1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年四月二十日(土曜日)
午前十時二十八分開議
出席委員
委員長代理 理事 田口長治郎君
理事 助川 良平君 理事 芳賀 貢君
安藤 覺君 石坂 繁君
木村 文男君 椎名 隆君
綱島 正興君 原 捨思君
本名 武君 松野 頼三君
阿部 五郎君 赤路 友藏君
足鹿 覺君 井谷 正吉君
石山 權作君 久保田 豊君
楯 兼次郎君 中村 英男君
細田 綱吉君 山田 長司君
出席国務大臣
農 林 大 臣 井出一太郎君
出席政府委員
農林事務官
(農林経済局
長) 渡部 伍良君
林野庁長官 石谷 憲男君
委員外の出席者
農林事務官
(農林経済局農
業保険課長) 丹羽雅次郎君
農林事務官
(農林経済局統
計調査部長) 藤巻 吉生君
農 林 技 官
(農林経済局統
計調査部作物統
計課長) 石川 里君
農林事務官
(林野庁林政部
職員課長) 来正 秀雄君
専 門 員 岩隈 博君
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四月二十日
委員石田宥全君辞任につき、その補欠として楯
兼次郎君か議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一三一号)
農業災害補償法臨時特例法を廃止する法律案(
内閣提出第一三二号)
農業災害補償法第百七条第四項の共済掛金標準
率の改訂の臨時特例に関する法律案(内閣提出
第一三三号)
国有林野事業の経営及び仲裁裁定に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/0
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001・田口長治郎
○田口委員長代理 これより会議を開きます。
農業災害補償法の一部を改正する法律案、農業災害補償法臨時特例法を廃止する法律案、農業災害補償法第百七条第四項の共済掛金標準率の改訂の臨時特例に関する法律案、以上三案を括議題といたし、審査を進めます。質疑を続行いたします。足鹿委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/1
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002・足鹿覺
○足鹿委員 昨日に引き続きまして、農林大臣並びに政府当局にお尋ねを申し上げたいのであります。今度の改正が根本改正でないということについては、私ども不満を持ってはおりますが、今の情勢としてはまたやむを得ない実情もある。しかし従来法の運用に当ってみて、法改正を伴わなくても、また根本改正を行わなくても、適用の面においていろいろと是正していくことのできる点が多々あると思われる。その一つの事例として、昨日も損害評価と農林統計調査機構との関係についてお尋ねを申し上げましたが、それは農林大臣が作る損害評価の基準等について十分考慮するということでありますが、そういう点についてはあとのこまかい質問で承わりたいと思っておりますけれども、法令との関係はどうか知りませんが、一番私が矛盾を感じておりますのは適用地域の問題で、開拓地等が従来の場合は除外を受けて、被害地の調査に行ったりしてみまして、一番悲惨な開拓農民に対して、入植後十年も十数年もたっておるにもかかわらず、常習被害の関係、いろいろな実情からこの農業災害補償法の適用を受けてないことに対する今度の運用上における大臣の構想なり政府の考えはどういうことになっておりますか、これをお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/2
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003・井出一太郎
○井出国務大臣 便宜渡部局長から…。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/3
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004・足鹿覺
○足鹿委員 大臣の答弁として聞くわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/4
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005・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 開拓地の問題でありますが、御説明のように開拓地は作柄が不安定でありますので、損害評価の基準となります基準数量の設定等が困難である。そういう点から法律百一四条及び施行規則の二十七条に基きまして、都道府県知事の認可を得た場合には引き受けを行うことができる、こういうことが現行法であるわけであります。そのままそれを踏襲しておるのでありますが、御承知のように開拓地の問題は、二十八年の災害等に際しましても、これの処置をどうするかということは非常に検討されてきております。私の方としましては、今の共済の運営ができる範囲内においては積極的にこれを取り入れた方がいいという考え方になってきておるのであります。しかし開拓地あるいは干拓地そのものの本質的な性格から、共済制度だけにたよるということが無理であるというふうに考えられるのであります。それはまた開拓政策として取り上げなければならない、こういうふうに考えておるのであります。しかしお話のように積極的に県の方を指導して、できるだけ入れていくというふうな方向に切りかえた方がいいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/5
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006・足鹿覺
○足鹿委員 できるだけ開拓地もその範囲に入れるように指導するということでありますが、それを従来はやっていないのです。今度からはそれをやるというのは、ただ指導だけの点についてですか。いろいろやりたいことはたくさんあるが、財政上の制約ということが一面に伴うのでやれないという場合が多いのです。開拓地の場合は別に財政上の理由ということは問題にならぬと思う。災害の常習地帯は入植地に限らない。既存の地帯においても開拓地より以上に経営が不安定であり、作況が不安定なところでも、ただ既存の地帯であるという理由のもとにこの適用を受けておるし、開拓地なるがゆえに災害が頻発して経営が不安定であり、常習被害地だというのでこれを除くということはいかにも私は不合理だと思う。そういうことは指導によらずして当然法の適用を受けるように措置すべきものだと私は思う。今までそういうことをしておったこと自体本法施行の趣旨に反するのではないかと思う。これは今の局長の答弁では私は不満ですが、それは本質として、開拓地も既存の地域も何ら区別すべき性質のものでない、いわんや入植後もうすでに十幾年を経て、開拓地ということ自体がおかしい。ただ経営が不安定だという点につけば、どの地帯にだってあるのです。その点をもう少し明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/6
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007・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、知事の認可を得て引き受けを行うことができるということになっておるのです。建前としては、法律は開拓地も一緒に扱え、こういうことになっておるわけです。その引き受けができないという理由は、基準数量の確定が困難であるということからきておるわけであります。そこで私の方としては、指導方針は、今までのところは四年を経過したのは引き受けを行わない、認可をしてはいかぬという通牒は出ておるわけです。しかし御指摘のように、開拓地によって基準数量が確立してないところでは、その通牒を無視して共済組合の方でやってないところかあるのが実情ではないかと思うのです。従ってそういう点は今後さらに積極的に引き受けを行うように、法律の運用と通牒でそのまま行われるように指導したい、こういうことを申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/7
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008・足鹿覺
○足鹿委員 この法律の運用と通牒によって災害補償法の全面適用を行うように必要な措置を講ずる、こういうことですね。——了承いたしました。ぜひそういうふうにお願いしたいと思います。
それからこれは特に重要な点でありますので、大臣に御答弁をお願いしたいのでありますが、今度の法改正の中心問題は、共済事業の実施主体の特例であります。これは長い間の団体主義のからを農林省がここで一応ある程度自己批判をされて、市町村との新しい関係を結んでいかれようとする画期的な態度であろうと思うのです。しかし、全体を通じてこの特例を見ますると、建前はそういう建前であるけれども、実際においては主務大臣の定める基準であるとか、あるいはその他政令で定める特別な事由であるとかいうような点において非常な制約を加えておるように思うのです。もしこのようなあいまいな態度であります場合には、市町村への移譲をその農民が要求として考えておっても、なかなか移譲が実現しない場合が出てくると思う。特にこの総合の特別議決を規定しておる、総代会の議決は認めないというような点、またその市町村に移譲しようという場合には、あらかじめその市町村と協議をするということになっておる。協議がととのわない場合には一体どうなるか。いろいろな点を考えてみますと、必要以上にこの特例で実施主体の特例を認めておりながら、実際においては移譲がむずかしいような規定になっておるように見受けられる。そうではなくして、やはり自然の姿においてその地区における農民の要求がそういう要求であり、またその団体の職に奉じて
おる人々の身分の安定という立場から、事業の健全運営という立場から、こぞってこれを要求しておる。一部これを阻止しようとしておるのは、団体主義に割拠して自分の政治的野望かあるいは特殊な利害関係を持っておる者だけで、それ以外にはもうこういうことにこだわっておる者はないのです。ですからこの総会において議決をし、一定期間の間に知事に認可を申請した場合には、それが適正な措置である場合は、その期間を経過するならば当然自然的に認可をしたことになるとか、あるいは申請があった後は、何カ月後においてはその審査の結果知事はその市町村への移譲を認可しなければならないとかというふうな、もう少し積極的な条項にすべきだったと思う。にもかかわらず、こういう当該市町村が共済事業を行うことを申し出ることができるものとするとか、あるいは八十五条の三の「その申出に基き共済事業を行うことを必要且つ適当と認めるときは、都道府県知事の認可を受け、当該申出に係る農業共済組合の区域に相当する区域において、本章の規定により共済事業を行うことができる。」というふうに、きわめてその条項が微温的なのです。これは自治庁との折衝の結果こういうものになったのであるのか、私が今言っておるのは杞憂であって、運営の面においては、一定の手続をした場合には何ら市町村移譲を阻止したりあるいは阻害するようなことはない、こういうふうなきわめて自然な形でこの運営が行われるものであるのか、その真意をつかむことができない。その真意いかん。この共済事業実施主体の特例に関する真意がどこにあるのかということは大事な点でありますので、これを伺いたい。いま一つは、もし市町村に移譲されたときにはその団体の職員は身分としてどうなるのか。市町村の吏員になるのか、あるいは団体というものは別に生きておる、しかし事業の運営は市町村が特別会計を設けてやっておる、こういうことになって、何か職員は特殊な身分に置かれるのか。その辺自治庁とのいろいろの折衝の経過また真意について一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/8
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009・井出一太郎
○井出国務大臣 今回共済の事業主体を市町村に移しまする道を開いたということは、この改正案の大きな眼目の一つでございます。その場合、移譲がスムーズにいかないおそれがありはしないかという御指摘でございますが、ともかくこの新しい試みにつきましては、あまりこれがルーズにわたるということであっては相なりませんので、若干制約を加えておるのでありますけれども、そういうような事情のもとにある、たとえば山村などで、加入者も非常に少い、それではとうてい自立していけないというふうな条件にありまする地帯におきましては、この程度の制約がございましても、市町村と組合との間のあらかじめの話し合いというものをいたすことに相なっておるのでありまして、その間の移譲はそれほど御懸念のような問題はなくていくのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけであります。
なお団体の職員の市町村に移譲された場合の身分はどうなるかという点でございますが、これは市町村の吏員相なるわけでございます。
この問題について自治庁との折衝によって制約を受けたかというふうなお話でございますが、そうではなくて、これは既存の団・体のあり方を中心に考えました場合、やはりこの組織と申しますか、機構と申しますか、これをいたずらにくずすというようなことであっては相ならぬという配慮から出ている次第でございます。なお自治庁との折衝等につきましては、局長の方から申し上げることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/9
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010・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 ただいまの大臣のお話に補足して申し上げます。
お手元に政令事項でお配りいたしております法第八十五条の二関係の点を見ていただきますと、「事業実施主体の変更の申出ができる場合の主務大臣が定める基準」これは、「市町村が共済事業を行うことについて農業共済組合が申出をすることができる場合は、当該組合の総共済金額が当該都道府県内の一組合当り共済金額の二分の一に達しない場合とすること。」それからさらにその他政令で定める場合が(二)に書いてありますが、それによりますと、右のほか、「事業の運営又は業務の執行が著しく円滑を欠いている場合」あるいは「事業実施主体の変更により、事業の運営又は業務の執行が効率的に行われ、当該組合の組合員の負担が軽減されることが明らかである場合」こういうふうになっているのであります。この問題は、昨日足鹿委員からお話がありましたように、共済制度の今後の方向をどうするかということとは、非常に関係があるのではないかと思います。会計検査院とか大蔵省あるいは自治庁の方も、むしろ公営にしてしまった方がいいのではないかという意見が相当強くあります。しからばすぐ公営に移すことができるかということは、議論を突き詰めていきますと、そこまで踏み切った議論には今回の法律改正の経過で交渉した場合にはいっていないわけであります。しかしある考え方として出ているわけであります。農林省としましては、ただいま大臣から申し上げましたように、既存の組織があるのであるから、これを一挙に全然違った組織に変える必要が今ここですぐあるかどうかという点を勘案しまして、外部からの意見等もにらみ合せて、今のような条件のもとに市町村が共済事業を行うことができるという組織にしたわけであります。いずれこの点は今後法律改正をいたしまして、事業を実施いたしまして後に、あらためてさらに再検討を加える必要が出てくる、こういうふうに私どもでは考えております。
それからさらに移行の手続等につきましては、ともかくにも現在の組合をやめまして、市町村でやっていくのでありますから、移行の際の手続は総代会等でなくて、特別議決で慎重を期するということになっております。今までの主体を変えるわけでありますから、特別議決にしているわけであります。
