1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年四月二十五日(水曜日)
午前十一時三十分開議
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議事日程 第四十号
昭和三十一年四月二十五日
午前十時開議
第一 租税特別措置法の一部を改正
する法律案(小林政夫君外五名発
議) (委員長報告)
第二 公共企業体職員等共済組合法
案(田中啓一君外二十九名発議)
(委員長報告)
第三 国家公務員等の旅費に関する
法律の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
(委員長報告)
第四 海岸法案(内閣提出、衆議院
送付) (委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/0
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001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/1
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002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、租税特別措置法の一部を改正する法律案(小林政夫君外五名発議)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長岡時眞一君。
〔岡崎真一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/2
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003・岡崎真一
○岡崎真一君 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、小林政夫君ほか五名の発議にかかるものであります。現在、わが国の主要輸出品である絹または人絹のスカーフ類の捺染加工については、業者の大部分が輸出商社より直接に注文を受けず、いわゆる売り込み業者を通じて注文を受けるという特殊の業態であります関係上、これらの捺染加工が生産工程の重要な部分を占めておりますにもかかわりませず、ほとんどの業者が輸出所得の特別控除制度の恩典を受けられない実情であります。本制度制定の本旨に徴しましても不合理と申さねばなりません。従って今回、青色申告提出者で、絹または人絹のスカーフ、マフラー、ハンカチーフ類の捺染加工による所得にも特別控除の適用を受け得ることとし、本制度の合理化をはかろうとするものであります。
なお、本法の施行については、売り込み業者と捺染加工業者との間で特別控除額を按分するのでありまするから、税収には何らの影響はございません。
本案の審議の詳細につきましては、会議録によって御承知を願いたいと存じます。質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
右、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/3
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004・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/4
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005・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/5
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006・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第二、公共企業体職員等共済組合法案(田中啓一君外二十九名発議)
日程第三、国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/6
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007・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長青木一男君。
〔青木一男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/7
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008・青木一男
○青木一男君 ただいま議題となりました公共企業体職員等共済組合法案ほか一件につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、公共企業体職員等共済組合法案について申し上げます。本法律案は、去る四月十三日、本院議員田中啓一君ほか二十九名より発議された法案でございます。
