1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年四月五日(金曜日)
午前十一時三十分開議
出席委員
委員長 三田村武夫君
理事 池田 清志君 理事 長井 源君
理事 福井 盛太君 理事 横井 太郎君
理事 猪俣 浩三君 理事 菊地養之輔君
小林かなえ君 高橋 禎一君
馬場 元治君 林 博君
山口 好一君 横川 重次君
坂本 泰良君 田中幾三郎君
古屋 貞雄君
出席政府委員
検 事
(大臣官房調査
課長) 位野木益雄君
委員外の出席者
判 事
(最高裁判所事
務総局総務局
長) 關根 小郷君
判 事
(最高裁判所事
務総局総務局総
務課長) 海部 安昌君
専 門 員 小木 貞一君
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四月三日
違憲裁判手続法案(鈴木茂三郎君外十四名提出、
衆法第一五号)
裁判所法の一部を改正する法律案(鈴木茂三郎
君外十四名提出、衆法第一六号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
一部を改正する法律案(内閣提出第七一号)(
参議院送付)
判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改
正する法律案(内閣提出第一一〇号)
裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一一一号)
違憲裁判手続法案(鈴木茂三郎君外十四名提出、
衆法第一五号)
裁判所法の一部を改正する法律案(鈴木茂三郎
君外十四名提出、衆法第一六号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/0
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001・三田村武夫
○三田村委員長 これより法務委員会を開会いたします。
判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案及び裁判所法の一部を改正する法律案の両案を一括飛越とし、両案について政府の補足説明を一求めます。位野木政府委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/1
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002・位野木益雄
○位野木政府委員 最初に、判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案について、若干補足説明をいたします。
提案理由でも述べられておりましたが、この法律案は第一審の充実強化を円滑に行うための方策として考えているものであります。現在、御承知のように、判事補の職権の特例等に関する法律第一条の規定によりまして、判事補ですでに五年以上在職した岩のうち最高裁判所の指名を受けた岩は、判事補として職権の制限を受けないで判事と同一の職務を地方裁判所または家庭裁判所で行うことができることになっております。これによりまして、全国の地方裁判所及び家庭裁判所を通じまして、相当数の職権特例判事補が単独体で事件を取り扱う、あるいは一つの合議体に二人以上加わって裁判をやっておるのであります。御承知のように、判事補は、普通なれば、単独体で事件を取り扱うとか、あるいは合議体に二人以上加わるとか、裁判長になるということはできないことになっておりますが、この特例判事補については、そういう制限がございませんから、単独で事件を取り扱う、あるいはほかの判再補と一緒に二人以上合議体に加わるというふうなことをいたしておるのであります。これは現実の必要に基いていたしておるのでありますが、その人数は、お手元にお配りいたしております参考資料の統計表を見ていただきますと、この三でございますが、特例判事補の欄、純単独としてやっておる者が五十二名おります。それから、右陪席になっている人が二十一人おります。左陪席になっている人が二十五人、そのほかく合議と単独とを兼ねて右陪席をしている人が百四人、左陪席をしている人が六十五人というふうなことになっておりまして、かなりのものが単独体等で事件を取扱っているというふうなことになっておるのであります。これは、現実の必要に応じまして、判事が不足でございますから、やむを得ない現象でおりますけれども、第一審の充実強化という点から申しますと、いま少しく経験の積んだ者に当らせる方が好ましいということが言えると思うのであります。特に、刑事事件等におきましては、御承知のように第一審中心主義でございますから、単独体で事件を取り扱う裁判甘はなるべく老練な裁判官であることが適当であるというふうに考えられますので、でき縛ればこれらの判事補も可能な範囲で判事とかえるということが好ましいと思うのでありますが、この判事の補給源は在野法曹から求めるということはさしあたり困難でございますので、やはり裁判所の内部で求めるということになります。内部で求めるということになりますと、高等裁判所の裁判官というものがさしあたりの目標にあるわけであります。高等裁判町の左陪席、このうちから、できる範囲で地方裁判所の方に移ってもらうということができないかということが考えられるのであります。これもお手元にお配りしました統計表にございますが、この二のところをごらんいただきますと、高等裁判所の判事で左陪席になっておる人が六十三名ということになっておりますが、これの中の可能な範囲の方に地方裁判所に移ってもらって、判毎補の人とかわってもらう、単独でやっておるような判事補とかわってもらう、こういうようなことが考えられるのであります。