それからさらにその後の手続につきましては、たとえば八十五条の三の第五項を見ていただきますと、それによりまして、認可を受けようとする場合、認可が法律または定款に違反しないというような場合には必ず認可しなければいかぬ、あるいはまた一定の期間内に認可をしなければ、認可があったものとみなすという二十五条ないし二十六条の規定の準用がありますので、手続の簡易化等については十分の措置を考慮しております。それから市町村が共済活動を行う場合には、職員は従来の組合の職員が、特殊の理由すなわち能力がないとかあるいは何か問題を起したとかいうようなことさえなければ、専門家になっているはずでありますから、当然市町村に引き継がれることになる。市町村の事業として共済事業を行うから市町村の吏員になる、こういうふうに考えます。特に市町村が救済事業を行うことにつきまして自治庁との間で問題になった点は、これをやることによって市町村財政に非常に悪影響を及ぼしはしないか、そういう問題が議論になっただけでありまして、その点は市町村がやる場合でも、組合がやる場合と同じような国の補助金が行くし、それから共済掛金、共済金の支払い等の関係をつぶさに説明いたしまして、市町村に財政的な御迷惑をかけることはない、しかしそれでもまだ得心が得られなかったので、九十九条の二の第二項で市町村が共済事業を行う場合には、特別会計を設けて行わなければならない、それから第三項で必要がある場合には「予算の定めるところにより、一般会計又は他の特別会計からの繰入金による収入をもって当該共済事業の経費に充てることができる。」第四項で、右の場合には翌年度以降においてそれを戻していかなければならない、そういうふうな規定を置きまして、共済事業をやる場合に市町村には財政上従来より以上の御迷惑をかけることはない、こういう規定も置いているわけであります。
自治庁との関係につきましては、最初に申し上げましたように、むしろ全面的に市町村へ移行した方がいいじゃないかという意見が初めに相当強くありましたけれども、その点は従来の経過からすぐはいけないんだという説明で得心していただきまして、あとの点は今申し上げましたような関係で十分の了解を得たわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/10
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011・足鹿覺
○足鹿委員 市町村移譲についてですが、今の考え方でいきますと、大体市町村へ持っていくことが適当であるけれども、現状からしてそうはいかぬ。だから一応一定基準以下のものあるいは運営、事務執行が不正なものについて市町村へ移譲していくんだ、しかし市町村としては別に特別な負担等はかけない、迷惑はかけないようにするんだ、こういうことになりますと、結局限られたところが市町村へ行くということになろうかと思うのです。しかし大臣に伺っておるのは、基本方針としてこの法の目的としておるところからいって、公共的な性格を強め法の目的としておるにふさわしい適当な運営を行うためには今のような組合運営ではだめだ、これは会計検査院なり行政管理庁がしばしばその監査の結果なり、検査の結果に基いて指摘しておるところでありますから、それに基いて今後は従来犯したようなことのないように、適正な運営を行うために公共的色彩を強くし、職員もその身分を安定し、安んじて仕事に従事することができるように主張し、また市町村の方に監査機構なり議決機関が現存しておって不正不当なる運用を許さない、こういう立場に立って市町村移譲の方向を出した以上は、私は一定の基準なり政令で定める条項等を付さないで、組合が欲するならば、すなわち組合の構成員である組合員、農民が欲するならば、一定の手続を踏んでいく場合には、当然市町村に移譲せしめていくという方向を打ち出して差しつかえないものであろうと思うのです。何もここに主務大臣が定める基準に達しない場合であるとか、その他の政令で定める特別な事由がある場合だとかいうような制約を加える必要は毛頭ない。そこで私は聞いたのです。自治庁が難色を示したのかといえば、自治庁は全面的に受け入れることについては賛成だという。そうすると農林省はまだ団体主義に未練を持って、何か少しひもをつけなければ農林省自体の仕事の幅が少くなっていくようなセクト主義を持っておるのじゃないか。そういう考え方ではこの法律の目的は達成できない。かりに市町村移譲を希望する組合と市町村当局の間に協議が整わないという場合を一つ予想してみますると、そのままある一定の年月を経る、そして市町村への移譲もつかず、組合としても熱意はないし、結局看板だけを掲げて立ちぐされ、こういう事態が必ず私は出てくると思うのです。こういう道を開いたからにはやはりある程度、その道に流れ込んでいくものについては制約を加えないで自然の姿にまかせるべき筋合いのものだと思うのです。しいて市町村に持っていけ持っていけといって農林省が奨励する必要はないけれども、農民の要求なり、その事業主体がそう考えた場合には、一定基準や特別の事由等いろいろな制約を設けて、自治庁は受け入れる気持になり、市町村も受け入れる気持になっておるものを、ことさらに団体主義の残骸を固持するような態度は、私は法の運営上間違いじゃないかということを言っておるのです。この基準だとか特別の事由とかいうようなことを、ここで重複して一つの制約を加えておるものと推定できるような印象をこの条項全体から受けることは遺憾である。少くとも共済事業を、実施主体の特例の第五項については私は相当改めていき、当局も考え直す必要があると思うのです。これはもう与野党に限らず、こんなことでは1実際市町村へ行く道は開いてあるが、実際いけない。組合自体の運営はそれでは適正かというと適正でない。職員は浮き足立って、仕事に対する熱意は非常に薄らいでくる、こういうようなことから、せっかくの今回の法改正の趣旨を徹底し、目的を達成することが困難になると思うのです。でありますからこれは当然そういう一つの方向が出た以上は自然の姿にまかせる、こういう態度を私は打ち出すべきものではないかと思うのです。それは法にこういうふうにあっても、当局がその方針に沿ってそういう考えになって指導を開始されるならば、ある程度それはその法の条項にかかわらず、またその政令なり農林大臣の定める基準のきめ方もおのずから変ってくると思うのです。そこら辺が特に大臣の御勘考をわずらわし、今後この運営上において、私が今言ったようなきらいのないように、御善処になる御意思があるかどうかということです。その点をもう少し納得のいくように御答弁願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/11
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012・井出一太郎
○井出国務大臣 今回の改正で、事業主体を市町村に移すという道が開かれた次第でありますが、それならそれでもう制限などをつけないで、あるがままの姿にまかせたならばどうかという御主張と承わりました。それも確かに一つのお考え方でありますが、われわれといたしましては、何も団体の現状を墨守しようというのではございませんが、昨日も申し上げましたごとく、ともかくこの制度あるいはこの機構というものがくずれ去ってしまう場合においては、これだけ大きな国費を使う災害補償制度のあり方に、根本的なひびが入ってくるというふうなことをも実はおそれておるわけでございます。さりとて御指摘のありましたように、現在の組合団体がいろいろ批判を受けておることも事実でございまするので、まず当面この程度の道を開くことによりまして、これは団体にも大きな刺激になります。また現に従来団体で非常に適切な運営を行なっておるのも多いのでございまするから、そういうものはもうそれでいいとして、この道を開くことによってその中間にありまするような団体も刺激を受けてしゃんとしてしまってくるというようなことにも、実は期待を寄せておるわけでございます。それで今回の改正はテストというよりは、実はもっと進んでおるのでありまするが、ともかくこういう道を開くことによりましてしばらく推移を見させていただく、そして無条件に移譲するというふうな問題はもう少し念を入れて考えまして、改正法施行の状況を待って、御趣旨のような線が適切であるという踏み切りがつきますれば、その上で考えたい、かように存じておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/12
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013・足鹿覺
○足鹿委員 その点はどうも私は納得がいかないのであります。それでは具体的に一つ局長からでもいいですが御答弁願いたいのは、この前いただいた資料に、よりますと、事務所を一緒に持たれておるところ、それから組合長が兼務のところ、それから専任のところというふうに、いろいろな統計が出ておりますが、その中で一番多いのは農業協同組合の事務所に事務所を併置しておるのと、農業協同組合長と兼務しておるのが圧倒的に多いです。専任のものはその次。市町村長と兼務しておるもの、あるいは市町村役場に事務所を併置しておるものが一番びりであるわけであります。そして従来の実績からいえば、大体は協同組合が一本になって、こういうことは農民の利益の立場から、現在の運営の実情から見ても、防災事業も一本化して、当然協同組合にしてしかるべきものだと思うのです。大臣も御承知でしょうが、この共済組合が特別の議決を経て市町村に移譲することがかできる。それは総会でなければならぬということをここに明記しておられますが、独自な立場で共済組合が総会を招集して総会が成り立ちますか。成り立ちませんよ。協同組合だってこのごろはなかなかむずかしいですよ。だからこの前は局長も御存じのように、農林省で通牒を出しておるではありませんか。農業協同組合法改正の趣旨にのっとって、今度の改選期に備えて協同組合の理事、監事の選挙についていわゆる三つの方法を指示しておられる。一つは一般選挙によるものと、総会において選挙するものと総会において選任するものと定款を変更すべし。定款変更がめんどうであるから今までの定款はやめて、そして新定款を作れというふうに、農林省は通達を出して指導しておるではありませんか。模範定款を示しておる。それくらい総会の成立ということは、大きな地区にまたがってきた場合には、これはほとんど期待できません。それをことさらに総代会ではいかぬのだ、総会でやるのだ、こういうことになりますと、これは実際市町村移譲の特別議決というものはできないですよ。それはおわかりにならないですか。現在農林省の経済局の出しておる通牒自身と相反するような規定をここに持ってきて、ことさらに移譲を阻止しておるとはさっきからいっておりませんが、そういう印象を受けるような点が多々ある、その上にさらにここのところにあるのは総代会ではいかぬ、総会でやれということになると、市町村合併によって何千人の組合員が統合しておりますね。この間いただいた資料を読んでみますとそうです。私の鳥取県の地区においても、従来百幾十あったものがわずか五十、はかりになっております。当局の指導方針に基いて統合する。そうすると何千人の組合員が寄って、市町村の移譲の決議をするなんて不可能ですよ。従来の統合前の事例は旧村単位に協同組合があって、その協同組合の総会の終りに共済組合長が議長席についてちょろちょろっと十分間ばかりで御異議ありませんか、異議なし、異議なしということでやってきておるから、監査も不十分だ、事業の批判も一できないというのが、従来の運営にともすれば大きな誤まりを犯す根本原因だ。なぜ総会というような、そういう困難な、ほとんど開催不可能なと思われる——旧村単位の場合はできますよ。もう合併した一つの場合はできません。特別議決というような、村への移譲は事実上できませんよ。一方において農業協同組合においては選挙を簡素化して、選任の道を開いていく、その定款の改正を指導しておきながら、一方においてはこういうやかましい規定をことさらに作って、しかも共済事業の実施主体の特例を開く門出に当って、事実上出鼻をくじくような規定は、同じ当局か別個な方針を考えておるようであって納得がいきません。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/13
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014・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 これはまず第一には共済制度そのものの何といいますか、基本的なあり方についての、今までの過去十年間の法律施行の間にいろいろな議論が出ておるわけであります。そうしまして結局共済というものが一体いかなることであるか、低被害地と被害の多い地帯との間において、非常な考え方の相違が出てきておるわけであります。これはもう釈迦に説法でありますけれども、この共済は、制度そのものを見ますと、地域内の無被害地と有被害地、というよりも無被害筆と有被害筆がお互いに助け合っておる、こういうことからきて、それが組合になり、連合会になり、国の再保険まで持っていって、これを低被害町村と高被害町村、さらには低被害の府県と高被害の府県、こういうふうに分れてお互いに助け合ってきておる、こういうところに根本的な姿があるわけであります。ところが十年間の経験、経過からいきまして、低被害地の方はこういう制度はあってもなくてもいい、各府県ともでありますが、相当な市町村がこういう制度は要らないのじゃないか、これにはほかの理由もまだあるようであります、運営がうまくいかぬというような理由もあるようでありますが、幾らやってもかけ捨てになるので、こういう制度はやめたらいい、ということは共済じゃなくして、災害を予想される人だけが掛金をかけて災害のときに金をもらったらいいのじゃないか、いわゆる任意保険的な考え方になってきておるのであります。そういうところが、この制度全体の運営をむずかしくしておる一つの場面であるとし私は把握しておるのであります。そうしますとそれの一つの対策といたしまして、今の組合の運営のまずいところを市町村に移して経費を節約するとか、あるいはもっとうまくやろう、こういうところをねらって市町村移譲を考えておるわけでありますから、市町村に移譲するということを契機といたしまして、もう一ぺん共済制度そのものに十分各農家の理解と将来のあり方について得心を願う必要があるのじゃないか、こういうふうに考えるのであります。従いまして町村合併をいたしますと大体四一千くらいの組合になってくるのでありますが、六百万農家でございますから、一町村当りの組合員はどうしても千人をこえる組合がほとんどになってくると思うのです。従いましてお話のように総会の招集等は相当困難があるかさ、しれませんが、私の方としてはこの共済制度について、十年間の経過に照らしてこの制度が必要である、その運営についてもっと各農家の理解と得心をもらうチャンスを持ちたい、こういう気があるわけであります。法律論からいきますと、定款の変更とかあるいは組合の解散、そういう非常事百戸はどうしても総会にかけなければならないのであります。その法律論だけでは片づかないのであります。今申し上げますように今度の法律改正を契機として、本制度がやはり、全国の農家が合い寄って助け合う制度である、そのためにはいろいろな約束ごとをしていかなければならない、そういうことをもう一ぺん農家の方に考えていただく機会を得るために、やはり法律論を離れて総会の特別議決、こういうものを持った方がいいのじゃないか、こういうふうに考えます。この特別議決の規定は、御承知のように組合員の三分の一以上出席して、三分の二の同意、こういうことになるのであります。それからまた組合といたしましては、一組合員が二名まで代理投票をすることができるようになっておりますから、そういう規定もあわせ考えまして、私の今の考えでは、法律改正案が成立いたしますれば来年の一月から施行することに法律案はなっております、その間にそういう点を、従来のような中央あるいはブロック別の会議だけでなしに、もっと末端まで指導の徹底するような方法を考えて、この制度が将来うまく運営できるように十分指導もやっていきたい、こういうふうに考えるのであります。従いましてお説のように、むずかしい点はあってもそれを乗り越えていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/14
