1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年四月十一日(水曜日)
午前十時四十五分開議
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議事日程 第三十四号
昭和三十一年四月十一日
午前十時開議
第一 オランダ国民のある種の私
的請求権に関する問題の解決に
関する日本国政府とオランダ
王国政府との間の議定書の締結
について承認を求めるの件(衆
議院送付) (委員長報告)
第二 すべての種類の鉱山の坑内
作業における女子の使用に関す
る条約(第四十五号)の批准につ
いて承認を求めるの件(衆議院
送付) (委員長報告)
第三 有料職業紹介所に関する条
約(千九百四十九年の改正条約)
(第九十六号)の批准について承
認を求めるの件(衆議院送付)
(委員長報告)
第四 関税法等の一部を改正する
法律案(内閣提出)(委員長報告)
第五 物品管理法案(内閣提出)
(委員長報告)
第六 中央卸売市場法の一部を改
正する法律案(内閣提出)
(委員長報告)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/0
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001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/1
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002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。
議席第二百四十九番、地方選出議員鳥取県選出、中田吉雄君。
〔中田吉雄君起立、拍手〕
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/2
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003・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 議長は、本院規則第三十条により、中田吉雄君を建設委員に指名いたします。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/3
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004・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) この際、参議院事務局職員定員規程の一部改正に関する件についてお諮りいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/4
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005・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 本件につきまして、議長は、参議院事務局職員定員規程の一部を改正する規程案を立案いたしまして、あらかじめ議院運営委員会に付議いたしましたところ、同委員会においては異議がない旨の決定がございました。この規程案は、議席に配付いたしました通りでございます。
別に御発言もなければ、これより本規程案の採決をいたします。
本規程案全部を問題に供します。本規程案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/5
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006・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本規程案は、全会一致をもって可決せられました。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/6
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007・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 外務大臣から、去る六日の曾祢益君の緊急質問に対する答弁のため、発言を求められました。この際、発言を許します。重光外務大臣。
〔国務大臣重光葵君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/7
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008・重光葵
○国務大臣(重光葵君) 前回の本会議におきまして、曽祢議員から、原子力研究所の敷地の問題に関連して、米国軍側との関係について御質問がございました。今お答えいたします。
原子力研究所の敷地として、どこが適当であるかどうかということは、あくまで日本政府自身が自主的に決定すべき問題であると考えておるのであります。御承知のように、今回、原子力委員会としては、原子力研究所の敷地を茨城県の東海村とするという方針を答申して参りましたので、関係庁といたしまして、これに関して政府は、目下慎重検討中でございます。原子力の委員会の敷地について、日本政府自身が決定すべきものであるということは今申した通りでございます。そこで、むろんこの問題について米国軍側等の意向に左右せられることはないのでございまして、その事実も全然ございませんことを申し上げます。なお、この問題について、米国側と交渉の段階にはむろん入っておりませんので、交渉をしたことは少しもございませんことをあわせて御報告申し上げます。
