1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十二年三月二十八日(木曜日)
午前十時三十一分開議
出席委員
委員長 五十嵐吉藏君
理事 川村善八郎君 理事 志賀健次郎君
理事 鈴木周次郎君 理事 薄田 美朝君
理事 竹谷源太郎君 理事 渡辺 惣蔵君
愛知 揆一君 伊藤 郷一君
椎名悦三郎君 林 唯義君
松澤 雄藏君 三浦 一雄君
井谷 正吉君 川村 継義君
北山 愛郎君 小平 忠君
出席国務大臣
内閣総理大臣 岸 信介君
国 務 大 臣 石井光次郎君
国 務 大 臣 宇田 耕一君
出席政府委員
北海道開発政務
次官 中山 榮一君
北海道開発庁次
長 田上 辰雄君
経済企画政務次
官 井村 徳二君
総理府事務官
(経済企画庁開
発部長) 植田 俊雄君
—————————————
三月二十八日
委員瀬戸山三男君及び本名武君辞任につき、そ
の補欠として松澤雄藏君及び三浦一雄君が議長
の指名で委員に選任された。
—————————————
本日の会議に付した案件
北海道開発公庫法の一部を改正する法律案(内
閣提出第六五号)
東北興業株式会社法の一部を改正する法律案(
内閣提出第九七号)
東北開発促進法案(内閣提出第一一九号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/0
-
001・五十嵐吉藏
○五十嵐委員長 これより会議を開きます。
北海道開発公庫法の一部を改正する法律案、東北興業株式会社法の一部を改正する法律案及び東北開発促進法案、以上三案を一括して議題とし、質疑に入ります。三浦一雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/1
-
002・三浦一雄
○三浦委員 東北開発の問題は、去る二十一国会におきまして鳩山総理大臣から、わが国の国民経済の復興等の大きい見地から、北海道の開発と相並んで、東北の開発をすることは最も緊要なことであるということを声明せられ、その後二ヵ年にわたりまして、東北開発に関する政府からの周到な調査等も進められ、このたび関係の三法案を提出するに至りましたことは、われわれのまことに欣快とするところであります。しかしながら、私たちはこの三法案をめぐって国策を展開するに当りまして、どうしてもここに基本的な問題がございまするし、かつまた、東北開発に関する限り、過去の歴史的事情を見ずには、できないものがあり、われわれがこれを強く推進するためには、考えなければならぬ問題を多々包蔵しておるのであります。すなわち、東北振興もしくは開発に関しましては、明治、大正、昭和の三代にわたって、しばしば計画せられ、実施せられたのでありますけれども、遺憾ながら現状を見まする場合には、その計画が周到を欠くか、あるいは政府の熱意が足らないためか、中道にしていわば挫折しており、有終の美をおさめておらぬことは、これははっきりしているのであります。私は、ここに将来のこの東北開発を推進する上に、過去の事跡をかんがみつつ、この問題を理解しなければならぬと思うのであります。
すなわち、明治年代における東北の開発は、まず当時の明治政府の一番の対策である、華士族の授産等からくる開拓から始まっているのであります。すなわち明治初年におきまして、当時の内務省に開墾局を設けて開拓することになった。それは武士階級の失業救済を端緒にしておったのであります。しかしながら広大なる地域を持つ東北に対しまして、大久保内務卿は、当時安積地帯あるいはその他の数地点を選んで、大規模な開拓をしようということになったのが見るべきものでありましょう。かつまた、当時の殖産興業の見地から、前田正名等は興業意見書を提唱いたしまして、いろいろな施設を東北にも呼びかけたのであります。しかしながら、農業の立地条件に合わない、お茶をやらせたり、あるいは砂糖をやらせたりというようなことで、これは失敗の跡を見ておる。ただ残されたのは、養蚕が入ったような程度のものであります。当時の計画として、かりに見るべきものありとするならば、北上、阿武隈の両川を差しはさんで、そこに運河を作り、そこに野蒜港を修築して開拓開港場にするとか、あるいは秋田県における米代川、雄物川を八郎潟に導入して、そこに開港場を作るといふうなこともあったのでありまして、当時千二百万円の起債を起してこれに当るということになったのでございますが、結局、野蒜港の修築も失敗し、ただ、宮城、岩手、秋田県のいわば新道を開発するという程度にとどまったのであります。同時に、三島福島県令のごときは、いわゆる会津の国道を開さくいたしまして、その交通の便は開きましたが、当時喜多方事件等を起した非常な弾圧を加えたような事跡も、これには残されておるということであったのであります。
