1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年三月六日(水曜日)
午前十一時四十七分開議
出席委員
委員長 長谷川 保君
理事 赤城 宗徳君 理事 高村 坂彦君
理事 坂田 道太君 理事 米田 吉盛君
理事 河野 正君 理事 佐藤觀次郎君
杉浦 武雄君 田中 久雄君
塚原 俊郎君 永山 忠則君
並木 芳雄君 濱野 清吾君
山口 好一君 小牧 次生君
櫻井 奎夫君 高津 正道君
平田 ヒデ君 小林 信一君
出席国務大臣
文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
出席政府委員
文部政務次官 稻葉 修君
文部事務官
(大学学術局
長) 緒方 信一君
委員外の出席者
文部事務官
(大臣官房総務
参事官) 齋藤 正君
専 門 員 石井つとむ君
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三月五日
大学院育英関係費増額に関する請願(伊藤卯四
郎君紹介)(第一六七八号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一七号)
教育制度に関する件
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001・長谷川保
○長谷川委員長 これより会議を開きます。
国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題とし、前会に引き続き質疑を行います。なお、文教行政に関する質疑もあわせ行います。質疑の通告がありますので、これを許します。永山忠則君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/1
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002・永山忠則
○永山委員 中央教育審議会が短期大学制度の改善について答申を出しておるのでございますが、これに対して文部省のお考えはどういうような取扱いに進もうとするものでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/2
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003・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 お答え申し上げます。短期大学につきましては、お話の通りに文部省といたしましては中央教育審議会に諮問をいたしまして、その答申をいただいておるわけであります。その答申の概要を申し上げますれば、まず短期大学を四年制大学と別個の目的使命を持つ高等教育機関として恒久的な制度にするということ、修業年限は二年または三年とするが、一貫して充実した専門教育を授けるために必要がある場合は、現行の奇等学校課程を合せて五年または六年にすることができる、かような趣旨の答申があったわけであります。文部省といたしましては、この教育審議会の答申を十分尊重しなければならぬと考えておる次第でありますが、なお、この問題につきましてはいろいろ意見もございまするので、諸般の事情を考慮いたしまして慎重に検討をしておる最中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/3
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004・永山忠則
○永山委員 これに対しまして、日本私立短期大学協会等では必ずしも全面的な賛成の意見でないようでありますが、これらの私学側の意見についてのお考えはどうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/4
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005・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 私学関係におきまして、ただいま申し上げました答申の趣旨に必ずしも同調しがたいというような意味の御意見があるということは承知いたしております。これらの事情も十分に勘案いたしまして、文部省といたしましては結論を得たいと思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/5
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006・永山忠則
○永山委員 これらの事情等をよく勘案して中教審の答申を尊重していかれるという文部大臣の意見を十分実現できるように、すでに答申があったのでございますから、一つすみやかにこれが具体的に実施されることを要望いたすのでございます。
そこで、高等学校を併置して三年制にするということも、また一つの行き方であるようにいわれておるのでございますが、教育学部の一年課程、一つの短大的なものでありますが、これに高等学校を併置して五年制にして、二年課程の教育を受ける者に教育専門的なほんとうの力をつけるといったような考え方については、どういうようにお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/6
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007・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 そのお尋ねの問題につきましては、私はまだ的確な結論を持っておりません。ただ教員養成の機関につきましては、いろいろ検討すべきものがあると考えておりますので、今後の問題といたしまして、教員養成機関につきましては一つ特別な研究をしてみたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/7
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008・永山忠則
○永山委員 教員養成に関して特別な考え方をもっていかれるということでございますが、二年課程の教員養成関係については、文部省は将来どういうように進んでいこうというお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/8
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009・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 教員の養成につきまして、今日御承知のように四年制度と二年制度があるわけでございます。これにつきましては、一般に教員の素質の向上と申しますか、教養の高い、いい教員がほしいという要望が高いように思われるのであります。かような意味におきまして、漸次四年制の方を充実して参りまして、二年制の方は漸減するというのが、今日文部省のとっておる方針のように承知いたしておるのであります。しかし、今直ちに二年制のものを廃止するとかなんとかいうふうな考え方をいたしておるわけではございませんので、私といたしましては、この文部省の方針に直ちに変えるとかいうことは考えておりませんけれども、ただいま申しましたように、教員養成機関については特に一つ検討してみたいと思っておりますので さような問題につきましても、あわせて検討して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/9
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010・永山忠則
