1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年二月二十七日(水曜日)
午前十一時五分開議
出席委員
委員長 三田村武夫君
理事 池田 清志君 理事 椎名 隆君
理事 福井 盛太君 理事 横井 太郎君
理事 菊地養之輔君
高橋 禎一君 馬場 元治君
花村 四郎君 林 博君
古島 義英君 山口 好一君
神近 市子君 坂本 泰良君
吉田 賢一君
出席国務大臣
法 務 大 臣 中村 梅吉君
出席政府委員
検 事
(民事局長) 村上 朝一君
委員外の出席者
専 門 員 小木 貞一君
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二月二十二日
対政府訴訟の判決促進に関する陳情書
(第二二五号)
中小企業者の債務更生等に関する陳情書
(第二四二号)
同月二十五日
岡山地方法務局高梁支局庁舎新築に関する陳情
書(第三五二号)
外国人登録法の一部改正に関する陳情書
(第三五三号)
土地不法占拠者の強制撤去に関する法律制定の
陳情書
(第三五四号)
戦犯者釈放に関する陳情書
(第三五五号)
を本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する
法律案(内閣提出第三五号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/0
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001・三田村武夫
○三田村委員長 これより法務委員会を開会いたします。
本日は、滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律案を議題とし、審査を進めます。
まず政府当局より逐条説明を聴取することといたします。村上民事局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/1
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002・村上朝一
○村上(朝)政府委員 逐条的に御説明申し上げます。
まず第一条でございますが、本条は、この法律が滞納処分と強制執行、仮差し押えの執行または競売法による競売とが競合する場合におけるこれらの手続を調整するために国税徴収法、民事訴訟法及び競売法等の規定の特例を定めたものであることを明らかにしたものであります。従いまして、この法律に規定のありません事項につきましては当然これらの法律が適用される、こう考えております。
次に第二条でございますが、本条はこの法律に用いております用語の定義を掲げたものでございます。
第一項に、「国税徴収法による滞納処分及びその例による滞納処分」という言葉が使ってございますが、これは地方団体の徴収金その他各種の公課等の徴収のためにする滞納処分を意味するものでございます。これにつきましては、お配りしてございます資料の中に「国税徴収法規準用法令調」というのがございまして、この中に「国税滞納処分の例により」という言葉で同じような規定を設けております法律が数十ございますので、それらのすべてを包含する意味でございます。
次は、第三項で有体動産と不動産について定義を掲げておりますのは、民事訴訟法と国税徴収法とでは有体動産あるいは不動産という言葉の使い方が必ずしも完全に一致しておりませんので、この実務上の取扱いの疑義をなくすためにこれを明確にしたのでございます。
なお、この法律によります調整措置の対象となります財産の範囲は、いわゆる有体動産及び不動産のほかに船舶を含むわけでございまして、債権その他の財産権は含んでおりません。また、有体動産の中で、民事訴訟法の手続によらない動産、たとえて申しますと、自動車、貨物自動車あるいは航空機、建設機械抵当法によって登記された建設機械等は、いわゆる有体動産の中に含まない考えでございます。
次に第三条ですが、この第一項は、滞納処分による差し押えがされております有体動産に対して重複して強制執行による差し押えをすることができることを明らかにいたしております。
第二項はその差し押えの方法でございますが、滞納処分が先行しております場合には有体動産は収税官吏が占有しているわけでございますので、重ねて強制執行による差し押えをする方法としては、収税官吏の持っております占有を利用して行うことになります。従いまして、執行吏がそのものを差し押える旨の書面を収税官吏等に交付して差し押えをするということにしております。
第三項は、滞納処分の先行するものについてさらに強制執行による差し押えが行われました場合には、債務者にそれを知らせておく必要がございますので、そのことを債務者に通知する義務を負わせたのでございます。
次に、第四条は競売手続の制限の規定でございますが、二重に差し押えができるといたしましても、二個の手続がそれぞれ進行いたしますと混乱を生じますので、後に行われた強制執行による売却のための手続は、第九条にあります強制執行続行の決定があった場合を除きましては、先に行われました滞納処分による差し押えの手続の方を進行いたしまして、その差し押えが解除になった後でなければ行うことができないことといたしました。後に開始された手続が先行する手続の進行を妨げないこととしたのでございます。
