1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年三月六日(水曜日)
午前十時十九分開議
出席委員
委員長 菅野和太郎君
理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君
理事 中曽根康弘君 理事 岡 良一君
理事 志村 茂治君
小笠 公韶君 木崎 茂男君
小平 久雄君 須磨彌吉郎君
保科善四郎君 山口 好一君
岡本 隆一君 佐々木良作君
滝井 義高君 松前 重義君
石野 久男君
出席政府委員
科学技術政務次
官 秋田 大助君
総理府事務官
(科学技術庁長
官官房長) 原田 久君
委員外の出席者
総理府技官
(科学技術庁原
子力局次長) 法貴 四郎君
総理府技官
(科学技術庁原
子力局アイソト
ープ課長) 鈴木 嘉一君
参 考 人
(日本赤十字社
中央病院院長) 都築 正男君
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本日の会議に付した案件
科学技術庁設置法の一部を改正する法律案(内
閣提出第四七号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/0
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001・菅野和太郎
○菅野委員長 これより会議を開きます。
科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。本日は、放線医学総研究所の設置に関しまして、ストロンチウム九〇の人体に及ぼす影響につき、参考人より意見を聴取いたしたいと思います。
本日出席の参考人は、日本赤十字社中央病院長都築正男君であります。
この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中のところ、当委員会における法律案審査のためわざわざ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げる次第であります。科学技術庁設置法の一部を改正する法律案は、科学技術庁の付属機関といたしまして、放射線医学総合研究所を設立して、放射線による人体の障害、その予防、診断及び治療並びに放射線の医学的利用の調査研究を行わんとするものであります。本委員会といたしましては、本案の審査に際し、特にストロンチウム九〇の人体に及ぼす影響につきまして、参考人より隔意なき御意見を承わり、もって本案審査の参考にいたしたいと考え、本日ここに御出席をお願いいたした次第であります。何とぞ日ごろの御研究の立場より、忌憚のない御意見の御開陳を願いたいと思います。
なお、御陳述は二十分程度といたしまして、あとは委員諸君の質疑によりまして、お答えを願いたいと思います。
それでは、都築参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/1
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002・都築正男
○都築参考人 それでは、まず私から大体のところを御説明申し上げたいと思います。本日の問題は、ストロンチウム九〇が人体に及ぼす影響という問題であります。これは学問的に申しますと、その結論はまだわかっていない、こういうことに尽きると思うのですけれども、いろいろ各方面の学者が研究をいたしましたことから、大体こういうふうなことになるのではなかろうかという推察はできるわけであります。おもなる根拠は動物実験にあります。ある分量以上のストロンチウム九〇が生物の体内に入った場合にどうなるかという問題であります。
その問題を申し上げます前に、ストロンチウム九〇というものが、どういう道を経て人体に入ってくるか、一般に申しますと、生物の体内に入ってくるであろうかという問題にどうしても触れなければならぬと思うのであります。との問題につきましては、世界の各国あるいは日本におきましても、いろいろの人が動物実験をやっております。けれども、小さな動物、たとえばネズミあるいはモルモット、ウサギという程度の動物の実験では、どうもそれが人体に持って参ります場合に、すぐそのままというわけにはいかないというわけで、だんだん大きな動物の実験が始められているのであります。この点、まだ日本では残念ながら大きな動物を使っての実験は行われていないのでありますが、その問題について一番しっかりした研究をやっておりますのは、第一にアメリカであります。アメリカのオークリッジの原子力委員会の国立研究所の中に、その近所にありまするテネシー大学の農学部の研究所がございまして、そこでもうだいぶ長く、十年以上にもなるかと思いますが、牛あるいは馬を使って実験をしております。それから、われわれに知られているところでは、もう一つの研究はロシヤにあります。ロシヤでは、牛を使っての研究成績が、最近発表というのでありますか、どうですかわかりませんが、国連の科学委員会の資料として提出されたものを、私はその会の委員の一人として聞いて知っております。そういうところから判断してみますと、たとえばこれまで小さな動物で知られておりましたことと、そういう大きな牛とか馬とかいう動物でやられました実験とを比較してみますと、ストロンチウム九〇がそういうもののからだの中に入ってくる場合に、どういうふうに違うかという問題をまず考えなければならぬと思うのであります。大体の筋道は同じようでありますけれども、入ってくる工合がどうも違う。この生体の中にストロンチウム九〇が入って参ります模様が違うということは、もうずっと前から、たとえばいろいろな野菜の中に入るとか、あるいは魚の体内に入るとかという問題は、日本でも相当にいろいろな研究がございますが、いろいろな生物によってみんな入り方が違うであろうということは、多くの学者が考えております。そう申しましても、結局ストロンチウムというものが生体内に入れば、最後に落ちつくところは骨であるということには共通点がございます。でありまするから、骨の中に入るにはどういう道を通って、どのくらいの割合で入るものであろうかということが違う。同時に、それに伴って、どのくらいの早さで入ってくるものであろうかという問題が違う、こういうことになります。いろいろ物理学あるいは科学の方面の研究によりまして、現在地球上の生物の住んでおります環境というものの中のストロンチウム九〇の含量が、漸次ふえつつあるということは事実であると思いますので、そういうふうな環境の中のストロンチウムの含量がふえて参りました場合、いずれはそれがすべての生物のうちの体内に入ってくるものということを考えなければならぬと思うのであります。その際に、いろいろ速度が違う。それは一体どのくらいの速度で入ってくるものであろうかという問題でありますが、それについてもいろいろの税がございますが、それをひっくるめて申しますと、大体数年かかるであろう。たとえば、そういうストロンチウム九〇というものを含んでおります小さなごみが、地球の地面の上に落下して参りますと、まず泥にそれが入るわけです。それからいろいろ植物あるいは動物を通じて、最後には人体の中に入ってくる。その場合に、泥の上につきましたストロンチウムが直接あるいは間接に人体に入ってくるまでに、大体数年——いろいろ計算の値は人によって違っております。これはいずれも推定でありますので、はっきりはいたしておりませんが、大体五、六年くらいはかかるのではないかということがいわれておるのであります。そういたしまして、生物に入りました場合には、ストロンチウム九〇の最後の落ちつく場所は骨ということになります。骨の場合に、骨の一体どの部分に入るのであろうかという問題であります。これは動物実験の結果、よくわかっております。それは、骨の一部に骨端線というところがございます。割合長い骨の端の方でありますが、骨が主として成長を営みます部分であります。その骨端線におもにストロンチウムが入る。こういう放射性のアイソトープでありますから、あとあとまでも、放射能を調べることによってはっきりしますが、それが骨端線に入る。骨端線に入りました場合に、そこからもう御承知の通りにストロンチウム九〇からはベータ線だけが出るわけでありますので、骨端線に入った場合に、相当長い間——現在ではストロンチウム九〇の出します放射能の物理学的な半減期は、二十八年ということに昨年改正されたようであります。昨年の初めまでは十九・九年ということがいわれておりましたが、昨年の後半になりまして二十八年ということになりました、いずれにいたしましても、長い間そこからベータ線が出ておるわけであります。そういうふうに骨の中の骨端線から長い同ベータ線が放出されていた場合に、骨並びにその骨を含む全体の生物にどういう影響があるであろうかという問題に入らなければならぬと思うのでありますが、ところで、それにつきましては動物実験でもまだほんとうによくわかっていないのであります。この問題は、いろいろ諸外国でもやっておると思いますが、日本にもこういうことにつきましては相当に研究があります。まず普通に、ごく簡単に言われておりますることは、骨の中にベータ線を出すようなものが入っていた場合には、骨を中心とする病気が起るであろうというふうなことが、ごく大ざっぱに一応考えられております。そういたしますると、骨の中に含まれておりまする重要な臓器であるところの造血臓器、すなわち血液を作りまするいわゆる骨髄、そういうものに作用するから、その結果造血能と申しますが、血液を作りまする機能が障害されて、いろいろ血液に関係する病気が起るであろう。そうしますと、普通の人は白血病が起るであろうというふうに考えられるわけです。白血病その他の貧血というような病気が起るであろう、こういうことが一応考えられまして、たとえば、昨年の暮れにアメリカで大統領選挙のありましたときに、それが問題になりました際にも、普通新聞にはそのようなことが多く掲載されていたのであります。ところが、その後いろいろ研究によりますと、ストロンチウムというものがそういうふうに骨の中に入って、ベータ線を出しておった場合に、果して今申しましたような血液の疾患が起るであろうかどうであろうかということについて、やや疑問が出ております。この点について割合詳しい研究をいたしましたのは、日本の広島大学の病理の教授をしております渡辺漸君でありますが、その一部を昨年秋にボストンでありました国際血液医学会にも発表いたしまして、大体みなも承認したような格好に現在のところはなっておりますが、どうも動物で人間に見られるような白血病を作ろうとするような場合には、ストロンチウムよりも、放射性の燐を使う方が発生率が多いというようなことなんかも言われております。そういうことから見て、ことにストロンチウムが骨の骨端線の中によけい入るというようなことをひっくるめて考えて参りますと、それからすぐ貧血ないしは白血病という病気が起るであろうかどうであろうかということについては、今のところ多少の疑問がございます。起るかもしれないがあるいは起らないかもしれないということであります。それならばほかに何か障害が起るかと申しますと、もう一つの障害として考えられますることは、骨の腫瘍であります。