○永山委員 二年課程の教員養成関係を漸減するということは、結論的には、これを廃止するという意味なのでございますか。いわゆる県の財政事情、国の財政事情並びに女子教員の養成関係等いろいろな面から見て、漸減という方針ではあるが、廃止ということまで考えておられるのであるかどうか、この点を一つお聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/10
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011・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 二年課程につきましてこれを漸減するということは、言いかえれば、四年課程の方を漸増する、こういうふうなことにもなろうかと思うのであります。一般的に申し上げますれば、四年課程を充実して参りたいという考え方をいたしておるわけでございますが、さりとて、二年課程のものを今直ちに廃止するとか、そういうふうな考え方はいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/11
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012・永山忠則
○永山委員 この点十分お考えを願いたいと思いますことは、かりに広島県で、現在四年課程のものだけで教員を充実するというようにいたしました場合において、八割は四年課程を経た資格を持っていないのであります。これが財政上に及ぼす関係を計算いたしますると、大体初任給で千円違うわけでありますが、期末手当等を一緒にいたしまして一人が一万五千円違いますと、広島県あたりで大体一万三千人ばかりの教員中一万人は四年課程でない地位におるのでありますから、これがやはり一億五千万円くらい負担が増してくるわけでありまして、国及び県の負担がそれだけ増すわけでございます。もちろんこれが一時にそうなるというわけではございませんけれども、今日地方財政が逼迫している県では、教員の充実が困難でございますから、現在でも、学級の生徒の基準単位数を非常に増加いたしまして、旧来複式でなかった学校が複式もしくは単式にどんどん転落いたしております。そこで、やむを得ず事務職員をPTAその他市町村で雇い入れまして、そうして便宜学級を受け持たすということで、この不備を是正いたしておるような現状でございますので、財政上の事情から見ましても、二年課程募集に急激な激減を来させるということはとらざるところであるというように考えられるのであります。
次に、文部大臣にさらにお伺いいたしたいのですが、教育の機会均等ということを言われておるのでございまするけれども、経済的にきわめて恵まれていないで、しかも優秀なる子供を持っている家庭が唯一に選んでいるのは、この通学可能な、しかも教育学部の二年課程を非常に選んでいるのでございますが、今日、教育の機会均等ということに対して文部大臣はどういうような施策と方針を持っておられますか。観葉をかえて言えば、家庭的に経済的に十分恵まれない層が、教育を受けてすくすくとその才能を高度に伸ばし得るという教育の機会均等に対する抜本的な考え方を聞きたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/12
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013・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 教育の機会均等と申しますことは、きわめて重要なことと考えておる次第であります。今日文部省といたしましてこの機会均等について何をしておるかということになりますと、お答えはかなり多岐にわたるような気持もいたすのでありますが、まずもって、学資の点につきましてできるだけ援助していくというようなことが一番おもなものになろうかと思います。同時にまた、しばしば私も申し上げることでありますが、今後の研究課題として頭に置いております問題は、各地方々々における教育機関の充実をはかっていきたい。何も一々東京都まで出てこなくてもよろしい、遠くまで出ていかなくてもよろしいという仕組みを考えてみる必要もあろうかと思うのであります。そういう意味合いにおきましても、こういう教員養成機関について何らかの考慮をめぐらす必要があるのじゃないかということも、実は頭に置いて考えているような次第であります。はなはだ雑駁なお答えで恐縮でありますが、小中学校における機会均等の問題というふうなことは省略させていただきまして、御質問の趣旨に近い点だけお答え申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/13
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014・永山忠則
○永山委員 教育の機会均等に対する根本的な政府の施策がないことをわれわれは非常に残念に思っておるのでございますが、せめて今回の予算面で、育英資金の関係をもっともっと資金量を増して、そして貸付金額を引き上げて、特殊的な、たとえば科学技術や教職関係というようなものに対しましては、一定期限それに勤務することによって、それが借入金返済の減免をするというような点にでも強く進んでいただきたかったのでございます。余談になりますけれども、神武天皇以来の景気ということは政府自身が言うのでありまして、実に三千億円という金を政府は国民から増収で取り上げておるのであります。今年一千億円、来年は二千億円というのが増収分として入ってくるのでございますが、にもかかわりませず、育英資金の方にはほとんどといっていいのであります、資金量が増してないというような点は非常に遺憾でございますが、せめて教育の機会均等の関係を普及いたしますものといたしましては、青年学級あるいは定時校並びに通信教育といったような方面にでももっともっと予算化することによりまして、ほんとうに恵まれざる家庭のよき子供を育成していくことになると思うのでありますが、それさえも実際はできていない。要するに弱い者だけはいじめていく、日当りの百悪いところだけは、ますます日当りをよくしないという結果に、今の財政の方針が進んでおるように言われておることは、われわれとしても党内できわめて不満を感じておるのでございます。大臣就任になられまして早々の間でございまして、やむを得ぬ点もあったでございましょうが、そこで私はそういう抜本的な考え方に至ることのできない現状から見ましても、教育の中央集権化、教育機関の中央集権化ということに対しては、賛成はできがたいのであります。
ことにただいま大臣のおっしゃいましたように、教員養成機関に対しての中央集権的な行き方に対しては十分検討してみようというお言葉を信頼するものでございますが、これをちなみに広島の教育学部の三原分校の二年課程の募集状況について申し上げてみますと、昭和三十二年度の入学試験の志願状況は、文部省はこれを六十名に限定をして指示をしておるのでございますが、百五十名の志願があるのでございまして、そのうち、大臣はよくおわかりになると思いますが、通学可能なる範囲の応募というものが百七名でございます。すなわち尾道市が四人であり、福山市が十一人、三原市が十五人、因島が二人、松永市が八人、府中市が三人、御調郡が十二人、豊田郡が二十人、賀茂郡が十三人、世羅郡が三人、沼隈郡が七人、深安郡が六人、芦品郡が三人というように、要するに広島県の東南部地帯の通学し得る範囲のものが大多数を占めておるのでございまして、こういうことを言うのはどうかと思いますけれども、通学できるから行くという家庭がこのうちに非常に多く占めておる状態でございますから、これらの点を十分実態と実情とを照らして、教育機関の中央集権化ということに対しては十分御注意を願いたいと考えておるのでございます。