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015・足鹿覺
○足鹿委員 これは局長の言われるように、切りかえの機会によく趣旨を徹底するのだ、その意図はいいのです。そうでなけらねばならないと思うが、実際二千人、三千人、もっと大きいような組合もできているでしょう。かりに二千人の場合、千人を集めて、千人のうちで委任状を一人ずつが取ってきても五百人来ている。現在村の単位の協同組合が一つの大きな総会を開こうとすれば、名士を呼んできて講演をやるとか、あるいは福引きをつけて早い者勝ちに推せんで景品を出すとか、あるいは余興をやるとか、いろいろ措置を講じないとなかなか総会が成立しないので、単協の理事者は非常に頭を悩ましているときです。協合組合と共済組合とはおのずから農家の認識が違っております。ですからそういう現実の姿からいって、いかように局長がおっしゃっても、趣旨の啓蒙をおやりになっても、事実上この総会の特別議決ということはむずかしいことだと私は思う。これは見解の相違だといえばそれまでですが、だからたとえば村が、町が、あるいは市が合併して協同組合がその中に数個ある、その協同組合別にあるいは旧村単位の、あるいはもとの共済組合単位別に一つの総会——総会のまた一つの何といいますか、地域総会とでもいいますか、そういったようなものを開かしめて、それを積み上げていわゆる全部のその一市町村における組合員の総意、農民の総意というふうな、何かここには一つの工夫がないと事実上市町村移譲という点は、局長の意図される点はよくわかりますし、またそれはりっぱなことでそうあらねばなりませんが、その意図とは別に運用上のむずかしさが私はあると思う。局長の今言われるようなことをまっ正面に受けて、これが実際問題として実施できると考えておられますか。そういうことを農林省の首脳部がお考えになっておれば、この制度改正はまたうまくいきませんよ。もっとそういう公式論ではなしに、実際の共済組合が置かれている現在の姿というものをよく見、これをどう現実に切りかえていくかということに必要な措置を講じないと、そういう公式論であなた方が言われれば、市町村移譲は事実上手続の上でできなくなります。この手続の点については再考されるかどうか。もっとほかの点については、政令や基準やいろいろなものを作って制約を加えておられる、これを総会の特別議決という点でしぼってここでぴしゃんといけば、もう何事もできなくなります。だからこの点においては、もっと検討の余地があると私は思う。私が大臣に特に御出席を願って御質問申し上げていることは、こういった点については事務当局の判断以外に、やはり農村の代表として長いこと議席を持っておられ、農林委員長としても五年間にわたって私どもと一緒にこの法案を検討されたその立場から、政治家としての判断をしていただかないと行政官庁だけの判断では、私はこういうところに大きなミスが出てくると思う。そういう点についてはやはり大臣の職権なり、大臣の考え方によってこうあるべきだという一つの信念をお示しになって、必要な措置を事務当局に命ぜられなければこの問題は解決がつきません。そういう御意向があるかどうか。もう少し考え直してみよう、もっともだというお気持があるかどうか。とことんまでこれを突っぱられるというのか、もう少しその点を明らかにしていただきたいと思う。この点は非常に重要だと私は思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/15
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016・井出一太郎
○井出国務大臣 新しく町村合併されまして、組合の規模が相当に大きくなっております関係から、総会を成立せしめるということが相当に困難が加わってきておるということは、ただいまお示しのございましたような現状かと思うのであります。従いまして何らかの工夫をこらさなければならぬという点もございましょうが、われわれの当面の考え方といたしましては、今局長から申し上げましたごとく、これを実施するまでにはまだ相当日子もございますので、十分な行政指導、趣旨の徹底、そういうふうな方途を講じまして、この特別決議というものが非常の場合に当っての支障にならないように工夫を十分にこらしてみたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/16
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017・足鹿覺
○足鹿委員 どうもそういう御答弁では私は満足できないです。しかし意見が相違するとおっしゃればそれまでですが、この条項は、今度の改正の中で一番中心は評価の点とこの点です。あとはそう大した問題はあるようでないようで、大したかわりばえはないのです。問題はこの点だけなんですが、それが事実上において、私が指摘したような点で規定通り動かぬという場合の措置が、政治的判断によって大臣の断が下されないということになりますと、私どもは失望せざるを得ない。実際この事業というものが事実上崩壊の過程をたどらざるを得ないということに直面すると思うのです。もっとも近い機会にあるいは根本改正をおやりになればこれは別でありますが、こんなこと程度で今後相当期間をおやりになるという場合は、これはこの制度自体が私は崩壊すると思うのです。そうなってあわててみたところでしようがない。大体において今ちょうど時期は熟してきたときですから、この機会におやりにならなければならぬと思うのですが、今の御答弁では、実施までには相当の時日があるからこの点ついてはさらに検討をして善処するということでありますが、その点をもう少しはっきりしていただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/17
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018・井出一太郎
○井出国務大臣 この点は当委員会でさらに慎重な御審議もなさるわけでございましょうし、委員会の御趣旨にも十分にのっとって配慮をいたしてみたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/18
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019・足鹿覺
○足鹿委員 それでは、まあ委員会の考え方によってはいろいろ考えてみようという御意思のようでございますから、これ以上は申しませんが、一つの行政官庁が相異なったような指導を同じ農業団体に向って発するというようなことは、これは矛盾もはなはだしいのです。私ども事情を知っておる者はおかしくて、そんなことはそうですかといって引き下るわけに参らぬのです。あなた方は農業協同組合の民主化の線とは逆行するように、選任の方法すらも定款の改正を指示しておられる。だからおそらく今度の四月から五月に行われる協同組合の役員の改選一は、部会選挙ということを定款に定めるものはおそらくないでしょう。総会選挙も改めて、ほとんど選任になってきますよ。そうなれば協同組合としては逆コースだと私は思うのです。しかしそういうふうに協同組合には、通牒によって、いわば定款まで示しておきながら、この共済組合が大きな再出発の門出に当って、市町村以上の際には、がんじがらめに手足を縛っておいて、そうしてかけろというのと同じことです。この点については、委員会としても与野党を通じて、もっと慎重に検討して、修正すべき点は修正して進みたいものだと思うのですが、これは別に財政的措置を要しない、すぐにあなた方は、意見もっともだけれども財政的に困るのだというのが逃げの一手で肥す。これは手続の問題ですから、財政的措置は一文も要らぬのです。この点については私は井出さん、あまり肩をかわすような答弁ではなしに、その趣旨に沿ってやるのだ、その点については委員会からも手を貸してもらいたい、こういうような私は割り切った御所信があってしかるべきだと思うのです。ここまで来ておって、最後になってこういうことでは、私は非常に困ります。これ以上は申しません。そういった点を指摘しておきます。
特にこの次にお尋ね申し上げたい点は、共済対象の問題です。これはいろいろな議論があるようでありますけれども、今の共済制度というものは農作物共済として当初出発した。そうして数次の法改正によって現在の姿になってきた。そこで農作物共済の場合においても必須共済と任意共済の二つがある。たとえば九州の菜種の場合、北海道における大豆の場合、これは地方における主要農産物として、その地域における麦や水稲以上の重要な主産物として、農家の経営に重きをなしている。ところがこれに対して再保険の措置がないから、昭和二十五年の災害のときに、九州は、農林省とも打ち合せて、福岡県において菜種の任意共済を始めておった、ところが大水害を受けて五千万円からの赤字が起きて、二年目にはぺしゃんこになって、いまだに問題が解決がついてないという話を聞いております。北海道の場合はどうですか。あの水稲の栽培極限地以北にも、品種改良によって水稲が作られる。そうして災害が来る。災害が来るとまんべんなくこの共済金が届くが、畑作を主とした北海道の地帯においては何ら保険金はもらえない。そこで頭から水稲を作ることは不利だとは知りながら、いざというときには共済金がもらえるから水稲を作った方がいいという、一つの地域感情が農民の間に支配してくるのは私はもっともだと思う。こういう大豆等についても当然これは必須共済に私は入れるべき筋合いのものだと思う。菜種も同様必須共済に入れるべきだ。百歩譲っても、私が前から主張しているように、これらのものは主要農産物地域性というものが制度に反映してくるように措置すべきだ。たとえば九州の菜種あるいは東北、北海道における、開拓地等におけるところの大豆あるいは小豆、そういったものを任意共済によって都道府県連合会が共済対象として取り上げ、これに対して国が当然再保険の措置を講ずる。こういうところまで今度は切り込んでいくべきものだと思う。麦はすでに統制が撤廃されて間接統制になっております。米麦を中心としてこの制度が生まれたのは、供出制度の半ば裏づけの意味を持っている。だから当時は食管特別会計から消費者が負担金をかけてこの共済金をまかなっておった時代があったでしょう。そういうふうに麦の事情も変ってき、食糧事情も根本的に変ってきている。そうして現在においては、主要農産物の地域性というものを尊重して、農民の自発的創意によって任意共済をやっても、野たれ死にをする。こういうようなことを知って知らぬふりをして、今度の法改正に取り上げておられないという点は、私は非常に遺憾に思います。これは別に何らの差しつかえのないものだ、当りさわりのない問題ですよ。どこにも何らの利害関係がないのである。こういう問題こそ取り上げて当然私は措置して、そうして麦を私は主産地の立場においては当然共済対象として取り上げるのでありますから、零細農に対する特別措置によって、水稲一町歩のときに麦を一反歩作っておるのはやめるとか、そういう姑息な措置をとっておられるが、麦の主産地は必須から落して任意共済とする。麦、菜種、大豆を、地域性のある主要農産物として国が再保険の措置を講じていきますならば、農民の負担の軽減もできますし、国費の節約もできると思うのです。実際上そろばんをはじいておりませんからわかりませんが、そういう結果になろうと思うのです。なぜそういった共済対象の場合において、ローカル性というものを尊重すべく構想をお練りにならなかったか。こういう機会はめったにないと私は思うのです。ことし改正してまた来年やるというわけには参りますまい。おそらくこれは二、三年先、四、五年先まで根本改正は望めないのじゃないかと思うのでありますから、少くともこういった点について考慮を払われなかったのには何か事情があったのですか。麦を必須から落し、大豆、菜種とともに主要農産物として地方連合会が任意共済としてこれを取り上げて、国が再保険の措置をこれに講じていくということによって、国費の負担も少くなりますし、作物のローカル性というものも出てきます。従って農家経営の実態に触れた、核心に触れた共済制度に一歩近づくものだと私は思うのです。従来東京府下において馬鈴薯の被害が出た、あるいはその他の地域において特殊な——栃木県において麻の被害が出た。私ども二、三年前に調査に行ったときに、栃木県では麻の任意共済を始めておった。ところがこれに再保険の措置がないから、掛金がべらぼうに高くなる。そして災害が頻発するから連合会は赤字が出て二年でやめてしまった。こういうことなんです。地方の農民にとっては、米が主作である場合と、そういう特殊農産物が主作である場合は、その地域々々によって違います。ただ一番普遍性があるのが米だというにすぎないのです。そうしたことに対して農作物の任意共済制度を認めておきながら、再保険の措置を講じないということは、私は矛盾もはなはだしいと思う。ですから麦というものを一応必須共済から落して、麦、菜種、大豆を主要なものとして、これは必須に準ずるものとして国が再保険の措置を講じていく、またその他のローカル性のある特殊の農産物について考慮していくということがなされなければ、ほんとうの農民の要求にこたえた制度改正とは言えないではないか。その点はどういう御検討の結果こういう不安定な案になりましたか、大臣なり当局の御所信はいかがでありますか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/19
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020・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 大豆、菜種その他主要な地域的な作物をもっとこの共済制度に乗せて農作物の災害対策をする必要がある、こういう御趣旨、私ども全く同感でありますが、それにつきまして従来も検討を加え、今度の改正に当りましても、でき得べくんばそれを取り入れたいということでやったのでありますが、結局お話のようにそれらの作物については再保険をやらなければつじつまが合いませんので、これらの作物について再保険の仕組みをどういうふうにするか、こういうことで行き詰まっておるのであります。それはまず第一には、今御指摘の作物についての被害統計が十分でない。それからまた作付面積等につきましても、何といいますか、畑作の特殊性からいって輪作関係がありまして、その年その年の面積の把握等についてもいろいろな問題があります。そういうことと再保険の制度の問題、そういうところで今度の法律改正までには、残念でありましたがわれわれの事務の能力がそれだけの余裕を持ち得なかったのであります。従いましてこの点は、今までの任意共済の各県の事情を集大成しまして、それをどういうふうに再保険の仕組みに結びつけるかという点を、できるだけ早い機会に次の段階としては制度化したい、こういうふうに考えておるのであります。
それから麦の共済でありますが、これを任意の方に入れたらどうかという問題であります。これも従来からの御主張は十分検討いたしましたが、これは一般の任意共済との関係で解決しないと、今すぐこれを任意の方に回しますことは、現に麦について相当に本制度の恩恵を受けている地域もありますから、そういう点とのからみ合い、任意保険の再保険の仕組みができた場合でないと、今これからはずすことは時期でないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/20
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021・足鹿覺
