1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年三月三十日(土曜日)
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議事日程 第二十三号
昭和三十二年三月三十日
午後一時開議
第一 公衆電気通信法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
第二 技術士法案(内閣提出)
第三 建設省設置法の一部を改正する法律案(
内閣提出、参議院送付)
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●本日の会議に付した案件
日程第一 公衆電気通信法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
日程第二 技術士法案(内閣提出)
日程第三 建設省設置法の一部を改正する法律
案(内閣提出、参議院送付)
揮発油税法案(内閣提出)
地方道路税法の一部を改正する法律案(内閣提
出)
天災による被害農林漁業者等に対する資金の融
通に関する暫定措置法の一部を改正する法律
案(内閣提出)
開拓営農振興臨時措置法案(内閣提出)
午後二時四十八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/0
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001・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
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日程第一 公衆電気通信法の一部
を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/1
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002・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第一、公衆電気通信法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。逓信委員長松井政吉君。
〔報告書は会議録追録に掲載〕
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〔松井政吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/2
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003・松井政吉
○松井政吉君 ただいま議題となりました公衆電気通信法の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本法案は去る三月十四日内閣から提出されたものでありまして、その提案の理由及び内容の概要を申し述べれば、昭和二十八年公衆電気通信法の制定施行に伴い、構内交換設備等の設置については、日本電信電話公社の直営のほかに、利用者の自営も認められたのでありますが、その両者共存の制度により、サービスは向上し、利用者の利便も増大して、おおむね好成績をおさめておる実情にかんがみ、公衆電気通信法第百五条に改正を加えて、単独電話または共同電話の電話回線に接続する付属電話機等であって郵政省令で定めるものについても新たに加入者の自営を認めるとともに、現行法においては利用者の自営は同一回線に接続するものの全部について行わなければならないこととなっているのを改めて、郵政省令で定める特殊な設備については一部の自営を認め、かつ、今回自営を認めるものについても、従来のものと同様、工事担任者認定制度の適用、技術基準の設定及び設備検査の施行により公衆電気通信に支障を及ぼさないようにしようとするものであります。なお、付属電話機を自営する場合には負担金の支払いを要しないこととし、このために、本法案の附則に電話設備費負担臨時措置法の一部を改正する規定を設けております。
逓信委員会におきましては、本法律案の付託を受けまして以来、数回にわたって会議を開き、まず提案理由の説明を聴取し、次いで本案の趣旨、従来の構内交換設備の直営並びに自営による設置保存の状況、本案の施行が公衆電気通信事業に及ぼす支障の有無等につき、政府及び日本電信電話公社当局との間に質疑応答を重ねたのでありますが、これらは会議録に譲ることといたします。
かくして、委員会は三月二十九日質疑を終了し、討論を省略して採決を行いました結果、全会一致をもって本案を可決いたしたのであります。
これに引き続き、委員森本靖君は、日本社会党を代表して、社会党としては、主として電話利用者の利便の増進と中小企業者たる民間工事業者保護助成の見地に立って本案に賛成したのであるが、他面、公衆電気通信設備は一貫した技術と統一した規格とによって設置保存されることを必要とするから、利用者の設備自営によって公衆通信に悪影響を与えることのないよう十分戒慎すべきであるとの理由から、次の附帯決議を本案に付すべき旨の動議を提出し、採決の結果、これまた全会一致可決を見た次第であります。
附帯決議を朗読いたします。
公衆電気通信事業の円滑な運行を期するには、その設備が端末に至るまで一体として、厳密な技術の一貫性と規格の統一性とを保持することが緊要である。かかる要請に鑑み、改正後の公衆電気通信法第百五条の実施に当つては、政府ならびに公社当局は、技術基準の設定、設備の検査、工事担任者の認定及び設備の保存者を異にする場合における保守責任の分界等につき細心の注意を払い、苟も公衆電気通信設備の利用者による設置によつて事業運用に支障を与えることのないよう万全の措置を講ずべきものと認める。
右決議する。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/3