ことに女子の関係は、これらの応募のうちで女子が百九名、男子が四十一名でございまして、女子の関係は結婚年令の関係その他家庭の問題等がございまして、二年課程を非常に多く選んでおるのでございまして、私は二年課程が漸減されるだろうということには、必ずしも反対をするものではございませんが、二年課程を全部四年課程に持っていくというような極端なる考え方には賛同ができ得ないのでございます。少くとも二年課程の養成機関はある程度はどうしても存置をせなければならぬことが、教育の機会均等の面から見ましても、あるいは県及び国の財政の点から見ましても、あるいは女子教育の充実の点から見ましても考えられるのでございまして、ちなみに本年度教育大学の体育科出身は 男子が百六十名で女子七名でございます。そこで女子の体育科の先生を得るために非常に困難を来たしておるのでございまして、四年課程へ全部引き上げるということになっていきました場合においては、女子の教員を得ることが非常に困難な情勢に将来立ち至るかもしれぬということも考えるのであります。ことに小学校、中学校におきまして、家庭科あるいは音楽、ダンス、あるいは低学年に対する女子の先生というものは絶対に必要なものでございますが、四年課程へということを強行することによりまして、女子教員の養成が非常に少くなって参りまして、将来女子の先生を得ることが至難になるということさえも考えられるのでございますからして、この三年課程の問題は、先刻御質問申しましたように、高等学校と並置してこれを五年制にするとか、あるいは特に研究科、専攻科を一年増して、そして三年課程にやるというような点をもあわせて考慮をされ、さらに中教審が申しておりますように、二年課程卒業者は四年課程へまた編入できるような道をも開いてやることができるように、また職場において職場再教育によりまして資格を醸成することができるといったような再教育の関係、すなわち職場におりながら再教育を受けて資格を醸成するといったような補充的な意味の施策をもちまして二年課程の教育学部を育成することが必要でありましてただ観念的に二年課程を漸減さえすればいいという考え方を、われわれは厳に戒めねばならぬと考えておるのでございます。
ことに大臣にちょっとお尋ねしたいと思うのでありますが、広島大学教育学部は、高等教員養成に対して特殊的な教育をいたしておるのでございます。高等教員養成という特殊的な教育をいたしておるのは、どの大学にもないのでありますが、広島大学はかつて広島高等師範でありまして、この伝統と歴史を生かすために、広島大学教育学部に高等教員養成部というのが特に認められているのでございまして、今日もなお高等学校教員の特殊教育をするものとして、三十二年度は百二十名が広島の本部で行われ、さらに袖山の分校でも五十五名、高等学校教員の特殊教育をするものとして募集いたしております。結局百七十五名を高等学校教員養成の特殊教育をすることになっておるのでありますが、こういうものは全国にない。お茶の水の前の女子大学、あるいは奈良の女子高等師範においてもこういうものは存置しておりませんが、これに対し広島大学は伝統と歴史をとうとぶ上において、高等学校教員の特殊教育をいたしておるということは、広島大学の誇りといたしておるというようなことをわれわれは直接聞いておるのでございますが、文部省はそれに対して予算的措置をどういうようにされておるのであるか、これに対する考え方を聞きたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/14
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015・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 まず第一に予算のことにつきまして御鞭撻をいただいたわけでございます。率直に申しまして、私も今の文部省の予算には非常な不満を持っておるものであります。できるだけ予算の増額をはかりたいと考え、今後精一ぱいの努力をいたすつもりでございますので、どうぞ委員の各位におかれましてもせいぜい御支援のほどをお願い申し上げたいと思います。
それから具体的に申せば三原分校の問題を中心にしての御質問でございますが、先ほど来永山委員のお話にもございましたごとく、地方にはそれぞれ実情があるわけであります。そういうふうな実情というものを十分に考えていかなければならないと私も考えている次第であります。従って二年制課程を漸減するということは申し上げましたけれども、私はこれを激減させるつもりはございません。一般的に申せば、四年課程を、今日の建前のもとにおきましては充実して参りたいと考えておりますけれども、この分校の問題、ことに二年制の問題というようなことにつきましても、なおよく検討すべき点があるのじゃないかとも考えまするし、先ほど最初に申し上げましたように、私はこの教員養成機関につきましては、もう少しいろいろな要素を取り入れまして、十分に検討してみたい、かように申し上げておる次第でございます。今直ちに二年制課程を廃止すると、そういうふうな考えをいたしておりませんから、その点は御了承願いたいと思います。
それから広島大学における高等学校教員養成の問題でございますが、これはお話にもございましたように、広島大学の沿革から来ておるものと考えるのでありまして、文部省の教員計画養成の中に入っておるわけではございませんけれども、学校に余裕のある限りにおいてかようなことをすることは差しつかえないわけであるという考え方をいたしておるわけでございます。予算その他のことにつきましては、政府委員から答弁いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/15
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016・緒方信一
○緒方政府委員 広島大学の教育学部の高等教員養成課程につきましては、ただいま大臣からお答えがございました通りでございます。御指摘のありましたように、ほかの大学にはこういうはっきりした養成課程はございません。ただしかし御承知のように、高等学校の教員は教科制でございますから、各大学におきましてその所定の教科を修めて単位を取得しますと、免許状を受けて資格が出て参るわけであります。さようなほかの大学のやり方と違った、広島大学のやっております養成課程が、やり方としてどっちがいいかという問題につきましては、今後十分検討しなければならぬと思いますけれども、特に実習等の関係につきましても、広島大学には非常に充実した教育が施されるようにも見受けられるのでございます。予算等につきましては広島大学の教育学部の予算として措置をしておるわけでございまして、計画養成でありまする小中学校の教育と、それから今御指摘になりました高等教員養成、それから教育学部のいわゆる本部の方にはまだほかにも各科がございますので、それらについておのおの予算措置をいたしておる、かようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/16
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017・永山忠則
○永山委員 予算的措置を特別講じてないということでございますので、実際は予算関係はやみだということになるわけでございますが、いわゆる高等教員養成課程というものを特殊的にやるのでございますから、それに対しまして、教官の数も増さねばなりませんし、予算もふえねばならぬわけでございますが、それをおふやしになっておるかどうかというわけでございますか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/17
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018・緒方信一
