1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年四月九日(火曜日)
午前十一時七分開議
出席委員
委員長 小枝 一雄君
理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君
理事 白浜 仁吉君 理事 助川 良平君
理事 稲富 稜人君 理事 芳賀 貢君
赤澤 正道君 五十嵐吉藏君
石坂 繁君 大石 武一君
大野 市郎君 川村善八郎君
鈴木 善幸君 綱島 正興君
永山 忠則君 八田 貞義君
原 捨思君 松浦 東介君
松田 鐵藏君 松野 頼三君
阿部 五郎君 伊瀬幸太郎君
石田 宥全君 石山 權作君
川俣 清音君 楯 兼次郎君
日野 吉夫君 山田 長司君
出席政府委員
農林政務次官 八木 一郎君
農林事務官
(農地局長) 安田善一郎君
委員外の出席者
農林事務官
(農地局管理部
長) 立川 宗保君
農林事務官
(農地局管理部
管理課長) 石田 朗君
農 林 技 官
(農地局建設部
長) 清野 保君
専 門 員 岩隈 博君
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四月八日
委員赤路友藏君辞任につき、その補欠として有
馬輝武君が議長の指名で委員に選任された。
同月九日
委員八田貞義君、足鹿覺君及び井手以誠君辞任
につき、その補欠として本名武君、楯兼次郎君
及び伊瀬幸太郎君が議長の指名で委員に選任さ
れた。
四月八日
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大分県に植樹行事及び国土緑化大会誘致に関す
る陳情書外一件(
第七三一号)
大分県に植樹行事及び国土緑化国民大会誘致の
陳情書
(第八一五号)
暴風浪被害対策等に関する陳情書
(第七六三号)
自作農貯蓄組合法制定に関する陳情書外四十一
件
(第七六四号)
機船底びき網漁船の密漁取締りに関する陳情書
(第七六五号)
北海道農業振興確立に関する陳情書
(第七六八号)
合併市町村農業委員会の合理化に関する陳情書
(第八一〇号)
農業共済団体職員の身分保障等に関する陳情書
(第八一一号)
繭検定業務の国営移管に関する陳情書
(第八一二号)
漁業協同組合指導育成施策の強化等に関する陳
情書
(第八一四
号)
を本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
全国購売農業協同組合連合会の事業運営の問題
に関し参考人出頭要求に関する件
新潟県における豪雪による農業災害状況調査の
ための委員派遣承認申請に関する件
土地改良法の一部を改正する法律案(内閣提出
第八四号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/0
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001・小枝一雄
○小枝委員長 これより会議を開きます。
土地改良法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。質疑を続行いたします。石田宥全君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/1
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002・石田宥全
○石田(宥)委員 今度農林省は土地改良制度調査会というものを設置されたようでありますが、土地改良制度調査会というものは、土地改良法の改正並びに特定土地特別会計法との関連においてこれを設置されたように伺っておるのでありますが、この今審議中の法案との関係はどういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/2
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003・安田善一郎
○安田(善)政府委員 御質問の土地改良制度調査会は、三十一年度予算において約七十万円ほど予算を計上していただきましたので、本法案と直接関係がございませんが、補助と融資の関係とか、その他の事項を局長の研究事項として御研究をお願いするようにしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/3
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004・石田宥全
○石田(宥)委員 予算はもちろん関係ありますけれども、土地改良制度調査会というものは直接これに関係ないというのはどういうことです。土地改良全体に関する土地改良法の改正でありますし、特定土地特別会計法というものとの関連における予算でしょう。それがこの法案と全然関係がないというのは一体どういうわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/4
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005・安田善一郎
○安田(善)政府委員 申し上げましたのは、直接関係がないと申し上げましたので、いろいろ研究をお願いし、そしゃくしまして、政府がよく考えましたことで、土地改良法等において、その運用上また将来法律改正を要することがございますれば、そのとき参考にしようということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/5