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004・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/4
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005・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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日程第二 技術士法案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/5
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006・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第二、技術士法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。科学技術振興対策特別委員会理事有田喜一君。
〔報告書は会議録追録に掲載〕
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〔有田喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/6
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007・有田喜一
○有田喜一君 ただいま議題となりました技術士法案につきまして、委員会における審査の経過並びに結果について御報告いたします。
欧米先進諸国におきましては、数十年前より技術士の制度が確立し、各企業に対し高度の技術の相談に応じ、もって企業の合理化、経済の発展に寄与しており、その技術能力と業績に対する社会的信頼は実に絶大なものがありますが、わが国においては、この制度に対する社会的認識はきわめて薄く、諸外国に比べ著しく立ちおくれ、進歩した技術は一般企業に十分取り入れることができない実情にありますので、本案は、わが国における科学技術の向上と国民経済の発展とに資するため、技術士の資格を定め、その業務の適正化をはからんとするものであります。すなわち、技術士となるには、所定の資格試験に合格の上、科学技術庁に登録しなければならないとするとともに、技術士の名称の独占を認め、他の者の使用を禁止し、また、信用失墜行為や秘密漏洩行為等を行なってはならない義務規定等を設けております。
本案は、去る三月二十日宇田国務大臣より提案理由の説明を聴取した後、参考人より意見を聴取し、また商工委員会との連合審査会を開会するなど、きわめて熱心な審議が行われたのでありますが、これらの内容は速記録に譲りたいと思います。
かくて、三月二十九日質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決した次第であります。
以上をもって御報告といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/7
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008・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/8
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009・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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日程第三 建設省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/9
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010・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第三、建設省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。内閣委員会理事床次徳二君。
〔報告書は会議録追録に掲載〕
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〔床次徳二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/10
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011・床次徳二
○床次徳二君 ただいま議題となりました建設省設置法の一部を改正する法律案について、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、本案における改正の要点を申し上げます。第一点は、土木、建築、測量等の専門的な技術及び事務を担当する職員について組織的な研修を実施するため、建設省の付属機関として新たに建設研修所を設置すること、第二点は、河川及び海岸行政の重要性にかんがみ、これを一そう推進するため、従来建設省限りで設置、運営して参りました河川審議会は、これを法制上の審議会とし、名実ともに同省の付属機関とすること、第三点は、下水道に関する事務は、終末処理場に関するものを除いて、すべて建設省の所管とし、水道に関する事務は建設省において一切これを所管しないとすることであり、その他、産業開発青年隊に関する規定を整備すること等であります。
本案は参議院先議のものでありまして、昨二十九日本付託となり、同日質疑を終了しましたが、その詳細は何とぞ会議録によって御承知を願います。
討論の通告もなく、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/11