まず、その提案理由について申し上げます。提案者が、この法案の提案の理由として説明するところによりますと、日本専売公社、日本国有鉄道及び日本電信電話公社が、公共企業体へ移行した際、職員のうちに恩給法の規定が準用されるものと、国家公務員共済組合法の規定が準用されるものとが生じましたが、一方、恩給制度と共済組合の年金制度とを比較いたしますと、支給条件、支給額等の給付内容が両者ほぼ同程度であるにかかわらず、恩給法に基く国庫納付金は、共済組合の長期給付の掛金に比べ著しく低いために、実質的には給与上の差別待遇となっており、職員間に不満を生ぜしめる原因となっておりまして、労務管理の上から考えましても、早急にこのような不均衡と不統一とを是正して、一本化した退職年金制度を確立する必要があり、また公共企業体におきましては、その職務内容も一般公務員とは異なり、現業的労務を主体としておりますりで、永年勤続者の退職後の生活を十分保障できるような公共企業体にふさわしい退職年金制度の確立は、健全なる企業経営の面からも早急に必要となってくるのであります。
次に、公共企業体の職員の共済組合制度につきましては、根本的には社会保障制度全般の問題も考慮しなければならず、また国家公務員の年金制度の問題とり関連も考慮する必要がありますが、これらの問題の根本的解決のためには、きわめて広範な調査研究と相当な時日を必要とし、今直ちに結論を見出しがたい状況にありまして、公共企業体の職員の退職年金制度を、これらの根本的解決の日まで現状のまま放置しておくことは許されないので、現段階における諸般の事情を十分に考慮しつつ、恩給制度と共済組合の年金制度とを統合して、職員間の不均衡と不統一とを是正する新しい退職年金制度の急速な実現をはかるため、第二十二回国会に同名の法案を提案いたしましたが、諸種の事情によりましてこれを撤回し、あらためて今ここに本法案を提案した次第であります。
以上が、本法案の提案の理由でありますが、以下、この法案の内容の大略を申し述べますと、第一に、本法案によれば、各公共企業体ごとにそれぞれ共済組合を設け、長期給付、短期給付及びその他の福祉事業を行うことといたしており、第二に、恩給と共済組合の長期給付とを統合して、一本化した退職年金制度を全職員に適用することといたしておりまして、退職年金は原則として二十年以上組合員であった者が退職したときに支給することとし、その年額は、俸給年額の百分の四十を基礎として、二十年をごえる年数により一定の金額を加算することといたしております。なお、遺族年金、一時金及び廃疾年金については、それぞれ所要の規定を設けております。第三に、短期給付については、国家公務員共済組合法のそれと全く同様であります。第四に、長期給付に要する費用は、組合員の在職中の掛金とこれに見合う公社負担金とを基金として積み立て、その積立金と運用益によってまかなうこととされておりますが、掛金と負担金との割合は、国家公務員共済組合法の負担割合と同じく、四十五対五十五とされておりまして、掛金率は国家公務員共済組合法とほぼ同程度でありますが、恩給法の二倍以上となっております。第五に、この法律による共済組合の業務執行につきましては、専売共済組合については大蔵大臣、国鉄共済組合については運輸大臣、日本電信電話公社共済組合については郵政大臣が、それぞれ監督することとなっております。第六に、以上申し述べました点以外の共済組合の組織、運営、福祉事業等は、国家公務員共済組合法による共済組合と大体同様であります。
以上、本則の主要点について申し上げましたが、以下、経過措置について申し上げますと、第一に、年金制度の経過措置においては、過去の職員であった期間は原則としてすべて通算することとされており、第二に、引き続き新制度のもとにおける組合員として期間を通算される者については、この法律が施行される日の前日に恩給法上の退職をしたものとみなし、同日以前の期間にかかる恩給は消滅させることとし、また従前の国家公務員共済組合法による年金は、在職中その支給を停止することとされております。第三に、旧軍人、軍属であった期間は、新年金の組合員期間には通算しないこととし、従来通り恩給法の定めるところにより支給することとされており、第四に、以上の期間通算だけでは既得権を侵害するおそれのあるものについては、年金受給資格について、それぞれ特例を設けることとし、さらに、この法律の施行の際在職する職員であって、同法の施行の日前において恩給証書または年金証書を交付されているものについては、従来通りの年金を選択できることとされております。第五に、組合員期間二十年以上の者の退職年金の年額の算定につきましては、当分の間、いわゆる不健康業務加算を認めることとされており、また未帰還職員については、従来の恩給法の給与と同様の給付を行うこととされております。最後に、この法律の施行の日に在職する公共企業体の職員及び国家公務員とが相互に交流できるように、この法律による給付と、恩給または国家公務員共済組合法による長期給付との調整を講ずることとされております。
内閣委員会におきましては、二回にわたり委員会を開き、本法案の審議に当りましたが、その審議において、一般公務員の恩給制度と本法案による年金制度との相違の点、公社の負担額及び組合員の掛金額、その他長期収支計画の見通しの点、三公社における福祉事業の現状の点、責任準備金の積立不足額についての補てんの見通しの点等について質疑応答がなされましたが、その詳細は委員会会議録に譲ることといたします。なお、本法案に対する大蔵省当局の所見を求めましたところ、「本法案には反対でない」旨、大蔵省政府委員より答弁がありました。