そのためには、法律上今判事補は地方裁判所あるいは家庭裁判所にのみ配置し得ることになっておりまして、高等裁判所には配置され得ないことになっておりますから、法律の改正を要するわけであります。その改正も、裁判所法の改正によって恒久法としてそういう法律上の手当をするということも考えられるのでありますが、これは、裁判所法の法の建前、あるいは判事、判事補の制度という制度そのものの建前に相当の検討を要する余地がございますので、さしあたりの措置といたしまして、判事補の職権の特例の法律を改正いたしまして、この特例、たけは臨時法でございますが、それを改正いたしまして、臨時に当分の間、職権の特例のついている判事補を高等裁判所に配置し得るようにしたいというのがこの法案のねらいであります。
結局、そういたしますと、高等裁判所の方が弱体化しないかということが考えられるわけでございますが、御承知のように、昔も、法律上から申しますならば、五年以上裁判官の経験があれば控訴院判事になり得るというふうなことになっておったのでありますから、形式的な点から申しましても、判事補の職権の特例のついておる人はすでにもう五年以上たっておるわけでありますから、その点から申しましても、特に控訴審の裁判を担当するに適しないと言うことはできないと思うのでありますが、実際上はこの職権特例の判平補の中、でも相当経験の積んだ方を高等裁判所に回すということを考えておりますので、高等裁判所の方もそれほど弱体化を来たすということはないと考えておるわけであります。ただ、何と申しましても、実務経験を積んでおらないということは争うべからざるところでありますから、その意味では、高等裁判所の方が弱体化するということも考えられるのでありますが、単独体で第一審をやらせる方がいいか、あるいは高裁の三人のうちの一人としてやらせる方がいいか、どちらに重点を赴いた方がいいかということを考えますと、やはり第一審の方を強化する方が適当ではないかというふうな考え方を持ってこのような立案をいたした次第であります。
この措置は当分の間の措置として定めておるのでありますが、これがいつまで続くかということでございますが、根本的に申しますれば、判事補の職権の特例の制度、あるいはさらにさかのぼって判事補の制度をいかにすべきかということが解決されるまでということが考えられるのでありますが、なお、それまでの間に至らなくても、ここ数年すれば一人前の判事となる人の数が相当増加してくるということも考えられるのであります。これはお手元にお配りいたしました参考資料の四のところに出ておりますが、今の判事補の在職年数の調べが出ておるのでありますが、ここ二、三年は判事補で十年以上たって判事になり得る資格を取得する人はまだ少いのでありますが、五年目くらいから数が非常にぶえまして、九十八名、八十五名あるいは五十五名というふうに非常に数がふえてくるという見通しになっておりますので、そのころになれば相当判事の不足も緩和されるということを考えております。そういう状態になりますれば、こういうふうな措置も解き得る時期がくるということを考えております。
判事補の職権特例の補足説明はこの程度にいたします。
引き続いて裁判所法の一部を改正する法律案について補足説明をいたします。
この法律の改正の要点は、第一番目は、家庭裁判所調査官研修所を設置するということであります。その必要性につきましては提案理由で述べられておるのでありますが、結局、家庭裁判所調査官というものは、家庭裁判所における家事事件及び少年事件の審理等につきまして非常に重要な役割を果しておるので、その養成、研修について特別の考慮をする必要があるということから、独立の施設として研修所を設置する必要があるということが考えられるのであります。今までは、家庭裁判所調査官も書記官研修所でごく短期の研修をやっておったにすぎないのでありますが、これは裁判所書記官研修所というものの性格と非常に違い、養成の仕方も目的も違うものでありますから、非常に困っておったというような状態であったのであります。教官なんかも非常に違っておりまして、御承知のように、社会学とか心理学とか精神医学とか、そういうような特別の、今まで法律家のあまり親しまないような内容の教育を必要とするということでございますので、どうしても独立の施設を要するというように考えられまして、ようやく今度予算も相当金額認められましたので、裁判所法にその施設を正式に規定していただくということを考えておるのであります。
この家庭裁判所調査官研修所並びに家庭裁判所調査官研修所教宣の設置等につきましての規定の体裁は、いずれも書記官研修所その他今までの裁判所法における類似の施設に対する規定と大体同じ体裁になっております。それから、家庭裁判所調査官研修所の教官には裁判官としての実務の経験を有する者を必要とすると考えられますので、裁判所調査官その他について裁判所法附則で定めておるような形にならいまして、裁判官をもって家庭裁判所調査官研修所教宣に充てるということにすることが必要でありますので、裁判所法の附則をも改正いたしております。
