1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年五月九日(水曜日)
午前十時十二分開会
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出席者は左の通り。
委員長 加賀山之雄君
理事
有馬 英二君
吉田 萬次君
湯山 勇君
委員
雨森 常夫君
川口爲之助君
剱木 亨弘君
田中 啓一君
中川 幸平君
三浦 義男君
三木與吉郎君
安部キミ子君
荒木正三郎君
矢嶋 三義君
高橋 道男君
竹下 豐次君
国務大臣
文 部 大 臣 清瀬 一郎君
政府委員
文部省初等中等
教育局長 緒方 信一君
文部省大学学術
局長 稻田 清助君
事務局側
常任委員会専門
員 工楽 英司君
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本日の会議に付した案件
○地方教育行政の組織及び運営に関す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○地方教育行政の組織及び運営に関す
る法律の施行に伴う関係法律の整理
に関する法律案(内閣提出、衆議院
送付)
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001・加賀山之雄
○委員長(加賀山之雄君) これより文教委員会を開会いたします。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律案及び同法律施行に伴う関係法律の整理に関する法律案を一括して議題といたします。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/1
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002・高橋道男
○高橋道男君 一般的なお尋ねをいたしたいのでありますが、現在の憲法において、基本的人権の尊重という上から、各般の自由を認められておると思うのであります。思想、良心、信教あるいは学問その他各般の自由が認められておるのでありますが、教育という点につきましては、憲法の二十六条に、その文字が現われておりますけれども、これについては、教育の自由という文字は出ていないのであります。これは教育の自由ということが、本来きわめて野放しに認められておるという意味であるのか、むろんこれは上に修飾がありますから、そうは思わぬのでありますが、野放しに認められておるというのであるのか、あるいは相当の適用による制限とか、統制という言葉は少し当らぬかもしれませんけれども、何らかの管理を受けなければならぬ、こういうように解するのか、その点について、大臣の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/2
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003・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) これは大へん広範なお問いでございまするが、近代国家では、やはり教育の責任は国家がとるものだ、こういうことを私ども考えまして、不明でありまするから、教育に対する国家の責任というものを明確にお願いするために、別の臨教審にも御調査を願いたいと思います。この憲法には明確になっておりませんけれども、近代国家の原則といたしまして、私は教育は国家の責任である、責任である以上は、やはりその半面は国の方で最後の規制ができるものだ、かように思っております。しかしながら、このことは憲法にもないくらいの大きな問題ですから、別の審議会でよく御検討願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/3
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004・高橋道男
○高橋道男君 そうすると、大臣はこの際は、その点についての明言はいたさない、こういう御意見なのでありましょうか。それとも完全な自由というものは認めにくい、こういう御意見なのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/4
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005・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 思想、言論の自由もあり、それから親は子を育てる自由もあるのでございます。しかしながら、今教育といえば、多く学校制度による教育が大部分であります。それについては私は国家は責任を持つものだ、国家が責任を持つ以上は、その範囲においては国の方で規制ができるものである。もっとも、教育ということについては、家庭教育、社会教育、学校教育、家庭内においては親が子に教育することは、これはもう家庭生活上自由だろうと思います。社会教育、学校教育に至っては、やはりお互いが相約して国というものを作っている以上は、国に責任があり、責任ある以上は、ある限度の統制権を持つべきものだ、これがまあ近代国家の形であろうと思いまするが、それが疑義にわたっておりまするので、今度御研究願いたいと思っておるのです。お許し願うならば、二言目に官僚政治ということで攻撃されるのです。今の学界においても、きのう湯山さんが御引用の学長の声明にも、官僚統制に復帰すると言っておられるのです。けれども、今の国家組織には、昔みたいな官僚はないのですね。天皇の大権で下に持ってこないのです。今の国の組織は、国に統治権があって、その統治権を持っておる国の諸君から選挙を受けて国会ができて、国会の委員会のような格好で内閣ができておるのですから、官吏といわないで公務員といっておる。公務員は国民に対して責任を持っておる。ですから昔の官僚政治はしようと思ってもできなくなっておるのです そこに大きな変化があると思います。それで戦後新憲法、新国家ができましたけれども、この教育の一点に至っては、まだそこは十分ではないと私は思っておるのです。私清瀬の私見をここで申し上げては、かえって間違うと思いまするが、ただ昔の官僚教育はできなくなっておるのです。官僚はありませんから……。しかし、そういうふうに委託を受けた、われわれが国民に委託を受けたという名のもとに、統制ができるかどうかということになると、疑義にわたると思いまするから、もし別の委員会で御審議願っておる臨教審ができましたら、そこを一つ究極まで御研究願いたい、こう思っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/5
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006・高橋道男
○高橋道男君 そうしますと、思想とか学問というものは自由であるけれども、教育については若干違った見解を持つ、最小限度そういうところまではおっしゃることができるわけでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/6
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007・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/7
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008・高橋道男
○高橋道男君 次に、それに関連するのでありますが、昨日矢内原東大総長の卒業生に対する告辞が問題になったのでありますが、それを拝見しますと、その前にお伺いするのですが、この告辞はこの通りに読まれたものなんでありましょうか。それともこの要綱としてお出しいただいたのでありましょうか。それを念のためお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/8
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009・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) このまま読まれたものと存じます。そうしてこれはすぐに自分で謄写されて、新聞にはこのままお出しになったらしい。新聞は紙面の何がありますから、掲載するときに取捨いたしております。私ども新聞を見た時分には、ちょっと疑義を抱きましたけれども、全文を見ますというと、そう不当なこともない、私はこう思ってきのうはりっぱな告辞だと、こういうふうに発表いたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/9
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010・高橋道男
○高橋道男君 その告辞でありますが、りっぱだという形容詞でおっしゃったその告辞の中に、私ども総花的に特に異議をはさむというようなことではないのでありまするけれども、この中に「言論の自由・思想の自由・」その次に「教育の自由を尊重する」、こういう言葉があるのであります。そこで教育の自由ということについてのお尋ねをいたしたわけでありますけれども、この教育ということと学問ということですね。ある場合においては、これは内容的に一致するものであるけれども、しかし教育はどちらかというと、外から与えるものであるし、学問はこちらから求めるものだと思うのでありまするが、両方が一致することも、たとえば大学のごとき最高学府においては、それがあり得ることであるけれども、その他の場合には、教育と学問というものは、必ずしも一致しないのじゃないかと私は思うのでありますが、つまり学問で自分が研究している通りのものを教育として、すべてに与えていいかどうかということについての私は疑念を持っているわけでありますが、ここに特に教育の自由を尊重するということを言われていることが、私にはちょっと解しかねるので、大臣はりっぱな告辞だとこうおっしゃったこともあるので、お伺いいたすのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/10
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011・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 学校の中でも大学です、大学は義務教育等と違って、学校教育法の五十二条というもの、それには「学芸を教授研究し、」あそこだけは教授のほかに研究の機関があります。五十二条でございます。研究する点においてはいわゆる学問の自由で、自由に御研究なさらぬというと、行政府で口を差しはさむことは、かえって学問の発達を妨げると思いまして、その範囲において学問の自由と世間で言っているので、憲法にも保障していると思います。だから明治この方大学の自由ということも言っているのであります。教授ということになると、一般の学校と同じくビルディングで教えることなんです。わが国の憲法においては、高橋さん御指摘のごとく、教育の自由ということは書いてないのです。そうなれば近代の世界の各国の基準ということに目安を置かなければなりません、日本も自由主義国でありまするから。まあ何といっても、イギリスなどは自由主義国と見ていいと思います。わが国と同じく議院内閣制度をとっております。その自由主義国の英国でどうやっているかといえば、一番新しい一九四四年の、世間でいうバトラー教育法などを見るというと、以前よりはやはり、あれまでは文部大臣なかったんですね。ミニスター・オブ・エデュケーションというものを新たに作って、そうして文部大臣の権限でいろいろなことをやらしております。すなわち教育に関する国家の責任、義務また統制といっていいらしい、統制が強化されているのです。ですからして近代国家はその政府で教育に関する主導権を持ち得るものと通念的に見ていいのじゃないか、このところだけは日本の憲法で、現行憲法はちょっと空白になっております。さらに十分な御研究を願いたいと思います。しかしながらこの告辞に、第二にあるように、官僚統制をしちゃならぬと思います。幸いにしかし、いわゆる官僚統制は日本にはなくなりましたからそれは私は論外だと、こう思っております。しかしここでいろいろ疑点をあげられております。統制に陥る弊はないだろうかという疑問を投げられておるのでありますから、やはりこれらについては、われわれも他山の石として研究いたしたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/11
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012・高橋道男
○高橋道男君 この告辞は大臣の告辞でなしに、矢内原総長の告辞でありますから、これを今これ以上問題にしたいとは思いませんが、教育をどの程度かに規制するという標準が、もしあるといたしますれば、それはただいまの日本では教育基本法だ、こういうように解してよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/12
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013・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 現行法ではお説の通り基本法と憲法によるのほかはないのであります。それに規定されておらぬことは、今日の自由主義国家のやっていることをかりに基準としてやるのほかはあるまい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/13
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014・吉田萬次
○吉田萬次君 ちょっと関連して……、ただいまの高橋さんの御質問にありました中に、矢内原総長が教育の自由ということを言っておりまするが、教育の自由というふうのことは、これは大学において初めて言い得ることでありまするけれども、義務教育であるところの小中学校にまで、もし教育の自由というものの名において、そうして教育が施されるということになったら、私はきわめて重大な問題だと思います。先ほど大臣がりっぱなものだということをおっしゃいましたが、もう少し深く掘り下げて検討したならば、私はこれはただ単にここに書いてあるその事柄に対しては、いいかもしれませんが、しかしながらこれはやはり一般のものから見ましては疑義があると思うが、大臣はどうお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/14
