1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年四月四日(木曜日)
午前十一時四十六分開議
出席委員
委員長 小枝 一雄君
理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君
理事 助川 良平君 理事 田口長治郎君
理事 稲富 稜人君 理事 芳賀 貢君
赤澤 正道君 安藤 覺君
石坂 繁君 川村善八郎君
椎名 隆君 中馬 辰猪君
永山 忠則君 原 捨思君
松浦 東介君 村松 久義君
阿部 五郎君 赤路 友藏君
井手 以誠君 石田 宥全君
石山 權作君 川俣 清音君
中村 英男君 日野 吉夫君
山田 長司君
出席国務大臣
農 林 大 臣 井出一太郎君
出席政府委員
農林事務官
(農地局長) 安田善一郎君
委員外の出席者
農林事務官
(農地局管理部
長) 立川 宗保君
農林事務官
(農地局管理部
管理課長) 石田 朗君
農 林 技 官
(農地局建設部
長) 清野 保君
専 門 員 岩隈 博君
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四月三日
委員有馬輝武君辞任につき、その補欠として細
田綱吉君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
土地改良法の一部を改正する法律案(内閣提出
第八四号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/0
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001・小枝一雄
○小枝委員長 これより会議を開きます。
土地改良法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。質疑を続行いたします。井手以誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/1
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002・井手以誠
○井手委員 農林大臣に若干土地改良法の一部改正案についてお尋ねをいたしたいと存じます。農地価格の点については、後刻川俣委員から質問があろうかと存じますので、そのことは割愛をいたしますが、どうしても私どもはこのことについて納得がいかないのであります。大蔵省から押えられたしりぬぐいにずいぶん苦しい答弁を繰り返されておるようでありますが、農政上のきわめて重要な問題でございますので、当局も大臣も十分お考えになりますように、最初に注意をうながしておきたいと存ずるのであります。
そこで私は主として政策的にお伺いをいたしますが、大臣は昨日も、干拓を急いで完了させる、工事量を増大させるために、土地改良法を改正し、あるいは特別会計法を設けたということを御答弁になりました。そのことは再三承わっておりますが、特別会計法を設け、さらに地元の負担を増大させるということでありますならば、政府もまた一般会計からの支出を飛躍的に増大させなくては、そういう特別会計を設けて工事量を増大するという趣旨には沿わないと私は思うのであります。特別会計を設けてあるならば、結果から申しますと、地元負担を大きくして、その分だけの工事量をよけい増すというのが結論のようでございます。そのためには農地価格を引き上げる、これに尽きると私は考えておりますが、もし御答弁のように、工事量を増大させて干拓を繰り上げて完成しようという熱意がありますならば、一般会計からの財政支出は思い切って増大させるべきであると私は思う。また一般会計に限度がありますならば、財政投融資その他の借入金によって大幅な財政支出を国がやる。国もこれだけたくさんの犠牲を払っておるから、予算も二倍、三倍にしたから、地元負担も若干ふやしてくれということでありますならば、農地価格の点は別にいたしましても、また別途の考えがあろうかと私は考えるのであります。それをせずして、ほとんど昨年と変らないような——一般会計からの繰入金が若干はふえておるかもしれません、何億かふえておるかもしれませんが、これはほんのおしるしばかり、弁解のおしるしばかりであります。せっかく特別会計を作っても、増大させた地元負担だけを借入金によって、またその分だけを工事の促進に充てようという、こういう根本的な方針に対して、井出農林大臣はどのようにお考えでございますか。おそらくあなたもこのやり方に対しては不満足であろうと思う。一つ率直に、農政に造詣の深い大臣に、自信を持った良心的御答弁を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/2
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003・井出一太郎
○井出国務大臣 特別会計を設けましたゆえんにつきましては再々申し上げた通り、ただいま井手委員御指摘の趣旨に基いておるわけでございます。しかりとするならば予算を飛躍的に増大をすべきである、この御説は、私も多多ますます弁ずるであって、多いほどけっこうには違いございませんが、果して飛躍的というほどふえたかいなかということに相なりますと、そこには程度の問題もございましょう。しかし昨年よりも相当の幅において土地改良の経費をふやしたことは事実でございまするし、ともかくこの新しい方式をもって出発をいたす。従いましてこれは今後においてはさらに期待できる、こういうふうにお考えをいただいてよろしかろうと思いますが、本年のところは御満足のいくような飛躍的な増大ということではないかもしれませんが、しかしながら絶対数においては相当にふえておりまするし、これによって、これは八郎潟でありますとか、あるいは新規に灌漑排水を行うものも四つ採択をするというようなことでございまして、従来に比べますると一歩前進であろうか、かように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/3
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004・井手以誠
○井手委員 ただいまの御答弁では、相当ふえたとおっしゃいますけれども、これは農林省の予算が明らかに示しておるところでございます。数億の予算がふえた——今後五百数十億円を要する土地改良事業を七カ年間、あるいはもっと早く完成しようという目的のもとに作られる特別会計の方式、最近特別会計は公団を押えようとする場合にあえて特別会計を設けておやりになろうという場合に、しかもまた五百数十億円を要する今後の工事費に対してわずか数億の増額では、それは井出さんあまり大きくおっしゃるような内容ではないと思います。これはあなた自身はおわかりになっておることだと思う。内心じくじたるものがあろうと思う。今後に期待するとおっしゃいましたが、それは大蔵省でさえ先般の委員会における答弁では、七カ年間、あるいはものによっては五カ年程度で完成したいというお答えがございました。ことしは干拓事業においては三十億円そこそこ、総体的には四百数十億円のものを今後七年間以内においてどのような計画のもとにこれを完成なさろうとする御用意がございますか、それを私は承わっておきたいと思う。そうでなくては、政府もこれだけ金をうんとふやして犠牲を払うのだから、地元においても苦しかろうけれども負担を増してくれ、こういうことであるならば話はわかるでありましょう、農地価格の点は別にいたしましても、地元は若干納得するでありましょうけれども、政府はほとんど財政負担を増さずに若干はふえておりますけれども多くを増さずに、地元だけを一拠に三倍、四倍に引き上げようということだけでは、関係者は納得いたしません。あなたは立場をかえてお考えになればおわかりになるだろうと思う。与党の方も腹ではぶうぶう思っておるようでありますけれども、おっしゃいませんので私がかわって申し上げます。今後七カ年間にどのような計画で完成なさろうとする御用意であるか、この点をはっきりお示しを願いたいと思います。そうでなくては私は引き下ることはできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/4
