情に沿わない点があるというあなたの見解に立って検討を進めるというならば、あなたなりの理由は成り立とう。しかし前段の、与えられた憲法であるから改正するという理由は、その点に関する限りは矛盾を来たしているじゃないか、こういうことを私は言っているわけです。矛盾じゃないですか。(「わかり切った理屈だ」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/165
-
166・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私は一向矛盾とは思いません。たびたび申し上げまするように、占領時代に、しかも占領の初期に、アメリカの強力な示唆によってで、きた、この点に私は問題があると思います。むろん、いいところは今後も尊重していかなければならぬと思いますけれども、その制定の経緯が、ほんとうに国民の自由意思というわけには参らないと思います。これを申し上げておるわけであります。従いまして、今日独立しました現在におきまして、もう一度全面的の検討をする時期が来ておると、こういうふうに私は繰り返して申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/166
-
167・永岡光治
○永岡光治君 どうも私の趣旨を故意に理解しないように答弁しているのかよくわかりませんが、経緯が自由意思を反映していないからという改正であるならば、これは全面的の改正をしなければならぬということになるわけです。しかしそうでなくて、実情に沿わないものが若干あるからということについて検討をするというのならば、これは一つの理由は成り立つ、こういうことを申し上げているのですが、あなたはどうしても前提の大原則は……、やはり三原則は、与えられたといえども、これはりっぱなものだということをあなたは言っている。それじゃ改正の理由はないでしょう。だから与えられたからということで改正の理由にはならない。いいから改正しないんでしょう。そうなんでしょう。いいから改正しないんでしょう。与えられたから改正しないのじゃないですよ。だからあなたの理論はおかしいじゃないかということを言っているわけです。与えられたといえども、いいものはやはり残すべきなんだ。だから与えられたからというのは改正の理由にならんじゃないか。これは小学校の生徒に聞いたって、その通りだと言いますよ。それはおかしいですよ、あなた、勉強してもらわんと困りますね。(笑声、「小学生にかえって勉強してもらわなければ」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/167
-
168・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私どもといたしましては、内容のいいところは尊重していくということは、繰り返して申し上げておる通りなんです。ただ、内容がよければ、それじゃどんな憲法でもよろしいかということには私はならぬと思う。やはり国民のほんとうの自由意思によって国の憲法を作るということに、私は民主主義の真髄があるように思うわけであります。従いまして、そういう意味において、われわれは制定の経緯にかんがみて検討を加えたい、これが掲げておる理由でありまして、何ら私はそこは矛盾は考えないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/168
-
169・永岡光治
○永岡光治君 いや矛盾がありますよ。これはしかし、幾ら繰り返しておっても、やはりあなたは、どうもわかっていただけないと思うのです。わかっておるのだろうと思うが、どうも答弁が古しいからそういう理由をくっつけておるのだろうと思うのですが、まあ、それはそれとして、それでは次に、実情に沿わないという……、あなたは改正をしたいというのですが、具体的にこれは言ってもらいたい。どういう点が一体実情に沿わないのか、主たる点でけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/169
-
170・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 其本的の問題は申し上げると非常に長くなると思いますが……、(永岡光治君「いやこれは重要ですよ」と述ぶ)お手元に差し上げてありまする配付資料の問題点、これは私どもが検討を要する各章にわたりまする点であろうと思っております。これを御覧いただきますれば、おのずから私どもの検討を要する点がどこにあるかということは、おわかりをいただけることと思います。なおこの点につきましては、第一回の委員会でありましたか、委員の御質問に対しまして、あらましを申し上げたのでありまするが、お手元の資料によって御覧をいただければまことに幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/170
-
171・永岡光治
○永岡光治君 いや、これを見ましても、ただ問題点が問題点であるだけで、これがどういう支障があるから、どうすれば実情に即するのだということをあなたはちっとも書いてない、そうでしょう。どうすれば実情に即するということがわからなければ、実情に即するか即しないかわからないじゃないですか。ただ検討の対象にたるというだけであって、これはどう改正すれば実情に沿うということの結論が出なければ、実情に沿うか沿わないかわからぬじゃないですか。あなたが非常に答弁しにくければ、私は具体的に聞くのですが、現行憲法でとういう支障が具体的にありましたか、例をあげて説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/171
