1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年五月二十八日(月曜日)
午後五時十四分開議
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議事日程 第五十四号
昭和三十一年五月二十八日
午前十時開議
第一 防衛目的のためにする特許権
及び技術上の知識の交流を容易に
するための日本国政府とアメリカ
合衆国政府との間の協定及び議定
書の締結について承認を求めるの
件(衆議院送付)
(委員長報告)
第二 国会議員の歳費、旅費及び手
当等に関する法律の一部を改正す
る法律案(議院運営委員長提出)
第三 労働保険審査官及び労働保険
審査会法案(内閣提出、衆議院送
付) (委員長報告)
第四 繊維工業設備臨時措置法案
(内閣提出、衆議院送付)
(委員長報告)
第五 宮内庁法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/0
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001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/1
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002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
この際、お諮りいたします。長谷山行毅君、羽仁五郎君から裁判官弾劾裁判所裁判員を、長島銀藏君、平林太一君、須藤五郎君から同予備員を、それぞれ辞任いたしたい旨の申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/2
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003・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よっていずれも許可することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/3
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004・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) つきましては、この際、日程に追加して、裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/4
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005・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/5
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006・寺本廣作
○寺本広作君 ただいまの選挙は、その手続を省略して、議長において指名することとし、なお予備員の職務を行う順序は、議長に一任することの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/6
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007・天田勝正
○天田勝正君 私は、ただいまの寺本君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/7
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008・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 寺本君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/8
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009・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員に宮田重文君、鈴木一君、同予備員に青山正一君、榊原亨君、長谷部ひろ君を指名いたします。
なお、予備員の職務を行う順序は、青山正一君を第一順位、榊原亨君を第二順位、長谷部ひろ君を第四順位といたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/9
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010・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、旧軍港市国有財産処理審議会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/10
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011・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
内閣総理大臣から、旧軍港市転換法第六条第四項の規定により、荒井誠一郎君、田中治彦君、千金良宗三郎君、中村建城君、渡辺武次郎君を旧軍港市国有財産処理審議会委員に任命することについて本院の同意を得たい旨の申し出がございました。本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/11
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012・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/12