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005・井出一太郎
○井出国務大臣 今の段階で今後七カ年にわたりまする数字を明確に申し上げるのには少しく準備が整っておりませんが、しかし当初も申し上げましたように、これによって干拓事業の新規、継続一切を含め、さらに灌漑排水の新規のものを加える、こういうことをもちまして今までよりは大いに前進をした計画を立てるつもりでおるわけであります。本年のところは御不満でもございましょうけれども、まあスタートの年でもございまするので、若干手がたく問題を考えた、こういうふうに御了解をいただきますれば仕合せと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/5
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006・井手以誠
○井手委員 残念ながら了解するわけには参らないのであります。井出さんのことですからせいぜい私は了解するつもりでございますけれども、この干拓については、私はそうそう引き下がるわけには参りません。私は御承知の通り干拓で有名な有明海を控えておりますので、毎日のようにたくさんの陳情書が参る。私がただいままで申しましたような意味で陳情書が参っております。いよいよ予算折衝になりますならば、大蔵省の態度なりあるいは交渉のいかんにもよりましょうけれども、少くとも主管省の農林省においては、七カ年後には四百数十億円に上る干拓は完成するという熱意を示さなくてはどうして地元は納得いたしましょう。早く完成するということで地元はこの法律案に期待をいたしております。ところが実際は七カ年間に完成するという保証がありません。保証がないのに、しかも農林省はその用意もないのに負担だけを上げられるということでは、これは絶対に承知いたしません。あなたは今非常に熱意があるようにおっしゃいますけれども、どうですか、その点について、一つ七カ年計画をお示し下さい。大蔵省じゃありませんよ。あなたは主管省の農林省ですよ。そのくらいの熱意がなくて今後の七カ年間に大蔵省と交渉ができますか、その点を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/6
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007・井出一太郎
○井出国務大臣 この点は特別会計を設けるにあたりましても、財政当局とも十分に話し合いをいたしました点でございまして、七カ年で目標を必ず達成する、こういう目途のもとに臨んでおるのであります。また計数についてこの段階で何年度にどれだけというところまで詰めてはおりませんけれども、しかしこの点は御信頼をいただきまして、目標でございまする七カ年に早期完成をする、事業量を増大する、こういう方向で処理に当りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/7
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008・井手以誠
○井手委員 全国の農民や私どもがあなたに寄せておりまする期待というものは、若さによる情熱、農林行政に明るい農政学者というか論者というか、その立場からの決意を高く評価いたしておるのであります。もしこういう重大なものがいれられないという場合には、自分は職を賭してでもやり抜くという御決意が必要であると私は思う。これは三十二年度予算編成当時からあなたにはいろいろと批評されたところでございます。これについては、よく知っておりますから、敬意を表しておりますから、多くは申し上げませんが、あなたのその農政を守るという決意、これがあなたに寄せられた最大の信頼である、あたの唯一の誇りであると思う。そのときに地元負担を引き上げて、特別会計を作り、その分だけ工事を促進しよう、それでは何の意味で特別会計を作るのか、その意味がわかりません。それでは具体案がないといたしますならば、あなたはこの重大問題に対して、職を賭してでも七カ年に完成するという御決意がおありになりますならば、この際一つ明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/8
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009・井出一太郎
○井出国務大臣 この計画をもちまして、従来の土地改良が一歩前進をするであろう、こういう考え方のもとに設定をいたしたわけでございまして、私はこの考え方が、従来の農政の後退だというふうには考えておらないのでありまして、一部農民の負担の増すという部分もございましょうけれども、これは十分に経済効率によって、それを補って余りある、こういう生産性の向上という観点からながめまするならば、若干の犠牲の増すものは取り返せるのでございまするから、おそらく農民諸君といえども、これには御納得がいただけるものであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/9
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010・井手以誠
○井手委員 農民諸君には納得していただけるだろうというお言葉でございますが、これは先刻も申し上げますように、一般会計で都合の悪いとき——今日神武景気といわれるときでさえ、拡大均衡予算といわれるときでさえ数億の増加しか組んでないのです。もし一般会計で余裕がない場合でも、財政投融資からの借り入れその他によって、少くとも七カ年間には完成するという熱意をあなたは示さなくてはならぬ。おっしやるように、負担は上る、しかし早く完成するならばいいではないか、その早く完成するという保証を与えなくては納得しませんよ。問題はそこですよ。特別会計を作ってやろうというならば、地元負担を多くした分だけでやるということではなくて、七カ年に完成するために、一般会計で足りないものは財政投融資の方から借り入れてでもやるという道を開くところに私は特別会計のよさがあると思う。そうでないならば、今のような地元負担だけでやるということであるならば、これは全然意味がない。あなたは前進だとおっしゃいます。見方によっては前進のようにも見えるのでありましょうけれども、その内容を検討いたしますならば、これによって農地価格はくずれる、干拓地営農は苦しくなる、こういうことを考えて参りますと、今まで私どもがおそれておった大蔵省側の見解というものが農林行政にはっきりと地盤を築くことになるのではないかと、非常におそれるのであります。それがゆえに私どもの同僚は先般来、るる農地改革の問題などについて質問を申し上げておるのであります。ただこの法律案が通ればいいということではございません。法律案が通ってもわずかに五、六億の増加しかないじゃございませんか。これは非常に重大な点でございますので、私は七カ年でやる、決意をもってやりますというその言葉を一つちょうだいしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/10
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011・井出一太郎
○井出国務大臣 ここでこの方式の道を開いたわけでございますから、初年度においてはあるいは御不満もありましょう、七カ年という目標のもとにこの法律を御審議願っているのでございますから、われわれといたしましても、当然その時間的な目途のもとに完成する、こういうことに努める所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/11
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012・井手以誠
○井手委員 計画というものは、その後の経済情勢その他予想しない事態の発生によってくずれる場合は、これは間々あることであります。しかし最初から計画に載っていないということはあり得ないと思う。そういう計画というものはありません。少くとも初年度だけはやはり七分の一を計上することが、私は七カ年計画の第一年度だと思う。一つその点は十分腹に入れておいてもらいたいと思うのであります。
