1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十一年五月十五日(火曜日)
午前十一時四十七分開会
—————————————
委員の異動
五月十一日委員菊川孝夫君辞任につ
き、その補欠として亀田得治君を議長
において指名した。
本日委員吉田法晴君辞任につき、その
補欠として小酒井義男君を議長におい
て指名した。
—————————————
出席者は左の通り。
委員長 青木 一男君
理事
野本 品吉君
宮田 重文君
千葉 信君
島村 軍次君
委員
青柳 秀夫君
井上 清一君
木島 虎藏君
木村篤太郎君
西郷吉之助君
佐藤清一郎君
江田 三郎君
田畑 金光君
松浦 清一君
小酒井義男君
梶原 茂嘉君
廣瀬 久忠君
堀 眞琴君
国務大臣
運 輸 大 臣 吉野 信次君
政府委員
法制局長官 林 修三君
法制局次長 高辻 正己君
事務局側
常任委員会専門
員 杉田正三郎君
—————————————
本日の会議に付した案件
○憲法調査会法案附帯決議に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X04319560515/0
-
001・青木一男
○委員長(青木一男君) ただいまから内閣委員会を開きます。
委員変更についてお知らせいたします。五月十一日菊川孝夫君が辞任ぜられまして、その補欠に亀田得治君が選任せられました。五月十五日吉田法晴君が辞任せられまして、その補欠に小酒井義男君が選任せられました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X04319560515/1
-
002・青木一男
○委員長(青木一男君) この際一言いたします。
先週末、当委員会においてできました事柄については、まことに好ましくないことであり、国民の期待に反したことと思います。私どもは、昨夜議長あっせんにより申し合せもあったことでございまするし、今後委員会の正常なる運営によってわれわれの任務を遺憾なく果していきたいと思います。特に委員長といたしましてはその点に一段の努力を払うつもりでございますから、委員の各位にも御支持御協力をお願いいたします。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
島村君より憲法調査会法案の付帯決議について発言を求められておりますから発言を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X04319560515/2
-
003・島村軍次
○島村軍次君 私はこの際、憲法調査会法案の重要性にかんがみまして、将来の憲法調査会が慎重審議を行われ、円満なる、一党一派に偏せざる審議を行われまして、わが国の独立国家としての体制を整える上に慎重なる考慮を政府に要望いたしたいために、左の付帯決議案を提案いたしたいと思います。
右決議する。
以上を本委員会においての付帯決議案として提案いたし、皆さんの御賛成をいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X04319560515/3
-
004・青木一男
○委員長(青木一男君) ただいま提案されました付帯決議案について御意見のある方はお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X04319560515/4
-
005・千葉信
○千葉信君 私は日本社会党を代表して、憲法調査会法案並びにただいま島村君より提案されました付帯決議案に対して反対いたします。
反対の第一の理由は、憲法調査会を内閣に置くということについて、これまでの質疑応答で判明いたしましたことは、内閣もしくはその統括のもとにある国家行政組織法等におきましてその法的な根拠なしという点でございます。国家行政組織法第八条に該当する審議会もしくは協議会に該当する機関でないことは当然でありますが、この際は内閣にこれを置くということでありますから、従いましてこれは内閣法第十二条によって設置せられる機関以外にこの種の機関が内閣に設けられるという根拠はあり得ないのでございます。この点に関する質疑によりまして判明をいたしましたことは、十二条に基いて内閣官房ほか、内閣に設けられる機関といたしましては、「法律の定めるところにより、必要な機関を置き、内閣の事務を助けしめることができる」というこの条文に該当するのでないことは、この条文のおのずから明示するところでございます。そうしてこれに対する政府当局の答弁は、「必要な機関を置き」という条文と、「内閣の事務を助けしめることができる」という条文を切り離して答弁を試みたり、さらに追及されるや、内閣に眠くことができると思うというはなはだ根拠なき理由をもって答弁せられているという実情でございます。従いまして私どもは憲法を調査するというごとき重要なその任務が内閣の任務でないことはもちろんでありますし、同時にまた内閣がかかる重要な立法関係の任務に介入するがごとき態度に対しましては、私どもこの憲法調査会を設置するということについて、まず第一番にその法的根拠のないということを理由として反対をするものであります。
