1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年二月二十七日(水曜日)
午前十時四十六分開議
出席委員
委員長 相川 勝六君
理事 大平 正芳君 理事 福井 順一君
理事 保科善四郎君 理事 山本 粂吉君
理事 山本 正一君 理事 石橋 政嗣君
理事 受田 新吉君
大坪 保雄君 大村 清一君
北 れい吉君 薄田 美朝君
田中 龍夫君 床次 徳二君
林 唯義君 眞崎 勝次君
粟山 博君 茜ヶ久保重光君
飛鳥田一雄君 淡谷 悠藏君
下川儀太郎君
出席国務大臣
国 務 大 臣 大久保留次郎君
国 務 大 臣 小滝 彬君
出席政府委員
防衛庁次長 増原 恵吉君
防衛庁参事官
(長官官房長) 門叶 宗雄君
防衛庁参事官
(経理局長) 北島 武雄君
委員外の出席者
専 門 員 安倍 三郎君
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二月二十六日
委員吉川兼光君辞任につき、その補欠として石
橋政嗣君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十七日
石橋政嗣君が理事に補欠当選した。
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二月二十六日
国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律
案(纐纈彌三君外三十七名提出、衆法第一号)
同月二十三日
紀元節復活に関する請願外九十七件(纐纈彌三
君紹介)(第一二〇一号)
同外一件(相川勝六君紹介)(第一二〇二号)
同(田中彰治君紹介)(第一二〇三号)
同外百件(纐纈彌三君紹介)(第一二六八号)
同外三十七件(大村清一君紹介)(第一二六九
号)
同(小川半次君紹介)(第一二七〇号)
同外三十二件(前田正男君紹介)(第一二七一
号)
金鵄勲章年金復活に関する請願(相川勝六君紹
介)(第一二〇四号)
同(淺香忠雄君紹介)(第一二〇五号)
同(有馬英治君紹介)(第一二〇六号)
旧軍人関係恩給の加算制復元に関する請願外四
件(中曽根康弘君紹介)(第一二七二号)
傷病恩給増額に関する請願(有馬英治君紹介)
(第一二七三号)
同(保科善四郎君紹介)(第一二七四号)
同外三件(八木一郎君紹介)(第一二七五号)
傷病恩給受給者の家族加給に関する請願(杉浦
武雄君紹介)(第一二七六号)
同(有馬英治君紹介)(第一二七七号)
元満州国等の日本人公務員に恩給法適用に関す
る請願(徳安實藏君紹介)(第一二七八号)
旧海軍特務士官及び准士官の恩給是正に関する
請願(田子一民君紹介)(第一二七九号)
会津高田町の寒冷地手当引上げの請願(八田貞
義君紹介)(第一二八〇号)
会津方部の寒冷地手当引上げ等の請願外二件(
八田貞義君紹介)(第一二八一号)
福井県下の寒冷地手当等引上げに関する請願(
堂森芳夫君紹介)(第一二八二号)
板倉村の寒冷地手当引上げの請願(三宅正一君
紹介)(第一二八三号)
薪炭手当増額に関する請願(田子一民君紹介)
(第一二八四号)
同月二十六日
紀元節復活に関する請願(大石武一君紹介)(
第一三五五号)
同(塚田十一郎君紹介)(第一三五六号)
同(保科善四郎君紹介)(第一三五七号)
同(町村金五君紹介)(第一三五八号)
同外五十件(纐纈彌三君紹介)(第一三九五
号)
同外八十四件(大島秀一君紹介)(第一
三九六号)
同外九十九件(廣瀬正雄君紹介)(第一三九七
号)
旧軍人関係恩給の加算制復元に関する請願(亀
山孝一君紹介)(第一三五九号)
同(關谷勝利君紹介)(第一三九九号)
同外二件(田中龍夫君紹介)(第一四〇〇号)
恩給権擁護に関する請願(中馬辰猪君紹介)(
第一三六〇号)
傷病恩給増額に関する請願(庄次徳二君紹介)
(第一三六一号)
同(赤松勇君紹介)(第一四〇一号)
同(加藤鐐五郎君紹介)(第一四〇二号)
同(楯兼次郎君紹介)(第一四〇三号)
同(平野三郎君紹介)(第一四〇四号)
同(松平忠久君紹介)(第一四〇五号)
帰還患者に対する恩給裁定促進に関する請願(
福田赳夫君紹介)(第一三六二号)
同(中曽根康弘君紹介)(第一四五二号)
未復員患者の恩給裁定促進等に関する請願(福
田赳夫君紹介)(第一三六三号)
傷病恩給受給者の家族加給に関する請願(赤松
勇君紹介)(第一三九八号)
国家公務員に対する寒冷地手当、石炭手当及び
薪炭手当の支給に関する法律の一部改正に関す
る請願外二十八件(小林郁君紹介)(第一四〇
六号)
の審査を本委員会に付託された。
二月二十二日
首都圏整備事業費の国庫補助に関する陳情書
(第二四七
号)
軍人遺家族の公務扶助料増額に関する陳情書
(第二四九号)
紀元節復活に関する陳情書外四十四件
(第二
六一号)
同外十件
(第三〇〇号)
同月二十五日
米軍貨荷役争議処理に関する陳情書
(第三三五号)
恩給局の事務執行に関する陳情書
(第三三六号)
元満州国等の日本人公務員に恩給法適用に関す
る陳情書
(第三三三号)
建国記念日制定に関する陳情書
(第三
七一号)
を本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
理事の互選
行政機関職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)
防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)
自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第二七号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/0
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001・相川勝六
○相川委員長 これより会議を開きます。
この際御報告申し上げます。去る二十五日内閣より衆議院議長あてに、第二十四回国会以来本委員会において継続審査中の一、内閣法等の一部を改正する法律案、一、国家公務員法の一部を改正する法律案、一、国家行政組織法の一部を改正する法律案、一、内政省設置法案、一、内政省設置法の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案、一、経済企画庁設置法の一部を改正する法律案、一、事務次官補を設置するための外務省設置法等の一部を改正する法律案、一、大蔵省設置法の一部を改正する法律案の八法律案、及び第二十六回国会に前内閣より提出され、本委員会に審査を付託せられております一、外務省設置法の一部を改正する法律案、一、防衛庁設置法の一部を改正する法律案、一、自衛隊法の一部を改正する法律案、一、労働省設置法の一部を改正する法律案、一、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案の五法律案は、その審議を進められるようお取り計らい願いたいとの申し入れがありました。
なお参議院において審査中の内閣提出議案のうち、本委員会において予備審査中の雇用審議会設置法案についても、参議院議長あてに同様の申し出がなされております。
以上御報告申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/1
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002・相川勝六
○相川委員長 理事の補欠選任についてお諮りいたします。去る二十一日理事でありました石橋政嗣君が委員を辞任せられました結果、理事が一名欠員になっております。この際理事一名の補欠選任を行いたいと存じますが、その方法は先例によりまして委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/2
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003・相川勝六
○相川委員長 御異議なしと認めます。それでは委員長におきまして石橋政嗣君を再び理事に指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/3
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004・相川勝六
○相川委員長 行政機関職員定員法の一部を改正する法律案を議題とし、これより審査に入ります。まず政府より提案理由の説明を求めます。大久保国務大臣。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/4
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005・大久保留次郎
○大久保国務大臣 御説明を申し上げる前に一言ごあいさつを申し上げねばなりません。実は私は公安委員長と行管の長官と両方兼務いたしておりますが、この会には特別にいろいろ関係がございまして、今日から審議を始めます行政機関の問題、あるいは行政機構の改革の問題及び治安の問題等皆さんに御審議を願う点がたくさんあると存じます。実は今ごろごあいさつを申し上げるのは間が抜けてはなはだおそい感がありましたが、今後いろいろとお世話になると存じますから、冒頭においてごあいさつを申し上げる次第であります。よろしくお願いいたします。
なおただいま提案になりました議案について一応御説明を申し上げとう存じます。
今回提案いたしました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案でありますが、これは昭和三十二年度におきます各行政機関の事業予定計画に即応して、必要やむを得ない事務の増加に伴う所要の増員を行いますとともに、業務の縮小に伴う余剰定員の縮減を行いまして、行政機関全般の定員の適正化をはかろうとするものであります。
法律案の内容について一言申し上げますると、今回の改正によりまして、第二条第一項の表における各行政機関の職員の定員の合計六十四万千二十八人に対しまして、結局二千九百四十六人を増加いたしまして、合計六十四万三千九百七十四人といたした次第でございます。
増員及び減員の内容につきましては、別に詳しく御説明いたしますけれども、増員のおもなものを申し上げますれば、科学技術庁附属研究所の設置拡充に伴うもの百十五人、刑務所等の開設強化に伴うもの二百十二人、国立大学の学年進行及び付属研究所整備等に伴うもの二百六十一人、特許審査審判事務の増加に伴うもの百人、郵便取扱い業務量の増加に伴うもの六百九十六人、電気通信施設の拡張に伴うもの千二百三十二人等であります。減らしましたものの目立っておりまするのは引揚援護事務に関係いたします職員約三百名でございます。