○足鹿委員 それはそうなんです。麦の場合も、ただ一方的にはずせということではありません。誤解のないように願いたい。この再保険の制度ができた場合は、今言ったように、その他の主要農産物に地域性を反映するようにしていくべきだという意味でありますから、それは局長のおっしゃる通りで、私もそれでいいと思う。やはりこういう機会には、私が今述べたように、そう無理な要求だとは思っておりません。当然おやりになるべき筋合いのものであると思う。これは何ら摩擦のある問題でもありませず、すみやかな機会に御検討の上御成案を得られることが私は必要ではないかと思います。これ以上は議論になりますから申し上げません。
それから、あと二点ばかりあるのでありますが、共済金額と共済掛金の問題です。これは無事戻しとの問題も関連して私はお尋ね申し上げたいと思います。今度は七、五、三、二の四階級に共済金額をやろうということです。これに見合った共済掛金がおのずから出てくる、またこういうふうに改めようとしておられるのであります。この共済制度が非常にむずかしいのは、地方によって常習災害地なり、また災害が頻発する地帯と低被害地とのいろいろなからみ合いがあってなかなかむずかしい。従来の画一的な共済金額、米価にスライドしたところの共済金額、またそれに見合うところの共済掛金というものが不合理であるということは、もうしばしば指摘され続けてきた通りでありまして、これを改正される意図は私どもよく了承されるのでありますが、結局今度石建になりますと実際上においては七七、四十九ということで実収高の五割弱しか保険にならないというわけですね。でありますから、一石とれる場合、結局一石分の被害、収穫皆無の場合でも一石分しか共済金がもらえないということなんです。結局私は七という最高段階を八ないし九にすべきだといつも思っているのです。この前の小委員会なり制度改正協議会の場合に収穫量の七ないし八ということを主張してきたのです。ところが同じ数字で一応七を取り上げられてこられましたけれども、今申しましたように、実収高の大体半分にしか今度の制度改正ではいかなくなる、こういうことで、私どもの考えておったこととほど遠い改正案になってしまいましたことは、非常に遺憾に思いますが、とにかく画一性を廃してある程度実情に即したものにしようとしておられる意図は、意図そのものはわからぬことはないのです。ですからこの七を八にすると財政的な制約等があるそうであります。もう一つ八階級をお作りになったらどうか、そうすると収穫皆無の場合でも大体六割に近いものが補填される、こういうことになるのです。この制度が、農民からは掛金をとりながら不信を買っておるゆえんは、申し上げるまでもございませんが、収穫保険の域にしか達しない、いわんや農家の所得保障という社会保険の性格には全く縁遠いものである、その生産費の一部を補填するにすぎないのです。そこにこの制度自体の非常に不徹底、微温的であり、かつ運営よろしきを得ないために農民の不信を買っているゆえんがそこにあると思う。そこでやむを得ないから、いろいろ、制度改正協議会なり、五カ年間の審議の結果が、無事戻しをすれば掛金がふえるということをいっておる。そうかといって国庫の負担でまかなえといえば、それはできないのです。それでは農民の自由選択の余地を与えようではないかというのが制度改正協議会の一致した結論になって、御答申申し上げた通りであります。その趣旨がある程度ここへ盛られておりますけれども、今申し上げましたように、収穫皆無のときには平年作の大体半分しか共済金が入らない。私どもの理想を言うならば、被害なかりせばというのが大体実情に近い線だろうと思うのです。ところが今度の改正においては、平年作がやはり基準になっております。しかもいつも言うことでありますが、供出制度の長い間の悪習といいますか、農民の自己保存の要求からといいますか、大体収穫には三つないし四つの段階がある。実際自分が倉に入れる収穫量、それから供出量の収穫、税務署用のもの、それから統計用のもの、そのほかにもう一つ共済用の基準反収というやつがある。全くそういう農家の気持を私は非難する気持はなれないのです。農民としては現在そういう自己保存をやらざるを得ないような立場に置かれておるから、そういう措置をとっておることを奇貨として、基準反収の問題が今度またそのままで改訂を迫られておるにもかかわらず、そのままに放置されたということを私は非常に遺憾に思います。六千六百万石の基準反収は動かせないということでありますが、実際において供出制度は二カ年の予約制度によって事実上変ってきました。ですから農家はもう供出用のいわゆる収穫量の申告とか、あるいはそれを心配する必要はない。ただ税務署関係を心配するだけであります。自分の申告に基いて一定量を予約していこうという制度に変った以上は、そう収穫量に気を配る必要はない段階にきておる。従ってこの基準収穫量というものを引き上げていけば損害の実額補償に近いものが出てくるけれども、基準収穫量の改訂を行わないということになりますと、共済金額と共済掛金の中で、今度の改正でただ残ってくるのは農民の自主的な選択の余地を認めたということになってくる。ところが先般来いろいろとその内容を聞いてみると、私どもの言ったのは、保険システムの上からいって個人が選択するという趣旨ですよ。ところが今度は市町村・単位だという、市町村単位ではちょっとむちゃだから新しい市町村を四つくらいに分けるんだという、町村を山手と平場くらいに分けるのだという。部落としては認めていない。そんなことで事実上七階級に分けておっても七、五、三、二の四階級に分けても、選択の範囲は旧村においては二つしかないということですよ。そうじゃないですか。まさか七を選ぶものと二を選ぶものとあるはずはありませんけれども、まあまん中どころと、低位被害地と常習災害地帯は最高一本というようないわゆる逆選択の傾向が出てくることをあなた方はおそれておられるようですが、大体はやはり四つの階級を設けたならば、少くとも部落なら部落が単位となって個人というのがどうしてもいけないならば、私はあえて主張しません。部落というものが単位となって七、五、三、二のうちAの部落は七を選ぶ、Bの部落は五を選ぶ、C部落は三を選ぶ、Dの部落は二を選ぶというふうに、少くとも一村において四つの階級を選ぶ自由を与えるくらいは制度改正の趣旨にかなったことではございませんか。実際上において運営の面において、旧村を二つぐらいに分ける、新町村を四つくらいに分けよとおっしゃいますが、私の知っておるところにおきましても、鳥取県の一市で十五ヵ町村を合併した市がありますよ。市役所の本庁へ出てきて用事を足すのには、弁当を持って泊りがけで出てこなければならぬ地域を含んでいるところもありますよ。そういうところにおいては、二つぐらいの地域に分れているようでありますが、そういう大きな地域に拡大された市町村を四つやそこらに区域を区分して、その範囲内において七、五、三、二の選択の自由を与えるというようなことは、羊頭を掲げて狗肉を売るということですよ。そんなむちゃな話はない。少くとも四階級を作ったならば旧村単位に四つの程度は認めるべきですよ。なぜそれができないのですか。私は無理なことは言っていないつもりです。お互いが話し合ってこの制度をよくしていこうと思うからこそ、保険システムをある程度加えていくならば、当然自分は最低でよい、災害はうちのたんぼにはないし、またあっても最低でよいといって二を選ぶなら選ぶ自由を個人に与えるべきだ。それもやむを得なかろう。無事戻しの点においても必要であろう、現在の実情としてはやむを得ないんだということになれば、少くとも米の予約集荷の単位である部落程度は認めるべきではありませんか。なぜそれが認められないのですか。これは法律そのものではない、基準の作り方、政令の作り方で何ぼでも変えられる。この一点はどうしても貫かなければ、今度の制度改正の趣旨は全く死文ですよ。農民を欺くものになりますよ。そんなことでこの制度が建て直るなんということをお考えになったらもってのほかのことです。私どもはこういう点の主張が通らぬ、どうしても当局がはっきりしないということになれば、この制度の欠陥を指摘して、農民の立場から鼓を鳴らして迫るにやぶさかでありませんよ。いつまでもそういうインチキ的な改正によって一歩前進だ、一歩前進だといって農民に協力を求めるような考え方ではなしに、猛然と立って非難攻撃して、この制度と本格的に対決する用意がありますよ。少くともこの程度のことはお考えになる必要があると思うのです。これは法律自体の問題じゃない、政令なり省令の範囲内においてやり得ることなんです。その点は大臣としてはどういうふうにお考えになるか。事務当局としてはどういうふうに考えられるか。この点はきわめて重要な点でありますのでお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/21
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022・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 お話の点はかねてから協議会等でずいぶん問題になっている点でありますが、私の方で結局最後は保険設計の計算になるわけでありますから、いわゆる任意保険でその責任において、その範囲内において、その損得でやるということでありますと、設計が間違っておったから会社がつぶれるということで済むかもしれませんが、この法律では一定の資格あるものは強制加入をさす、そうしていやな者でも入れて共済制度をやる、そうしなければこの制度は成り立たない、こういう前提が一つあるわけです。そうしますと、お説のように一筆ごとに選択をすることが最終の姿であるけれども、それまでに到達する事務能力と申しますか、運営を担当する人の能力の最大限で可能なところでおっつけなければならない。それがどこであるかという問題になってくると思うのです。従来は町村単位に今の共済金額なり掛金率いろいろなものをきめておったのを、それではあまりにも実情に合わないから、今度は同一被害程度のものを市町村の中で区分けして、その同一程度のものは同一の待遇にしよう、こういう考え方にまできたのであります。そこで、お話にありますように、一市町村の中を平場と山場、あるいは川すそとそうでない災害の少い地域、こういうふうに分けていって、その区域ごとに石当り共済金の選択をやろう、こういうのであります。お話しにありました旧町村を二つくらい、新市町村になるとそれが四つくらいの区分けになるであろう、こういうのであります。これは平均的な説明でありまして、御指摘になりましたように旧数町村が合併したようなところでは区域の数は当然ふえなければいけないのであります。大ざっぱに申しまして、一万近くの組合が四千あまりの組合になるから、旧町村を二つに分けると新市町村が四つ、こういうことを言っているのであります。私の方では部落別に危険階級をきめまして、同じ危険階級に属する部落の分はひっくるめて同一の石当り共済金額を選ぶなら選ぶ、こういうことで、一つの町村の中でAとBという部落がありまして、その部落が同じ条件にある場合は同じ率でいってもらいたい。これが主でありますので、それを大ざっぱに考えますとただいま説明いたしましたように、新市町村で四区域くらいになるのではないか、こういうことであります。これは平均的な話でありまして、村の条件が非常に複雑になれば区分けは当然もっとふえてこなければならない、こういうふうに考えておるのであります。お話の点はよくわかるのであります。同じ危険階級に属する部落でも違う石当り共済金額を選ぶことだけはやめてもらいたいというのがわれわれの考え方であります。お話によりますと、それも自由に二千円、七千円と選択してもいいじゃないか、こういうふうにやられておりますが、そうでなしに、同じ危険階級に属する区は同じ待遇でやってもらいたい、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/22
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023・足鹿覺
○足鹿委員 従来十二危険階級が十八危険階級と今度細分化されるということは、私はいいことだと思うのです。しかしそれは十八という一つのワクができるだけのことでありまして、それが必ずしも府県によって十八になるのか、十二になるのか、あるいは八になるのか、それはみんな一々その府県の実情によって違うはずなんです。だから一つの考え方は、そういうことを私は言っておるのではない。少くとも、大臣の御臨席を願ってお尋ねしておるのは、無事戻しの点についても実際においてずいぶん検討した、低位被害地の諸君にとっては気の毒である、何とかして無事戻しをやって上げなければならぬ、現在の法律によっても無事戻しは別に禁止しておらぬ。ただし組合が赤字だからできないというだけのことなんです。そういう実情にあるので、農家の負担を重くして、無事戻しをやってみたところで、低位被害地には喜ばれないであろう。といって国の財政負担で低位被害地の無事戻しをやるということは、被害のないものに国が補助を与えるというような一つの法理論も成り立ってくる。そういうところに難点が出てくる。そこでこれは、せっぱ詰まっていろいろな立場から検討した結果、農民の選択の自由の範囲を広げて、それによって調整をとって、事実上無事戻しをある程度加味した低位被害地や高位被害地に適合した一つの段階を求めていこうというのが私どもの一致した意見です。私がそれをここで代弁しておるだけのことであって、これは制度改正の協議会においても従来長いこと検討してきたことです。それを、今局長の御答弁では、新しい町村は地域の広いものは四つやそこらではない、もっとふえるのだ、危険階級別にいくのだからそうじゃないといって強弁されますが、それでは通りません。私はそういう立場から論じておるのではない、無事戻しの面から、あるいは負担の合理化の問題、あるいは低位被害地におけるところの負担の軽減の面からこれをいっておるのです。ですから、あなた方が選択の範囲を旧村においてたった二つないし三つしか認めないということになりますと、一番おそれておられる逆選択の傾向が特に多く出てきますよ。そういう結果になりますよ、必ず。だから、私は少くとも八を追加して五つの階級にわけるべきだという主張をここに明らかにしておきます。いずれこれはよく話し合ってやりたいと思っておりますが、少くとも原案が四つの七、五、三、二の選択の範囲をきめた以上は、旧村を単位として部落または部落に準ずる区域を一つの選択の基準として認むべきだ、こういう点を私はいっておるのです。これは農林大臣、非常に大事な問題です。これは今度の改正の一番大きな問題だと思うのです。これが補償制度でもない、保険の方式でもない、共済でもない、その三者をまとめたものだという性格はいなめない、だとするならば、その三者の長所々々をとってここにある程度の一つの総合的な制度を組み立てておるわけでありますから、一朝一夕にはこれは変りますまい、しかし将来は国家補償の方向をたどるべきものであるが、現在はやはり保険の面も無視することはできない、そういう一つの理解のある視野の広い立場に立って、そういう保険の概念をこの制度に取り入れてくるならば—保険は元来利己的なものじゃないか、かけた者が損害を受けたときにもらうので、かけない者はもらわないのはあたりまえです。最も資本主義的な、利己的なものの代表です。それを全部やれといっておるのじゃないのです。少くともこの保険システムでいくならば、個人がやるべきことであるけれども、現在の段階としては私もそれは無理だと思うから、少くともこれは米の供出を行なっていく予約の単位とした部落程度のものは認めていくべきものだ、こういうことなんです。そういう点について、農林大臣は、行政官としてでなくて、政治家としてこの農民の切実な要求に今度の改正でこたえられないはずはない。十二分にこれはこういう面において考えていくのだ、こういう御所信程度は私は発表になってしかるべきものではないかと思うのです。私の言うのが非常に公式論で無理なら、私はあえて強弁しません。その点について農林大臣の確たる御所信を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/23
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024・井出一太郎