○緒方政府委員 予算措置では、特別にそれを認めてないということを申し上げたわけではございませんので、御了承いただきたいと思いますが、これはその課程も、最近新たに作ったわけではございませんので、前からやっております。新たに作ってそれに予算を新たにつけたという関係じゃございません。教育学部を創設いたしまして以来、ほかの学科もいろいろございます。その一つとして養成学科があるわけでございます。教育学部全体に対しまして予算措置はできております。これは教員と学生の経費が中心でございますが、そういう予算措置は全体としていたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/18
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019・永山忠則
○永山委員 実際問題として、高等学校教員養成志望というものを百六十名ないし二百名、高らかに目的を掲げて募集いたしております。そうしてそれの特殊教育をしておるのでございますから、他の学校よりは多くの予算がやはりこれに要るわけでございます。ところが実際問題としては、これに対する予算が非常に少いために、どういう結果を来たしておるかといえば、小、中学校の四年課程を非常に少く募集をしてきたのであります。すなわち小、中四年課程を五十名ずつ、計百名しか募集をしなかった。すなわち高等教員養成課程の方へ相当力を入れねばなりません関係上、小、中学の四年課程というものに対する募集人員が非常にしぼられてきた。その結果、今日四年課程の卒業者が非常に下回ってきまして、あわてて四年課程をさらに多く募集するようになってきたのでありまして、本年は小学校の四年課程を東雲分校で百五十名、福山分校で三十名の募集をいたし、さらに四年課程の中学校関係を累計百五十名、小学校の関係を百五十名というように、漸次四年課程の卒業者が少くなりましたので、募集を多くするというようになってきたのでありますが、その予算的措置がしぼられておりますから、従って今度は二年課程を非常に縮小していくという考え方でございまして、ことに学校当局としては、ほとんど二年課程は三原分校では募集せぬというくらいまでの申し合せをいたしたのであります。本年度は三原分校では募集しないという申し合せをしておりましたが、文部省等といろいろ折衝の結果、二年課程を本年六十名三原分校で募集するようになってきたのでございますが、これらは要するに高等学校の教員養成の特殊教育をやるということが伝統的にきておりますので、それに対する予算的措置が十分でないということが、結局三原分校等にしわ寄せをやってくるというような結論に追い込んできておるのでございまして、私は大臣の言われましたごとく、この教員養成に関する特殊的な関係については十分検討しようということは、非常に大切なことであると思いますし、広島の大学が高等学校の教員養成の特殊教育をいたしておる点について非常に成績がいいということを誇りとされておりますので、これに反対をいたしておるものではございません。これは全国ただ一つでございますから、よく一つこれを中心にあらゆる点を将来も御研究いただくことを期待するものでございますが、しかしその結果として、義務教育の小中学校の教員養成がしわ寄せを食うというような結果にならないように、予算的措置を十分一つお考え願いたいということをお願い申すわけでございます。
ことに私は広島大学の特殊性から見まして、広島大学の本部では、高等学校教員の養成を中心にやる、さらに大学の東雲分校では中学校の四年課程を中心に養成していく、三原分校では小学校の四年課程を中心に養成をしていく、そうして三原分校には二年課程もこれを併置するという考え方で学校の教員養成分布状況を御研究いただきますならば、三原分校をいたずらに募集停止をして廃校にするというような暴論をあえてする必要はないかと考えるのでございます。要するに三原分校を廃校しようという根本に流れるものは、結局予算的措置が非常に制約せられているので、ここに三原分校の方の関係の費用を制約して本部へ持っていって、予算の集中経理によってやろうということが一番大きな原因であるかと考えておりますので、文部当局におきましては、広島大学の教育学部の特殊性を考えていただきまして、私の前申しました本部と東雲分校と三原分校、これら教育機関の分布状態をよく勘案されることは、決して無理な考え方ではないと思っておるのでございます。ここにこういうことをいわれているのでございますが、そういうことができるかどうか、お尋ねしたいのであります。
結局予算が足りない、そこで三原分校の募集停止をすれば当然に廃校になる、その募集停止は、大学の代議員会もしくは教授会できめればそれできまることであって、文部省に何ら関係なくして自然に三原を廃校にすることができるのだというようなことがいわれるのでございますが、募集停止というような手段によっていやしくも分校を廃校に持っていくというようなことが、大学の代議員会だけで決定をするものであるかどうか、文部省が何と言おうが、募集停止にすれば廃校になるじゃないか、これはわれわれの権限だ、しからば校舎はどういうようにやるか、校舎が足りなければ、一時どこかへ収容しておいて、修理費でこれを補っていけばいいのである。だから修繕費を組んであれば、どこかへ入れておいて、漸次にこれを整備すればいいのであるというようなことで、その地にある学校を募集停止によって廃校にするというようなことが、文部省の了解なくしてでき得るものであるかどうかをお聞きしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/19
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020・緒方信一
○緒方政府委員 最後のお問いでございますが、大学の運営につきましては第一次的の責任を持っておりますのは大学自体でありまして、重要な事項につきましては教授会でやるということを学校教育法でもきめております。しかもただいま御指摘のような分校の廃止というような重大な事項につきましては、本省と十分協議をしてやってもらうのが従来からの慣例でもございます。この点につきましては本省としても重大な関心を持って協議をしてやっていきたいと思います。運営につきましては、文部省設置法の規定によりましても、指導、助言、勧告等をなす権限がございます。これらの運用によりまして十分に協議をしてやって参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/20
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021・永山忠則
○永山委員 文部省の意向を無視して、募集停止によって廃校するようなことができるものであるかどうかという点を、はっきりお聞きしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/21
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022・緒方信一
○緒方政府委員 これは先ほど申し上げましたように、大学の運営は大学がやっていく、こういう建前でございます。責任を持って大学の教授会にかけてきめる、こういうことでございますけれども、しかし、ただいま御指摘のような事項につきましては、先ほど申し上げましたようにいろいろな関係があります。予算の関係もありますし、大学教授全般のことにも関係いたしますから、十分本省と連絡をとってやっていったらよかろう、従来の慣例もありますし、今後もそういうことで運営について適正を期して参りたいと文部省としては考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/22
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023・永山忠則
