1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年二月二十一日(火曜日)
午前十一時十四分開会
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委員の異動
二月十七日委員伊能芳雄君、木村守江
君及び亀田得治君辞任につき、その補
欠として大屋晋三君、大谷贇雄君及び
三橋八次郎君を議長において指名し
た。
本日委員大屋晋三君及び三橋八次郎君
辞任につき、その補欠として吉田萬次
君及び亀田得治君を議長において指名
した。
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出席者は左の通り。
委員長 高田なほ子君
理事 井上 清一君
一松 定吉君
宮城タマヨ君
市川 房枝君
委員 西郷吉之助君
吉田 萬次君
赤松 常子君
小林 亦治君
衆議院議員
法務委員長 高橋 禎一君
政府委員
法務政務次官 松原 一彦君
法務省民事局長 村上 朝一君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
説明員
最高裁判所長官
代理者
(事務総局家庭
局長) 宇田川潤四郎君
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本日の会議に付した案件
○外人登録法の一部を改正する法律案
(内閣送付、予備審査)
○家事審判法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/0
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001・高田なほ子
○委員長(高田なほ子君) これより法務委員会を開会いたします。
議題に入ります前に、本日、法務委員の変更の通知がございますが、三橋八次郎さん、大屋晋三さんが辞任になられまして、本日、亀田得治さん、吉田萬次さんが御出席になるようになっております。御紹介申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/1
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002・高田なほ子
○委員長(高田なほ子君) まず外国人登録法の一部を改正する法律案を議題に供します。法案について提案理由の説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/2
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003・松原一彦
○政府委員(松原一彦君) ただいま議題となりました外国人登録法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
現行外国人登録法は、昭和二十七年四月二十八日平和条約の発効と同時に施行され、その後数回にわたりまして改正をみておりますが、それはいずれも他の法律の改正に伴う条文の整理または本法の一部規定の施行期日の延期に関するもの等でありまして、制度の実質面に触れたものではなかったのであります。
このたびの改正も、もちろんこの制度の本質的な部分については、何らの変更を加えるものではありませんが、ただ、これまでのいわば形式的な改正と異なりますところは、従来とかくの紛争を起して参りました外国人登録証明書の大量切りかえをこの秋に控え、ようやく軌道に乗りつつあるこの制度の将来の運用の基礎をここに一そう確立し、今後はきわめて円滑にこれを実施することができるようにしようというねらいをもちまして、これに必要な手当をいたしますとともに、あわせて、この制度の運用に当っております地方公共団体、特にその第一線事務をつかさどっております市区町村の負担を軽減するため、その事務の簡素化をはかり、また、従来の規定の不備を補う等、現行法の実質面にもある程度の改正を加えようとする点であります。以下その大要について御説明申し上げます。
現行制度によりますれば、登録証明書の交付を受けた外国人は、登録証明書の有効期間の切れる二年目ごとに登録証明書の切りかえ申請をしなければならないことになっておりまして、本年十月末ごろから来年一月ごろまでがその大量切りかえの時期に当り、その間に五十数万人に上る大量の外国人が一斉に市区町村の窓口に殺到し、しかも、このたびの切りかえにおいては、従来の大量切りかえのときと異なり、そのうち十四歳未満の者を除いた三十数が人についてその申請と同時に指紋を押捺させなければならないことになっており、市区町村の第一線に対して申請のあったその日のうちにその全部の事務の処理を望むことは、明らかに不可能と申さなければなりません。
そこで、これまででも、申請のあった日から一週間先とか、その一カ月も先に登録証明書を交付せざるを得ないような運用に、事実上追い込まれて参ったのでありますが、さらにこの切りかえの実施に当っては、過去においてその例を見たように、一部外国人の政治的な反対気運により、ますますその事務が困難になることも予想しないわけには参らず、従って、新たに指紋制度の加わった今次の大量切りかえをスムースに行いますことがで送るかどうかは、将来におけるわが外国人登録制度の運命を卜する一つの山と申しても過言ではないと信ずるのであります。
そこで、ただ今申し述べましたような事情を勘案いたしまして、市区町村においてその地区またはその時の事情に応じて、その事務をならして計画的に処理することができるようにするために、一般的に、登録証明書を即日交付することができないような、やむを得ない事情がある場合には、市区町村長において、別に何日から何日までという交付予定の期間を指定して、その期間内にこれを交付することができるようにするとともに指紋の押捺も登録証明書の交付の際に限らず、場合によってはただいま申し上げました別に指定する日に登録証明書を交付する際に押させてもよいように改正するのであります。
しこうして、このようにしてこのたびの切りかえが無事行われた暁におきましては、すでに指紋もとってありますことゆえ、その次からの切りかえは、従来のように二年目ごとといたしませんでもよろしいと存ぜられますので、従来登録証明書の有効期間を二年と限っておりましたのをやめまして、三年目ごとに登録の確認を求める意味において登録証明書の切りかえをいたさせることに改めたのでございます。
さて、以上のように登録証明書の有効期間を限定しないこととするとともに、登録証明書の交付申請の日とその実際の交付の日との間に間隔をおくことができるようになりました結果、その場で新しい登録証明書の交付を受けることができなかった者は、新たな登録証明書の交付を受けるまでの間は、古い登録証明書をそのまま所持しておればそれでよいことに伝ったわけであります。
次に、事務の簡素化につきましては、外国人が居住地を変更しようとする場合の事前届出の制度を廃止いたしますとともに、市区町村長が新規登録及び変更登録の申請猶予期間を延長する場合並びに登録証明書を再交付する場合に、都道府県知事の承認を要しないことに改め、また、市区町村または都道府県の廃置分合等によって居住地の名称が異なった場合には、本人の申請を待たず、市区町村長が職権によって変更登録を行うことができることとしその他登録証明書の再交付申請書類を簡略化する等、都道府県及び市区町村の事務的負担の軽減をはかることといたしました。
次に、現行法の規定の整備につきましては、まず、出入国管理令第二十六条の規定による再入国の許可を受けて出国した外国人が再入国した場合の取扱いにつきまして新たな規定を設け、その者が出国する際に出国港において入国審査官に預けた登録証明妻を再入国後市区町村長から返還を受ければよいこととするとともに登録証明書の受領義務を新たに規定しました。また、本法による諸手続をする場合に、本人出頭の義務を明定し、かつ、代理人がこれらの手続をする場合にこれを妨げた者に対する罰則を設ける等現行規定の整備合理化をはかったのであります。
以上、簡単にこの法律案の提案理由を御説明申し上げましたが、何とぞよろしく御審議の上、すみやかに御可決あらんことをば切望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/3
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004・高田なほ子
○委員長(高田なほ子君) 本案については本日は一応説明を聴取するのみにとどめたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/4
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005・高田なほ子
○委員長(高田なほ子君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/5
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006・高田なほ子
○委員長(高田なほ子君) それでは次に家事審判法の一部を改正する法律案を議題に供します。本案につきましては衆議院において修正になっております。修正点につきまして衆議院側から法務委員長高橋さんがお見えになっておりますので、御説明を承わりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/6
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007・高橋禎一