以上でございます。(拍手)
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/8
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009・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第一、オランダ国民のある種の私的請求権に関する問題の解決に関する日本国政府とオランダ王国政府との間の議定書の締結について承認を求めるの件
日程第二、すべての種類の鉱山の坑内作業における女子の使用に関する条約(第四十五号)の批准について承認を求めるの件
日程第三、有料職業紹介所に関する条約(千九百四十九年の改正条約)(第九十六号)の批准について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)
以上、三件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/9
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010・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。外務委員会理事鶴見祐輔君。
〔鶴見祐輔君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/10
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011・鶴見祐輔
○鶴見祐輔君 ただいま議題となりました三件につきまして、外務委員会における審議の経過の概要と結果を報告いたします。
まず、オランダ国民のある種の私的請求権に関する問題の解決に関する日本国政府とオランダ王国政府との間の議定書の締結について承認を求めるの件につき申し上げます。
この議定書は、日本は第二次大戦中、旧蘭印において抑留されたオランダ民間人に対し、見舞金として千万ドルに相当するポンドを、五年間に分割して支払うことを内容としたものでありまして、これは、サンフランシスコ平和条約調印の際、わが吉田全権とオランダ全権との間に、第二次大戦中、旧蘭印で抑留されたオランダ民間人のこうむった苦痛に対し、日本は好意ある自発的措置をとることを確認した書簡が交換された後に、初めてオランダは対日平和条約に署名したといういきさつがあり、この書簡の趣旨に基いて交渉が続けられ、本年三月十三日、本議定書の署名が行われたのであります。
質疑におきましては、この種見舞金を日本が支払わねばならないというようなケースはほかにないか。また、この種私的請求権に対し見舞金を支払うことは、国際法上慣例があるのかなどの質問がありましたが、詳細は会議録に譲ることにいたします。
次に、すべての種類の鉱山の坑内作業における女子の使用に関する条約及び有料職業紹介所に関する条約(千九百四十九年の改正条約)の批准について承認を求めるの件につき申し上げます。
前者は、一九三五年に国際労働機関、すなわちILOの第十九回総会で採択された条約でありまして、その目的とするところは、鉱山における坑内作業が女子にとって風紀上及び保健上好ましくないので、これを原則として禁止しようとするものであります。
後者は、一九四九年のILO第三十二回総会で採択された条約で、その目的とするところは、有料職業紹介所の運営には種々の弊害が伴うので、これを廃止するか、または権限ある機関の監督下に置こうとするものであります。この条約の実質的規定はその第二部と第三部であり、政府としては、この条約の批准に当っては、「わが国現在の雇用慣習の特殊性などを考慮し、まず、比較的ゆるやかな第三部を受諾しておき、将来諸条件の整備を待って第二部を受諾する通告を行う考えである」との説明でありました。なお、これら両条約の規定の趣旨は、すでに国内法に規定されており、これらの批准によって、わが国は公正なる国際労働慣行を順守しておる実情を広く世界に知らせ、わが国の国際信用を高めるということになると考えるとの説明がありました。
委員会の審議においては、鉱山における女子使用に関する条約につき、質疑において、この条約の趣旨を取り入れておるわが国の労働基準法に対する違反件数とその内容等につき質問があり、また、討論においては、羽生委員より、「わが国においては本条約関係のりっぱな国内法がすでに制定されておるが、違反件数の多いのは遺憾である。今回本条約を批准するに当って、国際信用上からこの国内法の規定を励行することに、政府当局は十分留意することを切望する」旨の意見を述べ本件に賛成されました。
委員会は四月十日、以上、三件の採決を行いましたところ、三件とも全会一致をもって承認すべきものと議決いたしました次第であります。
以上、報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/11
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012・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより三件の採決をいたします。
三件全部を問題に供します。委員長報告の通り三件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/12