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006・石田宥全
○石田(宥)委員 あなたは大へん詭弁を弄しておられるけれども、この二つの法案との関係において必要を認めるからということを、この第一回の会合において述べておられるじゃないですか。
それからもう一つは、農林行政一般についての質疑の際に、土地改良事業というものが従来一貫性がなくて、国営、県営並びに団体営との関係において、あるいは地区的にも少しも水系等との関連がなしに行われておって、これをもっと計画的に、もっと系統的にやるについては、従来のような、委員会をたくさんやったからそっちの方から着工するとか、政治力のある人が二の地方におるからそこから初め着工するとかいうことのないようにするためには、特別な権威ある審議機関を設けてはどうかという私の質問に対して、農林大臣は、もっともな意見であるから十分一つ検討いたしますと、こう答弁をしておるのです。そういうふうな土地改良事業全般についての審議機関との関係はどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/6
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007・安田善一郎
○安田(善)政府委員 先般設けましたのは、土地改良制度調査会と一応名を打っておりますが、ごく専門的な学芸のお方々の研究会のようなものでございまして、農林省のうち農地局長が委嘱しまして、御調査をお願いするものであります。本法律案を作成、御提案申し上げました以後ごく最近に設けましたもので、来年度予算にはこの予算は計上されません。しかし三十二年度予算の予算要求に当りましては、先般石田委員の御質問に応じまして大臣も私もお答え申し上げましたように、大臣の方はちょっと私記憶が薄らぎましたが、大臣の補足として申し上げましたように、農業の面におきまする土地開発審議会を大規模に置きまして、その中でいかに計画立てていくか、土地利用区分をいかにするか、その採択基準をいかにするかということ等の審議会を置くことを要求いたしましたが、認められませんでしたから、その両者にわたりまして、三十二年度の予算はありませんので、そこで直接この法案に——前者の調査会も三十二年度は続けることもできませんので、調査審議の結果いいことがあれば、政府は検討した後、参考になることがあるとも思いますが、直接関係はないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/7
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008・石田宥全
○石田(宥)委員 土地改良制度調査会の主要な任務は従ってどういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/8
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009・安田善一郎
○安田(善)政府委員 先ほど申し上げましたように、土地改良に融資制度がだんだんと入ってくることから、しかし土地改良の性質にかんがみまして、補助と融資に限界を置かないと適切なものでないかと考えまして、それらを一つのテーマとしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/9
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010・石田宥全
○石田(宥)委員 先ほどの答弁だと、技術的な面を中心として技術者を網羅してというお話なんですが、融資の問題というものは、土地改良技術との関係は、全然ないとは言えないけれども、別じゃないですか。答弁が食い違っておりますが、どっちなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/10
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011・安田善一郎
○安田(善)政府委員 技術的、専門的と申しましても、技術の面からもまた専門の経済的な面からも、両者を申し上げたつもりであります。多少言葉が十分でなかったかと思います。なおそれ以外に、土地改良の経済効果を測定する仕方を、もう少し部外の人、農業外の人が農業の土地改良の経済効果を判定する意見がまま出ますが、農業の側からしっかりそういう科学的な経済効果を測定する方法はないだろうかということ、そういうことを研究しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/11
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012・石田宥全
○石田(宥)委員 次に構成員が技術的、専門的なということでありますが、この十二名の委員の中に国会議員をたった一人入れたのはどういうわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/12
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013・安田善一郎
○安田(善)政府委員 国会議員は入っていただいていないつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/13