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015・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 私はここに矢内原さんのおっしゃる自由というものは、幾ら自由でも、法律に書いてあるものには従わなきゃなりません。すなわち、たとえていえば教育基本法、学校教育法、これには従わなきゃなりません。それからまた、法律を基準としてやっております告辞、それからして基準ですね、文部省ではやはり法律を基本として指導要領というふうなものを出しております。各種の告辞があります。これにはお従い下さる上において私は自由と、こう思っておるのです。教育の自由だといって、文部省が法律に基いて出しておりまする各種の検定とか、あるいは基準とか、それにそむいてもいいということをおっしゃっているのじゃないと思います。それからまた、今御審議下さっておる教育委員会ですね、委員会にも権限が与えてあります。現在の委員会も、新たに今御審議下さっておる委員会も、権限を持つのです。ことに教員の服務について権限を持っておるのです。それには従う限度において自由と、こう言わなければ無理だと思っております。ただ、矢内原さんは大学でありまするから、研究の自由のことを言っておられるのじゃないか、こう私は善意に読んでおるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/15
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016・竹下豐次
○竹下豐次君 ちょっと関連して。高橋さんと吉田さんの御質疑に対する大臣のお答えがございましたが、私も実はこの矢内原学長の告辞を読みまして、実は「教育の自由を尊重することは、」こう書いてあるところには、私としてはばってんをつけておるのであります。で、大臣が一口に大へんりっぱなものだと思うということを、そういう御意見を御発表になるということは、世間ではいろいろな誤解を招くのではないかということを私は心配いたします。これを読んでみますると、「言論の自由・思想の自由・教育の自由を尊重することは、」云々と書いてありまして、前の二つは、これは憲法にはっきり書いてあることであります。それと並べて何らの区別もなくここに告辞しておられるということは、世間でみるというと、言論の自由及び思想の自由と同格のものであるかのように誤解される心配があると私は思います。そこにもってきて大臣が野放しに、この告辞はりっぱなものであるということを御説明になりまするということは、非常な誤解を私は招くのじゃないかと思っております。どこまでも学長の御意見、告辞を善意に大臣は解釈しておられますが、それまで善意にすべてを解釈し、推論されるということは、よけいな気がねじゃないかというような感じを私は持つ者でございますが、大臣その点はどうお考えでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/16
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017・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 今吉田さんの問いに答えました通り、私は教育の自由とおっしゃるから、言う人が大学教授でありまするから、研究の自由と、そうほかに自由を拡張するならば、法律できめてある範囲の自由——教育の自由とおっしゃっても、学校教育法にはこれは従わなければ無理であります。教育基本法はむろんお従いのつもりと思います。それらの範囲内においての自由と私は読んでおるのです。教育を何もかも統制してしもうて身動きがならぬということでは、今日いわゆる新教育で個性の発展を促すというふうな教育はできやしませんから、やはりその範囲においての自由とおっしゃるので、法律並びに法律に基く各種の基準は、これはお守りのことだと、こう思っておるのであります。その次に自由主義国の基本原則である。自由主義国といえば、イギリス、アメリカでしょう。英米においてもその通りですから、ことにちょっと申しました通り、イギリスのごときは、近年幾らか統制を強めておるのです。ですから、それはお守り下さることだというので、もし十分に準備して、また文章が長くなることをいとわなかったら、そうお書きになった方がいいかと思いまするけれども、その範囲内において教育の自由とおっしゃっても、とがむるに足らんと、こう思っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/17
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018・竹下豐次
○竹下豐次君 私が申しまするのは、大臣のお考えのように矢内原学長は法律もわかる人でありまするから、そういうふうにこまかい点をお考えになって、こういう言葉をお使いになったのかもわかりませんけれども、しかし、この言葉をずっとそのままに書いてあるものを読んでみまするというと、言論の自由、思想の自由と同等に扱われる形に表現されておるのであります。だから、そうでない、大臣の解釈されるような意味で言われたのだとすれば、もう少しそれは世間にわかるようにしなければならないのでありまして、非常な危険なことは表現だと思うのであります。それを大臣が野放しで、これはまことにりっぱなものであると言ってから、おほめになるというと、法律解釈など、みな法律家ばかりはおりませんですからね、非常な危険が伴うのじゃないかと思う、こういうふうに考えておりますので、質問申し上げたわけでありますが、しかし大臣のお気持は私はわかっておりますが、希望を申し添えておきまするというと、野放しにおほめにならないように、一つ気をつけていただきたい、こういう気持を持っております。それだけ申し上げます。御答弁はけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/18
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019・矢嶋三義
○矢嶋三義君 関連して。これは昨日私伺って、私の質問に対して大臣が答弁されたことがきっかけとなって、大臣のほめ方が悪いという点で質疑がなされているようですが、私はこれで告辞を書かれた方の気持は十分出ており、またどこに出しても、問題のないりっぱな表現だと思っております。終戦後特に最近教育の自由ということが非常に叫ばれておりますが、それは何も手放しで何をやってもいいというような考えで、世の人は教育の自由というのを叫んでいるのでないということは、明確でございます。戦後における日本の学校教育並びに社会教育全般は、申し上げるまでもなく、国家の基本法憲法の精神を受けて出ましたところの教育基本法をもととし、その教育基本法を受けて出たところのあるいは学校教育法、あるいは社会教育法、あるいは教育関係のあらゆる法律というものを基準として、教育というものは展開されている。その根本的なものとしては、教育はどこまでも自主性というものが堅持され、不当なる支配とか干渉を受けることなく、あくまでも真実に生きるところの教育というものがなされなければならん。そうして人間の人格の完成育成というものが期されなければならない、こういう立場でなされているのであって、私はほとんどの国民に誤解を与える言葉ではないと思います。あえてここに「教育の自由を尊重する」ということを矢内原総長が併記されたということは、私が申し上げたようになければならないのに、戦後年月の経過とともに、教育立法の精神からはずれるような方向に日本の教育が進みつつあり、外部勢力によって曲げられて、真実を貫くところの教育が守れないという状態になりつつあるという点を、非常に平素から懸念されているがゆえに、あえて教育の自由というものを力説されたのであって、わが国の現在の教育を取り巻く諸情勢を考えて適切なる表現であり、適切なる告辞だと、かように私は考えております。そういう立場において文部大臣もさきほどの答弁を承わっておりますと把握されております。そういう立場において昨日の私の質問にはりっぱである、かようにお答えいただいたわけでありまして、ただ、世界観をこの中に断定的ではないが書かれております。それらの社会情勢の把握ですね、書かれてありますが、そういう点について大臣は必ずしも同一意見でなくて意見の若干の相違はあるけれども、しかし大学の総長としての告辞としてはりっぱなものだ、かように昨日答弁されたわけでありまして、私はかように大臣の答弁を了承しているのでありまして、先ほど以来他の委員にお答えになっていることも、昨日私に御答弁いただいた大臣の態度と違わないように私は考えておりますが、もし昨日の私に対する答弁を変えるということになりますれば、これはさらに私は質疑をしなくちゃならぬと思いますので、念のために伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/19
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020・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 私の答弁は少しも変っておりません。ただ、今教育の自由ということをどう解釈するかというお問いでありましたから、学長が自由とおっしゃるのも、法律にきめたものに違反するということでは私はない、こう考えておるのです。これはもう今日民主主義国の当然であります。たとえ悪い法律と思っても、廃止されるまではそれに従わなければならない。これはまた今日の文明国の通則と思っております。しかしながら文章のニュアンスとしてほかの自由とずっと一緒に書いておられるところに高橋さん、竹下さんの意見があったのだろうと思います。私は善意にこれを読んでいるだけのことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/20
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021・湯山勇
○湯山勇君 ちょっと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/21
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022・加賀山之雄
○委員長(加賀山之雄君) 高橋さんよろしうございますか関連質問……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/22
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023・湯山勇
○湯山勇君 今大臣の御答弁になりました学問の自由、思想の自由、それから教育の自由こういう三つのものを並立するところに疑義がある、その教育の自由に関する分は、大臣は善意に解釈する、こういうお話しでございましたが、私はここでぜひお尋ねいたしたいのは、自由というものを大臣はどういうふうにお考えになっておられるかということです。私はこの自由というのは放らつとは別だと思います。自由というのは無秩序、無法則な状態を自由とは言わないと思います。それが矢内原学長の言っておる自由主義国家における云々ということにつながると思いますので、従って善意に解釈しようが、あるいはどのように解釈しようが、法則に従うところに、自由というものはあるわけでございますから、そうすれば当然学問も自由でなくてはならないし、思想も自由でなくてはならないし、もちろん教育も自由でなくてはならない。ただ、矢内原学長の言っておることは、学問なり思想なり教育なりの、そういう自由が失われて権力によるその支配を受ける、こういうことを心配して、そういうものを守っていかなくちゃならない、こう言っておるのであると解釈すれば、別に善意にとるとらないにかかわらず、その言葉はそのまま受け入れてしかるべきものとこう考えておりますが、そう考えるか考えないかは、自由というものをどう解釈するかということにかかっておると思いますので、自由ということが無秩序、無法則あるいは放らつ、そういうことを意味するとお考えになるのか、法則に従うところに、初めて真の自由はあるのだという御見解をおとりになるのか、そうだとすれば当然この声明はそのまま善意と悪意にかかわらず認められていいものではないか、こういう点についてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/23
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024・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 今のお問いの中心は、善意に私が解釈するということは妙じゃないか、こういうことですが、しかし高橋さんが指摘の通りここに三つ、言論の自由、それからしてわけても思想の自由、思想はこれはもう絶対自由であります。心の中で何を思おうが、それはもう事の性質上絶対自由です。言論の自由は憲法で保障されておる自由です。思想の自由は天然の自由です。それと教育の自由、(湯山勇君「学問」と述ぶ)学問じゃなく教育と言っておるのです、ここでは……。「言論の自由・思想の自由・教育の自由を尊重することは」こういうふうに書いておられますから、教育の自由も絶対自由だというふうに読まれるおそれはないかという御質問で、これはごもっともです。まあ知識階級というか、平生法律等に関係しておるものは、教育の自由といったところが、学校教育法それからして教育基本法というものがあるのだから、こうおっしゃっても、それをもう前提としておることだろうというのはくろうとの考えで、戦後新たにできましたから法律というものを知らぬ人は思想の自由、言論の自由と同じように見はせぬかという御心配は、ごもっともであります。ところが私は幸が不幸か法律家でありますから、ここで自由とおっしゃっても、学校教育法に反してもいい、教育基本法に反してもいい、そんなことをおっしゃるのじゃありません。これは当然として私は善意に解釈したというだけでございます。家庭教育、社会教育、学校教育におきまして、家庭教育は私は絶対自由だと思うのです。いわば城廓のようなもので、中のお父さんのほしいままにすればいいのです。(笑声)学校教育については学校教育法がありますし、社会教育は社会教育法というものができておりますから、みなそれに従わなければならぬ、そういうことを私は平素思っておりますから、これを読んで、ちっとも異としなかったのであります。今御両君から御指摘を受けますと、やはりもう少し用意してお書きになった方がよくはなかったかと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/24