○衆議院議員(高橋禎一君) 衆議院法務委員会におきましては、政府の提出いたしました家事審判法の一部を改正する法律案中、第十五条の二のうち、「権利者の申し出があるときは、義務の履行状況を調査し、義務者に対して、その義務の履行を勧告することができる。そういうふうに修正をいたしまして、その修正案並びに修正の部分を除く政府原案を可決いたした次第であります。
政府の原案によりますと、第十五条の二は、権利者の申し出があるときに限って調査並びに勧告をするというふうになっておらなかったわけであります。すなわち申し出があるなしにかかわらず義務の履行状況の調査なりあるいは義務の履行勧告をなし得るというような形になっておりました。ところがいろいろの事情を検討いたしまして、やはり権利者の申し出があるときに限って調査並びに履行の勧告をするということが妥当である、正しいと、そういう考えに相なりまして、修正を加えたわけであります。まあその理由のおもなるものといたしましては、訴訟制度に関する一般的な、法律的な原則論はさておきまして、実際問題として家庭裁判所において審判なりあるいは調停なりが成立いたしまして、権利義務の関係が確定しておる。そういう場合において、それのすべてについて権利者の申し出があるなしにかかわらずすべてについて調査なりあるいは履行勧告をするということは非常な手続上の時間、労力、あるいは費用等を要しますのみならず、かえって中にはそういう調査あるいは勧告をすることが不相当である、こういうものがその中に相当含まれておると、これが家庭事件の特質のように考えられますので、やはり一般的に職権をもってやるというのでなく、権利者から申し出があった場合に限ってそれを行うということにいたしますと、無益な調査なんというものがなくなるだけでなく、あるいはまた調査勧告をすることによって起る弊害もその中に生まれてこない、こういうふうな面を考えつつ、そうして申し出があったときにこれを行うことによって十分この法の目的を達成できるのだ、そういう結論に達したわけであります。そうしてその申し出というのは、何も正式な様式等を必要とするわけでもありませんし、これに関してまた印紙等を貼用する必要はないのでありまして、電話による申し出でもあるいははがきによる申し出でも、やはり権利者のそういう考えが家庭裁判所に通じさえすればそれでいいわけでありまして、権利者側の手数という点等から見ても、決して大きな負担になるものではないのだ、こういう見解に立って修正を加えたわけでございます。この修正につきましては、自由民主党と社会党との共同提案によって、法務委員会においては全会一致可決いたしたような次第でございます。はなはだ簡単でございますが、修正の理由を御説明申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/7
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008・高田なほ子
○委員長(高田なほ子君) なお衆議院の修正点について政府当局の御意見を一応承わっておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/8
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009・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 政府原案におきましては、「権利者の申出があるときは、」という字句が入っておりませんけれども、審判または調停で定められました義務のすべてについて履行状況を調査し、また義務の履行を勧告するということは考えておりませんので、権利者の側で、審判または調停で定められた義務が履行されていない、何とかしてもらいたいという申し出が、何かの形で家庭裁判所に行われました場合に、履行状況を調査し、必要があると認めれば履行を勧告するということになると考えられますので、趣旨におきましては衆議院修正の通りで、原案も同様の趣旨でございますので、この修正につきましては政府といたしましても別段異議はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/9
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010・高田なほ子
○委員長(高田なほ子君) 引き続きまして、最高裁判所側から修正点を含む全体についての御意見を伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/10
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011・宇田川潤四郎
○説明員(宇田川潤四郎君) 家事審判法第十五条第二の修正点について私どもの考えておるところをちょっと申し上げたいと思います。
家事審判法第十五条の二ができますときの立法経過を申しますと、初め権利者の申立というようなことが必要なんじゃなかろうかという議論があったのでございます。と申しますのは、何と申しましても裁判所のことでありますので、当事者の申立を受けて立つということが原則である。これは民事訴訟法に流れておる大きな当事者主義の原則の一つの表われだと思うのでございますが、さような次第で、権利者の申立ということを入れるべきだというような議論が法律案の作成に関する審議の間でもあったわけであります。これは民事訴訟法的な考え方からいいますと、もっともなことでございます。しかしながら家庭裁判所は地方裁判所その他の裁判所と違いまして、御承知の通り行政的な機能、一般にソーシァル・ケース・ワーク的機能と申しますか、そういう機能を持っておるのでございまして、従いましてその機能の発揮を期する上にはどうしても家庭裁判所で審判のしっぱなし、あるいは調停のしっぱなしではその目的を達することができないので、ぜひとも家庭裁判所は審判の結果、調停の結果にも責任を持つような法制に改むべきである、言いかえますと、家庭裁判所は家庭裁判所の義務としてアフター・ケア、本件の履行確保のようなものをなさ広くちゃならないのじゃないかというような議論が、相当強く主張されたのでございます。先般衆議院の法務委員会における審議に際しましても、参考人の田辺繁子さんは、この規定は義務の履行状態を調査し、義務者に対しその義務の履行を勧告することができるというのではなまぬるいので、むしろ義務の履行を勧告しなければならないというような規定に改むべきだというようなことを申しておられましたが、この御発言もまさしくさような理想に基くものと考えるのでございます。そこで私どもといたしましては、田辺繁子さんのおっしゃるように、義務の履行を勧告しなければならないというようなことは、今の家庭裁判所の人員の実情等からして、理想はけっこうでございますが、できないということで、ここには義務の履行を勧告することができるというふうに規定すべきじゃないかということになった次第でございます。けれども家庭裁判所は当事者の申し出があった場合のみ受けて立つというようねことは、先ほど申した理念から申しまして多少疑問もございますので、まあ申立というようなことはここに規定しない方が家庭裁判所の理想、性格を現わすのではなかろうかというようなことで、そういう条文をおくことを極力避けたのでございます。と同時に、先ほど衆議院の高橋法務委員長が申されましたように、申立というようなことになりますと訴訟の印紙も要りますし、また申立には非訟事件手続法等に手続が定まっておりまして、その手続を権利者に踏ませることは実情にそぐわないきらいがございますので、まあ申立ということは極力避くべきだと、こう考えたのでございます。しかしながら先ほど法務委員長のおっしゃられたように、権利者の申出ということにするならば、印紙の貼用も必要でないし、またいわゆる申立民事、家事審判法あるいは非訟事件手続法で定められている厳格な申立——の形式ということも踏まないで済むというような結論に達っしましたので、若干家庭裁判所の性格、理念からは遠ざかるきらいはありますけれども、権利者の申出ということについては、まあやむなく同意したような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/11
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012・高田なほ子
○委員長(高田なほ子君) 本案についての御質疑のおありの方は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/12
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013・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 この衆議院の修正点につきまして、高橋法務委員長にちょっとお伺いしたいのです。先ほど御説明の中に、いろいろ調査してみたところが、家庭裁判所の審判で定められた義務の履行状況を調査したり、義務者に対してその義務の履行を勧告するということは不適当な場合があるとおっしゃったんですが、その場合というのはどういう場合なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/13
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014・高橋禎一