-
172・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) お手元に差し上げてありまする私どもの党で考えました問題点は、もとよりまだ結論は出ておりません。問題はきわめて重要でございまするから、今後慎重な検討を経まして、党としての意見を漸次取りまとめて参りたいと思っております。ここに掲げました問題点によって御覧願いますれば、私どもが現行憲法にいろいろ今後検討をすべき点は、おのずから私はおわかりをいただけることと思うわけであります。従いまして、この問題点によりまして、私どもが今後いろいろ検討をしまする場合に、どういう考えで向おうとしておるかということも、おのずから私は明瞭になる、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/172
-
173・永岡光治
○永岡光治君 私は憲法というものは軽々に改正すべきでない、というのは、これはどなたも一致しておる意見だと思うのです。朝令暮改のそしりを受けてはいかぬし、基本法でありますから、政権が移動するたびに絶えず憲法が改正されるような、そういう不確定な権威のないものだったら、これは大へんですよ。従って憲法というものは、容易にこれは変えられぬ、こういうものでなくちゃならぬと思う。従って、憲法を改正する以上は、よほどの支障が具体的になければ、ただ想像だけでどうも不便を感ずるというだけでは、これは意味をなさない。具体的にどういう支障があったかということの例を示していただきたい。あなたがこれを改正するというのならば、具体的に例を示していただきたい。支障があった例を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/173
-
174・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 私は、お手元に差し上げてありまする問題点を御覧下さればおのずからわかると思いますが、各条章につきまして私どもが今後検討いたして参りますると、現在の国情に合わない点はおのずから私は出てくる、こういうふうに考えるわけであります。(笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/174
-
175・永岡光治
○永岡光治君 いや、私の質問は、具体的に支障のあった実例を示してもらいたい、どういう支障があったか、その例を示して下さいというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/175
-
176・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 問題点は、多かれ少かれ、私どもは、現行憲法は今後検討を加え、ますます支障を少くしたい、支障なからしめたい、こういう趣旨であるということで御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/176
-
177・永岡光治
○永岡光治君 どこに支障があったのですか、どういうところに具体的な支障があったかという例をあげて下さい。具体的な支障があったという例をあげなければ、ただ、なからしめたいと思うと言ったってわからんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/177
-
178・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 具体的とおっしゃれば、一、二の例をとって申し上げてみたいと思いまするが、たとえば現在の最高裁判所の裁判官の国民審査の問題、これなんかも外国にもほとんど例がない、アメリカのミズーリ州一州に例があるだけでございます。こういう点は、私どもは実際の国情に合うかどうかということに非常に疑問を持っております。またもう一つの例をとって申し上げまするが、財政の章におきまして、私の慈善事業でありますとか、あるいは教育事業でありますとか、そういうものに国が支出をしてはならない、こういう規定がございまするが、これなんかも日本の国情に合うかどうか、検討を要する問題だろうと思います。また地方自治の章におきましても、御承知のように住民投票という制度がございますが、これは、おそらく立法の趣旨は、その公共団体に不利益を生ずる問題についての住民投票であると思いますけれども、今日では、不利益、利益の問題でなくて、その公共団体に特殊の問題が起りますると、すべて住民投票を仰がなければならない、こういう点についても、私は国情に合うかどうかという点に疑問を持つわけでございます。その他の点につきましても、いろいろあると思いまするが、例をとって申し上げまするとそういう点が具体的にあげ得ると思います。(「それは技術的な末梢の問題だ」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/178
-
179・永岡光治
○永岡光治君 アメリカのどこかミズーリ州か何か、一つあるとかないとか、これは向うのことであって、私は具体的に支障があったかどうかということを尋ねておるので、それは支障なく行われておりますよ。最高裁判所裁判官の信任を問う問題だって、これは支障なく行われておるでしょう。支障があって行われておるとすればこれは問題ですよ。もしあの裁判官の信任に支障があったということになれば、それは無効論がここに成り立つわけですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/179
