1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年二月十四日(木曜日)
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昭和三十二年二月十四日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
及び法人税法の一を改正する法律案(内閣提
出)の趣旨説明及び質疑
午後一時七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X00819570214/0
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001・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
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所得税法の一部を改正する法律案
(内閣提出)及び法人税法の一部
を改正する法律案(内閣提出)
及び法人税法の一部を改正する
法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X00819570214/1
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002・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を求めます。大蔵大臣池田勇人君。
〔国務大臣池田勇人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X00819570214/2
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003・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたしたいと存じます。
政府は、国税及び地方税を通じて、わが国現下の実情に即した合理的な租税制度を確立するため、一昨年八月以来、臨時税制調査会を設けて、税制改正の諸方策について鋭意検討を加えて参りましたが、昨年末その答申を得、さらに、検討を重ねました結果、来年度を期して所得種を中心とする直接税の大幅減税を行い、国民の税負担の軽減をはかるとともに、租税上の各種特別措置を整理合理化し、また、道路整備の財源に充てるため揮発油税の税率を引き上げる等、税制の全般的整備を行うことといたしたのであります。幸いにして、わが国経済の発展は、昭和三十二年度において約二千億円に上る租税の自然増収を得ることが確実となっております。このときに当り、一千億円を上回る所得税の減税を中心として租税負担の軽減合理化をはかることは、国民の勤労意欲を高め、国民生活と経済活動に明るい希望を与え、また、民間資本の蓄積を進めて、わが国経済の発展に大いに寄与するものと信じまして、ここに、まず、この税制改正の支柱をなす所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案の二法案を提出した次第であります。
初めに、所得税法の一部を改正する法律案について、その概要を申し上げます。
所得税については、まず低額所得者の負担の軽減に留意しながら、税率の累進度の緩和に重点を置いて、大幅なる負担の軽減をはかることといたしております。すなわち、基礎控除額を八万円から九万円に、一人目の扶養親族についての扶養控除額を四万円から五万円に引き上げるとともに、給与所得控除については、年収四十万円から八十万円までの給与についても新たに百分の十の給与所得控除を認め、その最高限度を八万円から十二万円に引き上げることとしているのであります。また、税率につきましては、新たに百分の十の最低税率と百分の七十の最高税率を設けるとともに、各税率の適用される課税所得の最高限度を現在の五倍ないし七倍に広げて、税率の累進度を大幅に緩和することとしているのであります。この措置によりまして、租税特別措置法の一部改正において予定されておりまする概算所得控除の廃止を考慮に入れましても、所得税の負担は著しく軽減されることになるのでありまして、夫婦と子供三人の給与所得者に例をとりますと、平年度において、所得税は、年収三十万円で六割五分、五十万円で五割程度の軽減となり、また、事業所得者についても、これとほぼ同程度の軽減となるのであります。