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014・石田宥全
○石田(宥)委員 いや、一人入っておるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/14
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015・安田善一郎
○安田(善)政府委員 溝口三郎さんのことかと思いますが、今は国会議員ではございません。ほんとうの農林省の尊敬しておる土木技術者でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/15
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016・石田宥全
○石田(宥)委員 これは私の考え違いでした。そこで実はこの人は前に参議院に出ておったわけですが、参議院議員の選挙に当りまして、各地方の土地改良協会並びに土地改良区を行脚されまして、県の農地部並びに耕地課の職員がそれを案内をして歩いて、巧みな選挙運動を全国的にやられた方なんです。前の選挙に落選をされたわけでありますが、再びまたそういう機関を通じての選挙運動であるという印象が非常に強いわけです。この点はかなり全国的に批判をされて、私どもの県内では問題を起しておる。そういう事実を私どもはたくさん押えております。県の耕地課の職員がついて行って、土地改良区の会合をやって、そしてその人を紹介しておる。こういうことは選挙運動です。今度十二名の委員の中にそれを加えて、これを会長にされておる。これは委員の互選であるかもしれないけれども、あらかじめそういうことを予定して、その人の選挙運動としてこの人選をやられたという考えをだれでも持つわけです。特にそういうふうな札つきの人、それはりっぱな技術者であるかもしれないけれども、それに委嘱されるということは何らかの意図があったものではないか、こういうふうに考えられるわけなんです。そういう意図はなかったわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/16
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017・安田善一郎
○安田(善)政府委員 溝口氏につきましては、だれでもそう思うと言われるのは、少くとも私の知っておる限り、十分ではないかと思いますが、そういうふうにあの人を思っておるとは思いません。また溝口氏は前回の選挙には立候補なされませんでした。その前の選挙には立候補されたと思いますが、その後立候補等の意思、特に政治活動をされる意思はないことを、私的でございますけれども聞いておりまして、技術者として、終戦後の農業土木の専門家としましては、学識においても科学技術的な面においても第一人者だと思っております。会長は委員の互選になったものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/17
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018・石田宥全
○石田(宥)委員 こういうはたから見て、一見これはくさいと言われるような人をしいて委嘱されるということは、これは好ましいことではないので、一つ今後問題を起さないように、委員の委嘱の場合は御注意を願いたい。しかしどうしても根本的に、この二法案との関係において必要であるということを今局長はごまかして、これとは関係ないと言っておる。せっかく国会に審議中の二法案が出ておるのに、それに先走って委員会を作り、すでに二回か三回の会議をやっておるわけです。国会のこういう重大な法案の審議を前にして、委員を委嘱して委員会を作るということは、これは局長の越権行為ではないか。国会の審議を軽視するものです。ことに直接関係ありませんなどということはとんでもない話なんです。予算は通ったって、法案が通らなければ予算の執行はできないでしょう。予算案が通っても法案が成立しなければ、私は予算の執行はできないと思うのですが、法案が通らなくとも予算で執行されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/18
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019・安田善一郎
○安田(善)政府委員 ちょっと誤解があると思いますが、土地制度調査会の予算は、三十二年度でなくて、三十一年度の予算でございます。実はその調査会を設けて研究することがおくれて、年度末になってその調査会を開いたことをまことに恐縮に思っておるのでありますが、三十二年度以降に施行をいたしたいと思っておりまする土地改良に関係する予算は、土地改良法の改正法律案、土地改良特別会計に関しまする法律案、それとは直接関係がないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/19
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020・石田宥全
○石田(宥)委員 その調査会に関する予算を言っているのじゃないのです。調査会の予算はそうでしょうけれども、これはあらかじめ土地改良法と特別会計法というものを予定して前年度中に調査会を設置するという予算はつけておかれたかもしれないけれども、私は土地改良関係一般の予算、特別会計一般の予算のことを言っておる。一般の予算は、二つの法案が通らなければ、使えないでしょう、それを言っておるのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/20