反対いたしまする第二の条件が、内閣が行政費を使って憲法の内容について調査審議し、これを改正するための措置を講ずるということは、ここにもわれわれとしては了承できないものがあるのでございますが、特に憲法改正について提案権ありとする政府側の意見に対しましては、憲法等にその条文が明らかでないという意見をその根拠とし、そして内閣法第五条にいう「内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出し」とある条文をその根拠として、「法律案、予算その他の議案」、憲法のごとき重要な議案を「その他の議案」という範疇の中でこれを扱い得ると解釈するがごときは、その法解釈の態度についてわれわれは合理性を疑わざるを得ないのであります。憲法の改正のごときは、憲法第四十一条に規定せられておりまするところの「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」、この条文のほかに国会に対して内閣総理大臣が内閣を代表して法律案の提案等についてこれを認めているところでありまするが、従来現行憲法のもとにおきまして、ややともすれば旧憲法時代の習慣にとらわれて、さながら内閣が法律案を提案することが常道であるかのごとき錯覚に陥り、国会もまたこれは反省をしなければならないことでございますが、立法機関自体として議院が進んで国会に法律案を提出するということについてはなはだ消極的であり、従ってその慣習からくる行政府優位とは言いませんけれども、少くとも法律案を提案するに当っての政府側の態度、国会側におけるこれを受け入れる態度等において私は少くとも現行憲法に即応しない状態が往々にしてあったという、これは厳に反省をしなければならないところですが、そういう事態が今回政府が拡大解釈をして憲法の提案権まで内閣が有するかのごとき思い上りを招来せしめたその結果であるとして、私どもはこの理由からも本法律案に反対をいたします。
反対する第三の理由は、憲法調査会が設置せられて、これに対して憲法の各条章にわたる審議調在については内閣は全くの白紙で臨むという説明でございましたが、しかし委員会おける審議の経過から言いましても、総理大臣あるいは憲法担当の国務大臣等の答弁も当初は食い違って、一方は憲法改正の意思あることを、明確に表明し、一方は政府には憲法改正の意思なきことを答弁したが、委員会の追及によって最後には、政府は憲法改正の意思ありと答弁せられるに至りました。しかも与党また改正の公約をもって国民に臨んでおり、こういう事態の中から考えられますことは、設置せられます憲法調査会の委員五十人中、三十人の国会議員は、御答弁によりましても現有勢力の比率によって従来の慣習通りに委員の人選が国会議員に対して行われるという事実、その結果として考えられますことは、少くとも憲法調査会の委員である国会議員三十人中おおよそ二十人が憲法改正に賛成の委員である、他のおおよそ十名の国会議員が憲法改正に反対の委員であるという結果に陥るわけでございます。そうしてその他の二十名の——第三条第二項第二号による学識経験の二十人の任命については、これは国会議員の委員の場合と同様に、第三条第二項によりまして内閣の任命するところでございます。吉野国務大臣からは、この場合における学識経験者の委員の任命については公平を期するという答弁ではありますが、私ども必ずしもその答弁がはっきりその通り実行せられるということについてはなはだ期待を持てません。従来の鳩山内閣のとって参りました態度から言いますと、私はこの際は憲法改正に反対の者を政府が任命するということはほとんどあり得ないか、あっても公平を擬装する程度の、しかも結論に対しては政府の期待を裏切ることのない程度の人員しか任命するはずがないという見解を持たざるを得ないのでございます。たとえば従来、抽象的に申し上げましても、目的のためには下段を選ばない態度を往々にして示してきておる政府なりもしくは与党——この委員会におきましても起りました状態ですが、数の暴力を至上の手段としてあえうて顧みない態度を繰り返すことのある政府もしくは与党、こういう今日までの状態から考えられますことは、この調査会の委員の構成上出て参ります結論は、改正の要ありとされることは必至であります。調査会は全く白紙のままかりに出発するという政府の答弁をこの際は信ずることといたしましても、出てくる結論は、委員会の構成上から、これは全くの公正なる態度において論議された結論が出てくるということは期待が持てない。従ってこの憲法調査会法案の通過に基いて設置をされます憲法調査会そのものは、単に立案が公正もしくは民主的な手続を経たという擬装を試みるものである。