以上申し上げました通り、大体におきまして現業的業務の増加に伴うものが多いのであります。必要やむを得ないものだけを計上いたしました次第でございます。
なおこの改正法律案は四月の一日から施行いたしたいと存じておる次第でございます。
以上が改正法律案のおもなる内容でございます。何とぞ慎重に御審議の上に御可決あらんことをお願い申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/5
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006・相川勝六
○相川委員長 これにて提案理由の説明は終りましたが、本法律案に対する質疑は後日に譲ることにいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/6
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007・相川勝六
○相川委員長 次に防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両法律案を一括議題といたします。
この際先刻の理事会の協議に基きまして、質疑に入る前に両法案に対する補足説明として、昭和三十二年度防衛庁関係予算について政府側の説明を求めることといたします。門叶官房長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/7
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008・門叶宗雄
○門叶政府委員 便宜私から昭和三十二年度防衛庁予算案の大要につきまして、お手元に御配付してありまする資料に基いて簡単に御説明申し上げたいと存じます。
まず第一表でございますが、一番下の欄をごらん願いたいと思います。三十二年度におきましては、予算総額が千十億に相なっております。昨年度に比較いたしまして八億の増と相なっております。内訳を申しますと、陸上自衛隊におきまして昨年度五百三十九億六千八百万が今年度におきまして五百二億四千六百万になりまして、差引三十七億二千百万円の減に相なっております。これに御承知の通り一万人の増員を今回取りやめましたために基く費用の減でございます。海上自衛隊におきましては昨年度二百二十八億五千四百万でありましたのが、本年度二百十九億二千五百万、九億二千九百万の減と相なっております。航空自衛隊におきましては、昨年度二百億二千万でございましたのが、本年度二百五十五億五千三百万、五十五億三千三百万の増と相なっております。その他おもなるものを拾ってみますと、技術研究所におきまして、昨年度十七億九千九百万でありましたのが、ことしは十五億四千万、二億五千八百万の減と相なっております。これは技術研究所における昨年度の繰り越しが相当多いために今年度は減額をいたしておる次第でございます。
次に二枚目の国庫債務負担行為でございますが、通計の欄におきまして、本年度二百億六千百万、五十七億七千九百万の増に相なっております。継続費におきましては、潜水艦の建造費、それから三十二年度の甲型警備艦建造費、警備艦の建造費につきまして今年は継続費の方に回しましたために、総額におきまして六十三億八千七百万と相なっております。
それじゃ経理局長参りましたから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/8
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009・相川勝六
○相川委員長 それじゃ北島経理局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/9
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010・北島武雄
○北島政府委員 おくれて参りまして恐縮でございますが、官房長にかわって御説明申し上げます。
次に定員関係でございますが、定員は最後の合計欄をごらんいただきますと、昭和三十二年度の定員は、自衛官、非自衛官合せまして二十二万三千五百二人ということでございまして、昭和三十一年度の同様の数字は二十一万五千四人であります。八千四百九十八人の増加でございます。この内訳は、組織別にしますと、陸上自衛隊におきまして、非自衛官において百三人の減少、海上自衛隊において二千一人の増加、航空自衛隊において六千三百四十七人の増加がそのおもなるものでございます。その他の官房各局以下付属機関につきましては、官房各局で百八人の増でございますが、これは陸上自衛隊の減少の百三人に大体対応するものでございまして、昨年防衛庁の新庁舎ができます際に、庁舎の管理班といたしまして守衛その他の人員で陸上自衛隊から百三人、海上自衛隊から三人、航空自衛隊から二人をそれぞれ借用いたしまして、現実に庁舎の管理をいたしております。今度この定員を正式に官房及び各局に振りかえるために、百八人の官房各局員の増加、この反面、陸上自衛隊において三人の減少、こういうことになっております。なおその他の項目につきましては防衛大学校におきまして二十八人の増加、技術研究所において八十名の増加、調達実施本部において三十名の増加、調達実施本部におきましては調達能力を高めますために、この増員の三十名と、そのほか実際上自衛官を約三十人程度増加応援させまして、六十人の実質上の増加を見まして二課を新設する、こういう予定であります。
次に、予算編成の前提とした自衛隊の勢力でございますが、自衛隊は定員は、先ほど申しましたように、現定員十七万二千二十人に対しまして、百三人の減少で、十七万千九百十七人ということに相なっております。
そのほか定員外に予備自衛官という制度がございます。三十二年度末におきまして一万一千人という目途をもって予算が編成されております。
部隊等の編成につきましては、陸上自衛隊は一万の増加はございませんが、従来通り二方面隊、六管区隊、三混成団の現態勢を維持する建前でございます。
弾薬につきましては米国から供与を受けた弾薬の種類が非常にアンバランスでございまして、中には非常に不足するものがございます。この際不足するものにつきましては、訓練射粍弾の補充及び若干の備蓄を目途といたしまして、新たに実包の国内調達を行う計画でございます。
海上自衛隊につきましては、現定員二万四千六十一人のところ、二千一人増員いたしまして、二万六千六十二人となす予定であります。
艦艇につきましては現態勢分といたしまして四百七隻、十万八百四十六トン、これに対しまして新規増勢分二十七隻、一万五百四十八トンでございますが、この計画が完成いたしますと、四百三十四隻、十一万一千三百九十四トンになる見込みでございます。現態勢と申しますのは、現在すでに運航している船舶ということではございませんで、既定計画に盛られておるものを現態勢というふうに申しております。備考欄をごらん願いますと、「現態勢中には建造中のものを含み、且つ年度中に廃船予定のもの及び米国に返還予定のLSSL五隻を控除した。」と書いてあります。
海上自衛隊の艦船の増勢分の内訳につきましては次の表でございますが、日本側調達にかかるものといたしまして、三十二年度予算による建造といたしましては、警備艦甲型二隻、掃海艇中型三隻、小型二隻、駆潜艇二隻、特務艇高速型一隻、計十一隻、五千五百二十四トンでございまして、このほか日米相互防衛援助協定によりまして米国より供与せれるべきものが、警備艇二千五十トン型二隻、掃海艇中型三百三十五トン型二隻、雑船十二隻、計十六隻、五千二十四トンでございます。合せまして、増勢分は二十七隻、一万五百四十八トンということに相なります。
次に海上自衛隊の航空機は固定翼と回転翼、ヘリコプターとに分けて、合計いたしております。合計の欄をごらんいただきますと、現態勢分として七十三機、これに昭和三十一年度分といたしまして百一機増勢を見込みまして、三十二年度末において百七十四機になる見込みでございます。この増勢分はすべて米国の供与によるものでございます。
次に海上自衛隊の部隊等の増強につきましては、まず海上部隊につきまして、護衛隊二を基幹といたしまする練習隊群を新たに編成する予定でございます。航空部隊は機数の増加に伴いまして所要の増強を行いますほか、新たに幹部候補生学校を新設いたしまして幹部候補生の教育を系統的に行うという考え方でございます。幹部候補生学校は従来陸上自衛隊、航空自衛隊にはございましたが、海上自衛隊には幹部候補生学校はございません。江田島の実科学校の中に一つの幹部候補生コースがございます。これを新たに独立させまして一つの新たな学校といたす予定でございます。
航空自衛隊は現定員一万六千三百人のところ、六千三百四十七人増加いたしまして、二万二千六百四十七人とする予定でございます。
航空自衛隊の航空機は、機種は、実用機、練習機さらに実験機を合せまして、合計の欄をごらんいただきますと、現態勢四百九十九機のところ、増勢分三百二十六機を加えまして、三十二年度末におきまして八百二十五機となっております。
部隊等の増強につきましては新たに航空集団司令部一を設けまして、ほか日に北部航空訓練部一を新設いたします。航空団は三十一年度末におきまして二つの航空団がございましたが、これを三十二年度中に航空団二つを新設しますほか、飛行隊一を第二航空団に増配する予定でございます。
なお航空保安管制の拡充強化をいたします意味におきまして、航空保安管制気象群を新設する予定でございます。以上のほか所要の後方部隊及び教育機関等を増強する予定になっております。
次に予算編成の前提となりました相互防衛援助計画による米国援助の期待でございます。
陸上自衛隊におきましては、編成装備品乙類の損耗分の更新は、在来の米供与品の余剰分をできるだけ充当いたしまして、その不足分を国内調達をする予定でございます。弾薬等につきましては、従来引き続き米国より供与がある見込みでありますが、従来から往復の運賃だけを日本側が負担いたしまして、米国において教育を受けるところの留学制度も引き続きある見込みでございます。
海上自衛隊におきましては、艦艇の供与が警備艦二隻、掃海艇中型二隻、雑船十二隻のほか、航空機P2V以下百一機を供与の見込みであります。なお海上自衛隊の艦艇の搭載兵器は従来から米国より供与されておりますが、従来通り艦艇の搭載兵器その他弾薬、各種教材等の供与を期待しております。相互防衛援助協定による米国留学生の予定も、陸上自衛隊と同様前年度に引き続き行われる見込みでございます。