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021・安田善一郎
○安田(善)政府委員 三十二年度の予算は、土地改良法改正の法案と特定土地改良区特別会計法に基きます会計を設置して、施行をお願いいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/21
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022・石田宥全
○石田(宥)委員 こういうふうな委員会の設置というものを、さっき言ったように、小さな小手先細工のような技術的な関係、金融の専門家というような——そういうことももちろん必要でありましょうけれども、もっと土地改良一業全体についての、さっき申し上げたような国県営と団体営との関連、あるいは水系別に同じ水系地区の内部においてわずかの部分が残ってしまってどうにもならないというような地域もあるわけでありますし、あるいはまた、国営は完成したけれども県営の方が遅々として進まない、県営はできたけれども団体営の方がうまくいかない、そういうような根本的な問題についてむしろ主力を置くべきであって、今設置されたようなこういう問題というものは、わざわざ農地局長の諮問機関として設置されなくとも、農地局の中の技術陣で用事の足りることじゃないですか。こういう点で、もっと本質的な根本的な問題について、局長は大所町所から大局的に問題の解決について今後一つ考えていただきたい。これは前に大臣に対する質疑の際にも申し上げておったことなんでありまして、特にこの点をつけ加えて申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/22
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023・小枝一雄
○小枝委員長 他に質疑はありませんか。——なければ、これにて質疑は終了いたしました。
この際芳賀貢君より本案に対する修正案が提出されております。その内容は各位のお手元に配付いたしてある通りであります。
まず修正案の趣旨について、提出者の説明を求めます。芳賀貢君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/23
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024・芳賀貢
○芳賀委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする土地改良法の一部を改正する法律案について、修正案を提出いたし、その趣旨を説明いたします。
修正案の案文については、お手元に配付してありますので、この案文の朗読は省略いたします。
以下修正案のおもなる点に対しての説明を申し上げます。
今回の土地改良法の改正の主たる点は、第一の点は、土地改良区の役員の任期を、現行二カ年を四カ年に延長するという点と、第二点は、土地改良区の総代の定数を現行の規定よりも減員させるという点。第三の点は、土地改良事業の開始手続の簡素化に関する点であります。第四の点は、従来になかった点でありますが、土地改良事業団体連合会を全国都道府県段階に設置するという点であります。第五の点は、これは一番問題になる点でありますが、現在まで国営の干拓、埋め立て事業を行なって造成された農地の処分につきましては、農地法の規定によりまして適正な処分が行われておったのでありますが、これを農地法からはずして土地改良法の改正によって干拓埋め立て地等の農地の処分が行われるようにするという以上の五点であります。
これに対しまして私どもは約二週間にわたって審議を続けたのでありますが、特に役員の任期の点、総代の定数の点と農地の処分に関する点に対しましては、改正案に対して同調することができませんので、社会党の立場を明らかにするために修正案を提出したのであります。
第一の役員の任期の点は、現行においては御承知の通り二カ年ということに定めまして、それに基いて運用しておるわけでありますが、今回の改正の内容を見ると、ただいたずらに任期を四カ年に延長するということだけで、いかにも土地改良区の運営が適正にいくというような説明を加えておるわけでありますが、土地改良区の運営の問題というものは、単に役員任期の延長だけで万全を期するということは絶対できないのであります。特に毎年定期の総会がありまして、その総会の機会に定款の規定に従って役員の改選ができるのでありますし、何ら重任を妨げるというような規定はありませんので、真に土地改良区の組合員の信頼を受けておる役員である場合においては、重任してさらにその役員としての任期を継続していくということは、可能なのであります。現行よりも二倍もの任期に延ばすということに対しては、むしろこれが今日各地において問題を起しておるごとく、役員の責任の怠慢といいますか、あるいは一部のボス勢力が土地改良区の運営を支配するというような、そういう好ましくない傾向というものは、役員の任期を延ばすというところから生ずるということも言い得るのでありますし、もう一つは、たとえば農業団体等に例をとってみましても、農業協同組合の場合には、現行は三カ年以内において協同組合の定款の定めに従って改選をすることになっておりますし、あるいは農業団体以外の商法に規定された株式会社等におきましても、現在におきましては取締り等の任期というものは二カ年ということに規定されておるという、そういう他の団体の現在の規定から見ても、いたずらに任期を四カ年に延ばすということは好ましくないことでありますので、この点は現行通り二カ年にするというふうに修正いたすのであります。