そこで、続いてお尋ねいたしますが、大臣は昨日の御答弁によって、干拓が完成することによって受益が増す。従って受益者負担という意味で、従来の価格にとらわれず負担が増大してもいいではないかという御答弁がございました。しかしこの干拓というものは、自作農に精進する者に売り渡す農地造成が目的でございます。農地に対して受益者という、その受益という意味は、生産が幾ら増強するかということに私はあると思う。農地の価格もそこにあると思う。そうでありますならば、コスト主義によって、東の干拓地は一反歩五万円の負担である、ところが隣の干拓地は三万円で済んだ、あるいはその次の干拓地は一万五千円で済んだ、しかしその生産力というものは同じく反当六俵である、あるいは七俵である。そういう場合に、受益者負担の意味から申しましても、農地はやはり生産力によってきまっていくのでありますから、そう私は高低があってはならぬと思います。コスト主義じゃいけません。やはり生産力によって地元負担はきまっていかなくてはなりません。一たん農地となっているところに土地改良を行なって生産の増強をするという場合には、若干の無理があるかもしれませんが、同じ六俵とれる干拓地において、一方は六万円で売り渡される、一方は二万五千円で売り渡されるということでは、これは農政上非常に重大な問題があると私は考えておるのであります。そのように一つ一つについて値段が違うという問題、これに対してどのように是正される御用意がございますか、お尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/12
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013・井出一太郎
○井出国務大臣 コスト主義というお言葉が出ましたが、これは厳密な意味のコスト主義ということになれば、かかったものはそっくり負担になるということでございましょう。ですから必ずしもそういう意味ではなかろうと私は思っているのであります。そうして干拓地などは、順次これを造成していきます関係上、そこに完成年度の差というものができるわけでありましょうが、今御指摘のように大体条件が似ている地帯で、片一方が五万円で片一方が二万円であるというような、そういう極端な事例というものはなかろうではないか、ほぼ同じような条件で落ちつけるのではなかろうか、また著しいアンバランスがございましたような場合には、そこに上限下限を設けるというふうなことで調整の工夫もいたしておりまするし、今御指摘のような極端なアンバランスは避けられるのではないかと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/13
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014・井手以誠
○井手委員 あなたの方から出されたこの資料によりますと、中には一万円のところがある。三十一年度までは五%、三十二年度以降は、この改正案によって試算されたところでは、同じ県内の干拓地において、一方は一万円のところがある、二万円、三万円、三万五千円、五万円、五万数千円がある。それが隣合せておりますよ。そういうアンバランスがある。そのようにして売り渡そうとするならば——あなたの方では売り渡しじゃないとおっしゃるかもしれませんけれども、結局農地の価格がきめられるということでありますならば、それはおかしいじゃありませんか。しかもあなたは今上限下限があるとおっしゃいましたが、その点はいかがでございますか、その点をお伺いいたしましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/14
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015・石田朗
○石田説明員 それではこまかい点をまずちょっと御説明申し上げます。そのあとで大臣の方から……。
今お話がございましたが、三十一年度前の事業費に対しまする負担率、これを五%といたしまして、三十二年度以降おのおの二〇%、これは完成間近なものにつきましては、今後借入金によって工事が促進できるという効果、いわばその新方式によります効果の得るところが比較的少いという点を考慮いたしまして、そのような方式をとったものでございまして、従いましてたとえばここ数年で完成いたすものは負担金が比較的少く相なる、今後工事をいたします分量が多い干拓地につきましては負担金が比較的大きく相なる、こういう形に相なるわけでございます。そういうこともありまして、いろいろな負担額が生じて参ります。それにつきましては上限下限等を切りまして負担能力をきめるということで、極端なアンバランスが出て参るようなことがないようにいたしたいという考え方をとっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/15
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016・井手以誠
○井手委員 私はこの問題については多くの質問をいたしたいのでありますが、大臣の時間も非常に少いようでありますし、あとで農地問題、農地価格についての同僚議員の質問もありますから、これで打ち切りたいと存じますが、ただいま申しました干拓地が、所によって、建設年度ばかりじゃございません、土地の条件によって隣合せであっても大きな不均衡が生じて参ることは数字で明らかなところでございます。しかも三十二年度以降は二〇%の地元負担だという御腹案のようでありますが、私は、農林省は最初から二〇%が妥当であるということをお考えになったとは考えておりません。もしそうでありますならば大へんだと思います。私は、農林省は一〇%、少くとも一五%にとどめたいという意思があったことを聞いておるのであります。それを大蔵省から押しつけられて二〇%に引き上げた。これで大臣、二〇%の負担をかけられ、四十万円の干拓費を要するところに八万円の地元負担が要る、そういうことでどうして営農が立っていけましようか。干拓地や開墾地は、政府がいろいろな施策によって保護しなくては営農は成り立っていくものではございません。二〇%も地元負担をかける。成り立つはずはございません。農地を安くすることが農政の基本であると私は考える。大蔵省はやみ価格に近づけよう近づけようとしている。あなたの方が押えつけられて二〇%に引き上げられている。私はそこを申し上げたいのです。幸いに二〇%はまだ法律ではございません。政令できまることでございましょうから、訂正の余裕は十分あるはずであります。私はなお営農類型その他についてもお尋ねしたいのでありますが、時間がありませんからきょうはやめますけれども、この地元負担の率は政令にまかせられているようでございますから、営農類型によって、やみ価格に妥協することなく、正しい農地価格、農地法にきめられた農地価格によって売り渡されるように私は政令をきめられたいと思う。この点は私は強く要求を申し上げたいのであります。時間が来ましたので私はこれ以上申し上げませんが、小さな改正案のようでありますけれども、その含んでいる問題はきわめて重要であります。われわれの農林大臣が、この際うんと腹をきめて緊褌一番農政のために努力されることを私は特に要望いたしまして質問を打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/16
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017・小枝一雄
○小枝委員長 川俣清音君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/17
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018・川俣清音