航空自衛隊は航空機の供与期待がF86、C46、T6合せまして九十四機でございます。なお通信機類その他国内生産の困難な装備につきましては、航空自衛隊においても米国からの供与を期待しております。相互防衛援助協定による米国留学生も陸上自衛隊、海上自衛隊と同様の計画でございます。
次にF86及びT33関係でございますが、すでにF86及びT33につきましては米国の援助によりまして国内生産を開始いたしております。ただいままで予算上御承認を得ましたのは第一次計画、第二次計画でございます。今回さらに国産の第三次計画を米国の援助を受けて開始する予定でございます。F86につきましては、生産計画は第一次計画におきましは七十機、第二次計画におきましては百十機でございましたが、第三次計画におきましては百二十機を予定いたしておりまして、これの年度別予算計上額は次の表でございますが、第三次分の百二十機につきましては、三十二年度の歳出予算におきましては十八億七千万円を計上いたし、国庫債務負担行為としての九十四億七千五百万円の御承認をお願いしております。
T33ジェット練習機関係につきましては、第一次の生産計画が九十七機、第二次が八十三機でございましたのが、第三次におきましては三十機の生産計画でございます。この年度別予算計上額は次の表にございますが、第三次分について申し上げますと、この三十機分については、三十二年度の歳出予算において二億六千八百万円、国庫債務負担行為として十二億六千百万円の御承認をお願いいたしておるわけでございます。
以上をもちまして、簡単でございますが昭和三十二年度の防衛庁予算の大要の御説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/10
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011・相川勝六
○相川委員長 これにて予算の説明は終りました。
引き続き両法律案に対する質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。保科善四郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/11
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012・保科善四郎
○保科委員 私は防衛全般に関して長官に御質問をいたしたいと思います。私この内閣委員会に出ておりましていつでも感じておりますことは、国の安全保障の問題に関して、どうも防衛当局の答弁がすこぶる消極的である。それから国民一般も、何か国の安全保障問題に人のことのような感じを持っておるのではないかという感を私は深くしておるのであります。国の安全保障は国家のよって立つ基本問題であることは言うまでもございません。国民がまずまっ先にこの問題と取り組んで、そうして国の安全というものをやはり第一に考えていかなければいかぬと考えておるのであります。防衛の目的は、申すまでもなく国民に安心感を与えるということであると私は考えております。それではどういうようにしたならば国民に安心感を与え得るのかという観点から、私は若干の質問を試みたいと存ずるのでありますが、最近兵器が画期的に進歩いたしまして、非常な変革あるいは革命とでも申し上げていいのではないかと思います。従って世に伝えられておる、防衛庁の考えておる六年計画というようなものは、今の兵器の進歩の状況にかんがみて相当大幅な改変を加えなくてはならぬのじゃないかというように考えるのでありますが、この点に対して国民が安心できるように防衛上どういうような措置を考えておられるか、その要点を一つ御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/12
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013・小滝彬
○小滝国務大臣 保科さん御指摘の通り、国民に防衛の重要性を理解していただくということは最も必要なことでございますので、私も就任早々、国民に十分理解していただくように、近ごろの言葉でいえばPRと申しますか、皆さんから信頼される自衛隊としての発達がなければならぬ。そして自衛隊の任務というものも十分理解していただくように努めたいと考えておる次第でございます。
次に防衛の計画はどうかという御趣旨の質問であったかと思いますが、御承知のように、皆様のお力によりまして、国防会議もできておりますので、逐次われわれの検討しております案についても、ただ単に非常事態における防衛出動というようなことのみならず、一般の大きな意味における国防計画、それは日本の産業にも関係がございまするし、通信にも関係があるし、いろいろ国力との関係においてこうした大きな体系の整った計画を樹立いたしまして、国防会議の方でもこれを検討していただいて、はっきりとした目標を立てるようにいたしたいと、白下私どもの方で検討いたしておるのでありますが、何分まだ就任早々でございまして、かつまた国会の開会中でもありますので、今直ちに国防会議を開催して、基本的な問題を最終的にきめるという段階に至っておりませんが、一日も早くそうした措置をとりまして、皆さんの御理解を得たいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/13
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014・保科善四郎
○保科委員 あまり満足できない御答弁でありますが、今長官がおっしゃったように、国防という問題は、単にいわゆる昔の軍備計画だけではない。各方面にわたって国防の要素というものは非常に広範なものである。その一つの重要なものとしていわゆる防衛計画というものがあるのだと私は思う。他の要素ももちろん重要でありますけれども、国民に安心感を与えるには、やはり不意にそういうものが加えられないよう、いつでも安心して生産が営めるようにするということが非常に大事であります。そういう点から見ると、今世に伝えられているいわゆる防衛六カ年計画では国民は安心できないと私は思うであります。アメリカから援助を受けるために何か基礎的なものがないと工合が悪いということで、一応暫定的な措置としてああいうような計画を立てられたと思うのでありますが、少くともあの計画の最も重大なる欠陥は、国内の防衛生産の計画と国内生産計画、そうしてそれを補充するところの裏づけがないということじゃないかと私は思う。朝鮮や中共の防衛計画と何ら異なるところがない。それでは国民は安心ができない。あるものを十全に働かすような格好になっていかなければならないと思うのであります。と同時にもう一つの欠陥は、日本の防衛力としてほんとうにバランスがとれておるかどうか、こういう点も国民は疑惑を持っていると思うのであります。こういう点に対して、国防会議もあることでありますから、十分に国防会議と連絡をおとりになって、共同の状況判断のもとに、すみやかに新しい事態に処する国防計画をお立てになって、時々これを国民に知らせる。その中には機密なものもあるでしょう。しかしながら大体安心のできるような措置をおとりになることが非常に必要じゃないかと思うのでありますが、そういう点について私は非常に不満に思っております。この国防会議などはあまりそう大げさに考えることなく、時々刻々この国の安全保障というような基本的問題に対してこれを開くことを提案されて、そうして長官は国防会議の重要なメンバーでありますから、そういう問題と真剣に取り組んで、国民に時々刻々知らせる。国家の安全保障というものはこういうふうに持っていかなければいけないのじゃないか、いたずらに反対党の攻撃をおそれてひょろひょろしておるというようなことではますます国民に不安感を与えるのじゃないか、こういうことを考えておるものでありますが、その点に関してはっきりした御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/14
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015・小滝彬
○小滝国務大臣 御指摘の通りでありまして、できるだけ早く国防会議を開いて、岸内閣もできたことでありますから、そうした重要な問題を検討いたしまして、さっきも申し上げたように、できるだけ皆さんにわかっていただけるような努力をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/15
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016・保科善四郎
○保科委員 次に、政府は量より質に重点を置くということを、特に三十二年度の予算において強調されております。これはまことにその通りであると私は思います。ようやくそういう緒についたことに対して深く喜んでおるものでありますが、一体質をよくするということに対して、この予算面に現われておるところのものを見ましても、どうもその重点がはっきりしておりません。一体質をよくするということはどういうことを重点的に考えておられるのか、その点に関して長官の御答弁をお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/16
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017・小滝彬
○小滝国務大臣 今年度の予算におきましては、全般的な予算のワクの制限もありましたので、与えられたワク内においてできるだけ効果を上げようという意味で、もちろん量的にも決して十分ではございませんけれども、特に質的な面の増強ということを考えた次第であります。先ほど説明いたしましたところでも、大体おわかり下さったと思いますが、質の面では、何といたしましても新しい兵器も発達した今日でありますので、これに対処して、防衛を全うするため最小限度のことをするには、こうした技術面の研究が必要であります。その意味で技術研究費、あるいはいろいろな新しい兵器の試作というような面に重点を置いて、予算を盛ったつもりでございますし、また航空自衛隊の方は、御承知のように、訓練も陸上兵器と違い、相当長い期間を要しますので、特に今年の増員の計画をごらんになってもおわかりの通り、こうした訓練を特に要する航空自衛隊の方に主力を置くというような点で、いろいろ器材、装備等におきましても、そうした考え方のもとに今度の予算を編成したつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/17