日本流で申しまするならば、骨の肉腫ということになります。アメリカではボーン・キャンサーと申しますが、これは日本でいいますガンではなくて、骨の悪性腫瘍の一つである肉腫というもので、骨の中に、ことに骨端線の中にそういう放射線を出しまする放射性の物質が長く沈積していた場合に、骨の肉腫が起るということは、すでに人体でも経験済みであります。これはもうすでに三十年の昔にさかのぼって、私が初めてアメリカで勉強しておりましたときに、アメリカで非常に問題になりました。例の夜光時計の工場に働きまする若い職工さんの間にたくさんの犠牲者ができまして、それが現在でもまだ追及されております。その中に相当の数の骨肉腫が起っておるのであります。そのために死亡された方もあり、現在不具の状態で治療を受けておる方もあるわけであります。その際の放射性の物質は、主としてメゾ・トリウムであったのであります。けれども、その後いろいろ研究室の事故と申しますか、あるいはこれはあまり大きな声で申せないかもしれませんが、医学の診断、治療の目的でいろいろ放射性の物質を使いました際、いろいろ運が悪くてそういうものが骨の中にたくさん沈着したというふうな場合の結果として、数例の骨肉腫というものの発生がすでに認められております。そういうところから考えまして、やはりストロンチウム九〇のベータ線も、長い間骨端線の中に存在してべータ線を出しておる場合には、骨肉腫というものが起る可能性はあるものと一まず考えてもいいんじゃないかと私は思います。けれども、ストロンチウム九〇によって骨肉腫が確かに起ったんだということを人体で経験した経験は、いまだに報告に接していないのであります。これは時間がまだ不足である。今後もう少し長い年数のたった後でなければ現われてこないのではないか、こう思うのでありますが、そういうことが考えられる。
ところが、それで一まず話が済んだようなことにもなりますが、それにもう一つつけ加えて申し上げなければならないのは、しからば、ストロンチウムというものは、骨だけに入るのであるかという問題であります。これがなかなかむずかしい問題でありまして、人体といいますか、一般に生体に入りました直後と申しますか、直後と申しましても、何カ月か、一年くらいの時間でありますが、そういう割合に短かい時間の間では、方々にとにかく入っているものらしいのであります。ごく分量は少いが、大部分は骨の中に入る。ロシアの報告なんかを参考にいたしましても、たとえば、腸からストロンチウムが一〇%吸収されたとすると、その一〇%は一体どういうところに入り込むかという数字を一例としてあげてみますと、そのうちの一・四五%は骨に入る。一〇%のうちの一・四五%でございます。それから、そのほかの内臓の中には〇・一四%入る。それからミルクの中、その動物が雌である場合、その出す乳汁の中に〇・八八%、それから尿の中の中に三・六五%ということであります。従って、大部分のものが尿の中に排泄されてしまう。その次に多いものが骨の中に入っておる。その次に多いものがミルクの中に入る。その次に多いものがほかの内臓。こういうことになって、それが合せて一〇%ということで、あとの九〇%は吸収されないで糞便とともに体外に出ていく。こういうことが牛の実験で認められたということをロシアの報告に示してあります。そういうことから申しますと、ごく分量は少いのでありますが、ミルクの中に出ていくということは、その母親の方にとってはそれでけっこうなのですが、そのミルクを飲む子供にとっては問題になります。それから尿の中に出ていくということは、尿の方は別にどこにも関係ない。早く出ていってくれたらいい。一・四五%が骨に入るということになれば、今申しました骨の問題がある。百分の一以下ですが、〇・一四%というものが内臓に入る。この内臓の一体どこに入るのであるかという問題です。これはいろいろ研究がありますが、これも最近日本では東大の方で研究しておりまして、ストロンチウムの入れ方いかんによっては、これより少し多いように私はデータを承知しておりますが、それが肝臓の中に入り得るということが大体わかってきております。その一部は今年の四月の学会に発表される予定になっておりますが、肝臓に入る。尿の中にもう一方出るというのでありますから、それは必ず腎臓を通るわけであります。腎臓にもある期間とまっておる。こういうことになります。肝臓に入り、腎臓に入り、ことに肝臓に入るということは、私はどうも少し気にかかるのでありまして、これから何がしか肝臓の障害というものが起る可能性が将来考えられるのではないか、こういうふうに思います。そういうふうに思います。
そういう意味で、現在のところは、ひっくるめて申しますと、ある程度以上のストロンチウム九〇というものが生体の体内に入る場合には、まず一番重要視すべきことは骨であるが、その次には子供ということを考えると、ミルクということを考えなければならぬ。なお、ほかに肝臓、腎臓のような内臓にも少量であるけれども入り得る、従って、そういうものが入ったならば、現任動物実験によって知られておる成績から考えてみますと、いろいろの障害が起るという可能性は十分に考えられる、こういうふうな大体結論になるのではないかと思います。大体そのくらいであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/2
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003・菅野和太郎
○菅野委員長 以上をもちまして、参考人よりの意見聴取を終りました。
これより質疑を行いますが、質疑は通告によりこれを許します。岡良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/3
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004・岡良一
○岡委員 都築先生は日本赤十字社の中央病院の院長というお資格よりも、私ども、国連の科学委員会の日本の正式代表というお立場でいろいろ御所見を承わりたいと思うわけであります。そこで、科学委員会に先生も御出席をいただいておるのでありますが、ストロンチウムの測定法については、ただいまの御意見では承わらなかったのであります。このストロンチウム九〇の測定法というものは、すでにスタンダードな方法というものは確立されておるのでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/4
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005・都築正男
○都築参考人 先ほどは人体に対する影響という問題でありましたので、人体のところに来てからのことだけを申し上げたのですが、その前は、実は私の専門外なんでありますが、やはり国連に行っております代表としての責任上、いろいろの人の成績を伺って知っておるのであります。今申されました国際的にきまった方法があるかという御質問に対しましては、ないと申し上げるべきだと思います。国際的にスタンダードとしてきまった方法をきめたいという考え方は、みなが持っております。大体この前のときに、昨年二回あったのでありますが、第一回のときには、御承知の通りに、そういうものをはかりますときに、全体の放射能をはかりまして、そうして、それから表によって翻り出していたわけです。例のアメリカでハンターパロー氏の表と申します表によって計算で出しております。ところが、それはストロンチウム九〇を発生いたします原因が一回だけちゃんと日にちがわかっていた場合に、それから何時間、何日、何週間、何ヵ月、何年とたった場合に、全体の放射能がこれだけあれば、そのうちにはストロンチウムはこれだけあるべきであるという理論的の表から計算で出しておる。ところが、それをいろいろ実際のデータを持ち寄ってみますと、いろいろまちまちである、ということは、当然そのストロンチウム九〇を発生いたします原因が一回だけでなく、複数、非常に多数である、またそれがいろいろの日にちによってまちまちに行われるということで、現在われわれが測定しておりますいわゆる全放射能の分量は、混合物であるというふうなことでありますので、そういうふうな表によって、時間の経過というものを考えての表によっての計算では、正確な値が出ないのであるということになりまして、どうしても、そのいろんなものについて、今度は化学的の分析法によってやらなければいけないのだ、こういうところまでこの前の会議で意見がきまりました。しからば、どういう化学的の分析方法でやるかという問題が専門家の間で検討されまして、いろいろ案が出ております。多分これは、この次の今度四月にありますときに、それがきまるだろうと私は思います。また、きまることを希望いたしますが、どういうふうにきまりますか、各国のいろいろの案を見ますと、もう大体同じような方法になっておりますので、——ところが、これについて一つ専門家の間で非常にむずかしい問題は、何さまストロンチウム九〇の含んでおります分量が非常に少い、たとえば、空気にしても水にしても野菜にしても、あるいは人間の骨にしても非常に少いので、非常に少い分量のストロンチウムというものの、ことにそのうちの放射性の九〇というものをはかり出すということが技術的に相当困難であるというので、ある一派の人は名人芸ということを申すくらいで、だれでもちょっと本で読んだり話を聞いただけでやってみたのではうまくいかない、その人についてのいろいろな手かげんというものをよく勉強しないとよくわからないということで、多分大体方法がきまりましたならば、それを国際的にサンプルをおのおの交換してやってみて、これでいいか悪いかということをきめるのじゃないかと思うのであります。大体今のところはそういうところまでいっているようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/5
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006・岡良一
○岡委員 私どもが一番関心を持っているのは、いわゆる人工的な核爆発の実験、これによって結局放射能を含んだものによって大気が汚染をされ、海洋が汚染され、地殻が汚染されるという状態が起ってくる。そうなってくると、半減期が長くて、人体に一番大きな障害を与えるものはまずストロンチウムあるいはセシウム、セリウムというものがあげられているわけであります。しかも、ストロンチウムは二十八年間、とにかく汚染をされた場合には、これが海洋の中にあるか、地殻にあるかあるいは空気の中にあるか、とどまっているわけでありますから、こういうものがたび重なってくるということになって、これがもろもろの危険を及ぼすようなことになる。こういう点でそういう点に特に私どもは大きな関心を持っているわけです。これは新聞で承知をしたのでありますが、アメリカの原子力委員会の委員のリビーさんという方は、原水爆実験でストロンチウム九〇が許容限度に達するにはTNT火薬一万一千メガトンの核爆発が必要だというようなことを発表しているのです。このリビーさんという方はストロンチウム九〇の測定方法についてはなかなかの権威だと承わっておりますし、国連の先生の御出席になった科学委員会でも、アメリカのこの面に関する測定方法を世界のスタンダードとして採用すべきだというふうな主張もあったようであります。これは各国それぞれ独自の立場でやろうじゃないかというふうな先生方の御発言もあって、将来に持ち越されたというふうな経緯も承知しておるのでありますが、アメリカの測定方法によれば、やはりリビー委員のような結論になるのでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/6