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013・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第一、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。外務委員長梶原茂嘉君。
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〔梶原茂嘉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/13
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014・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 ただいま議題となりました防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書の締結について承認を求めるの件につき、外務委員会におきまする審議の経過の大要並びに結果を報告いたします。
本件協定締結の経緯と趣旨は次の通りであります。日米両国政府は、昭和二十九年三月八日に署名されました相互防衛援助協定第四条におきまして、「両国政府は、いずれか一方の政府の要請があったときは、防衛のための工業所有権及び技術上の知識の交換の方法及び条件を規定する適当な取りきめであって、その交換を促進するとともに、私人の利益を保護し及び秘密の保持をはかるものを作成するものとする」という旨を合意いたしておるのであります。この規定に基きまして、両国政府間に交渉が行われました結果、本件協定及び議定書が本年三月東京において署名せられたのであります。
この協定及び議定書は、前に申し述べました相互防衛援助協定第四条の規定に明らかな通り、日米両国政府及びその国民の間におきまする特許権及び技術上の知識の防衛目的のためにする交流を容易にし、かつ促進するとともに、その間にあって、関係私人の利益の保護及び秘密の保持を確保することを目的としておるのであります。従って、この協定の締結によりまして、日米両国間に防衛上の近代的技術の交流関係が整備せられることになり、わが国にとりましては、米国の防衛用装備、資材の製法、用法等の導入、その結果として、わが防衛力の強化と防衛産業の育成を期待することができるという趣旨であります。
委員会の質疑におきまして、この協定及び議定書は、日米いずれの政府の要請によって締結されたかという点、この協定の実体ないしわが国にもたらしまする利益はどういうものであるか、この協定によって、わが国は具体的にさしあたりいかなる技術、知識の導入を期待しているかという点、本協定に伴う国内法改正の要否、現在及び将来のわが国防衛産業に対する政府の基本的な考え方、その他技術上の知識に対しまするわが国の国内法規の関係、協定第四条の補償の性質及び支払いの責任者並びに予算関係等の諸点について質疑があったのでありますが、詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。
委員会は、五月二十五日質疑を了し、討論に入りましたるところ、羽生委員は社会党を代表して、「現行のわが国憲法は戦力の保持を認めていない、しかるに、この協定は防衛産業育成のための特許権及び技術の交流を目的としているものであるから、戦力保持を否定する社会党としては本件協定には反対である」との意見を述べ、反対されました。
次いで採決を行いましたところ、本件は多数をもって承認すべきものと議決いたした次第であります。
以上、報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/14
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015・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本件の採決をいたします。
本件を問題に供します。委員長報告の通り本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/15
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016・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本件は承認することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/16
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017・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第二、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)を議題といたします。
まず、提出者の趣旨説明を求めます。議院運営委員長石原幹市郎君。
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〔石原幹市郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/17
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018・石原幹市郎
○石原幹市郎君 ただいま議題となりました国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由並びに案の内容を御説明いたします。