この見地からもわれわれはこの法案に反対でございます。今回のたとえば政府の委員会における答弁もしくは提案者の答弁、あるいは資料として提出されました自由民主党の資料等によりましてはっきりとして参りました改正の意図のある憲法の条章、私どもはその中でうも、これは公聴会でも参考人の喚問においても述べられたところでありますが、改正の対象として最も問題になるところは、たとえば家族制度の復活、天皇制に対する郷愁の現れ、あるいはそれあるがために平和憲法と呼ばれる戦争放棄、交戦権の放棄、こういう点に最も憲法改正に対する是非の論議、明確な対立が生じつつあるところでございます。現憲法におきまして個人の尊厳、両性の平等、この憲法の概念とするところに対して、たとえば昔の戸主を家庭に持ち込むとか、あるいは均分相続を廃止するという方法で考えられているところに、私どもはせっかく班憲法の保障している人の上に人を作らないという個人の尊厳に重点を置いた条章がついえ去ろうとする傾向が出てきている。天皇を象徴から元首に切りかえ、栄典のごとき天皇の行為と並行して、特赦もしくは大赦というような全くの政治上の重要な政治行為を、この際、天皇の国事行為として復活しようとするがごときは、われわれの断じて承認し得ない態度と言わなければなりません。
特に第九条の問題に関連いたしましては、私は首相の在野時代から今日までにおける変説改論と称せられるもの、自衛隊は憲法違反であるといい、首相の座につくや、前言を翻し、自衛隊は憲法違反にあらずと変説改論をされましたが、私はこの間の経緯については、自分が首相になって、しかもその行政府に自衛隊を設け、首相みずから自衛隊が憲法に違反するなどと言っては一日も首相はつとまらない、従って立場上変説改論を首相はあえて行なった。しかし首相のほんとうの意見は、私の推測では、やはり自衛隊は憲法違反と考えているはずだと私は見ております。その首相の立場としての自衛隊に対する憲法解釈、在野時代と首相になってからの意見が変ったその事実は、この解釈の中からしかわれわれは了解できないのでございます。もしそうでないということになりますと、今の憲法でも自衛隊は持てる、六カ年計画も国防の最小限度の自衛力としてやれるのだという態度を国会に対しては明らかに答弁されながら、しかし一部には異論があるから、自衛隊は憲法違反であるという異論があるから、異論を存在する余地なからしめるために改正するのだというのでは、自分の意見が正しいと信ずるならば、責任ある立場の言葉としてこの釈明はあまりにも無責任のそしりを免れないと思うのでございます。私はかかる観点からも、従来委員会で行われました首相の答弁、はなはだ無責任な態度であり、答弁であるという立場からも、われわれはこの法律案の成立後における、その後の首相の態度等にも関連して、私は重大な憂いを持ち、この法案に反対せざるを得ないのでございます。
その次の反対する理由は、たとえば副大統領のニクソン等が日本に来られて、憲法改正を示唆する発言を行い、もしくはまた軍備の必要について示唆をせられたりするその条件、その他のアメリカにおける日本の憲法改正の必要ありとする諸論が、隷属国の状態を脱しきれない日本に与えるその影響は、この際はその指摘をこのぐらいにとどめますけれども、条約上、それから条約に関連する国際通念もしくは国際司法裁判所の判例等に基く日本のアメリカ隷属、アメリカ一辺倒に宿命づけられた国際的な立場、それら諸条件の中から憲法改正に踏みきらざるを得ない鳩山首相の立場であることは、次の国際諸条約を引用すればおのずから明らかであると思うのであります。御承知のように安全保障条約は現憲法が立脚するところの世界観と、はなはだしく食い違った形において締結をせられております。憲法にありましては、諸国民の公正と信義に信頼して、日本の安全と独立を期待するという積極的でかつ悲壮なまでに崇高な理念の上に組み立てられておりますことは御承知の通りでございます。何か提案者の提案理由を拝見いたしますと、憲法の前文等は消極的でかつ他力本願的であるからという御説明でございますが、私はこの点は大よそ正反対である。現行憲法がその前文において主張しておるところは、おそらく世界の諸国民の公正と信義に期待をして日本の平和を守り、日本は戦争放棄して武装なき状態において日本の国土を守るというこの考え方は、あくまでも安易な道を避けてイバラの道を突き進み、しかもそのイバラの道をたどりつつも日本はあくまでも、日本のみならず世界各国の平和をも高らかに主張しているという点において、初めて平和憲法と呼ばれ、日本の憲法の輝かしい存在価値をわれわれは謳歌しなければならないと思うのでございます。ところがその憲法下にある日本政府がアメリカと結んだ平和条約によりますと、この憲法の考えが著しく無視されている、無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていないので、日本は危険である、そしてそのために安全保障条約を締結するのだという態度でございます。