さようでございますから、明治年代における初期の東北に関する開発等も、いわば伸びない状態にあったのであります。のみならず、東北は遺憾ながら政治的地位におきまして、当時戊申の役のために、会津藩を初め東北の雄藩という雄藩は時勢におくれておったために、全部当時のいわゆる保守、佐幕派になっておる。かるがゆえに、政治的地位も非常に劣っており、何ら発言権もないということで、林政の面におきましても、現在なおその跡を引いておるのでございますが、明治九年の地租改正におきましても、ほとんど大部分は当時の慣行そのままを強力に取り入れて、国有林等に変ってしまった、林地の利用を民間からはばんでしまったというようなこと。さらにまた、地租におきましても同様でございまして、東北は、明治年代における大きな政治問題としての地租の過重であるということも、当時残されておったのであります。それから農業政策として一番大切であった土地改革等につきましても、何ら手が触れられない、そうして農奴にひとしい小作制度が持続せられるということにもなり、明治初年から実施され、推進された北海道に関する積極的な開拓政策とは事変り、東北に関しましては、ほとんどその成果を上げ得なかったのであります。
ことに明治の末期に至りまするや、日本は大陸方面にどうしても国力を進出せなければならない、勢い、これに関する施設は西南地方に局限されて参る。すなわち朝鮮、台湾あるいは満州方面に対する関係から、西南地方の施設が充実されざるのやむを得ない事情になって参る。港湾にいたしましても、道路にいたしましても、あるいはこれらに伴う諸般の施設等も、逐次それに移行せられたのでございますが、不幸にして東北には成果を上ぐべき開発計画が進んでおらなかったということであります。
さらに東北開発の問題につきましては、しばしば東北、北海道に起りまするところの冷害等の災害に基く救済事業を契機にして提唱されたことは、これは無視できない。大正年代に入りまするや大正二年の大冷害は北海道、東北のみならず、関東地方にまで一部及んだ非常に大きな災害であったのでございますが、たまたまこの大冷害に際しまして、当時原敬を中心とする東北振興会というのが組織され、財界の指導的地位にありました渋沢栄一さんがこれらについて非常に努力せられ、それを中心にしてどういうことをやったかと申しますと、資金を募って肥料、農具の購入、あるいはシイタケのような副業をやるとか、養蚕をやらせるとか、あるいは産業組合であるとか、耕地整理組合の結成を促進するとか、そういうようなことが当時の東北振興会の提唱によって若干進められたのであります。同時に、造林事業を促進したいということから、国有林の開放を叫び、そして一番政治問題であるところの地価の修正の減税の問題等を提唱して参りました。さらにまた、東北の特殊な事情にかんがみまして、家畜輸送の鉄道運賃の逓減であるとか、あるいは養蚕の奨励というようなものを打ち出して参ったのでございますけれども、これらは、いわば民間の救済運動にすぎなかったのであります。当時この振興会が中心として打ち出した問題は、地価を修正して減税してもらいたいということ、それから運賃の逓減によって畜産業の振興をはかってもらいたいということ、同時にまた、養蚕を導入して農家の経済を安定してもらいたいということが政策の中心であり、かつまた、国有林野の広範なる開放を期待し、植林、開墾、牧畜等を推進したいということ、同時にまた、勧業銀行を通じて低利資金を供給したいというようなこと、最後に政策として見るべきものとしては、その当時すでに東北拓殖公社というふうな構想のもとに、これを一つ作ってもらいたいということを提唱したのでございましたけれども、当時は政府がこれに対して積極的な施策を打ち出すということにはきまりませんでした。かるがゆえに、この東北振興会の結成を見ましても、東北の名産の品評会をやるとか、あるいはこれに類似するようなことをやったにすぎませんでした。同時に大正七年の米価暴騰の際には、若干の救済米をやったにすぎないということであり、近代産業としての発展は何ら見るべきものがなかったのでございまして、現在の磐城セメントの前身であった日の出セメントがわずかに八戸市に建設されたにすぎない。かくして大正年代には、何ら施策することなくして過ぎたのでありました。
昭和年代に入りまして再び東北振興の問題が取り上げられたのでございますが、これまた昭和九年の冷害を契機として打ち出されたにすぎませんでした。その前に、昭和二年には東北選出の貴衆両院の議員が中心となり、県会議員あるいは商工会議所の会員、学者、実業家、市町村長というようなものが網羅されまして、東北振興会を組織したのでございましたが、これは、ようやく過去の東北振興が組織的じゃないということに着眼しまして、産業経済の総合的な発展を期待するということにその使命を持っておったのであります。そして昭和九年の未曽有の冷害を契機にして、これは強力に動いて参った。すなわち当時は昭和六年の冷害があり、昭和八年には三陸の未曽有の海嘯等があって、そうして、それに加うるに昭和の農業恐慌に際して、とうていこれは放置できないという救済的見地から、打ち出されたのでございました。