現行法の規定によれば、毎年六月十五日及び十二月十五日に在職する議長、副議長及び議員の秘書は、期末手当及び勤勉手当を受けることになっておりまするが、先般の法律改正によりまして、六月一日から六月十四日までの間、または十二月一日から十四日までの間に衆議院が解散されたときは、その解散の日に在職する衆議院の議長、副議長及び議員の秘書は、六月十五日または十二月十五日にそれぞれ在職したものとみなして、右の手当を受けることになったのであります。これは申すまでもなく、これらの手当の支給期日の直前に秘書がその身分を失う場合は、きわめて短期間の差で手当を受けることができず、所定の期日に在職する者との間に不均衡を生ずることを避けるための措置であります。
参議院議員の半数の任期は、来たる六月三日をもって満了するわけでありまするが、この場合にも、右に申し述べましたような衆議院解散の場合と同様の事態を生ずるのであります。議院運営委員会は、かかる事情を勘案し、さきの法律改正と同様の趣旨に基き、この際現行法第十一条の四の規定に、議員の任期が満限に達した場合を加えるため、全会一致をもって本法律案を提出することを決定したのであります。
なお、本法施行に伴う手当の財源は、本年度予算に計上されておりまするので、新たな予算措置は必要としないのであります。
以上が国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由並びに案の内容でありまするが、何とぞ慎重御審議の上、御賛成あらんことをお願い申し上げる次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/18
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019・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/19
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020・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/20
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021・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第三、労働保険審査官及び労働保険審査会法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長重盛壽治君。
〔重盛壽治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/21
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022・重盛壽治
○重盛壽治君 ただいま議題となりました労働保険審査官及び労働保険審査会法案の社会労働委員会にお分る審査の経過並びに結果を御報告いたします。
現在労働省所管の保険は、労働者災害補償保険法及び失業保険法に基く制度があり、さらに、けい肺及び外傷性脊髄障害に関する特別保護法に基く給付も、労災保険とあわせ運用されておりますが、これらの保険制度における保険給付等の決定に異議のある場合の審査機構は、労災保険、失業保険にそれぞれ別個に設けられ、労災保険は、第一審として保険審査官が、第二審として労働者災害補償審査会が、都道府県労働基準局ごとに設置され、また失業保険は、第一審として失業保険審査官が、第二審として失業保険審査会が労働省に設置されております。本法案は、これらの審査制度を統合して、労働省に労働保険審査会を常置し、審査の統一ある運用をはからんとするものであります。
次に、法案の概要を申し上げますと、まず、労災保険の審査制度については、第一審である審査官の段階は、ほぼ現行制度を取り入れておりますが、従来各都道府県労働基準局ごとに設けられていた労使、公益の三者構成の審査会を廃止して、審査官が審査を行うに当り、労使の代表が当該事案につき意見を述べることができる制度を採用いたしております。失業保険の審査制度についても、同じく各都道府県に右の制度を設けております。
なお、労働基準法上の災害補償に関する災害補償の審査制度については、従来最終的には、各都道府県に設けられておる労災補償審査会において決定されておりましたが、今回は地方における審査会の廃止に伴い、労働保険審査官に決定せしめることとし、これに労使の代表の意見を述べる機会を与える制度を採用しております。第二審につきましては、労働省に労働保険審査会を設け、労働保険審査官の審査の決定に不服のある者は、この労働保険審査会に再審査の請求ができることとし、これの組織については、従来の労使、公益の二者構成の組織を改め、内閣総理大臣が国会の同意を得て任命する特別職の委員三名をもって構成し、各保険及びけい肺特別保護制度ごとに、労使の代表者が再審査に当って意見を述べ、または意見書を提出することができることを認めております。以上の審査官の審査、審査会の再審査を経ても、なお不服のある者は裁判所に訴訟の提起をすることができることについては、現行制度と同様であります。次に、審査の手続については、現行制度をそのまま採用し、現行法及び現在政令で定められておる事項を法律で規定することにより、その整備充実をはかっております。その他、労働保険審査官の職権及び審査会委員の職権、身分の保障等は、おおむね社会保険審査会の例にならうとともに、本法の制定に関連して、労働省設置法、労働者災害補償保険法、失業保険法、けい肺及び外傷性脊髄障害に関する特別保護法、労働基準法及び特別職の職員の給与に関する法律に所要の改正を行わんとしております。