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013・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって三件は、全会一致をもって承認することに決しました。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/13
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014・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第四、関税法等の一部を改正する法律案
日程第五、物品管理法案(いずれも内閣提出)
以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/14
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015・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長岡崎真一君。
〔岡崎真一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/15
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016・岡崎真一
○岡崎真一君 ただいま議題となりました二法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、関税法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、関税法及び関税定率法の一部を改正する法律について所要の改正を行おうとするもので、まず、関税法の改正内容について申し上げますると、第一に、福島県の小名浜港及び熊本県の水俣港については、その貿易実績と将来性にかんがみ、今回開港に指定するとともに、日本航空株式会社の福岡・那覇線が本年六月から開設されることに伴い、福岡県の板付空港を税関空港に指定することとしております。第二に、税関手続の簡素化及び関税行政の適正化に資するため、外国貿易船等が簡易手続によって入出港することができる場合を拡張し、従来の船用品、または機用品のみを積みおろしする場合のほか、新たに乗組員の携帯品及び郵便物を積みおろしする場合にも、簡易手続によって入出港できることとするとともに、収容貨物のうち、著しく腐敗もしくは変質したもので、買受人がないものは廃棄処分ができることとするほか、外国貨物で、刑事訴訟法の規定により売却、没収等の行われたものについては、関税法の適用上、輸入を許可されたものとみなす等、所要の規定整備を行なっております。
次に、関税定率法の一部を改正する法律案について申し上げますると、現在、免税措置の適用を受けております給食用乾燥脱脂ミルクについては、実際に給食の用に供されるまでには、輸入者以外の者を経る関係上、他に転用されるおそれが少くなく、かつまた、これらの行為を取り締る規定もない実情にかんがみ、今回原則として、その用途外使用を禁止するのみならず、用途外使用に供するため譲渡する場合等をも禁止するとともに、あわせて違反者に対する罰則規定を整備し、これらの措置によって給食用ミルクの横流し等、不正行為を防止することとしております。
本案審議の詳細につきましては、会議録によって御承知を願います。
質疑を終了し、討論に入りましたところ、岡委員より、「本法律案は、内容から見て関税法と関税定率法の一部を改正する法律の二本立となっているのは適当でないから、今後、提出の仕方を十分考慮してもらいたい」との希望意見を付して賛成意見が述べられ、採決の結果、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、物品管理法案について申し上げます。
現在、国の物品経理は明治二十二年に制定された勅令、物品会計規則によっているのでありますが、膨大、複雑な行政事務に対応する物品の経理基準としては、きわめて不備な点が多く、その結果が、会計検査院の毎年度の検査報告にも、過当調達、不当調達、または管理行為の不適当というような諸点が指摘されていることは、すでに御承知の通りであります。本案はこのような状況に対処して、物品経理の適正化をはかるために、現行の規則にかえて、新たに物品管理法を制定しようとするものであります。
以下、主要点について申し上げますと、第一は、物品の定義を明確にし、物品はその供用の目的に従い、かつ予算目的に反しないように分類を設け、その分類の目的に従って使用しなければならないこととしており、従来乱れがちであった予算で規制した効果が、物品となった後においても守られるようにしております。第二は、毎会計年度、需給計画と供用計画を立て、物品の調達と供用はその計画に基いてなされることとして、計画化と効率化をはかることとして、その取得、保管及び処分等の、いわゆる管理行為と検査及び報告等の基準と方法を定めております。第三は、物品の管理機構について、新たに物品管理官、物品出納官及び物品供用官の制度を設けるなど、これを整備し、その管理職員及び使用職員の弁償責任を明確にしたことであります。その他本法の制定に伴い、関係法令について必要な改正を行なっております。