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025・湯山勇
○湯山勇君 今の私のお尋ねしたのは、そういうふうに解釈される根底には自由というものを、大臣はどう御把握になっておるかということが基礎になると思う。私どもはたとえば言論にしても、言論の自由だからといって、何でも勝手なことを言っていいとは解釈しておりません。それにもおのずから限界があると思います。そこで自由というものを、私は今大臣がおっしゃったような絶対自由というようなふうには考えておりません。あるいは放らつとかあるいは無秩序、無法則とか、そういったふうには考えないで、自由というものはおのずから法に従って法則に従うところに自由というものは生じてくるのだ。教育なら教育というものは法律だけじゃなくて教育作用というものの本質はどこにあるか、その法則に従うところに、教育はあるので、そういうことを大臣はビルディングとか、そういう言葉でおっしゃったし、また、ある人はイリシット、引き出す、引っぱり出すという言葉で言っております。そういう法則に従って教育するところに教育の自由はあるのであって、また、法律の面からいっても、きめられた法律に従って初めて自由であって、法律を逸脱しておるところに自由はない、こういう基本的な考えを私は持っておるわけです。で、大臣が御解釈になるのは、もっと違った自由ということの解釈からおっしゃるのであれば別ですけれども、私が今申しましたような意味の自由ということに立てば、それが学問の自由であろうと、言論の自由であろうと、教育の自由であろうと、あるいは個人の自由あるいはその他のものの自由ということにしても、別にそのことはそうこのことはこうだ、このことはこうだという区別は要らないのではないか。もちろん誤解があることについて、親切に注釈を加えられるということについて申しておるのじゃなくて、自由ということを大臣は原則的にどうお持ちになっておられるかということを、お聞きしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/25
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026・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 大きなお問いでして、時間を取ることは恐縮だと思いますけれども、申し上げてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/26
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027・湯山勇
○湯山勇君 大事な問題ですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/27
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028・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 私はこう思っておるのです。戦争後の新憲法及び新情勢から、以前われわれ学生の時分は、あやまてるといったような教えを受けておりましたが、やはり自然法ですね、フーゴー・グルチアスの始めた自然法の非常に影響されておると思います。アメリカの独立宣言がそうであります。アメリカの憲法がそうで、それに非常に影響を受けておるので、本来人間は生まれながらにして、自由、ルーソーの民約論にあるマン・イズ・ボーン・フリー、生まれて自由なのだ、人間は持っておるのです。しかしながら集団生活をせんならぬから、その一部分を今の言葉で言えば供出しておるのです。それが国というものです。本来はもう何も遠慮ない、野原の草木が枝を出すように何をやってもいいのだと、こういうふうに人間は生まれておりまするけれども、集団生活をする時分には、そうであったらお互いにひじが突き合う、すべてのものすべてに対する戦争、ベルム・オムニスということになるから、それを避けるために国というので、本来持っておるものの一部分を供出しておるのです。そこで立法というものができるのです。で、供出しない残りのものがやっぱりあるのです。思想の自由がそれです。生命を保つ自由がそれです。幸福の追求がそれです。けれども、それほかのところ、あるいは租税を出すことの、法律に従うことの一定の部分の自由を供出して、それを持っておるのが国だとこう思っておるのです。残っておるのは、天然に持っておるものだ、そこで供出した作用で国会を作って、選挙法を作って、ここで法律を作りまするから、法律に従うということはやはりこれは自由の属性であります。こう思っておるのです。ですから、自由と申しましても、法律に、すなわち供出した自由で束縛されるのでありまするから、その範囲内においての自由というものは大事です。ところが法律の網はすべてをおおうものではありません。法律と法律との間には網の目があります。これには常識的の限度がある、それを寛容、トレランスというのです。ですからして、残っておる自由は本来は絶対的のものでありまするけれども、約束した、供出した、法律による抵触、法律がないところでも、網の目がありまして、もそこで寛容ということの制限、法律と寛容とこの制限を受けねばならぬ、かように私は思っておるのです。こういうことを詳しく言えば法哲学になってきまして、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/28
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029・湯山勇
○湯山勇君 ただいまのお考えはわかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/29
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030・高橋道男
○高橋道男君 私はこの矢内原さんの告辞そのものを取り上げたのでなしに、学問の自由、教育の自由ということに関しての大臣の御見解を伺ったのでございまして、そのお態度は私としては一応御了承申し上げることができると思いますので、次の問題へ移りたいと思います。
今回のこの法律案でございますが、第一に先般来の質疑におきまして、総理大臣なり、あるいは文部大臣から、今回の教育委員会法の改正は部分的な改正である、全般的な改正ではない、こういうように仰せられておるのでありますが、この法律案の書き方から考えますと、やはりその根本的な改革ではないかと、こう私が思うところがあるんであります。と申しますのは、この法律案の地方教育行政の組織及び運営に関する法律案の附則におきまして、現行教育委員会法が廃止されておるのであります。従ってこの内容的な問題は別といたしまして、そういう条文からいたしますれば、現在のものをもすっかりやめてしまって、あらためて今回のものを起すのだ、こういう法理的な解釈ができまするので、その解釈に従いますれば、やはりその根本的な改廃である、あるいは根本的な立て直しであると、こういうように私はまあ考えざるを得ないのでありますが、その点についての御解明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/30
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031・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) ごもっともなお問いでございます。この現在の教育委員会法も相当考えた法律でございます。私がこの根本を変えないということはですね、教育について教育も一つの行政には相違ないんです、教育行政です。公共団体内の教育を今まで伝統の日本の考えとすれば、これは知事とか、町村長の管轄であるんであります。それを別の機関を設けまして、元来わが国には合議体の執行機関なんというものはなかったんです。地方自治法に合議体の執行機関を設けて、その執行機関で教育に関する仕事、教科課程のことでも、教員の服務のことでも、役場の通常の行政と切り離したものでやる、しかもそれは合議体だ、こういう一大根本原則はこれを保存しておるんです。ただ、その選び方において、直接選挙によるか、あるいは本案のように町村長の任命によるか、それは変っておりまするけれども、委員会本来の職務というものはほとんど同じことです。それからあり方もほとんど同じことであります。町村長が委員会に命令はできやしません。一つの公共団体にその長が命令しないところのものがあるんであります。こういうことは、わが国においちゃ今まではなかったことです。この大本は同じことなんです。それゆえにほかの法律でも教育委員会が、どうするという法律がたくさんありまするが、どれを見ても、やっぱりそれは適合するんです、今度の委員会でやらせましても……。そこで起案の際に私も一ぺんこの今の教育委員会法をです、修正してやってみようと思って点をつけてみたんであります、ここに現に持っておりますが……。そうすると条文が非常にたくさんになるんです。あれも修正せんならぬ、これも修正せんならぬ、非常にたくさんになりまするから、これは一つ全部書き直した方が、今からこれを読む人が便利だろうというので、全部書き直すか、個条をたくさんですね、五十カ条くらいになったと思います、私自身並びに私のプライベートのスタッフ、私の事務所ですが、こういう趣旨でやってみいということで、朱を入れさしたら、非常にたくさんになりますから、それで意を決して、ここにおられる局長とも相談して、全条書き直そうということに、書く方針はきめたのであります。この教育委員会の本質はこれを受けておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/31
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032・高橋道男
○高橋道男君 大臣のおっしゃることはわかりますが、私が申し上げましたのは、内容は一応別として、法文案の上から受ける印象は、現行のものを廃止して新しいものを作る、こういうように受けられるのでありますけれども、今の大臣の御説明によって、現行法を改正することは、非常に技術的に困難であり複雑であるから、便宜的な方法によって現行法廃止というような文言を入れて、全体を書き直した。ただし精神はそのまま残っておるのだ、こういうように解釈していいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/32
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033・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) はい、そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/33
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034・高橋道男
○高橋道男君 その場合にこの間からも問題になっておるのでありますが、現行法の第一条がなくなっております。これは先般来のお答えによりまして、教育基本法を受けたものであるから、現行法の第一条をあらためて起す必要はない、こういう御意見もわかるのでありますけれども、現行法にはっきりとそういうことが書かれてありまするがゆえに、これを取り除くことが、いかにも今回の法案を軽んぜしめておるというか、きわめて事務的なものにしておるというような印象を、これまた私は強く受けるのでありますが、その点について、なおもう一度お答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/34
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035・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 今御質問の前段にありました通り、教育は不当の支配に服することなく云々という主として教育基本法の十条であります。ところが今回は地方教育行政の組織のほかに運営も入れております。組織並びに運営の法律、そうすると、この行政の運営ということになりまするというと、不当の支配に服することがよくないということだけではいけないので、運営というののもとですから、むしろ第一条と二条ですね、あれも入れなければ十分じゃあるまい、こういうことになりまして、一条、二条と十条だけ入れたら、ほかはいいのだというような疑いも起きますから、今の日本の国の組織としては基本法は憲法こそ基本法律ですから、それが全部ひっかぶって、これでいいのだろうと、こういうふうに考えたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/35
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036・高橋道男
○高橋道男君 社会教育法においては、教育基本法の精神を受けるというふうに示されておるのでありますが、ほかの学校教育法などにはそのことはございませんけれども、今回の場合は、やはりそういう教育基本法の精神を受けるというようなことを、少くとも残しておく方が、現行法を存置するというような意味も、はっきりと示されたものじゃないだろうか、こういうように私は思うのでありますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/36