○井出国務大臣 足鹿委員がかねがね御主張になっておられました御理論を承わったわけでございますが、それは理想としては個人々々が最大限に選択の自由が許されることも、保険システムを取り入れておる意味においてはけっこうなことでございましょう。ただ先ほど来局長もお答えしておりますように、やはりこれは一つの保険設計上の事務の問題等もございまして、共済金額と掛金の関係等は私の方はもう少し検討をしてみるつもりでございます。従いましてその可能な範囲においては御相談をしてやって参らうかと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/24
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025・木村文男
○木村(文)委員 関連。今、反対党でありますが足鹿委員のうんちくを傾けた共済制度に対する御質疑があったわけでございます。私はずぶのしろうとでありますが、実際農村を回ってみまして、その声をこの委員会を通して当局にお伝えするとともに、その農民が聞いてくれ、ただしてくれ、改正してくれという点を率直に申し上げ、そして農林当局の意のあるところを承わりまして、地方に帰ってそれを伝えたいと思いまするがゆえに、きわめて簡潔に、二、三お尋ね申し上げたいと思います。
まず第一に、先ほど足鹿委員が重々申し上げました地域の問題が非常に問題になっているのであります。この問題は、農民の声としては、今足鹿委員が言った通り、でき得るならば個人加入にしてもらいたい、しかもそれは自由にしてもらいたい、こういう声があるわけであります。今までの制度の建前でありますと、これは強制的な加入であり、しかも町村単位である。特別のところも認めておりますけれども、それは付随した法的な措置である、こういう面からいって、今までの大臣並びに経済局長の答弁によりますると、その最終段階においては、理想としては個人加入であり自由を尊重すべきである。こうお答えになっておりまするが、それではせっかく今改正せんとしておるのでありますから、もう一歩進めて、これに農民のほんとうの声を織り込んだ一つの改正点を見出す御意思がないかどうか、今提案しておりまするこの法律案を、この会期中に上げるという建前でもう一ぺん再検討する御意思がないかどうかということを承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/25
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026・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 この制度は、先ほど申し上げましたように、農民の相互共済ということが基本になっておるわけでありまして、その共済でまかなえないところを上級で保険し、再保険する、こういうことになっておるのであります。アメリカにおけるがごとく相当大きい規模の農家で、個人が直接保険をかける制度とは違うのであります。そういうことにまで踏み切る段階ではないと私は考えておるのであります。制度としてはほかの国に、そういう任意の、いわゆる一般の生命保険なりあるいは火災保険と同じような農作物の保険制度があるのであります。しかし日本のように災害の頻度が多く、毎年のがれられないという場合は、そういうことでは成り立たないというのが今までの結論で出ているわけであります。どうしても現在の制度を補強いたしまして、今までの農家で不満なところあるいは複雑であるところあるいは難解であったところを除いていくことがわれわれに考えられる最高限でありまして、日本の農業の特性からいって、これを根本的に任意加入の制度にするということは今考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/26
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027・木村文男
○木村(文)委員 今の経済局長の御答弁によりますと、今のところは災害の実情からいっても任意加入制度はとらないというようなお答えであったようでありますが、もしそういったような場合は、今の足鹿君の御意見のように、せっかく今回七、五、三、二といったような制度をとっているのですから、これを一歩前進せしめて、同一環境といったような地域別、たとえば同じ青森県でありましても、また同じ村でありましても、その農作物の種類だとかいったようなことによって、またその土地柄によって非常に違ってくるから、そういったきわめて小地域の制度を採用する、もう一歩進めた拡大した意味の小地域制度に改めるお考えはないか、こういうことをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/27
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028・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 でありますから、現在よりも細分をしているのでありますが、今の足鹿先生のお話ではその細分の仕方が足りない、こういうことでありまして、その点は今後の運営上十分御意見を伺いまして、われわれの事務の能力の範囲内で十分考えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/28
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029・田口長治郎
○田口委員長代理 木村委員に御注意しますが、大臣はほかに用事がありますので、事務当局に対する質問はあとに譲っていただきまして、大臣の質問だけ先に進めさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/29
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030・足鹿覺
○足鹿委員 もう一点お尋ねをしたいのでありますが、改正案の骨子には指導監督の強化ということがうたわれているわけです。その過日の補助説明を聞いておりますと、こう言っております。「共済事業の運営が必ずしも適正に行われていないことは会計検査院、行政管理庁の指摘にもある通りであり誠に遺憾であるとともに指導監督の衝にある我々の責任を痛感している次第であります。このような事態を生じました原困を深く反省して見まするに、」といって、以下三項目をあげておりますが、その一は「戦後の混乱時代に準備体勢不十分のまま発足した当時の混乱が今なお惰性として残存し遵法意識に欠けていること、」それから「役職員その他に対する訓練が足らなかったこと」「行政庁の監督権限が不十分であったこと」をあげておりますが、この制度に限らず戦後における立法はみんな新しい立法がおもでありまして、ある程度軌道に乗ったものもありますし、またこの制度のようになかなか軌道に乗らないものもある。そこでこの管理の責任のみを私は追及するような考えは持っておりません。またいたずらに強権を発動していくような、民主主義の原則に反するような指導監督を強化していくということに対しても私は賛成するものではありませんが、この指導監督をうたう一つの原因としてあげている「戦後の混乱時代に準備態勢不十分のまま発足した当時の混乱が今なお惰性として残存し遵法意識に欠けていること、」ということを政府みずからもうたっている。遵法意識に欠けているという点は、私がきのう会計検査院の膨大な報告の結論について指摘しましたが、何べん指摘しても、直した直したといって報告しても、直しておらぬ。そういう場合には一体今後の運営に当ってどうするかということです。役員の一部改選を命じたり、事業計画の改訂を命ずる程度では、会計検査院や行政管理庁がやっても直らぬ——全く遵法意識というか、またそのやっていることを別に悪いことだと思っておらぬようだ。そこにこの程度の救いのない問題があるのです。従ってこういう歴然とした国の機関で不当不正の運営がなされておって、法の趣旨に間違った運用が行われているものに対しては、解散権を発動すべきだと思うのです。解散をしてそういうものに対しては市町村にどんどん移譲してしまう。それを機会に移譲していくというような会計検査院や行政管理庁でも報告だけはしているけれども、この報告がどの程度まで来たるべき政府の施策に織り込まれるかということについては、今の国の制度には私は欠けていると思うのです。まさにこのこと自体を見てもいかにその欠陥が多いかということがよくわかっていると思う。にもかかわらず、この点についてはほとんど監督命令を出すという程度、あるいはその結果として計画の変更、共済金支払いの一時停止もしくは支払い方法の変更というようなきわめて微温的なものに終っているのです。ですから、これはさっきの市町村移譲のときの議論と続いてきますが、こういった公けの機関が運営よろしきを得ず、不正不当の運営をやっておったことが明らかになった場合は、少くともこれは断固として解散を命じ、そしてその役員等の責任を明らかにせしめて、そしてこれは当然新しい角度から市町村にその事業を移譲して、心機一転農民のほんとうの要求に従うような規定を少くとも入れるべきじゃないですか。この程度で、あなた方がこの病膏肓に入った、会計検査院が指摘しようと行政管理庁が文句を言おうと、あらゆる角度から言われてもカエルのつらに水で全く反省の余地も何もない。そういう歴然たる事実が明らかになっているにもかかわらず、それに対する措置がこのたびの改正には欠けているのではないか、さっき市町村移譲の事業主体の特例の道を開く点について大臣に強く私はお尋ねをし、要望もいたしましたが、今度の法改正の骨子の指導監督の強化という意味になるかどうかわかりません、もっと強いものになるかわかりませんが、少くとも今私が述べたような点を私どもは考えたいと思うのですが、農林大臣の見解はどうか。いたずらに解散権を発動するようなことは私はおもしろくないが、公けの機関がやった場合には、やっていかなければならぬと思うのです。
農林大臣は御多忙のようでありまして、勉強不足のように思われますから一例を申し上げますが、こういうことになっているのです。昭和三十年度決算報告書百九十四ページ不当事項というところに「(一)共済金の全部を組合員に支払わず、また、掛金も徴収していないため保険が農民から遊離し、組合と上部機関との間で空転しているもの」その組合数五百二十組合、金額にして二十八億二千百万円、そのうち国庫負担分推定額二十億七千二百万円となっているのです。こんな重大な事態を、会計検査院という公けの機関がちゃんと国会に報告しておる。こういうものに対する措置も何ら講ぜられず、指導監督の強化、そんなことでは二階から目薬です。こういう歴然たるものに対して、適正な措置を法改正の際に講ぜずに、一体何ができますか。次には、「共済金を補償対象外の被害三割未満の耕地をも含めた引受全面積に対して配分し、そのうちから未収掛金等を差し引いているもの」「(三)共済金の一部を組合員に支払わないで帳簿外に保有し、これを目的外の役場庁舎建築費、農業協同組合出資金、飲食費等に使用したり、定期貯金等としているもの」この範疇にすべてが該当しておる。みんなそれぞれ何百組合、この百九十四ページ以降に一覧表になって出ておりますが、これをごらんになればこの制度がいかに病膏肓に入って、救いがたい矛盾を内蔵しておるか、公けになれば片端から問題を起すような運営が随所に見られる。一覧表は明らかに各府県別にその件数を列記してちゃんと問題の所在を明らかにしております。これらのものを今度の法改正にどう生かしていくかということが、私は第四の指導監督の強化の条項に当てはまるかどうかわかりませんが、少くともこういう点については、この条項において、市町村への移行の一つの特例とからみ合せて考慮すべきではないか、その措置を講ずべきものではないか、こういうふうに考えるのです。ただ一つの推定や何かでいうのではなくして、会計検査院がわれわれに示した根拠ある数字に基く、これは氷山の一角です。まだまだ多くの事例があるでしょう。しかし中にはこういう事例がありますよ。
私は先年渡部局長の郷里の愛媛県に行った。これは一つ記録に残しておいて、当時の農民の意思を明らかにしておきたいと思う。これは愛媛県のある村ですが、掛金を五十五万円かけて、一文の不足金もなしに掛金をかけておる。ここはやまじ風という大きい風の吹く地帯ですが、そこで昭和三十年度に受け取る共済金の予想は、収穫皆無の地域が非常に多かったから、百八十万円を予想しておったというのです。ところが受け取る共済金は幾らだったと思う。十一万円ですよ。五十五万円の金をかけて、百八十万円は農民に支払うことができると思って、その組合長はまじめに法の建前を守って、相殺や部外貯金や天引きなどしないで、まじめに組合費を集めて、そうして百八十万円の保険金が来るものだと思っておった。ところが何たることか、来たのは、掛金の五分の一の十一万円じゃないですか。こういう運営をまじめな組合員にやらしておいて、一体どこにその制度の改正がありますか。悪いことはしほうだい、まじめな者はいつまでも苦しんでおる。そういうことで、今度の制度改正ができると思っておりますか。そういう明らかに不当不正の場合のものに対しては、少くとも公けの機関が認めた場合においては、これに対して断固たる措置を講じていく、そうして心機一転、農民のほんとうの福祉のために、所得の補償の一部のために、その経営の安定と生活の安定のためにこの制度を活用していくということが本旨じゃないですか。そういう点に向って監督権を発動し、その一つの現われとして解散権が適当なる場合に行われるということになれば、私はあえてこれは民主主義に逆行するところの官僚独善ではないと思う。そのために一つの審議会を設けてもいい。どうもこれが運営はよろしくないという場合には、官僚の一方的なものでなしに、県知事の意見を聞き、あるいは有識者の意見を聞いて、そうして少くとも会計検査院が指摘したようなところ、あるいは行政管理庁において断の下ったようなところ、あるいはあなた方の検査によって不正不当であると認めたものについては、相当の機関の審議を経て、これに対して新しい転機を作っていくという法改正の必要な措置が今度は欠けてはせぬか。このままでは何ぼ検査したって、何度言ったって一つも反応がないし、反省もない、それでは私はよろしくないのじゃないかと思う。こういう点について今度の法改正で一番画龍点睛を欠いておるのじゃないか。従来あなた方認めておるように、終戦後の混乱で役職員の訓練も不十分であった、順法精神も不十分であった、当局の監督も不行き届きであった、だからどうするかという点についての対策に欠けるところがあったと思う。この点が今度の法改正において一番大事なところだろうと思うのです。法律を破っておろうが何しておろうが、それは農民の一つのその地域におけるある程度の意思によってやっておることでしょう。やっておることではありますが、少くともそういうものが何百何千と起きてくるならば、この制度自体が実情に沿わない法律であり、また運営が行われておることに対する一つの農民の抵抗とも考えざるを得ない。そういうことも言い得るを思う。いずれにしてみてもこのたびの制度改正の場合においては、これらの措置が一欠けてはいないか。農林大臣のこの点に対する御所信と、もっと完璧なものにするにはどうしたらいいかということについての御所信を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/30
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031・井出一太郎
○井出国務大臣 るる御指摘がございましたように、この共済制度の運営に当りましては、幾多遺憾の点のありましたことはわれわれもっとに痛感しておったところでございます。会計検査院から不当事項として指摘をされ、少しもそれが改まらなかったという実情はまことに遺憾でございます。従いまして今回の法改正を機会にいたしまして、監督規定を強化した点はすでにお示しを申し上げておる通りでございますが、これでは不徹底であろう、こういう御指摘でございます。この文面には解散命令その他は出ておりませんけれども、解散権をもって農林大臣が解散命令を発動するということはあり得ることでございますが、いわば伝家の宝刀とでも申しましょうか、みだりにこれを振り回すことはもちろん差し控えなければなりません。けれどもこれを内に秘めつつ断固たる決意をもってこれに臨むという場合には、この宝刀は十分光を放つわけであろうと思うのであります。従いまして問題は運営の面に相なるわけでございますが、この改正を機会にいたしまして、役所の側にもいろいろ反省すべき余地はあると思いますので、それを改めまして、今画龍点睛を欠くというお話がございましたが、さようなことにならないように決意を内に秘めてこの問題の解決に当って参りたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/31