○永山委員 文部省と十分連絡をとってやるということはよくわかるのでございますが、文部省がどう言おうとも、そういうことはできるのだというような見解を持っておるやに聞いておるのでございます。こういう点についてこれ以上追及いたしましてもどうかと思いますが、いやしくも学校を廃校しようというような問題は、文部当局の了解なくして、募集停止によって自然に持っていこうというようなことは、われわれには考えられないものでございますが、この点十分一つ御注意を願いたいのでございます。大体学校の校舎関係、いわゆる建物に対する監督管理はどちらにあるのですか。学校にあるのですか、文部省にあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/23
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024・緒方信一
○緒方政府委員 大学の施設、設備等を具体的に管理をする、あるいは補修をしていくという責任は大学自体にございます。しかしこれはただいま申し上げましたように、全体の予算の関係もありますし、それから運営全般の方針ということも関連いたしますから、もちろん文部省としても全体的な責任は持っております。しかし具体的にそれをきめていくということは大学自体が責任を持っておると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/24
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025・永山忠則
○永山委員 私がお聞きいたしますことは、三原分校は非常に建物の古い点もございますので、これが保全のためにぺンキを塗るというようなことで予算を要求いたしても、文部当局は予算化しない。そういうような小さい予算は大学内部の予算操作でできるということかもしれませんが、さらにそれの付属校が狭隘だから特別室を作る、あるいは火災予防を兼ねたプールを作っていくというような関係等につきましても、全然これに対して顧みない。むしろ故意的に一切を放置しておいて、そうしてこれを廃校に持っていこうという意図さえも見えるというようにいわれておるのでございます。自来今日まで三原分校に対する営繕その他の費用は絶対に使用しないというような方針できておるようでございますが、これらについてはどういうようなお考えを持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/25
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026・緒方信一
○緒方政府委員 校舎の補修等についての予算を準備するのは、これはもちろん文部省がいたすことでございます。具体的に申しますと、学校から予算の要求が文部省に出まして、文部省がそれを取りまとめて毎年大蔵省と折衝して予算をとるということになるわけでございます。しかし文部省が全部の学校につきまして一々そういう補修個所に目を届かせてやっていくということは事実上できないことでありまして、それをよく注意して具体的に責任を持ってやっていくのは学校だと存じます。今のような問題につきましては、学校当局と文部省とよく相談し合って進めていかなければならないと存じます。ただいまの三原分校の校舎の具体的な状況等につきましては私詳しく存じておりませんが、原則的に申しますならば、それは文部省と学校と両方で相談をしてやっていくべき性質のものであると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/26
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027・永山忠則
○永山委員 政府の予算が得られませんので、そこでPTA関係その他市当局がプールを作りたい、特殊の教室を建て増ししたいということで基金を集めて申し出ておるのであります。これに対しまして文部当局の了解も得られないし、大学の方でもこれを許さないという実情でございます。これが三原市民の関係者から申しますれば、廃校をしようという意図があるから、われわれの血の出るような醵金によって、政府の予算がないからこれらの点について寄付を仰いで校舎の修理設備申請をいたしておるのに、許可が受けられないということで非常にひがんでおるのでありますけれども、こういう点はすみやかに学校当局と御懇談の上、PTAまたは市が寄付によって施設の改善あるいはプール等を作ることをお許しになるべきではないかと思うのでありますが、この点に対するお考えはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/27
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028・緒方信一
○緒方政府委員 非常に具体的なお話でございますが、実は私ども具体的な事情についてはよく存じておりません。これは学校当局ともよく話し合ってみなければわからないことでありますが、先ほど大臣からもお答えがございましたが、文部省といたしまして分校をこの際廃止してしまうというような方針をきめておるわけではないわけであります。ただ大学といたしましてどういう意向ありますかわたし具体的に存じませんが よく調べた上でまた考えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/28
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029・長谷川保
○長谷川委員長 永山君に申し上げますが、実は一時からこの部屋を海外同胞委員会に使うことになっておりまして、もう時間もありませんし、あと高津君が質問をしたいということになっておりますので、大へん恐縮ですが簡単にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/29
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030・永山忠則
○永山委員 時間がないので大へん残念でございますが、またの時間をいただきまして続けることにしたいと思います。委員長の御注意もございますので結論に入りたいと思いますが、実はぺンキを塗って保全をよくし、明るい学校にしましても、非常なお小言をいただいておるという状態でございまして、同じ統合を目途として一応構想をされております福山分校は鉄筋コンクリートの建物を許しておるが、三原分校はペンキを塗るごとさえも許さないというような情勢に現実にあるやに伺っておるのでございまして、こういうような官僚的なことをとられずに、ほんとうに市民が心から設備の改善を要望いたしておる点を率直に受け入れていただかねばならぬと考えるのでございます。
さらに私は伝統と歴史というものが教育に対しては実に大きなものであるという点を強く文部当局にもお考えをいただきまして、この点をお問いしたいと考えておるのでございますが、同僚の時間もございますから、私はただその点を強く要望いたします。三原分校は実に四十八年間も女子師範としての歴史を持っておるのでありまして、その開設に当りましては地元が莫大なる寄付をいたし、非常な犠牲を払ってやってきておるのでございます。しかも学校の成績も非常によろしいのでございまして、卒業生の就職状況を申し上げましても、他の分校に比較して断然優位の地位におるのでございます。三十一年度の卒業生さえも一月現在におきましては、産休代用を加えましたならば九〇%をこえておるのでございまして、これが就職率におきましても他校に比較にならず、さらに募集の状況から見ましても、比較にならない優秀な生徒が多数募集に応じておるのでありまして、絶えず大学当局は毎年六月末の統計を出しまして、就職状況が必ずしもよくないような情勢を言っておるのでありますが、年度末の三月までにはこれが必ず一〇〇%に近いものになってきておるのでございまして、三原分校の就職率は二十七年度は一〇〇形であり、二十八年度も一〇〇%、二十九年度も一〇〇%、三十年度が九七・四%、三十一年度が一月末で産休代用等を一緒にいたしますれば九二%といったような情勢になっておるのであります。