政府は今度はこれにこたえまして、昭和九年の十二月二十六日、定制をもって東北振興調査会を作って、そうして当時の第六十六帝国議会に所要の追加予算を出したのでございます。そうしてこの東北振興調査会は、今度は救済にとどまらず、積極的に東北振興策を講ずる。それから岡田首相の言明は、今度こそ対策を講ずるならば実行に移すということになって、昭和十年から予算の計上を見るに至ったのであります。かくして調査会の要望するところは、東北振興計画の樹立と東北局の設置でありまして、継続予算制度をとってこれを実行に移してもらいたい。それから総合的計画樹立の実行を要望したのでございます。
そうして昭和十年に至りますや、再び臨時東北振興計画局を設置せられてこれを推進することになったのでございますが、その当時の考え方といたしまてしも、特殊金融機関がないということが一番の困る点であるから、この特殊金融機関として拓殖もしくは殖産銀行の性格を持つものを作ってもらいたい。それから各種の国の助成について、保護を厚くしてもらいたい。それから国営工場の設置であるとか、特殊工業の助成、さらに群山漁村に対する共同施設等の推進、それから当時農村恐慌の際でございましたので、郷倉の奨励であるとか、あるいは国有林の開放を依然強く要望せられたのでございます。かくしてこれにこたえて、当時内閣には東北局が設置せられ、そうして同時に民間の要望にこたえて東北興業株式会社の誕生となり、同時に東北振興電力の創設を見たのでございます。
たまたまこの時期に至りますや、日本の状況は日華事変を中心として戦時経済に移行するに至ったのでございまして、これまた東北開発については、その事情を一変させて参ったのであります。最も東北として期待を持ち、その振興の原動力ともいうべきところの東北振興電力は、日発に併合せざるを得なくなってしまった。そうして豊富低廉である電気料金をもって供給しておったのに、一頓挫を来たしたということに相なって参ったのであります。そうして昭和十六年に至りますや、ついにこの東北局の廃止ということになり、同時に東北興業等におきましても、業務の伸展を期待し得ざることに至ったのでありまして、かくして現状の東北興業は残骸をとどむるにとどまっているけれども、わずかにその余生を保っておるにすぎない。
かようなことでございまして、今回打ち出されました東北振興開発の構想は、開発公庫の創設、それから興業会社の改組による開発会社の総合的な事業の推進、同時に東北開発に対する促進の諸方策が盛り込まれておるのでございますが、われわれがこの際特に政府の所信をお伺いいたしたいことは、どういたしましても、この過去の歴史的な事実を見ますと、中途にて挫折しておるということであっては、とうてい東北振興、開発の目的を達しないのでございますがゆえに、この際政府は、今後画然たる見通しと決意のもとに、この事業の完遂をなすべきことが最も必要なりと思うのでありますけれども、この過去の歴史的な経過にかんがみ、かつまた東北開発に関する総合的な開発計画も逐次進みました現状につきまして、今後処すべき政府の見解、同時にまた推進するについての政府の確固たる所信につきまして、総理大臣の御意見を伺っておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/2
-
003・岸信介
○岸国務大臣 過去の東北開発に関する経緯につきまして詳細の御意見もありましたが、いずれにしましても、わが国として国民経済上、この東北地方が開発をされ、そうして国の経済の発展強化に資するようにしなければならぬこと、言うをまたないのであります。しかも明治以来の歴史にもありますように、この事業は決してたんたんたるものでもなければ、またそういうふうな経緯があったということは、一面においては、いろんな政治情勢なり、あるいは国の国際的関係というようなものも影響がありましたけれども、私はやはり基本的に申しますと、いわゆる産業立地の上から申しまして、いろんな点に困難が当然伴っておった、ゆえになかなかこの開発ができず、また中道にして行き詰まるというようなことになったと思うのであります。従って、これが開発については、あくまでも科学的な十分な調査、そうして合理的な企画に基いて、これを継続的に強い政治力をバックとして推進しなければできないことであると思うのであります。すでにこの東北地方の総合開発につきましては、各般の調査が進められ、ようやく政府としても確信を持って今回東北開発に関する三法案を提案して、御審議を願っておるのでございます。これを中心に一つ十分御審議を尽していただいて、そうして東北開発に関する国の強い意思を、この法律の制定と同時に実現して参るようにしなければならぬと思います。これが推進に当りまして、あるいは行政機構の上においても考えていかなければならぬ問題がありましょう。また実際の問題からいいますと、制度ができ、法律ができましても、これを動かすのは人でありますので、人事の問題等についても、政府としては一つ十分に意を用いて、法案の趣旨の達成に努力をいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/3