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007・都築正男
○都築参考人 アメリカのリビーさんは、実際私の承知しているところでは化学者でありますので、つまりその方のそういうふうな化学分析というふうな方面の専門家でありますので、おっしゃっていることには間違いないのだと思うのであります。ところで、今の新聞の記事のようなお考えの出ますことは、やはりこの前の昨年三月の第一回のときに、アメリカが自分の国でやっている方法が一番いいのだから、これを一つ世界で全部やってくれ、できるだけアメリカは援助するということを申し出ました。その方法がさっき申しました表によって、つまり一定の時間が経過しているということを前提として、表によって計算するという考え方であります。これはもう実際に測定するとすればごく簡単な方法で、いろいろなごみや何かを集めるだけのことで、実際の測定はそれを郵便でニューヨークにあります研究所に送ってくれれば、そこで全部データを出してやる、こういう話であります。ところが、どうもそれはいろいろ日本の経験によっても、ほかの国の経験によっても、そう簡単にはいくまいということで、さっきお話のありましたように、決定を見ないで、もう少し研究をする、こういうことでわれわれも研究いたしまして、それはどうもいかぬ、何も設備のないところででも、とにかく大体の見当をつけようというので、やるならばそれは非常にいい方法であるかしらぬが、今後の問題を考えて、微量な分量まで正確にはかり出そうというようなことであると、どうもその方法はいけないということで、そのいけないということを持っていこうと思って、昨年の十月に参るときに用意して行きましたら、その前にあっさりとアメリカの方でそれを撤回いたしまして、もうそんなとは古いからやめようじゃないかということを自分から言い出しました。そして今度は、一々の問題についてみんな自分で分析をやるべきだ、こういうふうにいってしまった。それで何も問題なくて、そうだろうというようなことで、みんなそれに賛成して、それでは分析をやろうじゃないかということを、あまり分析をやったことがない者だけがニューヨークへ集まってきめたのです。そのときに、日本の東大の齋藤教授という、有名な木村教授のあとにおなりになりました方で、ストロンチウムやセシウムの分析を十年以上もやっておられますほんとうにこの方の専門家に、私の顧問として行っていただきました。その齋藤君が、それはいいが、実際やることはなかなかむずかしいのだぞ、けれども、世界のうちで大体片手の指で数えられるくらいの国ではできるだろう、だからそこでやったらよかろうというふうなことで、まあ気炎を上げるというほどではなかったのですが言って、実はそこに出ておりました、アメリカのその方の専門家に属しますアイゼンパットさんなんかは、まだそこまであまり考えていなかったらしいので、それじゃやろうということになって、それから世界各国で一生懸命やり出した。それで日本も及ばずながらやったわけなんです。そういうことで、この問題は大体理論的といいますか、表面的には片づいたような格好になっているのでございますが、各種の資料について、実際問題として果して正確に微量なストロンチウムをはかり出すことができるであろうかどうかということが問題になりました。これは話がちょっと横道にそれるかもしれませんが、最近日本でも一部の会がありました。国際地球観測年というのですか、インタナショナル・ジオフィジカル・イヤーでも、この放射能をはかることが問題になりまして、各国に適当なセンターを置いて、そこでやろうということになって、日本もそのセンターの一つを引き受けるとか引き受けないとかいう話が起っているように聞いております。日本でありますれば、費用の問題は別として、それができる程度にまでなっておると思うのですが、実際問題としては、これはなかなかむずかしい問題だろうと思います。しかし、考え方としてはどうしてもそこにいくということで、アメリカの代表もあっさりそれを引っ込めました。引っ込めたけれども、アメリカはこうやる、正確にはかって、一々のものについて化学分析をやるべきであるということは、もう間違いない。けれども、それは世界のどこの国でもというわけにいかないから、世界中の分布を調べるということであれば、やはり前に申し出た簡単な方法によって大体の見当をつける、それに加うるにところどころで正確な分析をやって、それをちゃんと確かめていくというふうな方法だから、前に自分の提唱した方法は全く間違っておるというわけではないので、まだ相当に利用価値があるのだということを申していらっしゃる。その考え方にはわれわれも賛成をしたわけであります。そんなふうですから、大体大ざっぱにやるという方法と、それを詳しくやるという方法と、二通りの方法を当分の間続いてやっていかなければならないのじゃないか、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/7
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008・岡良一
○岡委員 先生が科学委員会に御出席になっての御印象を、率直なところを承わりたいのですが、国際連合の総会などの運営にやはり国際的にいろいろ批判があるわけです。いわゆる大国主義というような批判、あるいはいわゆる廊下外交的なもの、それも柔軟な性格のものですから、よしあしだと思いますが、しかし、それにしても、ハンガリア問題では六十五票対七票で小国の団結が勝った。あるいはスエズ問題では七十二票対二票でやはり小国の団結が勝っておる。しかし、それにしても、やはりそのバックにはアメリカのイニシアチブというものは否定できないと思うのです。国連運営におけるこのような大国主義的な傾向というものは、もとより科学委員会に導き入らるべき性質のものではないと私は思うのです。学者の進歩的な良心の上に立ってのデータというものは、やはり今後の国際的な原子力開発の大きな、最も有力な資料になるのでございますから、そういう意味で科学委員会はあくまでも学者の良心の立場において、国連の今後における原子力の世界的な普及のためのいしずえになるという権威を維持し得る、そういう状態で運営されておるものでしょうか。先生御出席の率直な御印象を承わらしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/8
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009・都築正男
○都築参考人 その点につきましては、私が昨年の二回の会議から帰りましたあとの報告書にも書いておきました。われわれの出席しておりました国連の科学委員会は非公開であります。ほんとうに厳重にクローズドでありまして、従って、その中で議論しておりますことは、外へ漏らしてはいけないという非常にやかましいことを言われます。済んだら最後に正式に新聞発表をやるから、それ以外は一切話してはいけないというくらいに言われているわけでありますが、中の感じは、ほんとうに普通の学術会議の感じと全く同様であります。政治的というふうな意味の感じは全くないといってもいいと思うのであります。ところで問題は、科学委員会というものの性格が、日本の一部の方にはちょっとまだわかりにくかったために、少し誤解というか、少し違った考えで御理解になっている方がおありになるのじゃないかと思うのです。私は、日本政府からの代表という辞令をもらっております。私が行くようになりましたいきさつは、これは各国の代表みな同じなのでありますが、国連でこういうものを作ろうということをきめて、それを十五の国の政府に、だれか適当な人間を一人送ってくれ、こういうことで、日本の政府は私が適当だとお認めになって行ってくれという話になりました。それで、その十五人の者が集まって、ニューヨークの国連で、国連機構の一部として科学委員会というものを作った。でありますから、そこで働きます場合には、日本政府の代弁者というかそういうものではなくして、つまり日本政府から派遣されて向うへ行く、言いかえますと身柄を国連に渡されて、国連の正式の職員ではないが、職員のような形で仕事をする。従って、ニューヨークで仕事をしております間の日当は、日本政府からもらいませんで、国連の事務局からもらっておる。往復の旅費も国連の事務局から私だけがもらっておる。ところが、一人では間に合わぬだろうから、何人か必要な顧問を連れてきてよろしいということになって、その国から派遣されておる代表とその国の政府が相談して、そしてそれぞれの国の費用において顧問を派遣しているという格好になっております。それから、やっております仕事は、国連から各国の政府に対してこういう資料を提供してくれという要求がありましたものを、各国の政府がそれぞれの道を経て公けに国連に提出いたします。その資料を十五人の委員が集まって、これはどうであろうか、うまく合っているとか、違っているとか、違っているのはどういうわけだろうということで討議をする。そして、そこに一つの結論を出そう、こういう仕組みになっております。従って、政治的の圧力はそのときにはむろんないのでありますが、たとえばある国が非常に有力な、学問的に見てりっぱな資料をたくさんにお出しになった国の代表と、何も資料を出さない国の代表とか話し合うということになりますと、これは勢いりっぱな資料を出した国の代表の方が、何かちょいと偉いような気がするんでございますね。批評をするにしても、お前の国の資料はこうだけれども、おれの国の資料はこうだぞということで話し合えばいいんだけれども、お前のところの資料は大へんだなあ、おれのところにはちっともないというので聞いておったんじゃ、議論にならないということなんでございます。それで、私個人としては、日本からだれが見ても文句のないようなりっぱな資料を、それは分厚くなくても薄くてもいいのですが、内容的にりっぱな資料がたくさん出ていただいた方が、いろいろな点において仕事をするのに都合がいい、こういうふうに感じるのです。確かにそういう点はございますね。従って、科学委員会でたびたび報告申し上げているのですが、これは代表の数人の者の仕事ではない。日本の国の、一番おもなるものは科学者、それをバックする日本国全体の力というのですか、それが非常に影響する。それを一方から政治的という言葉で解釈すれば確かに政治的ということも蓄えると思うのですが、やはり、それにしても、りっぱな学問的の資料がそろっていなければいけないということで、そういうふうな感じを持っております。話し合いはほんとうにざっくばらんにいろいろなことが言われます。どこの国の人がおもに発言するかと申しますと、一番よく発言するのは、一言店主というのはちょっと悪口になりますが、ブラジルなんです、ブラジルの物理学者で牧師さんがおりまして、それはことごとに何か言う。