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037・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) それも一つの御見識です。初めに憲法並びに教育基本法の精神に基きと書いてもいいのです。ただしかし、たとえばあなたの御指摘の通り学校教育法にも書いておりませんので、ただ、社会教育法ということになると、社会教育というのが、今まで教育といえば、すぐ学校を連想しますから、社会教育もやはり教育として教育基本法に従うということを断わる必要はあったろうと思います。学校教育と非常に密接な教育委員会法ですね、つまりは、これは学校教育をうまくやろう、今監視、監督ということが非常に悪い言葉になっているが、まあ学校を指導運営するということがこれは主な法律ですから、ざっくばらんに言えば、教員の服務、教科課程、それから遠足、祭日、これらのことを教育委員会でやるのです。学校教育法には、教育基本法によるということを書かないで当然としている、それにおっかぶさる委員会ですから、これにも特に書かんで間に合うのじゃないか。文字を惜しんでこれを倹約したのでありませんけれども、法律はなるべく文章は簡な方がいいと思って、その通り抜いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/37
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038・矢嶋三義
○矢嶋三義君 関連して。ただいま高橋委員のお尋ねに対して文部大臣は、今度のは地方教育行政の組織並びに運営が入ったから、だから教育行政だけではないから、教育基本法の十条をそのまま受けないで、教育基本法全部にかかるから除いたのだと、かように高橋委員にお答えになりました。現行教育委員会法は運営は入っていないのですか。法律には運営とは出ておりません、法律の名前には。しかしこの現行教育委員会法には運営の面は入っていないのでございましょうか。どうですか、この点伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/38
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039・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 現行はむろん入っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/39
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040・矢嶋三義
○矢嶋三義君 そうなれば、さっきの高橋委員に対する答弁は答弁にならんですよ。高橋委員の質疑に対してはあなたは、これは教育行政だけではなくて、このたびは教育行政の組織並びに運営が入ったのだ、だから教育基本法の十条をそのまま受けて条文化するようなことはしないで、教育基本法の全部にかかるのだから除いた、こういうふうに先ほどお答えになりました。それは答弁にならないじゃございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/40
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041・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 言葉を極端にすればそうでありまするけれども、今度は町村長のことも入っております。知事のことも入っております。教員の任命のことも入っているので、地方教育行政の運営ということが非常に多分に入っているのです。それはもう有か無かといったようなふうに極端なことを言えば、あなたのおっしゃることも理屈がありまするけれども、運営面も相当たくさん入っていることであるので、これを一々書けば、第一条がまあ一番大切なことになる、あるいはそれもあなた御論が出るだろうと思います。一条、二条と言わないで、一番初めに教育基本法の趣旨に基きと書けばいいじゃないかという論もありまするけれども、まあ、今の法律は憲法とか、基本法とかいうようなのが根本法ですから、それに一々よるなんということを書く必要もなかろう。それならどの法律を作るのでも、本法は憲法の趣旨によると第一条に書かなければならぬ。なるべく言葉を簡にするということで、基本法にそむくという意味ではございません。これをもって答えと御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/41
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042・矢嶋三義
○矢嶋三義君 もう一回。ますますおかしくなった。高橋委員はさっきからいろいろこの法律案の重要ポイントをあげて、部分的改正でなくて、非常に大きな根本的改正だという観点からただされているわけです。そうしますと、あなたは根本的な改正でなくて部分的な改正だと答弁された。で、修正を考えたら、修正できんから、現行教育委員会を廃して新たに法律案を立てたのだ、こう言っている。そうして今度は、現行法でも運営が入っているじゃないかと言えば、入っているけれども今までよりはうんと入ってきて、そうして知事のことも町村長のことも何もたくさんふえてきたからと言う。ということは裏返せば、高橋委員がさっきから指摘しているように、部分的改正でなくて、大きな根本的改正であるということを立証になるじゃありませんか。その高橋議員の前と後の質疑に対してはあなたは逃げ回って、くるくる回っておって非常に矛盾しておると思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/42
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043・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 部分的と全体的というのは量のことですわね。それから本質的とそれからして非本質的ということは質のことなんです。私はこの本質は変っておらん、教育委員会が教育に関して一般行政より独立した一つの合議制の執行機関、この本質は変っておらん。条文の数で部分か全体かという量の方からいえば、大へんたくさん変っております。文字からいえば全部変っております。この言葉を区別して御論議下さると審議が早く進みはせんか。私は全体変ったという分量的のことは認めておるのです。ただ本質からいうと、わが国には今までなかったほとんど独立の執行機関が教育を合議制でやっていく、こういう大きなことは明治以来の日本人は知らなかったことです。それを取り入れたというこの根本はちっとも変っておりませんと、こう申し上げておるのです。文字は皆変っておることは、これは見ればわかる、私がお答えするには及ばんことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/43
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044・高橋道男
○高橋道男君 着物は縫いかえたが、からだは残っておるというように私は受け取るのでありますが、そうしますと、この教育委員会が設けられる当初の精神において、この運営はいわゆるレーマン・コントロールだということを聞いたことがあるのでありますが、現在もやはりそういう立場である、あるいは態度であるというように解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/44
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045・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) それも法律には書いてございませんけれども、こういうものを置けといったアメリカ・ミッションのレポートなり、教育刷新委員会の審議なり、それらを通じて、やはりこれはレーマン・コントロールの趣意に解しておるのでございます。それには限度がございまするが、一体レーマンということがそうかというて何にも知らんものであっては困るので、識見が高くて教育、学術、文化に精通しておるものを選んでおるのですから、レーマンはレーマンですが、本職の教員をそのままにという意味じゃないというふうな意味に御解し願いたいと思います。教育を知らんものがいいのだという意味じゃございません。教育、文化、学術についての見識ある人、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/45
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046・高橋道男
○高橋道男君 学術、文化に見識のある人でもって運営を行うということは、よくわかりますが、今回のこの改正されんとする一つの理由がレーマン・コントロールの姿がなくなってきた、薄れてきた、こういうようなことも一つの理由になっておるのじゃないかと、私はこういうことも思うのでありますが、私の邪推かもしれませんけれども、そういうように思うのでありますが、その点いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/46
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047・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) これを公けの席で公けに申すに適したことかしりませんけれども、選挙ということになりますと、欠格条項にしてありませんから、レーマンでない人も立候補できます。それから非常にまた教育に、失礼だが識見も興味もない、教育委員になっておったら、学校の教育が請負えるというので、請負者がなったりすることもあるのです。某都市では自分が教育委員会の委員になっておって、自分の会社で請け負わす、こういうこともあるのです。今度任命はそれを省きまして、やはり人格が高潔で学術文化に精通しておる者、もう一つ、これはもっと早く申し上げるべきであったが、この案と同時に出ておりまする地方自治法においては、この委員会の委員はその委員の職務と直接関係のあるような仕事をしてはならんというのが自治法に出ておるのです。それがやはりここに響いて参ります。こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/47
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048・高橋道男
○高橋道男君 この直接教職員の人が加わることは問題がある、それから全く教育に目のない人もこれは困るというお考えはわかるのでありますが、それならばそういうものを欠格条項として、たしか公安委員もそういう年限かなんかの欠格条項があるのではないかと思うのでありますが、そういう欠格条項を入れて、そして現在の選挙制度でいくというようなことについては、お考えはなかったのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/48
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049・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 今までのこの調査報告のうち教職員、現場におったものがやめてから二年しないとなれないということを考えておる報告もございます。そういうことも一つあります。しかしながら、そのほかにもいろいろ過日以来申し上げておるような理由で、いっそ選挙をやめて全く昔のような天下りじゃいかんけれども、しかしながら今の町村長といってもこれは選挙を経た人だ、町村会議員はむろんのことでありまするから、それから選ぶということになれば、必ずしも民主主義に反さないで適当なものが得られるじゃろう。わが国の将来はどうか知りませんが現状を非常に見て、これも現状がどうか、資料を出せとおっしゃっても、これはむずかしいことですけれども、あなた方も社会の中にお住みになり、われわれ代議士も選挙をおやりになりまして、地方の人によく接触しておりますが、日本の今の現状では手放しで選挙をするよりも、きのう局長より申し上げたような各種の制限、よくよく悪ければ今度はリコールができますから、反対の選挙ですから、その制度もあることでありますから、いっそ任命の方が適切であろう、こういうことで、この案を立ったのであります。お説の通りの教職員をやめてから二年という制限を置けという案もありまして、一ぺん考えたこともあるのでありますけれども、もう一歩百尺竿頭に歩を進めましてこの方がよかろう、こう考えたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/49
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050・高橋道男
○高橋道男君 局長にお伺いしますが、現在の教育委員で、県も地教委も含めて職歴分けの統計表か何かございましょうか、もしあれば資料でお出し願いたいと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/50
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051・緒方信一
○政府委員(緒方信一君) 二十七年度の選挙の場合の当選をいたしました教育委員の職業別の比較表をここに準備いたして持っておりますが、資料として差し上げるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/51
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052・高橋道男
○高橋道男君 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/52
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053・緒方信一
○政府委員(緒方信一君) では資料として差し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/53
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054・高橋道男
○高橋道男君 次に、ただいまもおっしゃいましたように、公選による公共団体の長が、公選による議会に諮ってきめるということを仰せられましたが、昨日もその点について若干どなたからかお触れになりましたけれども、長が任命制になるというようなことも、以前に議論になったことがございます。で、将来また、それがそういうことが起るかもしれんと、しかし、おそらく地方議会までも任命制になることはこれはまあ考えられないと思うのでありますが、この法案にあるように、長からの任命ということではなしに、議会の方で推薦するというようなことにすれば、かりに長が任命制に変るようなことがあっても、公選的な線は維持できるのじゃないか、こういうように考えるのでありますが、そういう点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/54