社会労働委員会におきましては、慎重審議を重ねましたが、問題となりましたおもなる点は、主として労災保険関係でありまして、三者構成の現行制度を廃止して、中央に学識経験者のみよりなる審議会を設けんとする点、審査会の審査能力に関する点、審査会委員の任命に関する点及び関係労使の代表者の審査官及び審査会の審査への参加に関する点等でありました。その概略を申し上げますと、「現在各都道府県に設置されている三者構成の審査会制度を廃止し、中央に学識経験者のみよりなる審査会を設けて、労使の代表を単に意見を述べることができる程度に制限することは、労働者を次第に締め出す官僚独善であり、適正な解決を困難ならしめるものではないか」との質疑に対しては、「現行制度では統一ある運用を確保することが困難であり、審査会は本来準司法的機能を有するものであるから、社会保険審査会の例にならい、学識経験者のみで構成されている機関が審査決定する方が妥当である」旨、なお、「審査の公平を期するため関係労使の意見は参考にできるよう、審査への参加を認めている。また、労働者を締め出さんとするような意図は毛頭ない」旨の答弁があり、次に、「本法案では、審査会は三人の委員で果して二百件を超える再審査の請求に対して、迅速、適切に審査が可能であるか」という質問に対しては、「将来、審査会への再審査の数は、審査官の審査の過程において労使の参加もあるので相当少くなるものと予想されるが、なお、審査会の委員を常任とすることに合わせて、事務局の強化により十分なる審査が可能である」旨の答弁があり、次に、「審査会の委員の任命については、政府はあらかじめ労使の意見を十分聞き、もし労使から推薦する者のある場合には当然人選の参考にする」旨、また、「関係労使の代表者が審査官及び審査会の審査への参加に関しても、政令等にこれを定め、その意見を十分尊重し、事実上三者構成の審査会におけると同様な運営をはかる」旨答弁がありました。
かくして五月二十五日質疑を終了し、討論に入りましたところ、緑風会を代表して田村委員より、「本案は現行制度より合理化されておるので、次の付帯決議を付して賛成する。すなわち、
関係労働者及び関係事業主を代表
する者の審査官及び審査会における
審査への参加に関しては、その意見
を十分尊重し、事実上従来の二者構
成の審査会における審査と同様な効
果を得るよう運営を図り、労働者の
保護に万全を期することを要望す
る。
なお将来研究の上、さらに修正の必要な場合は、これの修正も考え、法の運用に関しても円滑に行われるよう、政令その他に細心の注意を払うことを期待する」旨、社会党を代表して山本委員より、「本案は、従来の三者構成の妙味ある審査会制度を廃止して、中央に学識経験者のみよりなる委員で構成する審査会を設けて、政府の機構の中に織り込まんとすることは官僚独善であり、労働者を締め出さんとするものである。この傾向は、先般の公労法の改正の際にも明らかであり、将来、労働委員会の公益委員の任命についても当然起ってくるものと予想される。政府は政令その他で、運用面で従来の三者構成の審査会と同様な労使の参加を認めると言っているが、参加の範囲も明確でなく、将来に何も保障はないので本案に反対する」旨、自由民主党を代表して高野委員より、「本法案は、労働保険審査の統一ある運用を確保したものであり、審査会は準司法的ないし判定的機能を有するものであるから、公益的立場にある学識経験者のみよりなる機関の審査が妥当であり、なお、労使の参加は、法の運用面で従来と同様な効果をあげ得るとの政府の説明もあるので賛成する。なお、田村委員の付帯決議案にも適当であるから賛成する」旨、無所属クラブの須藤委員より、「今回の改正は、審査機構の官僚統制であり、これは労働者の利益にならないから反対する。従って田村委員の付帯決議案にも反対する」旨の意見が述べられました。
以上、討論を終り、採決に入りましたところ、多数をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。
次いで田村委員提案の決議案も、多数をもって可決いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/22
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023・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 本案に対し討論の通告がございます。発言を許します。山本經勝君。
〔山本經勝君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/23
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024・山本經勝
○山本經勝君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になりました労働保険審査官及び労働保険審査会法案に対しまして、反対の討論をいたすわけでございます。
この法案は、労働審査官、労働保険審査会、こういった法案が新しく独立の立法として出されたわけでございます。従来あった労働者災害保険補償審査会及び失業保険審査会、労働者災害補償審査会、この労働者と使用者と公益、つまり学識経験者からなる三者構成の協議決定機関を廃止いたしまして、新たに労働省に三人の委員からなる審査会を設置して、労働者の業務上の負傷、疾病、死亡、これらの認定、療養の方法、補償金額の決定、補償の実施等につき、関係者の不服の申し立ての審査をして参るわけでございます。そうしてまた仲裁等を行うのでございます。従来同一の事案に関しまして、地方によってその取扱いが異なったり、あるいは法規の解釈、適用上的確にするために、こういうことが必要だと政府は述べているのでございます。ところが、この立法の目的というのは、言うまでもなく、現行の三者構成の実態に即する事案の処理が煩瑣なことから、もっぱら法規の解釈と適用を画一的に、事務的に処理するためのものであることは、委員会におきまする審査の過程で明らかとなったのであります。