けれども、あまり土台になるようなデータはないらしい。みんなそれが立ちますと、また講義が始まったといつて笑い声が聞えるのですが、よくやります。それから、一番確かな資料を持って、非常に正確な発言をいたしますのはイギリスの代表であります。これは非常に確かな資料を持っております。それから、その次によく発言をいたしますのはロシヤであります。ロシヤは、どうもだんだん聞いておりますと、相当の資料を持っておるらしいのでございます。それが全部ロシヤ語でやるのでございます。それから、出します報告がロシヤ語で、わけのわからない字で書いてありますので、その会議は非常に苦手なんでございますが、ロシヤは相当に資料を持って、しっかりしたことを言います。言うことは、まっこうからほかの国の言ったことに反対するような意見をを述べます。その中でちょいと賛成できないこともあるのですが、しばしば、なるほどもっともだなといって感心して、私も今のロシヤの意見には賛成だと言ったことがあるのですが、賛成するような意見を述べるわけです。それから、インドの代表が割合に、あれは国の性格でございますかれ、キー・ポイントをついたような短かい言葉でぴしゃっとやるようなことを、やります。まあ大体のところはそういうところでございます。日本も、私の口から言うのは変ですが、この前の十月の会議では、檜山君、齋藤君あたりが、キー・ポイントをついた発言をしまして、日本にドクター檜山ありということが国連では鳴り響いた、といっては大げさですが、国連の委員会でブラック・ボードを出して説明を始めまして、それは国連の委員会始まって以来初めてだということです。黒板があったら詳しく説明するんだけれどもと言ったら、どこかから黒板を探してきまして、それでやったということでありまして、各国の民族の食生活が違うということを考えなければ、ストロンチウムが生体に入ってくることがはっきりしないという檜山教授の説なんです。それが、今世界の各国のそういう方面の学者の間でいろいろ問題になっておるらしいので、今度もまたそれが出てくるんじゃないかというので、できれば檜山教授ももう一度御足労願いたいのですが、大体の感じを率直に申し上げますと、そういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/9
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010・岡良一
○岡委員 そこで、その檜山教授を中心に科学委員会の要請もあったので、学術会議の方では、ストロンチウム九〇研究班などを作られて、先月の二十日にいろいろデータの発表を新聞紙上で拝見いたしました。いずれこれが四月の会議に持ち込まれることと思うわけでありますが、そこで私どもが一番心配をし、特にまた今度クリスマス島の水爆実験等もあって、大きなセンセーションを起しておるわけでありますが、何が心配の種一あるかという点、科学者によって明らかにしていただきたいという点は、要するに現在までに実験が重ねられて、大気や海岸や地殻に蓄積をされておるストロンチウム九〇というもの——今後実験がないとした場合、成層圏にふき上げられているものが年々徐々に地表に落下してくるわけで、これが地上なり水を汚染するわけであります。これは、先生に端的に申し上げると、これで実験がない、これまでに五十メガトンの実験があったとアメリカは発表しております。五十メガトンの実験によって、成層圏その他に、あるいは地上、海水等に蓄積をされておるストロンチウム九〇というもりが落下してきますから、年々ストロンチウムがふえてくると思うのです。その場合にどういう段階でこれがふえてくるのか、それは人体に対する障害としてどういう影響が考えられるのか、こういう結論が当然檜山さんの研究班でできていると思うのです。また計算が可能だと思うのです。その五十メガトンという前提に立って測定は当然可能だと思う。こういう結論はどういう結論が出ているのでしょうか。あの発表では拝見できなかった。しかし、むしろそこが問題だと私思うのですが、どうなんでしょうか。先生の科学者としての率直な御見解を聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/10
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011・都築正男
○都築参考人 今の問題はなかなかむずかしい問題なんでありますが、これはむしろ私がかりにそういう方面に関係しております科学者の一人という立場で言えとおっしゃいますと、実は何も言えないのでございますね。というのは、データがない。けれども、人間の一人として何か言ってみろということでありますれば何でも言える、こういうところなんであります。従って、お許しを得たら、一人の人間として、あるいは日本人としてという意味ならば申し上げられると思うのであります。というのは、なぜかと申しますと、これは外国に向っては私も言いたくないのですが、日本で今日先ほど申されましたストロンチウム九〇測定班というものができたとおっしゃいましたが、まだできていない。ただ作りたいということを文部省に申し出て、何がしかの金を四月とか五月とかに渡すからということで、それだけの話でやっているわけなんで、まだできていないのです。それは内輪の話でございますが、かりにできたとして、観念ながらそのデータの数がまだ少いのです。世界の大勢を動かすだけの分量がないのでございます。そういうわけでありますから、学問の立場からいいますと、それでどこの国が何と言ってもというわけにいかない。たとえば、人間の骨のストロンチウムをはかったのが日本では大体十なんです。十体ぐらいです。ところが、最近アメリカの雑誌タイムに発表されておりますコロンビア大学の人は、五百はかったというのです。五百のデータと十のデータでは、どんなに十が正確であっても、五百には幾らか押されると思いますね。ところが、五百はかった人の、それは、普通誌のタイムに書いてあるのですからわかりませんが、これはサイエンスという雑誌に発表されたんだそうですから、早く原文を見たいと思っておるのですが、測定の結果が非常にまちまちなんです。つまり、簡単に言えば、誤差と申しますか、まちまちであるので、場合によりますと、一番多いのは普遍の平均値の七十五倍のストロンチウムを持っておるとか、そんなことが書いてあったように思うのですが、そういうようなことで非常にまちまちで、平均値の三倍ないし四倍を持っておるものはたくさんあるということが書いてある。日本でもそうで、なかなか一致しない。それはそれとして、今おっしゃったように、現在まで相当程度の核分裂物質が成層圏に打ち上げられておりますので、成層圏の中にはストロンチウムを含むいろいろの核分裂物質が多量に貯蔵されているということは、学問的にも認められていることで、それが今度はどのくらいの早さで地上に落ちてくるかということについてのいろいろ学者の測定、つまり推定と申しますか、がありまして、それをまとめてみますと、十プラス・マイナス五年かかるであろうということになります。一番早い考え方が五年で、一番おそい考え方が十五年かかるであろう、今まで打ち上げられたものが今後落ちてくるまでに、というわけであります。そうして、それを大体平均いたしまして、かりに十年ということに考えますと、計算しようと思えばいろいろなことが計算できるわけです。ところが、一体どのくらい打ち上げたのだろうということは、日本では想像もできない。ただ外国の人がこのくらい打ち上げたのだとおっしゃれば、それを一応借りてきて、たとえば三十メガトンであるとか、五十メガトンという数字を借りてきて、それが五年で落ちるとしたらこのくらい落ちるであろう、十年で落ちるとしたらこのくらい落ちるであろうということは、計算ができるわけです。その場合に、今後そういう実験が起らなかったらどうかという一つの計算、それから今日までと同じようなレートでこれがずっと長く行われていったらどうなるかということと、大体大ざっぱに二つに分けて考えなければいけないだろうと思います。ところが、今日までの実験はこれでおしまいにして、今後はやらぬということでありますと、そういういろいろな計算をするにしても、割合に話が簡単になりまして、大体五年ないし六年くらいで——物理学的にいいますれば、十年も十五年もかかるかもしれませんが、生物ということを対象として考えますと、大体五年か六年くらいで大乱分のものは落ちてくると考えるのが、私はしかるべきじゃないかというふうに思うのであります。と申しますのは、そういうものが物理的の半減期というものによってだんだんに減って参ります。従って、それを非常に用心深く長目に考えてみましても、倍の十年という年数を見粘れば、大体全部落ちてしまうであろう。かりに十年で全部落ちてしまうといたしました場合に、どのくらい落ちてくるかということの問題になりますと、これはやはりリビーさんの説を借りてくるより仕方がないのです。大体リビーさんは、かりに三十メガトンというものが打ち上げられた場合に、それが全部落ちてきたとしたらどのくらいになるであろうか、これは地球の上に平等に落ちてきた場合ということを想像されての計算でありますが、大体一平方マイル当り十五ミリキューリーのストロンチウム九〇が落ちてくるだろう、大体一メガトンについて〇・五ミリキューリー・パー・スクェア・マイルというのですか、現在は国連の科学委員会では、一平方キロメートル当りミリキューリーでやろうということになっておりますので、平方マイルを平方キロメートルに直しますと、大体五幾ら、三分の一くらいになるのですが、大ざっぱにいって五ミリキューリーくらいになる、こういうことです。地面の上に、五ミリキューリー・パー・スクェア・キロメートルですか、たまった場合にどうなるか、こういう問題をわれわれとしては考えてみなければならぬと思うのです。大阪市立大学医学部の西脇教授の測定では、大阪市の大学のグラウンドの泥の上には、今日一平方キロメートル当り五ミリキューリーですか、がたまっておるような報告がなされておるようでありますので、大体そんなふうなことになるんじゃないかという気もいたします。東京でも立教大学の物理教室の道家さんの研究によりますと、最近まで大仲人内外ミリキューリー・パー・スクエア・キロメーターですか、そういう程度である、こういうことが言われておるわけでありますので、そういうところから考えまして、もし今日これから成層圏に打ち上げるようなそういう大きな核爆発実験をやらないということになりますれば、ほかのものは別として、その点からだけでは、人体にこれだけの障害が起るということは、むしろ考えられないといった方がいいんじゃないか、こういうふうに思います。