これが絶えず一〇〇%であるということになれば、教員の補充に対しても必ずしも十分でないということは言い得るのでございますし、さらに学校の教育研究の点におきましては、全国に類例を見ないところの研究校として推賞を受けておるのでありまして、三十一年度は実に参加人員二千七百人でございます。さらに三原分校の教官が各地にわたって指導をいたしておる点も、延べ人員の上から申しましても三十一年度は千八百人に及んでおるのでございまして、教育センターとして、広島県のようなあの大県におきましては、東部、南部の教育指導的な大きなる役割をいたしておる。さらに卒業生も優秀なる卒業生を出しておるのでございまして、ここに工場がたくさんできてきたのでございますから、さらに教育的な地位を高めて文化都市になることこそ非常に地元が要望いたしておるのであります。これをあるいは工場地帯であるから理科教育の方へ持っていったらというようなことを言う者もあるのでございますが、それはそれといたしまして、何としても工場地帯であるがゆえに、教育学部分校が要望されておるのであります。そしてあの大県である広島県の東南部地区の教育、文化を一段と引き上げるというような点から見ましても、絶対に三原分校を廃止すべからざるものであるという信念で、ここに全市を中心といたしまして広島県民の声として文部当局へ請願をいたしておるのでございます。その陳情者の署名は実に五万七千人をこえておるというような状態でございまして、山間東部地、南部島嶼部を控えており、しかも経済的に恵まれざる広い地域を背景としておる教育センターの中心である三原分校というものを存置していただくように、大臣のお考えを願いたいのでございます。この点に対する大臣のお言葉を聞きまして私は他の委員に譲りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/30
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031・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 三原分校に関するきわめて熱心な御要望でございます。私も三原分校の長い間の歴史、その大きな功績というようなことは十分承知いたしておるつもりでございます。この問題につきましてはひとり三原分校だけではなしに、似かよった問題は全国数カ所にあるように承知いたしておるのであります。私はこれにつきましては、今日の教員養成機関に関する制度をそのまま維持していくか、あるいはまた別の角度から検討してみるかということによりまして、これに対する処置の仕方も多少変ってくるのではなかろうか、かようにも考えておる次第でありますので、先ほど来この問題は一つ新しい角度から検討さしていただきたいということを申しておる次第でございます。しかしながらいつまでもペンティングのような形になっておるのでありまして存置するのか廃止するのかということで地方の人が迷っておるということも避けなければならぬことだと思いますので、なるべく早く結論を得まして、この問題解決のために善処いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/31
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032・長谷川保
○長谷川委員長 高津正道君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/32
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033・高津正道
○高津委員 私は永山委員の質問の趣旨に全面的に同感して拝聴しておったのでありますが、私の持論をこの際ほんの一言申し上げて、具体的な質問に入りたいと思います。
私は教育において環境というものがいかに大きい作用を持つかを若干認識しているつもりでございます。さればこそ明治神宮外苑に近い鳩森小学校付近の売春宿化しやすい多くの旅館の問題をこの文教委員会で最初に取り上げた光栄を私は持っております。ところで三原市にある広島大学三原分校ほど恵まれた環境を有する教員養成の学校はまれであると申して差しつかえあるまいと存じます。その理由は、この分校廃止の問題が起るや、三原市でたちまち十日ばかりの短期間に存置を要望する署名が実に五万七千六百名に達したという事実がございますが、これは同校に対する全市的愛情の深さを証明するものだと存じます。このような環境に包まれての学校教育は、教える側も教えられる側も働きがいが感ぜられて、その点さぞ幸福でありましょう。私の持論の一つですが、外国の軍事基地は、その基地の置かれる側の国民から全面的に反感を持たれるに至れば、その基地の価値はゼロにひとしくなり、結局引き揚げざるを得なくなると申します。ごつごつした軍事的な基地にさえ良好な環境がこのように必要だという事情は、教育環境を重視するものに単純な連想作用でひどく自信を深めさせるのであります。
もちろん話は三原分校に戻らねばなりませんが、年々持たれている三原分校付属校における、今永山委員の指摘された教育研究会は、終戦後では昭和二十四年以来の行事でありますが、参加者がそのたびごとに千数百名、二日間でありますから延べ二千数百名に及んでいるという事実は軽く評価されてはなりません。東雲分校の教育研究会に数倍する参加者が集まるのは、本校の卒業生が明治以来四千六百名に上り、三原を中心としてこの地域に広く散在し、生きている限りのそれら出身者が母校に特殊な愛情を感じていること、これがまた大切なことでありますが、一つの原因はここにあると思われます。それだけではありません。現在の三原分校の全教官と付属の全教官とが平素も熱心かつ真剣に教育に従事していて、貴重な知識や体験を持っており、その教育研究会において行われる研究授業も研究発表も協議会指導も、高度に魅力的なものがあるという事実がさらにそれに加わるのであります。参加者が散るときに、ああ来てよかったと感じて帰る。その人がそれを同僚に伝える。そうです。一人々々が批判的精神を所有するインテリですから、見るべきものがなかったら年々さびれていくはずだからであります。もう一つの、すなわち第三の原因は、付属の教官の場合、年数回、一部あるいは一市単位での出張研究会を持ち、また毎年約百回に達する指導出張の機会を持っておりますが、これは三原分校教官の同種の活動とともに、篤農家がその愛する田畑の年数回の草取りや施肥の手当を怠らない姿にも似て、物に動じざる鈍感なこの老骨の頭も下る思いがするのであります。三十余技を持つ三原市内はもちろん、周辺の市や郡に平素かほどまでに深い接触を持ち、地方教育の向上と推進とに努力が払われている。ペスタロッチに見てもらうわけには参りませんが、これは長野県、岡山県の教育家も来て御視察が願いたい、私はこのようにまで思うのであります。かくのごとくであればこそ、ここの教育研究会がくる年もくる年もかくも全国的にまれに見る盛大をきわめるのであります。この原因三つのほかにまだ漏れている長所がたといあるといたしましても、私の断定にはもうこれで誤まりがないと信じます。
一口に申すと三原分校は一つの教育センターとしてみごとに任務を果しており、よい環境を持ってもいるが、その環境をいよいよよいものに作り上げつつ、地方教育に、従ってわが国の教育に貢献していると言って決して過言ではありますまい。このような観点に立って次の諸点を一点ずつお尋ねいたします。
第一、三原分校とその付属校とは私がやや長々と申して失礼でしたが、そのようなよい環境を持っているし、これはこの学校の特色すなわち長所である、私のこの見解に同意が得られましょうか、それとも反対でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/33