次に、第五条は滞納処分による差し押えの解除になった場合の処置でありますが、第一項におきまして、二重差し押えが行われた有体動産について、先行する滞納処分による差し押えを解除する場合には、収税官吏はこの占有しております有体動産を執行吏に引き渡すべき義務があることを定めたのでありまして、滞納処分による差し押えが解除される時期と有体動産に対して執行吏が占有を取得する時期との間の間隙をなくすることによりまして、財産の散逸を防ごうとするものであります。第一項のただし書きの規定は、元来民事訴訟法におきましては債権者及び債務者以外の第三者の占有しております有体動産を差し押えるのは占有者がものの提出をこばまない場合に限って行われることになっておりますので、これと歩調を合わす意味で設けたのであります。すなわち、滞納処分による差し押えの場合には、かような制限がございませんので、第三者の占有しておる有体動産を収税官吏が差し押えておる場合があるのでありますが、これを強制執行による差し押え手続に切りかえるに際しましては、強制執行の一般原則に従うこととしたのであります。
次に、第二項におきまして、第一項ただし書きの第三者が執行吏に引き渡すことをこばんだ有体動産につきまして滞納処分による差し押えが解除された場合には、第三条第二項の規定によって行われた強制執行としての差し押えが失効することを明らかにしたものであります。これはむしろ当然のことでありますけれども、疑義を避けるためにこの規定を設けた次第であります。
第六条は売却代金の残余の交付等の規定であります。第一項は、国税徴収法の規定によりますと滞納処分による売却代金から税金等を控除しましてなお残余がある場合にはこれを滞納者すなわち債務者に返すことになるのでありますが、滞納処分による差し押え後に強制執行による差し押えが行われておりますときは、収税官吏等は後に差し押えをした執行史にこの残った金銭を交付することといたしております。
第二項におきまして、執行吏が前項の規定によって交付を受けた金銭を民事訴訟法の定める手続に従って債権者に配当することができるようにするために、その金銭を執行史が強制執行のため当該財産を売却して得た金銭とみなすほか、配当要求の期限を定めております民事訴訟法五百九十二条及び配当手続に関する六百二十六条等の規定の適用につきまして、この金銭の交付があった日を競売期日とみなすことといたしたのであります。すなわち、民事訴訟法による配当要求は、競売期日までにしなければならぬという規定になっておりますが、それらの規定の適用につきまして、この滞納処分による売却金の残余の交付のあった日をもって競売期日とみなしたのであります。
第三項は、滞納処分による差し押え及び換価の手続がありまして、売却代金に残りがなかったという場合には、後になされた強制執行の手続も完結することになるわけでありますが、そのことを知るために、収税官吏が売却代金の残余がなかったことを執行吏に通知すべきことを定めているのであります。
次の第七条であります。これは、滞納処分による差し押え後に強制執行によって差し押えた有体動産につきまして、後から行われた強制執行による差し押えの方を解除する方法を定めたのであります。第三条の二項によりまして差し押える旨の書面を収税官吏に通知することによって差し押えが行われておりますので、解除する場合には解除する旨の書面を収税官吏に交付することにいたしております。
次は強制執行続行の決定の申請でありますが、滞納処分が有体動産を差し押えたまま長く換価その他の手続に進行いたしませんで、その間一般債権者が待っていなければならないということが従来非難されておりますので、本条は、差し押え債権者または執行力のある正本によって配当を要求する債権者が、本条各号に掲げる場合に、執行裁判所に対して、後に行われた強制執行を続行する旨の裁判を求めることができることといたしております。すなわち、二重差し押えがあった場合に、先行する滞納処分の手続が財産の換価を見るに至らないで停滞いたしますと、差し押え債権者等の権利の実現を不当におくらせることになりますので、換価手続の促進をはかる必要があるからであります。この点は、強制執行手続におきましては、差し押え債権者の行う強制執行が停止されましても、後に照査手続をした債権者があります場合には競売手続の進行が停止されないことになっているのと同じ考慮に基くものであります。
本条第一号中「法令の規定」というのは、たとえば予定納税額についての公売の特例を定めております所得税法第二十五条ノ五第二項の規定等のように、一定期間内の公売の制限を定めている法令の規定を指している。それから次に「これに基く処分」とありますのは、国税徴収法第十二条ノ二第一項、第三十一条ノ二第三項等の規定による滞納処分の執行の猶予または続行の停止等の処分をさしておるのでございます。