その次の改正点は、裁判所速記官等の設置に関する事項であります。民事訴訟法及び刑事訴訟法及びそれぞれの訴訟規則の改正によりまして、証人等の尋問その他の公判における手続及びその関係者の供述の内容を相当詳細にとる必要が出てきたのであります。その必要上、すでに、最高裁判所におきましては、昭和二十五年以来、裁判所書記官研修所におきまして機械速記を専門とする速記士の養成を開始しておるのであります。御承知だと思いますが、普通の速記とは違いまして機械でありますから、相当客観性があり、いろいろ特徴があるようでありますが、その機械速記士の養成を開始いたしまして、現在すでに三百人余りが養成されて各裁判所に配置されております。全国の主として都会地でございますが、高裁所在地の地方裁判所及び横浜、京都、神戸そのほかのところへ配置されまして、重要な事件の審理に立ち会いまして速記に従事いたしております。その評判もなかなかよろしいように聞いております。ところが、裁判所の制度といたしましては、これらの職員のための特別の定めが今まで欠けておりまして、裁判所の公判の事務に従事するにかかわらず、裁判所事務官というような身分になっております。数の少い間は何とかそれでもまかなえたのでありますが、これから毎年やはり百名近くずつ養成した者が卒業して参りますので、どうしても特殊の職務の内容に即応するような一つの取扱いをする必要ができてきたのであります。それで、裁判所速記官という制度を別に設けまして、それにふさわしい取扱いをじたいということを考えたのであります。裁判所速記官及びそれを補助する者として裁判所速記官補を置きたいということを考えております。
それから、裁判所速記官の養成でございます。これは今までも裁判所書記官研修所でいたしておったのでありますが、その趣旨を明らかにするために、十四条を改正いたしまして、書記官研修所では速記官の研修をもするということを明示することにいたしたのであります。
それから、あとは附則でございますが、附則の二項は、まだ一人前に裁判所速記官に任ずる人の数が不定いたしますので、さしあたり裁判所速記官補に速記官の職務を行わせるようにいたすための改正であります。
第三項は、検察審査会の検察審査員となり得ない職種が検察審査会法に列挙されておりますが、裁判所関係の職員はすべて含まれておりますので、家庭裁判所調査官研修所教官、裁判所速記官等もここに加えたいという趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/2
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003・三田村武夫
○三田村委員長 これにて両案に対する補足説明は終りました。質疑は次会に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/3
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004・三田村武夫
○三田村委員長 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
池田清志君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/4
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005・池田清志
○池田(清)委員 高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所等、それれぞ支部を設けることができるように相なっており、現実に支部が設けられておるのでありますが、その支部という機関は、いわゆる裁判所と称するものであるか、それともまた裁判所以外の他の何ものであるかということを明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/5
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006・位野木益雄
○位野木政府委員 御質問の御趣旨は必ずしもよく了解いたしかねるのでありますが、支部は裁判所の一部であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/6
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007・池田清志
○池田(清)委員 しからば、それは、たとえば地方裁判所にいたしますと、その中の刑事法廷とか民事法廷とかありますが、それと同じ趣旨に解するものに当りますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/7
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008・位野木益雄
○位野木政府委員 本質は同じであると思います。ただ、支部と申しますのは、所在地の違うところに置かれておるものを支部と称しておりますので、その特殊性から、たとえば、ある司法行政事務なんかは、ここで本庁にあるのと違った取扱いをするという意味で特殊性があるというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/8
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009・池田清志