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055・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) この地方議会の長の公選は、憲法にもあることでございまするし、それからまた、われわれの心持としても、それはなかろうと思いまして、取りまとめのためですから、長だけを除いて議会でやるよりも、やはり長が提案をして皆さんの同意を得る方がよかろう、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/55
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056・高橋道男
○高橋道男君 そのためには、長の公選ということもどこまでも守られていかなければならぬものだと私どもも考えるのであります。次に、教育委員が一党に属する数の制限がしてございます。これはまあ中立性を維持するという上からごもっともだと思うのでありますが、それならばいっそのこと、教育委員は全部党派に所属してはいけない、党派に所属しておる者が委員になるときには、党籍を離脱すべしというようなことはお考えにならないでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/56
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057・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 正直に申しますと、党籍を離脱をしろと、その可否ということを会議にかけて討論をしたことはございませんが、今あなたが仰せられて考えてみまするというと、だんだんこの世の中が進みましてですね、党に属することも自由ですから、たまたま党に属しておるということで、教育に関する発言を封じられることもどうだろうか、弊害があるとすれば、一党専制にならないようにすればいいのじゃないか、こう私は今のところ考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/57
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058・高橋道男
○高橋道男君 一党専制であっては、もちろん困るのでありますけれども、五人の教育委員のうちで、二人までは同一党派でいいが、三人はいけないと、三人になるような場合には一人はやめてもらうんだと、党籍も、党員であることもやめてもらうんだと、こういうようなふうに私は解するのでありますが、党員である人にやめてもらって、教育委員になってもらうということがあるんだったら、一人のみならず全部やめてもらってもいいのじゃないかと、私ははなはだ極端であるかもしれませんが、考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/58
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059・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 今日本では、職務を公正にやらなければならぬのは裁判官ですわね、この裁判官も政党所属は禁じられておらんです。それから警察官も公安委員も禁じられておらないのです。ただしかし、積極的の党の活動をしたり、あるいは党の役員になってはならぬという制限はあるのです。本案もそれと同程度にいたしておるのであります。一切教育委員は入党するなということは、わが国の今の立法例しては非常な異例になりまして、世間ではファッショだと言われるかもわかりませんが、裁判官さえも入党を許可して、積極活動だけを禁じておる現在においては、教育委員だけをそれより以上の制限をすることはどうかと考えるんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/59
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060・安部キミ子
○安部キミ子君 関連質問。今ですね、政党人であるべきだという前提に立って、五人のうち二人というお考えでございますが、その政党人ということは、政党に所属しているいわゆる党員であるという前提に立って任命されましてもですね、いいですか、私はこの今度出された新教育委員会法案に疑義があるわけです。ですからですね、どうしても私は任命ということは色がつくと思う。任命される方の人にも、する方の人にも色がつき、そうして任命されようと思っていろいろな工作がされるだろう、ね、いろいろな内部的な工作がされるだろうと、こういうふうなことなど考えますと、私はいろいろな問題が起ってきますので、今高橋委員の質問に対する大臣の答弁には、いささか了解しかねる点がありますが、その点はどういうふうに考えていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/60
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061・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 同じ党の党員でも、その人の性格なり、経歴なりによって、いろいろの考えはあろうと思いまするが、しかし法律を立てる上においては、その人にいろいろの経歴があるということまでも、これはどうも規定できないのであります。標準はやはりつかまえ得べき基準、英語でタンジブル、そういうものでないと基準になりません。政党の入党は党によっては登録する党派もありまするし、口頭で入党する人もあります。同じ党籍にあるものが三人以上入ってはならぬということは、法律に規定し得ることであります。しかしおとなしい人はいけないとか、あるいは強硬な人はよろしいといったようなことは、どうもこれは法律で書けないのです。可能なことは、これより仕方がないじゃありませんか。世の中のことは常識というぼんやりした基準ですけれども、この基準がやはりものさしであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/61
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062・安部キミ子
○安部キミ子君 そうしますと、今度は党籍でない人を任命するということになりますか。その点……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/62
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063・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) それはむろんのことです。この案は党員を二人入れろというのではないのです。もし入れる場合には、二人よりたくさん入れてはならぬということなんです。自民党が二人入れた、社会党も二人取れとは書いてない。もし党籍を入れるのであったら、三人以上は相ならぬぞということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/63
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064・安部キミ子
○安部キミ子君 そうしますと、党籍のない人を任命するとなると、もう私は混乱してくると思う。常識で考えてあの人は望ましいと思うような人はないこともあるのですよ。私はそういう場合があると思う。そういうときには、一体どうなさいますか。その思想傾向というものが、今大臣が考えておられるようにちょうどいい工合に、はかりにかけて右と左の調和がとれた、よく申される調和という言葉が、私はこういうところでほんとうの価値が出てくると思うのですけれども、おそらく大臣もその調和をとりたいという信念からこういう法案を出されたと思うのですが、その調和がとれないときがある。そういうときには一体どうなさるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/64
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065・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) このことは詳しく局長から説明していただきます。なお足りなかったら私から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/65
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066・緒方信一
○政府委員(緒方信一君) ただいまの御質問は、委員の任命制度についてのことでございますので、第四条の規定につきまして御説明を申し上げます。委員は、長が議会の同意を得て任命するのでございますが、そのとき任命の対象になりますものは、当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者でございます。従って都道府県の教育委員におきましては知事の被選挙権を持つ、すなわち日本国民でありまして三十才以上の者、市町村の教育委員につきましては二十五才以上の者がその任命を受ける資格を持つわけです。そしてさらにこの法律では、人格が高潔で教育、学術及び文化に関して識見を有するものから長が任命する、かように規定いたしております。
それから第二項に欠格条項を掲げてあります。これはごらんの通りであります。
そうして第三項に持って参りまして、その任命の場合に、これはもし政党の人が入る場合には、同じ政党から三人以上は入ってはいけない。二人までは入れますけれども、三人以上は入っちゃいけない。これは昨日から御説明申し上げます通りに、同じ政党の人が教育委員会の過半数を制することになりますと、政治的中立を害するから、そのバランスを保つという意味で、同じ政党の人が三人以上はいけないという規定でございます。もちろん政党に所属しない人を任命することもございますし、あるいはそうでないこともあるわけでございます。この任命の資格条件といいますものは、この第一項に書いてございますように、当該地方公共団体の長の被選挙権を持ちます者で、教育、学術、文化について識見を有する者で、しかも第三項の欠格条項に該当しない者でございます。そういう者でございますので、御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/66
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067・安部キミ子
○安部キミ子君 そうしますと、今大臣が考えておられるような人は、私は見つからぬと思う。そうなれば、どうしても今の日本の実情からすれば、どうしても自民党の方の傾向の方が多くなる。どうしてもまた、任命する人がそういう立場の方ですから、自分が不利になるようなことは、それこそ通念としてしませんことなのです。そんな仏様みたいなことを言われたって、それはうそなのです。でありますから、私はこういう選任の仕方というものは、非常に教育の中立性を害するものであるし、選任された者の行動に対しては、国民は責任を持てませんよそれは。自分が直接選挙して、そうしてその人がよし悪くても、それじゃ今度はいい人を選ばねばならぬといって、国民一人々々が心の底から反省するということになるでしょうけれども、その地方の長になる方が一方的に選任されていけば、第一教育に無関心になります。(「意見でなく質問しなさい」と呼ぶ者あり)そうしておまけに今言いましたように、そういう選任された保守系の方の委員さんだから、どうしてもそういうふうな傾向に私はなっていくと思う。でありますから、これは皆さんよく考えて下さい。(「意見は討論のとき言いなさい」と呼ぶ者あり)私は質疑をしておるのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/67
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068・加賀山之雄
○委員長(加賀山之雄君) 関連質問は、特に要領よく一つお話し下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/68
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069・安部キミ子
○安部キミ子君 ですから、こういうことになるおそれもあるというので、こういう方法には私はどうしても疑義があるし、また、今後非常に問題が残る。県会議員の数にいたしましても、市会議員の数にいたしましても、絶対保守党が多いのですから、今の実情では保守党の強い形で選任なさる、推薦なさるということになれば、私はこの答えははっきりしておると思うのです。ですから私はどうしてもこの選任の方法には疑義があります。そういう点で、そういうふうに大臣はお考えにならぬかどうか。実に公正だということをあなたは言明できるかどうか、その点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/69
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070・矢嶋三義
○矢嶋三義君 答弁の前に、安部さんの発言の中にちょっと誤解される点があるので、党として明確にしなければならぬから……。わが党の安部委員が質疑されましたが、その気持非常によくわかるのですが、速記に残った面でちょっと誤解を受ける面がありますので、改めて安部委員からその点をはっきりされて、大臣の答弁を求めていただきたい。それは先ほど、わが社会党には教育委員になるような人物はおらないと、こういう速記が残ったわけですが、気持はよくわかるのですが、全部が適任というわけでないので、わが党にも教育委員適任者はたくさんおります。従ってかつてはわが党としては無所属の方を推薦して、教育委員選挙に戦った場合もありますし、党籍を持っている適任者を公認候補にして戦ったこともあります。安部さんの気持はよくわかっておるつもりなんですが、速記が残っておりますので、誤解を招いては相なりませんので、その点改めて安部委員から説明されて、大臣の答弁を求めていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/70