次に、貯蓄の奨励に資するため、生命保険料の控除限度を引き上げることとし、年一万五千円をこえ三万円までの払込保険料についても、その半額に相当する金額を生命保険料控除として控除することといたしております。この改正に加えて、別途長期預貯金の利子所得等について特別の配慮をすることによって、減税による所得の増加が貯蓄に向い、健全に経済が発展することを期待しているのであります。さらに、実情に即した合理的な課税を行うため、配当控除率を調整し、また、資産所得の世帯合算課税の制度を創設するとともに、税制の簡素合理化に資するため、簡易税額表の適用範囲を拡大し、予定納税額が少額の場合には、予定納税の義務がないものとする等の措置をも講ずることといたしておるのであります。
次に、法人税法の一部を改正する法律案についてその概要を申し上げます。法人税につきましては、まず、中小法人の負担の軽減に資するため、軽減税率の適用範囲を拡大し、年所得五十万円から百万円までの所得についても、百分の三十五の軽減税率を適用することといたしております。さらに、重要物産免税制度について、新規重要産業育成のための制度であることを明確にし、免税所得額に一定の限度を付する等、制度の合理化をはかるとともに、外国で支払われました税額の控除制度の合理化等、所要の規定の整備を行うことといたしております。
以上申し上げました措置による所得税及び法人税の減収は、所得税の一般的減税により、初年度約一千九十二億円、平年度約一千二百五十四億円、法人税の軽減税率の適用範囲の拡大により、初年度約十五億円、平年度約二十二億円、合計初年度約一千百億円、平年度約一千二百七十六億円を見込まれるのでありますが、租税特別措置法等による改正分をもこれに含め、増減収を通算いたしますと、昭和三十二年度におきましては、約九百五十一億円の所得税の減収、約七十一億円の法人税の増収となるのであります。
以上が所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
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所得税法の一部を改正する法律案
(内閣提出)及び法人税法の一部
を改正する法律案(内閣提出)の
趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X00819570214/3
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004・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) ただいまの趣旨の説明に対し質疑の通告があります。これを許します。横山利秋君。
〔横山利秋君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X00819570214/4
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005・横山利秋
○横山利秋君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました所得税法の一部を改正する法律案並びに法人税法の一部を改正する法律案について、総理及び大蔵大臣に率直に所信を承わりたいと存ずるのであります。(拍手)
質問の第一は、公約の履行という点であります。税金について国民の言い分は山ほどある。よしや、それが出す側からのつらさからであるにせよ、今日の税金ほど矛盾があり、むずかしく、不公平、しかも高いものはないのであります。ちまたの声の共通点をあげますならば、まず高いということでしょう。第二には、税制上の不公平でしょう。第三番目には、徴収上の不公平でしょう。第四番目には、税法と通達がむずかしくて、納税者にはわからないという声でしょう。第五番目には、税が汚職、疑獄の泥沼に投げ込まれてきたことに対する不信であります。もし、それ、今われわれ政治家が心を静めて謙虚に省みるならば、過ぐる衆議院選挙並びに参議院選挙において、保守といわず、革新といわず、国民に直接叫んできた言葉がほうふつとして思い出されるでありましょう。いわく、その第一は、低額所得者の減税であります。その第二には、租税の公平であります。その第三は、税制の簡素化であったはずであります。岸臨時総理、あなたは、当時の大幹部で、幹事長で、与党の公約の責任者でありました。いかに内閣は変ったといえども、民主政治の上から、累次にわたる歴史的なこの三つの公約に対して無責任は許されざるところといわなければなりません。(拍手)いかに国民に対して答弁をされるか、明白に伺いたいのであります。