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032・足鹿覺
○足鹿委員 もう幾ら申し上げてもきりがないほどたくさん問題があるのですが、あとは事務上の問題等に関連して各個審査のときに局長なり関係者にお尋ねいたします。今申しました悪い面だけではないのです。今言ったように局長の郷里の愛媛県のある村においても、そういう事例を私は聞いておるのです。ですからいい運営に右へならえするためにはどういう措置が必要かという点について、その線から法の改正が行われるべきであるにもかかわらず不徹底だということが結論づけられるのです。いい者、正しい者がこの制度の場合においては特にばかを見ているという点をお忘れなく御善処を願いたい。大臣のただいまの御答弁によりますと、伝家の宝刀だからなかなか抜いちゃいかぬ、がしかし今度はやることも考えている、こういうことですが、それは第何条でやれるのですか。どういう条項でやるか、はっきりして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/32
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033・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 自由解散ができるのは四十六条の三で行政庁の認可を得なければならない、こういうことです。それから第百四十二条の六の第三項に「農業共済団体が前条の規定による命令に違反したときは、行政庁は、当該農業共済団体の解散を命ずることができる。」という規定があります。これは従来の八十条第四項に相当するものであります。従来からそういう規定はあったのでありますが、任意に解散したいといっても行政庁が認可しない。いつ起るかもしれぬ災害があるから認可した例はないのであります。それから会計検査院等が指摘した場合に、御指摘がありますような前の段階で不当事項が指摘されて役員の改選をやったけれども、改選された新しい役員がまた同じ悪いことをしているという場合に、一ぺん組合を解散して、もう一ぺん農家に考え直す必要があれば考え直してもらう、またそういう場合には市町村に運営を移行してもらう、こういうことは当然今後考えていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/33
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034・足鹿覺
○足鹿委員 局長の答弁の最後の問題です。もし公的機関が指摘をして不当な運用が行われておったという場合には、八十条四項の解散権を発動してやるのだというが、従来もこの規定はあったけれども一つも行われていない。今まで私が市町村移譲のときの特例の場合に何べん追及してもそういうことはおっしゃられなかったでしょう。あなたが今その二とを言われたからといってこれが行われるものではない。だから市町村移譲の特例基準の中にはっきりそういう条項を指摘して根拠を示さなければ、大臣は伝家の宝刀だからなかなか抜けないと言うし、あなた方も今の八十条四項でやるつもりではおってもまだ一つもやっておらぬ。だから信賞必罰というような言葉が世にありますが、この制度に関する限りは信賞必罰は地を払って全くないのですよ。そこに農民の不信が起きてくる大きな根底がある。ですから少くとも市町村移譲の画期的な特例を認める以上は、私が今まで指摘したような事情のもとにあっては、はっきりこれを解散してこれを市町村に移譲して農民の福祉に沿うように今後の機構を整備して新発足をせしめるのだという必要な措置を講ずべきだと思います。その点を大臣はどういうふうにお考えになっているかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/34
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035・井出一太郎
○井出国務大臣 ただいま御指摘のような方向において善処いたしたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/35
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036・足鹿覺
○足鹿委員 大体私の農業災害補償法に関する大臣に対する質問は以上で終りますが、来週から各個質問の際に同僚とともにさらに追及してみたいと思っております。
私の結論として申し上げたいことは、農業災害にも二つの範疇があると昨日質問の前提で申し上げました。それは今まで問題になりました自然災害に基く農作物の災害に対しての問題でございますが、農民生活の面から申しますと、他に最近大きな災害がどんどん増大してきておる。それは国土の建設並びに開発と農業政策との競合の問題です。これは農業災害補償法とは直接の関連はございませんが、私は最近他の委員会においてあまりにも多くそういう事例を見聞しておるので、この機会に農林大臣に申し上げて今後善処していただきたい。それは昨日統計調査部の資料を調べてみますると、人為災害いわゆる道路だとか、ダムだとか、あるいはその他住宅だとかそういったものにつぶれていく昭和三十年におけるつぶれ地が、田畑合せて一万二千三百四十五町歩、三十一年においては一万一千四百二十八町歩、ところが自然災害、風水害によるところの災害率は、三十年において三千二百四十五町歩、三十一年においてはやや減って、二千四十二町歩に減っておる。すなわち農業の災害率は、自然災害よりも人為災害の方が、農地、田畑のつぶれ地の面から判断をした場合には大きいということです。それをもって全部を類推することはできませんが、最近の国土開発の現状から考えてみて、これはきわめて重大な問題だろうと思う。建設省所管についても災害復旧の進捗状態というものは、二十五年においては八六、二十六年で七二、二十七年で七〇、二十八年で五六、二十九年においてはわずか二八%しか復旧をしておらない。この災害未復旧が、一たび大きな災害に襲われた場合には、直ちに累積をして大きな農業災害となって現われておる。農作物はもちろんのこと、農民経済を危うくしておる、こういう事態になっておるのです。でありますから人為災害の面からも、自然災害の面からも、農業災害対策というものは、農林省という一つの範疇からものを判断するのみならず、広く国土の開発、国土の建設という面から問題をとらえて、総合的な措置を講ずる大きな転機に来ていると私は思う。特に申し上げたいことは、重要公共施設の実施に伴って農民の損失補償が問題になっておりますが、これはただいま申し上げたような全国的な農業災害補償とは異なって、地域性はありますが、ひとしく農民の災害という面におきましては、その原因のいかんを問わず重要な問題だと私は思う。公共事業の重要性は、雇用の面からいって六百万に近いところの潜在失業を持っておる農村において、私は公共事業の重要性を否定するものではありません。しかし主として公共事業において被害を受けるのは農民である。利益を受けるのは広く一般の者であり、また一部の人々にすぎない。大規模な公共事業の施行に伴う用地の問題等は、土地収用法の適用によって解決をはかるのみでは困難な状態が来ておる。たとえば愛知用水工事がいまだにもたもたして着手できない一つの原因は、水没農家に対する補償の問題が一つの原因になっておることは私はいなめないと思う、他に大きな資金の問題等いろいろな点もあると思いますが、そうした場合において、現在適用されるのは、かえ地収用を認めておりませんから、御岳ダムの犠牲になる農民が遠く愛知県に移住していくといっても、それは新規開拓地にほうり出されていく以外にはない。補償金をもらっても、多くの事例が、年数がたつに従ってその金はちゃらんぽらんでなくなってしまう。そうして結局農地から離れて、いわゆる木から落ちたサル同然になって知らぬ土地に行って苦しんでいる、こういう実情です。生産資金の貸付なり、営農の指導なり、国有財産の払い下げといったような一連の立法措置が一つの基準に基いて行われなければ、この人為災害に対する解決はできないと私は思うのです。力の強い農民はある程度の補償も取り、いろいろ受けますが、少くとも農民は金を取るだけでは満足できない。いわゆるかえ地をもらって、そこに一つ新しい営農を出発するという措置に欠けておるのです。現在の土地収用法では何ら解決がつかぬ。こういう公共施設に伴う農民の損失補償の対策は、これは農業災害補償法と直接の関係はありませんが、最近の国土の開発、建設に伴って、今後頻発してくると思うのです。たとえば河川の保全と開発を目的とするところの多目的ダム法が過日成立した、道路の整備は道路整備特別措置法によって有料道路が行われ、道路公団が発足した。今度はその有料道路の最たるものとして日本を縦断する国土開発縦貫自動車道建設法が成立した。この根幹道路に対して肋骨の役割を演ずるところの高速自動車道路建設計画が実施の緒につき、名古屋—神戸間はすでに三十億の建設費をもって出発しようとしておる。滋賀県の農民も、この沿道の農民はこれに必死の抵抗をしておるが、公共性の面からして最後までこれを阻止することはできないでしょう。だとすれば、現在の土地収用法のごとき古い——最近若干の改正は行われておりますが、古い立法をもってこれを律することはできないと私は思う。国土の開発に伴って沿道の農林資源が開発されるということはいなめませんし、またその公共事業によって雇用の面に大きな貢献をすることも否定できません。でありますから、農民の個々の抵抗によってはこれを阻止すべき何ものもない。ただ抵抗の強い者は大きな補償を受け、力のない者は泣き寝入りになるというような現状が各地にあり、このこと自体が用地の接収等に大きな支障になり、国土の開発と建設に非常な支障になってきておる。これに対しては、少くとも農林省がその推進力となって、農民の立場からする国土の開発と建設に伴う損失に対する一つの基準を設けて、その基準のもとに泣き寝入りや不正不当な抑圧を受けないように、そうして結果としては国土の開発と建設が推進されるような方法が講ぜられなければならぬと私は思うのです。農地の転用基準を作るというようなことは、その次の問題ですよ。もっと大きな問題があるはずです。林野庁長官がおいでになっておりますが、国土開発縦貫道路の建設をすることによって未開発森林が非常に莫大な開発を受けるということを建設委員会で林野庁長官は説明しておったそうであります、私は直接聞きませんでしたが。そういう方面で、林野の面においてもあるいは農耕の面においても、国土の開発の前進によって農民が利益を受ける面もあるでしょう。でありますから、私は一がいにこういう面を否定はできないと思いますけれども、少くとも今までのような措置では、建設は、資金の面にも問題があるが、実施上においておそらく農民必死の抵抗によって、なかなか問題は解決しないと思うのです。これらの点については、すでに先進国であるイギリス等においても、工業配置法を作っておる、新都市法を作っておる、地方計画法を持っておる、都市開発法を持っておる、そうして日本における首都圏整備法の構想と同様に、小都市産業都市圏の構想を中心として、都市の過大防止を一面において行うとともに、人口の調整の面を行う、そうして完全雇用の面や国土の計画的開発を行なって、究極においては農工が一致していくような施策を講じられなければ、今の日本の農林行政というものは、少くともその視野においては懸命の努力を払われておりますが、大局に立ってみたときにはすべてが防戦の立場に立ち、すべてが一歩後退してだんだん追い込められていくような結果になっておる。これをもっと大きな視野に立って、国土の開発や建設というものとにらみ合せて農村の次三男の雇用の問題、完全就業の問題あるいは日本の全体を通じての生産力の向上の問題、ひいては農業に対するところの人為的災害対策の一問題に還元をして、大きな見地から措置が講じられなければならぬ段階がきておると私は思うのです。
今まで長時間にわたって農業災害補償法の質問を申し上げましたが、最後に私お尋ねしたいことは、国土の開発、建設に伴う公共事業の実施に伴う農民の損失、この問題に対して土地収用法以外の立法措置、あるいはその他必要な措置等を講じて万全を期せられる御構想があるかどうかという点を農林大臣にお尋ねを申し上げ、その御所一信を聞きまして私の質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/36
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037・井出一太郎
○井出国務大臣 足鹿委員から農災法改正に伴う自然災害の問題と関連をいたしまして、ただいま御指摘の人為的な土地の壊廃の問題を御提言になった、わけでございます。これは日本が近代国家として発展をして参ります趨勢から申しますと、農民の立場を墨守して、いたずらにこれを阻止するというわけには参らない点は御指摘にもございました。従ってこの段階におきましては、こういう問題を国土総合開発の観点とにらみ合せまして抜本的に考えなければならない段階にきておるということは、私も同感でございます。今具体的に、しからばどういう立法措置を用意しておるかと申されましても、まだお答えをいたす段階ではございませんが、ただいまるるお述べになりました点等を十分に勘案をいたしまして、その用意を始めなければならない、こう考えますので、農林省としても問題を取り上げて十分検討を進めたい、こう考える次第でございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/37
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038・田口長治郎
○田口委員長代理 石山權作君。大臣との約束時間が経過しておりますから、五分以内で一つお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/38
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039・石山權作
○石山委員 昨十九日に私たち森林法の一部改正の法案を通しました。そのとき森林育成に関しまして七つの問題をば掲示しました。それは与野党ともに共同の付帯決議をつけたわけですが、おそらく大臣は最近少し忙しいので目を通していないかもしれません。しかしこの付帯決議の中身をしさいに検討していきますと、おおむね予算的裏づけがなければこれは遂行できない。そういうふうな面から見て、きのうの閣議で仲裁裁定が決定を見ているのでございます。それで、三公社五現業ではそれぞれ団交などを開いて、これは組合と相互で問題を提示するだろうと思いますけれども、農林大臣は閣議でどういうふうな格好でこの仲裁裁定をのんできたか、これを一つお聞きして私は話を進めたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/39
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040・井出一太郎
○井出国務大臣 今前段で申されました森林法改正に伴う付帯決議の問題と、それから今回の国有林野関係の職員の給与の問題、仲裁裁定の問題とどういうふうな関係で御発言になりましたか、その辺がちょっとわかりかねるのでございますが、もう一度。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/40
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041・石山權作