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071・加賀山之雄
○委員長(加賀山之雄君) ただいま矢嶋委員から、党としての釈明がございましたが、後刻速記録を調べられた上、安部委員からその点についてさらに付言することがおありなら、安部委員の御意見でもって諮りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/71
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072・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 私は話全体としてお聞きしたので、矢嶋さんの御心配のようなことには少しも拘泥いたしませんから、これも善意に御了解願います。お問いの趣旨、こういうことでよく中立の委員が構成されないと思うが、文部大臣いかが思うかということでありますが、私はこれで中立の、いい委員会はできると思っております。何といっても中立でなければならない公安委員会、これと同じような方法で中立性の公安委員会ができておるのであります。人事委員会もそうですから、多少わが国でも経験したことで、これで私は中立を保つ委員会ができようと、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/72
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073・高橋道男
○高橋道男君 ただいま安部委員のお言葉の中に、緑風会は保守党的な人が多いというような表現の仕方で緑風会を断ぜられたように思うのでありますが、その点については私は大いに異論がございますけれども、この場合は論議の機会でないので、それだけ申し上げておきたいと思います。
次に、今回の法案によって教育委員が任命制になる、その結果任命権者の圧力を受けて、かえって中立的な運営が妨げられるというような危惧を持っておる人が相当あるのでありますが、その点についての大臣の御見解並びにそういうことが起らないようにする処置についてお伺い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/73
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074・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 法規の上においては、一たん任命されれば、その意に反して罷免はされない保障の規定が法律にもございます。それ以上のことは一般の慣行、教育委員会に一般の行政から干渉すべきでないというよき慣行が生まれることを期待いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/74
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075・高橋道男
○高橋道男君 教育委員会が市町村全部にできましてから四年足らずでございますが、公選制が、今回の法案が成立すれば当然やめになって任命制になる。わずか四年の間にそういう変改が行われることになるわけでありますけれども、現在は公選制は困るという段階であるかもしれませんが、将来またこの任命制でなしに、公選制の方がいいというようなことが考えられてきた場合には、再びまた公選制に戻ってもよろしい、こういうような御意見はあるのでしょうか、文部大臣にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/75
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076・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 私は、法律は不定的なものであって、その時代、その国に匹敵したものがいいと思うのであります。日本の文化、学術が進歩し、また日本の国の国民の気風も漸次変化いたしまして、選挙の方がいいという事実が現われ、世論がそれを支持するようになれば、おのずから法律は変るものと思います。決して永久に変えるべからずという考えは、私は持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/76
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077・高橋道男
○高橋道男君 任命制になると、女性の委員が、極端に言えばなくなるというようなことについての危惧も持っておる人がございます。もちろん、不適当であれば女性にしろ、男性にしろその任命はいけないと思うのでありますが、適当な人であるならば、女性が委員であって少しも差しつかえないし、むしろ教育の面については女性の意向を、その立場として尊重すべき点も多々あると思うのでありますが、女性が委員になることについての大臣の御所見と、女性がなることがよろしいという御意見であるならば、これを地方に勧められるようなお考えはないか、これをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/77
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078・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) この点は、一部昨日安部さんの御質問に対する答えとしても論及いたしておりまするが、学校、わけても義務教育の段階においては、お母さんが非常に関心を持っておられますのは事実であります。それゆえに私は、私の希望としては、それを世の中に押し進めるという考えではありませんが、地方教育委員会などにおいては、少くとも一人は標準的のお母さん方がお入り下さることがいいことじゃと私は思っておるのです。それ以上二人でも三人でも、その党派の制限のない限りはいいのでございます。今の選挙によりますると、御婦人は、かつて教職の御経歴があったり、あるいは一つの組合にでも所属しておられる方なれば、選挙にも耐えまするけれども、そうでないと、事実みずから進んで立候補される方は少かろうと思うのです。現に数において非常に少いのでありまするが、私は義務教育の階段ことに一般もそうでありまするが、等においては、お母さんが選任せられるということは、私個人としては希望いたしております。これはしかし文部省としてどうするかということについては、いろいろのこともありまするから、追ってよく考えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/78
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079・高橋道男
○高橋道男君 任命制になりまする場合に、こういうことが起りはしないかという懸念がございます。と申しますのは、地方団体の長として、あるいは議員としての選挙に立候補して落選する。ところがその落選した人の、まあ言葉が不適当であるかもしれませんが、ボス的な存在があるというようなことのために、長がそういう人を教育委員にもってきて、一応の押えをするというようなことも起りはせんか、むろん教育委員として適当である人ならば問題はないと思いますけれども、そうでなくてただ政治的な配慮だけによってそういうことが起る可能性もあると思うのでありますけれども、その点いかにして排除されるか、御意見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/79
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080・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 今のはこういうお問いでしょうか、長の選挙をするのに二人候補者があるが、君は教育委員に任命するからちょっと待ってくれいと言って、無競争にでもするといったようななれ合いじゃなかろうかということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/80
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081・高橋道男
○高橋道男君 それはそういうことを含めてもけっこうでございます。選挙に落ちた場合のことを、私は申しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/81
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082・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 今私の上げたような例は、選挙法にも違反することでありまするし、選挙法いかんにかかわらず、不公正なことでありまするから、これはよろしくないと思っております。これもどこでというわけにはいきませんが、現在の直接選挙によるというと、村長の選挙に落選した落選候補が教育委員会に今度は乗り出して当選して、事々に村長に当りちらすという、こういうことがあっては困るということを、私どもの友人はたくさんおっしゃるのです。それがまあ選挙の弊害というものでございましょうか、今度の選任制になれば、そういう弊害は防げると思います。何を申しても、多数の議会の同意を得なくちゃならんことでありまするから、多くの人の良識によって、これも選任というと、町村長だけの独任で一人でやるということになれば、御説のようなことも起りやすいでありましょうけれども、それで議会の同意を得てと、こういうのでそこの保護規定をいたしておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/82
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083・高橋道男
○高橋道男君 その議会の同意ということが逆に議会の方から議員の落選者を推す、ある種の政治的配慮などの上から長じゃなしに議会の方から推す、それを長が受けざるを得ないというようなことが起っても、これは困ると思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/83
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084・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) なるべく自粛自戒して、さようなことがないようにいたさなければならんと思います。しかし落選したという人は多くは当選した人のライバルでしょうから、そういうことをしておいてその次の選挙を容易にするということは別でありましょうけれども、競争した相手のことでありますから、大したことはなかろうと私は思っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/84
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085・高橋道男
○高橋道男君 その点は法律による規制ができなければ、当事者の良識に待つより以外にないと思うのでありますが、次に今回の法案におきまして文部大臣の権限が非常に大きくなっておる、国家統制をやるのじゃないかというような懸念を与えておる点が若干ございます。私は清瀬文部大臣がおられる限りは、そういうことは起らんという信頼は持ちますけれども、かわっていかれたあとで、法解釈などが拡張されて、そういうことが起らんとも限らんというような危惧は私も持つものであります。その点について若干お伺いいたしたいのは、この都道府県の教育長の任命の場合に、文部大臣の承認を得なければならぬというような点でありますが、県知事さえも独任制で、当選すれば直ちにどこからの干渉も受けずに知事に就任するという。教育長というものは知事の管下にあり、なおかつ教育委員会の事務をする人でありますから、段階的に申せば、知事よりも下に位する人だと思うのであります。そういう立場の人が知事の権限には触れずに文部大臣の承認を得なければ任命ができないということにも、わざとらしく文部大臣の権限を拡大するというような印象を与えられるのであります。その点について、これはせめて知事の承認を得るというようなことでもいいんじゃないかというように思うのでありますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/85
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086・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 知事は県民の直接選挙で出ていらっしゃるので、これは文部大臣が承認はできません。教育委員会の委員も、これも必要はないのでありまするが、その下で仕事をする人ですね、それが教育長です。それはいろんなことで文部省と執行上の影響があろうと思います。そういう意味から私は、もっと軽いから承認と、こういうことなんです。この承認は議会の同意のように事前のものじゃございません。議会で同意を得てこれを任命するというときに承認を受けるということであります。一たん議会の同意を得て申請してきておるものに、不同意と、これはできるものじゃございませんです。しかしながらこの道を開いておきまするというと、きのうは立案趣旨の第四と言いましたが、今のような地方と府県と、それから国と、三つのまるっきり切れて重ねた餅のようなものでは、どうも連絡がよくなかろうから、やはりこの承認という手続だけはしたい。今日実際において、大学の学長でも、大学の部長でも、皆その承認を受けておるんです。矢内原さんでも私が承認しておるんです。けれども独立してあの通り言論も行使されて教育もされておるのでありますから。外国の例を見ても、最も自由主義になっておるイギリスでも、日本の教育長に当るものは文部大臣の協力を得てこれを任命しておるのであります。これぐらいのことがないというと、日本の教育全体が一つの連絡したものにならないんじゃないか、こういう考えでいっておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/86