第八条による申請がありました場合に第九条による決定が行われるわけでありますが、第九条第一項におきまして、執行裁判所は前条の申請があった場合において相当と認めるときは強制執行を続行する旨の決定をしなければならないものといたしております。申請があれば必ず強制執行を続行する、すなわち滞納処分の方の手続をとめて強制執行の方の手続を進行していくような決定をするとは限らないのであります。裁判所が相当と認めたときに強制執行を続行する決定をするということになっております。どういう場合に強制執行を続行することを相当とするかは、裁判所が具体的事件ごとに、換価手続を促進することによって生ずるあらゆる利害得失を考慮いたしまして決定することになると思うのであります。たとえば、差し押え物を換価いたしましても先行する滞納処分による差し押えにかかる租税等の公課及び滞納処分手続において交付が求められております公課及び手続費用等を弁済すると剰余がないというような場合、あるいは滞納処分手続が近く進行することが明らかである場合、または適当な見積り価格が付されている物件について買い受け希望者がないために公売が遅延しているような場合には、強制執行を続行することが相当でないと解すべきものと思うのであります。その他、裁判所が強制執行の続行を相当と判断するにつきましては、国税徴収法によるいろいろな政策上の配慮、徴税技術上の考慮というものと私債権者の債権の満足という要求との調和を考えるということになろうかと思います。
第二項は、強制執行続行の決定は収税官吏の意見を聞いた上ですることになっております。
第三項は、続行の決定の効力発生の時期を明らかにする必要がございますので、収税官吏に告知するときにこの決定が効力を生じ、自後強制執行の手続に移るということにいたしたのであります。
第四項は、手続の遅延を避けるために、強制執行を続行するという決定に対しては不服申し立てを許さないことにしておりますが、第八条の申請を却下する裁判をした場合には、民事訴訟法の規定によりまして即時抗告が許されることはもちろんでございます。
次の第十条の第一項は、九条による強制執行続行の決定があった場合の効果を定めたものであります。続行の決定がありますと、この法律の適用については、滞納処分による差し押えは強制執行による差し押えのあとになされたものとみなされます結果、強制執行が先に行われた場合に関する第二十二条から二十七条までの規定の適用を見ることになるわけであります。
第二項は、この場合現実には執行吏が差し押え物を占有しておりませんので、続行の決定がありますと収税官吏はその有体動産を執行吏に引き渡さなければならないということを定めたものであります。
第三項は、続行の決定がありました場合には、滞納処分による差し押えのもとになりました租税その他の公課は、その滞納処分手続において徴収することはできなくなるのでありますが、他面、続行される強制執行の方でも当然には顧慮をされることにはなりませんので、換価金から租税等の交付を受けようとするときには、一般の場合と同様交付要求の手続が必要であることを定めた注意的な規定でございます。
第四項は、国税徴収法の第二条第二項あるいは地方税法の第十一五条第二項等によりましては、国税、地方税その他の公課等の相互の間では、いわゆる先着手主義をとっておりまして、先に滞納処分に着手した基本たる租税または徴収金は先立つことになっておるのでありますが、強制執行続行の決定がありました場合に、これらの租税または公課の交付要求相互間の順位につきまして、その優劣の順位を変更することは適当でございませんので、そのままの順位を保つことといたしたのであります。
第十一条は、先に滞納処分による差し押えがされておる場合に、後に仮差し押えがありました場合の執行につきましても、強制執行による差し押えをする場合に準じて取り扱うことを定めたものであります。仮差し押えの執行手続におきましては、原則として仮差し押えの目的物を換価いたしませんで、従いまして、執行吏が収税官吏等から交付を受けた公売代金等の残余の取扱いは、六条の第二項の規定によることができませんので、この残余金を、仮差し押えの執行がされている有体動産を他の債権に基く本執行によって換価して得た場合の売得金と同様に取り扱いまして、仮差し押え債権者に配当すべき額はこれを供託し、なお残りがあれば債務者に返還するということになるわけであります。
次の第十二条以下は、不動産または船舶に対する強制執行でありますが、これもやはり滞納処分が先行する場合の規定でございます。
まず第十二条でありますが、第一項は、滞納処分が行われておる不動産に対し重複して強制競売の開始決定をし強制執行による差し押えの効力を生じさせることができることを明らかにいたしております。
第二項は、収税官吏等が滞納処分による差し押え後に競売手続開始の決定があったことを知る必要がありますので、執行裁判所からその通知をすることを定めております。
次に第十三条でありますが、これも、動産の場合と同様に、二重の差し押えがありました場合に、それぞれの手続を別個に進行することは混乱を生じますので、後に行われた強制執行の手続は進行をとどめるということになるわけでございます。
次の第十四条、これも、動産の場合と同様、滞納処分による差し押えが解除された場合に、そのことを執行裁判所に通知する旨を定めております。
第十五条、これもまた、滞納処分後に行われました不動産に対する強制執行が申し立ての取り下げ等によりまして完結いたしましたときに、その旨を収税官吏に通知することを定めたものであります。動産の場合の規定と照応するものでございます。
次の第十六条は、公売処分が進行いたしまして、不動産を換価し権利移転の登記をいたします場合には、登記官吏は競売の申し立てがあったことの登記を職権で抹消すべきことを定めたのであります。二重に差し押えいたしましても、滞納処分の方は進行して目的物が公売により売却されてしまった後には、差し押えは当然終了するわけでありまして、差し押えの登記を残しておくことは無意味でありますから、これを職権で抹消することといたしたのであります。