○石山委員 あなたが長官とお話しになっておるから私の言うことを聞き取れなかったと思うのですが、つまり森林法の一部改正でもお金が使われていない。それからあなたが閣議決定をそのままうのみになってきますと、ここで予算措置以外の金が、これはあなたの方の勘定からしますと約十四億八千万円、ぼくらの推定からしますと約十七億五千万円くらいの予算措置以外の金が必要になってくるわけです。私はそこをさしておるのですよ。金がかかるところへあなたは予算措置を講じない重荷を背負って閣議から来たということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/41
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042・井出一太郎
○井出国務大臣 この決議とそれから裁定をのんだこととの関連性が私にはちょっとわかりかねるのですが、それはそれとして、今回の仲裁裁定を実施するに当りまして、国有林野事業特別会計といたしましては、別に補正予算を組むことなく、内部の移流用によりましてさまざまの工夫をこらしまして今回の裁定を実施するに足る財源措置を講じまして、そうして昨日の閣議で決定をいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/42
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043・石山權作
○石山委員 足鹿委員の質問で、大臣は頭の切りかえをするのにちょっと困難を感じておるようですが、もう少し落ちついて聞いていただきたいと思います。一つは千二百円の仲裁裁定が出ました。それに今回あなたが受け取ってきたのは千百七十七円という工合になっております。この理由はどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/43
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044・井出一太郎
○井出国務大臣 裁定は、ただいま御指摘のように千二百円でございますが、すでに従来林野の給与といたしましては、よく予算単価と実行単価というふうなことを申しますが、二百十一円というものが内部の操作によってよけいに支払われておったわけでございます。これは国鉄とか電電とかいうふうな部類においてはもう少しよけいに支払われておったようでございますが、政府の方針としましては、これを三年間に解消する、こういう方針のもとに、従来過払いされておりました二古十一円を三分いたしました金額を裁定の中から差し引いた、こういうことで決定をいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/44
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045・石山權作
○石山委員 私それはちょっとおかしいと思うのです。過払いであるというふうな条件で受け取っていないと私は思います。たとえばやみ給与というふうな問題ですが、雇用主あるいは資本家的な立場にあって、実際の権限をふるう人が出した。こういうふうな問題になってきますと、これはやはり正尚な賃金として職員は受け取っている。決してこれは過払いではないと思います。あなたはそうすると、世上一般に言われているやみ給与というふうなまのを認めて参ったわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/45
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046・井出一太郎
○井出国務大臣 今回の裁定の趣旨九ら申しますると、さように払うことが適切である、こういうのが閣議の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/46
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047・石山權作
○石山委員 そうしますと、一体働く人が、上司の方—あなたがいないときはおそらく林野庁長官が相手になるだろうと思いますが、そこで固く約束をされまして、そしてあるときは文書にされ、あるときは信頼感があれば口頭でもいいと思いますが、そこで約束されたものがほごにされたとなると、これは人事行政上あるいは労務管理上、どういうふうな影響を与えると考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/47
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048・井出一太郎
○井出国務大臣 今石山委員からやみ給与というお言葉が出ましたが、従来予算単価と実行単価に、食い違いのありましたことはお認めをいただけると思うのであります。それを、今回裁定の出ましたのを機会にいたしまして調整をする、こういうことに相なった次第でございます。まあ従来が特別会計でありましたがゆえに、さような措置が講じ得られたと思うのでありますが、これをこの機会に是正をいたす、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/48
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049・石山權作
○石山委員 実行予算と普通の給与予算というふうな問題は、これは働く人が分けていただいてるのではなくして、あなたの方で操作なすって、約束をして、毎月きちんきちんと給料袋に入れて、所得税を前もって取って、そうして払っているのでございますから、世上ではそれはやみ給与であるとかなんとかいうような判定をしても、まじめに働いている職員は、これは正しい給与だ、間違いのない給与だというふうに考えてもらっているわけなのです。そこへ実行予算が云々であるとか、こういう言葉だけで私は割り切ることができない。もしそうだとするならば、あなたの方で完全に職員を偽わった給与を、辞令をば出していた、こういうことにもなりかねないのですが、そういう点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/49
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050・井出一太郎
○井出国務大臣 従来払っておりましたものが、受け取る側と支払う側との協定に基いてそういう額が決定をしたのであるから、正当な給与であるという御主張でございましょうが、今回の裁定実施の結果、千二百円をあげるに当りまして、従来の——過払いと先ほど申し上げましたけれども、これを調整をしたのでございまして、決してこれを機会に実質給与が減るのではないのでございます。でありますから、私はこれをもって林野の職員の諸君に御了承を得たいと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/50
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051・石山權作
○石山委員 お金というものは、そういう御答弁によってふらふら動かされたのではかないません。お金というものは厳格なものでございますから、もし協約の中で、この次給与改訂があった場合には、この二百十一円をば、何カ年かあるいは月賦でお返しをいたしましょうとでも、何か書いてありましたか。それならば、一応私は筋は通ると思う。そうでなかったら、あなたの方ではうそを言ったということになると私は思う。職員にうその給与、辞令を渡しておったと言っても、私は過言ではないと思う。それでは、どこに法的な政府の権威がありますか。あなた方は品を開けば、たとえば今回の三公社五現業の争議の問題でも、法に照して断固として処罰すると言うが、一体職員に対して、事一番大切なお金の問題について、そういうふうに最初からうそ、偽わりをやってもいいものかどうか。おそらく大臣はこまかいことを知らぬと思うのですが、法律に対する信頼性というふうなもの、これは行政官庁としてこれしかよりどころはない。その手足となって働く職員に、あなたたちがうその辞令を出したり、うその労働協約を結んだり、労働条件をつけたりしたならば、これはどうなります。そういうふうな一つの法律論みたいなものの合理性を、私あなたからお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/51
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052・石谷憲男
○石谷政府委員 先ほどやみという言葉が出たわけでございまするが、林野事業におきましては、他の公社あるいは現業にあり得たように聞いております、いわゆるやみ的な給与の増額というものは、実はいたしておらなかったわけでございます。御承知のように予算単価と実行単価と申しますか、実払いの単価との間の開きが、実は基準内賃金として二百十一円あるという実態が明らかになっているわけでございます。そこで、一体これらのものを三年間に整理をするということの当否という問題はあると思いますが、やはりあくまで実質的に払われる賃金なりあるいは俸給というものは、予算単価に合せるという運用を、企業としてはいたすべきであるという趣意からいたしますならば、これはやはり合せる方向の努力をすべきものであるというふうに考えまして、それらの差額を三年のうちに解消しようということで、それらのものが、今回の裁定のありました千二百円というものから、それだけ差し引かれて計算されている、こういうことに尽きるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/52
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053・田口長治郎
○田口委員長代理 石山君、簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/53
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054・石山權作
○石山委員 特に今回五現業の場合、欠員を補充して、そして賃金を上げてもらったという一応の統計が出ております。いわゆる欠員ですよ。人数の欠員。その欠員によるということからしましても、定員が不足であった。しかし定員分の仕事を働いたから、あなたの方ではその分をおあげしたという理屈になるのではないですか、受け取る方から見れば……。ですから、どこから見てもこれは正当なものであるし、お返しするような筋合いのものではなかった。お返しをするというならば、お返しさせるという約束を、それじゃ前もってしてあったかどうか。それがなければ既得権の侵害ですよ。特に給与というものは職員からすれば、その日その日の一番大切な命のかてなのでございますから、こういうような既得権を簡単に侵すということは、私ははなはだ理解に苦しむ。大臣は最近決算委員会などでいかれちゃって、あまりこまかいことはおそらく頭も回らぬと思うのでありますが、予算の総額を私一つ引きまして御所見を承わりたいと思いますが、先ほど私森林法の問題を取り上げました。そしてこれにはお金がかかると言っておるのです。そして閣議であなたが受け取ってきた問題としまして、いわゆる予算内のお金を今度は事業費の中から出さなければならぬというのですが、事業費の中のお金が常勤職員では一億五千四百万、賃金労務者に関しては十三億二千七百万というのかあなたの方の推定。私の方の推定からしますと、常勤者は一億八千万、賃金労務者が十六億六千五百万、そこで大体安く見ても十五億程度は必要になるわけなんですよ。そうしますと、去年とことしの林野の特別会計を見てみますと、約二十億三千万くらいしかふえておりません。これがことしの新しい林野行政の一つのめどだと思う。この二十億からたとえば十五億とられると、目新しいものは何もなくなるではありませんか。そういう点から、森林法などで特に私の方で要望をつけているということは、予算との問題がからみ合うから私はそういうことを言っておる。ところがせっかく森林行政をうまくやろうとして予算を去年よりも少し多くとった。特別会計だから予算を多くとらなくても、あるいはうんと高く物を売って収益を上げれば、これも使い得るかもしれません。しかしいずれにしても、予算項目がそれぞれにふえておって、二十億くらい大体ふえた。しかし今回あなたの受け取った十五億という金は、事業費の中から出さなければどこから一体出すのです。補正予算をなぜ組むようにしないでそのまま受け取ってきたかということを私は聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/54
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055・井出一太郎
○井出国務大臣 昨日の付帯決議は、森林法に伴いまする民有林の問題でございますので、これがかりに金がかかるという場合は、事一般会計の問題でございますから、これと国有林野特別会計の問題とは直接は関連がない、こう考えておるのでございまして、それが私冒頭にさらにお尋ねに対してこちらがもう一ぺん念を入れて承わった理由でございます。そこで林野の中におきましては十数億と言われましたが、そのうち予備費の流用もございますから、実際におきましては十億余りを事業費の中から移流用をするということに相なります。この点は種々勘案をいたしました結果、内部の操作をもってしてまかない得る、こういう結論に到達をいたしましたので、あえて予算要求をせずに、これでまかなうという腹をきめた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/55
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056・田口長治郎
○田口委員長代理 石山君簡単にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/56
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057・石山權作
○石山委員 簡単に聞いておるつもりでございます。そうしますと、林野庁の予算というものは、ずいぶん何か含み資産を持った予算の組み方ということになりはしませんか。たとえば十五億というお金をあなたの方の項目から拾ってみますと、官行造林費が十三億六百万円という項目がある。官行造林を全部やめると一緒でございますよ。簡単なものではない。十五億というお金は、そのほかに労務厚生費一億五千七百万、これを加えて約十五億でございますよ。ですからあっちから持ってくる、こっちから持ってくるということは、最初からそうするとテン・パーセント程度含みを持たして予算を組んでいるというようにわれわれ見なければならないのではございませんか。その点はいかがでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/57
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058・石谷憲男
○石谷政府委員 要するに補正予算をなぜ組まなかったかという問題と、それから内部の移流用というものでやっていく場合に、どういう見当でおるかという御質問だと思うわけでございますが、補正予算をやるということをいたしますと、当然これは補正の財源を必要とするわけでございまするが、現状をもっていたしまするならば、さまざまな方途を講ずるといたしましても、確たる補正の財源を得る見通しにつきまして非常に問題があるということが実は補正予算で取らなかった月収たる原因であろうと思うのでありまして、補正予算によるにあらざれば、あくまでも成立予算内の移流用で行くということにいかざるを得ないということはこれまた当然でございます。そこでただいま大臣から御答弁があったのでございまするが、私どもが提示されました仲裁案に従いまして忠実に計算をいたしたところによりますると、定員内常勤作業員及び常用作業員以下のすべての職員に対しまして、今回の仲裁を忠実に実施するといたします場合の措置すべき金額は、約十八億六千六百万円弱になるように私どもは計算をいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/58