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012・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/12
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013・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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揮発油税法案(内閣提出)
地方道路税法の一部を改正する法
律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/13
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014・山中貞則
○山中貞則君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、揮発油税法案、地方道路税法の一部を改正する法律案、右両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/14
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015・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/15
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016・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
揮発油税法案、地方道路税法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長山本幸一君。
〔報告書は会議録追録に掲載〕
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〔山本幸一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/16
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017・山本幸一
○山本幸一君 ただいま議題となりました揮発油税法案外一法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びにその結果について御報告申し上げます。
まず、揮発油税法案について申し上げます。
本案のおもな改正の第一点は、税率を、一キロリットルにつき、現行の一万一千円から四千八百円引き上げて一万五千八百円とすることといたしております。
次に、現行揮発油税法では、製造場から引き取りの際課税を受け、そのつど納税する制度となっておりましたが、これを、他の間接税と同様に、製造場から移出した月の翌月末日に一括納税する制度に改めるとともに、この移出課税制度への切りかえに伴いまして、製造場から移出したときの徴収猶予は納期後二カ月以内とすることといたしております。
次に、税率の引き上げに伴いまして、改正法の施行日である昭和三十二年四月一日現在、製造場及び保税地域以外の場所で合計五キロリットル以上の揮発油を所持する製造者または販売業者に対して、一キロリットルにつき四千八百円の税率で手持品課税を行うこととしております。
次に、新たに工業用の揮発油のうち石油化学工業の原料に用いられる揮発油等についても、航空機用の揮発油と同様に、一定の手続のもとに免税措置を講ずることとし、このため本案の附則で租税特別措置法の一部を改正することといたしております。
以上の改正により、初年度約百二十八億円の増収を見込んでおります。
次に、地方道路税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案の改正の大要は、税率を、一キロリットルにつき、現行の二千円から一千七百円引き上げ三千七百円とすることといたしております。
次に、揮発油税法における移出課税制度の採用等の改正に伴い所要の改正を行うとともに、手持品課税については、揮発油税にあわせて、一キロリットルにつき一千七百円の税率で地方道路税を徴収することといたしております。また、石油化学工業用等の工業用揮発油につきましても、揮発油税の免税措置にあわせて、地方道路税を免税することといたしております。
以上の改正により、初年度約四十五億円の増収を見込んでおるのであります。
以上の両法案につきましては、去る二十日以降、当委員会において慎重に審議を続けるとともに、二十五日及び二十七日の二回にわたって、地方行政委員会、運輸委員会及び建設委員会と連合審査を行いました。これら委員会及び連合審査会における質疑応答の詳細は、一々ここに御報告申し上げる余裕はございませんので、主要な点を要約いたしますと、おおむね次の通りでございます。
すなわち、揮発油税及び地方道路税の増徴は、いわゆる一千億減税下における大幅増税でありますので、まず揮発油税等をどうしても増徴しなければならない理由はどこにあるのか、また、自動車業者の担税力はすでに限界に達しておるから、このような増税にとうていたえられないのではないか、また、これらの増税が運賃の値上げを来たし、大衆負担に転嫁せられることにはならないか、また、揮発油税は道路整備費の財源等に関する臨時措置法により道路整備費の財源とすることにきめられておるのであるが、これが臨時就労対策事業とか特別失業対策事業等にも支出せられておるのは法律違反ではないか、また、道路整備費の財源としては、道路整備五カ年計画実施中は揮発油税の増徴を行うべきでなく、なお揮発油税だけでなく、一般会計からももっと多額を申すべきではないかといった質疑がこもごも行われ、これに対して、大蔵大臣、建設大臣、その他政府委員より、それぞれ答弁がございました。