この所得税法案は、おくめんもなく、その提案理由に、「低額所得者の減税に留意しつつ、税率の累進度の緩和に重点を置いて」とある通り、五十万円以上の納税者、すなわち一千万人の納税者のうちのわずか六%、その人々に重点を置いた減税であり、法人税法また所得五十万から百万までの所得の企業者に対する減税であって、断じて低額所得者に対する減税ではないのであります。(拍手)租税の公平は期せられておるか。いなであります。政府は、大資本の圧力を受けて、左うちわで暮す人々や大資本に奉仕して、租税特別措置法に五百億円のメスを入れるという当初の計画が次々と後退して、わずか二百億となりました。税制簡素化は、明治三十五年のかたかなの国税徴収法が今なお厳として存在し、簡素化の片足すらも踏み出していないのであります。千九百億の自然増収といいますが、しょせん、これは、ことしより来年度はこれだけ国民から余分に取るのでありますから、出す側に立ってみれば結局増税であります。従って、明年度このためにあらゆる階層にいろいろな問題が惹起するに違いないのであります。予定申告のころには、「お知らせ」と称する高圧的な増税通告、青色申告の権利を無視して、帳簿の誤まりを指摘することなく行われる更正決定から青色の取り消し、今回の法人税法案のうちの、いわゆる人格なき社団、財団というものに対する税金攻勢など、次々と重なってくるでありましょう。ただでさえ不親切だと言う国民は、今から非常なおそれを抱いているのであります。納税は納税者の協力が必要であります。千九百億をことしから余分に取るというこの徴税について、大蔵大臣は納税者の信頼と協力と納得を得るべき確信があるか、そうして、これらの不安を解消するべき具体的な方策は何か、承りたいのであります。(拍手)
池田大蔵大臣、あなたは、この法律案によって、ただいま標準家族月収三万円の人の税金は二四%が一四%に減ると言いました。幾ら下りますか。わすか七百十三円、一年にしたって八千五百円。運賃が上り、バス賃が上り、そのうちに米も上るでありましょう。たばこも、「いこい」や「バット」の計画的な品切れで高いのを吸う、物価も上る、それでおしまいです。年に五百万円の所得者は、一年について何と八十二万円の減税であります。これを一万円当りの減税率を見ますると、前者は一万円について二百三十七円、後者は一万円について千六百四十円の減税です。何と、同じ一万円を持っていても、この金持ちの方が七倍近くも安くしてもらえるのであります。これでも、あなたは、仁徳天皇のお名前を借りて、仁徳以来と呼号するつもりでありましょうか。大蔵省というビルディングから、ビルディングと大邸宅を見ながら減税しておいて、わらぶきの家を見た仁徳天皇の名前を使うことは、おこがましくて、僭越といわなければなりません。(拍手)低額所得者のために、いま一度所得税法案を再検討されるつもりはないか、また、天引きされる勤労者の実質上の不公平を是正するために、そうして、かつてそうであったように、勤労所得控除を、せめて四十万円以下の人々を二〇%から二五%にする決意はないか、もしかりに今日困難とするならば、それは何ゆえであるか、また、将来この不公平をどう解決するつもりであるか、この際明らかにされたのであります (拍手)
次に伺いたいのは、資産所得の世帯合算課税の制度を創設しようとしていることであります。家族が資産を持っていても、主たる所得者——まあ世帯主のことでありましょうが、その世帯主のものとみなして、合計して税金をかけるというのでありますが、最近ちまたの問題は、同一世帯の中で働いていると、みんな世帯主の財布に入ると疑って合算しろと迫っているといって、非難ごうごうたるものがあります。今度の法案は、これに輪をかけて、名実ともに家族のものの資産であっても、その世帯主のものだと税法ではきめてしまい、合計して課税するというのでありますから、これはこれはというよりほかないのであります。よしや金額を制限しようとも、本質が問題であります。
大臣に伺いたいことは、第一に、この考え方は、納税者は脱税するものだときめてかかっている思想に立っているとしか思えないのでありますが、どんなものでありましょうか。これでは、所得税法第三条の実質課税の原則は書き改めなくてはなりますまい。第二に伺いたいことは、この制度の行き着くところは、現状と相待ちまして、主たる世帯主が税金を払うことになるのでありますから、自然家族の資産について家長の力が加わり、旧憲法時代の家族制度に税法からぼつぼつ復帰していくことになるのではないかと思うのでありますが、いかがでありましょうか。(拍手)そのよって立つ考え方を承わりたいのであります。
法人税法案の中に、「人格なき社団または財団に対し新たに法人税を課する」という内容があります。「法人でない社団や財団で、代表者などの定めあり、かつ収益事業をしているものに課税する」という定義は、まさに千波万波の問題をはらんでおります。しかも、この種のものが出版、物品販売、演劇興行、診療所、技芸教授など、大衆の支持と資金と労力のもとに設立され、かつ運営されている零細な各種団体が多いのでありまするから、法人税の税率改正の陰に隠れてこっそりと通し、この種団体に重圧を加えようとするがごとき政府の野心を、私は断じて看過し得ないのであります。(拍手)