第二の問題である過去に行われたような同じレートで今後も実験が続けられたらどうなるかという問題は、過去を一体どこにとるかということで非常に違って参ります。この二、三年は非常によけいやられておるようでありますので、たとえば過去二年間に行われたような比率で今後も行われるということになりますと、十年くらいたちますと、われわれの大体大ざっぱな推定では——その点いまだ檜山、齋藤、私なんかで会ってはいろいろ計算して、何とかジュネーヴへ行くまでに大体日本人の計算の根本の考え方でもまとめておきたいというのでやってみておるのですが、過去二年間くらいの割合で実験が続いたとしたならば、今後十年間くらい後に、われわれの環境におけるいろいろなストロンチウムの汚染というものを考えて、人体の許容量に達する程度のものになるのではないかというふうなことが言われる。その場合に、ときどき間違いが起るのですが、環境が汚染された場合に、人体の許容量とどうかと考える場合に、ストロンチウム九〇のような、からだの中に入った放射性の物質に対する人体の許容量というものが、まだほんとうに学問的にきめられていないという点ははなはだ申しわけないのですが、今のところは、国際放射線防御委員会できめておりますことによりますと、例の一般に言われております一週間に三百ミリレントゲンというふうなことを土台として、それをからだの中に移して、ストロンチウム放射能と計算し直して、それが多分許容量であろうということに一応大ざっぱに目安を置いておるわけであります。そういうところから判断いたしますと、大体十年くらい後には、環境の汚染がもし人体と並行状態を保つようにそのときになっておるとすれば、人体の骨の中におけるストロンチウムの分量が安全率のぎりぎりのところ、いわゆる最大許容量というものに到達するかもしれないというふうな計算をこの間一応出してみたのです。また今日も夕方にもう一ぺん集まってこれをやるのです。やるたびに、いろいろな過程も違いますと値が変って参りますが、今までのところは、ごく簡単に数字をもう一度申しますと、過去二年間くらいの実験が今後も地球の各所で起るとしますれば、その爆発の起った局所の問題得別として、地球全体のこととして、それが等に振りまかれたとして考えてみますと、大体今後十年くらいたちますと、人体に対してはもうすでに安全度のぎりぎりのところまで到達するのではないかというふうな推定も一応はできるというところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/11
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012・岡良一
○岡委員 そこで、先ほど先生の御意見の中にありましたが、こういうファクターはやはり考慮する必要はないのでしょうか。今の先生の御推定あるいは檜山先生や日本の権威の方のお考えでは、今日まで行われたようなレートで核爆発実験が進められるならば、十年程度で人体の許容量に到達する。しかし、これは先ほど先生のお話のように、リビー方式というふうなものが大きく前提になっておるように思うのです。日本の場合、リビーさんの測定方法が正しいかどうかは別といたしましても、たとえばストロンチウム九〇の排泄が尿において多い。しかも、お野菜を非常に摂取をする。お野菜は、まだ遺憾ながら日本では化学肥料のみによって栽培されておるわけではありません。あるいは気象配置の問題にしても、やはり太平洋の実験というものと日本との気象的な関係というもので、専門家に言わすと、フォールアウトが上層圏を洗いながら日本に落下する公算が非常に多いともいわれているわけです。さらに国際的にも原子力発電というようなものがどんどん進められてくる。もちろん原子力発電については、その安全の保障は十分に講ぜられることではありましょうけれども、しかし、それにしてもやはり知らず知らずの間に蓄積されてくる放射線というものは、のがれられない。そういうあらゆるファクターを考えた場合に、やはりこれはいわばきわめて社会的な推定と申しましょうか、見方も生まれてくるのではないかと思うのでありますが、こういうファクターというものをお考えいただく必要があるのではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/12
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013・都築正男
○都築参考人 今おっしゃる通りでありまして、日本は日本独特のいろいろな、気象から始まって農業なんかの模様からわれわれの食生活に至るまで、全部のファクターをそれに入れてみなければならぬことはもちろん当然のことなんです。しかし、一々のファクターがみなわからないことだらけなんです。ちょっとどこかいじくりますと、最後の結論が非常に変ってくるので、それで一体どうしたらいいかということで、今毎日みんなで集まってはいろいろやっているわけなんです。結局根本の考え方として、気象の上でも、日本はどうも地球の上で何か特殊の地位を占めているのじゃないかということを気象学者がおっしゃる。けれども、一体どういうふうに特殊の事情にあるのだということになりますと、それはまだわからないと言う。それはすべてのところにそういうふうなことがありまして、これはどうしても、ことに日本といろいろな生活条件と申しますか、食生活が似ておりまする国は、割合に地球上に多い。そこに住んでおる人口も割合に多いような関係にありますので、そういう人々のためにも、日本としては何とかこれは早くはっきりさせるということが、非常に必要な問題じゃないかと思うのです。残念ながら現在までのところは、今おっしゃるように、そういうふうないろいろな因子を同時に考えなければならないということは、われわれも前から考えておるのでありますけれども、さてそれをどういう数字に表わして、ファクターをかけたらいいかということになりますと、そこのところがはっきりしない。それで、気象の方面で例の国際地球観測年というもので一つ全世界国際的にやってみようということになりました。それから、いろいろな地面の上に起っているというものは、われわれの関係しておりまする国連の科学委員会というもので案をきめて、各国政府に頼んで、できるだけ正確に、またできるだけ早く一通りのデータを得て、そういうものが地球上にどういうふうに分布するか、まんべんなく平等に分布するということを前提にして今まで議論しておりますが、果してどうであるか、あるいはどこかに多く、あるいはどこかに少く分布しておるかというここは、それは国連の科学委員会そのものがやるのでなくて、科学委員会がそうやった方がよかろうこいうことをきめますと、それを各国にやってくれということを依頼するわけです。同じことが各国の食生活というふうなものについても行われるということで、それがもし大体こういう方法でやったならばわかるということになりますれば、最後に、私の一番初めに申し上げました人体への影響というふうなところへ話が進んでいくのではないか。現在では、残念ながらファクターのいろいろなものが考えられ得るのでありますが、それを実際の数字としてあげ得るという階段には、日本はもちろんのこと、どこの国の人のデータを見ましても、それがまだはっきり出ていないというところに、われわれとしては非常に悩みと申しますか、因ったものだというふうな感じも持っております。これは不可能なことでないのであります。これを早くやって、正確な因子の数字の値を出して、それを組み合せてこうということになれば、今よりはもつとはっきりした将来の見通しというものが、幾らか学問的のデータを基礎として作り得るということが可能であると思います。ただ、いかにそれを努力するかということが問題になってくるのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/13
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014・岡良一
○岡委員 先生方の御努力にわれわれができるだけ努力をしていくなり、国会が理解を持ち、協力するということは、私どもの務めでもあり、今後そのように努めたいと思うのであります。実は、昨日、宇田原子委員長の御答弁の中に、こういう御意見があったわけです、今度いよいよクリスマス島水域で水爆の実験がある。英国政府は数メガトンと言っておりますから、相当大きなものだと思う。しかも一連の数メガトンですから、数回に分けてやることになるだろうと思います。そこで、ビキニのときには俊鶴丸が、御存じの通り、海洋魚類の汚染調査に参りました。去年エニウェトクのときも俊鶴丸が出かけました。今度は高空での爆発実験でございますから、直接海洋を汚染する心配はない、こう英国も申しておるので、海洋の調査船の派遣はしないという方針であるということを申しておられるわけなんです。これは専門的な先生のお立場でいかがなものでございましょうか。いかに高空でやるといたしましても、やはり人間のすることには私は限度があると思うので、相当の重量のものをそう成層圏の上にまで持っていってやるというわけにはいくまいと思います。そうなれば、通例の核爆発実験で言われておるクローズド・フォールアウトあるいはインターメディェート・フォールアウトというふうに、やはりその地域においては、クローズド・フォールアウトは相当あると私は思うのです。やはり日本とすれば、ストロンチウム・九〇の追究をやる上において、何といってもこの実験というものは、また同時にわれわれの追究測定の一番大きな場でもあるわけなんです。この前の俊鶴丸、二回目の場合なんかは、あまり参考になる資料がなかったかのようなことも私開いておるのでございますが、これも調査の時期等がやはり問題になるのじゃないかと思うのです。特にお魚の問題なんか、マグロなどについていえば、おそらくクローズド・フォールアウトの海面に達する時間が相当なものがあるかもしれません。そうなると、それはまずプランクトンが摂取する。小魚が次に食う。その次に大きなマグロが食うということになると、マグロの汚染にはかなりの時間的経過も考えられる。こういうことはやはり十分皆さんのような専門の権威の方と政府が打ち合せをせられながら、遺憾なきを期する。そうしてまた、ストロンチウム九〇の研究を十全にするためには、船を出して——いつ出すかということは十分御研究の上ですが、そうして、さしあたりは、やはりクローズド・フォールアウトの海面汚染、あるいは時間的な経過を経ての魚類の汚染などを十分探究していくという意味で船を出すべきじゃないか、私どもはそう考えておるわけなんです。研究者としての立場から、先生のお考えはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/14
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015・都築正男