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018・保科善四郎
○保科委員 大体の御趣旨はわかりましたが、私かつてそういう経験を持っている立場から所見を申し上げておきたいと思います。
質をよくするのは、やはり何と言っても私は人だと思います。人的要素を向上させなくちゃいかぬ。それにはやはりいい人を得るということが一番必要だ。今のように防衛に関する国民の意識が低調なんでは、私はなかなかいい人が入ってこないと思います。国を守る非常に重要な職務にありながら、軍服を着て歩くのは恥かしいという状態に自衛隊の人を置いておいたのでは、いい人が来るはずはないのです。やはり国民の防衛意識の向上ということも、まじめに、ほんとうに取り組んで考える。国を守るのですから、何も遠慮する必要はないのです。国家の重要なる法律に規定されたところによってやるのですから、これはどんどんおやりになって、まじめに国の防衛というものを国民に知らせる努力をなされる、それで私は初めていい人が入ってくると思う。そのいい人を採って、この前もここで何回も言われたように、疑惑を与えるような教育訓練ではいけないと思う。ほんとうに良識のある教育訓練をしてもらう。いわゆる良民良兵をお作りになるようなつもりでおやりになる。私はこの前起った数件を通じても、コンシャンスとコンモンセンスがどうも欠けていることを非常に深く痛感をいたしました。この点は、ほんとうに国民から良識のある自衛隊だと言われるような教育訓練をされ、そして気持よく勤務に従事することができるようにするには、やはり隊員の待遇なり、あるいはいろいろな施設の改善ということも、十分にお考えにならなくちゃいかぬ。この中にも若干は出ておりますけれども、そういう点において、これは国民の認識を十分に求めれば、喜んでそういうことに応ずることになると私は思う。そういうことが質の向上の第一条件じゃないか、私はそう考えておる。
第二の点は長官が言われましたから……。これはもう全く私は同感であって、何といっても物的要素の向上をはからなければいかぬ。それには、先ほども申し上げました通り、どうしても最高の標準の防衛兵器を日本に導入する。そして日本の国内生産を早くそういうものができるように持っていくということ、これが第二の質的向上の重点じゃないかと私は思うのです。
第三は、これは非常に遠慮して出されないようでありますけれども、私は、今のような事態になっておるんですから、そのいろいろな事態なり兵器の進歩なりに応ずるような制度、編成というものに手をかけなくちゃいかぬと思う。今でき上ったものを最も能事的に動かし得るような制度、編成、これも何も遠慮される必要はないと思う。防衛費が必要ならば、防衛費をお出しになったらいいでしょう。こういうことを遠慮されておると、防衛意識の向上なんというものはいつまでたってもできないと思う。どうせ反対する人は反対する。国家に必要なものは、良識ある人に了解してもらって、ちゃんと防衛の目的が達成でき、国民に安心感を与えるようなことに持っていくことで初めて質的向上ができるんじゃないか、私はそう考えておりますが、以上のことに対して、もう一度長官の所信を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/18
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019・小滝彬
○小滝国務大臣 私の先ほどの答弁が足りなかったかもしれませんが、予算の面にはどういう点が表われておるかとおっしゃいましたので、先ほど申し上げたようなお答えをいたしたのでございます。しかし、基本的には、もちろんすべてのこうした組織というものは人間が動かすものでありますから、人的要素をよくし、それの訓練をりっぱなものに仕上げていくということは、先般の不幸なできごとがあるまでもなく、当然考えなければならぬことでありますが、私といたしましては、就任早々そういう問題もございましたので、この点については特に留意をいたして、そうしてまた世間からよく理解していただく活動をしたいということは、先ほど申し上げた通りでございます。
次に、制度につきましては、もちろんこれだけ膨大な人員も擁しておりますし、また任務の重要性にもかんがみまして、これまでもいろいろ検討せられ、また本委員会においてもそういう御希望も出ておったようでありますところの防衛庁が省に昇格する問題も、事務局でも検討しておりますし、それがより都合がいい、また国民の皆さんに重要性を理解していただく上にもそれが望ましいということは、私も同感でありますが、これには予算その他いろいろな面で考えなければならないところもありますので、ただいまのような御希望をよく体しまして、検討していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/19
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020・保科善四郎
○保科委員 次には、機密保持に関する問題について御質問をいたしたい。私はこの前も長官に御質問をいたして、若干いいお返事をいただいたのでありますが、ただいまのように考えてみますと、これは日本で幾らさか立ちしたって、世界の最高水準の防衛兵器なんかできるはずはないのですから、結局われに好意を持っておる国の供与を受けることだと思われる。そういう最高の防衛兵器を導入するためには、私は現在の機密保持法では非常に不足だと考えておりますが、これに関して長官の御所信をもう一回承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/20
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021・小滝彬
○小滝国務大臣 さっきも申しましたように、防衛に関しましては、ただ単に器材とか装備の点のみならず、どこの国でも機密を保持する措置がとられておるのでありまして、私はそういう措置を考えなければならない、実行しなければならないという考え方を持っておるものでございます。ただ、しかし、当面の問題といたしましては、御指摘のように、今のMSA協定につながるところの秘密保護法では不十分であるという声は、単に国内のみならず、こういう機密を要する部分を持ったところの装備品を提供する向きにおいても考えているところであります。のみならず、これまでも委員会で説明申し上げましたように、アメリカの方からはなかなか提供を受けられないので、試作の資料といたしまして、あるいはイギリスなりあるいはスイスなり、あるいはまたイタリアなりから、そういうものをサンプル的な意味において購入したいという希望を申しましても、日本における保護の措置が十分でないという点で交渉が相当長引き、あるいはおもしろく取り運ぶことができなかったというような経験も承知いたしておりますので、少くともこの点については早急に考えなければならないと痛感いたしておるものでございます。ただこれにはかつての悪い経験からいたしまして、とかくこれを拡大してと申しますか、マグニファイして、それが国民の自由を押えるようなところに持っていかれやしないかという懸念もあることは事実でございますので、そういうことの起らないようにいたしまして、近いうちに、そうした今御指摘のような措置も、ぜひとらなければならないと考えまして、この点をいろいろな角度から検討いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/21
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022・保科善四郎
○保科委員 大体わかりました。私はこういう点は国民によく説明すればわかると思うのです。千何百億の防衛費を使っておるのですから、これを最も有効に、国民の安心感を得るようにするためにはこれが必要なんだということを誠実に良識ある国民に訴えれば、必ず納得してくれる。私は納得のもとにやれるものだと思いますから、こういうことは遠慮なしに一つおやりになることを特にお勧めをしておきたいと思います。私はもう防衛関係に関してもよほど画期的な変革期にきておると考えておるものであります。そういう観点からも総合的にこの防衛という問題を再検討されて、ほんとうに国民の納得のできるような安心感を与えていただきたいということを特に長官に御要望いたしておきたいと思います。
最後に、この予算面を見まして、国民が最も望んでおり、また防衛生産上も非常に大事だと思われる点が二つ抜けておると思うのであります。それは施設部隊の編成ということと対潜哨戒機の国産に関する点でありますが、この点に関してどういうわけでこれが抜けておるか、あるいはどういうようになっているのか、それを一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/22
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023・増原恵吉
○増原政府委員 ただいま御質問のありました二点のうち、第一の施設部隊の問題でございますが、これは当初の計画といたしまして、防衛庁としては三十二年度に陸上一万の増員をぜひお願いをしたいという建前を持っておりまして、その際工作隊十隊を新設いたしたいということで計画を進めておりましたが、これが政府の予算編成の方針に基きまして、陸上一万増員を三十二年度は行わないということで決定をいたし、その予算を編成いたしました関係上、予算面としては施設部隊の工作隊十隊の増設というものは一応載っておらないわけでございます。ただこの点につきましては現在提出をいたしております予算の中で、もしやりくりが可能であるならば、若干でもこれを実施してみたいという考えをもちまして、目下検討中でございます。まだ成案を得るに至っていないことは遺憾でございますが、可能な限度で施設の工作隊を若干でもふやしていきたい。しかしこれは定員の増加がありませんので、現在の定員を方々研究の上削減をするということも必要でありますし、若干の施設器材等の経費を認められた予算の融通でやるという問題でありますので、若干の時日をかしていただいて研究をいたしたいと考えます。