伺いたい第一点は、四月一日からこれらのものに法人税を課するというのでありますが、それでは、一体、現在までは、法人でもなく、さりとて個人事業でもなし、税法でも何もきめていないのに税金を取ってきたのでありますか。もし取ってきたとするならば、憲法八十四条の租税法律主義の原則を無視して、行政上勝手な解釈を作り上げた責任は免れがたいといわなければなりません。(拍手)この点、今日までの経緯とその根拠を明白に承わりたいのであります。
第二には、収益事業を営むものは納めろというのです。収益と公益との区別は、言葉では簡単でありますが、実際はそう簡単にいくものでもありません。ここにも、人間が集まれば、名は公益事業をしておるといっても、何か欲のことを考えて行動するのであろうという前提が法案ににじんでいるようでありますが、この波乱を巻き起すであろう問題について、本来収益を目的としないこれら社団及び財団の立場と実情をいま少し考える必要がありはしないか。人間を悪と見て、どうしても立法化しなければならぬ理由がどこにあるか、承わりたいのであります。
重要物産の免税制度の改正は全くおそきに失したことであると同時に、法案に盛られた精神はまことに徹底いたしておりません。この免税制度によって、今日まで、たとえば、昭和三十年の二回の決算で、資本金一億円以上の大法人二百二十社は、何と、合計百二十二億の所得が免税されてきておるのでありまして、しかも、その大部分は独占金業であります。この改正案は、おそるおそる、条件を設けて、総額六十億の免税額をわずか初年度十五億ばかり削減しようとしているのでありますが、もし、政府が本国会においてしはしば言うように、経済が健全であり順調であるならば、この際大資本に奉仕し勤労各階層にしわ寄せされているこの制度を廃止する決意はないか、大臣に伺いたいのであります。(拍手)
最後に、税の原則的なことについて承わりたい。シャウプ勧告の骨組みどなったものの一つは、法人は個人の延長と考え、世間の常識を無視して法人擬制説をとり、配当所得や法人税を思い切って安くしたことでありました。しかし、その後の税制改正の変遷は、明らかにこの前提はくずされ、世論の常識にこたえて税制再検討の必要の大なること、税制調査会の答申を見るまでもないことであります。しかも、この説こそが不公平のよりどころともなっているのでありまして、今回の案では、五人家族が二百万円の配当所得をもらっても税金がかからないという結果に相なるのであります。この際、わが党の主張をいれて、法人実在説に立って真の公平を期すべく、配当所得の特例を廃し、法人税に累進段階税率を適用する時期にあると確信するが、大臣の見解を承わりたいのであります。(拍手)
第二には、直接税と間接税の比率の問題であります。先日、私の質問に答えて、大臣は、大蔵委員会において、直接税中心主義で今後もいくと答えました。物品税の増税を中止し、将来も間接税の新税を作らないと言明したのも、その立場でありましょう。しかしながら、もしそうなら、本来支那事変によって創設された物品税は、その歴史的経緯からも、その不公平さからいっても、その徴税技術の点からいっても、わずか七十数品目残り、しかも、若干の中小企業の肩に三百四十二億ものしかかっているということに思いをいたし、この際撤廃すべきであると思うが、いかがでありましょうか。百歩譲ったとしても、大蔵省が調査会と協力して起案した不公平是正のための増税分と減税分のうち、減税分は国民と直接関連業者の主張を認め、一つの期待権ともいうべきものをもたらしたことは事実でありますから、この際それを中心とした法と政令を改正することは、大臣みずからの政治的責任であると考えるが、いかがでありますか。国税においてマージャンの税金を半分に、地方税において芸者の花代を半分に、ゴルフの入場料をまた格安にする気持あらば、かくのごときはむしろ当然過ぎるほど当然でありまして、大臣の政治的良心に期待したいところであります。(拍手)
要するに、私は、この二法案が数々の矛盾を持っていることを指摘いたしましたが、本法案はすでにしてここに提案されました。私がここに基本的なことを以上お伺いしたゆえんは、本法案が委員会においても誤まりなく国民の意思を反映して審議されることを望み、かつ、政府の謙虚なる反省を求めた次第でありますから、立案の経緯は経緯として、関係大臣の率直なる見解を承わるよう要望して、私の質疑を終ることにいたしたいと思います。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X00819570214/5