しかもこの安全保障条約締結の根拠となりました平和条約第五条c項は国連憲章第五十一条にいう自衛権が日本にあるということを認めている。つまり連合国としては日本国が主権国として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的または集団的自衛の固有の権利を有する。ところが御承知のように国際連合憲章第五十一条の自衛権、この自衛権とは、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまで、個別的または集団的な固有の自衛権を害するものではない。この場合は武力攻撃に対する措置、武力に対する武力の態度——交戦権でございます。世界各国が国連憲章五十一条によって交戦権を認められる。自衛権を認められる。その自衛権は交戦する権利。その交戦する権利を平和条約第五条c項は日本にありとして、憲法のもとにおいて交戦権を放棄している日本がかかる条文を条約として締結をしている、憲法違反でございます。しかも安全保障条約第一条は、日本に駐留する米軍は日本を守るという任務、もう一つは駐留する米軍は同時に極東の平和と安全を維持するという任務を有する軍隊でございます。そういう条文の建前から出て参りますことは、この条約に基いて日本に駐留するアメリカの軍隊は日本区域のみならず、極東の各地域に対して出動を初めから約束している軍隊でございます。ここにも問題があるのでありますが、安全保障条約第三条に基いて行政協定が結ばれておる。その行政協定は第三条に基くアメリカ駐留軍の配備を規正する協定ということになっておりますが、しかしこの場合にも行政協定の前文によりますと、その通り安全保障条約第三条に基く協定をすると同時に、もう一つは日本国及びアメリカ合衆国は安全保障条約に基く各自の義務を具体化する。つまり第三条の国内とその付近に配備を規律する協定だけでなくて、安全保障条約に基く極東の平和と安全の保障、日本の平和と安全の保障とがこの協定の前文においてからみ合って、場合によれば日本の義務としてその義務の履行が迫られるというおそれがここから当然の結論として出てこなければならない。政府の従来の答弁から見ますと、行政協定に基く日本の非常時の共同防衛及び協議は、日本の側に関する限り日本国の憲法に従って共同措置をとり、もしくはまた協議をするけれども、その協議の対象になる行為はあくまでも日本の憲法の範囲内において行うのだと答弁をしておりますが、日本区域に行われる敵対行為または敵対行為の急迫した行為が生じた場合、つまり武力攻撃が発生した場合においてとられる共同措置が、相手側が常に日本の憲法を尊重し、日本が憲法のワク内において行動するということについて明文があれば別であります。同時にまた安全保障条約第一条の目的を遂行する——安全保障条約第一条の目的というのは、日本の平和の維持、日本区域における安全の保障、それのみにはとどまりません。安全保障条約第一条に明示されておることは、日本区域の安全保障のみならず、極東における平和と安全とを保障するための条約ということになっておる建前からすれば、この際、その協議から出てくる日本の義務というのは、日本国憲法のワク内における行動だけにとどまるという保障は何一つありません。しかも政府が従来しばしば繰り返して参りましたように、行政協定二十四条に基く、日本の措置はあくまでも日本の憲法のワク内において行うという答弁がかりにあったといたしましても、ただいま申し上げたその要請される、義務づけられる日本の行為そのもの、条約上の義務が、その条約において日本の憲法のワク内に従って行動するという取りきめがない以上、従来の国際司法裁判所の判例——憲法の条章を理由として条約上の義務を免かれることは認めないとするのが判例であり、国際通念でございます。そういたしますと、条約上場合によると海外出動という事態が起らなければならない。この国会におきまして、急迫不正の侵害が行われた場合にその基地を攻撃することができるという首相の答弁は、従来の態度、海外出動は行わないと答弁し続けてきた従来の態度から見ると、憲法第九条等に対する拡大解釈、しかしこれは憲法第九条の拡大解釈というよりも、追いつめられた条約上の義務から逐次既成事実を積み上げて行こうとする政府の隠謀にほかならないと断言して私ははばかりません。すなわち改正を要するその最大要因は、政治的には条約で、軍事的には強大なアメリカ海空軍の駐留、経済的にはドル支配を通じ日本を羽がい締めにするアメリカの極東政策からくるものであります。すなわち新しい戦略態勢に切りかえたアメリカの国防態勢の上から、海空軍についてはあくまでも増強し、地上軍についてはアメリカの同盟国の増強に期待するというその戦略態勢の中における隷属の状態、地上軍の大最供与がそのまま日本の増強計画となっていることを思いましても一目瞭然でございます。