○池田(清)委員 高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所等の管轄区域内においてあちこち支部を設けまするし、その支部自体もいわゆる管轄区域というものが定められておるわけであります。かくのごとくいたしまして、支部そのものは裁判をするのであり、司法行政の一部を担当しておることは今御説明のあった通りであります。さすれば、厳格な意味におけるいわゆる裁判所というものに当らないという御趣旨のお答えでありましたが、国民の側から見ますると、裁判所と称するものと考えておるのではないかと思うのであります。こういう意味におきまして、支部の設置についての根拠法的なことについてお尋ねを進めるわけでありますが、御承知のように、支部の設置につきましては、地方自治法第百五十六条第六項に国の地方行政機関の設置については国会が承認しなければならぬと書いてありますところを受けまして、同条第七項において司法行政機関というものを除いております。除いておりまするところから、その設置及び管轄区域につきまして、法律がやるか、それともまた最高裁判所の立法権によってやるかという問題がおのずから分れて参るのでありますが、今日の取扱いといたしましては、最高裁判所の立法権によってこれが規則が制定されて、そのつど設置をされておる、こういうわけ合いなのであります。ただいま提案の簡易裁判所につきましては、いわゆる法律によってその設立、廃止をきめ、管轄区域をきめ、そして国民に法律として知らしめるというやり方をやっておるのにかかわらず、簡易裁判所に匹敵すると申しますか、あるいはそれ以上の立場にあると思われる司法機関が最高裁判所の規則制定権によって定められておるということは、あるいは簡易裁判所の設立についての取扱いと比較いたしまして、私は、劣ると申しましょうか、不合理な点があるのではないかと思うのでありますが、これにつきましていかがなる御見解でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/9
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010・位野木益雄
○位野木政府委員 この裁判所支部の管轄区域の決定についての規定でございますが、これは地方自治法の百五十六条とは直接関係がないように考えております。司法機関は、地方自治法には直接関係がないと考えておるのであります。そして、裁判所法の規定に基きまして作られておるのであります。高等裁判所につきましては、裁判所法の二十二条がその支部設置の規定でございますが、地方裁判所につきましては、三十一条ですか、支部設置の根拠はこういうところにあると考えておりますが、管轄区域につきましては、支部というものは独自の管轄区域は持っていない。本庁全体が一つの管轄区域を持っておるのでありまして、その中の支部で、支部としては独自の管轄区域は持っていない。ただ、事実上の事務の分担と申しますか、そういうものを内部的にきめておることはあるようでありますが、管轄区域としては別ものではない。だから、たとえば管轄違いのために訴えを却下するということはできないというふうになっておるようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/10
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011・池田清志
○池田(清)委員 国の地方行政機関の設置につきましては、先ほども申し上げましたように、地方自治法の第百五十六条第六項によりまして、国会の承認を経なければならない、こうありますが、第七項におきましては、第六項をその適用を除外いたしまして、国会の承認を得る必要はない、こういうことになっておるわけであります。さすれば、私の申し上げましたように、その設置の取扱いにつきましては、法律によってやるか、最高裁判所の立法権によっておるか、この二つがあるのだ、現在は、お答えもありましたように、最高裁判所の立法権によってやっておる、こういうことを申し上げたのでありますが、そうすることは、簡易裁判所という裁判所を作るにつきまして、管轄区域を定めるにつきまして法律を作って、そのつどつど国会の承認を得る、国会で可決をするということになっておるのと対比をいたしまして、簡易裁判所よりも以上であると思われるような支部の設置について、いわゆる制度上まるところはないか、こうお尋ねをしておるのであります。
それから先は私の要望でありますが、いわゆるこういうような支部につきましても、法律の形において改廃し管轄区域を定む、そして法律として国民に知らしむという手続をとる方がよろしいのではないか、こういうふうに申し上げておるわけであります。これは要望になりますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/11
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012・位野木益雄
○位野木政府委員 御趣旨ももっともな点があると思います。高等裁判所の支部あたりになりますと、地域がかなり広うございますから、法律上は管轄区域とは違う建前になっておりますとはいえ、事実上分担があって、それに近いようにも見えるという部分があると思うです。やはり、これは、上級の裁判所になればなるほど自然管轄区域が広くなるので、地域が膨大になるという点でこれはやむを得ないのでありますが、事実上分割されていくというような事態になりますけれども、法律上といたしましては、全然別の管轄区域じゃない、一つの裁判所の内部に地域的に分けて部を置く、本庁の所在地に置いては不便であるから、そこに便宜置くという建前で考ておるのが支部というものの本来の性質でございます。そういう性質から申しまして、管轄区域とは違うということは十分説明できると考えられますし、今までもそういう建前になっておったのであります。これは、どういうふうにいたしますか、支部についても法律を要するということにいたしますれば、これは簡裁あたりと同じようなことになるのでありますが、これはやはり司法行政の運用にまかせまして、必要に応じて裁判所の合理的な判断にまかせてやるという建前が好ましいというので、今のような裁判所法の建前になっております。いずれの建前をとるということについては議論の余地もあろうかと思いますが、今直ちにこれをかえて法律にするかどうかということについては、まだそこまでの考えはいたしておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/12