○都築参考人 その問題は、私直接は関係していない問題なんでございますが、間接にはいろいろ関係があるのであります。これは純学問的の立場に立ちますと、こういう大きな実験をやるのがいいのか悪いのかということは全く別問題にしまして、自然にか、あるいは人工的にか、そういう大きな爆発があるというようなことであれば、われわれとしては、その度ごとに研究してみたいのです。ですから、何べんでもやってみて、そうして、こういう影響があったのだということを、害があるとかないとかいう大ざっぱなことでなく、一々数字的のデータを得て、ちゃんと記録にとって、よく考えてみたいというのが、研究に従事している全体の人間の偽わらざる根本の考え方であろうと思うのであります。いろんなほかの事情もおありになるでしょうから、それができないということであれば、それなら一つこういう方法でということで、第二、第三の方法が考えられると思うのであります。今申されたように、高空でやるのだから、その辺の海には影響なかろうというお話には、私も、私個人としてはそうでございますといってすぐ同意しかねるように思うのです。というのは、今もおっしゃいましたが、人間のやることですから、高いところでやろうと思っても、それを、上を向けたやつがちょっと横向くということが、イギリス人だから慎重にやるかもしれませんが、ある。アメリカでもこの前、計算を掛違えたということをあとで白状いたしましたから、あり得ることでありますから、できれば調査してみたいのです。けれども、今度は船を出さぬとかいうお話ですから、魚を何とかして、どこででもいいから近所でつかまえた魚があったら、ぜひ集めて調査するということの必要はあるんじゃないかというふうなお話もあったように聞いておりますが、そういう意味で調査すべきではないか。その次に申し上げますことは、そういうことをこういうところで申していいのか悪いのか知りませんが、内輪の話として聞いていただきたいと思うのです、これまで二回俊鶴丸という船が出まして、私乗って参ったわけではないのですが、私も背少し船に乗っておった経験がありますから、その経験から想像しますと、どうもあの船は一口に言うと感心しない。ほんとうに学問の研究を打ち込んでやろうというためには、どうもあの船は小さすぎる、設備も悪い、間に合せの船だ、こういうことは裏向きに大きな声で言うのはどうか知りませんが、内輪の話としては申し上げてもいいのではないかと思うのです。従って、純学問的の立場によれば、たとえば外国で始終そういうことを定期的にやる。ほんとうにルーティン・ワークとしてやっているような調査の船——日本にはそういうものの調査の研究所というものも現在ない事情であります。そういう研究所並びにその付属の研究の船、たまにはその船でゆっくり休養もしながら、落ち着いて勉強もできるというような調査の船というものもやはり持ちたいということは、関係者が一様に望んでおるところであります。むろん、そういうむずかしい仕事でありますから、そう安楽に調査をしょうなんてだれも考えてはおりませんが、自分の健康ということを非常に心配をしながら、なおかついろいろな調査をしなければならないという状況に追い込むということは、研究者として非常に困ることではないか。できるならば、そういう心配のないようにして、十分な研究がおできになるようなことも一つやってあげたらどうだろうかということを考えております。そういう方面に一つ各方面の御助力が願えたならば非常に部分がいいが、その上で、できるならば、そんな核爆発があってもなくても、さっき申し上げたような考えで、今後五年とか十年とかいう職は、やはりわれわれのぐるりの環境は私業真剣に調べてみるということが、われわれに課せられた自任とでも申しますか、そういうふうに考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/15
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016・岡良一
○岡委員 もう一つ、これも先生の率直な御意見を科学者としての立場からお聞かせ願いたいと思うのですが、先般国際連合では、いわゆる核兵器を最終的には禁止されることを期待するが、これは現実に困難であるから、段階的にこれを実現することとし、とりあえず核兵器の爆発実験については、国際連合にこれを登録する。同時にまた、国際連合事務総長並びに国際連合科学委員会に対して、全放射能総量並びにその推移については、国連がこれを調査すべきことを勧告する、こういう提案をこの間日本の澄田代表がしているわけです。あのときに、一向スエーデンは出さなかったようでありますが、せっかくこの平和利用の普及のためにも、いずれは放射能の人体に対する影響の調査は重要な問題であるから、科学委員会が正しい科学的な結論を出すまでは、二ヵ年間核爆発実験は停止すべきである、こういう決議案をスエーデンは出そうとした。これは第一委員会に出なかったようです。この前段階の、わが方が参加した共同決議案、スエーデンが出した決議案、いま一つは、われわれはこの際率直に原水爆の全面禁止をうたうべきである、ソビエトが出しているからその肩を持つというのではなく、日本は日本独自の立場から出すベきだと考えております。これはいろいろストロンチウム九〇を中心とし、放射能のことで多年御努力を願い、かつまたその資料については世界的に権威づけられている、そういう御努力の中心に立っておられる科学者としての先生の、この三つの案に対していずれが科学者の良心に従うべきものであると思われるかという点に対する率直な御意見を、この機会にお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/16
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017・都築正男
○都築参考人 これも、科学者ということではなかなかむずかしいですが、学問に関係している一人の日本人としてという立場で申し上げさしていただきたい。そうすれば、今の三つのお話は、私第三が一番賛成です。第一、第二は、もし階段を踏んでいかなければならぬとおっしゃれば踏んでもいいですが、最後は第三だと思います。というのは、第一はなぜいけないか——いけないといって反対するわけではないですが、国連の現在の科学委員会は、何も研究の手足を持っていない。国連から各国の政府に頼んで奥まった資料をただ集めて、それから何か最大公約数的の結論を引きずり出そうということをする会なんですね。ところが一方において、この科学委員会が来年七月に結論を出すその前後において、一つの特殊な機関を作ろうという動きがある。たとえばWHOであるとかFAOであるとかILOとかいう特殊の機関を作って、そこでこういう問題を長く研究していこうという考え方が動いているように私感じております。それが実現いたしますかどうかわかりませんが、もしそういうふうになれば、今の第一の実としての研究というものが促進されると思います。そういう研究を国際的に共同でやることを実行するという段階になった場合は、やはりいつどのくらいの大きさのものがどこで爆発されるかということが、あらかじめわかっていることが非常に都合がいいのであります。そうすれば、あらかじめいろいろ用意をしておいて、事前から研究しておって、そら今爆発したからどうなったということで観測することにしなければならない。従って、国際的のそういう観測陣を実現しようとする際には、どうしてもあらかじめ爆発することを届け出て、いつ、どこで、どのくらいの大きさのものをやるということにならないと、そういう観測陣ができましても、どこででも勝手にやって、それからあわてふためいて今度は観測陣がかけつけるということでは間に合わない。そういうことでは、われわれ十何年かたびたびやらされての経験で困るのです。わけのわからないところで勝手なことをやられて、そうかというわけで、あわてていろいろなものをかついでかけつけるんじゃ、もう間に合わないということがありますので、そういう意味から言ったら、第一の提案は一応筋が通っているように見えるのですが、何だかもの足りないような気がいたします。第二の案は、スエーデンの考えとかいうんですが、スエーデンの代表はなかなかしっかりしている人なんですね。シーベルトといいまして、あんまりものを言わないんです。というのは、英語があまり上手でないんで言わないんですが、短かい言葉でなかなかうまいことを言うんです。そういうスエーデンからの提案だということで、これも非常におもしろいんですが、科学委員会が結論を出すまでは一応やめとこうじゃないかということは、それは非常にけっこうなんです。ところが、科学委員会が一体いつ結論を出せるかということを私たち考えてみますと、結論は出しましょう。けれども、ほんとうに皆さんが期待されておられるに十分値するだけの結論が出るかということになりますと、簡単に一言で言えば、出ない。というのは、来年の七月に今申しましたようなことを全部調べ上げて、数字でちゃんとはかって、こうだという結論を出すことはできないと思います。ですから、私の考えでは、結局来年の七月に出す結論は、こういうことと、こういうことと、こういうことが重要なことだから、こういうことに対してはこういう研究をすべきである。こういうことに対しては、こういう仕組みで研究すべきである。そうすれば必ずこういう結論が出てくるという、その仕組みに対する結論が出ると思うんですね。そういう意味で私たちは努力しているつもりですが、そういう意味から申しますと、結論が出るまで二年間やめとけというのは、一見ちょっといいようでありますけれども、その当事者——当事者というか、科学委員会の関係の身になって考えてみますと、二年たっても三年たってもほんとうの結論は出ないんだから、それじゃ結論が出るまで何十年でも待つかということになりましたときに、そうはいかないだろうと思います。ですから、その考え方もどうももの足りないような気がいたします。従って、第一も第二も少しもの足りないような気がするので、結局第三のことが実現できれば一番いい。よく人が私に笑いごとを言って、お前、原水爆の実験がやめになったら失業だろうと言うのですが、さっき申しましたように、今後十年間は失業いたしませんから、それより前に私が人間を失業するかもしれない。その心配はない。これは冗談のようにお開きになるかもしれませんが、実際の問題ですね。たとい今やめても、今後十年くらいは研究する必要がある重大な問題でありますけれども、二十年も三十年もこういうことの研究にわれわれの子供、孫を苦労させたくないということを、私は一人の子供の親として感じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/17
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018・岡良一
○岡委員 先生にいろいろお教えをいただいたわけですが、せっかく日本の科学者の皆さんがこの問題と取っ組んでいただいていることに対するバック・アップとしての政府内の努力には、まだまだ今後考えなければならぬ面があることがよくわかりました。十年たてば許容量に達するが、それまではいいだろうというような問題ではもちろんなくて、おそらく先生の御真意は、せっかく世界の科学者が探究をし、実現をした原子力の開放を人間の不幸のために使うのではなく、やはり人類の福祉と文明の発展に使えというヒューマニストとしての商い良心からは、第三の道を選ぶべきであるという御真意と私は理解しているわけです。
せっかく先生に来ていただいたので、実はこの委員会にアイソトープに関する放射医学総合研究所についての法案が提出されることになったのですが、これについてこの機会に先生から、将来の運営のあり方、制度のあり方などについて忌憚のない御意見を伺いたいと思います。特に先生は、放射線の予防医学と関連して、この問題に大きな関心をこの前の国会でも派しておられますので、ぜひこの機会にお聞かせを願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/18