本案の審議におきましては、本案の提出がおくれた理由、不適当な調達や管理を防止しようとする条項、最上部の責任問題、なかんずく、本案における物品の取得、供用、処分の意義等について熱心な質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終り、討論に入りましたところ、青木委員より、「普通の法律常識からいって、供用とは使用させると解すべきであり、供用と処分とは同一のカテゴリーには入らないのであるから、供用を、供用と処分とに分けるよう修正すべきである。また、この場合の処分は、行政目的に従い、用途に応じて行う処分であることを明確にし、供用計画を運用計画とするほか、字句の修正、条文の整理をすべきである」との修正意見が述べられ、さらに、「国の利益保護等のためには、会計法令の重要性の認識が根本であり、その運用が大切であることを大蔵大臣に伝えてもらうこととして、修正部分以外の原案に賛成する」との意見が述べられ、岡委員より、「国の物品の不適当な管理等は、会計検査院の検査報告にも、つとに指摘されたところであり、明治二十二年に制定された物品会計規則が現状に即応しないから本案を提出したとのことであって、おそきに過ぎた感があるが、要は、今後の運用にあるので、万全の努力を要望して、修正部分を含めた原案に賛成する」との意見が述べられました。
かくて、青木委員提出の修正案並びに修正部分を除く原案について採決の結果、それぞれ全会一致をもって可決され、本案を修正議決すべきものと決定した次第であります。
以上、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/16
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017・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。
まず、関税法等の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/17
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018・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/18
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019・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 次に、物品管理法案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/19
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020・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって委員会修正通り議決せられました。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/20
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021・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第六、中央卸売市場法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員会理事戸叶武君。
〔戸叶武君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/21
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022・戸叶武
○戸叶武君 ただいま中央卸売市場法の一部を改正する法律案が議題になったのでありますが、報告に先だって一言申し添えておきたいと存じます。
現行中央卸売市場法は大正十二年に制定せられたものでありまして、社会経済事情の一変した今日においては、実情に沿わないものがありますので、参議院農林水産委員会においては、かねてこれが改正の必要を認めて検討を進め、特に去る第二十二国会において、当時の農林水産委員の有志によって、さしあたり、当面必要とされておりました卸売人の整備統合の促進及び卸売業務の許可の適正化を内容とする中央卸売市場法の一部を改正する法律案が発議され、その後、継続審議に付せられて、政府の措置と照し合せながら今日に至っておったのであります。しかるところ、今回政府からこの法律案が提出され、ただいま議題になった次第でありまして、以下農林水産委員会における本改正法律案の審査の経過及び結果を報告いたします。
先に申し上げましたように、現行の中央卸売市場法は大正十二年に制定され、その後、ほとんど何らの改正を経ないで今日に至っておるのであります。その間、中央卸売市場には、時に応じて変遷がありましたが、最近においては、十三の都市が中央卸売市場法に基いて市場を開設し、青果物及び魚介類等の生鮮食品の総販売量の大よそ三分の一が中央卸売市場における取引を経て流通しておる状況でありまして、中央卸売市場は、生鮮食品の需給調整及び価格形成において中枢的地位を占めるに至っております。しかも、この法律が制定されてから今日までの生鮮食品の流通あるいは取引の実情、特に中央卸売市場がおおむね集散市場ともいうべき状態になっておることは、立法当時とは相当著しい変化であります。かかる事情にかんがみ、政府においては、かねて中央卸売市場に関する検討を進め、ことに昨年農林省に中央卸売市場対策協議会を設け、広く市場業務関係者及び学識経験者に諮って、中央卸売市場の改善整備に関しとるべき施策について意見を求め、その答申を尊重し、考究を重ね、その結果現行法に対して必要な改正を行うため、本法律案を提案するに至ったものであるとされております。
次に、本法律案の内容を申し上げますと、大要次のようであります。