○川俣委員 私はこの際農林大臣に数点お尋ねいたしたいのですが、時間の関係上前提を置いてお尋ねいたしたい。今農政の関係者にとって憂慮すべき事態がいろいろ起ってきていると思うのでございます。一つは宅地造成であるとか、工場敷地の造成のために、経済的に圧迫を受けて農地が壊廃をし、後退をしていくという傾向、あるいは最近の交通のひんぱんから道路、あるいは河川の改修等によって漸次画地が壊廃をしていく傾向がある。これに対してさらに農地を増大するためにだんだん山を侵していかなければならない。経済的条件の恵まれている方が条件の悪い方をだんだん侵略していく傾向が出てきているわけであります。この中において、日本の国民生活の基本となっている国内食糧をどうして安価に提供するか。農業の持っている本質がだんだん変形されてこなければならない状態の中で、一体どうしてこれらの点を少くとも最小限度に防衛するかということになりますと、農地法の持っておりますものをたてとして、これらのものを防衛していかなければならないのではないか。その他の政策はもちろん立てていかなければなりませんけれども、少くとも農地法の基本だけは、これをたてとして農地の壊廃等を防衛していかなければならぬじゃないか。それにしても経済的に弱過ぎるために、法律がありましても、なおこれを侵されていく傾向にある。この中において、どうして一体農地を拡大していくかということになるわけでありますが、経済条件に恵まれない農地をどうして増大していくかということに農地法はいろいろ苦慮いたしておりまして、未墾地買収であるとか干拓をするとかいうことになっていっておると思う。そこで政府は農地造成についてたびたび閣議決定をいたしております。その閣議決定によりますと、たとえば開墾によって五カ年に百五十五万町歩の農地を造成する。農地法に基いて、干拓によって六カ年に十万町歩の湖海を耕地とし、開墾、干拓によって造成される耕地に五カ年に百万戸の自作農を創設し、そのほかに土地改良事業として暗渠排水、客土、区画整理等によって三カ年に二百十万町歩の土地改良を行い、もって食糧増産をはかるという閣議決定をしておる そしてまた開墾による農地造成面積百五十五万町歩を内地七カ年、北海道十二カ年をもって完成する。さらに干拓によって十カ年に五万町歩の耕地を造成し、そのほかに土地改良事業を内地五カ年、北海道十カ年に延長して、これらとあわせて造成耕地に創設する自作農を三十四万六千戸に減少し、既存農家九十四万六千戸を増反者として経営拡大の機会を与えるということで、農地法の持っております特徴を発揮いたしまして、未墾地買収並びに干拓による耕地を造成する。そのほかに土地改良事業として経営を向上させることが土地改良法の任務である、こういうふうに計画を出してきておるのです。また農地法と土地改良法は成立の歴史も違います。農地法の制定当時の説明によりますと、自作農を作る目的で未墾地を農耕地にする、主として埋め立て、干拓を行なって新たに農耕地を造成するという説明をしておるわけです。さらに土地改良法は対象土地の農耕地等の農業生産力を発展させ、農業経営を合理化するという主として経済条件の改善をはかるものであるけれども、その対象地区の中にたまたま未墾地が転在するような場合はあわせて造成するのだ。たまたま故障があったりした場合は、土地改良事業の目的の上から、既存の農地の発展向上をはかるためにあわせてやることもできるのだが、買収の仕方は既存農家の増産をはかるためであるからして、これは農地法による買収をしないで時価買収をしておるのだ、こういう建前で今日まできておるわけです。従いまして今度新しく農地を造成する場合におきまして、宅地が農地を侵すことなく、宅地の方が経済価値が高いのであるから、みずから埋め立て等を行なって宅地造成をすべきなのだ。ところが経済的に耕地買収よりも埋め立ての方が経費がかかるからということで、宅地造成を農地に向けていく。工場敷地であるとか宅地などはむしろ負担の高い方面へいくべきであるけれども、そちらにいかずにだんだん農村を侵していく。侵された結果農地が不足になったから経費が高くなっても干拓するのだという行き方は、農政上一つの根本的な大きな問題であると思う。それをあえて土地改良事業という既存の農地の生産力を上げるという目的のためにできておる土地改良法を拡大して、これを利用するということは非常に無理な考え方じゃないか。そこでこの前大臣に、結局農地と抵触したり農地の基本法を改正するような意思が出てくるのではないかと言ったら、大臣も農地法を改正するようなことはいたしませんというふうに答弁しておられるわけですが、今度の土地改良法によりますと、附則の十二項で農地法を改正するということになっておる。しかもこれは基本の問題であります。事務的な問題ではなく基本の問題にまでさかのぼって改正しようということでありますが、なぜそれほど無理をしなければならぬかということが農政上非常に大きな疑問の点であります。大臣も事務当局も、農地法を改正してまでやろうという考えは持っておらなかったはずであります。抵触するようなことまでしてやろうという考えは持っておらなかったのでありますが、急に出されました法案ではこの改正を含んでおりますが、この点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/18
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019・井出一太郎
○井出国務大臣 ただいま川俣委員のるるお述べになりましたことは、農地法と土地改良法との成立の経緯、あるいはそれぞれの持っております職分といいますか、それを厳密に区分をしてお述べになった次第だと存じます。今回のこの改正を御審議わずらわすにつきましては、何もそれぞれ相干犯をするようなものではなく、相補うとでもいいましょうか、この二つの法律を有機的に関連を持たせることによって、決して違法性とかいうようなことはないと考えている次第でございます。農地に対する基本法規として農地法が厳然として存在しておるのでございますから、ただいま御指摘のような問題は決して御心配はないと考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/19
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020・川俣清音
○川俣委員 これは私はほんとうに憂慮しておるのですよ。農地法は、耕作者の土地取得を促進しということで、この促進のために新しく未開墾地を造成するのである、または干拓を行うのである、こういうような建前をとっておる。未墾地を開墾して自作農地として解放するという制度なんです。埋め立て、干拓によって農耕適地を造成していって、これを自作農地として解放するのである。従って漁業権その他の埋立権等についても、国の自作農創設のために制限を加えたり所有権を消滅させたりして自作農を作るという趣旨でこの立法ができている。一方土地改良というものは、持っている土地の生産力増強の範囲内において行うのであるが、新しく土地を造成するという趣旨の目的をもって生まれたものではないのです。農地法はわざわざ「耕作者の農地の取得を促進し」とあって、新しく土地を造成して自作農を作っていくのである、こういう建前である。片方は御承知の通り農業経営を合理化し、生産量を発展させるために土地改良事業を行うのであるというふうにいたしておる。もちろん両方とも食糧増産という最終目標でありますけれども、同時に農業経営を合理化する、あるいは既存の土地の生産力を上げていくということが目標で、その障害になるところの湖沼等の埋め立てをする、そのほかに、灌漑排水等を行うのであるから、他に水源池が得られるから湖沼埋め立て等も行う。この行うことについての管理配分等をなし得る規定はございますけれども、初めから管理配分するためにこの土地改良法ができていないことは法律体裁からいって明らかなんです。