次の第十七条でありますが、これも、動産の場合と同様に、滞納処分による差し押え後に強制執行による差し押えが行われた場合、公売代金の残りがあれば執行裁判所にこれを交付すること、また滞納処分が先行するにかかわらず強制執行の方を続行する場合の八条から十条までの規定を不動産に準用いたしております。
次の第十八条は、滞納処分の後に仮差し押えが行われた場合の規定でありますが、第一項におきまして、仮差し押えの執行をした裁判所はこの旨を収税官吏に通知することを定めております。また、第二項は、滞納処分による売却代金の残余の交付について、有体動産に対する仮差し押えの執行の場合の六条第一項と同趣旨の規定を設けております。第三項は、この規定によって裁判所が交付を受けました公売代金の残余を民事訴訟法の一般の取扱いに従って仮差し押え債権者のために処理することができるようにするための規定でありまして、動産の場合の十一条二項と同趣旨のものでございます。第四項も十五条と同趣旨の規定でございます。
次に、第十九条は、滞納処分による差し押えがされている船舶で登記されるものに対する強制執行または仮差し押えの執行に関する規定でございます、ここに申します登記される船舶とは、船舶の中で、商法に規定しておりますはしけその他推進機によらない小さな船あるいは総トン数二十トン未満、石数二百石未満の船舶等は除外されることになるわけであります。これらの船舶のうち、はしけ等民事訴訟法上有体動産として取り扱われるものにつきましては、この法律のうちの有体動産に関する調整の規定が適用になるわけでございます。
第二十条は競売法による競売の手続であります。これも、滞納処分が行われました後に不動産または船舶について競売法による競売の手続をいたします場合には、後に強制執行する場合の規定を準用いたしております。
次に、第三章、第二十一条以下は強制執行の方が先行する場合の規定でございまして、まず第二十一条で強制執行による差し押えが先行しておる有体動産に対する滞納処分の差し押えの方法を定めております。これは第三条の滞納処分が先行する場合に照応して規定が設けられておるわけであります。
次の第二十二条は公売手続の制限の規定でございまして、これも同様二つの手続を同時に進行することがないようにという配慮でございます。
第二十三条は、強制執行の後に滞納処分の差し押えがありました場合に、強制執行による差し押えを解除すべきときは有体動産は収税官吏に引き渡すということを定めたものであります。第五条第一項の本文に対応する規定でございます。
次の第二十四条は、滞納処分による差し押えの解除の方法でございます。これも第七条に対応する規定であります。
次の第二十五条は、滞納処分が先行いたします場合に、第八条、第九条において、強制執行を続行する、言いかえますと、滞納処分の方をとめて、あとで行われた強制執行の方を進行させるという手続を設けたのに照応いたしまして、強制執行が先に行われております場合にも、裁判所の決定によりまして滞納処分の方の手続を進行することができるという余地を認めたのであります。これは、特に、悪質な債務君が債権者と通謀いたしまして仮装の裁判で差し押えをしたり、いわゆる三者執行その他の執行妨害が行われておりますような場合による規定だと存じます。
第二十六条は、ただいま申し上げました滞納処分続行承認の決定についての規定でございまして、強制執行続行の場合の第九条に対応し、ほぼ同趣旨の規定を設けておるわけであります。
第二十七条は、滞納処分続行承認の決定がありました場合の効果を定めたものであります。強制執行続行の決定についての順序に照応する規定でございます。
次の第二十八条は、仮差し押えの目的物に対して滞納処分が行われた場合の規定であります。滞納処分による差し押えは、国税徴収法第十九条によりまして、先行する仮差し押えにかかわらず実施することができることになっております関係から、仮差し押えの目的物に対して滞納処分が行われました場合を、滞納処分による差し押え後に仮差し押えの執行が行われた場合と同様に取り扱うことと定めたのでございます。
次の第二十九条以下は、不動産または船舶に対する滞納処分でありまして、これも同様強制執行の方が先行する場合の規定でございます。
第二十九条は、収税官吏等が執行裁判所に競売手続開始後に滞納処分による差し押えをしたことを通知すべきことを定めたものでありまして、第十二条に対応する規定であります。
次に、第三十条、公売手続の制限、これも有体動産についての第二十二条と同趣旨の規定でございます。
第三十一条、競売手続完結の通知、これも、先行する競売手続が換価に至らないで完結したことを通知すべき旨の規定でございまして、第十四条に対応するわけであります。
第三十二条は、強制競売による権利移転の登記が行われます場合、すなわち、競売手続が終りまして不動産または船舶が競落人の所有になりますと競売による所有権移転の登記をするわけでありますが、その場合には、国税徴収法の規定によってした滞納処分に関する差し押えの登記を残しておくことは無意味でありますので、登記官吏が職権で抹消することといたしております。
第三十三条は、競売手続開始の決定後に滞納処分による差し押えをした不動産について、強制執行による差し押えが先行しております有体動産に関する規定のうち滞納処分続行承認の決定等に関する規定を準用することといたしております。