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013・三田村武夫
○三田村委員長 他に御質疑はございませんか。——なければ、これにて質疑は終結いたします。
次に、本案について討論、採決を行います。討論の通告がございませんので、直ちに採決を行います。下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に対して、賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/13
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014・三田村武夫
○三田村委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決いたしました。
なお、本案についての委員会報告書の作成については委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/14
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015・三田村武夫
○三田村委員長 御異議なければ、さように決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/15
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016・三田村武夫
○三田村委員長 次に、裁判所法の一部を改正する法律案及び違憲裁判手続法案の両案を一括議題といたし、提案理由の説明を聴取いたします。猪俣浩三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/16
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017・猪俣浩三
○猪俣委員 ただいま議題となりました裁判所法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
違憲の法令または処分を阻止し、憲法の解釈を統一するため、最高裁判所による法令または処分自体についてそれらが憲法に適合するかしないかを裁判する制度を確立することは、憲法の精神を護持し、憲法政治を推進する上に、きわめて重大な意義を持つものと信ずるのでございます。
ところで、憲法第九十八条には、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に違反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と規定し、同じく第八十一条には、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と規定しているにもかかわらず、従来の最高裁判所の判決によりますと、いかに明白な違憲法令が公布され、違憲処分が行われようとも、具体的争訟事件とならない限り、これを除去し、これを無効ならしめる手段はないとされているのであります。従いまして、現実政治の面にあっては、大多数の憲法学者が違憲であると断定する事態が発生し、そして、それが次第に既成事実化していく傾向を生じているのであります。ゆえに、法令または処分自体について、それらが憲法に適合するかしないかを裁判する制度を確立することなく、この現実の事態をそのままに放任するときは、やがて憲法そのものさえ破壊されに至るであろうと、きわめて憂慮されるのでございます。
そういうわけでざごいますから、現行裁判所法を改正し、具体的争訟事件を前提としなくても、最高裁判所が、法令または処分自体について、それらが憲法に適合するかしないかを裁判し得るよう、すなわち、最高裁判所が憲法裁判所的機能をも持つよう、明確にする必要があると考えられるのでございます。
この最高裁判所の憲法裁判所的機能を明確にするため、本改正案におきましては、現行裁判所法第三条に新しく第二項を加えて、最高裁判所が、法令または処分自体について、それらが憲法に適合するかしないかを裁判する権限を持つことを明らかにし、同時に、第七条の一部を改めて、同条に規定する最高裁判所の裁判権は、具体的争訟事件に関する裁判権であることを明らかにしたのであります。
これがこの法律案の提案の理由でございます。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
引き続いて違憲裁判手続法案の提案理由の御説明を申し上げます。
この法律案は、前に御説明申し上げました裁判所法の一部を改正する法律案と一体をなすものでありまして、その改正案において明らかにされました法令または処分それ自体についてそれらが憲法に適合するかしないかを裁判する最高裁判所の権限を最高裁判所が行使するに当っての具体的な裁判手続について定めたものでございます。