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087・高橋道男
○高橋道男君 この別な条文によりまして、文部大臣の指導とか、あるいは措置要求とか、そういうような方策が立てられておりますので、教育長の任命にまで関与しなくても、私は文部省あるいは文部大臣としての下部機構に対する連絡措置というようなことは可能だと私は考えるのであります。で、重ねてお尋ねいたしたいのは、その都道府県教育委員会の教育長は文部大臣の承認を得ることなしに知事の承認でとどめてもいいんじゃないか、ほんとうの事務機関でありますから。その点押してお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/87
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088・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 知事の同意ということになると、やはり今の教育委員制度、教育のことを専門にやらせるということにはどうでしょうか、少し私は憂慮がありやせぬかと思うのです。しかし、ちょっと、先ほど私が申し上げたことに誤まりがあってはいけませんが、まあ承認はですね、あとからと私が言いましたのは、同意を得て持っていくために承認するので、承認前にやはり任命されておるということではないのです。たとえて言ったことですから、今の学長の承認と同じようなふうになるのです。今学長は教授会等できめて、そうして持ってきて、それで私はそれを見て判を押す。こういうことになっておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/88
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089・高橋道男
○高橋道男君 国立大学の学長は、これは文部省の直轄機関でございますから、今大臣のおっしゃったことは十分了解できるのでありますが、教育委員会、県の教育委員会の場合は、直接の機関じゃないわけですね、どちらかといえば、県知事に属する機関だと私は思うのでございますので、文部大臣がその人事にまで関与されなくともいいのじゃないか、こういうように思うのですけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/89
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090・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) それがけさあなたからお尋ねの、今の国の教育全体に対する責任ということになりますのです。その一本の綱だけは渡しておく方が、やはり日本の教育を実行する上において合理的にいきやせぬかと、しかしこれを承認権というものがあるからと言って、ぼんぼんはねる規定でおるものではございません。すでに県会の同意を得てきておるものですから、それについて不承認ということになったら、大きな問題が起りますけれども、よくよくの場合には、そういうこともあり得ますが、平生やはり承認を得て、昔の明治時代だったら、こっちからみなやったものですから、それはあんまりじゃけれども、やはり文部省との間の一つの綱だけは渡っておく方が、国の教育に対する責任がよく実行されやしないか、こういう心持でございます。十分御審議をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/90
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091・高橋道男
○高橋道男君 あとへ返るようでございますが、知事なり地方公共団体の長というものは、現在におきましては、教育委員会とは別個の存在であって、教育委員会というものが教育に関する行政をやっておるという建前で、現在の知事なり長が選挙されますときには、教育委員会のことまで含めての選挙にはなっていないと思うのですから、内容から申しましてですね。今度の法案が成立いたしますれば、法律の示すところによって、教育関係のことも長が扱うと、少し幅が違ってくるわけですね。その場合に、これははなはだ理屈めきますけれども、この地方の住民からすれば、教育のことまで一切を長にまかしておるのじゃないというような見解もできると思いますが、その場合、長あるいは議会の議員の選挙を改めてされるようなお考えはないか、これはあるいは文部大臣だけの御見解ではいかぬと思いますが、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/91
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092・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) それと同じお問いは衆議院にも出たのでありまして、一たん選挙によってできました合議体が、その選挙後に権限がまあふえるわけであります。それゆえに、選挙したときの心持とは選挙民からいえば、少しふくれ上っておるのじゃないか、こういうことでございます。しかし、それも私は刑事法において遡及法を作るといったようなこっちゃなくて、新たに権限がふえることであるから、今の日本の民主主義理論によってこの両院で御通過下されば可能なこっちゃと、こういうふうな見解をとって、提案しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/92
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093・高橋道男
○高橋道男君 次に、この文部大臣の地方に対する措置要求でございますが、その前に、文部大臣が県あるいは市町村、あるいは都道府県の教育委員会、さらに市町村の教育委員会に直接にこの権限を及ぼされる条文がございますが、文部大臣のこの権限を及ぼされる範囲を県だけにとどめると、市町村まで直接に権限を及ぼすようなことがないようにするというようなことについてのお考えはいかがでございましょうか。市町村にまで直接に権限が及ぶということのために、文部大臣の権限が非常に拡大されて、一そう国家統制が強くなるというような印象を受けますので、しかも市町村の団体あるいは教育委員会につきましては、県あるいは県の教育委員会も権限を持っておるのでありますから、文部大臣の権限はその上層の県だけにとどめてもいいのじゃないかというように考えますが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/93
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094・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 今お問いのことは、五十二条の第二項のことであると存じます。五十二条の第二項ですね、市町村……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/94
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095・高橋道男
○高橋道男君 四十八条。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/95
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096・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 五十二条、措置の要求、委員会……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/96
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097・高橋道男
○高橋道男君 両方です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/97
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098・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) これは直接には府県の段階の長または委員会にやるのが今の三つの順序としては当然ですけれども、しかし、町村のことでも、町村の場合には必要ありと認める場合においてという文字が二行目にあるのです。直接やる必要の場合というのは、一応こっちから言うてもなお改めぬとか、あるいは全国的にそれがわたっておるとか、あるいは両村の境界にまたがることとか、そういう特に必要のある場合のみにおいてやるつもりであります。法文には第二項の「文部大臣は、必要があると認める場合においては」というので、やや例外になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/98
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099・高橋道男
○高橋道男君 この例外の趣旨がこの法文だけでは現われませんので、少くとも私にはそういうように感じられないので、何か別の措置によって、そういう場合を明記されるような必要はないかと思うのでありますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/99
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100・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) これが将来のこと、非常に広範で、ちょっと列挙的にはやりがたかったのです。しかしながら町村に対しては、この案では府県の長なり、それぞれ委員会にやってもらうということが主義で、それを飛んで文部大臣がいくということは、特別の必要のある場合であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/100
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101・高橋道男
○高橋道男君 文部大臣のお考えは了承できますけれども、そういう措置が適正を欠かぬように、十分お考えを願えればけっこうだと思うのでありますが、次に、この措置要求をする場合に、先般も竹下委員から、諮問機関を経てやったらどうだというような、そういう御意見があったようにお聞きするのでありますが、ここには総理大臣に協議をするというような条文がございますけれども、これはまあきわめて事実問題としては形式的なものだろうと、こういうように考えるのでありますが、従って別の、たとえば中教審の何人か互選による五人の委員、あるいは都道府県の教育委員会の委員長、あるいは教育長から選任された、あるいは互選あれた五人の委員というような特殊の諮問機関をこしらえて、その諮問の上でこういう措置をするというような段階を作られるならば、文部大臣の権限による国家統制というようなことが非常にやわらげられて受け取られるかと思うのでありますけれども、そういう点についてのお考えはいかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/101
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102・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 今この文部省の仕事は御承知の通りいろいろな委員会が現にあるのですね、何事にしましても。この措置要求の事項自身が今ある委員会のことに関係すれば、むろんこれは聞かなければならぬと思います。将来どういうことが起るか、ちょっと今のところはわかりませんが、慎重にやるつもりはいたしております。それを具体的にどうするか、今切って確実な言葉を申し上げることはできませんが、むろんこれは慎重にしなければならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/102
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103・高橋道男
○高橋道男君 慎重にするとおっしゃることは、何らかの諮問機関でもこしらえてやると、そういうようなことまでも含めて慎重ということに受け取ってよろしゅうございますか。それとも、そういう特別の機関は設けない、こういうことでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/103
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104・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 設けないという答えじゃありませんので、慎重に考えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/104
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105・高橋道男
○高橋道男君 時間がないので急ぎますが、五大都市の教育委員会については、都道府県委員会と同等の立場に置くというようなふうに解しまするが、たとえば大阪市のようなところは全くこれは府と、あるいは府よりも大きな機構であると考えられますけれども、ほかの四大都市は府県と比べてそれほど大きな規模でもないかと思うのでありますが、そういう場合に、これがこのまま施行される場合には、地方自治の方までも影響があって、そしていわゆる五大都市の特別都市関係とも関連が起ってくるのではないかと、こういうように思うのでありますが、そういう関連についてはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/105
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106・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) これは特別市制はやらない前提になっております。審議のときも、特別市制はやらぬのだということで、この案ができておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/106