去る二十日の委員会におきまして、質疑を終り、討論に入りましたところ、島村委員より、「第一に、本制度の運用に当っては、資金上、予算上、将来に禍根を残さないようにするとともに、新制度による負担が三公社の経営の上に悪い影響を及ぼすことのないよう十分な措置を講ずること、第二に、本法案の経過規定中、恩給の既得権の一部について選択権に不明瞭な点があるので、この点について適当な措置を講ずるよう検討を加えられたきこと、第三に、共済組合の福祉事業である消費物資の取り扱いについては、中小企業の実態に十分留意し、これらに圧迫を加えることのないよう万全の注意を払われたきこと、以上、三点の希望を付して本案に賛成する」旨の発言がありました。次いで、本法案について採択いたしましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと議決せられました。
以上、御報告申し上げます。
次に、国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
本法律案は、国家公務員が内国旅行及び外国旅行を行う場合、その運賃、日当及び宿泊料等の旅費額を実費弁償の建前に即して、実情に沿うよう改訂するため、現行法に所要の改正を加えんとするものでありまして、改正の要点を申し上げますと、まず、内国旅費につきましては、第一に、鉄道賃及び船賃の紋別支給区分が、現行法では、内閣総理大臣等及び十一級以上の職務にある者には一等の、十級以下四級以上の職務にある者には二等の、三級以下の職務にある者には三等の運賃をそれぞれ支給することになっておりますのを、内閣総理大臣等及び七級以上の職務にある者には二等の、六級以下の職務にある者には三等の運賃を支給することに改め、ただ、内閣総理大臣等及び十四級以上の職務にある者が一等車または一等船室を利用する場合には、一等の運賃を支給することといたしております。第二に、内閣総理大臣等及び十一級以上の職務にある者に対しましては、片道三百キロメートル以上の旅行をする場合には、新たに特別二等車料金を支給することとし、第三に、特別急行料金を支給できる旅行を、現行法では片道五百キロメートル以上のものとしておりますのを、片道三百キロメートル以上のものに改め、第四に、日当、宿泊料及び食卓料の定額をそれぞれ現行定額の二割増の額に改めております。
次に、外国旅行につきましては、第一に、鉄道賃及び船賃につき、内国旅費の場合に準じて、それぞれの級別支給区分を改めることとし、第二に、航空賃につき現行法では現に支払った運賃によることになっておりますのを、運賃の等級を二以上の階級に区分する航空路による旅行の場合には、原則として、内閣総理大臣等及び十三級以上の職務にある者に対しては最上級の運賃を、十二級以下の職務にある者に対しては最上級の直近下位の級の運賃を支給することに改め、第三に、移転料の定額につき別表を補正し、鉄道二千キロメートル以上を四段階に区分して、新たにそれぞれの定額を定めることにいたしておりまして、このほか、その他の規定につきましても現行法に若干整備をいたしております。なお、本法律案は、過般衆議院におきまして、附則の一部に修正が加えられて本院に送付されたものでありますことを申し添えておきます。
内閣委員会は、前後五回委員会を開き、山手大蔵政務次官その他政府委員の出席を求めまして本法律案の審議に当りましたが、その質疑応答によって明らかになった点を申し上げますと、その第一は、内国旅行の場合の六級ないし四級職の職員の運賃の改正に関する点でありまして、これらの職員が内国旅行を行う場合におきましては、現行法によれば二等運賃を支給されることになっておるのを、今回の改正によりますと三等運賃に切り下げられることになりますが、この点に関する政府の提案理由の説明におきましては、国家公務員等が内国旅行を行う場合、従来法律の規定に定められた等級より下位の等級によって旅行を行うことが多い云々と述べ、それをこの改正の一つの理由にいたしておりましたが、委員会における質疑応答によりまして、大蔵省政府委員より、「この表現は誤解を招くおそれがあり、妥当を欠くきらいがあるので、これを取り消し、この点についての改正の理由は、一般民間における旅費支給の現状をも考慮し、実情に即した実費弁償の方針に従ったものである」旨の言明がありました。なお、この点に関しまして、今回の改正措置によって、日当及び宿泊料の増額を運賃の等級切り下げによって補うがために、六級ないし四級の職員に対してしわ寄せされる結果となり、これがため、これら下級職員に不満を生ぜしめる原因となって、かえって他に悪影響を及ぼすおそれがあるのではないかとの点が政府に対しただされました。
次に、今回の改正に伴う旅費予算の点でありますが、昭和三十一年度予算においては、本改正案を前提とした予算は組まれてはいないが、予算上、一般会計において運賃の減額による分が四割五分減、すなわち約十一億円、日当、宿泊料の増額による分が三割増、すなわち約十億円であり、結局この増減がほぼ同額程度であり、政府は既定予算の範囲内においてまかなう方針であること、また日額旅費についても、政府は今回の改正の趣旨に沿って検討し、実情に沿うよう改正する方針であること等の諸点が質疑応答によって明らかにされました。なお、このほか地方出先機関の旅費配分の実情、従来の国家公務員の出張の慣行、車賃、日当、宿泊料等の級別区分の問題等につきましても質疑応答が行われましたが、その詳細は委員会の会議録に譲ることといたします。