第二の対潜哨戒機の問題は、対潜哨戒機として私どもが保持をいたしたいと思っておりますものは、現在P2VとS2Fの両者であります。御承知のように、P2Vは足の長い六千キロ余りも航続力を持つというものであり、S2Fは足の短かいもので、沿岸の哨戒に当るというものであります。これが両々相待ち、また水上の警備艇と組み合いまして、対潜哨戒を行うわけであります。現在までのところP2V、S2Fも米国から完成機の供与を受けるということで進んでおるわけでございますが、そのうち特に足の長いP2Vにつきましては、諸種の条件を考えて、可能であるならば国産をいたしたいという考え方を、防衛庁は方向として持っておるわけでございます。従いまして現在三十一年度の予算にも、対潜哨戒機の調査費を計上してお認め願って、この経費によりまして、試作その他を含めまして、調査は大体に了したわけであります。そうして国産の案について相当の期間をかけまして検討を続けておるわけであります。しかしこれは一面においては米国の技術的な援助はもとより、経費的な面においても相当の協力を期待しなければならぬという面があるわけであります。日本の防衛は、S2Fをにらみ、水上の艦艇をにらんで、あまり遠い先を想定することは困難でありますし、現在の三十五年度末というところを一つの区切りとして、何機を日本で作り、何機は米国から供与を受けるかということをにらみ合いましての生産計画というものが、実はいろいろな要素を含みますので、かつまた現在はまだ非公式な段階ではっきりしたことを、なかなか米国側としても申し得ないと申しますか、申してくれない段階でありますので、その計画の策定を三十二年度予算に織り込むことは、どうしても間に合わなかったという意味で、この予算には計上をいたしておらないのであります。これはなお計画を練ることを続けて参りまして、適当な国産計画の実行可能な案ができ、その案に米国も協力をしてくれるという見通しがつきますならば、来るべき機会にお願いをして国産をいたしたいというふうに考えておりますが、まだ残念ながら成案を得るに至っておらないという段階であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/23
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024・保科善四郎
○保科委員 第一の施設部隊に対する非常な御努力は多といたしまして、ぜひその方向に進んでいただきたいということを特に希望いたしておきます。
第二の点は、非常な御努力のほどは今の御説明でよくわかりました。これはほかの方は陸も空も大体国産の線に向ってスタートをしておるわけであります。海軍の方は重要な対潜哨戒機がまだ他におんぶしておる、非常に不安なる、不均衡な状態にあるわけでありますから、これを何としても早く——特に私の聞くところによるとアメリカ海軍あたりも非常に熱心な援助をしようという考えを持っているようにも聞いておるのであります。こういうタイムリーな時期を失わないように、日本のほんとうの防衛力となす最大の努力をこの上とも続けられることを希望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/24
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025・相川勝六
○相川委員長 床次徳二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/25
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026・床次徳二
○床次委員 ただいま保科君も御質問になりましたが、なお関連してお尋ねしたいと思います。
国民の間に自衛の必要、防衛意識というものが次第に浸透してきたことはまことに喜ばしいことだと思っておるのでありますが、ただいまの御質問にもありましたごとく、しからば真に防衛意識が徹底しているかというと、非常に不安定である。この点はどこに原因があるかということを考えますならば、これは一にわが国の防衛の限度と申しますか、防衛の目標をどこに置くかということがはっきりしない。先ほども話がありましたが、すなわち防衛計画というものがないことが、国民に対する防衛意識の徹底の非常に大きな不安定の理由を与えておるのではないかと思っておるのであります。
それから防衛と申しましても、防衛の限度がどこにあるか、たとえば誘導弾の研究につきましても議論がありましたごとく、あるいはこれが攻撃武器として利用されるのではないかという疑いも生ずる。これがあくまで防衛的な自衛的なものであるというところに、自衛隊の真の目的があるわけですが、この防衛の目標、限度というものをはっきりさせて、それに対して努力をするというところに、初めて自衛の認識が深まってくると私ども考えておるのであります。根本の防衛計画を政府が確立されないところに大きな欠陥がある。政府も先ほどの答弁でできるだけ努力しておられるように承わるのでありますが、この点はすでに国防会議も発足しておりますので、できるだけ早い時期に確立せられることが望ましいのでありますが、大体どの程度の時期において考えておられるか、この点につきましては、できるだけすみやかな時期において計画が発表せられてしかるべきものと思うのでありますが、それらの点について承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/26
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027・小滝彬
○小滝国務大臣 床次さんに十分御満足のいく答弁ができないのを非常に遺憾に思いますが、先ほどから申し上げておりまするように、できるだけ早くこの国防計画というものをきちんと国防会議にかけて確定して、そして国民にも納得していただくという措置をぜひとらなければならぬと思っております。今まで暫定的と申しますか、防衛庁限りで案を持っておったことは御承知の通りでございまするが、しかしその後時日もたちましたので、いろいろ情勢の変化もあるし、また今後における米国の日本に対する援助の限度、いろいろな点もさらに詳細検討する必要がありまするので、これにつきましては今、組織は十分ではございませんけれども、国防会議の事務局もありまするし、また私どもの方でもこの点は詳細検討し、必要に応じ各方面にも連絡いたしておりまするので、できるだけ早い機会に、少くともできればこの国会でも終了いたしましたらばすぐに取りかかりまして、すでに取りかかってはおりますが、これをはっきりときめる段階に到達いたしたい、こういう目標で進んでおる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/27
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028・床次徳二
○床次委員 ぜひとも政府においてすみやかな積極的な努力をせられたい。私はこの防衛計画が発表せられ、われわれの自衛に対する努力目標がきまるということによって、かえって国民から自衛に対する努力に協力を得るとともに、不必要な再軍備に対する懸念を解消し得るんだと思うのです。かかる意味におきまして特に政府に対しまして、防衛計画のすみやかなる樹立を、これは当然のことでありますが、重ねて申し上げる次第であります。
なおわれわれが自衛の限度において努力しているということ、これはなお増強を要することは当然でありまするが、この増強が毎年急速な増強であっては困ると思うのです。ただいまのお話の中にアメリカの援助を期待しながら増強していくということでありますが、アメリカの要望するものが非常に多ければ、たとい贈与その他の援助が参りましても、わが国の負担になる点が大きいのでありまして、やはり根本的な問題としては、われわれが自衛するのにどの程度の限度の力を持っておればよろしいかということをはっきり認識することが必要です。これは何もアメリカの負担にたよるのではなくしてわが国自体も一定の限度においてはっきり自分の持つべき自衛力の限界をきめるという気持が必要なんでありまして、この点大臣の答弁によりますと、どうもアメリカの援助というような言葉が入りますので、他に依存してきまるかのような印象を与えやすい、この点は一つ十分慎重に考えていただきたい。わが国が独自の立場において努力をする、その自衛の必要の限度において援助を受けるということ、これを確認していただきたいと思いますが、さような趣旨だとは思うのでありまするが、あらためて大臣の御答弁をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/28
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029・小滝彬
○小滝国務大臣 今おっしゃるような印象を与えるとすれば非常に遺憾でありますが、私どもといたしましては、いつも申し上げておることでございまするけれども、国力と国情に応じて、最小限度の防衛力を持とうという考え方を持っておるわけであります。ただその際におきまして、従来も向うの提供品などを利用した点もありまするから、その従来の援助というものがだんだん現実化され、また日本といたしましても、再生産の面を考えまして、防衛生産というものもやらなければならぬ。しかしその際において何としても現実的に問題となりましたのは、そういう力を利用しておったということがありますので、その方面ともにらみ合せて、防衛生産あるいはいろいろ今後やるべき措置についてそうした要素をも考慮に入れておかなければならないというのでありまして、もちろんその限度また日本の自主的な決定というものはあくまで日本側のものでありまして、その意味におきまして国防会議にもお諮りしてやろうと思っておるのであります。どうぞそういうような意味で申し上げたことを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/29
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030・床次徳二
○床次委員 なおアメリカの援助に関しまして防衛生産の問題が一つ考えられるのでありますが、将来のわが国の防衛生産の限度というもの、これはアメリカの援助によらずして、自発的なわが国の力のみによるところの防衛生産というものに独立成長しなければならないものとも考えられるのでありまするが、この点に関しましてわが国といたしましては、いわゆる防衛的な防御的なものに関しましては、どうしても独立することが望ましい。ただし数量的に見まして需要の少いものは独立しても困難だということが考えられるのでありまするが、防御生産に対しまして、どの程度までわが国において独立経営するかというような目標について、何かお考えがあれば承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/30