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019・都築正男
○都築参考人 今、予定されておりまする放射医学総合研究所というものを、どういうふうに作るべきであるかという問題につきましては、私もあの当時学術会議の専門委員の一人としていろいろ御相談にあずかったのでありますが、日本におきましては、従来国立の医学に関係する研究所としては、人体に影響を持つであろういろいろのものに対して、たとえば伝染病に対しての研究所、あるいは食物というふうなものに対する研究所、栄養に対する研究所というようなものがいろいろあるのですが、放射線に対しては、医学の方面での国立の研究所というものがこれまでない。それは私たち非常に残念に思っているところであります。ことに、この問題が非常に重要視されて、多くの人の関心を持たれるようになりましたここ十何年かの間、いろいろ国際的の関連もありましたときに、日本では一体どこでそれをやっているのだということを外国の人に聞かれますときに、実際、正直なところ、返事ができないのです。それで、委員会でやっているのだと言うわけです。そうすると、その委員会というのは、ターミネートのコミッティかと聞かれる。いや、ターミナルでなく、テンポラリーだと答えるわけです。(笑声)表向きは、文部省の科学研究所の総合研究班でやっているのですが、あれは三年区切りなので、毎年々々いろいろな理由をつけて申し出て、何とかとにかくいまだに続けているのです。それから厚生省の関係もありますが、一時的と言っては差しさわりがあるかもしれませんが、みなまあ一時的のもので、そこにフル・タイムに働いている人間はなくて、みな何かほかの仕事をしている者を、ちょっと来いということでやっているようなことで、これははなはだ申訳ないここです。よく外国で、日本ではそういうことを一体どこへ取り次いだらわかるのかと聞かれる。どこへ取り次いだらいいか知らないが、私のところへ手紙を下さい、何とかテーク・ケアしますというようなことでお茶を濁している。そういうことからいって、国立の研究所ができることは、趣旨において私も非常に賛成であり、かつ事柄が人類の将来ということに対して重大な関係を持ちますので、非常にいい。御承知の通り、現在の計画では、この研究所が科学技術庁に付置されるように私は承っておりますが、初めは文部省関係、厚生省関係、いろいろその当時話があったらしいのですが、一木になってやることが非常に性格の上からいってむずかしいのでありまして、一つは基礎的な問題をどうしても総合的に取り扱わなければならないという性格は、それはどこまでも持たなければならないものだと私は思う。と同時に、これは先ほどから問題になりましたような、実世界に直結しておる問題が多々あり、従って、行政の実施面と直結しておる問題も多分に取り扱わなければならぬ。こういうことから申しますと、今予定されておる機構では、少し小さ過ぎるのではないかと思います。行政方面に直結しておる問題というのは、これまでいろいろ医学関係の方面で、それからそれに国連を持ちます農業方面とか遺伝の方面とかあるいはそれぞれの研究所がありますから、そういうところと連絡をすれば、相当仕掛はできるんじゃないかと思います。そういう意味で、性格から申しまして、これはやはり基礎的のこういう方面の研究もやる、同時に実際方面にも関係を持ってやる。従って、総合しますと、基礎的方面というものも、何十年か何百年先には実際面に影響するかもしれぬというふうな純基礎的の問題はむしろやらないで、割合に早く実際面と連結をするような基礎的方面ということにまず力を尽すべきではないかと思います。ところが、先ほどから申しますように、こういう問題が、国内でもあるいは国際的にでも、日に日にわれわれの身近に迫っておりますので、今の予定では、何か三十二年の七月から発足して三年間でとかいう話ですが、三年も先になってできたのでは、もう間に合わないじゃないかという気もいたしますので、何とかもうちょっと早く実際の仕事ができるように運営できないものであろうかということを、われわれ陰ながらひそかに心配しておるわけであります。そういうことで、これまでできましたほかの研究所と少し違いまして、実際の必要に応じて生まれかけておる研究所でありますので、生まれる前から何か仕事でもしていかなければならぬかという気がいたしますから、何とかして早くそういう仕事が軌道に乗って、そこに優秀な人材が集まって、人類のために十分成果を上げることができますように、私としても陰ながら祈っております。それにつきましては、各方面の絶大なる御援助を得ることができましたならば、はなはだ幸いではないかと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/19
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020・岡良一
○岡委員 先生の貴重な時間を私一人でずいぶん長く占めまして、ありがとうございました。先生は、放射能関係の医学では、湯川博士にも匹敵するわれわれのホープでありますから、国連科学委員会で十分御健闘いただくことを心から念願いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/20
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021・菅野和太郎
○菅野委員長 松前君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/21
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022・松前重義
○松前委員 私がお尋ねしようと思いましたことは、岡委員からほとんど全部聞かれまして、大体のことはわかりました。特に一番最後の結論として、放射線医学総合研究所と空間の汚染に対する調査研究機関との関係につきましての御意見は、非常に重大な問題であると思うのであります。
そこで一つ、それに関連いたしまして御意見を承わりたいと思いますのは、アメリカの放射能医学研究所とでも申しますか、そこでは健康と放射能の関係につきまして、やはり世界の空中汚染のデータを集めて、非常に能率的にその測定をやって、世界にどういうふうな爆発の影響があるかということを、地球上のすべてに対して大体網羅してやっておるようであります。そのやり方については、非常に敬意を表したのであります。また、いろいろ原子力発電とかあるいはまたアイソトープの利用とかいうような問題がだんだん展開されて参りますと、この研究所と申しますか、調査機関は、多少行政的な面に関与しなければならぬようになるかと思うのであります。アメリカの研究所は、多少行政的な面に食い込んでおるような感じがいたすのでありますが、そうすれば、今の放射線総合医学研究所のような姿で一体これが中央機関たり得るかどうか、日本だけの問題ではなくて世界的な問題ですから、やはり世界に眼をそそいで、世界のデータを集める、そういう機関であると同時に、国内においてはやはり放射能に関する医学的な、多少行政的な面をつかさどるというようなことになりますから、小規模な姿で自分だけが研究しておればいいという姿では、とてもやっていけないのではないかという感じがしております。この点について、アメリカその他の実情をよく御存じの先生から御意見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/22
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023・都築正男
○都築参考人 今の松前委員の御意見、私も非常に賛成なんでありまして、本来の姿からいえば、行政面の実施機関としての機能も発揮できればというふうな考え方は当然起ってくるわけでありますが、実際の問題として、アメリカの実情を見ましても、実際面の仕事を全部引き受けるということは、大へん大きな世帯になりまして、それはとうていできないことでありますので、たとえば空気の汚染というふうなものは、当っておるかどうか知りませんが、日本の現在の状況から、たとえば気象庁のようなところで十分にやっていただく。それからいろいろな食物の汚染というようなものは、衛生試験所みたいなところで実際は十分にやっていただく。けれども、こういう放射線医学の総合研究所ができれば、そういうようなものと常に連絡をとって、その基礎的ないしは実際面に移すいろいろな測定法をきめることであるとかなんとかいうようなことは、そういうところでやって、実際の大かがりな日本全国に網を広げてやるということは、やはりそういう特殊の行政機構の中でやっていただいて、それを総合してというような意味であります。この名前の放射線医学総合研究所の総合という意味は、初めはそういうような総合するという意味でできたでのではないと思うのであります。ほかのいきさつでできたのでありますが、私としてはそういう総合という字がついておるのだから、総合という意味は、何も自分だけのところに集めて自分だけが偉くなるという意味ではなくて、連絡係というような意味の、そういう各方面の連絡をとってやるということをやはり相当に重視すべきではないか、いたずらに機構を大きくして、何もかもそこでやるということよりも、日本の現状からいえば、やはりいろいろなところで、それぞれ適当なところでやっていただいたものを密に連絡をとって、りっぱな全体としての成果をあげるというふうに持っていく方がいいのではないかというふうなことも考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/23
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024・菅野和太郎
○菅野委員長 齋藤君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/24
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025・齋藤憲三
○齋藤委員 ただいまの問題に関してでありますが、先ほど都築博士は、放射線医学総合研究所のあり方につきまして、その基礎問題の総合をやらなければいかぬ、それから実際面の問題をやらなければいかぬ、今のお話では、総合的というものは連絡調整というふうにもお考えのようでありますが、私たちといたしましては、これからこの放射線医学総合研究所のあり方につきまして検討を加えていかなければなりませんのですが、これはわれわれにとりまして非常にむずかしい問題だろうと考えておるのであります。むずかしく言いますと、総合という文字の解釈、及び医学というものに包含されるべきところの範疇、しかもそれが特殊の放射線に関しましては、先ほど岡委員からもありましたように、プランクトンを小魚が食って、そいつをマグロが食って、それを人間が食うというような、いわゆる人体に及ぼす医学的な基礎研究というようなところまで包含して参りますと、これはお話のように非常な大規模なものになってしまう。かといってこれを食糧研究所みたいなものに託してこれと連絡をとっていくということになれば、単なる政令の規定ではこういうものは実現不可能にも陥るのじゃないか、そういうふうにもいろいろ考えられるのです。まあ三年計画というのですから、その間に改廃はできると思いますが、どういうふうな構想で出発するのが一番正しいのか、これは御即答をお願いいたしましても、なかなか先生にもむずかしいかと思いまするから、もし御即答願えませんでしたならば、いずれまたごく近い機会に何かお考えをまとめてお教え願う、そういうふうにしていただきたいと私は思います。もし何かそれに対する御意見が今お伺いできまするならば、一言だけお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/25