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034・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 三原分校そのものをとらえての私の見解と申しますか、先ほど来高津委員から委曲を尽してのお話でございましたが、私もまた広島の三原分校が今日まで教育のために尽しました功績につきましては、十分に認識をしておるつもりでございます。また教育環境といたしましても非常に適当なところであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/34
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035・高津正道
○高津委員 第二にあえて三原分校という固有名詞を使わないで、一般論として特色、特徴のある教員養成の大学が存在する場合、それはその特色、特徴の生きるように育成すべきだと私は当然に考えますが、大臣はどのようにお考えでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/35
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036・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 一般論としてのお尋ねでございますが、私もまた一般論として考えます場合にはお説の通りだと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/36
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037・高津正道
○高津委員 第三、これだけの特筆大書すべき成績の教育研究会活動に対し、広島大学長森戸辰男氏からか、同教育学部長篁至道氏からか、表彰方の申請があったでしょうか。日本政府近年の行政の特徴の一つは、表彰に非常に重きを置いている点でありましょう。文部省はこの表彰時代に、教育の振興のために教育界に対しどのような表彰を行なっておられるかを詳しくは存じませんが、私はまず広島大学から三原分校多年の教育研究会活動に対して、表彰方の申請があったかいなかをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/37
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038・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 お話のような表彰方の申請がこれまでなされたことはないようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/38
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039・高津正道
○高津委員 第四、文部大臣は三原分校と付属校の全教官がやっていることは所管大臣としてほめてよいとお思いになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/39
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040・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 非常にむずかしいお尋ねでございますが、具体的にどういうことをどうしておるということまで私承知いたしませんので、このお答えは今日どちらとも申し上げかねると御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/40
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041・高津正道
○高津委員 第五、この際本件のごときは文部大臣表彰に値すると私は考えますが、野党の私の進言でありますけれども、大臣にその検討をしてみられるお考えがおありでありましょうか、この点もあわせお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/41
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042・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 お尋ねの点につきましてはよく実情を調べましてお答えを申し上げなければならぬと思うのであります。ただ普通国立学校はいわば内輪のようなものでございますので、国立学校について格別表彰するというようなことはあまりいたしたことがないのでございます。さように一つ御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/42
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043・高津正道
○高津委員 行政手腕において定評のある方が文部大臣になられたのでありますから、慣例々々で全くマンネリズムの大臣に終らないで、たとい内閣が短期間であろうとも、百尺竿頭一歩を進めて大学のどの活動に対しても表彰すべきは表彰するというような特例を開くくらいな勇気をお持ち願いたいと思います。
それでは次に広島大学が三原分校に対してとっている態度についてお尋ねいたします。同僚永山委員が、ペンキの塗りかえさえも許さない、寄付による教室の新築も許さない、こういうようなことを言われたのでありますが、これらは分校に対して大学本校がとるところのまま子いじめであります。これは教育者にあるまじき行為だ、少くとも好ましからざる処置だと思いますが、これに対する文部大臣の御見解、すなわち是なりや否なりやをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/43
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044・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 具体的な事実を承知いたしませんので、それに対するお答えはいたしにくいのでありますが、広島大学が、いやしくもその分校としてあります限り、これに対してまま子扱いをすべきものでないということは、申し上げるまでもないことであります。従いまして、さような事柄につきましてはよく実情を取り調べまして、必要がありますれば、それに対しては私の方から勧告なり助言なりいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/44
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045・高津正道
○高津委員 国有財産たる学校の校舎は、特にその保存に留意すべきものであり、そしてその保存には永山委員の指摘されたようなペンキ塗りのごとき、簡単でしかも有効なことをまで拒むというのは、私はかかる建築物の実際の建設者である全国の納税者及び地元の寄付者に対する裏切り行為であり、また施設管理の職責を全うせざるものであると考えますが、この職責という点から見る場合、調べてみないとわからないと言われるが、調べてみなくても、善は善、悪は悪なりと断じてほしいのでありますが、それだけの勇気を出してもらえないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/45