第二の点の、総代の定数の問題でありますが、この点につきましては土地改良法の規定によりますと、組合員三百人以内の土地改良区におきましては、これは総会制を採用しておるのであります。すなわち三百人未満の土地改良区の場合においては、総代制を設けるということはできないのであります。しかるに全国の土地改良区の現況は、全国に約一万に及ぶ土地改良区がありますが、そのうち三百人未満の組織員を持っておる土地改良区の数は、大よそその五〇%に達しておるわけであります。ですから全体の約半数に近い土地改良区は総会制を用いておるわけであって、三百人以上をこえた場合、現行におきましては三百人から一千人までは四十名以上、一千人から五千人までは六十名以上、五千人から一万人までは八十名以上、一万人をこえる場合には百名以上ということになっておりますのを、今回の改正案によりますと、三百人から一千人までは、現行よりも十名これを減少いたしまして、三十名以上とし、千人から五千人までの間は、従来は六十名でありましたのを四十名以上ということに改め、五千人から一万人までの分に対しましては、現行八十名を六十名以上と改め、一万人以上の分に対しましては現行百名以上を八十名に改めるというふうに、極端にそれぞれの段階における現行の総代数の定数の減少を試みんとしておるのでありますが、これらは土地改良区あるいは農業団体の民主化の上からいいましても、特に組織員全体の意向を総会の機会に正しく反映するという見地から見ましても、総代の定数を引き下げるということに対しましては、同調することができないのであります。しかも土地改良区の成立の条件というものは、三分の二の同意がある場合においては、他の三分の一の人たちがこれに反対いたしましても、強制加入の手続をもってその地域における土地改良区の成立を行うことができるというような規定から見ました場合において、三分の一の積極的に、自発的に土地改良区の会員たることに同意しないこれらの人たちの意思というものは、やはりあらゆる機会におきまして適正にこれを反映させる必要があるのでありますが、この改正によって総代の数が現行よりも減少されるような場合においては、組合員全体の意思を総会の機会に正しく反映するということは、現在よりも後退することになりますので、この点に対しましてはわが党は現行通りの総代数を堅持すべきであるという点で、修正案を出しておるわけであります。
第三点の土地改良事業の手続の簡素化の点に対しましては、この問題は今後の運営が適正慎重に行われる場合においては、簡素化に対しましてはもとより反対する根拠はありませんので、これは修正の対象としておらないのであります。
第四点の土地改良事業連合会の設置の点に対しましては、これはいろいろ批判する点もありますけれども、現在の実情のもとにおきましては、都道府県かあるいは全国の段階に土地改良協会というものがありまして、土地改良事業の推進であるとか予算の獲得であるとか、いろいろな方面に運動あるいは連絡の機能を発揮しておるわけでありますが、この際それを系列化された組織に改めて、政府がこれに対して責任の所在に立って指導監督するというような方向に対しましては、これを認むべきであるというような見地に立って修正の対象にはしておらないのであります。
第五の点は、これは当委員会におきましても論議の中心になった点でありますが、政府が今回改正案を提出されたそのおもなる意図はこの点にあるのでありまして、政府の考えをこの際その言葉をかりて申し上げますと、現在まで国営で干拓、埋め立てを行なって造成された農地に対しましては、農地法の規定に基いてこれを売り渡し処分をしておったのでああります。今回これを農地法の規定からはずしまして、土地改良法の改正によってこの国営によって造成された農地の処分を行うというところにねらいがあるわけでありますが、その目的とするところは、今後のわが国の農地制度を維持して、自作農の創設あるいは農家の経営の安定を期待するための改正ということではなくて、これらの造成された干拓、埋立地を処分する場合においては農地法の規定するところの売り渡し価格の基準の算定の基礎もありますので、この基礎に準じて処分をする場合においては干拓、埋立地といえども、大よそ一万二千円をこえる価格でこれを処分することはできませんので、これを何とか現在の農地法の規定に基く価格よりも、あるいは三倍あるいは五倍の価格で処分するための便宜的な手段として、農地法の規定からこれらの国営造成地の処分の件を切り離して、遮断して、そうしてこの土地処分を行うというところに改正のねらいがあるわけであって、これらのことを容認する場合においては、今後これが因となりまして、今後のわが国の農地価格の問題あるいは小作料の問題等に当然はね返って大きな悪影響を及ぼすということは論ずるまでもないことであります。われわれはこのような重大なわが国の農地制度をむしろこの際くずしていこうというような企図を持ったところの土地改良法の一部改正に対しては、断じて同調することはできないのであります。しかも今日まで農地法の規定に基きまして、あるいは現行の土地改良法の規定に基きまして、これらの国営の土地改良事業あるいは造成された農地の処分が、何ら遅滞なく適正に処理されてきたものを、わざわざ法の改悪によって混乱を巻き起すようなことはあくまでも避けなければならぬというふうに考えております。