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031・小滝彬
○小滝国務大臣 これは非常にむずかしい問題でありますが、今すでに御指摘のように、数量的に採算ベースに合わないというようなものはなかなか困難があります。しかしそれにつきましても私——これは個人的な見解になっていかがかと思いまするけれども、防衛庁へ参りまする前から、私は防衛のための一定の費用というものは、平和を守るためのものであって、防衛関係のものであるから、あるいは軍事的な意味を持っておるからといってそれは抑圧すべきもんじゃない。そういうものは大いに——いずれの国も自主的な防衛を全うする上に必要であるが、しかしそれはできれば民有民営でやらせなければならぬ。それについては東南アジアの諸国においてもそれぞれ防衛の必要を認めて努力をしておるのでありまするから、日本はその間において最も進んだ科学工業力を持ち、技術の力を持っておるから、それらの諸国の必要を満たすことによって、採算に乗るものはそういうふうにしなければならぬ。その点については現実の問題といたしましては、アメリカの方がOSPと申しまするか、域外買付をするような場合があるので、そういう方面の需要というものを満たせば、日本だけの小さな自衛隊のためにだけ生産するのでは採算に乗らないものも採算に乗り得る。だからそうした面における努力もしなければなら、ないと思いまして、あるいは新聞での発表が誤解を招いたかもしれませんが、私はこの前フェアレス使節が来た際にも、率直にそういう希望を申し述べておいたのであります。もちろんこの防衛関係の資材にも甲乙といろいろ、直接的な武器とそうでない通信器とか、あるいは電子機器とか、車両の関係とかございますが、少くとも車両の関係であるとか、あるいは電子機器の関係とか、こういうような日本にすでにある産業においてこなし得るようなものは、技術的にはアメリカから新しく援助を受けなければならないものもあるが、そういうものはぜひ日本でやっていきたい。そうすれば、日本の貿易にも役立つであろう、こういうふうに考えております。戦車なども現在相当試作をしておるのでありまして、だんだん援助も期待できない。またお説の通り援助に期待すべきものでなくして、日本でできるだけのことをしなければならぬ。そしてまたこれが発達というものは、ひいては高級な技術を発達させるゆえんにもなると考えますので、この種のものについてはぜひ日本で国産をしていきたいと思うのであります。艦船につきましても、結局日本の造船業が発達したのも、戦前におきましては、そうした防衛関係の必要というものから刺激された点もございますので、艦船につきましても、今いろいろ技術的におくれておる点を取り戻すため、米国側の援助を得るということが必要でありますが、それによって日本で生産を進めていくということは、ただ単に艦艇の生産技術が向上するというだけでなしに、今や日本の経済に非常に貢献をしておる造船業というものの今後の発達、競争力にも非常に貢献するところが多いと思いますので、こうした種類のものにつきましては、ぜひ技術研究所またその他の研究機関を通じて検討させまして今後の発達を期したい、こういうように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/31
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032・床次徳二
○床次委員 ただいまの御答弁には大体私どもも賛成でありますが、これは国防計画の決定と相待って、防衛産業をいかなる程度にまで伸ばすかという問題は、わが国の産業の発展にとって非常に大きな問題である。従っていかなる種類のものに対して、とりあえず着手していくかというようなことに対しまして、具体的のお考えがあれば承わりたいし、またきまっておらなければなるべく早くこれは確定せられまして、日本の産業の発展の指針というものを確立せられたい。この点は防衛計画と同じように非常に大事なものであると思います。今回T33あるいはF86その他の兵器等にいたしましても、漸次着手せられておると思うのでありますが、防衛庁は自分の自衛の確立という限度においていかなる防衛産業をやるかということに対して、はっきりした決意を持たれることが必要だと思う。これを持たれて日本の産業界に臨むことが、ほんとうに防衛生産の意味があるゆえんであるから、私は当局に対してその方針をすみやかに決定され、具体的にこれに対処できるような措置を講ぜられるように要望する次第であります。
最後に伺いたいのでありますが、予備自衛官の問題であります。毎年訓練いたしまして、予備自衛官の数はだんだんふえておるようでありますが、この訓練並びに素質というものがいかなる状況にあるか伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/32
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033・小滝彬
○小滝国務大臣 この予備自衛官の制度は、すでに設けまして、募集いたしたのでありますが、率直に申しまして、これまでの成績は必ずしも芳ばしくなかったわけであります。月千円ということであり、また会社などによりましては、組合などの関係でこれを喜ばないというような点から、りっぱな成績を上げておりませんが、しかしこれは先ほどからしきりに強調せられております防衛思想の普及ということと相待って、また私どもの方でもこの待遇改善、それから訓練に出た日にたった七十円というような点もあるいは不満足であろうかと考えます。私どもの方の予備自衛官に対する待遇の改善ということも必要だろうと存じます。ことにこの予備自衛官につきましては、皆様の御協力を得まして、そうした面についても待遇改善を行い、そうしてまた国民全般の方にこの重要性を理解していただくように最善の努力をいたしたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/33
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034・床次徳二
○床次委員 予備自衛官が十分な成績が上らないということは、やはり国民に対する自衛思想の普及に悪影響を与える。現有勢力のみに質の向上をはかられましても、社会にあります関係者が十分な熱意を持ち得ないということでは、これは防衛上非常に遺憾なことと考えますので、今日までの状況等にかんがみまして一段の改善の方途を講ぜられたいと希望する次第であります。
これで私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/34
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035・相川勝六
○相川委員長 粟山博君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/35
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036・粟山博
○粟山委員 私は長くこの委員会において質問応答を承わっております間に、社会党さんから非常に深刻な質問があり、与党としてはほとんど時間の大部分をわれわれ承わっておる側に立っておったわけであります。きょうはさすがの社会党さんも御質問がないというので、私も少し時間を割愛していただきまして、二、三点伺いたいと思うのであります。
まず、私が切に重点的に伺いたいのは、本年度の予算の金額は今御提案のようなもので、来年度は果してこの予産金額を上回るようなお見込みでございますか。これを承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/36
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037・小滝彬
○小滝国務大臣 防衛の責任を全うする立場におります者から考えますならば、実は本年も陸上一万の増強も希望いたしておったのであります。しかし予算編成の一般的な方針にかんがみまして昨年度に比して八億円の増加というにとどめたわけでありまして、私どもといたしましては、来年度におきましては、本年度よりもさらにいろいろ防衛生産の面などで計画しております点から考えましても、予算をふやしていただきたいという希望を持っております。しかしながらこれは日本の経済の情勢にもかかわりますし、またその他のいろいろな国費とのつり合いというような点もありますので、来年度のことは今もってどうなるか予言することはできませんが、私どもといたしましては、これまで試案的に作りました五カ年計画、前の言葉でいえば六カ年計画にもかんがみて、本年特に繰り延べにいたしましたようなのは、来年度これを計上いたしたいという希望を持っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/37
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038・粟山博
○粟山委員 今年度は、御承知の通りに、神武以来の拡大予算とかなんとかいいますけれども、いろいろな観点からいいまして、今、日本が国際連合に加盟をいたし、ソ連との関係も国交を回復した。国際情勢も幸い東洋においては波静かであるという大局的観点からいえば、ことしの御計画のように、船と飛行機の方面に力を入れて、人員はそのまま見合わせようということに承わっておりまするが、そういうようなかね合いの予算を組まれるということは、時宜に適したものだと思うのです。さすがの社会党さんも、この予算の金額に対しましてはよけい使いすぎたと言っておしかりもないようでありますから、まず私はこの点において国民の支持を受けておるものであると考えるのであります。ところで私ども議会の窓口から眺めての今年度の予算、貿易の関係あるいは税収入というような点から考えますと、世上まだ非難があるごとくに、必ずしも今年の下半期というものからは、世界の景気も日本国内の景気も、これまでのような手放しの気楽なものでは相ならぬということが一つの見方に相なっておるようであります。そういうことを考えますと、われわれはこの予算はこの議会で必ず通します。必ず与党として通します。しかしなおかつ国民の期待する堅実な生活の保障、国民経済の堅実な歩みを、足取りを固めるためには、私は来年度の予算が非常に大事だと思う。さらに進んでいえば、再来年の予算も大事で、三年くらいは一定の方針、心がまえで進まなければ、ほんとうに国民の希望するところの安定生活と国民経済というものは、保障できないと考えておるのであります。いわんやその間において思わざる国際関係の波動も受けることは覚悟しなければならぬ。そういう点から考えますと、私の念願は、どうかことしの金額を上回らないで——警察予備隊、保安隊、自衛隊と形を変えていきましたけれども、精神においてはかわりのない、いわば平和の目的、国民をしてあなた方の御計画に安心できる、国民の安心感の支柱となるようなものができ上れば、金が少くて済めば私はけっこうだと思う。そういう点において内閣に新しい御工夫がないでしょうか。ちょうどことしは海軍と飛行機の方に力を入れた、そして人員は見合したというようなことが、この国際情勢と国内状態から考えて、金を使わないで目的を達してくれるように、何かことし新工夫をこらされたものがそこになければならぬと思うが、練達たんのうの、十年になんなんとする御経験を持った方々であるから、必ずしも新店とはいえない。そういう御経験から、まず皆さんがすべての智恵を総合して、国民の期待に沿い、われわれも与党の議員として快く国民の前に同調し、協賛していいようなほがらかな見通しのお持ちあわせがないかということを伺いたい。ちょっと漠としているようですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/38