現憲法下でもかかる条約の存在する状態、この状態のもとでは海外派兵を拒否しきることのできないおそれのある条約をつぎつぎと重ねてきた吉田内閣以来の保守党政権、保守党内閣が憲法改正によって企図しているのは海外派兵、徴兵制度の強行であることはもはやおおい得ない事実と見なければなりません。平和主義、民主主義、基本的な人権の尊重という三原則はこれを守るべく答弁をしばしばいただいておりますが、国際紛争を解決する手段としては武力は行使しない、日本は戦争をやらない、憲法の制定当時における吉田首相の答弁を見ましても、自衛と名づける戦争もやるべきではない、今までの日本の行なってきたどの戦争もみんな自衛のための、自衛という名目で行われてきた、それが間違いのもとであったと吉田首相ははっきりと答弁されている。戦争をやることを前提とし、国連憲章第五十一条に認められたという自衛権、その自衛権の武力の行使によるという形態、平和条約第五条に基くこの交戦権ありと言わなければならない条約上の日本の立場から言いますならば、それに従って行われる憲法第九条の改正、自衛権の行使におかれる戦争行為、交戦行為、これが一体三原則としての平和主義を貫き通すとか、守り通すという条件はどこからも出てきません。そういう状態に切りかえてまでなおかつ平和主義というならば、世界のどこの国に平和主義でない憲法があるか。日本の憲法こそ戦争を放棄し、武力行使はやらないというので、平和憲法という名前が初めて日本の憲法に与えられることは理の当然である。
私は以上申し上げたような立場から、その他にも反対の理由をもっておりますが、以上申し上げた立場から憲法調査会法案に対し反対し、同時に島村君提案の付帯決議に反対いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X04319560515/5
-
006・宮田重文
○宮田重文君 私は先ほど島村委員より御提案の付帯決議案に賛成します。自由党を代表いたしまして……。この付帯決議によりまして政府はその意をくんで今後の憲法調査会発足に当りましても、公平なる世論の期待に沿う委員会の審査が進められるよう希望いたしまして賛成討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X04319560515/6
-
007・堀眞琴
○堀眞琴君 私はただいま鳥村委員より提案されました憲法調査会法案の付帯決議並びに憲法調査会法案に対しまして反対をいたすものであります。
まず第一の理由は、提案者が憲法調査会法案の提案理由の中にあげております理由がきわめて薄弱であり、いな薄弱というよりは全くその当時の憲法成立過程を無視した理由であるということであります。なるほど現行憲法がマッカーサー総司令官の要請に基いて立案制定されたものであることは言うまでもありません。しかしながら当時日本の政府等において立案せられた憲法改正の草案というものがきわめて非民主的であり、明治憲法からほとんど一歩も出ていないというような改正草案であったことは、当時の松本草案その他を見るならば明瞭であります。ポツダム宣言に基いて日本が民主的な諸制度、とりわけ民主的な憲法を制定するということは、日本全国民の要望でもあったし、また連合国の意向でもあったと申さなければなりません。従って松本草案に対してマッカーサー総司令官が民主的な原則に基く草案を日本側に提示したということは、これ当然だと言わなければならぬのであります。しかもその審議の過程を見まするというと、マッカーサー総司令官によって提示された草案を政府の草案とするまでに重大な修正が行われた。またそれを審議すべき帝国議会は二十一年の四月の総選挙によって改選された。しかもその選挙は普通選挙に、正しい普通選挙によって行われた選挙であり、その選挙を通じて帝国議会が構成され、第九十帝国議会においてこれが審議を見たのであります。帝国議会におけるところの審議においても、もちろん各議員、各委員の自由な意思によってこれに対する審議が行われており、修正等も行われているのであります。従って提案理由の中にある「真に国民の自由意思によるものにあらざることは否定しがたき事実であります」が、全くこれは事実に相違しているものと言わなければなりません。現行憲法はむしろ日本国民の民主的な意思が反映した憲法であるということが第一の理由であります。