しかも今回の改正によりまして、たとえば従来まで農地法の五十六条の規定によりまして、国が農地の造成あるいは農家の経済安定のために必要とする場合においては、公有水面に関する権利を国が買収し、その権利を消滅して、国の責任において農地の造成を行なって、国有の農地としてそれを農地法の規定に基いて売り渡し処分を行なっておったというような点に対しましても、これを農地法から切り離しまして、全く別な観点に立って、農地ではなくて単に土地の処分をする、しかもその処分の方法というものは原始取得の形によって入植者に所有権の設定を行うということになっておるわけでありますが、このような原始取得の形におきまして、既存の何らの継承さるべき権利とか義務を持っておらない農地としての規定でなくて、単なる土地処分というような規定のもとにおいて造成農地が処理されるような場合においては、その後の土地の帰属というものは全く不明確な状態に放置されるのであります。せっかく国が多額の国費を投じまして、幾多の困難を排除して造成した、しかも農地として造成する目的を持ったその土地というものが、このような取得の形式によって今後処理される場合においては、その目的通りの運営はできなくなるということも、大きな危惧される点であります。われわれはこのような間違った土地制度の考えの上に立った、あるいは基本法であるところの農地法をくずすような思想の上に立った、そういう法の改正というものに対しましては、将来に禍根を残す点が非常に多いのでありますからして、この点は、改正案の中のわれわれが危険とみなす個条に対しましては、これを修正いたしまして、そうして国営によって造成された農地に対しましては、従来通り農地法の規定に基いて、これを処理すべきである、そのことが最も適正妥当な方法であるということを考えまして、この点に対する修正を行うわけであります。このように社会党の修正点というものはあくまでも現在の農地法を守り、しかも土地改良法自体におきましても、土地改良法の精神であり、その使命とする限界の中において、充実した改正が行わるべきであって、その限界というものを逸脱した改正に対しましては、あくまでも賛成することができないのであります。
以上簡単でありますが、修正点のおもなる個所につきまして、社会党の立場を明らかにして趣旨説明にかえた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/24
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025・小枝一雄
○小枝委員長 修正案について質疑はありませんか。——なければ本修正案は特定土地改良工事特別会計とも関係いたしますので、この際国会法の規定により、内閣に対し意見を述べる機会を与えることにいたします。政府の意見を申し述べられたいと思います。農林政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/25
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026・八木一郎
○八木政府委員 ただいま御提出に相なりましたこの修正案に対しまして、政府といたしましては、遺憾ながら賛意を表しかねる次第でございます。どうぞ政府提出原案通り御可決あらんことを希望する次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/26
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027・小枝一雄
○小枝委員長 次に修正案、原案を一括して討論に付します。討論の通告がありますので、これを許します。川俣清音君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/27
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028・川俣清音
○川俣委員 私はこの際議題となっておりまする法案に対して討論を行いたいと思うのであります。
まず第一に、この法案は将来の日本の農業政策の動向に対して重大な影響を持つものであるだけに、もっと十分な審議を尽す必要があったのではないかと思うのでございます。その第一点は、今日農村に持っておりまする農村内部の社会不安の芽をどのようにして一体解決していくかということが、今後の農業政策の上に大きな問題であるわけでございます。一体政府は完全雇用ということを打ち出しておりますが、これらは比較的都市における失業者の解消を目途といたしておるようでありまするが、農村におります潜在失業者に対する、あるいは不完全就業者に対する対策がいまだ立てられておらないわけであります。農村における潜在失業者、あるいは不完全就業者に対して何らの手を打っておらないのであります。そのことは、神武景気以来だんだん都市の景気が上昇いたしまして、就業率が高まって参れば参るほど、宅地の値段あるいは工場敷地の値段が暴騰して参ってきております。これにつれて農村の土地も、農業経営の対象になる土地もまた価格が上昇してきております。これらに対して、就労の場所としての農地を造成しょうという考え方は私は間違った考え方ではなくて、やはり一つの方向をとるべきものであるということは、いなめないことだと思う、これは何としても認めなければならぬことであります。農村における土地の争奪、生産手段としての農地の争奪がいたずらに土地の価格を上せまして、そこからあがって参ります農業生産物は決して高くはなっていないのであります。一方米麦を主といたしまして農産物価格が決して上らないのにかかわらず、土地価格だけが上ってきておるわけであります。