-
004・三浦一雄
○三浦委員 今度実施に移されます東北開発の要点は、東北地方に賦存しておりまする鉱物資源あるいは林産、水産等の資源を高度に開発して、そうして雇用政策の面からも、さらにまた産業経済発展の上からも、それを高めて参らなければならぬことは当然でございますが、ここで一番隘路になっておりますことは、つまる産業政策を推進するについての基礎的条件が備わっておらぬということであります。すなわち後進地域でありますから、道路といい、あるいは運輸施設といい、ことに港湾といい、相当おくれておる。一例をとるならば、東北電力でもっていよいよ火力発電をやる、工場はどんどん作られておるが、しかし、これに接岸するところの港湾設備ができておらぬ、それを急いでやらなければならぬというのが、東北の現状であります。これは秋田港を見ましても同様でありまするし、その他塩釜、小名浜等の港湾についても同様に言えることであります。さようなことでありますから、この産業施設の基盤をなすこれらの諸施設を完備するためには、やはりここ当分、いわゆる公共事業としまして、どうしても政府の格段の援助を仰がなければならぬと思うのでありまして、これにつきましては、来年度もある程度の規模におきまして政府の配慮は受けたのでございますが、開発促進法の骨子にありました通り、これをほんとうに実現し得るように、実効的な施策を必要とすることは、申すまでもないのであります。これに対する政府の根本的な態度、これが東北開発ができるかどうかの成否のかぎともいうべきことと思いますから、これに対するお考えを一つはっきりお伺いさしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/4
-
005・岸信介
○岸国務大臣 東北地方における資源の開発や、あるいは産業の発展ということをはかりますために、その基礎的な条件としての輸送、道路や鉄道、あるいは港湾の施設等、こういう公共的事業を拡充しなければならない、これについては特段の力を用いなければならぬという御説に対しましては、私も同感でございまして、三十二年度の予算に対しましては、そういう考慮のもとに、あるいは十分ではないかもしれませんが、政府としては相当に意を用いて予算の編成をいたしております。将来もその方針でやっていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/5
-
006・三浦一雄
○三浦委員 今度の開発計画を推進するにつきまして、東北興業等の改組を行わざるを得ないのであります。このために、広く人材を簡抜するということが必要なことは申すまでもありません。同時にまた、非常に悪い環境のもとにいろいろな業務を担当して参った人たちの苦労も、察せざるを得ないのであります。こういう面から、将来のためには人材を簡抜してその衝に当らしめるということと、同時にまた、過去において苦労せられた者につきましても同情のある措置をとるように、一つ強く希望するわけでございますが、これに対する所見もお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/6
-
007・岸信介
○岸国務大臣 先ほども申し上げましたように、機構を作り、制度を設けましても、これをほんとうに有終の美をなさしめるためには、この人事というものを特に意を用いて考えなければならぬと思います。今お話のごとく、有能有力な士を簡抜してこれに当らしめるということは、もちろん考えなければならぬことでありますが、同時に、従来ともそれらに関連して、各種の客観的事情が困難であるにかかわらず、苦労してきておる人々に対しても、十分に同情を持ちまして、りっぱにこれらの機構がその能力を発揮するように、十分意を用いていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/7
-
008・五十嵐吉藏
○五十嵐委員長 愛知揆一君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/8
-
009・愛知揆一
○愛知委員 私は問題を三つほどにしぼりまして、総理の大局的な御意見を伺いたいと思います。