○衆議院議員(高橋禎一君) それはまあ御存じのように、家庭事件は権利者と義務者の間にまだ親族関係が存在しておるというものもありますし、それからまあかつて親族関係であったというような事情もあり、それからまた子でもおります場合には、義務者のうちに子が養育されておるというようなことも相当あると思いますので、権利者の意思いかんにかかわらずこの調査なり勧告なりをいたしますというと、かえって家事審判法の根本目的である親族関係の平和とか家庭の健全な発達ということに対して支障を来たすものがあると常識上考えられる、こういうふうに見たわけであります。ねお具体的な例をあげて申しますと、まあ前の夫と離婚をした方が、そしてその夫たりし人に対して、妻たりし人が金銭上の給付を受ける権利を審判あるいは調停等で得ておるという場合に、その婦人の方が他の人と結婚をして新家庭を営む。そういうときに、その履行に関する調査をいたしますには、これはやはり権利者なり義務者触りに事実を聞くというようなことが必要であると思いますが、そういう場合に、新家庭を営んでおる所に行って、前の夫の履行状況はどうであるとかいうようなことを本人の意思いかんにかかわらず調査するというようなことは、かえって新しく営んでおる家庭の間におもしろからざる波紋等が起るということも考えられるので、これはまあ一例でありますが、そういったような問題が相当起るのではないか、そういうふうに考えられるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/14
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015・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 いま一つ伺いたいのでございますが、この「権利者の申出があるときは、」というこの修正なさった点でございますが、今まで実際女、子供が泣き寝入りをしているというような場合が非常に多かったと思います。それで審判や調停できめられましたことの履行を確保することは、私ども長年希望しておったのでございますが、ところがほんとうは今まででも、これはまあこの法律の審議をします上に実際問題を突込んで聞きたいと思っている点なんですけれども、これは申立をしなければこの調査も、それから勧告もできぬということになりますというと、やはり今まで通り泣き寝入りをしてそれで済ますというようなことが多くないかと思うのでございますけれども、そういう点はどうでございましたでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/15
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016・高橋禎一
○衆議院議員(高橋禎一君) その点につきましてはまあいろいろの問題があると思うのですが、私どもももちろん家庭裁判所において審判なりあるいは調停が行われて、権利義務の関係が確定しておる。その義務の履行が確保されなければならぬという基本的な立場に立っていろいろ検討したわけであります。ただ実情としましては、審判なり調停がありましたこの数は、資料によって明らかになっておりますように、相当たくさんあるわけです。そしてたくさんの問題について履行の時期がきておるものを、一切残らず職権でかりに調査あるいは勧告するということになりますと、先ほど宇田川家庭局長からのお話がありましたように、費用の点において、労力の点において、時間の点において、すなわち訴訟経済の原則と申しますか、そういうものに対して非常に反して、やったことがそれだけの犠牲に対しての対価というものが思うように得られないという面が一つあるわけであります。むだをやらないようにしようということが一つのねらいであります。そうして泣き寝入りでもって債権者が債権の確保をなし得ないということは、これは宮城委員のおっしゃる通り、私どもとしても非常に嘆かわしいことだと思いますので、その問題を、犠牲を少くしてどうして解決するかといいますと、これは申出ということをごく簡単な方法で気やすにやっていただけるような制度にしておけば、そしてこの法律が存在しておるということを他の方法でいろいろ国民の間に普及さして参りますというと、申出そのものにそう大きな犠牲を払っていただくわけでもありませんし、また特にいやな思いをしていただくというようなこともなくしてできるわけでありますから、それだけのことは権利者の方でやっていただこうと、そういうふうにいたしますというと、権利者の意思に従って、すなわち泣き寝入りをするなんということなくして、しかもいやな思いをせず、そう犠牲を払わないでこの法律が動いていけるというふうに考えましたので、私どもは法律を知らない方がいらっしゃると、ときには例外もあるかもしれませんが、できるだけ法律の存在ということを普及徹底させることによって、この問題を解決していこう、そうすれば各方面から考えて適当なところに落ちつくものである、私どもの考えておる履行確保という問題も解決がついていくんだと、こういう確信を得られたような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/16
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017・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 御説明はよく私もわかりました。家庭裁判所のほんとうの本質から考えまして、やはりこれはケース・ワークでもあり、そして先ほども局長おっしゃったのですが、この家庭裁判所の審判は、やはりどこまでもアフター・ケアというものが一番大事な点だろうと思うのですが、実際からいうと、憲法で男女の法の上の平等はうたわれておりますけれども、全く今まで不平等だということを強く感じますものはこの点だったのでございます。でございますから、今度こそほんとうにすみずみまで法の上の平等ということを考え、そして家庭裁判所のあのほんとうに新しい裁判の制度によって、家庭裁判所が責任を果し得るような道について、予算等の支障があるというのなら、また別の道でそれを是正していくというととの方がいいのであって、ここで法律のあり方を一々説明しなければわからないものが今日の女にたくさんございますから、それは非常に残念なことなんでございますけれども、そうかといってほうっておいては、せっかくの権利を放棄するというようなことをさせておくということは、実に法の不備になってくるのじゃないかというふうに心配しているのでございます。この点は今御説明下さったので、大体衆議院の方の説明の御趣旨はわかっておりますが、私は非常にその点心配しているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/17
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018・高橋禎一
○衆議院議員(高橋禎一君) 先ほど申し上げておわかり下さったことを非常に喜ぶわけでございますが、なお一言つけ加えさせていただきますと、お説のように家庭裁判所の本質、それに家庭事件の特質という点から考えますと、やはりアフター・ケアということは、これは必要であるということは私ども十分考えておるわけであります。しかしながらいろいろの面から考えまして、それを行うことによって弊害というものをいささかもそこに生ぜしめないでやって参りたい。すなわちそのアフター・ケアにもおのずから限度と申しますか、調和点があるのである。そういうふうに見ておるわけであります。従って政府原案で、ある例えば支払い履行の命令をいたします場合においても、やはり権利者の申立を、これは申出ではありません、正式に申立てを必要とするというところに線を引いて曲るわけでありまして、調査なり勧告は、その申立ての線よりはさらに範囲を広げまして、まあ簡単な方法で、そういう犠牲を払わないで、いやな思いをしないで、申出をしさえすればいいのだ、こういう方法をとって参ることによって、そう権利者が自分の意思に反して権利の実行ができないというようなことはないと、こういうふうな見解に立ったのでございますから、その点御了承をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/18
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019・一松定吉
○一松定吉君 原案並びに修正案をよく見ると、私はどっちも悪いと思う。なぜ悪いかというと、まず原案の通りにいたしますると、結局「義務の履行を勧告することができる。」従ってせぬでもいい。そうでしょう。履行を勧告しなきゃならぬのに、してもいいせぬでもいい、それではせっかく家庭裁判所において家事審判をしたことがなおざりにされるおそれがある。だからして原案の通りに勧告することができるということは、その意味においてどうかというと、ごく怠慢です。それから今度は権利者の申出があるときはしなきゃならぬ。今度は修正案のように入れると、権利者の申出があったときだけしなきゃならぬ。権利者の申出がなければほうっておいてもいいということになる。これはどっちも悪いことになる。私はこれはこういうふうにした方がいいと思う。「家庭裁判所は、審判で定められた義務の履行状況を調査し、義務者に対して、その義務の履行を勧告することができる。」と、これは原案の通りに生かして、ただし権利者の申出があるときには、勧告しなければならない、こういうようにすれば、両方どちらも有効適切になる。それを衆議院のようにすると、申出があったときには、勧告することができるだが、申立がなかったときには、勧告をせぬでもいい。原案の通りにしておくとすると、勧告してもよければ、せぬでもいい。裁判所の勝手である。こういうことになれば、これはどちらも欠陥がある。それよりも原案を生かして、裁判所のなににまかしておいて、ただし申出があったときには、しなければならぬ、と、こういうふうにすれば、両方生きるということになるから、私はそういうふうにした方が立案者の趣旨にもかない、衆議院の修正の趣旨にもかなうと、私はこう思う。また修正とか何とかいう問題のときに申し上げますが、そういう意味において考えておりますが、それについて提案者の方と、修正者の方とのもう一応の御説明を求めたいということが一つ。