昨日の委員会におきましては、質疑を終了し、討論に入りましたところ、千葉委員より、「内国旅費における鉄道賃及び船賃については、六級ないし四級の職員の等級の切り下げを行わず、現行通りとする」旨の修正案が提案せられまして、「この修正部分を除く原案については、若干の不満の点はあるが、賛成である」旨、なお、この修正部分についての原案に対しては、次のような理由で反対であること、すなわち第一に、「旅費改正についての政府の提案理由は、定められた等級より下位の等級によって旅行していることが多いということであったが、政府は審議の過程において、この理由を取り消した以上、本案改正の根拠はなくなったものと思われるのに、法案撤回の措置がとられなかったのはまことに遺憾である」旨、第二に、「今回の日当、宿泊料、車賃の改正は、物価の変動、消費水準の上昇等の実情に合うように別途予算を計上して行うべきであるのに、運賃の等級を切り下げることによってその財源を捻出したことは、いたずらに下級公務員にしわ寄せすることになり、了承できない」旨、第三に、「特に下級公務員の運賃について、この改正により四億円の節減を行わんとした事実は、無情な仕打ちであり、また、六級と七級との間に差別をつけた根拠についても承服できる理由が述べられなかったのは遺憾である」旨、第四に、「政府は日額旅費についても若干の引き上げを考慮すると答弁しながら、その予算措置は何ら行われていない。従来、予算を伴う議員立法に対する大蔵省の態度から見て、その措置は了承できない」旨の発言がなされました。次いで島村委員より緑風会を代表して、第一に、「車賃、日当、宿泊料等の区分が細分に過ぎて実情に沿わないし、また、宿泊料の甲地、乙地の区分も妥当でないので、この点について適当な措置を講ぜられたい」、第二に、「日額旅費についても政府は改正の意図のあることが明らかになったが、すみやかに相当増額して、出先機関の第一線の職員の活動に遺憾なきを期せられたい」、第三に、「出先機関に対する旅費予算の配分についても十分なる調査を行い、出先機関職員の活動に遺憾なきよう万全の措置を講ぜられたい」旨の三つの希望を付して、衆議院送付の原案に賛成するとの発言があり、最後に、野本委員より自由民主党を代表して、「今後、本案実施の結果が実情に即するものであったかどうかを詳細に検討して善処されたいこと。公務員の宿泊所、保養所等について内容の整備改善をはかり、福祉施設の目的を果すよう善処されたい」との希望を付して、「衆議院送付の原案に賛成する」旨の発言がありました。
かくて討論を終り、まず、千葉委員提出の修正案について採決いたしましたところ、賛成者少数をもって否決せられ、次いで衆議院送付の原案について採決いたしましたところ、多数をもって原案通り可決すべきものと議決せられました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/8
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009・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。千葉信君。
〔千葉信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/9
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010・千葉信
○千葉信君 私は、ただいま上程されました国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案に対し、日本社会党を代表して反対いたします。
反対の第一の理由は、提案の理由、すなわち改正の理由についてでございます。政府は、今回改正を必要とするに至った理由といたしまして、公務員が法律できめられて支給された旅費よりも下位の等級によって旅行しておることが多いからというのであります。しかしながら、その等級引き下げの根拠となった改正の唯一の理由に対し、その実証と実況に関する資料の提出を求められるに至って、ついに何らの資料も根拠もないというのでありますから、まことに不謹慎しごくであり、しかもその理由自体が、旅費運賃を着服しておるという誹謗を含む点において、公務員全体に対する侮辱であると言わなくてはなりません。大蔵政務次官が、ついに委員会の追及に屈して、この改正の理由につき陳謝と取り消しを表明されました以上、当然この法律案は撤回されてしかるべきものと言わなくてはなりません。
反対の第二の理由は、この法律案は、三十一年度予算提出後において企てられたもりでありまして、予算案との食い違いについては、本年度内に限り出張旅行等につき規正を加えることを閣議に求め、無理やり予算のつじつまを合わせようとしたものであります。つまりこのやり方は、予算編成当初の各省の出張計画に対し不当な規正をしいる結果となったか、もしそうでないとするならば、各省従来の出張発令は、不必要なものに対してまで放漫に行われていたかの証拠となるか、そのいずれかであると言わなくてはなりません。さらにまた、予算そのものとの食い違いが議員提出法律案にある場合には、寸毫の仮借もなき態度をとってきた政府みずからが、かかる法案を提出して省みない態度は、まさに思い上りもはなはだしいと言わなければなりません。