-
180・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 支障がある具体的の例をあげろとおっしゃいましたので一、二の例を申し上げたわけでありますが、支障という言葉が悪ければ国情に合わないというふうに御訂正をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/180
-
181・永岡光治
○永岡光治君 ちっとも国情に合わなくないですよ。みんな喜んでやっているのだから、支障はないですよ。(「喜んでいやしない」と呼ぶ者あり。笑声)それはそうだよ。それは支障があったという例にならないじゃないですか。支障はないじゃありませんか。(「答弁だって支障があったということは言っていない」と呼ぶ者あり)支障があったとは言えないと言っております。おかしいじゃないか。もちろんですよ、それは。支障があったかどうかということを聞いている。支障があったらはっきり言いなさい。(「具体的にどういうところでどういう支障があったか」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/181
-
182・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 支障という言葉は適当でなかったと思います。私は前々申し上げますように、こういう制度については、国情の実際から考えまして再検討を要すると思っておるわけであります。支障という言葉は適当でなかったということを申し上げます。(「苦しい答弁だな」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/182
-
183・永岡光治
○永岡光治君 一体国情とは具体的に何ですか。国情に沿わぬというその国情は何を指しているのですか。(「国体でしょう」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/183
-
184・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) これは説明を要求されても非常に説明がむずかしいのでありますが、たとえば最高裁判所の裁判官の国民審査の問題とか、こういうものでも、実際、国民全般がこれを非常に希望しているかどうかという点は、私は非常に問題があると思います。また、ああいう制度に果して多額の経費をかけてやることがいいかどうか。こういう点も私は国情から考えて検討を要する問題だと思う。それを今どういう結論を出すということは私は非常にむずかしいと思いまするが、検討をすることには値いする問題だ、こういうふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/184
-
185・永岡光治
○永岡光治君 国情というのはどうも明確でないですが、どうも説明があまりはっきりしないので。今、最高裁判所の例をあげましたけれども、これはすべて国民に主権があって、国民が三権分立の建前で自分の意思を反映する方法としては、それは当然ですよ。それは国情の説明にはなりませんよ。それはあなたの国情というのはどういうことですか。その点を明確にしてもらわないと、果して合っているかどうかということも、それはわかりませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/185
-
186・山崎巖
○衆議院議員(山崎巖君) 最高裁判所の裁判官の問題につきましても、必ずしも現在の国民審査の制度がいいか悪いかということも、国民の意思を――任命と申しますか、選定に反映させることは必要だと思いますが、他に方法がありやしないか。そういう点の検討をすることが必要じゃないか。また先ほど例にあげました、たとえば財政の規定にしましても、私の慈善事業あるいはまた私の学校等に対しまして公けの支出ができないという建前が、実際に国情に合うということは、私は断言できないのじゃないか、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/186
-
187・永岡光治
○永岡光治君 それでは、だいぶお疲れのようでありますから、私の質問の御答弁を求めていると、どうも非常に午前中から熱心に御答弁なさっているようでありますから、大へんお疲れだろうと思いますので、私は今日の質問はこれで終りまするが、まだ重要な問題について質問したいのです。これは何と言いましても憲法改正――きのうの公述人の話では拘き合せ改正のおそれが非常にある、こういう問題がありまして、特に緊急に今憲法を改正しなければならないという差し迫った問題があるのかないのかということを十分まだ私は論議を尽さなければならないが、これは次の機会にしたいと思います。きょうは、だいぶお疲れのようでありますから、この辺でやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/187
-
188・青木一男
○委員長(青木一男君) 本日はこの程度にして散会いたします。明日は午前
十時より開会いたします。
午後五時十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X03919560508/188
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。