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026・都築正男
○都築参考人 大体それについての私の感じは、こういう感じでございます。と申しますのは、先ほどもちょっと説明いたしましたが、この十何年間か、こういう問題に関連して、関係の人間が、人数は全体としてはずいぶん大きくなりますが、いろいろ違った学問の分野の人間がとにかく一つの目的といいますか、ある方向に向って一緒に仕事をしてきたわけです。それで、その経験から申しますと、現在までやってきました仕事のいろいろ委員会の規則なんか見ましても、連絡をどうしようなんということはちっとも書いてないのです。別々の委員会で、その中に働く人間がお互いに共通しているような人間がたくさんありまして、それがお互いに連絡して、何ということなしにやってきた。そういうふうな仕組みが、もしこういう研究所ができるとすれば、そういうところにもやはり同じように進んで狂われていくことができるのではないかと思うのです。それで、日本では由来いろいろな名前の違った、仕組みの違う研究所というものがそれぞれ独立して、皆さんのところで、小さいなりに、ほかにあまり厄介にならないで、そこだけで何事かやっていこうというふうな傾向がありましたことは、私は非常に遺憾に思っておるのであります。この問題が、むしろ反対に申しますと、割に早い時期にこういうふうな国立の研究所ができなくて、みなを十何年間か苦しめていたということで、なるほどそうかということで、その苦労が関係者みなにしみ込んでいるのです。従って、その中心となるべきものがどこかに一つできれば、その連絡場所でもいいのですが、そういうものができれば、非常にそれがうまくいくだろうと思います。現在のところは、われわれがいろいろなことを連絡をとるといったって、なかなか連絡が大へんなんですが、そういう一つの中心というふうなものがここでできれば、それに関係するものが全部、どんな官庁の研究所であろうと大学であろうと何であろうと、全部そこへ集まってきて一緒にやる。そうして、お互いに話して、また自分のところに帰ってそれぞれやる。そこにいる人はそこにいる人でやるということで、どうも私は存外——この規則の面の上からだけ御心配なさる点もあるようでございますが、実際の面は割合にうまくいくのではないかというふうな気がいたします。それだけ申し上げておきます。具体的のことは私直接関係しておりませんのでよくわかりませんが、今そういう感じを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/26
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027・菅野和太郎
○菅野委員長 石野久男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/27
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028・石野久男
○石野委員 私は、都築博士に、これはいろいろと諸先生の方からも質問がありましたが、きわめて現実的な問題でについて伺いたいと思います。特に放射線総合医学研究所などが急速に作られることが必要だということは私ども痛切に感じておるのですが、ただ日本の現在の実情では、こういう研究所やあるいは総合研究所などできる地域における多くの人々は、ストロンチウム九〇の人体に及ぼす影響が非常に大きいということを一そう強く感じておるように思います。そういう建前から、これらの総合研究所とか原子力研究所ができます茨城県、あるいはまた新しく炉を置こうとしている伏見などの地域の人々が非常に弊害を顧慮して、いろいろな立場からこういうものができないようにという運動などを起しているというような実情でございます。そこで、茨城県の場合といたしますると、あそこにあの原子力の研究所ができ、また新らしい総合研究所ができようとする場所は、海辺に近いので、ほとんど多くの人々は、弊害はそう多くないだろうという考え方をしております。最近気象学的な立場から見ますると、あそこでいろいろ出た空中汚染されたものが、気流の関係や何かなどで、水戸の地域へ吹きだまりになるということが非常に言われるようになってきておるのです。こういうことからいろいろな面で、あそこでも作業を開始することは反対だとかなんとかいう声も出てきております。これはしかし日本の実際の原子力を研究し、またこの方面を発展させようとする立場から申しますと、残念なんですが、先生にこの際、ストロンチウム九〇の空中汚染の度合いが人体に及ぼす影響に関連して、あの東海村にできます原子力の研究所、または新しくこういう放射線給食医学研究所などができますことによって起きる空中汚染が、そういう吹きだまりになる水戸地域等に、どういうふうな影響を与えてくるだろうか。それはあまりそう心配すべきことではないのか、また現状のままであればそういう心配が起きるとするならば、何かそれを防備するような処置を研究所の中でできるものなのか、現状ではそういう処置をしておるというふうに見ていいのかどうか、そういう点についてお教えを願いたい。御意見なども承わりたいと思いますので、御所見を一つお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/28
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029・都築正男
○都築参考人 その問題は、実は私の専門の外でもありますし、それから、全く関係してないことでありますから、東海村のことに関しましてはちょっと私すぐどうこうということは申せないのですが、率直に申しまして、現在のわれわれの知り得ている学問の程度から申しますと、こういう問題に対しては日本が狭いということだけは事実なんですね。日本の国というものは狭い、人が多過ぎる。それでアメリカあるいはロシヤのような考え方からいいますと、日本はどこを探しても、そういうものを置くところがないということは、一般論としては費えると思います。けれども、どうしても日本の将来の幸福のためにそういうものを置かなければならぬということになれば、現在だんだんにそういうことが遊歩して参りまして、アメリカでも特殊の防御装置を完備したものが町の中に、あるいは病院の中にも作るようになりましたので、それと全く同じものを日本に持ち込んでくれば、今申しましたような御心配は全然ない、こう申してもいいと思うのであります。従って、その場合にやはり安全率というものを相当に高く見て、あらかじめ用意しておかなければいけないということは、当然言えるだろうと思います。今日まで日本でいろいろこういうふうな危険な事業が始まりますときに、どうも日本ではまあよかろうというふうなことで、何か起りそうなときになってからでよかろうじゃないかというふうなことがあります。それは卑近な例ですが、私医者をやっておりますので、いろいろな病人さんにいろいろな話をするときに、そのぐらいのことなら先生いいじゃないですかという話をよく聞くことがあります。そういうのと同じような考えだと思います。ことにこういうことは、一たん害が起りますと、その個人にそう言ってもなかなか治療がむずかしいし、また一方子孫にも影響するかもしれないというような問題で、非常に深刻な問題でありますので、まあいいだろうというふうなことは一つ全部考え方を改めて、安全の上にも安全というのですか、例の石橋をたたいて渡るというふうな態度を一つあらゆる部面の方が持っていただかなければならぬ。従って、そういう意味から申しますと、これまでありました産業形態の考え方を全く考え改めてやらなければならぬ問題ではないかというふうにも考えております。
これはまあ一般論でありまして、水戸の町にどういうふうに気流が流れていくかということは私は存じませんが、そういうふうな意味で進めていけば心配はないということは、十分言えると思うのであります。この放射線の医学の研究所の方は、何もそう毒を振りまく研究所ではないので、むしろ毒を吸い取る方の研究所でありますから、それは心配ないのだと思いますが、ただし、その中には、相当に強力な放射線を発生するものも装置されるように伺っておりますので、あるいはそういうところに働く人間については、相当の顧慮をあらかじめしておかなければならぬ、こういうのであります。普通の原子炉の発電所の煙突からは、ストロンチウム九〇は、今日まで計画されておる発電所の原子炉では、ほとんど出ないことになっておりますので、その点は心配ないと思うのですが、あとの灰をいろいろな化学的の処理をするというふうな場合は、相当に設備その他にあらかじめ安全率をとった注意をするということができれば、現在のところは、周囲の人に危険を及ぼすという心配はないのじゃないか、こう思います。ところが、日本で今後非常に大きな発電所をたくさん作るというような問題が考えられます際には、さてそれをどこへ作るかということになりますと、これはなかなかむずかしい問題だと思います。交通が便利であって、そうしていろいろなものを運ぶにも便利なところであって、人が住んでないところであって、平らな広いところを探そうというのは、日本にとって非常にむずかしい問題で、原子力を平和的に使いたいということは私も非常に念願いたしますが、その問題を一体そういう方面の専門家が今後どういうふうに打開されるかということについては、私直接の専門でないだけに、非常に興味をもってながめておるということなのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/29
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030・菅野和太郎
○菅野委員長 参考人よりの意見聴取はこの程度にとどめます。
参考人には、御多用中のところ、長時間にわたり貴重なる御意見の開陳を賜わりまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、私より厚く御礼を申し上げます。
次会は明七日午前十時より開会し、日本科学技術情報センター法案につきまして、参考人より意見聴取を行います。
本日これにて散会いたします。
午後零時十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102603913X01119570306/30
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