次の第三十四条でありますが、これは仮差し押えの執行がありました後に滞納処分による差し押えをした場合の有体動産に関する二十八条と同趣旨の規定でありまして 第十八条の規定を準用しておるのであります。
次の三十五条は船舶に対する滞納処分であります。強制執行または仮差し押えの執行が先行しております船舶で登記することのできるものに対して滞納処分による差し押えをした場合の取扱いを、強制執行または仮差し押えの執行がされている不動産に対して滞納処分による差し押えをした場合の取扱いと同様にするごとといたしまして、二十九条から三十四条までの規定を準用いたしております。
次の三十六条は、競売法による競売手続開始の決定があった不動産または船舶に対して滞納処分による差し押えが後に行われた場合の規定でございまして、強制執行が先行しておる場合に準じて取り扱うことといたしたのであります。
第三十七条は政令等への委任の規定でございまして この法律の実施のために必要な細目を政令または最高裁判所規則の定めるところに委任するごとといたしております。すなわち、滞納処分に関する事項は政令で定め、また強制執行、仮差し押えの執行及び競売に関する事項の細目は最高裁判所規則で定めるということにいたしております。
附則の第一項は施行期日でありまして、これは相当な周知期間が必要でございますので、施行期日を本年の十月一日からと定めております。
次の附則の第二項は、不動産または登記される船舶に対しましては、現在の実務の上では、滞納処分による差し押えが先行しておりましても仮差し押えの執行を認める取扱いをしておりますので、この法律施行の際にこのような仮差し押えの執行がされております場合にも、この法律施行後仮差し押えが行われた場合と同様の取扱いをしようとするものであります。
第三項は、この法律施行の際に有体動産、不動産または登記される船舶に対して仮差し押えの執行後に滞納処分による差し押えがされている場合につきましても、その滞納処分による差し押えがこの法律施行後にされた場合と同様に扱うという趣旨でございます。
以上をもちまして逐条的な御説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/2
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003・三田村武夫
○三田村委員長 以上で逐条説明は終りました。
質疑に入ります。椎名隆君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/3
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004・椎名隆
○椎名(隆)委員 大ざっぱに二、三お伺いしたいと思いますが、滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律案の目的はどこにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/4
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005・村上朝一
○村上(朝)政府委員 従来滞納処分の手続と強制執行の手続とを同一の財産に対して同時に行うことはできないという解釈が広く行われておるのでありまして、一部には二重に差し押えができるという下級裁判所の判例等もございますけれども、一般的にはできないという解釈が広く行われております。そのことが私債権の迅速な満足を得る上に大きな障害になっておるということが一般に言われております。これは、滞納処分が行われますと二重に差し押えができないということでありまして、滞納処分による差し押えがあります間は、債権者は強制執行の手続あるいは競売法による競売の手続を差し控えて、滞納処分の解除になるのを待っておるわけでありますが、解除になりましたとたんに債務者は目的物を処分してしまう、そのことによって債権者はその財産から債権の満足を受けることができないということがございますし、また、滞納処分が進行いたしまして目的物が換価されました場合にも、現行法上その売得金に余裕がありますと滞納者に返されてしまうのでありまして、債権者が直ちにその残余について弁済を受けることができないというようなことになるわけでございます。また、租税の徴収の立場から申しましても、債務者が差し押えを受けております間は滞納処分が実施できない、差し押えが解除された直後それが処分されてしまうというようなことがございます。ただ、租税の方は、強制執行によって換価が行われました場合にも、原則として優先的に交付を受けることができることになっておりますので、滞納処分についての収税官吏の立場からする不満はそう大きくなかったように思いますが、一般債権者の側からする不満はかなり古くから強くその改善を要望する声となっておったのであります。主としてかような意味から、重復して執行することができないということに上る私債権の実行の障害を取り除くことが、この法律案の目的でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/5
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006・椎名隆