第二に今日は憲法を改正すべきときではないということであります。もちろん現行憲法は明治憲法と違いまして不磨の大典でもなければまたこれを永久に改正すべからざる憲法でもないのであります。社会が推移し、また時代がたつにつれて、国民が要望するならば、いつでもこれを改正することができる憲法であります。しかし現在の段階において果してこれを、憲法改正すべきであるかどうか、まず第一に世論はこれを各新聞社等において調査いたしましたところによりましても、決してその多数が現行憲法の改正を要望しているものと見ることはできません。改正を要望する世論の数とむしろこれに反対する世論の数とはそれぞれ約三分の一ずつありまして、残りの三分の一はこれに対して改正、反対いずれの意思をも表明しておりません。鳩山首相はその不明な三分の一の数を漸次政府の指導によってこれを改正に賛成の側に導くことができるというお話でありますが、しかし政府がそういう態度をとることはむしろ日本の民主的な世論の形成の上に大きな害を与えるものだと申さなければならぬのであります。
なお、憲法改正論者は現行憲法が占領時代に制定されたものであり、独立の今日においては全面的にこれを検討するのが当然であり、その検討に基いて改正すべき点は改正しなければならない、こう主張しているのでありまするが、しかし現在の日本が果して完全な独立を得ているかと申しますると、なるほど形式的にはサンフランシスコ条約によりまして日本は一応の独立をかち得ております。しかし日本との交戦国はまだ平和的な状態にないものもありまして、完全な独立を日本は得ているとは申すことができません。しかも日本はアメリカとの間に安全保障条約、行政協定その他によりまして国内には御承知のようなアメリカの軍事基地等が設定されてアメリカの軍隊が駐留しておる。そうしてそれらの基地やあるいは軍隊に対しては特殊な権限が与えられている、こういう状態において、果して日本は完全な独立国と言い得るかどうかということになりますというと疑問なきを得ないのであります。もしぜひとも改正しなければならないとするならば、日本が完全な独立を得たのちにおいて、これを検討しても遅くはないと申さなければなりません。さらにまた現行憲法はアメリカの要請に基きマッカーサー草案を基礎にした憲法であるといって改正を主張しながら、他方憲法改正に関する点につきましてもアメリカ側からの要請に基くところが多いと見なければなりません。警察予備隊から自衛隊にまで発展した日本の軍備の設置も、朝鮮戦争勃発直後におけるマッカーサー元帥の指令に基いて設けられたものであり、その後の自衛隊までの発展の状態もアメリカ側からの要請に基いておることは明白でありまして、それらの事情を通じて日本は再軍備をなすべきであるというアメリカ側の要請が強く日本にもたらされ、その結果アメリカ側の要請に基いて憲法改正するということになって参ったと見なければならぬのであります。これが第二の理由であります。
第三に憲法改正には限界があるという点であります。憲法の基本的な規定、たとえば平和主義、国民主権の規定、あるいは基本的人権の規定、これらは現行憲法の最も基本的な規定であります。これに対して何らかの修正を加えるということは、とりもなおさず現行憲法の根本精神に変更を加えることになるのであります。従って今日世界の憲法学者が一致して述べておりますように、そういうような憲法改正は憲法改正ではなくて新たな憲法を制定することになると言わなければならぬということに一致しております。現在の憲法は明治憲法の改正の手続に従って制定されました。日本の国民は現在の憲法を新憲法と呼んで決して明治憲法の改正とは呼んでおりません。この新憲法と呼ぶ呼び方は全く正しいと言わなければなりません。フランスの第四共和制の憲法、あるいはイタリアの共和制の憲法、その他の戦後の諸憲法がいずれも憲法の基本的な規定に関してはこれを改正の手続によって改正することができないということを規定したのは、その意味から全く正しい規定だと言わなければなりません。ところが自由党の改正案、改進党の改正案、あるいはまた最近発表せられました自由民主党の憲法改正に関する資料等を見まするというと、国民主権、平和主義、基本的人権についてはこれを尊重する。しかしながらたとえば天皇の象徴という考え方はきわめて明確を欠く。特に外国に対して日本の国を代表する者がだれであるかということが憲法には規定されておらない。従ってこれをたとえば元首に変えようという意見がある。自由党、改進党の案については元首という、言葉が使われております。これは天皇の行う国事行為に関する自民党、その前の自由党、改進党の改正案等見まして、国事行為が非常に広くこれを憲法の中に規定しよう、政治的な行為についても天皇がこれを行い得るようにしようという、それらの点から見まして、私はたとえば天皇を象徴から元首に変えようとするようなこの考え方は、国民主権の本来の原則に反するものだと言わなければならぬと思うのであります。従ってこの点は憲法改正には限界があり、基本的精神ともいうべき規定を改正することができないというこの原則から申しまして、これにもとるものだと言わなければならぬと思うのであります。