第十五条の三もそうです。第十五条の三も「義務の履行を怠った者がある場合において、」しかも「相当と認めるときは、」「命ずることができる。」やっぱり命じてもよければ命ぜぬでもいいということになる。これはやっぱりいけません。すでに義務を怠った者があることを家庭裁判所が認めて、しかもこれには、勧告することが相当であると認めたようなときには、進んで勧告しなければならぬとした方がいい。しかしながらこれを原案の通りにしておいて、やっぱり第十五条の二と同じように原案のようにしておいて、それを場合によっては裁判所の自由判断にした方がいいか、せぬ方がいいかということで、そこは自由判断にまかしておいて、ただし権利者の申出があったときには、しなければならぬ、こういうふうに第十五条の二を、今私が申し上げたと同じような趣旨にすれば、十五条の二も十五条の三も同じような趣旨にできるのみならず、十五条の三の「権利者の申立」十五条の二は「申出」として、こちらを「申立」として手数のかかるようなこと、文字を二つに使い分けるということは、これはよくないです。これは関係者をしてかえって複雑多岐に至らしめるのだから、やはり衆議院の修正者の高橋君の説明したように、要らぬ手数をかけたり、印紙代を使わせたりしないでも、十五条の二と同じように、「申出」という文字を使ったと同じように、十五条の三も権利者の申出があったときにはしなければならぬ、こういうふうにすれば、十五条の二も十五条の三も同じような趣旨に首尾一貫していいじゃないか、こう私は思っておりますが、まず提案者の方からの御意見を承わり、その次に修正者の高橋委員長の方からも御意見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/19
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020・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) ただいま御指摘の点は、立案に関係いたしました者の考えといたしましては、十五条の二及び十五条の三にあります「できる。」とありますのは、これは家庭裁判所にこういうことをする権能を与えるという趣旨を表わすつもりで用いたのございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/20
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021・一松定吉
○一松定吉君 それでは私に対する答えにならぬじゃないか。私の尋ねるのは、それでは家庭裁判所が勧告してもよければせぬでもいいとほったらかすことがあるから、それだからしてほったらかすことがあるから、今衆議院のような修正案が出る。だから原案を生かしておいて、家庭裁判所の自由調査範囲にまかせるということにおいて勧告することができるということはよろしい。しかしながらほったらかしておっては非常に困ると権利者が考えたときには、権利者が申し出るときにはしなければならぬ、こういうふうにすれば、両方とも生きるのじゃないか。
それに対する提案者の御意見はどうですかと聞くのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/21
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022・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 十五条の二の方は「勧告することができる。」とございますけれども、履行状況を調査した結果、履行を確保するために、履行の勧告をする必要があると考えたときには、必らず勧告が行われるであろうという趣旨で、権能を与えておけば家庭裁判所はその権能を有効に行使するという期待のもとにかような規定ができておるわけでございます。
また十五条の三の方も、「履行をなすべきことを命ずることができる。」とございますけれども、これはかような場合に履行命令を発する権能を家庭裁判所に与えておきますれば、家庭裁判所は相当と認めるときには、必らず履行命令を発するであろうということが期待できると考えたのでありまして、「できる。」とあるからしてもいい、しなくてもいい。しなければならぬと書いておきますれば、しないであろう、というようなことは、提案者としては考えていない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/22
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023・一松定吉
○一松定吉君 どうですかね、あなたは法律の専門家だから、「できる。」ということはしなければならぬという意味と違うでしょう。してもよければ、せぬでもいいという意味でしょう。これらは、今あなたの言われたように、するであろうということでほったらかしておくととは、よくないじゃないですか。それならば、そこは明確に、法律の制定の趣旨に従って勧告することがいいなら、勧告し広ければならぬとした方がよくはないか。しかしそれはあなたの方の原案を生かすのですよ。生かしておいて、ただし申出があったときは、しなければならぬ、と、両方を一つ生かしてやったらば、いよいよ法文が生きてきやしないか。あなたに尋ねるのは、原案だけのことじゃないのだ。原案に対して、衆議院の修正したようなことを加えてした方が完全でありませんかと聞くのだから、あなたの提案をしたことだけのお答えじゃお答えになりませんから、それを聞きたいのです。原案はこうであったのだが、しかしそれだけではほったらかしにしないような場合もあるということから、その意味では申出があったときにはしなければならぬということにすれば、あなたの方の面目も立ち、衆議院の方の面目も立つ。その両方の条文が完全になるじゃないか。その完全に触ることについてのあなたの御意見はどうですかと聞くのです。原案を聞くのではありません。原案はそうであるが、それに十五条の二に、衆議院の方で、「権利者の申出があるときは」と入れられたのを、今一歩進んで、申出があるときには、しなければならぬ。十五条の三は、「相当」とすでに認められたのであるから、そのときにはするであろうではいけない。そのときにはいわゆるするであろうというような……家庭裁判についてはいろいろな内部事情があるからして、その内部事情に、外部からあまり力強く干渉することはよくないから、そういう文字を使うことも穏やかであろう、それは私も認める。しかしながら、権利者の申出があったときには、命じなければならぬとやった方が、両方とも家庭裁判所の審判というものを有効適切に生かすゆえんではありませんか。それについての提案者の御意見を聞く。あなたの方にはそれを聞くのです。衆議院の方には、しなければならぬとせずして、なまぬるい「履行を勧告することができる。」としては、してもせぬでもいいというような、文字ではおもしろくないから、しなければならぬと書いたらどうですかということを、これは衆議院の委員長に御意見を聞く。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/23
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024・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) ただいまの一松委員の御意見につきましては、研究いたしました上でお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/24
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025・高橋禎一
○衆議院議員(高橋禎一君) 勧告することができるとか、履行を命ずることができるという、「できる。」というのは、政府委員からも先ほど御説明がありましたように、家庭裁判所に対して、それだけの権限を認めるわけです。そしてそれをなす権限を与えたところには、やはり公正にそれの権限を行使しなければならない私どもは責任、義務がある、こういうふうに見ておるわけであります。そして家庭裁判所というものをやはり信頼して、家庭裁判所はどこまでも自分の与えられた職務権限というものを公正妥当に執行するであろう。執行し広ければならない。こういうふうな考えの上に立って、この「できる。」という言葉によって十分本法律の目的は実現できる、こういうふうに考えておるわけであります。そして十五条の三は、やはり「申立」ということにとどめておいて、十五条の二だけを「申出」ということに改めました点は、やはり十五条の三でありますと、その履行を命じますし、そしてその命令に従わないときには、これは二十八条によって過料に処するというような規定があるわけでありますから、電話だとかあるいははがき等で家庭裁判所に連絡されたということだけをもってしたのでは、いろいろのそこに弊害が起る。やはり正式な申立をするという形式も整え、そしてまた印紙を貼用するという厳格にして間違いのない方法をとることが相当であると考え、履行の調査なりあるいはまた勧告ということは、先ほど来申し上げましたように、でき得るだけ権利者の犠牲を少くし、十分にその意思が家庭裁判所に通ずるように電話でもあるいははがきでも口頭でもその他の書面でも、いかなる方法を問わず、とにかく申し出て権利者の意思が家庭裁判所に理解できればそれでいいという方法をとったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/25