以上二法律案は、慎重審議の結果、二法律案に対して小山長規君外二十五名提案による修正案が提出せられました。その修正案の内容について申し上げますと、揮発油税の税率を原案の一万五千八百円から一万四千八百円に引き下げるとともに、地方道路税の税率も原案の三千七百円から三千五百円に引き下げるものであります。この修正案によります増減収額は、揮発油税において七千六百万円の減収となり、地方道路税においては逆に七千六百万円の増収となるので、これらを差し引きますと、税収額に対しては影響ないことになるという提案者小山委員からの説明がございました。
以上の二修正案につきましては、国会法第五十七条の三の規定により内閣の意見を聴取いたしましたところ、しいて反対しない旨の意見が述べられたのであります。
次いで、質疑を打ち切り、直ちに討論に入りましたところ、社会党を代表して横山利秋委員より反対の旨の意見が述べられました。
次いで、二法律案について、おのおの修正案及び修正部分を除く原案についてそれぞれ採決に入りましたところ、いずれも起立多数をもって可決され、よって、二法律案は修正議決せられたのであります。
以上、御報告を申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/17
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018・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。これを許します。有馬輝武君。
〔有馬輝武君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/18
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019・有馬輝武
○有馬輝武君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になりました揮発油税法案並びに地方道路税の一部改正法律案に対しまして、反対の討論をいたさんとするものであります。(拍手)
まず、揮発油税法案について申し上げます。
反対理由の第一は、岸内閣が喧伝これ努めている一千億減税の裏で、一キロリットル当り五千三百円、総額にいたしまして百二十八億の増税がこの揮発油税によって企図せられている点であります。これは直接観による収奪が限界にきた政府のいかにもやりそうな手で、直接税たる所得税一千億減税の陰に隠れた大衆収奪の陰謀であり、しかも、その過程で一部の弱い業者に破壊的な重課をしいている、二重に罪の深い法律案である点であります。(拍手)
反対理由の第二は、この揮発油税法が院議を無視して計画されたことであります。衆議院運輸委員会は、昨年十二月三日、次のような決議をいたしております。「現在わが国における道路は未だ発達の過程にあり、これが整備拡充の極めて緊要なるは論を俟たないが、これが経費は原則として国費をもって支弁すべきである。しかるに政府は、道路整備費の多くを揮発油税等に求め、逐年これが増徴をはかり、現在既に税負担の限界に達したものと認められる。今回政府において揮発油税増徴の計画あるやに聞くが、この上の増徴は税負担の均衡を失し、自動車運送事業その他に甚大なる影響を及ぼすものと認め、揮発油税増徴に対し絶対反対する。」同じ十二月四日、参議院の運輸委員会におきましても同様の決議がなされたのであります。にもかかわらず、二、三カ月を出ずして、この決議を踏みにじる大幅な増税の法案が提案せられたのであります。この院議を無視する政府の態度は強く糾弾されなければなりません。(拍手)
反対理由の第三は、昭和三十二年度の揮発油の消費見込みについて、閣内の意見が不統一のまま、この増徴案が提案せられたことであります。大蔵省がその算定の基礎とした通産省の見込み三百九十万キロリットルを、水田通産大臣は、再検討する余地はないと言い、宮澤運輸大臣は、閣議の決定には責任を持つが、運輸省が出した四百二十万キロリットルはあくまで重要な審議の資料としてほしいと申しておるのであります。このような需給見込みの食い違いを基礎とした、この、いわば不確定法案は、国会審議を不当に混迷させるものであり、かつ、納税者を愚弄するもはなはだしいといわざるを得ません。(拍手)
反対理由の第四は、この揮発油税を財源とする政府の道路整備の計画がずさん過ぎることであります。昭和二十九年以来のワトキンス調査団の報告に基く道路整備五カ年計画の進捗状況がきわめて悪い現在、安易な形で再び道路整備十カ年計画を考え、その計画がいまだ草案の域を出ていないのに、揮発油税だけはその重要な財源として増徴しようとするものであります。その上、この十カ年計画に基いて建設省が要求した初年度の所要経費九百六十億は、みごとにその半分以下に削られ、当初からこの整備計画はくずれ去っておるのであります。私たちは、この際、たといこの計画がその通り完成いたしたとしましても、予定の三分の一しか整備されない事実を無視するわけには参りません。
反対理由の第五は、揮発油税の税率が現在でもあまりにも高過ぎることであります。物品税の中で、ぜいたく品に属するものよりずっと高く、たとえば、真珠入りの金指輪の二倍以上、嗜好品である酒類と同率であります。政府は、揮発油税の小売価格に占める消費税の割合について、昭和三十年四月現在で、わが国は五百円のうち三十五円が消費税部分で、アメリカの二十七円より高いが、西ドイツの四十八円、イギリスの六十一円、フランスの六十七円、イタリアの七十一円のいずれより低いと称しております。これまた妥当な比較とは申せないのであります。数字の根拠について厳正であるべき大蔵省が、このような数字のごまかしをもてあそぶことは許されないのであります。(拍手)何となれば、国民所得を考慮しないこのような比較は全く無意味であるからであります。試みに各国の国民所得をあげますならば、昭和二十九年度で、各国一人当りの税引き後の所得は、日本の五万八千五百七十五円に対しまして、イタリア九万六千六百三円、西ドイツ十三万九千九百八十一円、フランス二十一万六千四百九十六円、イギリス二十二万二千七百六十八円、アメリカのごときは、日本の十倍近くの五十二万九千五百六十円で、格段の差を示しておるのであります。ましてや、アメリカでは乗用車が八〇%で、トラック、バスが二〇%であるのに対しまして、日本では、逆に、トラック、バスが八〇%で、乗用車が一七・八%にすぎない事実を思い合せますとき、揮発油の増税が国民生活に及ぼす影響はアメリカなどと比較にならないのであります。(拍手)