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039・小滝彬
○小滝国務大臣 先ほどからお話いたしておりますように、もちろん防衛力増強というものは、はっきりした限度がなければならぬ。それがために防衛計画もはっきりできるだけ早い機会に確定しようという努力をしたい考えでおるのでございまして、いつも申し上げることでございまするが、この防衛をどの程度に充実するかということについては、日本の国力、国情というものを十分考えまして必要最小限度のものにとどめる、こういうことにしておるのでありますから、節約し得るものはできるだけ節約して、そして効果を上げるということに努めなければならないことは申し上げるまでもないところであります。そうして、現在の内閣の方でも、社会保障の面を拡充するという努力をしておりまするから、この考え方というものは今後ももちろん堅持されるものでありまして、その意味で防衛につきましては、今年は特にわれわれの要求いたしましたものも繰り延べにするということにしたのであります。がしかし、最小限度をきめるという際には、お説の通り国際情勢というものも十分考えなければなりませんが、日本の現在の防衛というものは残念ながら一時的な、大規模ではない局地的なものに対しても、実は日本だけではとうてい耐え得ないというような関係から、米国との間に安保条約というものもあるわけでありまして、こういう点は非常に国民感情にもよくないところでありまするから、でき得れば日本の力で最小限度のものはしたい。それには現在の、今あるがままの姿では不十分でありまするから、今後まだ少し増強する、日本の国力とにらみ合せて増強する必要があるだろうと思います。しかし今御指摘のような考え方につきましては、私どもは決して反対な考え方を持っているわけではなくして、ただ国際情勢がどうなっても、あるいはまた日本の他の方面、政府としてやらなければならない施策はそっちのけにして、防衛費の方の増額をはかろうというようなことを考えているのではございません。よく今御指摘のような気持を体して、今後の防衛庁の施設についての増強問題を検討していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/39
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040・粟山博
○粟山委員 そこでお伺いいたしますが、謙虚な気持で日本のみじめな敗戦後の国民生活の立て直し、それから国際的にいえば、ともすれば国民が不安に襲われるような気持に陥りはしないかと思われるときですらも、何か国民に安全感を与えて、ともかく今日あのみじめな敗戦からこれだけの復興を見ているということは、私は謙虚な気持で考えて、アメリカに対して多とすべきものがあると思う。もちろんその間には、この議場においてもいろいろ批判を受けましたけれども、われわれいろいろな観点からほんとうに良識的に考えたならば、アメリカに対しても感謝していい点もあるし、アメリカのヒューマニズムにもまたよい点があるので、われわれ学んでもいい点があるのではないかと思うのです。必ずしも国会に来てアメリカを非難すればそれで事足れりというのでなくて、国際平和を念願する上においては、公平な見地に立って考えなければならぬと思う。そういう心かまえからいたしまして、一つ外交上においても御経験のある長官に伺いたいことは、安保条約は批判はされておりまするけれども、日本にとっては今日までの一つの功績もあるではないか。今日の防衛のあり方も私はこれのつながりとしてやはりこの範疇を全く脱し得ないと思う。そこで今日日本は国連加盟をいたしました。国連加盟をいたしました上においての日本の主張、それから加盟国間におけるところの世論に対して、われわれが多数の支持を得ました限りにおいては、義務もあり権利も生ずる。そういう観点からいって安保条約、行政協定というものに超越して、日本はその結論を実行に移すべきである、いわゆる今までの安保条約、行政協定というものに優越して、その結論に従っていいものであるかどうか、こういうことについて一つ長官のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/40
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041・小滝彬
○小滝国務大臣 あるいは御質問の点を間違えてとったのかもしれませんが、私の感じました点を申し上げます。国連に加盟いたしまして国連の一員として国際協力しなければならぬ、また国際連合を中心といたしましての集団安全保障の機構というふうなものが生まれ出まして、それにのみたよっていけばいいというような時代が一日も早くきたらんことは、私ども念願してやまないものであります。しかしながら御承知のように、国連の方では、いろいろ話し合いによりまして、総会の決議によって警察軍を出すとか、あるいは紛争の解決のためにいわゆる国連軍を出すとかいうような場合もありましたけれども、実はこれが具体的に各国が自動的に軍隊を出すというような組織には、現在のところなっておりません。例の憲章の四十三条というものもございますけれども、そうした四十三条に盛られておるような特別取りきめというものも現在でき上っておらぬというような現状におきましては、われわれは地域的な安全保障と申しまするか、同じような考え方をしておる国あるいは近所の国で守り合うというやり方をやらざるを得ないという現状でございまするので、日本といたしましてはこれまでの関係があり、また同じ民主主義の国家として、そして日本よりもそうした防衛の力を持っておるアメリカにたよらざるを得ないというところで、現在も安保条約というものを持っておるわけであります。安保条約が一方的だといういろいろ議論もございまして、私はこれを決して満足な条約であるとは思いませんが、現在の日本における自衛力の程度にかんがみ、また今の国際情勢にもかんがみまして、安保条約というものは何と申しまするか、必要悪と申しまするか、ネセサリー・イーブル、これは現在のところはなければしようがないものであって、これがもっと変ったものになることを希望はいたすのでありまするが、現状におきましては、この安保条約にたよらざるを得ないというのが日本の立場であるというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/41
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042・粟山博
○粟山委員 私は実は長官と議論したいと思うのではないのですけれども、すべてはやはり広い視野から大きな常識、まあ国民的な常識といいましょうか、そういう観点からものを広義に解釈して、善意に解釈していきたい。そこで私はあなたからイエスかノーかを聞きたかったのだけれども、どうもそれは得がたいようでありまするから、私はこう考えていきたい。ソ連とも仲よくしていこう、いかなる国からも無理は聞かない。日本の良識というものは、国民の満足を得るとともに国際的にも信頼をかち得るものであるという確信のもとに大きな政治の線を打ち出していく、そういう観点からソ連とも仲よくしていこうし、中共とも何千年来の人種的、それから文化、文学、その伝統、歴史、そういう特殊な関係もあるのであるから、私は将来の中共は必ずしも今の中共とも限らないとも考える節がある。そういうような点から大きく、せせこましくなく、今後忍耐、努力、勤勉、そういうような日本人のいいところのすべてを極度に発揮することに努めて、しんぼう強くやっていこう。そしてああいうふうに無条件降服をした、その戦争のみじめさが、ともかく安保条約で日本というものをよその国が——いろいろあったけれども、日本という国が一人で歩けるようにしてやろうといって手をとってくれて米がなければ米もくれる、着物がなければその方面もくれるといってやってくれた、その気持の流れすなわち今日の状態であるとするならば、安保条約も私は今日のあるがままをそのままにしておこうとは思いませんけれども、今の状態においては、すなわち国連に加盟したそのとたんであるから、各国との間に調子を合せる一つの機関が要りますから、いろいろ状況の変った国々、それから政体も経済組織も変っている国とのおつき合いを広くえるようになったのだから、そういうものを見きわめる時間を持って安保条約、行政協定というものに対する正しい批判をして、やがては直すべきものは直さなければならぬけれども、国連を中心にしてやっていこう、国連の大きな世論の上に日本は太い線を出して外交を進めていこう、こういうふうに考えてよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/42
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043・小滝彬