その第一は、先ほど総理の御答弁にもありましたように、東北開発の問題については、大体基礎的な機構というものが、金融、事業主体、政府機構、それから開発基本法、この四つの柱の上に打ち立てられたわけでありますが、これからはこれを運営する人の問題が非常に大事である。ただいまお話のございました通り、今後これらの機構を運営していく人事について、私はまず第一に格段の御配意をいただきたいと思います。ただいまお話がございましたが、この点についてもう一度明確に総理としての御所信を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/9
-
010・岸信介
○岸国務大臣 先ほど来三浦君よりお話がありましたように、この東北開発の事業はきわめて困難な問題でございますから、今回私どもが提案いたしております三法案を中心に、金融の面、事業主体の面、また行政の面を人事的にも十分強化して、そうしてこれらの機構が十分にその目的を達成するように考慮していきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/10
-
011・愛知揆一
○愛知委員 その御言明をいただきまして、まことに安心をいたすわけでございます。
それから、これも先ほどちょっとお触れになりましたが、将来行政機構の問題についても、東北の開発を推進する上においては考えなければならないことも起り得るであろう、こういう御趣旨の御答弁がございましたけれども、私から率直に欲を言えば、私どもの四本立てということで考えておった中で、一つ東北開発庁というものをぜひ作りたい、その所管を国務大臣にやっていただきたい、こういうことを最初われわれは要望しておったわけでございますが、行政機構の簡素化というような一般的な原則のもとに、このことが一応見送られておるわけでございます。そこで私は、将来機会あるたびに、やはりこの主張を続けたいと思うのであります。これに関連して、全国的な地方行政といたしましても、いわゆる縦割りの機構というものが、果して今後適当であろうかどうか。横に地域的な総合開発ということを考える場合に、東北開発庁というものが私どもは必要だと思う。同時に、全国的に考えて、地方制度については、あらためて道州制というようなことを考える必要があるのではなかろうか。これは数年前に私ども一度熱心に検討したことがございます。その後しばらく忘れられるようになっておったのでありますが、このたび東北開発の問題を熱心に検討するに際しまして、やはりこれは新しい時代感覚において、もう一度真剣に取り組む必要があるのではなかろうかというような感じを、私は痛切に持ったのでございます。この道州制というようなこと、あるいは地方の行政制度というようなことについて、総理としては、ただいまこういうふうに、という断定的な御所信は、あるいは承わりにくいかと思いますが、そういう点につきましての御意見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/11
-
012・岸信介
○岸国務大臣 東北開発の問題のごときは、きわめて総合的な見地からこれを立案し、実行していかなければならぬ性質のものであることは、言うを待ちません。従いまして、今日のような、いわゆる縦割りと申しますか、各省別に所管が分れておって、関連しておる事項を—別に東北の開発に関する事項を取り上げて、総合的にこれを実行するという機関を設けることの方がむしろいいのではないかというお話につきましても、十分研究をしなければならない性質の問題だと私は思います。これは行政機構全体の関係もございますので、私はここに結論的にどうだということを申し上げる何はまだありませんが、こういうような事項を推進するところに特に重点を置いて考える場合において、今のお説に対しましては、十分考慮して研究をいたしてみたい、かように考えております。
また道州制の問題につきましては、この問題だけではなしに、世上にも相当に議論のある問題であり、またこれに関する研究もある程度行われてきたのであります。これは私は今の府県制度、地方行政組織というものにつきましても、相当に検討を加えていくべき問題であろうと思うのです。と申しますのは、一面から申せば、交通も非常に発達をしておるし、また産業その他経済の関係につきましても、府県制度が設けられた当時における事情とは異なった事情もございますし、さらに特別な施策を行なっていくというような場合において、現在の府県制度が必ずしも事情に合わないという事情もあります。しかし同時に、これには相当な深い沿革もあることでございますし、その他のいろいろな問題にも関連しておることでございますから、一つこの問題も、われわれとしては、今愛知君の言われるように、新しい視野に立って、将来の研究問題として考えて参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/12
-
013・愛知揆一