そこで問題になりますのは、いずれにしても土地を造成するのであるからいいじゃないかという議論がなされるわけです。その場合は農地法の特権を利用いたしましたり土地改良法の特権を利用いたしますのは明らかに農地造成に限られるわけでございますが、今後の干拓、埋め立て等は児島湾の例を見てもわかりますごとく、初めは農地造成の意味において作られた農地であっても、これが商業用地、工業用地その他に転用されている部分が非常に多いのです。だからこれは初めから農地は六割なら六割、あるいは七割なら七割、あとの三割は経済効果の土地として利用させるというふうにいかなければおそらく現実に合わないだろうと思う。現実はそうだと思う。そういたしますれば人の所有権を農地法に基いて剥奪をして宅地を作るということは、農地法ではやるべきではない、土地改良法ではやるべきではないということになる。本来からいけば逸脱だということになる。冒涜だということになる。しかしながら現状は工業用地にしなければならない面もある。海面干拓のような場合にはかなりの工業用地が予定されるであろうと思うのです。現在工業用地にするには広面積を得られないために実際の土地価格以上にいろいろな買収費がかかりまして、相当大きな費用を坪当りかけなければならない状態の場合におきましては、こういう広範なさら地ができることは少しくらい高くても取得できる経済条件がある。そこで、それらのものに初めから計画的に売り渡すといたしますれば、無理に農地法を改正をいたしましたり、あるいは本来の農地法の本旨を冒涜したりあるいは土地改良法の本旨を冒涜するようなことをしないで、これは特別会計と相待って、干拓法というような特別法を使いまして、そのうちの農地部分については農地法または土地改良法を施行していくのである、あるいはこの区域に対しては建設大臣と協議して工業用地その他の商業用地を作るんだ、そういうふうにして参りますならば、私は農地造成の本来の意味と、また経済的にも価値のある埋め立て等が完成できると思う。それを無理に農林大臣の所管においてということで農地法を曲げたりあるいは土地改良法を曲げて無理にやってしまいますと、その他の未墾地の場合に及ぼす影響が大きいし、また農地法の持っております唯一の建前であります小作料を押えていくということは、これを土地価格による——今土地価格はやみ価格なのです。やみ価格が横行いたしますと、地主の復活やあるいは隠然たるやみ小作料が生じまして、日本のせっかくの農地改革がここから崩壊していく。私は単に農民が——今十万円でも二十万円でもおそらくはしいという農民があります。ことに山村に行けば行くほど経済価値のないようなところも希有土地としての価値を生んでいる。これは農業用地として価値を生んでいるのではなくて、日本に農地が不足しておるというところから生んでおるのであって、従って、幾らでもするのであるから対価は払えるだろうというようなことになりますと、農地法の本来の姿が全く冒涜されてくるばかりでなく、この農地法の持っておりまするものは根本からくずれていくということになって参りますと、日本の農業の一大危機であると私は思うのです。従いまして、やはり負担金というような考え方ではなしに、自作農創設をするのであるという限度を越えないという農地法の建前を一方とりながら、さらにその他の土地造成と相待って干拓あるいは埋め立てを行うという考え方をしなければならないと思う。何といっても、あなた方はうまくのがれようといたしましても局長のごときは、埋め立てなんというものは何にもないところに新しく土地が生まれるのだというようなことをいっておりますが、そんなところはありません。湖沼の関係にはみな埋め立ての許可を全部持っております。秋田県の八郎潟だけでも二百数十件にわたって埋め立ての許可をとっている。埋め立ての許可は、土地改良法によりますと、四条によってこれは土地とみなすということなんです。それらのものを犠牲にしないでぽかっとできてくるわけじゃない。海面干拓におきましてもそうだ。出先埋め立ての許可をたいていとっておる。従って、ぽかっとできるのじゃない。多くの漁業権やそれらのものを買い取りするなり消滅させるなりしてできるのでありますから、これを適宜に土地を配分していかなければならぬ。原始取得だなんという考え方をすると、農地法では原始取得の考え方はありまするけれども、土地改良法には原始取得の考え方はないのです。無理に土地改良法でも原始取得ができるのだなんという考え方をすると、私は農地法と抵触する部面が出てくると思う。従って、計画は農林大臣の所管におくことは私は賛成ですが、農地造成と宅地造成とをあわせてやってその比率を二割持って参りましてもしも農地の十倍とか十二、三倍とかになりますと、これは採算が合うものなんです。それには、無理に土地改良法を用いたりあるいは農地法を改悪してやらないで、特別法を出されて、そうして農地と他の工業用地を区分されるといことが必要になってくるのじゃないか、そういうことによって促進されていく。やはり自作農という限界を越えない農地を作る、一方では適切な宅地を作る。そうでないと農地買収をする。あるいは負担金——負担金かどうか知らぬが、取れば取るほど、農地法による買収でなければさらにこれが経済的に農地以外に転売されるのじゃないか。経営が成り立たなければ転売する。また一方経済的に高くても買うという要求が起って参りますと、経済的な面とたえられない面と両方から宅地に転換されていくということが今もう見えすいておるわけです。児島湾の例をもって明らかであります。従って、それだけ農民に渡してから高い値段で転売されるいうことは邪道です。やはり農地価格なら農地価格として、農地法の対象として、自作農の対象として農地は売り渡すという分は責任を持って売り渡す。そのかわり宅地に類する部分は、宅地なり工業用地に類する部分は工業用地にこれを初めから売り渡していく、こうしていかなければ促進するなんといったって促進できるものじゃありませんよ。愛知用水公団は五年でやります七年でやりますというてもまだ目鼻がつかない。あるいは今までの灌漑排水工事にいたしましても干拓にいたしましても、何年でやるということを政府がたびたび声明をいたしておりますが、その通り実行いたしておられない。これを促進するというからには、既存の法律を曲げてやって参りますとどこかでまた衝突が起きまして、トラブルが起きたりあるいは根本の農地法が他の面での動きを失うような半身不随の結果にならしめたり、あるいは土地改良事業法を不身不随にならしめるようなことが起ってくるわけでありますから、もうぺん一つ考え直して、ほんとうに農地を守りながら農地の造成ができ、他の用途にもできるような工夫が私はこらさるべきじゃないかと思いますが、この点について一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/20
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021・井出一太郎
○井出国務大臣 川俣さんのお説であります干拓法とでもいう別途単行法を出してやったならばどうか。これは私は一つのお説としては傾聴に値するものがあろうと思うのでございますが、といって今私どものお示しをしておりますものが、これではできないんだということにはならぬと考えておるのであります。今おっしゃった農地法を守りながら、そうして農地を造成していとくいうことが、この改正法をもってしても十分にできる、こういうふうに考える次第でございまして、いろんな欠陥がある、たとえば経済的に値段の高きを欲するままに農地が宅地に転用されていってしまうではないか、あるいは小作料の問題に大きくはね返りが来るのではないか、こういうような点は十分に今回の法律ないしは政令によりまして規制する措置はとっておりますので、この行き方をもってして大体事足りるのじゃないか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/21
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022・川俣清音