生産が増強されて土地価格が上るのでありますならば別でございますが、そうではなしに宅地に押され、都市に押されて、農村の持っている土地の、いわゆる呼び値の土地価格が上ってきているだけでありまして、こうした事態に対して新しく農地を造成してその緩和をはかろうとすることは、私はこれは認めなければならない方向だと思うのであります。ところがそこに限度がある。政府は、農地法を提案いたしました廣川農林大臣のときの提案説明をもって見ますと、農地改革の成果の維持を基本線としていることは言うまでもないが、その後の情勢の変化を反映して、農地法では望ましき中堅自作農を育成してその農地改革の原則を制度的に維持していくという考え方をとった。この中堅自作農は真に農家の中核体となる農家である。生産力の面からも、農家経済の安定の面からも、政府の諸施策のささえをなす望ましい農家であるから、農地法においてその中堅自作農、堅実な自作農の創設維持を目標とすることに、繰り返し述べられておるところでございます。従いまして新しく農地を造成するという目標は、少くとも中堅自作農を創設するという目途でなければならない。それは適正規模であると同時に、生活が安定するような自作農でなければならないという見解に立っていなければならないわけであります。これを政府みずからくずすような改悪をなすことは、今日の農村が日増しに不安定の中に陥ろうとするときに、これにあたたかい手を差し伸べるのではなくて、いよいよもって農家経営を不安ならしめるような方向は、農林省としては断じて私はとるべきではないと信ずるのであります。この意味からいたしまして、農地を造成するために用いる手段といたしましては、中堅自作農を作ることが目標でなければならないので、農家の経営というものに対して、どんな経営になろうとも、単に土地を作ればいいという意味では決してないはずであります。その意味からいきまして、今日の農村が日増しに都市の宅地のために神奈川県のごときは年々膨大な農地が壊廃していっておるのであります。この方を防ぐことなしに、農地価格が高くなったんであるから、やみ価格が高いからということで、どんな高い農地価格でも作ればいいというようなことは、農林省としては邪道でなければならぬ。邪道である。今後単に干拓ばかりではなくして、未墾地に対する土地改良事業にいたしましても、国営事業はおそらくこの法律によってやられるということになりまするならば、従来とって参りました未墾地を売収して土地改良を加え、健全な自作農を作るという目標からはずれて、全部多額の農民負担による土地解放ということになりますなら、これは土地解放ではなく、自作農創設ではなくして、一つの商売として、一つの企業としての農家、成り立たない企業としての農家を作るという邪道に入るであろうことをおそれるのであります。従いまして、ほんとうに農地を造成するには、今残されておる当面のものには干拓があることは私どもも認めます。従いまして、この干拓につきましては、特別干拓法等を作りまして、農地法を改悪することなしに、あるいは土地改良事業法をこのために無理に変更することなしに、農地法あるいは土地改良法の除外適用を受けて、農地等の造成と相待って工業用敷地、商業用敷地を作ることによってその代償に農地価格を下げていくという方向を私はとるべきであろうと思うのであります。農地局から出しております二十七年、八年の農地年報を見ましても、農地の価格についても重大な示唆を与えておる。それは都市の近所の田よりも畑が高いということ、さら地にするに便利な畑の方が高いということ、次には山村離島等の土地の不足なところ、生産条件が悪くとも土地の不足なところに高い農地価格が出ておるということ、都会の近郷の農地がだんだん宅地に編入されていくというこの事態を阻止して参ることが一つであると同時に、新たにこれらの工場敷地を適正配分することによって農地価格の高騰を押えるべきものであると思うのです。土地価格の高騰を押えることなしに自作農の維持は困難でございます。小作料の据え置きも困難になって参りましょう。従いまして、日本の中里自作農をつぶすような、経済的に耐えられないような諸条件を作ることは断じて排撃すべきものであると私は思うのです。その意味におきまして、農地価格は、政府はできるだけ安く農民に提供する、従来の一万二千円以下でも提供するという考え方を持つと同時に、日本の生産の増大に伴うところの工場敷地を相応の価格で提供しまして、これらのバランスをとり、農業経営を安定ならしめると同時に、工業生産に寄与するという方向を単独法で作り上ぐべきだろうと思うのであります。これらのことが考えられないわけじゃなくして、農林省の中にも従来案があったはずであります。それをにわかに急いでこうした改正を出されますことは、将来大きな批判を受ける点であろうと思う。局長がその地位を去り、課長がその地位を去り、政務次官がその地位を去った三年、四年後に大きな批判を受けなければならないような法案をあえて出されますることは、この際私は見合せていただきたいと思うのであります。その意味におきまして、社会党は芳賀委員が申し述べましたような修正案を出した次第でありまするから、与党の諸君も政府もこの際もう一度思いを新たにして修正案に同意せられ、一年後に特別干拓法等を作られまして、農民に渡すには安価な土地、全体としては高価になりましても、農民全体に対しては安価に提供する。たとえば八郎潟のようなものは一万三千町歩の農地の造成でありまするが、この中で少くとも一割の千三百町歩を工業用地あるいは商業用地に提供するということになりまするならば、坪三千円、四千円ということが考えられるのであります。農地価格が一反歩十万円も二十万円もしているという考え方で参りまするならば、宅地の坪三千円、四千円ということは決して不当な計算でないわけであります。