○愛知委員 その次に伺いたいと思いますのは、総理が渡米をされるということは、ほとんど私は決定的ではないかと思うのであります。それに関連して、私の私見でございますが、こういうふうに考えますが、それについての御所見を伺いたいと思うのであります。実は東北開発の問題については、資本が足りないということが一つの決定的な要素である。それから、さらに東北の開発に関連してやはり道路の建設というようなことが、たとえば一つの大きな基礎になる問題でありますが、幸い国土開発縦貫自動車道路法が今回衆議院を通過して、現に参議院で審議中であることは非常に同慶にたえませんけれども、その中で、たとえば白河—青森間で約四百四十キロという計画がここに考えられるわけであります。そのキロ当りの工費が三億円、全体で千三百二十億円というような非常に巨額の経費に相なるのでありまして、こういったようなことについては、これもまた一つ新しい視野と、新しい日米間の関係というようなものを基礎にして、いわばコマーシャルなベースで、絶対にひもつきでも何でもない、いわゆる商業借款というような見地において、道路に限りませんが、その他のこういった地下資源の開発、あるいは将来の拡大経済の発展のために、進んで完全な対等の立場において、外資の導入をはかるというようなことは、やはり一つ大きく考えなければならぬ問題ではないかと思うのでありますが、これについてのお考え方を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/13
-
014・岸信介
○岸国務大臣 従来も道路建設に関する道路借款というようなもの、あるいは日本の鉄道を強化するための鉄道の借款というふうな考え方は、一部において考えられておった筋もあるのであります。もちろん日本の経済的発展、開発、ことに、そういうふうな基礎的なものであって、しかも非常に多額の金を要するものの建設等に関しまして、日本の財政力や一般の経済力から考えてみまして、時期的にこういうものを早くやりたいという上から申しますと、長い目で見ると、日本の経済が発展し、財政力が強化されれば、日本の自力でできるけれども、急いでやるとすると、その金を外資に求めるという考え方が出てくるのは、私は当然だと思います。もちろんこれらの借款につきまして、いわゆるひもつきであるとかいうような性格のものでは困りますけれども、今、愛知君の言われるように、純然たるコマーシャのベースにおける借款であり、またその借款の内容、条件というものにおいて、われわれが何ら覊束を受けるものでない、経済的な何において、先ほど申したように、われわれが十年の後にわれわれの力でできるものを借り入れて、ちゃんとした形においてこれが返済をされ、経済的なベースにおいて考えられるというようなものであるならば、ちっとも拒否すべき性質のものではない。むしろそういうものを歓迎して、日本の開発に充てることはいい。しかしながら、借款等については、条件なりその内容なりを十分検討いたしまして、考えなければならぬ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/14
-
015・愛知揆一
○愛知委員 最後にもう一点お伺いしたいと思いますが、その前に、ただいまの総理の御答弁は、私の私見として考えておりますことと全く御同様のお考えであることを承わりまして、この点は私として非常に愉快に存ずるわけであります。
なお一例として、たとえば東北開発株式会社というようなものが今回生まれるわけでございますが、その社債等の消化については、私は気宇を広大に考えられて、政府の保証もついていることでもありますから、将来ニューヨークなり、その他の国際市場でその起債をやるというぐらいな、一つ度胸を大きくした政府の御計画というものが、逐次推進できるようにお考えを願いたいと思います。
最後に伺いたいと申しましたのは、津軽海峡の連絡の、いわゆる青函トンネルの問題でございます。今回、日本として未開発な東北の開発ということが大きく取り上げられ、これが、従前からの北道海開発に関する政府の熱意と相照応することによって、一大意義があると思うのでありますが、それについては、この青函の隧道によりまして、まずこれが完成すれば、現在の航送連絡に比しまして、時間の短縮が非常なものであります。距離の短縮が、大体青森と五稜郭の間で百七十キロメートルとなって、その所要時間は、旅客において約三時間現在よりも短縮ができる。安全が確保されますし、天候に支配されませんし、これは貨客の連絡のために、非常に重大な経済効果が生まれてくるわけでございます。この点については、国鉄あるいは運輸省等においても、十分の検討が技術的にも進んでおるように承知いたしておるのでありますが、全体の工費は約六百億ということであります。これは最近における、たとえば電力開発その他に比べて、この六百億という金は、必ずしもそう大きなものではないのでありまして、この際、東北開発問題をこれだけ熱意を入れて取り上げていただいたわけでありますから、この青函の隧道の着手ということによって、画龍点睛を欠かないように、一つ一大躍進をしていただくように、ぜひお考えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/15