この法案の問題となる第一の点は、負傷、疾病、死亡等が工場、鉱山、事業場など職場で起るのでありまして、全国各都道府県に頻発していることは周知の通りであり、現行審査官あるいは審査会におきまする件数を見ましても、十分この実情をうかがい知ることができるのでございます。年間にいたしまして審査官が三千件に上る事案の処理をいたしておる。また審査会におきましては、年間平均二百数十件に上っておるのであります。都道府県別の基準局において審査する審査官の判定並びに審査会の判定などは、災害の起った現地を基礎にして、綿密な調査や実地検証など、円滑に今日まで行われ、政府の言うように、同一の問題のごとく見える災害といえども、その現場の条件あるいは原因、また傷害、疾病の程度は、人のからだの条件によっても違ってくるのでありますから、政府の言っておることとは全く逆なのでございます。結果はかりに同じ死亡でありましても、その職場の条件や、そのときの条件、あるいは作業の条件などは、それぞれ異なっているのであって、法規は一つであって、つまり法律は一つでありましても、個々の事案はすべて異なっている。だから法規の解釈、適用を画一にするということ自体が不当であることは論を待たないところでございます。原因、経過を懇切に調査、検討することは、現行法の審査会においては一応円滑に行われて参りましたし、法本来の目的が、労働者の災害、疾病など業務上に起りました事故に対する労働者の保護を目的にしておる立法精神から申しまして、当然のことでなくてはなりません。このような審査会の機能を労働省、すなわち中央に移すことによりまして、労働者の現実の実態に即することの不可能な、つまり労働者が日々働いて生活をする実情の中から、労働者の手の届かないところでもって法の解釈、適用をしようとするのでありますから、労働者の援護を目的とする労働災害補償あるいは労働者災害補償保険、あるいはけい肺、こういったような関係法律が、法文がことごとく空文化することをねらっているものであると断じても過言ではありますまい。
次に重要なことは、本法案は、新しい立法措置であるのでありますが、元来、労働基準法第八十五条、第八十六条及び労災補償保険法第三十八条、同三十六条、三十九条、これらの全部または一部を削除し、または改訂をいたしておるのでありますから、これは取りも直さず基準法その他関係法規の改訂を意味するにもかかわりませず、労働基準法の一部改正という手続を選ぶことがなく、新しい独立の立法の形でカムフラージュしていることは見のがしてはなりません。これは第二十二特別国会以来問題になってきた基準法の改悪を全面的に打ち出すなれば、労働者及び世論の強い反撃に会うことは明らかなのでありますから、また国際的な関係をも政策的に考慮した結果、こまぎれに、漸次骨抜きにしようとする労働政策の現われであると言わなければなりません。さらに重要なことは、労使間の問題、すなわち労使の紛争、労働者の災害、疾病など、事、労働に関する問題の処理が、労働者と使用者と、これに学識経験者を網羅したいわゆる三者構成の話し合いの場によりまして、納得ずくで問題の処理がなされた、こうした手続を廃止して、もっぱら官制に切りかえる官僚政策の現れであるということはきわめて明瞭なのでございます。民主的な労働関係の自主的な処理を、法律の解釈、適用におきかえようとする、これはまさに反動政策の代表的なものであると言わなければなりません。さきに本国会で公労法の一部改正案が通過いたしましたが、この場合最も重要なことは、あっせん、調停、仲裁、それぞれの委員会を統合いたしまして、公共企業床等労働委員会としたことはよろしいといたしましても、三・三・三という三者構成の人員比例を、公益委員を五名に増員して、うち二名を常勤とし、次に任命の手続を、従来の労使双方の同意を廃止して、単に意見を聞くとしたことは、きわめて重要な問題であると言わなければなりません。単に意見を聞くということは、聞きっぱなしでもいいというのであって、その同意を得るということとは本質的な相違があることは申すまでもございません。今後の公共企業体等労働委員会の性質を、実質上三者構成を骨抜きにしたと言わなければなりません。こうして、今また本法案の立法に当って、三者構成の機構をすべて廃止して、官制に切りかえようとしているのでありますから、戦後十年にわたってつちかわれて参りました関係者の話し合いの場を、官吏の独善的な御都合主義の政策に切りかえて参るというのでありますから、あくまでわれわれ日本社会党としては反対をせなければならぬわけでございます。
なお、この問題につまして、委員会において最終検討をいたしました際に、緑風会から付帯決議が出されて参りました。もっとも、この付帯決議の精神については、理解されないことはないのでありますけれども、少くとも本法案が付帯決議等によって左右されるものではない。今までたびたび付帯決議あるいは要望等が出ておりますけれども、これらが、決議を見ながらも、有効適切に実施されたためしも事実ございません。このような意味におきまして、付帯決議につきましても反対の立場をとるものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/24
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025・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。
これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/25
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026・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/26
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027・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第四、繊維工業設備臨時措置法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。商工委員会理事白川一雄君。
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〔白川一雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/27
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028・白川一雄
○白川一雄君 ただいま議題となりました繊維工業設備臨時措置法案につきまして、商工委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