宅地三千円、四千円というところが農地価格が十万円、二十万円の評価で、これをさら地にするにはさらに十万円、二十万円かけて四、五十万円になるという観点から見ましても、坪三千円から四千円としまするならば、一割の千三百町歩でありますから、八郎潟の干拓百三十億の金は、これらの宅地、工業用敷地、商業用敷地として売却することによって優にこれらの価格が生まれることは明らかであります。それをほとんど農地価格はただにひとしい——ただといいましても、これにさらに農地としての改良工事を加えなければならないだろうし、年々多額の用水排水の費用を負担しなければならないのでありますから、従って一万二千円以下の土地を提供することによってようやく一万二千円程度の価格で買ったと同じような負担を農民がせざるを得ないのであります。その意味におきましても、一万円以下で入植させるというようなことによって、中堅自作農としての新しい希望をここに打ち立てることによって初めて農林省の農地造成というものが輝かしいものとなるであろうと考える。どうか政府もこの際ほんとうに真剣にもう一ぺん考え直してほしいし、与党もいたずらに追随することなく、責任ある政治家、将来ある政治家の態度としてどうかもう一度考え直してほしいことを討論に加えまして、私はこの政府提案には同意できないのでありまして、芳賀委員の提出いたしました修正案に賛成するものであります。修正部分を除きました他の部分については当然賛成するものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/28
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029・小枝一雄
○小枝委員長 これにて討論は終りました。
次に、採決いたします。まず修正案について採決いたします。修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/29
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030・小枝一雄
○小枝委員長 起立少数。よって修正案は否決されました。
次に、政府原案について採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/30
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031・小枝一雄
○小枝委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。
なお、委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/31
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032・小枝一雄
○小枝委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/32
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033・小枝一雄
○小枝委員長 この際お諮りいたします。先般石田委員より御質疑のありました北陸地方における豪雪による農業施設及び農作物等の被害状況の調査及びその対策樹立のためこの際委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/33
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034・小枝一雄
○小枝委員長 御異議なしと認め、派遣地は新潟県とし、派遣委員及び員数、期間は委員長に御一任願い、議長の承徳を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/34
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035・小枝一雄
○小枝委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/35
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036・小枝一雄
○小枝委員長 この際お諮りいたします。最近農業団体をめぐるいろいろな問題が世の批判を受けておりますが、先般報道せられました全購連の事件はきわめて重大な問題でありますので、この際全購連の会長並びに関係者を参考人として本委員会に出頭を求めたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/36
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037・小枝一雄
○小枝委員長 御異議なしと認めます。つきましては参考人の選定、意見聴取の日時は委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/37
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038・小枝一雄
○小枝委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X02519570409/38
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