○川俣委員 それは農地法をみずから弱めておいて、小作料の制限ができる、あるいは農地の転用等に対して強力に働くんだ。みずから農地法の基本を弱めておいて、農地法の基準よりも高い価格で渡しておいて、自分の方の政府の方は農地法の趣旨は守らないんだ、お前だけ買ったものが守れと言ったって、これは無理ですよ。政府みずからが厳然として農地法を守りながら売り渡すなら別です。地価が安いんだけれども、これは自作農のために売り渡すのであるから、転売してはならぬぞ、やみ小作料を取ってはならぬというなら、これは威力を発揮します。自分の方は農地法を弱体化させておいて、取得したならば農地法に従えといっても、自分の方がのがれ道を見つけておいて、人の方にはのがれ道がたいんだ、これでは農業政策に私はならないと思う。これはほんとですよ。そこはやはり農地法に基く特別な恩恵のもとに農地を造成するならば、やはり農地法に基いた売り渡しの規定がるるあるのでありまするから、これらの規定を尊重されていくという建前を私はとるべきじゃないかと思う。また土地改良事業にいたしましても、今後湖沼等だけに目をつけて土地改良を行うことになったら、これはまた行き過ぎです。やはり土地改良全体として、存存する湖沼等についての埋め立てや干拓等が従来通り行われても、これは問題はない。それが主目的ではないのです。ところが農地法で同じように主目的で干拓もできるんだということになると、未開墾地もまた対象になり得るんだというようなことがおいおい起きてこないとは限りない。あなたの時代には出てこないかもしれません。しかし、これは今日でもやかましいのだから、将来起るというのは、過去にもこういう例があるじゃないか、こういう先例があるじゃないかということになる。たとえば森林開発公団の場合に、早く農道ができるのであるから、経済効果が上るんだからして政府の負担率が下ってもいいじゃないかということが去年言われた。ところができてみると、ことしから林道の補助金をまた右えならえさせよう、こういうことになりかねない。ことに干拓などは、大蔵省などは、早くできるのだから経済価値が高いという。それは自分の持っている土地が早く改良されるなら経済価値は高い。だれが入るかわからぬものを早く入れるから経済価値が高いんだと言う。しかし失業者が早く就職できれば経済価値は高いんだ、こういうことには通念はならない。これは国の行政としては経済価値が高い。行政価値は高い、入る人の経済価値が高いんで、入植者が早く入植できたから、経済価値が高いのだから高く入る、そうは通念はならない。失業者が早く就職できたから、経済価値が高いから月給は安くてもいいじゃないかということにはならないと思う。それと同じように、経済価値が上るというのは国の行政上の経済価値が上っていく、国が投資した経済価値が上っていくのであって、入植者の価値が上るのではない。既存農家の土地改良の場合は経済価値が上る。十年ででき上るものが三年ででき上ったとなれば、既存耕地の価値は上ってくる。これは当りまえである。それと干拓とは違うということを一方においては説明していながら、早くできれば価値が高いのだから負担金は多くなってもいいだろう、これはとんだ間違いだと思う。その意味からいたしましても、大臣もう一ぺん……。農地法とも抵触しない、土地改良事業はそう大幅に変えなくてもやれるのだということで出発した。出発はそうだったが、やってみるとそうじゃない。従って出発に無理があったのだから、もう一度考えて——考えてということよりも、そのように元の趣旨のように、農地法を改悪しないで、あるいは本来の持っている土地改良事業を改悪しないでやる方法に修正していくことが、私はほんとうに農林大臣の今日の責務じゃないかと思うのですが、もう一度……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/22
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023・井出一太郎
○井出国務大臣 るる御説を承わりまして、川俣委員のお考え方にはいろいろ御示唆を受ける点はございます。しかしながら先般来申し上げておりますように、私どもといたしましては、一つは国民経済全体から考えますると、今の経済効果というふうな問題も、観点はあるいは変ってくるかもしれませんが、この農地法を一方におては尊重し、かっこの改正法と彼此相補うことによりまして、御指摘になったもろもろの欠陥は是正できるのでございまするし、われわれとしてはこの線で一つ発足をせしめていただきたい、このように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/23
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024・川俣清音
○川俣委員 おそらくこれは自作農創設を目的にしていると思うんです。自作農創設というものは一つの限界がある。取得するについての限界があるわけです。それを最近の経済事情だということと、国が経済投資をするのであるからその限界を越えてもいいということが根本的に農地法に抵触する問題なんです。それであるから干拓がいけないというのではなくして、これはやはり農地造成と宅地造成とを按配して、そうして配分をしていくということを初めから建前にとるべきある。それを建前にとらないで、農地法を改悪したり、あるいは土地改良法の行き過ぎのもとにこれを作ろうとするところに無理があるのじゃないか、こういうことなんです。初めからやはり目的を分けて、この部分では損をするけれども、この部分では得をする、総体的にはどうなる、こういう観点でいくならば、国民経済の上からも価値が出てくる。そいつを国民経済の全体の上から考えないで、農地法や土地改良法を曲げて持っていこうとするとこうに間違いがある。国民経済の建前に立っていくならば 農林大臣と建設大臣その他との共管の部分と、農林大臣の部分とに区分してやっていくという考え方にしないで、無理に農地法を改悪したり、あるいは土地改良法を曲げて、逸脱してやろうというところに問題があるのです。趣旨には問題がない。無理に曲げてこれを完成しょうというところはもう一度反省を求めなければならない、こう言うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/24
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025・小枝一雄
○小枝委員長 昨日の芳賀委員の質問に対して、ちょうど大臣が日ソ交渉へ御出席のため答弁をなさらずに御退席でありましたので、この際簡単に芳賀委員からもう一度御質問になって、大臣から御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/25
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026・芳賀貢
○芳賀委員 昨日農林大臣は私の質問に対して、今度の土地改良法の改正によって、干拓地等の売り渡し処分を行う場合に、農地法からはずして処分をした場合においても農地法の適用を受けることができる、従前通りの農地法の適用によって今後それを管理することができるというような意味の答弁をなすった。私はそれはできないのではないかという点を事実をあげてただしたわけなんですが、それに対しては、大臣は日ソ交渉のために中座されて答弁を得ていないのです。問題点がおわかりにならなければもう一度その点を申し上げますが、わかっておられれば大臣の方からお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/26
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027・井出一太郎
○井出国務大臣 そのあと安田政府委員からお答えを申し上げたと思いますが、それをもって御了承をいただければけっこうだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/27
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028・芳賀貢
○芳賀委員 農林大臣から聞かなければだめなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/28
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029・井出一太郎
○井出国務大臣 開拓あるいは開墾の場合は、いわゆる成功検査というもので、一つのブレーキと申しましょうか規制がございますが、今回の干拓の場合いは、これは一時使用という形で、その間に農林大臣が自作農に精進をするという認定をいたしまして通知書を交付すると同時に、所有権が移る、こういうことでございますから、それ以後は農地法が適用される、こういう解釈をいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/29
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030・芳賀貢