繊維工業は、輸出産業中で依然として第一位を占めていますが、近年製品の輸出増大に伴いまして、対外的に過当競争を生じがちとなり、特にガット加入の際の欧州諸国の三十五条援用問題や、アメリカにおけるわが綿製品の締め出しなどのように、国際的な批判が強まりまして、現状のままで放置しますと、輸出貿易ばかりでなく、繊維産業全般にも悪影響を与えるおそれがあるのでございます。
そこでかかる過当競争などのおもなる原因は、繊維工業の設備過剰にあるものと目され、その正常な輸出の発展をはかるためには、結局過剰な設備を処理して、繊維産業を構造的に規制する必要が認められて参りました。他面まだ、織物業はその大部分が全国に散在する中小企業者であり、しかも御承知の通り、業者は近年不況に悩まされて、中には自立不可能な向きも少くありません。とにかく繊維工業の過剰設備の解決は、牛小企業対策としても重要となって参ったのでございます。よって政府当局では、昨年秋に繊維工業総合対策審議会を設けまして、合成繊維の育成などあわせてこの問題の処理方策を諮問いたしましたが、その答申の趣旨に基き、かつ、さらに検討を重ねました結果として成案され、さきに衆議院で若干の修正を見て、本院に提出されたものであります。
本法案は、全文五十条よりなる五カ年のいわゆる時限法でありまして、「設備の新増設を規制するための登録制」と、「過剰設備の処理に関する共同行為」及び「繊維工業設備審議会」等より構成されておりますが、まず政府原案の要点を申し上げますと、第一に、本法で登録を実施せんとする業種は、差しあたり各種の紡績業と染色加工業であります。ただし織物業の登録については、現在中小企業安定法の命令で行なっている設備登録によっていく方針になっております。また登録の対象となる設備は、紡績業における精紡機と染色加工業における織物幅出機でありまして、結局、法定繊維製品の製造加工者は業種ごとに登録を受けねばならぬ仕組みであります。
第二に、本法施行後でも、昭和三十五年度の需給状況をしんしゃくして、設備不足となる業種があれば、不足の範囲内で増設分の新規登録を行います。第三に、過剰設備の処理につきまして、本法と中小企業安定法の命令とにより登録を行う業種のうち、昭和二十五年度の繊維製品の需給状況を勘案して、特に設備が過剰となる業種に対しては、通商産業大臣が、廃棄、格納及び買い上げなどの方法で過剰設備を処理するための共同行為を実施すべき旨指示できることを規定しております。なお、この共同行為は独禁法の適用除外にしております。
第四に、本法施行による影響を考慮して、その重要事項審議のため、学識経験者、事業者並びに労務者代表及び消費者代表よりなる審議会を設けまして、運用の適正をはからんとしております。
次に、衆議院における修正点を申し上げますと、第一に、織物業の過剰設備処理の目的を円滑に遂行するため、特にアウトサイダーをして調整組合等と同一行動をとらせるよう命令を出せるようにしております。第二に、関連産業たる繊維機械工業に対する配慮がないので、繊維工業設備審議会がこの問題を調整する措置を通商産業大臣に建議できるようにしております。第三に、施行期日は公布の日より二カ月以内とあったのを三カ月に改めております。
以上が政府原案並びに衆議院修正案の要点でありますが、なお右の過剰設備処理の共同行為をいたします際に、設備売却希望者のため調整組合連合会等がその買い上げに当るわけであります。またその買い上げの所要資金には、残存設備から徴収する分担金を充てますとともに、業者側で負担が困難な業種に対しては、経費の一部補助として昭和三十一年度の予算に一億二千万円の補助金を計上しております。
当委員会では、審議に慎重を期するため、特に泉南地方などに実地視察を行い、また大蔵委員会とも連合審査を行いましたが、質疑のおもなるものは、すなわち設備制限と操短制の関係、かけ込み増設などの抑止策、過剰設備処理に関する共同行為の指示の効力、設備更新に関する具体的な諸施策及び関係従業員への影響と対策などでありますが、詳細は会議録に譲りたいと存じます。
質疑を終りまして討論に入りましたところ、まず、上條委員より、政府原案並びに衆議院修正案に対して、次のような趣旨の修正案が提出されました。
一、過去の操短等では従業員の離職や労働強化や賃下げ等を伴なったが、特に本法の施行に際しては、従業員の地位が不当にそこなわれぬよう明確にしておきたい。
二、独禁法の適用除外になっており、またすでに一部の値上りを見ているが、一般消費者の利益を不当に害せぬよう、かつ中小織物業者がこうむっている原料高、製品安に対処するよう、政府は適宜に各販売価格の引き下げを勧告できるようにすること。
三、繊維機械工業に関して通商産業大臣が審議会から建議を受けた場合は、それを尊重して必要な措置に努力すべきこと。
四、施行期日については衆議院の修正があったが、前述の機械メーカー等に輸出の促進や転換及びその他の必要な調整をとらしめるため、それをさらに一カ月延ばして四カ月以内に改めること。
以上が修正案の要旨でありますが、なお、上條委員は、次のような希望条件を付して賛成意見を述べました。すなわち「繊維産業の安定は設備制限だけでは不可能であり、また本法施行の影響を受ける向きへの措置が欠如しているが、特に繊維機械業には万全の措置を施すべきで、さらに近き将来総合的な安定方策を講ぜよ」というのであります。また白川委員は、「恐慌等に備えて、登録制は妥当であるが、事業は海外市場の動向等によっても大きく動くわけで、設備の制限あるいは助長につき朝令暮改とならざるよう見通しに誤まりなき行政指導を求める、かつ本法の施行により過渡的に人員過多の現象も起ることをおもんぱかるがゆえ、周到なる行政措置を強く期待する」という希望を付して賛成の意を表しました。最後に、加藤委員は、「過剰設備の処理につき、複雑な業界は、単に大臣の指示だけで強制力がなければ一本にまとまり得ないのは明らかである。またかつて、やみ増設がいつしか正当なものになった例が多いので、かけこみ増設にはくれぐれも注意すること、及び施行期日の延期は、二重投資のおそれがあるので、同調しがたい点があるが、時間的にやむを得ぬものとする」との希望を付して賛成意見を述べました。