反対の第三の理由は、その実質的な内容であります。すなわち一般会計のみについて見ましても、普通旅費六十億中、運賃二十五億から、等級の切り下げを行うことによって十一億一千万円を節約し、これを日当、宿泊料等三割の増額に充当しておくことであります。現行日当、宿泊料等が改訂されました昭和二十七年以来、国民の消費水準が今日まで三〇%増大しております。経済指標等から言いましても、この増額は必要不可欠な限度内のものであり、その財源について適正な措置がとらるべきであったにかかわらず、今回その財源を運賃の切り下げでまかなおうとしたことは、最も安易でかつ独善的で、しかも反証もなければ、調査も行わずに、下位の等級に乗って公務員が旅費を着服しておるなどと、誹謗をあえて行う態度に出で、今回の改正の根拠とするがごときは、厳に責められてしかるべきものであると思うのであります。しかも運賃は下ったが、日当、宿泊料は上ったという条件が、全体に均霑しておるならばとにかく、四、五、六級というみじめな状態にある下級職員に対しては、二等が三等に切り下げられただけという犠牲がしいられておるという結果になっておることは、あくまでも了承しがたいものがあるのであります。
わが党は、他にも数々の不満を有しながらも、自民、緑風両派の賛同を期待し、次善の策として、せめて四、五、六級の職員応対する二等復元の修正案を提起したのでありますが、ついに両派の反対という、血も涙もない態度のために成立を見なかったことは、まことに遺憾な次第であったことを申し上げて、私の反対討論を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/10
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011・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は、終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。
これより両案の採決をいたします。
まず、公共企業体職員等共済組合法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/11
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012・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/12
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013・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 次に、国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/13
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014・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/14
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015・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第四、海岸法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。建設委員長赤木正雄君。
〔赤木正雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/15
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016・赤木正雄
○赤木正雄君 ただいま議題となりました海岸法案につきまして、委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
わが国の海岸線の延長は二万五千キロ余りにわたるのでありますが、管理の責任が明らかでなく、これに十分な措置がとられておりませんため、連年高潮、波浪、侵食、地盤の変動等により災害をこうむっている状態であります。本法案は、かかる事態に対処して、海岸の管理の責任を明らかにするとともに、海岸保全施設の整備、海岸の保全に支障のある行為の制限等について規定し、海岸を防護し、国土の保全に資せんとするものであります。
本法案は、五章四十三条から成っておりまして、その第一章は総則であります。すなわち、本章において、まず海岸保全施設、海岸管理者の定義について規定しております。海岸管理者は、海岸保全区域の管理の責任を持つ都道府県知事、市町村長、港湾管理者の長及び漁港管理者である地方公共団体の長といたしております。次に、海岸保全区域の指定についてでありますが、本法は全国すべての海岸に適用されるものでなく、国土保全上、防護を必要とする海岸保全区域について適用されるのでありまして、その指定は都道府県知事が行うことになっております。ただし、港湾区域及び漁港区域等の海岸に指定する場合には、それらの区域について、それぞれ権限を有する者と協議することにいたしております。