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046・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 具体論は差し控えたいと思いますけれども、ただいまの大学管理に関する大学当局の職責という点につきましては、高津委員のお心持に私は同感の意を表します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/46
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047・高津正道
○高津委員 三原分校の広島大学への統合をひどく急がれる森戸広島大学長は、三原市には国立か、県立の工業大学ないしは工業専門学校を設立すればいい、かわりのものをやるから、こういうような案を持って私の同僚議員を訪問されたとも聞いているのであります。
そこでお尋ねいたしますが、第一点、あえて三原市と限らず、現在一つの工業大学ないしはあの昔懐かしいあの程度の工業専門学校を建設する場合、どれだけの経費を必要とするものであるか、これをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/47
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048・緒方信一
○緒方政府委員 工業大学ないし工業専門学校のようなものを建設する経費のお尋ねでありますが、これはいろいろ規模もございまするし、その内容の関係がございますので、ここでちょっと一がいに経費幾らということは申し上げかねます。資料もございませんし、突然のお尋ねでございますから、経費につきましてはお答えいたしかねることを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/48
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049・高津正道
○高津委員 三十億を上回るのですか、下回るのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/49
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050・緒方信一
○緒方政府委員 これはただいま申し上げましたように、内容にもよりまするし、それから学校の規模にもよりますので、一がいにお答えしにくい問題でありますから、御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/50
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051・高津正道
○高津委員 広島大学から文部省に対し、三原市に工業大学ないし旧制の工業専門学校を設立してはどうかとか、あるいは設立してもらえないだろうか、そういう打診なり申請なりがあったですかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/51
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052・緒方信一
○緒方政府委員 ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/52
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053・高津正道
○高津委員 次にお尋ねいたします。三原分校の過去の全市的な存置運動の熱烈さというものは、全く何者をも動かすような程度のものでありますが、このような全市的な反対を押し切ってやることは、広島大学本部であろうと文部省であろうと、昔から一番残忍な行為として使われるなま木を裂く、なまづめをはがす、こういうことになるのでありますが、そのようなことをやっても民主主義の世の中の教育行政というものはそれで済むものでありましょうかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/53
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054・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 三原分校設置について非常に熱心な御要望があるということは、実は身にしみるほど承知しておるわけでございます。私はさような要望を無視した行政をやろうとは決して考えておりません。ただ問題は、一つの分校をどうするという問題よりも、今日の学校教育に関する制度それ自体が一体どうであるか、今日の教育者養成機関の制度から申しますと、ただいまのような問題が起りがちなのであります。従ってまた今日三原だけでなくて、全国各地にこの種問題が起っておることと思うのであります。さような意味合いにおきましては、私は大学の当局が学校管理の上からいたしまして、結論がそういう分校を廃止するというようなことに向ってくるということは、今の建前から申しますれば、一がいにけしからぬとかあるいは不都合であるというふうにもいかないところがあるのではないかと思うのであります。しかしこの問題につきましては、先ほど来申しておりますように、教育機関の特質もございましょう、またいろいろ地方の実情もございましょう、そういうふうなところをあわせて私は一つ何かの考えを立ててみたいと思っております。その考えを立てました上で皆さん方に結論の御批判を願いたいと思っておるわけでございます。今直ちにこれを廃止するとかなんとかいう考えは毛頭ございませんし、また地方の要望を無視してむちゃくちゃな行動に出るというような考えは少しもございませんから、その点は御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/54
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055・高津正道
○高津委員 歴代の大臣の答弁の中に最も多く出てくる単語の一つに、今直ちにという言葉がありますが、二年課程のものを今直ちに廃止する考えはない、その今直ちにという言葉の時間的な内容、時間的な広さをはっきり聞いておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/55
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056・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 問題はかなり重要な問題だと考えます。従って一人の考えでもって結論を出すということは慎まなくちゃなりません。いろいろ各方面の意見を聞き、文部省といたしましてもそれぞれの機関を持っておるわけでありますので、そういう方面の意見を十分聴取いたしまして、妥当な結論を得たいものというふうに念願しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/56
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057・高津正道
○高津委員 これで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/57
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058・長谷川保
○長谷川委員長 本日はこの程度とし、次会は公報をもってお知らせいたします。
これにて散会いたします。
午後一時八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605077X00819570306/58
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