討論を終り、採決に入りましたが、上條委員より提出の修正案並びに修正部分を除きました衆議院送付案は、それぞれ全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
右、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/28
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029・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/29
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030・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって委員会修正通り議決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/30
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031・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第五、宮内庁法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。まず、委員長の報告を求めます。内閣委員会理事宮田重文君。
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〔宮田重文君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/31
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032・宮田重文
○宮田重文君 ただいま議題となりました宮内庁法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
この法律案は、去る四月二十四日、衆議院本会議において修正議決せられて当院に送付せられたものでありまして、まずこの法律案の内容を申し上げますと、この法律案は、現行宮内庁法に次の四点について改正を加えんとするものであります。
すなわち改正の第一点は、宮内庁の内部部局の所掌事務のうち、物品管理事務及び調理供進事務に所要の整備をいたしまして、これらの事務の能率化と合理化をはからんとした点であります。その第二点は、宮内庁長官は、宮内庁と警察庁の皇宮警察との事務連絡のため、必要ありと認めるときは、警察庁長官に対して所要の措置を求めることができる旨を法文上明らかにした点であります。この第三点は、宮内庁に置かれている特殊な名称の内部部局の長、すなわち侍従長、東宮大夫及び式部官長並びに侍従次長の官職名及び権限を宮内庁法の上に明らかにした点であります。その第四点は、現存の京都事務所を宮内庁の地方支分部局とし、また現存の正倉院事務所及び下総御料牧場を宮内庁の付属機関といたしまして、その責任の所在を明確にした点であります。
内閣委員会は、委員会を前後四回開きまして、この法律案を審議いたしましたが、その審議において、政府原案は、京都事務所が付属機関となっていたのを、衆議院の修正によって地方支分部局と改められた理由、侍従長、東宮大夫、式部官長及び侍従次長の官職名とその権限を、今回法文上に明記するに至った理由、東宮大夫、式部官長等の古典的な官職名改正の要否、下総御料牧場の運営の現状、正倉院御物の保護対策等の諸点のほか、この法律案に関連して宮内庁法、皇室典範、その他皇室の行事を現行憲法の精神に沿い改むべきやいなやの点、皇太子妃に関する問題等につきまして政府委員との間に質疑応答がありましたが、なお、審議の過程におきまして江田委員より、「下総御料牧場運営の合理化、正倉院御物の汚損に対する保護について、政府が今後適切な対策を講ぜられたい」旨の要望がありました。
一昨日の委員会におきまして、質疑も終了いたしましたので、討論を省略し、直ちに本法律案につき採決をいたしましたところ、全会一致をもって衆議院送付の原案通り可決すべきものと決定せられました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/32
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033・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102415254X05419560528/33
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034・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会は、明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後六時九分散会
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○本日の会議に付した案件
一、裁判官弾劾裁判所裁判員及び同
予備員辞任の件
一、裁判官弾劾裁判所裁判員及び同
予備員の選挙
一、旧軍港市国有財産処理審議会委
員の任命に関する件
一、日程第一 防衛目的のためにす
る特許権及び技術上の知識の交流
を容易にするための日本国政府と
アメリカ合衆国政府との間の協定
及び議定書の締結について承認を
も求めるの件
一、日程第二 国会議員の歳費、旅
費及び手当等に関する法律の一部
を改正する法律案
一、日程第三 労働保険審査官及び
労働保険審査会法案
一、日程第四 繊維工業設備臨時措
置法案
一、日程第五 宮内庁法の一部を改
正する法律案
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