すなわち第一は、中央卸売市場開設の区域指定について、その基準を明らかにしたことでありまして、その指定は政令で定める数以上の人口を有する都市及びこれと一体として取扱い物品の流通の円滑をはかる必要があると認められる隣接地について行うものとしております。第二は、中央卸売市場の開設者となることができる者について、現行法の規定から、民法の公益法人を除いて、地方公共団体のみに限ったのであります。第三は、中央卸売市場における卸売人の許可についてでありまして、現行法においては地方長官が行うことになっておりますが、これを改めて、農林大臣が開設者の意見を尊重して行うこととするとともに、許可に当っての欠格事由その他に関し、必要な規定を整備したのであります。第四は、卸売人の間における業務協定について、私的独占禁止法の適用を除外したことでありまして、卸売の業務をなす者の間における過度の競争による弊害を防止し、卸売業務の適正かつ健全なる運営を確保するため、特に必要がある場合に、卸売の業務をなす者があらかじめ農林大臣の認可を受けて締結する卸売業務にかかわる取引条件に関する協定及びこれに基いてなす行為については、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律を適用しないことにしております。しかしこの場合、取扱い物品の価格、品質または数量に関する協定は認められないことにいたしております。第五は、仲買人に関する規定を追加して、開設者が必要があると認めた場合は、仲買人をおくことができることとし、その資格及び員数等は業務規程によって定めることとしたのであります。第六は、類似市場、すなわち中央卸売市場が取り扱う品目について、その中来卸売市場の指定区内において、中央卸売市場類似の業務を行う市場で、一定の基準をこえるものに関する規定を追加したことでありまして、この種、類似市場については、現行法では中央売卸市場の開設に際して、農林大臣が中央卸売市場開設者の意見を聞いた上、その閉鎖を命ずることができ、この場合、中央卸売市場開設者は損失の補償をなさなければならない旨の規定があるのみでありましたが、今回の改正によって、類似市場に対し、農林大臣に所定の事項の届出の義務を課し、また、農林大臣は必要に応じ類似市場の開設者または卸売人から報告を徴し、立ち入り検査を行い、さらに施設または業務方法の変更を命じ、これに違反する場合は、業務の停止を命ずることができることとし、以上のほか、農林大臣が中央卸売市場の卸売人から業務及び財産状況の報告の徴集並びに罰則に関し必要なる規定の整備を行なっております。
委員会におきましては、まず政府当局から提案理由及び補足的説明を聞き、続いて質疑に入り、各般の事項にわたって政府の所見がただされたのでありまして、これが内容の詳細については会議録に譲ることを御了承願いたいのでありますが、しかしここにその幾つかを拾って申し上げますと、次の通りであります。
すなわち、「先般農林省に設けられた中央卸売市場対策協議会の答申事項は、今回の改正法案にどの程度取り入れられておるか、行政機構の上からみても、また財政上からいっても、政府の市場対策は消極的でないか、今回は中央卸売市場法の一部改正が企図されたのであるが、今後市場制度について全面的検討がなされるか、今回の改正によって卸売人の許可の権限が地方長官から農林大臣に移されることになった理由いかん、かくして権力乱用のおそれはないか、六大都市においては開設者たる地方公共団体の長が許可権を持つ必要はないか、卸売人の員数が法文に規定されていないが、卸売人の単数制あるいは複数制に対する政府の見解いかん、卸売人の員数をあらかじめ業務規程の中に定めることができることとする考えはないか、改正法律案の中に、生産者擁護に関する規定がいかに取り扱われておるか、類似市場の意義、功罪及び政府におけるこれが取扱い方針いかん、今般の改正によって類似市場を届出制にすることは、これを法的に公認することになりはしないか、中央卸売市場を整備強化して類似市場の抑制をはかるべきではないか、今回の改正によって一定基準をこえる類似市場は届出を要することになっておるが、その基準の具体的内容いかん、過ぐる二十二回国会以来、継続審査中の参議院議員提案にかかる中央卸売市場法改正法律案においては、卸売人の合併または営業の譲り受けについて、独占禁止法の適用を除外することになっており、また、中央卸売市場対策協議会においても同様な答申が行われておるのにもかかわらず、今回の改正法草案にはその措置がとられていない理由いかん」等の諸点が究明せられ、これに対して、政府当局から、「中央卸売市場対策協議会の答申は、大別して七項目にわたっておるが、そのうち市場の関係者、卸売人、仲買人及び類似市場等については、逐条、関係条文にその精神を表わすことに努め、また、中央卸売市場そのものに関する個々の具体的な事項については、技術的に可能な範囲においては、ほとんど全部取り上げて改正案を作成した。行政機構については、最近農林省に市場行政の専管課を設け、指導監督に必要な人員も極力整備する方針である。中央卸売市場の施設の整備拡充については、来年度は余剰農産物見返り円資金の融通を計画し、その実現に努力している。市場制度については、関係者の協力を得て今後も引き続き研究し、将来別途に広い視野から根本対策が考えられなければならないが、今回は各方面の要望に最大公約数的に従って一部改正を立案した。卸売人の許可に関する権限は、現行法では地方長官のものとなっているが、しかし、これはもともと国の事務であって、むしろ農林大臣のものとすることが適当であると認められ、また現行法制定当時と今日とでは、生鮮食品の流通取引事情が一変して、卸売人の業務の関係地域がますます拡大して、ほとんど全国的な集散市場的性格のものになっており、かような実情にかんがみ、かつ許可事務の性質から考えて、農林大臣が行うことに改めた。しかしその際、直接市場経営の任に当る開設者の意見を聞き、これを尊重して行うことを特に規定し、この運用については慎重を期したい。