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006・岸信介
○国務大臣(岸信介君) お答えいたします。
低額所得者の減税、租税の公平、税制の簡素化という三点は、いずれも税制につきまして実現しなければならぬことであります。私どもは、今回の改正におきましても、これらの点をできるだけ実現することに努めておるのでありまして、詳細は大蔵大臣より説明いたしますが、たとえば、低額所得者につきましては、所得者の基礎控除を引き上げるとか、あるいは扶養控除を引き上げる、また最低税率の引き下げとか、事業税の引き下げ等によりまして、相当大幅な減税を行なっております。また、所得税を大幅に減税することによって、各種の税負担の不均衡を是正しております。簡素化につきましても、あるいは所得税について、低額所得者の予定納税等についての手続の簡素化をはかっております。
詳しいことは大蔵大臣より説明いたします。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X00819570214/6
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007・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 横山君の御質問にお答えいたします。
まず第一は、今回の税制改正は、低額所得者の負担に留意すると言っておるが、低額所得者の負担があまり減っていないじゃないか、金額的に、一千万円あるいは五百万円の所得のある人と、三十万円、五十万円の所得のある人が、金額が同じではないか、こういうようなお話でございますが、それはもともとお納めになる金額が違うのであります。従って、割合については、先ほど申し上げましたごとく、年額三十万円の所得者は六割五分減るのでございます。こういうふうにいたしております。
どういう方法でやったかと申しますると、ただいま岸総理大臣臨時代理からお答えになりましたように、基礎控除の引き上げ、扶養控除の一人目の引き上げ、そうしてまた、税率の一五%を一〇%にする等でございます。従いまして、現行の税法におきましては、夫婦、子供三人の場合におきまして、二十四万七千円の人が所得税がかかるかからぬかのボーダー・ラインでありましたが、今度は平年度で二十七万円にまで上って参ります。そうして、納める人も減ってくるのであります。今度の税制改正におきまして、五千万円以上の方々は相当の増税でありまして、負担する額は相当多くなっております。そして、五十万円ないし百万円の方が軽くなるということでございますが、減税割合は三十万円、五十万円の人よりも少うございます。ただ、各国の例、ことに日本の最近の税負担の実情を考えまして、五十万円から八十万円程度の人が所得の割合で実際はかなり負担が重いのであります。そこで、そういうところもならしたような次第でございまして、私は、今度の税法が施行になりましたならば全国的に拍手かっさいを得ることを確信いたしておるのであります。(発言する者あり、拍手)
次に、第二の問題で、所得税の合算課税の問題であります。合算課税につきましては、御承知の通り、昭和二十四年までは、新憲法下におきましても合算課税をいたしました。しかし、昭和二十五年に、シャウプ勧告によりまして合算課税をやめたのであります。しかし、私は、今の経済状況あるいは負担の状況から申しまして、少くとも主人と奥さんとの配当所得等資産所得につきましては、夫婦の間では同じものと見ていくのが負担の公平からいっていいのじゃない、だんな様が百万円、奥様が七十万円のときには、夫婦では百七十万円の所得として計算することが、負担の公平を築くゆえと思います。しかし、勤労所得、それはお互いの勤労所得なれば、一緒にすることはいけません。そういう点から考えまして、私は、資産所得につきましてはこの際合算課税することが、社会党の方々も御賛成になると思ってやっておるのであります。これは税制調査会の意見を聞いておりません。私は、社会公平の観念から、私が主張したものでございます。(拍手)従って、これは家族制度に移る前提ではございません。外国においても、おおむね夫婦は合算しておるのであります。しかし、子供さんを合算するかどうかという問題になりますと、子供さんが資産所得以外に相当の勤労所得等ある場合におきましては、これは合算いたしません。夫婦の間で一定の額以上のものでございます。決してこれは家族制度の復活なんかを意図するものではございません。あなた方の念願しておられます所得税の負担の公平の理念を実現するためにやったのでございます。(拍手)