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026・一松定吉
○一松定吉君 提案者の方で研究してから答えるということで、それは私は今ここで無理にお答え下さいとは言いませんが、衆議院の高橋委員長のお考えですが、「勧告することができる。」とか「命ずることができる。」というようなことは、触るほどそういうことをすることは、できる。できるけれども、できることはせぬでもいい。そのせぬでもいいということになってくると、今せっかく家庭内部のいざこざを裁判所に持ち出して審判を受けて、そうしてその審判の結果、ああこれで自分の目的も達したとして権利者が喜んでいるのに、裁判所がほったらかしておく。それではいけないから、権利者が一つこうこういう履行をやって下さいということを申し出たときには、裁判所は、初めからの家庭紛議の問題に関連して、権利者がここまで主張するならば、これをほったらかすことができぬだろうからということで、積極的に出ろということの方がいいのではなかろうか。これは私はそういろ意味において、せっかく家庭紛議を裁判所に持ち出して解決してもらうて、裁判所のおかげでわれわれは角突き合わすことはせぬですむようになったと思うているにかかわらず、やっぱり裁判所はほったらかしておくというようなことでは困るから、そこでしなければならぬとした方がよくはないか。もししなければならぬという法文にこれをせぬなら、どういうことだけでは裁判所が勧告をしない、命じないというときには、この救済法を設けなければならぬ。あれだけのことを言うているにかかわらず、勧告をまだしてくれない、あれだけのことをしているにかかわらずいまだに命令もしてくれないというならば、救済法を設けて何日内に勧告をしないときには、何日内に履行を命じてくれぬときには、抗告の申立をすることができる、もしくは異議の市立をすることができるとか何とかいう救済法がなければ、このままでは働かないじゃありませんか。それによって今宮城さんのおっしゃったように、今までこういうことがほったらかしにされるというような弊害を生んだからして、ほったらかしにされないようにしなければならないと思うのに、これではどうも不徹底ではありませんかという質問が起るゆえんはここにあると私は思う。その点について今一つ両方から御意見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/26
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027・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 先ほども申し上げました通り、研究いたしました上でお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/27
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028・高橋禎一
○衆議院議員(高橋禎一君) 私は一松委員のこの御質問は、裁判所にこういうふうに命令的にしないと、どうも法律の目的が達せられないのではないかと、こういろ御意見でありますが、私どもが衆議院法務委員会において審議しそして考えましたところでは、先ほども申し上げましたように、「できる」という裁判所に対してその権限を与えることによって、その権限を正当に行使するところの責任、義務があるわけでありますから、現在のごとく第十五条の二のような規定がないにもかかわらず、家庭裁判所においては家庭裁判所の使命ということを実質的に十分考えて、履行の状況を調査もし、あるいはそれを勧告しておられる、こういう実情及び法律の上から考えます家庭裁判所本来の使命ということを思いますときに、この規定をもって、先ほども申し上げましたように、権利者が権利の執行ができないで苦しむというようなことをなくすることが十分できるという見解の上に立っておるわけでございます。さよう御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/28
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029・一松定吉
○一松定吉君 高橋君と議論をかわす必要もないのですが、しかし今あなたのようなことに解釈して、義務の履行を勧告することができるのならば、おれは申出があっても勧告せぬということもでぎるのだ。そのときはどうするのですか。勧告することができるのだけれども、権利者はそういう申出をするけれども、おれは勧告することができるのだけれども、勧告する必要がないと思うから勧告せぬと言えばそれきりでしょう。法文解釈としては、「勧告することができる。」とあるからして、裁判所は必ず勧告しなければならぬ義務があるのだということと、この文字の解釈は一様ではないからして、そこを心配するのです。裁判官が全部あなたのようなお考えで、こういうような権限を与えられたから、申出があったから、これは勧告しなければならぬのだというて、義務づけられておる行動だと思って行動してくれれば問題はありませんよ。しかし勧告することができるのだがおれは勧告せぬのだと言われたときには、その権利者の救済方法を設けなければならぬ。その救済方法を設けぬで、義務の履行は勧告しないと言われたら、それきりどうにもできぬじゃありませんか。そのときに、しからば救済方法でもお考えになっておるのですか。救済方法を考えないで、それはもうほったらかしでいいんだ、こういうことにまでなるのですか。いや、そうじゃない。救済方法も要らない、必ずするのだということであれば、「勧告することができる。」いう言葉は、必ずしなければならぬという意味を含めておると解釈されるのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/29
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030・高橋禎一
○衆議院議員(高橋禎一君) それはものの考え方の相違だと思いますが、私は先ほど申し上げましたように、裁判所に一つの権限が与えられれば、いわゆる裁判所としてはその権限を法律の精神に従って実行しなければならない義務と責任がある。だから、この規定でもって、おっしゃるように、裁判所が勧告なりあるいはまた支払いの命令なりをしなければならないのを、不当にそれをしないというようなことは予想しておらないわけです。それを救済する方法云々という問題がございましたが、それはやはり強制執行制度というものがあとに控えておるわけでございまして、終局的にその権利者の権利が奪われるというようなことはもちろんございません。まあ強制執行の段階に達します前に、この法律の精神が意図するところが実現できるかどうかということについては、私はどういう表現を用いて参りましても決して心配はない、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/30
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031・一松定吉
○一松定吉君 その不履行に対しては強制執行がある。もちろんその通りですが、しかしながら不履行だということは、勧告した後に不履行であるかどうかがきまるわけですよ。あるいは履行を命じたときに不履行であるかどうかきまるのですよ。勧告することができるのに勧告しないでは、不履行ということにはなっておらぬ。命じなければ不履行ということになっておらぬ。勧告もしない、命令もしないのに、すぐ強制執行はできぬですよ。だから、強制執行といういわゆる強制手段を前提とする義務の履行を勧告をした事実がある、あるいは義務の履行を命じた事実がある。しかるにこの勧告に応じないから強制執行だ、命令に応じないから強制執行だと言うのならわかるけれども、勧告もしなければ命令もしないのならば、不履行だと言うことはできないのじゃないですか。そのときはどうなるのかということが一つと、いま一つ、私は十五条の二と十五条の三に、前の方は「申出」にし、あとの方は「申立」にして、二つに分けてやるなんというととは、これはおもしろくないと、思う。どちらも、前が「申出」であればうしろも「申出」、うしろが「申立」ということは、手続上必要であるならば、やはり十五条の二も同じですから、これも「申立」ということにしたらよくはないですか。こういうふうに思うのに、前の方はごく軽微な意味において「申出」にし、うしろの方は手続の煩雑を減ずる意味において「申立」にしたということは、少しく十五条の二と十五条の三において取扱いに相違のあるのは、これはおもしろくないと私は思うのですが、これは修正者でなくて提案者の方にお尋ねするのですが、十五条の二は、「申出」でよくて、十五条の三は「申立」でなければならぬというこの理由を一つ承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/31