さて、この法律案の内容につきその概略を御説明申し上げますと、まず第一に、この裁判は訴訟の形式をもって行われることになっております。すなわち、衆議院議員及び参議院議員のそれぞれの定数を合計した数の四分の一以上の員数の国会議員が原告となり、検事総長を被告として、最高裁判所に訴えを提起することによって、この訴訟は開始するものといたしました。原告を国会議員といたしましたのは、この訴訟が本来主権者である国民の厳粛な信託によって行われる国家機関の行為の違憲性を究明しようとするものである以上、これを訴追するのは主権者である国民を代表し得る資格を有する者でなければならないという観点に立脚したからでありまして、その員数を衆参両院の議員の各定数を合計した数の四分の一以上といたしましたのは、主としてこれにより乱訴の弊害を防止しようという趣旨のものでございます。また、被告につきましては、この訴訟が公益のためになされるものであると同時に、高度の法律論が必要とされますので、検事総長といたしました次第でございます。
次に、この訴えは、法令につきましては当該法令が公布された日から、処分につきましては当該処分があった日から、それぞれ六ヵ月以内に最高裁判所に訴状を提出してしなければならないこととし、もしこの要件を欠くときは、その補正を命じ、補正ができないものでありますときは、口頭弁論を経ないで却下の判決がなされるものといたしました。提訴期間をこのように限定いたしましたのは、このような憲法上の重大問題はできる限りすみやかに解決されるべきものであるということ、及び、たとい違憲なものであっても、すでに有効なものとして実施されている法令または処分の効果をいつまでも争い得るものといたしますと、法律的にも社会的にもゆゆしい不安と混乱とを招くことになるということの二つな考慮いたしましたからでございます。なお、原告の数が多いため訴訟の追行が不便となることを考慮いたしまして、原告代表者の制度を設け、原告の行う一切の訴訟行為は原則としてこの代表者によってなされることといたしました。
次に、第二には、有効に係属した事件の審理は、口頭弁論を中心に行われ、証拠調べの必要があれば最高裁判所は職権をもってこれをなし得ることになっております。しかし、一たん有効に係属いたしました訴訟でも、原告の全員の一致がありますれば、判決があるまではいつでも訴えの全部または一部を取り下げることができることといたしますとともに、各原告はいつでも訴訟から脱退することができることとしてございます。さらに、原告が死亡したり、たとえば衆議院の解散等により今まで原告であった者が原告たる資格を喪失したり、あるいは訴訟からの脱退というようなことのために、原告の数が訴え提起の際に必要とされる員数に満たなくなったとときは、訴訟手続は中断することといたしました。
また、訴えの変更は原則として認めないことといたしました。これは、違憲裁判はなるべくすみやかになされることが望ましく、訴えをむやみに変更して審理を複雑にし、裁判が遅延いたしますことは、その要請に反することになると考えたからでございます。ただ、申し立てにかかる法令を実施するためまたはその法令の委任に基いて制定された法令、及び申し立てにかかる法令に基いてされた処分につきましては、右に述べました弊害も比較的少いと考えられますので、これらのものについてだけは、申し立ての趣旨を拡張して裁判を求めることができることといたしました。
なお、証拠調べにおきまして、公務員または公務員であった者がその職務上の事項について証言または書類の提出を求められましたときは、職務上の秘密を理由としてこれを拒むことはできないことといたしました。これは、法令または処分の違憲性の判断という憲法上の重大事が秘密を理由として不可能に陥るということを許さないという趣旨のものでございまして、違憲裁判の権威を強調したものでございます。
次に、第三には、違憲裁判は判決の形式で行われることになっております。また、最高裁判所は、原告の申し立てない法令または処分につきましては判決をすることができないこととなっております。これは、前に御説明申し上げました違憲裁判は訴えを待って開始されるという趣旨と同一の趣旨に基くものでございまして、これによって裁判の範囲を明確にしようとしたものでございます。なお、法令または処分につきまして、それらが憲法に適合しないとの裁判がありました場合には、その裁判の効力は、原則として将来に向ってのみ及ぶことといたしてございます。
以上、この法律案におきまする違憲裁判手続の骨子につきまして、その概要を御説明申し上げたのでございますが、なお、最後に二、三の点につき申し上げますと、最高裁判所は、法令または処分につきましてそれらが違憲であるとの判決をいたしましたときは、すみやかにその要旨を官報で公示して国民に周知させますとともに、その裁判書の、正本を内閣に送付し、その裁判が法律にかかるものでありますときは、国会にも送付することといたしました。また、この裁判費用は国庫で負担することとし、さらに、この裁判の手続等についての細則は最高裁判所の規則にゆだねることといたしました。
これをもって本法律案の提案理由の説明を終ります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/17
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018・三田村武夫
○三田村委員長 以上で提案理由の聴取を終りました。質疑は次回に譲ります。
午前中はこの程度にとどめ、暫時休想いたします。
午後零時二十一分休憩
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〔休憩後は開会に至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605206X02419570405/18
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