○椎名(隆)委員 そうすると、この規定は私債権者保護のための規定でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/6
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007・村上朝一
○村上(朝)政府委員 法律によって与えられております私法上の権利というものは、できるだけすみやかに国家機関による保護が与えられる、判決手続なり執行手続によって適正迅速な保護が与えられるということが、司法秩序を維持する上におきまして、法治国として最も望ましいことなのでありますが、遺憾ながら、いろいろな障害がございまして、権利の実現ということが迅速に能率的に行われているとは申しがたい実情にございますが、それらの障害の一つを取り除くという意味でございまして、債権者を保護すると申しますと、やや債務者の犠牲において債権者を保護するというような感じを受けるのでありますが、そういう意味ではないのであります。本来あるべき権利の国家機関による実現というものを、なるべくすみやかに能率的に行うということがねらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/7
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008・椎名隆
○椎名(隆)委員 本法の適用せられるものは、大企業ではなくて大体が中小企業者であろうと思います。その中小企業者は保護育成していかなければならない。ところが、今までは強制執行なら強制執行だけ、滞納処分なら滞納処分だけを受けていたとするならば、その中小企業者も、あるいは債権の取り立てもより適当な時期さえ与えてもらえさえするなれば生き返ることができたにもかかわらず、滞納処分あるいは強制執行を受けているところへ、さらにまた強制執行、滞納処分を受けるとするなれば、その中小企業者は今度永久に破産状態にならざるを得ないと私は思う。今までは、この規定のない限りにおきましては、ある程度まで生き返られたにもかかわらず、この規定ができたために、中小企業者が回復すべからざる窮地に追いやられるというふうになると思われますが、どんなものでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/8
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009・村上朝一
○村上(朝)政府委員 この法律が実施されますと中小企業が窮地に追い込まれるおそれはないかという御質問でございますが、中小企業といえども、ある営業をやっております者は、債務だけ負担しているわけではないのでありまして債務を負担する反面、債権も持っており、その債権の取り立てができないために困っている中小企業も多数あるのでございます。権利というものはできるだけすみやかに国家機関による実現がはかられるということは、中小企業、大企業を問わず、法律秩序を維持し、経済を健全にするゆえんではないかと考えるのでございます。中小企業が抵当権を設定して金融を受けるというような場合にも、抵当権実行上いろいろ障害がございますと金融を受けることが困難になるわけでありましてそれらの障害が除かれますことは金融を受ける便宜を増加することになるわけでございます。この法律の実施によりまして特に中小企業が不利益な立場に追い込まれるというふうには考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/9
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010・椎名隆
○椎名(隆)委員 それは、御答弁の通り、債務もあれば債権もあります。では、この差し押え目的物件の中に、動産、不動産、船舶だけを入れて、債権も除外されていれば、あるいは自動車抵当、工場財産等も除外されておりますが、なぜ除外されましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/10
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011・村上朝一
○村上(朝)政府委員 債権、特に金銭債権につきましては、債権が差し押えの目的物になる場合には、一般私債権者が差し押えする場合でも、また収税官吏が差し押えする場合におきましても、取り立てる必要のある額の限度で差し押えるのでございまして、特に重複差し押えというような問題が起きる余地は少いのであります。この法律案は特に滞納処分手続と強制執行手続との調整の必要の多いものにつきまして規定をいたしたのでありまして、理論的にこれを一貫するということになりますと、あらゆる財産に対する執行について規定を設けるということになりますけれども、比較的必要の乏しいものにつきましてはこの際見送るという趣旨で、必要の強いものだけについて規定したのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/11
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012・椎名隆