○芳賀委員 その点はちょっと違うのですよ。たとえば竣工以前に一時使用をするとしても、埋め立ての場合は竣工以前は土地でないのです。公有水面埋立法によると、たとえば国がやる場合には、竣工した旨を地方長官にこちらから通知して、そのことによって土地がいわゆる埋立地が造成されたということが確認される。それから埋立権を持った個人がその工事を行った場合には、竣工したことを当該地方長官から竣工した旨の通知が行われる。ですから竣工以前においてはそれは埋立地でもなければ土地でもないのですよ。だから竣工以前に一時使用をさして、それがたとえば耕作に供せられたからして事実の認定ができて、それが農地としての資格を具備するというこにはならないのですよ。この点は昨日安田さんが言われておるが、これは全くの詭弁であって、竣工したということはただ埋立地ができたということであって、それが農地であるかどうかということの認定は、原始取得の形で入植者が取得するのであるから、それを農業に供するかどうかという事実の上に立って認定しなければ、そのうちの一部が農地であるという認定ができた場合には、農地法の適用はその部面は受けるでありましようけれども、農地に供されない部面に対しては農地法を適用することは私は絶対にできないと思うのです。ですからこの点が従来の農地法によって国が埋立地を国の所有として、しかる後にそれを農地として売り渡し処分を行う場合と、そういう手続を農地法の中で全く行わない場合とでは、その後の事態は非常に相違してくるのではないかということを私は指摘して、農地法によるところの農地の売渡し処分の場合と今度の土地改良法の改正によるところの埋立地の処分の場合とでは非常に異なったものが出てくるということを指摘しておいたのですが、今の大臣の答弁のごときでは、これは了承することができないのであります。もう少し法律の上に立った、法の精神に根拠を置いた意味の明確な答弁をしてもらわぬと、この点は今後非常に問題になる点だと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/30
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031・井出一太郎
○井出国務大臣 この一時使用をきせまするのには農業に供する、こういうことに解釈をいたし、また事実そうせしめるのでございますから、今御心配になるような問題は事実上は起ってこない、こういうふうに御解釈願えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/31
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032・芳賀貢
○芳賀委員 事実上そういう問題が出るのですよ。物権の取得とか権利というものは単に農地法とか土地改良法だけで全部を規制したり支配することはできないのですよ。所有権の設定というものはこれはやはり民法の規定に基いて権利が保護されておるのですから、完全に所有権を取得したということによって本人の所有にかかる物権の処分というものは、単に農地法とか土地改良法だけの規制で完全にやれるということにはならないと思うのです。しかも今度の場合には土地改良法の規定の中で原始取得という形で、従来のいろいろな権利関係とか義務関係というものを全く承継しない形の中で所有権が設定される場合においては、絶対大丈夫だということにはならないのですよ。その権利の侵害をやれるなんということを考えるその考え方自体がどうかしておると思う。この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/32
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033・井出一太郎
○井出国務大臣 所有権が確定いたしますれば問題はないと思うのですが、それまでは例の公有水面埋立法に基いて政府の規制が厳重に行われる、こういうことで今の問題は処理されると考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/33
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034・芳賀貢
○芳賀委員 従来までは国が農林大臣の権利とか管理のもとにおいて農地造成の目的で埋め立てをやって、それを今度は農地として売り渡し処分をするわけです。その場合にはもう、この事業は農地を作ることに尽きておるという目的をもって造成しておるのですから、でき上った場合にはそれを売り渡し通知者に対しましては、この入植者にはできた造成農地を売り渡しするという事前契約を行なっておいて、そうして完成までの間一時使用を認めるということが農地法の規定の中にもあるわけです。その場合には無償使用ということでなくて有償で使用させることもできるという規定で農地法の方ではその問題を取り扱ってきたのですが、今度の土地改良法の方では有償使用ということは全然ないのです。それはあとで出てくる取得権の問題にからんで、無償使用という形で使用させることができるということにはなっておるけれども、これは竣工したとたんに本人に所有権が設定されるということになるので、それ以前の一時使用というものは所有権設定の場合の承継さるべき権利とか義務とかいうものには何らの関係がないことなんです。そうじゃないのですか。それが関係ありとすれば、これは原始取得にはならぬと思うのです、取得以前の権利とか義務を継承しなければならぬということであればこれは原始取得ではないと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/34
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035・小枝一雄
○小枝委員長 芳賀委員どうでしょうか、法律問題ですから、局長に答弁させたいということですか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/35
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036・芳賀貢
○芳賀委員 法律問題で一番大事な点だから提案者である農林大臣から答えてもらいたいのです。枝葉末節にわたる点は局長でも管理課長でもいいのです。事務当局の答弁でいいけれども、提案者としての責任の上に立ってこれを出して、どうしても通したいという場合には、農林大臣がみずから大事な点を明らかにすべきだと思うのです。そうでなければ、大臣なんか要らぬですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/36
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037・井出一太郎
○井出国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、公有水面埋立法の規制でやって参って、それを配分通知書によって農用に供するという規定を明確にうたい込んで交付をすることになりますので、今おっしゃるのは一つのブランクの状態が生ずるという御解釈のようでありますが、それは防ぎ得るという考え方に立っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/37
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038・芳賀貢
○芳賀委員 防げないのですよ。申込書を出さす場合は、私は農業に精進しますということを書面にしたためて出さなければ選考に入らぬから、申込者はおそらくそういうことで出てくると思うのです。審査の場合にもやはり精進する見込みのものを選定して予約通知書を出すと思うのです。しかしそのことは、所有権が取得された権利関係には何らの影響をもたらさないのです。所有権が設定されるまではそういう善意の判断で申込書を出したりあいいは配分をきめても、法律上からいうと取得権が設定された場合にそれによって拘束を受けるということにはならぬと思うのです。道義的にはもちろんそうしなければならぬでしょうが……。こういう点もやはり今後の土地改良法による処分の場合の盲点だと思うのです。だから無理をしているのですよ、この法律改正で、いつも言っている通り、高く売るという目的に持っていくためにはどうしたら農地法とこれを切り離してうまくやれるかという巧妙な技術的な立法化をねらった気持はわかるのですけれどもね。それは一つのインチキではないかというふうに考えられるのです。そういうことは良心的にとるべき手段ではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/38