次に、憲法調査会を内閣内に設けることについてきわめて適当でないということであります。もしも憲法調査会を設ける必要がある、憲法の全般にわたってこれを検討しなければならない必要があるとしましても、憲法調査会を内閣に設けるのではなく、国会に設けるべきであるという点であります。憲法制定権者は言うまでもなく主権を持つ国民にあります。憲法改正を国会に提案する提案権はその代表機関たるべき国会にあることは当然に類推されるところであります。もちろん現在の憲法にはそれについての別段の規定がありません。政府の側におきましては内閣総理大臣が内閣を代表して国会に議案を提出する権利があるという現行憲法第七十二条によって政府の側にも国会に対する憲法改正の提案権があるという説明をいたしております。しかし憲法の改正案は他の一般の議案ないしは法律案に比べましてこれを同等に取り扱うことができないのは言うまでもありません。従って憲法九十六条の改正規定の中には特別な審議のために必要な定足数の制限が規定され、さらに国会においてそれが審議決定した後においてさらに憲法制定権者としての国民の投票によってこれを決定するという規定を設けております。この九十六条の規定は国民投票の発議者は国会であるということを規定しておる。この点から考えてみましても、憲法調査会をもし設けるとするならば、これを内閣ではなくて国会の中に設けることが適当であるということを私どもは見なければならぬと思うのであります。
最後に、自民党あるいはその前の自由党、改進党等の憲法改正に関する要点あるいはそれに関する資料等を見まするというと、各条章にわたって改正をすべき点が列挙してあります。これがそのまま憲法調百会の議に付せられるとは私も思いません。しかし憲法調査会を構成する委員が五十名、うち三十名が国会議員、他の二十名が学識経験者、国会議員は各党派の勢力に比例してこれを出すということになっております。勢い自足党の選出国会議員が委員の中で圧倒的な多数を占めるであろうことは想像にかたくありません、それからまたその他の委員の学識経験者二十名につきまして、おそらくは政府の意向に賛成するであろうと思われる、自民党の改正案に賛成するであろうと思われる人々が選掛されるであろうということも想像にかたくありません。ただ島村委員から一党一派に偏せざるりっぱな人をその委員に選出すべきであるという付帯決議が行われましたが、その付帯決議の通りに果してその委員の選任が行われるかどうか、大きに疑問とするところであります。それらを考えまするというと、自民党が先般発表いたしましたこの憲法改正に関する基本的態度並びにその問題点等に関する考え方が、おそらく憲法調査会が設けられた際には大きな発言権を持つのではないかと思われます。そうしまするというと、憲法改正にはおのずから限界があるということを申しましたが、この各条章の検討に当って、その結果出て来るところのものがどういうものかということは想像にかたくないのであります。私はそういうような憲法改正を前提とし、しかもそれが民主的な方向に一歩前進するよりは、三歩も五歩も退却するような憲法改正を前提としてのこの憲法調査会法案、並びにその付帯決議に対しては反対せざるを得ないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X04319560515/7
-
008・青木一男
○委員長(青木一男君) 他に御発言もなければ、島村軍次君御提案の付帯決議案を問題に供します。
島村若御提案の付帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成する方の挙手を願います。
[賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X04319560515/8
-
009・青木一男
○委員長(青木一男君) 多数と認めます。よって島村君提出の付帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
次に、本会議における口頭報告の内容、議長に提出すべき報告書その他については慣例によりこれを委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X04319560515/9
-
010・青木一男
○委員長(青木一男君) 御異議ないと認めます。なお、報告書に対する多数意見者の御署名を願います。多数意見者署名
佐藤清一郎 木島 虎藏
梶原 茂嘉 木村篤太郎
井上 清一 西郷吉之助
青柳 秀夫 鳥村 軍次
野本 品吉 宮田 重文
廣瀬 久忠発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X04319560515/10
-
011・青木一男
○委員長(青木一男君)暫時休憩休憩いたします。
午後零時五十八分休憩
〔休憩後開会にいたらなかった〕
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X04319560515/11
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。