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032・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 「申立」という言葉は裁判所の手続において用いられますときには、裁判を求める当事者の意思表示をさせるときに「申立」という言葉を使っております。十五条の三は、履行命令という一つの裁判を求める意思表示でございますから、「申立」という言葉を用いておりますが、十五条の二の方の場合は、裁判を求める意思表示という意味ではございませんので、審判または調停で定められた義務が履行されていない、何とかしてもらいたいという当事者の希望が家庭裁判所に伝えられますと、家庭裁判所は義務の履行状況を調査いたしまして、義務が履行されていないことは事実である、これは履行を勧告する必要があると考えましたならば、義務の履行を勧告する、こういうことになっておると考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/32
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033・一松定吉
○一松定吉君 それではますますわからぬ。命令は裁判であり勧告は裁判でないとおっしゃるが、判決、命令、決定という三つに限るという裁判ですが、勧告も国家の意思表示でしょう。私はだから家庭裁判所からいえば、勧告も国家の意思で、ある意味の裁判でしょう。しかしながら、判決・命令・決定の中に入らぬ勧告で、あるから、それは「申出」でよろしい。こちらのやつは命令である。すなわち判決、命令、決定という、その判決の裁判であるから、これは「申立」でなければならぬということは、私は少しわからぬがね。私の言うのは、どちらも裁判所の行動を促す権利者の意思である、「申出」も「申立」も。しかるに「申立」の方は、「申立」に要する条件があって印紙を張らなければならぬし、こういう形式をとらなければならぬというめんどうなことが「申立」の方にはある。しかしそういうめんどうなことをさせる必要はない、ごく簡易にやらせるという意味で「申出」という文字を使ったのだということは、高橋委員長の説明した通りですが、しかしながらどちらも国家の意思である以上は、これはやはり同じように「申出」ということを、「申立」がよいならば前も「申立」にするし、前の「申出」がよいならばうしろも「申出」にする。ただしそういう「申立」の手続によるようなことを省略することができるならば、そういう意思を表わして「申立」という文字を使うか、あるいは「申出」という文字を使う。どちらも、十五条の二も十五条の三も、同じような「申出」という文字を使うか。あるいは二つとも「申立」という文字を使うか。もし申立という文字を使うならば、申立に要する法律上の条件は省略することができるという意味を表わして申立という意味を使ったらどうですか。こう言うのですよ。もうしかしあんまり言わぬ、この程度で。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/33
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034・高橋禎一
○衆議院議員(高橋禎一君) さっきおっしゃった強制執行ですね。あれはまあ、この履行の勧告とか、それから義務の履行を命令するという履行命令が出なくても、審判及び調停で決定されておる、確定されておる履行期にそれを履行しなければ強制執行はなし得るという根本的な権利は、ずっと存続しておるわけでありますから、さらにそれを強制執行の方法によるということが家庭事件についてはいろいろの点から見て適当でないと、やはり審判及び調停をなした場合にはそのアフター・ケアをやる、その限度はこの改正案程度にとどめよう、そういうところでございますから、さよう御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/34
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035・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 関連して。村上局長とそれから家庭局長と提案者にちょっと伺いたい。今の言葉でございますが、この十五条の二におきましても「勧告することができる。」それから十五条の三におきましても義務の履行をなすべきととを命ずることができる。」この「できる」ということの法律上の解釈は一体どうすればいいんでございますか。先ほどからお話を伺っていると、してもいい、しなくてもいいというような解釈とも受け取れるし、それからまた、義務の上で責任の上でどうしてもころいう言葉があってもしなければならないというような御説明にも聞えるんでございます。これを私、法律上の解釈をどうするかということを初めにきめておく必要があるんじゃないか。ということは実は十九国会で少年院法の一部改正がございましたときに、この少年院から逃走しました子供を連れ戻すことができるという文句で非常に問題に触ったのです。それで法制局長も見えたんでございますが、そのときには私どもはこの言葉の通りに連れ戻すこともできるけれども、またたとえて言ってみたならば子供が少年院から逃げたということは悪いことなんでございますけれども、たまたま家に帰ったら落ち着いていい子になっているとか、また結婚していい家庭を持ってるとかいう子供は、それは連れ戻さないでその位置に守ってやりたいと、こう考えてこのことができるということで非常に問題が紛糾したんでございますが、そのときの結論としたら、これは法律上の言葉として連れ戻すことができるという言葉は、連れ戻さなければならないという解釈をするのが当り前だということになりまして、私ども非常に不服だったんです。だが今度のこの法律で申します「することができる」ということはどういうふうに一体法律上解釈するという御見解でございましょうか。御三方から伺いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/35
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036・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 私は先ほど一松委員の御質問に対してお答えいたしました通り十五条の二及び十五条の三にあります「できる」という言葉は、家庭裁判所にこの権能あるいは権限を与えるという意味でございまして、家庭裁判所の審判官は法律によって与えられました権限を適正に行使する公務員としての責任を持っておりますので、権限を与えられたにかかわらずやってもいい、やらなくてもいいということにはならないと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/36
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037・高橋禎一
○衆議院議員(高橋禎一君) 先ほど来御説明いたしましたところで御了承願いたいと思います。ただいま村上民事局長が御説明になったと同趣旨であると御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/37
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038・宇田川潤四郎
○説明員(宇田川潤四郎君) 村上民事局長の解釈と同様でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/38
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039・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それでございましたならば、裁判官の裁量によりまして勧告をする、しなくてもいいと、それから、また十五条の三の方では「命ずることができる」ので、命じなくてもいいという解釈でよろしいのでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/39
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040・高橋禎一
○衆議院議員(高橋禎一君) 私の申し上げたのはそういう趣旨ではないんですが、裁判所にこういう権限を与えますのですから、勧告とかあるいは調査とか履行命令をする権限を与えれば、それを与えられた裁判所としてはその法律の精神に従ってその権限を公正妥当に行使しなければならないという責任がある、そういうふうに見るべきだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/40
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041・一松定吉