また必要に応じて職務の一部を知事に委任する規定を残して、中央、地方緊密な連携を保って運用によろしきを得たい。卸売人の員数については適限少数がよいとの意見が答申されている。現実にはほとんど複数になっており、原則としては適限少数が適切であるが、市場の実情によって公益上支障がない場合は単数もあり得ると考えている。卸売人の許可は国の事務と考えているので、業務規程の中でその員数を定めることができることにする考えはない。生産者擁護については、全体の条文を通じて生産者のためにも、また消費者のためにも、公益が守られるようにしてあると考えている。類似市場は、都市の人口の増加等に伴い、中央卸売市場の指定区域内に自然に発生し、生産者及び消費者に便益を与えてはいるが、一面また施設その他において遺憾の点もあるので、今回届出の措置を講ずることにしている。この届出制には公認というような意味は全然考えていない。届出義務を付することによって類似市場の実態を把握し、それに基いて公益を守るため必要な規制ができるようにした。また、現行法第六条に関連して、中央卸売市場の開設を勧め、分場等の設置により類似市場を整理することができるものと考えている。なお、今回の改正により、届出が必要となる類似市場の施設の一定基準については、各都市における中央卸売市場のうち最低のものに近いものを考えているが、具体的には、中央卸売市場と比較し、各地の実情に応じて研究を進めたい。卸売業者の合併または営業の譲り受けに関して、独占禁止法適用除外の規定を設けなかったのは、かような規定を設けると、政府において卸売人の員数を単数にしようとする意図があるものと解釈せられるおそれがあり、一方また卸売人の整備統合は、必要と認められるときは具体的な事案について農林省が公正取引委員会に連絡し、これに対し公正取引委員会は農林省の見解を十分尊重する趣旨の覚書を取りかわしているので、実情に応じて解決することにして明文化をしなかった」などの趣旨の答弁がなされておるのであります。
さらに委員会は、本法律案の重要性にかんがみ、これが取扱いに慎重を期するため、知事及び開設者、卸売人、仲買人、小売人、生産者等、各界関係者の代表並びに学識経験者十三名の参考人について、青果物及び水産物の両方面から、それぞれの意見が聴取されたのでありますが、これが内容につきましても、委員会の会議録によってごらん願いたいと存じます。
かくして質疑を終り、討論に入りましたところ、森委員から政府原案に対し、「中央卸売市場における卸売人の合併及び営業の譲り受けについて、独占禁止法の適用を除外し、また卸売人の許可に関して、農林大臣と市場開設者との間に完全な意思の疎通がはかられるために必要な趣旨の修正を加え、また、政府はこの法律の運用に当って、中央卸売市場の設備及び施設の完備に対し、財政的かつ資金的に万全の助成措置を講ずる。卸売人の許可に際しては、農林大臣は市場開設者と完全なる意思の疎通をはかる。生産者並びにその団体については、債権の確保と卸売業務への参加等、その機能を育成する。類似市場の取扱いについては、それを公認するものではなく、中央卸売市場の育成強化と関連して遺憾なきを期すべきである」等の趣旨の付帯決議を付して賛成したいとの意見が開陳され、次いで青山委員から、「今回の一部改正ではなお不十分であり、さらに検討して、できるだけ早い機会に全面的に改正すべきであるとの希望を付して、原案及び修正部分並びに付帯決議に賛成する」旨の発言があり、他に発言もなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって、政府原案に対して、森委員の提案にかかる修正を加え、同じく森委員の提案にかかる付帯決議を付して可決すべきものと決定いたしました。
なお、付帯決議に対し、農林政務次官から、「決議を尊重し、善処する」旨の発言がありましたことを申し添え、右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/22
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023・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X03419560411/23
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024・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって委員会修正通り議決せられました。
本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午前十一時二十八分散会
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○本日の会議に付した案件
一、新議員の紹介
一、参議院事務局職員定員規程の一部改正に関する件
一、曾祢益君の緊急質問に対する外務大臣の答弁
一、日程第一 オランダ国民のある種の私的請求権に関する問題の解決に関する日本国政府とオランダ王国政府との間の議定書の締結について承認を求めるの件
一、日程第二 すべての種類の鉱山の坑内作業における女子の使用に関する条約(第四十五号)の批准について承認を求めるの件
一、日程第三 有料職業紹介所に関する条約(千九百四十九年の改正条約)(第九十六号)の批准について承認を求めるの件
一、日程第四 関税法等の一部を改正する法律案
一、日程第五 物品管理法案
一、日程第六 中央卸売市場法の一部を改正する法律案
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