○椎名(隆)委員 ことにこの第八条でございますが、滞納処分をやり、そうして今度あとから強制執行をやった場合、おそらく強制執行をなした者は続行の申し立てをどんどんするだろうと思う。強制執行の続行の申し立てをすると、いわゆる滞納処分に先んじてやる。これは、かりに弁護士さんなら弁護士さんがこの事件を受け合ったとするならば、少くとも強制執行続行の申請ということは当然その中に含まれる。そうして結局は続行の申請をすることによって中小企業者の死期を早めるのではないかというふうに考えるのです。なるほどそれに対しては裁判所はある程度の裁量をする余地はありますが、ここのところは許すことになるだろうと思うのです。そうすると、滞納処分されている連中は、強制執行があれば強制執行の続行の申請によってでき得る限り死期を早めるような方法になると考えるのですが、どんなものですか。それは必ず続行の申請が私は出ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/12
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013・村上朝一
○村上(朝)政府委員 続行の申請がありました場合に、裁判所が必ず続行決定をするわけではないのでございまして、第九条の第一項にありますように、相当と認めた場合に続行の決定をするということになっておりますので、この規定によって不当に債務者を苦しめるというおそれはないものと考えますが、ただ、租税の滞納をしない、従って滞納処分の行われていない債務者につきましては、債務者自身にどんな苦しい事情がありましても強制執行は進められていくのでございましてたまたま滞納処分を受けていた債務者だけについて強制執行の方をとめておくということは理論的な意味に乏しいのではないか、かように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/13
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014・椎名隆
○椎名(隆)委員 それから、収税官吏によって差し押え物件はおそらく価額の見積りが出てくるだろうと思います。それと同時に、収税官吏の競売価額の見積りは、後に押えた強制執行の場合において、執行吏も収税官吏が見積った価額に縛られますか、それとも収税官吏が見積った見積り価額と執行吏が見積った見積り価額とは違う場合があるか、どうなんでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/14
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015・村上朝一
○村上(朝)政府委員 滞納処分が先行いたしまして、収税官吏が目的物の見積りをした後に裁判所の続行決定がありまして、その強制執行の手続の方を進行をいたします場合には、目的物の換価は強制執行手続の規定によってやるわけでありまして、従いまして、不動産なら裁判所が新たに鑑定人を選任いたしまして評価をさせまして、その評価額が最低競売価額として手続が進められるということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/15
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016・椎名隆
○椎名(隆)委員 最近新聞等においてもよく現われておりますが、差し押え物件の競売の場合、いわゆる競落ボスという連中が非常におりまして、債務者は財政上苦しんでいるにもかかわらず、なお競落ボスによって苦しめられるという現状がしばしば発見されております。こういうような点について何か御考慮はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/16
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017・村上朝一
○村上(朝)政府委員 強制執行あるいは競売の手続におきましても、また国税徴収法による滞納処分の手続におきましても、競売あるいは公売、すなわち換価の手続が円滑に理想通り行われていないことは御承知の通りでありまして、競売ボスと申しますか、職業的に競売場にもっぱら出入りする者がおりまして、そのために一般人の競落が容易ではない、従って売却価格も不当に低兼な場合が少くないということは聞いておるのでございますが、これらにつきましては、現行規定の運用上もいろいろ改善の余地があろうかと存じますが、制度といたしましても、この換価をもっと能率的に円滑にするということは検討を加える必要があると存じまして、ただいま法務省におきましても法制審議会が、強制執行部会におきまして、重要な問題点の一つとして取り上げて検討中でございます。また大蔵省におきましても租税徴収制度調査会におきましてこの問題を検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/17
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018・三田村武夫
○三田村委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X00819570227/18
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