反対理由の第六は、道路整備費の財源が、当初、一般会計五割、揮発油税が五割とすべしとされておったにもかかわらず、現在では七割四分が揮発油税にたよっている事実であります。さらに、見過ごしてならないことは、大幅に増徴されるこの揮発油税が、道路費以外の、失業救済交付金及び有料道路建設等の資金調達のため交付する補助金等に百二十九億も支出されておるのであります。このような労働省及び建設省関係の補助金は、当然一般財源から支出すべきものであります。
反対理由の第七は、道路整備による受益者は国民全体であるにもかかわらず、これを一部運輸業者に限定して、この増税の過重な負担をかけておることであります。そして、これらの石油を動力源とする産業、とりわけ自動車運送事業並びに自動車所有者においては、今日までの税種のみでも、揮発油税、軽油引取税、地方道路税、その他道路受益者負担金、道路改修協力費等の諸税、公課が重複して賦課されまして、負担能力の限界を趣えておるのであります。受益者負担にあらずして、まさに受難者負担であります。(拍手)
間接税は、勤労事業に対する意欲を阻害しないこと、担税者に消費選択の余地を残すこと、感覚的な負担感が軽いことでもって、直接税よりすぐれた点もなしとしないのでありますけれども、今回の揮発油税法案に関する限り、クッションにされた業界に対し大打撃を与えているがゆえに、これらの間接税の美点がすべて帳消しになっておるのであります。すでに重い税負担が、この種の産業に従事する労働者に労働強化をしい、事故の発生数をおびただしくしていることは、毎日あの警視庁前に発表される死亡や負傷者の数を見ても、いかにひどいかが歴然としておるのであります。それが、今度の改正によって、さらにこの傾向が助長されることは、あまりにも明らかであります。
さらに、この値上げ法案が通過することによりまして、運賃値上げを余儀なくし、一般物価の値上りの呼び水となることは必至であります。(拍手)このことは、与党修正になる一千円ぐらいの引き下げではいささかも救われないことは論を待たないところであります。(拍手)
以上の理由によるこの法案の矛盾と不合理については、関係各委員会において、また合同審査において、野党議員があげて鋭く追及したところであります。
最後に、私は、この法律案をめぐる驚くべき政治的無節操の事例に言及せざるを得ないのであります。(拍手)内閣提出の法律案には、閣僚は共同の責任を持つことが定められておりまするが、現閣僚中の三名並びに大蔵担当の政務次官が、この課税引き上げ反対運動に際しまして、これより前、署名している事実であります。(拍手)
地方道路税法の一部改正法律案に対しましても、私は全く同様の理由から反対いたすことは当然であります。
幾多の税制上の不均衡を含み、社会的、経済的に不健全な現象を生むこの両法律案に対しまして、政治的節操に顧みまして、断固反対せられんことを強く要望いたしまして、私の反対討論を終るものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/19
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020・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。
揮発油税法案外一案を一括して採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。両案の委員長の報告はいずれも修正であります。両案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。
氏名点呼を命じます。
〔参事氏名を点呼〕
〔各員投票〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/20
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021・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。
投票を計算いたさせます。
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/21
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022・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
〔事務総長朗読〕
投票総数 二百六十四
可とする者(白票) 百六十八
〔拍手〕
否とする者(青票) 九十六
〔拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/22
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023・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 右の結果、揮発油税法案外一案は委員長報告の通り決しました。
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揮発油税法案外一件を委員長報告の通り決するを可とする議員の氏名
阿左美廣治君 相川 勝六君
逢澤 寛君 青木 正君
赤澤 正道君 足立 篤郎君
荒舩清十郎君 有田 喜一君
有馬 英治君 五十嵐吉藏君
伊東 岩男君 伊東 隆治君
伊藤 郷一君 池田 清志君
池田 勇人君 池田正之輔君
石坂 繁君 一萬田尚登君
稻葉 修君 今井 耕君
植木庚子郎君 植村 武一君
臼井 莊一君 内海 安吉君
江崎 真澄君 小笠 公韶君
小川 半次君 小澤佐重喜君