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059・石山權作
○石山委員 ちょっと発言中恐れ入りますが、大臣が大へん忙がしいそうでございますが、予算に関する問題でございますから、あなたにもう少しお聞きしたい。大臣に私は気をつけていただきたいことは、法律でいうと架空なものでしょう。お互いが信頼してこそ法律というものが生きてくるのです。ですからあらたの方で法律を簡単に破るというような建前をとれば、自然とみな破るというようなことになる。もし片っ方だけ法律強行ということになると、犠牲者ばかりえらい損するということになる。それをはね返すために労働組合という大衆団体がいやでも応でもある点まで頑張らざるを得ない。そうすると、あなたたちはこれを称して法律の違反だと言いますが、私はそれではいかぬと思う。この点は十分考えて今後の団交に臨んで収拾策を講じていただかなければ、いたずらに紛争が起る。私はこういうことを一応申し上げまして、大臣はお帰りになってもよろしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/59
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060・田口長治郎
○田口委員長代理 大臣、どうぞお帰り下さい。
〔「大臣、善処するかどうか答弁を」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/60
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061・井出一太郎
○井出国務大臣 石山委員の御発言、よく承わりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/61
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062・石谷憲男
○石谷政府委員 約十八億六千六百万円ばかりに相なろうかと思うわけでございまして、これらのものに対しましては、成立予算の事業費の関係の流用が約十億六千万円でございます。その他ごく一部のものをのけまして、残りのほとんど全額は予備費の使用ということで内部の取り計らいをやって参りたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/62
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063・石山權作
○石山委員 これは話の順序からしますと、閣議では大蔵大臣が非常に幅をきかした。それでいや応なしにわが農林大臣はのまされた。そして三段論法で、実際今度は仕事の衝に当るあなたものまざるを得ないような格好になってきた。私はそういうような順序はやむを得ないというふうにも考えますけれども、しかし数字とかお金というものはほかのことと違って、あいまいな色を引いてそれで済むようなものではないのです。法律の解釈とかいろんな点はだんだん移っていくとあいまいになる場合はたくさんある。しかし事お金と数字の場合はどこからどこへ移っても動くべきものではない。特にお金の場合は動いたら大へんである。特に生活費であるお金が動いたらこれは重大である。あなたが一生懸命おやりになって森林行政の実績を上げようとしても、今のような受け取り方をしたのであっては、決して森林行政の実績というものは上らないのではないか。特にいろいろな予算項目から少しずつ寄せ集めて、結局十億くらいのお金をここに用意する、こういうことは、あなたが幾ら弁解されてもどこかに抜け穴を持っておる、だれも知らない法王庁の抜け穴をあなたは用意している、あるいは普通言っているところの含み資産というようなものを随所に隠しているというような印象を与える。特に国有林の場合は地積が膨大で、扱う物件なども巨大である。ですからそこには、悪い目で見たら裏からものを見るような考え方がある。そういう事例が大へん悪い評判を生むのではないか。あなたがまじめに少しでも予算を減らして、ここで前通りの実績を上げていく、こういうのは、考えてみればあなたの立身出世主義だけはうまく立っていくかもしれない、しかし実際現われてくる面から見ますと、職員のたとい二百十一円なりとも犠牲に供せられるということと同時に、私たちにお約束し、そして国民一般にお約束している森林行政というものはある部面においてカットされることになるのではないか。あなたはそういう点では御答弁できるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/63
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064・石谷憲男
○石谷政府委員 二百十一円というものを各個の毎月の給与から差し引くというふうにお考えいただきますと大へん困ることでございまして、それだけのものがいわゆる予算単価と実質単価との間に開きがあったという現状を可能な限り短かい期間に、そうかといってその影響が具体的にあまりはっきり現われては困りますので、一応の目安として三年以内に両者がくっつくという運営に持っていこう、こういうはからいが今回のああいう措置だ、私どもはかように考えておるわけでございまして、そういうことに相なると、ある一定額まで今回の裁定によって賃金が高まっていく、給与が上っていく、それがある段階で足踏みするのではないかという問題は、今後のいわゆる昇給原資なりそれに合わせての昇給財源なりぐらいで考えていったらいいじゃないか、私どもはかようにこの処置を理解いたしておるわけでございます。
それからただいま何か含み資産的なものが林野庁の中にあってというようなお話でございますけれども、これはもうすでに成立いたしております予算の各項目について、一体どれだけのものが給与費の方に振り向けられる余地があり得るかということの結果出ておるわけでございますので、含み資産的なものというふうな御理解は一つこの機会にお取り下げいただきたい、かように考えるわけでございまして、この場合におきましても、あくまで補正予算でいくべきであるかどうかという問題、補正予算でいくべきだということに相なったといたしましても、一体補正の財源がこの段階で確実にとれるかどうか、ここに実は問題があるわけであります。私はやはり両者の比較論になってくると思うわけでございまして、御承知と思いまするけれども、現在まだ北海道の風害木の整理をいたしておる関係がありまして、増伐による補正財源の確保ということにつきましては、現在予定をいたしておりまする伐採量自体も、いわゆる調整年伐量と申しまする国有林野事業として一応目標にいたして経理をはかっておりまする数量に対して一割一分の増伐をやむを得ずいたしておるという現況でございますので、この段階で増伐を取りやめるわけには参らない。それから明年度に越しまして売り払います材木、この予定でございますが、いわゆる経常的なランニング・ストックというものがございますが、こういうものの売り払いを繰り上げてやっていく、この売り払いによるものを補正予算財源にして組むという組み方もあるのじゃないかということでございますが、これにつきましても現状は約一カ月のランニング・ストックを持って越し得るというのが三十二年度から三十三年度への大体の予想でございます。通例は約一カ月半ないし二カ月は少くも持たなければならぬという状態が、風害木の整理事業以来こういう影響がきて三十二年から三十三年には百四十万石しか越せない、こういうことになりますと、経常的な運営をはかっていくランニングとしては少いということに相なるのであります。
もう一つの問題は、要するに本年売り払いましたものを年度を越して収納する延未納というものがございますが、そういうものを繰り上げて収納したらどうかということも実は補正を考える財源としては考えられるのでございます。これにつきましても、—大体これは平常に復しております。復しておりますけれども、来年度当初のランニング・ストックは事業の着手前に現金化いたしまして、これがいわば運転資金として来年度の事業のもとになってくるわけでございますが、その材料が少いだけにやはり金で越すものをあわせて考えなければならぬという見地からいたしますと、これの繰り上げの措置による補正予算の財源というものについても難点がある。
あれやこれや考え合せまして、この段階で補正予算の財源というものを得るごとく処理いたしますことは、今後の長い期間にわたる経営という立場に立ちました場合に、やはり支障があるということに相なりますので、しからば一体成立予算の中でそれだけのものを生み出していくと申しますか、余地がないものかどうかということを検討したのでございますが、御承知の通りと思いますけれども、国有林野事業の運営と申しますものは、あくまでも事業による収入というものが一切の活動の源泉になっておるわけでございまして、この事業収入のうちの九十数。パーセントまでは木材の売り払い代金でございます。従いまして木材市況がよかったり悪かったりすることによりましてやはり国有林野事業そのものの運営の仕方が大きく動かされてくる、こういうことに相なるわけでございます。何といたしましても多数の職員を擁しておる事業でもありますし、とにもかくにも計画的にも事柄を進めて参る必要があるということで、この段階の条件からいたしますと、大体昭和三十年度の予算規模は四百十億円程度で収支相均衡した予算になっておりますが、この予算規模の中で確実に実行し得なければならぬような仕事はこれはやはり計画的に今後もやって行かなければならない。大体昭和三十年度あたりに実行いたしました仕事が、今後とも一般情勢の好転あるいは不況にかかわらずやっていく仕事の目標として置かれておる仕事でございます。それに対しまして幾らかでも条件のいいようなときにおきましては、仕事の繰り上げ実施をもいたす、こういうふうな考え方を実はとって参っておるわけでありまして、昭和三十二年度におきましては若干材価の好転が期待されておりますので、従いまして多少の各事業の繰り上げ実施を計画いたしておったわけでございますが、この中におきましても将来の生産等に直接的の影響のないようなものにつきましては、この機会に適当にその繰り上げ計画を見送るというようなところに財源を求めますとか、あるいは官行造林事業のごときに対しましても従来の実績は昭和三十年、三十一年とも大体一万三千五百町歩くらいの実行をやって参っております。そのうち水源造成というのを約五千町歩含んでおるわけでございますが、昭和三十二年度の予算におきましては、特に水源林の造成事業というものが緊急であるという事実認識の上に立ちまして、しかも一方において多少財源的な余裕があるという意味合いも含めまして、一挙に二万四千町歩にまでふくらました予算が編成されているわけでございます。その結果十三億何がし、昨年当りと比べますると約四億、五億くらいの金がふくらんでおるわけでございます。私どもといたしましては、ただいま申し上げましたように、とにもかくにもこの水源林事業というものを大幅に広げて、一斉にやって参るということが日本の当面する林政上の問題として必要であるということの上に立っていろいろ準備をして参ったわけでありまするけれども、何といいましてもこの水源林造成を主体にいたしました官行造林事業の推進には、前段の問題といたしまして、土地の所有者との間に契約を先行させなければなりません。過去において、この事業についてやって参りました契約を振り返ってみますと、どうしても年間六千町歩くらいのものについては、これが不実行に終るというおそれがあれば、それに見合う措置として、引き当て財源として考えても差しつかえなかろうと思っております。
それから買い上げ保安林の治山事業費というものにも一部財源を求めておりますが、これらに対しましても、あくまでも実情に合わせるということで、一応毎年計画の線で問題を押えていく考えでございます。ただいま申し上げましたように、決してふくらましておるわけではございませんけれども、多少でもできるときに急いでやっておく方がいいじゃないかというものについては、予算的にそういう計画をいたしておるという項目もあるわけでございます。そういう項目を拾って、その中から可能な限りのものを出して参る、そうして、どうしてもそういうことのできない事業ももちろんあるわけでございますから、そういうもので足らないところにつきましては予備費の使用を考えるということで、総額十八億六千万円をまとめたわけでございますが、その方が、ただいま申し上げました補正財源のみつかり方の非常に至難な条件下にありまする現在において、補正予算を組むよりもいいのじゃないかという見解に立っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/64
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065・石山權作
○石山委員 臨時閣議決定後あなたの方で林野の組合の方とお話したことがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/65
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066・石谷憲男
○石谷政府委員 昨日の午後の臨時閣議のことだと思いますが、その後まだ全林野の組合と話したことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/66
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067・石山權作
○石山委員 今度団交をやりまして話し合いを進めても、しばらくの間皆さんはおそらく不信の念を持って見られるだろうと思います。いろいろな了解運動をやらなければならぬということと同時に、皆さんの方では、断固として処罰するということも掲げるような気配が背後にあります。そうしますと、働く人には、長官やあるいは農林大臣、政府というふうな架空のものですが、一体こういうふうなもののどこに中心を置いて信頼すればよいかという迷いが出てくると思う。こういう迷いが大衆運動にとっては力強い実行力になって現われるというのが在来の経緯でございます。ですから、皆様は、まず第一に手を尽して今までの経緯をよく説明して、特に担当の方々のお話し一合いですからわれわれの知らない血の一流れのような融和のある面もあるでございましょう。そういう点も大いに利用して、まず第一に信頼を取り戻すということが大切なのではないか。そしてその理由がよく納得されればよいだろうと思うのですが、なかなかそれは困難だと思います。私自身今あなたの御意見を聞きましても、最初から受け取る感じとして、約束を守らない、こういう印象を受けてしょうがないのでございます。この約束を守らないというのが、法律をたてにしてしょっちゅう問題を提起して片づけていく行政当局だけに、特に私そういう点は惜しいと思う。そういう点を組合の方々が理解できないとするならば、これからの仕事はうまく進んでいかないというように考えるのでございます。一つは、皆さんの意図する予算上の問題がうまくいくように努力してもらいたいということ。なかなかこれはうまくいかぬと思うのですが、まず努力してもらいたい。もう一つは、職員の方々とよく話し合って、混乱のない収拾策——既得権を犯したような収拾策、あるいは協定を背景にしたような、自分たちのみが法律あるいは規約を建前にとるような考え方でこの問題を進めていきますと、思わぬところに予測しないような混乱が起きてくる可能性が相当あるのではないか、こういう点をお話ししまして、これで終りといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/67
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068・田口長治郎
○田口委員長代理 本日はこれをもって散会いたします。
午後一時二十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605007X03219570420/68
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