-
016・岸信介
○岸国務大臣 青函連絡の隧道の問題につきましては、せっかく調査をいたしております。御意見のように、これが完成しますと、われわれが、今日まで開発のおくれておる北海道、東北地方というものを、さらに一体的に強く開発を推進する上から申しましても、きわめて有効な措置であると考えております。十分調査を急ぎまして、御趣旨に沿いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/16
-
017・林唯義
○林(唯)委員 ただいまの質問に関連して、総理にお伺いいたしたいのでありますが、現下の日本の事情から、未開発資源の総合的開発ということは、もとより言うを待たぬのであります。しこうしてその重点は、いろいろの関係を調査しましても、東北ももとより大事であるが、同時に、北海道のあることを忘れてはならぬと私は思います。そこで東北を大いに重視すると同時に、わが国の国土総合開発の立場から、北海道をもあわせて重視さるべきものと私は考える。その点の総理の御所見を伺いたい。これが第一点。それから第二点は、最近政府より御提案に相なりました北海道開発公庫法案などを見ますと、東北と北海道を同じ公庫のワクの中で金融措置をいたそうといたしておるのであります。御承知の通り北海道は、すでに北海道開拓以来、いろいろの経緯を持って特殊の開発が行われており、特殊の地域的事情があり、東北も同様に特殊の地域的事情がある。従って、今般の北海道開発公庫の措置いかんは別問題といたしましても、両者の今後の開発政策には、おのおの北海道なり東北なりの特殊事情を十分に考慮に入れられて措置を講ぜられる御所信であるかどうか、それが第二点であります。第三点は、ただいま愛知君から青函トンネルに関しての意見の開陳があり総理のきわめて明快なる御答弁があったのでありますが、同時に、東北、北海道を通じて開発の上で考えなければならぬことは、何としても、特に北海道のごときは物価高に苦しんでおります。その物価高の原因は、一は青函トンネルの問題と同時に、東北線の複線化ということが喫緊の問題。同時に東北、北海道の市町村道、国道、県道、これらが冬季間全く交通が杜絶されておる。そのために、大体一割以上不必要な物価高を招いておるという現状であって、ただいまの青函トンネルの問題とあわせて、東北幹線の複線化並びに積雪道路の打通ということが、今後の開発の上の重点に相なると思うのであります。この三点について総理の御答弁を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/17
-
018・岸信介
○岸国務大臣 もちろんわれわれが東北開発にこの際うんと力を入れようということは、北海道開発をないがしろにいたす意思は毛頭ないことは言うを待たないのであります。実は東北の方からいえば北海道は一足お先にいろいろな計画が立てられ、機構が設けられてやられておる、東北はむしろおくれておる、ないがしろにされておるというところに、今度の東北振興なり、東北開発ということが非常に大きく浮び上ってきておるわけでありまして、もちろん私は、それがために北海道の開発に力をそぐようなことがあってはならぬと考えております。また、そういうふうに東北、北海道というものを、いろいろな意味において、一つの総合的な見地から強く開発を推進しようと考えると同時に、北海道には北海道の特殊事情がございますし、また東北には東北の特殊な事情がございます。また今申したように、すでに北海道においては、一足お先にいろいろな施設が行われてそれが動いておるわけでありますから、その沿革というようなものもございます。従って、今後のこの開発推進に当りまして、それらのいろいろな事情なり特別の沿革というものは十分頭に置いて、現地に適応した措置を講じていくようにしなければならぬと考えております。それから第三点の、北海道におけるいろいろな物価高の問題から、東北の複線化の問題や、あるいは積雪地帯の道路の整備の問題についてお話がありましたが、いずれにいたしましても、これらのものは私も必要であると考えて、今後の開発促進とともに、実現していくようにしなければならぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/18
-
019・五十嵐吉藏
○五十嵐委員長 総理大臣に対する質疑は後日続行することといたしまして、この際暫時休憩いたします。
午前十一時十八分休憩
————◇—————
〔休憩後は開会に至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604321X00719570328/19
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。