大石 武一君 大久保留次郎君
大倉 三郎君 大坪 保雄君
大平 正芳君 大村 清一君
大森 玉木君 太田 正孝君
岡崎 英城君 加藤 精三君
加藤 高藏君 加藤鐐五郎君
上林山榮吉君 神田 博君
亀山 孝一君 川崎 秀二君
川野 芳滿君 川村善八郎君
木村 文男君 岸 信介君
北 昤吉君 北澤 直吉君
吉川 久衛君 清瀬 一郎君
楠美 省吾君 小泉 純也君
小枝 一雄君 小金 義照君
小島 徹三君 小林 郁君
小林 錡君 小山 長規君
纐纈 彌三君 佐々木秀世君
佐藤 榮作君 齋藤 憲三君
笹本 一雄君 笹山茂太郎君
薩摩 雄次君 志賀健次郎君
椎熊 三郎君 椎名悦三郎君
重政 誠之君 首藤 新八君
白浜 仁吉君 須磨彌吉郎君
杉浦 武雄君 鈴木 善幸君
鈴木 直人君 薄田 美朝君
砂田 重政君 世耕 弘一君
瀬戸山三男君 園田 直君
田口長治郎君 田子 一民君
田中伊三次君 田中 龍夫君
田中 正巳君 高岡 大輔君
高木 松吉君 高瀬 傳君
高橋 等君 竹内 俊吉君
竹山祐太郎君 塚田十一郎君
塚原 俊郎君 辻 政信君
綱島 正興君 徳安 實藏君
床次 徳二君 中川 俊思君
中島 茂喜君 中嶋 太郎君
中村三之丞君 中村庸一郎君
永田 亮一君 長井 源君
二階堂 進君 根本龍太郎君
野澤 清人君 野田 卯一君
野田 武夫君 野依 秀市君
馬場 元治君 橋本登美三郎君
橋本 龍伍君 長谷川四郎君
八田 貞義君 濱地 文平君
早川 崇君 林讓 治君
林 博君 原 健三郎君
原 捨思君 福井 盛太君
福田 赳夫君 福田 篤泰君
福永 健司君 藤枝 泉介君
藤本 捨助君 淵上房太郎君
船田 中君 古井 喜實君
古島 義英君 保利 茂君
保科善四郎君 坊 秀男君
堀内 一雄君 堀川 恭平君
本名 武君 眞崎 勝次君
眞鍋 儀十君 前尾繁三郎君
前田房之助君 前田 正男君
牧野 良三君 町村 金五君
松浦 東介君 松岡 松平君
松田竹千代君 松本 瀧藏君
松山 義雄君 三浦 一雄君
三木 武夫君 三田村武夫君
村上 勇君 粟山 博君
森 清君 八木 一郎君
山口 好一君 山崎 巖君
山手 滿男君 山中 貞則君
山本 勝市君 山本 猛夫君
山本 利壽君 横川 重次君
吉田 重延君 渡邊 良夫君
否とする議員の氏名
阿部 五郎君 青野 武一君
赤路 友藏君 足鹿 覺君
飛鳥田一雄君 有馬 輝武君
淡谷 悠藏君 井谷 正吉君
井手 以誠君 井上 良二君
伊藤卯四郎君 池田 禎治君
石橋 政嗣君 石村 英雄君
石山 權作君 稲富 稜人君
今澄 勇君 今村 等君
小川 豊明君 大矢 省三君
岡田 春夫君 加賀田 進君
風見 章君 春日 一幸君
片島 港君 片山 哲君
勝間田清一君 川俣 清音君
河野 正君 菊地養之輔君
北山 愛郎君 久保田鶴松君
久保田 豊君 栗原 俊夫君
小平 忠君 小牧 次生君
小山 亮君 五島 虎雄君
河野 密君 佐々木更三君
佐竹 新市君 佐竹 晴記君
坂本 泰良君 下川儀太郎君
鈴木茂三郎君 田中幾三郎君
田中織之進君 田中 武夫君
田中 稔男君 田原 春次君
田万 廣文君 多賀谷真稔君
高津 正道君 滝井 義高君
竹谷源太郎君 楯 兼次郎君
辻原 弘市君 堂森 芳夫君
中居英太郎君 中島 巖君
中村 高一君 中村 英男君
成田 知巳君 西尾 末廣君
西村 榮一君 野原 覺君
芳賀 貢君 原 茂君
原 彪君 平岡忠次郎君
平田 ヒデ君 福田 昌子君
穗積 七郎君 細迫 兼光君
細田 綱吉君 前田榮之助君
正木 清君 松井 政吉君
松尾トシ子君 松岡 駒吉君
松原喜之次君 三鍋 義三君
水谷長三郎君 門司 亮君
森 三樹二君 森島 守人君
森本 靖君 安平 鹿一君
柳田 秀一君 山口丈太郎君
山本 幸一君 横路 節雄君
横山 利秋君 吉田 賢一君
和田 博雄君 渡辺 惣蔵君
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天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
開拓営農振興臨時措置法案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/23
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024・山中貞則
○山中貞則君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置沫の一部を改正する法律案、開拓営農振興臨時措置法案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/24
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025・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/25
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026・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案、開拓営農振興臨時措置法案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。農林水産委員長小枝一雄君。
〔報告書は会議録追録に掲載〕
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〔小枝一雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/26
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027・小枝一雄
○小枝一雄君 ただいま議題となりました二法案につき、農林水産委員会における審議の経過及び結果につき御報告いたします。