○小滝国務大臣 国連中心主義でいこうということは、すでに岸総理も再三申されておるところでございます。ただ私は議論するのじゃございませんが、国連は地域的な集団安全保障の機構を排除しようとしておるのではなくして、現に北大西洋条約もあるし、あるいは共産圏でいえばワルソー条約もあるというように、その近くの方でお互いに助け合っていこうというやり方は、決して国連主義に反するものでないと思うのであります。私はこの前の本委員会においても申し上げました通り、防衛庁設置法の四条には、日本の「平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的とし、」と書いてありますが、しかしその目的のために動いておるのは決して防衛庁だけではなくして、その他の各省同様でありまするが、特に日本の外交というものはそれを目的として進められなければならないということは、これは申すまでもないところであります。しかしそれだからといって日本の直接的な防衛というものが全然なくてもいいかということになると、今の国連に加盟しておる国も全部最小限の自衛力は持つ、この現実を無視するわけにはいかないのでありまして、その意味において、さっきも申しましたように、国連中心主義まことにけっこうであり、その気持で日本の外交というものは強力に推進せられなければならないのでありますけれども、しかし同時に防衛のための努力が、そのために全然放棄さるべきものではない。そして安保条約というものは、いろいろ今後の日本の自衛力の漸増にもよりまして、そのうち改訂もせられなければならないでありましょうが、現在のところは、これは決して両立し得ざるものではないというように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/43
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044・粟山博
○粟山委員 両立し得ないものではないというお言葉のうちに、ひとしきものは同じからずという論理と同じように、必ずしも割り切ったお言葉とは受け取れないものがあると私は思う。ちょうどアメリカが安保条約を結んでくれたときには、早くいえば日本の国は小学校の生徒だった。小学校の生徒だから、身幅もそでたけも何もかも足りない。アメリカが寒かろうと言ってひとえもの一枚を着せておいた。ところが高等学校を出て、大学へ入って、大学を出て、もうわずかな年限の間にいっぱしのおとなになったから、国連に加盟をいたしました。国連に加盟をいたしますと、加盟国との間においては、対等なおとなのつき合いをする。これはもう名実ともに、有形無形に成長している。この成長している日本は、非常に好意的に扱われていた小学校生徒のときの状態とは、現実に違っておるのです。
〔委員長退席、山本(正)委員長代
理着席〕
でありますから、国連加盟をいたしました上は、国連中心主義けっこうで、私はそうあらねばならないと思う。同時に、その好意をさらに私はアメリカに良識を求めて、安保条約、行政協定というようなものも、この成長に適した改善というようなことに思い切って——といって、これは当然なんだから、当然日本としては考えて、これは研究すべきである。私はアメリカはそんな小さな気持じゃないと思う。グレート・アメリカン、グランド・アメリカと言っているのだから、私はそうは思わぬ。最近アメリカの映画を見ると、南北戦争の当時のことをまだ出してきておる。西部映画をやっておる。これをなかなかやめない。やめないところにフロンティア・スピリットとヒューマニズムを合せて、彼らが非常に国内統制と世界に誇るべき精神力を——ただ力ばかりで、金があるからといって金ばかりでもって世界に押しつけていくものじゃないということをやっておる。それから南北戦争の映画などをまだ作ったりして、いろんな面においてやっておる。アメリカはいろいろおもしろいところがある。そういう点から考えまして、こちらも国連加盟というおとなのつき合いをすると同時に、小学校生徒のようなやさしい取扱いを受けたその気持を、おとなの取扱いに変えてもらうように、こちらの方も努力をする必要があるのじゃないか、こう私は思うのです。これは私、希望として、御返答をいただかなくてもよろしゅうございます。
もう一つ——一つじゃない。二つも三つもあるんだけれど、あまり長くなっちゃいかぬから。私は最近、南極に宗谷、海鷹に乗り組んでいかれた観測隊——実は私はわざわざ科学技術委員会に希望して行きまして、茅会長などの出席の際に言うたのです。どうも一部の人は学術観測、学術観測というが——学術観測も大事なことで、ゼネバで国際会議が開かれたのは、二十五年目に来たる観測年を国際的にやろうということになって、日本もこれに参加することになったのはけっこうなことだ。しかし、どうも探険という言葉がおきらいのように聞えるが、私はそういう言葉にこだわらぬがいいと思うということを一言言うたのです。さあ、おとといの新聞に、宗谷がああいうような状況になったもとが載ったのを見ますと、これは甘く考えた、どうもおそろしいものだということに気がついたといわれておる。私はいかにえらい学者ができても、宇宙のなぞというものはどこまで解決できるだろうか。それは学問のすぐれている天才によって各方面からきわめられるでありましょう。しかし、この結論が得られない限り、宗教などもそこから起きるんじゃないか。やはり無限大のものがあるから、その無限大のものはこれは探険だと思うのです。研究室の中にいて薬品を扱って一つのテーマを出そう、これも私は探険だと思う。命がけだと思うのです。それだから、どんなに船の用意ができても、科学的の準備をしましても、先々限り知れないものがあるし、さらにこれは抗生物質と同じで、ばい菌がペニシリンやクロロマイセチンで往生しないものができてくるのと同じことで、そういうことを考えますときには、私はこう思うのですよ。あのオングル島に越冬する人たちが、奥さんや子供さんたちと写真で姿を写し、声を聞きながら越冬するということは、これは非常になぐさめになるのであって、こういうことは去年までは考えられなかった。その考えられなかったことができるようになって、しかも、その技術が日本はアメリカよりも進んでおるそうで、まことに心強い話です。それも考えると、私は多少の金はかかっても、電波が危険を予防し、電波が船を守り、飛行機を守って危険を防止する限りにおいては、そういった金は非常に生産的な費用であると思う。それで考えられることは、日本の国が幾らさか立ちになってやっても、アメリカやソ連などの防衛には及びもつかぬのですよ。今の常識からいえば、おてんとう様に石をぶつけるようなものといっても過言じゃない。そういう観点から、われわれは独立国にふさわしいだけのことをしなければならぬというが、一番大事なことはやはり国民の生活だ。この国民の生活ということを考えるときには、政府は、なるべく使わぬで国民多数がよくなるように、少い金で効果のあることをやるべきだと思う。今日は国内で防衛兵器の生産も考えられましょう。戦前においては、兵器の生産は国民経済において相当のパーセンテージを持ったものです。そうしてそれがまた産業の発達、技術の発達になっておることは御承知の通りである。しかしながら今日のような事態におきましては、地球も狭くなり、それから非常に科学も進歩している。あなた方は電波というものの研究をどうなさっているか。私は前に海軍の政務官をしておったときに、やっかいなことはセクショナリズムで、陸軍と海軍が角突き合っていた。飛行機の研究でも……。何とむだなことであるか。むだばかりではない、非常なマイナスをしている。それから電波兵器についても。……まあそれはあとの話ですが、私は今日は日本の国の各セクションがあげて電波というものの研究、平和利用の電波の研究に結集すべきである。そういたしますれば居ながらにして不法な侵略に防衛の準備ができると思う。手を振りあげてなぐろうとしてもその手を押えることができる。日本の誇りは、駆逐艦隊が日本の自慢だったのです。夜外国の海軍は目が見えない、日本の海軍だけ夜見えるというので自慢だった。そういうように非常に誇ったところが、電波が進んできているから、まるでめくらが目あきにたたかれるようにぽんぽん南の海で日本の駆逐艦というものはやられてしまった。あれで働くつもりだった。それはソ連も研究しておりましょうし、アメリカも英国も研究しておりましょうが、日本人には非常な天分がある、特色がある。この神武以来の授かった天分をここでもって、拡大予算よりもこの方に拡大研究してもらいたい。そしてこの防衛予算を減らすようにしてもらいたい。減らしても安全保障ができる、むしろアメリカさんにも知恵を貸してあげましょうというくらいに必ずこれはできると思う。これは夢じゃない。現実の問題である。現に南極ではアメリカより進んだことを示している。これを一つ思い切っておやりになりませんか。
まだ三つも四つもたくさんあるのですが、総務会があるからいいかげんにして、もう一つ申し上げたいのは、地方の自衛隊の人々は、この議会でいろいろな問題で刺激をされて非常に心配し、興奮されておる。それは決していい意味じゃない、悪い結果を起して、いたずらなる反抗心、いたずらなる劣等心を持たせる、これくらい危険なことはない。そこであなた方はうんざりするほど社会党さんからいろいろな資料を提供して質問を受けてこざるけれども、この現実の感覚というものを地方の隊員は知っていない。ただ新聞雑誌で見ているだけだ。その新聞雑誌ではほんとうの感覚を伝えていない。でありますからあなた方が総がかりで地方の自衛隊の若い人々の中へ溶け入って、この真相を話し、そして自衛隊がいかにあるべきかということにつきましては懇切丁寧に、その任務の重大なることと、その任務の神聖なることをよくわきまえてもらって、かりそめにも劣等感や卑屈感を起さないように御指導なさることが一番大事なことではないか。これを一つ申し上げて私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/44
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045・小滝彬
○小滝国務大臣 おっしゃいました点はまことにもっともの点が多いのでありまして、御指摘のような技術の研究は、今後も鋭意進めていきたいと思います。また地方の部隊の士気を害することのないように、そうした面につきましての連絡指導につきましては十分留意したいと考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/45
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046・山本正一
○山本(正)委員長代理 次会は明二十八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604889X01019570227/46
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