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107・高橋道男
○高橋道男君 その御方針は今のところは了解いたしまするが、やはり都道府県というものは、この場合は五大都市の場合は府県だけでございますが、府県に包含されておるというような意味で、一切がっさいを市へ委任してしまうということではなしに、せめて学校長の任免権ぐらいは府県の教育委員会が持っておってもいいのじゃないかというような、少くとも関連性を考える方がいいのじゃないか、こう思うのでありますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/107
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108・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) この案では、やはり理論としては府県が持っておるのを法律で五大都市に委任しておるのであります。まるっきり全部初めから本質的に都市に委任してしまったのじゃない。委任したのですから、委任者たる府県においてはこれを監視する力は持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/108
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109・高橋道男
○高橋道男君 監視する力と実際に及ぼす力というものは、少し違うと思うのですけれども、まるっきり委任ということでなしに、一部は府県に残しておくというような考え方は、これはいけないものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/109
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110・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 草案の作成の過程においては、せめて校長だけを残したらどうかという案もございましたけれども、やはりそれは繁雑にわたるから、この通り全部教職員の任免は委任ということになっておりまするが、しかしながら委任でございまするから、よくよくのときは、指導助成の方針は事実上とられるもの、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/110
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111・吉田萬次
○吉田萬次君 関連……、県に相談するという程度くらいは、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/111
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112・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 相談ということであったら、協議ということなんですね。それも一案ではございまするが、この案ではそこまでは進みませんのであります。
ちょっと今、局長から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/112
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113・緒方信一
○政府委員(緒方信一君) 校長も含めまして県費負担教職員の任免、給与の決定、休職、懲戒等に対しまして、指定都市には委任をいたしたわけでございますが、先ほど大臣からお答えがございましたように、本来は都道府県の委員会の権限を委任したわけでございまして、従いまして二十七条の規定に関しましても、都道府県の教育委員会が市町村の教育委員会をそのことに関しまして指揮監督することができるわけでございます。従いまして個々の人事に対しましても、くちばしを入れるということになりますと、これは委任をいたしました人事権の侵害ということになりましょうから、その各個についてこまかくあれこれと指図をするということは、これはそうあってはならないと思いますけれども、一般的な指示、監督、これは県の教育委員会の方に二十七条の規定からいたしましてもあるのであります。これの適当な運用によりまして、万全を期待しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/113
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114・高橋道男
○高橋道男君 大臣は御時間がありませんようなので、もう一点だけお許し願いたいと思います。教材の取扱いでございますが、その取扱いについて各教育委員会で定めを設ける、教科書以外の取扱いは定めを設けるという条項がございます。大体一般的には教科書以外のものは使わないのだという変な印象を与え過ぎているように私は思うのでございますけれども、昨日もちょっとお尋ねが出かかって、しり切れトンボに終ったように思うのですが、たとえばNHKの放送による学校放送というようなものは、NHK自体が公共的なものでございまするし、そのNHKが公的にこしらえておった番組であるならば、やはりそれは公的に認めていいのじゃないか、そういうようなもの、あるいは一党一派に属する機関紙ということは、これは問題はございましょうが、今日一般に流布しておる大きな日刊紙というようなものは、比較的自由に教材としてもいいのじゃないか、つまり教科書以外のものでも、こういうようなものは、特に教育委員会の定めを設けなくても使えるのだというような、そういう幅をもう少し法文に表わしておく方が、各教育委員会別にこまかな規定をこしらえて、同じようなことを規定するよりはいいのじゃなかろうかと、少くともNHKの学校放送というようなものは公的機関によって編成するというような性質のものでありますから、教科書同様というか、教科書に準じて特に教育委員会の規則に定めを設けなくても使っていいのじゃなかろうかと、こういうように考えるのでありますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/114
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115・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) この教材は、学校教育法二十一条の二項において、有益適切なものは使用ができると、こういうことがあります。有益適切なるものが何かということは考えなきゃならぬことであります。日本で、ある学校は共産党の機関紙のアカハタを教材に使っておった学校があるわけですね。これでは大事件を起しましたが、ああいうことがあってはならぬという心配でありまするが、ここの第二項は第一項から派生しておるんで、一項は管理運営の基本的事項ということでありまするから、一々何新聞とかどこ発行のものといったようなことじゃなく、基本的に簡単に届け出させるものを数個あげるというふうなことになるんであろうと存じます。これをこの法律でずっと列挙しなかったことは、いわゆる地方分権で、その教育委員会が地域社会の要求によってなさる方がいいだろうということで、こういうふうな感じになったのであります。これはそのものの性質だけでなく、もう一つ教材を買わせるのにやはり金が要りますね。わずかの金でも、授業料さえも免除しておる学校でありまするから、父兄の負担ということも考えなきゃならぬ、こういうことでこういう案になったのでありまするから、どうか慎重にお考えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/115
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116・高橋道男
○高橋道男君 この教育委員会規則を定めるとありますが、そういう規則の準則を文部省でお持ちになっておるんじゃないんでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/116
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117・緒方信一
○政府委員(緒方信一君) 教育委員会の規則を定めます場合に、この法律の趣旨というものを十分わかりませんと、地方でこの規則を定める場合に困難がありましょうから、法律が成立いたしました暁におきましては、文部省といたしまして、十分法律の趣旨を徹底いたしたいと思います。ここでこういう規定を設けましたのは、教育委員会が所管いたしまする、主として学校でございますが、そのほかの教育機関もございまするが、その管理運営についていかようなことを、昨日もちょっと申し上げましたが、いかような運営をしていくかという基本的なことをやはりはっきりきむべきであると考えまして、こういう規定を作ったわけでございます。従いまして、その趣旨を十分一つ徹底したいと存ずるわけでございます。ただまあ、先ほど大臣からも御答弁がございましたように、具体的にこれこれの事項はこうすべきであるということを文部省から示すべきではないじゃないかと、こう考えております。これはやはり教育委員会というものが各地方公共団体の教育事務をつかさどる独立の執行機関として存置いたされるわけでございますから、その地域々々の実情もございましょうし、その実情に即して教育委員会の判断によって、これは作らるべきものであると、従いまして、第二項におきまする教科書以外の教材の届出、承認、これらをどういうものを届け出させ、どういうものを承認を受けさせるか、あるいはその届出の方法をどういうふうにするか、あるいはまた、ある部分につきましては全然こういう手続をとらせないものはどういうものにするかと、そういうことはあげて教育委員会がこれを判断してきめるのが適当ではないかと、かように考えておる次第であります。従いまして、準則と申しまして、具体的に事項を示して文部省から示すということは、ただいまのところは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/117
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118・高橋道男
○高橋道男君 この点まだ質問があるのでございますが、自余の点につきましては次回に譲りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/118
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119・竹下豐次
○竹下豐次君 関連しまして一言だけ今の問題につきまして……。文部省の方では基準を具体的にお示しになる気持はないという御答弁でございましたが、各県によりましてまちまちになりましても、ちょっとおかしなことになるのじゃないかということを心配いたします。
それから自分の県でどうきめようかというような場合に、隣りの県ではどういうふうにきめるのだろうと、ことに近い県同士ではそういうふうなふうのことがやはり実際に問題化していくのでありまして、まああまりきつい基準は隣りでは作っておらんから、こっちでは作りたいのだけれども作りにくいとか、そういうことも起ってくるだろうと思っております。で、なるべくならば、あまり干渉の程度にいっちゃいけませんけれども、相当の基準はやはり全国的に文部省の方でお示しになる方が、地方の方もむしろ喜ぶのじゃないかというような気持を持っておるのでありますが、その点はいかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/119
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120・清瀬一郎
○国務大臣(清瀬一郎君) 今局長が答えました通り、法律の趣意を徹底せしめると、これはまた、そのときに地方から要望があれば、それに対して答えをするということで、今文部省でいろいろなことに基準というのがありますね。大学設置基準とか、ああいうふうなふうに法的効力のある基準をやっていくということになると、教育の自治ということについても影響をしまするから、やはりこの法規の趣旨を解明するという形で、よくこれが運用できるようにいたす方がいいのじゃないかと、かように考えております。今の高橋さんとあなたの御趣旨は、非常に常識的のことで、いいことでありまするから、何か全国で惑いがないようにはいたしたいと、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/120
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121・緒方信一
○政府委員(緒方信一君) 先ほど高橋先生の御質問の中に、四十八条にちょっとお触れになって、文部大臣が直接市町村の長、あるいは教育委員会に対して、指導、助言、援助等をするのはいかがであろうかという御趣旨の御質問であったように存じますが、補足して私からちょっと御説明申し上げます。お話しの御趣旨は、この法律におきまして、国、都道府県、市町村という段階を設けて、文部大臣が直接市町村に行わなくても、その段階を経てやったらいいじゃないかという、積極的な御趣旨であろうと存じますけれども、御参考までに申し上げますと、現行法におきましても、地方自治法、あるいは文部省設置法等におきまして、文部大臣が直接に市町村の段階に対しまして指導、助言、あるいは勧告をするという規定がございますので、この点御参考までにちょっと補足して申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/121
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122・加賀山之雄
○委員長(加賀山之雄君) それでは本日の委員会はこの程度で散会いたします。
午後零時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415077X02519560509/122
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