第二章は、海岸保全区域の管理についての規定であります。まず、海岸保全区域の管理は、原則として当該海岸保全区域の存する地域を統括する都道府県知事が行うのでありますが、この規定によらず、市町村長、港湾管理者の長、地方公共団体の長をして管理を行わしめる場合もあります。次に、河川法、道路法等におけると同様、保全施設が大規模あるいは高度の技術、機械力等を必要とする工事については、国がみずから工事を行うことができることになっております。また、保全区域における行為の制限につきましては、土砂の採取、土地の掘さく等、海岸の保全に支障のある行為に対し、海岸管理者の許可を要することといたしております。また、海岸管理者以外の者の行う工事については、その設計及び実施計画について、あらかじめ海岸管理者の承認を受けなければならないこととなっております。なお、海岸保全施設の築造の基準の条項では、地形、地質、地盤の変動、侵食の状態等を考慮して、自重、水圧、波力、土圧並びに地震等による振動及び衝撃に対して安全なる構造を要求しております。次に、海岸管理者が海岸保全施設を新設し、または改良を行う場合、これに伴う損失を受けた者に対しましては、損失補償をしなければならない旨を規定し、同様に保全区域内の水画に設定せられている漁業権が制限された場合にも、これによって生じた損失の補償をするよう規定しております。また、都道府県知事は、関係海岸管理者と協議の上、海岸保全施設に関する整備基本計画を作成し、主務大臣に提出することになっております。
第三章は、費用に関する規定であります。すなわち、海岸保全区域の管理に要する費用については、河川法におけると同じく、原則として海岸管理者の属する地方公共団体の負担といたしております。主務大臣が行う直轄工事に要する費用については、国がその二分の一を負担するとともに、地方公共団体の負担すべき額のらち、一部を受益する他の都道府県に分担させることができることにいたしております。次に、海岸管理者が行う保全施設の新設または改良に要する費用については、国がその一部を負担することにし、その対象となる工事及び負担割合については、政令をもって規定することにいたしております。保全施設の工事または維持を行うために要する費用を都道府県が負担する場合においては、当該都道府県は、その工事または維持により受益する市町村から分担金を徴収し得る道を講じております。その他兼用工作物に関する費用、原因者負担金、付帯工事に要する費用等を規定しております。
第四章は、雑則でありますが、本章において主務大臣等を規定しております。すなわち港湾区域等にかかる海岸保全区域は運輸大臣、漁港区域にかかるものは農林大臣といたしております。また、土地改良事業に関するものは原則として農林大臣、その他の農地保全に関するものは農林、建設両大臣の共管とし、以上のほかはすべて建設大臣といたしております。また、その所管が重複するものにつきましては、関係大臣の協議により、その所管を定めることができることといたしております。
第五章は、必要な罰則を規定いたしております。
本法案は、三月二十七日、本委員会に付託され、建設、農林、運輸各省の当事者に対し質疑を行なってきたのであります。そのおもなる点は、海岸保全区域の指定の基準、国の直轄工事に要する費用の負担、築造基準の細部規定、関係各省間における事務の調整、漁業権補償等に関するものであります。
本法案は、四月二十四日、質疑を終り、討論に入りましたところ、田中委員から、日本社会党を代表して、「本法の実施に当っては、各省が熱意をもって円滑に行うよう要望して賛成する」、次に、石井委員から、自由民主党を代表して、「本案に賛成するものであるが、保全施設の築造基準については、建設、農林、運輸三省り間に統一したものを作成するよう要望する」との発言がありました。
討論を終り、採決の結果、全会一致をもって原案通り可決すべきものと法定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/16
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017・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/17
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018・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後零時十一分散会
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一 租税特別措置法の一部を改正する法律案
一、日程第二 公共企業体職員等共済組合法案
一、日程第三 国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案
一、日程第四 海岸法案
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X04019560425/18
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