○一松定吉君 関連して。この十五条の本文を見ますと、「金銭の支払、物の引渡、登記義務の履行その他の給付を命ずる審判は、執行力ある責務名義と同一の効力を有する。」と書いてある、だからこれから見ると、家庭の裁判、審判をして、元の夫が元の家庭に対して金十万円払えといういわゆる審判をする。そうするとそれは確定すると、いつまでに払えと確定すれば、確定しても払わんというようなときにはこういう十五条の三みたようなものは要らない、直ぐ十五条で執行できる、今、高橋委員長のお話であれば十五条の本文によってみると、すなわち給付を命ずる審判というものは確定するのですから、十五条によって執行力は債務名義になるので直ぐ強制執行できますね。それならば十五条の三は要らないのじゃないですか。この点との何はどうなるのですか。十五条の三の義務の履行を怠った者がある場合においては申立によって義務者に対し、その義務の履行をなすべきことを命ずることができるということは要らない。これはもう事実としておって、もうすでに十五条によって審判の効力を発生してしまったのであるからして直ぐに債務名義が発生しておるので、債務名義の発生しておることによって強制執行して下さいという申出をすればいいのであって、十五条の三は、特別この規定は要らないのじゃないか。これはどうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/41
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042・高橋禎一
○衆議院議員(高橋禎一君) これは政府委員の方から説明なさるのが相当かと思いますが、まあ私から法案を通過させているものの立場として御説明申し上げますと、おっしゃる通りに強制執行がまあできると、その強制執行を経て自分の権利の確保ということができるわけでありますが、しかし家庭裁判所の特質から考えて、また家庭裁判所において決定した審判なりあるいは調停というものは、権利者がほかの債権債務とは異なって非常に弱い立場にあるのです。普通民事訴訟に現われますところを全般的に見ますというと、権利者の方がどうも経済的条件がよくて債務者の万が悪い場合が相当多いのですが、家庭裁判所の事件というものはそれが逆でございまして、権利者の方が貧しかったりその他弱い立場に立っておるということと、それからいま一つはこれは資料も提供されておると思いますが、その債権額が非常に少くて五万円以下程度のものが非常に多いわけでございます。そういうふうに弱い立場にあるものが小さい債権を抱えてそしてそれを強制執行に訴えなければならないということになりますと、現在のこの強制執行のあり方からみますと、やはり強制執行によって権利を実現するということが非常に困難であろう。そういうところを考えまして、弱い者が小額の権利を抱えておる、それを家庭裁判所の本質から考えてアフター・ケアとして強制執行権はあるんだけれども、さらにその上にめんどうを見て調査をし、履行の勧告もし、そうしてまた履行命令をして、そうして権利を確保さすようにしようというのがこの法律の目的でございますから、まあいわば権利者は二重にあるいは三重に保護していこうという、こういう理念であるということを御了解願いたと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/42
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043・一松定吉
○一松定吉君 その点につきまして、政府委員の方からもちょっと御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/43
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044・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 家庭裁判所の審判は、ただいま一松委員が御指摘になりました通りに、策士五条の規定によりまして債務命令と同一効力を持っておるわけであります。また調停につきましては、別に第二十一条がございまして確定判決と同一の効力を持つので、家庭事件について家庭裁判所で成立しました審判または調停を債務命令とする強制執行はできるわけであります。強制執行ができるからほかの手段は必要ないということでありますれば、この法律案は提案の必要はなかっだわけでございますが、家この事債務につきましては、当事者が現に近親者でありがたがって近親の関係にあった者、また相互の間におけるあるいは扶養であるとか離婚の場合の財産分与であるとかいう権利が対象になっております関係上、当事者はとかく強制執行の手段に訴えることを回避しようとする傾向があるのであります。またただいま高橋委員長からもお話がございましたように、月々きわめて少額の扶養料を払うというようなときに、そのつど強制執行の手段に訴えるということではとうてい負担にたえないし、また実情に適さないというようなところから、先ほど宮城委員からお話があったように泣き寝入りというような状態がなきにしもあらずという状況でありまして、強制執行をやればよろしいというだけでは済むまいというところから、この法律案が提案された次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/44
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045・赤松常子
○赤松常子君 たびたび質問がございまして重複している点は避けるつもりでございますが、もう一度その提案者に伺いたいのでありますが、今まで家事審判法があっても泣き寝入の人がなきにしもあらずで、むしろ泣き寝入りの人が多いからこそこの改正案が必要であったと思いますが、その点一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/45
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046・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) ただいま申し上げましたように強制執行という手段は、家庭事件につきましては当事者が避けようとする傾向がございますので、勢い審判をしてくれた審判官あるいは調停をしてくれた審判官なり調停員のところへ行きまして、せっかく調停していただいたけれども履行されない、何とかしていただきたいといって泣きついてこられるというような実情がございまして、従来法律に規定はございませんけれども、家庭裁判所の審判官なり調査官が事実上世話をやいて陥るというような実情であったのでございます。それを法律の上で家庭裁判所はそういうアフター・ケアができるのであるということをはっきりしようというのがこの法律のねらいでありまして、泣き寝入りになるような事案を少しでも少くしたいということが、この法案を提案いたしました趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/46
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047・赤松常子
○赤松常子君 それであれば先ほどからしばしば指摘されておりますように、勧告することができるというようなことは非常にあいまいだと思うのであって、この改正案の必要性を貫徹するならば、必ず勧告しなければならないと改めたいと思うのでございますが、ただこういう程度で今おっしゃったような改正案を必要とする目的が遂行されるかどうか、その点をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/47
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048・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) その点はたびたび申し上げましたように、この法律によって権限が与えられますれば、家庭裁判所の審判官はこの法律によって与えられた権限を、その家庭裁判所の使命なり自己の職務に照らして適正に、公正妥当に行使するであろう−ということは信頼してよろしいと考えております。
なおその点につきましては、果してこのこういう規定でできるとあるからしてもいい、しなくてもいいということで、十分この法律によって与えられる権限を行使しない心配があるかどうか、その点につきましては家庭裁判所の実情に詳しい家庭局長からもお答えするのが適当かと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/48
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049・宇田川潤四郎
○説明員(宇田川潤四郎君) 今のお答えをする前に家庭裁判所の実情をここでお話申し上げまして審議の御参考にしたらいかがかと存じます。先ほど申しましたように、家庭裁判所の勧告制度というものはすでに行われております。これはお手元に差し上げました家事審判法の一部を改正する法律案参考資料というものの第四表というところに、履行状況と家庭裁判所の職員の援助との関係というのがございますが、この中に援助したというのが総計いたしますと千八百九十八件ございます。援助しないというのが総計いたしますと二千五百三十一件でございますが、家庭裁判所における審判、調停があった場合に履行がなされませんと、多くの場合が弱い女性でございますからぜひ審判、調停の結果を、実現してほしい、言いかえますと、債務の履行を完全に援助してほしいというような申し出があるいははがきなりあるいは口頭であるわけでございます。そういう際にここにございますようにこれは昭和二十八年七月の一日から昭和二十九年六月末の一年間の統計でございますが、千八百九十八件に及んでおるのであります。かような実情から申しまして、援助の申し出があれば、言いかえますと勧告の申し出があれば家庭裁判所としては喜んで勧告しておるのが実情であります。その程度のヒューマニズムは家庭裁判所の家事裁判官も、またその補助をしております家庭裁判所の調査官も持ち合せておりますので、このたびの規定のようなこの家庭裁判所の審判として定められた義務の履行を調査し、義務者についてその義務の履行を勧告することができるというような表現でも、必ずするということを御了承願いたいと思うのであります。しかしながら従来はかような規定がなかったために、勧告をすることが何と申しましても裁判、調停の後でございますので、裁判所は裁判をすればいいのだ、調停をすればいいのだ、その後の履行の問題は家庭裁判所の関知するところでないという従来の民事訴訟法的な考え方がございまして、これをちゅうちょするものがあったので、かような権限規定を設けていただきますと、家庭裁判所は必ず勧告等の手続をとることは私は間違いないと確信するのでまあこのような法律案に賛成するのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/49