まず、天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本法は、天災によって損失を受けた農林漁業者等に対して金融機関が融資した場合の利子補給及び損失補償の制度を定めたものでありますが、今日まで本法により実施した災害対策の経験に徴し、明確を欠き、または不十分とせられた点を改善しようとして、この改正案が提案せられたのであります。
改正点のおもなものを申し上げますと、第一は、激甚な災害を受けて年三分五厘の低利資金を借り入れることとなる特別の被害地域における特別の被害農林漁業者について、その範囲及び基準を明確にして、融資を円滑に行おうというのであります。
第二は、この天災融資に対して国は利子補給を行うわけでありますが、信連または中金等に対して行う利子補給を廃止し、都道府県及び市町村を通じて直接単協に補助するようにいたし、融資の適正をはかろうというのであります。
第三は、三分五厘資金における国と地方公共団体との利子負担の割合を国六五%、地方公共団体三五%に改め、地方公共団体の負担を軽減しようというのであります。
本案は、三月十二日から五日間にわたり政府に対し質疑を行い、自来その取扱いについて協議して参りましたが、三分五厘資金に対する国からの利子補給率の引き上げに伴い、特別平衡交付金の交付率をも当然これに見合って引き上ぐべきであるとの有力な意見があり、この点について、三月三十日、委員長より田中国務大臣に対し質問を行いましたところ、了承する旨の答弁がありましたので、これをもって一切の質疑を終了することとし、次いで、芳賀貢君から次のごとき内容の修正案が提出されたのであります。すなわち、昭和三十一年度災害の農林漁業者等に与えた被害の激甚なるにかんがみ、この災害中特に著しい被害をこうむった農林漁業者等に対し融資した三分五厘資金の利子補給については、昭和三十二年度以降の支払い分より新法による補助率を適用し、地方公共団体の利子負担の軽減をはかろうとするものであります。
この修正案及び原案につき、討論を省略して採決いたしました結果、いずれも全会一致をもって可決すべきものと決した次第であります。
次に、開拓営農振興臨時措置法案について御報告申し上げます。
戦後今日まで実施して参りました開拓事業により、開拓者が食糧増産面において果した役割は、これを高く評価しなければならぬのでありますが、しかし、開拓農家の経営の実態については、遺憾ながら、開拓政策上の欠陥、その立地条件の劣悪、連年の災害、経済事情の変動等の影響を受けて、最近著しく悪化しておるのであります。よって、これらの開拓者の経営を安定させますために、国及び都道府県は協力してその対策を樹立実行することとし、まず、開拓農家をして自主的に振興計画を立てて営農の改善を行わしめるとともに、また、既往の災害によって借り入れた資金が開拓農家の経営を著しく圧迫している事実にかんがみ、これを償還可能な条件の資金に借りかえさせ、その融資については利子補給及び損失補償を行い、さらに、これらの開拓者が耕作する農地についての成功検査の時期を三年を限度として延期し、また、耕土培養事業について必要な調査及び事業を行う等、諸般の措置を講じて、もって経営不振開拓農家を一日も早く立ち直らせようというのが、提案の理由及びその内容の概略であります。
本案は、数回にわたり質疑を行いましたが、三月三十日、討論を省略し、採決を行いましたところ、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案の効果を一そう高からしめますために、全員の賛成を得て次の附帯決議を付したことを申し添えておきます。すなわち
開拓営農振興臨時措置法案に対する附帯決議
政府は、地区別営農振興計画の達成に必要な措置を積極的に講ずるはもちろん、とりあえずこのさい、経営不振地区の開拓農家に対し、三十二年度以降五カ年間を限り、次の措置を講ずべきである。
(一) 自作農創設維持資金の資金源の拡張に努め、毎年五億円を限度として特別枠を設定し貸付けること。
(二) 農林漁業金融公庫が貸付けた資金の償還額については、実情に応じて償還延期を行うこと。
以上、御報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/27
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028・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 両案を一括して採決いたします。両案中、天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案の委員長の報告は修正でありまして、他の一案の委員長の報告は可決であります。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/28
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029・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り決しました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/29
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030・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。
午後三時三十七分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣
外 務 大 臣 岸 信介君
大 蔵 大 臣 池田 勇人君
郵 政 大 臣 平井 太郎君
国 務 大 臣 宇田 耕一君
国 務 大 里 田中伊三次君
出席政府委員
農林政務次官 八木 一郎君
電気通信監理官 松田 英一君
建設政務次官 小沢久太郎君
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02719570330/30
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