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039・井出一太郎
○井出国務大臣 芳賀委員のような御解釈もあるいはあるかもしれませんが、それは一つのお説であって、われわれの見解は、この間ここで学識経験者をお招きして御意見等も聴取いたしたのでございますが、われわれのこの考え方をもってさような盲点は起らない、こういう見解に立っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/39
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040・芳賀貢
○芳賀委員 そういう責任は持ってないのです。農林大臣の個人的な解釈で言っても、法律というものは本人の判断だけで左右することはできないのです。あなただけが善意の判断でそう思っておっても、法律の解釈とか規制というものは何ともできがたい場合が非常に多いのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/40
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041・井出一太郎
○井出国務大臣 この問題は私の主観というのではなくして、もっと客観性に基いておるのでありますが、運用によって十分規制していくので、ただいまのような御心配はない、こういうふうに御了解をいただきたいと思います
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042・井出一太郎
○井出国務大臣 この問題は私の主観というのではなくして、もっと客観性に基いておるのでありますが、運用によって十分規制していくので、ただいまのような御心配はない、こういうふうに御了解をいただきたいと思います発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/42
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043・小枝一雄
○小枝委員長 次に、全購連の不正事件について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。山田長司君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/43
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044・山田長司
○山田委員 最近新聞で話題になっております全購連の事件について伺いたい。多久島事件などで農林省の経理の紊乱がとかく国民の間で論議されておりますとき、春肥を前にして農林省の経済局の関係者がひっぱられるというようなことは、これまた国民の間にかなり大きな話題になる問題でありますので、当局ではこれについて明確にする必要があると思うのですが、どんな事情になっておるか、わかっている範囲で詳細にお知らせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/44
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045・井出一太郎
○井出国務大臣 さきに起りました、河村某の事件に関連いたしまして、最近の新聞紙上でこれがさらに拡大発展をしておるように伝えられておるのであります。全購連としましては、農民団体の中枢機関の一つがこのような事件を起しましたことに対していたく恐懼をいたし、それぞれ責任のあり方を明確にする、こういうことで、私の方にも会長以下数次連絡に参ったのでございます。監督の立場にある農林省といたしましても、世人の疑惑がこれに注がれ、農業団体が信頼を失うことはいかにも残念でございまして、これがためのすっきりした解決の仕方を、われわれの方も相談に乗って立てさせるように手配をしておったさ中でございましたが、たまたまこのことが農林省にも関連があるように伝えられまして、私どもも非常に心配いたしておるわけであります。しかし、実際はまだ農林省の公務員が召喚されたという事態ではございません。従って、取り調べの進捗を待った上でないと何とも申しがたいのでありまするが、いずれそういう点が明らかになりました上は御報告を申し上げる所存でおりますので、本日この際は、まことに遺憾であり残念であるということだけを表明申し上げるにとどめさせていただきたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/45
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046・山田長司
○山田委員 肥料審議会に全購連から消費者代表が有力な立場で入っておられるわけですが、今度の河村某の事件というものは、たくさんの料理屋の名前があげられておったり、そこでたくさんの金を使っておったという点からだけでも、何かしらそういうところに暗い汚職の影があるように印象づけられるのですが、もしこれに関連があるような場合は、全購連を消費者代表の中から除くというような決意はないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/46
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047・井出一太郎
○井出国務大臣 肥料審議会にただいま田中順吉氏が全購連の立場を代表して名をつらねておることは事実でございます。しかしまだこの肥料の関係における事件の全貌というものが明確ではありませんし、山田委員のお説のような方向に処置をするということはまだ今の段階においては考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/47
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048・山田長司
○山田委員 今の段階を聞いているのじゃないのです。もしこれに関係があったというような場合になりますと、私は日本の農民の代表として入れている全購連が、その中からそういう汚職の人を出したというようなことになったのでは、全購連をきれいにする意味においても農林省が厳然たる態度で臨むようになされないと、何かしら人はかわっても別な人間でこの汚職に関連があるのじゃないかというような印象を受けて、私は日本の農民の上に暗い影を与えるのじゃないかという気がするのです。そういう点で伺っているわけなんです。今の場合じゃないのです。将来の場合についての大臣の決意を一つ聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/48
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049・井出一太郎
○井出国務大臣 それはこの事件の推移を見守りまして、その上で考慮いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/49
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050・小枝一雄
○小枝委員長 この際暫時休憩いたします。
午後一時十二分休憩
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〔休憩後は開会に至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02319570404/50
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