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050・赤松常子
○赤松常子君 先ほどから提案者及び高橋委員長の御説明の中にもしばしばございましたように、非常に事件が多いしこれの履行状況の調査などに関しましていろいろ予算の点を考慮されておりましたのですが、私そういう点から一つこの予算をセーブするような意味で申出によりというようなワクをはめて件数を少くしようとなさるような、私疑いを先ほどからかぎつけている次第ですが、そういうこの予算との関係においてこういうことが考えられたものかどうか、一応その点をはっきりしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/50
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051・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 十五条の二に「権利者の申出があるときは」と修正が加えられました趣旨は、先ほど高橋委員長からお話しがございました通りでございますけれども、私どもといたしましても、この規定が修正されましたことによって予算が節約されるというふうには解釈いたしておりません。十五条の二の規定は、本来履行確保のために必要のある場合に家庭裁判所は義務の履行状況を調査し、また調査の結果勧告の必要ありと認めたならば勧告をするという趣旨でございますので、どういう場合に調査に乗り出すかと申しますと、先ほど申し上げましたように何とかしてもらいたいと言って当事者が泣きついてくる、そのほかはがきがくる、電話がくるとか何らかの端緒がありまして初めて調査に乗り出すわけでございます。しかも申出という言葉を使ってございますけれども、これは決して、履行を勧告してもらいたい、履行状況を調査してもらいたいというはっきりした内容の意思表示である必要はないのでありまして審判で定められた義務が期限が来たけれども履行してもらえない、何とかしてもらいたいという意味でありまして、でありますから、この「申出があるときは、」という修正が加わりましたことによりまして、実数には変りはないと、考えまして、この修正には政府側といたしましても異存はないと申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/51
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052・高橋禎一
○衆議院議員(高橋禎一君) 赤松委員のお尋ねの予算がないからまあこの程度に法律をしぼったのだろうという御質問に対しましては、そうではないです。予算のワクを考えて法律をしぼったなんというようなことは私ども考えておらないのでありまして、やはり訴訟の大原則と実事審判法の特質というものを睨み合わせて、その間に適当な線を見出したというのがこの法案であるというふうに御了承を願いたいと思います。ただ私が訴訟経済の原則云々、金に関係のあることを申し上げましたが、これはもう一般の司法裁判所の事件の取扱いにしましても、家庭裁判所の仕事のやり方にいたしましてもやはり時間なり、労力なり、金なりというものが最も経済的にして、しかもその目的を十分達成し得るという、そういう根本的な考えに立たなければならぬということを申し上げただけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/52
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053・高田なほ子
○委員長(高田なほ子君) 赤松さんまだおありですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/53
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054・赤松常子
○赤松常子君 もう一つちょっと。私まだこの改正についてはもう少しお聞きもしたいし、疑いの点もございますのでこれはまたあとの時間に譲りたいと思っております。ただ一点、この不履行の場合に過料五千円に処するとございますが、五千円払えばあとどうでもいいというようなことも起り得る場合もあるのでございますが、この五千円の綿をどういう根拠でお引きになったのか、その辺を一応伺わせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/54
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055・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 十五条の三の履行の命令が発せられまして、この履行命令に従わない場合に二十八条の規定によりまして、正当な事由がなく命令に従わない場合に「五千円以下の過料に処する。」ということになるわけでございますが、この場合のこの命令違反に対する制裁としては刑罰とかあるいは身柄拘束をする、監置というようなことも考えられるのでございますけれども、こういう家事債務の履行を確保するためにそこまでは行き過ぎであろうという多数の意見でございますので、過料という制裁にいたしたのでございますが、現行法の二十八条でございますが、調停前の措置として、科せられた措置に従わない場合に、五千円以下の過料に処するという罰則がございますが、これとの振り合いを考えまして五千円以下の過料ということにしたのでございますが、これは衆議院でも問題になったのでございますけれども、履行命令があって過料の処分を受けたと、ところがそれにもかかわらず履行しないという場合にはもうほかに手段がないのかという御質問に対しまして、私ども、必要があればさらにまた履行命令を出す、それに従わないときに過料に処することが理論上は可能であろうと申し上げましたところが、これは数回、あるいは数十回履行命令が出されて過料の制裁が繰り返されるということは不当ではないかというような御意見もございまして、いろいろ御議論になったので、ありますけれども、この十五条の三の履行命令、それから二十八条の過料の制裁の規定、これによりまして現在よりははるかに家事債務の履行というものが多く期待できるのではないかと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/55
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056・赤松常子
○赤松常子君 あとまだ二万円、あるいは五万円お払いしなくっちゃいけないというような場合に五千円で払っておけばそれでよろしいというようなことで、何かそこにまた妙な問題が起り得ると思うのでございまして、こういう線をはっきりここに出すということがどんなものかとちょっと私疑問に思うものですからお聞きしたいのですが、そういうときにはどうなるのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/56
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057・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 履行命令が出て過料の制裁が科せられたにかかわらず、引き続いて履行しないという当事者があります場合には、先ほど申し上げましたように、場合によってはさらにまた履行命令を繰り返して出してもらうというととも考えられますし、最後の手段として強制執行の手段に訴えるという道もこの際とられるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/57
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058・高田なほ子
○委員長(高田なほ子君) ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/58
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059・高田なほ子
○委員長(高田なほ子君) 速記を起して下さい。それでは本案につきましては、まだ十分の御発言が残っておりますので次回に譲ることにいたしまして、委員会はこれで散会をいたしたいと存じます。
午後零時五十一分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415206X00419560221/59
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