なお、第三番目の、人格なき社団に対しましての課税でございます。御承知の通り、人格なき社団につきましては、法人税法はかけることができない。人格なき社団でございますから、法人税法はかけられません。しかし、人格なき社団にして、収益事業——すなわち、これは法律的に施行規則に載っておりまするが、収益事業とは何ぞやといいましたら、いわゆる経済行為をやっているもの、例を申しますると、物品販売業とか、製造業、あるいは運送業、鉱業等、二十八種目の収益事業をやっている社団については、やはり、負担の公平からいって、この際法人税をかけることが適当である、こういう考え方で言っておるのであります。収益事業であれば、法人格を持っておろうが持っておるまいが、これは負担すべきものは負担していただくことが課税の公平であると思うのであります。(拍手)従いまして、現行におきましては、法人税は課税いたしておりません。しかし、人格なき社団におきましても、御承知の通り、療養所等がございます。そのときにも、源泉徴収のものにつきましては課税し得ることになっておるのであります。しかし、いずれにいたしましても、所得税をだれに課税するか、あるいは、法人格を持っているときに、これを法人税としてとるかとらないかに疑問がございますので、はっきり法律によって規定いたしたのでございます。
重要物産製造業の免税につきましては、御説の点もございますので、日本の経済も相当伸びて参りましたから、こういう制度はできるだけ集約するつもりで、租税措置法の改正を考えております。この点は横山君の考え方に大体乗って進んでおるのであります。
法人擬制説につきましては、これは、理論的に申しますると、法人擬制説の方が理論的にはいいようでございます。各国の財政家もこれを認めております。しかし、実際において、法人擬制説ばかりでいくということは実際に合わない。法人擬制説をとりながら、これを実際に合うようにしたのが今度の改正でございます。もちろん、日本におきましては法人実在説をやっております。しかし、われわれは、今法人実在説に帰るわけにはいきません。擬制説を建前としながらも、実在説にだんだん帰っていくことが課説の実情に沿うというので、あなたは法人実在説でございまするが、私はすぐにそこに踏み切るわけにはいかない。やはり、税制というものは、時代の流れによって徐々に変えていくのが、経済界に悪影響を与えないゆえんであります。そういう考えでやっております。各国におきましても、大体その通りにやっております。
なお、第六番目の、直接税中心主義か間接税中心主義か。これは財政学の大問題でございまするが、私は、必ずしも、ただいま直接税中心主義で行くとは言っておりません。今のところは、直接税と間接税が大体半分々々でございます。今の実情からいって、この程度がよいと思っております。しかし、理論的にいえば、あくまで直接税中心主義が税の建前としては理想でございます。しかし、その理想にはなかなかいけません。今は半分々々になっておりますが、これが適当と思います。
次に物品税の撤廃でございますが、あるいは売上税ができたときは物品税は要らないという説もありましょう。しかし、売上税につきましては、私は、ただいまのところ反対でございます。売上税があるにしてもないにしても、物品税は、今の状況から申しまして、大体ぜいたく品課税を主とする建前でございますので、今後物品税をどういうふうに改正していくかということは研究すべき重要な点でございますが、今これを撤廃するという気持は私にはございません。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X00819570214/7
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008・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X00819570214/8
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009・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。
午後一時四十二分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣臨
時代理
国 務 大 臣 岸 信介君
大 蔵 大 臣 池田 勇人君
厚 生 大 臣 神田 博君
国 務 大 臣 田中伊三次君
出席政府委員
法制局長官 林 修三君
大蔵省主税局長 原 純夫君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X00819570214/9
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